(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102825
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】設計支援システム、設計支援方法および設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20230719BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20230719BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G06F30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003490
(22)【出願日】2022-01-13
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 蓮
(72)【発明者】
【氏名】伊川 宏美
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 元伸
(72)【発明者】
【氏名】山本 典明
(72)【発明者】
【氏名】山形 知行
(72)【発明者】
【氏名】菅原 禎生
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA07
5B146DE12
5B146DG07
5B146DL03
5B146DL07
5B146EC08
5B146EC10
(57)【要約】
【課題】3次元CADで好適な設計図を作成することを容易にすること。
【解決手段】設計途中の評価対象CADデータを所定時間間隔毎に取得する毎に、評価対象CADデータにおいて、過去CADデータから変更のある全ての変更部品および当該全ての変更部品の形状を算出し、評価対象CADデータにおいて、全ての変更部品のそれぞれの変更部品から所定距離内にある隣接部品との隣接関係を更新部品隣接関係として算出し、評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成し、評価対象CADにおける部品の分解順序を算出し、評価対象CADデータに組立可能性があると判定された場合には、組立容易値を算出し、組立容易値が、組立容易閾値以下か否かを判定し、組立容易値が、組立容易閾値よりも大きいと判定された場合には、評価対象CADデータが組立容易値に関して組み立てが容易ではない旨を出力する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を組み立てて製造される製品の設計を支援する設計支援システムであって、
プロセッサと、記憶装置とを備え、
前記記憶装置は、
過去に作成された過去CADデータと、部品間の隣接関係を表すアセンブリグラフを対応付けて保存するCADデータ履歴保管データベースと、
組み立てやすさを表す組立容易値を算出する基準となる組立容易値定義データを保存する組立容易値定義データベースと、を格納し、
前記プロセッサは、
設計途中の評価対象CADデータを所定時間間隔毎に取得する毎に、
前記CADデータ履歴保管データベースから前記過去CADデータおよび前記過去CADデータの前記アセンブリグラフを抽出し、
前記評価対象CADデータと前記過去CADデータとの差分を算出し、
前記評価対象CADデータと前記過去CADデータとの差分に基づいて、前記評価対象CADデータにおいて、前記過去CADデータから変更のある全ての変更部品および当該全ての変更部品の形状を算出し、
前記評価対象CADデータにおいて、前記全ての変更部品のそれぞれの変更部品から所定距離内にある隣接部品との隣接関係を更新部品隣接関係として算出し、
前記過去CADデータの前記アセンブリグラフと前記更新部品隣接関係に基づいて、前記評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成し、
生成した前記評価対象CADデータのアセンブリグラフに基づいて、前記評価対象CADにおける部品の分解順序を算出し、
生成した前記分解順序に基づいて、前記評価対象CADデータに組立可能性があるか否かを判定し、
前記評価対象CADデータに組立可能性があると判定された場合には、前記組立容易値定義データベースに保存された前記組立容易値定義データに基づいて、組立容易値を算出し、
前記組立容易値が、組立容易閾値以下か否かを判定し、
前記組立容易値が、前記組立容易閾値よりも大きいと判定された場合には、前記評価対象CADデータが組立容易値に関して組み立てが容易ではない旨を出力する、
設計支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の設計支援システムであって、
前記プロセッサは、
前記組立容易値を、前記組立容易値定義データベースに保存された前記組立容易値定義データおよび前記全ての変更部品に基づいて、組立容易値を算出し、
設計支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の設計支援システムであって、
前記プロセッサは、
前記評価対象CADデータにおいて、
前記過去CADデータに対して追加された新規追加部品と、前記過去CADデータから構成が変更された構成変更アッセンブリと、前記過去CADデータから位置が距離閾値以上変更された移動部品と、前記過去CADデータから角度閾値以上回転された回転部品と、前記過去CADデータからサイズがサイズ閾値以上変更されたサイズ変更部品と、前記過去CADデータから変形が加えられた変形部品と、前記過去CADデータから削除された削除部品とを、前記変更部品とする、
設計支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の設計支援システムであって、
前記プロセッサは、
前記評価対象CADにおける前記部品の前記分解順序を算出する過程で、周囲の部品と干渉する部品を組立不可能部品として検出し、
前記組立不可能部品が検出された場合には、前記評価対象CADデータに組立可能性がないと判定する、
設計支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の設計支援システム1であって、
前記プロセッサは、
前記組立不可能部品が検出された場合には、前記評価対象CADデータは組み立てが可能ではない旨と、前記組立不可能部品を特定する情報及び前記組立不可能部品を強調して表示させる旨とを含む組立不可能部品強調表示情報を出力する、
設計支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の設計支援システム1であって、
前記CADデータ履歴保管データベースは、前記組立容易値が前記組立容易閾値以下の過去CADデータと、アセンブリグラフとを対応付けて保存し、
前記プロセッサは、
前記CADデータ履歴保管データベースから、前記組立容易値が前記組立容易閾値以下の過去CADデータを抽出し、
前記評価対象CADデータと前記前記組立容易値が前記組立容易閾値以下の過去CADデータとの差分を算出し、
前記評価対象CADデータと前記前記組立容易値が前記組立容易閾値以下の過去CADデータとの差分に基づいて、前記評価対象CADデータにおいて、前記過去CADデータから変更のある全ての変更部品および当該全ての変更部品の形状を算出し、
前記組立容易値が前記組立容易閾値以下の過去CADデータのアセンブリグラフと前記更新部品隣接関係に基づいて、前記評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成する、
設計支援システム。
【請求項7】
請求項1に記載の設計支援システム1であって、
前記プロセッサは、
前記評価対象CADデータと前記過去CADデータに基づいて、前記評価対象CADデータにおいて、前記過去CADデータから変更のある全ての前記全ての変更部品を検出し、
検出した前記全ての変更部品それぞれの変更部品毎に、並列処理で、前記変更部品の形状を算出し、
前記全ての変更部品それぞれの変更部品毎に、並列処理で、前記変更部品から所定距離内にある隣接部品との隣接関係を更新部品隣接関係として算出する、
設計支援システム。
【請求項8】
請求項1に記載の設計支援システム1であって、
前記組立容易値定義データベースは、組立容易値定義データとして、部品に対する作業スペースの情報を含む作業スペース情報を保存し、
前記組立容易値として、作業空間値を含み、
前記プロセッサは、
前記評価対象CADにおける前記分解順序の順番を逆にした組立順序を生成し、
前記評価対象CADデータにおいて、前記全ての変更部品のそれぞれの変更部品に対して、前記変更部品から所定周辺距離内にある周辺部品および前記変更部品のうちの部品1つ毎に作業空間検証部品に設定して、前記作業空間検証部品よりも前記組立順序の順番が前の部品は存在するとともに、前記作業空間検証部品よりも前記組立順序の順番が後の部品は存在しない状態において、前記作業スペース情報に基づいて前記作業空間検証部品の表面形状に作業スペースを加えた作業スペース拡張形状にした前記作業空間検証部品と干渉する干渉部品を検出し、
前記干渉部品が検出された前記周辺部品および前記変更部品の数を、前記作業空間値として算出し、
前記作業空間値が、作業空間閾値以下か否かを判定し、
前記作業空間値が、前記作業空間閾値よりも大きいと判定された場合には、前記評価対象CADデータが作業空間に関して組み立が容易ではない旨を出力する、
設計支援システム。
【請求項9】
請求項8に記載の設計支援システム1であって、
前記プロセッサは、
前記変更部品毎に、並列処理で、前記変更部品の周辺部品および前記変更部品に関する前記干渉部品を検出する、
設計支援システム。
【請求項10】
請求項8に記載の設計支援システム1であって、
前記プロセッサは、
前記作業空間値が、前記作業空間閾値よりも大きいと判定された場合には、前記評価対象CADデータが作業空間に関して組み立が容易ではない旨と、前記干渉部品が検出された周辺部品および変更部品を特定する情報及び前記干渉部品が検出された周辺部品および変更部品を強調して表示させる旨とを含む作業空間不足部品強調表示情報を出力する、
設計支援システム。
【請求項11】
請求項1に記載の設計支援システム1であって、
前記組立容易値定義データベースは、組立容易値定義データとして、組立時間閾値を保存し、
前記記憶装置は、さらに、組立容易値定義データとして、複数の部品を組み立てて作成される組立3Dモデルと当該組立3Dモデルの組み立てに要する組付時間とを対応付けて保存する組立実績データベースを格納し、
前記組立容易値として、組立時間値を含み、
前記プロセッサは、
前記評価対象CADデータを、複数の部品を組み立てて作成される組立評価3Dモデルの組み合わせに分割し、
前記組立実績データベースに基づいて、組立評価3Dモデル毎に組付時間を算出し、
全ての前記組立評価3Dモデルの前記組付時間の総和を、前記組立時間値として算出し、
前記組立時間値が、前記組立時間閾値以下か否かを判定し、
前記組立時間値が、前記組立時間閾値よりも大きいと判定された場合には、前記評価対象CADデータが組立時間値に関して組み立が容易ではない旨を出力する、
設計支援システム。
【請求項12】
請求項11に記載の設計支援システム1であって、
前記プロセッサは、
前記組立時間値が、前記組立時間閾値よりも大きいと判定された場合には、前記評価対象CADデータが組立時間値に関して組み立が容易ではない旨と、前記全ての変更部品を強調して表示させる旨とを含む組立時間不足情報を出力する、
設計支援システム。
【請求項13】
複数の部品を組み立てて製造される製品の設計を支援する設計支援システムにおける設計支援方法であって、
設計支援システムの記記憶装置は、
過去に作成された過去CADデータと、部品間の隣接関係を表すアセンブリグラフを対応付けて保存するCADデータ履歴保管データベースと、
組み立てやすさを表す組立容易値を算出する基準となる組立容易値定義データを保存する組立容易値定義データベースと、を格納し、
設計途中の評価対象CADデータを所定時間間隔毎に取得する毎に、
前記CADデータ履歴保管データベースから前記過去CADデータおよび前記過去CADデータの前記アセンブリグラフを抽出し、
前記評価対象CADデータと前記過去CADデータとの差分を算出し、
前記評価対象CADデータと前記過去CADデータとの差分に基づいて、前記評価対象CADデータにおいて、前記過去CADデータから変更のある全ての変更部品および当該全ての変更部品の形状を算出し、
前記評価対象CADデータにおいて、前記全ての変更部品のそれぞれの変更部品から所定距離内にある隣接部品との隣接関係を更新部品隣接関係として算出し、
前記過去CADデータの前記アセンブリグラフと前記更新部品隣接関係に基づいて、前記評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成し、
生成した前記評価対象CADデータのアセンブリグラフに基づいて、前記評価対象CADにおける部品の分解順序を算出し、
生成した前記分解順序に基づいて、前記評価対象CADデータに組立可能性があるか否かを判定し、
前記評価対象CADデータに組立可能性があると判定された場合には、前記組立容易値定義データベースに保存された前記組立容易値定義データに基づいて、組立容易値を算出し、
前記組立容易値が、組立容易閾値以下か否かを判定し、
前記組立容易値が、前記組立容易閾値よりも大きいと判定された場合には、前記評価対象CADデータが組立容易値に関して組み立てが容易ではない旨を出力する、
設計支援方法。
【請求項14】
複数の部品を組み立てて製造される製品の設計を支援する設計支援システムのプロセッサに実行される、設計支援プログラムであって、
前記設計支援システムの記憶装置は、
過去に作成された過去CADデータと、部品間の隣接関係を表すアセンブリグラフを対応付けて保存するCADデータ履歴保管データベースと、
組み立てやすさを表す組立容易値を算出する基準となる組立容易値定義データを保存する組立容易値定義データベースと、を格納しており、
前記設計支援プログラムは、
前記設計支援システムが、設計途中の評価対象CADデータを所定時間間隔毎に取得する毎に、
前記プロセッサに、
前記CADデータ履歴保管データベースから前記過去CADデータおよび前記過去CADデータの前記アセンブリグラフを抽出させ、
前記評価対象CADデータと前記過去CADデータとの差分を算出させ、
前記評価対象CADデータと前記過去CADデータとの差分に基づいて、前記評価対象CADデータにおいて、前記過去CADデータから変更のある全ての変更部品および当該全ての変更部品の形状を算出させ、
前記評価対象CADデータにおいて、前記全ての変更部品のそれぞれの変更部品から所定距離内にある隣接部品との隣接関係を更新部品隣接関係として算出させ、
前記過去CADデータの前記アセンブリグラフと前記更新部品隣接関係に基づいて、前記評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成させ、
生成した前記評価対象CADデータのアセンブリグラフに基づいて、前記評価対象CADにおける部品の分解順序を算出させ、
生成した前記分解順序に基づいて、前記評価対象CADデータに組立可能性があるか否かを判定させ、
前記評価対象CADデータに組立可能性があると判定された場合には、前記組立容易値定義データベースに保存された前記組立容易値定義データに基づいて、組立容易値を算出させ、
前記組立容易値が、組立容易閾値以下か否かを判定させ、
前記組立容易値が、前記組立容易閾値よりも大きいと判定された場合には、前記評価対象CADデータが組立容易値に関して組み立てが容易ではない旨を出力させる、
設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部品を組み立てて製造される製品の設計を支援する設計支援システム、設計支援方法および設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
3次元CADで作成された製品の設計データを用いて、部品から製品を組み立てることを容易にする技術がある。例えば、特許文献1には、組立物の設計情報である3次元CADデータを設計者が作成した後に、3次元CADデータを用いて組立物を部品から組み立てる過程を示すアニメーションを作成するとともに、組み立てる過程を評価する技術が記載されている。ここで、特許文献1に記載された技術を用いれば、組立物を部品から組み立てる過程を示すアニメーションを作成する際に、製品を3次元CADデータ通りに組み立てることができるか否かを検証できる。これにより、製品を試作する前に、製品を3次元CADデータ通りに組み立てることができるか否かを検証して、製品を3次元CADデータ通りに組み立てることができないことが明らかになった場合に、3次元CADデータを修正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された技術では、製品を3次元CADデータ通りに組み立てることができるか否かを検証するのは、一旦、設計情報である3次元CADデータが作成された後である。そして一旦、設計情報である3次元CADデータが作成された後では、3次元CADデータの製品が多数の部品で構成されているために、修正すべき部品を特定することが容易ではない場合がある。この場合、3次元CADデータの修正することは困難であり、設計した通りに製品を組み立てることができるように、設計図の3次元CADデータを作成するのは容易ではない。従って、特許文献1に記載された技術を用いたとしても、設計した通りに製品を組み立てることができるように、設計図の3次元CADデータを作成するのは容易ではない場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、3次元CADで好適な設計図を作成することを容易にする設計支援システム、設計支援方法および設計支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の設計支援システムの一態様は、複数の部品を組み立てて製造される製品の設計を支援する設計支援システムであって、プロセッサと、記憶装置とを備え、前記記憶装置は、過去に作成された過去CADデータと、部品間の隣接関係を表すアセンブリグラフを対応付けて保存するCADデータ履歴保管データベースと、組み立てやすさを表す組立容易値を算出する基準となる組立容易値定義データを保存する組立容易値定義データベースと、を格納し、前記プロセッサは、設計途中の評価対象CADデータを所定時間間隔毎に取得する毎に、前記CADデータ履歴保管データベースから前記過去CADデータおよび前記過去CADデータの前記アセンブリグラフを抽出し、前記評価対象CADデータと前記過去CADデータとの差分を算出し、前記評価対象CADデータと前記過去CADデータとの差分に基づいて、前記評価対象CADデータにおいて、前記過去CADデータから変更のある全ての変更部品および当該全ての変更部品の形状を算出し、前記評価対象CADデータにおいて、前記全ての変更部品のそれぞれの変更部品から所定距離内にある隣接部品との隣接関係を更新部品隣接関係として算出し、前記過去CADデータの前記アセンブリグラフと前記更新部品隣接関係に基づいて、前記評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成し、生成した前記評価対象CADデータのアセンブリグラフに基づいて、前記評価対象CADにおける部品の分解順序を算出し、生成した前記分解順序に基づいて、前記評価対象CADデータに組立可能性があるか否かを判定し、前記評価対象CADデータに組立可能性があると判定された場合には、前記組立容易値定義データベースに保存された前記組立容易値定義データに基づいて、組立容易値を算出し、前記組立容易値が、組立容易閾値以下か否かを判定し、前記組立容易値が、前記組立容易閾値よりも大きいと判定された場合には、前記評価対象CADデータが組立容易値に関して組み立てが容易ではない旨を出力する。
【0007】
また、本発明の設計支援システムの設計支援方法の一態様は、複数の部品を組み立てて製造される製品の設計を支援する設計支援システムにおける設計支援方法であって、設計支援システムの記記憶装置は、過去に作成された過去CADデータと、部品間の隣接関係を表すアセンブリグラフを対応付けて保存するCADデータ履歴保管データベースと、組み立てやすさを表す組立容易値を算出する基準となる組立容易値定義データを保存する組立容易値定義データベースと、を格納し、設計途中の評価対象CADデータを所定時間間隔毎に取得する毎に、前記CADデータ履歴保管データベースから前記過去CADデータおよび前記過去CADデータの前記アセンブリグラフを抽出し、前記評価対象CADデータと前記過去CADデータとの差分を算出し、前記評価対象CADデータと前記過去CADデータとの差分に基づいて、前記評価対象CADデータにおいて、前記過去CADデータから変更のある全ての変更部品および当該全ての変更部品の形状を算出し、前記評価対象CADデータにおいて、前記全ての変更部品のそれぞれの変更部品から所定距離内にある隣接部品との隣接関係を更新部品隣接関係として算出し、前記過去CADデータの前記アセンブリグラフと前記更新部品隣接関係に基づいて、前記評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成し、生成した前記評価対象CADデータのアセンブリグラフに基づいて、前記評価対象CADにおける部品の分解順序を算出し、生成した前記分解順序に基づいて、前記評価対象CADデータに組立可能性があるか否かを判定し、前記評価対象CADデータに組立可能性があると判定された場合には、前記組立容易値定義データベースに保存された前記組立容易値定義データに基づいて、組立容易値を算出し、前記組立容易値が、組立容易閾値以下か否かを判定し、前記組立容易値が、前記組立容易閾値よりも大きいと判定された場合には、前記評価対象CADデータが組立容易値に関して組み立てが容易ではない旨を出力する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、3次元CADで好適な設計図を作成することを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例における設計支援システムの機能ブロック図の一例を示す図である。
【
図2】実施例における設計支援システムのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】CADデータ履歴保管データベースの一例を示す図である。
【
図4】組立容易性定義データベースの一例を示す図である。
【
図5】組立実績データベースの一例を示す図である。
【
図6】組立性評価結果データベースの一例を示す図である。
【
図7】3DCAD装置に表示される3DCAD編集画面の一例を示す図である。
【
図8】CADデータに加えられた編集の一例を説明する説明図である。
【
図9】実施例の設計図評価処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】設計支援システムの並列処置を説明する図である。
【
図12】3DCAD装置に表示される変更部品表示画面の一例を示す説明図である。
【
図13】3DCAD装置に表示される組立不可能部品強調表示画面の一例を示す説明図である。
【
図14】3DCAD装置に表示される作業空間不足部品強調表示画面の一例を示す説明図である。
【
図15】3DCAD装置に表示される組立時間不足表示画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。実施例は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0011】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0012】
各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0013】
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0014】
実施例において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0015】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施例において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【実施例0016】
実施例の設計支援システム1は、組立物の設計図である評価対象CADデータを所定時間間隔毎に取得する毎に、評価対象CADデータを評価して、評価結果を出力するシステムである。
【0017】
<システム構成>
図1は、実施例における設計支援システム1の機能ブロック図の一例を示す図である。
図1に示すように、設計支援システム1は、3DCAD装置2と、並列処理装置3とに、ネットワークNWを介して接続されている。
【0018】
3DCAD装置2は、3DCADプログラムを実行できる。製品設計者は、3DCAD装置2に3DCADプログラムを実行させて、製品を設計できる。3DCAD装置2は、設計支援システム1とネットワークNWを介して設計支援システム1と連携して動作できる。3DCAD装置2が3DCADプログラムを実行して、製品設計者が製品設計を行うと、3DCAD装置2は、その時点での設計図である評価対象CADデータを所定時間間隔毎に、ネットワークNWを介して設計支援システム1に送信するように設定されている。なお、3DCAD装置2の3DCADプログラムを設計支援システム1に組み込んで、設計支援システム1が3DCAD装置2を兼ねても良い。この逆に、設計支援システム1の有する設計図評価プログラム(詳細は後述する)を3DCAD装置2にインストールして、3DCAD装置2で、設計図評価プログラムと3DCAD装置2の3DCADプログラムと連携させて実行させてもよい。
【0019】
並列処理装置3は、設計支援システム1とネットワークNWを介して接続されており、大規模な組立製品に関する計算量の多い評価を短時間で行えるように、複数の計算機やクラウド技術を利用したスケーラブルな形で、仮想マシンによる並列処理が行うことができる。
【0020】
ネットワークNWは、有線のネットワークでもよいし、無線のネットワークでもよい。また、ネットワークNWは、インターネットのようなグローバルネットワークであってもよいし、構内ネットワーク(LAN:Local Area Network)であってもよい。また、ネットワークNWに換えて、設計支援システム1と3DCAD装置2をUSB(Universal Serial Bus)などの有線通信路あるいはBluetooth等の無線通信路を用いてもよい。
【0021】
図1に示すように、設計支援システム1は、設計図評価部11を備えている。また、設計支援システム1は、CADデータ履歴保管データベース21と、組立容易性定義データベース22と、組立実績データベース23と、組立性評価結果データベース24と、を格納している。
【0022】
設計図評価部11は、詳細は
図9のフローチャートを用いて後述するが、3DCAD装置2から所定時間間隔毎にネットワークNWを介して送信された設計図である評価対象CADデータを受信すると、次の様に、評価対象CADデータを評価する設計図評価処理を行う。
【0023】
設計図評価部11は、評価対象CADデータの組立体の部品間の隣接関係(詳細は後述する)を算出し、算出した部品間の隣接関係に基づいて評価対象CADデータのアセンブリグラフ(詳細は後述する)を生成する。次に、設計図評価部11は、生成したアセンブリグラフに基づいて分解順序を算出する。次に、設計図評価部11は、算出した分解順序に基づいて、評価対象CADデータに組立可能性(詳細は後述する)があるか否かを判定する。設計図評価部11は、評価対象CADデータに組立可能性があると判定された場合には、組立容易値(詳細は後述する)を算出する。設計図評価部11は、組立容易値が、組立容易閾値よりも大きいと判定された場合には、前記評価対象CADデータが組立容易値に関して組み立が容易ではない旨を出力する。
【0024】
以下では、部品間の隣接関係と、アセンブリグラフと、分解方向と、組立可能性と、組立容易値(作業空間値、組立時間値)等について説明する。
【0025】
部品Aが、部品Bに面で接触している場合、部品Aおよび部品Bの運動の自由度は、部品Aと部品Bとが接触することで減少する。また、部品Aの近傍に部品Bがある場合には、部品Aおよび部品Bの移動できる範囲は、部品Aと部品Bとが近傍にあることで制限される。この様に距離が所定の距離以内にある2つの部品は、互いに拘束しあう。
【0026】
部品間の隣接関係とは、部品間の拘束の種類である。隣接関係には、例えば、次の種類がある。1、部品同士が所定距離よりも離れており、拘束がない「拘束なし」。2、部品の一部の平面と、他の部品の一部の平面の法線が許容寸法範囲内にあり、これらの平面間の距離が許容寸法以内で隣接している「平面拘束」。3、円筒(例えば雄ねじ部)と円筒(例えば雌ねじ部)が許容寸法以内で同軸関係にあり、その円筒の径の差が許容寸法以内にある場合の「円筒拘束」。4、平面の法線と円筒の軸が許容寸法範囲内で垂直関係にあって、円筒の軸から平面までの距離と円筒の半径が許容寸法範囲内にある場合の「円筒平面拘束」。
【0027】
アセンブリグラフとは、部品間の隣接関係を表現したグラフである。アッセンブリグラフでは、例えば、CADデータの各部品をノード(節)で表し、互いに拘束しあう部品間のノードをエッジ(弧)で繋いだグラフである。アセンブリグラフでは、エッジで、部品間の隣接関係が互いに拘束しあう関係にあることを表す。
【0028】
分解方向とは、組立物を部品に分解する際に、部品を取り外す方向である。組立方向とは、部品を組付ける際に、部品を組付ける方向である。組立方向は、分解方向の逆方向とする。
【0029】
組立可能性とは、CADデータの内容の組立物が設計した通りに組み立てることができることである。組立可能性がある場合には、CADデータの内容の組立物が設計した通りに組み立てることができる。一方、組立可能性がない場合には、CADデータの内容の組立物が設計した通りに組み立てることができない。
【0030】
組立容易値とは、所定の組立の容易さの条件に関して、対象とするCADデータの組立物を部品から組み立てる容易さの程度を表す値である。組立容易値には、例えば、以下に説明する作業空間値と、組立時間値とがある。組立容易値が、組立容易閾値以下の場合には、対象とするCADデータで設計された組立物を部品から組み立てることは、所定の組立の容易さの条件に関して、容易であるとみなすことができる。一方、組立容易値が、組立容易閾値よりも大きい場合には、対象とするCADデータで設計された組立物を部品から組み立てることは、所定の組立の容易さの条件に関して、容易ではないとみなすことができる。
【0031】
作業空間値とは、組立容易値の一種であり、対象とするCADデータで設計された組立物を部品から組み立てる際に、すべての部品に対して組み立てに必要な作業スペースを確保することの容易さの程度を表す値である。
【0032】
作業空間値は、例えば、組み立てる際に作業スペースを確保できない部品の数である。作業空間容易易閾値を0とする。作業空間値が、作業空間容易易閾値以下の場合(作業空間値≦0)には、対象とするCADデータで設計された組立物を部品から組み立てる際に、すべての部品に対して組み立てに必要な作業スペースを容易に確保できるとみなすことができる。一方、作業空間値が、作業空間閾値よりも大きい場合(作業空間値>0)には、対象とするCADデータで設計された組立物を部品から組み立てる際に、すべての部品に対して組み立てに必要な作業スペースを容易には確保できないとみなすことができる。
【0033】
組立時間値とは、組立容易値の一種であり、対象とするCADデータで設計された組立物を部品から組み立てるために要する時間の観点で、組立の容易さの程度を表す値である。本実施例では、組立時間値は、組立物を部品から組み立てるために要する時間の推定時間である。
【0034】
組立時間値が、時間的組立容易閾値以下の場合(組立時間値≦時間的組立容易閾値)には、対象とするCADデータで設計された組立物を組み立てるために要する時間が十分短くて済み、対象とするCADデータで設計された組立物を部品から組み立てることは、時間的に容易であるとみなすことができる。一方、組立時間値が、作時間的組立容易閾値よりも大きい場合(組立時間値>時間的組立容易閾値)には、対象とするCADデータで設計された組立物を組み立てるために要する時間が長すぎ、対象とするCADデータで設計された組立物を部品から組み立てることは、時間的に容易ではないとみなすことができる。
【0035】
CADデータ履歴保管データベース21は、詳細は
図3を用いて後述するが、過去に作成された設計途中のCADデータと、部品毎の形状などの情報と、部品間の隣接関係を表すアセンブリグラフと、組立順序等を対応付けて保存するデータベースである。
【0036】
組立容易性定義データベース22は、詳細は
図4を用いて後述するが、組み立てやすさを表す組立容易値を算出する基準となる組立容易値定義データを保存するデータベースである。
【0037】
組立実績データベース23は、詳細は
図5を用いて後述するが、複数の部品からなる複数の組立3Dモデルと、組立3Dモデルの組立に要する組立時間(平均実績値)を対応付けて保存するデータベースである。
【0038】
組立性評価結果データベース24は、詳細は
図6を用いて後述するが、設計支援システム1が、CADデータを評価した評価結果を保存するデータベースである。
【0039】
図2は、設計支援システム1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、設計支援システム1は、プロセッサ31、主記憶装置32、副記憶装置33、入力装置34、出力装置35、ネットワークI/F36、これらを接続するバス37を有している。設計支援システム1は、例えばPCやサーバーコンピューターのような一般的な情報処理装置で実現できる。
【0040】
プロセッサ31は、副記憶装置33に記憶されたデータやプログラムを主記憶装置32に読み出して、プログラムによって定められた処理を実行する。また、プロセッサ31は、複数のコア31aを有する。プロセッサ31は、それぞれのコア31aごとに処理を並列して行うことで、並列処理を行うことができる。
【0041】
主記憶装置32は、RAMなどで、揮発性記憶素子を有し、プロセッサ31が実行するプログラムや、データを記憶する。
【0042】
副記憶装置33は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などで、不揮発性記憶素子を有し、プログラムやデータ等を記憶する装置である。副記憶装置33には、上述した、CADデータ履歴保管データベース21と、組立容易性定義データベース22と、組立実績データベース23と、組立性評価結果データベース24と、を格納している。
【0043】
また、副記憶装置33には、設計図評価プログラム11aがインストールされている。
図1を用いて上述した、設計図評価部11は、副記憶装置33に記憶されている設計図評価プログラム11aを、プロセッサ31が主記憶装置32に読み出して実行することにより実現される。
【0044】
入力装置34は、キーボードやマウスなどのユーザの操作を受け付ける装置であり、ユーザの操作により入力された情報を取得する。出力装置35は、ディスプレイなど情報を出力する装置であり、例えば画面への表示により情報をユーザに提示する。
【0045】
ネットワークI/F36は、3DCAD装置2や、並列処理装置3等の装置と、ネットワークNWを介してデータを送受信するためのインターフェースである。すなわち、ネットワークI/F36は、ネットワークNWを介して、3DCAD装置2、並列処理装置3に情報の送受信が可能な送受信装置である。設計支援システム1は、ネットワークI/F36を用いて、ネットワークNWに接続されている3DCAD装置2、並列処理装置3等の装置とデータの送受信を行うことができる。
【0046】
3DCAD装置2および並列処理装置3は、設計支援システム1と同様のハードウェア資源を使用することで構成できる。
【0047】
<各種データ構造>
図3は、CADデータ履歴保管データベース21のデータ構造の一例を示す図である。
図3に示すCADデータ履歴保管データベース21では、CADデータID301と、時系列ID302と、ユニットID303と、データ分類304と、データ項目305と、値306とを含む。
【0048】
CADデータID301は、設計図のCADデータを識別するIDである。CADデータID301が同一のCADデータは、同一の製品を設計するために作成されたCADデータである。
【0049】
時系列ID302は、CADデータが保存された時系列を識別するIDである。
図3の例では時系列ID302は、CADデータが保存された日時のデータである。時系列ID302は、CADデータを保存した順番(時系列順に整数値を1ずつ増加させた数)であっても良い。ユニットID303と、データ分類304と、データ項目305と、値306とは、時系列ID302に対応付けられている。
【0050】
ユニットID303は、CADデータに含まれる情報を大まかに分類し、識別するIDである。ユニットID303には、CADデータに含まれる部品を識別するIDと、「アッセンブリグラフ」と、「組立順序」と、「組立3Dモデル」を含む。
【0051】
データ分類304は、各部品における各種データの分類を示すものである。
図3に示すデータ分類304には、部品属性、形状情報、部品配置情報、部品構成、部品間隣接関係を含む。データ項目305は、各データ分類304における詳細な項目である。
【0052】
データ分類304が部品属性の場合、データ項目305には、部品名や部品種別、材質といった部品の属性に関する情報のデータ項目を含む。データ分類304が形状情報の場合、データ項目305には、体積、表面積、バウンディングボックスといった部品の形状に関する情報のデータ項目を含む。
【0053】
データ分類304が部品配置情報の場合、データ項目305には、部品原点や部品x軸、部品y軸、部品z軸といった、各部品の3次元空間における配置のされ方に関する情報のデータ項目を含む。データ分類304が部品構成の場合、親部品、子部品といった、部品間の階層関係に関する情報のデータ項目を含む。データ分類304が部品間隣接関係の場合、拘束種別、被拘束部品ID、拘束面法線といった、部品間の隣接関係(拘束情報)に関する情報のデータ項目を含む。
【0054】
値306は、データ項目305、ユニットID「アセンブリグラフ」、「組立順序」または「組立3Dモデル」に対する値である。
【0055】
図4は、組立容易性定義データベース22のデータ構造の一例を示す図である。
図4に示す組立容易性定義データベース22では、定義ID401と、組立容易性定義種別402と、説明403と、値404とを含む。
【0056】
定義ID401は、組立容易性定義種別402に対応付けられており、組立容易値(例えば、作業空間値、組立時間値)に関する設定を識別するIDである。
【0057】
組立容易性定義種別402は、組立容易値を算出するための情報の種別である。組立容易性定義種別402の例には、作業空間値を算出する際の「作業スペース」や、組立時間値を算出する際の「組立時間閾値」が挙げられる。
【0058】
説明403は、組立容易値を算出するための情報に関する説明である。説明403は、装置利用者が組立容易値の値404を設定する際に参照できる。
【0059】
値404は、組立容易値を算出するための値である。値404は、3DCAD装置2の装置利用者が、設定できるようになっている。
【0060】
図4に示す組立容易性定義データベース22では、定義ID401が1で、組立容易性定義種別402が「作業スペース、ねじ(3次元直交座標)」の値404は、部品種別が「ねじ」の部品に対して、組立作業を補助する電動ドライバの作業スペースを、3次元直交座標を用いて定義する値である。このように、組立容易性定義データベース22は、組立容易性定義種別402に部品種別の情報を含めることで、設計支援システム1は、部品種別毎に作業スペースを設定できる。
【0061】
また、定義ID401が2で、組立容易性定義種別402が「作業スペース、ねじ(3次元円筒座標)」の値404は、部品種別が「ねじ」の部品に対して、ロボットアームによる自動組立を実施するためのアームの可動領域を、3次元円筒座標を用いて定義する値である。また、定義ID401が3で、組立容易性定義種別402が「作業スペース、ねじ(3次元極座標)」の値404は、部品種別が「ねじ」の部品に対して、は、ロボットアームによる自動組立を実施するためのアームの可動領域を3次元極座標を用いて定義する値である。
【0062】
以上で説明した、組立容易性定義種別402に「作業スペース」を含む、定義ID401が1~3の値404は、後述する様に、組立容易値が作業空間値の場合の処理における作業スペースを定義した値(作業スペース情報)である。また、組立容易性定義種別402に「ねじ」との部品種別の情報を含むが、部品種別が「ねじ」以外の部品に対する作業スペースを定義した値も、組立容易性定義データベース22に保存されている。
【0063】
一方、
図4において、定義ID401がnで、組立容易性定義種別402が「組立時間閾値」の値は、後述する様に、組立容易値が組立時間値の場合の処理における組立時間閾値(工数の閾値)を定義する値である。
【0064】
図5は、組立実績データベース23のデータ構造の一例を示す図である。
図5に示す組立実績データベース23では、実績ID501と、実績種別502と、組立3DモデルID503と、組立3Dモデル構成504と、平均実績値505とを含む。
【0065】
実績ID501は、組立実績データを識別するIDであり、組立3Dモデル構成504に対応付けられている。
【0066】
実績種別502は、組立に要した実績データの種別を示すものである。
【0067】
組立3Dモデル503は、組立3Dモデル構成504を識別するIDであり、組立3Dモデル構成504の組立3Dモデル名を表す。
【0068】
組立3Dモデル構成504は、組立3Dモデルの構成であり、組立3Dモデルを構成する部品を特定する情報を組立順に並べた情報である。組立3Dモデル構成504は、過去に製造された製品の設計図のCADデータから作成された、組立3Dモデルの構成の情報と、製品の製造時の組立3Dモデルの部品の組立順序の情報とを含む。
【0069】
平均実績値505は、組立3Dモデル構成504の組立3Dモデルの製造時に、組立3Dモデルの組み立てに要した時間(平均値)である。換言すれば、平均実績値505は、組立3Dモデル構成504の組立3Dモデルの組立に要する組立時間である。
【0070】
なお、組立3Dモデル構成504および平均実績値505は、設計図のCADデータに基づいて作成しなくてよい。ユーザが、組立3Dモデル構成504を適宜設定し、設定した組立3Dモデル構成504に基づいて平均実績値505(組立時間)を見積っても良い。
【0071】
図6は、組立性評価結果データベース24のデータ構造の一例を示す図である。
図6に示す組立性評価結果データベース24では、評価結果ID601と、CADデータID602と、時系列ID603と、組立可能性評価604と、組立容易性評価605と、評価理由606と、組立順序607と、組立部品ID608と、組立先部品ID609とを含む。CADデータID602と、時系列ID603とは、
図3に例を示すCADデータ履歴保管データベース21のCADデータID301と、時系列ID302に対応付けられている。
【0072】
時系列ID603は、CADデータが保存された時系列を識別するIDである。
【0073】
組立可能性評価604は、CADデータの組立可能性を設計支援システム1が評価した結果である。組立可能性評価604が「可能」の場合は、CADデータに組立可能性があると評価された(判定された)ことを表す。一方、組立可能性評価604が「不可能」の場合は、CADデータに組立可能性がないと評価された(判定された)ことを表す。
【0074】
組立容易性評価605は、評価対象のCADデータに対して組立容易値を算出した場合において、組立容易値に関して組み立が容易か否かを設計支援システム1が評価した結果である。組立容易性評価605が「容易」の場合は、CADデータが、組立容易値に関して組み立が容易と評価された(判定された)ことを表す。一方、組立容易性評価605が「困難」の場合は、CADデータが、組立容易値に関して組み立が容易ではないと評価された(判定された)ことを表す。
【0075】
評価理由606は、組立可能性評価604や組立容易性評価605に関する詳細な情報である。評価理由606には、設計支援システム1が組立容易値を算出した際に明らかになった部品の干渉に関する情報や、組立容易値の算出に用いた設定の情報等を含めても良い。
【0076】
組立順序607と、組立部品ID608と、組立先部品ID609は、設計支援システム1がCADデータを評価する際に得られた、CADデータにおける部品の組立方法に関する情報である。組立性評価結果データベース24には、以上で説明したデータに加えて、干渉が発生した部品のIDや、組立容易値の算出に用いた設定値(例えば、組立容易性定義データベース22の値404)といったデータを含めても良い。
【0077】
<処理手順>
次に、設計支援システム1の処理手順について説明する。設計支援システム1は、製品設計者が3DCAD装置2を用いて作成した、設計図である3DCADデータを所定の時間間隔毎に取得して、3DCADデータの評価を行う。
【0078】
図7は、製品設計者が設計途中の設計図である3DCADデータを編集する場合に、3DCAD装置2に表示される3DCAD編集画面の一例を示す図である。
図7に示すように、3DCAD編集画面700には、編集中の組立物701の概略斜視図が示されている。
図7に示すように組立物701は、部品702と、部品703からなる。部品702および部品703は互いに接合されている。
【0079】
図8は、
図7の3DCAD編集画面700のCADデータに加えられた編集を説明する説明図である。
図8には、編集後のCADデータの組立物801の概略斜視図が示されている。
【0080】
図8に示された組立物801は、
図7に示す部品702および部品703を接合した組立物701に、変更部品804、805、806を組付けた組立物である。変更部品804は、変更部品(ねじ)805によって部品703にねじ止めされている。変更部品806は、部品702に接合されている。
図9に二点鎖線で示す部品804p、部品805p、部品806pは、組立物801に取り付ける前の変更部品804、805、806である。
【0081】
組立物701に変更部品804、805、806を組付ける手順は、例えば、まず、ねじ穴804Apを有する部品804pを、部品703の側面に移動する。次に、部品(ねじ)805pを、部品804pのねじ穴804Apに、挿通させ、部品804pを部品703にねじ止めする。最後に、部品806pを部品702に接合する。設計支援システム1の行う設計図評価処理では、この様に、編集中のCADデータに関して、部品を組付ける手順を算出し、CADデータを評価する。
【0082】
3DCAD装置2は、3DCADプログラムを実行すると、所定の時間間隔毎に、設計支援システム1に評価対象CADデータを送信するように、あらかじめ設定されている。ここで、時間間隔は、例えば、5分や1時間等の時間による間隔でも良いし、設計で変更を加えた部品の数が所定の数(例えば10)に達する毎等のCADの操作による間隔でも良い。なお、設計支援システム1が、あらかじめ設定された所定の時間間隔毎に、3DCAD装置2にCADデータ要求信号を送信し、CADデータ要求信号を受信した3DCAD装置2は、評価対象CADデータを設計支援システム1に送信するようにしてもよい。以上で説明したように、3DCAD装置2が、適宜設定された所定の時間間隔毎に、設計支援システム1に評価対象CADデータを送信することで、設計支援システム1は、リアルタイムに3DCAD装置2の評価対象CADデータを評価できる。
【0083】
設計支援システム1は、3DCAD装置2から評価対象CADデータを受信すると、設計図評価部11により実行される、設計図評価処理を実行する。すなわち、設計支援システム1は、過去CADデータから変更のある評価対象CADデータを所定時間間隔毎に取得する毎に設計図評価処理を実行する。
【0084】
設計支援システム1は、以下で説明するように、設計図評価処理にて、評価対象CADデータに対するアセンブリグラフ、部品の組立順序、組立容易閾値と、を算出すると、これらを、評価対象CADデータとを対応付けて、CADデータ履歴保管データベース21や組立性評価結果データベース24に、保存する。このため、設計支援システム1は、CADデータ履歴保管データベース21および組立性評価結果データベース24から、過去CADデータ(過去に評価対象CADデータとされたCADデータ)に対するアセンブリグラフ、部品の組立順序、組立容易値(本実施例では、作業空間値および組立時間値)と、評価対象CADデータとを取得できる。この様に、副記憶装置33は、組立容易閾値以下の過去CADデータと、アセンブリグラフとを対応付けて格納している。
【0085】
以下では、
図10-
図15を参照しつつ、
図9を用いて設計図評価処理について説明する。
【0086】
図9は、設計支援システム1の設計図評価処理の一例を示すフローチャートである。
【0087】
設計支援システム1は、3DCAD装置2から受信した評価対象CADデータをCADデータ履歴保管データベース21に保存し、CADデータ履歴保管データベース21から、組立容易な過去CADデータと、そのアッセンブリグラフおよび組立順序を読み出す(ステップS101)。ここで、評価対象CADデータをCADデータ履歴保管データベース21に保存する際に、例えば、次の情報を保存する。;CADデータID。時系列ID。ユニットIDが部品のID。データ分類304が部品属性の値306。データ分類304が部品配置情報の値306。データ分類304が部品構成の値306。
【0088】
また、設計支援システム1は、CADデータ履歴保管データベース21から、組立容易な過去CADデータと、そのアッセンブリグラフおよび組立順序を次のように読み出す。まず、設計支援システム1は、
図6に示す組立性評価結果データベース24から、CADデータID602が、評価対象CADデータと一致し、組立可能性評価604が「可能」であり、かつ、組立容易性評価605が「容易」とされたCADデータのうち、CADデータID603および直近の時系列ID603を抽出する。そして、抽出したCADデータID602および時系列ID603に対応するCADデータ履歴保管データベース21のCADデータの情報(ユニットID303、データ分類304、データ項目305、値306)を読み出す。以上の様に、設計支援システム1は、CADデータ履歴保管データベース21から、組立容易閾値(作業空間値、組立時間値)が組立容易閾値以下(作業空間閾値以下、組立時間閾値以下)の過去CADデータを読み出す。なお、過去CADデータは、組立容易値(作業空間値、組立時間値)が組立容易閾値以下(作業空間閾値以下、組立時間閾値以下)の過去CADデータを読み出す代わりに、CADデータID603が評価対象CADデータと同じで、直近にCADデータ履歴保管データベース21に保存された過去CADデータ(組立容易値の値や組立容易性は問わない)を読み出しても良い。
【0089】
次に、設計支援システム1は、ステップS101にて読み出した過去CADデータと、評価対象CADデータとを比較して、評価対象CADデータにおいて、過去CADデータから変更のある全ての変更部品を検出し、検出した全ての変更部品それぞれの変更部品毎に、並列処理で、変更部品の表面形状等を算出する(ステップS102)。
【0090】
変更部品は、評価対象CADデータにおいて、過去CADデータから変更のある部品である。すなわち、変更部品は、過去CADデータから有意な変更のある部品、削除された部品、または、追加された新規の部品である。設計支援システム1は、ステップS102にて、過去CADデータと、比較対象CADデータとの差分を算出し、差分に基づいて変更部品を検出する。設計支援システム1は、以下に説明するように、変更部品として、新規追加部品と、変更アッセンブリと、移動部品と、回転部品と、サイズ変更部品と、変形部品と、削除部品を検出する。削除部品は、過去CADデータから削除された部品である。なお、変更部品の検出には、例えば、CADデータに含まれる変更履歴を用いてもよい。
【0091】
図10は、変更部品の例を説明する説明図である。
図10には、変更部品の例として、新規追加部品1001、構成変更アッセンブリ1002、移動部品1003、回転部品1004、サイズ変更部品1005、変形部品1006が示されている。
【0092】
新規追加部品1001は、過去CADデータから新たに追加された部品である。
【0093】
構成変更アッセンブリ1002は、過去CADデータから構成が変更されたアッセンブリである。
図10に示す変更前アッセンブリ1002Aは、過去CADデータに含まれるアッセンブリである。変更前アッセンブリ1002Aは、部品A、部品B、部品Cからなる。変更後の構成変更アッセンブリ1002は部品Aと部品Bからなる。構成変更アッセンブリ1002は、変更前アッセンブリ1002Aから部品Cを除いて構成変更アッセンブリ1002とし、部品Cを独立させている。このように、アッセンブリの構成の変更によって独立した部品も、構成変更アッセンブリの一種として変更部品に含める。
【0094】
図10に示す移動部品1003は、2点鎖線で示す部品1003Aから移動された部品である。移動部品は、過去CADデータから位置が距離閾値以上変更された部品である。距離閾値とは、距離に関する閾値である。距離閾値は、例えば、1mmである。
【0095】
図10に示す回転部品1004は、2点鎖線で示す部品1004Aから90度回転させた部品である。回転部品は、過去CADデータから角度閾値以上回転された部品である。角度閾値とは、回転角度の閾値である。角度閾値は、例えば1[deg]である。
【0096】
図10に示すサイズ変更部品1005は、2点鎖線で示す部品1005Aから縮小させた部品である。サイズ変更部品は、過去CADデータからサイズがサイズ閾値以上変更された部品である。サイズ閾値とは、サイズの閾値である。サイズ閾値は、例えば、過去CADデータでの部品サイズを100%とした、評価対象CADデータでの拡大縮小率(例えば1%)としてもよい。また、サイズ閾値は、例えば、過去CADデータでの部品の最も長い辺の変更された長さ(例えば1mm)としてもよい。
【0097】
図10に示す変形部品1006は、中央に穴1006Aが追加された部品である。変形部品は、過去CADデータから変形が加えられた部品である。変形部品における変形には、フィレット、溝、穴の追加などの容積が減少する変形や、突起を追加するボス、リブの追加、1方向の長さの延長などの容積が増加する変形がある。変形部品の検出では、例えば、過去CADデータから部品の変形された箇所で、容積の変化が、容積閾値(例えば、1ml)以上の箇所がある部品を変形部品とする。
【0098】
設計支援システム1は全ての変更部品を以上で説明したように検出すると、次に、設計支援システム1は、評価対象CADデータを用いて、検出した全ての変更部品それぞれの変更部品毎に、並列処理で、変更部品の表面形状等を算出する。
【0099】
図11は、設計支援システム1の並列処置を説明する図である。設計支援システム1のプロセッサ31は複数のコア31aを有し(
図2参照)、並列処理をすることができる。また設計支援システム1は、必要なデータを準備し、複数の計算機やクラウド技術を利用したスケーラブルな形で、並列処理装置3等の仮想マシン上で並列処理してもよい。これにより、設計支援システム1は、より高速に変更部品の表面形状等を算出できる。
【0100】
また、設計支援システム1は、表面形状とともに、評価対象CADデータから、部品の体積や表面積、重心、バウンディングボックス(部品を外包する直方体の8つの頂点の座標)といった部品の形状に関する情報を取得できる。設計支援システム1は、取得した形状等の情報を、CADデータ履歴保管データベース21に保存する。ここで、変更部品毎の表面形状は、CADデータ履歴保管データベース21のデータ項目305が表面座標の値306として保存される。
【0101】
次に、
図9に戻り、設計支援システム1は、ステップS102にて変更部品が1つ以上検出されたか否かを判定する(ステップS103)。評価対象CADデータから変更部品が1つ以上検出されたと判定された場合(ステップS103:YES)はステップS104に進み、評価対象CADデータから変更部品が検出されていないと判定された場合(ステップS103:NO)は、評価対象CADデータは過去評価対象CADデータから変更されていないとみなすことができて、評価対象CADデータを評価する必要がないと考えることができるため、処理を終了する。
【0102】
次に、設計支援システム1は、変更部品表示画面情報をネットワークI/F36に出力し、(全ての)変更部品それぞれの変更部品毎に並列処理で部品間の隣接関係を解析し、アセンブリグラフを生成し、分解順序および組立順序を生成する(ステップS104)。ここで、設計支援システム1は、変更部品表示画面情報をネットワークI/F36(送受信装置)に出力し、ネットワークI/F36に、変更部品表示画面情報を、ネットワークNWを介して3DCAD装置2に送信させる。変更部品表示画面情報は、全ての変更部品を特定する情報と、3DCAD装置2に表示させる変更部品表示画面の構成の情報と、3DCAD装置2に変更部品表示画面を表示させる旨の情報を含む。変更部品表示画面は、評価対象CADデータの組立物を表示するとともに、全ての変更部品を強調して表示する画面である。
【0103】
図12は、3DCAD装置2に表示される変更部品表示画面の一例を示す説明図である。
図12に示すように、変更部品表示画面1200には、評価対象CADデータの組立物801の概略斜視図が示されている。また、
図12に示すように組立物801は、部品702、703、変更部品804、805、806からなる。
図12の変更部品表示画面では、変更部品804、805、806の表面にハッチングを付して、変更部品804、805、806が変更部品であることを強調している。
図12の例では、変更部品にハッチングを付したが、変更部品を強調する方法は適宜変更できる。例えば、変更部品の外形を表す線を太くしてもよいし、変更部品の色を赤などの色にしてもよい。
【0104】
そして、設計支援システム1は、全ての変更部品の変更部品毎に、並列処理で、変更部品から所定隣接距離内にある隣接部品を検出し、公知の技術を用いて変更部品と隣接部品との部品間の隣接関係(部品間の拘束の種類)を、更新部品隣接関係として算出し、更新部品隣接関係をCADデータ履歴保管データベース21に保存する。ここで、設計支援システム1は、並列処理を、ステップS102と同様に行う。
【0105】
また、評価対象CADデータの部品間の隣接関係で、変更部品と隣接部品との部品間の更新部品隣接関係以外の部品間の隣接関係は、過去CADデータの部品間の隣接関係と同様である。そこで、評価対象CADデータの隣接関係で、変更部品と隣接部品との部品間の更新部品隣接関係以外の隣接関係を、CADデータ履歴保管データベース21に保存された過去CADデータの部品間の隣接関係からコピーして、CADデータ履歴保管データベース21の評価CADデータに対する値に保存する。このように、設計支援システム1は、過去CADデータの隣接関係を用いて、評価対象CADデータの部品間の隣接関係を算出することで、より高速に評価対象CADデータの隣接関係を算出できる。
【0106】
さらに、設計支援システム1は、過去CADデータのアセンブリグラフ(部品間の隣接関係を表すグラフ)に、更新部品隣接関係の分を加えて、評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成し、生成したアセンブリグラフを、CADデータ履歴保管データベース21に保存する。設計支援システム1は、例えば、特開2019-209446号公報に開示されている公知の技術を用いて、変更部品と隣接部品との部品間の隣接関係(更新部品隣接関係)を算出して、アセンブリグラフを生成できる。ここで、設計支援システム1は、過去CADデータのアセンブリグラフに基づいて、評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成することで、より高速に評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成することができる。
【0107】
そして、設計支援システム1は、過去CADデータの組立順序と、生成した評価対象CADデータのアセンブリグラフに基づいて、評価対象CADにおける部品の組立順序及び部品毎の組立方向を算出する。ここで、設計支援システム1は、公知の技術と同様に、アセンブリグラフに基づいて、取り外すことができる部品と、その部品の取り外す分解方向を解析して、部品に分解する分解順序を解析し、さらに、分解順序を逆にたどって、部品から組み立てる組立順序と組立方向を生成する。公知の技術は、例えば、特開2012-14569号公報およびWO2015/177855A1公報に開示されている。
【0108】
設計支援システム1は、過去CADデータの組立順序を用いることで、評価対象CADにおける部品の組立順序及び部品毎の組立方向をより高速に算出できる。本実施例では、設計支援システム1は、例えば、評価対象CADにおける部品の組立順序及び部品毎の組立方向を次の様に算出する。
【0109】
設計支援システム1は、1つの変更部品とその隣接部品に関する組立順序を次のように算出する。設計支援システム1は、過去CADデータの組立順序の部品の並び順において、最も前にある隣接部品を開始部品とし、最も後ろにある隣接部品を終了部品とする。そして、設計支援システム1は、開始部品から終了部品にかけての部品および変更部品の、分解順序および分解方向を、評価対象CADデータのアセンブリグラフを用いて算出し、分解順序を逆にした組立順序と、分解方向を逆にした組立方向を算出する。
【0110】
ここで、設計支援システム1は、評価対象CADにおける部品の分解順序を算出する過程で、周囲の部品と干渉する部品を検出し、周囲の部品と干渉する部品が検出された場合には、分解順序を、周囲の部品と干渉する部品まで生成する。そして、周囲の部品と干渉する部品を組み立てることができない組立不可能部品とし、組立不可能部品の部品IDを保存する。また、分解順序を逆にした組立順序も、周囲の部品と干渉する部品まで生成する。
【0111】
なお、複数の更新部品が、互いに所定距離内にあり、隣接関係が拘束しあう関係にある複数の更新部品をまとめて、変更部品および隣接部品の組立順序および組立方向を算出する。
【0112】
例えば、過去CADデータの組立順序の一部で、部品P1~P5の順番が、「P1->P2->P3->P4->P5」であり、互いに拘束しあう関係にある更新部品N1、N2の隣接部品がP2およびP4であったとする。設計支援システム1は、隣接部品P2から隣接部品P4にかけての部品に、更新部品N1、N2を加えた部品(すなわち、隣接部品P2、P3、P4、更新部品N1、N2)の組立順序および組立方向を算出する。
【0113】
以上で説明したように、設計支援システム1は、変更部品毎に、変更部品および変更部品の周囲にある部品(開始部品から終了部品にかけての部品)の組立順序および組立方向を算出すると、算出した組立順序および組立方向と、過去CADデータの組立順序および組立方向とを併せて、評価対象CADデータの組立順序および組立方向を生成し、保存する。ここで、評価対象CADデータの組立順序は、CADデータ履歴保管データベース21のユニットIDが「組立順序」の値306に保存する。上述したが、分解順序および組立順序を算出する過程で、組立不可能部品が検出された場合には、組立不可能部品の部品IDを保存する。
【0114】
次に、
図9に戻り、設計支援システム1は、ステップS104にて評価対象CADデータに組立可能性があるか否かを判定する(ステップS105)。評価対象CADデータに組立可能性があると判定された場合(ステップS105:YES)はステップS107に進み、評評価対象CADデータに組立可能性がないと判定された場合(ステップS105:NO)は、ステップS106に進む。
【0115】
なお、設計支援システム1が、ステップS104にて組立順序が生成できた場合には、ステップS105にて評価対象CADデータに組立可能性があると判定する。一方、設計支援システム1が、ステップS104にて組立順序が生成できない場合には、組立不可能部品の部品IDが保存されており、ステップS105にて評評価対象CADデータに組立可能性がないと判定する。
【0116】
次に、設計支援システム1は、評価対象CADデータは組み立てが可能ではない旨と、組立不可能部品を特定する情報及び組立不可能部品を強調して表示させる旨とを含む組立不可能部品強調表示情報をネットワークI/F36に出力し、処理を終了する(ステップS106)。ここで、設計支援システム1は、組立不可能部品強調表示情報をネットワークI/F36(送受信装置)に出力し、ネットワークI/F36に、組立不可能部品強調表示情報を、ネットワークNWを介して3DCAD装置2に送信させる。
【0117】
組立不可能部品強調表示情報は、組立不可能部品を特定する情報と、3DCAD装置2に表示させる組立不可能部品強調表示画面の構成の情報と、3DCAD装置2に組立不可能部品強調表示画面を表示させる旨の情報を含む。組立不可能部品強調表示画面は、評価対象CADデータの組立物を表示するとともに、組立不可能部品を強調して表示する画面である。
【0118】
図13は、3DCAD装置2に表示される組立不可能部品強調表示画面の一例を示す説明図である。
図13に示すように、組立不可能部品強調表示画面1300には、組立不可能メッセージ1301と、
図8と同様に、評価対象CADデータの組立物1302の概略斜視図が示されている。組立不可能メッセージ1301には、評価対象CADデータでは組み立てが可能ではない旨が提示されている。
【0119】
また、
図13に示すように組立物1302は、部品702、703、変更部品804、1305、806からなる。そして、変更部品1305は、ねじであり、組立不可能部品である。
図13の組立不可能部品強調表示画面では、組立不可能部品である組立不可能部品(変更部品)1305の表面にハッチングを付して、変更部品1305が組立不可能部品であることを強調している。
図13の例では、組立不可能部品にハッチングを付したが、組立不可能部品を強調する方法は適宜変更できる。例えば、組立不可能部品の外形を表す線を太くしてもよいし、組立不可能部品の色を赤などの色にしてもよい。
【0120】
また、変更部品1305の雄ねじ部の軸方向の長さはdである。変更部品1305を取り付けるために必要となる変更部品804と部品702との間の距離は0.7dである。従って、変更部品1305を取り付けることができない。
図13の例では、評価対象CADデータの組立順序を生成した結果として、ネジ(変更部品1305)を使って変更部品804を部品703にねじ止めしようとする際に、ネジ(変更部品1305)が部品702と干渉して組立が不可となることを示している。製品設計者は、
図13に例を示す組立不可能部品強調表示画面に基づいて、ネジ(変更部品1305)を取り付けることができるように、部品702の形状を修正する等、修正すべき部品を容易に把握して設計図であるCADデータを修正できる。
【0121】
次に、
図9に戻り、設計支援システム1は、変更部品から所定空間距離内にある周辺部品毎に、並列処理で作業スペースを検証し、作業空間値を算出する(ステップS107)。ここで、評価対象CADデータにおいて、全ての変更部品のそれぞれの変更部品に対して、変更部品毎に、並列処理で、次のように作業スペースが問題となる干渉部品を検出する。そして、設計支援システム1は、干渉部品が検出された周辺部品および変更部品の数を、作業空間値として算出する。従って、作業空間値は、作業スペースの確保が容易ではない部品の数を表す。また、設計支援システム1は、並列処理を、ステップS102と同様に行う。
【0122】
まず、設計支援システム1は、変更部品から所定周辺距離内にある周辺部品を検出する。そして、設計支援システム1は、周辺部品および変更部品のうちの部品1つを、作業空間検証部品に設定する。次に、設計支援システム1は、作業空間検証部品よりも組立順序が前の部品は存在するとともに、作業空間検証部品よりも組立順序が後の部品は存在しない状態を設定する。設計支援システム1は、この状態において、作業空間検証部品の表面形状を、表面形状に作業スペースを加えた作業スペース拡張形状にして、作業空間検証部品と干渉する干渉部品を検出し、干渉部品が検出された作業空間検証部品を特定する情報(部品のID等)を保存する。この様な干渉部品の検出を、周辺部品および変更部品のうちの部品1つ毎にくり返し行い、全ての周辺部品および変更部品に対して干渉部品の検出を行う。
【0123】
ここで、作業スペースは、作業空間検証部品の部品種別(ねじ、組立部品等)を、CADデータ履歴保管データベース21から抽出し、抽出した部品種別から組立容易性定義種別を、「作業スペース、部品種別」(例えば、「作業スペース、ねじ」)に設定する。そして、組立容易性定義データベース22(
図4参照)から、設定した組立容易性定義種別に対応付けられた値404を抽出して作業スペースとする。また、設計支援システム1は、作業空間検証部品の表面形状に、作業空間検証部品の組立方向を考慮して、作業スペースを加えて、作業スペース拡張形状を算出する。例えば、作業空間検証部品がねじの場合には、雄ねじ部の軸方向が組立方向となり、雄ねじ部の軸方向がどの方向(例えば、水平方向か、鉛直方向か)を考慮して、作業スペースをねじ(作業空間検証部品)に加える。
【0124】
次に、設計支援システム1は、ステップS107にて算出した作業空間値が作業空間閾値以下か否かを判定する(ステップS108)。作業空間値が作業空間閾値以下(作業空間値≦作業空間閾値)と判定された場合(ステップS108:YES)はステップS110に進み、作業空間値が作業空間閾値よりも大きい(作業空間値>作業空間閾値)と判定された場合(ステップS108:NO)は、ステップS109に進む。なお、上述した様に、ステップS107にて算出した作業空間値は、作業スペースの確保が容易ではない部品の数を表す。作業空間域値は、「0」である。作業空間値が作業空間閾値以下(作業空間値≦0)と判定された場合(ステップS108:YES)には、全ての部品で作業スペースを容易に確保できると考えることができる(作業スペースの確保が容易ではない部品の数は0)。
【0125】
次に、設計支援システム1は、評価対象CADデータが作業空間に関して組み立が容易ではない旨と、干渉部品が検出された周辺部品および変更部品を特定する情報及び干渉部品が検出された周辺部品および変更部品を強調して表示させる旨とを含む作業空間不足部品強調表示情報をネットワークI/F36に出力し、処理を終了する(ステップS109)。ここで、設計支援システム1は、作業空間不足部品強調表示情報をネットワークI/F36(送受信装置)に出力し、ネットワークI/F36に、作業空間不足部品強調表示情報を、ネットワークNWを介して3DCAD装置2に送信させる。
【0126】
作業空間不足部品強調表示情報は、干渉部品が検出された周辺部品および変更部品を特定する情報と、3DCAD装置2に表示させる作業空間不足部品強調表示画面の構成の情報と、3DCAD装置2に作業空間不足部品強調表示画面を表示させる旨の情報を含む。作業空間不足部品強調表示画面は、評価対象CADデータの組立物を表示するとともに、干渉部品が検出された周辺部品および変更部品を強調して表示する画面である。
【0127】
図14は、3DCAD装置2に表示される作業空間不足部品強調表示画面の一例を示す説明図である。
図14に示すように、作業空間不足部品強調表示画面1400には、作業空間不足メッセージ1401と、
図8と同様に、評価対象CADデータの組立物1402の概略斜視図が示されている。作業空間不足メッセージ1401には評価対象CADデータが作業空間に関して組み立が容易ではない旨が提示されている。また、作業空間不足メッセージ1401には、干渉部品が検出された周辺部品および変更部品の作業スペースに関する組立容易性定義データを識別するための情報を含めても良い。また、
図14に示すように組立物1402は、部品702、703、変更部品804、1405、806からなる。そして、変更部品1405は、ねじであり、干渉部品が検出された変更部品である。
図14の作業空間不足部品強調表示画面では、干渉部品が検出された変更部品である変更部品1405の表面にハッチングを付して、変更部品1405が、干渉部品が検出された変更部品であることを強調している。
図14の例では、干渉部品が検出された(周辺部品および)変更部品にハッチングを付したが、干渉部品が検出されたる部品を強調する方法は適宜変更できる。例えば、干渉部品が検出された部品の外形を表す線を太くしてもよいし、干渉部品が少検出された部品の色を赤などの色にしてもよい。
【0128】
また、変更部品1405の雄ねじ部の軸方向の長さはdである。変更部品1405を取り付けるために必要となる変更部品804と部品702との間の距離は1.2dで、変更部品1405の雄ねじ部の軸方向の長さはdよりも長い。しかし、変更部品1405の作業スペースを考慮した場合には、変更部品1405を取り付けることができない。製品設計者は
図14に例を示す作業空間不足部品強調表示画面に基づいて、ネジ(変更部品1405)を取り付けることができるように、部品702の形状を修正する等、修正すべき部品を容易に把握して設計図であるCADデータを修正できる。さらに、設計者は、組立容易性定義データの設定値を見直すといった対応を取ることができる。
【0129】
次に、
図9に戻り、設計支援システム1は、評価対象CADデータを、複数の部品からなる複数の組立評価3Dモデルに分割し、組立評価3Dモデル毎の組付時間を組立実績データベース23に基づいて算出し、算出した組付時間の総和を組立時間値として算出する(ステップS110)。ここで、評価対象CADデータを分割して算出される全ての組立評価3Dモデルを一組にして、組立評価3Dモデルセットとする。
【0130】
設計支援システム1は、例えば特開2013-114484に記載されている技術を用いて、評価対象CADデータを、組立実績データベース23に保存された、複数の部品からなる複数の組立評価3Dモデルに分割することができる。
【0131】
設計支援システム1は、例えば次のように、評価対象CADデータを、複数の組立評価3Dモデルに分割することができる。以下では、例として、評価対象CADデータを、締結部品と、被締結部品と、固定部品とを一組にまとめた組立評価3Dモデルに分割する。まず、評価対象CADデータの締結部品(ねじ等)を抽出し、抽出した締結部品によって締結された被締結部品および締結部品を保持する固定部品(雌ねじ部を有する部品等)を、アセンブリグラフを用いて検出する。そして、締結部品と、被締結部品と、固定部品とを一組にして組立評価3Dモデルとする。設計支援システム1は、この様に組立評価3Dモデルを算出することを繰り返して、評価対象CADデータを、複数の組立評価3Dモデルに分割することができる。
【0132】
ここで、設計支援システム1は、ステップS104において、更新部品と拘束しあう隣接部品を算出した。そこで、設計支援システム1は、更新部品と拘束しあう隣接部品に対して、締結部品と、被締結部品と、固定部品とを一組にした変更部品に関する組立評価3Dモデルを生成する。この様な、変更部品に関する組立評価3Dモデルは、評価対象CADデータと過去CADデータとの差分に関する組立評価3Dモデルであると考えることができる。
【0133】
そして、設計支援システム1は、CADデータ履歴保管データベース21に保存された過去CADデータの組立評価3Dモデルの構成の情報と、上記の様に生成した変更部品に関する組立評価3Dモデルの情報を統合して、評価対象CADデータの組立評価3Dモデルセットを算出する。さらに、設計支援システム1は、評価対象CADデータの組立評価3DモデルセットをCADデータ履歴保管データベース21に保存する。
【0134】
さらに、設計支援システム1は、組立評価3Dモデルセットの組立評価3Dモデル毎に、組立実績データベース23を参照して、組立評価3Dモデルと同じ構成をもつ組立3Dモデルに対応づけられた組立時間を抽出し、保存する。そして、全ての組立評価3Dモデルの組立時間の総和を組立時間値として算出する。組立時間値は、評価対象CADデータの組立物を部品から組み立てるためにかかる時間の推定時間となる。
【0135】
例えば、評価対象CADデータが
図5の組立実績データベース23に記載されている3Dモデル3と3Dモデル5を組み合わせて構成されていると判断された場合、評価対象CADデータの組立時間値は1+0.5=1.5(h)であると算出される。
【0136】
次に、
図9に戻り、設計支援システム1は、ステップS110にて算出した組立時間値が組立時間閾値以下か否かを判定する(ステップS111)。組立時間値が組立時間閾値以下(組立時間値≦組立時間閾値)と判定された場合(ステップS111:YES)は、CADデータが、組立容易値に関して組み立が容易と評価された(判定された)こと等を組立性評価結果データベース24に保存して、組立容易値が処理を終了する。一方、組立時間値が組立時間閾値よりも大きい(組立時間値>組立時間閾値)と判定された場合(ステップS111:NO)は、ステップS112に進む。
【0137】
なお、上述した様に、S110にて算出した組立時間値は、評価対象CADデータの組立物を部品から組み立てるためにかかる時間の推定時間を表す。組立容易性定義データベース22の組み立て容易性定義種別が「組立時間域値」の値が組立時間域値である。設計支援システム1は、組立時間域値を、組立容易性定義データベース22から読み出す。組立時間値が組立時間閾値以下(組立時間値≦組立時間閾値)と判定された場合(ステップS111:YES)には、評価対象CADデータの組組立物を部品から組み立てるためにかかる時間は十分短いと考えることができ、かつ、対象とするCADデータの組立物を部品から容易に組み立てることができると考えることができる。一方、組立時間値が組立時間閾値よりも大きい(組立時間値>組立時間閾値)と判定された場合(ステップS111:NO)は、評価対象CADデータの組組立物を部品から組み立てるためにかかる時間は長すぎると考えることができる。
【0138】
次に、設計支援システム1は、評価対象CADデータが組立時間値に関して組み立が容易ではない旨と、全ての変更部品を強調して表示させる旨とを含む組立時間不足情報をネットワークI/F36に出力し、処理を終了する(ステップS112)。ここで、設計支援システム1は、組立時間不足情報をネットワークI/F36(送受信装置)に出力し、ネットワークI/F36に、組立時間不足情報を、ネットワークNWを介して3DCAD装置2に送信させる。
【0139】
組立時間不足情報は、全ての変更部品を特定する情報と、3DCAD装置2に表示させる組立時間不足表示画面の構成の情報と、3DCAD装置2に組立時間不足表示画面を表示させる旨の情報を含む。組立時間不足表示画面は、評価対象CADデータの組立物を表示するとともに、全ての変更部品を強調して表示する画面である。
【0140】
図15は、3DCAD装置2に表示される組立時間不足表示画面の一例を示す説明図である。
図15に示すように、組立時間不足表示画面1500には、組立時間不足メッセージ1501と、
図8と同様に、評価対象CADデータの組立物1502の概略斜視図が示されている。組立時間不足メッセージ1501には評価対象CADデータが組立時間に関して組み立が容易ではない旨が提示されている。組立時間不足メッセージ1501に、組立時間閾値や、組立時間値の値を含めても良い。
【0141】
また、
図15に示すように組立物1502は、部品702、703、変更部品804、805、806からなる。
図15の組立時間不足表示画面では、全ての変更部品804、805、806の表面にハッチングを付して、変更部品を強調して提示している。
図15の例では、変更部品にハッチングを付したが、変更部品を強調する方法は適宜変更できる。例えば、変更部品の外形を表す線を太くしてもよいし、変更部品の色を赤などの色にしてもよい。
【0142】
製品設計者は
図15に例を示す組立時間不足表示画面に基づいて、製品設計者は評価対象データの部品の形状や部品構成の見直しや、部品追加といった見直を行って、設計図であるCADデータを修正できる。さらに、設計者は、組立容易性定義データの設定値を見直すといった対応を取ることができる。
【0143】
このように、実施例において、設計支援システム1は、製品設計者の設計作業と並行して、組立可能性の判定(ステップS105)および組立容易値を算出(ステップS107、S110)し、設計段階で修正すべき点について早期にフィードバックを行う(ステップS106、S109、S112)ことができる。従って、設計支援システム1は、3次元CADで好適な設計図を作成することを容易にする。
【0144】
また、設計支援システム1は、過去CADデータから変更のある評価対象CADデータを所定時間間隔毎に取得する毎に、評価対象CADデータに組立可能性があるか否かを判定する(ステップS105)。そして、設計支援システム1は、組立容易値(作業空間値、組立時間値)が、組立容易閾値(作業空間閾値、組立時間閾値)よりも大きいと判定された場合(ステップS108、S111)に、評価対象CADデータが組立容易値に関して組み立が容易ではない旨を出力する(ステップS109、S112)。設計支援システム1は、所定時間間隔を十分短く設定して、評価対象CADデータの修正箇所を少なくすることができる。これにより、製品設計者は、リアルタイムで評価対象CADデータを評価でき、かつ、製品設計者は、評価対象CADデータの修正箇所を容易に特定できる。
【0145】
また、設計支援システム1は、過去に作成された過去CADデータのアセンブリグラフを用いて、評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成する。これにより、評価対象CADデータに組立可能性があるか否かをより高速に判定できる。
【0146】
また、設計支援システム1は、変更部品に基づいて、組立容易値(作業空間閾値、組立時間閾値)を算出する(ステップS107、S110)。これにより、設計支援システム1は、組立容易値(作業空間閾値、組立時間閾値)をより高速に算出できる。
【0147】
また、設計支援システム1は、過去CADデータに対して追加された新規追加部品と、過去CADデータから構成が変更された構成変更アッセンブリと、過去CADデータから位置が距離閾値以上変更された移動部品と、過去CADデータから角度閾値以上回転された回転部品と、過去CADデータからサイズがサイズ閾値以上変更されたサイズ変更部品と、過去CADデータから変形が加えられた変形部品と、過去CADデータから削除された削除部品とを、変更部品とする。これにより、設計支援システム1は、適切に変更部品を検出できる。
【0148】
また、設計支援システム1は、評価対象CADデータにおける分解順序を算出する過程で組立不可能部品を検出し(ステップS104)、組立不可能部品が検出された場合には、評価対象CADデータに組立可能性がないと判定する(ステップS105)。これにより、設計支援システム1は、組立可能性を適切に判定できる。
【0149】
また、設計支援システム1は、組立可能性がないと判定された場合(ステップS105:NO)には、評価対象CADデータは組み立てが可能ではない旨と、組立不可能部品を特定する情報及び組立不可能部品を強調して表示させる旨とを含む組立不可能部品強調表示情報を出力する(ステップS106、
図13)。これにより、製品設計者は、評価対象CADデータの修正箇所を容易に把握できる。
【0150】
また、設計支援システム1は、組立容易値が組立容易閾値以下の過去CADデータ(ステップS101)に基づいて、全ての変更部品およびその形状を算出し(ステップS102)、全ての変更部品に対して更新部品隣接関係を算出し(ステップS104)、組立容易値が組立容易閾値以下の過去CADデータのアセンブリグラフと、更新部品隣接関係に基づいて、評価対象CADデータのアセンブリグラフを生成する(ステップS104)。これにより、設計支援システム1は、変更部品の形状の算出および評価対象CADデータのアセンブリグラフの生成を、確実に行うことができる。また、設計支援システム1は、評価対象CADデータのアセンブリグラフの生成を、より高速に行うことができる。
【0151】
また、設計支援システム1は、変更部品毎に、並列処理で、変更部品の形状を算出し(ステップS102)、変更部品毎に、並列処理で、変更部品から所定距離内にある隣接部品との隣接関係を更新部品隣接関係として算出する(ステップS104)。これにより、設計支援システム1は、変更部品の形状及び更新部品隣接関係の算出をより高速に行うことができる。
【0152】
また、設計支援システム1は、組立容易値として、作業空間値を含み、作業空間値が、作業空間閾値よりも大きいと判定された場合(ステップS108:NO)には、評価対象CADデータが作業空間に関して組み立が容易ではない旨を出力する(ステップS109)。これにより、製品設計者は、評価対象CADデータの組立物が、作業空間に関して組み立が容易ではない旨を容易に把握できる。
【0153】
また、設計支援システム1は、変更部品毎に、並列処理で、変更部品の周辺部品および変更部品に関する干渉部品を検出する(ステップS107)。これにより、設計支援システム1は、より高速に作業空間値を算出できる。
【0154】
また、設計支援システム1は、評価対象CADデータが作業空間に関して組み立が容易ではない旨と、干渉部品が検出された周辺部品および変更部品を特定する情報及び干渉部品が検出された周辺部品および変更部品を強調して表示させる旨とを含む作業空間不足部品強調表示情報を出力する(ステップS109、
図14)。これにより、製品設計者は、評価対象CADデータの修正箇所を容易に把握できる。
【0155】
また、設計支援システム1は、組立容易値として組立時間値を含み、組立容易値が、組立時間閾値よりも大きいと判定された場合(ステップS111:NO)には、評価対象CADデータが組立時間値に関して組み立が容易ではない旨を出力する(ステップS112)。これにより、製品設計者は、評価対象CADデータが、組立時間の点で、組み立てが容易でないことをより早く把握して、評価対象CADデータを修正できる。
【0156】
また、設計支援システム1は、評価対象CADデータが組立時間値に関して組み立が容易ではない旨と、全ての変更部品を強調して表示させる旨とを含む組立時間不足情報を出力する(ステップS112、
図15)。これにより、製品設計者は、評価対象CADデータの修正箇所を容易に把握できる。
【0157】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。