IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特開2023-102903作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム
<>
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図1
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図2
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図3
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図4
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図5
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図6
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図7
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図8
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図9
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図10
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図11
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図12
  • 特開-作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102903
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/76 20060101AFI20230719BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20230719BHJP
   E02F 3/80 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
E02F3/76 B
G01S13/931
E02F3/80 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003646
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】興津 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】上前 健志
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AF03
(57)【要約】
【課題】作業機械の周辺に物体が存在するか否かを適切に判定する。
【解決手段】作業機械は、車体と、支持部材と、ブレードと、回転角度センサと、物体センサと、コントローラとを備える。支持部材は、車体に接続される。ブレードは、支持部材に回転可能に支持される。回転角度センサは、ブレードの回転角度を検出する。物体センサは、作業機械の周辺の物体を検出し、物体の有無を示す信号を出力する。コントローラは、作業機械の周辺に検出範囲を設定する。コントローラは、物体センサからの信号に基づいて、検出範囲内の物体の有無を判定する。コントローラは、ブレードの回転角度に応じて、検出範囲を設定する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械であって、
車体と、
前記車体に接続される支持部材と、
前記支持部材に回転可能に支持されるブレードと、
前記ブレードの回転角度を検出する回転角度センサと、
前記作業機械の周辺の物体を検出し、前記物体の有無を示す信号を出力する物体センサと、
前記作業機械の周辺に検出範囲を設定し、前記物体センサからの信号に基づいて、前記検出範囲内の前記物体の有無を判定するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記ブレードの回転角度に応じて、前記検出範囲を設定する、
作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記車体の幅に基づいて、前記検出範囲の基準範囲を設定し、
前記ブレードの回転角度に基づいて、前記検出範囲を前記基準範囲から拡大する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記ブレードの回転角度に基づいて、前記ブレードの左端の位置と右端の位置とを検出し、
前記ブレードの左端が、前記車体から幅方向に、はみ出している場合には、前記検出範囲を前記基準範囲から左方に拡大し、
前記ブレードの右端が、前記車体から幅方向に、はみ出している場合には、前記検出範囲を前記基準範囲から右方に拡大する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記支持部材は、前記ブレードを左右にスライド可能に支持しており、
前記作業機械は、前記ブレードの左右の移動量を示すブレードシフト量を検出するブレードシフトセンサをさらに備え、
前記コントローラは、前記ブレードシフト量に応じて、前記検出範囲を設定する、
請求項1から3のいずれかに記載の作業機械。
【請求項5】
前記支持部材は、左右に揺動可能に前記車体に支持されるドローバを含み、
前記作業機械は、前記ドローバの左右の移動量を示すドローバシフト量を検出するドローバシフトセンサをさらに備え、
前記コントローラは、前記ドローバシフト量に応じて、前記検出範囲を設定する、
請求項1から4のいずれかに記載の作業機械。
【請求項6】
作業機械を制御するための方法であって、前記作業機械は、車体と、前記車体に接続される支持部材と、前記支持部材に回転可能に支持されるブレードとを含み、前記方法は、
前記ブレードの回転角度を取得することと、
前記作業機械の周辺の物体の有無を示す信号を受信することと、
前記作業機械の周辺に検出範囲を設定することと、
前記信号に基づいて、前記検出範囲内の前記物体の有無を判定することと、
前記ブレードの回転角度に応じて、前記検出範囲を設定すること、
を備える方法。
【請求項7】
前記車体の幅に基づいて、前記検出範囲の基準範囲を設定することと、
前記ブレードの回転角度に基づいて、前記検出範囲を前記基準範囲から拡大すること、
をさらに備える、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブレードの回転角度に基づいて、前記ブレードの左端の位置と右端の位置とを検出することと、
前記ブレードの左端が、前記車体から幅方向に、はみ出している場合には、前記検出範囲を前記基準範囲から左方に拡大することと、
前記ブレードの右端が、前記車体から幅方向に、はみ出している場合には、前記検出範囲を前記基準範囲から右方に拡大すること、
をさらに備える、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記支持部材は、前記ブレードを左右にスライド可能に支持しており、
前記ブレードの左右の移動量を示すブレードシフト量を取得することと、
前記ブレードシフト量に応じて、前記検出範囲を設定すること、
をさらに備える、
請求項6から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記支持部材は、左右に揺動可能に前記車体に支持されるドローバを含み、
前記ドローバの左右の移動量を示すドローバシフト量を取得することと、
前記ドローバシフト量に応じて、前記検出範囲を設定すること、
をさらに備える請求項6から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
作業機械を制御するためのシステムであって、前記作業機械は、車体と、前記車体に接続される支持部材と、前記支持部材に回転可能に支持されるブレードとを含み、前記システムは、
前記ブレードの回転角度を検出する回転角度センサと、
前記作業機械の周辺の物体を検出し、前記物体の有無を示す信号を出力する物体センサと、
前記作業機械の周辺に検出範囲を設定し、前記物体センサからの信号に基づいて、前記検出範囲内の前記物体の有無を判定するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記ブレードの回転角度に応じて、前記検出範囲を設定する、
システム。
【請求項12】
前記コントローラは、
前記車体の幅に基づいて、前記検出範囲の基準範囲を設定し、
前記ブレードの回転角度に基づいて、前記検出範囲を前記基準範囲から拡大する、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラは、
前記ブレードの回転角度に基づいて、前記ブレードの左端の位置と右端の位置とを検出し、
前記ブレードの左端が、前記車体から幅方向に、はみ出している場合には、前記検出範囲を前記基準範囲から左方に拡大し、
前記ブレードの右端が、前記車体から幅方向に、はみ出している場合には、前記検出範囲を前記基準範囲から右方に拡大する、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記支持部材は、前記ブレードを左右にスライド可能に支持しており、
前記ブレードの左右の移動量を示すブレードシフト量を検出するブレードシフトセンサをさらに備え、
前記コントローラは、前記ブレードシフト量に応じて、前記検出範囲を設定する、
請求項11から13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記支持部材は、左右に揺動可能に前記車体に支持されるドローバを含み、
前記ドローバの左右の移動量を示すドローバシフト量を検出するドローバシフトセンサをさらに備え、
前記コントローラは、前記ドローバシフト量に応じて、前記検出範囲を設定する、
請求項11から14のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械において、レーダーなどのセンサによって、周辺の人、或いは障害物を検出する技術が用いられている。例えば、特許文献1には、物体検出システムを備えたフォークリフトが開示されている。物体検出システムは、ミリ波レーダーなどのレーダー装置を備えている。レーダー装置は、電波又は超音波を発信し、物体で反射された電波又は超音波を受信することで、物体の有無を検出する。
【0003】
上記の物体検出システムにおいて、レーダー装置の測定可能範囲に侵入した物体を全て検出して警報を出力する場合、警報が頻繁に発せられることになる。そのため、上記の物体検出システムでは、コントローラが、フォークリフトの周辺に検出範囲を設定し、検出範囲内において物体が検出された場合に、警報を発することとされている。また、フォークリフトの車速と操舵角とに応じて、検出範囲が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-28266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の物体検出システムでは、車速と操舵角とに応じて、検出範囲が変更されることで、フォークリフトの周辺に物体が存在するか否かを適切に判定できるとされている。しかし、例えばモータグレーダのようにブレードなどの作業機の姿勢の自由度が大きい作業機械においては、上述した技術を適用するだけでは十分ではない。本発明の目的は、作業機械の周辺に物体が存在するか否かを適切に判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る作業機械は、車体と、支持部材と、ブレードと、回転角度センサと、物体センサと、コントローラとを備える。支持部材は、車体に接続される。ブレードは、支持部材に回転可能に支持される。回転角度センサは、ブレードの回転角度を検出する。物体センサは、作業機械の周辺の物体を検出し、物体の有無を示す信号を出力する。コントローラは、作業機械の周辺に検出範囲を設定する。コントローラは、物体センサからの信号に基づいて、検出範囲内の物体の有無を判定する。コントローラは、ブレードの回転角度に応じて、検出範囲を設定する。
【0007】
本発明の第2の態様に係る方法は、作業機械を制御するための方法である。作業機械は、車体と、支持部材と、ブレードとを含む。支持部材は、車体に接続される。ブレードは、支持部材に回転可能に支持される。当該方法は、ブレードの回転角度を取得することと、作業機械の周辺の物体の有無を示す信号を受信することと、作業機械の周辺に検出範囲を設定することと、信号に基づいて、検出範囲内の物体の有無を判定することと、ブレードの回転角度に応じて、検出範囲を設定すること、を備える。
【0008】
本発明の第3の態様に係るシステムは、作業機械を制御するためのシステムである。作業機械は、車体と、支持部材と、ブレードとを含む。支持部材は、車体に接続される。ブレードは、支持部材に回転可能に支持される。当該システムは、回転角度センサと、物体センサと、コントローラとを備える。回転角度センサは、ブレードの回転角度を検出する。物体センサは、作業機械の周辺の物体を検出し、物体の有無を示す信号を出力する。コントローラは、作業機械の周辺に検出範囲を設定する。コントローラは、物体センサからの信号に基づいて、検出範囲内の物体の有無を判定する。コントローラは、ブレードの回転角度に応じて、検出範囲を設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ブレードの回転角度に応じて、作業機械の周辺の物体の検出範囲が設定される。それにより、作業機械の周辺に物体が存在するか否かを適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る作業機械の側面図である。
図2】作業機械の前部の斜視図である。
図3】作業機械の駆動系及び制御システムを示す模式図である。
図4】作業機の姿勢を示す作業機械の模式的な平面図である。
図5】作業機の姿勢を示す作業機械の模式的な平面図である。
図6】作業機の姿勢を示す作業機械の模式的な平面図である。
図7】作業機械の周辺の物体を検出するための処理を示すフローチャートである。
図8】検出範囲の一例を示す作業機械の模式的な平面図である。
図9】検出範囲の一例を示す作業機械の模式的な平面図である。
図10】検出範囲の一例を示す作業機械の模式的な平面図である。
図11】検出範囲の一例を示す作業機械の模式的な平面図である。
図12】検出範囲の一例を示す作業機械の模式的な平面図である。
図13】ブレード回転角の算出方法の他の例を示す図である・
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る作業機械1の側面図である。図2は、作業機械1の前部の斜視図である。本実施形態に係る作業機械1は、モータグレーダである。図1に示すように、作業機械1は、車体2と作業機3とを備える。作業機3は、車体2に対して動作可能に支持される。車体2は、車体フレーム4と、タンデムドライブ5と、前輪6と、後輪7A,7Bとを含む。
【0012】
車体フレーム4は、前輪6と作業機3とを支持する。車体フレーム4は、フロントフレーム11とリアフレーム12とを含む。リアフレーム12は、フロントフレーム11に接続されている。フロントフレーム11は、リアフレーム12に対して、左右にアーティキュレート可能である。なお、以下の説明において、前後左右の各方向は、アーティキュレート角が0、すなわち、フロントフレーム11とリアフレーム12とが真っすぐな状態での車体2の前後左右の各方向を意味するものとする。
【0013】
リアフレーム12上には、キャブ13と動力室14とが配置されている。キャブ13には、図示しない運転席が配置されている。動力室14には、後述する駆動系が配置されている。フロントフレーム11は、リアフレーム12から前方へ延びている。前輪6は、フロントフレーム11に取り付けられている。タンデムドライブ5は、リアフレーム12に接続されている。タンデムドライブ5は、後輪7A,7Bを支持すると共に、後輪7A,7Bを駆動する。なお、図1では、左側の後輪7A,7Bのみが図示されている。
【0014】
作業機3は、車体2に対して可動的に接続されている。作業機3は、支持部材15とブレード16とを含む。支持部材15は、車体2に可動的に接続されている。支持部材15は、ブレード16を支持している。支持部材15は、ドローバ17とサークル18とを含む。ドローバ17とサークル18とは、フロントフレーム11の下方に配置される。
【0015】
図2に示すように、ドローバ17は、フロントフレーム11の軸支部19に接続されている。軸支部19は、フロントフレーム11の前部に配置されている。ドローバ17は、フロントフレーム11の前部から後方へ延びている。ドローバ17は、フロントフレーム11に対して、少なくとも車体2の上下方向と左右方向とに揺動可能に支持されている。例えば、軸支部19は、ボールジョイントを含む。ドローバ17は、ボールジョイントを介して、フロントフレーム11に対して回転可能に接続されている。
【0016】
サークル18は、ドローバ17の後部に接続されている。サークル18は、ドローバ17に対して回転可能に支持される。ブレード16は、サークル18に接続される。ブレード16は、サークル18を介して、ドローバ17に支持されている。ブレード16は、チルト軸21回りに回転可能にサークル18に支持されている。チルト軸21は、左右方向に延びている。ブレード16は、左右方向にスライド可能にサークル18に支持されている。
【0017】
作業機械1は、作業機3の姿勢を変更するための複数のアクチュエータ22-27を備えている。複数のアクチュエータ22-27は、複数の油圧シリンダ22-26を含む。複数の油圧シリンダ22-26は、作業機3に接続されている。複数の油圧シリンダ22-26は、油圧によって伸縮する。複数の油圧シリンダ22-26は、伸縮することで、車体2に対する作業機3の姿勢を変更する。以下の説明では、油圧シリンダの伸縮を「ストローク動作」と呼ぶ。
【0018】
詳細には、複数の油圧シリンダ22-26は、左リフトシリンダ22と、右リフトシリンダ23と、ドローバシフトシリンダ24と、ブレードチルトシリンダ25と、ブレードシフトシリンダ26とを含む。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、左右方向に互いに離れて配置されている。左リフトシリンダ22は、ドローバ17の左部分に接続されている。右リフトシリンダ23は、ドローバ17の右部分に接続されている。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、ドローバ17に対して左右に揺動可能に接続されている。
【0019】
左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、フロントフレーム11に対して、左右に揺動可能に接続されている。詳細には、左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、リフタブラケット29を介して、フロントフレーム11に接続されている。リフタブラケット29は、フロントフレーム11に接続されている。リフタブラケット29は、左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とを左右に揺動可能に支持している。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とのストローク動作により、ドローバ17は、軸支部19回りに上下に揺動する。それにより、ブレード16が上下に移動する。
【0020】
ドローバシフトシリンダ24は、ドローバ17とフロントフレーム11とに接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、リフタブラケット29を介してフロントフレーム11に接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、フロントフレーム11に対して、揺動可能に接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、ドローバ17に対して、揺動可能に接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、フロントフレーム11からドローバ17に向かって、斜め下方に延びている。ドローバシフトシリンダ24は、フロントフレーム11の左右の一側方から反対の側方へ向かって延びている。ドローバシフトシリンダ24のストローク動作により、ドローバ17は、軸支部19回りに左右に揺動する。
【0021】
図1に示すように、ブレードチルトシリンダ25は、サークル18とブレード16とに接続されている。ブレードチルトシリンダ25のストローク動作により、ブレード16がチルト軸21回りに回転する。図2に示すように、ブレードシフトシリンダ26は、サークル18とブレード16とに接続されている。ブレードシフトシリンダ26のストローク動作により、ブレード16がサークル18に対して左右にスライドする。
【0022】
複数のアクチュエータ22-27は、回転アクチュエータ27を含む。回転アクチュエータ27は、ドローバ17とサークル18とに接続されている。回転アクチュエータ27は、ドローバ17に対してサークル18を回転させる。それにより、ブレード16が、上下方向に延びる回転軸回りに回転する。
【0023】
図3は、作業機械1の駆動系8及び制御システム9を示す模式図である。図3に示すように、作業機械1は、駆動源31と、油圧ポンプ32と、動力伝達装置33と、制御弁34とを備えている。駆動源31は、例えば内燃機関である。或いは、駆動源31は、電動モータ、或いは内燃機関と電動モータとのハイブリッドであってもよい。油圧ポンプ32は、駆動源31によって駆動されることで、作動油を吐出する。
【0024】
制御弁34は、油圧回路を介して油圧ポンプ32と複数の油圧シリンダ22-26とに接続されている。制御弁34は、複数の油圧シリンダ22-26にそれぞれ接続される複数の弁を含む。制御弁34は、油圧ポンプ32から複数の油圧シリンダ22-26に供給される作動油の流量を制御する。
【0025】
回転アクチュエータ27は、油圧モータである。制御弁34は、油圧回路を介して油圧ポンプ32と回転アクチュエータ27とに接続されている。制御弁34は、油圧ポンプ32から回転アクチュエータ27に供給される作動油の流量を制御する。なお、回転アクチュエータ27は、電動モータであってもよい。
【0026】
動力伝達装置33は、駆動源31からの駆動力を後輪7A,7Bに伝達する。動力伝達装置33は、トルクコンバータ、及び/又は、複数の変速ギアを含んでもよい。或いは、動力伝達装置33は、HST(Hydraulic Static Transmission)、或いは、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などのトランスミッションであってもよい。
【0027】
図3に示すように、作業機械1は、操作装置35とコントローラ36とを備えている。操作装置35は、作業機3の姿勢を変更するためにオペレータによって操作可能である。作業機3の姿勢は、車体2に対するブレード16の位置と向きとを示す。操作装置35は、例えば複数のレバーを含む。操作装置35の操作に応じて、複数の油圧シリンダ22-26のストローク動作と、回転アクチュエータ27の回転動作とが制御される。それにより、作業機3の姿勢が変更される。
【0028】
コントローラ36は、駆動源31及び動力伝達装置33を制御することで、作業機械1を走行させる。また、コントローラ36は、油圧ポンプ32と制御弁34とを制御することで、作業機3を動作させる。コントローラ36は、プロセッサ37と記憶装置38とを含む。プロセッサ37は、例えばCPUであり、作業機械1を制御するためのプログラムを実行する。記憶装置38は、RAM及びROMなどのメモリと、SSD或いはHDDなどの補助記憶装置を含む。記憶装置38は、作業機械1を制御するためのプログラムとデータとを記憶している。
【0029】
図3に示すように、作業機械1は、回転角度センサ41と、ブレードシフトセンサ42と、ドローバシフトセンサ43とを備えている。回転角度センサ41は、ブレードの回転角度θs(以下、「ブレード回転角」と呼ぶ)を検出する。図4に示すように、ブレード回転角θsは、作業機械1の前後方向に延びる車体2の中心線C1に対するブレード16の角度である。なお、以下の説明では、アーティキュレート角が0度、すなわちフロントフレーム11とリアフレーム12とが真っすぐな状態であるものとする。回転角度センサ41は、例えば、IMU、或いはカメラである。回転角度センサ41は、ブレード回転角θsを示す信号を出力する。
【0030】
ブレードシフトセンサ42は、ブレードシフト量Lbsを検出する。図5に示すように、ブレードシフト量Lbsは、中立位置からのブレード16の左右の移動量を示す。ブレード16が中立位置に位置する場合、ドローバ17の前後方向に延びる中心線C2からブレード16の左端16Lと右端16Rとまでの距離は、それぞれ等しい。ブレードシフトセンサ42は、ブレードシフト量Lbsを示す信号を出力する。
【0031】
ドローバシフトセンサ43は、ドローバシフト量Ldsを検出する。図6に示すように、ドローバシフト量Ldsは、ドローバ17の左右の移動量を示す。例えば、ドローバシフト量Ldsは、ドローバ17の中心点P1と、車体2の中心線C1との間の距離である。ドローバ17の中心点P1は、作業機械1の平面視で、上述したドローバ17の中心線C2とブレード16の刃先とが交わる点である。ドローバシフトセンサ43は、ドローバシフト量Ldsを示す信号を出力する。例えば、コントローラ36は、ブレードチルトシリンダ25のストローク長から、ブレード16の刃先の位置を算出してもよい。或いは、ブレード16の刃先の位置は、IMUによって検出されてもよい。ドローバ17の中心点P1は、サークル18の中心であってもよい。
【0032】
回転角度センサ41と、ブレードシフトセンサ42と、ドローバシフトセンサ43とは、例えばIMU(慣性計測装置)である。或いは、回転角度センサ41と、ブレードシフトセンサ42と、ドローバシフトセンサ43とは、カメラであってもよい。その場合、コントローラ36は、回転角度センサ41と、ブレードシフトセンサ42と、ドローバシフトセンサ43とが取得した画像を解析することにより、ブレード回転角θsと、ブレードシフト量Lbsと、ドローバシフト量Ldsとを算出してもよい。或いは、ブレードシフトセンサ42は、ブレードシフトシリンダ26のストローク長を検出するセンサであってもよい。ドローバシフトセンサ43は、ドローバシフトシリンダ24のストローク長を検出するセンサであってもよい。
【0033】
図3に示すように、作業機械1は、物体センサ44と出力装置45とを備えている。物体センサ44は、作業機械1の周辺の物体を検出する。物体センサ44は、例えば、ミリ波レーダーなどのレーダー装置である。或いは、物体センサ44は、超音波センサ、カメラ、LIDAR(Light Detection and Ranging)装置などの他の種類のセンサであってもよい。物体センサ44は、作業機械1の周辺における物体の有無を示す信号を出力する。
【0034】
出力装置45は、例えばディスプレイである。出力装置45は、コントローラ36からの指令信号に応じて画像を表示する。或いは、出力装置45は、スピーカーであってもよい。出力装置45は、コントローラ36からの指令信号に応じて音声を出力してもよい。
【0035】
コントローラ36は、作業機械1の周辺に検出範囲50を設定し、物体センサ44からの信号に基づいて、検出範囲50内の物体の有無を判定する。例えば、図8に示すように、コントローラ36は、車体2の後方に検出範囲50を設定する。ただし、コントローラ36は、車体2の前方に検出範囲50を設定してもよい。或いは、コントローラ36は、車体2の前方と後方とにそれぞれ検出範囲50を設定してもよい。コントローラ36は、検出範囲50内に物体100を検出した場合には、出力装置45に警報を出力させる。
【0036】
コントローラ36は、ブレード回転角θsと、ブレードシフト量Lbsと、ドローバシフト量Ldsとに応じて、検出範囲50を設定する。以下、コントローラ36による検出範囲50の設定方法について説明する。図7は、コントローラ36によって実行される検出範囲50を設定するための処理を示すフローチャートである。
【0037】
図7に示すように、ステップS1では、コントローラ36は、ブレード回転角θsを取得する。コントローラ36は、回転角度センサ41からの信号により、ブレード回転角θsを取得する。ステップS2では、コントローラ36は、ブレードシフト量Lbsを取得する。コントローラ36は、ブレードシフトセンサ42からの信号により、ブレードシフト量Lbsを取得する。ステップS3では、コントローラ36は、ドローバシフト量Ldsを取得する。コントローラ36は、ドローバシフトセンサ43からの信号により、ドローバシフト量Ldsを取得する。
【0038】
ステップS4では、コントローラ36は、左ブレード長Lwlを算出する。図8に示すように、左ブレード長Lwlは、車体2の中心線C1からブレード16の左端16Lまでの距離である。左ブレード長Lwlは、車体2の中心線C1に対するブレード16の左端16Lの位置を示す。コントローラ36は、以下の式(1)により、ブレード16の長さLbと、ブレード回転角θsと、ブレードシフト量Lbsと、ドローバシフト量Ldsとから、左ブレード長Lwlを算出する。
Lwl=(Lb/2+Lbs)sinθs+Lds (1)
ステップS5では、コントローラ36は、右ブレード長Lwrを算出する。図8に示すように、右ブレード長Lwrは、車体2の中心線C1からブレード16の右端16Rまでの距離である。右ブレード長Lwrは、車体2の中心線C1に対するブレード16の右端16Rの位置を示す。コントローラ36は、以下の式(2)により、ブレード16の長さLbと、ブレード回転角θsと、ブレードシフト量Lbsと、ドローバシフト量Ldsとから、右ブレード長Lwrを算出する。
Lwr=(Lb/2-Lbs)sinθs-Lds (2)
なお、上記の式(1)及び式(2)では、左方へのブレードシフト量Lbs及びドローバシフト量Ldsは正の値、右方へのブレードシフト量Lbs及びドローバシフト量Ldsは負の値として定義されている。
【0039】
ステップS6では、コントローラ36は、図8に示すように、ブレード16の左端16Lと右端16Rとの両方が、車体2の幅L0(以下、「車幅」と呼ぶ)から、はみ出しているかを判定する。コントローラ36は、以下の第1条件が満たされている場合に、ブレード16の左端16Lと右端16Rとの両方が、車幅L0から、はみ出していると判定する。
(第1条件)Lwl>L0/2、且つ、Lwr>L0/2
ブレード16の左端16Lと右端16Rとの両方が、車幅L0から、はみ出していると、コントローラ36が判定した場合には、処理はステップS7に進む。
【0040】
ステップS7では、コントローラ36は、検出範囲50を左右の両側に拡大する。図8に示すように、コントローラ36は、検出範囲50の基準範囲51を記憶している。基準範囲51は、車幅L0に基づいて設定される。基準範囲51の幅は、車幅L0と同じである。コントローラ36は、ブレード16の左端16Lの位置と右端16Rの位置とに合わせて、検出範囲50を基準範囲51から左方と右方とに拡大する。この場合、検出範囲50の幅Lallは、以下の式(3)で表される。
Lall=Lwl+Lwr (3)
ステップS6において、ブレード16の左端16Lと右端16Rとの少なくとも一方が、車幅L0から、はみ出していない場合には、処理はステップS8に進む。ステップS8では、コントローラ36は、ブレード16の左端16Lのみが、車幅L0から、はみ出しているかを判定する。すなわち、コントローラ36は、ブレード16の左端16Lが車幅L0から、はみ出し、ブレード16の右端16Rが、車幅L0内に位置しているかを判定する。
【0041】
コントローラ36は、以下の第2条件が満たされている場合に、ブレード16の左端16Lのみが、車幅L0から、はみ出していると判定する。
(第2条件)Lwl>L0/2、且つ、Lwr≦L0/2
ブレード16の左端16Lのみが、車幅L0から、はみ出していると、コントローラ36が判定した場合には、処理はステップS9に進む。ステップS9では、コントローラ36は、検出範囲50を左方に拡大する。図9に示すように、コントローラ36は、ブレード16の左端16Lの位置に合わせて、検出範囲50を基準範囲51から左方に拡大する。また、コントローラ36は、検出範囲50を右方には拡大せずに基準範囲51に維持する。この場合、検出範囲50の幅Lallは、以下の式(4)で表される。
Lall=Lwl+L0/2 (4)
なお、図9では、ブレード16が回転すると共に、左方へスライドしていることで、ブレード16の左端16Lが車幅L0から、はみ出している。或いは、図10のように、ブレード16が回転すると共に、ドローバ17が左方に揺動することで、ブレード16の左端16Lが車幅L0から、はみ出している場合にも、コントローラ36は、検出範囲50を基準範囲51から左方に拡大する。
【0042】
ステップS8において、ブレード16の左端16Lが車幅L0から、はみ出していない場合には、処理は、ステップS10に進む。ステップS10では、コントローラ36は、ブレード16の右端16Rのみが、車幅L0から、はみ出しているかを判定する。すなわち、コントローラ36は、ブレード16の右端16Rが車幅L0から、はみ出し、ブレード16の左端16Lが車幅L0内に位置しているかを判定する。
【0043】
コントローラ36は、以下の第3条件が満たされている場合に、ブレード16の右端16Rのみが、車幅L0から、はみ出していると判定する。
(第3条件)Lwr>L0/2、且つ、Lwl≦L0/2
ブレード16の右端16Rのみが、車幅L0から、はみ出していると、コントローラ36が判定した場合には、処理はステップS11に進む。ステップS11では、コントローラ36は、検出範囲50を右方に拡大する。図11に示すように、コントローラ36は、ブレード16の右端16Rの位置に合わせて、検出範囲50を基準範囲51から右方に拡大する。また、コントローラ36は、検出範囲50を左方には拡大せずに基準範囲51に維持する。この場合、検出範囲50の幅Lallは、以下の式(5)で表される。
Lall=Lwr+L0/2 (5)
なお、図示を省略するが、ブレード16が右方へスライドしていることで、及び、ドローバ17が右方に揺動することで、ブレード16の右端16Rの位置が車幅L0から、はみ出している場合にも、コントローラ36は、検出範囲50を基準範囲51から右方に拡大する。
【0044】
ステップS10において、ブレード16の右端16Rが車幅L0から、はみ出していない場合には、処理は、ステップS12に進む。ステップS12では、コントローラ36は、図12に示すように、基準範囲51を検出範囲50として設定する。すなわち、ブレード16の左端16Lと右端16Rとの両方が車幅L0内に位置している場合には、コントローラ36は、検出範囲50を左右に拡大せずに、基準範囲51を検出範囲50として設定する。
【0045】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1では、ブレード回転角θsと、ブレードシフト量Lbsと、ドローバシフト量Ldsとに応じて、作業機械1の周辺の物体の検出範囲50が設定される。それにより、作業機械1の周辺に物体が存在するか否かを適切に判定することができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
作業機械1は、モータグレーダに限らず、他の種類の作業機械であってもよい。作業機械1の構成は、上記のものに限らず、変更されてもよい。例えば、作業機3の構成が変更されてもよい。作業機械1の制御システムの一部は、作業機械1の外部に配置されてもよい。例えば、操作装置35と出力装置45とが作業機械1の外部に配置されてもよい。
【0048】
コントローラ36は、複数のコントローラによって構成されてもよい。上述した処理は、複数のコントローラに分散して実行されてもよい。複数のコントローラの一部は、作業機械1の外部に配置されてもよい。
【0049】
物体が検出範囲50内で検出された場合の処理は、上記の実施形態のものに限らず変更されてもよい。例えば、物体が検出範囲50内で検出された場合、コントローラ36は、作業機3、及び/又は、車体2を停止させる、或いは動作を制限するなどの処理を行ってもよい。
【0050】
検出範囲50を設定するための処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、検出の誤差を考慮して、コントローラ36は、上記の検出範囲50の幅Lallに、任意のマージン幅を追加してもよい。
【0051】
図13に示すように、コントローラ36は、ドローバ回転角θdとサークル回転角θcとから、ブレード回転角度θsを算出してもよい。ドローバ回転角θdは、車体2の中心線C1に対するドローバ17の中心線C2の角度である。サークル回転角θcは、ドローバ17の中心線C2に対するブレード16の角度である。この場合、回転角度センサ41は、ドローバ回転角θdを検出する回転角度センサと、サークル回転角θcを検出する回転角度センサとによって構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、作業機械の周辺に物体が存在するか否かを適切に判定することができる。
【符号の説明】
【0053】
2:車体、 15:支持部材、 16:ブレード、 18:ドローバ、 36:コントローラ、 41:回転角度センサ、 42:ブレードシフトセンサ、 43:ドローバシフトセンサ、 44:物体センサ、 50:検出範囲、 51:基準範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13