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特開2023-102787癌の治療におけるドセタキセルの長期使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102787
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】癌の治療におけるドセタキセルの長期使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/337 20060101AFI20230718BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20230718BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230718BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
A61K31/337
A61K31/427
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075517
(22)【出願日】2023-05-01
(62)【分割の表示】P 2021536409の分割
【原出願日】2019-12-18
(31)【優先権主張番号】18215472.4
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521271222
【氏名又は名称】モドラ ファーマシューティカルズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベイネン、ジェイコブ ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】シェレンス、ヨハネス ヘンリクス マティアス
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC82
4C086GA10
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA06
4C086NA10
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】      (修正有)
【課題】許容可能な毒性を維持しつつドセタキセル経口投薬量の有効な用量を達成する、癌の治療方法を提供する。
【解決手段】有効なドセタキセルの用量を経口投与し、副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で、腫瘍細胞を根絶するのに有効なドセタキセルの血漿濃度を維持することによって、副作用を抑制するステップを含む、患者における癌の治療方法である。ドセタキセルの血漿濃度が、CYP3A阻害剤を投与することによって少なくとも一部抑制される、前記方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効なドセタキセルの用量を経口投与し、副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で腫瘍細胞を根絶するのに有効なドセタキセルの血漿濃度を維持することによって、副作用を抑制するステップを含むことを特徴とする患者における癌の治療方法。
【請求項2】
ドセタキセルの投与を含み、前記ドセタキセルを経口投与し、副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で腫瘍細胞を根絶するのに有効なドセタキセルの血漿濃度を維持することによって副作用を抑制することを特徴とする患者における癌の治療の副作用を減少させる方法。
【請求項3】
投与が制限する副作用は好中球減少である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ドセタキセルの血漿濃度が、CYP3A阻害剤を投与することによって少なくとも一部抑制される請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記CYP3A阻害剤が同時に投与される請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記癌の治療が30週を超える長期使用を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ドセタキセルのピーク血漿濃度が3000ng/mL未満である請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ドセタキセルの有効な血漿濃度が少なくとも800ng.h/mLである請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
癌が固形腫瘍である請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ドセタキセルを毎週投与する請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ドセタキセルを少なくとも50mgの投薬量で週ごとに1日2回投与する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ドセタキセルの経口投与を含み、副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で、腫瘍細胞を根絶するドセタキセルの血漿濃度を維持することを含む癌の治療における使用のためのCYP3A阻害剤とドセタキセルとの組み合わせ。
【請求項14】
CYP3A阻害剤と組み合わせて投与され、ドセタキセルの経口投与を含み、副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で、腫瘍細胞を根絶するドセタキセルの血漿濃度を維持することを含むことを特徴とする癌の治療における組み合わせ治療での使用のためのドセタキセル。
【請求項15】
ドセタキセルと組み合わせて投与され、ドセタキセルを経口投与し、副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で、腫瘍細胞を根絶するドセタキセルの血漿濃度を維持することを含むことを特徴とする癌の治療における組み合わせ治療での使用のためのCYP3A阻害剤。
【請求項16】
最大3000ng/mLのドセタキセルのピーク血漿濃度を含む請求項13~15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
少なくとも800ng.h/mLの曲線下の面積を含む請求項13~16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
30週を超える長期使用を含む請求項13~17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
癌が固形腫瘍である請求項13~18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記CYP3A阻害剤がリトナビルである請求項13~19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
癌が、胃癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌および前立腺癌からなる群から選択される請求項13~20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
ドセタキセルを含む経口投与のための医薬組成物と、CYP3A阻害剤を含む医薬組成物とを含むこととを特徴とする癌の治療における長期使用のためのキット。
【請求項23】
ドセタキセルを含む経口投与のための医薬組成物と、CYP3A阻害剤を含む医薬組成物とを含むことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の方法における使用のためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タキサン、特にドセタキセルを用いる腫瘍の化学療法に関する。より詳細には、許容可能な毒性を維持しつつドセタキセル経口投薬量の有効な用量を達成することに関する。より詳細には、副作用を抑制し、長期使用を可能にする有効なドセタキセルの用量経口投薬量を達成することに関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療は広範囲の治療を伴う。治療には、とりわけ手術、放射線治療、化学療法、免疫療法および細胞治療がある。多くの場合、癌治療は、異なる治療薬の組み合わせを含めた異なる形態の治療の組み合わせを含む。最前線の化学療法の一部として、タキサンであるドセタキセルが種々の癌の治療に広く使用されている。ドセタキセルは細胞毒性薬であり、その作用の主な形態は、有糸細胞分裂を阻害する微小管の重合および分解への干渉を含むと理解されている。推奨される投薬量は3週ごとの静脈内投与であり、用量は75~100mg/m2体表面積の範囲内である。ドセタキセルは、乳癌、肺癌、前立腺癌、胃癌、頭部癌および頸部癌、および卵巣癌を含む様々な癌の治療に使用される。患者に利益をもたらし、余命および生活の質を改善する可能性がある一方で、ドセタキセルの使用は重大な副作用を伴う。典型的な副作用としては、とりわけ好中球減少、感染症の高いリスク、血小板減少症、貧血、脱毛症、体液鬱滞、下痢、爪毒性、末梢感覚神経毒性および輸液関連反応が挙げられる。それ故に、推奨される使用形態には、ドセタキセルのサイクル数(通常4~6サイクル)の制限がある。さらに、高用量のデキサメタゾンの標準の前投薬が毎サイクル必要とされる。
【発明の概要】
【0003】
驚いたことに、ドセタキセルの経口投与を用いた際に、静脈内投与で見られるものより副作用が少ない効果的な治療を得ることができることを見出した。経口投与を用いるため、血漿で測定されるドセタキセルの高いピーク濃度(血清、または全血で測定し得る)を回避でき、それによって長期投与が可能となる。血液中のドセタキセルの高いピーク濃度は、静脈内投与で見られる多くの副作用と関連している。経口投与を用いて、より頻繁なスケジュールで、ドセタキセルの静脈内投与の標準治療の3週ごとに代わり日ごとから週ごとで、投与した場合、ピーク濃度をさらに減少できる一方で、血漿中のドセタキセル濃度を維持し、対照患者の癌を効果的に抑制できるようになる。したがって、本発明は、患者における癌の治療方法を提供し、該方法は、有効なドセタキセルの用量を経口投与し、前記副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で腫瘍細胞を根絶するのに有効なドセタキセルの血漿濃度を維持することによって、副作用を抑制することを含む。本発明は、患者における癌の治療の副作用を減少させる方法も提供し、該方法は、ドセタキセルの投与を含み、前記ドセタキセルを経口投与し、前記副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で腫瘍細胞を根絶するのに有効なドセタキセルの血漿濃度を維持することによって副作用を抑制する。副作用を減少させるおよび副作用を抑制することは、ドセタキセルを用いる場合概して重要である。また、副作用を減少または抑制することは、ドセタキセルの長期使用を可能にする。これは組み合わせ治療にとって重要であり得、例えば、長期間、癌の抑制を維持するために、抗癌治療の組み合わせが組み合わせられる。さらに、経口投与したドセタキセルとリトナビルなどのCYP3A阻害剤の使用の組み合わせた使用は、腫瘍細胞を根絶する一方でドセタキセルの使用と関連した副作用を抑制または減少させる効果的なドセタキセルの血漿濃度を維持する更なる手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】ModraDoc006(ドセタキセル)に対するリトナビル(RTV)のAUC(用量レベルごとの平均AUC(h*ng/mL))を示すプロットである。Modrodoc006の暴露が、全体のリトナビルAUC(および用量)と非常に相互に関連していることを示す。
図2A】IVと比較して類似またはやや高いドセタキセル濃度AUCが患者において得られることを示すプロットである。
図2B】リトナビルのAUCを示すプロットである。
図3】ドセタキセルAUCおよびサイクル数のプロットである。治療の長さは、標的のドセタキセル範囲の患者においてより長い傾向があるように見える。図4、5A、5Bおよび6は、それぞれ図1、2A、2B、および3の更新を表す。
図4】ModraDoc006(ドセタキセル)に対するリトナビル(RTV)のAUC(用量レベルごとの平均AUC(h*ng/mL))を示すプロットである。Modrodoc006の暴露が、全体のリトナビルAUC(および用量)と非常に相互に関連していることを示す。
図5A】IVと比較して類似またはやや高いドセタキセル濃度AUCがModraDoc006/rによって患者において得られることを示すプロットである。mCRPC患者の標的最小AUC閾値が強調され、約600~800h*ng/mLである。これは、その下限で、mCRPC患者におけるIVドセタキセルの週ごとのAUC(1820/3=±600h*ng/mL[1820のq3w AUCを3で割って、週ごとの同等のものを得たもの]を表す。情報源:DeVriesSchultinketal”Neutropenia and docetaxel exposure in metastatic castration-resistant prostate cancer patients: A meta-analysis and evaluation of a clinical cohort”, Cancer Medicine, February 2019。その上限では、これは、1418*55%=±800h*ng/mLを表す。ここで、1418は、そのI相研究N10BOMでのModraDoc006/rのAUCを表す。55%(1820/3300)は、mCPRC患者対他の腫瘍でのIVドセタキセルについてのAUCの比率を表す(De Vries Schultink e tal”Neutropenia and docetaxel exposure in metastatic castration-resistant prostate cancer patients: A meta-analysis and evaluation of a clinical cohort”, Cancer Medicine, February 2019)。
図5B】リトナビルのAUCを示すプロットである。
図6】ドセタキセルAUCおよびサイクル数のプロットである。治療の長さは、500~1500h*ng/mLの標的のドセタキセル範囲の患者においてより長い傾向があるように見える。
図7】評価可能患者のmCRPC(M17DOC)の多施設臨床IB相研究におけるベースラインからのPSA(前立腺特異抗原)変化%のプロットである。患者を、PSA進行(黒棒);PSAがベースラインに等しいまたは低下(<50%)(濃灰色の棒);PSA反応(低下する≧50%)(中間灰色の棒);30週のプロトコールで可能な最大治療期間までの臨床反応(疼痛低下)(薄灰色の棒)、と採点した。
図8】評価可能患者のmCRPC(M17DOC)の多施設臨床IB相研究における治療サイクル数(最大30)のプロットである。患者を、PSA進行(黒棒);PSAがベースラインに等しいまたは低下(<50%)(濃灰色の棒);PSA反応(低下する≧50%)(中間灰色の棒);30週のプロトコールで可能な最大治療期間までの臨床反応(疼痛低下)(薄灰色の棒)、と採点した。
図9】腫瘍測定値に関する反応について評価可能な10人の患者のHER2転移性乳癌(mBC)(N18DMB)の多施設IIA相研究における最も良い反応者のプロットである。負の%は、腫瘍サイズのパーセンテージ低下を示す。患者を、病状進行(PD)(黒棒);病状安定(SD)(濃灰色の棒);一部反応(PR)(中間灰色の棒);または評価不可能(NE)(薄灰色の棒)と採点した。星で示した患者は治療継続である。
図10】安全性評価について評価可能な12人の患者のHER2転移性乳癌(mBC)(N18DMB)の多施設IIA相研究における全サイクル数のプロットである。患者のスコアは、病状進行(PD)(黒棒);病状安定(SD)(濃灰色の棒);一部反応(PR)(中間灰色の棒);または評価不可能(NE)(薄灰色の棒)と示した。星で示した患者は治療継続である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、患者における癌の治療方法を提供し、該方法は、有効なドセタキセルの用量を経口投与し、前記副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で腫瘍細胞を根絶するのに有効なドセタキセルの血漿濃度を維持することによって、副作用を抑制することを含む。現在臨床で使用されているドセタキセルの標準投与経路は、ドセタキセルの静脈内投与を含む。静脈内投与は血流に直接であることから、この投与経路は、血漿または血清で測定されるドセタキセルの高いピーク濃度を生じる。しかしながら、高いピーク血漿濃度は副作用を誘導し得る一方で、高いピーク血漿濃度は、癌細胞に対するドセタキセルの細胞毒性効果に寄与し得、治療胃寄与する。しかしながら、驚いたことに、本発明者らは、効果的な患者における癌の治療にとって、効果的な血漿濃度を維持し、ピーク血漿濃度を避けることが重要であることを見出した。代替の投与経路、経口投与を用いて、そのような高いピーク血漿濃度を大きく回避し得る。それ故に、患者における癌の治療の副作用を減少できる。本発明は、患者における癌の治療の副作用を減少させる方法も提供し、該方法は、ドセタキセルの投与を含み、前記ドセタキセルを経口投与し、前記副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で腫瘍細胞を根絶するのに有効なドセタキセルの血漿濃度を維持することによって、とりわけ副作用を抑制する。
【0006】
本明細書で、ピーク血漿濃度は、医薬組成物の投与後に患者から得られる血漿で測定できる化合物の最大濃度と定義される。通常、ピーク血漿濃度は投与後すぐに測定できるが、投与経路および医薬組成物の組成に応じて、投与の時間と測定したピーク血漿濃度との間に時間差があり得る。ドセタキセルの静脈内投与では、ピークレベルは、例えば輸液の終わりに測定できる。ドセタキセルの経口投与では、ピークレベルが経口投与後に生じる時点が変動し得る。ピークレベルは、経口投与後約2~12時間、例えば4時間で生じる。
【0007】
血漿ドセタキセル濃度は、当分野に既知の方法で(Hendrikxet al.J.Chrom.B、2011)測定でき、その方法としては、例えば実施例に記載されているものなどの液体クロマトグラフィーおよび質量分光法方法が挙げられ得る。血漿は血液成分であり、当然ながら、血漿中のドセタキセルを測定する代わりに、全血中または血清中のドセタキセル濃度も決定できる。本明細書で、ドセタキセルの測定値、例えばピーク濃度および血漿濃度-時間曲線下の面積は、短い曲線下の面積(AUC)において、(血液)血漿に対して定められるが、全血または血清における対応するピーク濃度に容易に再計算し得る。いずれの場合でも、回避すべき高いピーク血漿濃度は、3000ng/mL以上のドセタキセルのピーク血漿濃度と定義できる。好ましくは、経口投与におけるドセタキセルのピーク血漿濃度は最大2500ng/mL、好ましくは最大2000ng/mL、より好ましくは最大1500ng/mLであり、最も好ましくは経口投与におけるピーク血漿濃度が最大1000または500ng/mLである。
【0008】
本明細書で、「有効な血漿濃度」は、対象におけるドセタキセルの特異的な薬理効果、すなわち癌細胞根絶をもたらす対象で測定した血漿濃度を意味する。本明細書で有効な血漿濃度は、第1のドセタキセルの投与から48時間後に決定される曲線下の面積(AUC)として定義され、AUCは、250~2500ng・h/mLである。好ましくは、AUCは750~2500ng・h/mLである。好ましくは、AUCは少なくとも400ng・h/mL、少なくとも500ng・h/mL、より好ましくは少なくとも600ng・h/mL、少なくとも1000ng・h/mL、より好ましくは少なくとも1200ng・h/mLである。好ましくは、AUCは最大2500ng・h/mL、より好ましくは最大2250ng・h/mL、より好ましくは最大2000ng・h/mL、最大1800ng・h/mL、最大1700ng・h/mL、より好ましくは最大1500ng・h/mLである。AUCは、より好ましくは800~1400ng・h/mLであり得る。曲線下の面積(AUC;ng・h/mL)は、第1のドセタキセルの投与から48時間後に決定され、その間、血漿のドセタキセル濃度は、いくつかの時点で測定でき、曲線下の表面積はプロットした値から計算できる。ここで、ドセタキセルについての血漿濃度-時間曲線、曲線下の面積、またはAUCは互換的に使用され、ドセタキセルの投与後の第1の48時間(ng・h/mL)における曲線下の面積を指す。
【0009】
癌 細胞根絶は、 〆 癌細胞の致死を含むと理解され、 例えば〆 固形 腫瘍の場合、〆 固形腫瘍の増殖がドセタキセルの有効な 血漿濃度 が存在しない腫瘍の増殖と比較して減少する。〆 腫瘍 が同様に根絶し得る程度で〆腫瘍の増殖が減少し得る。It is 強調した that 〆 有効な 血漿 濃度 は、たとえ当業者が治療上有効としても、必ずしも本明細書に記載の対象の状態の治療に 有効なとは限らない。
【0010】
現在の治療における抑制または低減し得る副作用としては好中球減少がある。そのような好中球減少は発熱性好中球減少症であり得る。好中球減少は、血液中の好中球の異常に低い濃度である。好中球減少は、通常、血液中の絶対好中球数を決定することによって診断される。参考として、血液中の好中球数の健康な範囲は、1500~4000細胞/血液μLであると定義できる。好中球減少は、好中球濃度が1500細胞/血液μL未満であるときに診断され得る。好中球数を決定するアッセイは、例えば完全血球数分析の一部として、日常の研究室試験の一部として、広く利用可能である。したがって、本発明では、好中球減少の発生が、患者集団において優位に減少するとの同時に、患者において効果的な癌の治療をもたらす。それ故に、好ましくは、患者の癌の治療方法において、副作用の好中球減少が抑制または低減される。他の抑制または低減し得る副作用は、血小板減少症、神経障害、脱毛症、体液鬱滞、神経毒性、および/または爪毒性である。
【0011】
本発明に従うドセタキセルの経口投与を用いて回避し得る更なる副作用としては、例えば、ドセタキセルの静脈内製剤に使用される賦形剤(とりわけTween-80、エタノール)による輸液関連反応がある。デキサメタゾンなどのコルチコステロイドが、現在の静脈内ドセタキセル治療のそのような輸液関連反応の予防として使用される。コルチコステロイド予防を必要としないドセタキセルの経口投与を用いて、コルチコステロイドによる(長期)治療と関連した毒性を同様に回避し得る。
【0012】
本明細書で、対象へのドセタキセルの経口投与には、口を介して対象へ意図された機能を発揮する薬剤を導入または送達するいずれの経路も含まれる。経口投与に適した医薬組成物としては、液剤、錠剤またはカプセルが挙げられる。カプセルおよび錠剤は、ドセタキセルが腸内でカプセルまたは錠剤から放出される腸溶コーティングを有し得る。カプセルおよび錠剤が、ドセタキセルが長期間、例えば数時間以上にわたって、例えば腸管で過ごす間に放出される持続放出製剤で処方され得る。したがって、錠剤およびカプセルは、薬剤は、そこから徐々に放出されるように処方され得る。錠剤およびカプセルは、薬剤が胃または腸内で放出されるように処方され得る。錠剤およびカプセルは、薬剤が胃および腸内で放出されるように処方され得る。投与としては、自己投与および他者による投与が挙げられる。
【0013】
本発明の医薬 組成物は、ドセタキセル、もしくは医薬上許容可能な塩およびそれらのエステル、および/またはリトナビルなどのCYP3A阻害剤、(もしくは医薬上許容可能な塩およびそれらのエステル)と共にいずれの医薬上許容可能な担体、アジュバントまたはビヒクルを含み得る。経口投与に適した 調製物 および/または 医薬 組成物 は 、国際公開第2009027644号、国際公開第2010020799号およびMoes et al.Drug Deliv.Transl.Res.2013に記載されているものが挙げられ、 参照によってその内容を本明細書に援用する。経口投与に適したいずれの 適した 調製物も考慮できる。
【0014】
〆 本発明は、ドセタキセルの経口投与に制限されない。ドセタキセルの胃腸管を介したいずれの投与も考慮され得る。それ故に、腸内投与が経口投与の代わりに考慮され得る。好ましくは、腸内投与は、カプセル、錠剤、および座薬の形態である。座薬によるドセタキセル投与が、生物学的利用能を経口投与と比較して改善し得ることから好都合である。これは、経口投与では、胃および腸を通過した後、ドセタキセルが門脈を通じて肝臓へ送達されるからである。腸内投与によって、初回通過でドセタキセルを代謝する障壁を回避し得る。いずれの腸内投与も、本明細書で定義される、ピーク濃度が回避され、効果的な血漿濃度が得られる限り十分であり得る。
【0015】
ドセタキセルなどの多くの抗癌薬について、シトクロムP450は、主な酸化薬剤代謝の酵素システムを表す。シトクロムP450(CYP)イソ酵素、特にCYP3A4(CYP3A5も含み得る)、(参照したtoasCYP3Aと称される)は、肝臓および腸で多く発現されている。この酵素システムによるドセタキセルの腸管抽出および代謝は、経口の生物学的利用能の制限にて重要な役割を果たす。代謝経路輸送体の一部としての役割も果たす。ドセタキセルなどの化合物の細胞内および細胞外の輸送によって、化合物が、CYP3A4および/またはCYP3A5酵素に基質として提供される。例えば、P糖タンパク質(P-gp、MDR1、ABCB1)は、代謝経路およびドセタキセルの輸送の役割を果たす。それ故に、ドセタキセルの代謝経路に影響を与えてドセタキセルの代謝を阻害し得るいずれの化合物も、適したCYP3A阻害剤とみなされ得る。そのような化合物は、CYP3A4および/またはCYP3A5、並びにP糖タンパク質(Er-jiaWangら、Chem.Res.Toxicol.2001;Wacherら.,Mol Carc.1995)に影響を与えるか、あるいはCYP3A4および/またはCYP3A5、並びにP糖タンパク質(Er-jiaWangら,Chem.Res.Toxicol.2001)のいずれかに異なる影響を与え得る。したがって、適したCYP3A阻害剤は、CYP3A4(およびCYP3A5)およびP糖タンパク質の両方に影響を与える。適したCYP3A阻害剤は、CYP3A4および/またはCYP3A5に影響を与える。適したCYP3A阻害剤は、P糖タンパク質に影響を与え得る。それ故に、CYP3A阻害剤は、本明細書では、細胞内のCYP3A4およびCYP3A5の代謝を減少させることが可能である化合物と定義される。前記化合物は、好ましくは医薬化合物。好ましくは、例えばリトナビルなど、CYP3A4を阻害するCYP3A阻害剤が選択される。リトナビルは、同様にCYP3A5およびP糖タンパク質を阻害する。CYP3A4の選択的な阻害が非常に好ましい。
【0016】
本明細書に記載されている、ドセタキセルを経口投与するステップを含む患者の癌の治療方法は、好ましくはドセタキセルの血漿濃度が、CYP3A阻害剤を投与することによって少なくとも部分的に制御される。CYP3A阻害剤を使用すると、細胞内のCYP3A4および/またはCYP3A5活性を減少させるか、かつ/または阻害することによって、胃および/または腸から血流へのドセタキセルの輸送を助ける。したがって、CYP3A阻害剤を使用することで、ドセタキセルの生物学的利用能を増加できる。そのような生物学的利用能を増加し得る一方で、ドセタキセルのピーク濃度は実質的に増加させない。それ故に、CYP3A阻害剤を使用することで、効果的なドセタキセルの血漿濃度が、CYP3A阻害剤を用いない場合と比較して増加できることから、より低い投薬量の経口のドセタキセルを使用できるようになる。代わりに、CYP3A阻害剤を使用することで、本明細書で定義される曲線下の面積を有する効果的な血漿濃度がCYP3A阻害剤を用いない場合と比較してより効率的に得られることから、経口のドセタキセルの頻繁な投薬をより少なくできる。
【0017】
それ故に、本発明に従う方法では、ドセタキセルの血漿濃度は、CYP3A阻害剤を投与することによって少なくとも部分的に制御される。前述したように、ドセタキセルの経口投与をCYP3A阻害剤の使用と組み合わせる。いずれのCYP3A阻害剤も十分であり、例えばCYP3A阻害剤は、ボセプレビル、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、インジナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ポサコナゾール、リトナビル、サキナビルおよびボリコナゾールからなる群から選択される強力なCYP3A阻害剤であり得る。好ましくは、最も少ない副作用を有するCYP3A阻害剤が使用される。最も好ましくは、ドセタキセルの経口投与を組み合わせるCYP3A阻害剤はリトナビルである。好ましくは、本発明に従う組み合わせ治療における使用のためのCYP3A阻害剤、100ngまたは200ngの投薬量で投与されるリトナビル、または別の適したCYP3A阻害剤の等価な投薬量を含む。対象におけるCYP3A阻害剤とリトナビルの効果を比較し、別のCYP3A阻害剤を選択し、同じ効果を得るその投薬量を確立することができることから、いずれの他の適した阻害剤に適した投薬量も容易に確立できる。効果は、ドセタキセル血漿濃度(AUC)および/または使用したリトナビルの投薬量で得られるピーク血漿濃度に対する効果として定められる。
【0018】
当然ながら、本発明に従う方法および使用では、CYP3A活性に影響を与え得る食物および更なる医薬を含む化合物のいずれの追加の使用も、そのような食物が、治療される対象の血漿で達成されるドセタキセル濃度に影響を与え得ることから、好ましくは回避され得る。それ故に、どの強力なCYP3A阻害剤がドセタキセルとの組み合わせ治療のために選択されても、高すぎる曲線下の面積を生じ得ることから、治療を受ける対象によるCYP3A阻害剤の更なる使用を避ける必要がある。好ましくは回避する更なる阻害剤の例は、例えばHIV抗ウイルス薬:インジナビル、ネルフィナビルおよびサキナビル;抗菌剤:クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ネファゾドン、テリスロマイシン、エリスロマイシン、フルコナゾール、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、ノルフロキサシンおよびボリコナゾール;強心剤:ベラパミル、ジルチアゼム、シメチジンおよびミオダロン;フルボキサミンなどの他の剤;並びにスターフルーツおよびグレープフルーツジュースなどの食物である。逆に、好ましくは、本発明の方法および使用において、治療を受ける対象においてCYP3A活性を誘導し得る食物および更なる医薬を含む化合物の使用は、そのような使用が、血漿中のドセタキセルの高すぎるピーク濃度を生じ得ることから、好ましくは同様に回避される。好ましくは回避するCYP3Aの誘導因子は、HIV抗ウイルス薬:エファビレンツおよびネビラピン;他の剤:バルビツール酸塩、カルバマゼピン、モダフィニル、ネビラピン、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、ピオグリタゾン、リファブチン、リファンピシンなど、並びにセント・ジョンズ・ワートである。
【0019】
一実施形態では、本発明に従う方法では、前記CYP3A阻害剤はドセタキセルと同時に投与される。当然ながら、同時投与は、別々の投与、例えば別々の医薬品での投与を含み得る。例えば、経口投与に適した1つの医薬品はドセタキセルを含み、別の医薬品はリトナビルなどのCYP3A阻害剤を含む。医薬品は、好ましくは経口投与されるリトナビルを含む。当然ながら、同時投与は、ドセタキセルとリトナビルなどのCYP3A阻害剤の両方を含む1つの医薬品を含み得る。また、ドセタキセルおよびCYP3A阻害剤は、それぞれ別々に投与され得る。別々に投与する場合、CYP3A阻害剤は、好ましくはドセタキセルの前、および、より好ましくは、ドセタキセル投与前約60分以内に投与される。本明細書で、同時にとは、例えばCYP3A阻害剤またはドセタキセルの約20分以内、より好ましくは15分以内、より好ましくは10分以内、さらにより好ましくは5分以内、最も好ましくは2分以内のドセタキセルまたはCYP3A阻害剤の投与を意味する。一般に、CYP3A阻害剤は、治療を受ける対象による自己投与での最適なコンプライアンスをもたらすことから、好ましくはドセタキセルの経口投与と同時に経口投与される。
【0020】
別の実施形態では、本発明に従う方法において、癌の治療は、18週を超える長期使用を含む。前述したように、標準静脈内投与経路およびドセタキセルの標準使用は、複数回投与と関連した深刻な副作用および毒性増加のため、長期使用を推奨していない。改善した本発明の方法のため、治療方法で、より長い期間に使用を延ばすことが可能となる。本発明の方法は、30週を超える長期使用を可能にし、前記方法は、ドセタキセルの使用と関連した副作用を抑制または減少させる一方で、腫瘍細胞を根絶するドセタキセルの有効な血漿濃度を維持することを含む。それ故に、一実施形態では、好ましくは、本発明の方法は、少なくとも30週の治療の長期使用を可能にする。そのような使用は、年以上の長期使用を可能にする。
【0021】
上限の両方、すなわちピーク血漿濃度および/または効果的な血漿濃度の範囲を知ることによって、本発明の方法および使用で投与される範囲は、有効な腫瘍細胞根絶と抑制または低減したドセタキセルの副作用の両方を可能にする。有効な血漿濃度は、ドセタキセルが有効に癌細胞を根絶できる範囲を表すとみなし得る。ピーク血漿濃度は、ドセタキセルの副作用を抑制または低減できる上限を表すとみなし得る。それ故に、この範囲内で動くいずれの適した医薬上許容可能な製剤および/または投薬計画が考慮され得、本明細書に記載されているように、好都合な腫瘍細胞根絶およびドセタキセルの副作用抑制または低下を提供し、標準の認められた静脈内投与したドセタキセルの治療では着想し得ない長期使用も可能にする。
【0022】
本発明に従う方法または使用では、ドセタキセルの投与は、1日3回、1日2回または毎日、2日ごと、週ごとの、2週ごと、3週ごとまたはいずれの他の適した投薬間隔であり得る。これらの投薬計画を組み合わせることもでき、例えば、1日2回投与、毎週1回または2週ごとまたは3週ごとであり得る。例えば、ドセタキセルを1日2回、週に1回投与できる。対象が、例えば、朝の初回用量および夕方の第2の用量、週に1回摂取するように週ごとの用量が分割される。これは、副作用の減少を助け得る血漿中の薬剤のピーク濃度低下の効果がある。薬剤の全身暴露の時間も増加し得る。好ましい実施形態では、本発明に従う方法または使用は、ドセタキセルを毎週投与することを含む。また、ドセタキセルは、週ごとに1日2回投与し得、これは、毎週1日、ドセタキセルを、例えば8~16時間間隔内で2回投与すること意味する。ピーク血漿濃度を防ぐことによって、副作用を抑制または減少させる一方で腫瘍細胞を根絶するのに効果的な血漿濃度を維持することを可能にするドセタキセルおよびCYP3A阻害剤(リトナビルなど)の投薬間隔および/または投薬量が選択される限り、そのような投薬間隔および/または投薬量が考慮され得る。
【0023】
更なる実施形態では、そのような投薬量が、腫瘍細胞を根絶し、患者におけるドセタキセルの副作用を抑制または減少させるのに効果的なドセタキセルの血漿濃度をもたらすことができることから、投薬量投与当たり、少なくとも10mgの投薬量でドセタキセルを投与する。好ましくは、前記投薬量は投薬量投与当たり少なくとも20mgである。前述したように、ドセタキセルを好ましくはリトナビルなどのCYP3A阻害剤と同時に投与する。好ましくはリトナビルは、少なくとも100mgの投薬量で同時に投与される。それ故に、リトナビルがドセタキセルと同時に投与される本発明に従う方法では、それぞれの投薬時期で、10mgのドセタキセルおよび100mgのリトナビルが投与される。それ故に、リトナビルがドセタキセルと同時に投与される更なる本発明に従う方法では、それぞれの投薬時期で、少なくとも10mgのドセタキセルおよび少なくとも100mgのリトナビルが投与される。前述したように、そのような投与は、週ごとのスケジュールまたは毎週1日2回のスケジュールであり得る。それ故に、上記の毎週1日2回のスケジュールで、それぞれの投与の時期に、少なくとも10mgのドセタキセルの投与、または少なくとも10mgのドセタキセルおよび少なくとも100mgのリトナビルの投与がある。別の実施形態では、毎週1日2回のスケジュールが癌の治療に提供され、ドセタキセルを1日に投与し、初回投与が30mgドセタキセルと100mgリトナビルの投薬量で、第2の投与が20mgドセタキセルと100mgリトナビルの投薬量である。別の実施形態では、毎週1日2回のスケジュールが癌の治療に提供され、ドセタキセルを1日に投与し、初回投与が30mgドセタキセルと200mgリトナビルの投薬量であり、第2の投与が20mgドセタキセルと100mgリトナビルの投薬量である。別の実施形態では、毎週1日2回のスケジュールが癌の治療に提供され、ドセタキセルを1日に投与し、初回投与が30mgドセタキセルと200mgリトナビルの投薬量であり、第2の投与が20mgドセタキセルと200mgリトナビルの投薬量である。
【0024】
別の実施形態では、毎週1日2回のスケジュールが癌の治療に提供され、ドセタキセルを1日に投与し、初回投与が20mgドセタキセルと200mgリトナビルの投薬量であり、第2の投与が20mgドセタキセルと200mgリトナビルの投薬量である。別の実施形態では、毎週1日2回のスケジュールが癌の治療に提供され、ドセタキセルを1日に投与し、初回投与が20mgドセタキセルと100mgリトナビルの投薬量であり、第2の投与が20mgドセタキセルと100mgリトナビルの投薬量である。別の実施形態では、毎週1日2回のスケジュールが癌の治療に提供され、ドセタキセルを1日に投与し初回投与が20mgドセタキセルと200mgリトナビルの投薬量であり、第2の投与が20mgドセタキセルと100mgリトナビルの投薬量である。
【0025】
別の実施形態では、本発明に従う方法において、癌が固形腫瘍である。本発明に従う方法では、治療される癌は、ドセタキセルの静脈内投与とで現在規定されているものと同じであり得る。それ故に、好ましくは、方法は、癌が、胃癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌および前立腺癌からなる群から選択される固形腫瘍である癌の治療を含む。
【0026】
一実施形態では、本発明は、癌の治療における使用のためのCYP3A阻害剤とドセタキセルとの組み合わせを提供し、ドセタキセルの経口投与を含み、副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で、腫瘍細胞を根絶するドセタキセルの血漿濃度を維持することを含む。別の実施形態では、本発明は、癌の治療における組み合わせ治療での使用のためのドセタキセルを提供し、前記ドセタキセルはCYP3A阻害剤と組み合わせて投与され、ドセタキセルの経口投与を含み、副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で、腫瘍細胞を根絶するドセタキセルの血漿濃度を維持することを含む。さらに別の実施形態では、本発明は、癌の治療における組み合わせ治療での使用のためのCYP3A阻害剤を提供し、前記CYP3A阻害剤はドセタキセルと組み合わせて投与され、ドセタキセルを経口投与し、副作用を誘導するドセタキセルのピーク血漿濃度を防ぐ一方で、腫瘍細胞を根絶するドセタキセルの血漿濃度を維持することを含む。これらの実施形態でのCYP3A阻害剤は好ましくはリトナビルである。
【0027】
本発明の方法について本明細書に記載されているのと同様に、上記の前記使用は、最大2500ng/mLのドセタキセルのピーク血漿濃度を含む。前記上限は、副作用と関連しない血漿濃度をもたらす。上記の前記使用は、好ましくは、800~2000ng・h/mLのAUCの範囲内の効果的なドセタキセルの血漿濃度を含む。同様に、上記の前記使用は、好ましくは、1000~2000ng・h/mLのAUCの範囲内の効果的なドセタキセルの血漿濃度を含む。前記使用は、好ましくは30週を超える長期使用を含む。前記使用は、好ましくは、癌が固形腫瘍である癌の治療を含む。前記使用は、好ましくは癌を含み、癌が、胃癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌および前立腺癌からなる群から選択される固形腫瘍である。
【0028】
本発明は、ドセタキセルを含む経口投与のための医薬組成物とCYP3A阻害剤を含む医薬組成物とを含む、癌の治療における長期使用のためのキットも提供する。さらに、ドセタキセルを含む経口投与のための医薬組成物と、CYP3A阻害剤を含む医薬組成物とを含む、本明細書に記載されている使用および方法のためのキットが提供される。
【0029】
本明細書および特許請求の範囲で、特に明示がない限り、単数形は互換的に使用され、複数形も同様に含み、それぞれの意味に含まれるものとする。また、本明細書で、「および/または」は、記載された項目の1つ以上のいずれのすべての可能な組み合わせに加えて、選択肢で解釈される場合には組み合わせないこと(「or」)も指し、包含する。
【0030】
本明細書で、「約」は当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変動する。この用語が使用される文脈にて当業者に明らかでないその使用がある場合、「約」は、特定の用語の±10%までを意味する。
【実施例0031】
Modradoc006
Modradoc006は、錠剤にプレスしたドセタキセルの噴霧乾燥固体分散製剤(ModraDoc006 10mg錠剤)であり、10mgのドセタキセルを含有する。製剤賦形剤は、ポリビニルピロリドンK30、ドデシル硫酸ナトリウム、ラクトース一水和物、クロスカルメロース、コロイドシリカ無水物およびステアリン酸マグネシウムである。すべての賦形剤は、不活性化合物(経口カプセルおよび錠剤)についてFDAガイドに含まれる。
【0032】
リトナビル
リトナビルは、経口摂取用の100mg錠剤として市販されている(Norvir(登録商標))。この錠剤は、European Commissionによって2010に承認されている。
【0033】
ドセタキセルおよびリトナビル血漿測定値
ヒト血漿中のドセタキセルおよびリトナビルの決定のための組み合わせたアッセイについて説明する。200μLのヒト血漿から、t-ブチルメチルエーテルによる液液抽出を用いて薬を抽出した後、10mM水酸化アンモニウムpH10:メタノール(3:7、v/v)を移動相として用いる高速液体クロマトグラフィー分析を行った。クロマトグラフィーの分離は、Zorbax Extend C(18)カラムを用いて得られた。被検物質の標識アナログが内部標準として使用される。検出では、正イオンエレクトロスプレータンデム質量分光法を使用した。質量遷移および反応の最適化、移動相最適化およびカラム選択を含む展開方法について議論した。方法は、FDAガイドラインおよびGood Laboratory Practice(GLP)の原理に従って実証した。実証された範囲は、ドセタキセルで0.5~500ng/mL、リトナビルで2~2000ng/mLであった。定量のために、二次較正曲線を使用した(r(2)>0.99)。方法の合計実行時間は9分であり、アッセイは、被検物質と、イオン化および望ましい濃度範囲の違いとを組み合わせる。分析法間の精度および正確さを4つの濃度レベルで試験し、すべての被検物質でそれぞれ10%以下であった。キャリーオーバーは6%未満であり、内部干渉、または被検物質と内部標準戸の間の干渉は、定量化レベルの下限で反応の20%未満であった。マトリックス因子および回復を、低い濃度レベル、中間の濃度レベルおよび高い濃度レベルで決定した。マトリックス因子は、すべての被検物質で約1であり、合計の回復は77.5~104%であった。ストック溶液、ヒト血漿、乾燥した抽出物、最終抽出物および3回の凍結/解凍サイクルの間で、安定性を調べた。記載された方法は、リトナビルと組み合わせたドセタキセルの経口投与を用いる臨床研究にうまく適用された。
【0034】
mCRPC試験
I相試験では、いくつかの固形腫瘍(前立腺ではない)の患者におけるModraDoc006/rによる経口治療を示した。この研究から、II相の有効性評価に推奨される用量は、
ModraDoc006 30mg+リトナビル100mg、朝に同時に摂取
ModraDoc006 20mg+リトナビル100mg、夕方に同時摂取
と結論付けた。
【0035】
この治療(ModraDoc006/r 30~20/100~100と称される)は1日に、毎週1回与えられる。
【0036】
薬物動態研究によって、サイクル1でのこの治療スケジュールのドセタキセルAUC0~48hは1126±382h*ng/mLであることが明らかになった。CMAX値は102±46ng/mL(16人の治療患者の平均)であった。
【0037】
次のステップでは、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の患者におけるこの経口の治療スケジュールをIB/IIA相試験(M17DOC)で調べた。驚いたことに、I相試験(ModraDoc006/r 30~20/100~100)から推奨される用量で治療した第1の5人の患者における、498±298h.ng/mLのはるかに低いドセタキセル暴露(AUC0~48h)に気づき、これは予想のおよそ半分であった。CMAX値:45±31ng/mLも予想の半分であった。患者は著しい副作用を経験しなかった。ドセタキセルのクリアランスは、他の固形腫瘍の患者よりこのmCRPC患者集団で高いと結論付けた。
【0038】
CYP3A阻害剤リトナビルの用量を増加(2倍)させることによって、約1100±500h.ng/mLの目的暴露を達成できるという仮説を立てた。次に、8人のmCRPC患者をModraDoc006/r 30~20/200~200(1日、1週間に1回摂取)で治療した。この群のドセタキセル暴露は、AUC0~48h:2032±1018h.ng/mLおよびCMAX164±80ng/mLであった。これらの値は予想より高かった。また、患者はより多くの副作用を経験した(グレードIII)。
【0039】
次に、リトナビル用量を減少させることで、ドセタキセル暴露その目的の値へ低下させると仮定して、mCRPC患者(n=3)を、ModraDoc006/r 30~20/200~100の用量で治療した。患者のこの治療群では、ドセタキセル暴露はAUC0~48h:1130±257h.ng/mLおよびCMAX135±46ng/mLであった。治療によく耐えた。
【0040】
結果は図2Aおよび2Bにも示される。
【0041】
要約すると以下の通りである。
【表1】
【0042】
上記の試験結果記載されたものは、試験中に得られ、中間結果表す。試験を継続し、更新した結果を以下に説明する。
mCRPCでのIB/IIA相研究
【0043】
転移した去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)において、ModraDoc006(経口のドセタキセル製剤)と、リトナビルとを組み合わせた(ModraDoc006/r)多施設臨床IB/IIA相研究をmCRPC(M17DOC)で実施した。
【0044】
研究は、転移した去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)と診断した患者を含み、患者に1日2回、1週間に1回(BIDW)4つの用量レベルでの投薬スケジュールで投薬した(下記表参照)。
【表2】
【0045】
前述したように、驚いたことに、第1の5人の患者では、I相試験(ModraDoc006/r 30~20/100~100)から推奨される用量(454±181h.ng/mLのサイクル1(中央のAUC0~48h±SD)でのはるかに低いドセタキセル暴露)で治療され、これは予想の約半分であった。CMAX値:38±18ng/mLも予想の半分であった。患者は、著しい副作用を経験しなかった。このmCRPC患者集団でのドセタキセルのクリアランスは他の固形腫瘍の患者より高いと結論付けた。
【0046】
前述したように、次に、CYP3A阻害剤リトナビル用量を増加(2倍)させることによって、約1100±500h.ng/mLの目的の暴露を達成できるという仮説を立てた。その後、8人のmCRPC患者(6人が評価可能)を、ModraDoc006/r 30~20/200~200(1日、1週間に1回摂取)で治療した。サイクル1におけるこの群でのドセタキセル暴露は、中央のAUC0~48h±SD1510±990h.ng/mLおよびCMAX146±82ng/mLであった。これらの値は予想より高い。また、患者はより多くの副作用を経験した(グレードIII)。
【0047】
次に、リトナビル用量を減少させることで、ドセタキセル暴露がその目的の値へ低下すると仮定して、mCRPC患者(n=6)をModraDoc006/r 30~20/200~100の用量で治療した。患者のこの治療群では、サイクル1でのドセタキセル暴露は、0~48h±SDの中央のAUC1189±473h.ng/mLおよびCMAX159±49ng/mLであった。治療によく耐えている。
【0048】
ModraDoc006/r20~20/200~100で治療したmCRPC患者(n=3)において、低減したドセタキセルの朝の用量によって、サイクル1でのドセタキセル暴露は、0~48h±SDの中央のAUC419±158h.ng/mLおよびCMAX53±21ng/mLであった。
【0049】
要約すると以下の通りである。
【表3】
【0050】
試験の結果は、以下にさらに記載され、図4図8に示される。
【表4】
【0051】
(PSA(前立腺特異抗原);;SD(病状安定);非CR(不完全な反応);非PD(非進行性疾患);PD(進行性疾患);NE(評価不可能);PR(一部反応))。
【0052】
有効性の概要:
この研究は、1日2回、1週間に1回(BIDW)投薬スケジュールで4つの用量レベルで投薬した転移した去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)と診断された20人の評価可能患者を含んでいた(表参照)。7人の患者では、PSA反応(PSAが≧50%に低下)が見られ、そのうち5人は6週後の第2の測定で確認された。別の7人の患者では、PSAが<50%に低下またはベースラインに等しかった。残りの6人の患者では、PSA増加が見られた。1人の患者でのPSAの<50%低下、および別の患者でのPSA増加に関わらず、疼痛低下による顕著な臨床反応が30週の最大治療継続期間中に達成された。合計5人の患者が最大30週の治療週間を完了した。中央の治療継続期間は14週であった。ModraDoc006/r 30~20/200~100は、mCRPCでさらに試験されるのに好ましい初期の用量であり、IVドセタキセルで達成されるのより高い一方で、毒性を許容可能なものとするドセタキセルの暴露レベル(AUCで測定される)を達成する能力が実証された。代わりに、ModraDoc006/r20~20/200~100は、mCRPCにおける別の好ましい用量、または好ましい初期の用量であり得る。
【0053】
長期使用
N07DOW
I相試験(N07DOW)において、リトナビルと組み合わせた経口のドセタキセルで癌患者(n=100)を治療した。1日(一回の用量)、1週間に1回で用量を投与した。データは、平均±標準偏差として示した。利用可能な場合、患者当たり2つのサイクルの動的データを使用した。
19人の患者の治療継続期間は19~最大72週であった。これらは、以下の癌:頭部癌および首(n=1)、非小細胞肺(n=8)、肛門の(n=1)、初期の未知の(n=3)、卵巣(n=1)、食道(n=1)、尿路上皮細胞(n=2)、平滑筋肉腫(n=1)および神経内分泌肺癌(n=1)の患者であった。これらの患者におけるドセタキセル暴露は、
AUC0~48h 803±634h.ng/mL
CMAX(ピーク) 148±113ng/mL
であった。
【0054】
SAE(深刻な有害事象)およびDLT(用量制限毒性)(可能性あり、おそらく、確定;≧グレード3)を15人の患者で注目した。これらの患者でのドセタキセル暴露は、
AUC0~48h 2345±1453h.ng/mL
CMAX 351±244ng/mL
であった。
【0055】
52人の患者は、最も良い治療反応としてSD(疾患安定)(n=42)またはPR(一部反応)(n=10)であった。これらの患者でのドセタキセル暴露は、
AUC0~48h 1083±1023h.ng/mL
CMAX 197±186ng/mL
であった。
【0056】
N10BOM
I相試験(N10BOM)では、リトナビルと組み合わせた経口のドセタキセルで、癌患者(n=64)を治療した。用量を、1日2回、1週間に1回継続的に投与した。
8人の患者の治療継続期間は19~最大55週であった。これらは、以下の癌、頭頸部癌(n=2;PR)、非小細胞肺(n=4;SD)、結腸直腸の(n=1;SD)および巨細胞神経内分泌癌(n=1;SD)の患者であった。これらの患者でのドセタキセル暴露は、
AUC0~48h 1224±620h.ng/mL
CMAX 143±67ng/mL
であった。
【0057】
SAEおよびDLT(可能性あり、おそらく、確定;≧グレード3)を10人の患者で注目した。これらの患者でのドセタキセル暴露は、
AUC0~48h 1809±1255h.ng/mL
CMAX 175±117ng/mL
であった。
【0058】
25人の患者は、最も良い治療反応としてSDまたはPRである。これらの患者でのドセタキセル暴露は、
AUC0~48h 1242±702h.ng/mL
CMAX 140±83ng/mL
であった。
【0059】
要約すると以下の通りである。
【表5】

【0060】
比較:
0.5h静脈内注入としてのドセタキセルの毎週投与(35mg/m2)によって、以下のAUCおよびCMAX値が得られる。
AUC 1480±410h.ng/mL
CMAX 1930±600ng/mL
Baker SD et al.Clin Cancer Res 2004;10:1976~1983。
【0061】
経口のドセタキセルとリトナビル(ModraDoc006/r)の1日2回、1週間に1回の使用について、以下の目的の値を提案し得る。
AUC 1200±600h.ng/mL
CMAX 140±70ng/mL
【0062】
この週ごとの経口の治療スケジュールで、週ごとの静脈内治療スケジュールの投与日におけるものと類似のドセタキセル暴露(AUC)が日に達成される(また、多くの場合、静脈内は3週連続与えられた後、1週の残りがある一方で、経口のドセタキセルは残りの週がなく継続的に与えられる)。この静脈内投与(35mg/m2、0.5h)後のCMAX値は、固形腫瘍(前立腺でない)患者における経口のModraDoc006/r 30~20/100~100後のものより10倍高い。
【0063】
・静脈内(35mg/m2)ドセタキセルおよび経口のドセタキセル治療(ModraDoc006/r 30~20/100~100)は、類似のAUCを与え、同等の有効性が予想される。
・静脈内(35mg/m2、0.5h)ドセタキセル、経口のドセタキセル治療(ModraDoc006/r 30~20/100~100)より10倍高いCMAXを与え、これは、静脈内治療でのより高い毒性を説明し得る。
・経口のドセタキセル治療(ModraDoc006/r)では、より高いAUC0~48h-CMAX値が毒性と相関する。
・経口のドセタキセル治療ModraDoc006/r)では、1200±600h.ng/mLのAUC0~48hが最適のようであり、ModraDoc006/r 30~20/100~100の毎週1日2回のスケジュールによって、固形腫瘍(前立腺ではない)の癌患者において達成できる。
【0064】
乳癌のIIA相研究
転移性乳癌(M18DMB)において、タキサンによる治療に適した再発または転移性HER-2陰性乳癌の患者でModraDoc006(経口のドセタキセル製剤)をリトナビルと組み合わせた(ModraDoc006/r)多施設臨床IIA相研究を実施した。試験の結果を以下に要約しし、図9および10に示す。
【表6】

(PD(進行性疾患);NE(評価不可能);PR-c(一部反応確認)、ong(継続)。
【0065】
腫瘍測定値は、CTスキャンによって測定される経時の腫瘍サイズの変化を表し、初期値がベースラインである。
【0066】
有効性概要
この研究では、タキサンによる治療に適した再発または転移性乳癌の合計12人の患者を、朝に30mgのModraDoc006と100mgのリトナビル(/r)とを組み合わせ、夕方に20mgModraDoc006と100mg /rとを組み合わせての、1日2回、週に1回(BIDW)の投薬スケジュールで治療した。有効性が評価可能である(すなわち、RECIST1.1.に従う疾患評価で、最小6つの週ごとの治療を受けた)10人の患者では、3人の確認された(>4週後の繰り返した腫瘍測定)一部の応答(PR)、6人の疾患安定(SD)および1人の進行性疾患(PD)の反応が生じた。12人の患者での治療の中央値は、現在11.3週であり、2人の患者はそれぞれ20および22週で継続中である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10