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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102804
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/44 20060101AFI20230719BHJP
   B60K 15/035 20060101ALI20230719BHJP
   B60K 15/03 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
F16K1/44 C
B60K15/035 C
B60K15/03 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003436
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 夏司
【テーマコード(参考)】
3D038
3H052
【Fターム(参考)】
3D038CA11
3D038CB01
3D038CC02
3D038CC04
3D038CC05
3D038CC18
3D038CD18
3H052AA01
3H052BA25
3H052BA35
3H052CA12
3H052CC03
3H052CD01
(57)【要約】
【課題】アクチュエータの出力が小さくても、圧力に対抗して弁体を開ける。
【解決手段】流体制御弁50は、前記流体流路の前記高圧側と前記低圧側との間に設けられた仕切520と、仕切に設けられた第1開口521と、仕切において、第1開口と異なる位置に設けられた第2開口522と、仕切の高圧側に配置され第1開口を開閉する第1弁体530と、仕切の低圧側に配置され第2開口を開閉する第2弁体540と、第1弁体と第2弁体とを接続し、第2弁体の開閉状態が第1弁体の開閉状態と同じになるように連動して開閉させる接続部550と、接続部に接続され、第1弁体と前記第2弁体の開閉を駆動するアクチュエータと、を備え、第1弁体、第2弁体は、第1弁体と第2弁体とがいずれも閉状態のとき、第1弁体が第1開口を閉じる第1の力が、第2弁体が第2開口を開ける第2の力よりも大きくなるように設定されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧側と低圧側とを結ぶ流体流路に配置される流体制御弁であって、
前記流体流路の前記高圧側と前記低圧側との間に設けられた仕切と、
前記仕切に設けられた第1開口と、
前記仕切において、前記第1開口と異なる位置に設けられた第2開口と、
前記仕切の前記高圧側に配置され前記第1開口を開閉する第1弁体と、
前記仕切の前記低圧側に配置され前記第2開口を開閉する第2弁体と、
前記第1弁体と前記第2弁体とを接続し、前記第2弁体の開閉状態が前記第1弁体の開閉状態と同じになるように連動して開閉させる接続部と、
前記接続部に接続され、前記第1弁体と前記第2弁体の開閉を駆動するアクチュエータと、
を備え、
前記第1弁体、前記第2弁体は、前記第1弁体と前記第2弁体とがいずれも閉状態のとき、前記第1弁体が前記第1開口を閉じる第1の力が、前記第2弁体が前記第2開口を開ける第2の力よりも大きくなるように設定されている、流体制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流体制御弁であって、
前記接続部は、前記第1弁体と前記第2弁体とを連結する回転体であり、
前記接続部が前記アクチュエータによって回転駆動されることで、前記第1弁体と前記第2弁体は、前記第1開口と前記第2開口をそれぞれ開閉する、流体制御弁。
【請求項3】
請求項2に記載の流体制御弁であって、
前記第1弁体の受圧面積は、前記第2弁体の受圧面積よりも大きい、流体制御弁。
【請求項4】
請求項2に記載の流体制御弁であって、
前記接続部の回転の中心軸から前記第1弁体の作用点までの距離は、前記中心軸から前記第2弁体の作用点までの距離よりも長い、流体制御弁。
【請求項5】
請求項1に記載の流体制御弁であって、
前記接続部は、前記第1弁体と前記第2弁体とを並進移動が可能に連結し、
前記第1弁体の受圧面積は、前記第2弁体の受圧面積よりも大きい、流体制御弁。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の流体制御弁であって、
前記流体流路は、燃料タンクとキャニスタを繋ぐ流体流路である、流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から高圧の流体を開閉など制御するために各種の流体制御弁が提案されている(例えば特許文献1)。こうした高圧流体の流体制御弁のうち、弁体により開口部を閉塞して閉弁するものでは、弁体に、流体の一次圧(高圧)がかかるようにして、高圧流体に対するシール性を確保している。こうした高圧下で使用される流体制御弁としては、例えば密閉型の燃料タンクシステムに用いられ、タンク内の高圧の燃料蒸気の排出流路に設けられる開閉弁や、高圧の水素が充填されたタンクからの水素供給流路に設けられる開閉弁、あるいは容器内の流体の圧力が過剰となったときに、これをリリースするリリース弁などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-121650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした流体制御弁では、閉弁状態の弁体は閉塞方向に一次圧を受けているので、これを電気的に開弁しようとすると、開弁するには、大きな駆動力が必要になる。もとより弁体の面積を小さくすれば、弁体が流体から閉塞方向に受ける力は小さくなるが、流体の流量が必要になる場合には、弁体が閉鎖する開口の面積を小さくすることには限界がある。パイロット弁を付設する構成も提案されているが、パイロット弁と主弁の二つを駆動する必要があり、また開弁動作に必要な時間が長くなってしまう。このため、高圧の流体を弁体で開閉する小型でかつ所定の流量を確保できる流体制御弁が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、高圧側と低圧側とを結ぶ流体流路に配置される流体制御弁が提供される。この流体制御弁は、前記流体流路の前記高圧側と前記低圧側との間に設けられた仕切と、前記仕切に設けられた第1開口と、前記仕切において、前記第1開口と異なる位置に設けられた第2開口と、前記仕切の前記高圧側に配置され前記第1開口を開閉する第1弁体と、前記仕切の前記低圧側に配置され前記第2開口を開閉する第2弁体と、前記第1弁体と前記第2弁体とを接続し、前記第2弁体の開閉状態が前記第1弁体の開閉状態と同じになるように連動して開閉させる接続部と、前記接続部に接続され、前記第1弁体と前記第2弁体の開閉を駆動するアクチュエータと、を備え、前記第1弁体、前記第2弁体は、前記第1弁体と前記第2弁体とがいずれも閉状態のとき、前記第1弁体が前記第1開口を閉じる第1の力が前記第2弁体が前記第2開口を開ける第2の力よりも大きくなるように、設定されている。
(2)上記形態の流体制御弁において、前記接続部は、前記第1弁体と前記第2弁体とを連結する回転体であり、前記接続部が前記アクチュエータによって回転駆動されることで、前記第1弁体と前記第2弁体は、前記第1開口と前記第2開口をそれぞれ開閉してもよい。
(3)上記形態の流体制御弁において、前記第1弁体の受圧面積は、前記第2弁体の受圧面積よりも大きくてもよい。
(4)上記形態の流体制御弁において、前記接続部の回転の中心軸から前記第1弁体の作用点までの距離は、前記中心軸から前記第2弁体の作用点までの距離よりも長くてもよい。
(5)上記形態の流体制御弁において、前記接続部は、前記第1弁体と前記第2弁体とを並進移動が可能に連結し、前記第1弁体の受圧面積は、前記第2弁体の受圧面積よりも大きくてもよい。
(6)上記形態の流体制御弁において、前記流体流路は、燃料タンクとキャニスタを繋ぐ流体流路であってもよい。
(7)本開示は、流体制御弁以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、燃料電池車両、蒸発燃料処理装置、流体制御弁等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の流体制御弁を用いた、蒸発燃料処理装置の概略構成を示す説明図である。
図2】流体制御弁の構成を示す説明図である。
図3】流体制御弁を高圧側から見た図である。
図4】第2実施形態の流体制御弁の構成を示す説明図である。
図5】第3実施形態の流体制御弁の構成を示す説明図である。
図6】燃料電池車両の燃料系を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、蒸発燃料処理装置312の概略構成を示す説明図である。蒸発燃料処理装置312は、自動車等の車両のエンジンシステム300に備えられている。エンジンシステム300は、エンジン314と、エンジン314に供給される燃料を貯留する燃料タンク315とを備えている。燃料タンク315には、インレットパイプ316が設けられている。インレットパイプ316は、その上端部の給油口から燃料を燃料タンク315内に導入するパイプであって、給油口にはタンクキャップ317が着脱可能に取付けられている。また、インレットパイプ316の上端部内と燃料タンク315内の蒸発燃料が存在する気層部とは、ブリーザパイプ318により連通されている。
【0009】
燃料タンク315内には燃料供給装置319が設けられる。燃料供給装置319は、燃料タンク315内の燃料を吸入しかつ加圧して吐出する燃料ポンプ320、燃料の液面を検出するセンタゲージ321、大気圧に対する相対圧としてのタンク内圧を検出するタンク内圧センサ322等を備えている。燃料ポンプ320により燃料タンク315内から汲み上げられた燃料は、燃料供給通路324を介してエンジン314に供給される。詳しくは、各燃焼室に対応するインジェクタ(燃料噴射弁)325を備えるデリバリパイプ326に供給された後、各インジェクタ325から吸気通路327内に噴射される。吸気通路327には、エアクリーナ328、エアフロメータ329、スロットルバルブ330等が設けられる。
【0010】
蒸発燃料処理装置312は、ベーパ通路331とパージ通路332とキャニスタ334とを備えている。ベーパ通路331の一端部(上流側端部)は、燃料タンク315内の気層部と連通されている。ベーパ通路331の他端部(下流側端部)は、キャニスタ334内と連通されている。また、パージ通路332の一端部(上流側端部)は、キャニスタ334内と連通されている。パージ通路332の他端部(下流側端部)は、吸気通路327におけるスロットルバルブ330よりも下流側通路部と連通されている。また、キャニスタ334内には、吸着材としての活性炭(不図示)が装填されている。燃料タンク315内の蒸発燃料は、ベーパ通路331を介してキャニスタ334内の吸着材(活性炭)に吸着される。
【0011】
燃料タンク315内の気層部において、ベーパ通路331の上流側端部には、ORVR弁(On Board Refueling Vapor Recovery valve)335及びフューエルカットオフバルブ (Cut Off Valve)336が設けられている。
【0012】
ベーパ通路331の途中には封鎖弁338が介装されている。すなわち、ベーパ通路331は、その途中で燃料タンク315側の通路部331aとキャニスタ334側の通路部331bとに分断され、その通路部331a,331bの相互間に封鎖弁338が配置されている。封鎖弁338は、流体制御弁50及びリリーフ弁354を備える。流体制御弁50は、電気的な制御により通路を開閉することにより、ベーパ通路331を流れる蒸発燃料を含むガス(「流体」という)の流量を調整する。流体制御弁50は、エンジン制御装置(以下、「ECU」という)345から出力される駆動信号により開閉制御される。リリーフ弁354は、流体制御弁50の閉弁時における燃料タンク315内の圧力を適正圧力に保つためのものである。
【0013】
パージ通路332の途中にはパージ弁340が介装されている。パージ弁340は、ECU45により算出されたパージ流量に応じた開弁量で開閉制御いわゆるパージ制御される。また、パージ弁340は、例えば、ステッピングモータを備えかつバルブ体のストロークを制御することで開弁量を調整可能である。なお、パージ弁340は、本実施形態では電磁弁であり、電磁ソレノイドを備え、非通電状態では閉弁し、通電によって開弁する。
【0014】
キャニスタ334には大気通路342が配設されている。大気通路342の他端部は大気に開放されている。また、大気通路342の途中にはエアフィルタ343が介装されている。
【0015】
ECU345には、タンク内圧センサ322、封鎖弁338の流体制御弁50、パージ弁340の他、リッドスイッチ346、リッドオープナー347、表示装置349等が接続されている。リッドオープナー347には、給油口を覆うリッド348を手動で開閉するリッド手動開閉装置(不図示)が連結されている。リッドスイッチ346は、ECU345に対してリッド348のロックを解除するための信号を出力する。また、リッドオープナー347は、リッド348のロック機構で、ECU345からロックを解除するための信号が供給された場合、又は、リッド手動開閉装置に開動作が施された場合に、リッド348のロックを解除する。
【0016】
図2は、流体制御弁50の構成を示す説明図である。図3は、流体制御弁50を高圧側から見た図である。流体制御弁50は、高圧側管部500と、低圧側管部510と、仕切520と、第1弁体530と、第2弁体540と、接続部550と、アクチュエータ580と、回転軸590と、を備えている。高圧側管部500は、蒸発燃料処理装置312の通路部331aに接続され、低圧側管部510は通路部331bに接続されている。
【0017】
高圧側管部500は、燃料タンク60の口金62に接続されている。高圧側管部500は、内側に流体流路のうちの高圧側の流路である高圧側流体流路502を形成している。高圧側流体流路502を流れる流体の圧力はP1である。低圧側管部510は、内側に流体流路のうちの低圧側の流路である低圧側流体流路512を形成している。低圧側流体流路512を流れる流体の圧力はP2である。低圧側流体流路512の圧力P2は、高圧側流体流路502の圧力P1よりも低い値である。
【0018】
高圧側流体流路502と、低圧側流体流路512との間には、仕切520が設けられている。仕切520は、高圧側管部500、あるいは、低圧側管部510の一部を用いて形成されていてもよく、高圧側管部500、あるいは、低圧側管部510と異なる部材で構成されていてもよい。仕切520は、互いに異なる位置に設けられた第1開口521と、第2開口522と、を有している。
【0019】
流体制御弁50は、第1開口521の高圧側に配置され、第1開口521を開閉する第1弁体530と、第2開口522の低圧側に配置され、第2開口522を開閉する第2弁体540と、を有している。第1弁体530は、留具560により回転体である接続部550に固定されており、第2弁体540は、留具570により接続部550に固定されている。したがって、第1弁体530と第2弁体540は、接続部550により連結されている。接続部550は、第1弁体530が閉状態のときには、第2弁体540を閉状態とする。一方、接続部550は、第1弁体530が開状態のときには、第2弁体540も開状態とする。すなわち、接続部550は、第2弁体540の開閉状態が第1弁体530の開閉状態と同じになるように、第1弁体530と第2弁体540とを連動させて開閉する。
【0020】
接続部550は、回転軸590に接続され、回転軸590は、アクチュエータ580に接続されている。アクチュエータ580は、第1弁体530と第2弁体540の開閉を駆動するロータリー式のソレノイドである。
【0021】
高圧側流体流路502の圧力P1は、低圧側流体流路512の圧力P2よりも高いため、第1弁体530と第2弁体540の閉状態において、第1弁体530には、高圧側から第1開口521を閉じようとする第1の回転力M1が掛かっている。一方、第2弁体540には、高圧側から第2開口522を開けようとする第2の回転力M2が掛かっている。第1の回転力M1と第2の回転力M2の回転方向は逆である。すなわち、図2に示す例では、第1の回転力M1は、回転軸590を中心とした反時計回りであり、第2の回転力M2は、回転軸590を中心とした時計回りである。本実施形態では、第1弁体530の受圧面積S1は、第2弁体540の受圧面積S2以上であり、第1の回転力M1が第2の回転力M2よりも大きくなるように、第1弁体530、第2弁体540や第1開口521、第2開口522の大きさや、回転の中心軸Oに対する第1弁体530、第2弁体540の位置が設定されている。その結果、第1弁体530、第2弁体540には、(M1-M2)の回転力により、第1弁体530、第2弁体540を閉じる力が掛かる。
【0022】
高圧側の圧力をP1、低圧側の圧力をP2、第1弁体530の第2受圧面積をS1、第2弁体540の第2受圧面積をS2、回転の中心軸Oから第1弁体530の作用点Q1までの距離をr1、回転の中心軸Oから第2弁体540の作用点Q2までの距離をr2とする。第1の回転力M1は、M1=(P1-P2)×S1×r1であり、第2の回転力M2は、M2=(P1-P2)×S2×r2である。M1>M2であるためには、S1×r1>S2×r2を満たせばよい。したがって、第1受圧面積S1と第2受圧面積S2とが等しければ、中心軸Oから作用点Q1までの距離r1を、中心軸Oから作用点Q2までの距離r2よりも長くなるように第1弁体530、第2弁体540の位置を設定すればよい。また、中心軸Oから作用点Q1までの距離r1と、中心軸Oから作用点Q2までの距離r2と、が等しければ、第1受圧面積S1を、第2受圧面積S2よりも大きくすればよい。なお、第1受圧面積S1が第2受圧面積S2よりも小さくても、中心軸Oから作用点Q1までの距離r1を中心軸Oから作用点Q2までの距離r2よりも十分に大きくすれば、M1>M2を満たすことができる。
【0023】
流体制御弁50の第1弁体530及び第2弁体540を開ける場合には、アクチュエータ580は、(M1-M2)よりも大きな回転力を時計回りに加える。一旦、第1弁体530と第2弁体540が開くと、高圧側流体流路502と低圧側流体流路512とが連通し、高圧側の圧力P1と低圧側の圧力P2が、いずれも第1弁体530と第2弁体540に掛からなくなる。その結果、第1弁体530と第2弁体540が開いた後は、アクチュエータ580は、(M1-M2)よりも小さな回転力であっても、第1弁体530と第2弁体540の開状態を維持できる。
【0024】
以上、本実施形態によれば、閉状態では、第1の回転力M1が第2の回転力M2よりも大きく、この回転力の差は、第1弁体530と第2弁体540を閉じる方向に作用する。そのため、流体制御弁50は、第1弁体530と第2弁体540の閉状態を容易に維持できる。また、第1弁体530と第2弁体540の閉状態を維持するに、他の構成が不要である。さらに、第1弁体530と第2弁体540を開状態にする際には、アクチュエータ580は、第1の回転力M1と第2の回転力M2の差よりも大きい回転力(M1-M2)で駆動すれば、第1弁体530と第2弁体540を開けることができる。
【0025】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態の流体制御弁50aの構成を示す説明図である。第2実施形態の流体制御弁50aについては、第1実施形態と同様の機能の部材には、第1実施形態の部材の符号の末尾にaを付している。高圧側から見たときに、第1実施形態の流体制御弁50では、第1弁体530と第2弁体540と重なっておらず、第1弁体530aと第2弁体540aに掛かる力の向きはいずれも下方から上方である。これに対し、第2実施形態の流体制御弁50aでは、第1弁体530aと第2弁体540aとがほぼ重なっており、第1弁体530には、上方から下方への力が掛かり、第2弁体540aには、下方から上方への力が掛かっている点で相違する。
【0026】
第2実施形態においても、第1弁体530a、第2弁体540aが閉状態のときには、第1弁体530aには、第1開口521aを閉じようとする反時計回りの回転力M1aが掛かり、第2弁体540aには、第2開口522aを開けようとする時計回りの回転力M2aが掛かり、回転力M1aは回転力M2aよりも大きい。そのため、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1弁体530aと第2弁体540aの閉状態を容易に維持できる。また、第1弁体530aと第2弁体540aの閉状態を維持するに、他の構成が不要である。さらに、第1弁体530aと第2弁体540aを開状態にする際には、アクチュエータ580aは、第1の回転力M1aと第2の回転力M2aの差よりも大きい回転力(M1a-M2a)で駆動すれば、第1弁体530aと第2弁体540aを開けることができる。
【0027】
第2実施形態において、第1弁体530a、第2弁体540aが閉状態のときに、第1弁体530aに、回転力M1aが掛かり、第2弁体540aには、回転力M1aと反対回りの回転力M2aが掛かり、回転力M1aは回転力M2aよりも大きくできるのであれば、第1弁体530aの受圧面積S1a、第2弁体540aの受圧面積S2aや、軸Oaからの第1開口521aの作用点Q1aまでの距離r1a、第2開口522aの作用点Q2bまでの距離r2aは自由に設定することができる。また、第1弁体530a、第2弁体540aが閉状態のときに、第1弁体530a、第2弁体540aに掛かる力の向きは図4の上下方向以外の方向、たとえば、一方を図4の左右方向、他方を図4の上下方向にしてもよい。
【0028】
C:第3実施形態:
図5は、第3実施形態の流体制御弁50bの構成を示す説明図である。第3実施形態の流体制御弁50bについては、第1実施形態と同様の機能の部材には、第1実施形態の部材の符号の末尾にbを付している。第2実施形態の流体制御弁50aでは、第1弁体530a、第2弁体540a、接続部550aは、軸Oa回りに回転駆動される。第3実施形態の流体制御弁50bでは、アクチュエータ580bは直道式のソレノイドであり、第1弁体530b、第2弁体540b、接続部550bは、アクチュエータ580bにより、軸590bの軸方向に沿って駆動される点で相違する。なお、接続部550bと軸590bは一体であってもよい。
【0029】
第3実施形態では、第1弁体530bと第2弁体540bの閉状態において、第1弁体530bには、軸Obに沿って高圧側から第1開口521bを閉じようとする第1の力並進F1が掛かっている。一方、第2弁体540bには、軸Obに沿って高圧側から第2開口522bを開けようとする第2の力並進F2が掛かっている。第1の並進F1と第2の並進力F2の方向は逆である。すなわち、図5に示す例では、第1の並進力F1の向きは、上方から下方であり、第2の並進力F2の向きは、下方から上方である。本実施形態では、第1の並進F1が第2の並進力F2よりも大きくなるように、第1弁体530bの受圧面積S1bと第2弁体540bの受圧面積S2bが設定されている。その結果、第1弁体530、第2弁体540には、(F1-F2)の並進力により、第1弁体530b、第2弁体540bを閉じる力が掛かる。
【0030】
以上、第3実施形態によれば、閉状態では、第1の並進力F1が第2の並進力F2よりも大きく、この並進力の差は、第1弁体530bと第2弁体540bを閉じる方向に作用する。そのため、第1弁体530bと第2弁体540bの閉状態を容易に維持できる。また、第1弁体530bと第2弁体540bの閉状態を維持するに、他の構成が不要である。さらに、第1弁体530bと第2弁体540bを開状態にする際には、アクチュエータ580bは、第1の並進力F1と第2の並進力F2の差よりも大きい並進力(F1-F2)で駆動すれば、第1弁体530bと第2弁体540bを並進移動させて開けることができる。
【0031】
第3実施形態では、回転力ではなく並進力を用いるので、軸から作用点までの距離は、第1弁体530bと第2弁体540bを閉じる力に影響を与えない。すなわち、第1弁体530b、第2弁体540bの受圧面積だけで並進力の大きさを設定できる。
【0032】
以上、第1実施形態から第3実施形態からわかるように、第1弁体と第2弁体とを閉じようとする力は、回転力であってもよく、並進力であってもよい。
【0033】
上記各実施形態では、接続部550、550a、550bを動かすアクチュエータとして、ソレノイドを用いたが、モータを用いてもよい。
【0034】
D:第4実施形態:
第1実施形態から第3実施形態では、流体制御弁50、50a、50bを蒸発燃料処理装置312に用いる例、及び流体制御弁の様々な構成について説明した。第4実施形態では、流体制御弁352燃料電池車両10の供給バルブ40に用いる例について説明する。
【0035】
図6は、本実施形態の流体制御弁50を用いた、燃料電池車両10の燃料系を示す説明図である。燃料電池車両10は、レセプタクル20と、燃料充填管30と、逆止弁35と、供給バルブ40と、流体制御弁50と、燃料タンク60と、第1燃料ガス供給管70と、減圧弁80と、第2燃料ガス供給管90と、燃料電池100と、第1排気管110と、水素ポンプ120と、還流管130と、逆止弁140と、第2排気管15と、排気弁160と、を備えている。
【0036】
レセプタクル20は、燃料電池車両10への燃料である水素の充填時に水素ステーション200のホース210のノズル220が差し込まれる水素充填口である。燃料充填管30は、レセプタクル20と燃料タンク60とを繋いている。水素ステーション200から、ホース210、ノズル220、レセプタクル20、燃料充填管30を介して供給された水素は、燃料タンク60に充填される。逆止弁35は、燃料タンク60から燃料充填管30、レセプタクル20への水素の逆流を止めるための弁である。本実施形態では、逆止弁35は、後述する流体制御弁50とともに供給バルブ40として1つの部品として構成されている。供給バルブ40は、燃料タンク60の口金62に取り付けられている。
【0037】
燃料タンク60は、水素ステーション200から充填された水素を燃料として貯蔵するタンクである。燃料タンク60の口金62には、上述したように、供給バルブ40が取り付けられている。
【0038】
供給バルブ40の流体制御弁50の下流側には、第1燃料ガス供給管70が接続されている。第1燃料ガス供給管70の下流側には、減圧弁80が接続されている。減圧弁80の下流側には、第2燃料ガス供給管90が接続されている。減圧弁80は、第1燃料ガス供給管70内の水素の圧力を下げて、第2燃料ガス供給管90に供給する。第2燃料ガス供給管90の下流側には、燃料電池100の水素供給口102が接続されている。
【0039】
燃料電池100の排ガス排出口108には、第1排気管110が接続されている。第1排気管110の下流側には、還流管130と第2排気管150とが接続されている。還流管130の下流側は、第2燃料ガス供給管90に接続されている。第2排気管150の下流側は、大気に開口している。還流管130には、逆止弁140が設けられている。逆止弁140は、第2燃料ガス供給管90から還流管130に水素が逆流することを抑制する。第2排気管150には、排気弁160が設けられている。第1排気管110の途中には、水素ポンプ120が設けられている。
【0040】
燃料電池100の排ガス排出口108から排出された排ガスには、未反応の水素が含まれている。排気弁160が閉じている場合には、燃料電池100の排ガス排出口108から排出された排ガスは、水素ポンプ120により加圧され、還流管130を通り、第2燃料ガス供給管90に還流される。一方、排気弁160が開いている場合には、燃料電池100の排ガス排出口108から排出された排ガスは、第2排気管150を通り、大気に排出される。
【0041】
第1実施形態から第3実施形態で説明した流体制御弁50、50a、50bは、第4実施形態における燃料タンク60の口金62に取り付けられる供給バルブ40の流体制御弁50に採用可能である。このように、流体制御弁50、50a、50bは、自動車等の車両のエンジンシステム300の蒸発燃料処理装置312における封鎖弁338の流体制御弁50として用いることができる他、燃料タンク60の口金62に取り付けられる供給バルブ40の流体制御弁50としても採用可能である。
【0042】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10…燃料電池車両、15…第2排気管、20…レセプタクル、30…燃料充填管、35…逆止弁、40…供給バルブ、50、50a、50b…流体制御弁、60…燃料タンク、62…口金、70…第1燃料ガス供給管、80…減圧弁、90…第2燃料ガス供給管、100…燃料電池、102…水素供給口、108…排ガス排出口、110…第1排気管、120…水素ポンプ、130…還流管、140…逆止弁、150…第2排気管、160…排気弁、200…水素ステーション、210…ホース、220…ノズル、300…エンジンシステム、312…蒸発燃料処理装置、314…エンジン、315…燃料タンク、316…インレットパイプ、317…タンクキャップ、318…ブリーザパイプ、319…燃料供給装置、320…燃料ポンプ、321…センタゲージ、322…タンク内圧センサ、324…燃料供給通路、325…インジェクタ、326…デリバリパイプ、327…吸気通路、328…エアクリーナ、329…エアフロメータ、330…スロットルバルブ、331…ベーパ通路、331a…通路部、331b…通路部、332…パージ通路、334…キャニスタ、335…ORVR弁、336…フューエルカットオフバルブ、338…封鎖弁、340…パージ弁、342…大気通路、343…エアフィルタ、346…リッドスイッチ、347…リッドオープナー、348…リッド、354…リリーフ弁、500…高圧側管部、502…高圧側流体流路、510…低圧側管部、512…低圧側流体流路、520…仕切、521、521a、521b…第1開口、522、522a、522b…第2開口、530、530a、530b…第1弁体、540、540a、540b…第2弁体、550、550a、550b…接続部、560…留具、570…留具、580、580a、580b…アクチュエータ、590、590a…回転軸、590b…軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6