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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102872
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】加飾部品及び加飾部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20230719BHJP
   B60K 37/00 20060101ALI20230719BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230719BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20230719BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20230719BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
B60K37/00 Z
B60K37/00 A
B29C45/14
B29C45/16
G09F13/04 Z
B32B33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003594
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591178517
【氏名又は名称】株式会社三和スクリーン銘板
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 隆明
(72)【発明者】
【氏名】林 正信
【テーマコード(参考)】
3D344
4F100
4F206
5C096
【Fターム(参考)】
3D344AA19
3D344AA20
3D344AC02
3D344AD01
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA13C
4F100DC11A
4F100GB32
4F100HB00C
4F100JD06A
4F100JD06C
4F100JL10C
4F100JN01B
4F100JN01C
4F100JN18B
4F100JN18C
4F206AA13
4F206AA21
4F206AA28
4F206AD05
4F206AD08
4F206AD20
4F206AD24
4F206AE00
4F206AE10
4F206AF16
4F206AG01
4F206AG03
4F206AG26
4F206AH17
4F206AH25
4F206AH73
4F206JA07
4F206JB13
4F206JB22
4F206JL02
4F206JN25
4F206JQ81
5C096AA01
5C096BA01
5C096CA02
5C096CA28
5C096CB07
5C096CJ01
5C096FA05
5C096FA11
5C096FA17
(57)【要約】
【課題】照明装置の点灯時に意匠層を見た際に、所定パターンが位置する箇所とその隣接箇所との間で好ましいコントラストを確保する。
【解決手段】背面に設けられる照明装置30の点灯時に所定パターン3が視認可能であり、照明装置30の消灯時に所定パターン3が視認不能である加飾部品2は、照明装置30の光を透過させるレーザ加工部17が所定パターン3に形成され、レーザ光に反応する材料を有する遮光層15と、遮光層15の表面に積層され、レーザ光に反応しない材料からなる透明層14と、透明層14の表面に積層され、照明装置30の点灯時に光を透過させ、照明装置30の消灯時に所定パターン3が視認不能になる所定の透過率を有する意匠層13と、を備え、意匠層13と透明層14とは、実質的に同一の屈折率を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面に設けられる照明装置の点灯時に所定パターンが視認可能であり、前記照明装置の消灯時に前記所定パターンが視認不能である加飾部品であって、
前記照明装置の光を透過させる孔が前記所定パターンに形成され、レーザ光に反応する材料を有する遮光層と、
前記遮光層の表面に積層され、レーザ光に反応しない材料からなる透明層と、
前記透明層の表面に積層され、前記照明装置の点灯時に光を透過させ、前記照明装置の消灯時に前記所定パターンが視認不能になる所定の透過率を有する意匠層と、
を備え、
前記意匠層と前記透明層とは、実質的に同一の屈折率を有する、
ことを特徴とする加飾部品。
【請求項2】
請求項1に記載の加飾部品であって、
前記透明層は、無色透明の材料によって構成され、
前記意匠層は、前記無色透明の材料に顔料が添加された有色の半透明材料によって構成される、
ことを特徴とする加飾部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加飾部品であって、
前記意匠層は、前記透明層と実質的に同一の屈折率を各々有する複数の層によって形成される、
ことを特徴とする加飾部品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の加飾部品であって、
前記意匠層と前記透明層と前記遮光層とは、同一の材料を含む、
ことを特徴とする加飾部品。
【請求項5】
背面に設けられる照明装置の点灯時に所定パターンが視認可能であり、前記照明装置の消灯時に前記所定パターンが視認不能である加飾部品を製造する製造方法であって、
レーザ光に反応する材料を有し前記照明装置の光を遮断する遮光層と、前記照明装置の点灯時に光を透過させ、前記照明装置の消灯時に前記所定パターンが視認不能になる所定の透過率を有する意匠層と、の間に、レーザ光に反応しない材料からなり前記意匠層と実質的に同一の屈折率を有する透明層を挟むように積層して積層フィルム部を形成する積層工程と、
前記遮光層側から前記積層フィルム部にレーザ光を照射し、前記遮光層の一部をレーザ光で除去して前記所定パターンの孔を形成するレーザ加工工程と、を含む、
ことを特徴とする加飾部品の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の加飾部品の製造方法であって、
前記透明層は、無色透明の材料によって構成され、
前記意匠層は、前記無色透明の材料に顔料が添加された有色の半透明材料によって構成される、
ことを特徴とする加飾部品の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の加飾部品の製造方法であって、
前記意匠層は、前記透明層と実質的に同一の屈折率を各々有する複数の層によって形成される、
ことを特徴とする加飾部品の製造方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか一つに記載の加飾部品の製造方法であって、
前記意匠層と前記透明層と前記遮光層とは、同一の材料を含む、
ことを特徴とする加飾部品の製造方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか一つに記載の加飾部品の製造方法であって、
前記レーザ加工工程の前に、前記積層工程によって積層された前記積層フィルム部を三次元的に湾曲した形状に賦形する賦形工程を更に含む、
ことを特徴とする加飾部品の製造方法。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか一つに記載の加飾部品の製造方法であって、
金型装置の第1型内に前記遮光層が前記金型装置の第2型に臨むように前記積層フィルム部が配置された状態で透明樹脂によるインサート成形を行う成形工程を更に含む、
ことを特徴とする加飾部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾部品及び加飾部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基体シート上に部分的に積層される遮光性着色層と、全面的又は部分的に積層される遮光性着色層とを有し、遮光パターン部と透光パターン部とが形成される照光性加飾シートが開示されている。この照光性加飾シートでは、光源が裏面から照射したときに透光パターン部(所定パターン)を光らせて、認識しやすくしている。
【0003】
透光パターン部の形成方法としては、スクリーン印刷の他に、レーザ加工も知られている。特許文献2には、不透明の印刷層をレーザ光で除去して、光を透過させる孔部が形成されたパネル部材が開示されている。レーザ光はカーボンに反応して発熱するため、この印刷層は、カーボンブラックを含む層とされている。ただし、レーザ光は、加工対象の層を貫通した後、その裏面にある層も加工してしまうおそれがある。
【0004】
これに対して、特許文献3には、レーザ加工の対象となるレーザ発色層の裏面にバリア層を設けて、その更に裏面にあるオフセット印刷層を保護する積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-272935号公報
【特許文献2】特開2001-030290号公報
【特許文献3】国際公開第2017/014258号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の照光性加飾シートの透光パターン部の形成に際しては、レーザ加工を適用し、かつ特許文献3のようなバリア層を適用させることも想定しうる。即ち、特許文献1の遮光性着色層と透光性着色層との間に、特許文献3のバリア層を介装させる構成である。
【0007】
しかしながら、このような構成では、バリア層が余分に介在するがゆえに、透光性着色層とバリア層との屈折率の差に応じて、両者の界面で光が反射してしまい、透光させる所定パターンがくっきりと見えにくくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によれば、背面に設けられる照明装置の点灯時に所定パターンが視認可能であり、前記照明装置の消灯時に前記所定パターンが視認不能である加飾部品は、前記照明装置の光を透過させる孔が前記所定パターンに形成され、レーザ光に反応する材料を有する遮光層と、前記遮光層の表面に積層され、レーザ光に反応しない材料からなる透明層と、前記透明層の表面に積層され、前記照明装置の点灯時に光を透過させ、前記照明装置の消灯時に前記所定パターンが視認不能になる所定の透過率を有する意匠層と、を備え、前記意匠層と前記透明層とは、実質的に同一の屈折率を有する。
【0010】
本発明の他の態様によれば、背面に設けられる照明装置の点灯時に所定パターンが視認可能であり、前記照明装置の消灯時に前記所定パターンが視認不能である加飾部品を製造する製造方法は、レーザ光に反応する材料を有し前記照明装置の光を遮断する遮光層と、前記照明装置の点灯時に光を透過させ、前記照明装置の消灯時に前記所定パターンが視認不能になる所定の透過率を有する意匠層と、の間に、レーザ光に反応しない材料からなり前記意匠層と実質的に同一の屈折率を有する透明層を挟むように積層して積層フィルム部を形成する積層工程と、前記遮光層側から前記積層フィルム部にレーザ光を照射し、前記遮光層の一部をレーザ光で除去して前記所定パターンの孔を形成するレーザ加工工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
上記態様では、加飾部品は、意匠層と、レーザ光に反応する遮光層と、の間に、レーザ光に反応しない透明層を備える。そのため、遮光層側からレーザ加工をする際に、意匠層が透明層によってレーザ光から保護された状態で、遮光層の一部を除去して、照明装置による光を透過させるための孔を形成することが可能である。また、意匠層と透明層とは、実質的に同一の屈折率を有する。そのため、加飾部品の背面に照明装置が設けられ、光が照射された際に、意匠層と透明層との界面で光が乱反射して拡散することを防止できる。したがって、照明装置の点灯時に意匠層を見た際に、所定パターンが位置する箇所とその隣接箇所との間で好ましいコントラストを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る加飾部品が適用されるインストルメントパネルの斜視図である。
図2図2は、加飾部品の一部のみを示す断面図である。
図3A図3Aは、加飾部品の断面図であり、照明装置の消灯時について説明する図である。
図3B図3Bは、図3Aの状態における所定パターンの表示について説明する図である。
図4A図4Aは、加飾部品の断面図であり、照明装置の点灯時について説明する図である。
図4B図4Bは、図4Aの状態における所定パターンの表示について説明する図である。
図5図5は、積層工程について説明する断面図である。
図6図6は、賦形工程について説明する断面図である。
図7図7は、レーザ加工工程について説明する断面図である。
図8図8は、成形工程について説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る加飾部品2、及び当該加飾部品2の製造方法について説明する。
【0014】
まず、図1及び図2を参照して、加飾部品2、及び当該加飾部品2が適用される自動車等の車両(図示省略)のインストルメントパネル1について説明する。図1は、加飾部品2が適用されるインストルメントパネル1の斜視図である。図2は、加飾部品2の一部のみを示す断面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、インストルメントパネル1は、加飾部品2と、照明装置30(図2参照)と、を有する。インストルメントパネル1は、車両の車室内に設けられる。インストルメントパネル1は、運転席の正面を含む車室の前方に設けられる。インストルメントパネル1には、車両の情報を示す計器類(図示省略)が配置される。
【0016】
加飾部品2は、少なくとも一部が三次元的に湾曲した曲面である自由曲面状に形成される。加飾部品2は、車両の車室内に露出する。加飾部品2は、複数の所定パターン3を有する。
【0017】
加飾部品2は、インストルメントパネル1の一部として設けられる。加飾部品2は、背面に設けられる照明装置30の点灯時に所定パターン3が視認可能であり、照明装置30の消灯時に所定パターン3が視認不能である。即ち、加飾部品2は、照明装置30の消灯時には所定パターン3が存在しないように見え、照明装置30の点灯時にのみ所定パターン3が視認可能になるものである。
【0018】
加飾部品2は、使用者によって押圧操作される。加飾部品2は、空調装置(エアコンディショナ)を操作するための操作部(スイッチ)として機能する。所定パターン3は、操作部が何の操作に供されるかを表示する意匠や文字である。加飾部品2は、積層フィルム部10と、基材20と、を備える(図2参照)。なお、以下では、加飾部品2における車室内に露出する面を「表面」と称し、照明装置30に臨む面を「裏面」と称し、積層フィルム部10が積層される方向を「積層方向」と称する。
【0019】
図2に示すように、積層フィルム部10は、機能の異なる複数の層が積層方向に積層されて形成される。積層フィルム部10は、表面保護層11と、支持フィルム12と、意匠層13と、透明層14と、遮光層15と、を有する。
【0020】
表面保護層11は、加飾部品2の表面を保護するためのUV被膜である。表面保護層11は、無色透明な樹脂材料によって形成される。
【0021】
支持フィルム12は、加飾部品2の製造時に意匠層13、透明層14、及び遮光層15を支持するためのフィルム状の部材である。支持フィルム12は、無色透明な材料、具体的にはPC(ポリカーボネート)樹脂によってフィルム状に形成される。
【0022】
意匠層13は、支持フィルム12の裏面かつ透明層14の表面に積層される。意匠層13は、支持フィルム12に顔料を含むPU(ポリウレタン)インクが印刷されることによって形成される。意匠層13は、表面から照射される光を反射させ、裏面から照射される照明装置30による光を透過させる半透明の加飾層である。即ち、意匠層13は、照明装置30の点灯時に光を透過させ、照明装置30の消灯時に所定パターン3が視認不能になる所定の透過率を有する。意匠層13は、透明層14を構成するのと同じ無色透明の材料に顔料が添加された有色の半透明材料によって構成される。
【0023】
意匠層13は、主意匠層13aと色度補正層13bとを有する。主意匠層13a及び色度補正層13bは、異なる顔料を含むPUインクが印刷されることによって各々形成される。主意匠層13a及び色度補正層13bは、透明層14と同じPUインクを含むので、透明層14と実質的に同一の屈折率を有する。即ち、意匠層13は、透明層14と実質的に同一の屈折率を各々有する複数の層によって形成される。
【0024】
主意匠層13aは、表面から視認される意匠を構成する。主意匠層13aは、例えばピアノブラックや木目調等の意匠を構成する。
【0025】
色度補正層13bは、意匠層13を透過した照明装置30の光が白色に見えるように、主意匠層13aを透過して表面側から視認される光の反対色に形成される。例えば、色度補正層13bは、主意匠層13aがピアノブラックの場合には、主意匠層13aを透過する光はピアノブラックのカーボンに反応して黄色く見えるため、黄色の反対色である青色の層として形成される。このように、色度補正層13bの色は、主意匠層13aの色に合わせて設定される。なお、主意匠層13aを透過する光が白く見える場合には、色度補正層13bを設けなくてもよい。
【0026】
透明層14は、意匠層13の裏面かつ遮光層15の表面に積層される。透明層14は、カーボンを含有しない。即ち、透明層14は、レーザ光に反応しない材料からなる。レーザ光に反応しないとは、素材単独にレーザ光を照射しても加工されないこと、加工されたとしても微量であることを意味する。本実施形態では、後述するように遮光層15をレーザ加工する際に発生する熱によって透明層14が溶融したとしても、それはレーザ光に反応したとは解釈しない。透明層14は、無色透明の材料によって構成される。透明層14は、意匠層13に重ねて顔料を含まないPUインクが印刷されることによって形成される。透明層14を構成するPUインクは、意匠層13を構成するPUインクと同じものである。透明層14は、後述するレーザ加工工程にて、レーザ光から意匠層13を保護する。透明層14は、少なくとも5[μm]、望ましくは5~15[μm]の厚さに形成される。カーボンに反応するレーザ光として、例えば、COレーザ、YAGレーザ、COとYAGとのハイブリッドレーザ等を用いることができる。
【0027】
遮光層15は、黒マスク層15aと押さえ層15bと保護層15cとバインダ層15dとを、積層方向に有する。遮光層15は、カーボンを含有する。即ち、遮光層15は、レーザ光に反応する材料を有する。遮光層15は、照明装置30の光を遮断する遮光部16と、当該遮光部にレーザ加工によって所定パターン3の形状に形成され照明装置30の光を透過させる孔としてのレーザ加工部17と、を、積層方向と垂直に交差する方向に有する。
【0028】
黒マスク層15aは、黒色の不透明な層である。黒マスク層15aは、所定パターン3を形成するレーザ加工部17を除く部分に設けられ、遮光部16を形成する。黒マスク層15aは、透明層14に重ねて顔料を含むPUインクが印刷されることによって形成される。
【0029】
押さえ層15bは、黒マスク層15aを押さえるために設けられる。押さえ層15bは、所定パターン3を形成するレーザ加工部17を除く部分に設けられる。押さえ層15bは、黒マスク層15aに重ねて顔料を含むPUインクが印刷されることによって形成される。
【0030】
保護層15cは、黒マスク層15aを保護するために設けられる。保護層15cは、所定パターン3を形成するレーザ加工部17を除く部分に設けられる。保護層15cは、押さえ層15bに重ねて顔料を含むPUインクが印刷されることによって形成される。
【0031】
バインダ層15dは、遮光層15と基材20とを接着させるためのバインダ材である。バインダ層15dは、所定パターン3を形成するレーザ加工部17を除く部分に設けられる。バインダ層15dは、保護層15cに重ねて顔料を含むPUインクが印刷されることによって形成される。
【0032】
基材20は、遮光層15の裏面に設けられる。基材20は、積層フィルム部10とは異なる樹脂、具体的にはPC(ポリカーボネート)樹脂によって形成される。なお、PC樹脂に代えて、PMMA(Poly Methyl Methacrylate:アクリル)やPC樹脂+ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂であってもよい。基材20は、遮光部16の裏面を覆うと共にレーザ加工部17に入り込むように形成される。基材20は、照明装置30が照射する光を、所定パターン3を形成するレーザ加工部17にガイドする。基材20は、後述する成形工程によって積層フィルム部10と一体に成形される。
【0033】
続いて、図3Aから図4Bを参照して、加飾部品2の作用について説明する。図3Aは、加飾部品2の断面図であり、照明装置30の消灯時について説明する図である。図3Bは、図3Aの状態における所定パターン3の表示について説明する図である。図4Aは、加飾部品2の断面図であり、照明装置30の点灯時について説明する図である。図4Bは、図4Aの状態における所定パターン3の表示について説明する図である。図3B及び図4Bには、空調装置を内気循環に設定する操作に供される所定パターン3を例として示している。
【0034】
図3Aに示すように、照明装置30の消灯時には、加飾部品2の表面から照射される自然光等の光は、意匠層13における主意匠層13aの表面に反射し、加飾部品2を透過しない。そのため、図3Bに示すように、所定パターン3は表面から視認不能である。
【0035】
一方、図4Aに示すように、照明装置30の点灯時には、加飾部品2の裏面から照明装置30によって照射される光は、加飾部品2を裏面から表面に透過する。そのため、図4Bに示すように、所定パターン3は表面から視認可能である。
【0036】
このとき、意匠層13は、透明層14と実質的に同一の屈折率を各々有する複数の層(主意匠層13a及び色度補正層13b)によって形成されている。これにより、照明装置30による光が、意匠層13と透明層14との界面で乱反射して拡散することを防止できる。仮に、このような乱反射が起こると、意匠層13において所定パターン3がない部分でも僅かに光が透過することになり、その結果、所定パターン3の輪郭がぼやけて見えてしまう。これに対して、本実施形態では、このような所定パターン3の輪郭がぼやけて見えることを防止できる。即ち、照明装置30の点灯時に、意匠層13を見た際に、所定パターン3が位置する箇所と、その隣接箇所との間で、好ましいコントラストが確保される。
【0037】
次に、図5から図8を参照して、加飾部品2を製造する製造方法について説明する。
【0038】
まず、図5に示すように、カーボンを含有して照明装置30の光を遮断する遮光層15と、照明装置30の点灯時に光を透過させ、照明装置30の消灯時に所定パターン3が視認不能になる所定の透過率を有する意匠層13と、の間に、カーボンを含有せず意匠層13と実質的に同一の屈折率を有する透明層14を挟むように積層する(積層工程)。
【0039】
具体的には、支持フィルム12の上(裏面)から主意匠層13aと色度補正層13bとを構成するPUインクを順に印刷して意匠層13を形成し、意匠層13の上から透明層14を構成するPUインクを印刷し、更に透明層14の上から黒マスク層15aと押さえ層15bと保護層15cとバインダ層15dとを構成するPUインクを順に印刷して遮光層15を形成する。これにより、積層フィルム部10が形成される。
【0040】
このとき、意匠層13と透明層14と遮光層15とは、同一の材料(PU)を含んでいる。よって、意匠層13と透明層14と遮光層15との密着性を良好にすることができる。
【0041】
また、この時点では、支持フィルム12は、平面状に形成されている。そのため、意匠層13と透明層14と遮光層15とは、スクリーン印刷によって形成することが可能である。
【0042】
続いて、図6に示すように、積層工程によって積層された積層フィルム部10を三次元的に湾曲した形状に賦形する(賦形工程)。
【0043】
具体的には、賦形工程では、積層フィルム部10を賦形装置40内に設置して賦形する。賦形工程では、積層フィルム部10を加熱して軟化させ、変形しやすくなった状態で加圧して賦形し、冷却して硬化させる。これにより、積層フィルム部10は、車両の加飾部品2を構成する最終的な形状になる。
【0044】
続いて、図7に示すように、レーザ装置50を用いて、積層フィルム部10の遮光層15側からレーザ光を照射し、遮光層15の一部をレーザ光で除去して、積層フィルム部10に所定パターン3を形成する(レーザ加工工程)。
【0045】
具体的には、レーザ装置50が照射するレーザ光の焦点51が、遮光層15の中における透明層14から離間した位置になるように設定される。レーザ光のエネルギは、焦点51に集中し、カーボンを含有する遮光層15の各層に熱が発生する。この熱によって、遮光層15の各層が昇華し、遮光部16の一部に所定パターン3の形状のレーザ加工部17が形成される。
【0046】
このとき、積層フィルム部10にはカーボンを含有しない透明層14が設けられているので、透明層14によって保護されて意匠層13にはレーザ光の影響が出ないようになっている。よって、意匠層13に影響を及ぼさずに遮光層15の一部を除去してレーザ加工部17を形成することが可能である。
【0047】
以上のように、加飾部品2は、カーボンを含有する遮光層15と、カーボンを含有しない透明層14と、を備える。遮光層15は、照明装置30の光を遮断する遮光部16と当該遮光部16にレーザ加工によって所定パターン3に形成され照明装置30の光を透過させるレーザ加工部17とを有する。このとき、カーボンを含有しない透明層14が設けられているので、意匠層13が透明層14によって保護され、意匠層13に影響を及ぼさずにレーザ光によって遮光層15の一部を除去してレーザ加工部17を形成することが可能である。そのため、例えば三次元的に湾曲した曲面に所定パターン3を形成する場合には、加飾部品2を賦形した後でレーザ加工によって所定パターン3を形成することが可能である。したがって、加飾部品2における所定パターン3の位置精度を向上させることができる。
【0048】
続いて、積層フィルム部10を金型装置60内に設置するために、積層フィルム部10の上下(表裏)を反転させる(反転工程)。
【0049】
続いて、図8に示すように、金型装置60の可動側の第1型61内に、遮光層15が金型装置60の固定側の第2型62に臨むように積層フィルム部10が配置された状態で、透明樹脂によるインサート成形を行う(成形工程)。
【0050】
具体的には、金型装置60の第1型61内に積層フィルム部10が設置された状態で、ゲート63を介して金型装置60内に無色透明のPC樹脂を充填する。その後、第2型62から第1型61が離間し、エジェクタピン(図示省略)で突き出すことによって第2型62から成形品を離型させる。これにより、積層フィルム部10における遮光層15の裏面に基材20が形成される。
【0051】
以上のように、積層工程、賦形工程、レーザ加工工程、反転工程、及び成形工程を実行することによって、加飾部品2が形成される。
【0052】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0053】
背面に設けられる照明装置30の点灯時に所定パターン3が視認可能であり、照明装置30の消灯時に所定パターン3が視認不能である加飾部品2は、照明装置30の光を透過させるレーザ加工部17が所定パターン3に形成され、レーザ光に反応する材料を有する遮光層15と、遮光層15の表面に積層され、レーザ光に反応しない材料からなる透明層14と、透明層14の表面に積層され、照明装置30の点灯時に光を透過させ、照明装置30の消灯時に所定パターン3が視認不能になる所定の透過率を有する意匠層13と、を備え、意匠層13と透明層14とは、実質的に同一の屈折率を有する。
【0054】
また、背面に設けられる照明装置30の点灯時に所定パターン3が視認可能であり、照明装置30の消灯時に所定パターン3が視認不能である加飾部品2を製造する製造方法であって、レーザ光に反応する材料を有し照明装置30の光を遮断する遮光層15と、照明装置30の点灯時に光を透過させ、照明装置30の消灯時に所定パターン3が視認不能になる所定の透過率を有する意匠層13と、の間に、レーザ光に反応しない材料からなり意匠層13と実質的に同一の屈折率を有する透明層14を挟むように積層して積層フィルム部10を形成する積層工程と、遮光層15側から積層フィルム部10にレーザ光を照射し、遮光層15の一部をレーザ光で除去して所定パターン3のレーザ加工部17を形成するレーザ加工工程と、を含む。
【0055】
これらの構成では、加飾部品2は、意匠層13と、レーザ光に反応する遮光層15と、の間に、レーザ光に反応しない透明層14を備える。そのため、意匠層13が透明層14によってレーザ光から保護された状態で、遮光層15の一部を除去して、照明装置30による光を透過させるためのレーザ加工部17を形成することが可能である。また、意匠層13と透明層14とは、実質的に同一の屈折率を有する。そのため、加飾部品2の背面に照明装置30が設けられ、光が照射されたときに、意匠層13と透明層14との界面で光が乱反射して拡散することを防止できる。したがって、照明装置30の点灯時に意匠層13を見た際に、所定パターン3が位置する箇所とその隣接箇所との間で好ましいコントラストを確保することができる。
【0056】
また、レーザ加工工程にて所定パターン3を形成する際には、レーザ装置50が照射するレーザ光の焦点51は、遮光層15の中における透明層14から離間した位置になるように設定される。レーザ光のエネルギは、焦点51に集中し、カーボンを含有する遮光層15の各層に熱が発生する。この熱によって、遮光層15の各層が昇華し、遮光部16の一部に所定パターン3の形状のレーザ加工部17が形成される。
【0057】
このとき、積層フィルム部10にはカーボンを含有しない透明層14が設けられているので、透明層14によって保護されて意匠層13にはレーザ光の影響が出ないようになっている。よって、意匠層13に影響を及ぼさずに遮光層15の一部を除去してレーザ加工部17を形成することが可能である。
【0058】
したがって、例えば三次元的に湾曲した曲面に所定パターン3を形成する場合には、加飾部品2を賦形した後でレーザ加工によって所定パターン3を形成することが可能である。したがって、加飾部品2における所定パターン3の位置精度を向上させることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0060】
1 インストルメントパネル
2 加飾部品
3 所定パターン
10 積層フィルム部
13 意匠層
13a 主意匠層
13b 色度補正層
14 透明層
15 遮光層
16 遮光部
17 レーザ加工部
30 照明装置
50 レーザ装置
60 金型装置
61 第1型
62 第2型
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8