(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102910
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】船外機および船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 20/12 20060101AFI20230719BHJP
B63H 20/16 20060101ALI20230719BHJP
B63H 25/42 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B63H20/12 100
B63H20/16 100
B63H25/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003657
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 公隆
(72)【発明者】
【氏名】萩 朋洋
(72)【発明者】
【氏名】松永 卓真
(57)【要約】
【課題】船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのを抑制しながら、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくすることが可能な船外機および船舶を提供する。
【解決手段】この船外機100(船舶120)では、転舵機構40は、船外機本体102の左右方向における中央部102aに配置され、船外機本体102とともに回動するピニオン42と、ピニオン42を回動させるように直線移動するラック43と、を含む。そして、ラック43は、船外機本体102の前後方向に沿って延びている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機本体と、
前記船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、
前記転舵機構は、
前記船外機本体の左右方向における中央部に配置され、前記船外機本体とともに回動するピニオンと、
前記ピニオンを回動させるように直線移動するラックと、を含み、
前記ラックは、前記船外機本体の前後方向に沿って延びている、船外機。
【請求項2】
前記ラックは、前記船外機本体の左右方向において、前記船外機本体の最外端よりも内側に配置されている、請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記船外機本体は、エンジンと、前記エンジンを収納するカウルと、を含み、
前記ラックは、前記船外機本体の左右方向において、前記カウルの最外端よりも内側に配置されている、請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記船外機本体は、ブラケットを介して船体の船尾に取り付けられており、
前記ラックは、前記船外機本体の左右方向において、前記ブラケットの最外端よりも内側に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項5】
前記船外機本体は、エンジンと、前記船外機本体の上下方向に延びるとともに、前記エンジンにおいて生じた排気ガスを通過させる排気通路と、を含み、
前記ラックは、前記船外機本体の上下方向において、前記排気通路が設けられる高さ範囲内に配置されるとともに、前記船外機本体の左右方向において、前記排気通路よりも外側に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項6】
前記ピニオンは、前記排気通路よりも前方に配置されている、請求項5に記載の船外機。
【請求項7】
前記船外機本体は、エンジンと、前記エンジンを冷却するための冷却水を通過させる冷却水通路と、を含み、
前記ラックは、前記船外機本体の上下方向において、前記冷却水通路が設けられる高さ範囲内に配置されているとともに、前記船外機本体の左右方向において、前記冷却水通路よりも外側に配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項8】
前記冷却水通路は、前記冷却水通路に前記冷却水を循環させるための冷却水ポンプを含み、
前記冷却水ポンプは、前記ラックが設けられる高さ位置に配置されており、
前記ピニオンは、前記冷却水ポンプよりも後方に配置されている、請求項7に記載の船外機。
【請求項9】
前記ラックは、前記ピニオンに対して一対設けられており、
前記一対のラックは、前記船外機本体の左右方向における両側から前記ピニオンに挟み込むように配置されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項10】
前記ラックは、船体の船尾の上端よりも下方に配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項11】
前記船外機本体は、ブラケットを介して船体の船尾に取り付けられており、
前記ラックは、前記船外機本体の上下方向において、前記ブラケットの下端の近傍に配置されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項12】
前記船外機本体は、前記船外機本体の下部に設けられるロワーケースを含み、
前記転舵機構は、前記ラックが収容されるとともに前記ラックを直線移動させる油圧シリンダをさらに含み、
前記油圧シリンダの前端は、前記ロワーケースの前端よりも前方に配置されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項13】
前記船外機本体は、
ブラケットを介して船体に取り付けられるアッパー部と、
前記アッパー部の下方に配置されプロペラが設けられたロワー部と、を含み、
前記転舵機構は、前記アッパー部に対して前記ロワー部を前記転舵軸回りに回動させるように構成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項14】
船外機本体と、
前記船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、
前記転舵機構は、
前記船外機本体の左右方向における中央部に配置され、前記船外機本体とともに回動する回動部材と、
前記回動部材を回動させるように直線移動する直線移動部材と、を含み、
前記直線移動部材は、前記船外機本体の前後方向に沿って延びている、船外機。
【請求項15】
船体と、
前記船体の船尾に取り付けられる船外機と、を備え、
前記船外機は、
船外機本体と、
前記船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、
前記転舵機構は、
前記船外機本体の左右方向における中央部に配置され、前記船外機本体とともに回動するピニオンと、
前記ピニオンを回動させるように直線移動するラックと、を含み、
前記ラックは、前記船外機本体の前後方向に沿って延びている、船舶。
【請求項16】
前記ラックは、前記船外機本体の左右方向において、前記船外機本体の最外端よりも内側に配置されている、請求項15に記載の船舶。
【請求項17】
前記船外機本体は、エンジンと、前記エンジンを収納するカウルと、を含み、
前記ラックは、前記船外機本体の左右方向において、前記カウルの最外端よりも内側に配置されている、請求項16に記載の船舶。
【請求項18】
前記船外機本体は、ブラケットを介して前記船体の前記船尾に取り付けられており、
前記ラックは、前記船外機本体の左右方向において、前記ブラケットの最外端よりも内側に配置されている、請求項15~17のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項19】
前記船外機本体は、エンジンと、前記船外機本体の上下方向に延びるとともに、前記エンジンにおいて生じた排気ガスを通過させる排気通路と、を含み、
前記ラックは、前記船外機本体の上下方向において、前記排気通路が設けられる高さ範囲内に配置されるとともに、前記船外機本体の左右方向において、前記排気通路よりも外側に配置されている、請求項15~18のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項20】
前記ラックおよび前記ピニオンを含む前記転舵機構を備える前記船外機は、前記船体の前記船尾に前記船体の左右方向に並ぶように複数取り付けられている、請求項15~19のいずれか1項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船外機および船舶に関し、特に、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構が、船外機本体とともに回動する回動部材と、回動部材を回動させるように直線移動する直線移動部材と、を含む船外機および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構が、船外機本体とともに回動する回動部材と、回動部材を回動させるように直線移動する直線移動部材と、を含む船外機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構を備える船外機が記載されている。上記特許文献1に記載されている船外機では、転舵機構は、船外機本体の左右方向における中央部に配置され、船外機本体とともに回動する回動部材(たとえば、ピニオン)と、回動部材を回動させるように船外機本体の左右方向に沿って直線移動する直線移動部材(たとえば、ラック)と、を含む。上記特許文献1に記載されている船外機では、直線移動部材は、船外機本体の左右方向に沿って延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている船外機では、直線移動部材が船外機本体の左右方向に沿って延びているので、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくする場合、直線移動部材が移動する方向である船外機本体の左右方向において、直線移動部材を直線移動させる距離が比較的大きくなる。この場合、船外機本体の左右方向において、直線移動部材を直線移動させるために必要となるスペースが比較的大きくなる。すなわち、船外機本体の左右方向において船外機が大型化する。なお、船外機本体の左右方向において船外機が大型化した場合、たとえば、船体の船尾に複数の船外機を取り付ける際に、互いに隣り合う船外機同士が接触しないように船外機の配置が制約される等の問題が生じる。このため、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのを抑制しながら、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくすることが可能な構成が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのを抑制しながら、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくすることが可能な船外機および船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による船外機は、船外機本体と、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、転舵機構は、船外機本体の左右方向における中央部に配置され、船外機本体とともに回動するピニオンと、ピニオンを回動させるように直線移動するラックと、を含み、ラックは、船外機本体の前後方向に沿って延びている。
【0008】
この発明の第1の局面による船外機では、上記のように、ラックは、船外機本体の前後方向に沿って延びている。これにより、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくする場合、ラックが移動する方向である船外機本体の前後方向において、ラックを移動させるために必要となるスペースが比較的大きくなるものの、ラックが移動する方向ではない船外機本体の左右方向において、ラックを移動させるために必要となるスペースは殆ど変化しない。その結果、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのを抑制しながら、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくすることができる。
【0009】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、ラックは、船外機本体の左右方向において、船外機本体の最外端よりも内側に配置されている。このように構成すれば、ラックが船外機本体の左右方向において船外機本体の最外端よりも外側に配置されている場合と比較して、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのを抑制することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、船外機本体は、エンジンと、エンジンを収納するカウルと、を含み、ラックは、船外機本体の左右方向において、カウルの最外端よりも内側に配置されている。このように構成すれば、エンジンを収納するカウルは、船外機本体において、船外機本体の左右方向における大きさが比較的大きいので、ラックが船外機本体の左右方向においてカウルの最外端よりも内側に配置されていることによって、ラックを、船外機本体の左右方向において、船外機本体の最外端よりも内側に容易に配置することができる。
【0011】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、船外機本体は、ブラケットを介して船体の船尾に取り付けられており、ラックは、船外機本体の左右方向において、ブラケットの最外端よりも内側に配置されている。このように構成すれば、ラックが船外機本体の左右方向においてブラケットの最外端よりも外側に配置されている場合と比較して、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのをより抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、船外機本体は、エンジンと、船外機本体の上下方向に延びるとともに、エンジンにおいて生じた排気ガスを通過させる排気通路と、を含み、ラックは、船外機本体の上下方向において、排気通路が設けられる高さ範囲内に配置されるとともに、船外機本体の左右方向において、排気通路よりも外側に配置されている。このように構成すれば、ラックを、排気通路における排気ガスの流れを妨げることなく、排気通路が設けられる高さ範囲内に配置することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、ピニオンは、排気通路よりも前方に配置されている。このように構成すれば、ピニオンが排気通路よりも後方に配置される場合と比較して、排気通路を、船外機本体において、比較的後方側に配置することができる。その結果、エンジンにおいて生じた排気ガスを通過させる排気通路が船外機本体の後方側に配置される一般的な船外機に対して、船外機本体の左右方向における中央部に配置され、船外機本体とともに回動するピニオンと、ピニオンを回動させるように直線移動するとともに、船外機本体の前後方向に沿って延びているラックとを備えた構成を容易に適用することができる。
【0014】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、船外機本体は、エンジンと、エンジンを冷却するための冷却水を通過させる冷却水通路と、を含み、ラックは、船外機本体の上下方向において、冷却水通路が設けられる高さ範囲内に配置されているとともに、船外機本体の左右方向において、冷却水通路よりも外側に配置されている。このように構成すれば、ラックを、冷却水通路における冷却水の流れを妨げることなく、冷却水通路が設けられる高さ範囲内に配置することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、冷却水通路は、冷却水通路に冷却水を循環させるための冷却水ポンプを含み、冷却水ポンプは、ラックが設けられる高さ位置に配置されており、ピニオンは、冷却水ポンプよりも後方に配置されている。このように構成すれば、ピニオンが冷却水ポンプよりも前方に配置されている場合と比較して、冷却水ポンプを、船外機本体において、比較的前方側に配置することができる。その結果、エンジンを冷却するための冷却水通路に冷却水を循環させるための冷却水ポンプが船外機本体の前方側に配置される一般的な船外機に対して、船外機本体の左右方向における中央部に配置され、船外機本体とともに回動するピニオンと、ピニオンを回動させるように直線移動するとともに、船外機本体の前後方向に沿って延びているラックとを備えた構成を容易に適用することができる。
【0016】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、ラックは、ピニオンに対して一対設けられており、一対のラックは、船外機本体の左右方向における両側からピニオンに挟み込むように配置されている。このように構成すれば、ラックが、ピニオンに対して1つのみ設けられている場合と比較して、ラックを回動させるトルクの大きさを向上させることができる。その結果、ラックが、ピニオンに対して1つのみ設けられている場合と比較して、船外機本体を転舵軸回りにスムーズに回動させることができる。
【0017】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、ラックは、船体の船尾の上端よりも下方に配置されている。このように構成すれば、ラックが船体の船尾の上端よりも上方に配置されている場合と比較して、ラックが、船外機本体に対して、過度に上方に配置されるのを抑制することができる。
【0018】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、船外機本体は、ブラケットを介して船体の船尾に取り付けられており、ラックは、船外機本体の上下方向において、ブラケットの下端の近傍に配置されている。このように構成すれば、ラックが船外機本体の上下方向においてブラケットの下端の近傍以外の位置に配置されている場合と比較して、ラックが、船外機本体に対して、過度に上方または下方に配置されるのを抑制することができる。
【0019】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、船外機本体は、船外機本体の下部に設けられるロワーケースを含み、転舵機構は、ラックが収容されるとともにラックを直線移動させる油圧シリンダをさらに含み、油圧シリンダの前端は、ロワーケースの前端よりも前方に配置されている。このように構成すれば、油圧シリンダの前端がロワーケースの前端よりも後方に配置されている場合と比較して、船外機本体の前後方向において、ラックを直線移動させることが可能な距離を大きくすることができる。その結果、油圧シリンダの前端がロワーケースの前端よりも後方に配置されている場合と比較して、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくすることができる。
【0020】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、船外機本体は、ブラケットを介して船体に取り付けられるアッパー部と、アッパー部の下方に配置されプロペラが設けられたロワー部と、を含み、転舵機構は、アッパー部に対してロワー部を転舵軸回りに回動させるように構成されている。このように構成すれば、アッパー部に対してロワー部を転舵軸回りに回動させる構成において、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのを抑制しながら、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくすることができる。
【0021】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による船外機は、船外機本体と、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、転舵機構は、船外機本体の左右方向における中央部に配置され、船外機本体とともに回動する回動部材と、回動部材を回動させるように直線移動する直線移動部材と、を含み、直線移動部材は、船外機本体の前後方向に沿って延びている。
【0022】
この発明の第2の局面による船舶では、上記のように、直線移動部材は、船外機本体の前後方向に沿って延びている。これにより、上記第1の局面による船外機と同様に、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくする場合、直線移動部材が移動する方向である船外機本体の前後方向において、直線移動部材を移動させるために必要となるスペースが比較的大きくなるものの、直線移動部材が移動する方向ではない船外機本体の左右方向において、直線移動部材を移動させるために必要となるスペースは殆ど変化しない。その結果、上記第1の局面による船外機と同様に、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのを抑制しながら、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくすることができる。
【0023】
また、上記目的を達成するために、この発明の第3の局面による船舶は、船体と、船体の船尾に取り付けられる船外機と、を備え、船外機は、船外機本体と、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、転舵機構は、船外機本体の左右方向における中央部に配置され、船外機本体とともに回動するピニオンと、ピニオンを回動させるように直線移動するラックと、を含み、ラックは、船外機本体の前後方向に沿って延びている。
【0024】
この発明の第3の局面による船舶では、上記のように、ラックは、船外機本体の前後方向に沿って延びている。これにより、上記第1の局面による船外機と同様に、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのを抑制しながら、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくすることができる。
【0025】
上記第3の局面による船舶において、好ましくは、ラックは、船外機本体の左右方向において、船外機本体の最外端よりも内側に配置されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、ラックが船外機本体の左右方向において船外機本体の最外端よりも外側に配置されている場合と比較して、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのを抑制することができる。
【0026】
この場合、好ましくは、船外機本体は、エンジンと、エンジンを収納するカウルと、を含み、ラックは、船外機本体の左右方向において、カウルの最外端よりも内側に配置されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、ラックを、船外機本体の左右方向において、船外機本体の最外端よりも容易に確実に配置することができる。
【0027】
上記第3の局面による船舶において、好ましくは、船外機本体は、ブラケットを介して船体の船尾に取り付けられており、ラックは、船外機本体の左右方向において、ブラケットの最外端よりも内側に配置されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、ラックが船外機本体の左右方向においてブラケットの最外端よりも外側に配置されている場合と比較して、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのをより抑制することができる。
【0028】
上記第3の局面による船舶において、好ましくは、船外機本体は、エンジンと、船外機本体の上下方向に延びるとともに、エンジンにおいて生じた排気ガスを通過させる排気通路と、を含み、ラックは、船外機本体の上下方向において、排気通路が設けられる高さ範囲内に配置されるとともに、船外機本体の左右方向において、排気通路よりも外側に配置されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、ラックを、排気通路における排気ガスの流れを妨げることなく、排気通路が設けられる高さ範囲内に配置することができる。
【0029】
上記第3の局面による船舶において、好ましくは、ラックおよびピニオンを含む転舵機構を備える船外機は、船体の船尾に船体の左右方向に並ぶように複数取り付けられている。このように構成すれば、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのを抑制しながら、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくすることが可能な複数の船外機を、互いに隣り合う船外機同士が接触するのを抑制しながら、船体の船尾に船体の左右方向に並ぶように効果的に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、上記のように、船外機本体の左右方向において船外機が大型化するのを抑制しながら、船外機本体を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくすることが可能な船外機および船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態による船舶を示した平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による船舶における制御系の構成を示したブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態による船外機を示した側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による船外機の転舵機構を示した平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の第1変形例による船外機の転舵機構を示した平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の第2変形例による船外機の転舵機構を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態による船外機100および船舶120の構成について説明する。なお、図中のFWD、BWD、L、R、Z1およびZ2は、それぞれ、船舶120の前方、後方、左方(左舷側)、右方(右舷側)、上方および下方を示している。
【0034】
(船舶の全体構成)
図1示すように、船舶120は、船体110と、船外機100と、を備える。船外機100は、船体110を推進するための船舶用推進装置である。船外機100は、船体110の船尾111に取り付けられている。船外機100は、船体110の左右方向に並ぶように複数(本実施形態では、2つ)取り付けられている。船舶120は、比較的小型の船舶である。船舶120は、たとえば、遊覧や魚釣り等に用いられる船舶である。
【0035】
(船体の構成)
図2示すように、船体110は、船舶120を操縦(操船)するための操作を受け付ける操作部112を備える。操作部112は、リモートコントローラ112aと、ステアリングホイール112bと、ジョイスティック112cと、を含む。
【0036】
リモートコントローラ112aには、傾倒可能なレバーが設けられている。リモートコントローラ112aのレバーが傾倒されることにより、船外機100の推力(プロペラ35(
図3参照)の回転数)の変更、船外機100のシフト状態(前進状態、後進状態、ニュートラル状態)の切り換え等が行われる。
【0037】
ステアリングホイール112bは回動可能に構成されている。そして、ステアリングホイール112bが回動されることにより、船外機100の転舵(船体110に対するプロペラ35(
図3参照)の向きの変更)が行われる。
【0038】
船舶120では、リモートコントローラ112aに対する操作とステアリングホイール112bに対する操作との組み合わせにより、船舶120(
図1参照)の並進移動、旋回等が行われる。
【0039】
ジョイスティック112cには、傾倒可能かつ回動可能なレバーが設けられている。ジョイスティック112cのレバーが傾倒されるか、回動されるか、または、傾倒かつ回動されることにより、船外機100の推力の変更、船外機100のシフト状態の切り換え、船外機100の転舵等が行われる。
【0040】
船舶120では、ジョイスティック112cのレバーが傾倒されることにより、船舶120(
図1参照)の並進移動が行われる。また、ジョイスティック112cのレバーが傾倒かつ回動されることにより、船舶120の旋回が行われる。また、ジョイスティック112cのレバーが回動されることにより、船舶120の回頭が行われる。
【0041】
ジョイスティック112cには、ジョイスティックモードスイッチが設けられている。船舶120では、ジョイスティックモードスイッチが押下されることにより、操作モードが、ジョイスティックモードと非ジョイスティックモードとが切り換わるように構成されている。ジョイスティックモードでは、船舶120が、リモートコントローラ112aおよびステアリングホイール112bに対する操作を受け付けず、かつ、ジョイスティック112cに対する操作を受け付ける状態となる。非ジョイスティックモードでは、船舶120が、ジョイスティック112cに対する操作を受け付けず、かつ、リモートコントローラ112aおよびステアリングホイール112bに対する操作を受け付ける状態となる。
【0042】
船体110は、操作部112に対する操作に基づいて船外機100(のECU(Engine Control Unit)51、SCU(Steering Control Unit)52等)を制御する制御部113を備える。制御部113は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。
【0043】
(船外機の構成)
図3に示すように、船外機100は、ブラケット101を介して船体110の船尾111に取り付けられた船外機本体102を備える。具体的には、船外機本体102は、ブラケット101を介して船体110の船尾111に取り付けられたアッパー部10と、アッパー部10の下方に配置されプロペラ35が設けられたロワー部20と、を含む。アッパー部10は、エンジン31を収納するカウル11と、カウル11の下方に配置され船体110の船尾111に取り付けられたアッパーケース12と、を含む。ロワー部20は、ロワーケース21を含む。すなわち、船外機本体102は、船外機本体102の下部に設けられるロワーケース21を含む。
【0044】
船外機100は、エンジン31によりプロペラ35を駆動させるように構成されたエンジン式船外機である。具体的には、船外機本体102は、エンジン31と、ドライブシャフト32と、ギア部33と、プロペラシャフト34と、プロペラ35と、を含む。エンジン31は駆動力を発生させる内燃機関である。ドライブシャフト32は、カウル11とロワーケース21とに跨って上下方向に延びるように配置されている。ドライブシャフト32は、エンジン31のクランクシャフト(図示しない)に接続されている。ギア部33は、ロワーケース21に配置されている。ギア部33は、ドライブシャフト32の下端部と接続されている。プロペラシャフト34は、ギア部33に接続されている。プロペラシャフト34は、ギア部33の後方において、前後方向に延びるように配置されている。プロペラ35は、プロペラシャフト34の後端部に接続されている。プロペラ35は、船外機本体102の外部に露出するように、ロワーケース21の外部に配置されている。そして、エンジン31の駆動力は、ドライブシャフト32、ギア部33およびプロペラシャフト34を介して、プロペラ35に伝達される。プロペラ35は、伝達されたエンジン31の駆動力により、水中において回転することにより推力を発生させる。
【0045】
船外機本体102は、船外機100のシフト状態(前進状態、後進状態およびニュートラル状態)を切り換えるシフトアクチュエータ36を含む。シフトアクチュエータ36は、ギア部33の噛み合いを切り換えることにより、船外機100のシフト状態を、前進状態と後進状態とニュートラル状態との間で切り換えるように構成されている。前進状態は、プロペラ35から前方側への推進力を発生させるようにエンジン31の駆動力をプロペラ35に伝達する状態である。後進状態は、プロペラ35から後方側への推進力を発生させるようにエンジン31の駆動力をプロペラ35に伝達する状態である。ニュートラル状態は、エンジン31の駆動力をプロペラ35に伝達しない状態である。
【0046】
船外機100は、船外機本体102のうちの一部を転舵軸41回りに回動させる転舵機構40を備える。転舵機構40は、アッパー部10に対してロワー部20を転舵軸41回りに回動させるように構成されている。すなわち、船外機100では、船体110に対して、船外機本体102のうちの一部(ロワー部20)のみが回動するように構成されている。なお、転舵機構40の詳細に関しては、後述する。
【0047】
図2に示すように、船外機100は、エンジン31を制御するECU51と、転舵機構40を制御するSCU52と、を含む。ECU51は、船体110に設けられた制御部113による制御に基づいて、エンジン31の駆動およびシフトアクチュエータ36の駆動を制御するように構成されている。SCU52は、制御部113による制御に基づいて、転舵機構40の駆動を制御するように構成されている。ECU51およびSCU52は、たとえば、CPU、ROM、RAM等を含む。
【0048】
図3に示すように、船外機本体102は、エンジン31において生じた排気ガスを通過させる排気通路37を含む。排気通路37は、カウル11とロワーケース21とに跨って、船外機本体102の上下方向に延びるように配置されている。排気通路37は、エンジン31において生じた排気ガスを船外機本体102の外部に排出する排気出口を含む。排気出口は、ロワーケース21の後方側に設けられている。排気通路37を通過した排気ガスは、ロワーケース21の後方側に設けられた排気出口から、船外機本体102の外部に排気される。
【0049】
船外機本体102は、エンジン31を冷却するための冷却水を通過させる冷却水通路38を含む。冷却水通路38は、ロワーケース21とカウル11とに跨って、船外機本体102の上下方向に延びるように配置されている。冷却水通路38は、冷却水となる水を船外機本体102の外部から取り込む取込口を含む。取込口は、ロワーケース21の前方側に設けられている。また、冷却水通路38は、冷却水通路38に冷却水を循環させるための冷却水ポンプ38aを含む。取込口から取り込まれた水は、冷却水ポンプ38aにより、エンジン31を冷却するための冷却水としてエンジン31に供給される。
【0050】
(転舵機構の詳細な構成)
図4に示すように、転舵機構40は、船外機本体102のうちの一部(ロワー部20)とともに回動するピニオン42と、ピニオン42を回動させるように直線移動するラック43と、を含む。すなわち、転舵機構40は、ラック43およびピニオン42によって直線運動を回転運動に変換するように構成されている。なお、転舵機構40では、ラック43は、ピニオン42に対して1つ設けられている。
【0051】
ピニオン42は、船外機本体102の左右方向における中央部102aに配置されている。ピニオン42の内側には、転舵軸41が配置されている。ピニオン42は、ピニオン42の回動に伴って転舵軸41が回動するように、転舵軸41に固定されている。
図3に示すように、転舵軸41は、転舵軸41の回動に伴ってロワーケース21が回動するように、ロワーケース21の上部に固定されている。
【0052】
転舵軸41は、中空状に形成されている。転舵軸41は、アッパーケース12の下部とロワーケース21の上部とに跨って、上下方向に延びるように配置されている。
図4に示すように、転舵軸41の中央部には、ドライブシャフト32が転舵軸41に接触しないように、ドライブシャフト32が貫通している。
【0053】
ラック43は、ピニオン42の右舷側に、ピニオン42の歯と係合するように配置されている。ラック43は、船外機本体102の前後方向に沿って延びている。ラック43は、ピニオン42を回動させるように、ピニオン42の歯と係合した状態で、船外機本体102の前後方向に沿って直線移動する。
【0054】
転舵機構40は、ラック43が収容されるとともに、ラック43を直線移動させる油圧シリンダ44を含む。油圧シリンダ44は、前後方向に沿って延びるように配置されている。油圧シリンダ44の前端44aは、ロワーケース21の前端21aよりも前方に配置されている。油圧シリンダ44の内部には、2つの油室44bが形成されている。2つの油室44bは、ラック43が延びる方向(船外機本体102の前後方向)において、ラック43の一方側および他方側に形成されている。ポンプ駆動用モータ(図示しない)により油圧ポンプ(図示しない)が駆動されることによって、2つの油室44bのうちの一方への作動油の供給、および、2つの油室44bのうち他方からの作動油の排出が行われる。2つの油室44bの作動油の量が調整されることにより、ラック43が油圧シリンダ44の内部を直線移動する。
【0055】
ラック43は、船外機本体102の左右方向において、船外機本体102の最外端102bよりも内側に配置されている。具体的には、ラック43は、船外機本体102の左右方向において、カウル11の最外端11aよりも内側に配置されている。なお、ラック43は、船外機本体102の左右方向において、ブラケット101の最外端101aよりも内側に配置されている。
【0056】
図3に示すように、ラック43は、船外機本体102の上下方向において、排気通路37が設けられる高さ範囲内に配置されている。そして、
図4に示すように、ラック43は、船外機本体102の左右方向において、排気通路37よりも外側に配置されている。言い換えると、ラック43のうちのピニオン42と係合する歯は、船外機本体102の左右方向において、排気通路37よりも外側に配置されている。また、ピニオン42は、排気通路37よりも前方に配置されている。
【0057】
図3に示すように、ラック43は、船外機本体102の上下方向において、冷却水通路38が設けられる高さ範囲内に配置されている。そして、
図4に示すように、ラック43は、船外機本体102の左右方向において、冷却水通路38よりも外側に配置されている。言い換えると、ラック43のうちのピニオン42と係合する歯は、船外機本体102の左右方向において、冷却水通路38よりも外側に配置されている。また、
図3に示すように、冷却水ポンプ38aは、ラック43が設けられる高さ位置に配置されている。また、
図4に示すように、冷却水ポンプ38aは、ピニオン42よりも前方側に配置されている。すなわち、ピニオン42は、冷却水ポンプ38aよりも後方に配置されている。
【0058】
図3に示すように、ラック43は、船体110の船尾111の上端111aよりも下方に配置されている。具体的には、ラック43は、船外機本体102の上下方向において、ブラケット101の下端101bの近傍に配置されている。
【0059】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0060】
本実施形態では、上記のように、ラック43は、船外機本体102の前後方向に沿って延びている。これにより、船外機本体102を転舵軸41回りに回動可能な角度範囲を大きくする場合、ラック43が移動する方向である船外機本体102の前後方向において、ラック43を移動させるために必要となるスペースが比較的大きくなるものの、ラック43が移動する方向ではない船外機本体102の左右方向において、ラック43を移動させるために必要となるスペースは殆ど変化しない。その結果、船外機本体102の左右方向において船外機100が大型化するのを抑制しながら、船外機本体102を転舵軸回りに回動可能な角度範囲を大きくすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、ラック43は、船外機本体102の左右方向において、船外機本体102の最外端102bよりも内側に配置されている。これにより、ラック43が船外機本体102の左右方向において船外機本体102の最外端102bよりも外側に配置されている場合と比較して、船外機本体102の左右方向において船外機100が大型化するのを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、船外機本体102は、エンジン31と、エンジン31を収納するカウル11と、を含む。そして、ラック43は、船外機本体102の左右方向において、カウル11の最外端11aよりも内側に配置されている。これにより、エンジン31を収納するカウル11は、船外機本体102において、船外機本体102の左右方向における大きさが比較的大きいので、ラック43が船外機本体102の左右方向においてカウル11の最外端11aよりも内側に配置されていることによって、ラック43を、船外機本体102の左右方向において、船外機本体102の最外端11aよりも内側に容易に配置することができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、船外機本体102は、ブラケット101を介して船体110の船尾111に取り付けられている。そして、ラック43は、船外機本体102の左右方向において、ブラケット101の最外端101aよりも内側に配置されている。これにより、ラック43が船外機本体102の左右方向においてブラケット101の最外端101aよりも外側に配置されている場合と比較して、船外機本体102の左右方向において船外機100が大型化するのをより抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、船外機本体102は、エンジン31と、船外機本体102の上下方向に延びるとともに、エンジン31において生じた排気ガスを通過させる排気通路37と、を含む。また、ラック43は、船外機本体102の上下方向において、排気通路37が設けられる高さ範囲内に配置されている。そして、ラック43は、船外機本体102の左右方向において、排気通路37よりも外側に配置されている。これにより、ラック43を、排気通路37における排気ガスの流れを妨げることなく、ラック43を、排気通路37が設けられる高さ範囲内に配置することができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、ピニオン42は、排気通路37よりも前方に配置されている。これにより、ピニオン42が排気通路37よりも後方に配置される場合と比較して、排気通路37を、船外機本体102において、比較的後方側に配置することができる。その結果、エンジン31において生じた排気ガスを通過させる排気通路37が船外機本体102の後方側に配置される船外機100に対して、船外機本体102の左右方向における中央部102aに配置され、船外機本体102とともに回動するピニオン42と、ピニオン42を回動させるように直線移動するとともに、船外機本体102の前後方向に沿って延びているラック43とを備えた構成を容易に適用することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、船外機本体102は、エンジン31と、エンジン31を冷却するための冷却水を通過させる冷却水通路38と、を含む。また、ラック43は、船外機本体102の上下方向において、冷却水通路38が設けられる高さ範囲内に配置されている。そして、ラック43は、船外機本体102の左右方向において、冷却水通路38よりも外側に配置されている。これにより、ラック43を、冷却水通路38における冷却水の流れを妨げることなく、冷却水通路38が設けられる高さ範囲内に配置することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、冷却水通路38は、冷却水通路38に冷却水を循環させるための冷却水ポンプ38aを含む。また、冷却水ポンプ38aは、ラック43が設けられる高さ位置に配置されている。そして、ピニオン42は、冷却水ポンプ38aよりも後方に配置されている。これにより、ピニオン42が冷却水ポンプ38aよりも前方に配置されている場合と比較して、冷却水ポンプ38aを、船外機本体102において、比較的前方側に配置することができる。その結果、エンジン31を冷却するための冷却水通路38に冷却水を循環させるための冷却水ポンプ38aが船外機本体102の前方側に配置される船外機100に対して、船外機本体102の左右方向における中央部102aに配置され、船外機本体102とともに回動するピニオン42と、ピニオン42を回動させるように直線移動するとともに、船外機本体102の前後方向に沿って延びているラック43とを備えた構成を容易に適用することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、ラック43は、船体110の船尾111の上端111aよりも下方に配置されている。これにより、ラック43が船体110の船尾111の上端111aよりも上方に配置されている場合と比較して、ラック43が、船外機本体102に対して、過度に上方に配置されるのを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、船外機本体102は、ブラケット101を介して船体110の船尾111に取り付けられている。そして、ラック43は、船外機本体102の上下方向において、ブラケット101の下端101bの近傍に配置されている。これにより、ラック43が船外機本体102の上下方向においてブラケット101の下端101bの近傍以外の位置に配置されている場合と比較して、ラック43が、船外機本体102に対して、過度に上方または下方に配置されるのを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、船外機本体102は、船外機本体102の下部に設けられるロワーケース21を含む。また、転舵機構40は、ラック43が収容されるとともにラック43を直線移動させる油圧シリンダ44を含む。そして、油圧シリンダ44の前端44aは、ロワーケース21の前端21aよりも前方に配置されている。これにより、油圧シリンダ44の前端44aがロワーケース21の前端21aよりも後方に配置されている場合と比較して、船外機本体102の前後方向において、ラック43を直線移動させることが可能な距離を大きくすることができる。その結果、油圧シリンダ44の前端44aがロワーケース21の前端21aよりも後方に配置されている場合と比較して、船外機本体102を転舵軸41回りに回動可能な角度範囲を大きくすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、船外機本体102は、ブラケット101を介して船体110に取り付けられるアッパー部10と、アッパー部10の下方に配置されプロペラ35が設けられたロワー部20と、を含む。そして、転舵機構40は、アッパー部10に対してロワー部20を転舵軸41回りに回動させるように構成されている。これにより、アッパー部10に対してロワー部20を転舵軸41回りに回動させる構成において、船外機本体102の左右方向において船外機100が大型化するのを抑制しながら、船外機本体102を転舵軸41回りに回動可能な角度範囲を大きくすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、ラック43およびピニオン42を含む転舵機構40を備える船外機100は、船体110の船尾111に船体110の左右方向に並ぶように複数取り付けられている。これにより、船外機本体102の左右方向において船外機100が大型化するのを抑制しながら、船外機本体102を転舵軸41回りに回動可能な角度範囲を大きくすることが可能な複数の船外機100を、互いに隣り合う船外機100同士が接触するのを抑制しながら、船体110の船尾111に船体110の左右方向に並ぶように効果的に取り付けることができる。
【0073】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0074】
たとえば、上記実施形態では、ラック43およびピニオン42を含む転舵機構40を備える船外機100が、船体110の船尾111に船体110の左右方向に並ぶように複数取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラック43およびピニオン42を含む転舵機構40を備える船外機100は、船体110の船尾111に1つのみ取り付けられていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、転舵機構40が、アッパー部10に対してロワー部20を転舵軸41回りに回動させるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、転舵機構が、船体に対して船外機本体の全体を転舵軸回りに回動させるように構成されていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、油圧シリンダ44の前端44aが、ロワーケース21の前端21aよりも前方に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、油圧シリンダの前端が、ロワーケースの前端よりも後方に配置されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、ラック43が、船外機本体102の上下方向において、ブラケット101の下端101bの近傍に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラックが、船外機本体の上下方向において、ブラケットの下端の近傍以外の位置に配置されていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、ラック43が、船体110の船尾111の上端111aよりも下方に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラックが、船体の船尾の上端よりも上方に配置されていてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、ラック43が、ピニオン42の右舷側に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラックが、ピニオンの左舷側に配置されていてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、ラック43が、ピニオン42に対して1つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図5に示す第1変形例のように、ラックが、ピニオンに対して複数設けられていてもよい。
図5に示すように、第1変形例による船外機200は、船外機本体202と、転舵機構240と、を備える。転舵機構240では、ラック43は、ピニオン42に対して一対設けられている。そして、一対のラック43は、船外機本体202の左右方向における両側からピニオン42に挟み込むように配置されている。これにより、ラック43が、ピニオン42に対して1つのみ設けられている場合と比較して、ラック43を回動させるトルクの大きさを向上させることができる。その結果、ラック43が、ピニオン42に対して1つのみ設けられている場合と比較して、船外機本体202を転舵軸41回りにスムーズに回動させることができる。
【0081】
また、上記実施形態では、ピニオン42が、冷却水ポンプ38aよりも後方に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ピニオンが、冷却水ポンプよりも前方に配置されていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、ラック43が、船外機本体102の左右方向において、冷却水通路38よりも外側に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラックが、船外機本体の左右方向において、冷却水通路よりも内側に配置されていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、ピニオン42が、排気通路37よりも前方に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ピニオンが、排気通路よりも後方に配置されていてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、ラック43が、船外機本体102の左右方向において、排気通路37よりも外側に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラック43が、船外機本体の左右方向において、排気通路よりも内側に配置されていてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、ラック43が、船外機本体102の左右方向において、ブラケット101の最外端101aよりも内側に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラックが、船外機本体の左右方向において、ブラケットの最外端よりも外側に配置されていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、ラック43が、船外機本体102の左右方向において、カウル11の最外端11aよりも内側に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラックが、船外機本体の左右方向において、カウルの最外端よりも外側に配置されていてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、ラック43が、船外機本体102の左右方向において、船外機本体102の最外端101aよりも内側に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラックが、船外機本体の左右方向において、船外機本体の最外端よりも外側に配置されていてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、転舵機構40が、ラック43およびピニオン42によって直線運動を回転運動に変換するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図6に示す第2変形例のように、転舵機構が、ラックおよびピニオン以外の部品によって直線運動を回転運動に変換するように構成されていてもよい。
図6に示すように、第2変形例による船外機300は、船外機本体302と、船外機本体302を転舵軸341回りに回動させる転舵機構340と、を備える。転舵機構340は、船外機本体302とともに回動するリンク部材342と、リンク部材342を回動させるように直線移動するピストン343と、を含む。ピストン343は、船外機本体302の前後方向に沿って延びている。具体的には、リンク部材342は、転舵軸341を取り囲むように配置された円筒部342aと、円筒部342aからピストン343側に延びるアーム部342bと、を含む。円筒部342aは、円筒部342aの回動に伴って転舵軸341が回動するように、スプライン係合により転舵軸341に固定されている。ピストン343は、船外機本体302の前後方向においてピストン343の中央部に配置され、ピストン343に対して回動可能な回動部343aを有する。アーム部342bは、ピストン343の回動部343aの孔343bに嵌め込まれて、ピストン343に対して固定されている。ピストン343を船外機本体302の前後方向において直線移動させると、ピストン343の回動部343aが回動しながら、転舵軸341に対するアーム部342bの位置が変化する。転舵軸341に対するアーム部342bの位置の変化に伴って、転舵軸341に固定された円筒部342aが回動する。なお、リンク部材342およびピストン343は、それぞれ、特許請求の範囲の「回動部材」および「直線移動部材」の一例である。
【符号の説明】
【0089】
10 アッパー部
11 カウル
11a (船外機本体の左右方向におけるカウルの)最外端
20 ロワー部
21 ロワーケース
21a (ロワーケースの)前端
31 エンジン
35 プロペラ
37 排気通路
38 冷却水通路
38a 冷却水ポンプ
40、240、340 転舵機構
41、341 転舵軸
42 ピニオン
43 ラック
44 油圧シリンダ
44a (油圧シリンダの)前端
100、200、300 船外機
101 ブラケット
101a (船外機本体の左右方向におけるブラケットの)最外端
101b (ブラケットの)下端
102、202、302 船外機本体
102a (船外機本体の左右方向における)中央部
102b (船外機本体の左右方向における)最外端
110 船体
111 (船体の)船尾
111a (船体の船尾の)上端
120 船舶
342 リンク部材(回動部材)
343 ピストン(直線移動部材)