(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102730
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナ
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003418
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】川本 哲裕
(72)【発明者】
【氏名】田村 亨
(72)【発明者】
【氏名】服部 将之
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA11
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】電圧フリッカ現象を誘発しない単独運転検出装置を提供する。
【解決手段】パワーコンディショナ1の単独運転を検出する単独運転検出装置3において、パワーコンディショナ1が接続されている配電系統Cに規定以上の稼働電源Bが接続されているか否かを検出する稼働電源検出部31と、第1能動信号を配電系統Cに注入することで、能動的に単独運転を検出する能動検出部32と、配電系統Cに配置された他の単独運転検出装置が当該配電系統Cに第2能動信号を注入したことによって生じた電気的な特性の変化に基づいて、単独運転を検出する受動検出部33と、稼働電源検出部31の検出結果に応じて、能動検出部32を機能させる状態と機能させない状態とで切り替える切替部36とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出装置であって、
前記パワーコンディショナが接続されている配電系統に規定以上の稼働電源が接続されているか否かを検出する稼働電源検出部と、
第1能動信号を前記配電系統に注入することで、能動的に単独運転を検出する能動検出部と、
前記配電系統に配置された他の単独運転検出装置が当該配電系統に第2能動信号を注入したことによって生じた電気的な特性の変化に基づいて、単独運転を検出する受動検出部と、
前記稼働電源検出部の検出結果に応じて、前記能動検出部を機能させる状態と機能させない状態とで切り替える切替部と、
を備えている、
ことを特徴とする単独運転検出装置。
【請求項2】
前記稼働電源検出部は、前記配電系統での電圧フリッカの発生を検出することで、前記規定以上の前記稼働電源が接続されていることを検出する、
請求項1に記載の単独運転検出装置。
【請求項3】
前記稼働電源検出部は、前記切替部が前記能動検出部を機能させない状態に切り替えたときの電圧フリッカの収束の仕方に基づいて、電圧フリッカの発生を判定するための閾値を変更する、
請求項2に記載の単独運転検出装置。
【請求項4】
前記切替部は、
前記稼働電源検出部が前記規定以上の前記稼働電源が接続されていることを検出したときに、前記能動検出部を機能させない状態に切り替え、
前記稼働電源検出部が前記規定以上の前記稼働電源が接続されていることを検出しなくなった状態が、判定時間継続したときに、前記能動検出部を機能させる状態に切り替える、
請求項1ないし3のいずれかに記載の単独運転検出装置。
【請求項5】
前記判定時間は、2秒以内である、
請求項4に記載の単独運転検出装置。
【請求項6】
前記切替部は、前記能動検出部を機能させない状態から機能させる状態に切り替えた際に、前記能動検出部に所定量の第1能動信号を注入させる、
請求項1ないし5のいずれかに記載の単独運転検出装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の単独運転検出装置を備えている、
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項8】
パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出方法であって、
前記パワーコンディショナが接続されている配電系統に規定以上の稼働電源が接続されているか否かを検出する稼働電源検出工程と、
第1能動信号を前記配電系統に注入することで、能動的に単独運転を検出する能動検出工程と、
前記配電系統に配置された他の単独運転検出装置が当該配電系統に第2能動信号を注入したことによって生じた電気的な特性の変化に基づいて、単独運転を検出する受動検出工程と、
前記稼働電源検出工程の検出結果に応じて、前記能動検出工程を行わせる状態と行わせない状態とで切り替える切替工程と、
を備えている、
ことを特徴とする単独運転検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
分散形電源を電力系統に接続する場合、パワーコンディショナは、単独運転を防止するための単独運転検出装置を備えている必要がある。単独運転とは、分散形電源が接続された配電系統が電力系統から切り離された場合に、分散形電源が配電系統の負荷に電力の供給を継続することである。単独運転検出装置は、単独運転を検出した場合、分散形電源を配電系統から切り離して、分散形電源から負荷への電力の供給を停止させる。単独運転の検出方法には受動方式と能動方式とがあり、様々な検出方法が開発されている。
【0003】
系統連系規程(JEAC 9701-2016)では、単独運転の能動方式の検出方法として、周波数シフト方式、スリップモード周波数シフト方式、無効電力変動方式、およびQCモード周波数シフト方式などが認められている。これらの方式は、従来型能動的方式と呼ばれている。系統連系規程では、従来型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、0.5秒以上1秒以内(低圧配電線との連系の場合)にパワーコンディショナを配電系統から切り離すように定められている。また、系統連系規程では、従来型能動的方式より検出を高速化させた方式として、ステップ注入付き周波数フィードバック方式が認められている。当該方式は、新型能動的方式と呼ばれている。系統連系規程では、新型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、パワーコンディショナを配電系統から瞬時に切り離すように定められており、一般的には、0.1秒以上0.2秒以内に切り離すように設定されている。これらの各方式は、配電系統に積極的に無効電力を代表とする能動信号を注入し、検出された周波数の変化に応じて単独運転を検出する。したがって、配電系統に多数の分散形電源が接続されている場合、配電系統には大量の無効電力が注入される。また、無効電力の注入量は、周波数偏差に応じて増加される。したがって、系統擾乱時に各分散形電源が無効電力の注入量を増加させることで、系統電圧が振動し、電圧フリッカ現象が発生する場合がある。
【0004】
電圧フリッカ現象の発生を抑制するための対策として、無効電力の注入量を抑制可能な単独運転検出装置が開発されている。例えば、特許文献1には、単独運転の可能性が低い場合に無効電力の注入量を抑制する単独運転検出装置が開示されている。また、特許文献2には、遅れ位相の無効電力と進み位相の無効電力とを交互に注入し、系統周波数の移動平均値の変化量の絶対値を積算した積算値に基づいて単独運転を検出することで、無効電力の注入量を低減しつつ、単独運転の誤検出や検出遅延を防止できる単独運転検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-93020号公報
【特許文献2】特開2019-92328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に開示された単独運転検出装置は、注入量を抑制しているが、無効電力の注入を行っている。したがって、これらの単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを、配電系統に新たに接続した場合、配電系統に注入される無効電力は増加する。よって、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナがすでに多数接続されている配電系統に、このようなパワーコンディショナを接続した場合でも、電圧フリッカ現象を誘発することになる。
【0007】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、電圧フリッカ現象を誘発しない単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面によって提供される単独運転検出装置は、パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出装置であって、前記パワーコンディショナが接続されている配電系統に規定以上の稼働電源が接続されているか否かを検出する稼働電源検出部と、第1能動信号を前記配電系統に注入することで、能動的に単独運転を検出する能動検出部と、前記配電系統に配置された他の単独運転検出装置が当該配電系統に第2能動信号を注入したことによって生じた電気的な特性の変化に基づいて、単独運転を検出する受動検出部と、前記稼働電源検出部の検出結果に応じて、前記能動検出部を機能させる状態と機能させない状態とで切り替える切替部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
なお、「稼働電源」とは、単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源であり、稼働しているものである。また、「第1能動信号」および「第2能動信号」とは、単独運転検出装置が能動方式で単独運転を検出する際に配電系統に注入する信号であり、例えば、無効電力、有効電力などが含まれる。また、「電気的な特性」には、電圧、電流、電力(有効電力、無効電力)、および周波数などが含まれる。また、所定の高調波成分の電圧、電流、電力、および周波数なども含まれる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記稼働電源検出部は、前記配電系統での電圧フリッカの発生を検出することで、前記規定以上の前記稼働電源が接続されていることを検出する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記稼働電源検出部は、前記切替部が前記能動検出部を機能させない状態に切り替えたときの電圧フリッカの収束の仕方に基づいて、電圧フリッカの発生を判定するための閾値を変更する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記切替部は、前記稼働電源検出部が前記規定以上の前記稼働電源が接続されていることを検出したときに、前記能動検出部を機能させない状態に切り替え、前記稼働電源検出部が前記規定以上の前記稼働電源が接続されていることを検出しなくなった状態が、判定時間継続したときに、前記能動検出部を機能させる状態に切り替える。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判定時間は、2秒以内である。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記切替部は、前記能動検出部を機能させない状態から機能させる状態に切り替えた際に、能動検出部に所定量の第1能動信号を注入させる。
【0016】
本発明の第2の側面によって提供されるパワーコンディショナは、本発明の第1の側面によって提供される単独運転検出装置を備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の側面によって提供される単独運転検出方法は、パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出方法であって、前記パワーコンディショナが接続されている配電系統に規定以上の稼働電源が接続されているか否かを検出する稼働電源検出工程と、第1能動信号を前記配電系統に注入することで、能動的に単独運転を検出する能動検出工程と、前記配電系統に配置された他の単独運転検出装置が当該配電系統に第2能動信号を注入したことによって生じた電気的な特性の変化に基づいて、単独運転を検出する受動検出工程と、前記稼働電源検出工程の検出結果に応じて、前記能動検出工程を行わせる状態と行わせない状態とで切り替える切替工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、切替部は、稼働電源検出部の検出結果に応じて、能動検出部を機能させる状態と機能させない状態とで切り替える。したがって、切替部は、規定以上の稼働電源が接続されていることが検出された場合に能動検出部を機能させない状態に切り替えることができる。これにより、本発明に係る単独運転検出装置は、規定以上の稼働電源が接続されている場合は、能動検出部を機能させず、受動検出部だけを機能させて、単独運転を検出する。この場合、本発明に係る単独運転検出装置は、能動信号を注入しないので、電圧フリッカ現象を誘発しない。一方、本発明に係る単独運転検出装置は、規定以上の稼働電源が接続されていない場合は、能動検出部を機能させて能動信号を注入する。しかし、規定以上の稼働電源が接続されていないので、能動信号を注入しても、電圧フリッカ現象を誘発しない。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示している。
【
図2】稼働電源検出部の内部構成の詳細を示すブロック図である。
【
図3】稼働電源検出部の第1判定部のシミュレーション結果を示す波形図である。
【
図5】稼働電源検出部の第2判定部のシミュレーション結果を示す波形図である。
【
図6】配電系統が停電状態になって、パワーコンディショナが単独運転状態になったときの、出力電圧の周波数の変化を示すタイムチャートである。
【
図7】単独運転検出装置が行う能動検出部の切替処理を説明するためのフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係る単独運転検出装置を説明するためのブロック図であり、稼働電源検出部の内部構成の詳細を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示している。
【0023】
パワーコンディショナ1は、直流電源Aが出力する直流電力を交流電力に変換して、接続している配電系統Cに出力する。パワーコンディショナ1および直流電源Aを合わせたものが分散形電源である。配電系統Cは、高圧配電系統であり、負荷Lが接続されている。負荷Lは、電力の供給を受ける需要家である。また、配電系統Cは、従来型電源B1および新型電源B2が接続され得る。本実施形態では、従来型電源B1および新型電源B2がそれぞれ、接続されている場合、接続されていない場合、および、接続されているが停止している場合があるので、
図1においては、破線で示している。従来型電源B1は、従来型能動的方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。なお、本実施形態では、従来型電源B1の単独運転検出装置が、周波数シフト方式で単独運転を検出する場合を例として説明する。なお、従来型電源B1の単独運転検出装置の検出方式は限定されない。新型電源B2は、新型能動的方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。配電系統C(および変圧器を介して配電系統Cに接続された低圧配電系統)には、負荷L、従来型電源B1、および新型電源B2がそれぞれ複数ずつ接続され得るが、
図1においては、代表して1個ずつ記載している。配電系統Cは、遮断器を介して電力系統に接続されている。電力系統で事故が発生した場合などに、電力系統側に設けられた保護装置によって遮断器が開放されて、配電系統Cが電力系統から切り離される(停電状態)。これにより、電力系統から切り離された配電系統Cに接続しているパワーコンディショナ1が単独運転状態になる。
【0024】
直流電源Aは、直流電力を出力するものであり、例えば太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源Aは、生成した直流電力を、パワーコンディショナ1に出力する。なお、直流電源Aは、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源Aは、燃料電池または蓄電池などであってもよいし、ディーゼルエンジン発電機または風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
【0025】
パワーコンディショナ1は、インバータ装置2、単独運転検出装置3、連系用遮断器4、および電圧センサ5を備えている。パワーコンディショナ1は、連系用遮断器4を介して、配電系統Cに接続している。
【0026】
インバータ装置2は、直流電源Aから入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。インバータ装置2は、例えば、図示しないインバータ回路、フィルタ回路、および制御回路を備えている。インバータ回路は、制御回路から入力されるPWM信号に基づいてスイッチング素子(図示しない)のオンとオフとを切り替えることで直流電力を交流電力に変換する。フィルタ回路は、スイッチングによる高周波成分を除去する。制御回路は、インバータ回路を制御する。制御回路は、インバータ装置2の出力電流を制御するPWM信号を生成して、インバータ回路に出力する。制御回路は、単独運転検出装置3から後述するゲートブロック信号を入力された場合、PWM信号の生成を停止する。この場合、インバータ回路はスイッチングを停止するので、インバータ装置2は、電力変換動作を停止する。また、制御回路は、単独運転検出装置3から能動信号(例えば無効電力)を注入することを指示された場合、インバータ回路に能動信号を注入させる。なお、インバータ装置2の構成は限定されない。
【0027】
連系用遮断器4は、パワーコンディショナ1と配電系統Cとの接続を遮断する。連系用遮断器4は通常時は閉路されており、パワーコンディショナ1は配電系統Cに接続している。しかし、単独運転検出装置3から後述する開放指令が入力された場合、連系用遮断器4は開放され、パワーコンディショナ1が配電系統Cから切り離される。これにより、パワーコンディショナ1の単独運転状態が回避される。
【0028】
電圧センサ5は、パワーコンディショナ1の出力電圧を検出し、検出した電圧信号を単独運転検出装置3に入力する。なお、電圧センサ5は、インバータ装置2の制御用と兼用であってもよい。この場合、電圧センサ5は、検出した電圧信号をインバータ装置2の制御回路にも入力する。
【0029】
単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1の単独運転を検出する。単独運転検出装置3は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて単独運転を検出し、単独運転を検出した場合、パワーコンディショナ1を停止させて、配電系統Cから切り離す。単独運転検出装置3は、稼働電源検出部31、切替部36、能動検出部32、受動検出部33、論理和部34、および停止処理部35を備えている。
【0030】
稼働電源検出部31は、配電系統Cに、規定以上の稼働している従来型電源B1または新型電源B2(以下では区別せずにまとめて示す場合、「稼働電源B」と記載する)が、接続されているか否かを検出する構成である。本実施形態では、稼働電源検出部31は、配電系統Cにおいて、電圧フリッカが発生しているかどうかを検出することで、規定以上の稼働電源Bが接続されているか否か(以下では、「接続状態」と記載する)を検出する。稼働電源検出部31は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、接続状態を検出し、規定以上の稼働電源Bが接続されていると判断される場合に、検出信号を切替部36に出力する。
【0031】
図2~
図5は、稼働電源検出部31について説明するための図である。稼働電源検出部31は、周波数の変動と電圧の変動とをそれぞれ検出して、周波数と電圧との両面で、電圧フリッカの発生を検出する。
図2は、稼働電源検出部31の内部構成の詳細を示すブロック図である。稼働電源検出部31は、周波数検出部41、変化量検出部42、ローパスフィルタ43、PP値検出部44、周波数判定部45、実効値検出部51、PP値検出部52、周波数検出部53、指標値算出部54、電圧判定部55、および論理積部46を備えている。周波数検出部41、変化量検出部42、ローパスフィルタ43、PP値検出部44、および周波数判定部45は、周波数の変動から電圧フリッカを検出するための構成であり、まとめて示す場合、「第1判定部49」と記載する。実効値検出部51、PP値検出部52、周波数検出部53、指標値算出部54、および電圧判定部55は、電圧の変動から電圧フリッカを検出するための構成であり、まとめて示す場合、「第2判定部59」と記載する。
【0032】
周波数検出部41は、配電系統Cの系統電圧の周波数fを検出する。周波数検出部41は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、周波数fを検出する。周波数検出部41は、例えばゼロクロス点間カウント方式により周波数を検出する。ゼロクロス点間カウント方式は、交流電圧の瞬時値がゼロレベルを交差する点(ゼロクロス点)間の時間を計測し、計測された時間の逆数から周波数を検出する方法である。なお、周波数検出部41の周波数検出方法は限定されない。例えば、周波数検出部41は、乗算式PLL(Phase Locked Loop)を用いて周波数を検出してもよい。配電系統Cは三相交流の配電系統であり、電圧センサ5は、各相の電圧信号を検出している。周波数検出部41は、各相の電圧信号の周波数をそれぞれ検出し、3個の周波数の平均値を周波数fとして出力する。なお、周波数検出部41は、代表して1個の相(例えばU相)の電圧信号の周波数を周波数fとして出力してもよい。周波数検出部41は、検出した周波数fを、変化量検出部42に出力する。
【0033】
変化量検出部42は、周波数検出部41から周波数fを入力されて、周波数fの変化量Δfを検出する。変化量検出部42は、所定のサイクル(限定されないが例えば20ms程度)ごとに周波数fを入力され、入力された周波数fと、1サイクル前に入力された周波数fとの差を変化量Δfとして算出する。以下では、この所定のサイクルを「周波数検出サイクル」と記載する。変化量検出部42は、検出した変化量Δfを、ローパスフィルタ43に出力する。
【0034】
ローパスフィルタ43は、変化量検出部42から連続的に入力される変化量Δfから、30Hz以下の周波数成分だけを抽出し、PP値検出部44に出力する。人間が照明のちらつきとして感じる周波数は2~30Hzなので、本実施形態では、ローパスフィルタ43によって、30Hzより大きい周波数成分を除去している。
【0035】
PP値検出部44は、ローパスフィルタ43から入力される変化量Δf(30Hz以下の周波数成分)のピークトゥピーク値(以下では、「PP値」と記載する)を検出する。本実施形態では、2Hz以上の周波数変化量をとらえるために、2Hzの周期である500ms間のPP値を検出する。PP値検出部44は、周波数検出サイクル(例えば20ms程度)ごとに検出範囲をずらしながら、PP値を検出する。PP値検出部44は、検出したPP値を周波数判定部45に出力する。
【0036】
周波数判定部45は、PP値検出部44から入力されるPP値を所定の閾値Δf0と比較することで、電圧フリッカの発生を判定する。閾値Δf0は、電圧フリッカが発生していると判断できる値が設定され、例えば0.05Hz程度が設定される。なお、閾値Δf0は限定されず、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。周波数判定部45は、PP値検出部44から入力されるPP値が閾値Δf0以上の状態が第1判定時間T1以上継続した場合に、電圧フリッカが発生していると判断し、ハイレベル信号である第1判定信号を論理積部46に出力する。第1判定時間T1は、PP値がごく短い時間の間だけ閾値Δf0を超えた場合を除外するために設定されている。本実施形態では、第1判定時間T1は、例えば10秒が設定されている。なお、第1判定時間T1は限定されず、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。
【0037】
図3は、稼働電源検出部31の第1判定部49のシミュレーション結果を示す波形図である。
図3(a)は、周波数検出部41が検出した周波数fの時間変化を示している。
図3(b)は、変化量検出部42が検出した変化量Δfの時間変化を示している。
図3(c)は、PP値検出部44が検出した変化量ΔfのPP値の時間変化を示している。時刻「0」において、電圧変動を発生させたことで、
図3(a)に示すように、それ以降、周波数fが大きく変動している。これにより、
図3(b)に示すように、変化量Δfも大きく変動している。そして、
図3(c)に示すように、PP値が閾値Δf
0を超えた状態が継続している。この状態が第1判定時間T1継続した場合に、周波数判定部45は、電圧フリッカが発生していると判断して第1判定信号を出力する。
【0038】
実効値検出部51は、配電系統Cの系統電圧の電圧実効値vを検出する。実効値検出部51は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、電圧実効値vを検出する。配電系統Cは三相交流の配電系統であり、電圧センサ5は、各相の電圧信号を検出している。実効値検出部51は、各相の電圧信号から電圧実効値をそれぞれ検出し、3個の電圧実効値の平均値を電圧実効値vとして出力する。なお、実効値検出部51は、代表して1個の相(例えばU相)の電圧信号の電圧実効値を電圧実効値vとして出力してもよい。実効値検出部51は、検出した電圧実効値vをPP値検出部52および周波数検出部53に出力する。なお、実効値検出部51は、電圧実効値の代わりに、電圧の最大値または平均値など電圧の大きさを表す他の指標を検出してもよい。
【0039】
PP値検出部52は、実効値検出部51から入力される電圧実効値vのピークトゥピーク値(以下では、「PP値」と記載する)を検出する。PP値検出部44と同様、2Hz以上の電圧変動幅をとらえるために、2Hzの周期である500ms間のPP値を検出する。PP値検出部52も、PP値検出部44と同様、周波数検出サイクル(例えば20ms程度)ごとに検出範囲をずらしながら、PP値を検出する。PP値検出部52は、検出したPP値を指標値算出部54に出力する。
【0040】
周波数検出部53は、電圧実効値vの変動の周波数fVを検出する。周波数検出部53は、実効値検出部51から入力される電圧実効値vに基づいて、周波数fVを検出する。本実施形態では、PP値検出部52がPP値を検出したときの上のピーク値を検出したときから下のピーク値を検出するまでの時間を半周期として、周波数fVを検出する。なお、周波数検出部53の周波数検出方法は限定されず、周波数検出部41と同様の方法で検出してもよいし、他の方法で検出してもよい。周波数検出部53は、検出した周波数fVを、指標値算出部54に出力する。
【0041】
指標値算出部54は、電圧フリッカの判定のための指標値を算出する。一般的に、電圧フリッカは、「ΔV
10」という指標値を用いて表され、この指標値が規制値(例えば「0.45」)以下となるように管理されている。指標値算出部54は、ΔV
10に類似した指標値として指標値ΔV
Xを用いる。
図4は、ちらつき視感度を示す図であり、電圧変動の周波数ごとのちらつきの視感度を係数にして表している。
図4では、周波数ごとのちらつきの視感度を連続して示したちらつきの視感度曲線aが示されている。ΔV
10は、1分間の電圧変動に含まれる周波数成分ごとに、当該周波数成分の変化量と当該周波数におけるちらつき視感度係数とを乗算した値の2乗値の積算値の平方根として算出される。指標値ΔV
Xは、ΔV
10をより簡略化した指標であり、演算のための負担を軽減した指標である。具体的には、指標値算出部54は、PP値検出部52が検出した電圧実効値vのPP値に、周波数検出部53が検出した周波数f
Vに応じた係数を乗算することで、指標値ΔV
Xを算出する。また、このとき使用する係数は、視感度曲線aを簡略化したものであり、周波数f
Vが3Hz以上の場合は「1」とし、3Hz未満の場合は「0.6」としている(
図4において実線bで示す)。指標値ΔV
Xの算出に使用する係数は、常に、指標値ΔV
10の算出に使用する係数(視感度曲線a参照)以上の値なので、指標値ΔV
Xは、指標値ΔV
10より大きな値として算出される。なお、指標値算出部54による指標値ΔV
Xの算出方法は、これに限定されない。指標値算出部54は、指標値ΔV
Xとして、例えば一般的な指標値ΔV
10を算出してもよい。指標値算出部54は、算出した指標値ΔV
Xを電圧判定部55に出力する。
【0042】
電圧判定部55は、指標値算出部54から入力される指標値ΔVXを所定の閾値ΔVX0と比較することで、電圧フリッカの発生を判定する。閾値ΔVX0は、電圧フリッカが発生していると判断できる値が設定され、例えば、指標値ΔV10の規制値と同じ「0.45」が設定される。なお、閾値ΔVX0は限定されず、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。電圧判定部55は、指標値算出部54から入力される指標値ΔVXが閾値ΔVX0以上の状態が第2判定時間T2以上継続した場合に、電圧フリッカが発生していると判断し、ハイレベル信号である第2判定信号を論理積部46に出力する。第2判定時間T2は、指標値ΔVXがごく短い時間の間だけ閾値ΔVX0を超えた場合を除外するために設定されている。本実施形態では、第2判定時間T2は、例えば3秒が設定されている。なお、第2判定時間T2は限定されず、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。
【0043】
図5は、稼働電源検出部31の第2判定部59のシミュレーション結果を示す波形図である。
図5(a)は、実効値検出部51が検出した電圧実効値vの時間変化(図に示す実線v、左側の縦軸参照)、および、PP値検出部52が検出した電圧実効値vのPP値の時間変化(図に示す破線PP、右側の縦軸参照)を示している。
図5(b)は、周波数検出部53が検出した周波数f
Vの時間変化を示している。
図5(c)は、指標値算出部54が検出した指標値ΔV
Xの時間変化を示している。時刻「0」において、電圧変動を発生させたことで、電圧実効値vが大きく変動している。これにより、PP値が上昇し、また、周波数f
Vが低下している。ΔV
Xは、時刻「0」まではほぼ「0」であったが、時刻「0」以降上昇してΔV
X0を超えている。この状態が第2判定時間T2継続した場合に、電圧判定部55は、電圧フリッカが発生していると判断して第2判定信号を出力する。
【0044】
論理積部46は、周波数判定部45から入力される信号と電圧判定部55から入力される信号との論理積信号を生成して切替部36に出力する。したがって、論理積部46は、周波数判定部45から第1判定信号(ハイレベル信号)を入力され、かつ、電圧判定部55から第2判定信号(ハイレベル信号)を入力された場合に、ハイレベル信号である検出信号を出力する。一方、論理積部46は、周波数判定部45から第1判定信号(ハイレベル信号)が入力されない、または、電圧判定部55から第2判定信号(ハイレベル信号)が入力されない場合に、ローレベル信号を出力する。つまり、論理積部46は、第1判定部49が周波数の変動から電圧フリッカを検出し、かつ、第2判定部59が電圧の変動から電圧フリッカを検出した場合にのみ、検出信号を出力する。以上のように、稼働電源検出部31は、配電系統Cにおいて電圧フリッカが発生していると判断される場合に、配電系統Cに規定以上の稼働電源Bが接続されていると判断して、検出信号を切替部36に出力する。
【0045】
切替部36は、能動検出部32を機能させる状態と機能させない状態とで切り替える。切替部36は、能動検出部32を機能する状態にする場合に例えばハイレベル信号であるオン信号を出力し、能動検出部32を機能しない状態にする場合、例えばローレベル信号であるオフ信号を出力する。切替部36は、稼働電源検出部31から検出信号を入力されている間はオフ信号を出力する。また、切替部36は、稼働電源検出部31から検出信号を入力されない状態が第3判定時間T3継続したときに、オフ信号をオン信号に切り替える。
【0046】
電圧フリッカが収束して、稼働電源検出部31から検出信号を入力されなくなっても、配電系統Cには、電圧フリッカと判定されない程度の電圧変動がまだ残っている。この状態で能動検出部32を稼働させると、電圧変動が大きくなって電圧フリッカが再発し、稼働電源検出部31が検出信号を出力する場合がある。この場合、切替部36はオン信号からオフ信号に切り替え、オン信号とオフ信号とを短い時間の間に交互に切り替える状態になる。第3判定時間T3は、この状態になることを防ぐために設定されており、切替部36がオフ信号をオン信号に切り替えるタイミングを遅らせるようにしている。第3判定時間T3は、電圧フリッカが収束して稼働電源検出部31が検出信号を出力しなくなってから、電圧変動がある程度(能動検出部32が稼働しても電圧フリッカが再発しない程度)に収束するまでの時間が設定される。
【0047】
また、系統連系規程では、高圧配電系統に接続されたパワーコンディショナは、単独運転状態になった場合に3秒以内に切り離されるように定められている。本実施形態では、3秒以内に単独運転を検出できるように、能動検出部32が1秒以内に単独運転を検出することを考慮して、第3判定時間T3は、2秒以内に設定されている。第3判定時間T3の具体的な値は、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。なお、切替部36は、第3判定時間T3が設定されず、稼働電源検出部31から検出信号を入力されなくなったときに、オフ信号をオン信号に切り替えてもよい。
【0048】
能動検出部32は、従来型能動的方式の単独運転検出装置と同様の機能を有し、能動信号を注入して単独運転を検出する。本実施形態では、能動信号が無効電力である場合を説明する。具体的には、能動検出部32は、インバータ装置2の制御回路に無効電力の目標値を設定することで、インバータ装置2に無効電力を注入させる。そして、能動検出部32は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、単独運転を検出する。本実施形態では、能動検出部32は、例えばスリップモード周波数シフト方式により単独運転を検出する。なお、能動検出部32による単独運転の検出方法は限定されない。能動検出部32は、切替部36からオン信号を入力されている間、機能する状態になり、無効電力の注入を行って、単独運転の検出を行う。一方、能動検出部32は、切替部36からオフ信号を入力されている間、機能しない状態になり、無効電力の注入を行わない。能動検出部32は、単独運転を検出した場合、例えばハイレベル信号である能動検出信号を論理和部34に出力する。
【0049】
受動検出部33は、無効電力を注入することなく、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、単独運転を検出する。受動検出部33は、単独運転が発生した場合に従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置が注入する無効電力を増加させたことによって生じた、配電系統Cにおける電気的な特性の変化に基づいて、単独運転を検出する。本実施形態では、受動検出部33は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、単独運転を検出する。具体的には、受動検出部33は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて周波数fを検出する。なお、周波数fの検出処理には、稼働電源検出部31の周波数検出部41を兼用してもよい。そして、受動検出部33は、周波数fがあらかじめ設定された判定条件に一致したか否かを判定する。判定条件は、単独運転が発生したと断定できる条件が設定されている。単独運転が発生した場合、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、注入する無効電力を増加させて配電系統Cの電圧の周波数を変化させ、周波数が閾値を超えた場合に単独運転を検出する。判定条件は、このときの周波数の変化に基づいて設定されている。
【0050】
本実施形態では、判定条件は、周波数fの変化量Δfが閾値Δf1以上の状態が所定時間T0以上継続したことである。受動検出部33は、周波数検出サイクルごとに、周波数fの変化量Δfを算出する。変化量Δfの算出方法は、稼働電源検出部31の変化量検出部42での算出方法と同様である。なお、変化量Δfの検出処理には、稼働電源検出部31の変化量検出部42を兼用してもよい。閾値Δf1は、単独運転が発生して、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置による無効電力の注入によって周波数fが変化していると判断できる値が設定される。なお、閾値Δf1は限定されず、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。ただし、単独運転以外の系統擾乱などによっても、周波数fが変化して変化量Δfが閾値Δf1以上になる場合がある。しかし、この場合は、変化量Δfが閾値Δf1以上になっている時間は短い。所定時間T0は、系統擾乱などによる周波数fの変化を単独運転と判定しないために設定されている。なお、所定時間T0は限定されない。
【0051】
本実施形態では、受動検出部33は、算出した変化量Δfが閾値Δf1以上の状態が所定時間T0以上継続した場合に、判定条件に一致したと判定する。受動検出部33は、判定条件に一致したと判定した場合、ハイレベル信号である受動検出信号を論理和部34に出力する。
【0052】
図6は、
図1に示す配電系統Cが停電状態になって、パワーコンディショナ1が単独運転状態になったときの、出力電圧の周波数fの変化を示すタイムチャートである。各図において、横軸は、停電発生を0秒とし、その後の経過時間を示している。なお、本明細書で参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0053】
図6(a)、(b)は、配電系統Cに稼働電源Bが接続され、稼働電源Bが従来型電源B1および新型電源B2の両方を含んでいる場合(
図1参照)を示している。なお、稼働電源Bが新型電源B2だけの場合も同様である。
図6(a)は、周波数fの変化を示している。
図6(b)は、周波数fの変化量Δfの変化を示している。停電が発生すると配電系統Cの系統周波数が若干変化する。新型電源B2は、その周波数変化をとらえて無効電力を注入し、系統周波数を上昇または下降させる。
図6(a)では、系統周波数が上昇した場合を示している。なお、後述する
図6(c)でも、系統周波数が上昇する場合を示す。新型電源B2は、一般的に、停電から0.1秒以上0.2秒以内に単独運転を検出して配電系統Cから切り離される。したがって、停電発生から無効電力が注入され、系統周波数は上昇する。
図6(a)に示すように、少なくとも停電発生から0.1秒までの間、周波数fは上昇する。その後の周波数fの変化は、配電系統Cに接続された従来型電源B1および新型電源B2の数および容量、ならびに、負荷Lの数および大きさなどによって異なる。周波数fの上昇により、
図6(b)に示すように、周波数fの変化量Δfは、停電発生直後に閾値Δf
1以上になる。受動検出部33は、変化量Δfが閾値Δf
1以上の状態が所定時間T
0以上継続したときに、判定条件に一致したと判定し、受動検出信号を出力する。
【0054】
図6(c)、(d)は、配電系統Cに稼働電源Bが接続され、稼働電源Bが従来型電源B1だけである場合を示している。
図6(c)は、周波数fの変化を示している。
図6(d)は、周波数fの変化量Δfの変化を示している。
図6(c)、(d)の場合、新型電源B2が接続されていないので、停電が発生すると、従来型電源B1が、系統周波数の変化をとらえて無効電力を注入し、系統周波数を上昇させる。従来型電源B1は、停電から0.5秒以上1秒以内に単独運転を検出して、配電系統Cから切り離される。したがって、
図6(c)に示すように、少なくとも停電発生から0.5秒までの間、周波数fは上昇する。その後の周波数fの変化は、配電系統Cに接続された従来型電源B1の数および容量、ならびに、負荷Lの数および大きさなどによって異なる。周波数fの上昇により、
図6(d)に示すように、周波数fの変化量Δfは、停電発生直後に閾値Δf
1以上になる。受動検出部33は、変化量Δfが閾値Δf
1以上の状態が所定時間T
0以上継続したときに、判定条件に一致したと判定し、受動検出信号を出力する。
【0055】
図6に示すように、配電系統Cに稼働電源Bが接続されていれば、停電が発生した場合、受動検出部33は、3秒以内に単独運転を検出することができる。なお、配電系統Cが停電状態になっていないが、系統擾乱が発生した場合も、従来型電源B1および新型電源B2は、その周波数変化をとらえて無効電力を注入する。しかし、停電していないので、周波数fは上昇しない。したがって、周波数fは、若干上昇するがすぐに低下する。これにより、周波数fの変化量Δfは、閾値Δf
1以上にならない。また、周波数fが瞬間的に大きく変化したとしても、変化量Δfが閾値Δf
1を超えた状態が所定時間T
0以上継続されることはない。したがって、これらの場合、受動検出部33は、判定条件に一致したと判定しない。
【0056】
論理和部34は、能動検出部32から入力される信号と受動検出部33から入力される信号との論理和信号を生成して停止処理部35に出力する。したがって、論理和部34は、能動検出部32から能動検出信号(ハイレベル信号)を入力された場合、または、受動検出部33から受動検出信号(ハイレベル信号)を入力された場合に、ハイレベル信号である単独運転検出信号を停止処理部35に出力する。つまり、論理和部34は、能動検出部32または受動検出部33の少なくとも一方が、単独運転を検出した場合に、単独運転状態であると判断し、ハイレベル信号である単独運転検出信号を停止処理部35に出力する。
【0057】
停止処理部35は、論理和部34から単独運転検出信号を入力された場合に、パワーコンディショナ1の停止処理を行う。具体的には、停止処理部35は、インバータ装置2にゲートブロック信号を出力して、インバータ装置2の電力変換動作を停止させる。また、停止処理部35は、連系用遮断器4に開放指令を出力して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離させる。
【0058】
なお、単独運転検出装置3は、アナログ回路として実現してもよいし、ディジタル回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを単独運転検出装置3として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0059】
図7は、単独運転検出装置3が行う能動検出部32の切替処理を説明するためのフローチャートである。当該切替処理は、所定のタイミングで実行される。
【0060】
まず、電圧フリッカが検出されたか否かが判別される(S1)。具体的には、稼働電源検出部31が、電圧フリッカが発生しているかどうかを検出し、検出した場合に、検出信号を切替部36に出力する。電圧フリッカが検出された場合(S1:YES)、能動検出部32が機能しない状態(停止状態)になる(S2)。具体的には、切替部36に検出信号が入力されて、切替部36は、能動検出部32にオフ信号を出力する。これにより、能動検出部32は、切替部36からオフ信号を入力されて、機能しない状態になる。ステップS1において、電圧フリッカが検出されない場合(S1:NO)、電圧フリッカが検出されなくなった状態が第3判定時間T3経過したか否かが判別される(S3)。具体的には、切替部36が、検出信号が入力されなくなったときに計時を開始し、計時された時間が第3判定時間T3以上になったか否かを判定する。
【0061】
第3判定時間T3が経過していない場合(S3:NO)、能動検出部32が機能しない状態(停止状態)になる(S2)。一方、第3判定時間T3が経過している場合(S3:YES)、能動検出部32が機能する状態(機能状態)になる(S4)。具体的には、切替部36に検出信号が入力されない状態が第3判定時間T3継続したことで、切替部36は、能動検出部32にオン信号を出力する。これにより、能動検出部32は、切替部36からオン信号を入力されて、機能する状態になる。その後、電圧フリッカが検出されたときに(S1:YES)、切替部36による計時は停止されて、計時時間はゼロにクリアされる。
【0062】
なお、
図7のフローチャートに示す処理は一例であって、単独運転検出装置3の切替処理は上述したものに限定されない。受動検出部33は、切替処理に関係なく、常時、機能している。
【0063】
電圧フリッカが検出されている状態では、能動検出部32は機能しないが、受動検出部33は機能している。この場合、配電系統Cに規定以上の稼働電源Bが接続されているので、単独運転が発生した際には、受動検出部33が単独運転を検出できる。一方、電圧フリッカが検出されていない状態では、能動検出部32が機能する。能動検出部32は、従来型能動的方式の単独運転検出装置と同様、無効電力を注入して単独運転を検出する。したがって、この場合、単独運転が発生した際には、能動検出部32が単独運転を検出できる。以上のように、単独運転検出装置3は、電圧フリッカが検出されている状態でも、検出されていない状態でも、単独運転を検出できる。
【0064】
上述したように、切替部36は、オフ信号をオン信号に切り替えるタイミングを遅らせる。しかし、第3判定時間T3が2秒以内に設定されているので、仮に、電圧フリッカが検出されなくなったタイミングと停電発生のタイミングが同時であった場合でも、電圧フリッカが収束して第3判定時間T3経過後(2秒以内)に能動検出部32が機能を開始する。能動検出部32は、1秒以内に単独運転を検出するので、停電発生から3秒以内に、単独運転を検出できる。また、切替部36がオフ信号をオン信号に切り替えるタイミングを遅らせるので、能動検出部32は、電圧変動がほとんど収束してから、無効電力を注入する。したがって、電圧フリッカが再発することは抑制される。
【0065】
次に、本実施形態に係る単独運転検出装置3の作用効果について説明する。
【0066】
本実施形態によると、切替部36は、稼働電源検出部31が規定以上の稼働電源Bが接続されていることを検出した場合に能動検出部32を機能させない状態に切り替える。これにより、単独運転検出装置3は、規定以上の稼働電源Bが接続されている場合は、能動検出部32を機能させず、受動検出部33だけを機能させて、単独運転を検出する。この場合、単独運転検出装置3は、無効電力を注入しないので、電圧フリッカ現象を誘発しない。一方、切替部36は、稼働電源検出部31が規定以上の稼働電源Bが接続されていることを検出しない場合に能動検出部32を機能する状態に切り替える。これにより、単独運転検出装置3は、規定以上の稼働電源Bが接続されていない場合は、能動検出部32を機能させて無効電力を注入する。しかし、規定以上の稼働電源Bが接続されていないので、無効電力を注入しても、電圧フリッカ現象を誘発しない。
【0067】
また、本実施形態によると、稼働電源検出部31は、配電系統Cにおいて、電圧フリッカが発生しているかどうかを検出することで、接続状態(規定以上の稼働電源Bが接続されているか否か)を検出する。配電系統Cに接続されている稼働電源Bが多いほど、注入される無効電力が多くなるので、電圧変動が大きくなる。電圧変動が大きくなった場合に、電圧フリッカが発生する。つまり、電圧フリッカの発生と、接続されている稼働電源Bの合計容量との間には相関関係がある。したがって、稼働電源検出部31は、接続状態を適切に検出できる。
【0068】
また、本実施形態によると、切替部36は、稼働電源検出部31から検出信号を入力されない状態が第3判定時間T3継続したときに、オフ信号をオン信号に切り替える。第3判定時間T3は、電圧フリッカが収束して稼働電源検出部31が検出信号を出力しなくなってから、電圧変動がある程度収束するまでの時間が設定されている。能動検出部32は、電圧変動がほとんど収束してから無効電力を注入するので、電圧フリッカが再発することが抑制される。これにより、切替部36は、オン信号とオフ信号とを短い時間の間に交互に切り替える状態になることを防止できる。
【0069】
また、本実施形態によると、第3判定時間T3は、2秒以内に設定されている。したがって、仮に、電圧フリッカが検出されなくなったタイミングと停電発生のタイミングとが同時であった場合でも、能動検出部32は、電圧フリッカが収束して第3判定時間T3経過後(2秒以内)に機能を開始し、1秒以内に単独運転を検出するので、停電発生から3秒以内に単独運転を検出できる。
【0070】
なお、本実施形態においては、受動検出部33が周波数fに基づいて判定を行う場合について説明したが、これに限られない。受動検出部33は、パワーコンディショナ1が出力する電圧、電流、電力(有効電力、無効電力)、周波数、並びに、3次、5次、7次などの所定の高調波成分の電圧、電流、電力、および周波数などの電気的な特性に基づいて、判定を行ってもよい。また、受動検出部33で判定に用いる検出値は、電気的な特性の大きさ、偏差(基準からの変化量)、変化量、および変化率などであってもよい。また、三相の交流電圧から不平衡率を検出して、当該不平衡率を判定に用いる検出値としてもよい。受動検出部33に設定される判定条件は、用いる検出値に応じて、適宜設定される。例えば、受動検出部33は、検出値が閾値以上になった場合に、所定時間T0の継続を待つことなく判定条件に一致したと判定してもよい。なお、判定条件は限定されず、単独運転が発生したと断定できる条件であればよい。
【0071】
また、受動検出部33は、2種類以上の検出値を用いてそれぞれで単独運転の検出を行ってもよい。例えば、受動検出部33は、上述したように周波数fの変化量Δfに基づいて単独運転を検出し、これとは別に、系統電圧の電圧実効値vに基づいて単独運転を検出し、両者が単独運転を検出した場合に、単独運転を検出してもよい。また、受動検出部33は、両者のうちの少なくとも一方が単独運転を検出した場合に、単独運転を検出してもよい。
【0072】
また、本実施形態においては、稼働電源検出部31が周波数と電圧との両面で電圧フリッカが発生しているかどうかを検出する場合について説明したが、これに限られない。例えば、稼働電源検出部31は、周波数の変動のみで、電圧フリッカが発生しているかどうかを検出してもよい。すなわち、稼働電源検出部31は、第1判定部49(周波数検出部41、変化量検出部42、ローパスフィルタ43、PP値検出部44、および周波数判定部45)だけを備えてもよい。また、稼働電源検出部31は、電圧の変動のみで、電圧フリッカが発生しているかどうかを検出してもよい。すなわち、稼働電源検出部31は、第2判定部59(実効値検出部51、PP値検出部52、周波数検出部53、指標値算出部54、および電圧判定部55)だけを備えてもよい。また、稼働電源検出部31において、周波数での判定方法は限定されないし、電圧での判定方法も限定されない。例えば、稼働電源検出部31は、電圧での判定方法として、従来の指標値ΔV10を算出して、規制値以上の場合に電圧フリッカが発生していると判定する方法を採用してもよい。
【0073】
また、本実施形態においては、稼働電源検出部31は電圧フリッカが発生しているかどうかを検出することで接続状態を検出する場合について説明したが、これに限られない。稼働電源検出部31は、他の方法で接続状態を検出してもよい。例えば、稼働電源検出部31は、配電系統Cに接続されている稼働電源Bから通信などによってそれぞれの稼働状態を収集することで、接続状態を検出してもよい。また、稼働電源検出部31は、停電時に、稼働電源Bが注入する無効電力による周波数fの変化状況などに基づいて、接続状態を検出してもよい。
【0074】
なお、切替部36は、オフ信号をオン信号に切り替えた際に、能動検出部32に所定量の無効電力を注入させてもよい。当該切り替え時に停電が発生していた場合、能動検出部32は、機能する状態になっても、配電系統Cに注入された無効電力が少なく、単独運転を検出できない場合がある。能動検出部32が機能する状態になったときに、所定量の無効電力が注入されることで、能動検出部32が単独運転を検出しやすくなる。
【0075】
〔第2実施形態〕
図8は、第2実施形態に係る単独運転検出装置3aを説明するための図であり、稼働電源検出部31の内部構成の詳細を示すブロック図である。同図において、第1実施形態に係る単独運転検出装置3の稼働電源検出部31(
図2参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、単独運転検出装置3aの稼働電源検出部31以外の構成は単独運転検出装置3と共通するので、図の記載および説明を省略している。本実施形態に係る単独運転検出装置3aは、稼働電源検出部31が閾値の自動調整機能を備えている点で、単独運転検出装置3と異なる。
【0076】
第2実施形態に係る稼働電源検出部31は、閾値変更部47をさらに備えている。閾値変更部47は、周波数判定部45および電圧判定部55に設定されている閾値および判定時間を変更する構成である。閾値変更部47は、PP値検出部44から変化量ΔfのPP値を入力され、指標値算出部54から指標値ΔVXを入力され、切替部36が出力する信号(オン信号およびオフ信号)を入力される。閾値変更部47は、切替部36から入力されるオン信号がオフ信号に切り替わったとき、または、論理積部46が検出信号を出力し始めたときから、変化量ΔfのPP値および指標値ΔVXの変化を記録する。そして、変化量ΔfのPP値および指標値ΔVXの変化の仕方に基づいて、周波数判定部45の閾値Δf0と第1判定時間T1、および、電圧判定部55の閾値ΔVX0と第2判定時間T2の値を変更する。電圧フリッカが検出されて、能動検出部32が機能を停止した場合、電圧フリッカが収束するが、その収束の仕方は、稼働電源Bの接続状態および配電系統Cの状態によって異なる。閾値変更部47は、変化量ΔfのPP値および指標値ΔVXの変化の仕方に応じて、電圧フリッカの検出を判定するための閾値および判定時間を、最適な値に調整する。
【0077】
例えば、能動検出部32が機能を停止したときからの変化量ΔfのPP値および指標値ΔVXの変化が比較的ゆっくりである場合、配電系統Cの容量に対して稼働電源Bの合計容量が比較的多いと考えられる。この場合は、閾値を小さくし、判定時間を短くする。これにより、電圧フリッカの検出を早めることができる。また、電圧フリッカが確実に収束してから能動検出部32を復帰させる(電圧フリッカが相当小さくなるまで収束と判定させない)こともできる。なお、閾値変更部47による閾値および判定時間の調整のロジックは限定されない。また、閾値変更部47は、変化量ΔfのPP値または指標値ΔVXのどちらか一方の変化の仕方に基づいて調整を行ってもよい。また、閾値変更部47は、閾値のみを調整してもよいし、判定時間のみを調整してもよい。また、周波数判定部45または電圧判定部55のどちらか一方に対してのみ調整を行ってもよい。
【0078】
本実施形態においても、単独運転検出装置3aは、規定以上の稼働電源Bが接続されている場合は、能動検出部32を機能させず、受動検出部33だけを機能させて単独運転を検出するので、電圧フリッカ現象を誘発しない。また、単独運転検出装置3aは、規定以上の稼働電源Bが接続されていない場合は、能動検出部32を機能させて無効電力を注入するが、規定以上の稼働電源Bが接続されていないので、無効電力を注入しても、電圧フリッカ現象を誘発しない。また、単独運転検出装置3aは、単独運転検出装置3と共通する構成により、単独運転検出装置3と同等の効果を奏する。さらに、本実施形態によると、閾値変更部47は、変化量ΔfのPP値および指標値ΔVXの変化の仕方に基づいて、電圧フリッカの検出を判定するための閾値および判定時間を自動的に調整する。したがって、稼働電源検出部31は、電圧フリッカの検出を判定するための閾値および判定時間を最適な値に自動調整できる。例えば、能動検出部32が機能を停止したときからの変化量ΔfのPP値および指標値ΔVXの変化が比較的ゆっくりである場合に、閾値変更部47が閾値を小さくし、判定時間を短くするように設定されていると、電圧フリッカの検出を早めることができるので、電圧フリッカ発生の予兆を検出できるようになる。また、電圧フリッカが確実に収束するまで能動検出部32を復帰させないようにできるので、能動検出部32を復帰させたときに、電圧フリッカが再発することを抑制できる。
【0079】
本発明に係る単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0080】
1:パワーコンディショナ、3,3a:単独運転検出装置、31:稼働電源検出部、32:能動検出部、33:能動検出部、36:切替部、B:稼働電源、C:配電系統