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特開2023-10295薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010295
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20230113BHJP
   E02D 1/02 20060101ALI20230113BHJP
   E02D 1/08 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E02D3/12 101
E02D1/02
E02D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114336
(22)【出願日】2021-07-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第14回地盤改良シンポジウム論文集(USB)、「電気検層を用いた薬液注入工法の出来高確認」、令和2年11月5日(発送日)
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519232068
【氏名又は名称】NPO法人地盤防災ネットワーク
(71)【出願人】
【識別番号】596164652
【氏名又は名称】太洋基礎工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】下坂 賢二
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 光洋
(72)【発明者】
【氏名】村田 芳信
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 敬三
(72)【発明者】
【氏名】花田 有紀
(72)【発明者】
【氏名】雪吹 和那
(72)【発明者】
【氏名】八嶋 厚
(72)【発明者】
【氏名】大野 康年
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝芳
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040CA02
2D040GA02
2D043AA01
2D043AB06
2D043AC01
2D043AC03
(57)【要約】
【課題】改良前後の電気比抵抗の計測によって、改良体の一軸圧縮強さを評価可能とした電気検層を用いた薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法を提供する。
【解決手段】事前に、縦軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、横軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得ておくとともに、該相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)を確保し得る条件の前記改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)の閾値を設定する。地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を利用して電気検層による電気比抵抗を計測し、前記電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)を求め、これが前記閾値より大きいか小さいかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかどうかを判断する。
【選択図】図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、一方軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得ておくとともに、該相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)を確保し得る条件の前記改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)の閾値を設定しておき、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を利用して電気検層による電気比抵抗を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)を求め、この電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)が前記閾値より大きいか小さいかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかどうかを判断することを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法。
【請求項2】
前記一方軸を一軸圧縮強さquとし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図は、
地盤改良に使用するシリカ溶液の電気比抵抗特性を把握するために、水でシリカ溶液を希釈してシリカ濃度毎の電気比抵抗を測定して、シリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(Rc)との相関図を得る第1手順と、
未改良・改良地盤の電気比抵抗(Rs・Rimp)と間隙水・薬液の電気比抵抗(Rpw・Rc)との相関図を得る第2手順と、
前記第1手順で得たシリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(Rc)との相関図と、前記第2手順で得た未改良・改良地盤の電気比抵抗(Rs・Rimp)と間隙水・薬液の電気比抵抗(Rpw・Rc)との相関図とに基づいて、シリカ濃度(SiO2)と改良地盤の電気比抵抗(Rimp)との相関図を得る第3手順と、
目標とする一軸圧縮強さ(quck)に対応する薬液シリカ濃度を設定する目的で、室内にて作製した供試体を用いて、シリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との相関図を得る第4手順と、
前記第3手順で得たシリカ濃度(SiO2)と改良地盤の電気比抵抗(Rimp)との相関図を整理して、一方軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得る第5手順と、
前記第4手順で得たシリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との相関図を整理して、一方軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とし、他方軸を一軸圧縮強さ(qu)とした相関図を得る第6手順と、
前記第5手順で得た相関図と、第6手順で得た相関図に基づいて、前記一方軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得る第7手順と、
によって得るようにする請求項1記載の薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法。
【請求項3】
間隙水の塩分濃度が5,000~10,000ppmまでの地盤を地盤改良対象とする請求項1、2いずれかに記載の薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法。
【請求項4】
薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、一方軸を液状化強度比(RL)又は粘着力(c)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得ておくとともに、該相関図に基づいて、目標とする液状化強度比(RL)又は粘着力(c)を確保し得る条件の前記改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)の閾値を設定しておき、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を利用して電気検層による電気比抵抗を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)を求め、この電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)が前記閾値より大きいか小さいかで、目標とする液状化強度比(RL)又は粘着力(c)が確保されているかどうかを判断することを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法。
【請求項5】
薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、一方軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、他方軸を未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)との比(σunimp/σimp)とした相関図を得ておくとともに、該相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)を確保し得る条件の前記未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)との比(σunimp/σimp)の閾値を設定しておき、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を利用して電気検層による電気比抵抗を計測し、未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)との比(σunimp/σimp)を求め、この導電率の比(σunimp/σimp)が前記閾値より大きいか小さいかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかどうかを判断することを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気検層を用いた薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、埋立て地等の軟弱地盤の地盤強化のために、水ガラス(珪酸ナトリウム)などからなる薬液を地盤に注入する薬液注入工法によって地盤改良工事が行われている。前記薬液注入工法による地盤改良工事では、施行後に、薬液が対象地盤に満遍なく行き渡っているかを確認する施工確認調査が行われる。
【0003】
薬液注入工法の施工確認調査として最も一般的な方法は、改良土を一軸圧縮強さ(qu)により評価する方法である。しかし、薬液注入による改良土の一軸圧縮強さは、qu=50~100kPa程度と小さく、対象地盤によっては強度のバラツキが生じ適正に評価されない場合があった。すなわち、前記一軸圧縮強さquによる評価において、quが50~100kPa程度の小さな地盤の場合、事後調査における試料採取時や供試体作成時に、強度低下に繋がる乱れが生じやすい。また、対象地盤によっては供試体内に貝殻、木片、シルト、有機質土等が混入することにより、強度のバラツキが生じて適正に評価できない場合があった。
【0004】
このような一軸圧縮強さ試験以外の方法により改良地盤の品質を直接的に評価する方法として、国土交通省の埋立地等における薬液注入工法による地盤改良工事に関する検討委員会等において、ピエゾドライブコーン(PDC)などのように間隙水圧が測定できる動的コーン貫入試験が提唱されている。前記ピエゾドライブコーンは、圧力センサを内蔵したコーンをハンマーの打撃で地盤に貫入し、1打撃毎の貫入量と貫入時の間隙水圧の応答値を計測するものである。貫入量からは、標準貫入試験のN値に相当する地盤の動的な貫入抵抗値(Nd値)が1打撃毎に算出される。また、打撃貫入で生ずる地盤内の間隙水圧から、細粒分含有率Fcが推定されるとともに、この間隙水圧を用いて得られる累積過剰間隙水圧比が薬液の地盤への浸透を評価する指標となり得ることなどが上記の検討委員会等で提案されている。
【0005】
また、薬液注入工法の施工確認調査の他の方法として、電気検層が挙げられる。電気検層は、薬液注入工法では地盤の間隙水が薬液に置き換えられ地盤の圧縮率が変化するとともに、薬液が固化することで地盤の強度が増加することから、改良後の地盤は電気伝導度の特性が変化することを利用したものである。この電気検層では、施工前後における電気比抵抗値の低下によって、改良効果の定性的判断が可能になる。前記電気検層の測定手順は、ボーリング孔内に、上下方向に所定の間隔で複数の電極が備えられた測定プローブを挿入した後、電流電極に通電し、電極間の電位差から比抵抗を求める。
【0006】
このような電気検層による地盤改良工事の品質確認方法として、下記特許文献1においては、外面に環状の電極が取り付けられた電極取付体を改良体内に挿入し、電極取付体の周囲に造成された改良体に通電し、かかる状態で計測された電流電極間の電流及び電位電極間の電位差を用いて比抵抗を求める方法が開示されている。また、非特許文献1においては、薬液注入前後の電気比抵抗の変化から、薬液充填率を求める方法が開示されている。
【0007】
本出願人等においても、下記特許文献2において、バラツキが少なく、改良地盤の品質が直接的に確認できる地盤改良効果の確認方法として、薬液注入工法による地盤改良効果の確認方法であって、地盤改良後において、小型動的コーン貫入試験により深度とNd値との関係を示したNd値の深度分布図を得て、地盤改良前後における前記Nd値の増分量から地盤改良効果を確認する1次的効果確認を行い、前記1次的効果確認によって地盤改良効果が認められない場合に、前記小型動的コーン貫入試験の貫入孔に電極を備えた測定プローブを挿入して比抵抗を測定する電気検層を行い、深度と比抵抗との関係を示した比抵抗の深度分布図を得て、地盤改良前後における前記比抵抗の減分量から地盤改良効果を確認する2次的効果確認を行うようにする地盤改良効果の確認方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-46510号公報
【特許文献2】特開2021-4473号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】小峯秀雄、「電気比抵抗による薬液注入改良部の充填率の評価方法」、土木学会論文集、No.463/III-22、p.153-162、1993年3月
【非特許文献2】菅野高弘等、「液状化対策として薬液を注入した地盤の原位置調査による強度評価法」、港湾空港技術研究所資料、No.1366,pp.2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に係る方法は、計測した比抵抗から改良体の出来高、すなわち断面積、大きさ、直径等を算出するものであり、前記非特許文献1に係る方法は、電気比抵抗から薬液充填率を算出するものであり、前記特許文献2に係る方法は、Nd値の増分量だけでは地盤改良効果が判断できない場合でも、比抵抗の減量分から地盤改良固結体の存在を確認できるようにしたものである。
【0011】
前述したように、薬液注入工法による地盤改良効果の1次的評価方法は、一軸圧縮強さquにより評価する方法であるにも拘わらず、前述の従来技術はいずれも固結体の強度を直接的な評価対象とするものではない。
【0012】
また、電気比抵抗の計測によって地盤改良効果を評価する場合、沿岸地帯の埋立地等、間隙水の塩分濃度が高く電気比抵抗が小さい場合では、薬液浸透の判別に適用できる可能性は低いとの指摘もされている(非特許文献2)。
【0013】
そこで本発明の主たる課題は、改良前後の電気比抵抗の計測によって、改良体の一軸圧縮強さを評価可能とした電気検層を用いた薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法を提供することにある。
【0014】
第2の課題は、本発明に係る薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法の適用範囲(間隙水の塩分濃度範囲)を明らかにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、一方軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得ておくとともに、該相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)を確保し得る条件の前記改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)の閾値を設定しておき、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を利用して電気検層による電気比抵抗を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)を求め、この電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)が前記閾値より大きいか小さいかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかどうかを判断することを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0016】
上記請求項1記載の発明では、薬液注入工法による地盤改良効果(一軸圧縮強さ)を評価するに当たって、事前に、一方軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得ておくとともに、該相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)を確保し得る条件の前記改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)の閾値を設定しておくようにする。なお、具体的な前記相関図の求め方については請求項2による。
【0017】
そして、現地において、地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を利用して電気検層による電気比抵抗を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)を求め、この電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)が前記閾値より大きいか小さいかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかどうかを判断する。
【0018】
従って、改良前後の電気比抵抗の計測によって、改良体の一軸圧縮強さを評価することが可能になる。すなわち、従来は改良前後の電気比抵抗の比較により薬液が充填されているかどうかの定性的な評価であったが、本発明によれば、改良前後の電気比抵抗から簡単に改良後の一軸圧縮強さを数値で把握することが可能になり、改良効果を定量的に評価することが可能になる。
【0019】
請求項2に係る本発明として、前記一方軸を一軸圧縮強さquとし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図は、
地盤改良に使用するシリカ溶液の電気比抵抗特性を把握するために、水でシリカ溶液を希釈してシリカ濃度毎の電気比抵抗を測定して、シリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(Rc)との相関図を得る第1手順と、
未改良・改良地盤の電気比抵抗(Rs・Rimp)と間隙水・薬液の電気比抵抗(Rpw・Rc)との相関図を得る第2手順と、
前記第1手順で得たシリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(Rc)との相関図と、前記第2手順で得た未改良・改良地盤の電気比抵抗(Rs・Rimp)と間隙水・薬液の電気比抵抗(Rpw・Rc)との相関図とに基づいて、シリカ濃度(SiO2)と改良地盤の電気比抵抗(Rimp)との相関図を得る第3手順と、
目標とする一軸圧縮強さ(quck)に対応する薬液シリカ濃度を設定する目的で、室内にて作製した供試体を用いて、シリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との相関図を得る第4手順と、
前記第3手順で得たシリカ濃度(SiO2)と改良地盤の電気比抵抗(Rimp)との相関図を整理して、一方軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得る第5手順と、
前記第4手順で得たシリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との相関図を整理して、一方軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とし、他方軸を一軸圧縮強さ(qu)とした相関図を得る第6手順と、
前記第5手順で得た相関図と、第6手順で得た相関図に基づいて、前記一方軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得る第7手順と、
によって得るようにする請求項1記載の薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0020】
上記請求項2記載の発明は、前記一方軸を一軸圧縮強さquとし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図の具体的な求め方について規定したものである。
【0021】
請求項3に係る本発明として、間隙水の塩分濃度が5,000~10,000ppmまでの地盤を地盤改良対象とする請求項1、2いずれかに記載の薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0022】
上記請求項3記載の発明は、本発明に係る薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法の適用範囲(間隙水の塩分濃度範囲)を明らかにしたものである。電気比抵抗法による評価が不向きとされていた沿岸地帯などにおいても、その適用範囲を明らかにすることによって信頼のおける評価が可能になる。
【0023】
請求項4に係る本発明として、薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、一方軸を液状化強度比(RL)又は粘着力(c)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得ておくとともに、該相関図に基づいて、目標とする液状化強度比(RL)又は粘着力(c)を確保し得る条件の前記改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)の閾値を設定しておき、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を利用して電気検層による電気比抵抗を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)を求め、この電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)が前記閾値より大きいか小さいかで、目標とする液状化強度比(RL)又は粘着力(c)が確保されているかどうかを判断することを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0024】
上記請求項4記載の発明は、一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)とは一定の換算式によって変換が可能であること、一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)とは一定の換算式によって変換が可能であることに鑑み、前記一方軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図において、前記一方軸の一軸圧縮強さ(qu)を液状化強度比(RL)又は粘着力(c)に代えた相関図とし、これに基づいて、地盤改良効果を判定するものである。
【0025】
請求項5に係る本発明として、薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、一方軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、他方軸を未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)との比(σunimp/σimp)とした相関図を得ておくとともに、該相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)を確保し得る条件の前記未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)との比(σunimp/σimp)の閾値を設定しておき、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を利用して電気検層による電気比抵抗を計測し、未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)との比(σunimp/σimp)を求め、この導電率の比(σunimp/σimp)が前記閾値より大きいか小さいかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかどうかを判断することを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0026】
上記請求項5記載の発明は、電気比抵抗(R)と導電率(σ)とは換算式(R=1/σ)によって変換が可能であることに鑑み、前記一方軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図において、前記他方軸の改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)を、未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)との比(σunimp/σimp)に代えた相関図を用い、これに基づいて、地盤改良効果を判定するものである。
【発明の効果】
【0027】
以上詳説のとおり本発明によれば、改良前後の電気比抵抗の計測によって、改良体の一軸圧縮強さを評価可能とした電気検層を用いた薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法を提供することが可能になる。
【0028】
また、本発明に係る薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法の適用範囲(間隙水の塩分濃度範囲)が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】小型土層実験で使用する小型円筒土槽の縦断面図である。
図2】使用砂の粒径加積曲線である。
図3】電気比抵抗測定位置を示す平面図である。
図4】シリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(Rc)との関係を示すグラフである。
図5】珪砂7号及び遠州珪砂の未改良地盤、改良地盤の電気比抵抗と間隙水塩分濃度との関係を示すグラフである。
図6】未改良・改良地盤の電気比抵抗と間隙水・薬液の電気比抵抗の関係を示すグラフである。
図7】改良地盤の電気比抵抗と薬液シリカ濃度との関係を示すグラフである。
図8】珪砂7号(瀬戸産)の一軸圧縮強さとシリカ濃度との関係を示すグラフである。
図9】現場実証実験で使用するプローブの貫入孔への圧入装置の側面図である。
図10】原位置土の土質柱状図である。
図11】原位置土の粒径加積曲線である・
図12】薬液改良体の平面図である。
図13】薬液改良体の断面図である。
図14】改良体Aのqu(一軸圧縮強さ)、Nd値(小型動的コーン貫入試験より得られたN値と等価なNd値)、R(押込型マイクロ電気検層(電極間隔2.5cm)より得られた電気比抵抗)、Rimp/Runimp(改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比)である。
図15】改良体Bのqu(一軸圧縮強さ)、Nd値(小型動的コーン貫入試験より得られたN値と等価なNd値)、R(押込型マイクロ電気検層(電極間隔2.5cm)より得られた電気比抵抗)、Rimp/Runimp(改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比)である。
図16】未改良・改良地盤と間隙水・薬液の電気比抵抗の関係を示すグラフである。
図17】改良地盤の電気比抵抗と薬液シリカ濃度との関係を示すグラフである。
図18】配合試験により得られた一軸圧縮強さとシリカ濃度との関係を示すグラフである。
図19】改良体Aの希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)と、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との関係を示すグラフである。
図20】改良体Bの希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)と、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との関係を示すグラフである。
図21】改良体A、Bの希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)と一軸圧縮強さ(qu)との関係を示すグラフである。
図22】一軸圧縮強さquと、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との関係を示すグラフである。
図23】一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)との間の相関式を示す図である。
図24】一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)との間の相関式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0031】
本発明は、埋立地等の軟弱地盤の地盤強化のため、水ガラス(珪酸ナトリウム)などからなる薬液を地盤に注入する薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であり、具体的には以下の手順によるものである。
【0032】
事前に、縦軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、横軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得ておくとともに、該相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)を確保し得る条件の前記改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)の閾値を設定しておき、
地盤改良前後にそれぞれ、地盤に縦方向に形成した貫入孔を利用して電気検層による電気比抵抗を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)を求め、この電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)が前記閾値より大きいか小さいかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかどうかを判断する。
【0033】
すなわち、本発明では薬液注入工法による地盤改良に先立って、改良地盤の原位置土を用いた室内実験により、縦軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、横軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図(以下、一軸圧縮強さ相関図ともいう。)を得ておくようにする。この際、前記一軸圧縮強さ相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)を確保し得る条件の前記改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)の閾値を設定しておくようにする。
【0034】
そして、地盤改良前に地盤に形成した貫入孔に電気検層プローグを挿入して所定の深さ毎に電気比抵抗(Runimp)を計測する。また、地盤改良後にも地盤に形成した貫入孔に電気検層プローグを挿入して所定の深さ毎に電気比抵抗(Rimp)を計測する。
【0035】
あとは、地盤改良前後の電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)を求め、この電気抵抗の比(Rimp/Runimp)が前記閾値より大きいか小さいかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかどうかを判断することが可能になる。なお、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかどうかだけではなく、実際に地盤改良前後の電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)を前記一軸圧縮強さ相関図の横軸に当て嵌め、相関線との交点から改良後の地盤の一軸圧縮強さquの数値を具体的に知ることも可能になる。
【0036】
次に、前記一軸圧縮強さ相関図を得るための手順について詳述する。
【0037】
(第1手順)
先ず最初に、地盤改良に使用するシリカ溶液の電気比抵抗特性を把握するために、水でシリカ溶液を希釈してシリカ濃度毎の電気比抵抗を測定して、シリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(Rc)との相関図を得るようにする。すなわち、地盤改良のために地盤に注入する水ガラス(シリカ溶液)をどれだけ注入すると、どれぐらい電気比抵抗が低下するのかを定量的に把握する。この相関図の例が後述の図4に示したものである。
【0038】
(第2手順)
未改良・改良地盤の電気比抵抗(Rs・Rimp)と間隙水・薬液の電気比抵抗(Rpw・Rc)との相関図を得るようにする。すなわち、未改良・改良地盤の電気比抵抗(Rs・Rimp)は、間隙水・薬液の電気比抵抗(Rpw・Rc)に支配され、未改良・改良地盤の電気比抵抗(Rs・Rimp)と、間隙水・薬液の電気比抵抗(Rpw・Rc)との関係は、極めて相関性が高いものとなっている。この相関図の例が、後述の図6に示したものである。
【0039】
(第3手順)
前記第1手順で得たシリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(Rc)との相関図と、前記第2手順で得た未改良・改良地盤の電気比抵抗(Rs・Rimp)と間隙水・薬液の電気比抵抗(Rpw・Rc)との相関図とに基づいて、シリカ濃度(SiO2)と改良地盤の電気比抵抗(Rimp)との相関図を得るようにする。すなわち、前記第1手順で得たシリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(Rc)との相関図のシリカ濃度(SiO2)はそのままにして、電気比抵抗(Rc)を前記第2手順で得た未改良・改良地盤の電気比抵抗(Rs・Rimp)と間隙水・薬液の電気比抵抗(Rpw・Rc)との相関図とに基づいて、シリカ濃度(SiO2)と改良地盤の電気比抵抗(Rimp)との相関図を用いて変換し、シリカ濃度(SiO2)と改良地盤の電気比抵抗(Rimp)との相関図を得るようにする。この相関図が目的の一軸圧縮強さ相関図を得るために必要となる、一方側の相関図データ(電気比抵抗データ)となる。この相関図の例が後述の図7に示したものである。
【0040】
(第4手順)
次に、目標とする一軸圧縮強さ(quck)に対応する薬液シリカ濃度を設定する目的で、室内にて作製した供試体を用いて、シリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との相関図を得るようにする。すなわち、前記第1手順で得たシリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(Rc)との相関図に対応して、シリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との相関図を得るようにする。この相関図の例が、後述の図8に示したものである。
【0041】
(第5手順)
前記第3手順で得たシリカ濃度(SiO2)と改良地盤の電気比抵抗(Rimp)との相関図を整理して、横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とし、縦軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得るようにする。
【0042】
すなわち、最終的に得たい縦軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、横軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得るために、前記第3手順で得たシリカ濃度(SiO2)と改良地盤の電気比抵抗(Rimp)との相関図を変換する。シリカ濃度(SiO2)は絶対値としての濃度なので、相対的数値として一般化する。つまり、横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とする。これにより、所期濃度の数値に関係なく横軸のシリカ濃度のパラメータを一般化することができる。また、縦軸の改良地盤の電気比抵抗(Rimp)を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とすることによりパラメータの一般化を図る。この変換した相関図の例が、後述の図19及び図20に示したものである。
【0043】
(第6手順)
前記第4手順で得たシリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との相関図を整理して、横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とし、縦軸を一軸圧縮強さ(qu)とした相関図を得るようにする。
【0044】
すなわち、前記第4手順で得たシリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との相関図を変換する。シリカ濃度(SiO2)は絶対値として濃度なので、相対的数値として一般化する。つまり、横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とする。これにより、所期濃度の数値に関係なく横軸のシリカ濃度のパラメータを一般化することができる。この変換した相関図の例が、図21(A)及び図21(B)に示したものである。
【0045】
(第7手順)
前記第5手順で得た相関図と、第6手順で得た相関図に基づいて、前記一軸圧縮強さ相関図を得るようにする。
【0046】
すなわち、前記第5手順で横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とした場合の改良地盤の電気比抵抗(Rimp)を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)との相関図が得られ、前記第6手順で同じく横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とした場合の一軸圧縮強さ(qu)との相関図が得られている。
【0047】
これらの相関図は、横軸が希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)で共通しているため、縦軸同士の関係で相関図を描くことが可能になる。このグラフが、最終的に得たい前述の一軸圧縮強さ相関図である。この相関図の例が図22に示したものである。
【0048】
前記一軸圧縮強さ相関図において、事前に目標とする一軸圧縮強さ(quck)を確保し得る条件の前記改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)の閾値を設定しておけば、改良前後に電気比抵抗の計測を行って、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)を求め、この電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)が前記閾値より大きいか小さいかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかどうかを判断することができる。
【0049】
ところで、本発明方法は、改良前後で改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)とが明確に異なることが条件となる。従って、この条件を満たす地盤は、後述の実験で明らかにされるように、間隙水の塩分濃度が5,000~10,000ppmまでの地盤である。従って、本発明法は間隙水の塩分濃度が5,000~10,000ppmまでの地盤を対象とするのがよい。
【実施例0050】
1.小型土槽実験
まず、改良砂の電気比抵抗特性と本手法による適用範囲を明らかにする目的のためにで小型土槽実験を行った。
【0051】
(1) 実験概要
本実験は、間隙水の塩分濃度(電気比抵抗)が地盤の比抵抗に及ぼす影響を確認し、改良前後の比抵抗変化から改良域の判別が可能であるか検証する。実験は、図1に示す小型円筒土槽を用い、塩分濃度の異なる間隙水にて作製した未改良地盤と同地盤に特殊シリカ液を注入して改良した薬液改良地盤を作製し、各地盤の電気比抵抗を測定した。
【0052】
(2) 実験方法
未改良地盤の作製は、土槽内に所定の密度となるよう乾燥砂を空中落下法により充?した後、土槽下部より炭酸ガスを注入して間隙中の空気を炭酸ガスに置換する。その後、土槽下部より所定の塩分濃度の脱気水を限界動水勾配以下の水頭差で浸透させた。また、改良地盤は、未改良地盤を作製後、土槽下部より所定のシリカ濃度の特殊シリカ液を浸透注入して作製した。実験に使用した砂は、珪砂7号(瀬戸産)および遠州珪砂である。使用砂の物理特性および粒径加積曲線を下表1および図2に示し、土槽地盤の作製条件を下表2に示す。
【表1】
【表2】
【0053】
電気比抵抗の測定は、電気検層プローブを用いた。同プローブは点電極(四極法)の電極配置にて電極間隔は25mmである。また、既往の円周状に配置した電極では電極径に対する測定孔径の比が、測定される電気比抵抗へ与える影響が極めて大きいことから、同影響の無い点電極を採用している。
【0054】
測定は、図3に示す平面位置にてプローブ下端深度が地表面から14cm,15cm,16cmおよび17cm深度にて実施した。したがって、1土槽あたりの測定ポイント数は、未改良地盤が20ポイント、改良地盤は8ポイントとなる。改良地盤については比抵抗測定後、内径75mm×高150mmのシンウォールライナーを改良地盤に押込み採取した試料について一軸圧縮試験、シリカ含有量試験を実施した。
【0055】
(3) 特殊シリカ液の電気比抵抗
実験に際し、特殊シリカ液の電気比抵抗特性を把握するため、水で薬液を希釈して薬液シリカ濃度毎の電気比抵抗を測定した。実験に使用した特殊シリカ液の電気比抵抗と薬液シリカ濃度の関係を図4に示す。同電気比抵抗はシリカ濃度が1.5wt%より低くなると急激に増加するが、2.0wt%を超えるとシリカ濃度の増加により電気比抵抗が低くなるが0.4~1.3Ω・mの範囲にある。
【0056】
(4) 実験結果
図5に珪砂7号(瀬戸産)および遠州珪砂の未改良地盤、改良地盤の電気比抵抗と間隙水塩分濃度の関係を示す。図6に未改良、改良地盤の電気比抵抗Runimp、Rimpと間隙水、薬液の電気比抵抗Rpw、Rcの関係を示す。電気比抵抗は、電極間隔25mmの測定結果にて図3に示す各測定ポイントの平均値としている。測定した電気比抵抗の変動係数は、珪砂7号(瀬戸産)にて未改良:0.04 程度、改良:0.02程度、遠州珪砂にて未改良:0.06程度、改良:0.02程度とばらつきは少ない。
【0057】
未改良地盤、改良地盤の電気比抵抗は、間隙水、薬液の電気比抵抗に支配され、未改良地盤、改良地盤の電気比抵抗と間隙水、薬液の電気比抵抗との関係は、極めて相関性が高い。また、同図より、未改良地盤では、間隙水の塩分濃度が高くなるにつれ比抵抗が小さくなる。
【0058】
一方、改良地盤では、間隙水の塩分濃度に関わらずほぼ一定となる。未改良地盤と改良地盤の電気比抵抗は、間隙水の塩分濃度が10,000ppm程度で同程度となり、同濃度を超えると間隙水の電気比抵抗は薬液の比抵抗より小さくなる。
【0059】
以上より、未改良・改良の電気比抵抗の差異は、地盤種別によるが、間隙水の塩分濃度が5,000~10,000ppm程度までは、判別することが可能と考えられる。
【0060】
図6に示す未改良・改良地盤~間隙水・薬液の電気比抵抗関係と、図4に示す薬液の電気比抵抗~シリカ濃度の関係より試算した改良地盤の電気比抵抗と薬液シリカ濃度の関係を図7に示す。同図には薬液の電気比抵抗も併記している。薬液シリカ濃度2wt%以上では、薬液の電気比抵抗が0.4~1.3Ω・mの範囲に対し、改良地盤の電気比抵抗では1.0~3.3Ω・mと範囲幅が大きくなる。
【0061】
電気検層を用いた本実験結果では、電気比抵抗値のばらつきはほとんど無く、改良地盤と未改良地盤の電気比抵抗比Rimp/Runimpは、薬液と間隙水の電気比抵抗比Rc/Rpwに比例する。
【0062】
以上の実験結果より、
(a)未改良地盤・改良地盤の電気比抵抗と間隙水・薬液の電気比抵抗の関係は、極めて高い相関性がある。
(b)未改良・改良の電気比抵抗の差異は、地盤種別によるが、間隙水の塩分濃度が5,000~10,000ppm程度までは、判別することが可能である。
(c)特殊シリカ液の電気比抵抗はシリカ濃度が1.5wt%より低くなると急激に増加する。一方、2.0wt%を超えると薬液の電気比抵抗はさほど変わらず、0.4~1.3Ω・mとの範囲にあるが、改良地盤では1.0~3.3Ω・mと範囲幅が大きくなる。
(d)本電気検層による電気比抵抗の測定は、Rc/Rpwの値に関わらずばらつきの少ない値が得られる。
【0063】
次に、電気比抵抗を用いた改良効果の評価であるが、図7に示した改良地盤の電気比抵抗Rimpとシリカ濃度の関係より、シリカ濃度毎のRimpが得られる。また、実工事では、設計基準強度quckに対応する薬液シリカ濃度を設定する目的で、室内にて作製した供試体を用いてシリカ濃度毎の一軸圧縮試験を実施する。図8に珪砂7号(瀬戸産)の一軸圧縮強さquとシリカ濃度(SiO2)の関係を示す。
【0064】
(5) まとめ
本実験では、間隙水の塩分濃度(電気比抵抗)が地盤の比抵抗に及ぼす影響と改良前後の比抵抗変化から改良域の判別が可能であるか検証した。実験の結果、以下の(1)~(3)に示す結果が得られた。
(a)未改良・改良地盤の電気比抵抗の差異は、地盤種別によるが、間隙水の塩分濃度が5,000~10,000ppm程度までは判別することが可能である。また、事前に現地土砂を用いて本実験を実施することで本手法の適用性を判断できる。
(b)点電極を用いた電気検層による電気比抵抗の測定は、Rc/Rpwの値に関わらずばらつきの少ない値が得られる。したがって、細かい比抵抗の変化を捉えることができる。
(c)電気比抵抗を用いた改良効果の評価は、地盤の電気比抵抗とシリカ濃度の関係および改良強度とシリカ濃度の関係を用いて評価できる。
【0065】
2.現場実証実験
(1)実験概要
本実験は、改良試験施工による薬液改良地盤を対象に改良前後の地盤に小型動的コーン貫入試験を実施後、同貫入孔を利用して電気検層による電気比抵抗を測定し、改良域の改良効果を評価した。また、小型動的コーン貫入試験より得られたNd値、乱さない試料を採取して実施した一軸圧縮試験および繰返し三軸試験結果と比較し、本手法の有効性について検証した。なお、電気比抵抗の測定においては押込型マイクロ電気検層法を採用した。
【0066】
(2)押込型マイクロ電気検層法の概要
押込型マイクロ電気検層法は、ボーリング孔内に挿入した電極により測定する一般的な電気検層とは異なり、動的コーン貫入試験等を実施した後に、同貫入孔を利用して測定を行う。押込型マイクロ電気検層法のプローブは、点電極(二極法)の電極配置にて電極間隔2.5cm、 5.0cmとした。プローブの直径は、小型動的コーン貫入試験の貫入孔に圧入することを想定して直径32mmとした。また、プローブ電極を貫入孔の壁面に圧着させるためスリーブ側面に3mmの突起を設けている。図9にプローブの貫入孔への圧入装置1を示す。
【0067】
圧入装置1は、貫入孔3の直上の地表面に、貫入孔3の両側にそれぞれ上下方向に沿って伸縮自在とされたピストン10、10が配置され、これらピストン10、10の上端同士に跨設された架台11の中央部に、下端に測定プローブ2が連結された貫入ロッド4を挟持するチャック12が備えられるとともに、前記ピストン10、10の動作を制御するコントロールユニット13が備えられたものである。また、前記コントロールユニット13には、エンジン及び油圧ポンプからなる油圧ユニット14が接続されている。
【0068】
前記圧入装置1では、両側のピストン10、10が同調して伸縮し、前記架台11が上下方向に移動することにより、前記チャック12によって挟持された貫入ロッド4が上下方向に移動し、測定プローブ2の貫入孔3への押し込み及び引き抜きが行われるようになっている。
【0069】
(3)実験サイトの概要
図10及び図11に、実験サイトの土質柱状図とN値および粒径加積曲線を示し、下表3に物理特性を示す。地層は、地表面から盛土、砂混りシルト、その下部にシルト混り砂が続いている。薬液改良対象層であるシルト混り砂は、GL-2m~-4mに有機質土を含み、GL-5m以深にシルトを層状に含む。地下水位は、GL-1.1mで、地下水の電気比抵抗は4~12Ω・m、同塩分濃度は400~1,300ppmの範囲にある。
【表3】
【0070】
図12に薬液改良体の平面図を示し、図13にその断面図を示し、改良仕様を下表4に示す。改良A、改良Bとも計画改良直径2.5mを満足し、改良体表面には未固結部は見られていない。
【表4】
【0071】
(4)実験方法
実験は、改良体を埋め戻した後、小型動的コーン貫入試験(Penny)を実施し、同貫入孔を利用して押込型マイクロ電気検層を実施した。測定は、図12に示すように未改良:1箇所、改良A:2箇所、改良B:2箇所について実施した。測定深度は、未改良:GL-10m、改良A:GL-8mおよび改良B:GL-5mとした。測定時の改良体材令は約23ヶ月である。また、現地土砂を用いて前述と同様な小型模型地盤を作製し、未改良、改良地盤の電気比抵抗を測定した。
【0072】
(5)実験結果
図14及び図15にそれぞれ、改良Aと改良Bとについて、一軸圧縮強さqu、小型動的コーン貫入試験より得られたNと等価なN値、押込型マイクロ電気検層(電極間隔2.5cm)より得られた電気比抵抗Rおよび改良地盤と未改良地盤の電気比抵抗の比(Rimp/Runimp)の深度分布を示す。
【0073】
(a)一軸圧縮強さqu
一軸圧縮強試験は、改良試験施工時にブロックサンプリング、ロータリー式三重管サンプラーにて採取した改良砂試料(材令28日)について実施した。改良体の強度は、改良体半径の1/2位置にて採取された試料を用いて評価されていることから、図14図15には同位置より採取した試料の試験結果を示した。また、採取した供試体内に有機質土、腐植土等が介在する場合、同箇所に沿ってクラックが発生することで著しく低い値となったことから、有機質土、腐植土介在の有無により仕分をした。
【0074】
一軸圧縮強さquは、改良Aでは、特にばらつきが大きい。これは、採取した供試体内の有機質土、腐植土の介在によるクラックの発生が主な原因であるが、同様な供試体は、三重管サンプラーにて採取した試料に多く見られた。自然地盤において一軸圧縮強さによる改良前後の特性変化を定量的に把握することは、難しい結果であった。
【0075】
(b)N
改良Aでは、改良後のN値は概ね増加している。改良によるN値増分の平均は、GL-2m~-4mの上部改良体にて改良中心+10cm位置:16程度、改良中心+60cm位置:6程度、GL-4m~-6mの下部改良体にて改良中心+10cm位置:6程度、改良中心+60cm位置:6程度であった。一方、改良Aと比較して目標改良強度が1/2の改良Bでは、改良体上半分ではNd値の増加が認められるものの下半分では増加は認められなかった.
【0076】
(c)電気比抵抗R
電気比抵抗Rは、未改良地盤ではGL-3.0m~-4.0m付近にて90~130Ω・m程度と高い値を示すが、その他の深度では概ね30~60Ω・mである。一方、改良地盤では改良AにてGL-2.0m~GL-6.0mの全ての改良深度においてR=1~3Ω・m程度と低い値を示し、改良BにてGL-2.0m~-3.5mにて2~10Ω・m、GL-3.5m~4.0mにて20~70Ω・mを示している。電気比抵抗は、改良により大きく低下していることがわかる。
【0077】
(d)改良効果の評価
現地で測定した電気比抵抗に基づいて改良の効果を評価するため、現地土砂を用いて前述の小型土槽実験と同様に模型地盤を作製し、未改良、改良地盤の電気比抵抗を測定した。土槽の作製条件は、地盤密度:D=50%(e=0.911)、間隙水の塩分濃度:400, 1,300, 20,000ppm、使用薬液:特殊シリカ液8wt%である。また、改良地盤は同地盤に特殊シリカ液を浸透注入することにより作製している。
【0078】
したがって、同実験にて測定された改良地盤の電気比抵抗は、薬液充填率100%に近い条件下であると考えられる。
【0079】
図16に未改良・改良地盤~間隙水・薬液の電気比抵抗関係を示し、同図と図4に示す薬液の電気比抵抗~シリカ濃度の関係より試算した改良地盤の電気比抵抗Rimpと薬液シリカ濃度(SiO2)の関係を図17に示す。また、図18に配合試験より得られた一軸圧縮強さquとシリカ濃度(SiO2)の関係を示し、図18図17とにより一軸圧縮強さquと改良地盤と未改良地盤の電気比抵抗の比Rimp/Runimpの関係に整理したものを図22に示す。
【0080】
具体的には、以下の手順により、図22の相関図(一軸圧縮強さquと改良地盤と未改良地盤の電気比抵抗の比Rimp/Runimpとの関係)を得るようにする。
【0081】
図17に示されるシリカ濃度(SiO2)と改良地盤の電気比抵抗(Rimp)との相関図を整理(変換)して、図19及び図20に示されるように、横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とし、縦軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図を得るようにする。
【0082】
図19は、改良Aの場合の変換したグラフである。この場合、Runimp=15Ω・m(塩分濃度1,300ppm 地下水塩分濃度)と仮定した。所期のシリカ濃度はco=8wt%である。同図において、図面左側は横軸を横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)としたグラフであり、図面右側は更に縦軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)としたグラフである。
【0083】
図20は、改良Bの場合の変換したグラフである。この場合、Runimp=15Ω・m(塩分濃度1,300ppm 地下水塩分濃度)と仮定した。所期のシリカ濃度はco=5wt%である。同図において、図面左側は横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)としたグラフであり、図面右側は更に縦軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)としたグラフである。
【0084】
次に、図18に示されるシリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との相関図を整理して、図21に示されるように、横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とし、縦軸を一軸圧縮強さ(qu)とした相関図を得るようにする。なお、図21(A)が改良Aであり、図21(B)が改良Bである。
【0085】
図19及び図20の相関図と、図21の相関図とは横軸が希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)で共通しているため、両者を縦軸の関係同士で整理して、図22に示される、一軸圧縮強さquと改良地盤と未改良地盤の電気比抵抗の比Rimp/Runimpの相関図を得ることができる。
【0086】
そして、同図22において、最小二乗法により近似直線を描くと、改良A(目標改良強度quck≧100kPa)および改良B(目標改良強度quck≧50kPa)の改良効果を判断する閾値を設定すると、改良Aでは、Rimp/Runimp≦0.13、改良Bでは、Rimp/Runimp≦0.16となる。
(e)考察
図14図15に示すRimp/Runimpの深度分布を見ると、改良AではGL-2.0m~-6.0mの深度にてRimp/Runimpが概ね0.1以下となっている。一方、改良BではGL-2.0m~-3.5mにてRimp/Runimpが0.1以下、GL-3.5m~-4.0mにて0.25~0.8であった。
【0087】
図22より設定した改良効果判断の閾値は、改良A:Rimp/Runimp≦0.13、改良B:Rimp/Runimp≦0.16であることから、改良AではGL-2.0m~-6.0mにて薬液の充?が認められ、改良BではGL-2.0m~-3.5mにて薬液の充?が認められるもののGL-3.5m~-4.0mでは十分な充?が認められない結果であった。
【0088】
(6)まとめ
本実験では、点電極を用いた電気検層(押込型マイクロ検層)により、現地改良地盤の電磁比抵抗を測定し、その改良効果の評価を試みた。実験の結果、以下の(a),(b)に示す結果が得られた。
(a)新たに開発した押込型マイクロ検層にて測定した比抵抗は、薬液改良前後の差異を敏感に表現できる、
(b)同手法にて測定した電気比抵抗を用いて行った改良効果の評価は、改良範囲におけるN値の増分、一軸圧縮強さおよび液状化強度比と比較しても妥当なものである。
【0089】
3. 結論
本実験では、薬液注入工法の出来高確認として改良前後の電気比抵抗変化に注目し、点電極を用いた電気検層にて小型土槽実験および現場実証実験を実施した。本実験より以下の(1)~(4)に示す結論を得た。
(1)特殊シリカ液の電気比抵抗は、シリカ濃度が1.5wt%より低くなると急激に増加し、2.0wt%を超えると薬液の電気比抵抗はさほどの変化は無く、0.4~1.3Ω・mの狭い範囲にあるが、改良地盤では2.0wt%を超える範囲において1.0~3.3Ω・mと範囲幅が大きくなる。
(2)未改良・改良地盤の電気比抵抗の差異は、地盤種別によるが、間隙水の塩分濃度が5,000~10,000ppm程度までは判別することが可能である。また、事前に現地土砂を用いて本実験を実施することで本手法の適用性を判断できる。
(3)点電極を用いた電気検層による電気比抵抗の測定は、比抵抗トモグラフィによる測定と比較して、Rc/Rpwの値に関わらず、ばらつきの少ない値が得られる。すなわち、間隙水の電気比抵抗が小さい地盤においても、精度の高い値を得ることができる。
(4)電気比抵抗を用いた改良効果の評価は、地盤の電気比抵抗とシリカ濃度の関係および改良強度とシリカ濃度の関係を用いて評価できる。ただし、改良効果を判断する電気比抵抗の閾値の設定には、シリカ濃度の希釈等の影響を明らかにする必要がある。
【0090】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、縦軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、横軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図(一軸圧縮強さ相関図)を用いて、地盤改良効果を判断したが、一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)とは一定の換算式によって変換が可能である。また、一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)とも一定の換算式によって変換が可能である。具体的に、一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)との相関式を図23に示し(出典:浸透固化処理方法 技術マニュアル改訂版 R2年7月 一般財団法人沿岸技術研究センター)、一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)との相関式を図24に示す(出典:浸透固化処理方法 技術マニュアル改訂版 R2年7月 一般財団法人沿岸技術研究センター)。
従って、前記縦軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、横軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図(一軸圧縮強さ相関図)において、前記縦軸の一軸圧縮強さ(qu)を液状化強度比(RL)又は粘着力(c)に代えた相関図とし、これを用いて地盤改良効果の判定を行うようにすることも可能である。
【0091】
(2)上記形態例では、縦軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、横軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図(一軸圧縮強さ相関図)を用いて、地盤改良効果を判断したが電気比抵抗と導電率とは換算式によって変換が可能である。具体的に、電気比抵抗(R)と導電率(σ)とは、R(Ω・m)=1/σ(S/m)の関係にある。
従って、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)は、換算式を当て嵌めると、未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)との比(σunimp/σimp)に変換することが可能になる。
従って、前記一方軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、他方軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図(一軸圧縮強さ相関図)において、前記他方軸の改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)を未改良地盤の導電率(σunimp)と改良地盤の導電率(σimp)との比(σunimp/σimp)に代えた相関図とし、これを用いて地盤改良効果を判定することも可能である。
【0092】
(3)上記形態例では、前記一軸圧縮強さ相関図において、縦軸を一軸圧縮強さ(qu)とし、横軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)としたが、縦軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とし、横軸を一軸圧縮強さ(qu)とすることも可能である。
また、前記第5手順における横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とし、縦軸を改良地盤の電気比抵抗(Rimp)と未改良地盤の電気比抵抗(Runimp)の比(Rimp/Runimp)とした相関図や、前記第6手順における横軸を希釈後のシリカ濃度(c)と所期のシリカ濃度(co)との比(c/co)とし、縦軸を一軸圧縮強さ(qu)とした相関図についても同様に、横軸と縦軸とを入れ替えることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1…圧入装置、2…測定プローブ、3…貫入孔、4…貫入ロッド、10…ピストン、11…架台、12…チャック、13…コントロールユニット、14…油圧ユニット
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