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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102769
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】生物脱臭装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/38 20060101AFI20230718BHJP
   B01D 53/84 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B01D53/38 100
B01D53/84 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208154
(22)【出願日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022002789
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】307027131
【氏名又は名称】株式会社一芯
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】濱口 正明
(72)【発明者】
【氏名】濱口 学
(72)【発明者】
【氏名】尾縣 克博
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA03
4D002AA05
4D002AA06
4D002AA13
4D002AB02
4D002AC08
4D002AC10
4D002BA16
4D002BA17
4D002CA07
4D002DA59
4D002EA05
4D002GA01
4D002GA02
4D002GA04
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB04
4D002GB09
4D002HA03
(57)【要約】
【課題】 臭気成分を有する臭気性ガスの脱臭効率の向上を可能とする生物脱臭装置を提供する。
【解決手段】
臭気性ガスを微生物により脱臭する生物脱臭装置であり、微生物を担持する担体を収容する充填層5と、充填層5に供給される液体7を保持する液槽6と、液槽6内の液体7中に気泡Bを生成して液槽6上に気泡層BLを成長させる気泡層発生機構とを備える。液体7は、粘性成分を含むことにより粘性を有する。臭気性ガスは充填層5内を通過し、脱臭処理が行われる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気性ガスを微生物により脱臭する生物脱臭装置であり、
前記微生物を担持する担体を収容する充填層(5)と、
前記充填層(5)に供給される液体(7)を保持する液槽(6)と、
前記液槽(6)内の前記液体(7)中に気泡(B)を生成して前記液槽(6)上に気泡層(BL)を形成する気泡層発生機構とを備え、
前記液体(7)は、粘性成分を含むことにより粘性を有し、
前記臭気性ガスは前記充填層(5)内を通過するように構成されることを特徴とする生物脱臭装置。
【請求項2】
前記気泡層発生機構は、前記充填層(5)内に前記気泡層(BL)を形成することを特徴とする請求項1記載の生物脱臭装置。
【請求項3】
前記粘性成分は生物由来の粘性物質であることを特徴とする請求項1又は2記載の生物脱臭装置。
【請求項4】
前記充填層(5)は、前記粘性成分としての粘性物質を生成する粘性付与生物を収容することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の生物脱臭装置。
【請求項5】
前記充填層(5)は、前記粘性付与生物の生存を補助する栄養素を供給する補助生物を収容することを特徴とする請求項4記載の生物脱臭装置。
【請求項6】
前記充填層(5)は、前記粘性付与生物を担体として構成される主担体層(52)と前記補助生物を担体として構成される副担体層(51、53)とを有することを特徴とする請求項5記載の生物脱臭装置。
【請求項7】
前記補助生物はイネ科植物、イ草科植物、草木類から選択されることを特徴とする請求項5又は6記載の生物脱臭装置。
【請求項8】
前記粘性付与生物は褐藻類であることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項記載の生物脱臭装置。
【請求項9】
前記主担体層(52)の前記粘性付与生物は褐藻類であり、前記主担体層(52)は前記副担体層(51、53)の上部に配置されていることを特徴とする請求項6記載の生物脱臭装置。
【請求項10】
前記粘性成分は増粘剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の生物脱臭装置。
【請求項11】
前記充填層(5)に前記臭気性ガスを導入するガス導入部(3)を有し、
前記ガス導入部(3)は、ガス放出口(15)を有し、
前記ガス放出口(15)は、前記液槽(6)内の前記液体(7)の液面下に位置し、
前記ガス導入部(3)は前記気泡層発生機構を構成することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の生物脱臭装置。
【請求項12】
前記気泡層発生機構は、送気ポンプ(30)及び前記送気ポンプ(30)に接続された気泡発生ノズル(31)を有し、
前記送気ポンプ(30)は、前記気泡発生ノズル(31)に空気又は前記臭気性ガスを送気し、
前記気泡発生ノズル(31)は前記液槽(6)内の前記液体(7)の液面下に位置することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の生物脱臭装置。
【請求項13】
前記送気ポンプ(30)は、前記臭気性ガスの臭気成分濃度に応じて排気量が制御されることを特徴とする請求項12記載の生物脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気成分を含むガスを処理する生物脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、し尿処理場、下水処理場等において発生するガスには、一般に、アンモニアや硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル等の硫黄系臭気成分が含まれている。臭気成分を含むガス(以下、臭気性ガスと称することがある)を処理する脱臭装置として、脱臭塔内でガス中の臭気成分を化学的に薬液と反応させて除去する湿式脱臭装置や、臭気成分を微生物により分解させる生物脱臭装置が知られている。
生物脱臭装置は、薬液を用いた湿式脱臭装置と比較して維持管理が容易であり、ランニングコストが低いという点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-115742号公報
【特許文献2】特開平4-35717号公報
【特許文献3】特開2007-136252号公報
【特許文献4】特開2007-260559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
し尿処理場において、衛生車(バキュームカー)により、し尿受入槽にし尿が投入された場合や、下水処理場において下水流入の多い時間帯においては、臭気性ガスの臭気成分濃度は、それ以外の平常時の臭気成分濃度と比較して急激に上昇することがある。
図7は、臭気成分である硫化水素の濃度の時刻依存性の例を示すグラフである。特定の時間帯Aにおいて急激に硫化水素濃度が上昇し、その後急激に減少することが分かる。
微生物の細胞分裂には数時間を要するため、生物脱臭装置は、薬液による化学反応を用いた脱臭装置と異なり、急な臭気成分の濃度の変化に合わせて脱臭能力を増減させることはできない。脱臭能力が不足すると、生物脱臭装置の後段に設けられた活性炭吸着塔の負担が増大し、活性炭の交換周期が短くなり、ランニングコストが増大する。
また、最大濃度の臭気成分に合わせて脱臭装置の脱臭能力を設定すると、脱臭装置の大容量化が必要となり、維持管理費やランニングコストの増大を招くことになる。そのため、生物脱臭装置のさらなる脱臭効率の向上が要望される。
【0005】
本発明は、脱臭効率の向上を可能とする生物脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る生物脱臭装置は、
臭気性ガスを微生物により脱臭する生物脱臭装置であり、
前記微生物を担持する担体を収容する充填層5と、
前記充填層5に供給される液体7を保持する液槽6と、
前記液槽6内の前記液体7中に気泡Bを生成して前記液槽6上に気泡層BLを形成する気泡層発生機構とを備え、
前記液体7は、粘性成分を含むことにより粘性を有し、
前記臭気性ガスは前記充填層5内を通過するように構成されることを特徴とする。
【0007】
上記構成において、
前記気泡層発生機構は、前記充填層5内に前記気泡層BLを形成するように構成されていてもよい。
【0008】
上記構成のように、粘性成分により粘性を有する液体中に気泡を生成して、気泡層を形成することにより、臭気成分の除去率を増大させることができる。
特に、液体は粘性を有するため、気泡層を充填層にまで形成することが可能であり、充填層中の気泡層の高さに依存して、臭気成分の除去率を増大させることが可能である。
【0009】
上記構成において、
前記粘性成分は生物由来の粘性物質であるように構成されていてもよい。
【0010】
上記構成において、
前記充填層5は、前記粘性成分としての粘性物質を生成する粘性付与生物を収容するように構成されていてもよい。
【0011】
液体に粘性を付与する粘性成分を生物由来の粘性物質とすることで、生物脱臭装置の維持管理が、さらに容易となる。
また、充填層に粘性付与生物を収容することで、別途液体に粘性を与える装置が不要となり、装置構成も簡単となる。
【0012】
上記構成において、
前記充填層5は、前記粘性付与生物の生存を補助する栄養素を供給する補助生物を収容するように構成されていてもよい。
【0013】
補助生物は、粘性物質を生成する粘性付与生物の生存を補助し、生物脱臭装置の維持管理をさらに容易にする。
【0014】
上記構成において、
前記充填層5は、前記粘性付与生物を担体として構成される主担体層52と前記補助生物を担体として構成される副担体層51、53とを有するように構成されていてもよい。
【0015】
このように充填層を、主担体層と副担体層とから構成される充填層とすることにより、メンテナンスが容易となる。
【0016】
上記構成において、
前記補助生物はイネ科植物、イ草科植物、草木類から選択されるように構成されていてもよい。
【0017】
上記構成において、
前記粘性付与生物は褐藻類であるように構成されていてもよい。
【0018】
このような補助生物又は粘性付与生物を用いることで、容易かつ安全に充填層を構成することができる。
【0019】
上記構成において、
前記主担体層52の前記粘性付与生物は褐藻類であり、前記主担体層52は前記副担体層51、53の上部に配置されているように構成されていてもよい。
【0020】
このような配置とすることで、気泡層の安定的な生成効果を特に高めることができる。
【0021】
上記構成において、
前記粘性成分は増粘剤であるように構成されていてもよい。
【0022】
上記構成において、
粘性成分として増粘剤を用いることも可能である。工業的に制御が容易な構成を選択することも可能である。
【0023】
また、本発明に係る生物脱臭装置は、
前記充填層5に前記臭気性ガスを導入するガス導入部3を有し、
前記ガス導入部3は、ガス放出口15を有し、
前記ガス放出口15は、前記液槽6内の前記液体7の液面下に位置し、
前記ガス導入部3は前記気泡層発生機構を構成することを特徴とする。
【0024】
このような生物脱臭装置とすることにより、臭気性ガスを用いることにより、容易に液体に気泡を生成し、気泡層を形成することが可能となる。
【0025】
また、本発明に係る生物脱臭装置は、
前記気泡層発生機構は、送気ポンプ30及び前記送気ポンプ30に接続された気泡発生ノズル31を有し、
前記送気ポンプ30は、前記気泡発生ノズル31に空気又は前記臭気性ガスを送気し、
前記気泡発生ノズル31は前記液槽6内の前記液体7の液面下に位置することを特徴とする。
【0026】
このような構成の生物脱臭装置とすることにより、送気ポンプ及び気泡発生ノズルによって、臭気性ガスに依存することなく、気泡層の形成を制御することが可能となる。
【0027】
上記構成において、
前記送気ポンプ30は、前記臭気性ガスの臭気成分濃度に応じて排気量が制御される
ように構成されていてもよい。
【0028】
このような構成の生物脱臭装置とすることにより、効率的に臭気性ガスの臭気成分の除去を行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る生物脱臭装置によれば、脱臭効率の向上を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1(A)は、本実施形態1における生物脱臭装置100の構成を示す模式図であり、図1(B)は生物脱臭装置100の動作状態を説明するための模式図である。
図2図2は生物脱臭装置100の臭気成分の除去効果(脱臭効果)を説明する図である。図2(A)は担体層5における気泡層BLの高さ(H)と除去率との関係を示し、図2(B)は担体層5における気泡層BLの高さ(H)と担体層5の圧力損失との関係を示す。
図3図3(A)、(B)は実施形態2の生物脱臭装置100の構成を説明する模式図である。
図4図4は、実施形態3の生物脱臭装置100の構成例を示す模式図である。
図5図5は、実施形態3の生物脱臭装置100の臭気成分の除去効果(脱臭効果)を説明する図である。図5(A)は充填層5における気泡層BLの高さ(H)と除去率との関係を示し、図5(B)は充填層5における気泡層BLの高さ(H)と充填層5の圧力損失との関係を示す。
図6図6(A)は、液槽6に粘性付与生物を用いた粘性付与機構を設けた生物脱臭装置100の構成例を説明する模式図であり、図6(B)は循環機構に粘性付与機構を設けた生物脱臭装置100の構成例を説明する模式図である。(実施形態4)
図7図7は、臭気成分である硫化水素の濃度の時刻依存性の例を示すグラフである。
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0032】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0033】
(実施形態1)
<装置構成>
図1(A)は、実施形態1の生物脱臭装置100の構成を示し、図1(B)は生物脱臭装置100の動作状態を説明するための模式図である。
図1に示すように、脱臭装置100は脱臭塔1を備え、処理対象である臭気成分を含む被処理ガスG(例えばアンモニア、硫化水素等の硫黄系の臭気成分を含む臭気性ガス)は、脱臭塔1のガス流入口2から取り入れられ、第1の配管3(ガス導入部3)により脱臭塔1内部に導入される。第1の配管3にブロア4(送風機4)を設け、被処理ガスGを脱臭塔1内部に送り込んでもよい。
なお、簡単のため、臭気性ガスである被処理ガスGをガスGと称する。
【0034】
脱臭塔1内部には、充填層5及び充填層5の下方に液槽6(循環液槽6)が設けられている。
充填層5には、例えばチオバチルス菌等の臭気成分を分解する公知の微生物を担持する(固定化する)担体が収容されている。ガスGは、第1の配管3により脱臭塔1内の充填層5へ導入され、充填層5内を通過する。
微生物の担体は、例えば、粒状の多孔質のセラミックや木片の他、公知の担体を用いることができる。担体は、金網やプラスチック等のメッシュ容器に収容され、充填層5に保持されている。また、担体の保持手段は、メッシュ容器に限定されるものではなく、例えば、プラスチック等の網の仕切り板(又は仕切り網)上に担体を保持してもよい。
なお、メッシュ容器は、腐食しない材料から構成されればよい。
【0035】
液槽6は、充填層5の下部に液密な空間として設けられている。液槽6には、微生物の生存に必要な水を主成分とする液体7(循環液7)が保持されている。
【0036】
液槽6には、第1の排出口8(循環液排出口8)が設けられている。
第1の排出口8には、第2の配管9が接続され、第2の配管9は、脱臭塔1の外部に設けられたポンプ10(循環ポンプ10)の流入口に接続されている。ポンプ10の流出口には、第3の配管11(循環配管11)が接続されている。
第3の配管11の先端は、導入口12を介して脱臭塔1内に挿入されている。第3の配管11の先端には液放出部13(スプレーノズル13)が設けられ、液放出部13は充填層5の上方に配置されている。
【0037】
なお、周囲の気温が低い場合、液体7は、微生物の活動の低下を防止するため、所定の温度に保つように液槽6又は第3の配管11にヒータ等の温度調整機構を設けてもよい。
【0038】
ポンプ10を稼働することにより、液槽6内の液体7は、液放出部13を介して充填層5へ噴出される。充填層5へ噴出された液体7は、再び液槽6に戻る。第2の配管9、ポンプ10、及び第3の配管11は、液体7を循環させる循環機構を構成する。
液体7は、充填層5へと供給された後、充填層5内を通過して液槽6に戻るため、液体7中にも充填層5の担体に担持された微生物が生息する。
【0039】
第1の配管3の先端部には、脱臭塔1内に設けられたガス放出部14が設けられている。ガス放出部14は、例えば円筒状のパイプにより形成され、さらに吹出口15(ガス放出口15)が設けられている。吹出口15は、ガス放出部14の例えば底部側に設けられ、例えば1mm以上~10mm以下の円形の貫通孔により構成してもよい。また、ガス放出部14の底部に設けた開口部に、微小な孔を有する多孔質板を設置してもよい。
吹出口15は、ガスGを液体7中に放出するため、液槽6の液体7中に配置されている。吹出口15は、液体7の液面下に位置する。
なお、吹出口15をガス放出部14の底部側に設けることで、吹出口15の閉塞を防止することができる。
【0040】
後述するように、吹出口15は、液体7に気泡を生成する目的で使用するため、吹出口15から放出されるガスGにより液体7中に気泡が生成可能であれば、吹出口15の液面からの距離はどのように設定してもよい。例えば、気泡の発生により液体7の液面が揺らいでも吹出口15が液体7に完全に覆われるように、また、発生する気泡の直径より液面殻の距離が長くなるように、吹出口15の液面からの距離を設定することができる。
但し、液面からの距離が長くなるに従い、液槽6内の液体7の液圧により、ブロア4への負荷が増大することになる。そのため、吹出口15を液面近傍に、例えば液面下2cm以上~20cm以下の位置に配置することで、ブロア4の負荷を軽減し、ブロア4の大容量化を不要とすることができる。
ブロア4の負荷、具体的には、モータのトルク又は消費電力の増大が10%以下となるように、吹出口15位置の液面からの距離を決定してもよい。
なお、ブロア4の送風能力が十分に高い場合、吹出口15の設置位置をさらに深く設定することを排除するものではない。
【0041】
生物脱臭装置100は、液体7の排出のため、排出管16が設けられ、排出管16にはバルブ17が設けられている。
排出管16は、微生物の死骸の排出やpH値の調整等のため、液体7の一部を定期的に排出したり、液体7の交換のために使用することができる。
【0042】
後述するように、生物脱臭装置100は、吹出口15から気泡Bを生成し、気泡層BLを成長させるように構成されている。そのため生物脱臭装置100は、生成された泡(気泡)の膜である泡膜の強度を高め、泡の崩壊を防止又は泡の寿命を長くして泡を持続させるために、液体7に粘性を与える成分(以下、粘性成分と称す。)を供給する粘性付与機構を備えている。
粘性付与機構は、粘性成分として増粘剤を収容する薬剤タンク18、薬剤タンク18に収容されている増粘剤を液槽6に送り出すポンプ19(送出ポンプ19)、及び増粘剤を脱臭塔1に導入ための第4の配管20を備えている。
【0043】
増粘剤として、公知の増粘剤を使用することができ、例えばポリビニールアルコール、メチルセルロース系増粘剤、アルギン酸ナトリウム、デンプン(水溶液又は粉)等が使用できるが、これに限定するものではない。
液体7の増粘剤の濃度(添加率)は、好適には0.01%以上~3%以下、さらに好適には0.1以上~1%以下である。
増粘剤の濃度をモニタし、ポンプ19を制御して液体7中の増粘剤の濃度を一定に保つことができる。なお、手動で増粘剤を添加してもよい。
増粘剤は、工業的に生産された市販の増粘剤を使用することができ、増粘剤の濃度により粘性を制御することが容易である。
【0044】
生物脱臭装置100は、液体7のpH値を微生物の生息に最適な範囲(例えばpH値の1以上~7以下)に調整するためのpH値の調整機構を有してもよい。なお、pH値の範囲は上記に限定するものではなく、採用する微生物に応じて設定すればよい。
pH値の調整機構は、臭気成分の微生物の分解により例えば液体7の酸の濃度が上昇した場合、液体7の酸を中和する中和溶液(例えば水酸化ナトリウム溶液)を保持する中和液タンク21、中和液タンク21に保持されている中和溶液を液槽6に送り出すポンプ22(中和ポンプ22)及び中和溶液を脱臭塔1に導入するための第5の配管23を備えている。
【0045】
生物脱臭装置100は、液体7を補給するための、液補給機構(循環液補給機構)を有してもよい。液補給機構は、例えば、液タンク24(水タンク24)、液タンク24に保持されている補給液(循環用液体)、例えば水を液槽6に送り出すポンプ25(補給ポンプ25)及び補給液(循環用液体)を脱臭塔1に導入するための第6の配管26を備えている。
【0046】
生物脱臭装置100は、ガス排出口28(排気口28)を有し、脱臭塔1において脱臭処理が完了したガスGは、ガス排出口28から脱臭塔1の外部に排出される。
ガスGは、生物脱臭装置100の第1の配管3、充填層5、ガス排出口28の順に流れるガス流通路を通過して脱臭処理が行われる。
脱臭されガス排出口28から排出されるガスGは、例えば大気に放出してもよいが、さらに予備的に生物脱臭装置100のガス排出口28に接続して設けた、活性炭等の物理的吸着剤を有する吸着塔に流入させ、2段の脱臭処理を行ってもよい。
【0047】
なお、充填層5の上方において、液放出部13とガス排出口28との間に気液分離装置29(デミスター29)を設けてもよい。
後述するように、液体7を用いて気泡を生成するため、気泡がガスGの気流に運ばれて、液体7が損失し易くなる。
気液分離装置29は、ガスGと液体7とを分離し、ガスG中の液体7を除去することができる。気液分離装置29は、気泡が流出することを防止し、液体7の損失を低減する効果を有する。
なお、気液分離装置29は、例えばワイヤーメッシュ等により構成される公知の装置を使用することができる。分離された液体7は、下方の充填層5へと落下する。
【0048】
<脱臭処理>
以下、図1(B)を参照し、生物脱臭装置100による脱臭処理について説明する。
ガス放出部14の少なくとも一部は液槽6内の液体7に没し、吹出口15は液体7の液面下に位置する。
吹出口15から放出されたガスGは、液槽6内の液体7中に気泡Bを生成する。
気泡Bは液体7中を上昇し、液体7の液面に到達する。液体7は、添加された粘性成分によって粘性が付与されているため、発生する気泡Bの液体7からなる泡膜の強度が高められ、多くの気泡Bは、直ちに消失することはない。そのため、気泡Bは、その寿命の範囲において、液体7の液面上に蓄積され、気泡層BLを生成し、成長させる。その結果、吹出口15のバブリング作用により、気泡層BLは充填層5の位置まで成長させることができる。すなわち、気泡層BLは充填層5の内部にまで形成されることになる。
生物脱臭装置100において、第1の配管3(特に、その先端に設けられたガス放出部14及び吹出口15)は、気泡層発生機構を構成する。
【0049】
充填層5における気泡層BLの高さ(H)は、ガスGの風量、吹出口15の形状、液体7中の粘性成分(増粘剤)の濃度に依存する。そのため、これらの条件により気泡層BLの高さ(H)を制御することができる。
気泡層BLの高さ(H)は、目視により確認が可能なように、脱臭塔1の充填層5の壁面の少なくとも一部は、透明な材質、例えば、透明PVC(ポリ塩化ビニル)、アクリル板、透明ガラス等で構成される。なお、気泡層BLの高さ(H)を、脱臭塔1の透明な壁面部の外側に設けられた光学的検知装置で検出することも可能である。
【0050】
なお、気泡層BLは液体7の泡膜を有するため、気泡層BLにより充填層5への液体7の供給は可能である。しかし、液放出部13から放出され充填層5へ供給される液体7は、気泡層BLの気泡Bと接触し、気泡Bを消失させる効果を備えている。そのため、下方からの気泡層BLの成長と、上方からの気泡層BL表面の気泡Bの消泡により、気泡層BLの高さ(H)をさらに安定させることができる。
また、充填層5に担持された微生物の死骸を液槽6に洗い流すこともできる。
【0051】
図2は生物脱臭装置100の臭気成分の除去効果(脱臭効果)を説明する図である。図2(A)は充填層5における気泡層BLの高さ(H)と除去率との関係を示し、図2(B)は充填層5における気泡層BLの高さ(H)と充填層5の圧力損失との関係を示す。
なお、除去率は臭気成分の入口濃度、及び出口濃度を計測し、除去率=[出口濃度]/[入口濃度]により算出した。
圧力損失は、充填層5の上部P2でのガスGの圧力と充填層5の下部P1でのガスGの圧力との差により計測した。(図1参照)
【0052】
図2(A)、(B)より、気泡層BLの高さ(H)の増大とともに、除去率が増大し、圧力損失が増大することが理解できる。すなわち、気泡層BLを形成することで、生物脱臭装置100の除去率が大幅に向上することが理解できる。
従来の微生物を利用した脱臭装置の除去率は、図2(A)の気泡層BLの高さ(H)が0cmの除去率より低い値であると考えられる。そのため、本生物脱臭装置100は臭気成分の除去率を大きく向上できるため、従来の脱臭装置と比較して大容量化することなく、高濃度の臭気成分のガスGの処理が可能となる。
【0053】
上述のように除去率が増大した理由は、気泡層BLが成長すると、充填層5において圧力損失が生じ、ガスGの充填層5の滞在時間が増大し、臭気成分の分解が向上したものと考えられる。
さらに、各気泡に閉じ込められたガスGは、気泡が崩壊するまでの時間、気泡の膜(泡膜)中に存在する微生物と接触するため、気泡中のガスGも効果的に脱臭される。気泡層BL自体も脱臭効率を向上させる効果があるため、液槽6の液体7の表面上の気泡層BLが充填層5に達しない場合であっても、除去率の向上は得られる。しかし、充填層5に達するまで気泡層BLを成長させることで、充填層5内での圧力損失を発生させ、さらに一層の除去率の向上効果が得られる。
【0054】
また、液体7中には、多くの微生物が生息していることが知られている。実際には、液槽6の液体7中の微生物数は、充填層5の担体に担持されている微生物数より多いこともある。そのため、液槽6内の液体7に吹出口15からガスGを放出することで、液槽6内の液体7中の微生物により臭気成分を分解することも可能である。しかし、実効的な脱臭効率の向上を得るためには、液槽6の深い位置に吹出口15を配置する必要があり、液体7の液圧によりブロア4の負荷が増え、大型のブロアが必要となる。そのため、従来は、液体7中の微生物を有効に利用することは困難であった。
しかし、粘性により強化された泡膜を有する気泡により構成された気泡層BL中に微生物を含有させ、ガスGの通過経路である充填層5に液体7の微生物を長時間存在させることで、より多くの微生物とガスGとの接触の機会を増大させるとともに、微生物との接触時間を長くすることができる。その結果、液体7の微生物を有効に活用し、ガスGの脱臭効率を大幅に増大させることができる。
【0055】
なお、図2(B)より、大気圧(101kPa程度)と比較して圧力損失は軽微であることが理解できる。生物脱臭装置100は、この程度の軽微な圧力損失で、非常に大きな脱臭効率の向上効果を得ることができる。
また、ブロア4は、通常大気圧前後の条件で動作するため、気泡層BLによる圧力損失の影響を実質的に受けることはないことも理解できる。
【0056】
従来の微生物を利用した脱臭装置は、微生物数を増大させることにより脱臭効率を向上又は制御していたが、上述のように生物脱臭装置100は気泡層BLの高さにより、脱臭効率を向上及び制御することも可能である。
【0057】
(実施形態2)
生物脱臭装置100は、液体7の気泡層BLを生成することで、除去率を大幅に増大することができる。実施形態1においては、液槽6の液体7中に没したガス放出部14を用いてガスGを導入し、気泡層BLを発生させていた。
実施形態2においては、気泡層BLを発生させるための気泡層発生機構をガス放出部14とは別に、独立して液槽6中に設けている。
【0058】
図3(A)、(B)は実施形態2の生物脱臭装置100の構成を説明する模式図である。
視認性のため図3においては、pH値の調整機構及び液補給機構は省略している。
図3(A)に示すように、生物脱臭装置100は気泡層発生機構を備えている。
気泡層発生機構は、送気ポンプ30(エアーポンプ30)及び気泡発生ノズル31(バブリングノズル31)を有している。気泡発生ノズル31は、気泡を発生するために、例えば周囲の側壁に微細な孔を設けた円筒のパイプや、多孔質板を有する中空の円板、その他市販の気泡発生用ノズルを使用することができる。
【0059】
送気ポンプ30と気泡発生ノズル31とは第7の配管32により接続されている。気泡発生ノズル31は液槽6の液体7の液面下、又は液体7中に配置される。送気ポンプ30は、大気から空気を取り入れ、第7の配管32を介して気泡発生ノズル31に空気を送る。送気ポンプ30から送気された空気は、気泡発生ノズル31から液体7中に気泡Bとなって放出される。
液体7中には増粘剤が添加されているため、気泡発生ノズル31により生成された気泡Bは、図1(B)と同様に気泡層BLを生成する。
気泡層BLは生物脱臭装置100の除去率を増大させることができる。
【0060】
なお、気泡発生ノズル31は、液槽6の底面に近いと、液槽6の底に沈降した微生物の死骸等を気泡Bに取り込み易くなり、気泡Bの寿命が低下する。気泡発生ノズル31は、好適には液槽6の液面近傍に配置する。気泡発生ノズル31の配置箇所の液面からの距離は、実施形態1の吹出口15の例と同様の距離に設定できる。
また、閉塞を避けるため、好適には気泡発生ノズル31は下向きに配置する。
【0061】
実施形態1と異なり、気泡層BLは、送気ポンプ30と気泡発生ノズル31とを有する気泡層発生機構により生成されるため、ガス放出部14を用いて気泡を生成させる必要はない。そのため、ガス放出部14を液体7に没する必要がなく、液体7の表面より上部に配置することができる。ガスGを送るブロア4の負担がさらに軽減される。
【0062】
また、本気泡層発生機構により、気泡槽BLの生成量又は高さを容易に制御することができる。
そのため、ガスGの流入量の増大、又は臭気成分濃度の増大が予想される時間帯において、気泡層BLの高さ(H)が高くなるよう制御することができる。
例えば、計時機能を有する制御装置33(コントローラ33)により、送気ポンプ30の排気量を制御し、送気ポンプ30から気泡発生ノズル31に送気される空気量を制御してもよい。
このように、予め予測される臭気成分の濃度の変化に応じて、脱臭能力を制御し、効率的に脱臭処理を行い、ランニングコストの低減に寄与することができる。
【0063】
なお、図3(B)に示すように、実施形態2においてガス放出部14を液体7に没するように配置する構成を排除するものではない。
本気泡層発生機構を設け、気泡層BLを生成、制御することは、他の実施形態とも組み合わせ可能である。
【0064】
さらに、ガスGの臭気成分の濃度に応じて、気泡層BLの高さを自動で制御することも可能である。
図3(B)に示すように、第1の配管3にセンサ34、例えば硫化水素計等のガス濃度計を設け、センサ34の出力を制御装置33に入力する。制御装置33は、センサ34から出力された臭気成分の濃度に応じて、送気ポンプ30を制御し、例えば臭気成分濃度の増大を検知した場合、送気ポンプ30の排気量を増大させ、気泡層BLの高さ(H)を増大させることができる。また、逆に臭気成分濃度が低下した場合、送気ポンプ30の排気量を低下させ、気泡層BLの高さを低下させることができる。
生物脱臭装置100を、さらに無駄なく効率的に稼働させ、ランニングコストの低減に寄与することができる。
なお、上記の気泡層BLの高さを自動で制御する機構が、図3(A)の構成に適用可能であることは言うまでもない。
【0065】
なお、センサ34として、ガス濃度計の他、圧力計、流量計を採用し、ガスGの生物脱臭装置100への流入量に応じて、送気ポンプ30を制御してもよい。
【0066】
また、ガスGの一部を気泡発生ノズル31に送気し、実施形態1と同様に、ガスGにより気泡を生成してもよい。
図3(B)に示すように、第1の配管3から分岐した第8の配管35が、送気ポンプ30の入口側に接続されている。送気ポンプ30は、ガスGを気泡発生ノズル31に送気し、気泡発生ノズル31は、ガスGが封入された気泡を生成する。
気泡発生ノズル31により生成された気泡B中にガスGを閉じ込め、気泡B中でガスGを脱臭することで、脱臭効率をさらに向上させることができる。
なお、図3(B)は、第8の配管35はブロア4の上流側において第1の配管3から分岐する例を示すが、これに限定するものではない。第8の配管35はブロア4の下流側において第1の配管3から分岐してもよい。
なお、上記のガスGにより気泡を生成する機構が、図3(A)の構成に適用可能であることは言うまでもない。
【0067】
また、気泡層BLの高さ(H)は、脱臭塔1の外側壁面から計測可能である。計測器36、例えば気泡層BLからの反射光や透過光を、一次元に配列された光学的検知装置(リニアセンサ)等を用いて気泡層BLの高さ(H)を計測できる。計測器36の出力を制御装置33に入力し、送気ポンプ30の出力を制御することで、気泡層BLの高さの制御がさらに容易となる。
【0068】
従来の微生物を用いた脱臭装置では、時間帯、ガス流入量、臭気成分濃度に応じて脱臭効率(又は脱臭能力)を変更することは不可能であったが、独立制御可能な送気ポンプ30によりガスGの状態に合わせて気泡層BLの高さを制御することで脱臭効率(又は脱臭能力)を適宜調整することができる。
【0069】
(実施形態3)
実施形態1、2においては、粘性付与機構により粘性成分である増粘剤を提供するように構成されていた。
本実施形態3においては、増粘剤の供給を不要とすることで、装置の稼働を容易とし、作業者の負担の軽減、ランニングコストの低減を可能とする生物脱臭装置100を提供する。
充填層5自体が、粘性付与機構の構成要素となり、粘性成分として生物由来の粘性物質を充填層5から液体7に供給することにより、作業負担を軽減し、ランニングコストを低減することができる。また、別途の粘性付与機構を必要としないため、生物脱臭装置100の構成も簡単となる。
なお、生物由来の粘性成分として、例えばフコイダンが好適に採用できる。
【0070】
粘性成分の供給方法として、粘性物質を生成する生物(以下、粘性付与生物と称することがある。)を充填層5の担体として採用し、粘性付与生物由来の担体に微生物が担持される。上方に位置する液放出部13から充填層5に液体7を散布することで、液体7中に粘性成分を含有させることができる。
なお、セラミックや木片等の担体と、生物由来の担体(以下、生物型担体と称することがある)とを混合して使用してもよい。脱臭能力を有する微生物は、これらの担体に担持される。
【0071】
生物型担体として粘性成分であるフコイダンを生成する生物(粘性付与生物)として、例えば褐藻類を採用することができる。
使用できる褐藻類は、例えば、食用に供されるコンブ、ワカメ、メカブ、モズク、ヒジキ、ノリの他、海洋漂流物のアカモク、ホンダワラ等が利用できるが、これらに限定するものではない。
【0072】
図4は、実施形態3の生物脱臭装置100の構成例を示す模式図である。
図4に示す例においては、充填層5は、液槽6側から順に、第1のサブレイヤ51(第1の副担体層51)、メインレイヤ52(主担体層52)及び第2のサブレイヤ53(第2の副担体層53)を有している。第1のサブレイヤ51、メインレイヤ52、第2のサブレイヤ53は、例えばメッシュ容器により担体を支持する
中間に位置するメインレイヤ52には、粘性成分(例えばフコイダン)を生成する粘性付与生物、例えば褐藻類を生物型担体として採用する。
【0073】
なお、実験の結果、褐藻類は、気泡を生成し、気泡層を維持する優れた効果を有することが確認されている。
【0074】
なお、第1のサブレイヤ51、メインレイヤ52及び第2のサブレイヤ53は、それぞれを個別のメッシュ容器に保持してもよいが、1つの収容容器にプラスチック製等により構成された網により、それぞれ仕切られて、収容されてもよい。
【0075】
なお、褐藻類は、生物の三大栄養素である窒素、カリウム、リンの内、カリウムは比較的多く含まれているが、窒素、リンの含有率が低い。そのため、褐藻類を用いた担体の使用初期においては、十分な脱臭性能が発揮されていても、長期間(例えば数年間)の使用により、脱臭性能が次第に劣化することがある。
上記の含有率が低い栄養素(窒素、リン)を補給し粘性生物の健康な(活性な)生存を補助する目的で、窒素及びリンを多く含む生物(以下、補助生物と称することがある。)、例えばイネ科植物、イ草科植物、草木類を、担体として採用することで、長期にわたる脱臭機能の保全に寄与することができる。
【0076】
イネ科植物として、例えば稲わら、ヨシ、ススキ、マコモ、チガヤ、オギ、パンパスグラス等、イ草科植物として、例えばイグサ、イヌイ、カンガレイ、クサイ、コゴメイ、アオコウガイゼキショウ、コウガイゼキショウ、ハナビゼキショウ、ヒメコウガイゼキショウ、タチコウガイゼキショウ、ドロイ等、草木類として、オオアワダチソウ、オオイタドリ、オオヨモギ、ノギナシセイバンモロコシ、メマツヨイグサ、イグサ等が使用可能である。
例えば、第1のサブレイヤ51にイネ科植物、第2のサブレイヤ53に草木類を、生物型担体として採用することができる。
【0077】
生物型担体として採用されたイグサは、1年経過後も圧密化のような状況は見られず、その充填高さは初期の高さを維持することが確認されている。このことから、イグサは、生物型担体として数年以上の寿命を有すると理解でき、耐久性の観点から優れている。
生物型担体は他の実施形態においても使用可能であるが、イグサは特に好適に使用可能である。
【0078】
このように、粘性付与生物、及び補助生物は容易に入手可能であり、また生物由来の材料であるため、充填層5は、容易に、また安全に構成することができる。
【0079】
なお、上記例においては、メインレイヤ52を中間に位置する構成を示したが、この構成に限定するものではなく、適宜変更可能である。
【0080】
図5は、充填層5に生物型担体を利用した生物脱臭装置100の臭気成分の除去効果(脱臭効果)を説明する図である。
図5(A)は充填層5における気泡層BLの高さ(H)と除去率との関係を示し、図5(B)は充填層5における気泡層BLの高さ(H)と充填層5の圧力損失との関係を示す。
充填層5の構成として、第1のサブレイヤ51を高さ15cmの稲わら、メインレイヤ52として高さ5cmのアカモク、第2のサブレイヤ53として高さ10cmのイグサを採用し、合計30cmの高さの充填層5を用いた、ガスGの臭気成分の除去率を計測した。
【0081】
粘性成分として褐藻類のアカモク由来のフコイダンを充填層5から液体7に添加することで、気泡Bの泡膜を強化し、気泡層BLを形成することが可能である。
図5(A)に示すように、生物型担体を使用しても非常に高いな除去率を実現でき、気泡層BLに高さが高くなると、除去率が増大することが理解できる。
また、図5(B)に示すように、気泡層BLに高さが高くなると、圧力損失も増加することが理解できる。
但し、圧力損失は非常に軽微であり、実質的にブロア4の負荷への影響はない。
【0082】
また、脱臭塔1へ流すガスGの空塔速度を変化させ、除去率の空塔速度依存性を調査した。その結果、脱臭塔1内のガスGの空塔速度LVは0.15~0.175[m/s]の範囲が最も高い除去効率を得られ、この範囲の空塔速度を好適に採用できることが確認されている。
【0083】
このように、独立した粘性付与機構を設けることなく、充填層5自体が粘性付与機構を構成するため、生物脱臭装置100の構成をさらに単純化することができる。
【0084】
なお、充填層5は、必ずしも3層構成とする必要はない。
少なくとも粘性成分を付与可能な粘性付与生物を担体として含むメインレイヤ52が含まれればよく、メインレイヤ52のみの構成であってもよい。
但し、生物脱臭装置100の長期間の安定した稼働のためには、粘性成分(フコイダン)を生成する粘性付与生物及び粘性付与生物を補助する補助生物を含有する充填層5が、好適に採用される。
例えば、メインレイヤ52と第1のサブレイヤ51との組み合わせ、メインレイヤ52と第2のサブレイヤ53との組み合わせであってもよい。メインレイヤ52と第1のサブレイヤ51と第2のサブレイヤ53との積層順は、任意であり、図4に示す例に限定されない。
【0085】
なお、実験の結果、粘性付与生物として褐藻類を用いたメインレイヤ52を最上段に配置した構成は、気泡層の安定的な生成効果が最も高いことが確認されている。この場合、上段から順に、メインレイヤ52、第2のサブレイヤ53、第1のサブレイヤ51の構成が採用可能であり、或いは、メインレイヤ52、第1のサブレイヤ51やメインレイヤ52、第2のサブレイヤ53の2段構成も採用可能である。
【0086】
充填層5の構成は、粘性付与生物を含有する層と補助生物を含有する層との積層であってもよく、或いは、粘性付与生物と補助生物とが混合されて含有する層であってもよい。メンテナンスの作業効率等の観点から、任意に充填層5の構成を選択できる。
例えば、粘性付与生物を含有する層(メインレイヤ52)と補助生物を含有する層(第1のサブレイヤ51、第2のサブレイヤ53)との積層とし、定期メンテナンスや定期交換の周期を、それぞれの層で異なるように構成することができる。
【0087】
(実施形態4)
上記の粘性付与生物を用いた粘性付与機構を設ける箇所は、充填層5内に限定するものではなく液槽6又は液体7を循環する循環機構に設けてもよい。
図6(A)は、液槽6に粘性付与生物を用いた粘性付与機構を設けた生物脱臭装置100の構成例を説明する模式図であり、図6(B)は循環機構に粘性付与機構を設けた生物脱臭装置100の構成例を説明する模式図である。視認性のため、pH値の調整機構及び液補給機構は省略している。
【0088】
図6(A)に示すように、生物脱臭装置100は、液槽6中に粘性付与生物を収容する粘性付与生物収容部37を備えている。
粘性付与生物収容部37は、液体7の流入、流出が可能なように、少なくとも一部に金網やプラスチック製の網を有する容器で構成されている。
粘性付与生物収容部37の内部は、実施形態3に記載のような粘性成分を生成する粘性付与生物が収容されている。また、粘性付与生物収容部37は、さらに粘性付与生物の生存を補助するための補助生物を収容してもよい。
【0089】
粘性付与生物収容部37内の粘性付与生物が生成する粘性成分は、液体7に混合され、液体7の粘性を高めることができる。
その結果、液体7の気泡の泡膜の強度を高めることができ、気泡層BLの成長を促進し、生物脱臭装置100の脱臭効率を向上させることができる。
なお、この場合、粘性付与生物収容部37内の粘性付与生物及び補助生物は、粘性付与機構として機能するが、生物型担体としての機能は必ずしも有しない。
【0090】
図6(A)においては、粘性付与生物収容部37は、液槽6の底部に配置しているが、必ずしもそれに限定されず、液槽6の底部から離隔し、液槽6の底部と液体7の液面との間に配置してもよい。液槽6の底部から離隔することで、液槽6の底部に蓄積される可能性のある不要な異物等の影響を排除することができる。
【0091】
また、粘性付与生物収容部37は、液槽6にプラスチック等の網の仕切り板(又は仕切り網)に挟み込むようにして保持してもよい。
【0092】
また、粘性付与生物収容部37の配置箇所は、液槽6内に配置する例に限定されない。粘性付与機構を構成する粘性付与生物収容部37を循環機構に設けてもよい。
例えば図6(B)に示すように、液体7を循環する第3の配管11、又は第3の配管11から分岐した分岐配管111の途中に、粘性付与生物収容部37を配置してもよい。粘性付与生物収容部37は、第3の配管11、又は分岐配管111内を循環する液体7に対して粘性成分を付与することができる。このような粘性付与生物収容部37の配置により、循環機構に粘性付与機構としての機能を備えさせることができる。
図6(A)に示すように粘性付与生物収容部37を液槽6内に配置する構成と比較して、粘性付与生物収容部37のメンテナンスが容易となる。例えば、定期的に粘性付与生物収容部37内の粘性付与生物又は補助生物の交換等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係る生物脱臭装置は、微生物による脱臭効率を大幅に向上させることができ、高濃度の臭気成分を含む臭気性ガスの脱臭にも対応が可能であり、従来の生物脱臭装置と比較して小型化も可能となる。また、従来の生物脱臭装置では困難であった、脱臭効率の制御も可能とすることができる。臭気性ガスの脱臭装置として幅広く採用が可能であり、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0094】
100 生物脱臭装置
1 脱臭塔
2 ガス流入口
3 第1の配管(ガス導入部)
4 ブロア(送風機)
5 充填層
51 第1のサブレイヤ(第1の副担体層)
52 メインレイヤ(主担体層)
53 第2のサブレイヤ(第2の副担体層)
6 液槽(循環液槽)
7 液体(循環液)
8 第1の排出口(循環液排出口)
9 第2の配管
10 ポンプ(循環ポンプ)
11 第3の配管(循環配管)
111 分岐配管
12 導入口
13 液放出部(スプレーノズル)
14 ガス放出部
15 吹出口(ガス放出口)
16 排出管
17 バルブ
18 薬剤タンク
19 ポンプ(送出ポンプ)
20 第4の配管
21 中和液タンク
22 ポンプ(中和ポンプ)
23 第5の配管
24 液タンク(水タンク)
25 ポンプ(補給ポンプ)
26 第6の配管
28 ガス排出口(排気口)
29 気液分離装置(デミスター)
30 送気ポンプ(エアーポンプ)
31 気泡発生ノズル(バブリングノズル)
32 第7の配管
33 制御装置(コントローラ)
34 センサ
35 第8の配管
36 計測器
37 粘性付与生物収容部
B 気泡
BL 気泡層
G 被処理ガス(臭気性ガス)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7