(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102705
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】キャリブレーション治具
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003374
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石濱 裕幸
(57)【要約】
【課題】トータルステーションとヘルメット一体型の測量用ターゲットとを用いた位置検出システムのキャリブレーションにおいて、必要とする時間を低減し、失敗をなくす。
【解決手段】この治具Jは、治具本体1がヘルメットHを支持可能な台からなり、天面にヘルメット設置部2を有し、天面と底面との間でヘルメット設置部2に設置されるヘルメットH上の測量用ターゲットTの中心と同心上にピンポール固定部3を有し、キャリブレーションを行う際に、ヘルメットHをこの治具Jを介してピンポールP上に取り付けて、ヘルメットH上の測量用ターゲットTを測量できるようにした。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トータルステーションと、ヘルメットの最上部に取り付けられるヘルメット一体型の測量用ターゲットとを備え、前記測量機から前記測量用ターゲットに光波を照射しその反射波を受光することにより測量し、前記測量用ターゲットの位置座標を算出する位置検出システムにおいて、前記測量用ターゲットを複数の標尺棒がねじを介して連結されてなるピンポールを使って測量することにより行うキャリブレーションに用いるキャリブレーション治具であって、
前記ヘルメットを支持する台をなす治具本体と、
前記治具本体の天面に形成されたヘルメット設置部と、
前記治具本体の天面と底面との間で前記ヘルメット設置部に設置される前記ヘルメット上の前記測量用ターゲットの中心と同心上に設けられ、前記ピンポールのねじに係合可能な略筒形構造のピンポール固定部と、
を備え、
キャリブレーションを行う際に、前記ヘルメットを本キャリブレーション治具を介して前記ピンポール上に取り付けて、前記ヘルメット上の前記測量用ターゲットを測量できるようにした、
ことを特徴とするキャリブレーション治具。
【請求項2】
治具本体の高さとヘルメットの高さを合わせた高さはピンポールの標尺棒の長さ単位に一致する請求項1に記載のキャリブレーション治具。
【請求項3】
治具本体は平断面略馬蹄形を呈する環状のプレートからなる請求項1又は2に記載のキャリブレーション治具。
【請求項4】
ヘルメット設置部はヘルメットの底面縁部が嵌合可能に治具本体の天面に溝形に形成される請求項1乃至3のいずれかに記載のキャリブレーション治具。
【請求項5】
ピンポール固定部は、治具本体に筒部を形成してなる固定穴と、前記固定穴に嵌合可能にかつピンポールのねじに被着可能に筒形に形成され、前記ピンポールのねじに装着されるピンポールアダプタとを有してなる請求項1乃至4のいずれかに記載のキャリブレーション治具。
【請求項6】
ピンポールアダプタはその筒形の内部にピンポールのねじに螺合可能にねじを有する請求項5に記載のキャリブレーション治具。
【請求項7】
ピンポールアダプタのねじは長ナットからなり、前記ピンポールアダプタの筒形の内部に埋設される請求項6に記載のキャリブレーション治具。
【請求項8】
ピンポールアダプタのねじは長ねじと長ナットからなり、前記ピンポールアダプタの筒形の内部に埋設される請求項6に記載のキャリブレーション治具。
【請求項9】
固定穴、ピンポールアダプタは前記固定穴内での前記ピンポールアダプタの回転を規制可能に角形断面を有する請求項5乃至8のいずれかに記載のキャリブレーション治具。
【請求項10】
固定穴内でのピンポールアダプタの挿入を所定の高さで固定可能に、前記固定穴及び/又は前記ピンポールアダプタに、ストッパーを有する請求項5乃至9のいずれかに記載のキャリブレーション治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動追尾機能を装備したトータルステーションとヘルメット一体型の測量用ターゲットとを用いた位置検出システムでのキャリブレーションに使用するキャリブレーション治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、建築、土木の技術分野で、現実の施工現場とバーチャルな3DモデルやCAD図面を実物大で重ねて見ることのできるМR(複合現実)デバイスが施工管理に利用され、これが作業員の頭部を保護するヘルメットに搭載されて実用化されている。なお、この種のМRデバイスとしてはマイクロソフト社のHoloLens(登録商標)が一般に知られている。
【0003】
かかるМRデバイスの利用に当たっては、施工現場と3DモデルやCAD図面との位置合わせの精度が問題になっていたところ、この問題も、МRデバイスにトータルステーション(TS)その他の光波方式の測量機及びプリズムなどの測量用ターゲットを連係させることで、解決され、測量用ターゲット(例えば360°プリズム)がヘルメットの最上部に取り付けられ、このターゲットをTSで捕捉して作業者の位置を認識し、МR表示の位置を制御することにより、具体化されている。
このようにしてМRデバイスに施工現場と3DモデルやCAD図面を高精度に重ね合わせることができるようになり、これにより、建築、土木の技術分野での施工管理を大幅に向上させることが期待される。
なお、この種のシステムが特許文献1、2等により提案されている。
【0004】
ところで、このような自動追尾機能を装備したトータルステーションとヘルメット一体型の測量用ターゲットとを用いた位置検出システムでのキャリブレーションは、通常、メーカーのマニュアルに記載されたとおりであり、一般には、測量用ターゲット(プリズム)をピンポール上に取り付けて、測量用ターゲットを測量した後、ヘルメット一体型の測量用ターゲット(プリズム)をヘルメットとともに昇降式の三脚に載せ、水準器や下げ振りを併用して、ピンポール上の測量ターゲットと同じ位置に合わせて測量することにより行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6717476号公報
【特許文献2】特許第6733927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のとおり、自動追尾機能を装備したトータルステーションを含むトータルステーション(TS)とヘルメット一体型の測量用ターゲットとを用いた位置検出システムでの、従来のキャリブレーションでは、測量用ターゲット(プリズム)をピンポール上に取り付けて、測量用ターゲットを測量した後、ヘルメット一体型の測量用ターゲット(プリズム)を昇降式の三脚に水準器や下げ振りを併用して、ピンポール上の測量ターゲットと同じ位置に合わせて測量するため、測量用ターゲットの位置合わせが煩雑な作業になって、その位置合わせに多くの時間(5分から10分程度)を要する、という問題がある。また、測量対象が測量用ターゲット(プリズム)単体からヘルメット一体型の測量用ターゲット(プリズム)に交換されるため、測量対象が変わることの誤差によるキャリブレーションの失敗が多い、という問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、この種のトータルステーション(TS)とヘルメット一体型の測量用ターゲットとを用いた位置検出システムでのキャリブレーションにおいて、測量用ターゲットの付け替えを不要にしてキャリブレーションに要する時間を低減すること、測量対象の交換を不要にしてキャリブレーションの失敗を可及的になくすこと、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、
トータルステーション(TS)と、ヘルメットの最上部に取り付けられるヘルメット一体型の測量用ターゲットとを備え、前記測量機から前記測量用ターゲットに光波を照射しその反射波を受光することにより測量し、前記測量用ターゲットの位置座標を算出する位置検出システムにおいて、前記測量用ターゲットを複数の標尺棒がねじを介して連結されてなるピンポールを使って測量することにより行うキャリブレーションに用いるキャリブレーション治具であって、
前記ヘルメットを支持する台をなす治具本体と、
前記治具本体の天面に形成されたヘルメット設置部と、
前記治具本体の天面と底面との間で前記ヘルメット設置部に設置される前記ヘルメット上の前記測量用ターゲットの中心と同心上に設けられ、前記ピンポールのねじに係合可能な略筒形構造のピンポール固定部と、
を備え、
キャリブレーションを行う際に、前記ヘルメットを本キャリブレーション治具を介して前記ピンポール上に取り付けて、前記ヘルメット上の前記測量用ターゲットを測量できるようにした、
ことを要旨とする。
【0009】
また、このキャリブレーション治具は、次のような構成を有することが好ましい。
(1)治具本体の高さとヘルメットの高さを合わせた高さはピンポールの標尺棒の長さ単位に一致する。
(2)治具本体は平断面略馬蹄形を呈する環状のプレートからなる。
(3)ヘルメット設置部はヘルメットの底面縁部が嵌合可能に治具本体の天面に溝形に形成される。
(4)ピンポール固定部は、治具本体に筒部を形成してなる固定穴と、前記固定穴に嵌合可能にかつピンポールのねじに被着可能に筒形に形成され、前記ピンポールのねじに装着されるピンポールアダプタとを有してなる。
この場合、ピンポールアダプタはその筒形の内部にピンポールのねじに螺合可能にねじを有する。
ここで、ピンポールアダプタのねじは長ナットからなり、前記ピンポールアダプタの筒形の内部に埋設される。また、これに代えて、ピンポールアダプタのねじは長ねじと長ナットからなり、前記ピンポールアダプタの筒形の内部に埋設されるものとしてもよい。
(5)固定穴、ピンポールアダプタは前記固定穴内での前記ピンポールアダプタの回転を規制可能に角形断面を有する。
(6)固定穴内でのピンポールアダプタの挿入を所定の高さで固定可能に、前記固定穴及び/又は前記ピンポールアダプタに、ストッパーを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のキャリブレーション治具によれば、治具本体がヘルメットを支持可能な台からなり、天面にヘルメット設置部を有し、天面と底面との間でヘルメット設置部に設置されるヘルメット上の測量用ターゲットの中心と同心上にピンポールのねじに係合可能な略筒形構造のピンポール固定部を有し、既述のトータルステーション(TS)とヘルメット一体型の測量用ターゲットとを用いた位置検出システムでのキャリブレーションを、ヘルメットをこのキャリブレーション治具を介してピンポール上に取り付けて、ヘルメット上の測量用ターゲットを測量することにより行うようにしたので、従来のキャリブレーションに必要な測量用ターゲットの付け替えを不要にしてキャリブレーションに要する時間を低減することができ、従来のキャリブレーションに必要な測量対象の交換を不要にしてキャリブレーションの失敗を可及的になくすことができる、という本発明独自の格別な作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るキャリブレーション治具の構成をヘルメット一体型の測量用ターゲット、ピンポールとともに示す斜視図。
【
図2】同治具の特に治具本体の構成示す斜視図((a)は天面側が見た斜視図(b)は底面側から見た斜視図。)。
【
図3】同治具の特にピンポールアダプタの構成を示す斜視図。
【
図4】同治具の特にピンポールアダプタのねじ孔の構成を示す斜視図。
【
図5】同治具の特にピンポールアダプタの別のねじ孔の構成を示す斜視図。
【
図6】同治具の特にピンポールアダプタの別のねじ孔のねじを埋め込む前の構成を示す斜視図。
【
図7】同治具の使用例を示し、同治具によりピンポール上にヘルメット一体型の測量用ターゲットを取り付ける前の斜視図。
【
図8】同治具の使用例を示し、同治具によりピンポール上にヘルメット一体型の測量用ターゲットを取り付ける後の斜視図。
【
図9】同治具の使用例を示し、同治具によりピンポール上に取り付ける手順を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1乃至
図6にこの発明の一実施の形態に係るキャリブレーション治具を示している。
【0013】
図1に示すように、このキャリブレーション治具J(以下、単に治具Jという。)は、トータルステーション(TS)と、ヘルメットHの最上部に取り付けられるヘルメット一体型の測量用ターゲットTとを備え、測量機から測量用ターゲットTに光波を照射しその反射波を受光することにより測量し、測量用ターゲットTの位置座標を算出する位置検出システムにおいて、測量用ターゲットTを複数の標尺棒P1がねじSを介して連結されてなるピンポールPを使って測量することにより行うキャリブレーションに用いるものである。
なお、ここでピンポールPは一般的に知られているもので、一定の長さ(例えば30cm)を有する複数の標尺棒P1が相互間をねじSにより締結、連結されて1本の棒状に形成され、その一部に水準器(図示省略)が併せて付設される。また、各標尺棒P1は一端からねじ(雄ねじ)Sが突出され、他端に各標尺棒P1のねじSに螺合可能にナット(雌ねじ)(図示省略)が埋設され、各標尺棒P1が一方の標尺棒P1のねじSと他方の標尺棒P1のナットとの締結により相互に接合されて連接される。
【0014】
この治具Jは、ヘルメットHを支持する台をなす治具本体1と、治具本体1の天面に形成され、ヘルメットHを水平に設置可能なヘルメット設置部2と、治具本体1の天面と底面との間でヘルメット設置部2に設置されるヘルメットH上の測量用ターゲットTの中心と同心上に設けられ、ピンポールPのねじSに係合可能な略筒形構造のピンポール固定部3とを備えて構成される。
なお、ここで治具Jは合成樹脂により一体に形成される。
【0015】
図1、
図2に示すように、治具本体1はピンポールPの分割単位、すなわち、標尺棒P1の長さ単位に関連する高さを有する台で、この場合、治具本体1の高さとヘルメットHの高さを合わせた高さ(具体的に言えば、ヘルメットHの最上部に取り付けられた測量用ターゲットTの中心と治具本体1の底面の固定穴30の中心まで)がピンポールPの標尺棒P1の1本分の長さに一致し、例えば30cmになっている。また、この場合、治具本体1は平断面略馬蹄形を呈する環状のプレート10からなり、ヘルメットHの底面左右両側縁部(言い換えれば、ヘルメットHの底面開口の左右両側縁部)を支持する側面視略長方形の左プレート12、右プレート13と、ヘルメットHの底面後側縁部(言い換えれば、ヘルメットHの底面開口の後側縁部)を支持する後面視略長方形の後プレート14とを有する、全体として一連の環状のプレート10になっている。また、この治具本体1は、左右の各プレート12、13の前端間に前プレート11が連結され、前プレート11と後プレート14との間に前後方向のリブ15が、左右の各プレート12、13間に左右方向のリブ16が直交して形成されて、これら前プレート11、前後方向、左右方向の各リブ15、16により、環状のプレート10全体が補強される。なお、この治具本体1の場合、左右の各プレート12、13の下部で前後方向中間に下縁部から略三角形の小さい切り欠き120、130が切り込み形成され、左右の各プレート12、13と後プレート14との間にそれぞれ略三角形の比較的大きい三角形の切り欠き140が切り込み形成されており、左右、後の各プレート12、13、14はそれぞれ、略台形に近似する形状を呈している。
【0016】
図1、
図2に示すように、ヘルメット設置部2はヘルメットHの底面縁部(厳密に言い換えれば、ヘルメットHの底面開口の縁部)が嵌合可能に、治具本体1の天面にヘルメットHの底面縁部の形状と一致する溝形に形成される。この場合、治具本体1をなす環状のプレート10の上縁部が断面略L字形の溝形に形成されて、この上縁部の外周縁部側から上方に垂直に突出されるヘルメットずれ止め部101と、この上縁部上でヘルメットずれ止め部101に隣接して内周縁部側に水平に形成されるヘルメット載置部102とを有してなる。なお、この場合、ヘルメットずれ止め部101は上縁部の外周縁部側に設けられて、ヘルメットHの外周面の下端部に外側から係合して、ヘルメットHのずれを防止するものとしたが、このヘルメットずれ止め部は上縁部の内周縁部側から上方に垂直に突出され、ヘルメット載置部がこの上縁部上でヘルメットずれ止め部に隣接して外周縁部側に水平に形成されて、ヘルメットHの内周面の下端部を内側から係合して、ヘルメットHのずれを防止するものとしてもよい。
【0017】
図1に示すように、ピンポール固定部3は、治具本体1に筒部31を形成してなる固定穴30と、この固定穴30に嵌合可能にかつピンポールPのねじSに被着可能に筒形に形成され、ピンポールPのねじSに装着されるピンポールアダプタ32とを有してなる。この場合、治具本体1の筒部31は全体がピンポールアダプタ32の外径よりも大きくピンポールアダプタ32の全長よりも少し長い、上部を閉塞され、下部が開口された筒形に形成され、その内周面、すなわち、固定穴30はピンポールアダプタ32と略同じ長さでピンポールアダプタ32と略同じ断面形状に形成される。
【0018】
このピンポール固定部3の場合、
図2に示すように、筒部31は環状のプレート10内の前後方向のリブ15と左右方向のリブ16の交差部に形成されて、この交差部に固定穴30が設けられる。この場合、固定穴30は、ヘルメットH最上部に取り付けられる測量用ターゲットTの中心と治具J底面の固定穴30の開口中心が垂直線上にあるように、形成される。ピンポールアダプタ32はこの固定穴30に嵌合可能な外形を有する筒形に形成される。この場合、ピンポールアダプタ32の外部形状と固定穴30の内部形状が一致される。
【0019】
このピンポール固定部3の場合、
図2、
図3に示すように、固定穴30、ピンポールアダプタ32は固定穴30内でのピンポールアダプタ32の回転を規制可能に、それぞれが角形断面を有する。この場合、固定穴30はピンポールアダプタ32の水平方向の回転を抑止する断面6角形に形成され、ピンポールアダプタ32は外周面が固定穴30の断面6角形に対応する断面6角形に形成される。
【0020】
このピンポール固定部3の場合、
図2、
図3に示すように、固定穴30内でのピンポールアダプタ32の挿入を所定の高さで固定可能に、固定穴30及び/又はピンポールアダプタ32に、ストッパー4を有する。この場合、固定穴30は上部側が小径で下部側が大径の2段階に変化する段付き形状に形成され、上部側の小径部と下部側の大径部との間に段部が設けられる。ピンポールアダプタ32はこの固定穴30に嵌合可能に上部側が小径で下部側が大径の段付き構造に形成され、上部側の小径部321と下部側の大径部323との間に段部322が設けられる。これらの段部がストッパー4をなす。
【0021】
このピンポール固定部3の場合、
図2、
図3に示すように、ピンポールアダプタ32が固定穴30へ円滑に挿入可能に先端から後端方向に向けて漸次拡径されるテーパ形状に形成される。この場合、固定穴30は上部側の小径部の頂部が上部から下部に向けて漸次拡径されるテーパ形状でこの頂部の下方を直状(直線状)に、段部が上部から下部に向けて漸次拡径されるテーパ形状に、下部側の大径部が直状(直線状)に、それぞれ、形成される。これに対応して、ピンポールアダプタ32は上部側の小径部321の頂部が上部から下部に向けて漸次拡径されるテーパ形状でこの頂部の下方を直状(直線状)に、段部322が上部から下部に向けて漸次拡径されるテーパ形状に、下部側の大径部323が直状(直線状)に、それぞれ、形成される。
なお、固定穴30は上部側の小径部が上部から下部に向けて漸次拡径されるテーパ形状に、段部が上部から下部に向けて漸次拡径されるテーパ形状に、下部側の大径部が上部から下部に向けて漸次拡径されるテーパ形状に、それぞれ、先端側が絞られて形成されてもよい。これに対応して、ピンポールアダプタ32は上部側の小径部321が上部から下部に向けて漸次拡径されるテーパ形状に、段部322が上部から下部に向けて漸次拡径されるテーパ形状に、下部側の大径部323が上部から下部に向けて漸次拡径されるテーパ形状に、それぞれ、先端側が絞られて形成されてもよい。
【0022】
このピンポール固定部3の場合、
図4に示すように、ピンポールアダプタ32はその筒形の内部にピンポールPのねじSに螺合可能にねじS1を有する。
【0023】
この場合、ねじS1は、
図1に示すように、長ナットからなり、長ナットがピンポールアダプタ32の筒形の内部に下面から挿着されて埋設される。したがって、
図4に示すように、ピンポールアダプタ32は下面が開口されて、開口内部がねじ孔になっている。なお、このねじS1は、
図5に示すように、長ねじと長ナットからなり、ピンポールアダプタ32の筒形の内部に埋め込み内装されるものとしてもよい。このようにして長ねじと長ナットとにより伸縮式とすることにより、治具J底面のねじ孔からピンポールアダプタP最上部までの長さ、つまりピンポールアダプタ32の全長を調整可能とし、治具J底面からヘルメットH最上部の測量用ターゲットTの中心までの高さを調整できるようにする。なお、この場合、ピンポールアダプタ32の内部は長ねじが配置される小径部と長ナットが配置される大径部とからなる段付き構造をなす。
【0024】
この治具Jは、かかる構成からなり、トータルステーション(TS)とヘルメット一体型の測量用ターゲットTとを用いる位置検出システムにおいて、一般的なピンポールPを使ってキャリブレーションを行う際に、ヘルメットHをこの治具Jを介してピンポールP上に直接取り付けて、ヘルメットH上の測量用ターゲットTを測量できるようになっている。
【0025】
図7、
図8にこの治具の使用例を示している。
図9にこの治具をピンポールに取り付ける手順を示している。
図7において、Pはピンポールである。このピンポールPは、既述のとおり複数の標尺棒P1が相互にねじSを介して締結されて、同一の軸線上に連結され、さらに最下部の標尺棒P1に、下端に測定部を有する石突きP2が同様にねじSを介して締結されて、同一直線上に連結され、所定の長さ(高さ)にして構成される。Tはヘルメット一体型の測量用ターゲットである。この測量用ターゲットTは360°プリズムで、360°プリズムがヘルメットHの最上部に取り付けられる。この場合、なお、DはМRデバイスで、d1は透過型ディスプレイ、d2はカメラ、デプスセンサ、d3はジャイロ、処理ユニット、通信ユニットである。
【0026】
この治具Jを使用する場合、
図7に示すように、ピンポールPの標尺棒P1から突出されるねじSをヘルメット一体型の測量用ターゲットTの取付部として使用し、この取付部に、治具Jを用いて、測量用ターゲットTをヘルメットHとともに取り付ける。
【0027】
ここでまず、
図9(1)に示すように、最上部の標尺棒P1のねじSにピンポールアダプタ32を被着する。
【0028】
この場合、既述のとおり、ピンポールアダプタ32の下面から内部軸心上にねじS1をなすナットが埋設されているので、最上部の標尺棒P1のねじSにピンポールアダプタ32をナットを締結して被せ付ければよい。このようにピンポールアダプタ32をねじSで取り付けるので、このピンポールアダプタ32の取り付けを容易かつ確実に行うことができる。
【0029】
そして、
図9(2)に示すように、このピンポールアダプタ32を介して最上部の標尺棒P1上に治具Jを取り付ける。この場合、治具Jを最上部の標尺棒P1の上から被せるようにして、治具Jの固定穴30にピンポールアダプタ32を挿入すればよく、挿入するだけで、治具JがピンポールPの最上部に取り付けられる。
【0030】
治具Jの固定穴30、ピンポールアダプタ32、それぞれをテーパ形状とすることにより、治具Jの固定穴30にピンポールアダプタ32を挿入しやすく、治具Jの取り付けを容易かつ円滑に行うようにすることもできる。
【0031】
また、治具Jの固定穴30、ピンポールアダプタ32、それぞれのストッパー4、すなわち段付き構造により、治具Jの固定穴30にピンポールアダプタ32を所定の高さに簡単かつ確実に固定することができる。
【0032】
さらにこの場合、治具Jの固定穴30、ピンポールアダプタ32、それぞれの角形断面(6角形断面)により、固定穴30内でのピンポールアダプタ32の水平方向の回転を抑止して、治具JをピンポールP上に安定的に固定することができる。
【0033】
なお、治具Jの高さをピンポールPの標尺棒P1の長さ単位に関連付けているので、治具JのピンポールP上に取り付け後の高さを確実かつ簡易に調整することができる。
【0034】
このようにしてピンポールP上に治具Jを取り付けて、
図8に示すように、この治具J上にヘルメット一体型の測量用ターゲットTをヘルメットHとともに設置する。すなわち、ヘルメットHを治具本体1天面のヘルメット設置部2に載せればよい。
【0035】
この場合、ヘルメット設置部2の略L字形の断面形状によりヘルメットHをその外形に沿って嵌め込み、ずれ止めするので、ヘルメットHを治具本体1天面のヘルメット設置部2に載せるだけで、ヘルメットHを治具J上に位置決めして、ヘルメットH上の測量用ターゲットTをピンポールPと同一の軸線上に配置することができる。
【0036】
かくして、この治具Jにより、測量用ターゲットTをヘルメットHとともにピンポールPの先端と関連付けた位置に固定し、キャリブレーションを行うようにしてある。
したがって、測量機のキャリブレーションを行うに当たり、ピンポールPの石突きP2の測定部を基準点に立て、ピンポールPを丸型気泡管等の水準器(図示省略)により鉛直に立てればよい。ヘルメット一体型の測量用ターゲットTを取り付けたピンポールPを基準点に鉛直に立てるだけで、ヘルメット一体型の測量用ターゲットTを基準点に対して鉛直上に所定の高さに配置することができる。
【0037】
以上説明したように、この治具Jによれば、治具本体1がヘルメットHを支持可能な台からなり、治具本体1の天面にヘルメットHを水平に設置可能なヘルメット設置部2を有し、治具本体1の天面と底面との間でヘルメット設置部2に設置されるヘルメットH上の測量用ターゲットTの中心と同心上にピンポールPのねじSに係合可能な略筒形構造のピンポール固定部3を有し、既述のトータルステーション(TS)とヘルメット一体型の測量用ターゲットTとを用いた位置検出システムでのキャリブレーションを、ヘルメットHをこの治具Jを介してピンポールP上に取り付けて、ヘルメットH上の測量用ターゲットTを測量することにより行うようにしたので、測量用ターゲットTを付け替え又は交換せずに、キャリブレーションを行うことができる。すなわち、従来のキャリブレーションに必要な測量用ターゲットTの付け替えを不要にすることができ、従来のキャリブレーションに必要な測量対象の交換を不要にすることができる。したがって、従来のキャリブレーションに必要な測量用ターゲットTの付け替えを不要にしたことで、測量用ターゲットTの付け替えに要した時間を削減して、キャリブレーションに要する時間を低減することができる。この場合、キャリブレーションに要する時間を1分程度にすることができる。また、従来のキャリブレーションに必要な測量対象の交換を不要にしたことで、測量対象の交換に起因するキャリブレーションの失敗を略皆無にすることができる。
【0038】
なお、この実施の形態では、治具Jは合成樹脂により一体に形成されるものとしたが、この治具Jは合成樹脂に代えて、例えば金属材により形成されてもよく、治具Jの材料は特に限定されない。また、この治具Jは一体形成でなくてもよい。
【符号の説明】
【0039】
J キャリブレーション治具
H ヘルメット
T 測量用ターゲット
P ピンポール
P1 標尺棒
P2 石突き
S ねじ
D МRデバイス
d1 透過型ディスプレイ
d2 カメラ、デプスセンサ
d3 ジャイロ、処理ユニット、通信ユニット
1 治具本体
10 環状のプレート
11 前プレート
12 左プレート
120 切り欠き
13 右プレート
130 切り欠き
14 後プレート
140 切り欠き
15 前後方向のリブ
16 左右方向のリブ
2 ヘルメット設置部
201 ヘルメットずれ止め部
202 ヘルメット載置部
3 ピンポール固定部
30 固定穴
31 筒部
32 ピンポールアダプタ
321 小径部
322 段部
323 大径部
4 ストッパー
S1 ねじ