(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102912
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】睡眠導入補助装置
(51)【国際特許分類】
A61M 21/02 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
A61M21/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003663
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】508287611
【氏名又は名称】安達 直史
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】安達 直史
(57)【要約】
【課題】 音響信号、光信号、電気信号等を用いずに、効率よく睡眠の導入を助けることが可能な睡眠導入補助装置を提供する。
【解決手段】 振動発生装置3は、振動発生部カバー11を介して振動伝達部7に接続される。振動伝達部7は、内部に空間9を有する管状の部材である。振動発生装置3は、空間内の圧力を変動させることが可能であり、振動伝達部7の所定の部位では、空間9内の内圧変化が周期的に生じることとなる。振動伝達部7の一部を使用者の体の一部と接触させることで、振動伝達部7は、圧力変化による外面の変形によって使用者に振動を伝達可能して、使用者は、所定の周波数の振動を感じることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠導入補助装置であって、
振動を発生させる振動発生装置と、
前記振動発生装置で発生した振動を、前記振動発生装置から離れた位置の所定の範囲に伝達させる振動伝達部と、
を具備し、
前記振動伝達部を使用者の体に接触させることで、使用者に所定の周波数の振動を伝達し、睡眠に導入することを特徴とする睡眠導入補助装置。
【請求項2】
前記周波数が8~13Hzの範囲であることを特徴とする請求項1記載の睡眠導入補助装置。
【請求項3】
前記振動発生装置は、振幅変調された振動を前記振動伝達部へ伝達することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の睡眠導入補助装置。
【請求項4】
前記振動発生装置は、複数の周波数の振動を合成した合成波の振動を前記振動伝達部へ伝達することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の睡眠導入補助装置。
【請求項5】
前記振動伝達部は、略密閉された空間を有し、前記振動発生装置は、前記空間内の圧力を変動させることが可能であり、前記振動伝達部は、圧力変化による外面の変形によって使用者に振動を伝達可能であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の睡眠導入補助装置。
【請求項6】
前記振動伝達部には、外部と連通する小孔が設けられることを特徴とする請求項5に記載の睡眠導入補助装置。
【請求項7】
前記振動伝達部の前記空間が蛇行するように複数回交互に折り返されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の睡眠導入補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠導入補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
就寝時に睡眠に入れない際には、睡眠薬が用いられる場合があるが、心身への負担が大きく、必ずしも良いとは言えない。このような状況で、薬に頼らずに楽に睡眠に入れるように、種々の睡眠導入補助装置が提案されている。例えば、雨音や波の音を再生するもの、同じ繰り返しの光を発するもの、又は電極を用いて刺激を与えるもの等がある。
【0003】
ここで、脳波の一つにアルファ波がある。アルファ波は、8~13Hzの周波数の脳波であり、このアルファ波が活性化すると、人は、集中して落ち着いた状態になり、睡眠に入り易くなると言われている。また、8~13Hzの周波数の信号を刺激として人間に与えるとこのアルファ波が活性化すると言われている
【0004】
このように、所定の周波数の誘導音を背景音と重ねてユーザに聞かせることで、睡眠等へ誘導することが可能な誘導音生成装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2018/030404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、音として8~13Hzの音響信号を人間に与えても、当該音響は可聴周波数範囲(20-20,000Hz)外になるため、鼓膜を通じた音響による刺激として脳に達さず、十分な効果が期待できないおそれがある。
【0007】
また、8~13Hzの光信号として利用者に刺激を与える方法では、瞼を閉じた状態でも、刺激として使用者が認識可能な程度の光を用いる必要があり、相当に光の強度を増す必要がある。このため、かえって睡眠導入を妨げるおそれがある。
【0008】
また、電極から8~13Hzの電気信号として利用者に刺激を与える方法では、汗等の状況によって皮膚表面の導電度が変化するため、必要以上に大きな刺激となる可能性がある。この結果、かえって睡眠導入を妨げる場合がある。
【0009】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、音響信号、光信号、電気信号等を用いずに、効率よく睡眠の導入を助けることが可能な睡眠導入補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するための本発明は、睡眠導入補助装置であって、振動を発生させる振動発生装置と、前記振動発生装置で発生した振動を、前記振動発生装置から離れた位置の所定の範囲に伝達させる振動伝達部と、を具備し、前記振動伝達部を使用者の体に接触させることで、使用者に所定の周波数の振動を伝達し、睡眠に導入することを特徴とする睡眠導入補助装置である。
【0011】
前記周波数が8~13Hzの範囲であることが望ましい。
【0012】
前記振動発生装置は、振幅変調された振動を前記振動伝達部へ伝達してもよい。
【0013】
前記振動発生装置は、複数の周波数の振動を合成した合成波の振動を前記振動伝達部へ伝達してもよい。
【0014】
前記振動伝達部は、略密閉された空間を有し、前記振動発生装置は、前記空間内の圧力を変動させることが可能であり、前記振動伝達部は、圧力変化による外面の変形によって使用者に振動を伝達可能であってもよい。
【0015】
前記振動伝達部には、外部と連通する小孔が設けられてもよい。
【0016】
前記振動伝達部の前記空間が蛇行するように複数回交互に折り返されていてもよい。
【0017】
本発明によれば、機械的な振動を直接利用者に伝達するため、耳から取得される音響のように、可聴周波数帯から外れていても、確実に利用者に振動周波数を伝達することができる。この際、電気信号や光信号のように、利用者に対して過剰な刺激がかかることを抑制することができる。
【0018】
特に、振動の周波数が8~13Hzの範囲であれば、アルファ波を効率よく活性化して、楽に睡眠に導入することができる。
【0019】
また、振動が、振幅変調や合成波による振動であれば、振動に変化を与えることができるため、使用者がより自然に振動を感じることができる。
【0020】
また、振動伝達部を略密閉された空間とし、密閉空間に振動を与えることで、空間の内圧を変化させ、内圧変化によって振動を利用者に伝達することで、減衰が生じにくく、均一に振動を利用者に与えることができる。
【0021】
また、振動伝達部の略密閉空間の一部に小孔を形成することで、スピーカ等を使用して振動伝達部に8~13Hzの圧力変化を与えようとする際に、体重など定常的な圧力により、スピーカ等の変位部が定常的に偏移することを抑えることが可能になる。
【0022】
また、振動伝達部を、空間が蛇行するように、管状部材を複数回交互に折り曲げて構成することで、振動伝達部が潰れにくく、広範囲に振動を伝達することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、音響信号、光信号、電気信号等を用いずに、効率よく睡眠の導入を助けることが可能な睡眠導入補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】(a)は、
図1のA-A線断面図、(b)は、(a)のB部拡大図、(c)は、(a)のC部拡大図
【
図4】(a)は、睡眠導入補助装置1aの構成を示す図、(b)は、(a)のD-D線断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
図1は、睡眠導入補助装置1の構成を示す図である。睡眠導入補助装置1は、主に、振動発生装置3、制御部5、振動伝達部7等から構成される。なお、睡眠導入補助装置1の電源等の図示は省略する。
【0026】
図2(a)は、
図1のA-A線断面概略図、
図2(b)は、
図2(a)のB部拡大図、
図2(c)は、
図2(a)のC部拡大図である。振動発生装置3は、振動発生部カバー11を介して振動伝達部7に接続される。振動発生装置3は、例えば低周波のコーン型スピーカのように、コーン13、ボイスコイル15、マグネット17等から構成され、所定の周波数でコーン13を振動させることができる。
【0027】
なお、振動発生装置3は、前方の空気に対して、所定の周波数で振動を発生させる振動源となれば、その構造は図示したようなコーン型スピーカには限られず、他の構造のスピーカなど、振動を発生させるためのいずれの機構であってもよい。
【0028】
なお、振動発生装置3から発生し、振動伝達部7から使用者に伝達される振動周波数は、8~13Hzの範囲であることが望ましい。前述したように、アルファ波が活性となる周波数は8~13Hzの範囲であるため、この範囲の振動によって、利用者のアルファ波を活性化することができる。なお、例えば脳波のベータ波を活性化する際には14~38Hz程度が良く、シータ波を活性化する場合には4~8Hzとすればよい。
【0029】
振動伝達部7は、内部に空間9を有する管状の部材である。振動伝達部7は、空間9の内圧の変化で断面がわずかに変形可能であるとともに、使用者の体の一部の荷重を受けても、完全に空間9が潰れることがない程度の剛性を有する。すなわち、振動伝達部7は、可撓性を有する弾性変形可能な部材で構成され、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等の樹脂製である。なお、振動伝達部7の断面形状は、例えば略円形であってもよく、偏平形状としてもよい。
【0030】
振動発生装置3を稼働すると、振動は、通常、空気振動として振動伝達部7の内部の空間9に導入される。ここで、空気振動は、局所的な気圧の変化として考えることができる。また、本実施形態では、周波数が小さいため、振動を音波として考えると、波長が十分に長く(例えば、音速340m/sとすると、10Hzでは波長は10mとなる)、振動伝達部7の全長が例えば1m程度とすれば、振動伝達部7は波長に対して十分に短い。このため、振動発生装置3による振動は、振動伝達部7の内部空間の内圧変動と考えることができる。
【0031】
すなわち、振動発生装置3は、空間内の圧力を変動させることが可能であり、振動伝達部7では、空間9内の内圧変化が周期的に生じることとなる。言い換えれば、振動発生装置3は、空間9内の圧力変動を周期的に生じさせることができれば、スピーカ等の構造である必要はない。
【0032】
前述したように、振動伝達部7は僅かに変形可能であり、このような内圧変化は振動伝達部7の外面においても、わずかな断面変化として感じることができる。すなわち、振動伝達部7の一部を使用者の体の一部と接触させることで、振動伝達部7は、空間9の圧力変化による外面の変形によって、使用者に振動(振動伝達部7の表面における周期的な変形)を伝達可能であり、使用者は、振動伝達部7から、所定の周波数の振動を感じることができる。
【0033】
このように、振動伝達部7は、振動発生装置3で発生した振動に起因する圧力変化を、振動伝達部7の全体に伝達することが可能である。すなわち、振動伝達部7は、振動発生装置3で発生した振動を、振動発生装置3から離れた位置の所定の範囲に伝達させることができる。
【0034】
振動伝達部7は、略密閉された空間9を有する。ここで、略密閉されたとは、完全に密閉されていてもよいが、
図2(c)に示すように、振動伝達部7の端部に、小孔19が形成されてもよい。この場合、振動伝達部7の内部の空間9は、小孔19を介して外部と連通する。
【0035】
なお、小孔19のサイズは、振動伝達部7の空間9の断面積(長手方向に垂直な断面積)に対して十分に小さい。このため、小孔19が形成された場合でも、振動発生装置3によって、空間9内の内圧を変化させることができ、空間9の内圧を所定の周波数で変動させることができる。すなわち、「略密閉された」空間9とは、小孔19を通過する空気抵抗が十分に大きく、振動発生装置3によって形成された振動によって、空間9の内圧を所定の周波数で変動させることができる程度に密閉されていることをいう。
【0036】
制御部5は、振動発生装置3の動作を制御する。例えば、振動発生装置3に対して、前述した所定の範囲の周波数で振動を発生するように制御する。また、制御部5は、例えば、単一の周波数の振動ではなく、所定の周波数範囲の複数の周波数の振動を発振し、振幅変調を与えるように振動発生装置3を制御してもよい。また、制御部5は、時間と共に、又は所定時間経過後、振幅を徐々に減じて、所定時間後には使用者に刺激を与えないように振動発生装置3を制御してもよい。
【0037】
また、制御部5は、例えば下記に示すように、基本周波数より小さな周波数で振幅変調された信号V(t)で振動発生装置3を制御してもよい。
V(t)=(1+k・sin(2π・fa・t))・sin(2π・fb・t)
但し、k<1、fa<fb、fb=8~13Hz。
また、制御部5は、複数の周波数の振動を合成した合成波(合成周波数=8~13Hz)で振動発生装置3を制御してもよい。
振幅変調や合成波のように、振動に揺らぎのような変化を与えることで、常に一定の振幅による振動と比較して、使用者が違和感なくより自然に振動を感じることができる。
【0038】
次に、睡眠導入補助装置1の使用例について説明する。
図3は、睡眠導入補助装置1をセットした状態を示す図である。図示したように、振動発生装置3は、使用者21(例えばベッド)から離れた位置に配置される。
【0039】
振動伝達部7は、ベッド等の寝具の幅方向に所定の範囲に配置される。この際、振動伝達部7は、例えば使用者21の肩口や首元等に接するように配置される。このようにすることで、使用者21が寝返りをうっても、使用者21と振動伝達部7とを必ず接触させて、振動を使用者21に伝達することができる。
【0040】
ここで、振動伝達部7は、使用者21の一部の体重を受けるため、わずかに潰れが生じる。また、使用者21の体温等による温度上昇もあるため、空間9内の圧力が増加する。空間9内の圧力が所定以上となると、例えばコーン13の変形や恐れや、コーン13を線形に変位させることができなくなる恐れがある。これに対し、小孔19を設けてくことで、使用状態での断面積の減少による圧力上昇や、温度上昇に伴う圧力上昇を逃がして、空間9内の過剰な圧力増加を抑制することができる。
【0041】
なお、振動伝達部7は、一直線上に配置したがこれには限られない。
図4(a)は、睡眠導入補助装置1aを示す図であり、
図4(b)は、
図4(a)のD-D線断面図である。
【0042】
睡眠導入補助装置1aの振動伝達部7は、空間9が蛇行するように、管状部材が複数回交互に折り曲げられて形成される。このようにすることで、振動を伝達する範囲を広くすることができる。
【0043】
なお、図示した例では、管状部材を交互に折り曲げて蛇行させたが、同様の構造として、例えばエアベッドやエアクッションのように、所定の範囲に互いに連通する空間9が形成される袋体により形成してもよい。
【0044】
以上、本実施の形態によれば、振動発生装置3によって生成される機械的な振動を振動伝達部7に伝達し、使用者の体に接触させることで、振動による刺激を使用者に確実に伝達させることができる。特に、使用者に伝達する振動の周波数を所定の範囲とすることで、脳波においてアルファ波を活性化して、睡眠に導入することができる。この際、光や電極からの電気刺激ではないため、使用者の睡眠を妨げることを抑制することができる。
【0045】
また、振動伝達部7は、空間9の内圧変化による断面形状のわずかな変化(変形)を使用者に伝達するため、振動伝達部7の全ての位置で略同様の振動を使用者に与えることができる。
【0046】
また、振動伝達部7には、小孔19が設けられるため、空間9の内部の圧力が過剰に大きくなることを抑制することができる。このため、振動発生装置3による振動(すなわち、内圧の周期的な変動)を確実に得ることができる。
【0047】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0048】
1、1a………睡眠導入補助装置
3………振動発生装置
5………制御部
7……振動伝達部
9………空間
11………振動発生部カバー
13………コーン
15………ボイスコイル
17………マグネット
19………小孔
21………使用者