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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102909
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】チタン濃縮物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 34/12 20060101AFI20230719BHJP
   C22B 3/10 20060101ALI20230719BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20230719BHJP
   C22B 1/14 20060101ALI20230719BHJP
   C22B 1/16 20060101ALI20230719BHJP
   C01G 23/053 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
C22B34/12
C22B3/10
C22B3/22
C22B1/14
C22B1/16 Z
C01G23/053
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003654
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】米田 一哉
(72)【発明者】
【氏名】森山 斉昭
(72)【発明者】
【氏名】東海 翼
【テーマコード(参考)】
4G047
4K001
【Fターム(参考)】
4G047CA02
4G047CA07
4G047CB05
4G047CD03
4K001AA27
4K001BA02
4K001BA05
4K001CA01
4K001CA02
4K001CA03
4K001CA05
4K001CA09
4K001CA17
4K001CA25
4K001DB04
(57)【要約】
【課題】 鉄分とシリカ分等の不純物を含有しているチタン含有材料を簡便な方法で、効率的に高品位のチタン濃縮物を製造する方法を提供する。
【解決手段】 塩酸初期濃度が15質量%以上である塩酸含有浸出液(容積V(L))と、チタン含有材料(質量W(kg))とをV/Wが3.0(L/kg)以下となるように反応容器に添加し、該塩酸含有浸出液を80℃以上に加熱して該チタン含有材料から不純物を浸出する。次に、浸出工程を行った後のスラリーを固液分離して回収した固形物を洗浄し、乾燥する工程を含む。スラリーを固液分離して回収した塩酸を塩酸含有浸出液として再使用する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸初期濃度が15質量%以上である塩酸含有浸出液(容積V(L))と、チタン含有材料(質量W(kg))とをV/Wが3.0(L/kg)以下となるように反応容器に添加し、該塩酸含有浸出液を80℃以上に加熱して該チタン含有材料から不純物を浸出する浸出工程を含むチタン濃縮物の製造方法。
【請求項2】
塩酸含有浸出液が塩酸又は回収塩酸である請求項1に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【請求項3】
回収塩酸が、塩酸による前記浸出工程を行った後のスラリーを固液分離して回収した回収塩酸である請求項2に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【請求項4】
回収塩酸が、回収塩酸による前記浸出工程を行った後のスラリーを固液分離して回収する操作を複数回繰り返した複数回回収塩酸である請求項2に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【請求項5】
塩酸含有浸出液の塩酸初期濃度が15~25質量%である請求項1~4の何れか一項に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【請求項6】
前記浸出工程を行った後のスラリーを固液分離して回収した固形物を洗浄し、乾燥する工程を含む請求項1~5の何れか一項に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【請求項7】
前記洗浄・乾燥工程の後、さらに分級又は造粒する工程を含む請求項6に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【請求項8】
前記洗浄・乾燥工程の後、固形物を焼成する工程を含む請求項1~7の何れか一項に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【請求項9】
前記浸出工程を、塩酸含有浸出液の沸点以下の反応温度で行う請求項1~8の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
チタン含有材料のTiO品位が70~90質量%である請求項1~9の何れか一項に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【請求項11】
チタン含有材料のTiO品位が80~90質量%である請求項10に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【請求項12】
得られるチタン濃縮物のTiO品位が93質量%以上である請求項1~11の何れか一項に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【請求項13】
得られるチタン濃縮物のTiO品位が95質量%以上である請求項12に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含チタン鉄鉱石等のチタン含有材料から鉄分等の不純物を除去して、高品位のチタン濃縮物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン濃縮物は、それを塩素化して四塩化チタンを製造するための原料として用いられている。四塩化チタンは、塩素法による二酸化チタン顔料の製造及び金属チタンの製造等に用いられる。このようなチタン濃縮物としては、塩素化を効率的に行うために、天然ルチル又はイルメナイトやイルメナイト・へマタイト鉱等の含チタン鉄鉱石等から鉄分を除去してチタン品位を高めたチタン濃縮物が使用されている。これらのチタン濃縮物は、例えば、含チタン鉄鉱石等に含まれる鉄分(III)を還元して鉄(II)の状態とし、チタン塩加水分解促進用シードやチタン(III)塩の存在下で、硫酸にて浸出後、焼成して製造できることが知られている(特許文献1及び特許文献2)。これらの方法の場合、原料である含チタン鉄鉱石等の変成度(該鉱石等が採掘される以前に受けた圧力及び温度によって決まる変成作用の程度)の違いにより、得られるチタン濃縮物のチタン品位にばらつきがある。
【0003】
そのため、変成度の低い含チタン鉄鉱石等を用いて、高品位のチタン濃縮物を製造する方法が種々提案されている。例えば、特許文献3には、含チタン鉄鉱石又はその類似物を330メッシュの篩を通過する粒度に粉砕して得た粉砕物を、1~20質量%の塩酸初期濃度で80℃以下の反応温度にて予備浸出を行った後、可溶性還元性物質の存在下、15~20質量%の塩酸初期濃度で90℃以上の反応温度にて本浸出を行うことを含むチタン濃縮物の製造方法において、本浸出後の浸出物のスラリーにフッ素系添加剤を添加すると、残存したシリカ成分を除去できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭49-18330号公報
【特許文献2】特公昭49-37484号公報
【特許文献3】国際公開公報WO2021/002332
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
変成度の低い含チタン鉄鉱石等を鉱酸で浸出して高品位のチタン濃縮物を製造するには、酸化、還元処理や二段階浸出処理等が必要となり、工程が長く煩雑である。また、大量の鉱酸を使用することに起因し、(1)腐蝕に耐えうる材質の装置や配管等が必要となる、(2)大規模な廃酸処理設備が必要となる等の課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意工夫した結果、塩酸初期濃度が15質量%以上である塩酸含有浸出液と、チタン含有材料を特定比となるように反応容器に添加し、80℃以上で浸出反応させることによって、大量の鉱酸を使用しなくても高品位のチタン濃縮物が得られるとの知見を得て、本発明を完成した。また、塩酸による浸出反応を行った後のスラリーを固液分離して回収した回収塩酸を塩酸含有浸出液として再使用できること、さらに、同様の回収操作を複数回繰り返して回収した塩酸(複数回回収塩酸)を塩酸含有浸出液として循環再使用が可能となることから、大量の塩酸を処理する設備がなくても、高品位のチタン濃縮物を効率的に製造することが可能であるとの知見を得て、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1] 塩酸初期濃度が15質量%以上である塩酸含有浸出液(容積V(L))と、チタン含有材料(質量W(kg))とをV/Wが3.0(L/kg)以下となるように反応容器に添加し、該塩酸含有浸出液を80℃以上に加熱して該チタン含有材料から不純物を浸出する浸出工程を含むチタン濃縮物の製造方法。
[2] 塩酸含有浸出液が塩酸又は回収塩酸である[1]に記載のチタン濃縮物の製造方法。
[3] 回収塩酸が、塩酸による前記浸出工程を行った後のスラリーを固液分離して回収した回収塩酸である[2]に記載のチタン濃縮物の製造方法。
[4] 回収塩酸が、回収塩酸による前記浸出工程を行った後のスラリーを固液分離して回収する操作を複数回繰り返した複数回回収塩酸である[2]に記載のチタン濃縮物の製造方法。
[5] 塩酸含有浸出液の塩酸初期濃度が15~25質量%である[1]~[4]の何れか一項に記載のチタン濃縮物の製造方法。
[6] 前記浸出工程を行った後のスラリーを固液分離して回収した固形物を洗浄し、乾燥する工程を含む[1]~[5]の何れか一項に記載のチタン濃縮物の製造方法。
[7] 前記洗浄・乾燥工程の後、さらに分級又は造粒する工程を含む[6]に記載のチタン濃縮物の製造方法。
[8] 前記洗浄・乾燥工程の後、固形物を焼成する工程を含む[1]~[7]の何れか一項に記載のチタン濃縮物の製造方法。
[9] 前記浸出工程を、塩酸含有浸出液の沸点以下の反応温度で行う[1]~[8]の何れか一項に記載の製造方法。
[10] チタン含有材料のTiO品位が70~90質量%である[1]~[9]の何れか一項に記載のチタン濃縮物の製造方法。
[11] チタン含有材料のTiO品位が80~90質量%である[10]に記載のチタン濃縮物の製造方法。
[12] 得られるチタン濃縮物のTiO品位が93質量%以上である[1]~[11]の何れか一項に記載のチタン濃縮物の製造方法。
[13] 得られるチタン濃縮物のTiO品位が95質量%以上である[12]に記載のチタン濃縮物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のチタン濃縮物の製造方法では、チタン含有材料に対して少量の塩酸含有浸出液の使用でも不純物を除去でき、高品位のチタン濃縮物を製造することができる。そのため、大量の塩酸を使用しないことから、小規模の装置や配管等で行うことができ、十分に防蝕を施すこともできる。また、使用した塩酸含有浸出液を回収し、再使用することができ、循環再使用することもできるため、大規模な廃酸処理設備が不要になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0010】
本発明の製造方法に適用できるチタン含有材料としては、例えば、イルメナイトやイルメナイト・へマタイト鉱等の含チタン鉄鉱石、鉄製錬における副産物のチタンスラグが挙げられる。また、それらから鉄分等の不純物を除去した低品位合成ルチルや天然ルチル(天然鉱石)等の低品位のチタン濃縮物や類似物を用いるとルチル含有率が高いチタン濃縮物が得られることから好ましい。これらのチタン含有材料のTiO品位は、90質量%以下のものを用いることができ、70~90質量%の範囲が好ましく、80~90質量%の範囲がより好ましい。前記低品位のチタン濃縮物のTiO品位は、通常70~90質量%であり、好ましくは80~90質量%である。
【0011】
チタン含有材料は適宜、粉砕して用いてもよい。粉砕は、乾式粉砕であっても溶媒中で粉砕を行う湿式粉砕であってもよく、普通に用いる粉砕手段、例えばボールミル、チューブミル、振動ボールミル、サンドミル、ディスクミル、メディアミル、メディアレスミル、ローラーミル等を用いて行うことができる。湿式粉砕を行った場合には、粉砕後、溶媒と粉砕物を固液分離する。固液分離は、デカンテーション、沈降分離、遠心分離、濾過、膜分離等により行うことができるが、デカンテーションにて行うのが好ましい。
【0012】
本発明の製造方法では、塩酸初期濃度が15質量%以上である塩酸含有浸出液(容積V(L))と、チタン含有材料(質量W(kg))とをV/Wが3.0(L/kg)以下となるように反応容器に添加し、該塩酸含有浸出液を80℃以上に加温して該チタン含有材料から鉄分等の不純物を浸出除去する(浸出工程)。塩酸含有浸出液は、塩酸初期濃度を15質量%以上とすることが重要であり、チタン含有材料から鉄分等をより効率的に除去できる。ここでいう塩酸初期濃度は、浸出開始時の塩酸濃度を意味する。塩酸初期濃度は、装置の腐食性の観点から15~25質量%が好ましい。塩酸含有浸出液は、例えば塩酸又は回収塩酸が挙げられる。回収塩酸としては、塩酸による浸出工程後のスラリーを固液分離して得た回収塩酸(第一次回収塩酸)と、第一次回収塩酸による浸出反応を行った後、同様の固液分離し回収する操作を複数回繰り返した複数回回収塩酸が挙げられる。塩酸含有浸出液として、回収塩酸を使用する場合、塩酸初期濃度が15質量%以上となる限り、浸出反応と固液分離を複数回繰り返して回収したものであってもよく、塩酸初期濃度が15質量%以下になる場合は、高濃度の塩酸又は回収塩酸を追加してもよい。また、浸出反応を行う容器は、開放型容器であっても、オートクレーブのような密閉型容器であってもよく、塩酸によって腐蝕されない材質の反応容器を用いる。
【0013】
浸出工程における塩酸含有浸出液の使用量(容積V(L))は、チタン含有材料の質量(質量W(kg))に対して、V/Wで3.0(L/kg)以下とすることが重要であり、好ましくは0.5~2.5(L/kg)とする。V/Wが低い場合、塩酸含有浸出液とチタン含有材料の撹拌混合が物理的に困難になるが、チタン含有材料が塩酸含有浸出液に浸漬していれば浸出反応が進むため、撹拌混合を行わなくてもよい。塩酸含有浸出液とチタン含有材料を所定量反応容器に添加し加熱して、塩酸含有浸出液を80℃以上にすることが重要である。一方、反応温度は、塩酸含有浸出液の沸点以下が好ましい。塩酸含有浸出液の沸点又は沸点に近い温度で塩酸蒸気の発生が著しい場合は、適宜冷却してもよい。反応時間は適宜設定することができ、2~20時間とするのが好ましい。開放型容器を使用する場合には、80~110℃(塩酸含有浸出液の沸点以下)で5~20時間浸出反応を行うのが好ましく、密閉型容器を使用する場合には、加圧条件によって温度及び時間を適宜設定することができ、110~160℃で、2~18時間浸出反応を行うのが好ましい。
【0014】
本発明の製造方法において、浸出工程後のスラリーは、デカンテーション、沈降分離、遠心分離、濾過、膜分離等により、チタン濃縮物含む固形物と、浸出により除去された鉄分等の不純物を溶存する浸出液とに固液分離する。固液分離はバッチ式でも連続式でもよい。
【0015】
固液分離で得たチタン濃縮物を含む固形物は、洗浄して、固形物に残存する共存イオンの脱塩処理を行うのが好ましい。脱塩処理は電気伝導度が0.1S/m以下となるまで洗浄するのが好ましい。固形分を洗浄した後の湿ケーキは通常、粉体とするために必要に応じて乾燥する(洗浄・乾燥工程)。乾燥に用いる乾燥機としては、バンドドライヤー、ロータリードライヤー等の連続式乾燥機、箱型棚式乾燥機等のバッチ式乾燥機等を適宜使用できる。乾燥の際に分級又は造粒を同時に行ってもよい。乾燥と造粒を同時に行う場合は、通常の造粒乾燥機を用いることができ、流動層造粒乾燥機、スプレードライヤー等を適宜選択できる。スプレードライヤーにより造粒乾燥するには、前記の脱塩処理後の湿ケーキをスラリーにするのが好ましい。造粒乾燥によりチタン濃縮物を30~300μmの粒度に整粒することができる。乾燥温度は適宜設定することができる。以上のようにして製造されたチタン濃縮物のTiO品位は93質量%以上と極めて高く、95質量%以上とすることもできる。
【0016】
また、洗浄・乾燥工程の後、必要に応じて分級又は造粒してもよい(造粒工程)。分級機、造粒機は、通常の機具を用いて、その粒度を適宜調整することができ、チタン濃縮物を流動化しながら塩素化するために、例えば、30~300μmの粒度に整粒することができる。
【0017】
また、洗浄・乾燥工程の後、必要に応じて固形物を焼成してもよい(焼成工程)。焼成温度は、300~1600℃が好ましく、800~1400℃がより好ましい。焼成により、チタン濃縮物のルチル含有率、硬度、嵩密度を高めることができる。ルチル型酸化チタンの含有率が高いと塩素化反応が進みやすく、四塩化チタンを効率的に製造することができる。焼成時間は適宜設定することができる。
【0018】
本発明の製造方法では、低品位合成ルチルや天然ルチル等の低品位チタン濃縮物を原料に用いると、高温で焼成しなくても、乾燥を行うとルチル型構造を有する酸化チタンのみを含有する高品位のチタン濃縮物が製造できる。ルチル型構造を有する酸化チタンは、塩素ガスとの反応性がよいため、塩素化反応が効率よく行われる利点がある。
【実施例0019】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。使用したチタン含有材料、製造したチタン濃縮物の各成分を(株)リガク 波長分散蛍光X線分析装置 ZSX Primus IVで分析した。
【0020】
チタン含有材料として実施例で用いた低品位のチタン濃縮物(合成ルチル)の組成を表1に示す。Ti、Fe、Mn、Mgの含有率はそれぞれの酸化物に換算した値である。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例1
上記のチタン含有材料と20質量%塩酸がV/W=1(L/kg)となるように、撹拌機付きの反応容器に入れて撹拌混合しながら加熱し、108℃(塩酸含有浸出液の沸点)で5時間浸出させた。反応終了後、固液分離して得た固形物をろ過水洗し、熱風循環式乾燥機を用いて120℃で乾燥して、チタン濃縮物を得た。
【0023】
実施例2
実施例1において、V/W=2(L/kg)となるようにチタン含有材料と塩酸含有浸出液を撹拌混合したこと以外は同様にして、チタン濃縮物を得た。
【0024】
実施例3
実施例2において、20質量%塩酸を実施例2の固液分離後の回収塩酸(塩酸濃度19質量%)に代えたこと以外は同様にしてチタン濃縮物を得た。
【0025】
実施例4
実施例2において、20質量%塩酸を実施例3の固液分離後の回収塩酸(塩酸濃度17質量%)に代えたこと以外は同様にしてチタン濃縮物を得た。
【0026】
実施例5
実施例2において、20質量%塩酸を実施例4の固液分離後の回収塩酸(塩酸濃度 15質量%)に代えたこと以外は同様にしてチタン濃縮物を得た。
【0027】
実施例6
実施例1において、撹拌混合しないで加熱したこと以外は同様にしてチタン濃縮物を得た。
【0028】
実施例7
実施例1において、チタン含有材料を予めボールミルで粉砕したことと、浸出時間を7時間としたこと以外は同様にしてチタン濃縮物を得た。
【0029】
比較例1
実施例1において、低品位チタン濃縮物に代わり、表2に示した組成のイルメナイト鉱石を用いて、該イルメナイト鉱石と20質量%塩酸をV/W=6(L/kg)となるように混合した以外は同様にしてチタン濃縮物を得た。
【0030】
【表2】
【0031】
実施例と比較例で得られたチタン濃縮物の各成分分析の結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
比較例1のチタン濃縮物のTiO品位が84.9質量%であるのに対し、実施例1~7のチタン濃縮物のTiO品位が93.6~95.1質量%であり、93質量%を超える高い値となることがわかった。比較例1では多量の塩酸(V/W=6)を用いても高品位のチタン濃縮物が得られないことが分かる。また、実施例では、低品位チタン濃縮物を用いているため、乾燥段階でルチル型構造を有する酸化チタンのみを含有する高品位のチタン濃縮物が製造できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のチタン濃縮物の製造方法は、チタン含有材料に対して少量の塩酸含有浸出液の使用でも不純物を除去できることから、簡便かつ効率的な方法で高品位のチタン濃縮物を製造することができる。また、使用した塩酸含有浸出液を回収し、循環再使用することもできるため、大規模な廃酸処理設備が不要になる。