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  • 特開-車両強制停止装置 図1
  • 特開-車両強制停止装置 図2
  • 特開-車両強制停止装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102877
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】車両強制停止装置
(51)【国際特許分類】
   E01F 13/12 20060101AFI20230719BHJP
   E01F 13/04 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
E01F13/12
E01F13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003602
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】396025193
【氏名又は名称】株式会社花井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花井 功
(72)【発明者】
【氏名】花井 誠
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA01
2D101CA14
2D101DA04
2D101DA06
2D101EA08
2D101GA05
(57)【要約】
【課題】制動力が向上した車両強制停止装置を提供する。
【解決手段】車両強制停止装置10は、ベース部1と、車両止め部2と、車両乗り上げ部3と、を備える。車両乗り上げ部3は、複数の脚部材31を備える。各脚部材31は、第一端部および前記第一端部とは反対側の第二端部を有し、中空部材から成る脚部本体311と、第一接続部材313と、第一接続部材313によって脚部本体311の第一端部に接続され、展開位置において道路上に配置される、鋳型成形品であるフランジ部材312と、第二接続部材315と、第二接続部材315によって脚部本体311の第二端部に接続され、展開位置において車両止め部2に係止される、鋳型成形品であるロック部材314と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部から延びる車両止め部と、
前記車両止め部に対して、展開位置と折り畳み位置との間で移動可能な複数の脚部材を有する車両乗り上げ部と、
を備え、
各脚部材は、
第一端部および前記第一端部とは反対側の第二端部を有し、中空部材から成る脚部本体と、
第一接続部材と、
前記第一接続部材によって前記脚部本体の第一端部に接続され、前記展開位置において道路上に配置される、鋳型成形品であるフランジ部材と、
第二接続部材と、
前記第二接続部材によって前記脚部本体の第二端部に接続され、前記展開位置において前記車両止め部に係止される、鋳型成形品であるロック部材と、
を備える車両強制停止装置。
【請求項2】
前記脚部本体または前記フランジ部材の一方は、第一挿入部を備え、
前記脚部本体または前記フランジ部材の他方は、前記第一挿入部が挿入される第一収容部を備え、
前記第一挿入部は、前記第一収容部に挿入されると共に、前記脚部本体または前記フランジ部材の他方と前記第一接続部材によって接続されている、
請求項1に記載の車両強制停止装置。
【請求項3】
前記脚部本体または前記ロック部材の一方は、第二挿入部を備え、
前記脚部本体または前記ロック部材の他方は、前記第二挿入部が挿入される第二収容部を備え、
前記第二挿入部は、前記第二収容部に挿入されると共に、前記脚部本体または前記ロック部材の他方と前記第二接続部材によって接続されている、
請求項1または2に記載の車両強制停止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両強制停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路工事中に車線規制を行う際に、誤って車両が進入してきた場合に備え、道路上には、車両を強制的に停止させるための車両強制停止装置が配置されることがある(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
このような車両強制停止装置は、主に、ベース部と、車両止め部と、車両乗り上げ部と、を備えている。車両乗り上げ部は、複数の脚部材を備える。各脚部材は、脚部本体と、脚部本体の第一端部に固定されたフランジ部材と、脚部本体の第二端部に固定されたロック部材と、を備える。車両強制停止装置の使用時に、フランジ部材は道路上に配置され、ロック部材は車両止め部に係止される。車両が、車両乗り上げ部に乗り上げたとき、あるいは、車両止め部に衝突したとき、ベース部および脚部材に荷重が掛かる。道路に対するベース部および脚部材の摩擦力により、車両強制停止装置の移動が規制されるため、車両を強制的に停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3137897号公報
【特許文献2】実用新案登録第3222426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の脚部材は、脚部本体を構成する角パイプの両端をフランジ部材およびロック部材の形状に合わせて切断し、脚部本体の両端にそれぞれフランジ部材およびロック部材を溶接することにより製造されていた。しかし、切断や溶接によって脚部材を製造する場合、脚部材ごとに長さに違いが生じる。その結果、ベース部の一部や、一部の脚部材が道路に十分に接地せず、車両強制停止装置の制動力が十分に発揮されないおそれがある。
【0006】
本発明は、制動力が向上した車両強制停止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
ベース部と、
前記ベース部から延びる車両止め部と、
前記車両止め部に対して、展開位置と折り畳み位置との間で移動可能な複数の脚部材を有する車両乗り上げ部と、
を備え、
各脚部材は、
第一端部および前記第一端部とは反対側の第二端部を有し、中空部材から成る脚部本体と、
第一接続部材と、
前記第一接続部材によって前記脚部本体の第一端部に接続され、前記展開位置において道路上に配置される、鋳型成形品であるフランジ部材と、
第二接続部材と、
前記第二接続部材によって前記脚部本体の第二端部に接続され、前記展開位置において前記車両止め部に係止される、鋳型成形品であるロック部材と、
を備える車両強制停止装置。
【0008】
(項目2)
前記脚部本体または前記フランジ部材の一方は、第一挿入部を備え、
前記脚部本体または前記フランジ部材の他方は、前記第一挿入部が挿入される第一収容部を備え、
前記第一挿入部は、前記第一収容部に挿入されると共に、前記脚部本体または前記フランジ部材の他方と前記第一接続部材によって接続されている、
項目1に記載の車両強制停止装置。
【0009】
(項目3)
前記脚部本体または前記ロック部材の一方は、第二挿入部を備え、
前記脚部本体または前記ロック部材の他方は、前記第二挿入部が挿入される第二収容部を備え、
前記第二挿入部は、前記第二収容部に挿入されると共に、前記脚部本体または前記ロック部材の他方と前記第二接続部材によって接続されている、
項目1または2に記載の車両強制停止装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両強制停止装置では、鋳型成形によって高精度で作製されたフランジ部材およびロック部材を使用している。また、フランジ部材およびロック部材は、溶接ではなく、第一接続部材および第二接続部材によって脚部本体に接続されている。したがって、脚部本体を構成する中空部材の両端を切断したり、脚部本体の両端にそれぞれフランジ部材およびロック部材を溶接したりする必要がないため、均一な長さおよび角度の脚部材を得ることができる。これにより、ベース部およびすべてのフランジ部材の裏面が道路に十分に接地するため、道路に対するベース部およびフランジ部材の摩擦力を高めることができる。その結果、車両強制停止装置の制動力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両強制停止装置の斜視図である。
図2】(a)展開位置にある車両強制停止装置の側面図、(b)折り畳み位置にある車両強制停止装置の側面図である。
図3】(a)脚部材の分解斜視図、(b)(a)のIIIb-IIIb線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しつつ、本発明の車両強制停止装置10について説明する。
【0013】
<1 車両強制停止装置の構造>
車両強制停止装置10は、道路上に設置され、誤って侵入してきた車両を強制的に停止させるための装置である。図1に示すように、車両強制停止装置10は、ベース部1と、車両止め部2と、車両乗り上げ部3と、リンク棒4と、を備える。車両強制停止装置10は、使用状態である展開位置(図1図2(a)参照)と、非使用状態である折り畳み位置(図2(b)参照)との間で変形可能である。
【0014】
ベース部1は、道路上に配置される部分であり、道路との摩擦力によって車両強制停止装置10の移動を規制する。ベース部1の裏面(つまり、道路との接触面)は、道路との摩擦力を高めるための抵抗部を備えることが好ましい。抵抗部は、例えば、ベース部1の裏面にゴム等の高摩擦部材を取り付けたり、ベース部1の裏面に凹凸を設けたりすることによって構成できる。
【0015】
車両止め部2は、車両のフロント部分が接触して、車両を止める部分である。図1に示すように、車両止め部2は、複数の柱部材21と、複数の柱連結部材22(22a,22b)と、を備える。複数の柱部材21は、互いに平行に配置されている。各柱部材21は、ベース部1に固定されており、ベース部1から立設している。柱連結部材22は、複数の柱部材21間に配置され、複数の柱部材21同士を接続している。両端の柱部材21のうち、一方の柱部材21(図1における手前側の柱部材21)の外面で、かつ、下側の柱連結部材22bとほぼ同じ高さに、突起部23が設けられている。後述するように、車両強制停止装置10の使用時に、下側の柱連結部材22bおよび突起部23には、車両乗り上げ部3のロック部材314が係止される。
【0016】
車両乗り上げ部3は、車両の前輪が乗り上げた際に、車両の下方に位置することになる部分である。図1に示すように、車両乗り上げ部3は、複数の脚部材31と、脚連結部材32と、を備える。脚連結部材32は、複数の脚部材31同士を連結している。
【0017】
図2に示すように、車両乗り上げ部3は、リンク棒4によってベース部1と接続されており、展開位置(図2(a)参照)と、折り畳み位置(図2(b)参照)との間で、車両止め部2に対して移動可能である。
【0018】
図3に示すように、各脚部材31は、脚部本体311と、フランジ部材312と、第一接続部材313と、ロック部材314と、第二接続部材315と、を備える。
【0019】
脚部本体311は補強板3111を備える金属製の角パイプから成り、内部空間は補強板3111によって複数の空間に区画されている。後述するように、脚部本体311の内部空間は、フランジ部材312の第一挿入部3122およびロック部材314の第二挿入部3142を収容するための収容部として機能する。
【0020】
フランジ部材312は、金属材料製の鋳型成形品(鋳造品)である。フランジ部材312は、平板状のフランジ本体3121と、第一挿入部3122と、を備え、脚部本体311の第一端部に接続されている。フランジ本体3121の裏面は、車両強制停止装置10を道路上に設置したときに、道路と接触する。フランジ本体3121の裏面は、道路との摩擦力を高めるための抵抗部を備えることが好ましい。フランジ本体3121の抵抗部の構成は、ベース部1の抵抗部と同じ構成を採用できる。第一挿入部3122は、フランジ本体3121から突出している。第一挿入部3122は、脚部本体311の内部空間内に挿入され、第一接続部材313によって、脚部本体311と接続されている。第一接続部材313は、例えばボルトである。
【0021】
ロック部材314は、金属材料製の鋳型成形品(鋳造品)である。ロック部材314は、ロック本体3141と、第二挿入部3142と、を備え、脚部本体311の第二端部に接続されている。ロック本体3141は、車両止め部2の下側の柱連結部材22bまたは突起部23を挿入するための切欠き3141aを備える。切欠き3141a内に下側の柱連結部材22bまたは突起部23が収容されることにより、脚部本体311は車両止め部2にロックされる。第二挿入部3142は、ロック本体3141から突出している。第二挿入部3142は、脚部本体311の内部空間内に挿入され、第二接続部材315によって、脚部本体311と接続されている。第二接続部材315は、例えばボルトである。
【0022】
<2 車両停止のメカニズム>
車両強制停止装置10が車両を停止させるメカニズムについて説明する。
【0023】
車両が主として小型車の場合、車両の前輪が車両乗り上げ部3に乗り上げると、車両強制停止装置10は車両と共に、道路上を滑りながら移動する。車両乗り上げ部3上の車両の質量によって、ベース部1およびフランジ本体3121が道路に押し付けられる。これにより、道路とベース部1およびフランジ本体3121との間に強い摩擦力が働くため、車両強制停止装置10および車両を減速させて停止させることができる。
【0024】
車両が主として中型車の場合、車両の前輪が車両乗り上げ部3に乗り上げた後、車両は車両止め部2に衝突する。車両の前輪が車両乗り上げ部3に乗り上げてから車両が車両止め部2に衝突するまでの間、車両の質量により、ベース部1およびフランジ本体3121が道路に押し付けられるため、道路とベース部1およびフランジ本体3121との間に強い摩擦力が働く。これにより、車両強制停止装置10および車両を減速させることができる。また、車両が車両止め部2に衝突した後、車両止め部2が車両進行方向へ倒れ、フランジ本体3121が道路から浮くように、車両強制停止装置10が車両進行方向に回転する。車両強制停止装置10が車両進行方向に回転することにより、テコの原理によって、ベース部1が道路に強く押し付けられるため、道路に対するベース部1の摩擦力が増加する。その結果、車両強制停止装置10および車両をさらに減速させて停止させることができる。
【0025】
車両が主として大型車の場合、すなわち、車両のフロントから前輪までの距離が車両止め部2から車両乗り上げ部3の後端までの距離よりも大きい場合、車両は、前輪が車両乗り上げ部3に乗り上げることなく、車両止め部2に衝突する。車両が車両止め部2に衝突した瞬間、道路とベース部1およびフランジ本体3121との間の摩擦力により、車両強制停止装置10および車両を減速させることができる。また、車両が車両止め部2に衝突した後、車両止め部2が車両進行方向へ倒れ、フランジ本体3121が道路から浮くように、車両強制停止装置10が車両進行方向に回転する。車両強制停止装置10が車両進行方向に回転することにより、テコの原理によって、ベース部1が道路に強く押し付けられるため、道路に対するベース部1の摩擦力が増加する。その結果、車両強制停止装置10および車両をさらに減速させて停止させることができる。
【0026】
<3 特徴>
本発明の車両強制停止装置10では、鋳型成形によって高精度で作製されたフランジ部材312およびロック部材314を使用している。また、フランジ部材312およびロック部材314はそれぞれ、溶接ではなく、第一接続部材313および第二接続部材315によって脚部本体311に接続されている。したがって、従来のように、脚部本体311を構成する角パイプの両端を切断したり、フランジ部材312やロック部材314を脚部本体311に溶接したりする必要がないため、脚部材31を均一な長さおよび角度で作製することができる。これにより、すべての脚部材31のフランジ部材312の裏面が十分に道路に接地するため、道路に対する各フランジ部材312の摩擦力を高めることができる。その結果、車両の前輪が乗り上げ部3に乗り上げたとき、および車両が車両止め部2に衝突した瞬間の、車両強制停止装置10の制動力を向上させることができる。また、各脚部材31が均一な長さおよび角度を有していることにより、ベース部1に均等に荷重が掛かるようになると共に、荷重の伝達効率も上がるため、道路に対するベース部1の摩擦力も高めることができる。その結果、車両の前輪が乗り上げ部3に乗り上げたとき、および車両が車両止め部2に衝突した瞬間に加え、車両強制停止装置10が車両進行方向に回転したときの車両強制停止装置10の制動力を向上させることができる。
【0027】
<4 変形例>
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明は、例えば、以下に示す変形例のように変更可能である。以下で説明する変形例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【0028】
(1)フランジ部材312が第一挿入部3122を備える代わりに、脚部本体311の第一端部が第一挿入部を備え、フランジ部材312がその第一挿入部を収容するための収容部(空間)を有していてもよい。
【0029】
(2)ロック部材314が第二挿入部3142を備える代わりに、脚部本体311の第二端部が第二挿入部を備え、ロック部材314がその第二挿入部を収容するための収容部(空間)を有していてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 車両強制停止装置
1 ベース部
2 車両止め部
3 車両乗り上げ部
31 脚部材
311 脚部本体
312 フランジ部材
3122 第一挿入部
313 第一接続部材
314 ロック部材
3142 第二挿入部
315 第二接続部材
図1
図2
図3