(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102970
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】容器用キャップ構造体およびこれを用いた容器
(51)【国際特許分類】
B65D 51/16 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
B65D51/16 110
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003756
(22)【出願日】2022-01-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】393011429
【氏名又は名称】荒木工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 裕弘
(74)【代理人】
【識別番号】100130878
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴目 朋之
(72)【発明者】
【氏名】荒木 靖雄
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DC03
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA02
3E084HB02
3E084HB04
3E084HD01
3E084JA20
3E084KA01
(57)【要約】
【課題】 簡易な構造でありながら容器内で発生したガスを外部に抜くことができ、さらに、内容物の漏れを確実に防ぐことができる汎用性の高い容器用キャップ構造体の提供。
【解決手段】 天壁と該天壁から垂下する周壁を有し、容器本体の頸部に冠着可能に形成されたキャップ本体と、該キャップ本体に内装され、容器本体の頸部開口を封止する天壁と、該天壁から垂下し容器本体の頸部内に挿入可能に形成されたシール筒を有する中栓と、該キャップ本体の天壁と該中栓の天壁の間に挟装されるシート状のパッキンとを備え、該中栓の天壁には開口部が穿設されている容器用キャップ構造体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天壁と該天壁から垂下する周壁を有し、容器本体の頸部に冠着可能に形成されたキャップ本体と、該キャップ本体に内装され、容器本体の頸部開口を封止する天壁と、該天壁から垂下し容器本体の頸部内に挿入可能に形成されたシール筒を有する中栓と、該キャップ本体の天壁と該中栓の天壁の間に挟装されるシート状のパッキンとを備え、該中栓の天壁には開口部が穿設されている容器用キャップ構造体。
【請求項2】
前記パッキンは、防水透湿性素材からなることを特徴とする請求項1に記載の容器用キャップ構造体。
【請求項3】
前記パッキンには孔部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の容器用キャップ構造体。
【請求項4】
前記パッキンの孔部は、中栓およびパッキンをキャップ本体にセットした状態で中栓の開口部と対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の容器用キャップ構造体。
【請求項5】
前記パッキンの孔部は、パッキンの全面にわたって複数設けられていることを特徴とする請求項3に記載の容器用キャップ構造体。
【請求項6】
前記中栓の開口部は前記天壁の中央に穿設されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の容器用キャップ構造体。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の容器用キャップを備えた容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器用のキャップ構造体、特にガスが自然発生する液体容器用のキャップ構造体とこれを用いた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農薬及び肥料等においてガスが発生する薬剤があり、かかるタイプの液剤はボトル容器に充填され、容器の蓋体としてはいわゆる中栓付キャップが使用される事が多い。ここで、中栓付キャップとは、容器の開口部に封止可能に形成され、ガスバリア性を高めるための中栓と、該中栓を内装し、容器の頸部に装着可能に形成されたキャップ本体とからなるキャップを意味する。
【0003】
かかる中栓付キャップの課題として、ガスが発生するタイプの薬剤を長期保存して容器内にガスが発生した場合、容器のガスバリア性が高いためにボトルが膨張して正立が困難となったり、内容物の漏れや容器自体の破裂を引き起こす場合もあり、対応に苦慮していた。
【0004】
そこで、ガス抜きのための対策として、中栓に穴を開ける、あるいはまた、キャップに穴を開ける等の方法が考えられるが、ガス抜き効果が不十分であったり、また、内容物が液剤の場合はかかる穴から液漏れを起こす懸念があった。特に、 農薬や肥料はその性質上、取り扱いには注意する必要があり、安全性の観点からも液漏れは確実に防ぐ必要がある。
【0005】
その点、特許文献1、2には、中栓やキャップ本体に空気抜き用の穴を設けるとともに、通気性材料により液漏れを防ぐ容器キャップが開示され、また、特許文献3には、内圧の上昇に応じて弾性変形する弁筒を備えたキャップが開示されている。
【0006】
しかしながら、これらのものはキャップ自体に特別な加工を要するものであり、キャップとしての汎用性がなく、製造コストも高くなるといった課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第2556499号
【特許文献2】特開平5-270559
【特許文献3】特開2006-182425
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、従来の容器用キャップ構造体のかかる欠点を克服し、簡易な構造でありながら容器内で発生したガスを外部に抜くことができ、さらに、内容物の漏れを確実に防ぐことができる汎用性の高い容器用キャップ構造体の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、天壁と該天壁から垂下する周壁を有し、容器本体の頸部に冠着可能に形成されたキャップ本体と、該キャップ本体に内装され、容器本体の頸部開口を封止する天壁と、該天壁から垂下し容器本体の頸部内に挿入可能に形成されたシール筒を有する中栓と、該キャップの天壁と該中栓の天壁の間に挟装されるシート状のパッキンとを備え、該中栓の天壁には開口部が穿設されている容器用キャップ構造体である。
【0010】
また本発明は、前記パッキンは防水透湿性素材からなることを特徴とする容器用キャップ構造体である。
【0011】
また本発明は、前記パッキンには孔部が形成されていることを特徴とする容器用キャップ構造体である。
【0012】
また本発明は、前記パッキンの孔部は、中栓およびパッキンをキャップ本体にセットした状態で中栓の開口部と対応する位置に形成されていることを特徴とする容器用キャップ構造体である。
【0013】
また本発明は、前記パッキンの孔部はパッキンの全面にわたって複数設けられていることを特徴とする容器用キャップ構造体である。
【0014】
また本発明は、前記中栓の開口部は前記天壁の中央に穿設されていることを特徴とする容器用キャップ構造体である。
【0015】
さらに本発明は、前記のいずれかの容器用キャップを備えた容器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の容器用キャップ構造体によると、中栓の天壁に形成された開口部よりガスが外部へと抜けることにより、容器の膨張による変形や破裂などを防ぐことができる。
【0017】
また、本発明の容器用キャップ構造体によると、キャップ本体の天壁と該中栓の天壁の間に挟装されるパッキンにより、液体などの内容物が外部に漏れだすことを確実に防ぐことができる。
【0018】
また、本発明の容器用キャップ構造体でパッキンが防水透湿性素材からなるものは、効果的に容器内のガスを抜くことができる。
【0019】
さらに、本発明の容器用キャップ構造体でパッキンに孔部を設けたものは、より効果的に容器内のガスを抜くことができ、さらに、既製のパッキンを利用することにより製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る容器用キャップ構造体の断面図。
【
図2】本発明に係る容器用キャップ構造体の底面図。
【
図3】本発明に係る容器用キャップ構造体のパッキンの一実施態様の平面図。
【
図4】本発明に係る容器用キャップ構造体のパッキンの一実施態様の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の容器用キャップ構造体の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0022】
図1は、本発明にかかる容器用キャップ構造体を容器本体に装着した状態を示す断面図である。図に示すように、本発明の容器用キャップ構造体は、容器本体4の頸部41に冠着可能に形成されたキャップ本体1と、該キャップ本体1の内側に装着された中栓2と、該キャップ1本体と該中栓2の天壁の間に挟持されるパッキン3を備える。以下、各部について詳述する。
【0023】
キャップ本体1は、天壁11と、天壁11の周縁から垂下する周壁12とを備え、周壁12の内周面には、容器4のネジ部42に螺合可能なネジ部13が形成されている。さらに、ネジ部13の上方には、凸部14が周方向に凸設されている。また、凸部14の上方は相対的に凹んで凹部15を形成する。
【0024】
さらに、キャップ本体1の周壁12の下端部には、ブリッジ16を介してリング部17が連接されている。リング部17は容器本体4の頸部41に対して一定の範囲を超えて周方向に回転しないように形成されており、かかる構成により、開封時にキャップ1を回転するとブリッジ16より破断し、リング部17が頸部41に残される。これにより、キャップ1の開封のバージン性を確認することができる。
【0025】
キャップ本体1の内側に装着される中栓2は、天壁21と、天壁21の外縁部より内側にセットバックした部分から垂下するように設けられたシール筒22を備える。天壁21は、キャップ本体1の天壁11の裏面全体をカバーするように形成されており、その外縁部24はキャップ1の内周面の凹部15に挿入され、これにより中栓2がキャップ本体1に対して係止される。なお、外縁部24には、凸部14を乗り越えて凹部15内に挿入しやすくなるように、天壁21の上面側がより内側へと傾斜する傾斜面25が形成されている。なお、外縁部24と内周面の凹部15との間は設計上のクリアランス設けても良いが、製造上の寸法のバラツキにより外縁部24が凹部15に当接した状態であっても良い。
【0026】
シール筒22は、筒状に形成された周壁であり、容器本体4の頸部41の開口内に挿入可能に形成されている。そして、シール筒22が頸部41の開口内に挿入された際には、シール筒22の外周面と頸部41の内周面が互いに密接し、シールされた状態となるため、シール筒22と頸部41の間から容器本体4内の内容物が漏れることはない。
【0027】
中栓2の天壁21には、円形の開口部23が穿設されている。本実施態様では、天壁21の中央に1箇所設けられているが、設ける数や位置はこれに限定されない。ただし、本実施態様のように中央に設けることにより、後述するパッキン3の孔部31との位置合わせの必要がなくなるため、好ましい。
【0028】
開口部23の開口寸法は、内容物の粘性やガスの発生状況、さらには開口部23を設ける数に応じて適宜決めることができるが、直径が1mm~5mmの開口寸法で形成することが好ましく、2mm~4mmの開口寸法で形成することがより好ましい。
【0029】
また、キャップ本体1と中栓2の間には、パッキン3が設けられている。パッキン3はシート状の材質から形成されており、中栓2の天壁21と略同一形状に形成され、キャップ本体1の天壁11の裏面全体をカバーする。パッキン3は、中栓2およびパッキン3をキャップ本体1にセットした状態で常にキャップ本体1の天壁11と中栓2の天壁21の間に挟持されている必要はないが、少なくとも、キャップ本体1を容器本体4へ装着した際には天壁11と天壁21の間に挟持される。具体的には、キャップ本体1を容器本体4に所定のトルクでキャッピングすることにより、中栓2がキャップ本体1の天壁11側へと押し付けられ、これにより、中栓2の天壁21のパッキン3に適度に押圧がかかった状態で挟持される。
【0030】
パッキン3は、公知のパッキン用素材を利用することができる。具体的には、発泡ポリエチレンシート、より好ましくは、発泡ポリエチレンシートに耐薬品性を有するポリテトラフルオロエチレンの表層フィルムをラミネート加工したものを好適に利用することができる。
【0031】
さらに、本発明のパッキン3として、防水透湿性素材のシートを利用することができる。具体的には、ポリエチレンシートにフッ素フィルムをラミネート加工したものを好適に利用することができる。
【0032】
また、
図1および
図3の実施態様では、パッキン3の中央に孔部31が穿設されている。かかる孔部31を設けていなくてもガスはパッキン3と天壁21の隙間から外部へと抜けていくことが可能ではあるが、孔部31を設けることで、パッキン3と天壁11の隙間からも抜けるため、ガス抜きの観点からはより好ましい。
【0033】
パッキン3の孔部31は、内容物の粘性やガスの発生状況、さらには孔部31を設ける数に応じて適宜決めることができ、ガス等の気体が通過するとともに液体の通過を妨げる程度の大きさであることが好ましく、具体的には、直径が0.2mm~0.7mmの開口寸法で形成することが好ましく、0.4mm~0.6mmがより好ましい。また、孔部31は、中栓2の開口部23と対応する位置に設けることが好ましいが、
図1のようにパッキン3の中央に設けることにより、同じく中央に設けられた中栓2の開口部23との位置合わせが必要なくなるため、好ましい。さらに、孔部31は開口部23と異なる位置にも複数個所設けてもよく、
図4に示すように、パッキン3の全面にわたって設けてもよい。
【実施例0034】
以下に、実施例等を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
実 施 例 1
以下の方法で実施品1~4および比較品を準備した。これらについて以下の基準に従ってガス抜け及び液漏れについて評価し、その結果を表1に示した。
【0035】
<製造方法>
(1)実施品1
従来品のキャップ本体と、ハイシート(三井化学東セロ株式会社)を素材とするパッキン(孔部なし)、天壁の中央に直径4mmの開口部を設けた中栓の組み合わせからなる容器用キャップを用いた。
(2)実施品2
従来品のキャップ本体と、中央に直径0.5mmの孔部を設けたハイシート(三井化学東セロ株式会社)を素材とするパッキン、天壁の中央に直径4mmの開口部を設けた中栓の組み合わせからなる容器用キャップを用いた。
(3)実施品3
従来品のキャップ本体と、隣接する孔部同士の間隔を4.0mmピッチとした直径0.5mmの孔部を全面に計104個設けたハイシート(三井化学東セロ株式会社)を素材とするパッキン、天壁の中央に直径4mmの開口部を設けた中栓の組み合わせからなる容器用キャップを用いた。
(4)実施品4
従来品のキャップ本体と、ゴアパッケージングベント(日本ゴア株式会社)を素材とするパッキン(孔部なし)、天壁の中央に直径4mmの開口部を設けた中栓の組み合わせからなる容器用キャップを用いた。
(5)比較品
従来のキャップ本体および従来の中栓(開口部なし)の組み合わせで、パッキンは使用しない容器用キャップを用いた。
【0036】
【0037】
<評価方法>
1L広口封印ボトル(多層)に実液を約1L入れ、3N/mにて実施品1ないし4のキャップと、比較品のキャップを閉栓した。
(1)ガス抜け:
試験方法:54℃にて24時間正立保管後、ガス抜け状態を確認した。具体的には、キャッピング直後および24時間正立保管後のボトル全高をハイトゲージで測定するとともに、容器を正立させた状態の底部のガタツキを評価した。
(評価) (内容)
〇 : ガタツキは見られない
△ : ごくわずかにガタツキがみられる
× : ガタツキが見られる
【0038】
(2)液漏れ:
試験方法:上記(1)の試験後、容器本体を横倒しして、24時間経過後の液漏れを確認した。
(評価) (内容)
〇 : 液漏れは見られない
△ : ごくわずかに液漏れが見られる
× : 液漏れが見られる
【0039】
表1から明らかなように、本発明品はいずれも十分な液漏れ防止を確保しつつ、ガス抜けの効果も見られ、容器の変形の問題も生じにくいものであった。一方、比較品はガス抜けに問題が認められた。
【0040】
以上の通り、パッキン3に孔部31を設けることにより、特殊な防水透湿性素材ではない既製のパッキンを使用した場合であっても確実にガスを抜くことができ、製造コストを抑えることができる。
【0041】
また、本発明に係る容器用キャップ構造体は、中栓2に開口部23を形成し、キャップ1と中栓2との間にパッキン3を設けるという非常に簡易な構造で確実にガス抜きと液漏れ防止を両立させることができ、容器用キャップとしての汎用性も高いうえにパッキン3には既製のものを利用することができるため、製造コストも抑えることができる。
前記パッキンの孔部は、中栓およびパッキンをキャップ本体にセットした状態で中栓の開口部と対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の容器用キャップ構造体。