(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102806
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】地図処理システム
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20230719BHJP
G06T 3/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G06T3/00 750
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003441
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好美
(72)【発明者】
【氏名】大塚 智浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健太
【テーマコード(参考)】
2C032
5B057
【Fターム(参考)】
2C032HB05
5B057AA13
5B057BA02
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB02
5B057CB06
5B057CB12
5B057CB16
5B057CC01
5B057CD11
5B057CE12
5B057CF01
5B057DA07
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5B057DC09
5B057DC32
(57)【要約】
【課題】2つの地図の位置合わせに際して手動操作を不要とすることができ、不注意によるミスもなくすることができる地図処理システムを提供すること。
【解決手段】地図処理システムは、イラスト地図画像を取得するイラスト地図取得部204と、イラスト地図画像に対応する第1の道路形状を抽出する道路形状抽出部208と、第1の道路形状の特徴量を算出する特徴量算出部212と、イラスト地図に対応する範囲が含まれる地図データを取得するデジタル地図取得部206と、地図データに対応する第2の道路形状を抽出する道路形状抽出部210と、第2の道路形状の特徴量を算出する特徴量算出部214と、第1および第2の道路形状の特徴量を用いてマッチング処理を行うことにより、イラスト地図画像と地図データとの間で位置合わせを行うマッチング処理部216とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イラスト地図画像を取得するイラスト地図取得手段と、
前記イラスト地図画像に対応する第1の道路形状を抽出する第1の道路形状抽出手段と、
前記第1の道路形状の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段と、
前記イラスト地図に対応する範囲が含まれる地図データを取得する地図データ取得手段と、
前記地図データに対応する第2の道路形状を抽出する第2の道路形状抽出手段と、
前記第2の道路形状の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段と、
前記第1および第2の道路形状の特徴量を用いてマッチング処理を行うことにより、前記イラスト地図画像と前記地図データとの間で位置合わせを行うマッチング処理手段と、
を備えることを特徴とする地図処理システム。
【請求項2】
前記地図データ取得手段は、前記イラスト地図画像に含まれる施設名に基づいて、前記イラスト地図画像に対応する前記地図データの範囲を決定することを特徴とする請求項1に記載の地図処理システム。
【請求項3】
前記マッチング処理手段によって位置合わせされた前記イラスト地図画像と前記地図データとの間で同一地点を対応付ける座標変換情報を生成する座標変換情報生成手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の地図処理システム。
【請求項4】
前記イラスト地図画像を閲覧する利用者の現在位置を検出する位置検出手段と、
前記座標変換情報を用いて、前記現在位置に対応する前記イラスト地図画像上の座標に変換する座標変換手段と、
前記座標変換手段によって変換された座標で示される位置が識別可能な状態で、前記イラスト地図画像を表示するイラスト地図表示手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の地図処理システム。
【請求項5】
前記第1の道路形状抽出手段は、前記イラスト地図画像に対して2値化および細線化を行うことにより、前記イラスト地図画像に含まれる前記第1の道路形状を抽出することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の地図処理システム。
【請求項6】
前記第1の道路形状抽出手段は、別のイラスト地図画像とこの別のイラスト地図画像に含まれる道路形状とを対応付けて事前に学習させた人工知能を用いて、前記イラスト地図画像に含まれる前記第1の道路形状を抽出することを特徴とする請求項1に記載の地図処理システム。
【請求項7】
前記マッチング処理手段は、前記イラスト地図に含まれる施設名と、前記地図データに含まれる施設名との比較結果を加味してマッチング処理を行うことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の地図処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イラスト地図に対して処理を行う地図処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザがデジタル地図データとイラスト地図データの対応位置を手動で入力し、その対応位置に基づいて、デジタル地図データとイラスト地図データの位置合わせを行うようにした地図情報システムが記載されている(例えば、特許文献1参照。)。この地図情報システムでは、2つの地図の位置合わせを行っているため、これら2つの地図を切り替え表示する際に、注視点を切り替えの前後で同一とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示された地図情報システムでは、2つの地図の位置合わせを行うために、ユーザが対応位置を手動で入力する必要があり、ユーザにとって煩雑な手間がかかるという問題があった。また、手動入力を行うため、不注意等によるミスが起こりやすくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、2つの地図の位置合わせに際して手動操作を不要とすることができ、不注意によるミスもなくすることができる地図処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の地図処理システムは、イラスト地図画像を取得するイラスト地図取得手段と、イラスト地図画像に対応する第1の道路形状を抽出する第1の道路形状抽出手段と、第1の道路形状の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段と、イラスト地図に対応する範囲が含まれる地図データを取得する地図データ取得手段と、地図データに対応する第2の道路形状を抽出する第2の道路形状抽出手段と、第2の道路形状の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段と、第1および第2の道路形状の特徴量を用いてマッチング処理を行うことにより、イラスト地図画像と地図データとの間で位置合わせを行うマッチング処理手段とを備えている。
【0007】
イラスト地図画像と地図データとの位置合わせを行う場合に、事前に道路形状を抽出してそれらの特徴量を用いて位置合わせを行っているため、道路形状以外の要素の影響を取り除くことができ、処理の自動化を行って手動操作を不要とすることができる。また、手動操作が不要になるため、不注意によるミスもなくすことができる。
【0008】
また、上述した地図データ取得手段は、イラスト地図画像に含まれる施設名に基づいて、イラスト地図画像に対応する地図データの範囲を決定することが望ましい。施設名を用いることにより、イラスト地図画像に対応する地図データの範囲の特定が容易となる。
【0009】
また、上述したマッチング処理手段によって位置合わせされたイラスト地図画像と地図データとの間で同一地点を対応付ける座標変換情報を生成する座標変換情報生成手段をさらに備えることが望ましい。これにより、地図データで示される地図内の座標とイラスト地図内の座標との対応付けが容易となり、座標を指定してイラスト地図内の位置を特定することが可能となる。
【0010】
また、上述したイラスト地図画像を閲覧する利用者の現在位置を検出する位置検出手段と、座標変換情報を用いて、現在位置に対応するイラスト地図画像上の座標に変換する座標変換手段と、座標変換手段によって変換された座標で示される位置が識別可能な状態で、イラスト地図画像を表示するイラスト地図表示手段とをさらに備えることが望ましい。これにより、利用者の位置をイラスト地図上で示すことができる。
【0011】
また、上述した第1の道路形状抽出手段は、イラスト地図画像に対して2値化および細線化を行うことにより、イラスト地図画像に含まれる第1の道路形状を抽出することが望ましい。一般にはカラー表示のイラスト地図画像内で、道路は線で表される場合が多いため、2値化と細線化の各処理を行うことにより、道路形状を抽出することが可能となる。
【0012】
また、上述した第1の道路形状抽出手段は、別のイラスト地図画像とこの別のイラスト地図画像に含まれる道路形状とを対応付けて事前に学習させた人工知能を用いて、イラスト地図画像に含まれる第1の道路形状を抽出することが望ましい。これにより、イラスト地図特有の表現に対応する道路形状の抽出が可能となる。
【0013】
また、上述したマッチング処理手段は、イラスト地図に含まれる施設名と、地図データに含まれる施設名との比較結果を加味してマッチング処理を行うことが望ましい。これにより、マッチング処理の精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態の地図処理システムの概要を示す図である。
【
図7】デジタル地図データに基づいて抽出した道路形状を示す図である。
【
図9】地図処理サーバの動作手順を示す流れ図である。
【
図10】変形例の地図処理サーバの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態の地図処理システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、一実施形態の地図処理システムの概要を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の地図処理システムは、利用者Gが携帯する端末装置100と、この端末装置100と所定のネットワーク経由で各種データの送受信が可能な地図処理サーバ200を含んでいる。
【0017】
利用者Gは、例えば公園等においてその全体を表すイラスト地図(イラストマップや絵地図とも称される)IMを見ており、端末装置100が地図処理サーバ200と連係することにより、利用者自身が撮像したイラスト地
図IMを端末装置100に表示させたときに自身の位置を示す所定のマークを地図画像上に重ねて表示するために必要な処理が行われる。
【0018】
一般には、イラスト地
図IMは、画像データであって、描かれた道路には座標が対応付けられていないため、利用者自身の位置がわかったとしても、イラスト地図内でその位置を特定することはできない。本実施形態では、イラスト地図と、このイラスト地図と同じ範囲の地図データとを取得してこれらのマッチング処理を行って位置合わせを行うことにより、地図データで示される地図内の位置をイラスト地図内の位置と対応させている。これにより、利用者自身の位置がわかったときに、この位置をイラスト地図内で特定することが可能となる。
【0019】
図2は、端末装置100の構成を示す図である。
図2に示すように、端末装置100は、カメラ102、イラスト地図格納部104、イラスト地図送信部106、現在位置検出部108、現在位置送信部110、通信部112、対応座標受信部114、イラスト地図描画部116、表示処理部118、表示装置120を備えている。この端末装置100は、利用者が携帯するスマートホンによってその機能を実現することができる。また、
図2に示した構成は、本実施形態に必要な機能に着目して機能ブロックで表したものであり、カメラ102、現在位置検出部108、通信部112、表示装置120を除くほとんどの構成は、所定のプログラムをCPUで実行することにより実現することができる。
【0020】
カメラ102は、イラスト地
図IMを撮像する。撮像によって得られたイラスト地図画像は、イラスト地図格納部104に格納される。
【0021】
イラスト地図送信部106は、撮像によって得られたイラスト地図画像を通信部112を介して地図処理サーバ200に向けて送信する。通信部112は、地図処理サーバ200との間でイラスト地図画像やその他のデータを送受信する処理を行う。例えば、この送受信は電話回線を介して行われるが、付近に無線LANのアクセスポイントがある場合にはアクセスポイント経由で行うようにしてもよい。
【0022】
現在位置検出部108は、端末装置100を携帯する利用者の現在位置(正確には端末装置100の現在位置)を検出する。例えば、GPS受信機を用いて受信した信号を処理して現在位置が算出される。現在位置送信部110は、現在位置検出部108によって検出した現在位置を通信部112を介して地図処理サーバ200に向けて送信する。
【0023】
対応座標受信部114は、送信した現在位置に対応して地図処理サーバ200から送られてくる対応座標(利用者の現在位置を示すイラスト地図上の座標)を通信部112経由で受信する。
【0024】
イラスト地図描画部116は、イラスト地図格納部104から画像データを読み出してイラスト地図を現在位置マーク(受信した対応座標で指定されたイラスト地図上の位置に配置された所定形状、所定色を有する)とともに描画する。このイラスト地図は、表示処理部118によって表示装置120に表示される。
【0025】
図3は、地図処理サーバ200の構成を示す図である。
図3に示すように、地図処理サーバ200は、通信部202、イラスト地図取得部204、デジタル地図取得部206、道路形状抽出部208、210、特徴量算出部212、214、マッチング処理部216、座標変換情報生成部218、座標変換情報格納部220、現在位置受信部222、座標変換部224、対応座標送信部226を備えている。また、
図3に示した構成は、本実施形態に必要な機能に着目して機能ブロックで表したものであり、通信部202や座標変換情報格納部220を除くほとんどの構成は、所定のプログラムをCPUで実行することにより実現することができる。
【0026】
通信部202は、端末装置100との間でイラスト地図画像やその他のデータを送受信する処理を行う。イラスト地図取得部204は、端末装置100から送られてくるイラスト地図画像を取得する。デジタル地図取得部206は、イラスト地図と同じ範囲を含み、道路形状を特定する座標等の属性情報が含まれるデジタル地図データを外部の地図配信サーバ(図示せず)等から取得する。例えば、車載のナビゲーション装置などで用いられる地図データあるいはこれと同等の地図データを用いることができるが、Open Street Map(OSM)を用いるようにしてもよい。
【0027】
ところで、イラスト地図とデジタル地図データの範囲を同じ(全く同じである必要はない)にするためには、イラスト地図画像の中から施設名を抽出(例えば、画像認識により施設名を示すテキストデータを抽出する)し、この施設名で特定される施設の場所を検索することにより、イラスト地図と同じ範囲が含まれるデジタル地図データの範囲を特定すればよい。
【0028】
道路形状抽出部208は、イラスト地図取得部204によって取得したイラスト地図画像に基づいて、イラスト地図に含まれる道路形状を抽出する。イラスト地図画像は、複数の画素値からなる画像データであり、道路形状を特定するデータは含まれない。本実施形態では、この画像データから道路形状を抽出する。例えば、画像処理にて道路形状を抽出する場合が考えられる。
【0029】
図4~
図6は、画像処理を用いて道路形状を抽出する手順を示す説明図である。
図4は、取得したイラスト地図画像を示している。
図4において、ハッチングが付された範囲が、道路形状抽出の対象となるイラスト地
図IMであるが、端末装置100を用いて撮像された画像には、イラスト地
図IMの周辺部分も含まれている。道路形状抽出部208は、このような周辺部分が含まれる画像に対して2値化処理を行う。
図5は、2値化処理後の画像を示している。次に、道路形状抽出部208は、この2値化画像に対して細線化処理を行う。
図6は、細線化処理後の画像を示している。細線化処理後の画像には、道路に対応する線分が多く含まれる。なお、実際には、細線化処理後の画像には、明らかに道路とは異なる線分も含まれるため、このような線分を取り除くノイズ除去が行われ、残った線分が道路形状として抽出される。
【0030】
道路形状抽出部210は、デジタル地図取得部206によって取得したデジタル地図データに含まれる道路形状データに基づいて道路形状を抽出する。デジタル地図データには、道路形状を特定する道路形状データが含まれるため、特別な処理を追加することなく、道路形状を抽出することができる。
図7は、デジタル地図データに基づいて抽出した道路形状を示す図である。
【0031】
特徴量算出部212は、道路形状抽出部208によって抽出したイラスト地図の道路形状について、マッチング処理に用いる特徴量を算出する。また、特徴量算出部214は、道路形状抽出部210によって抽出したデジタル地図データに基づく道路形状について、マッチング処理に用いる特徴量を算出する。
【0032】
マッチング処理部216は、2つの特徴量算出部212、214によって算出された特徴量を用いてマッチング処理を行う。例えば、有効なマッチ点が3点以上あれば、イラスト地図とデジタル地図との位置合わせが可能であるため、対応する3点以上の特徴点の組を抽出するためのマッチング処理が行われる。マッチ点が3点以上の場合には特徴量マッチングが「成功」、2点以下の場合には特徴量マッチングが「失敗」となる。
【0033】
座標変換情報生成部218は、マッチング処理部216による特徴点マッチングが成功した場合に、イラスト地図とデジタル地図との間で同一地点を対応付けるための座標変換情報を生成する。この座標変換情報は、デジタル地図上の実際の座標(位置)とイラスト地図上の位置との対応関係を示すものである。座標変換情報格納部220は、作成された座標変換情報を格納する。
【0034】
現在位置受信部222は、端末装置100から送られてくる利用者の現在位置を受信する。座標変換部224は、座標変換情報格納部220に格納されている座標変換情報を用いて座標変換を行い、受信した現在位置に対応するイラスト地図上の位置(対応座標)を算出する。対応座標送信部226は、この対応座標を端末装置100に向けて通信部202から送信する。
【0035】
上述したイラスト地図取得部204がイラスト地図取得手段に、道路形状抽出部208が第1の道路形状抽出手段に、特徴量算出部212が第1の特徴量算出手段に、デジタル地図取得部206が地図データ取得手段に、道路形状抽出部210が第2の道路形状抽出手段に、特徴量算出部214が第2の特徴量算出手段に、マッチング処理部216がマッチング処理手段に、座標変換情報生成部218が座標変換情報生成手段にそれぞれ対応する。また、現在位置検出部108が位置検出手段に、座標変換部224が座標変換手段に、イラスト地図描画部116、表示処理部118、表示装置120がイラスト地図表示手段にそれぞれ対応する。
【0036】
本実施形態の地図処理システムはこのような構成を有しており、次に、その動作を説明する。
【0037】
図8は、端末装置100の動作手順を示す流れ図である。利用者の操作に応じてイラスト地図が撮像され(ステップ100)、イラスト地図画像がイラスト地図格納部104に格納されると、イラスト地図送信部106は、格納されているイラスト地図画像を読み出して地図処理サーバ200に向けて送信する(ステップ102)。
【0038】
次に、あるいは、これらの動作と並行して、現在位置検出部108は現在位置を検出し(ステップ104)、現在位置送信部110はこの検出した現在位置を地図処理サーバ200に向けて送信する(ステップ106)。
【0039】
その後、対応座標受信部114が、送信した現在位置に対応するイラスト地図上の現在位置(対応座標)を地図処理サーバ200から受信すると(ステップ108)、イラスト地図描画部116は、対応座標に現在位置マークを配置したイラスト地図画像を描画し、イラスト地図が表示処理部118によって表示装置120に表示される(ステップ110)。端末装置100を携帯している利用者は、表示されたイラスト地図を見ることで、現在自分がいるイラスト地図内の位置を確認することができる。
【0040】
図9は、地図処理サーバ200の動作手順を示す流れ図である。端末装置100から送られてくるイラスト地図画像をイラスト地図取得部204が取得すると(ステップ200)、道路形状抽出部208は、このイラスト地図に含まれる道路形状を抽出する(ステップ202)。
【0041】
次に、デジタル地図取得部206は、イラスト地図と同じ範囲が含まれるデジタル地図データを取得し(ステップ204)、道路形状抽出部210は、このデジタル地図データについて道路形状を抽出する(ステップ206)。
【0042】
次に、特徴量算出部212、214のそれぞれは、抽出された2つの道路形状の特徴量を算出し、マッチング処理部216は、これらの特徴量を用いてマッチング処理を行う(ステップ208)。また、座標変換情報生成部218は、マッチング処理の結果(位置合わせの内容)に基づいて座標変換情報を生成し、座標変換情報格納部220に格納する(ステップ210)。なお、マップマッチングが「失敗」した場合には所定のエラー処理が行われ、その旨が携帯端末100の利用者に通知される。
【0043】
座標変換情報の生成、格納が終了した後、端末装置100から現在位置が送られてくると、現在位置受信部222はこれを受信する(ステップ212)。座標変換部224は、受信した現在位置に対して座標変換情報を用いて座標変換を行って、受信した現在位置に対応するイラスト地図上の位置(対応座標)を算出する(ステップ214)。対応座標送信部226は、このようにして算出された対応座標を端末装置100に向けて送信する(ステップ216)。
【0044】
このように、本実施形態の地図処理システムでは、イラスト地図画像とデジタル地図データとの位置合わせを行う場合に、事前に道路形状を抽出してそれらの特徴量を用いたマッチング処理によって位置合わせを行っているため、道路形状以外の要素の影響を取り除くことができ、処理の自動化を行って手動操作を不要とすることができる。また、手動操作が不要になるため、不注意によるミスもなくすことができる。
【0045】
また、イラスト地図画像に含まれる施設名に基づいて、イラスト地図に対応するデジタル地図データの範囲を決定しており、施設名を用いることにより、イラスト地図に対応するデジタル地図データの範囲の特定が容易となる。
【0046】
また、マッチング処理によって位置合わせされたイラスト地図とデジタル地図データとの間で同一地点を対応付ける座標変換情報を生成することにより、デジタル地図データで示される地図内の座標とイラスト地図内の座標との対応付けが容易となり、座標を指定してイラスト地図内の位置を特定することが可能となる。
【0047】
また、端末装置100で検出した利用者の現在位置を地図処理サーバ200に送って、イラスト地図内の対応座標を取得することにより、利用者の位置をイラスト地図上で示すことができる。
【0048】
また、イラスト地図画像についての道路形状抽出を、2値化および細線化によって行っている。一般にはカラー表示のイラスト地図画像内で、道路は線で表される場合が多いため、2値化と細線化の各処理を行うことにより、道路形状を抽出することが可能となる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、道路形状から算出した特徴量を用いてマッチング処理を行う場合について説明したが、特徴量に施設名を加味してマッチング処理を行うようにしてもよい。
【0050】
図10は、変形例の地図処理サーバの構成を示す図である。
図10に示す地図処理サーバ200Aは、
図3に示した地図処理サーバ200に対して、施設名抽出部209、211を追加するとともに、マッチング処理部216をマッチング処理部216Aに置き換えた点が異なっており、それ以外の構成については同じである。
【0051】
施設名抽出部209は、イラスト地図取得部204によって取得したイラスト地図画像に基づいて、イラスト地図に含まれる施設名を抽出する。この抽出は、例えば画像認識処理によってイラスト地図に含まれる文字列を特定し、この特定した文字列がいずれかの施設の施設名に該当するか否かを調べることにより行うことができる。
【0052】
施設名抽出部211は、デジタル地図取得部206によって取得したデジタル地図データに含まれる施設名を抽出する。例えば、文字レイヤとして施設名等のテキストデータが含まれている場合にはこのデータをそのまま用いて施設名の抽出を行うことができる。
【0053】
マッチング処理部216Aは、道路形状から算出した特徴量を用いた第1のマッチング処理を行った後、2つの施設名抽出部209、211によって抽出された施設名を比較して第2のマッチング処理を行う。例えば、第1のマッチング処理の結果の精度が低い場合(特徴量マッチングのマッチ数が少ない場合)に、第2のマッチング処理において多くの施設名の一致が確認された場合にマッチング「成功」とすることにより、マッチング精度の向上を図ることが可能となる。
【0054】
また、上述した実施形態では、イラスト地図画像に対して2値化と細線化を行うことにより道路形状を抽出する例について説明したが、それ以外の手法として、AI(人工知能)を用いて道路形状を抽出するようにしてもよい。道路形状抽出部208は、今回道路形状抽出の対象となっているイラスト地図画像とは別のイラスト地図画像とこの別のイラスト地図画像に含まれる道路形状(イラスト地図に対応していることを確認済みの道路形状)とを対応付けて事前に学習させたAIを用いて、イラスト地図画像に含まれる道路形状を抽出する。例えば、AIによる学習の具体例としては、敵対的生成ネットワーク(GAN)を利用した画像生成アルゴリズムを用いることができる。
【0055】
また、上述した実施形態では、端末装置100と地図処理サーバ200に分けて一連の動作を行うようにしたが、端末装置100にすべての機能を持たせて端末装置100のみが同様の動作を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
上述したように、本発明によれば、イラスト地図画像と地図データとの位置合わせを行う場合に、事前に道路形状を抽出してそれらの特徴量を用いて位置合わせを行っているため、道路形状以外の要素の影響を取り除くことができ、処理の自動化を行って手動操作を不要とすることができる。また、手動操作が不要になるため、不注意によるミスもなくすことができる。
【符号の説明】
【0057】
100 端末装置
102 カメラ
104 イラスト地図格納部
106 イラスト地図送信部
108 現在位置検出部
110 現在位置送信部
112、202 通信部
114 対応座標受信部
116 イラスト地図描画部
118 表示部
120 表示装置
200、200A 地図処理サーバ
204 イラスト地図取得部
206 デジタル地図取得部
208、210 道路形状抽出部
209、211 施設名抽出部
212、214 特徴量算出部
216、216A マッチング処理部
218 座標変換情報生成部
220 座標変換情報格納部
222 現在位置受信部
224 座標変換部
226 対応座標送信部