(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102979
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】船外機および船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 20/12 20060101AFI20230719BHJP
B63H 25/42 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B63H20/12 100
B63H25/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003771
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 公隆
(72)【発明者】
【氏名】萩 朋洋
(57)【要約】
【課題】船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出するための検出部を転舵軸と同軸状に設けることなく転舵軸から離間した位置で、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出することが可能な船外機および船舶を提供する。
【解決手段】この船外機100(船舶120)では、転舵機構40は、船外機本体102の左右方向における中央部102aに配置され、船外機本体102とともに回動するピニオン42と、ピニオン42を回動させるように直線移動するラック43と、ラック43に対してピニオン42とは反対側に設けられ、ラック43の位置を検出するラック位置検出部46と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機本体と、
前記船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、
前記転舵機構は、
前記船外機本体の左右方向における中央部に配置され、前記船外機本体とともに回動するピニオンと、
前記ピニオンを回動させるように直線移動するラックと、
前記ラックに対して前記ピニオンとは反対側に設けられ、前記ラックの位置を検出するラック位置検出部と、を含む、船外機。
【請求項2】
前記ラック位置検出部は、前記ラックの直線移動に伴って回動する検出用回動部材を含む、請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記ラックは、前記ラックのうちの前記ラック位置検出部側に設けられた検出部側ギア部を含み、
前記ラック位置検出部は、前記検出部側ギア部と係合する前記検出用回動部材としてのラック位置検出用ギアを含む、請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記ラック位置検出用ギアの外径は、前記ピニオンの外径よりも小さい、請求項3に記載の船外機。
【請求項5】
前記ラック位置検出用ギアの外径は、前記ピニオンの外径の半分以下である、請求項4に記載の船外機。
【請求項6】
前記検出部側ギア部および前記ラック位置検出用ギアの歯のピッチは、前記ピニオンの歯のピッチよりも小さい、請求項4または5に記載の船外機。
【請求項7】
前記船外機本体の上下方向から見て、前記ピニオンの中央部には、貫通孔が形成されており、
前記船外機本体は、
前記船外機本体の上部に配置されるエンジンと、
前記船外機本体の下部に配置されるプロペラと、
前記船外機本体において上下方向に延びるとともに、前記エンジンの駆動力を前記プロペラに伝達するドライブシャフトと、を含み、
前記ピニオンの前記貫通孔には、前記ドライブシャフトが貫通している、請求項1~6のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項8】
前記転舵機構は、
前記ラックを直線移動させることにより前記ピニオンを駆動させる第1駆動源と、
前記ピニオンに駆動力を伝達する駆動力伝達機構と、
前記駆動力伝達機構を介して前記ピニオンを駆動させる第2駆動源と、をさらに含み、
前記ピニオンが前記第1駆動源によって回動することにより、第1転舵角度範囲内で前記船外機本体を転舵させることが可能な状態と、前記ピニオンが前記第2駆動源によって回動することにより、少なくとも前記第1転舵角度範囲とは異なる角度範囲を含む第2転舵角度範囲内で前記船外機本体を転舵させることが可能な状態と、を切り換え可能に構成されており、
前記ピニオンを前記第1駆動源によって回動させる場合に、前記ラックが前記ピニオンと係合するとともに、前記ピニオンを前記第1駆動源によって回動させない場合に、前記ラックが前記ピニオンと係合しないように構成されており、
前記ピニオンの回動位置を検出するピニオン位置検出部をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項9】
前記ピニオン位置検出部は、前記ピニオンと係合するピニオン位置検出用ギアを含む、請求項8に記載の船外機。
【請求項10】
前記ピニオン位置検出用ギアと前記ピニオンとのギア比は略等しい、請求項9に記載の船外機。
【請求項11】
前記転舵機構は、前記ピニオンが前記第1駆動源である油圧アクチュエータによって回動することにより、前記第1転舵角度範囲内で前記船外機本体を転舵させることが可能な状態と、前記ピニオンが前記第2駆動源である電気モータによって回動することにより、前記第1転舵角度範囲よりも大きな角度範囲を含む前記第2転舵角度範囲内で前記船外機本体を転舵させることが可能な状態と、を切り換え可能に構成されている、請求項8~10のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項12】
前記船外機本体は、
ブラケットを介して船体に取り付けられるアッパー部と、
前記アッパー部の下方に配置されプロペラが設けられたロワー部と、を含み、
前記転舵機構は、前記アッパー部に対して前記ロワー部を前記転舵軸回りに回動させるように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項13】
船外機本体と、
前記船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、
前記転舵機構は、
前記船外機本体の左右方向における中央部に配置され、前記船外機本体とともに回動する回動部材と、
前記回動部材を回動させるように直線移動する直線移動部材と、
前記直線移動部材に対して前記回動部材とは反対側に設けられ、前記直線移動部材の位置を検出する直線移動部材用位置検出部と、を含む、船外機。
【請求項14】
船体と、
前記船体の船尾に取り付けられる船外機と、を備え、
前記船外機は、
船外機本体と、
前記船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、
前記転舵機構は、
前記船外機本体の左右方向における中央部に配置され、前記船外機本体とともに回動するピニオンと、
前記ピニオンを回動させるように直線移動するラックと、
前記ラックに対して前記ピニオンとは反対側に設けられ、前記ラックの位置を検出するラック位置検出部と、を含む、船舶。
【請求項15】
前記ラック位置検出部は、前記ラックの直線移動に伴って回動する検出用回動部材を含む、請求項14に記載の船舶。
【請求項16】
前記ラックは、前記ラックのうちの前記ラック位置検出部側に設けられた検出部側ギア部を含み、
前記ラック位置検出部は、前記検出部側ギア部と係合する前記検出用回動部材としてのラック位置検出用ギアを含む、請求項15に記載の船舶。
【請求項17】
前記ラック位置検出用ギアの外径は、前記ピニオンの外径よりも小さい、請求項16に記載の船舶。
【請求項18】
前記ラック位置検出用ギアの外径は、前記ピニオンの外径の半分以下である、請求項17に記載の船舶。
【請求項19】
前記検出部側ギア部および前記ラック位置検出用ギアの歯のピッチは、前記ピニオンの歯のピッチよりも小さい、請求項17または18に記載の船舶。
【請求項20】
前記船外機本体の上下方向から見て、前記ピニオンの中央部には、貫通孔が形成されており、
前記船外機本体は、
前記船外機本体の上部に配置されるエンジンと、
前記船外機本体の下部に配置されるプロペラと、
前記船外機本体において上下方向に延びるとともに、前記エンジンの駆動力を前記プロペラに伝達するドライブシャフトと、を含み、
前記ピニオンの前記貫通孔には、前記ドライブシャフトが貫通している、請求項14~19のいずれか1項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船外機および船舶に関し、特に、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構が、船外機本体とともに回動する回動部材と、回動部材を回動させるように直線移動する直線移動部材と、を含む船外機および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構が、船外機本体とともに回動する回動部材と、回動部材を回動させるように直線移動する直線移動部材と、を含む船外機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構を備える船外機が記載されている。上記特許文献1に記載されている船外機では、転舵機構は、船外機本体の左右方向における中央部に配置され、船外機本体とともに回動する回動部材(たとえば、ピニオン)と、回動部材を回動させるように船外機本体の左右方向に沿って直線移動する直線移動部材(たとえば、ラック)と、を含む。上記特許文献1に記載されている船外機では、回動部材に形成された貫通孔に、エンジンの駆動力をプロペラに伝達するドライブシャフトが貫通している。すなわち、回動部材とドライブシャフトとは同軸状に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には記載されていないが、上記特許文献1に記載されているような従来の船外機では、船外機本体を転舵軸回りに回動させる制御を行うために、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出する必要がある。したがって、船外機本体の転舵軸回りの回動角度を検出するために、船外機本体とともに回動する回動部材(たとえば、ピニオン)の回動位置を検出することが考えられる。しかしながら、上記特許文献1に記載されている船外機では、回動部材に形成された貫通孔に、エンジンの駆動力をプロペラに伝達するドライブシャフトが貫通しているので、回動部材と同軸状(すなわち、転舵軸と同軸状)に回動部材の回動位置を検出する検出部を設ける構造は取りにくい。このため、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出するための検出部を転舵軸と同軸状に設けることなく、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出することが可能な構成が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出するための検出部を転舵軸と同軸状に設けることなく転舵軸から離間した位置で、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出することが可能な船外機および船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による船外機は、船外機本体と、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、転舵機構は、船外機本体の左右方向における中央部に配置され、船外機本体とともに回動するピニオンと、ピニオンを回動させるように直線移動するラックと、ラックに対してピニオンとは反対側に設けられ、ラックの位置を検出するラック位置検出部と、を含む。
【0008】
この発明の第1の局面による船外機では、上記のように、転舵機構は、ピニオンを回動させるように直線移動するラックと、ラックの位置を検出するラック位置検出部と、を含む。これにより、ラック位置検出部により、直線移動するラックの位置を検出することによって、船外機本体とともに回動するピニオンの回動位置を検出することができる。すなわち、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出することができる。また、上記第1の局面による船外機では、上記のように、ラック位置検出部は、ラックに対してピニオンとは反対側に設けられている。すなわち、ラック位置検出部は、ピニオンと同軸状には設けられていないとともに、ピニオンから離間した位置に設けられている。これらの結果、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出するための検出部を転舵軸と同軸状に設けることなく転舵軸から離間した位置で、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出することができる。また、ラック位置検出部をラックに対してピニオンとは反対側に設けることにより、ラックとは別個にピニオンを駆動させる駆動機構をラックに対してピニオン側に設ける場合に、その駆動機構と干渉することなく、ラック位置検出部を配置することができる。
【0009】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、ラック位置検出部は、ラックの直線移動に伴って回動する検出用回動部材を含む。このように構成すれば、検出用回動部材の回動を検出することによって、直線移動するラックの位置を容易に検出することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、ラックは、ラックのうちのラック位置検出部側に設けられた検出部側ギア部を含み、ラック位置検出部は、検出部側ギア部と係合する検出用回動部材としてのラック位置検出用ギアを含む。このように構成すれば、ラックの検出部側ギア部と係合するラック位置検出用ギアの回動位置を検出することによって、直線移動するラックの位置をより容易に検出することができる。
【0011】
上記ラック位置検出部がラック位置検出用ギアを含む構成において、好ましくは、ラック位置検出用ギアの外径は、ピニオンの外径よりも小さい。このように構成すれば、ピニオンの外径を一定とした場合、ラック位置検出用ギアの外径がピニオンの外径よりも大きい場合と比較して、ラック位置検出用ギアのサイズが比較的小さくなるので、転舵機構が大型化するのを抑制しながら、転舵機構にラック位置検出部を設けることができる。
【0012】
この場合、好ましくは、ラック位置検出用ギアの外径は、ピニオンの外径の半分以下である。このように構成すれば、ピニオンの外径を一定とした場合、ラック位置検出用ギアのサイズが十分に小さくなるので、転舵機構が大型化するのを確実に抑制しながら、転舵機構にラック位置検出部を設けることができる。
【0013】
上記ラック位置検出用ギアの外径がピニオンの外径よりも小さい構成において、好ましくは、検出部側ギア部およびラック位置検出用ギアの歯のピッチは、ピニオンの歯のピッチよりも小さい。このように構成すれば、ギアの歯の数を一定にした場合、ギアの歯のピッチを小さくする程、ギアの外径が小さくなるので、上記のように、検出部側ギア部およびラック位置検出用ギアの歯のピッチを、ピニオンの歯のピッチよりも小さくすることによって、ラック位置検出用ギアの外径を、ピニオンの外径よりも容易に小さくすることができる。
【0014】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、船外機本体の上下方向から見て、ピニオンの中央部には、貫通孔が形成されており、船外機本体は、船外機本体の上部に配置されるエンジンと、船外機本体の下部に配置されるプロペラと、船外機本体において上下方向に延びるとともに、エンジンの駆動力をプロペラに伝達するドライブシャフトと、を含み、ピニオンの貫通孔には、ドライブシャフトが貫通している。このように構成すれば、ピニオンの貫通孔に貫通するドライブシャフトは、船外機本体を転舵軸回りに回動させた際でも、船外機における位置が変化しないので、ドライブシャフトがエンジンの駆動力をプロペラに伝達するのを妨げることなく、船外機本体を転舵軸回りに回動させることができる。
【0015】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、転舵機構は、ラックを直線移動させることによりピニオンを駆動させる第1駆動源と、ピニオンに駆動力を伝達する駆動力伝達機構と、駆動力伝達機構を介してピニオンを駆動させる第2駆動源と、をさらに含み、ピニオンが第1駆動源によって回動することにより、第1転舵角度範囲内で船外機本体を転舵させることが可能な状態と、ピニオンが第2駆動源によって回動することにより、少なくとも第1転舵角度範囲とは異なる角度範囲を含む第2転舵角度範囲内で船外機本体を転舵させることが可能な状態と、を切り換え可能に構成されており、ピニオンを第1駆動源によって回動させる場合に、ラックがピニオンと係合するとともに、ピニオンを第1駆動源によって回動させない場合に、ラックがピニオンと係合しないように構成されており、ピニオンの回動位置を検出するピニオン位置検出部をさらに含む。このように構成すれば、ピニオン位置検出部により、ピニオンの回動位置を検出することができるので、ラック位置検出部によるラックの位置の検出と組み合わせて、ラックがピニオンと係合しない状態からラックがピニオンと係合する状態に切り換わる場合に、ラックの位置とピニオンの回動位置を予め設定された所定の位置で係合させることができる。
【0016】
この場合、好ましくは、ピニオン位置検出部は、ピニオンと係合するピニオン位置検出用ギアを含む。このように構成すれば、ピニオンと係合するピニオン位置検出用ギアの回動を検出することによって、ピニオンの回動位置を容易に検出することができる。
【0017】
上記ピニオン位置検出部がピニオン位置検出用ギアを含む構成において、好ましくは、ピニオン位置検出用ギアとピニオンとのギア比は略等しい。このように構成すれば、ピニオン位置検出用ギアの回転数とピニオンの回転数とが略等しくなるので、装置構成を簡略化することができる。たとえば、ピニオン位置検出用ギアとピニオンとのギア比が異なる場合、ピニオン位置検出用ギアおよびピニオンのうちの一方が1回転する間に、ピニオン位置検出用ギアおよびピニオンのうちの他方が2回転以上する回転する場合がある。その場合、ピニオン位置検出用ギアおよびピニオンのうちの他方は、回動位置を検出するためのセンサに加えて回転数を検出するためのセンサも設ける必要がある。
【0018】
上記ピニオンが第1駆動源によって回動することにより第1転舵角度範囲内で船外機本体を転舵させることが可能な状態とピニオンが第2駆動源によって回動することにより第2転舵角度範囲内で船外機本体を転舵させることが可能な状態とを切り換え可能な構成において、好ましくは、転舵機構は、ピニオンが第1駆動源である油圧アクチュエータによって回動することにより、第1転舵角度範囲内で船外機本体を転舵させることが可能な状態と、ピニオンが第2駆動源である電気モータによって回動することにより、第1転舵角度範囲よりも大きな角度範囲を含む第2転舵角度範囲内で船外機本体を転舵させることが可能な状態と、を切り換え可能に構成されている。ここで、船舶を比較的大きな速度で航行させる場合には、駆動源には比較的大きな負荷が掛かるので、船外機本体を転舵させる角度が比較的小さな角度範囲内に限定される。一方、船舶を比較的小さな速度で航行させる場合には、駆動源には比較的小さな負荷しか掛からないので、船外機本体を比較的大きな角度で転舵させる場合がある。したがって、船舶を比較的大きな速度で航行させる場合に、上記のようにピニオンが油圧アクチュエータによって回動することにより第1転舵角度範囲内で船外機本体を転舵させることによって、駆動源に掛かる比較的大きな負荷を油圧によって容易に受けることができる。また、船舶を比較的小さな速度で航行させる場合に、上記のようにピニオンが電気モータによって回動することにより第1転舵角度範囲よりも大きな角度範囲を含む第2転舵角度範囲内で船外機本体を転舵させることによって、船外機本体を比較的大きな角度で容易に転舵させることができる。すなわち、船外機本体を転舵させるための2つの駆動源を適切に使い分けることができる。
【0019】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、船外機本体は、ブラケットを介して船体に取り付けられるアッパー部と、アッパー部の下方に配置されプロペラが設けられたロワー部と、を含み、転舵機構は、アッパー部に対してロワー部を転舵軸回りに回動させるように構成されている。このように構成すれば、アッパー部に対してロワー部を転舵軸回りに回動させるように構成において、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出するための検出部を転舵軸と同軸状に設けることなく転舵軸から離間した位置で、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出することができる。
【0020】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による船外機は、船外機本体と、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、転舵機構は、船外機本体の左右方向における中央部に配置され、船外機本体とともに回動する回動部材と、動部材を回動させるように直線移動する直線移動部材と、直線移動部材に対して回動部材とは反対側に設けられ、直線移動部材の位置を検出する直線移動部材用位置検出部と、を含む。
【0021】
この発明の第2の局面による船外機では、上記のように、直線移動部材の位置を検出する直線移動部材用位置検出部は、直線移動部材に対して回動部材とは反対側に設けられている。これにより、直線移動部材用位置検出部により、直線移動する直線移動部材の位置を検出することよって、船外機本体とともに回動する回動部材の回動位置を検出することができる。すなわち、上記第1の局面による船外機と同様に、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出することができる。また、上記第2の局面による船外機では、上記のように、直線移動部材用位置検出部は、直線移動部材に対して回動部材とは反対側に設けられている。すなわち、直線移動部材用位置検出部は、回動部材と同軸状には設けられていないとともに、回動部材から離間した位置に設けられている。これらの結果、上記第1の局面による船外機と同様に、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出するための検出部を転舵軸と同軸状に設けることなく転舵軸から離間した位置で、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出することができる。また、上記第1の局面による船外機と同様に、直線移動部材とは別個に回動部材を駆動させる駆動機構を直線移動部材に対して回動部材側に設ける場合に、その駆動機構と干渉することなく、直線移動部材用位置検出部を配置することができる。
【0022】
また、上記目的を達成するために、この発明の第3の局面による船舶は、船体と、船体の船尾に取り付けられる船外機と、を備え、船外機は、船外機本体と、船外機本体を転舵軸回りに回動させる転舵機構と、を備え、転舵機構は、船外機本体の左右方向における中央部に配置され、船外機本体とともに回動するピニオンと、ピニオンを回動させるように直線移動するラックと、ラックに対してピニオンとは反対側に設けられ、ラックの位置を検出するラック位置検出部と、を含む。
【0023】
この発明の第3の局面による船舶では、上記のように、転舵機構は、ピニオンを回動させるように直線移動するラックと、ラックの位置を検出するラック位置検出部と、を含む。また、ラック位置検出部は、ラックに対してピニオンとは反対側に設けられている。これにより、上記第1の局面による船外機と同様に、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出するための検出部を転舵軸と同軸状に設けることなく転舵軸から離間した位置で、船外機本体を転舵軸回りに回動させる角度を検出することができる。また、上記第1の局面による船外機と同様に、ラックとは別個にピニオンを駆動させる駆動機構をラックに対してピニオン側に設ける場合に、その駆動機構と干渉することなく、ラック位置検出部を配置することができる。
【0024】
上記第3の局面による船舶において、好ましくは、ラック位置検出部は、ラックの直線移動に伴って回動する検出用回動部材を含む。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、直線移動するラックの位置を容易に検出することができる。
【0025】
この場合、好ましくは、ラックは、ラックのうちのラック位置検出部側に設けられた検出部側ギア部を含み、ラック位置検出部は、検出部側ギア部と係合する検出用回動部材としてのラック位置検出用ギアを含む。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、直線移動するラックの位置をより容易に検出することができる。
【0026】
上記ラック位置検出部がラック位置検出用ギアを含む構成において、好ましくは、ラック位置検出用ギアの外径は、ピニオンの外径よりも小さい。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、転舵機構が大型化するのを抑制しながら、転舵機構にラック位置検出部を設けることができる。
【0027】
この場合、好ましくは、ラック位置検出用ギアの外径は、ピニオンの外径の半分以下である。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、転舵機構が大型化するのを確実に抑制しながら、転舵機構にラック位置検出部を設けることができる。
【0028】
上記ラック位置検出用ギアの外径がピニオンの外径よりも小さい構成において、好ましくは、検出部側ギア部およびラック位置検出用ギアの歯のピッチは、ピニオンの歯のピッチよりも小さい。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、ラック位置検出用ギアの外径を、ピニオンの外径よりも容易に小さくすることができる。
【0029】
上記第3の局面による船舶において、好ましくは、船外機本体の上下方向から見て、ピニオンの中央部には、貫通孔が形成されており、船外機本体は、船外機本体の上部に配置されるエンジンと、船外機本体の下部に配置されるプロペラと、船外機本体において上下方向に延びるとともに、エンジンの駆動力をプロペラに伝達するドライブシャフトと、を含み、ピニオンの貫通孔には、ドライブシャフトが貫通している。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、ドライブシャフトがエンジンの駆動力をプロペラに伝達するのを妨げることなく、船外機本体を転舵軸回りに回動させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、上記のように、船外機本体の転舵軸回りの回動角度を検出するための検出部を転舵軸と同軸状に設けることなく転舵軸から離間した位置で、船外機本体の転舵軸回りの回動角度を検出することが可能な船外機および船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態による船舶を示した平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による船舶における制御系の構成を示したブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態による船外機を示した側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による船外機の転舵機構を示した平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態による船外機の操作モードがジョイモードの場合および非ジョイモードの場合における船舶を航行させる速度の範囲および船外機本体を転舵させる角度の範囲を示した図である。
【
図6】本発明の一実施形態による船外機の転舵機構においてラックがピニオンと係合していない状態を示した平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態の第1変形例による船外機の転舵機構を示した平面図である。
【
図8】本発明の一実施形態の第2変形例による船外機の転舵機構を示した平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態の第3変形例による船外機の転舵機構を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態による船外機100および船舶120の構成について説明する。なお、図中のFWD、BWD、LおよびRは、それぞれ、船舶120の前方、後方、左方(左舷側)および右方(右舷側)を示している。
【0034】
(船舶の全体構成)
図1示すように、船舶120は、船体110と、船外機100と、を備える。船外機100は、船体110を推進するための船舶用推進装置である。船外機100は、船体110の船尾111に取り付けられている。船外機100は、船体110の左右方向に並ぶように複数(本実施形態では、2つ)取り付けられている。船舶120は、比較的小型の船舶である。船舶120は、たとえば、遊覧や魚釣り等に用いられる船舶である。
【0035】
(船体の構成)
図2示すように、船体110は、船舶120を操縦(操船)するための操作を受け付ける操作部112を備える。操作部112は、リモートコントローラ112aと、ステアリングホイール112bと、ジョイスティック112cと、を含む。
【0036】
リモートコントローラ112aには、傾倒可能なレバーが設けられている。リモートコントローラ112aのレバーが傾倒されることにより、船外機100の推力(プロペラ35(
図3参照)の回転数)の変更、船外機100のシフト状態(前進状態、後進状態、ニュートラル状態)の切り換え等が行われる。
【0037】
ステアリングホイール112bは回動可能に構成されている。そして、ステアリングホイール112bが回動されることにより、船外機100の転舵(船体110に対するプロペラ35(
図3参照)の向きの変更)が行われる。
【0038】
船舶120では、リモートコントローラ112aに対する操作とステアリングホイール112bに対する操作との組み合わせにより、船舶120(
図1参照)の並進移動、旋回等が行われる。
【0039】
ジョイスティック112cには、傾倒可能かつ回動可能なレバーが設けられている。ジョイスティック112cのレバーが傾倒されるか、回動されるか、または、傾倒かつ回動されることにより、船外機100の推力の変更、船外機100のシフト状態の切り換え、船外機100の転舵等が行われる。
【0040】
船舶120では、ジョイスティック112cのレバーが傾倒されることにより、船舶120(
図1参照)の並進移動が行われる。また、ジョイスティック112cのレバーが傾倒かつ回動されることにより、船舶120の旋回が行われる。また、ジョイスティック112cのレバーが回動されることにより、船舶120の回頭が行われる。
【0041】
ジョイスティック112cには、ジョイスティックモードスイッチが設けられている。船舶120では、ジョイスティックモードスイッチが押下されることにより、操作モードが、ジョイスティックモードと非ジョイスティックモードとが切り換わるように構成されている。ジョイスティックモードでは、船舶120が、リモートコントローラ112aおよびステアリングホイール112bに対する操作を受け付けず、かつ、ジョイスティック112cに対する操作を受け付ける状態となる。非ジョイスティックモードでは、船舶120が、ジョイスティック112cに対する操作を受け付けず、かつ、リモートコントローラ112aおよびステアリングホイール112bに対する操作を受け付ける状態となる。
【0042】
船体110は、操作部112に対する操作に基づいて船外機100(のECU(Engine Control Unit)51、SCU(Steering Control Unit)52等)を制御する制御部113を備える。制御部113は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。なお、SCU52は、特許請求の範囲の「転舵制御部」の一例である。
【0043】
(船外機の構成)
図3に示すように、船外機100は、船外機本体102を備える。船外機本体102は、ブラケット101を介して船体110の船尾111に取り付けられたアッパー部10と、アッパー部10の下方に配置されプロペラ35が設けられたロワー部20と、を含む。すなわち、プロペラ35は、船外機本体102の下部に配置されている。アッパー部10は、エンジン31を収納するカウル11と、カウル11の下方に配置され船体110の船尾111に取り付けられたアッパーケース12と、を含む。すなわち、エンジン31は、船外機本体102の上部に配置されている。ロワー部20は、ロワーケース21を含む。
【0044】
船外機100は、エンジン31によりプロペラ35を駆動させるように構成されたエンジン式船外機である。具体的には、船外機本体102は、エンジン31と、ドライブシャフト32と、ギア部33と、プロペラシャフト34と、プロペラ35と、を含む。エンジン31は駆動力を発生させる内燃機関である。ドライブシャフト32は、カウル11とロワーケース21とに跨って上下方向に延びるように配置されている。ドライブシャフト32は、エンジン31のクランクシャフト(図示しない)に接続されている。ギア部33は、ロワーケース21に配置されている。ギア部33は、ドライブシャフト32の下端部と接続されている。プロペラシャフト34は、ギア部33に接続されている。プロペラシャフト34は、ギア部33の後方において、前後方向に延びるように配置されている。プロペラ35は、プロペラシャフト34の後端部に接続されている。プロペラ35は、船外機本体102の外部に露出するように、ロワーケース21の外部に配置されている。そして、エンジン31の駆動力は、ドライブシャフト32、ギア部33およびプロペラシャフト34を介して、プロペラ35に伝達される。プロペラ35は、伝達されたエンジン31の駆動力により、水中において回転することにより推力を発生させる。
【0045】
船外機本体102は、船外機100のシフト状態(前進状態、後進状態およびニュートラル状態)を切り換えるシフトアクチュエータ36を含む。シフトアクチュエータ36は、ギア部33の噛み合いを切り換えることにより、船外機100のシフト状態を、前進状態と後進状態とニュートラル状態との間で切り換えるように構成されている。前進状態は、プロペラ35から前方側への推進力を発生させるようにエンジン31の駆動力をプロペラ35に伝達する状態である。後進状態は、プロペラ35から後方側への推進力を発生させるようにエンジン31の駆動力をプロペラ35に伝達する状態である。ニュートラル状態は、エンジン31の駆動力をプロペラ35に伝達しない状態である。
【0046】
船外機100は、船外機本体102のうちの一部を転舵軸41回りに回動させる転舵機構40を備える。転舵機構40は、アッパー部10に対してロワー部20を転舵軸41回りに回動させるように構成されている。すなわち、船外機100では、船体110に対して、船外機本体102のうちの一部(ロワー部20)のみが回動するように構成されている。なお、転舵機構40の詳細に関しては、後述する。
【0047】
図2に示すように、船外機100は、エンジン31を制御するECU51と、転舵機構40を制御するSCU52と、を含む。ECU51は、船体110に設けられた制御部113による制御に基づいて、エンジン31の駆動およびシフトアクチュエータ36の駆動を制御するように構成されている。SCU52は、制御部113による制御に基づいて、転舵機構40の駆動を制御するように構成されている。ECU51およびSCU52は、たとえば、CPU、ROM、RAM等を含む。
【0048】
(転舵機構の詳細な構成)
図4に示すように、転舵機構40は、船外機本体102のうちの一部(ロワー部20)とともに回動するピニオン42を含む。ピニオン42は、船外機本体102の左右方向における中央部102aに配置されている。船外機本体102の上下方向から見て、ピニオン42の中央部には、貫通孔42aが形成されている。貫通孔42aには、転舵軸41が配置されている。ピニオン42は、ピニオン42の回動に伴って転舵軸41が回動するように、転舵軸41に固定されている。
【0049】
図3に示すように、転舵軸41は、転舵軸41の回動に伴ってロワーケース21が回動するように、ロワーケース21の上部に固定されている。転舵軸41は、アッパーケース12の下部とロワーケース21の上部とに跨って、上下方向に延びるように配置されている。
図4に示すように、転舵軸41は、中空状に形成されている。転舵軸41の中央部には、ドライブシャフト32が転舵軸41に接触しないように、ドライブシャフト32が貫通している。すなわち、ピニオン42の貫通孔42aには、ドライブシャフト32が貫通している。
【0050】
転舵機構40は、ピニオン42を回動させるように直線移動するラック43と、ラック43を直線移動させることによりピニオン42を駆動させる油圧アクチュエータ44と、を含む。すなわち、転舵機構40は、ラック43およびピニオン42によって直線運動を回転運動に変換するように構成されている。なお、油圧アクチュエータ44は、特許請求の範囲の「第1駆動源」の一例である。
【0051】
ラック43は、ピニオン42に対して1つ設けられている。ラック43は、ピニオン42の右舷側に配置されている。ラック43は、船外機本体102の前後方向に沿って延びている。ラック43は、ピニオン42の歯42bと係合する43aを有する。ラック43は、船外機本体102の前後方向に沿って直線移動可能に構成されている。ラック43の歯43aがピニオン42の歯42bと係合した状態で、ラック43が船外機本体102の前後方向に沿って直線移動することによって、ピニオン42が回動する。
【0052】
油圧アクチュエータ44は、ラック43が収容された油圧シリンダ44aを含む。油圧シリンダ44aは、前後方向に沿って延びるように配置されている。油圧シリンダ44aの内部には、2つの油室44bが形成されている。2つの油室44bは、ラック43が延びる方向(船外機本体102の前後方向)において、ラック43の一方側および他方側に形成されている。ポンプ駆動用モータ(図示しない)により油圧ポンプ(図示しない)が駆動されることによって、2つの油室44bのうちの一方への作動油の供給、および、2つの油室44bのうち他方からの作動油の排出が行われる。2つの油室44bの作動油の量が調整されることにより、ラック43が油圧シリンダ44aの内部を直線移動する。
【0053】
転舵機構40は、ピニオン42に駆動力を伝達する駆動力伝達機構60と、駆動力伝達機構60を介してピニオン42を駆動させる電気モータ45と、を含む。なお、電気モータ45は、特許請求の範囲の「第2駆動源」の一例である。
【0054】
図5に示すように、駆動力伝達機構60は、ウォームギア61、クラッチ63等を含む。ウォームギア61は、電気モータ45の駆動力によって回転するウォーム61aと、ウォーム61aの歯と係合するウォームホイール61bと、を含む。ウォームギア61は、ウォームホイール61b側からウォーム61a側に駆動力が伝達されないように、ウォーム61aの歯の角度が調整されている。クラッチ63は、ピニオン42を電気モータ45によって回動させる場合に、電気モータ45からピニオン42に駆動力を伝達する状態と、ピニオン42を電気モータ45によって回動させない場合に、電気モータ45からピニオン42に駆動力を伝達しない状態とを切り換え可能に構成されている。
【0055】
ここで、
図5に示すように、船舶120を比較的大きな速度Vで航行させる場合には、駆動源には比較的大きな負荷が掛かるものの、船外機本体102を転舵させる角度Aは比較的小さな角度範囲内に限定される。一方、船舶120を比較的小さな速度Vで航行させる場合には、駆動源には比較的小さな負荷しか掛からないものの、船外機本体102を比較的大きな角度Aで転舵させる場合がある。
【0056】
したがって、転舵機構40(
図5参照)は、ピニオン42(
図4参照)が油圧アクチュエータ44(
図4参照)によって回動することにより、第1転舵角度範囲A10内で船外機本体102(
図4参照)を転舵させることが可能な状態と、ピニオン42が電気モータ45(
図4参照)によって回動することにより、第1転舵角度範囲A10よりも大きな角度範囲を含む第2転舵角度範囲A20内で船外機本体102を転舵させることが可能な状態と、を切り換え可能に構成されている。また、転舵機構40は、ピニオン42が電気モータ4によって回動することにより船外機本体102を転舵させながら、第1速度範囲V10内で船舶120を航行させることが可能な状態と、ピニオン42が油圧アクチュエータ44によって回動することにより船外機本体102を転舵させながら、第1速度範囲V10よりも大きな角度範囲を含む第2速度範囲V20内で船舶120を航行させることが可能な状態と、を切り換え可能に構成されている。
【0057】
具体的には、制御部113(
図2参照)は、操作モードが非ジョイスティックモードである場合には、船舶120の速度Vを第2速度範囲V20内で調整するように、ECU51(
図2参照)を介してエンジン31(
図2参照)を制御する。また、制御部113は、操作モードが非ジョイスティックモードである場合には、ピニオン42(
図4参照)が油圧アクチュエータ44(
図4参照)によって回動するとともに、船外機本体102を転舵させる角度Aを第1転舵角度範囲A10内で調整するように、SCU52(
図2参照)を介して転舵機構40(
図4参照)を制御する。
【0058】
一方、制御部113(
図2参照)は、操作モードがジョイスティックモードである場合には、船舶120の速度Vを第1速度範囲V10内で調整するように、ECU51(
図2参照)を介してエンジン31(
図2参照)を制御する。また、制御部113は、操作モードがジョイスティックモードである場合には、ピニオン42(
図4参照)が電気モータ45(
図4参照)によって回動するとともに、船外機本体102を転舵させる角度Aを第2転舵角度範囲A20内で調整するように、SCU52を介して転舵機構40(
図4参照)を制御する。
【0059】
第1速度範囲V10は、下限が約0(m/s)に設定されるとともに、上限が速度V1(m/s)に設定される。第2速度範囲V20は、下限が約0(m/s)に設定されるとともに、上限が速度V2(m/s)に設定される。速度V1は、速度V2よりも小さい。速度V2は、船舶120の最高速度に相当する。すなわち、第2速度範囲V20は、第1速度範囲V10を含むとともに第1速度範囲V10よりも大きな角度範囲を含む。
【0060】
第1転舵角度範囲A10は、下限が約0度に設定されるとともに、上限が角度A1に設定される。第2転舵角度範囲A20は、下限が約0度に設定されるとともに、上限が角度A2に設定される。角度A1は、角度A2よりも小さい。角度A1は、約0度以上約45度以下に設定される。すなわち、第2転舵角度範囲A20は、第1転舵角度範囲A10を含むとともに第1転舵角度範囲A10よりも大きな角度範囲を含む。
【0061】
図6に示すように、転舵機構40は、ピニオン42を油圧アクチュエータ44によって回動させる場合に、ラック43がピニオン42と係合するとともに、ピニオン42を油圧アクチュエータ44によって回動させない場合に、ラック43がピニオン42と係合しないように構成されている。詳細には、ラック43のうちのピニオン42と係合する歯43aは、ピニオン42を油圧アクチュエータ44によって回動させる場合にラック43がピニオン42と係合し、かつ、ピニオン42を油圧アクチュエータ44によって回動させない場合にラック43がピニオン42と係合しないように、ラック43の長手方向において所定の範囲Rに形成されている。なお、
図6では、ラック43がピニオン42と係合していない状態を示している。
【0062】
転舵機構40は、ラック43の位置を検出するラック位置検出部46を含む。ラック位置検出部46は、ラック43に対してピニオン42とは反対側に設けられている。ラック位置検出部46は、ラック43のうちのラック位置検出部46側に設けられた検出部側ギア部43dと係合するラック位置検出用ギア46aを含む。ラック位置検出用ギア46aは、ラック43の直線移動に伴って回動する。ラック位置検出部46は、ラック位置検出用ギア46aの回動角度を検出することにより、ラック43の位置を検出する。なお、ラック位置検出用ギア46aは、特許請求の範囲の「検出用回動部材」の一例である。
【0063】
検出部側ギア部44dおよびラック位置検出用ギア46aの歯のピッチは、ピニオン42の歯のピッチよりも小さい。これに伴って、ラック位置検出用ギア46aの外径D2は、ピニオン42の外径D1よりも小さい。詳細には、ラック位置検出用ギア46aの外径D2は、ピニオン42の外径D1の半分以下である。
【0064】
転舵機構40は、ピニオン42の回動位置を検出するピニオン位置検出部47と、を含む。ピニオン位置検出部47は、ピニオン42の歯42bと係合するピニオン位置検出用ギア47aを含む。ピニオン位置検出用ギア47aは、ピニオン42の直線移動に伴って回動する。ピニオン位置検出部47は、ピニオン位置検出用ギア47aの回動角度を検出することにより、ピニオン42の回動位置を検出する。
【0065】
ピニオン位置検出用ギア47aとピニオン42とのギア比は略等しい。すなわち、ピニオン位置検出用ギア47aの歯のピッチは、ピニオン42の歯42bのピッチと略等しい。また、ピニオン位置検出用ギア47aの外径D3は、ピニオン42の外径D1と略等しい。
【0066】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
本実施形態では、上記のように、ラック43の位置を検出するラック位置検出部46は、ラック43に対してピニオン42とは反対側に設けられている。これにより、ラック位置検出部46により、直線移動するラック43の位置を検出することによって、船外機本体102とともに回動するピニオン42の回動位置を検出することができる。すなわち、船外機本体102を転舵軸41回りに回動させる角度Aを検出することができる。また、本実施形態では、上記のように、ラック位置検出部46は、ラック43に対してピニオン42とは反対側に設けられている。すなわち、ラック位置検出部46は、ピニオン42と同軸状には設けられていないとともに、ピニオン42から離間した位置に設けられている。これらの結果、船外機本体102を転舵軸41回りに回動させる角度Aを検出するための検出部を転舵軸41と同軸状に設けることなく転舵軸41から離間した位置で、船外機本体102を転舵軸41回りに回動させる角度Aを検出することができる。また、ラック位置検出部46をラック43に対してピニオン42とは反対側に設けることにより、ラック43とは別個にピニオン42を駆動させる駆動機構(駆動力伝達機構60)をラック43に対してピニオン42側に設ける場合に、その駆動機構と干渉することなく、ラック位置検出部46を配置することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、ラック位置検出部46は、ラック43の直線移動に伴って回動するラック位置検出用ギア46aを含む。これにより、ラック位置検出用ギア46aの回動を検出することによって、直線移動するラック43の位置を容易に検出することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、ラック43は、ラック43のうちのラック位置検出部46側に設けられた検出部側ギア部44dを含む。そして、ラック位置検出用ギア46aは、検出部側ギア部44dと係合するように構成されている。これにより、ラック43の検出部側ギア部44dと係合するラック位置検出用ギア46aの回動位置を検出することによって、直線移動するラック43の位置をより容易に検出することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、ラック位置検出用ギア46aの外径D2は、ピニオン42の外径D1よりも小さい。これにより、ピニオン42の外径D1を一定とした場合、ラック位置検出用ギア46aの外径D2がピニオン42の外径D1よりも大きい場合と比較して、ラック位置検出用ギア46aのサイズが比較的小さくなるので、転舵機構40が大型化するのを抑制しながら、転舵機構40にラック位置検出部46を設けることができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、ラック位置検出用ギア46aの外径D2は、ピニオン42の外径D1の半分以下である。これにより、ピニオン42の外径D1を一定とした場合、ラック位置検出用ギア46aのサイズが十分に小さくなるので、転舵機構40が大型化するのを確実に抑制しながら、転舵機構40にラック位置検出部46を設けることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、検出部側ギア部44dおよびラック位置検出用ギア46aの歯のピッチは、ピニオン42の歯のピッチよりも小さい。これにより、ギアの歯の数を一定にした場合、ギアの歯のピッチを小さくする程、ギアの外径が小さくなるので、上記のように、検出部側ギア部44dおよびラック位置検出用ギア46aの歯のピッチを、ピニオン42の歯のピッチよりも小さくすることによって、ラック位置検出用ギア46aの外径D2を、ピニオン42の外径D1よりも容易に小さくすることができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、船外機本体102の上下方向から見て、ピニオン42の中央部には、貫通孔42aが形成されている。また、船外機本体102は、船外機本体102の上部に配置されるエンジン31と、船外機本体102の下部に配置されるプロペラ35と、船外機本体102において上下方向に延びるとともに、エンジン31の駆動力をプロペラ35に伝達するドライブシャフト32と、を含む。そして、ピニオン42の貫通孔42aには、ドライブシャフト32が貫通している。これにより、ピニオン42の貫通孔42aに貫通するドライブシャフト32は、船外機本体102を転舵軸41回りに回動させた際でも、船外機100における位置が変化しないので、ドライブシャフト32がエンジン31の駆動力をプロペラ35に伝達するのを妨げることなく、船外機本体102を転舵軸41回りに回動させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、転舵機構40は、ラック43を直線移動させることによりピニオン42を駆動させる油圧アクチュエータ44と、ピニオン42に駆動力を伝達する駆動力伝達機構60と、駆動力伝達機構60を介してピニオン42を駆動させる電気モータ45と、を含む。また、転舵機構40は、ピニオン42が油圧アクチュエータ44によって回動することにより、第1転舵角度範囲A10内で船外機本体102を転舵させることが可能な状態と、ピニオン42が電気モータ45によって回動することにより、少なくとも第1転舵角度範囲A10とは異なる角度範囲を含む第2転舵角度範囲A20内で船外機本体102を転舵させることが可能な状態と、を切り換え可能に構成されている。また、転舵機構40は、ピニオン42を油圧アクチュエータ44によって回動させる場合に、ラック43がピニオン42と係合するとともに、ピニオン42を油圧アクチュエータ44によって回動させない場合に、ラック43がピニオン42と係合しないように構成されている。そして、転舵機構40は、ピニオン42の回動位置を検出するピニオン位置検出部47を含む。これにより、ピニオン位置検出部47により、ピニオン42の回動位置を検出することができるので、ラック位置検出部46によるラック43の位置の検出と組み合わせて、ラック43がピニオン42と係合しない状態からラック43がピニオン42と係合する状態に切り換わる場合に、ラック43の位置とピニオン42の回動位置を予め設定された所定の位置で係合させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、ピニオン位置検出部47は、ピニオン42と係合するピニオン位置検出用ギア47aを含む。これにより、ピニオン42と係合するピニオン位置検出用ギア47aの回動を検出することによって、ピニオン42の回動位置を容易に検出することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、ピニオン位置検出用ギア47aとピニオン42とのギア比は略等しい。これにより、ピニオン位置検出用ギア47aの回転数とピニオン42の回転数とが略等しくなるので、装置構成を簡略化することができる。たとえば、ピニオン位置検出用ギア47aとピニオン42とのギア比が異なる場合、ピニオン位置検出用ギア47aおよびピニオン42のうちの一方が1回転する間に、ピニオン位置検出用ギア47aおよびピニオン42のうちの他方が2回転以上する回転する場合がある。その場合、ピニオン位置検出用ギア47aおよびピニオン42のうちの他方は、回転数を検出するためのセンサも設ける必要がある。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、転舵機構40は、ピニオン42が油圧アクチュエータ44によって回動することにより、第1転舵角度範囲A10内で船外機本体102を転舵させることが可能な状態と、ピニオン42が電気モータ45によって回動することにより、第1転舵角度範囲A10よりも大きな角度範囲を含む第2転舵角度範囲A20内で船外機本体102を転舵させることが可能な状態と、を切り換え可能に構成されている。これにより、船舶120を比較的大きな速度Vで航行させる場合に、上記のようにピニオン42が油圧アクチュエータ44によって回動することにより第1転舵角度範囲A10内で船外機本体102を転舵させることによって、駆動源に掛かる比較的大きな負荷を油圧によって容易に受けることができる。また、船舶120を比較的小さな速度Vで航行させる場合に、上記のようにピニオン42が電気モータ45によって回動することにより第1転舵角度範囲A10よりも大きな角度範囲を含む第2転舵角度範囲A20内で船外機本体102を転舵させることによって、船外機本体102を比較的大きな角度Aで容易に転舵させることができる。すなわち、船外機本体102を転舵させるための2つの駆動源を適切に使い分けることができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、船外機本体102は、ブラケット101を介して船体110に取り付けられるアッパー部10と、アッパー部10の下方に配置されプロペラ35が設けられたロワー部20と、を含む。そして、転舵機構40は、アッパー部10に対してロワー部20を転舵軸41回りに回動させるように構成されている。これにより、アッパー部10に対してロワー部20を転舵軸41回りに回動させるように構成において、船外機本体102を転舵軸41回りに回動させる角度Aを検出するための検出部を転舵軸41と同軸状に設けることなく転舵軸41から離間した位置で、船外機本体102を転舵軸41回りに回動させる角度Aを検出することができる。
【0079】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0080】
たとえば、上記実施形態では、転舵機構40が、アッパー部10に対してロワー部20を転舵軸41回りに回動させるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、転舵機構が、船体に対して船外機本体の全体を転舵軸回りに回動させるように構成されていてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、特許請求の範囲の「第1駆動源」および「第2駆動源」が、それぞれ、油圧アクチュエータ44および電気モータ45である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、特許請求の範囲の「第1駆動源」が、油圧アクチュエータ以外の駆動源であってもよいし、特許請求の範囲の「第2駆動源」が、電気モータ以外の駆動源であってもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、第2転舵角度範囲A20が、第1転舵角度範囲A10よりも大きな角度範囲を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2転舵角度範囲が、第1転舵角度範囲よりも大きな転舵角度範囲を含まなくてもよい。すなわち、第2転舵角度範囲が、第1転舵角度範囲よりも小さな転舵角度範囲を含んでいてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、ピニオン位置検出用ギア47aとピニオン42とのギア比が略等しい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ピニオン位置検出用ギアとピニオンとのギアは異なっていてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、ピニオン位置検出部47が、ピニオン42と係合するピニオン位置検出用ギア47aを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ピニオン位置検出部が、ピニオンと係合するピニオン位置検出用ギアを含まなくてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、ピニオン42の貫通孔42aに、ドライブシャフト32が貫通している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ピニオンの貫通孔に、ドライブシャフトが貫通していなくてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、検出部側ギア部44dおよびラック位置検出用ギア46aの歯のピッチが、ピニオン42の歯のピッチよりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検出部側ギア部およびラック位置検出用ギアの歯のピッチが、ピニオンの歯のピッチと等しくてもよいし、ピニオンの歯のピッチよりも大きくてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、ラック位置検出用ギア46aの外径D2が、ピニオン42の外径D1の半分以下である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラック位置検出用ギアの外径が、ピニオンの外径の半分よりも大きくてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、ラック位置検出用ギア46aの外径D2が、ピニオン42の外径D1よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラック位置検出用ギアの外径が、ピニオンの外径と等しくてもよいし、ピニオンの外径よりも大きくてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、特許請求の範囲の「検出用回動部材」が、検出部側ギア部44dと係合するラック位置検出用ギア46aである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラックの直線移動に伴って回動するのであれば、特許請求の範囲の「検出用回動部材」が、検出部側ギア部と係合するラック位置検出用ギア以外の部材であってもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、ラック43が、ピニオン42に対して1つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラックが、ピニオンに対して複数設けられていてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、ラック43が、ピニオン42の右舷側に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ラックが、ピニオンの左舷側に配置されていてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、ラック43が、船外機本体102の前後方向に沿って延びている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図7に示す第1変形例のように、ラックが、船外機本体の左右方向に沿って延びていてもよい。
図7に示すように、第1変形例による船外機200は、船外機本体202と、転舵機構240と、を備える。転舵機構240では、ラック43は、船外機本体202の左右方向に沿って延びている。なお、
図7では、ラック43がピニオン42の前方側に配置された例を示したが、ラック43がピニオン42の後方側に配置されていてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、船外機100が、船体110の船尾111に船体110の左右方向に並ぶように複数取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、船外機が、船体の船尾に1つのみ取り付けられていてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、転舵機構40が、ラック43およびピニオン42によって直線運動を回転運動に変換するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図8に示す第2変形例のように、転舵機構が、ラックおよびピニオン以外の部品によって直線運動を回転運動に変換するように構成されていてもよい。
図10に示すように、第2変形例による船外機300は、船外機本体302と、船外機本体302を転舵軸341回りに回動させる転舵機構340と、を備える。転舵機構340は、船外機本体302とともに回動するリンク部材342と、リンク部材342を回動させるように直線移動するピストン343と、を含む。具体的には、リンク部材342は、転舵軸341を取り囲むように配置された円筒部342aと、円筒部342aからピストン343側に延びるアーム部342bと、を含む。円筒部342aは、円筒部342aの回動に伴って転舵軸341が回動するように、スプライン係合により転舵軸341に固定されている。ピストン343は、船外機本体302の前後方向においてピストン343の中央部に配置され、ピストン343に対して回動可能な回動部343aを有する。アーム部342bは、ピストン343の回動部343aの孔343bに嵌め込まれて、ピストン343に対して固定されている。ピストン343を船外機本体302の前後方向において直線移動させると、ピストン343の回動部343aが回動しながら、転舵軸341に対するアーム部342bの位置が変化する。転舵軸341に対するアーム部342bの位置の変化に伴って、転舵軸341に固定された円筒部342aが回動する。また、転舵機構340は、ピストン343の位置を検出するピストン位置検出部346を含む。ピストン位置検出部346は、ピストン343のうちのピストン位置検出部346側に設けられた検出部側ギア部343dと係合するピストン位置検出用ギア346aを含む。なお、リンク部材342、ピストン343およびピストン位置検出部346は、それぞれ、特許請求の範囲の「回動部材」、「直線移動部材」および「直線移動部材用位置検出部」の一例である。
【0095】
また、上記実施形態では、転舵機構40が、ピニオン42が油圧アクチュエータ44(第1駆動源)によって回動することにより、第1転舵角度範囲A10内で船外機本体102を転舵させることが可能な状態と、ピニオン42が電気モータ45(第2駆動源)によって回動することにより、少なくとも第1転舵角度範囲A10とは異なる角度範囲を含む第2転舵角度範囲A20内で船外機本体102を転舵させることが可能な状態と、を切り換え可能に構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、転舵機構が、ピニオンが第1駆動源によって回動することにより、第1転舵角度範囲内で船外機本体を転舵させることが可能であり、かつ、ピニオンが第2駆動源によって回動することにより、少なくとも第1転舵角度範囲とは異なる角度範囲を含む第2転舵角度範囲内で船外機本体を転舵させることが不可能に構成されていてもよい。その場合、
図9に示す第3変形例のように、転舵機構が、ピニオンに駆動力を伝達する駆動力伝達機構と、駆動力伝達機構を介してピニオンを駆動させる第2駆動源と、を含まなくてもよい。
図9に示すように、第3変形例による船外機400は、船外機本体402と、転舵機構440と、を備える。転舵機構40は、ピニオン42を回動させるように直線移動するラック43と、ラック43を直線移動させることによりピニオン42を駆動させる油圧アクチュエータ44と、を含む。転舵機構440は、上記実施形態の駆動力伝達機構60および電気モータ45を含まない。なお、転舵機構440は、上記実施形態のピニオン位置検出部47も含まない。
【符号の説明】
【0096】
10 アッパー部
20 ロワー部
31 エンジン
32 ドライブシャフト
35 プロペラ
40、240、340、440 転舵機構
41、341 転舵軸
42 ピニオン
42a 貫通孔
43 ラック
43d 検出部側ギア部
44 油圧アクチュエータ(第1駆動源)
45 電気モータ(第2駆動源)
46 ラック位置検出部
46a ラック位置検出用ギア(検出用回動部材)
47 ピニオン位置検出部
47a ピニオン位置検出用ギア
60 駆動力伝達機構
100、200、300、400 船外機
101 ブラケット
102、202、302、402 船外機本体
102a (船外機本体の左右方向における)中央部
110 船体
111 (船体の)船尾
120 船舶
342 リンク部材(回動部材)
343 ピストン(直線移動部材)
346 ピストン位置検出部(直線移動部材用位置検出部)
A10 第1転舵角度範囲
A20 第2転舵角度範囲
D1 (ピニオンの)外径
D2 (ラック位置検出用ギアの)外径