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<図1>
  • 特開-空調衣服用バッテリ装置 図1
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  • 特開-空調衣服用バッテリ装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001029
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】空調衣服用バッテリ装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/284 20210101AFI20221222BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221222BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221222BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20221222BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20221222BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20221222BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221222BHJP
   H02J 7/00 20060101ALN20221222BHJP
【FI】
H01M50/284
H05K7/20 D
H01M10/613
H01M10/6551
H01M50/204 401E
H01M50/204 401H
A41D13/002 105
H01L23/36 A
H02J7/00 302A
H02J7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076560
(22)【出願日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2021100710
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 元
(72)【発明者】
【氏名】高橋 遼輝
(72)【発明者】
【氏名】津森 友則
【テーマコード(参考)】
3B011
5E322
5F136
5G503
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3B011AA00
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC03
3B011AC06
3B011AC07
3B011AC21
3B011AC26
5E322AA01
5E322AA02
5E322AA03
5E322AA11
5E322AB01
5E322EA11
5E322FA04
5E322FA06
5F136BA04
5F136DA09
5F136DA27
5F136EA03
5F136EA66
5F136FA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CB02
5G503CC02
5G503DA02
5G503DA15
5G503EA05
5G503FA18
5G503GA01
5H031EE01
5H031KK01
5H040AA28
5H040AA37
5H040AS18
5H040DD08
5H040LL01
(57)【要約】
【課題】故障時に電流制限素子の加熱によって、可燃性物質に着火することのない空調衣服用バッテリ装置を提供する。
【解決手段】直列に配線された複数の電流制限素子9aは、熱伝導率が高い金属から成る1個のヒートシンク材9cの平面状の主面部9dに、それぞれの伝熱板9eを介して、横並びに取り付けられている。そして、一方の電流制限素子9aが経年劣化により破損状態となり、他方の正常な電流制限素子9aから通常時の2倍の発熱が生じた際に、短絡して発熱しなくなった一方の電流制限素子9aと共通のヒートシンク材9cに取り付けているので、ヒートシンク材9cによる個別ヒートシンク材の約2倍に相当する放熱面積から、約2倍の放熱を行うことができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体部内に、バッテリ部と、IC基板から成る制御基板部及び電流制限部を備え、前記バッテリ部と接続した制御部とを配置し、接続ケーブルを介して接続したファン部に、電力を供給する空調衣服用バッテリ装置であって、
前記電流制限部は、制限電流値を超過しないように出力電流を制限する複数の電流制限素子が直列に配置されており、複数の前記電流制限素子は、熱伝導率が高い金属から成る1個のヒートシンク材の平面状の主面部に、横並びに取り付けられていることを特徴とする空調衣服用バッテリ装置。
【請求項2】
複数の前記電流制限素子の各端子は、前記制御基板部の挿入孔部に挿入されており、
前記ヒートシンク材は前記主面部と、該主面部の裏面に平行に並設する複数の放熱板とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の空調衣服用バッテリ装置。
【請求項3】
前記制御基板部と、前記ヒートシンク材とは離間していることを特徴とする請求項2に記載の空調衣服用バッテリ装置。
【請求項4】
前記制御基板部と、前記ヒートシンク材の前記制御基板側の側面の一部とが接していることを特徴とする請求項2に記載の空調衣服用バッテリ装置。
【請求項5】
前記放熱板の先端部は、前記筐体部の内側面に接していることを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の空調衣服用バッテリ装置。
【請求項6】
複数の前記電流制限素子は、それぞれ伝熱板を介して、前記主面部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の空調衣服用バッテリ装置。
【請求項7】
ねじを前記電流制限素子、前記伝熱板及び前記ヒートシンク材のそれぞれのねじ孔に挿通させて、前記電流制限素子の平面部が前記主面部に前記伝熱板を介して、載置するように取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の空調衣服用バッテリ装置。
【請求項8】
前記電流制限素子は、半導体スイッチ素子であることを特徴とする請求項1に記載の空調衣服用バッテリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆発性雰囲気内で着用する空調装置付き衣服に着脱可能な空調衣服用バッテリ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、高温環境下での作業時等に作業者が着用し、取り付けられたファンにより衣服内に外気を吸入する空調衣服が知られている。この空調衣服は石油精製・石油化学・化学合成プラント等の可燃性のガスや可燃性液体から成る可燃性物質の蒸気が空気中に存在する雰囲気内で、着用するニーズも存在する。
【0003】
しかし、特許文献1に示すような通常の空調衣服は、爆発性雰囲気内における使用に耐え得るように防爆仕様が施されておらず、ファンに接続するケーブルの短絡等の原因による爆発性雰囲気内の可燃性物質への着火に対しては、無対策である。
【0004】
また、特許文献2には小電力の装置において、故障等による過電流が生じた場合に、発火等の事故を防止するMOSFETから成る電流制限素子を用いた電流制限回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-65861号公報
【特許文献2】特開2010-263730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の空調衣服のバッテリ装置に、上述の発火防止用の電流制限回路を設けた場合には、気温が高い場所で使用すると、発熱する電流制限素子が冷却され難くなるので、電流制限素子自体が高温になることがある。
【0007】
特に電流制限回路の出力側やそれに接続されるケーブル又はファンが、何らかの原因で短絡した場合においては、ファンが動作しないばかりでなく、ケーブルやファンが電気的な負荷としても作用しなくなるため、これらの負荷で消費されるべき電力が電流制限素子で消費されることになり、電流制限素子自体が非常に高温に達することもある。
【0008】
空調衣服を気温が高い爆発性雰囲気内で使用した場合に、上述のような出力側の短絡等の故障が発生すると、電流制限素子自体が通常時以上に発熱し非常に高温になるので、可燃性物質に着火する虞れがある。
【0009】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、空調衣服を爆発性雰囲気内で使用した場合に、故障時に電流制限素子の発熱によって可燃性物質に着火する虞れのない空調衣服用バッテリ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る空調衣服用バッテリ装置は、筐体部内に、バッテリ部と、IC基板から成る制御基板部及び電流制限部を備え、接続ケーブルを介して接続した前記ファン部に、電力を供給する空調衣服用バッテリ装置であって、前記電流制限部は、制限電流値を超過しないように出力電流を制限する複数の電流制限素子が直列に配置されており、複数の前記電流制限素子は、熱伝導率が高い金属から成る1個のヒートシンク材の平面状の主面部に、横並びに取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る空調衣服用バッテリ装置によれば、故障、破損等の原因により、直列に配線した複数の電流制限素子に対して、発熱温度に極端な差異が生じた場合であっても、複数の電流制限素子に取り付けた1個のヒートシンク材によって、複数の電流制限素子からの発熱を平滑化して、放熱することが可能である。従って、可燃性物質に着火するまで電流制限素子が異常加熱することを防止するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】空調衣服を背面から見た説明図である。
図2】衣服用空調装置のブロック回路構成図である。
図3】空調衣服用バッテリ装置の斜視図である。
図4】空調衣服用バッテリ装置の分解斜視図である。
図5】制御部の分解斜視図である。
図6】電流制限部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は空調衣服Wの背面から見た説明図である。空調衣服Wは、正面に開閉用のジッパーW1を備えた上着W2に、衣服用空調装置Mが取り付けられている。
【0014】
衣服用空調装置Mは、上着W2の背面に設けた図示しない取付孔に固定した複数個の例えば2個のファン部Fと、上着W2の内ポケット等に収納する空調衣服用バッテリ装置1と、各ファン部F及び空調衣服用バッテリ装置1を接続する複数の接続ケーブルCとから構成されている。
【0015】
円盤状のファン部Fは、上着W2に対して左右対称になるように配置されており、ハウジング内に羽根部F1が収納されている。この羽根部F1を回転させるモータに対して接続ケーブルCを介して電力供給を行い、羽根部F1を高速に回転させることで、外気を上着W2内に吸入する。ジッパーW1を閉じた状態の上着W2内では、矢印の方向に気流Kが発生し、上着W2内の空気は首や手首の隙間を介して、外部に排出される。
【0016】
このようにファン部Fのモータの駆動により、上着W2内は涼しい状態が維持される。なお、ファン部Fは直流で動作する軸流ファン以外に、遠心ファン等の適宜のファンを採用することも可能である。
【0017】
ファン部Fのハウジングは本体部と固定枠部とから成り、これらで上着W2の取付孔を挟持することで固定されている。ファン部Fの故障時等には、本体部から固定枠部を分離することで、容易に上着W2からファン部Fを取り外すことが可能である。
【0018】
ファン部F毎に独立して配線される接続ケーブルCの一方の端部には、端子挿入部3bと接続する接続端子部C1が設けられている。接続ケーブルCの他方の端部は、ファン部Fと連結しているように図示しているが、端子挿入部3b及び接続端子部C1と同様に取り外し可能としてもよい。
【0019】
図3は空調衣服用バッテリ装置1の斜視図であり、図4は分解斜視図である。空調衣服用バッテリ装置1は、上面を解放した箱状の基部2と、基部2を上方から被せて密閉する上蓋部3とから成る筐体部4内に、リチウムイオン電池等から成るバッテリ部5と、このバッテリ部5と接続される制御部6とが収納されている。
【0020】
基部2には、バッテリ部5が収納される空間及び制御部6が収納される空間を区分けする内壁部2aと、上蓋部3を位置決めする位置決め部2bが立設している。そして、内壁部2aの両端には、バッテリ部5のプラス極、マイナス極の電力線5a、5bを制御部6側に配線するための1対の凹部2cが設けられている。
【0021】
基部2の外表面には、ファン部Fに対する電力供給をオン・オフする電源スイッチ部2dと、バッテリ部5の残量を表示する残量表示部2eと、接続ケーブルCの接続端子部C1を挿入する端子用接続部2fと、商用電源等から充電ケーブルを介して、充電可能な充電用挿入部2gとが設けられている。
【0022】
上蓋部3には基部2の内壁部2aに先端同士が接する内壁部3aと、接続ケーブルCの接続端子部C1を挿入する端子挿入部3bが設けられている。また、上蓋部3の内壁部3aには、基部2の内壁部2aと同様に、凹部3cと、基部2の位置決め部2bの先端を挿入する図示しない被位置決め部とが設けられている。
【0023】
基部2を上蓋部3により密閉すると、内壁部2a、3aには凹部2c、3cから成る矩形孔内に、シリコン樹脂材等から成る密封性の高い立方体状のシール材7が嵌入されている。
【0024】
このシール材7は中央に電力線5a又は電力線5bを挿通する貫通孔7aと、この貫通孔7aの周囲を取り囲むように凹設した溝部7bとを備えている。凹部2c、3cの周辺の内壁部2a、3aに、シール材7の溝部7bを押し込んだ状態で、基部2に上蓋部3を閉止すると筐体部4に衝撃を加えてもシール材7が外れることはない。
【0025】
シール材7を内壁部2a、3aに嵌合することで、バッテリ部5が収納される空間と、制御部6が収納される空間を完全に分離することができる。このようにすることで、リチウムイオン電池から成るバッテリ部5から電解液が液漏れしても、制御部6側に電解液が浸水することはない。
【0026】
バッテリ部5は、例えば公称電圧3.7V、定格容量1.88Ahのリチウムイオン電池を、複数個を連結して使用し、バッテリ部5は充電用挿入部2gを介して充電可能な充電池に代えて、使い捨ての乾電池を採用することも可能である。なお、乾電池を採用する場合には、充電用挿入部2gを設ける必要はない。
【0027】
図5は制御部6の分解斜視図であり、図6は電流制限部9の分解斜視図である。制御部6は2枚のIC基板をL字形に配置した制御基板部8と、この制御基板部8と接続する複数の電流制限部9とから構成されている。なお、複数の電流制限部9の個数は、上着W2に取り付けたファン部Fの個数と同数である。
【0028】
制御基板部8は、第1の基板8aと第2の基板8bとが連結端子8cを介して接続されている。第1の基板8aには電流制限部9の電流制限素子9aの各端子9bを挿入する挿入孔部8dが設けられており、第2の基板8bには、電源スイッチ部2dとオン・オフするように接触するスイッチ端子8eと、筐体部4の端子用接続部2f、端子挿入部3bと接続する出力端子8fと、基部2の残量表示部2eの裏面に配置された図示しないLED素子の端子を接続する接続孔8gとが設けられている。なお、残量表示部2eにはバッテリ部5の残量に応じて、複数のLED素子が点灯するようにされている。
【0029】
図2に示すように、ファン部F毎に対応するように並列に配置された電流制限部9には、それぞれ過電流が発生しないように出力電流を制御する2個の電流制限素子9aが直列に配置されている。
【0030】
これらの電流制限素子9aは、例えばゲート部に印加するゲート電圧によってソース・ドレイン間の電流を制御する電界効果トランジスタ(FET素子)等の半導体スイッチ素子が採用され、適宜のゲート電圧を設定することで、制限電流値を超過しないように出力電流が制限される。電流制限素子9aのゲート、ソース、ドレインの各端子9bは、第1の基板8aの挿入孔部8dに挿入されている。また、電流制限素子9aは、FET素子以外に、例えば抵抗素子を採用してもよい。
【0031】
電流制限素子9aの制限電流値は、羽根部F1が安定して回転駆動しているときの定格電流値Iaと同値、又は定格電流値Iaより若干高く設定されている。電流制限素子9aを直列とする二重系にすることで、一方の電流制限素子9aが故障し、出力電流を制限できなくなったとしても、故障していない他方の電流制限素子9aにより、制限電流値を超過しないように維持することができる。
【0032】
直列に配線された複数の電流制限素子9aは、熱伝導率が高い金属から成る1個のヒートシンク材9cの平面状の主面部9dに、それぞれの伝熱板9eを介して、横並びに取り付けられている。これらの熱伝導性の良い絶縁材料から成る伝熱板9eの両面には、熱伝導率の高いペースト状シリコン材等の粘着層を設けてもよく、更には伝熱板9eを配置せずに、上述のペースト状シリコン材をヒートシンク材9cの主面部9dと、電流制限素子9aとの間に配置するようにしてもよい。
【0033】
図6に示すように、ねじ9fを電流制限素子9a、伝熱板9e及びヒートシンク材9cのそれぞれのねじ孔9gに挿通させて、電流制限素子9aの平面部9hがヒートシンク材9cの主面部9dに伝熱板9eを介して、載置するように取り付けられている。このように取り付けることで、電流制限素子9aが発熱した際に熱がヒートシンク材9cに効率良く伝達することになる。
【0034】
ヒートシンク材9cの主面部9dの裏面には、主面部9dに対して直交して複数の放熱板9iが平行に並設されている。このように多数の放熱板9iを配置することで表面積が大きくなり、放熱効率を高めることになる。
【0035】
また、電流制限素子9aの各端子9bを第1の基板8aの挿入孔部8dに挿入して固定した際に、ヒートシンク材9cの第1の基板8a側の側面9jと、第1の基板8aとの間に隙間が生じ、離間している。
【0036】
このようにヒートシンク材9cの側面9jと、第1の基板8aとに隙間を設けることで、通常では基板に設置されたヒートシンク材によりIC部品の配置が制限されるのに対して、第1の基板8aの上下面にIC部品をヒートシンク材9cにより制限されることなく、効率的に配置することができる。
【0037】
また、ヒートシンク材9cの第1の基板8a側の側面9jの一部を、IC部品の配置を制限しない範囲で、第1の基板8aに接するようにしてもよい。第1の基板8aとヒートシンク材9cが接することで、ヒートシンク材9cの熱が第1の基板8aに伝わり放熱性が増すことになる。また、ヒートシンク材9cの放熱板9iの先端部を筐体部4の内側面に接することで、更に放熱性を増すことが可能である。
【0038】
なお、本実施例では2個の電流制限素子9aを配置しているが、電流制限部9の電流制限素子9aは、3個以上の複数個を直列に配置して構成してもよく、制限電流値を超過しないように出力電流を制限することができれば、素子の個数は適宜に決めることができる。
【0039】
図3の状態において、電源スイッチ部2dを押圧すると電源が入り、ファン部Fの定格電流値Ia、及びファン部Fを駆動させるために印加する電圧である定格電圧に基づくモータの回転により、羽根部F1から適度な風量が発生する。
【0040】
そして、外気が上着W2内に吸入され、矢印の方向に気流Kが発生し、上着W2内の空気は首や手首の隙間を介して外部に排出されるので、上着W2内の涼しい状態が維持される。このときに、電流制限部9の電流制限素子9aは、羽根部F1から常に適度な風量が発生するように、ファン部Fに供給する電流を制限する。電流制限素子9aは制限した電流に応じて発熱するが、ヒートシンク材9cから放熱することにより、安定した動作を継続することができる。
【0041】
ヒートシンク材9cからの放熱量は、電流制限素子9aに最大の電流が供給される際に、電流を制限する動作によって発生する熱量を放熱できるように設定される。そして、この設定された放熱量が得られるように、ヒートシンク材9cの寸法や材質、放熱板9iの高さや枚数等の電流制限部9の仕様は、適宜に設計されている。例えば、電流制限素子9aの出力側、制御部6に接続する接続ケーブルCやファン部F等に短絡が発生した場合に、電流制限素子9aに最大の電流が供給されると想定し、環境温度は40℃であると仮定して、最大でも電流制限素子9aの表面温度が135℃以下となるようにヒートシンク材9c、放熱板9i等の電流制限部9は熱設計され、電流制限素子9aが熱破壊されないようにされている。
【0042】
電流制限部9の電流制限素子9aは、羽根部F1から常に適度な風量が吸入されるように継続して電流制限を行うため、動作時間の増大や高温下での動作の繰り返し等に伴って、経年劣化して徐々に電流制限機能が十分に機能しなくなる。そして、遂には短絡等の原因によって電流制限機能が破壊され、無制限に電流が流れる等の不具合が発生することがある。この不具合は、素子毎に特性がばらつくため、一対の電流制限素子9aに同時に発生することはなく、通常は一方の電流制限素子9aのみに先に不具合が発生することになる。
【0043】
例えば、一方の電流制限素子9aが経年劣化により破損状態となり、短絡すると電気抵抗がほぼゼロとなり、消費電力はほぼゼロとなる。従って、短絡した電流制限素子9aは電流を制限しなくなると共に発熱も生じなくなる。このため、正常に動作している他方の電流制限素子9aが、定格電流値Iaへの電流制限を全て行うことになる。
【0044】
このとき、正常に動作している他方の電流制限素子9aには、通常動作における2個分の負荷が掛かることになり、消費電力はほぼ2倍となる。つまり、他方の電流制限素子9aからは、2倍の消費電力に対応する2倍の発熱が生ずる。
【0045】
つまり、制御部6によるファン部Fへの電力供給に限れば、一方の電流制限素子9aが破損して、素子自体が異常発熱するように他方の電流制限素子9aのみが正常に動作している場合であっても、2個の電流制限素子9aが共に正常に動作している時と同様に、通常通りに電力供給が行われる。空調衣服Wの着用者は、上蓋部3を開いて制御部6内の各部材の状況を確認することはないので、ファン部Fへの電力供給が正常に行われている以上、たとえ一方の電流制限素子9aが破損していても、それに気が付くことはない。
【0046】
2個の電流制限素子9aが共に正常に動作している場合には、両素子からほぼ同等の発熱が生ずるため、2個の電流制限素子9aを共通のヒートシンク材9cに取り付けても、或いはそれぞれを個別のヒートシンク材に取り付けても、ヒートシンク材9cが個別のヒートシンク材のほぼ2倍の大きさとなるので、両者の放熱特性に大きな差異はない。
【0047】
しかし、上述のように一方の電流制限素子9aが経年劣化により破損状態となり、他方の正常な電流制限素子9aから通常時の2倍の発熱が生ずるようになった場合には、両者の放熱特性に大きな差異が生ずる。図5及び図6に示すように、短絡して発熱しなくなった一方の電流制限素子9aと他方の正常な電流制限素子9aを共通のヒートシンク材9cに取り付けている場合には、ヒートシンク材9cが高い熱伝導率を有するので、ヒートシンク材9cによる個別ヒートシンク材の約2倍に相当する放熱面積から、約2倍の放熱を行うことができる。
【0048】
従って、他方の正常に動作する電流制限素子9aから2倍の発熱があっても、ヒートシンク材9cによる個別のシートシンク材の約2倍の放熱特性によって、確実に正常な電流制限素子9aから必要な熱量の放熱を行うことができる。たとえ、この状態で電流制限素子9aの出力側、接続ケーブルC、ファン部F等に短絡の故障が発生したために、電流制限素子9aが過剰な電流の制限をすることになり、発熱量が通常時よりも増大したとしても、環境温度40℃のときに電流制限素子9aは最大表面温度135℃以下を維持できるので、1個の正常な電流制限素子9aの熱破壊を防止することができる。同時に、爆発性雰囲気内において可燃性物質に着火するに至る温度まで、正常な電流制限素子9aが発熱することもない。
【0049】
これに対して、従来のように2個の電流制限素子9aを、それぞれ個別にヒートシンク材に取り付けた場合には、個別のヒートシンク材からは通常の電流制限素子9aの1個分の発熱量しか放熱することはできない。従って、1個の正常な電流制限素子9aからの2倍の発熱によって、その表面温度は約2倍の温度上昇を起こすことになる。このときに、電流制限素子9aの出力側、接続ケーブルC、ファン部F等に短絡の故障が発生すれば、放射伝熱の効果を無視すると、環境温度40℃のときに電流制限素子9aの最大表面温度は230℃程度まで達することになるので、1個の正常な電流制限素子9aの熱破壊を回避することは困難となる。そして、爆発性雰囲気内で可燃性物質への着火する温度が例えば230℃程度の場合には、可燃性物質へ着火する虞れも生ずる。
【0050】
なお、直列に配置した3個以上の電流制限素子9aを共通のヒートシンク材9cに取り付けることも可能であり、このような場合は、1つの電流制限素子9aが破損した場合には、破損した電流制限素子9a分の消費電力を、正常に動作している電流制限素子9aの個数で割った消費電力が、正常の電流制限素子9a分の消費電力に加算されることになる。このような場合も、共通のヒートシンク材9cによって、同様な放熱効果が得られることになる。
【0051】
更には、電流制限素子9aの破損には、発熱量の多い抵抗値を持った状態となる破損も存在し、この破損状態が一方の電流制限素子9aに発生した場合であっても、他方の電流制限素子9aが正常であれば、共通のヒートシンク材9cによって、同様な放熱効果が得られることになる。
【0052】
このように、複数個の電流制限素子9aを共通の1個のヒートシンク材9cに取り付けることによって、複数個の電流制限素子9aの何れかに短絡等による不具合が発生した場合にも、常に安定した放熱特性を実現することができる。
特に、電流制限素子9aの出力側、接続ケーブルC、ファン部F等に短絡の故障が発生し、過剰な電流の制限をするために電流制限素子9aの発熱量が、通常時よりも増大する場合であっても、確実に電流制限素子9aからの放熱を行い、正常に動作している電流制限素子9aの熱破壊を防止することができる。その結果、実施例の空調衣服用バッテリ装置の電流制限部9は異常な高温に達することはないので、爆発性雰囲気内で使用しても、着火につながる可能性は極めて低い。
【0053】
このように直列に配線した複数の電流制限素子9aのうちの1個が破損して、正常に動作する電流制限素子9aのみから全消費電力に相当する発熱が生ずる場合であっても、複数の電流制限素子9aを取り付けた1個のヒートシンク材9cによって、複数の電流制限素子9aがすべて正常に動作している場合の総発熱量に相当する熱量を放熱することができる。従って、たとえ電流制限素子9aの出力側、接続ケーブルC、ファン部F等に短絡の故障が発生したとしても、爆発性雰囲気内での使用において可燃性物質への着火を引き起こすことはない。
【0054】
以上に述べたように、本発明に係る空調衣服用バッテリ装置1によれば、故障、破損等の原因により、直列に配線した複数の電流制限素子9aに対して、発熱温度に極端な差異が生じた場合であっても、複数の電流制限素子9aに取り付けた1個のヒートシンク材によって、複数の電流制限素子9aからの発熱を平滑化して、放熱することが可能である。従って、可燃性物質に着火するまで電流制限素子9aが異常加熱することを防止するこができる。
【符号の説明】
【0055】
1 空調衣服用バッテリ装置
2 基部
3 上蓋部
4 筐体部
5 バッテリ部
6 制御部
8 制御基板部
8a 第1の基板
8d 挿入孔部
9 電流制限部
9a 電流制限素子
9b 端子
9c ヒートシンク材
9d 主面部
9e 伝熱板
9g ねじ孔
9h 平面部
9i 放熱板
9j 側面
C 接続ケーブル
F ファン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6