(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102796
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】切断装置および切断方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/046 20140101AFI20230719BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20230719BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230719BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20230719BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230719BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20230719BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20230719BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/38 A
B23K26/00 P
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01G11/86
H01G13/00 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020107313
(22)【出願日】2020-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】芦田 高之
【テーマコード(参考)】
4E168
5E078
5E082
5H050
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CA00
4E168CA06
4E168CB04
4E168CB07
4E168CB13
4E168CB15
4E168CB22
4E168DA28
4E168EA15
4E168EA17
4E168EA24
4E168JA03
4E168JA04
4E168JA28
4E168KA17
5E078AA14
5E078AB02
5E078BB28
5E078LA08
5E082BC38
5E082MM05
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CB08
5H050GA04
5H050GA29
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】電極板の切断品質を向上させる。
【解決手段】切断装置1は、電極板6にレーザ光Lを照射して切断加工を施すレーザ照射部4と、レーザ光Lの焦点位置に関する情報を取得する情報取得部40と、焦点位置を変位させる位置変位部42と、情報取得部40が取得した情報に基づいて位置変位部42を制御する制御部44と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板にレーザ光を照射して切断加工を施すレーザ照射部と、
前記レーザ光の焦点位置に関する情報を取得する情報取得部と、
前記焦点位置を変位させる位置変位部と、
前記情報取得部が取得した情報に基づいて前記位置変位部を制御する制御部と、を備える、
切断装置。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記焦点位置に関する情報として、前記電極板に形成される前記レーザ光の照射痕の幅寸法に関する情報を取得し、
前記制御部は、前記照射痕の幅寸法に応じて前記位置変位部を制御する、
請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記照射痕を撮像する撮像装置を有し、前記照射痕の幅寸法に関する情報として前記照射痕の画像を取得する、
請求項2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記レーザ照射部は、
レーザ発振器が発振する前記レーザ光が入射する入射部と、
前記入射部に入射した前記レーザ光で前記電極板を走査する走査部と、
前記走査部から出射される前記レーザ光を前記電極板に集光させる集光部と、を有し、
前記位置変位部は、前記レーザ照射部の全体を変位させることで、前記焦点位置を変位させる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の切断装置。
【請求項5】
前記切断装置は、電極板を搬送する搬送部を備え、
前記電極板は、搬送方向に長い帯状であり、前記電極板における前記搬送方向と直交する幅方向の中央部に配置される電極活物質の塗布部と、前記電極板における前記幅方向の端部に配置される前記電極活物質の非塗布部と、を有し、
前記レーザ照射部は、少なくとも前記非塗布部を切断して前記搬送方向に所定の間隔をあけて配置される複数のタブ部を形成する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の切断装置。
【請求項6】
電極板にレーザ光を照射して切断加工を施し、
前記レーザ光の焦点位置に関する情報を取得し、
取得した前記情報に基づいて前記焦点位置を変位させることを含む、
切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切断装置および切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)等の普及にともない、車載用の二次電池の出荷が増えている。特にリチウムイオン二次電池の出荷が増えている。また、車載用に限らず、例えばノート型パソコン等の携帯端末用の電源としても二次電池の普及が進んでいる。このような二次電池に関して、例えば特許文献1には、二次電池に用いられる電極板をロールtoロール方式で連続搬送しながら、レーザ光で電極板を切断加工する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ光で電極板を切断することで、切断品質を高めることができる。一方で、電池の品質向上に対する要求は常にある。したがって、電極板の切断品質にもさらなる向上が求められる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、電極板の切断品質を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、切断装置である。この切断装置は、電極板にレーザ光を照射して切断加工を施すレーザ照射部と、レーザ光の焦点位置に関する情報を取得する情報取得部と、焦点位置を変位させる位置変位部と、情報取得部が取得した情報に基づいて位置変位部を制御する制御部と、を備える。
【0007】
本開示の他の態様は、切断方法である。この切断方法は、電極板にレーザ光を照射して切断加工を施し、レーザ光の焦点位置に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて焦点位置を変位させることを含む。
【0008】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電極板の切断品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る切断装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】切断装置が備える焦点位置調整機構を説明するための模式図である。
【
図3】撮像装置が生成する画像の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る切断装置1を模式的に示す斜視図である。
図1では主に、電極板6の形状と電極板6に切断加工が施される様子を図示している。このため、
図1ではレーザ照射部4の図示を簡略化し、後述する焦点位置調整機構を構成する情報取得部40、位置変位部42および制御部44の図示を省略している。
【0013】
切断装置1は、搬送部2と、レーザ照射部4と、を備える。搬送部2は、電極板6を搬送する機構である。電極板6の搬送速度は、例えば1m/分~100m/分である。レーザ照射部4は、電極板6にレーザ光Lを照射して、電極板6に切断加工を施す機構である。本実施の形態では、レーザ照射部4によって電極板6が切断される位置において電極板6が流れる方向を電極板6の搬送方向Aとする。例えば搬送方向Aは、鉛直方向下方である。
【0014】
本実施の形態の電極板6は、搬送方向Aに長い帯状の部材であり、複数の単位電極板8が連なった構造を有する。例えば、電極板6は、単位電極板8が2行複数列に配列された構造を有する。各単位電極板8は、最終的には互いに切り離される。そして、正極の単位電極板8と負極の単位電極板8とがセパレータを挟んで交互に積層されて積層型電極体が形成される。つまり、電極板6は、積層型電極体に用いられる。なお、これに限らず、電極板6は巻回型電極体に用いられてもよい。得られた電極体は、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池や、電気二重層キャパシタなどのキャパシタ等に用いられる。
【0015】
各単位電極板8は、集電板に電極活物質層が積層された構造を有する。一般的なリチウムイオン二次電池の場合、集電板は正極であればアルミニウム箔等で構成され、負極であれば銅箔等で構成される。また、一般的なリチウムイオン二次電池の場合、電極活物質は、正極であればコバルト酸リチウムやリン酸鉄リチウム等であり、負極であれば黒鉛等である。レーザ照射部4による切断加工が電極板6に施された後の状態で、各単位電極板8にはタブ部10が設けられる。タブ部10は、単位電極板8の集電板から電極板6の幅方向Bに突出する。幅方向Bは、搬送方向Aと直交する方向である。
【0016】
電極板6は、電極活物質の塗布部12と、電極活物質の非塗布部14とを有する。電極活物質の塗布部12は、電極板6における幅方向Bの中央部に配置される。塗布部12は、電極活物質層に相当する。塗布部12は、公知の塗工装置を用いて、集電板を構成する板材の表面に電極活物質を含む電極スラリーを塗布することで得られる。電極活物質の非塗布部14は、電極板6における幅方向Bの両端部に配置される。非塗布部14は、集電板を構成する板材が露出した部分であり、切断加工によってタブ部10となる。
【0017】
搬送部2は、図示しないフィードロールによって電極板6をレーザ照射部4と対向する位置に連続搬送する。本実施の形態の切断装置1は、幅方向Bに並ぶ2つのレーザ照射部4を備える。一方のレーザ照射部4は、搬送中の電極板6における一端側の非塗布部14にレーザ光Lを照射する。他方のレーザ照射部4は、搬送中の電極板6における他端側の非塗布部14にレーザ光Lを照射する。これにより、両側の非塗布部14に切断加工が施されて、搬送方向Aに所定の間隔をあけて配置される複数のタブ部10が形成される。
【0018】
なお、電極板6が負極板の配列されたものである場合、レーザ照射部4による切断加工の際に、塗布部12の一部も切断され得る。また、電極板6が正極板の配列されたものである場合、塗布部12と非塗布部14との境界には、塗布部12を保護するための保護層(図示せず)が設けられ得る。保護層は、例えば集電板を構成する金属の酸化物層である。この場合、レーザ照射部4による切断加工の際に、非塗布部14に加えて保護層の一部も切断され得る。あるいは非塗布部14に加えて塗布部12の一部および保護層の一部も切断され得る。
【0019】
搬送部2は、チャンバー16を有する。チャンバー16は、レーザ光Lでの切断加工によって生じるスパッタやヒュームが電極板6や切断装置1に付着したり、雰囲気中に浮遊したりすることを抑制する。なお、チャンバー16は省略することもできる。
【0020】
レーザ照射部4で切断加工が施された電極板6は、製品部18と、廃材部20とに分けられる。製品部18は、連続する複数の単位電極板8と、複数のタブ部10とを含む。各タブ部10は、各単位電極板8に対して1対1で設けられる。廃材部20は、非塗布部14のうちタブ部10として製品部18側に残らなかった部分である。製品部18は、次工程のラインに搬送される。廃材部20は、製品部18とは異なる方向に搬送されて、製品部18から切り離される。
【0021】
続いて、切断装置1が備える焦点位置調整機構について説明する。
図2は、切断装置1が備える焦点位置調整機構を説明するための模式図である。
【0022】
レーザ照射部4は、入射部22と、走査部24と、集光部26とを有する。入射部22には、レーザ発振器100が発振するレーザ光Lが入射する。例えば、レーザ発振器100は公知のファイバレーザ発振器であり、ファイバケーブル28を介して入射部22の一端に接続される。なお、レーザ発振器100の種類は特に限定されず、適宜選択することができる。また、入射部22の内部には、コリメートレンズ30が設けられる。入射部22の一端から入射したレーザ光Lは、コリメートレンズ30によって平行状態に調整され、他端側に進行する。入射部22の他端は、走査部24に接続される。コリメートレンズ30を透過して平行光となったレーザ光Lは、入射部22の他端から走査部24内に進行する。
【0023】
走査部24は、レーザ光Lで電極板6を走査する機構である。走査部24は、例えば公知のガルバノスキャナで構成される。走査部24は、X軸ミラー32と、Y軸ミラー34とを有する。走査部24は、入射部22から入射したレーザ光Lを各ミラーで反射して、電極板6に向けて出射する。X軸ミラー32は、X軸モータ(図示せず)に支持されて、X軸方向に回動することができる。Y軸ミラー34は、Y軸モータ(図示せず)に支持されて、Y軸方向に回動することができる。走査部24は、レーザ光LをY軸ミラー34、X軸ミラー32の順で反射させるとともに各ミラーを回動させることで、XY平面上、つまり電極板6上をレーザ光Lで走査することができる。なお、レーザ光Lは、X軸ミラー32、Y軸ミラー34の順で反射させてもよい。走査部24の駆動は、後述する制御部44によって制御される。なお、走査部24の駆動は、制御部44とは別の制御部によって制御されてもよい。
【0024】
走査部24におけるレーザ光Lの出射口には、集光部26が接続される。したがって、集光部26は、走査部24と電極板6との間に介在する。集光部26は、走査部24から出射されるレーザ光Lを電極板6に集光させる。集光部26は、複数枚のレンズで構成される組レンズ36と、保護ガラス38とを有する。組レンズ36は、例えばfθレンズである。保護ガラス38は、組レンズ36と電極板6との間に介在し、レーザ光Lでの切断加工によって生じるスパッタやヒューム等から組レンズ36を保護する。
【0025】
走査部24から出射されるレーザ光Lは、集光部26を透過して電極板6に到達する。集光部26は焦点Fを有し、レーザ光Lは集光部26によって焦点Fに集光される。切断装置1の初期調整において、集光部26の焦点位置は、電極板6の切断加工に適した位置(初期位置)に調整される。しかしながら、レーザ光Lの照射が継続すると、レーザ光Lを透過する光学部材が加熱され、いわゆる熱レンズ効果によって焦点位置のずれ(焦点シフト)が生じ得る。一般に焦点位置は、焦点シフトによってレーザ照射部4に近づいていく。
【0026】
焦点シフトを発生させ得る光学部材としては、コリメートレンズ30、組レンズ36および保護ガラス38が例示される。特に、保護ガラス38は、スパッタやヒューム等の異物が付着しやすく、この異物によってレーザ光Lが吸収されて局所的に温度が上昇しやすい。このため、保護ガラス38は、焦点シフトを引き起こしやすい。また、組レンズ36は、複数枚のレンズが組み合わされた構造を有する。このため、組レンズ36も焦点シフトを引き起こしやすい。
【0027】
焦点シフトが発生すると、電極板6に対するレーザ光Lの照射径が大きくなり、切断品質の低下を引き起こし得る。切断品質には、切断面の平滑度、形状、熱変形の有無等が含まれる。切断品質の低下は、切断部におけるバリの発生につながり得る。電極板に生じたバリはショートの原因になるため、二次電池の品質が低下する。
【0028】
一般に電極板6の切断加工においては、1つの電極板6の切断加工が終了すると、次の電極板6を切断装置1に設置する作業が実施される。当該作業の間、レーザ光Lの照射は停止するため、レーザ光Lによって加熱された各光学部材は冷却され、焦点位置は初期位置に戻ることが期待される。しかしながら、近年は、二次電池の生産リードタイムやスループットの向上が求められている。したがって、電極板6の設置作業の時間短縮が図られたり、電極板6自体の長さを長くしたりする傾向にある。この場合、各光学部材が十分に冷却されず、焦点シフトがより生じやすくなることが予想される。
【0029】
これに対し、本実施の形態の切断装置1は、焦点位置調整機構を備える。焦点位置調整機構は、情報取得部40と、位置変位部42と、制御部44とを含む。
【0030】
情報取得部40は、レーザ光Lの焦点位置に関する情報を取得する。本実施の形態の情報取得部40は、焦点位置に関する情報として、電極板6に形成されるレーザ光Lの照射痕46の幅寸法Mに関する情報を取得する。また、本実施の形態の情報取得部40は、照射痕46を撮像する撮像装置48を有し、照射痕46の幅寸法Mに関する情報として照射痕46の画像IMGを取得する。
図3は、撮像装置48が生成する画像IMGの一例を示す模式図である。照射痕46には、製品部18および廃材部20の間に介在する、レーザ光Lの照射により焼失した消失部46aと、製品部18および廃材部20のそれぞれにおける、レーザ光Lの照射により焦げた焦跡部46bとが含まれる。焦点シフトが生じると、照射痕46の幅寸法M、つまり焼け幅は徐々に広がっていく。このため、照射痕46の幅寸法Mから、レーザ光Lの焦点位置あるいは焦点位置の変位量を把握することができる。
【0031】
情報取得部40は、焦点位置に関する情報として、撮像装置48が生成した画像IMGを制御部44に送る。なお、情報取得部40は、焦点位置に関する情報として、焦点位置そのものや焦点位置の変位量そのものを計算によって取得してもよい。焦点位置の変位量は、各光学部材への入熱量と相関を有する。したがって当該変位量は、レーザ光Lの出力強度や照射時間等に基づいて計算により推定することができる。また、得られた変位量を初期位置に加算することで、焦点位置を計算により推定することができる。また、情報取得部40は、電極板6における照射痕46を含む領域の光反射率を測定する反射率測定器を備えてもよい。照射痕46の光反射率は、塗布部12や非塗布部14におけるレーザ光Lが照射されなかった領域の光反射率よりも低下する。このため、測定される光反射率の変化に基づいて、照射痕46の幅を推定することができる。つまり、焦点位置に関する情報および照射痕46の幅寸法Mに関する情報は、電極板6における照射痕46を含む領域の光反射率、あるいはその変化量であってもよい。
【0032】
位置変位部42は、焦点位置を変位させる機構である。本実施の形態の位置変位部42は、1軸スライダで構成される。位置変位部42は、レーザ照射部4とチャンバー16とが並ぶ方向に延びるとともにレーザ照射部4が接続されるレール50や、レーザ照射部4をレール50に沿って移動させるモータ52等を有する。本実施の形態の位置変位部42は、レーザ照射部4の全体を、つまり入射部22、走査部24および集光部26を電極板6に対して変位させる。これにより、電極板6に対して焦点位置を変位させることができる。なお、位置変位部42は、集光部26のみを変位させてもよい。
【0033】
制御部44は、情報取得部40が取得した情報に基づいて位置変位部42を制御する。制御部44は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、
図2では、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。この機能ブロックがハードウェアおよびソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には当然に理解されるところである。
【0034】
情報取得部40が照射痕46の画像IMGを生成する場合、制御部44は、画像IMGに対し公知の画像処理を施すことで、照射痕46の幅寸法Mを算出することができる。例えば制御部44は、画像IMG中の照射痕46における所定の1箇所の幅寸法Mを計測して、その値を照射痕46の幅寸法Mとしてもよいし、複数箇所の幅寸法Mを計測して、その平均値を照射痕46の幅寸法Mとしてもよい。
【0035】
そして、制御部44は、照射痕46の幅寸法Mに応じて位置変位部42を制御する。上述のとおり、焦点シフトが生じると、照射痕46の幅寸法Mは徐々に広がっていく。つまり、照射痕46の幅寸法Mとレーザ光Lの焦点位置とは相関を有する。そこで、制御部44は、照射痕46の幅寸法Mとレーザ光Lの焦点位置とを対応付けた変換テーブルを予め保持する。制御部44は、この変換テーブルを用いることで、画像IMGから得られる照射痕46の幅寸法Mに基づいて、現在の焦点位置を把握することができる。なお、変換テーブルは、照射痕46の幅寸法Mと焦点位置の変位量とを対応付けたものであってもよい。また、焦点位置は、レーザ照射部4(例えば集光部26)と電極板6との距離として把握されてもよい。
【0036】
制御部44は、焦点位置が初期位置に近づくように、位置変位部42のモータ52を制御する。好ましくは制御部44は、焦点位置を初期位置に一致させる。上述のとおり、焦点シフトが生じると、焦点位置はレーザ照射部4に近づく方向に変位する。このため、制御部44は、レーザ照射部4を電極板6に近づけるように位置変位部42を制御する。これにより、焦点位置のずれを抑制することができ、電極板6の切断品質を高めることができる。また、制御部44は、焦点位置の調整後に切断加工が施された部位の画像IMGを情報取得部40から取得し、この画像IMGに基づいて位置変位部42を制御することで、照射痕46の幅寸法Mを一定にするフィードバック制御を実行することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態に係る切断装置1は、電極板6にレーザ光Lを照射して切断加工を施すレーザ照射部4と、レーザ光Lの焦点位置に関する情報を取得する情報取得部40と、レーザ光Lの焦点位置を変位させる位置変位部42と、情報取得部40が取得した焦点位置に関する情報に基づいて位置変位部42を制御する制御部44と、を備える。これにより、電極板6の切断加工中に焦点シフトが発生しても、焦点Fのシフト量に応じてレーザ光Lの焦点位置を調整することができる。これにより、電極板6の切断品質を向上させることができ、電池の品質向上を図ることができる。
【0038】
また、本実施の形態の情報取得部40は、焦点位置に関する情報として、電極板6に形成されるレーザ光Lの照射痕46の幅寸法Mに関する情報を取得する。そして、制御部44は、照射痕46の幅寸法Mに応じて位置変位部42を制御する。つまり、切断装置1は、レーザ光Lでの電極板6の切断中に照射痕46の幅寸法Mの変化を測定して、測定結果に応じてリアルタイムに焦点位置を調整する。
【0039】
上述のように、焦点位置に関する情報は、計算によって得られる焦点位置や焦点位置の変位量であってもよい。しかしながら、光学部材への異物の付着といった、焦点位置の変位に影響する外的要因が多く、焦点位置やその変位量を正確に算出することは非常に困難である。また、レーザ光Lの焦点Fを直接検知することも、切断装置1の構造の複雑化や高コスト化を招き得る。これに対し、焦点位置に関する情報として照射痕46の幅寸法Mを利用することで、より簡単に焦点位置を把握することができる。よって、電極板6の切断品質をより簡単に向上させることができる。
【0040】
また、本実施の形態の情報取得部40は、照射痕46を撮像する撮像装置48を有し、照射痕46の幅寸法Mに関する情報として照射痕46の画像IMGを取得する。照射痕46の画像IMGを用いてレーザ光Lの焦点位置を調整することで、電極板6の切断品質をより簡単に向上させることができる。また、一般に切断装置1には、電極板6の寸法や外観をインラインで検査するためにカメラが設けられている。このため、当該カメラを撮像装置48として利用することができる。したがって、焦点位置調整機構を設けることによる切断装置1の構造の複雑化や高コスト化を抑制することができる。
【0041】
また、本実施の形態のレーザ照射部4は、レーザ発振器100が発振するレーザ光Lが入射する入射部22と、入射部22に入射したレーザ光Lで電極板6を走査する走査部24と、走査部24から出射されるレーザ光Lを電極板6に集光させる集光部26とを有する。そして、位置変位部42は、レーザ照射部4の全体を変位させることで焦点位置を変位させる。
【0042】
走査部24から出射されるレーザ光は、平行光である。このため、集光部26のみを電極板6に対して変位させることでも、焦点位置を変位させることができる。しかしながら、レーザ照射部4内への異物の進入を防ぐために、入射部22、走査部24および集光部26は、互いに気密に接続することが望ましい。したがって、集光部26のみを変位させる場合、走査部24と集光部26との接続部に対して異物の進入対策が別途必要となり、レーザ照射部4の構造の複雑化を招き得る。これに対し、位置変位部42による変位対象をレーザ照射部4の全体とすることで、レーザ照射部4の構造の複雑化を招くことなく、焦点位置を変位させることが可能となる。
【0043】
また、本実施の形態の切断装置1は、電極板6を搬送する搬送部2を備える。電極板6は、搬送方向Aに長い帯状であり、電極板6における搬送方向Aと直交する幅方向Bの中央部に配置される電極活物質の塗布部12と、電極板6における幅方向Bの端部に配置される電極活物質の非塗布部14とを有する。レーザ照射部4は、少なくとも非塗布部14を切断して搬送方向Aに所定の間隔をあけて配置される複数のタブ部10を形成する。これにより、高品質なタブ部10を安定的に形成することができる。
【0044】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0045】
切断装置1は、電極板6から単位電極板8を個片化するものであってもよい。電極板6は、単位電極板8とセパレータとが積層されたものであってもよい。レーザ照射部4や位置変位部42は、焦点位置を調整可能なものであれば、その構造は特に限定されない。
【0046】
上述した実施の形態に係る発明は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目1]
電極板(6)にレーザ光(L)を照射して切断加工を施し、
レーザ光(L)の焦点位置に関する情報を取得し、
取得した情報に基づいて焦点位置を変位させることを含む、
切断方法。
【符号の説明】
【0047】
1 切断装置、 2 搬送部、 4 レーザ照射部、 6 電極板、 10 タブ部、 12 塗布部、 14 非塗布部、 22 入射部、 24 走査部、 26 集光部、 40 情報取得部、 42 位置変位部、 44 制御部、 46 照射痕、 48 撮像装置、 100 レーザ発振器。