(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102810
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体モジュ-ル
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20230719BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20230719BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H01L23/36 A
H01L25/04 C
H01L23/48 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003460
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】大谷 欣也
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BB13
5F136BB18
5F136BC05
5F136DA22
5F136DA42
5F136EA13
5F136FA51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体装置の上面側及び下面側の両方から放熱を行うことで高い放熱性を有し、かつ、複数の半導体装置を並べて1つのヒートシンクを配置する場合でも放熱に偏りが生じ難く適切な放熱を行い易い半導体装置及び半導体モジュ-ルを提供する。
【解決手段】半導体装置1において、ダイパッド部11と、立ち上がり部12及び上面側放熱部13,14,15を有する第1導電性部材10と、第1導電性接合材S1を介して配置されたチップ20と、チップ20上に第2導電性接合材S2を介して配置された第2導電性部材30と、モールド樹脂40と、を備える。ダイパッド部11におけるチップ20が配置された面とは反対側の面は、モールド樹脂40から露出しており、上面側放熱部13,14,15は、モールド樹脂40から露出している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッド部、前記ダイパッド部から屈曲して上方に伸びる立ち上がり部、及び、前記立ち上がり部の先端と接続された上面側放熱部を有する第1導電性部材と、
前記ダイパッド部上に、第1導電性接合材を介して配置されたチップと、
前記チップ上に第2導電性接合材を介して配置された第2導電性部材と、
前記第1導電性部材上に、前記第2導電性部材における前記チップが配置された側の面とは反対側の面が埋まる高さ位置まで形成されたモールド樹脂とを備え、
前記ダイパッド部における前記チップが配置された面とは反対側の面は、前記モールド樹脂から露出しており、
前記上面側放熱部の少なくとも一部は、前記モールド樹脂から露出していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記上面側放熱部の上面の高さ位置は、前記モールド樹脂の高さ位置と同じか、それよりも高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記立ち上がり部及び前記上面側放熱部は、平面的に見て前記チップを取り囲む位置のうち所定の部分に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2導電性部材は、平面的に見て所定の方向に延在し、
前記立ち上がり部及び前記上面側放熱部は、平面的に見て前記チップに対して前記第2導電性部材が延在する側とは反対側に位置することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1導電性部材は一体形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記モールド樹脂は、前記立ち上がり部と接することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記モールド樹脂及び前記上面側放熱部の上方に絶縁性伝熱部材を介してヒートシンクが配置されることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の半導体装置を複数並べて配置し、
前記半導体装置それぞれにおける前記モールド樹脂及び前記上面側放熱部の上方に絶縁性伝熱部材を介して、共通する1つのヒートシンクが配置されていることを特徴とする半導体モジュ-ル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体モジュ-ルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上面側及び下面側の両方から放熱することができる半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、従来の半導体装置900を示す断面図である。従来の半導体装置900は、
図9に示すように、第1導電性部材910と、第1導電性部材910上に第1導電性接合材S1(例えば、はんだ)を介して配置されたチップ920と、チップ920の電極上に第2導電性接合材S2(例えば、はんだ)を介して配置された第2導電性部材930と、第1導電性部材910、チップ920及び第2導電性部材930を封止するモールド樹脂940とを備え、第1導電性部材910の下面及び第2導電性部材930の上面がモールド樹脂940から露出した構造を有する。
【0004】
従来の半導体装置900によれば、第1導電性部材910の下面及び第2導電性部材930の上面がモールド樹脂940から露出した構造を有するため、チップ920から発生する熱が第1導電性部材910又は第2導電性部材930を介して外部へ効率よく伝熱される。従って、半導体装置900は高い放熱性を有する。
【0005】
このような半導体装置を用いた半導体モジュ-ルにおいては、半導体装置を複数並べて共通する1つのヒートシンクを配置することが一般に行われている。
図10は、従来の半導体モジュ-ル901を示す断面図である。従来の半導体モジュ-ル901においては、
図10に示すように、従来の半導体装置900a,900bが複数(
図10においては2つ)並べて配置されており、半導体装置900a,900bの上方にそれぞれ配置された絶縁性伝熱部材950a,950b(例えば、絶縁グリス)を介して共通する1つのヒートシンク960とが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、半導体装置の製造においては、導電性接合材(はんだ)の厚さを制御することは実際上難しいという事情がある。従来の半導体装置900においては、下から第1導電性部材910、導電性接合材S1、チップ920、導電性接合材S2及び第2導電性部材930がこの順序で積み重なっており、これらの部材の厚さの合計が半導体装置900の厚さ(第1導電性部材910の下面から第2導電性部材930の上面までの厚さ)と等しくなるため、導電性接合材S1,S2の厚さにバラツキが生じると半導体装置全体の厚さにバラツキが生じてしまう。従って、複数の半導体装置を並べてその上に1つのヒートシンクを配置する場合(
図10参照)には、各半導体装置900a,900bとヒートシンク960との間に配置される絶縁性伝熱部材950a,950bの厚さを調整することでヒートシンク960が傾かないようにする必要がある。
【0008】
例えば、
図10においては、2つ並べた半導体装置900a,900bのうち、左側の半導体装置900aの導電性接合材S1,S2は、厚さにバラツキが生じて右側の半導体装置900bの導電性接合材S1,S2よりも薄くなっている。この場合には、半導体装置900aの全体の厚さH1は、半導体装置900bの全体の厚さH2よりも薄くなっており、これを補うために絶縁性伝熱部材950aの厚さI1が絶縁性伝熱部材950bの厚さI2よりも厚くなっている。
【0009】
しかしながら、一般に絶縁性伝熱部材の伝熱性は、金属である第2導電性部材930やヒートシンク960と比較して低いため、ヒートシンク960との間に比較的厚い絶縁性伝熱部材と配置されている半導体装置(
図10の半導体装置900a参照)においては、半導体装置の上面からの放熱を効率よく行うことが難しくなり、高い放熱性を有することが難しくなる、という問題がある。
【0010】
また、ヒートシンク960との間に比較的薄い絶縁性伝熱部材が配置されている半導体装置よりも、ヒートシンク960との間に比較的厚い絶縁性伝熱部材が配置されている半導体装置の方が放熱され難いため、特定の半導体装置に熱がこもりやすくなり、放熱に偏りが生じて適切な放熱を行うことができない、という問題もある。
【0011】
そこで、本発明は上記した問題を解決するためになされたものであり、高い放熱性を有し、かつ、複数の半導体装置を並べて1つのヒートシンクを配置する場合でも放熱に偏りが生じ難く適切な放熱を行い易い半導体装置及び半導体モジュ-ルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の半導体装置は、ダイパッド部、前記ダイパッド部から屈曲して上方に伸びる立ち上がり部、及び、前記立ち上がり部の先端と接続された上面側放熱部を有する第1導電性部材と、前記ダイパッド部上に、第1導電性接合材を介して配置されたチップと、前記チップ上に第2導電性接合材を介して配置された第2導電性部材と、前記第1導電性部材上に、前記第2導電性部材における前記チップが配置された側の面とは反対側の面が埋まる高さ位置まで形成されたモールド樹脂とを備え、前記ダイパッド部における前記チップが配置された面とは反対側の面は、前記モールド樹脂から露出しており、前記上面側放熱部の少なくとも一部は、前記モールド樹脂から露出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体装置によれば、ダイパッド部におけるチップが配置された面とは反対側の面は、モールド樹脂から露出しており、半導体装置の下面側から放熱することができる。また、上面側放熱部の少なくとも一部は、モールド樹脂から露出しているため、半導体装置の上面側から放熱することができる。従って、半導体装置の上面側及び下面側の両方から放熱することができ、高い放熱性を有する半導体装置となる。
【0014】
また、本発明の半導体装置によれば、第1導電性部材上に、第2導電性部材におけるチップが配置された側の面とは反対側の面が埋まる高さ位置まで形成されたモールド樹脂を備えるため、導電性接合材の厚さにバラツキが生じたとしても半導体装置全体の厚さにバラツキが生じない。従って、複数の半導体装置を並べてその上に1つのヒートシンクを配置する場合であっても、半導体装置の上の絶縁性伝熱部材の厚さを必要以上に厚くする必要がなく、半導体装置の上面からの放熱を効率よく行うことができる。従って、この観点においても高い放熱性を有することができる。また、特定の半導体装置に熱がこもり易くなることを防ぐことができ、均一に放熱することができることから、放熱に偏りが生じ難く、適切な放熱を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係る半導体装置1を示す図である。
図1(a)は半導体装置1の斜視図を示し、
図1(b)は半導体装置1のA-A断面図を示す。
【
図2】実施形態1に係る半導体装置1の製造方法を説明するために示す図である。
図2(a-1)~
図2(f-1)は各工程の模式的な斜視図を示し、
図2(a-2)~
図2(f-2)は各工程の模式的な断面図を示す。なお、破線で囲まれた部分は辺X2側の立ち上がり部12を示している。
【
図3】実施形態1に係る半導体モジュ-ル100を示す断面図である。
【
図4】実施形態2に係る半導体装置2を説明するために示す断面図である。
図2(a)は半導体装置2の断面図を示し、
図2(b)は比較例1に係る半導体装置の断面図を示す。
【
図5】変形例1に係る半導体装置3を示す断面図である。
【
図6】変形例2に係る半導体装置4を示す断面図である。
【
図7】変形例3に係る半導体装置5を示す断面図である。
【
図8】変形例4に係る半導体装置6を示す断面図である。
【
図9】従来の半導体装置900を示す断面図である。なお、符号970は基板を示す。
【
図10】従来の半導体モジュ-ル901を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の半導体装置及び半導体モジュ-ルについて、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る半導体装置1の構成
図1は、実施形態1に係る半導体装置1を示す断面図である。実施形態1に係る半導体装置1は、
図1(a)に示すように、平面的に見て、互いに対向する辺X1,X2と、互いに対向する辺X3,X4とを有する略矩形形状をしており、中央部から辺X1側に配置されたモールド樹脂40と、当該モールド樹脂40の底面に配置されたダイパッド部11、モールド樹脂40の辺X2側に広がる平板状の第1の上面側放熱部13、モールド樹脂40の辺X3側に広がる平板状の第2の上面側放熱部14、及び、モールド樹脂40の辺X4側に広がる平板状の第3の上面側放熱部15を有する第1導電性部材10とを備える。モールド樹脂40と、第1の上面側放熱部13、第2の上面側放熱部14、第3の上面側放熱部15との間には立ち上がり部12(
図1(b)参照)が形成されており、ダイパッド部11及び立ち上がり部12で構成される凹部にモールド樹脂40が充填されている。モールド樹脂40の辺X1側の側面からは第2導電性部材30及び第3導電性部材31が延在している。
【0018】
実施形態1に係る半導体装置1は、
図1に示すように、第1導電性部材10と、チップ20と、第2導電性部材30と、モールド樹脂40とを備える。
【0019】
第1導電性部材10は、ダイパッド部11と、立ち上がり部12と、第1の上面側放熱部13と、第2の上面側放熱部14と、第3の上面側放熱部15とを有する。第1導電性部材10は、金属製の板状部材から一体形成される。なお、「一体形成」とは、同一の部材に成形、切削又は(及び)プレス等の加工を施して形成することをいう。
【0020】
ダイパッド部11は、中央部から辺X1側に向かって平板状に広がっている。ダイパッド部11の一方面側にはチップ20を配置するダイパッド面が形成され、他方面側はモールド樹脂40から露出している。
【0021】
立ち上がり部12は、ダイパッド部11における辺X2側の端部から上方に折り曲げられ、半導体装置1の高さ位置の中途の高さ位置まで伸び、その先端部分で階段状に折れ曲がり、モールド樹脂40の表面の高さ位置まで上方に伸びている。また、ダイパッド部11における辺X3側の端部及び辺X4側の端部から上方に折り曲げられ、モールド樹脂40の表面の高さ位置まで伸びている。
【0022】
第1の上面側放熱部13は、辺X2側の立ち上がり部12の辺X2側の端部と接続され、そこから辺X2まで平板状に広がっており、上面がモールド樹脂40から露出している。第1の上面側放熱部13は、後述する絶縁性伝熱部材50a、50bを介してヒートシンク60と接続される。
第2の上面側放熱部14は、辺X3側の立ち上がり部12の辺X3側の端部と接続され、そこから辺X3まで平板状に広がっており、上面がモールド樹脂40から露出している。第2の上面側放熱部14は、後述する絶縁性伝熱部材50a、50bを介してヒートシンク60と接続される。
第3の上面側放熱部15は、辺X4側の立ち上がり部12の辺X4側の端部と接続され、そこから辺X4まで平板状に広がっており、上面がモールド樹脂40から露出している。第3の上面側放熱部15は、後述する絶縁性伝熱部材50a、50bを介してヒートシンク60と接続される。
【0023】
チップ20は、ダイパッド部11のダイパッド面上に、第1導電性接合材S1を介して配置されている。チップ20は、表面側に、第1の主電極(例えば、ソ-ス電極)と副電極(例えば、ゲ-ト電極)を有し、裏面側に第2の主電極(例えば、ドレイン電極)を有するMOSFETである。チップ20の第1の主電極(図示せず)は、第2導電性部材30を介して外部と接続されている。副電極21は、第3導電性部材31を介して外部と接続されている。第2の主電極(図示せず)は第1導電性部材10を介して基板70に接続されている(
図3参照)。なお、チップ20は、MOSFET以外の3端子素子(例えばIGBT)でもよいし、2端子素子(例えば、ダイオード)でもよいし、4端子以上の素子(例えば、サイリスタ、トライアック等)であってもよい。
【0024】
第2導電性部材30は、チップ20の第1の主電極(ソ-ス電極)上に第2導電性接合材S2を介して配置されるクリップリ-ドである。第2導電性部材30は、金属製の板状部材であり、平面的に見て辺X1側(すなわち、立ち上がり部12及び上面側放熱部13,14,15が形成されていない側)に向かって伸びている。第3導電性部材(図示せず)は、チップ20の副電極21(ゲ-ト電極)上に第3導電性接合材S3を介して配置されるクリップリ-ドである。第3導電性部材31は、金属製の板状部材からなり、平面的に見て辺X1側に向かって第2導電性部材30と略平行に伸びている。
【0025】
モールド樹脂40は、適宜の絶縁性の樹脂を用いることができる。
【0026】
第1導電性接合材S1は、第1導電性部材10とチップ20の第2の主電極との間に配置され、第1導電性部材10とチップ20の第2の主電極とを接合している。第2導電性接合材S2は、チップ20の第1の主電極と第2導電性部材30との間に配置されており、チップ20の第1の主電極と第2導電性部材30とを接合している。第3導電性接合材(図示せず)は、チップ20の副電極と第3導電性部材31との間に配置されており、チップ20の副電極21と第3導電性部材31とを接合している。第1導電性接合材S1、第2導電性接合材S2及び第3導電性接合材S3は、実施形態1においては、はんだを用いるが、金属ナノ部材や接着剤など適宜の材料を用いることができる。
【0027】
2.実施形態1における半導体装置1の製造方法
次に、実施形態1における半導体装置1の製造方法を説明する。
図2は、実施形態1における半導体装置1の製造方法を説明するために示す図である。実施形態1における半導体装置1の製造方法は、
図2に示すように、まず、平板状の金属板10’を準備し(
図2(a-1)及び
図2(a-2)参照)、当該金属板10’を打ち出し加工(たたき)によってダイパッド部11に相当する領域の辺X2側,辺X3側,辺X4側を上方へ打ち出す。打ち出し加工によって打ち出された部分が、立ち上がり部12、第1の上面側放熱部13、第2の上面側放熱部14及び第3の上面側放熱部15となる(
図2(b-1)及び
図2(b-2)参照)。次に、プレス加工によってダイパッド部11に相当する領域をプレスしてダイパッド部11を形成する(
図2(c-1)及び
図2(c-2)参照)。このとき辺X2側の立ち上がり部12が段差形状となる。次に、ダイパッド部11に第1導電性接合材S1(例えば、はんだ)を介してチップ20を配置する(
図2(d-1)及び
図2(d-2)参照)。次に、チップ20の第1の主電極及び副電極21上に第2導電性接合材及び第3導電性接合材を介して第2導電性部材30及び第3導電性部材31を配置する(
図2(e-1)及び
図2(e-2)参照)。次に、第1導電性部材10、チップ20及び第2導電性部材30をリフロ-炉に入れてリフロ-することで、第1導電性接合材S1で第1導電性部材10とチップ20とを接合し、第2導電性接合材S2で第2導電性部材30とチップ20の第1主電極とを接合し、第3導電性接合材で第3導電性部材31とチップ20の副電極21とを接合する(図示せず)。次に、金型を用いてダイパッド部11を底面、立ち上がり部12を側壁とする凹部にモールド樹脂40を充填して樹脂封止する(
図2(f-1)及び
図2(f-2)参照)。このとき、凹部内における第2導電性部材30はモールド樹脂40に埋められた状態となる。また、立ち上がり部12を側壁とすることからモールド樹脂40と立ち上がり部12とが接した状態となる。
このようにして、実施形態1に係る半導体装置1を製造することができる。
【0028】
3.実施形態1に係る半導体モジュ-ル100の構成
次に、実施形態1に係る半導体モジュ-ル100について説明する。
図3は、実施形態1に係る半導体モジュ-ル100を示す断面図である。実施形態1に係る半導体モジュ-ル100は、
図3に示すように、2つの実施形態1に係る半導体装置1a,1bと、各半導体装置1a,1b上に配置される絶縁性伝熱部材50a,50bと、絶縁性伝熱部材50a,50b上に配置される共通のヒートシンク60とを備える。
【0029】
実施形態1に係る半導体モジュ-ル100においては、2つの半導体装置1a,1bは基板70上に並べて配置されている。第1導電性部材10aは、基板70の表面に形成された第1配線(図示せず)と接続され、第1導電性部材10bは、第1配線(図示せず)とは別の第2配線(図示せず)と接続されている。また、第2導電性部材30a及び第2導電性部材30bもそれぞれ基板上の所定の配線(図示せず)と接続されている。
【0030】
絶縁性伝熱部材50a,50bは、金属製の第1導電性部材10とヒートシンク60との間の絶縁性を確保するとともに、上面側放熱部13,14,15から伝達される熱をヒートシンク60に伝達する絶縁性の部材(例えば、絶縁グリス)である。
【0031】
ヒートシンク60は、例えば、金属製の放熱フィンであり、チップ20に発生する熱を半導体装置の外部に放出する。
【0032】
実施形態1に係る半導体モジュ-ル100において、金型を用いて形成されたモールド樹脂40の厚みは、第1導電性接合材S1及び第2導電性接合材S2の厚さに関わらず、一定である。従って、半導体装置1aの厚さH1と半導体装置1bの厚さH2とはほぼ同じ厚さとなる。そして、絶縁性伝熱部材50a,50bの大部分は、モールド樹脂40上に配置されているため、第1導電性接合材S1及び第2導電性接合材S2の厚さに関わらず、絶縁性伝熱部材50aの厚さI1は、絶縁性伝熱部材50bの厚さI2とほぼ同じ厚さとなる。
【0033】
例えば、
図3に示すように、左側の半導体装置1aの第1導電性接合材S1及び第2導電性接合材S2の厚さが、右側の半導体装置1bの第1導電性接合材S1及び第2導電性接合材S2の厚さよりも薄い場合であっても、金型を用いて形成されたモールド樹脂40の厚みは一定である。従って、半導体装置1aの厚さH1と半導体装置1bの厚さH2とは略同じ厚さとなっている。
従って、絶縁性伝熱部材50aの厚さは、絶縁性伝熱部材50bの厚さと同じ厚さとなっており、半導体装置1a,1b上に平行にヒートシンク60を配置することができる。
【0034】
実施形態1に係る半導体モジュ-ル100において、チップ20a,20bで発生した熱は、第1導電性接合材S1、第1導電性部材10a,10bのダイパッド部を介して基板70に伝達され、半導体装置1a,1bの下面側から外部に放出されるとともに、ダイパッド部から立ち上がり部12,上面側放熱部13a,13b、絶縁性伝熱部材50a、50bを介してヒートシンク60に伝達され、半導体装置1a,1bの上面側から外部に放出される。従って、半導体装置1a,1bの半導体装置の上面側及び下面側の両方から放熱することができる。なお、チップ20a,20bで発生した熱はチップ20a,20bの上面側から第2導電性接合材S2を介して第2導電性部材30a,30bにも伝達される。第2導電性部材30は、ダイパッド部11とは十分離隔した位置で基板70上の配線と接続されることから、第2導電性部材30a,30bに伝達された熱は、基板70上の配線を介して半導体モジュール100の下側から外部へ放熱される。また、第2導電性部材30a,30bに伝達された熱の一部は、モールド樹脂40a,40b及び絶縁性伝熱部材50a、50bを介してヒートシンク60に伝達され、半導体装置1a,1bの上面側から外部に放出される。
【0035】
4.実施形態1に係る半導体装置1及び半導体モジュ-ル100の効果
実施形態1に係る半導体装置1によれば、ダイパッド部11におけるチップ20が配置された面とは反対側の面は、モールド樹脂40から露出しており、半導体装置1の下面側から放熱することができる。また、上面側放熱部13の少なくとも一部は、モールド樹脂40から露出しているため、半導体装置の上面側から放熱することができる。従って、半導体装置の上面側及び下面側の両方から放熱することができ、高い放熱性を有する半導体装置となる。
【0036】
また、実施形態1に係る半導体装置1によれば、第1導電性部材10上に、第2導電性部材30におけるチップ20が配置された側の面とは反対側の面が埋まる高さ位置まで形成されたモールド樹脂40を備えるため、導電性接合材S1,S2の厚さにバラツキが生じたとしても半導体装置全体の厚さにバラツキが生じない。従って、複数の半導体装置1a,1bを並べてその上に1つのヒートシンク60を配置する場合であっても、半導体装置1a,1bの上の絶縁性伝熱部材50a,50bの厚さを必要以上に厚くする必要がなく、半導体装置の上面からの放熱を効率よく行うことができる。従って、この観点においても高い放熱性を有することができる。また、特定の半導体装置に熱がこもり易くなることを防ぐことができ、均一に放熱することができることから、放熱に偏りが生じ難く、適切な放熱を行うことができる。
【0037】
また、実施形態1に係る半導体装置1によれば、上面側放熱部13,14,15の上面の高さ位置は、モールド樹脂40の高さ位置と同じであるため、上面側放熱部13,14,15と絶縁性伝熱部材50a、50bが直接接することとなる。従って、チップ20から発生する熱を効率的にヒートシンク60へ伝達することができる。
【0038】
また、実施形態1に係る半導体装置1によれば、立ち上がり部12及び上面側放熱部13,14,15は、平面的に見てチップ20を取り囲む位置のうち所定の部分(辺X2側、辺X3側及び辺X4側)に形成されているため、チップ20からダイパッド部11へ伝達された熱を効率的に上面側へ伝達することができる。
【0039】
また、実施形態1に係る半導体装置1によれば、第2導電性部材30は、平面的に見て所定の方向に延在し、立ち上がり部12及び上面側放熱部13は、平面的に見て第2導電性部材30が延在する側とは反対側に位置するため、チップ20から発生する熱がチップ20の下面側から導電性接合材S1,ダイパッド部11、立ち上がり部12及び上面側放熱部13を介して上方へ伝達される伝熱経路が、チップ20から発生する熱がチップ20の上面側から導電性接合材S2,第2導電性部材30を介して基板70へ伝達される伝熱経路と干渉しない(邪魔にならない)。また、第2導電性部材30は、ダイパッド部11とは十分離隔した位置で基板70上の配線と接続されることから、チップ20の上面側から伝達される熱を効率よく基板70を介して外部へ放出することができる。従って、チップ20で発生した熱をチップ20の上面側及び下面側の両側から効率的に放熱することができる。
【0040】
ところで、第1導電性部材10におけるダイパッド部11、立ち上がり部12及び上面側放熱部13,14,15が一体形成されていなかった場合には、接着剤等で接合する必要がある。しかしながら、第1導電性部材10の材料である金属と比較して接着剤は伝熱性が劣る場合がほとんどであり、接合部分の伝熱性が低下する場合がある。従って、効率よく熱を伝達することが難しい場合がある。これに対して、実施形態1に係る半導体装置1によれば、第1導電性部材10は一体形成されているため、接着剤等で接合する必要がなく、接着剤などにより伝熱性が低下することもない。従って、効率よく熱を伝達することができる。
【0041】
また、実施形態1に係る半導体装置1によれば、モールド樹脂40は、立ち上がり部12と接するため、半導体装置の製造過程において、別途側壁となる部材を用意しなくても立ち上がり部12を樹脂封止する際の側壁として利用することができる。また、モールド樹脂40は、立ち上がり部12と接するため、モールド樹脂40と立ち上がり部12との接触面積が大きくなり密着性が高くなることから、モールドロックし、モールド樹脂40が第1導電性部材10から剥離し難くなる。
【0042】
また、実施形態1に係る半導体装置1によれば、モールド樹脂40及び上面側放熱部13,14,15の上方に絶縁性伝熱部材50a,50bを介してヒートシンク60が配置されるため、ヒートシンク60を介して半導体装置の上方から効率よく外部へ熱を放出することができる。また、各半導体装置の厚さH1、H2のわずかなバラツキを吸収し、ヒートシンク60を平行に配置することができる。
【0043】
また、実施形態1に係る半導体モジュ-ル100によれば、半導体装置1a、1bを複数並べて配置し、半導体装置1a、1bにおけるモールド樹脂40及び上面側放熱部13の上方に絶縁性伝熱部材50a、50bを介して共通する1つのヒートシンク60が配置されているため、複数の半導体装置から発生する熱をまとめて外部に放出することができる。また、各半導体装置の厚さH1、H2のわずかなバラツキを吸収し、ヒートシンク60を平行に配置することができる。さらには、絶縁性伝熱部材50a、50bが均一な厚みで形成されることになるため、放熱に偏りが生じ難く、適切な放熱を行うことができる。
【0044】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係る半導体装置2を示す断面図である。実施形態2に係る半導体装置2は、基本的には実施形態1に係る半導体装置1と同様の構成を有するが、上面側放熱部の上面の高さ位置がモールド樹脂の上面の高さ位置よりも高い点で実施形態1に係る半導体装置1の場合とは異なる(
図4(a)参照)。
【0045】
このように、実施形態2に係る半導体装置2は、上面側放熱部の上面の高さ位置がモールド樹脂の上面の高さ位置よりも高い点で実施形態1に係る半導体装置1の場合とは異なるが、実施形態1に係る半導体装置1の場合と同様に、半導体装置の上面側及び下面側の両方から放熱を行うことで高い放熱性を有し、かつ、半導体装置の上面側及び下面側の両方から放熱を行う場合でも半導体装置の上面からの放熱を効率よく行うことができ、かつ、複数の半導体装置を並べて1つのヒートシンクを配置する場合でも放熱に偏りが生じ難く適切な放熱を行うことができる半導体装置となる。
【0046】
ところで、上面側放熱部13の上面の高さ位置がモールド樹脂40の高さ位置よりも低い場合(
図4(b)参照)には、上面側放熱部13の上面にモールド樹脂40の樹脂バリBが発生することがある。この樹脂バリBによって上面側放熱部13と絶縁性伝熱部材50a,50bとの間の伝熱が妨げられ、チップ20から発生する熱を効率的にヒートシンク60へ伝達することが難しい場合がある。これに対して実施形態2に係る半導体装置2によれば、上面側放熱部の上面の高さ位置がモールド樹脂の高さ位置よりも高いため、上面側放熱部13と絶縁性伝熱部材50a、50bとが直接接することとなる。従って、モールド樹脂40の樹脂バリBによって上面側放熱部13と絶縁性伝熱部材50a,50bとの間の伝熱が妨げられることがなく、チップ20から発生する熱を効率的にヒートシンク60へ伝達することができる。
【0047】
なお、実施形態2に係る半導体装置2は、上面側放熱部の上面の高さ位置がモールド樹脂上面の高さ位置よりも高い点以外の点においては実施形態1に係る半導体装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る半導体装置1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0048】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0049】
(1)上記各実施形態(各変形例も含む。以下同じ。)において記載した位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0050】
(2)上記各実施形態においては、立ち上がり部12を階段状(段差形状)としたが、本発明はこれに限定するものではない。立ち上がり部12がダイパッド部11から立ち上がり中途で段差を形成していなくてもよい(変形例1に係る半導体装置3、
図5参照)。また、立ち上がり部12の先端部分を辺X1側(
図6の左側)に向かって折り曲げてもよい(変形例2に係る半導体装置4、
図6参照)。この場合、辺X1側(
図6の左側)に向かって折り曲げられた部分が上面側放熱部13bとなる。このような構成とすることにより、絶縁性伝熱部材50と接する面積が大きくなるのでより効率的に熱を伝達することができる。
【0051】
(3)上記各実施形態においては、平面的に見てダイパッド部11の辺X2側、辺X3側及び辺X4側の3方向に立ち上がり部及び上面側放熱部を形成したが、本発明はこれに限定するものではない。ダイパッド部11の辺X2側、辺X3側及び辺X4側の3方向のうちの一方向にのみ立ち上がり部及び上面側放熱部を形成してもよいし(辺X2側にのみ形成した場合、
図7参照。変形例3に係る半導体装置5)、3方向のうちの2方向にのみ立ち上がり部及び上面側放熱部を形成してもよい(辺X3側及び辺X4側にのみ形成した場合、
図8参照。変形例4に係る半導体装置6)。
【0052】
(4)上記各実施形態1において、半導体モジュ-ルは2つの半導体装置を配置し、共通のヒートシンクを用いたが、本発明はこれに限定するものではない。2つ以上の半導体装置を配置し、共通のヒートシンクを用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1,1a,1b,2,3,4,5,6,900,900a,900b…半導体装置、10,10a,10b,910…第1導電性部材、11…ダイパッド部、12…立ち上がり部、13,13a,13b…第1の上面側放熱部、14…第2の上面側放熱部、15…第3の上面側放熱部、20,920…チップ、21…副電極、30,30a,30b,930…第2導電性部材、31…第3導電性部材、40,40a,40b,940…モールド樹脂、50,50a,50b,950a,950b…絶縁性伝熱部材、60,960…ヒートシンク、70…基板、100,901…半導体モジュ-ル、S1…第1導電性接合材、S2…第2導電性接合材