(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102847
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20230719BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 180
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003545
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】川本 哲裕
(72)【発明者】
【氏名】田村 亨
(72)【発明者】
【氏名】服部 将之
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA11
5G066HB03
(57)【要約】
【課題】各方式を採用する分散形電源の接続状況を分析する分析装置を提供する。
【解決手段】分析装置A1において、電圧センサ9から入力される電圧信号に基づいて電圧瞬時値の周波数fを検出する周波数検出部41と、周波数fの変動に基づいて電圧フリッカの発生を判断し、かつ、電圧フリッカ発生時の周波数fの変動に基づいて、無効電力を注入する従来型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である従来型電源B1および新型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である新型電源B2の配電系統Cでの接続状況を検出する分析部32とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧センサから入力される電圧信号に基づいて電圧瞬時値の第1周波数を検出する第1周波数検出部と、
前記第1周波数の変動に基づいて電圧フリッカの発生を判断し、かつ、電圧フリッカ発生時の前記第1周波数の変動に基づいて、無効電力を注入する従来型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である従来型電源および新型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である新型電源の配電系統での接続状況を検出する分析部と、
を備えていることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記第1周波数の変化量を検出する変化量検出部と、
前記変化量から上限周波数以下の周波数成分だけを抽出するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタによる抽出後の変化量の第1単位時間でのピークトゥピーク値である第1PP値を検出する第1PP値検出部と、
をさらに備え、
前記分析部は、前記第1PP値に基づいて、前記接続状況を検出する、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記電圧信号に基づいて電圧の大きさを検出する電圧検出部をさらに備え、
前記分析部は、電圧フリッカ発生時の前記第1周波数の変動、および、前記電圧の大きさの変動に基づいて、前記接続状況を検出する、
請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記電圧の大きさの第2単位時間でのピークトゥピーク値である第2PP値を検出する第2PP値検出部と、
前記電圧の大きさの変動の周波数である第2周波数を検出する第2周波数検出部と、
前記第2PP値と前記第2周波数とから指標値を算出する指標値算出部と、
をさらに備え、
前記分析部は、前記指標値に基づいて、前記接続状況を検出する、
請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
電圧センサから入力される電圧信号に基づいて電圧の大きさを検出する電圧検出部と、
前記電圧の大きさの変動に基づいて電圧フリッカの発生を判断し、かつ、電圧フリッカ発生時の前記電圧の大きさの変動に基づいて、無効電力を注入する従来型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である従来型電源および新型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である新型電源の配電系統での接続状況を検出する分析部と、
を備えていることを特徴とする分析装置。
【請求項6】
前記分析部は、電圧フリッカの収束時の前記第1周波数の変動または前記電圧の大きさの変動の変化の仕方に基づいて、前記接続状況を検出する、
請求項1ないし5のいずれかに記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分散形電源を電力系統に接続する場合、分散形電源のパワーコンディショナは、単独運転を防止するための単独運転検出装置を備えている必要がある。単独運転とは、分散形電源が接続された配電系統が電力系統から切り離された場合に、分散形電源が配電系統の負荷に電力の供給を継続することである。単独運転検出装置は、単独運転を検出した場合、分散形電源を配電系統から切り離して、分散形電源から負荷への電力の供給を停止させる。単独運転の検出方法には受動方式と能動方式とがあり、様々な検出方法が開発されている。
【0003】
系統連系規程(JEAC 9701-2016)では、単独運転の能動方式の検出方法として、周波数シフト方式、スリップモード周波数シフト方式、無効電力変動方式、およびQCモード周波数シフト方式などが認められている。これらの方式は、従来型能動的方式と呼ばれている。系統連系規程では、従来型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、0.5秒以上1秒以内(低圧配電線との連系の場合)にパワーコンディショナを配電系統から切り離すように定められている。また、系統連系規程では、従来型能動的方式より検出を高速化させた方式として、ステップ注入付き周波数フィードバック方式が認められている。当該方式は、新型能動的方式と呼ばれている。系統連系規程では、新型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、パワーコンディショナを配電系統から瞬時に切り離すように定められており、一般的には、0.1秒以上0.2秒以内に切り離すように設定されている。これらの各方式は、配電系統に積極的に無効電力を代表とする能動信号を注入し、検出された周波数の変化に応じて単独運転を検出する。したがって、配電系統に多数の分散形電源が接続されている場合、配電系統には大量の無効電力が注入される。また、無効電力の注入量は、周波数偏差に応じて増加される。したがって、系統擾乱時に各分散形電源が無効電力の注入量を増加させることで、系統電圧が振動し、電圧フリッカ現象が発生する場合がある。
【0004】
電圧フリッカ現象の発生を抑制するための対策として、無効電力の注入量を抑制可能な単独運転検出装置が開発されている。例えば、特許文献1には、単独運転の可能性が低い場合に無効電力の注入量を抑制する単独運転検出装置が開示されている。また、特許文献2には、遅れ位相の無効電力と進み位相の無効電力とを交互に注入し、系統周波数の移動平均値の変化量の絶対値を積算した積算値に基づいて単独運転を検出することで、無効電力の注入量を低減しつつ、単独運転の誤検出や検出遅延を防止できる単独運転検出装置が開示されている。しかしながら、特許文献1、2に開示された単独運転検出装置は、注入量を抑制しているが、無効電力の注入を行っている。したがって、これらの単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを用いた場合でも、電圧フリッカ現象が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-93020号公報
【特許文献2】特開2019-92328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電圧フリッカ現象が発生しやすい配電系統か否かは、各方式を採用する分散形電源の接続状況を把握することで確認できる。しかしながら、このような接続状況を把握する方法は、従来提案されていなかった。
【0007】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、各方式を採用する分散形電源の接続状況を分析する分析装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面によって提供される分析装置は、電圧センサから入力される電圧信号に基づいて電圧瞬時値の第1周波数を検出する第1周波数検出部と、前記第1周波数の変動に基づいて電圧フリッカの発生を判断し、かつ、電圧フリッカ発生時の前記第1周波数の変動に基づいて、無効電力を注入する従来型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である従来型電源および新型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である新型電源の配電系統での接続状況を検出する分析部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記分析装置は、前記第1周波数の変化量を検出する変化量検出部と、前記変化量から上限周波数以下の周波数成分だけを抽出するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタによる抽出後の変化量の第1単位時間でのピークトゥピーク値である第1PP値を検出する第1PP値検出部とをさらに備え、前記分析部は、前記第1PP値に基づいて、前記接続状況を検出する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記分析装置は、前記電圧信号に基づいて電圧の大きさを検出する電圧検出部をさらに備え、前記分析部は、電圧フリッカ発生時の前記第1周波数の変動、および、前記電圧の大きさの変動に基づいて、前記接続状況を検出する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記分析装置は、前記電圧の大きさの第2単位時間でのピークトゥピーク値である第2PP値を検出する第2PP値検出部と、前記電圧の大きさの変動の周波数である第2周波数を検出する第2周波数検出部と、前記第2PP値と前記第2周波数とから指標値を算出する指標値算出部とをさらに備え、前記分析部は、前記指標値に基づいて、前記接続状況を検出する。
【0013】
本発明の第2の側面によって提供される分析装置は、電圧センサから入力される電圧信号に基づいて電圧の大きさを検出する電圧検出部と、前記電圧の大きさの変動に基づいて電圧フリッカの発生を判断し、かつ、電圧フリッカ発生時の前記電圧の大きさの変動に基づいて、無効電力を注入する従来型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である従来型電源および新型能動的方式の単独運転検出装置を有する分散形電源である新型電源の配電系統での接続状況を検出する分析部とを備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記分析部は、電圧フリッカの収束時の前記第1周波数の変動または前記電圧の大きさの変動の変化の仕方に基づいて、前記接続状況を検出する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、分析部は、電圧フリッカ発生時の第1周波数の変動に基づいて、配電系統における従来型電源および新型電源の接続状況を検出する。これにより、本発明に係る分析装置は、接続状況を分析できる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る分析装置を説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示す図である。
【
図2】第1検出部のシミュレーション結果を示す波形図である。
【
図3】安定状態での周波数PP値と接続状況との関係の概略を示す図である。
【
図5】第2検出部のシミュレーション結果を示す波形図である。
【
図6】安定状態での指標値ΔV
Xと接続状況との関係の概略を示す図である。
【
図7】全体容量と新型割合との対応関係を示すための図である。
【
図8】第2実施形態に係る分析装置を説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る分析装置A1を説明するためのブロック図であり、配電系統Cの全体構成を示している。
【0020】
配電系統Cは、高圧配電系統であり、負荷L、従来型電源B1、新型電源B2、および電圧センサ9が接続されている。負荷Lは、電力の供給を受ける需要家である。従来型電源B1は、従来型能動的方式のうち検出のために無効電力を注入するタイプの単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。無効電力を注入する従来型能動的方式には、例えば、周波数シフト方式、スリップモード周波数シフト方式などがある。従来型電源B1は、周波数変動に対して正帰還で周波数をシフトさせるように無効電力を注入する。なお、従来型電源B1の単独運転検出装置の検出方式は限定されない。新型電源B2は、新型能動的方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。配電系統C(および変圧器を介して配電系統Cに接続された低圧配電系統)には、負荷L、従来型電源B1、および新型電源B2がそれぞれ複数ずつ接続されている。なお、
図1においては、負荷Lは、代表して1個だけ記載している。配電系統Cは、遮断器を介して電力系統に接続されている。電力系統で事故が発生した場合などに、電力系統側に設けられた保護装置によって遮断器が開放されて、配電系統Cが電力系統から切り離される(停電状態)。これにより、電力系統から切り離された配電系統Cに接続している各パワーコンディショナが単独運転状態になる。
【0021】
電圧センサ9は、配電系統Cの電圧を検出し、検出した電圧信号を分析装置A1に入力する。なお、電圧センサ9の配置位置は限定されない。また、電圧センサ9は、分析装置A1の専用でなくてもよく、いずれかの従来型電源B1または新型電源B2のパワーコンディショナの制御用の電圧センサを利用してもよいし、配電系統Cに接続されたその他の電力機器の電圧センサを利用してもよい。
【0022】
分析装置A1は、電圧フリッカが発生したときに、配電系統Cにおける従来型電源B1および新型電源B2の接続状況を分析する。具体的には、分析装置A1は、電圧センサ9から入力される電圧信号に基づいて配電系統Cの電圧(以下では、「系統電圧」とする)の電圧実効値と、系統電圧の周波数(電圧瞬時値の周波数であり、以下では、「系統周波数」とする)とを検出し、電圧フリッカが発生したときの電圧実効値および系統周波数の変動に基づいて、配電系統Cにおける従来型電源B1および新型電源B2の接続状況を分析する。
【0023】
単独運転検出装置が能動信号(例えば無効電力)を注入することに起因する電圧フリッカは、配電系統Cにおいて電圧変動(電圧実効値の変動)を発生させ、また、系統周波数の変動も発生させる。従来型電源B1および新型電源B2の接続状況によって、電圧フリッカ発生時の電圧変動および系統周波数変動の態様は変わってくる。接続状況は、配電系統Cに接続され稼働している従来型電源B1と新型電源B2との割合である。本実施形態では、接続状況を、従来型電源B1および新型電源B2(以下では区別せずにまとめて示す場合、「稼働電源B」と記載する)の全体容量に対する新型電源B2の合計容量の割合(以下では、「新型割合」とする)で示す。なお、接続状況は、稼働電源Bの全体容量に対する従来型電源B1の合計容量の割合(以下では、「従来型割合」とする)で示してもよい。分析装置A1は、接続状況によって電圧フリッカ発生時の電圧変動および系統周波数変動の態様が変わるという特性を利用して、電圧フリッカ発生時の電圧変動および系統周波数変動に基づいて、接続状況を検出する。
【0024】
分析装置A1は、制御部1、入力部2、記憶部3、および表示部4を備えている。
【0025】
入力部2は、入力ポートによって実現されており、電圧センサ9が検出した電圧信号を受け付け、デジタル信号に変換して、制御部1に出力する。
【0026】
記憶部3は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクなどのメモリによって実現されており、各種プログラムおよびデータがあらかじめ記憶されている。なお、記憶部3に記憶された各種プログラムおよびデータは、読み取り可能な記憶媒体に記憶された各種プログラムおよびデータを読み出して記憶したものであってもよいし、通信回線を介して外部のコンピュータからダウンロードして記憶したものであってもよい。また、記憶部3は、後述するように、制御部1が接続状況を分析するためのデータも記憶している。
【0027】
表示部4は、ディスプレイを備えており、制御部1から入力される分析結果を、当該ディスプレイに表示する。
【0028】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)などによって実現されており、分析装置A1の制御を行う。制御部1は、記憶部3に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、制御処理を行う。本実施形態では、制御部1は、制御プログラムに応じた演算処理を行って、入力部2から入力される電圧信号に基づいて接続状況を分析し、分析結果を表示部4に表示させる。制御部1は、機能構成として、周波数検出部41、変化量検出部42、ローパスフィルタ43、PP値検出部44、実効値検出部51、PP値検出部52、周波数検出部53、指標値算出部54、線路インピーダンス設定部31、および分析部32を備えている。周波数検出部41、変化量検出部42、ローパスフィルタ43、およびPP値検出部44は、系統周波数の変動を示す情報を検出するための構成であり、まとめて示す場合、「第1検出部49」と記載する。実効値検出部51、PP値検出部52、周波数検出部53、および指標値算出部54は、電圧実効値の変動を示す情報を検出するための構成であり、まとめて示す場合、「第2検出部59」と記載する。
【0029】
周波数検出部41は、配電系統Cの系統周波数を検出する。周波数検出部41は、電圧センサ9から入力される電圧信号に基づいて、電圧瞬時値の周波数fを検出する。周波数検出部41は、例えばゼロクロス点間カウント方式により周波数を検出する。ゼロクロス点間カウント方式は、交流電圧の瞬時値がゼロレベルを交差する点(ゼロクロス点)間の時間を計測し、計測された時間の逆数から周波数を検出する方法である。なお、周波数検出部41の周波数検出方法は限定されない。例えば、周波数検出部41は、乗算式PLL(Phase Locked Loop)を用いて周波数を検出してもよい。配電系統Cは三相交流の配電系統であり、電圧センサ9は、各相の電圧信号を検出している。周波数検出部41は、各相の電圧信号の周波数をそれぞれ検出し、3個の周波数の平均値を周波数fとして出力する。なお、周波数検出部41は、代表して1個の相(例えばU相)の電圧信号の周波数を周波数fとして出力してもよい。周波数検出部41は、検出した周波数fを、変化量検出部42に出力する。
【0030】
変化量検出部42は、周波数検出部41から周波数fを入力されて、周波数fの変化量Δfを検出する。変化量検出部42は、所定のサイクル(限定されないが例えば20ms程度)ごとに周波数fを入力され、入力された周波数fと、1サイクル前に入力された周波数fとの差を変化量Δfとして算出する。以下では、この所定のサイクルを「周波数検出サイクル」と記載する。変化量検出部42は、検出した変化量Δfを、ローパスフィルタ43に出力する。
【0031】
ローパスフィルタ43は、変化量検出部42から連続的に入力される変化量Δfから、30Hz以下の周波数成分だけを抽出し、PP値検出部44に出力する。人間が照明のちらつきとして感じる周波数は2~30Hzなので、本実施形態では、ローパスフィルタ43によって、30Hzより大きい周波数成分を除去している。
【0032】
PP値検出部44は、ローパスフィルタ43から入力される変化量Δf(30Hz以下の周波数成分)のピークトゥピーク値(以下では、「周波数PP値」と記載する)を検出する。本実施形態では、2Hz以上の周波数変化量をとらえるために、2Hzの周期である500ms間の周波数PP値を検出する。PP値検出部44は、周波数検出サイクル(例えば20ms程度)ごとに検出範囲をずらしながら、周波数PP値を検出する。PP値検出部44は、検出した周波数PP値を分析部32に出力する。
【0033】
図2は、第1検出部49のシミュレーション結果を示す波形図である。
図2(a)は、周波数検出部41が検出した周波数fの時間変化を示している。
図2(b)は、変化量検出部42が検出した変化量Δfの時間変化を示している。
図2(c)は、PP値検出部44が検出した周波数PP値の時間変化を示している。時刻「0」において、電圧変動を発生させたことで、
図2(a)に示すように、それ以降、周波数fが大きく変動している。これにより、
図2(b)に示すように、変化量Δfも大きく変動している。そして、
図2(c)に示すように、周波数PP値は、時刻「0」より前ではΔf
0より小さい状態で安定していたが、時刻「0」で急上昇して、その後、Δf
0より大きい安定状態になっている。Δf
0は、電圧フリッカの発生を検出するための閾値であり、本実施形態では0.05Hz程度が設定されている。なお、Δf
0は限定されない。また、周波数PP値は、配電系統Cにおける接続状況によって安定状態での値が異なり、新型割合が大きいほど大きい値になる。
【0034】
図3は、安定状態での周波数PP値と接続状況との関係の概略を示す図である。横軸は、配電系統Cの接続状況を示すものであり、新型割合を示している。縦軸は、電圧フリッカが発生しているときの周波数PP値を示している。周波数PP値と接続状況との関係は、配電系統Cの線路インピーダンスによっても異なる。
図3においては、配電系統Cの線路インピーダンスが大きい場合を実線aで示し、配電系統Cの線路インピーダンスが中程度の場合を破線bで示し、配電系統Cの線路インピーダンスが小さい場合を一点鎖線cで示している。
図3は、新型割合を10%、50%、および90%としたときのシミュレーション結果に基づいて作成されている。
図3に示すように、新型割合が大きいほど周波数PP値が大きくなっている。また、同じ接続状況(新型割合が同じ)では、配電系統Cの線路インピーダンスが大きいほど、周波数PP値が大きくなっている。また、周波数PP値と接続状況との関係は、配電系統Cに接続されている稼働電源Bの全体容量によっても異なる。
図3に示していないが、同じ接続状況では、全体容量が大きいほど周波数PP値が大きくなる。
【0035】
実効値検出部51は、配電系統Cの系統電圧の電圧実効値vを検出する。実効値検出部51は、電圧センサ9から入力される電圧信号に基づいて、電圧実効値vを検出する。配電系統Cは三相交流の配電系統であり、電圧センサ9は、各相の電圧信号を検出している。実効値検出部51は、各相の電圧信号から電圧実効値をそれぞれ検出し、3個の電圧実効値の平均値を電圧実効値vとして出力する。なお、実効値検出部51は、代表して1個の相(例えばU相)の電圧信号の電圧実効値を電圧実効値vとして出力してもよい。実効値検出部51は、検出した電圧実効値vをPP値検出部52および周波数検出部53に出力する。なお、実効値検出部51は、電圧実効値の代わりに、電圧の最大値または平均値など電圧の大きさを表す他の指標を検出してもよい。
【0036】
PP値検出部52は、実効値検出部51から入力される電圧実効値vのピークトゥピーク値(以下では、「実効値PP値」と記載する)を検出する。PP値検出部44と同様、2Hz以上の電圧変動幅をとらえるために、2Hzの周期である500ms間の実効値PP値を検出する。PP値検出部52も、PP値検出部44と同様、周波数検出サイクル(例えば20ms程度)ごとに検出範囲をずらしながら、実効値PP値を検出する。PP値検出部52は、検出した実効値PP値を指標値算出部54に出力する。
【0037】
周波数検出部53は、電圧実効値vの変動の周波数fVを検出する。周波数検出部53は、実効値検出部51から入力される電圧実効値vに基づいて、周波数fVを検出する。本実施形態では、PP値検出部52が実効値PP値を検出したときの上のピーク値を検出したときから下のピーク値を検出するまでの時間を半周期として、周波数fVを検出する。なお、周波数検出部53の周波数検出方法は限定されず、周波数検出部41と同様の方法で検出してもよいし、他の方法で検出してもよい。周波数検出部53は、検出した周波数fVを、指標値算出部54に出力する。
【0038】
指標値算出部54は、電圧フリッカの判定のための指標値を算出する。一般的に、電圧フリッカは、「ΔV
10」という指標値を用いて表され、この指標値が規制値(例えば「0.45」)以下となるように管理されている。指標値算出部54は、ΔV
10に類似した指標値として指標値ΔV
Xを用いる。
図4は、ちらつき視感度を示す図であり、電圧変動の周波数ごとのちらつきの視感度を係数にして表している。
図4では、周波数ごとのちらつきの視感度を連続して示したちらつきの視感度曲線sが示されている。ΔV
10は、1分間の電圧変動に含まれる周波数成分ごとに、当該周波数成分の変化量と当該周波数におけるちらつき視感度係数とを乗算した値の2乗値の積算値の平方根として算出される。指標値ΔV
Xは、ΔV
10をより簡略化した指標であり、演算のための負担を軽減した指標である。具体的には、指標値算出部54は、PP値検出部52が検出した実効値PP値に、周波数検出部53が検出した周波数f
Vに応じた係数を乗算することで、指標値ΔV
Xを算出する。また、このとき使用する係数は、視感度曲線sを簡略化したものであり、周波数f
Vが3Hz以上の場合は「1」とし、3Hz未満の場合は「0.6」としている(
図4において太い実線s’で示す)。指標値ΔV
Xの算出に使用する係数は、常に、指標値ΔV
10の算出に使用する係数(視感度曲線s参照)以上の値なので、指標値ΔV
Xは、指標値ΔV
10より大きな値として算出される。なお、指標値算出部54による指標値ΔV
Xの算出方法は、これに限定されない。指標値算出部54は、指標値ΔV
Xとして、例えば一般的な指標値ΔV
10を算出してもよい。指標値算出部54は、算出した指標値ΔV
Xを分析部32に出力する。
【0039】
図5は、第2検出部59のシミュレーション結果を示す波形図である。
図5(a)は、実効値検出部51が検出した電圧実効値vの時間変化(図に示す実線v、左側の縦軸参照)、および、PP値検出部52が検出した実効値PP値の時間変化(図に示す破線PP、右側の縦軸参照)を示している。
図5(b)は、周波数検出部53が検出した周波数f
Vの時間変化を示している。
図5(c)は、指標値算出部54が検出した指標値ΔV
Xの時間変化を示している。時刻「0」において、電圧変動を発生させたことで、電圧実効値vが大きく変動している。これにより、実効値PP値が上昇し、また、周波数f
Vが低下している。ΔV
Xは、時刻「0」より前ではほぼ「0」であったが、時刻「0」以降上昇してΔV
X0を超えて、時刻「3」程度で安定状態になっている。ΔV
X0は、電圧フリッカの発生を検出するための閾値であり、例えば、指標値ΔV
10の規制値と同じ「0.45」が設定される。なお、ΔV
X0は限定されない。また、ΔV
Xは、配電系統Cにおける接続状況によって安定状態での値が異なり、新型割合が大きいほど大きい値になる。
【0040】
図6は、安定状態での指標値ΔV
Xと接続状況との関係の概略を示す図である。横軸は、配電系統Cの接続状況を示すものであり、新型割合を示している。縦軸は、電圧フリッカが発生しているときの指標値ΔV
Xを示している。指標値ΔV
Xと接続状況との関係は、配電系統Cの線路インピーダンスによっても異なる。
図6においては、配電系統Cの線路インピーダンスが大きい場合を実線a’で示し、配電系統Cの線路インピーダンスが中程度の場合を破線b’で示し、配電系統Cの線路インピーダンスが小さい場合を一点鎖線c’で示している。
図6は、新型割合を10%、50%、および90%としたときのシミュレーション結果に基づいて作成されている。
図6に示すように、新型割合が大きいほど指標値ΔV
Xが大きくなっている。また、同じ接続状況(新型割合が同じ)では、配電系統Cの線路インピーダンスが大きいほど、指標値ΔV
Xが大きくなっている。また、指標値ΔV
Xと接続状況との関係は、配電系統Cに接続されている稼働電源Bの全体容量によっても異なる。
図6に示していないが、同じ接続状況では、全体容量が大きいほど指標値ΔV
Xが大きくなる。
【0041】
線路インピーダンス設定部31は、配電系統Cの配電線の線路インピーダンスを設定する。配電線の線路インピーダンスは、例えば電力会社などが把握しており、その値が設定される。線路インピーダンス設定部31は、配電系統Cの配電線の線路インピーダンスを、分析部32に出力する。
【0042】
分析部32は、PP値検出部44から入力される周波数PP値と、指標値算出部54から入力される指標値ΔV
Xと、線路インピーダンス設定部31から入力される線路インピーダンスとに基づいて、新型割合(接続状況)を検出する。電圧フリッカが発生しているときの周波数PP値は、配電系統Cの接続状況、配電系統Cの線路インピーダンス、および、配電系統Cに接続されている稼働電源Bの全体容量と関連性がある(
図3参照)。また、電圧フリッカが発生しているときの指標値ΔV
Xは、配電系統Cの接続状況、配電系統Cの線路インピーダンス、および、配電系統Cに接続されている稼働電源Bの全体容量と関連性がある(
図6参照)。分析部32は、これらの関連性を利用して、周波数PP値と指標値ΔV
Xとに基づいて接続状況を検出する。
【0043】
分析部32は、PP値検出部44から入力される周波数PP値が閾値Δf0以上の状態が第1判定時間T1(例えば10秒)以上継続した場合に、電圧フリッカが発生していると判断し、周波数PP値の平均値を接続状況を検出するための値として用いる。第1判定時間T1は、周波数PP値がごく短い時間の間だけ閾値Δf0を超えた場合を除外するために設定されている。なお、電圧フリッカが発生してすぐの周波数PP値の変化中の値を用いず、安定した状態での値を用いるために、電圧フリッカが発生していると判断した後、所定時間が経過してからの値を用いてもよい。第1判定時間T1および所定時間は限定されず、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。また、分析部32は、指標値算出部54から入力される指標値ΔVXが閾値ΔVX0以上の状態が第2判定時間T2以上継続した場合に、電圧フリッカが発生していると判断し、指標値ΔVXの平均値を接続状況を検出するための値として用いる。第2判定時間T2は、指標値ΔVXがごく短い時間の間だけ閾値ΔVX0を超えた場合を除外するために設定されている。なお、電圧フリッカが発生してすぐの指標値ΔVXの変化中の値を用いず、安定した状態での値を用いるために、電圧フリッカが発生していると判断した後、所定時間が経過してからの値を用いてもよい。第2判定時間T2および所定時間は限定されず、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。
【0044】
記憶部3は、線路インピーダンスごと、稼働電源Bの全体容量ごと、および新型割合ごとの、電圧フリッカが発生しているときの周波数PP値と指標値ΔVXとを記憶している。周波数PP値および指標値ΔVXは、実験またはシミュレーションによって、線路インピーダンス、稼働電源Bの全体容量、および新型割合を変化させて検出される。なお、記憶部3は、すべての線路インピーダンス、稼働電源Bの全体容量、および新型割合での値を記憶しているのではなく、それぞれを離散的に変化させたときの値を記憶している。間の値は、例えば線形補間などによって算出される。
【0045】
分析部32は、記憶部3に記憶された周波数PP値および指標値ΔV
Xを用いて、新型割合を検出する。分析部32は、線路インピーダンス設定部31から入力される線路インピーダンスに対応したデータだけを用いる。分析部32は、全体容量ごとに、PP値検出部44から入力される周波数PP値(平均値)に対応する新型割合を検出する。例えば、
図3は、ある全体容量のときの周波数PP値と新型割合との関係を示しており、線路インピーダンスが分っているので、当該全体容量の場合の新型割合を決定できる。したがって、分析部32は、周波数PP値に基づいて、全体容量と新型割合との対応関係を検出できる。また、分析部32は、全体容量ごとに、指標値算出部54から入力される指標値ΔV
X(平均値)に対応する新型割合を検出する。例えば、
図6は、ある全体容量のときの指標値ΔV
Xと新型割合との関係を示しており、線路インピーダンスが分っているので、当該全体容量の場合の新型割合を決定できる。したがって、分析部32は、指標値ΔV
Xに基づいて、全体容量と新型割合との対応関係を検出できる。
【0046】
分析部32は、周波数PP値に基づいて検出した全体容量と新型割合との対応関係と、指標値ΔV
Xに基づいて検出した全体容量と新型割合との対応関係とが一致したときの新型割合を、検出した新型割合として出力する。
図7は、ある線路インピーダンスにおける全体容量と新型割合との対応関係を示すための図である。横軸は、配電系統Cの接続状況を示すものであり、新型割合を示している。縦軸は、全体容量を示している。
図7において、実線dは、周波数PP値に基づいて検出した全体容量と新型割合との対応関係を示している。また、破線eは、指標値ΔV
Xに基づいて検出した全体容量と新型割合との対応関係を示している。実線dと破線eとの交点における新型割合が、分析部32から出力される。また、分析部32は、実線dと破線eとの交点における全体容量を、配電系統Cに接続する稼働電源Bの全体容量として出力してもよい。この場合、分析装置A1は、接続状況だけでなく、全体容量も検出できる。
【0047】
なお、分析部32による接続状況の検出方法は、上述した方法に限定されない。分析部32は、PP値検出部44から入力される周波数PP値、または、指標値算出部54から入力される指標値ΔVXから、接続状況を検出すればよい。
【0048】
なお、分析装置A1は、汎用的なコンピュータにプログラムをインストールしたものであってもよいし、専用の装置であってもよい。
【0049】
次に、本実施形態に係る分析装置A1の作用効果について説明する。
【0050】
本実施形態によると、第1検出部49は、電圧センサ9から入力される電圧信号に基づいて、系統周波数の変動を示す情報である周波数PP値を検出する。また、第2検出部59は、電圧センサ9から入力される電圧信号に基づいて、電圧実効値の変動を示す情報である指標値ΔVXを検出する。分析部32は、周波数PP値、指標値ΔVX、および線路インピーダンスに基づいて、新型割合(接続状況)を検出する。これにより、分析装置A1は、配電系統Cにおける従来型電源B1および新型電源B2の接続状況を分析できる。したがって、配電系統Cが電圧フリッカ現象が発生しやすい配電系統であるか否かの判断が可能である。例えば、新型割合が大きい場合は、電圧フリッカ現象が発生しやすくなっているので、当該配電系統Cの管理者は、各単独運転検出装置が注入する無効電力を減少させるように調整するという対応を行うことができる。
【0051】
また、本実施形態によると、分析部32は、周波数PP値と指標値ΔVXとの両方を用いて接続状況を検出する。したがって、分析装置A1は、分析部32が周波数PP値または指標値ΔVXのいずれか一方だけを用いて接続状況を検出する場合と比較して、精度よく接続状況を検出できる。
【0052】
また、本実施形態によると、変化量検出部42が周波数fの変化量Δfを検出し、ローパスフィルタ43が変化量Δfから30Hz以下の周波数成分だけを抽出し、PP値検出部44がローパスフィルタ43から入力される変化量Δfの500ms間の周波数PP値を検出する。したがって、分析部32は、周波数fの変動の2~30Hzの成分の変動幅に基づいて分析を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態によると、PP値検出部52が電圧実効値vの500ms間の実効値PP値を検出し、周波数検出部53が電圧実効値vの周波数fVを検出する。また、指標値算出部54が実効値PP値と、周波数fVに応じた係数とを乗算することで指標値ΔVXを算出する。したがって、分析部32は、電圧実効値vの変動の2Hz以上の成分の変動幅に基づいて分析を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態によると、指標値算出部54が実効値PP値と周波数fVに応じた係数とを乗算することで指標値ΔVXを算出し、当該係数はΔV10の算出に使用する視感度係数を簡略化したものである。したがって、指標値算出部54は、ΔV10を算出する場合と比較して、大幅に演算のための負担が軽減される。また、指標値ΔVXの算出に使用する係数は、常に、指標値ΔV10の算出に使用する視感度係数以上の値なので、指標値ΔVXは、指標値ΔV10より大きな値として算出される。したがって、分析部32は、電圧フリッカの検出漏れを抑制できる。
【0055】
なお、本実施形態においては、分析部32が周波数PP値と指標値ΔV
Xとの両方を用いて接続状況を検出する場合について説明したが、これに限られない。分析部32は、周波数PP値または指標値ΔV
Xのいずれか一方だけを用いて接続状況を検出してもよい。例えば、配電系統Cに接続されている稼働電源Bの全体容量があらかじめ分かっている場合、
図3に示すように、周波数PP値から新型割合を検出できる。この場合、制御部1は、第2検出部59を備えなくてもよい。また、
図6に示すように、指標値ΔV
Xから新型割合を検出できる。この場合、制御部1は、第1検出部49を備えなくてもよい。
【0056】
また、制御部1における、接続状況の検出方法は、上記したものに限定されない。例えば、制御部1は、ローパスフィルタ43を備えなくてもよいし、PP値検出部44におけるPP値検出のための検出範囲は500msに限定されない。また、PP値検出部52におけるPP値検出のための検出範囲は500msに限定されないし、指標値算出部54が算出する指標はΔVXに限定されない。第2検出部59が従来の指標値ΔV10を算出して、分析部32が指標値ΔV10に基づいて接続状況を検出してもよい。
【0057】
〔第2実施形態〕
図8は、第2実施形態に係る分析装置A2を説明するためのブロック図であり、配電系統Cの全体構成を示す図である。同図において、第1実施形態に係る分析装置A1(
図1参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0058】
本実施形態に係る分析装置A2は、配電系統Cで電圧フリッカが発生しているときに能動信号の注入を停止させ、そのときの電圧フリッカの収束の仕方に基づいて接続状況を分析する点で、分析装置A1と異なる。
【0059】
本実施形態では、配電系統Cに、電源装置8が接続されている。電源装置8は、分析装置A2からの指示により、配電系統Cに能動信号の注入およびその停止を行う。電源装置8は、配電系統Cに接続されているいずれかの従来型電源B1または新型電源B2であってもよいし、配電系統Cに接続されている他の方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源であってもよい。また、電源装置8は、分析装置A2からの指示により、配電系統Cに能動信号の注入および停止を行うためだけの電源装置であってもよい。
【0060】
分析装置A2の制御部1は、配電系統Cで電圧フリッカが発生しているときに、電源装置8に能動信号の注入を停止させる。配電系統Cで電圧フリッカが発生していることは、制御部1の分析部32が、PP値検出部44から入力される周波数PP値、または、指標値算出部54から入力される指標値ΔVXに基づいて判断する。本実施形態に係る分析部32は、電源装置8が能動信号の注入を停止したときから、周波数PP値および指標値ΔVXの変化を記録する。そして、周波数PP値および指標値ΔVXの変化の仕方に基づいて、接続状況を検出する。
【0061】
配電系統Cで電圧フリッカが発生しているときに、電源装置8が能動信号の注入を停止した場合、電圧フリッカが収束するが、その収束の仕方は、稼働電源Bの接続状態によって異なる。新型割合が大きい場合、すなわち、稼働電源Bの全体容量に対する新型電源B2の合計容量の割合が大きい場合、電圧フリッカの収束の仕方は遅くなる。したがって、周波数PP値および指標値ΔVXの変化が遅い。この特性を利用して、分析部32は、周波数PP値および指標値ΔVXの変化の仕方に応じて、接続状況(新型割合)を検出する。新型割合ごとの周波数PP値および指標値ΔVXの変化の仕方のデータは、実験またはシミュレーションによってあらかじめ取得されて、記憶部3に記憶されている。接続状況(新型割合)を検出する具体的な方法としては、例えば、電圧フリッカが発生している状態で能動信号の注入を停止させてから電圧フリッカの収束を検出するまでの期間について、周波数PP値および指標値ΔVXのそれぞれの電圧フリッカ収束時の傾きを検出する。次に、検出した各傾きを、データテーブルと照らし合わせて、一致する条件の候補をピックアップする。そして、ピックアップした条件の中から周波数PP値の条件と指標値ΔVXの条件とがほぼ一致する条件を、実際の接続状況(新型割合)と判定する。
【0062】
本実施形態によると、分析部32は、電源装置8が能動信号の注入を停止したときからの周波数PP値および指標値ΔVXの変化の仕方に基づいて、接続状況を検出する。これにより、分析装置A2は、配電系統Cにおける従来型電源B1および新型電源B2の接続状況を分析できる。したがって、配電系統Cが電圧フリッカ現象が発生しやすい配電系統であるか否かの判断が可能である。また、分析装置A2は、分析装置A1と共通する構成により、分析装置A1と同等の効果を奏する。
【0063】
なお、本実施形態においては、分析部32が周波数PP値の変化の仕方、および、指標値ΔVXの変化の仕方の両方を用いて接続状況を検出する場合について説明したが、これに限られない。分析部32は、周波数PP値または指標値ΔVXのどちらか一方の変化の仕方に基づいて接続状況を検出してもよい。また、分析部32は、電圧フリッカが発生しているときの周波数PP値および指標値ΔVXに基づく接続状況の検出(第1実施形態参照)と、電圧フリッカが収束するときの周波数PP値および指標値ΔVXの変化に基づく接続状況の検出(第2実施形態参照)との両方を考慮して、接続状況を検出してもよい。例えば、分析部32は、上記2つの方法でそれぞれ検出した新型割合の平均値を算出して、算出した平均値を新型割合として出力してもよい。なお、制御部1による接続状況の具体的な算出方法は上述した方法に限定されない。
【0064】
本発明に係る分析装置およびプログラムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る分析装置およびプログラムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0065】
A1,A2:分析装置、41:周波数検出部、42:変化量検出部、43:ローパスフィルタ、44:PP値検出部、51:実効値検出部、52:PP値検出部、53:周波数検出部、54:指標値算出部、32:分析部、9:電圧センサ、B1:従来型電源、B2:新型電源、C:配電系統