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特開2023-102901監視装置、監視方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102901
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】監視装置、監視方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20230719BHJP
   B61L 23/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B61L25/02 Z
B61L23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003644
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】川内 章央
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 耕作
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA02
5H161BB17
5H161BB20
5H161DD50
5H161FF07
(57)【要約】
【課題】計測値を適切に監視することができる監視装置、監視方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】監視装置は、計測波形の各計測値と基準波形の各基準計測値との距離に基づいて計測波形を非線形に伸縮する非線形伸縮部と、計測波形を非線形に伸縮することで得られた所定値に基づいて計測波形に異常があるか否かを判定する判定部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測波形の各計測値と基準波形の各基準計測値との距離に基づいて前記計測波形を非線形に伸縮する非線形伸縮部と、
前記計測波形を非線形に伸縮することで得られた所定値に基づいて前記計測波形に異常があるか否かを判定する判定部と
を備える監視装置。
【請求項2】
前記所定値は、非線形に伸縮した前記計測波形の各計測値の各伸縮量であり、
前記判定部は、前記伸縮量に所定の伸縮量閾値以上のものがある場合に前記計測波形に異常があると判定する
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記計測波形の各計測値の少なくとも一部に位置情報が紐付けられていて、
前記位置情報を用いて、前記伸縮量が前記伸縮量閾値以上である前記計測値に対応する位置を特定する位置特定部を
さらに備える請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記位置特定部は、前記伸縮量が前記伸縮量閾値以上である複数の前記計測値のうちピーク値を有する前記計測値に対応する位置を特定する
請求項3に記載の監視装置。
【請求項5】
前記所定値は、非線形伸縮した前記計測波形と前記基準波形との相関係数であり、
前記判定部は、前記相関係数が所定の相関係数閾値以下である場合に前記計測波形に異常があると判定する
請求項1に記載の監視装置。
【請求項6】
前記計測波形および前記基準波形は、軌道を走行する車両で計測された加速度波形である
請求項1から5のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項7】
計測波形の各計測値と基準波形の各基準計測値との距離に基づいて前記計測波形を非線形に伸縮するステップと、
前記計測波形を非線形に伸縮することで得られた所定値に基づいて前記計測波形に異常があるか否かを判定するステップと
を含む監視方法。
【請求項8】
計測波形の各計測値と基準波形の各基準計測値との距離に基づいて前記計測波形を非線形に伸縮するステップと、
前記計測波形を非線形に伸縮することで得られた所定値に基づいて前記計測波形に異常があるか否かを判定するステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視装置、監視方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に加速度計を取り付け、走行中の加速度データを取得し、車両および軌道の状態をモニタリングする場合、車両の位置を精度良く特定することが求められる。特許文献1には、列車位置特定方法の一例が記載されている。特許文献1に記載されている列車位置特定方法は、曲率の測定データを取得するステップと、曲率の記憶データのうち曲率の測定データとの乖離度が最小になる部分を抽出し、抽出された部分と曲率の測定データとの乖離度を乖離度の最小値として取得するステップと、乖離度の最小値が閾値以下の場合、列車の位置を、乖離度が最小になる部分における距離位置に基づいて特定し、乖離度の最小値が閾値を超えた場合、列車の位置を、車軸回転数より得られた走行速度から算出された走行距離に基づいて特定するステップと、を有する。すなわち、特許文献1に記載されている列車位置特定方法では、曲率の記憶データと曲率の測定データとの照合が容易な区間では曲率の照合結果に基づいて位置が特定され、容易でない区間では車軸回転速度に基づいて位置が特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-19333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されている列車位置特定方法を用いて位置を特定する場合、曲率の照合結果に基づいて位置の特定が容易でない区間では車軸回転速度に基づいて位置が特定される。このため、曲率の照合結果に基づいて位置の特定が容易でない区間では、例えば、車軸の1回転当たりの距離の誤差や、車輪の滑り等によって、車軸回転速度の積分からでは正確な位置を把握することが難しい場合に、位置を精度良く特定することができなくなる。位置を精度良く特定できない場合、例えば、基準値との比較によって計測値を監視するとき、計測値を適切に監視することができないことがあるという課題がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、計測値を適切に監視することができる監視装置、監視方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る監視装置は、計測波形の各計測値と基準波形の各基準計測値との距離に基づいて前記計測波形を非線形に伸縮する非線形伸縮部と、前記計測波形を非線形に伸縮することで得られた所定値に基づいて前記計測波形に異常があるか否かを判定する判定部とを備える。
【0007】
本開示に係る監視方法は、計測波形の各計測値と基準波形の各基準計測値との距離に基づいて前記計測波形を非線形に伸縮するステップと、前記計測波形を非線形に伸縮することで得られた所定値に基づいて前記計測波形に異常があるか否かを判定するステップとを含む。
【0008】
本開示に係るプログラムは、計測波形の各計測値と基準波形の各基準計測値との距離に基づいて前記計測波形を非線形に伸縮するステップと、前記計測波形を非線形に伸縮することで得られた所定値に基づいて前記計測波形に異常があるか否かを判定するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の監視装置、監視方法およびプログラムによれば、計測値を適切に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図2図1に示す車両3(車両3a~3c)における加速度センサ32(加速度センサ32a~32c)の設置例を示す側面図である。
図3】本開示の実施形態に係る軌道の構成例を模式的に示す平面図である。
図4図1に示す基準加速度波形データベース261の構成例を示す模式図である。
図5図1に示す計測加速度波形データベース263の構成例を示す模式図である。
図6】本開示の実施形態に係る加速度監視装置の動作例を説明するための模式図である。
図7図1に示す監視結果データベース265の構成例を示す模式図である。
図8】本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。
図9】本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置の動作例を説明するための模式図である。
図10】本開示の第2実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。
図11】本開示の第3実施形態に係る加速度監視装置の構成例を示すブロック図である。
図12】本開示の第3実施形態に係る計測加速度波形データベースの構成例を示す模式図である。
図13】本開示の第3実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。
図14】本開示の第3実施形態に係る加速度監視装置の動作例を説明するための模式図である。
図15】本開示の実施形態に係る加速度監視装置の作用効果を説明するための波形図である。
図16】本開示の実施形態に係る加速度監視装置の作用効果を説明するための波形図(比較例)である。
図17】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態に係る監視装置、監視方法およびプログラムについて説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0012】
<第1実施形態>
以下、図1図9図15および図16を参照して、本開示の第1実施形態に係る監視装置、監視方法およびプログラムについて説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置の構成例を説明するためのブロック図である。図2は、図1に示す車両3(車両3a~3c)における加速度センサ32(加速度センサ32a~32c)の設置例を示す側面図である。図3は、本開示の実施形態に係る軌道の構成例を模式的に示す平面図である。図4は、図1に示す基準加速度波形データベース261の構成例を示す模式図である。図5は、図1に示す計測加速度波形データベース263の構成例を示す模式図である。図6は、本開示の実施形態に係る加速度監視装置の動作例を説明するための模式図である。図7は、図1に示す監視結果データベース265の構成例を示す模式図である。図8は、本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。図9は、本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置の動作例を説明するための模式図である。図15は、本開示の実施形態に係る加速度監視装置の作用効果を説明するための波形図である。図16は、本開示の実施形態に係る加速度監視装置の作用効果を説明するための波形図(比較例)である。
【0013】
(加速度監視装置2の構成)
図1に示す加速度監視装置2は、本開示に係る監視装置の一構成例である。加速度監視装置2は、本開示に係る計測波形が軌道を走行する車両で計測された加速度波形である場合の監視装置の例である。ただし、本開示に係る計測波形は、軌道を走行する車両で計測された加速度波形に限定されない。本開示の監視装置は、計測値の時系列である計測波形一般に適用することができる。
【0014】
加速度監視装置2は、例えばゴムタイヤ式新交通システム(AGT:Automated Guideway Transit)1の一要素として構成される。図1に示すゴムタイヤ式新交通システム1は、例えば、加速度監視装置2と、複数の車両3と、複数の地上装置4と、運行管理装置5とを備える。
【0015】
運行管理装置5は、複数の車両3からなる複数の列車の運行を制御する装置であって、地上装置4を介して車両3との間で所定の制御信号を送受信する。地上装置4は、例えば、運行管理装置5と車両3との間の通信を中継する。
【0016】
なお、本実施形態では、車両3は、一例として図3に示す軌道T1を走行するものとする。軌道T1は、走行方向が定められた2つの走行レーンDL1と走行レーンDL2を有する。また、軌道T1には、駅ST1と、駅ST2が設けられている。この場合、駅ST1から駅ST2までが1つの区間SEC1である。また、軌道T1は、軌道T1の一部の領域である着目領域RI1と着目領域RI2が予め定義されている。本実施形態において着目領域とはその領域で発生する加速度が監視対象となる領域であり、図3に示す例では、着目領域RI1と着目領域RI2は、エキスパンションジョイントEJ1とエキスパンションジョイントEJ2とそれぞれを囲む領域である。軌道T1では、エキスパンションジョイント等の段差や、図示していない分岐位置では、比較的大きな加速度が発生する。
【0017】
図1に示すように、車両3は、車上装置31と、1または複数の加速度センサ32と、位置特定情報取得装置33とを備える。車上装置31は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、制御部311と、記憶部312と、通信部313とを備える。
【0018】
車上装置31において、制御部311は、通信部313が地上装置4を介して運行管理装置5から受信した制御信号に基づき、車両3が備える図示していないモータ等の動力源や操舵装置、乗降装置等を自動で制御する。また、制御部311は、加速度センサ32が検知した加速度を所定のサンプリング周期で取得して記憶部313に記憶し、所定のタイミングで地上装置4を介して運行管理装置5へ通信部313によって送信する。また、制御部311は、位置特定情報取得装置33が特定した位置特定情報を所定のサンプリング周期で取得して記憶部313に記憶し、所定のタイミングで地上装置4を介して運行管理装置5へ通信部313によって送信する。車上装置31は、例えば、駅と駅との間の1区間において取得した加速度センサ32が出力した時系列データと位置特定情報取得装置33が出力した時系列データを、駅到着時に地上装置4を介して運行管理装置5へまとめて送信する。ただし、加速度データと位置特定情報の送信タイミングはこの場合に限定されない。
【0019】
加速度センサ32は、例えば3軸の加速度を検知して検知した結果を制御部311へ出力する。位置特定情報取得装置33は、車両3の位置を特定するための情報を取得して制御部311へ出力する。位置特定情報取得装置33は、例えば、車両3が備えるタイヤ302(図2)の回転速度に応じた信号を取得して車両3の速度を表す信号を位置特定情報として出力する。あるいは、位置特定情報取得装置33は、全地球測位システム(GPS)の人工衛星が発する電波を受信することで求められた現在位置を表す緯度と経度を取得して、位置特定情報として出力する。
【0020】
加速度センサ32は、例えば図2に加速度センサ32a~32cとして示すように、列車30を構成する車両3a~3cにそれぞれ複数取り付けることができる。図2に示す例では、各車両3a~3cが備える各2個の台車303にそれぞれ加速度センサ32aと加速度センサ32cが取り付けられている。また、各車両3a~3cの各車体301に加速度センサ32bが取り付けられている。この場合、加速度センサ32a~32cは、例えば、前後、左右、および上下の3軸の加速度を検知して検知した加速度を表す信号を出力する。ただし、計測する加速度は、3方向すべてでなくても任意の1方向または2方向としてもよい。なお、台車303は、ゴムタイヤ302を回動可能に支持するとともに、空気ばね等の緩衝装置304を介して車体301に取り付けられている。また、図2に示す例では、車両3aに車上装置31と位置特定情報取得装置33が設けられている。
【0021】
一方、加速度監視装置2は、例えば、コンピュータとそのコンピュータの周辺装置や周辺回路等から構成され、コンピュータ等のハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として次の各部を備える。すなわち、加速度監視装置2は、機能的構成として、制御部21と、通信部22と、取得部23と、監視部24と、データベース管理部25と、記憶部26とを備える。また、監視部24は、非線形伸縮部241と、判定部242を備える。
【0022】
また、記憶部26は、基準加速度波形データベース261と、複数の基準加速度波形ファイル262と、計測加速度波形データベース263と、複数の計測加速度波形ファイル264と、監視結果データベース265とを記憶する。
【0023】
基準加速度波形データベース261は、監視対象とする各車両3で新たに計測された加速度波形である計測加速度波形に対して基準となる加速度波形である基準加速度波形に関する情報を管理するための情報である。基準加速度波形は、例えば標準的な車両3で各着目領域(着目領域RI1、着目領域RI2等)で計測された加速度波形である。図4は、基準加速度波形データベース261の構成例を示す。図4に示す基準加速度波形データベース261は、着目領域識別符号と、車両識別符号と、区間識別符号と、走行レーン識別符号と、加速度センサ識別符号と、計測位置と、計測方向と、正ピーク/負ピーク/実効値と、基準加速度波形ファイル名とを対応づけて記憶する。着目領域識別符号は、図3に示す着目領域を一意に識別する符号である。車両識別符号は、基準加速度波形を計測した車両3を一意に識別する符号である。区間識別符号は、着目領域が位置する区間を一意に識別する符号である。走行レーン識別符号は、計測した車両3が走行した走行レーンを一意に識別する符号である。加速度センサ識別符号は、計測した加速度センサ32を一意にあるいは車両3毎に識別する符号である。計測位置は、緩衝装置304(ばね)より車体側(ばね上)なのか台車側(ばね下)なのかを示す。計測方向は、加速度の方向が、上下方向なのか前後方向なのか左右方向なのかを示す。正ピーク/負ピーク/実効値は、基準加速度波形の正ピーク値と、負ピーク値と、実効値である。基準加速度波形ファイル名は、基準加速度波形を表す基準加速度波形ファイル262の名称である。図4に示す基準加速度波形データベース261の行C1は、例えば、図3に示す着目領域RI1で計測された基準加速度波形AWB1(ファイル名「FB001」)に対応する。また、図4に示す基準加速度波形データベース261の行C2は、例えば、図3に示す着目領域RI2で計測された基準加速度波形AWB2(ファイル名「FB201」)に対応する。
【0024】
基準加速度波形ファイル262は、各着目領域RI1、RI2等で計測された基準加速度波形を表すファイルである。本実施形態では基準加速度波形が含む計測値を基準計測値ともいう。この場合、基準加速度波形は基準計測値の時系列である。
【0025】
計測加速度波形データベース263は、例えば監視対象の各車両3で区間毎(区間SEC1等毎)に計測された加速度波形である計測加速度波形に関する情報を管理するための情報である。図5は、計測加速度波形データベース263の構成例を示す。図5に示す計測加速度波形データベース263は、計測日時(年月日時分秒)と、車両識別符号と、区間識別符号と、走行レーン識別符号、加速度センサ識別符号と、計測位置と、計測方向と、走行開始/終了時刻と、計測加速度波形ファイル名とを対応づけて記憶する。車両識別符号と、区間識別符号と、走行レーン識別符号と、加速度センサ識別符号と、計測位置と、計測方向は、基準加速度波形データベース261の各項目と同一である。走行開始/終了時刻は、当該区間の走行開始時刻(日時)と走行終了時刻(日時)である。計測加速度波形ファイル名は、計測加速度波形を表す計測加速度波形ファイル264の名称である。例えば、図6に示す区間SEC1で計測された計測加速度波形AWM1を表すファイルの名称「FM001」である。
【0026】
計測加速度波形ファイル263は、監視対象の車両3で計測された計測加速度波形を表すファイルである。計測加速度波形は計測値の時系列である。
【0027】
監視結果データベース265は、各着目領域(着目領域RI1、着目領域RI2等)について新たに計測された計測加速度波形に基づく加速度値(ピーク値、実効値等)の監視結果(あるいは評価結果)をまとめた情報である。図7は、監視結果データベース265の構成例を示す。図7に示す監視結果データベース265は、着目領域識別符号と、走行レーン識別符号と、車両識別符号と、計測日時と、加速度センサ識別符号と、計測方向と、監視結果とを対応づけて記憶する。着目領域識別符号と、走行レーン識別符号と、車両識別符号と、区間識別符号と、加速度センサ識別符号と、計測方向は、基準加速度波形データベース261の各項目と同一である。監視結果は、この例では、着目領域で計測された、正ピーク値と、負ピーク値と、実効値である。
【0028】
制御部21は、各部22~26を制御する。通信部22は、制御部21(あるいは取得部23)の指示に従って、例えば、運行管理装置5から車両3で計測された加速度の時系列データである加速度波形を例えば区間SEC1毎に受信する。なお、加速度の時系列データは、加速度の計測値の時系列データであり、例えば計測加速度波形である。ただし、通信部22は、制御部21(あるいは取得部23)の指示に従って、例えば、車両3から、車両3で計測された加速度波形を例えば区間SEC1毎に直接受信してもよい。図6は計測加速度波形AWM1の例を示す。制御部21(あるいは取得部23)は、例えば、運行管理装置5から、計測加速度波形AWM1(を示すデータを含むファイル)を取得し、記憶部26に計測加速波形ファイル264として記憶する。また、制御部21(あるいは取得部23)は、記憶した計測加速波形ファイル264についての情報を計測加速度波形データベース263に登録する。なお、制御部21(あるいは取得部23)は、運行管理装置5から、例えば計測加速度波形AWM1を取得する際に、次の各情報を取得することができる。すなわち、制御部21(あるいは取得部23)は、計測加速度波形AWM1の計測日時、計測した車両3の識別符号、計測した区間SEC1の識別符号、走行レーンの識別符号、計測した加速度センサ32の識別符号、加速度の方向を示す情報、走行開始および終了時刻を示す情報や、計測加速度波形AWM1に対応する位置特定情報の時系列データを取得することができる。
【0029】
取得部23は、例えば記憶部26から(あるいは車両3から)、監視(評価)しようとする、軌道T1を走行する車両3で計測された加速度波形である計測加速度波形(計測加速度波形ファイル264)を取得する。
【0030】
監視部24は、計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで基準加速度波形に対応させた加速度波形である非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視する。その際、監視部24では、非線形伸縮部241が、計測加速度波形の各計測値と基準加速度波形の各基準計測値との距離に基づいて計測加速度波形の時間軸を非線形に伸縮する。また、判定部242は計測加速度波形を非線形に伸縮することで得られた所定値に基づいて計測加速度波形に異常があるか否かを判定する。
【0031】
また、監視部24は、例えば第1の車両3で計測された計測加速度波形の所定の区間毎の加速度値(最大値や実効値)が区間毎の所定の閾値を超える場合、次のようにして第1の車両3に異常があるのか、または、軌道T1に異常があるのかを判定する。すなわち、監視部24は、第1の車両3と異なる第2の車両3で計測された計測加速度波形の区間毎の加速度値(最大値や実効値)と区間毎の閾値との比較結果に基づき、第1の車両3に異常があるのか、または、軌道T1に異常があるのかを判定する。
【0032】
監視の際、監視部24は、まず、非線形伸縮部241によって、基準となる加速度波形である基準加速度波形とのマッチング処理によって、モニタリングの対象とする計測加速度波形の時間軸を非線形に伸縮させる。マッチング処理は、計測加速度波形と基準加速度波形の2つの時系列データの相関係数が高まるように、2つの時系列データ間の距離の最短化を図る処理である。非線形伸縮部241は、計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで基準加速度波形に対応させた加速度波形である、非線形伸縮計測加速度波形を得る。非線形伸縮部241は、例えば図6に示す計測加速度波形AWM1と例えば図3に示す基準加速度波形AWB1や基準加速度波形AWB2とのマッチング処理によって、例えば図6に示す非線形伸縮計測加速度波形AWM1P1cや非線形伸縮計測加速度波形AWM1P2cを得る。非線形伸縮を実施して波形同士の相関係数を高くする手法としては、DP(Dynamic Programming)マッチング(動的計画法によるマッチング手法)や動的タイムワーピング等の手法がある。DPマッチングあるいは動的タイムワーピングは、2つの波形の対応する点間の距離が最小となるよう波形を非線形に伸縮させる技術であり、距離の定義として、距離の二乗和(Σ(xi-yi)^2)、差の絶対値の総和(Σ|xi-yi|)などがある。ここで、xiとyiは基準波形の各基準計測値と計測波形の各計測値である。なお、非線形伸縮計測加速度波形AWM1P1cは、計測加速度波形AWM1の一部である加速度波形AWM1P1の時間軸を非線形伸縮することで基準加速度波形AWB1に対応させた加速度波形である。また、非線形伸縮計測加速度波形AWM1P2cは、計測加速度波形AWM1の一部の加速度波形AWM1P2の時間軸を非線形伸縮することで基準加速度波形AWB2に対応させた加速度波形である。
【0033】
次に、判定部242が、計測加速度波形を非線形に伸縮することで得られた所定値に基づいて計測加速度波形に異常があるか否かを判定する。本実施形態において、所定値は、非線形に伸縮した計測加速度波形の各計測値の各伸縮量である。また、判定部242は、各伸縮量に所定の伸縮量閾値以上のものがある場合に計測加速度波形に異常があると判定する。図9は、基準加速度波形と計測加速度波形と非線形伸縮計測加速度波形との関係の例を模式的に示す。図9に示す基準加速度波形と計測加速度波形は、同一区間、同一走行レーンで計測されたものとする。横軸は時間、縦軸は加速度である。ただし、横軸の時間については、各計測値の各計測時刻と車両3の速度情報や位置情報とに基づき距離に置き換えてもよい。図9に示す例では、基準加速度波形がピークP1とピークP3を含んでいる。また、計測加速度波形がピークP1に対応するピークP11とピークP3に対応するピークP13を含むとともに、あらたなピークP12を含んでいる。ピークP12は、例えば軌道T1上に発生したなんらかの異常に対応する。また、図9に示す例で、DPマッチングによって非線形伸縮計測加速度波形では、基準加速度波形にないピークP12に対応するピークP12aの時間軸上の位置がピークP11の方向に移動している。一方、ピークP11に対応するピークP11aとピークP13に対応するピークP13aの時間軸上の位置はあまり変化していない。図9に示すような例では、大きな時間軸方向の伸縮により、加速度評価を誤る可能性がある。なお、本実施形態では、非線形伸縮する前の計測点の計測時刻t1と非線形伸縮後の同一の計測点の伸縮された計測時刻t2との時間差を伸縮量という。なお、横軸を距離とする場合は、伸縮前後の同一計測点間の位置の差を伸縮量とする。以下、時間差の場合の伸縮量を時間軸伸縮量ともいう。
【0034】
以上のように判定部242は、非線形伸縮計測加速度波形の各計測値の各伸縮量に所定の伸縮量閾値以上のものがあるか否かを判定する。そして、監視部24は、伸縮量閾値以上のものがある場合、例えば軌道の状態が大きく変化したとして、DPマッチングによる評価を行わず、軌道もしくは車両に異常が発生したと判定する。また、監視部24は、複数の車両3で同様の処理を実施し、複数の車両3でも、ある区間の分析で伸縮量が上記のような異常と判定されるような状態となった場合は、軌道T1に異常が発生したと判定する。また、監視部24は、ある特定の車両3のみで異常が発生したと判定される場合は、車両3に異常が発生したと判定する。
【0035】
なお、伸縮量閾値は、例えば車両3の前輪と後輪の間の距離(ホイールベース)やその距離を速度で割った時間とすることができる。軌道T1のEJ(エキスパンションジョイント)位置を通過した際、前輪および後輪の通過時に大きな加速度が発生するが、この伸縮量閾値以上、大きな加速度が発生するピークが離れていれば、対象としているEJ以外の別の異常が軌道に発生したと判断することができる。
【0036】
判定部242が、非線形伸縮計測加速度波形の各計測値の各伸縮量に所定の伸縮量閾値以上のものがないと判定した場合、監視部24は、非線形伸縮計測加速度波形(例えば図6の非線形伸縮計測加速度波形AWM1P1cや非線形伸縮計測加速度波形AWM1P2c)の加速度値を監視(評価)する。その際、監視部24は、例えば、図6に示す非線形伸縮計測加速度波形AWM1P1cの正のピーク値の最大値P111、負のピーク値の最大値P112や実効値を求めて、監視結果データベース265に登録する。また、監視部24は、図6に示す非線形伸縮計測加速度波形AWM1P2cの正のピーク値の最大値P121、負のピーク値の最大値P122や実効値を求めて、監視結果データベース265に登録する。また、監視部24は、例えば、基準加速度波形AWB1や基準加速度波形AWB2と比較したり、同一の車両3あるいは他の車両3の計測加速度波形と比較したり、所定の閾値等と比較したりすることで、異常の有無を判定する。
【0037】
また、データベース管理部25は、例えば操作者の所定の入力操作に応じて、基準加速度波形データベース261を構築あるいは変更したり、監視結果データベース265に登録されているデータを検索したり、表示したり、印刷したりする。
【0038】
(加速度監視装置2の動作例)
次に、図8を参照して、図1に示す加速度監視装置2の動作例について説明する。図8は、基準加速度波形データベース261を作成する処理の例(S101~S103)と、計測加速度波形の監視の際の処理の例(S201~S212)を示す。
【0039】
図8に示すように、基準加速度波形データベース261を構築する際には、まず、通信部22や取得部23を用いて、例えば、車両3からオフラインで(あるいは運行管理装置5等を介してオンラインで)、車両、走行レーン、計測位置/方向ごとの基準加速度波形を取得する(ステップS101)。次に、データベース管理部25を用いて、加速度波形のピーク発生位置と着目領域との対応づけを行う(ステップS102)。そして、データベース管理部25を用いて、基準加速度波形をデータベース化する(ステップS103)。
【0040】
また、図8に示すように、計測加速度波形を監視する際には、監視部24を用いて、車両情報を指定し(ステップS201)、分析する車両3の加速度データを取得し(ステップS202)、非線形伸縮部241によって、基準加速度波形データベース261の複数の基準加速度波形と、取得した計測加速度波形のDPマッチングを行う(ステップS203)。
【0041】
次に、判定部242が、DPマッチング時の時間軸伸縮量が伸縮量閾値以上であったか否かを判定する(ステップS204)。DPマッチング時の時間軸伸縮量が伸縮量閾値以上であった場合(ステップS204:Yes)、判定部242は、ある車両のみ時間軸伸縮量が伸縮量閾値以上であったか否かを判定する(ステップS206)。判定部242は、ある車両のみ時間軸伸縮量が伸縮量閾値以上であった場合(ステップS206:Yes)、車両で異常発生と判定し(ステップS207)、ある車両のみ時間軸伸縮量が伸縮量閾値以上ではなかった場合(ステップS206:No)、対象区間で軌道に異常発生と判定する(ステップS208)。
【0042】
一方、DPマッチング時の時間軸伸縮量が伸縮量閾値以上でなかった場合(ステップS204:No)、監視部24を用いて、計測加速度波形が含む着目領域に対応する加速度波形を特定し、加速度値の監視による異常検知を実行する(ステップS205)。
【0043】
また、監視部24は、区間ごとの最大値および実効値を評価し(ステップS209)、他車両での区間ごとの最大値および実効値の評価結果(D201)と比較する(ステップS10)。そして、監視部24は、ある車両のみ最大値もしくは実効値が相対的に大である場合(ステップS210:Yes)、ある車両で異常発生したと判定し(ステップS211)、ある車両のみ最大値が相対的に大ではなく、かつ、実効値が相対的に大ではない場合(ステップS210:No)、対象区間で軌道に異常発生したと判定する(ステップS212)。
【0044】
(第1実施形態の補足説明、作用・効果等)
本実施形態では、計測加速度波形を基準加速度波形に基づいて非線形伸縮する。その際、本実施形態では、非線形伸縮量に制限を加える。本実施形態では、ある時間(あるいはある距離)以上に波形を伸縮させる必要がある場合は、軌道の状態が大きく変化したとして、非線形伸縮計測加速度に基づく評価を行わず、軌道もしくは車両に異常が発生したと判断する。
【0045】
また、複数の車両で同様の処理を実施し、複数の車両でも、ある区間の分析で伸縮量閾値以上の伸縮量が発生する状態となった場合は、軌道に異常が発生したと判断する。ある特定の車両のみで伸縮量の異常が発生したと判断される場合は、車両に異常が発生したと判断する。
【0046】
非線形伸縮を実施する際、時間軸の極端な非線形伸縮を伴う処理を実施した場合、分析対象とする波形のピーク抽出に誤りが発生する可能性がある。本実施形態では、極端な非線形伸縮が発生した場合は、何らかの異常が発生したと判別でき、異常に気付かないままモニタリングが継続されることがなくなる。
【0047】
また、区間(例えば駅間)ごとの最大値および実効値評価により、区間全体での大まかな異常有無を判別できる。本実施形態の、伸縮量閾値以上の時間(あるいは距離)の非線形伸縮が発生する区間の特定により、本来想定していなかった位置での異常有無の判別が可能となる。また、最大値や実効値に基づく評価と、伸縮量に基づく評価とを組み合わせることで、区間ごとの判別や、マッチングによる特定位置の加速度抽出のみでは分からない、異常発生位置の判別が可能となり、状態モニタリングの効率化が可能となる。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、計測値を適切に監視することができる。
【0049】
なお、図15図16は、同じ車両で同じ軌道および速度条件で10回走行した場合の加速度波形の例を示す。図15は、10回のうちの1回の波形を基準加速度波形としてDPマッチングを行った場合の基準加速度波形と非線形伸縮計測加速度波形の拡大波形を示す。図16は、56秒付近の加速度ピークで10回分の波形を合わせた場合の56秒付近と64.4秒付近の拡大波形を示す。図16に示す例では、ある加速度ピーク位置のタイミングが合うように調整しても、他の加速度ピーク発生位置のタイミングがずれるため、評価に時間を要することになる。一方、DPマッチングを行った場合には、図15に示すように加速度ピーク発生位置が精度良く対応づけられている。
【0050】
<第2実施形態>
図10を参照して、本開示の第2実施形態に係る加速度監視装置について説明する。図10は、本開示の第2実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。第2実施形態の加速度監視装置のブロック構成は、図1に示す加速度監視装置2と同一である。第2実施形態の加速度監視装置は、図1に示す判定部242の動作が、第1実施形態と一部異なる。第1実施形態では時間軸伸縮量を本開示に係る所定値として判定部242が時間軸伸縮量に基づいて計測加速度波形に異常があるか否かを判定した。一方、第2実施形態では非線形伸縮した計測加速度波形(非線形伸縮計測加速度波形)と基準加速度波形との相関係数を本開示に係る所定値として判定部242が相関係数が所定の相関係数閾値以下である場合に計測加速度波形に異常があると判定する。
【0051】
図10に示す第2実施形態の処理では、ステップS204a(図8のステップS204に対応)の処理と、ステップS206a(図8のステップS206に対応)の処理が、第1実施形態の処理と異なる。ステップS204aにおいて、判定部242は、DPマッチング後の相関係数が相関係数閾値以下であるか否かを判定する。ステップS204aにおいて、判定部242は、ある車両のみ相関係数が相関係数閾値以下であるか否かを判定する。
【0052】
第2実施形態では、非線形伸縮部241が基準加速度波形と分析したい計測加速度波形について例えばDPマッチングを実施した後に、第2実施形態の判定部242が、マッチングした同士の波形で相関係数を算出する。そして、監視部24は、相関係数が相関係数閾値より大きければ、大きな変化はないとして分析を継続する。相関係数閾値以下であれば、監視部24は、状態が大きく変化したとして、モニタリング対象位置の加速度をそれぞれ分析することなく、異常が発生したと判別する。
【0053】
通常、同じ走行条件であれば、DPマッチング後の相関係数は少なくとも0.9以上となる。それ以下となった時点で大きな異常が発生したと判断することで、他のデータとの比較等を実施する前に、異常と判断することも可能となる。
【0054】
第2本実施形態によれば、第1実施形態と同様に計測値を適切に監視することができる。
【0055】
<第3実施形態>
図11図14を参照して、本開示の第3実施形態に係る加速度監視装置2a(第1実施形態の加速度監視装置2に対応)について説明する。図11は、本開示の第3実施形態に係る加速度監視装置の構成例を示すブロック図である。図12は、本開示の第3実施形態に係る計測加速度波形データベースの構成例を示す模式図である。図13は、本開示の第3実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。図14は、本開示の第3実施形態に係る加速度監視装置の動作例を説明するための模式図である。
【0056】
図11に示す第3実施形態に係る加速度監視装置2aは、図1に示す第1実施形態の加速度監視装置2と比較して、監視部24a(図1の監視部24に対応)が、あらたに、位置特定部243を備える。また、記憶部26が記憶する計測加速度波形データベース263a(計測加速度波形データベース263に対応)の構成が一部異なる。また、記憶部26は、さらに、複数の位置情報ファイル266を記憶する。
【0057】
位置情報ファイル266は、車両3が備える位置特定情報取得装置33が特定した位置特定情報(以下、位置情報ともいう)の時系列データを含むファイルである。上述したように、位置特定情報は、例えば、全地球測位システムを利用して取得した緯度と経度を表す位置情報の時系列である。位置情報ファイル266内の位置情報は、計測加速度波形ファイル264内の各計測値と計測時刻を表す情報を用いて紐付けることができる。ただし、位置情報のサンプリング周期と、加速度のサンプリング周期は、通常、加速度のサンプリング周期の方が短時間である。この場合、計測加速度波形の各計測値の少なくとも一部に位置情報が紐付けられていることになる。
【0058】
計測加速度波形データベース263aは、図1に示す計測加速度波形データベース263に対応し、図12に示すように、計測加速度波形ファイル名等に対してさらに位置情報ファイル266のファイル名である位置情報ファイル名が対応付けられている。
【0059】
位置特定部243は、位置情報ファイル266内の位置情報を用いて、時間軸伸縮量が伸縮量閾値以上である計測加速度波形の計測値に対応する位置を特定する。その際、位置特定部243は、例えば、図14に示すように、時間軸伸縮量が伸縮量閾値以上である複数の計測値からなる区間のうちピーク値(例えばP12)を有する計測値に対応する位置を特定する。図14は、図9と同じ基準加速度波形と計測加速度波形と非線形伸縮加速度波形とを示す。
【0060】
上述したように、位置情報のサンプリング時間が加速度データのサンプリング時間より大きい場合、位置特定部243は、位置情報を加速度データのサンプリング時間と合わせるために、例えば、内挿による補間を行う。内挿方法としては、一般的な1次元関数による線形内挿やスプライン内挿などがある。本処理により、低サンプリング周波数で取得されている例えばGPSデータがアップサンプリングされ、加速度と同じ時間軸でのGPSデータが得られる。位置特定部243は、大きな時間軸(距離軸)方向への移動があった時間(距離)帯の中での加速度最大値(絶対値)が発生した時間と、上記GPSデータを組み合わせることで、新たに異常が発生した位置をGPSデータから判別する。
【0061】
図13に示すように、位置特定部243は、時間軸伸縮量が伸縮量閾値以上となる区間を抽出し(ステップS301)、加速度最大となる瞬間の経度/緯度情報を取得し(ステップS302)、例えば、監視結果データベース265にピーク値の位置情報として記録する。ただし、特定した位置情報の出力の仕方は任意である。図13において、ステップS101~S103とステップS201~S212の処理は、図8と同一である。
【0062】
第3実施形態によれば、第1および第2実施形態と同様に計測値を適切に監視することができるとともに、時間軸伸縮量が伸縮量閾値となる場合に例えばGPSデータも組み合わせることで、大きく状態が変わったと考えられる位置情報を特定することができる。
【0063】
なお、第3実施形態は、第2実施形態と組み合わせることもできる。
【0064】
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、第1と第2の実施形態における伸縮量や相関係数についての判定の両者を実施し、一方または双方が成立する場合に非線形伸縮計測加速度波形に基づく評価(ステップS205)を行うようにしてもよい。また、計測加速度波形の監視や評価は、例えば、運行時に区間毎に行ってもよいし、毎日の運行終了時にまとめて行ってもよい。また、非線形伸縮部241は、計測波形(計測加速度波形)の各計測値と基準波形(基準加速度波形)の各基準計測値との距離に基づいて基準波形を非線形に伸縮してもよい。
【0065】
〈コンピュータ構成〉
図17は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の加速度監視装置2および2aは、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0066】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0067】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0068】
<付記>
各実施形態に記載の加速度監視装置2および2aは、例えば以下のように把握される。
【0069】
(1)第1の態様に係る加速度監視装置2および2aは、計測波形(計測加速度波形)の各計測値と基準波形(基準加速度波形)の各基準計測値との距離に基づいて前記計測波形を非線形に伸縮する非線形伸縮部241と、前記計測波形を非線形に伸縮することで得られた所定値(時間軸伸縮量、相関係数)に基づいて前記計測波形に異常があるか否かを判定する判定部242とを備える。本態様および以下の各態様によれば、計測値を適切に監視することができる。
【0070】
(2)第2の態様に係る加速度監視装置2および2aは、(1)の加速度監視装置2および2aであって、前記所定値は、非線形に伸縮した前記計測波形の各計測値の各伸縮量(時間軸伸縮量)であり、前記判定部242は、前記伸縮量に所定の伸縮量閾値以上のものがある場合に前記計測波形に異常があると判定する(ステップS204)。
【0071】
(3)第3の態様に係る加速度監視装置2aは、(2)の加速度監視装置2aであって、前記計測波形の各計測値の少なくとも一部に位置情報が紐付けられていて、前記位置情報を用いて、前記伸縮量が前記伸縮量閾値以上である前記計測値に対応する位置を特定する位置特定部243をさらに備える。
【0072】
(4)第4の態様に係る加速度監視装置2aは、(3)の加速度監視装置2aであって、前記位置特定部243は、前記伸縮量が前記伸縮量閾値以上である複数の前記計測値のうちピーク値を有する前記計測値に対応する位置を特定する。
【0073】
(5)第5の態様に係る加速度監視装置2および2aは、(1)の加速度監視装置2および2aであって、前記所定値は、非線形伸縮した前記計測波形と前記基準波形との相関係数であり、前記判定部242は、前記相関係数が所定の相関係数閾値以下である場合に前記計測波形に異常があると判定する。
【0074】
(5)第5の態様に係る加速度監視装置2および2aは、(1)~(5)の加速度監視装置2または2aであって、前記計測波形および前記基準波形は、軌道T1を走行する車両3で計測された加速度波形である。
【符号の説明】
【0075】
1 ゴムタイヤ式新交通システム
2、2a 加速度監視装置
3、3a、3b、3c 車両
23 取得部
24、24a 監視部
241 非線形伸縮部
242 判定部
243 位置特定部
26 記憶部
32 加速度センサ
33 位置特定情報取得装置
301 車体
303 台車
304 緩衝装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17