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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102812
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/96 20060101AFI20230719BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20230719BHJP
   B01D 53/80 20060101ALI20230719BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20230719BHJP
【FI】
B01D53/96
B01D53/78 ZAB
B01D53/80
C02F1/58 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003463
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595095629
【氏名又は名称】中電環境テクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】椛島 弘順
(72)【発明者】
【氏名】山口 満規
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 健太郎
【テーマコード(参考)】
4D002
4D038
【Fターム(参考)】
4D002AA01
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA20
4D002DA05
4D002FA03
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB07
4D038AA01
4D038AB28
4D038AB40
4D038AB58
4D038BA04
4D038BA06
4D038BB20
(57)【要約】
【課題】排煙脱硫装置の吸収塔を利用して処理を行っていた所定の脱硫装置ピットへの流入水について、排煙脱硫装置の吸収塔を利用することなく処理することができ、且つ、脱窒素処理装置による脱窒素処理の稼働を抑制した水の処理方法を提供する。
【解決手段】水の処理方法として、石膏スラリーピット40への流入水とA吸収液ピット41への流入水とを、B吸収液ピット42に送って、B吸収液ピット42への流入水と集約させて処理用水とすると共に、B吸収液ピット42で処理用水の異物を沈殿させて得られた上澄み水を、B吸収液ピット42から水中ポンプSP1により排水ピット43に送った後、前記上澄み水の水質について測定60がされ、脱窒素処理を必要としない水質であるとの測定の結果が出た上澄み水を、排水ピット43から重金属処理の前段階の設備であるA排水貯槽10、B排水貯槽11に直接送るようにする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排煙脱硫装置の吸収塔に回収して前記吸収塔内で排ガスの熱を利用して処理することができる第1、第2及び第3の脱硫装置ピットへの流入水を、排水処理系統を利用して処理する水の処理方法であって、
前記第1の脱硫装置ピットへの流入水と前記第2の脱硫装置ピットへの流入水とを前記第3の脱硫装置ピットに送って、前記第3の脱硫装置ピットへの流入水と集約させて処理用水とすると共に、前記第3の脱硫装置ピットで前記処理用水の異物を沈殿させて得られた上澄み水を、前記第3の脱硫装置ピットからポンプにより脱硫装置用の排水ピットに送った後、前記上澄み水の水質が測定され、脱窒素処理を必要としない水質であるとの測定の結果が出た前記上澄み水を、前記排水ピットから前記排水処理系統のうちの重金属処理の前段階の設備である排水貯槽に直接送ることを特徴とした水の処理方法。
【請求項2】
脱窒素処理が必要な水質であるとの測定の結果が出た前記上澄み水を前記排水ピットから脱窒素処理の前段階の設備である貯槽に送って、更に前記貯槽から脱窒素処理装置に送り、前記脱窒素装置による脱窒素処理をした後、排水槽を介して、前記排水貯槽に送ることを特徴とした請求項1に記載の水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排煙脱硫装置の吸収塔に回収して当該吸収塔内で排ガスの熱にて蒸気化され外部に放出されるかたちで処理されていた所定の脱硫装置ピットへの流入水を、脱硫装置の吸収塔を用いずに処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電施設においては、ボイラで燃料を燃焼して発電を行っているところ、燃料の燃焼によって発生した排ガス中に硫黄酸化物が含まれることから、例えば特許文献1に示されるように、排煙脱硫装置で排ガスから硫黄酸化物を除去した後に、煙突から大気中に排出するようにしてきた。このような排煙脱硫装置では、発生した排ガスを吸収塔へ導き、吸収液と接触させて硫黄酸化物を吸収除去するようになっている。
【0003】
そして、本件の図4に示されるように、例えば、脱硫装置ピットである石膏スラリーピット100への流入水は、同じく脱硫装置ピットである吸収液ピット101、102を経由して、吸収液ピット101、102への流入水と共に、排煙脱硫装置の吸収塔103に回収されることにより、吸収塔内で排ガスの熱にて蒸気化された後、外部に放出されるかたちで処理をすることができる。なお、石膏スラリーピット100への流入水は、例えば石膏シックナーのブロー水や雨水等であり、吸収液ピット101、102への流入水は、吸収塔循環ポンプのブロー水や雨水等であり、これらのことは、本発明が適用された本件の図3の石膏スラリーピット40やA吸収液ピット41、B吸収液ピット42でも図示しないが同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-022408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もっとも、近年において、排煙脱硫装置の稼働率が低下し、排煙脱硫装置の休転期間の増加や長期間化が生じている。このため、石膏スラリーピットや吸収液ピット等の所定の脱硫装置ピットへの流入水の排煙脱硫装置の吸収塔による処理も停滞するようになってきた。このような排煙脱硫装置の吸収塔による所定の脱硫装置ピットへの流入水の処理の停滞を放置すると、流入水が流入して貯められる水量が所定の脱硫装置ピットの保有可能な水量を越えて、これらの所定の脱硫装置ピットから溢れた水が不用意に他の系統の設備に向けて流出するという不具合が生ずるおそれがある。このため、所定の脱硫装置ピットへの流水について、排煙脱硫装置の吸収塔を利用せずに、貯槽等の貯水可能な設備等に移動させつつ必要な処理をする必要がある。
【0006】
この点、従来においても、所定の脱硫装置ピットへの流入水について排煙脱硫装置の吸収塔で回収、処理することができない場合には、その処理の方法として、所定の脱硫装置ピットから、脱硫装置用の排水ピットを経て、脱窒素処理の前設備である貯槽に送られた後、かかる貯槽から脱窒素処理装置に送られ、脱窒素処理装置で脱窒素処理を行ってから、重金属処理の前設備である排水貯槽に送られて、更に、かかる排水貯槽から重金属処理装置に送られることで、重金属処理がされることがあった。もっとも、この排水処理の方法では、脱窒素処理装置により、所定の脱硫装置ピットから送られてくる水全ての脱窒素処理を行うので、脱窒素処理装置の稼働による費用の高額化が生ずるという不具合を生ずる。
【0007】
本発明は、排煙脱硫装置の吸収塔を利用して処理を行っていた所定の脱硫装置ピットへの流入水について、排煙脱硫装置の吸収塔を利用することなく処理することができ、且つ、脱窒素処理装置による脱窒素処理の稼働を抑制した水の処理方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明の水の処理方法は、排煙脱硫装置の吸収塔に回収して前記吸収塔内で排ガスの熱を利用して処理することができる第1、第2及び第3の脱硫装置ピットへの流入水を、排水処理系統を利用して処理する水の処理方法であって、前記第1の脱硫装置ピットへの流入水と前記第2の脱硫装置ピットへの流入水とを前記第3の脱硫装置ピットに送って、前記第3の脱硫装置ピットへの流入水と集約させて処理用水とすると共に、前記第3の脱硫装置ピットで前記処理用水の異物を沈殿させて得られた上澄み水を、前記第3の脱硫装置ピットからポンプにより脱硫装置用の排水ピットに送った後、前記上澄み水の水質が測定され、脱窒素処理を必要としない水質であるとの測定の結果が出た前記上澄み水を、前記排水ピットから前記排水処理系統のうちの重金属処理の前段階の設備である排水貯槽に直接送ることを特徴としている。第1の脱硫装置ピットは、例えば石膏スラリーピットである。第2の脱硫装置ピットは、例えばA吸収液ピットである。第3の脱硫装置ピットは、例えばB吸収液ピットである。第3の脱硫装置ピットで沈降させる異物とは、例えば石膏スラリー分である。第3の脱硫装置ピットから脱硫装置用の排水ピットに上澄み水を送るポンプは、例えば第3の脱硫装置ピットに貯められた流入水の水中に新たに設けられた水中ポンプである。脱窒素処理を必要としない水質とは、例えば測定で得られた全窒素(T-N)値が所定の基準値よりも低い水質をいう。
【0009】
これにより、第1の脱硫装置ピットに流入して貯められる流入水と、第2の脱硫装置用ピットに流入して貯められる流入水と、第3の脱硫装置用ピットに流入して貯められる流入水とが第3の脱硫装置用ピットに集約されてなる処理用水から異物を沈殿して得られた上澄み水は、脱窒素処理を必要としない水質となるので、排水処理系統のうちの重金属処理の前段階の設備である排水貯槽に送られるにあたって、脱フッ素処理された排水に対する希釈水として、これまで用いられてきた工水の代わりに用いることができる。そして、第1の脱硫装置ピットに流入して貯められる流入水と、第2の脱硫装置用ピットに流入して貯められる流入水と、第3の脱硫装置用ピットに流入して貯められる流入水とが第3の脱硫装置用ピットで集約されてなる処理用水から異物を沈殿して得られた上澄み水は、排水貯槽から後では排水処理系統で処理する排水の一部となるので、排水貯槽から重金属処理装置に送って重金属処理がされた後に、海域等の水域に放流される。しかも、上澄み水について脱窒素処理が必要でないとの測定の結果が出れば脱窒素装置による脱窒素処理が不要となる。
【0010】
その一方で、本発明の水の処理方法では、脱窒素処理が必要な水質であるとの測定の結果が出た前記上澄み水を前記排水ピットから脱窒素処理の前段階の設備である貯槽に送って、更に前記貯槽から脱窒素処理装置に送り、前記脱窒素装置による脱窒素処理をした後、排水槽を介して、前記排水貯槽に送ることを特徴としている。脱窒素処理が必要な水質とは、例えば測定で得られた全窒素(T-N)値が所定の基準値よりも高い水質をいう。
【0011】
これにより、脱窒素処理が必要な水質の上澄み水について、脱窒素処理がされずに排水処理系統のうちの重金属処理の前段階の設備である排水貯槽に送られてしまうことが防止される。
【発明の効果】
【0012】
以上に述べたように、本発明の水の処理方法によれば、第1の脱硫装置ピットに流入して貯められる流入水と、第2の脱硫装置用ピットに流入して貯められる流入水と、第3の脱硫装置用ピットに流入して貯められる流入水とが第3の脱硫装置用ピットに集約されてなる処理用水から異物を沈殿して得られた上澄み水は、脱窒素処理を必要としない水質と測定されれば、排水処理系統のうちの重金属処理の前段階の設備である排水貯槽に送られるにあたって、脱フッ素処理された排水に対する希釈水として、これまで用いられてきた工水の代わりに用いることができる。
【0013】
そして、第1の脱硫装置ピットに流入して貯められる流入水と、第2の脱硫装置用ピットに流入して貯められる流入水と、第3の脱硫装置用ピットに流入して貯められる流入水とが第3の脱硫装置用ピットで集約されてなる処理用水から異物を分離して得られた上澄み水は、排水貯槽から後では排水処理系統で処理する排水の一部となって、排水貯槽から重金属処理装置に送って重金属処理がされた後に、海域等の水域に放流される。このため、これまで排煙脱硫装置の吸収塔を利用して処理していた所定の脱硫装置ピットへの流入水について、排煙脱硫装置の吸収塔を利用しなくても、処理することができる。
【0014】
しかも、上澄み水について脱窒素処理が必要でないとの測定の結果が出れば脱窒素装置による脱窒素処理が不要となるため、排煙脱硫装置の吸収塔を利用して処理していた所定の脱硫装置ピットへの流入水の全てを脱窒素処理する場合に比し、脱窒素装置を稼働させる時間を少なくすることが可能であるので、水の処理のためのコストの上昇を抑制することができる。
【0015】
特に請求項2に係る発明の水の処理方法によれば、脱窒素処理が必要な水質の上澄み水について、脱窒素処理がされずに排水処理系統のうちの重金属処理の前段階の設備である排水貯槽に送られて、その後の排水系統による排水の処理に不具合が生じてしまうことを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明が適用された水の処理方法で用いられる設備及び処理の流れについて、脱硫装置ピットをなす石膏スラリーピット、A吸収液ピット、B吸収液ピット並びに脱硫装置用の排水ピットを含めて示した説明図である。
図2】この発明が適用された水の処理方法で用いられる排水処理系統のうちの特に重金属処理を主とした系統を示した説明図である。
図3】この発明が適用された水の処理方法で用いられる設備及び処理の流れについて、脱硫装置ピットをなす石膏スラリーピット、A吸収液ピット、B吸収液ピット並びに脱硫装置用排水ピットを含め、且つ、図1よりも詳細に示した説明図である。
図4】脱硫装置ピットをなす石膏スラリーピット、A吸収液ピット、B吸収液ピットに流入した流入水を脱硫装置の吸収塔を用いて処理する流れの一例について簡潔に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1及び図2において、例えば火力発電所等の発電施設が有する設備1の一例が示されている。図1図2で示される発電施設の設備1は、重金属処理や、脱フッ素処理や、脱窒素処理や、脱硫処理等に用いられる設備(槽や装置等)の全部ではなく、本発明に関連した一部が示されている。
【0019】
脱フッ素処理が必要な排水は、排水処理の系統の一部を構成し、脱フッ素処理の前段階の設備であるC貯槽2に送られ、更にC貯槽2からポンプP1により脱フッ素処理装置3に送られて、脱フッ素処理装置3で脱フッ素処理が行われる。また、脱窒素処理が必要な排水は、排水処理の系統の一部を構成し、脱窒素処理の前段階の設備であるD貯槽5に送られ、更にD貯槽5からポンプP2により脱窒素処理装置6に送られて、脱窒素処理装置6で脱窒素処理が行われた後、排水槽7に送られる。
【0020】
そして、脱フッ素処理がされた排水や脱窒素処理がされた排水は、下記する図2でも示されるように、排水処理の系統の一部を構成し、重金属処理の前段階の設備であるA排水貯槽10、B排水貯槽11に送られ、更にA排水貯槽10、B排水貯槽11からポンプP3、P4により重金属処理装置12に送られ、重金属処理装置12で重金属処理が行われる。重金属処理がされた排水は、ポンプP5により放流ピット26に送られた後、海域等の水域に放流される。この排水処理系統のうちの重金属処理を主とする系統については、下記において図2を用いて詳細に説明する。図2の破線で囲まれた範囲が重金属処理装置12に当たる。
【0021】
図2に示されるように、排水処理系統のうちの重金属処理を主とする系統において、排水は、図1でも示されたA排水貯槽10、B排水貯槽11からポンプP3、P4でPH調整槽13、凝縮槽14の順に送られた後、沈殿槽15で汚泥の沈殿を行い、中間水槽16に送られる。そして、排水は、中間水槽16からポンプP6でろ過器17に送られ、ろ過器17でろ過された後、逆洗水槽18、PH調整槽19、滞留槽20を経て、ポンプP7により吸着塔21、22に送られる。更に、吸着塔21、22に送られた排水は、少なくとも中和槽23、処理水槽24、監視槽25を経て、ポンプP5にて放流ピット26に送られる。そして、放流ピット26で水質確認がされた後、海域に放流される。
【0022】
沈殿槽15で下方に沈殿した汚泥は、図2に示されるように、排水処理系統のうちの汚泥処理の系統として、ポンプP8で濃縮槽30に送られて濃縮された後、途中で凝集剤溶解槽31からポンプP9を用いて凝集剤が添加されつつポンプP10により脱水機32に送られ、脱水機32で脱水されて、ケーキとなって外部に排出される。
【0023】
そして、図1及び図3では、この発明の主な構成をなす石膏スラリーピット40、A吸収液ピット41、B吸収液ピット42、排水ピット43が示され、図1では、石膏シックナー45も示されている。なお、この実施形態では、特許請求の範囲に記載された第1の脱硫装置ピットが石膏スラリーピット40に相当し、特許請求の範囲に記載された第2の脱硫装置ピットがA吸収液ピット41に相当し、特許請求の範囲に記載された第3の脱硫装置ピットがB吸収液ピット42に相当する。
【0024】
石膏スラリーピット40は、この実施形態では、流入水として、石膏シックナー45のブロー水や、雨水46等が流入するピットであり、石膏スラリー分が含まれる水が貯められるようになっている。これに伴い、石膏スラリーピット40は、石膏スラリー分が沈殿しないように撹拌する撹拌装置49と、石膏スラリー分を含む流入水を後述するB吸収液ピット42に送るためのポンプP11とを有した構成となっている。
【0025】
A吸収液ピット41は、この実施形態では、流入水として、吸収塔循環ポンプ(図示せず)のブロー水47や雨水48等が流入するピットであり、異物の沈殿を防止するための撹拌装置50と、流入水を後述するB吸収液ピット42に送るためのポンプP12とを有した構成となっている。
【0026】
B吸収液ピット42は、この実施形態では、流入水として、吸収塔循環ポンプ(図示せず)のブロー水47や雨水48等が流入する点では、A吸収液ピット41と同様であるが、上記のように、石膏スラリーピット40への流入水や、A吸収液ピット41への流入水も送られてくるピットとなっている。すなわち、B吸収液ピット42は、自身への流入水のみならず、石膏スラリーピット40への流入水や、A吸収液ピット41への流入水も、処理用水として集約されるピットとなっている。B吸収液ピット42は、異物の沈殿を防止するための撹拌装置がないか、あってもその稼働を停止したものとなっている。この実施形態では、B吸収液ピット42は、撹拌装置51があってもその稼働を停止している。これにより、B吸収液ピット42では、例えば石膏スラリーピット40から送られてきた流入水について、上方の上澄み水と、下方に沈殿した石膏スラリー分とに分離させることができる。B吸収液ピット42は、この実施形態では、前記上澄み水を排水ピット43に送るための水中ポンプSP1を槽内の水中に有している。
【0027】
排水ピット43は、この実施形態では、例えば、従来と同様に、煙道水洗水や熱媒循環型ガスガスヒータ(GGH)水洗水等の排水を受けると共に、新たに、水中ポンプSP1によりB吸収液ピット42から送られてきた処理用水(石膏スラリーピット40への流入水、A吸収液ピット41への流入水及びB吸収液ピット42への流入水が集約された水)のうちの上澄み水を受けるピットとなっている。排水ピット43は、異物の沈殿を防止するための撹拌装置52と、排水処理系統を構成する貯槽(A排水貯槽10、B排水貯槽11かD貯槽5)に送るためのポンプP13とを有した構成となっている。
【0028】
これにより、石膏スラリーピット40に流入した流入水はポンプP11を稼働させることによりB吸収液ピット42に送られると共にA吸収液ピット41に流入した流入水はポンプP12を稼働させることによりB吸収液ピット42に送られて、B吸収液ピット42自身に流入した流入水と共に集約されて処理用水となる。この処理用水は、B吸収液ピット42の撹拌装置51が稼働しないことにより、上方の上澄み水と、下方に沈殿した石膏スラリー分とに分離する。そして、上澄み水は、水中ポンプSP1を稼働させることにより排水ピット43に送られる。
【0029】
そして、この実施形態では、図3の2つの破線の矢印に示されるように、排水ピット43内に貯められた前記上澄み水を含む貯水、或いは、排水ピット43からポンプP13で送り出された前記上澄み水を含む水の水質測定として、全窒素(T-N)値の測定60が行われる。
【0030】
測定60の結果、全窒素(T-N)値が所定の基準よりも低く、脱窒素処理を必要としない水質であるとされれば、排水ピット43からの水の直接的な送出先は、図3及び前記図1図2に示されるように、A排水貯槽10、B排水貯槽11となる。このような排水ピット43からの良好な水質の水は、A排水貯槽10、B排水貯槽11に送られるにあたり、脱フッ素処理装置3で脱フッ素処理された排水に対する希釈水として、これまで用いられてきた工水の代わりに用いることができる。そして、上澄み水は、A排水貯槽10、B排水貯槽11に流入した後では、排水の一部となって、排水処理系統を成す重金属処理装置12で重金属処理がされてから放流ピット26に送られ、海域に放流される。
【0031】
測定の結果、全窒素(T-N)値が所定の基準よりも高く、脱窒素処理を必要とする水質であるとされれば、排水ピット43からの水の直接的な送出先は、図3及び前記図1に示されるように、D貯槽5となる。そして、D貯槽5から脱窒素処理装置6に送られ、脱窒素処理装置6で脱窒素処理がされた後、排水槽7を経て、排水としてA排水貯槽10、B排水貯槽11に送られる。その後の排水処理系統を利用した処理は、排水ピット43からA排水貯槽10、B排水貯槽11に直接的に送られた場合と同様である。なお、全窒素(T-N)値が所定の基準よりも高く、脱窒素処理を必要とする水質となるかどうかは、石膏スラリーピット40、A吸収液ピット41、及びB吸収液ピット42にそれぞれ流入する雨水の水量の影響を受け得る。
【0032】
以上のように、本発明に係る水の処理方法によれば、石膏スラリーピット40への流入水、A吸収液ピット41への流入水、及びB吸収液ピット42への流入水について、脱硫装置の吸収塔を用いずに処理することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
5 D貯槽(貯槽)
6 脱窒素処理装置
7 排水槽
10 A排水貯槽(排水貯槽)
11 B排水貯槽(排水貯槽)
12 重金属処理装置
40 石膏スラリーピット(第1の脱硫装置ピット)
41 A吸収液ピット(第2の脱硫装置ピット)
42 B吸収液ピッ(第3の脱硫装置ピット)ト
43 排水ピット(脱硫装置用の排水ピット)
60 全窒素(T-N)値の測定
SP1 ポンプ(水中ポンプ)
図1
図2
図3
図4