(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102729
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナ
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003417
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】川本 哲裕
(72)【発明者】
【氏名】田村 亨
(72)【発明者】
【氏名】服部 将之
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA11
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】電圧フリッカ現象を誘発しない単独運転検出装置を提供する。
【解決手段】パワーコンディショナ1の単独運転を検出する単独運転検出装置3において、パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fを検出する周波数検出部31と、パワーコンディショナ1の出力電圧の大きさを検出する電圧検出部32と、周波数検出部31が検出した周波数fが第1の判定条件に一致したか否かを判定する第1判定部331と、電圧検出部32が検出した出力電圧の大きさが第2の判定条件に一致したか否かを判定する第2判定部332と、第1判定部331が第1の判定条件に一致したと判定し、かつ、第2判定部332が第2の判定条件に一致したと判定した状態が所定時間以上継続した場合に、単独運転状態であると判定する論理積部333とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出装置であって、
前記パワーコンディショナの出力電圧の周波数を検出する第1検出部と、
前記パワーコンディショナの出力電圧の大きさを検出する第2検出部と、
前記第1検出部が検出した周波数が第1の判定条件に一致したか否かを判定する第1判定部と、
前記第2検出部が検出した出力電圧の大きさが第2の判定条件に一致したか否かを判定する第2判定部と、
前記第1判定部が前記第1の判定条件に一致したと判定し、かつ、前記第2判定部が前記第2の判定条件に一致したと判定した状態が所定時間以上継続した場合に、単独運転状態であると判定する単独運転判定部と、
を備えている、
ことを特徴とする単独運転検出装置。
【請求項2】
前記第1の判定条件は、前記周波数の変化量が閾値以上になったことである、
請求項1に記載の単独運転検出装置。
【請求項3】
前記第2の判定条件は、前記出力電圧の大きさが所定範囲に収まらなくなったことである、
請求項1または2に記載の単独運転検出装置。
【請求項4】
パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出装置であって、
前記パワーコンディショナの出力電圧の周波数を検出する第1検出部と、
前記パワーコンディショナの三相の出力電圧の不平衡率を検出する第2検出部と、
前記第1検出部が検出した周波数が第1の判定条件に一致したか否かを判定する第1判定部と、
前記第2検出部が検出した不平衡率が第2の判定条件に一致したか否かを判定する第2判定部と、
前記第1判定部が前記第1の判定条件に一致したと判定し、かつ、前記第2判定部が前記第2の判定条件に一致したと判定した状態が所定時間以上継続した場合に、単独運転状態であると判定する単独運転判定部と、
を備えている、
ことを特徴とする単独運転検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の単独運転検出装置を備えている、
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項6】
パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出方法であって、
前記パワーコンディショナの出力電圧の周波数を検出する第1検出工程と、
前記パワーコンディショナの出力電圧の大きさを検出する第2検出工程と、
前記第1検出工程で検出した周波数が第1の判定条件に一致したか否かを判定する第1判定工程と、
前記第2検出工程で検出した出力電圧の大きさが第2の判定条件に一致したか否かを判定する第2判定工程と、
前記第1判定工程で前記第1の判定条件に一致したと判定し、かつ、前記第2判定工程で前記第2の判定条件に一致したと判定した状態が所定時間以上継続した場合に、単独運転状態であると判定する単独運転判定工程と、
を備えている、
ことを特徴とする単独運転検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
分散形電源を電力系統に接続する場合、パワーコンディショナは、単独運転を防止するための単独運転検出装置を備えている必要がある。単独運転とは、分散形電源が接続された配電系統が電力系統から切り離された場合に、分散形電源が配電系統の負荷に電力の供給を継続することである。単独運転検出装置は、単独運転を検出した場合、分散形電源を配電系統から切り離して、分散形電源から負荷への電力の供給を停止させる。単独運転の検出方法には受動方式と能動方式とがあり、様々な検出方法が開発されている。
【0003】
系統連系規程(JEAC 9701-2016)では、単独運転の能動方式の検出方法として、周波数シフト方式、スリップモード周波数シフト方式、無効電力変動方式、およびQCモード周波数シフト方式などが認められている。これらの方式は、従来型能動的方式と呼ばれている。系統連系規程では、従来型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、0.5秒以上1秒以内(低圧配電線との連系の場合)にパワーコンディショナを配電系統から切り離すように定められている。また、系統連系規程では、従来型能動的方式より検出を高速化させた方式として、ステップ注入付き周波数フィードバック方式が認められている。当該方式は、新型能動的方式と呼ばれている。系統連系規程では、新型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、パワーコンディショナを配電系統から瞬時に切り離すように定められており、一般的には、0.1秒以上0.2秒以内に切り離すように設定されている。これらの各方式は、配電系統に積極的に無効電力を代表とする能動信号を注入し、検出された周波数の変化に応じて単独運転を検出する。したがって、配電系統に多数の分散形電源が接続されている場合、配電系統には大量の無効電力が注入される。また、無効電力の注入量は、周波数偏差に応じて増加される。したがって、系統擾乱時に各分散形電源が無効電力の注入量を増加させることで、系統電圧が振動し、電圧フリッカ現象が発生する場合がある。
【0004】
電圧フリッカ現象の発生を抑制するための対策として、無効電力の注入量を抑制可能な単独運転検出装置が開発されている。例えば、特許文献1には、単独運転の可能性が低い場合に無効電力の注入量を抑制する単独運転検出装置が開示されている。また、特許文献2には、遅れ位相の無効電力と進み位相の無効電力とを交互に注入し、系統周波数の移動平均値の変化量の絶対値を積算した積算値に基づいて単独運転を検出することで、無効電力の注入量を低減しつつ、単独運転の誤検出や検出遅延を防止できる単独運転検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-93020号公報
【特許文献2】特開2019-92328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に開示された単独運転検出装置は、注入量を抑制しているが、無効電力の注入を行っている。したがって、これらの単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを、配電系統に新たに接続した場合、配電系統に注入される無効電力は増加する。よって、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナがすでに多数接続されている配電系統に、このようなパワーコンディショナを接続した場合でも、電圧フリッカ現象を誘発することになる。
【0007】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、電圧フリッカ現象を誘発しない単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面によって提供される単独運転検出装置は、パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出装置であって、前記パワーコンディショナの出力電圧の周波数を検出する第1検出部と、前記パワーコンディショナの出力電圧の大きさを検出する第2検出部と、前記第1検出部が検出した周波数が第1の判定条件に一致したか否かを判定する第1判定部と、前記第2検出部が検出した出力電圧の大きさが第2の判定条件に一致したか否かを判定する第2判定部と、前記第1判定部が前記第1の判定条件に一致したと判定し、かつ、前記第2判定部が前記第2の判定条件に一致したと判定した状態が所定時間以上継続した場合に、単独運転状態であると判定する単独運転判定部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1の判定条件は、前記周波数の変化量が閾値以上になったことである。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第2の判定条件は、前記出力電圧の大きさが所定範囲に収まらなくなったことである。
【0012】
本発明の第2の側面によって提供される単独運転検出装置は、パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出装置であって、前記パワーコンディショナの出力電圧の周波数を検出する第1検出部と、前記パワーコンディショナの三相の出力電圧の不平衡率を検出する第2検出部と、前記第1検出部が検出した周波数が第1の判定条件に一致したか否かを判定する第1判定部と、前記第2検出部が検出した不平衡率が第2の判定条件に一致したか否かを判定する第2判定部と、前記第1判定部が前記第1の判定条件に一致したと判定し、かつ、前記第2判定部が前記第2の判定条件に一致したと判定した状態が所定時間以上継続した場合に、単独運転状態であると判定する単独運転判定部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の側面によって提供されるパワーコンディショナは、本発明の第1および第2の側面によって提供される単独運転検出装置を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の側面によって提供される単独運転検出方法は、パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出方法であって、前記パワーコンディショナの出力電圧の周波数を検出する第1検出工程と、前記パワーコンディショナの出力電圧の大きさを検出する第2検出工程と、前記第1検出工程で検出した周波数が第1の判定条件に一致したか否かを判定する第1判定工程と、前記第2検出工程で検出した出力電圧の大きさが第2の判定条件に一致したか否かを判定する第2判定工程と、前記第1判定工程で前記第1の判定条件に一致したと判定し、かつ、前記第2判定工程で前記第2の判定条件に一致したと判定した状態が所定時間以上継続した場合に、単独運転状態であると判定する単独運転判定工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、第1判定部が、パワーコンディショナの出力電圧の周波数が第1の判定条件に一致したと判定し、かつ、第2判定部が、パワーコンディショナの出力電圧の大きさが第2の判定条件に一致したと判定した場合に、単独運転状態であると判定される。本発明に係る単独運転検出装置は、他の単独運転検出装置が配電系統に無効電力などの能動信号を注入したことによる配電系統での系統電圧の周波数の変化および系統電圧の大きさの変化に応じて単独運転を検出するので、配電系統に無効電力を注入しない。したがって、本発明に係る単独運転検出装置は、電圧フリッカ現象を誘発しない。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示している。
【
図2】単独運転検出装置が行う単独運転判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図3】パワーコンディショナの出力電圧の周波数および電圧実効値の変化を示すタイムチャートであり、従来型電源および新型電源が接続された配電系統が停電状態になった場合を示している。
【
図4】パワーコンディショナの出力電圧の周波数および電圧実効値の変化を示すタイムチャートであり、従来型電源のみが接続された配電系統が停電状態になった場合を示している。
【
図5】パワーコンディショナの出力電圧の周波数および電圧実効値の変化を示すタイムチャートであり、系統擾乱が発生した場合を示している。
【
図6】第2実施形態に係る単独運転検出装置を説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示している。
【0020】
パワーコンディショナ1は、直流電源Aが出力する直流電力を交流電力に変換して、接続している配電系統Cに出力する。パワーコンディショナ1および直流電源Aを合わせたものが分散形電源である。配電系統Cは、高圧配電系統であり、負荷L、従来型電源B1および新型電源B2が接続されている。負荷Lは、電力の供給を受ける需要家である。従来型電源B1は、従来型能動的方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。なお、本実施形態では、従来型電源B1の単独運転検出装置が、周波数シフト方式で単独運転を検出する場合を例として説明する。なお、従来型電源B1の単独運転検出装置の検出方式は限定されない。新型電源B2は、新型能動的方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。配電系統C(および変圧器を介して配電系統Cに接続された低圧配電系統)には、負荷L、従来型電源B1、および新型電源B2がそれぞれ複数ずつ接続されているが、
図1においては、代表して1個ずつ記載している。配電系統Cは、遮断器を介して電力系統に接続されている。電力系統で事故が発生した場合などに、電力系統側に設けられた保護装置によって遮断器が開放されて、配電系統Cが電力系統から切り離される(停電状態)。これにより、電力系統から切り離された配電系統Cに接続しているパワーコンディショナ1が単独運転状態になる。
【0021】
直流電源Aは、直流電力を出力するものであり、例えば太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源Aは、生成した直流電力を、パワーコンディショナ1に出力する。なお、直流電源Aは、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源Aは、燃料電池または蓄電池などであってもよいし、ディーゼルエンジン発電機または風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
【0022】
パワーコンディショナ1は、インバータ装置2、単独運転検出装置3、連系用遮断器4、および電圧センサ5を備えている。パワーコンディショナ1は、連系用遮断器4を介して、配電系統Cに接続している。
【0023】
インバータ装置2は、直流電源Aから入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。インバータ装置2は、例えば、図示しないインバータ回路、フィルタ回路、および制御回路を備えている。インバータ回路は、制御回路から入力されるPWM信号に基づいてスイッチング素子(図示しない)のオンとオフとを切り替えることで直流電力を交流電力に変換する。フィルタ回路は、スイッチングによる高周波成分を除去する。制御回路は、インバータ回路を制御する。制御回路は、インバータ装置2の出力電流を制御するPWM信号を生成して、インバータ回路に出力する。制御回路は、単独運転検出装置3から後述するゲートブロック信号を入力された場合、PWM信号の生成を停止する。この場合、インバータ回路はスイッチングを停止するので、インバータ装置2は、電力変換動作を停止する。なお、インバータ装置2の構成は限定されない。
【0024】
連系用遮断器4は、パワーコンディショナ1と配電系統Cとの接続を遮断する。連系用遮断器4は通常時は閉路されており、パワーコンディショナ1は配電系統Cに接続している。しかし、単独運転検出装置3から後述する開放指令が入力された場合、連系用遮断器4は開放され、パワーコンディショナ1が配電系統Cから切り離される。これにより、パワーコンディショナ1の単独運転状態が回避される。
【0025】
電圧センサ5は、パワーコンディショナ1の出力電圧を検出し、検出した電圧信号を単独運転検出装置3に入力する。なお、電圧センサ5は、インバータ装置2の制御用と兼用であってもよい。この場合、電圧センサ5は、検出した電圧信号をインバータ装置2の制御回路にも入力する。
【0026】
単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1の単独運転を検出する。単独運転検出装置3は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて単独運転を検出し、単独運転を検出した場合、パワーコンディショナ1を停止させて、配電系統Cから切り離す。単独運転検出装置3は、周波数検出部31、電圧検出部32、判定部33、および停止処理部34を備えている。
【0027】
周波数検出部31は、パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fを検出する。周波数検出部31は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、周波数fを検出する。周波数検出部31は、例えばゼロクロス点間カウント方式により周波数を検出する。ゼロクロス点間カウント方式は、交流電圧の瞬時値がゼロレベルを交差する点(ゼロクロス点)間の時間を計測し、計測された時間の逆数から周波数を検出する方法である。なお、周波数検出部31の周波数検出方法は限定されない。例えば、周波数検出部31は、乗算式PLL(Phase Locked Loop)を用いて周波数を検出してもよい。周波数検出部31は、検出した周波数fを、判定部33に出力する。
【0028】
電圧検出部32は、パワーコンディショナ1の出力電圧の電圧実効値vを検出する。電圧検出部32は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、電圧実効値vを検出する。電圧検出部32は、検出した電圧実効値vを、判定部33に出力する。なお、電圧検出部32は、電圧の最大値または平均値など電圧の大きさを表す他の指標を検出してもよい。
【0029】
判定部33は、周波数検出部31から入力される周波数f、および、電圧検出部32から入力される電圧実効値vに基づいて、単独運転状態であるか否かを判定する。判定部33は、第1判定部331、第2判定部332、論理積部333、および時間判定部334を備えている。
【0030】
第1判定部331は、周波数fがあらかじめ設定された第1の判定条件に一致したか否かを判定する。第1の判定条件は、単独運転が発生したと断定できる条件が設定されている。単独運転が発生した場合、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、注入する無効電力を増加させて配電系統Cの電圧の周波数を変化させ、周波数が閾値を超えた場合に単独運転を検出する。第1の判定条件は、このときの周波数の変化に基づいて設定されている。
【0031】
本実施形態では、第1の判定条件は、周波数fの変化量Δfが閾値Δf1以上になったことである。第1判定部331は、所定のサイクル(限定されないが例えば20ms程度)ごとに、周波数fの変化量Δfを算出する。第1判定部331は、周波数検出部31から入力された周波数fと、1サイクル前に入力された周波数fとの差の絶対値を周波数fの変化量Δfとして算出する。閾値Δf1は、単独運転が発生して、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置による無効電力の注入によって周波数fが変化していると判断できる値が設定される。例えば、通常時の周波数fが60Hzの場合、閾値Δf1は2.4Hz程度が設定される。なお、閾値Δf1は限定されず、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。
【0032】
本実施形態では、第1判定部331は、算出した変化量Δfが閾値Δf1以上になった場合に、第1の判定条件に一致したと判定する。第1判定部331は、第1の判定条件に一致したと判定した場合、ハイレベル信号である第1検出信号を論理積部333に出力する。なお、第1の判定条件は限定されず、単独運転が発生したと断定できる条件であればよい。例えば、変化量Δfが閾値Δf1をはさんで上下した場合に、第1判定部331が第1検出信号を出力する状態としない状態とを繰り返すことを防ぐために、第1の判定条件は、変化量Δfが閾値Δf1以上になった状態が判定時限だけ継続したこととしてもよい。
【0033】
第2判定部332は、電圧検出部32から入力される電圧実効値vが第2の判定条件に一致したか否かを判定する。第2の判定条件も、単独運転が発生したと断定できる条件が設定されている。単独運転が発生した場合、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、注入する無効電力を増加させる。これにより、パワーコンディショナ1の出力電圧が大きく変化する。第2の判定条件は、このときのパワーコンディショナ1の出力電圧に基づいて設定されている。
【0034】
本実施形態では、第2の判定条件は、電圧検出部32から入力される電圧実効値vが所定範囲に収まらなくなったことである。当該所定範囲は、パワーコンディショナ1の定格電圧の電圧実効値v0を中心とした範囲であり、v1(<v0)以上、v2(>v0)以下の範囲である。なお、v1およびv2は限定されない。所定範囲は、単独運転が発生した場合に電圧実効値vが収まらない範囲が設定され、例えば、定格電圧の80%以上120%以下の範囲が所定範囲として設定される。なお、所定範囲は、この範囲に限定されず、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。
【0035】
本実施形態では、第2判定部332は、電圧実効値vがv2より大きくなった場合、または、電圧実効値vがv1より小さくなった場合に、第2の判定条件に一致したと判定する。第2判定部332は、第2の判定条件に一致したと判定した場合、ハイレベル信号である第2検出信号を論理積部333に出力する。なお、第2の判定条件は限定されず、単独運転が発生したと断定できる条件であればよい。例えば、電圧実効値vがv1(v2)をはさんで上下した場合に、第2判定部332が第2検出信号を出力する状態としない状態とを繰り返すことを防ぐために、第2の判定条件は、電圧実効値vが所定範囲に収まらなくなった状態が判定時限だけ継続したこととしてもよい。
【0036】
論理積部333は、第1判定部331から入力される信号と第2判定部332から入力される信号との論理積信号を生成して時間判定部334に出力する。したがって、論理積部333は、第1判定部331から第1検出信号(ハイレベル信号)を入力され、第2判定部332から第2検出信号(ハイレベル信号)を入力された場合に、論理積信号としてハイレベル信号を時間判定部334に出力する。
【0037】
時間判定部334は、論理積部333から入力される論理積信号がハイレベル信号になってからの時間を計時し、計時時間が所定時間T0を経過したときに、単独運転検出信号を停止処理部34に出力する。
【0038】
単独運転以外の系統擾乱などによっても、周波数fが変化して変化量Δfが閾値Δf1以上になる場合があるし、電圧実効値vが変化して所定範囲を超える場合がある。論理積部333は、第1判定部331から入力される信号と第2判定部332から入力される信号との論理積信号を生成するので、どちらか一方が誤判定した場合でも他方が正しく判定すれば、誤判定を防止できる。また、両方が誤判定をした場合でも、系統擾乱などに基づく誤判定の時間は短い。所定時間T0は、系統擾乱などによる周波数fおよび電圧実効値vの変化を単独運転と判定しないために設定されている。本実施形態では、所定時間T0は、例えば0.08秒とされている。なお、所定時間T0は限定されない。
【0039】
停止処理部34は、判定部33から単独運転検出信号を入力された場合に、パワーコンディショナ1の停止処理を行う。具体的には、停止処理部34は、インバータ装置2にゲートブロック信号を出力して、インバータ装置2の電力変換動作を停止させる。また、停止処理部34は、連系用遮断器4に開放指令を出力して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離させる。
【0040】
系統連系規程では、高圧配電系統に接続されたパワーコンディショナは、単独運転状態になった場合に3秒以内に切り離されるように定められている。新型電源B2は停電から0.2秒以内に単独運転を検出して配電系統Cから切り離され、従来型電源B1は停電から1秒以内に単独運転を検出して配電系統Cから切り離される。したがって、従来型電源B1および新型電源B2が無効電力の注入量を増加させたことで変化する系統周波数の変化(系統電圧の変化)をとらえてから、所定時間T0の経過を待ったとしても、単独運転検出装置3は、3秒以内にパワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離すことができる。
【0041】
なお、単独運転検出装置3は、アナログ回路として実現してもよいし、ディジタル回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを単独運転検出装置3として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0042】
図2は、単独運転検出装置3の判定部33が行う単独運転判定処理を説明するためのフローチャートである。単独運転判定処理は、第1の判定条件、第2の判定条件、および時間判定に基づいて、単独運転状態であるか否かを判定する。単独運転判定処理は、パワーコンディショナ1が配電系統Cに接続している状態で、インバータ装置2が電力変換動作を開始したときに実行される。
【0043】
図2(a)は、第1判定部331が行う処理を示している。まず、周波数検出部31によって検出された周波数fに基づいて、周波数fの変化量Δfが算出される(S1)。次に、変化量Δfが閾値Δf
1以上であるか否かが判別される(S2)。変化量Δfが閾値Δf
1未満である場合(S2:NO)、ステップS1に戻って、ステップS1,S2の処理が繰り返される。一方、変化量Δfが閾値Δf
1以上である場合(S2:YES)、第1の判定条件に一致したと判定され、第1検出信号が出力されて(S3)、当該処理は終了する。
【0044】
図2(b)は、第2判定部332が行う処理を示している。まず、電圧検出部32によって検出された電圧実効値vが所定範囲(v
1≦v≦v
2)に収まっているか否かが判別される(S11)。所定範囲に収まっている場合(S11:YES)、ステップS11に戻って、ステップS11の判別が繰り返される。一方、所定範囲に収まっていない場合(S11:NO)、第2の判定条件に一致したと判定され、第2検出信号が出力されて(S12)、当該処理は終了する。
【0045】
図2(c)は、論理積部333および時間判定部334が行う処理を示している。まず、第1判定部331から論理積部333に第1検出信号が入力されたか否かが判別される(S21)。第1検出信号が入力されていない場合(S21:NO)、ステップS21に戻って、ステップS21の判別が繰り返される。一方、第1検出信号が入力された場合(S21:YES)、第2判定部332から論理積部333に第2検出信号が入力されたか否かが判別される(S22)。第2検出信号が入力されていない場合(S22:NO)、ステップS21に戻って、ステップS21,S22の判別が繰り返される。一方、第2検出信号が入力された場合(S22:YES)、第1の判定条件に一致し、かつ、第2の判定条件に一致したとして、計時が開始される(S23)。
【0046】
次に、計時された時間が所定時間T0以上になったか否かが判別される(S24)。所定時間T0以上になっていない場合(S24:NO)、第1判定部331から論理積部333に第1検出信号が入力されたか否かが判別される(S25)。第1検出信号が入力されていない場合(S25:NO)、ステップS21に戻って、ステップS21の判別が繰り返される。なお、この場合、計時は終了されて、計時された時間はゼロにクリアされる。一方、第1検出信号が入力された場合(S25:YES)、第2判定部332から論理積部333に第2検出信号が入力されたか否かが判別される(S26)。第2検出信号が入力されていない場合(S26:NO)、ステップS21に戻って、ステップS21の判別が繰り返される。なお、この場合、計時は終了されて、計時された時間はゼロにクリアされる。一方、第2検出信号が入力された場合(S26:YES)、ステップS24に戻って、ステップS24~S26の判別が繰り返される。
【0047】
ステップS24において、計時された時間が所定時間T0以上になった場合(S24:YES)、単独運転検出信号が出力されて(S27)、当該処理は終了する。
【0048】
停止処理部34は、判定部33から単独運転検出信号を入力された場合に、停止処理を行う。停止処理では、ゲートブロック信号がインバータ装置2に出力され、開放指令が連系用遮断器4に出力される。なお、
図2の各フローチャートに示す処理は一例であって、単独運転検出装置3の判定部33が行う単独運転判定処理は上述したものに限定されない。
【0049】
図3および
図4は、
図1に示す配電系統Cが停電状態になって、パワーコンディショナ1が単独運転状態になったときの、出力電圧の周波数fおよび電圧実効値vの変化を示すタイムチャートである。各図において、横軸は、停電発生を0秒とし、その後の経過時間を示している。なお、本明細書で参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0050】
図3は、配電系統Cに、従来型電源B1および新型電源B2が接続されている場合(
図1参照)を示している。なお、配電系統Cに、従来型電源B1が接続されておらず、新型電源B2だけが接続されている場合も同様である。
図3(a)は、周波数fの変化を示している。
図3(b)は、周波数fの変化量Δfの変化を示している。
図3(c)は、電圧実効値vの変化を示している。
【0051】
停電が発生すると配電系統Cの系統周波数が若干変化する。新型電源B2は、その周波数変化をとらえて無効電力を注入し、系統周波数を上昇または下降させる。
図3(a)では、系統周波数が上昇した場合を示している。なお、後述する
図4(a)および
図5(a)でも、系統周波数が上昇する場合を示す。新型電源B2は、一般的に、停電から0.1秒以上0.2秒以内に単独運転を検出して配電系統Cから切り離される。したがって、停電発生から無効電力が注入され、系統周波数は上昇する。パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fは系統周波数に一致するので、
図3(a)に示すように、少なくとも停電発生から0.1秒までの間、周波数fは上昇する。その後の周波数fの変化は、配電系統Cに接続された従来型電源B1および新型電源B2の数および容量、ならびに、負荷Lの数および大きさなどによって異なる。周波数fの上昇により、
図3(b)に示すように、周波数fの変化量Δfは、停電発生直後に閾値Δf
1以上になる。第1判定部331は、変化量Δfが閾値Δf
1以上になったときに、第1の判定条件に一致したと判定し、第1検出信号を出力する。
【0052】
また、停電が発生して、新型電源B2が無効電力を注入することで、電圧実効値vも変化する。
図3(c)では、電圧実効値vが上昇した場合を示している。なお、後述する
図4(c)および
図5(c)でも、電圧実効値vが上昇する場合を示す。
図3(c)に示すように、電圧実効値vは、所定範囲に収まらなくなる(v
2より大きくなる)。第2判定部332は、電圧実効値vが所定範囲に収まらなくなったときに、第2の判定条件に一致したと判定し、第2検出信号を出力する。単独運転検出装置3は、第1判定部331が第1検出信号を出力し、かつ、第2判定部332が第2検出信号を出力した状態が所定時間T
0以上継続したときに、単独運転を検出して、パワーコンディショナ1の停止処理を行う。
【0053】
図4は、配電系統Cに、新型電源B2が接続されておらず、従来型電源B1だけが接続されている場合を示している。
図4(a)は、周波数fの変化を示している。
図4(b)は、周波数fの変化量Δfの変化を示している。
図4(c)は、電圧実効値vの変化を示している。
【0054】
図4の場合、新型電源B2が接続されていないので、停電が発生すると、従来型電源B1が、系統周波数の変化をとらえて無効電力を注入し、系統周波数を上昇させる。従来型電源B1は、停電から0.5秒以上1秒以内に単独運転を検出して、配電系統Cから切り離される。したがって、
図4(a)に示すように、少なくとも停電発生から0.5秒までの間、周波数fは上昇する。その後の周波数fの変化は、配電系統Cに接続された従来型電源B1の数および容量、ならびに、負荷Lの数および大きさなどによって異なる。周波数fの上昇により、
図4(b)に示すように、周波数fの変化量Δfは、停電発生直後に閾値Δf
1以上になる。第1判定部331は、変化量Δfが閾値Δf
1以上になったときに、第1の判定条件に一致したと判定し、第1検出信号を出力する。
【0055】
また、停電が発生して、従来型電源B1が無効電力を注入することで、電圧実効値vも変化する。
図4(c)に示すように、電圧実効値vは、所定範囲に収まらなくなる(v
2より大きくなる)。第2判定部332は、電圧実効値vが所定範囲に収まらなくなったときに、第2の判定条件に一致したと判定し、第2検出信号を出力する。単独運転検出装置3は、第1判定部331が第1検出信号を出力し、かつ、第2判定部332が第2検出信号を出力した状態が所定時間T
0以上継続したときに、単独運転を検出して、パワーコンディショナ1の停止処理を行う。
【0056】
図3および
図4に示すように、配電系統Cに新型電源B2または従来型電源B1が接続されていれば、単独運転検出装置3は、3秒以内に単独運転を検出して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離すことができる。
【0057】
図5は、配電系統Cが停電状態になっていないが、系統擾乱が発生したときの、出力電圧の周波数fおよび電圧実効値vの変化を示すタイムチャートである。
図5は、配電系統Cに、従来型電源B1および新型電源B2が接続されている場合(
図1参照)を示している。なお、配電系統Cに、従来型電源B1だけが接続されている場合、および、新型電源B2だけが接続されている場合も同様である。横軸は、系統擾乱の発生を0秒とし、その後の経過時間を示している。
図5(a)は、周波数fの変化を示している。
図5(b)は、周波数fの変化量Δfの変化を示している。
図5(c)は、電圧実効値vの変化を示している。
【0058】
系統擾乱が発生した場合も配電系統Cの系統周波数が若干変化する。従来型電源B1および新型電源B2は、その周波数変化をとらえて無効電力を注入するが、停電していないので、周波数fは上昇しない。したがって、
図5(a)に実線で示すように、周波数fは、若干上昇するがすぐに低下する。これにより、
図5(b)に実線で示すように、周波数fの変化量Δfは、閾値Δf
1以上にならない。また、
図5(a)に破線で示すように、周波数fが瞬間的に大きく変化した場合、
図5(b)に破線で示すように、変化量Δfが閾値Δf
1を超えて、第1判定部331が第1の判定条件に一致したと判定するが、当該状態は長く続かない。
【0059】
また、従来型電源B1および新型電源B2が無効電力を注入するが、停電していないので、電圧実効値vもあまり変化しない。したがって、
図5(c)に実線で示すように、電圧実効値vは、所定範囲を超えない(v
2より大きくならない)。また、
図5(c)に破線で示すように、電圧実効値vが瞬間的に大きく変化して所定範囲に収まらなく(v
2より大きく)なった場合、第2判定部332が第2の判定条件に一致したと判定するが、当該状態は長く続かない。以上のように、第1の判定条件に一致し、かつ、第2の判定条件に一致した状態が所定時間T
0以上継続しないので、単独運転検出装置3は、単独運転を検出しない。
【0060】
次に、本実施形態に係る単独運転検出装置3の作用効果について説明する。
【0061】
本実施形態によると、単独運転検出装置3は、第1判定部331によって周波数fが第1の判定条件に一致したと判定され、かつ、第2判定部332によって電圧実効値vが第2の判定条件に一致したと判定され、その状態が所定時間T0以上継続した場合に、単独運転状態であると判定する。第1の判定条件は、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置が配電系統Cに無効電力を注入したことによる配電系統Cでの系統周波数の変化に基づいて単独運転が発生したと断定できる条件が設定されている。また、第2の判定条件は、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置が配電系統Cに無効電力を注入したことによる配電系統Cでの系統電圧の変化に基づいて単独運転が発生したと断定できる条件が設定されている。これにより、単独運転検出装置3は、配電系統に無効電力を注入することなく、単独運転を検出できる。したがって、単独運転検出装置3は、電圧フリッカ現象を誘発しない。つまり、電圧フリッカ現象が発生していない配電系統Cであれば、単独運転検出装置3を備えるパワーコンディショナ1が多数追加された場合でも、電圧フリッカ現象は発生しない。また、電圧フリッカ現象が発生している配電系統Cに、単独運転検出装置3を備えるパワーコンディショナ1が多数追加された場合でも、電圧フリッカ現象を助長しない。
【0062】
また、本実施形態によると、第1判定部331は、算出した変化量Δfが閾値Δf1以上になった場合に、第1の判定条件に一致したと判定する。従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、単独運転を検出するために、周波数偏差に応じた無効電力を注入することで系統周波数をより変化させる。したがって、系統周波数が大きくなる。閾値Δf1は、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置による無効電力の注入によって周波数fが変化していると判断できる値として設定されている。したがって、周波数fが第1の判定条件に一致した場合、単独運転が発生したと断定できる。これにより、第1判定部331は、適切に単独運転を判定できる。
【0063】
また、本実施形態によると、第2判定部332は、電圧実効値vが所定範囲に収まらなくなった場合に、第2の判定条件に一致したと判定する。従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、単独運転を検出するために、周波数偏差に応じた無効電力を注入する。したがって、系統電圧が大きく変化する。所定範囲は、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置による無効電力の注入によって変化した電圧実効値vが収まらない範囲として設定されている。したがって、電圧実効値vが第2の判定条件に一致した場合、単独運転が発生したと断定できる。これにより、第2判定部332は、適切に単独運転を判定できる。
【0064】
また、本実施形態によると、単独運転検出装置3は、第1判定部331による判定と、第2判定部332による判定との両方が成立した状態が所定時間T0以上継続した場合にのみ、単独運転状態であると判定する。したがって、第1判定部331または第2判定部332のどちらかが誤判定した場合でも、単独運転検出装置3は、単独運転状態であると誤判定してしまうことを抑制できる。また、所定時間T0は系統擾乱などによる周波数fおよび電圧実効値vの変化を単独運転と判定しないように設定されているので、系統擾乱などによって、第1判定部331および第2判定部332の両方が誤判定をした場合でも、単独運転状態であると誤判定してしまうことを抑制できる。また、単独運転検出装置3は、各判定条件および所定時間T0を調整することで検出をより高速化しつつ、確実に単独運転を検出できる。
【0065】
なお、本実施形態においては、第1判定部331が所定のサイクルごとに周波数fの変化量Δfを算出し、変化量Δfについての第1の判定条件に一致したかを判定する場合について説明したが、これに限られない。第1判定部331は、周波数fの変化を示す指標を算出して、当該指標についての第1の判定条件が設定されてもよい。当該指標としては、例えば、周波数fの変化率の積分値などが考えられる。また、本実施形態においては、第2判定部332が電圧実効値vについての第2の判定条件に一致したかを判定する場合について説明したが、これに限られない。第2判定部332は、電圧の大きさを示す指標を入力されて、当該指標についての第2の判定条件が設定されてもよい。当該指標としては、例えば、電圧の最大値または平均値などが考えられる。
【0066】
また、本実施形態においては、第1の判定条件が、周波数fの変化量Δfが閾値Δf1以上になったことである場合について説明したが、これに限られない。第1の判定条件は、周波数fに基づいて、単独運転が発生したと断定できる条件であればよい。また、本実施形態においては、第2の判定条件が、電圧実効値vが所定範囲に収まらなくなったこと収まらない状態が第2の所定時間T2以上継続したことである場合について説明したが、これに限られない。第2の判定条件は、電圧実効値v(または電圧の大きさを表す別の指標)に基づいて、単独運転が発生したと断定できる条件であればよい。
【0067】
また、本実施形態においては、第1判定部331が周波数fに基づいて判定を行い、第2判定部332が電圧実効値vに基づいて判定を行う場合について説明したが、これに限られない。第1判定部331および第2判定部332は、パワーコンディショナ1が出力する電圧、電流、電力(有効電力、無効電力)、周波数、並びに、3次、5次、7次などの所定の高調波成分の電圧、電流、電力、および周波数などの電気的な特性に基づいて、判定を行ってもよい。また、第1判定部331および第2判定部332で判定に用いる検出値は、電気的な特性の大きさ、偏差(基準からの変化量)、変化量、および変化率などであってもよい。また、三相の交流電圧から不平衡率を検出して、当該不平衡率を判定に用いる検出値としてもよい。第1判定部331に設定される第1の判定条件、および、第2判定部332に設定される第2の判定条件は、用いる検出値に応じて、適宜設定される。
【0068】
〔第2実施形態〕
図6は、第2実施形態に係る単独運転検出装置3aを説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示している。同図において、第1実施形態に係る単独運転検出装置3(
図1参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。本実施形態に係る単独運転検出装置3aは、第2判定部332が三相交流電圧の不平衡率に基づいて判定を行う点で単独運転検出装置3と異なる。
【0069】
単独運転検出装置3aは、電圧検出部32の代わりに、不平衡率検出部35を備えている。不平衡率検出部35は、電圧センサ5から入力される三相の電圧信号に基づいて、三相の不平衡率を検出する。不平衡率は、正相電圧に対する逆相電圧の割合である。不平衡率検出部35による不平衡率の検出方法は限定されず、従来知られている方法が用いられる。不平衡率検出部35は、検出した不平衡率を、判定部33に出力する。
【0070】
本実施形態に係る第2判定部332は、不平衡率検出部35から入力される不平衡率が第2の判定条件に一致したか否かを判定する。第2の判定条件は、単独運転が発生したと断定できる条件が設定されている。単独運転が発生した場合、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、注入する無効電力を増加させる。これにより、パワーコンディショナ1の三相出力電圧の不平衡率が大きくなる。第2の判定条件は、このときの不平衡率に基づいて設定されている。
【0071】
本実施形態では、第2の判定条件は、不平衡率が所定の閾値以上になったことである。閾値は、単独運転が発生して、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置による無効電力の注入によって不平衡率が変化していると判断できる値が設定される。なお、閾値は限定されず、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。
【0072】
本実施形態においても、単独運転検出装置3aは、配電系統に無効電力を注入することなく、単独運転を検出できるので、電圧フリッカ現象を誘発しない。また、単独運転検出装置3aは、単独運転検出装置3と共通する構成により、単独運転検出装置3と同等の効果を奏する。
【0073】
本発明に係る単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0074】
1:パワーコンディショナ、3,3a:単独運転検出装置、31:周波数検出部、32:電圧検出部、331:第1判定部、332:第2判定部、333:論理積部、35:不平衡率検出部