(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102969
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】シミュレーション方法、シミュレーション装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16Z 99/00 20190101AFI20230719BHJP
【FI】
G16Z99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003755
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】廣田 真人
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049DD02
(57)【要約】
【課題】液膜流れの数値解析において、計算負荷を低減させることが可能なシミュレーション方法を提供する。
【解決手段】SPH法を用いて浅水方程式を離散化して液膜流れを数値的に解析するシミュレーション方法において、まず、物理空間上で液膜が流れる曲面の形状を定義する。次に、曲面上の位置を二次元の解析空間上の位置に対応付ける。物理空間に定義される物理座標系と、解析空間に定義される一般座標系との間で物理量を変換する一般座標変換を、離散化された浅水方程式に施す。一般座標変換された浅水方程式を数値的に解く。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SPH法を用いて浅水方程式を離散化して液膜流れを数値的に解析するシミュレーション方法であって、
物理空間上で液膜が流れる曲面の形状を定義し、
前記曲面上の位置を二次元の解析空間上の位置に対応付け、
前記物理空間に定義される物理座標系と、前記解析空間に定義される一般座標系との間で物理量を変換する一般座標変換を、離散化された前記浅水方程式に施し、
前記一般座標変換された前記浅水方程式を数値的に解くシミュレーション方法。
【請求項2】
前記曲面の形状を、複数の頂点の座標を含むCADデータで定義し、前記頂点の座標を前記物理空間における座標として用い、
前記CADデータに含まれるテクスチャ座標系を前記解析空間の座標系として用い、
前記CADデータの構造と、SPH法で用いられるカーネル関数の導関数の公式とを用いて、前記物理空間上の物理座標と前記解析空間上の一般座標との間の座標変換係数を算出し、
算出された座標変換係数を用いて、前記一般座標変換を行う請求項1に記載のシミュレーション方法。
【請求項3】
物理空間における曲面の形状を、複数の頂点の座標を含むCADデータで定義し、前記頂点の座標を前記物理空間における座標として用い、
前記CADデータに含まれるテクスチャ座標を解析空間の座標として用い、
支配方程式を数値的に解くシミュレーション方法。
【請求項4】
前記支配方程式を、SPH法を用いて数値的に解き、
さらに、前記CADデータの構造と、SPH法で用いられるカーネル関数の導関数の公式とを利用して、前記物理空間と前記解析空間との間の座標変換係数を算出し、
算出された座標変換係数を用いて、前記物理空間上の物理座標と前記解析空間上の一般座標とを座標変換を行う請求項3に記載のシミュレーション方法。
【請求項5】
物理空間の曲面上の位置を二次元の解析空間上の位置に対応付けて、SPH法を用いて解析を行い、得られた物理量を前記物理空間の物理量に変換するシミュレーション方法であって、
前記曲面の形状を複数の頂点の座標として定義するCADデータの構造と、SPH法で用いられるカーネル関数の導関数の公式とを用いて、前記物理空間上の物理座標系と前記解析空間上の一般座標系との間の座標変換係数を算出するシミュレーション方法。
【請求項6】
SPH法を用いて液膜の流れを解析するシミュレーション装置であって、
シミュレーション条件が入力される入力部と、
前記入力部に入力されたシミュレーション条件に基づいて、SPH法を用いて複数の粒子のそれぞれの位置を時間発展させる処理部と
を備え、
前記シミュレーション条件は、液膜が沿う曲面の形状を物理空間に定義するCADデータ、液膜の物性値、及び初期条件を含み、
前記CADデータは、前記物理空間に定義される物理座標系において、前記曲面の形状を複数の頂点の座標として定義する頂点の一覧、及び前記曲面に張られる面に定義されるテクスチャ座標系におけるテクスチャ座標の一覧、及び前記物理座標系と前記テクスチャ座標系との対応関係を定義する情報を含み、
前記処理部は、
前記テクスチャ座標系が定義された二次元平面を解析空間とし、前記テクスチャ座標系を前記解析空間に定義された一般座標系として用い、前記CADデータに基づいて前記物理座標系と前記一般座標系との座標変換係数を算出し、
前記解析空間に複数の計算粒子を配置し、
前記物理空間上で支配方程式を数値的に解いて前記計算粒子の各々の速度を計算し、前記計算粒子の各々の速度を、前記座標変換係数を用いて座標変換して前記解析空間上の速度を求め、前記解析空間上で前記複数の計算粒子の各々の位置を更新する処理を繰り返し、
求められた前記複数の計算粒子の前記解析空間上の位置を、前記座標変換係数を用いて座標変換し、前記物理空間上における位置に変換するシミュレーション装置。
【請求項7】
CADデータ、液膜の物性値、及び初期条件を含むシミュレーション条件を取得する手順であって、前記CADデータは、物理空間に定義される物理座標系において、曲面の形状を複数の頂点の座標として定義する頂点の一覧、及び前記曲面に張られる面に定義されるテクスチャ座標系におけるテクスチャ座標の一覧、及び前記物理座標系と前記テクスチャ座標系との対応関係を定義する情報を含む手順と、
前記テクスチャ座標系が定義された二次元平面を解析空間とし、前記テクスチャ座標系を前記解析空間に定義された一般座標系として用い、前記CADデータに基づいて前記物理座標系と前記一般座標系との座標変換係数を算出する手順と、
前記解析空間に複数の計算粒子を配置する手順と、
前記物理空間上で支配方程式を数値的に解いて前記計算粒子の各々の速度を計算し、前記計算粒子の各々の速度を、前記座標変換係数を用いて座標変換して前記解析空間上の速度を求め、前記解析空間上で前記複数の計算粒子の各々の位置を更新する処理を繰り返す手順と、
求められた前記複数の計算粒子の前記解析空間上の位置を、前記座標変換係数を用いて座標変換し、前記物理空間上における位置に変換する手順と
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション方法、シミュレーション装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン内部において、非平衡凝縮によって蒸気の流れの中に水滴が発生し、発生した水滴が翼の表面に付着する。付着した水滴は液膜となって翼の表面を流れ、後縁に溜まる。最終的には、翼の後縁に溜まった液膜が周囲の気流によって翼からちぎれて飛散する。このような蒸気の流れをはじめとする湿り蒸気流れ等の気液二相流体の流れ場のシミュレーションにおいて、圧縮性流れの解法と、古典凝縮論とを組み合わせた数値解析法が用いられている(非特許文献1参照)。従来技術では、解析空間を格子状に分割し、圧縮性ナビエストークス方程式と凝集モデルからなる支配方程式を解くことにより、流れ場の時間発展を計算する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】F. Bakhtar and M.T. Mohammadi Tochai,"An investigation of two-dimensional flows of nucleating and wet steam bythe time-marching method", International Journal of Heat and Fluid Flow,vol. 2 (1), pp.5-18 (1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液膜の流れを三次元のSPH法を用いて解くためには、液膜の厚さに対して十分小さい直径の計算粒子の集合で液膜を再現する必要がある。このため、計算粒子の個数が多くなり、計算負荷が高くなってしまう。
【0005】
また、液膜が沿う任意の形状の曲面を離散化するための格子を、曲面に沿って張ることが困難である。さらに、濡れている領域と濡れていない領域との境界で、液膜高さの勾配が不連続になるため、濡れている領域と濡れていない領域とを区別し、両者の境界において特別な処理を行うことが必要になる。ところが、濡れている領域と濡れていない領域とを区別することは困難である。
【0006】
本発明の目的は、液膜流れの数値解析において、計算負荷を低減させることが可能なシミュレーション方法、シミュレーション装置、及びプログラムを提供することである。本発明の他の目的は、液膜流れが沿う曲面に格子を張ることなく、解析を行うことが可能なシミュレーション方法、シミュレーション装置、及びプログラムを提供することである。本発明のさらに他の目的は、濡れている領域と濡れていない領域とを区別する必要がないシミュレーション方法、シミュレーション装置、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
SPH法を用いて浅水方程式を離散化して液膜流れを数値的に解析するシミュレーション方法であって、
物理空間上で液膜が流れる曲面の形状を定義し、
前記曲面上の位置を二次元の解析空間上の位置に対応付け、
前記物理空間に定義される物理座標系と、前記解析空間に定義される一般座標系との間で物理量を変換する一般座標変換を、離散化された前記浅水方程式に施し、
前記一般座標変換された前記浅水方程式を数値的に解くシミュレーション方法が提供される。
【0008】
本発明の他の観点によると、
物理空間における曲面の形状を、複数の頂点の座標を含むCADデータで定義し、前記頂点の座標を前記物理空間における座標として用い、
前記CADデータに含まれるテクスチャ座標を解析空間の座標として用い、
支配方程式を数値的に解くシミュレーション方法が提供される。
【0009】
本発明のさらに他の観点によると、
物理空間の曲面上の位置を二次元の解析空間上の位置に対応付けて、SPH法を用いて解析を行い、得られた物理量を前記物理空間の物理量に変換するシミュレーション方法であって、
前記曲面の形状を複数の頂点の座標として定義するCADデータの構造と、SPH法で用いられるカーネル関数の導関数の公式とを用いて、前記物理空間上の物理座標系と前記解析空間上の一般座標系との間の座標変換係数を算出するシミュレーション方法が提供される。
【0010】
本発明のさらに他の観点によると、
SPH法を用いて液膜の流れを解析するシミュレーション装置であって、
シミュレーション条件が入力される入力部と、
前記入力部に入力されたシミュレーション条件に基づいて、SPH法を用いて複数の粒子のそれぞれの位置を時間発展させる処理部と
を備え、
前記シミュレーション条件は、液膜が沿う曲面の形状を物理空間に定義するCADデータ、液膜の物性値、及び初期条件を含み、
前記CADデータは、前記物理空間に定義される物理座標系において、前記曲面の形状を複数の頂点の座標として定義する頂点の一覧、及び前記曲面に張られる面に定義されるテクスチャ座標系におけるテクスチャ座標の一覧、及び前記物理座標系と前記テクスチャ座標系との対応関係を定義する情報を含み、
前記処理部は、
前記テクスチャ座標系が定義された二次元平面を解析空間とし、前記テクスチャ座標系を前記解析空間に定義された一般座標系として用い、前記CADデータに基づいて前記物理座標系と前記一般座標系との座標変換係数を算出し、
前記解析空間に複数の計算粒子を配置し、
前記物理空間上で支配方程式を数値的に解いて前記計算粒子の各々の速度を計算し、前記計算粒子の各々の速度を、前記座標変換係数を用いて座標変換して前記解析空間上の速度を求め、前記解析空間上で前記複数の計算粒子の各々の位置を更新する処理を繰り返し、
求められた前記複数の計算粒子の前記解析空間上の位置を、前記座標変換係数を用いて座標変換し、前記物理空間上における位置に変換するシミュレーション装置が提供される。
【0011】
本発明のさらに他の観点によると、
CADデータ、液膜の物性値、及び初期条件を含むシミュレーション条件を取得する手順であって、前記CADデータは、物理空間に定義される物理座標系において、曲面の形状を複数の頂点の座標として定義する頂点の一覧、及び前記曲面に張られる面に定義されるテクスチャ座標系におけるテクスチャ座標の一覧、及び前記物理座標系と前記テクスチャ座標系との対応関係を定義する情報を含む手順と、
前記テクスチャ座標系が定義された二次元平面を解析空間とし、前記テクスチャ座標系を前記解析空間に定義された一般座標系として用い、前記CADデータに基づいて前記物理座標系と前記一般座標系との座標変換係数を算出する手順と、
前記解析空間に複数の計算粒子を配置する手順と、
前記物理空間上で支配方程式を数値的に解いて前記計算粒子の各々の速度を計算し、前記計算粒子の各々の速度を、前記座標変換係数を用いて座標変換して前記解析空間上の速度を求め、前記解析空間上で前記複数の計算粒子の各々の位置を更新する処理を繰り返す手順と、
求められた前記複数の計算粒子の前記解析空間上の位置を、前記座標変換係数を用いて座標変換し、前記物理空間上における位置に変換する手順と
をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
液膜流れの解析に二次元の浅水方程式を用いることにより、三次元で解析する場合と比べて計算負荷を軽減させることができる。CADデータのテクスチャ座標を解析空間の一般座標として用いることにより、液膜流れが沿う曲面に格子を張ることなく、かつ物理空間に定義される物理座標系と解析空間に定義される一般座標系との間の座標変換係数を容易に算出することができる。SPH法を適用することにより、曲面の濡れている領域と濡れていない領域とを区別する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、Wavefront形式のCADデータのデータ構造の一例を示す図表である。
【
図2】
図2は、物理空間と解析空間との関係を示す模式図である。
【
図3】
図3は、一実施例によるシミュレーション装置のブロック図である。
【
図4】
図4は、一実施例によるシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5Aは、解析対象の模式図であり、
図5Bは、解析結果を示すための球面、小孔、及び計算粒子の分布を示す模式図である。
【
図6】
図6は、他の実施例によるシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、さらに他の実施例によるシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、さらに他の実施例によるシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明の実施例について説明する前に、浅水方程式について説明する。
[浅水方程式]
本願発明の一実施例においては、三次元のナビエストークス方程式に代えて、浅水方程式を使用する。浅水方程式を用いることにより、液膜流れを二次元的に解析することができる。このため、計算負荷が低減される。
【0015】
浅水方程式は、以下の式で与えられる。
【数1】
ここで、Hは液膜の厚さ、tは時間、D/Dtは時間での全微分、ρは密度、uは速度ベクトル、pは圧力、μは粘性係数、gは重力ベクトル、nは液面が流れる壁面(曲面)の法線ベクトル、σは表面張力係数、κは液膜の曲率、g
tは重力ベクトルの曲面に対する接線方向成分、θは液膜の接触角、n
clは液膜の縁の法線ベクトルを表す。式(1)の3番目の式の右辺第1項は重力による静水圧力を表し、第2項は液膜の表面張力によるラプラス圧を表す。式(1)の4番目の式の右辺第1項は、液膜に作用する重力加速度、第2項は粘性摩擦力、第3項は液膜の縁に作用する表面張力を表す。
【0016】
液面の曲率κは、以下の式で表すことができる。
【数2】
ここで、下付き文字x、yは、対応する空間方向の導関数を表す。例えば、H
x、H
xxは、以下の式で表される。
【数3】
【0017】
液膜の厚さHが十分薄い場合、その1次導関数H
x、H
yは1より十分小さくなるため、H
xの2乗の項及びH
yの2乗の項は無視することができる。したがって、式(2)は、以下のように簡略化することができる。
【数4】
【0018】
[SPH法の概要]
本願発明の一実施例において、SPH法が用いられる。次に、一般的なSPH法について簡単に説明する。SPH法は、連続体を複数の粒子の集合を用いて離散化し、流れ場の時間発展を計算するラグランジュ型の数値計算手法である。粒子1個の質量分布として、連続かつ微分可能なカーネル関数を用いるとともに、カーネル関数の微分係数の重ね合わせを空間微分とする離散化モデルである。
【0019】
SPH法では、粒子の質量mはカーネル関数Wによってその周囲に分配され、連続的に分布しており、密度場は、その重ね合わせとして与えられる。すなわち、i番目の粒子の位置x
iにおける密度ρ
iは、以下の式で表される。
【数5】
カーネル関数Wとして、例えば、以下の関数を用いることができる。以下の関数は、C2Wendlandカーネルと呼ばれる。
【数6】
【0020】
ここで、xijは位置ベクトルxiと位置ベクトルxjとの差の絶対値であり、q=xij/hである。hは、平滑化長さであり、カーネル幅ともいわれる。カーネル幅hは、複数の粒子を同一の質量及び物性密度の球体に置き換えた等価球の直径に等しい。本明細書において、カーネル幅hを粒子の直径という場合がある。
【0021】
任意の位置x
iにおける任意のスカラー量A及びベクトル量Aの値は、カーネル関数の重ね合わせによって以下の式で表すことができる。
【数7】
ここで、V
j=m
j/ρ
jである。下付き文字jは、j番目の粒子の持つ物理量の値であることを意味する。
【0022】
任意のスカラー量Aの勾配は、カーネル関数の微分係数の重ね合わせによって以下の式で表される。
【数8】
【0023】
ここで、∇W(x
ij,h)はカーネル関数の導関数であり、カーネル関数としてC2Wendlandカーネルを用いる場合、以下の式で表される。
【数9】
【0024】
任意のベクトル量Aに対する発散は、式(8)と同様に、以下の式で表すことができる。
【数10】
【0025】
任意のスカラー量Aに対する2次導関数は、例えば以下の公式を用いて算出することができる。
【数11】
【0026】
[SPH法を用いた浅水方程式の離散化]
浅水方程式(式(1))を、SPH法を用いて離散化すると、以下のように表すことができる。
【数12】
【0027】
[参考例による解析方法]
本願発明の一実施例について説明する前に、参考例による解析方法について説明する。
一参考例では、物理空間、すなわち液面流れが沿う解析対象の曲面を格子状に分割し、ナビエストークス方程式または浅水方程式(式(1))を数値的に解くことにより、流れ場の時間発展を計算する。その際、支配方程式は物理空間に張られた格子を直交等間隔格子に射影した空間を解析空間として定義し、物理空間と解析空間との間の座標変換係数を算出する。解析空間上で支配方程式を解き、その結果を物理空間上の物理量に変換する手法が用いられる。
【0028】
本明細書において、物理空間上で用いられる座標系を物理座標系といい、解析空間上で用いられる座標系を一般座標系という。物理座標系と一般座標系との間で物理量を変換することを一般座標変換という。
【0029】
工学上問題となる曲面の形状は、CADデータで表現される場合が多い。このとき、一般座標変換の座標変換係数を算出するためには、物理空間に張られた格子と解析空間に張られた格子との間の整合性が保たれていなければならない。CADデータを作成する段階でその整合性を考慮しながらCADのモデリングを行うことは困難である。両者の整合性が保たれていない場合は、液膜流れのシミュレーションにおいて、一般座標変換の座標変換係数を算出する段階でCADデータを修正したり、物理空間と解析空間との間の不整合性を解消したりするといった余分な手順が必要になる。以下に説明する実施例では、これらの種々の課題が解決される。
【0030】
[汎用的なCADデータの構成]
次に、汎用的なCADデータの構成について説明する。CADデータは、物体の形状を表現するための点列データ、物体表面の材質(質感)を表現するための点列データ、及びそれらを関係付けるための一覧表によって構成される。一例として、CADデータとして用いられているWavefront形式のデータ構造について説明する。
【0031】
図1は、Wavefront形式のCADデータのデータ構造の一例を示す図表である。
図2は、物理空間と解析空間との関係を示す模式図である。物理空間Sr(
図2)に曲面Fcが定義されている。
図1において、符号#は、以下に続く文字列がコメントであることを表す。CADデータは、物理空間の曲面上の複数の点(以下、「頂点」という。)の一覧、テクスチャ座標の一覧、物理空間の曲面の法線ベクトル(以下、「頂点法線」という。)の一覧、及び面要素の一覧を含む。
【0032】
図1に示した符号v以下の3つの実数の組み合わせは、物理空間Sr(
図2)の曲面Fc上の複数の点の座標(X,Y,Z)を表す。以下、曲面Fc上の点の座標を「頂点座標」という。符号v以下の3つの実数の組み合わせのそれぞれに要素番号が付与されており、要素番号によって一つの頂点座標が特定される。
【0033】
図1に示した符号vt以下の2つの実数の組み合わせは、テクスチャ座標(ξ,η)(
図2)の一覧を表す。符号vt以下の2つの実数の組み合わせのそれぞれに要素番号が付与されており、要素番号によって一つのテクスチャ座標(ξ,η)が特定される。各要素番号によって特定されるテクスチャ座標系における位置を「要素点」という。
【0034】
図1に示した符号nv以下の3つの実数の組み合わせは、曲面Fc上の点の法線ベクトルn(
図2)を表す。符号nv以下の3つの実数の組み合わせのそれぞれに要素番号が付与されており、要素番号によって一つの法線ベクトルが特定される。
【0035】
図1に示した符号f以下では、頂点座標(X,Y,Z)、テクスチャ座標(ξ,η)、頂点法線nの要素番号を表す整数が斜線記号を隔てて記述されている。斜線記号を隔てて記述された3つまたは4つの要素番号の組み合わせによって、三角形または四角形の物理空間Sr上の要素Er、及びそれに対応付けられた解析空間Sa上の要素Eaが定義される。
【0036】
図1に示した例では、要素番号が1の頂点座標と要素番号が6のテクスチャ座標と要素番号が2の頂点法線、要素番号が2の頂点座標と要素番号が3のテクスチャ座標と要素番号が1の頂点法線、要素番号が4の頂点座標と要素番号が5のテクスチャ座標と要素番号が6の頂点法線によって、一つの三角形の要素が定義される。
【0037】
物理空間Srの頂点座標(X,Y,Z)は、物体の輪郭を記述するための代表点であり、複数の代表点を接続することによって曲面Fcを形成することができる。テクスチャ座標(ξ,η)は、物体の表面に張られる画像データの座標点を記述したものであり、二次元座標上に定義される画像データの各座標の値が{0,1}に正規化されたものである。頂点法線nは、頂点座標における曲面Fcの法線方向ベクトルを記述したものである。
【0038】
上述の通り、汎用的なCADデータは、物理空間Srの座標(X,Y,Z)とテクスチャ座標(ξ,η)との対応関係が指定されている。テクスチャ座標は、{0,1}に正規化されているため、解析空間Saの座標系として用いるのに適している。以下に説明する一実施例では、テクスチャ座標系が解析空間Saの一般座標系として用いられる。
【0039】
[CADデータからの座標変換係数の導出]
物理空間Srに定義された物理座標系における曲面Fc(
図2)の基底ベクトルを(e
x,e
y)と標記し、一般座標系(テクスチャ座標系)の基底ベクトルを(e
ξ,e
η)と標記する。物理空間Srの曲面Fc上の座標を(x,y)と標記する。解析空間Saに定義される一般座標系の座標を(ξ,η)と標記する。物理空間Srと解析空間Saとの間の座標変換係数は、カーネル関数の導関数の公式を用いて以下の式で算出することができる。
【数13】
ここで、下付き文字i、jは、CADデータに格納されているテクスチャ座標の要素番号を表し、一般座標系における位置座標に対応づけられる。ベクトルx
iは、テクスチャ座標の要素番号iと結びついている物理空間上の位置座標である。ベクトルe
xiは、物理空間上の位置座標x
iにおける曲面の基底ベクトルである。m
0、ρ
0は、カーネル関数の公式を適用するための仮想的な質量及び密度であり、例えばそれぞれ1に設定することができる。
【0040】
h0は仮想的なカーネル幅であり、この値を大きくすると精度が向上する一方で、空間解像度が低下する。実用上は、仮想的なカーネル幅h0は、例えば隣接するテクスチャ座標要素同士の最大距離に設定することができる。テクスチャ座標で定義される二次元平面を解析空間として用いることで、CADデータに格納されている情報のみで、一般座標変換の座標変換係数を算出することができる。
【0041】
2次導関数の補間公式も同様に算出することができ、導関数の一般座標変換係数は、以下のように求められる。
【数14】
【0042】
[離散化された浅水方程式に対する一般座標変換]
次に、離散化された浅水方程式に一般座標変換を施す方法について説明する。
物理空間において、SPH法を用いて離散化された浅水方程式は以下のように表される。
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
ここで、u
x及びu
yは、それぞれ速度ベクトルuのx方向成分及びy方向成分を表す。また、J
jは座標変換のヤコビアンを表す。ヤコビアンJ
jは以下の式で定義される。
【数19】
【0043】
また、導関数を含む項は、解析空間上での導関数を求めた後に、物理空間上の値へと変換がなされている。式(15)~式(18)で得られる物理量は、物理空間上での値であるため、計算粒子の位置座標を更新する際には、それらを解析空間上における値に変換する必要がある。すなわち、計算粒子の位置座標は、以下の式を用いて時間発展させる。
【数20】
【0044】
解析空間上の任意の座標ξに対応する物理空間上のスカラー量A及びベクトル量Aは、以下の式を用いて算出することができる。
【数21】
ここで、スカラー量Aには、座標変換係数∂ξ/∂x、∂x/∂ξ等が含まれる。ベクトル量Aには、計算粒子の物理空間上の位置ベクトルx、物理空間上の曲面の法線ベクトルn等が含まれる。式(13)、式(14)を用いて算出される座標変換係数は、CADデータ(
図1)に格納されている要素点の位置において定義される。式(13)、式(14)を用いて算出された要素点ξ
jの座標変換係数から、式(21)を用いて任意の位置ξの座標変換係数を算出することができる。また、CADデータ(
図1)で定義された要素点ξ
jにおける物理空間上の位置ベクトルx及び法線ベクトルnから、それぞれ式(21)を用いて任意の位置ξにおける位置ベクトル及び法線ベクトルを算出することができる。
【0045】
[実施例によるシミュレーション装置及びシミュレーション方法]
次に、
図3及び
図4を参照して、一実施例によるシミュレーション装置及びシミュレーション方法について説明する。
【0046】
図3は、一実施例によるシミュレーション装置のブロック図である。本実施例によるシミュレーション装置は、入力部40、処理部41、出力部42、及び記憶部43を含む。入力部40から処理部41にシミュレーション条件等が入力される。さらに、ユーザから入力部40に各種指令(コマンド)等が入力される。入力部40は、例えば通信装置、リムーバブルメディア読取装置、キーボード、ポインティングデバイス等で構成される。
【0047】
処理部41は、入力されたシミュレーション条件及び指令に基づいてシミュレーションを実行する。さらに、シミュレーション結果を出力部42に出力する。シミュレーション結果には、例えば、シミュレーション対象物を構成する粒子の位置の時間変化等を表す情報が含まれる。処理部41は、例えばコンピュータの中央処理ユニット(CPU)を含む。本実施例によるシミュレーション方法の各手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが、記憶部43に記憶されている。出力部42は、通信装置、リムーバブルメディア書込み装置、ディスプレイ等を含む。
【0048】
図4は、本実施例によるシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。処理部41(
図1)が記憶部43(
図1)に格納されているプログラムを実行することにより、
図4に示した各ステップの処理が実行される。
【0049】
まず、処理部41が、ユーザから入力されたシミュレーション条件を取得する(ステップS01)。シミュレーション条件には、シミュレーション対象の流体を定義する情報、初期条件、境界条件、解析終了条件等が含まれる。シミュレーション対象の流体を定義する情報には、流体の物性値、例えば密度、粘度等を指定する情報が含まれる。初期条件には、複数の計算粒子を解析空間に配置するための情報、計算粒子の初期速度を指定する方法等が含まれる。境界条件には、解析対象の空間の形状及び大きさを指定する情報、曲面の形状を指定するCADデータ等が含まれる。CADデータによって、
図2に示した物理空間Sr内の曲面Fcの形状、曲面Fc上の複数の要素Erと、解析空間上の複数の要素Eaとの対応関係が定義される。
【0050】
次に、取得したCADデータに基づいて、物理空間Srと解析空間Saとの間の座標変換係数を算出する(ステップS02)。例えば、式(13)及び式(14)に示した変換係数を計算する。ステップS02では、CADデータで定義された複数の要素点のそれぞれの位置における座標変換係数が計算される。
【0051】
次に、入力された初期条件に基づいて、解析空間Saに複数の計算粒子を配置する(ステップS03)。ステップS02で求められた各要素点の位置における座標変換係数から、式(21)を用いて、計算粒子の各々の位置における座標変換係数を算出する(ステップS04)。解析空間Sa上における計算粒子の物理量の導関数の値を計算する(ステップS05)。例えば、式(16)、式(17)のそれぞれの右辺のΣの値、すなわち計算粒子の圧力の導関数及び速度の導関数の値を計算する。ステップS05で求められた解析空間Sa上における計算粒子の物理量の導関数の値を、物理空間Srにおける値に変換する(ステップS06)。例えば、式(16)、式(17)の右辺に示されているように、各項のΣの値のそれぞれに変換係数を乗じることにより、物理空間Srにおける計算粒子の圧力の導関数及び速度の導関数の値を求める。
【0052】
次に、物理空間Srで計算粒子に付与される速度を計算する(ステップS07)。例えば、式(16)、式(17)を計算し、積分することにより、各計算粒子の物理空間Srにおける速度ux、uyを求める。次に、物理空間Srにおける速度の値を、解析空間Saにおける値に変換し、計算粒子の物理量及び位置を更新する(ステップS08)。例えば、式(20)の右辺に示されているように、物理空間Srにおける速度dx/dt、dy/dtに座標変換係数を乗じることにより、解析空間Saにおける速度の値を計算する。さらに、解析空間Saにおける速度に時間刻み幅dtを乗じることにより、解析空間Saにおける計算粒子の変位量dξi、dηiを計算する。この変位量に基づいて、解析空間Saにおける計算粒子の位置を更新する。
【0053】
解析の終了条件が満たされるまで、ステップS04からステップS08までの手順を繰り返す。(ステップS09)。
【0054】
次に、解析空間Saにおける計算粒子の位置を、物理空間Srにおける位置に変換する(ステップS10)。物理空間Srにおける位置は、式(21)のベクトル量Aに物理空間における位置ベクトルを与えることにより算出することができる。
【0055】
解析空間Saにおける位置が物理空間Srにおける位置に変換されると、解析結果を出力する(ステップS11)。i番目の計算粒子の位置における液膜の厚さHiは、式(15)を用いて計算することができる。
【0056】
次に、上位実施例の優れた効果について説明する。
上記実施例では、二次元の解析空間で解析を行っているため、三次元の物理空間で解析を行う場合と比べて、計算負荷を低減させることができる。
【0057】
上記実施例では、CADデータに格納されている情報(
図1)のみで解析空間Sa(
図2)を生成し、座標変換係数(式(13)、式(14))を算出することができる。このため、本シミュレーション方法は汎用性が高く、シミュレーションに必要な工数も少ない。
【0058】
SPH法のカーネル関数の導関数の公式(式(8)~式(11))を用いて座標変換係数(式(13)、式(14))を算出するため、テクスチャ座標系(一般座標系)の点群(CADデータの要素点)は、等間隔に整列している必要がなく、まばらであってもよい。
【0059】
格子を用いた解析では、濡れている領域と濡れていない領域との境界での物理量の不連続を考慮して解析を行う必要があるが、上記実施例ではSPH法を用いているため、濡れている領域と濡れていない領域とを区別する必要がない。
【0060】
上記実施例によるシミュレーション方法の検証を行うために、球面上を流れる液膜のシミュレーションを行った。次に、
図5A及び
図5Bを参照してこのシミュレーションの結果について説明する。
【0061】
図5Aは、解析対象の模式図である。液膜が流れる球面10の直径を2mとした。この球面の中心Oを原点とするxyz直交座標系を定義する。重力gの向きをy軸の負の向きとする。重力加速度を9.81m/s
2とした。球面10とy軸の正の部分とが交わる箇所に小孔11を設置し、小孔11から球面10の表面に流量73ml/sで水を供給した。球面10における水の接触角を90°とした。解析空間における計算粒子のカーネル幅を0.042(無次元)とした。球面10の形状は汎用的なCADソフトウェアを用いて作成し、Wavefront形式に変換して出力したものを用いて解析空間を生成した。
【0062】
図5Bは、解析結果を示すための球面10、小孔11、及び計算粒子12の分布を示す模式図である。
図5Bの左端、中央、及び右端の図は、それぞれ計算開始時点、計算開始時点からの経過時間tが0.99秒、2.01秒の状態を示す。小孔11の近傍の淡い色の領域は、液膜の厚さが相対的に厚いことを表している。小孔11から供給された水が球面10に沿って広がり、下方に流れていく様子が再現された。上記実施例による方法を用いて、液膜の流れのシミュレーションが可能であることが確認された。
【0063】
次に、
図6を参照して他の実施例によるシミュレーション方法について説明する。以下、
図1~
図4を参照して説明したシミュレーション方法と共通の構成については説明を省略する。
【0064】
図6は、本実施例によるシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。
まず、物理空間Sr上で曲面Fc(
図2)の形状を定義する(ステップSA1)。これは、例えば、
図1に示したCADデータの物理空間の頂点の一覧及び物理空間の頂点法線の一覧を作成することに相当する。次に、曲面上の位置を解析空間上の位置に対応付ける(ステップSA2)。これは、
図1に示したCADデータの面要素の一覧を作成することに相当する。
【0065】
次に、物理空間Srに定義される物理座標系と解析空間Saに定義される一般座標系との間で物理量を変換する一般座標変換を、離散化された浅水方程式に施す(ステップSA3)。これは、物理空間における浅水方程式(式(12))から、式(15)~式(18)を導出する手順に相当する。例えば、式(12)の物理座標系におけるカーネル関数の導関数が、式(16)、式(17)において一般座標系におけるカーネル関数の導関数に変換されるとともに、座標変換係数が付加されている。次に、一般座標変換された浅水方程式を数値的に解く(ステップSA4)。これは、式(15)~式(18)を実際に計算することに相当する。
【0066】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
一般座標変換された浅水方程式を用いることにより、解析空間上で浅水方程式の値を計算することができる。
【0067】
次に、
図7を参照して、さらに他の実施例によるシミュレーション方法について説明する。以下、
図1~
図4を参照して説明したシミュレーション方法と共通の構成については説明を省略する。
【0068】
図7は、本実施例によるシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。
まず、物理空間Srにおける曲面Fc(
図2)の形状を、複数の頂点の座標、及びテクスチャ座標を含むCADデータで定義する(ステップSB1)。これは、例えば
図1に示したCADデータを作成することに相当する。
【0069】
CADデータで定義した頂点の座標(
図1の物理空間の頂点の一覧)を、物理空間の座標(X,Y,Z)として用いる(ステップSB2)。CADデータのテクスチャ座標を解析空間Saの一般座標(ξ,η)として用いる(ステップSB3)。
【0070】
次に、支配方程式を数値的に解き、得られた値を物理座標系と一般座標系との間で座標変換する(ステップSB4)。支配方程式は、例えば、浅水方程式((式15)~式(18))に相当する。なお、支配方程式として、離散化されたナビエストークス方程式を用いてもよい。得られた値を座標変換することは、例えば式(20)を用いて物理座標系における速度(ux,uy)を、一般座標系における速度(ξxux+ξyuy)等に変換し、解析空間における移動距離dξi等を求めることに相当する。
【0071】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
CADデータに基づいて、物理空間上の物理座標と、解析空間上の一般座標とを生成することができる。この物理座標と解析座標とは、種々のシミュレーションで利用することができる。
【0072】
次に、
図8を参照して、さらに他の実施例によるシミュレーション方法について説明する。以下、
図1~
図4を参照して説明したシミュレーション方法と共通の構成については説明を省略する。
【0073】
図8は、本実施例によるシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。
まず、物理空間Srにおける曲面Fc(
図2)の形状を、複数の頂点の座標、及びテクスチャ座標を含むCADデータで定義する(ステップSC1)。この手順は、
図7に示したステップSB1の手順と同一である。次に、CADデータの構造と、SPH法で用いられるカーネル関数の導関数の公式とを用いて、物理空間Sr上の物理座標系と解析空間Sa上の一般座標系との間の座標変換係数を算出する(ステップSC2)。SPH法で用いられるカーネル関数の導関数の公式は、例えば式(8)~式(11)で与えられる。物理空間Sr上の物理座標系と解析空間Sa上の一般座標系との間の座標変換係数は、例えば、式(13)及び式(14)を用いて算出される。
【0074】
計算によって得られた物理量を、ステップSC2で算出された座標変換係数を用いて座標変換する(ステップSC3)。例えば、一般座標系で計算された式(15)のΣの値に座標変換係数を乗じることにより、物理座標系における値を求める。例えば、式(30)の物理座標系における速度ux,uyに座標変換係数を乗じることにより、一般座標系における速度を算出する。
【0075】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例においては、SPH法で用いるカーネル関数の導関数の公式を用いて座標変換係数を算出するため、テクスチャ座標系(一般座標系)における点群が等間隔に整列している必要がなく、まばらであってもよい。
【0076】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0077】
10 液膜流れが沿う球面
11 小孔
12 計算粒子
40 入力部
41 処理部
42 出力部
43 記憶部