(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102983
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】射出成形機、射出成形機の制御システム、および射出成形機の制御方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/06 20060101AFI20230719BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B29C45/06
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003777
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】樫内 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】朝野 一実
(72)【発明者】
【氏名】菊川 雅之
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM22
4F206AP064
4F206AP084
4F206AR074
4F206AR094
4F206JA07
4F206JC03
4F206JL02
4F206JP14
4F206JP18
4F206JT04
4F206JT33
(57)【要約】
【課題】 金型が取り付けられた回転部がサーボモータにより回転可能に設けられた射出成形機において回転部の適切な回転制御を行うことができる射出成形機、射出成形機の制御システム、および射出成形機の制御方法を提供する。
【解決手段】
金型13a,13bが取り付けられた回転部14がサーボモータ15により回転可能に設けられた射出成形機11の制御方法において、回転部14に金型13a、13bを取り付けた状態でサーボモータ15により回転部14を回転後に停止させ、金型13a,13bを他方の金型23に対して型閉して金型同士の少なくとも一部が当接された状態における回転部14の位置を用いて回転部14の回転時の目標停止位置P1,P2を決定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型が取り付けられた回転部がサーボモータにより回転可能に設けられた射出成形機において、
回転部に金型を取り付けた状態で前記サーボモータにより回転部を回転および停止させる際のパラメータを機械学習装置が検証し、前記パラメータを決定する制御装置が備えられた、射出成形機。
【請求項2】
前記回転部を停止させるための機械的なストッパが設けられていない請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
金型が取り付けられた回転部がサーボモータにより回転可能に設けられた射出成形機の制御システムにおいて、
回転部に金型を取り付けた状態で前記サーボモータにより回転部を回転および停止させる際のパラメータを機械学習装置が検証し、前記パラメータを決定する制御装置が備えられた、射出成形機の制御システム。
【請求項4】
前記パラメータは少なくとも前記サーボモータの制御ゲインを含む請求項3に記載の射出成形機の制御システム。
【請求項5】
金型が取り付けられた回転部がサーボモータにより回転可能に設けられた射出成形機の制御方法において、
回転部に金型を取り付けた状態で前記サーボモータにより回転部を回転および停止させる際のパラメータを機械学習装置が検証し、前記パラメータを決定する、射出成形機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型が取り付けられた回転部がサーボモータにより回転可能に設けられた射出成形機、射出成形機の制御システム、および射出成形機の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金型が取り付けられた回転部がサーボモータにより回転可能に設けられた射出成形機においては回転部をなるべく短時間で回転させて次の停止位置に正確に停止させることが求められる。回転部であるロータリーテーブルを短時間で回転させるものとしては特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1では、サーボモータを回転制御してロータリーテーブルの所定回転角度の略半分を加速し残りの略半分を減速して前記ロータリーテーブルを回転するようにしている。
【0003】
また射出成形機等の駆動体の加速度に関する情報を用いて、駆動体の制御ゲイン又は時定数を適切かつ定量的に設定可能な制御装置、及び制御ゲイン又は時定数を調整する機能を備えた調整装置を備えたものとしては特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献2では制御ゲインと時定数を調整することによりサーボモータの振動を抑制した適切な制御を行うことを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-646号公報
【特許文献2】特開2007-141189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが特許文献1は、回転角度の略半分は減速されものであるが、最適なロータリーテーブル回転の減速開始位置になっていない場合があった。または回転部であるロータリーテーブルに取り付けられる金型の重量などの諸条件が変更された場合にも対応できるものではなく、結果的にはロータリーテーブルをなるべく短時間で回転させて次の停止位置に正確に停止させることが出来ない場合が多いものであった。また特許文献2は、サーボモータの制御ゲインや時定数について示唆を与えるものではあるが、特許文献1と同様に射出成形機の回転部に取り付けられる金型の重量などの諸条件が変更された場合にも対応できるものではなかった。
【0006】
そこで本発明は、金型が取り付けられた回転部がサーボモータにより回転可能に設けられた射出成形機において回転部の適切な回転制御を行うことができる射出成形機、射出成形機の制御システム、および射出成形機の制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の射出成形機は、金型が取り付けられた回転部がサーボモータにより回転可能に設けられた射出成形機の制御システムにおいて、回転部に金型を取り付けた状態で前記サーボモータにより回転部を回転および停止させる際のパラメータを機械学習装置が検証し、前記パラメータを決定する制御装置が備えられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の射出成形機は、金型が取り付けられた回転部がサーボモータにより回転可能に設けられた射出成形機の制御システムにおいて、回転部に金型を取り付けた状態で前記サーボモータにより回転部を回転および停止させる際のパラメータを機械学習装置が検証し、前記パラメータを決定する制御装置が備えられているので、回転部の適切な回転制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の射出成形機を示す正面図である。
【
図2】本実施形態の射出成形機を示す平面図である。
【
図3】本実施形態の射出成形機の制御装置の機械学習装置を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態の積層成形装置の機械学習装置のニューラルネットワークを示す図である。
【
図5】本実施形態の射出成形機の機械学習装置を使用した回転テーブルを回転および停止させる際のパラメータの検証の際のフローチャート図である。
【
図6】本実施形態の射出成形機の目標停止位置を補正する際のフローチャート図である。
【
図7】本実施の射出成形機の目標停止位置を補正する際の作動内容の説明図である。
【
図8】第2の実施形態の射出成形機を示す正面図である。
【
図9】第3の実施形態の射出成形機を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<射出成形機の構成>
射出成形機の一種である竪型ロータリ式の射出成形機11の構成について
図1、
図2を参照して説明する。竪型ロータリ式の射出成形機11の型締装置12は、金型のうち第1の金型である下型13a,13bが取り付けられる回転部である回転テーブル14が回転機構であるサーボモータ15により回転可能に設けられている。本実施形態では回転テーブル14の金型取付部14a、14bにはそれぞれ下型13a,13bが取り付けられるようになっているが回転テーブル14に取り付けられる金型の個数は限定されない。
【0012】
型締装置12の固定盤16はベース17に対して複数本の支柱18に固定され支承されている。また固定盤16の下方に設けられる受圧盤19と固定盤16の上方に設けられる可動盤20の間には3本のタイバ21a,21b,21cが縦方向に設けられている。そのうちの1本のタイバ21aは前記回転テーブル14の回転中心軸を兼ねていて、回転テーブル14の中心に設けられる。回転テーブル14は、タイバ21aの周囲に設けられた図示しないベアリングにより回転自在に保持されている。また回転テーブル14と固定盤16の間には公知の滑り部材やローラやコロが設けられ、回転テーブル14の回転時の抵抗を減らしている。また受圧盤19と固定盤16の間にはトグル機構22などの型開閉・型締機構が設けられ、型締・型開閉用のサーボモータ37により型開閉・型締機構が作動されるようになっている。なお型開閉・型締機構の構造は限定されない。
【0013】
可動盤20の下面の金型取付部20aには第2の金型であって可動金型である上型23が取り付けられている。本実施形態では上型23は1個であるが上型23の個数についても限定されない。前記下型13と上型23とからなる金型はいずれか一方が凸型でありいずれか他方が凹型であり、型閉嵌合されるときに型当接されて内部にキャビティが形成される。また凹型に対して凸型が良好に嵌合されるように下型13か上型23の一方の金型のキャビティ面の周囲の四隅近傍にはガイドピン24が設けられ、他方の金型には前記ガイドピン24が挿入されるガイド孔25が、キャビティ面の周囲の前記ガイドピン24に対応する位置に設けられている。前記ガイドピン24とガイド孔25は公知のものであるが、金型同士がごく僅か異なった位置に取り付けられていてもガイド孔25がガイドピン24をガイドすることにより金型の主要部を傷つけることなく一方の金型を他方の金型に型閉を可能とするものである。
【0014】
固定盤16の側面には、回転テーブル回転用のサーボモータ15が駆動軸26を上方に向けて固定されている。サーボモータ15は、モータ部15aと回転角度を検出するロータリエンコーダ15bから構成される。前記駆動軸26に固定されるプーリ27と回転テーブル14の外周14cの間にはタイミングベルト39が掛け渡され、サーボモータ15の駆動により回転テーブル14と回転テーブル14に取り付けられた下型13a、13bが回転中心であるタイバ21aを中心に水平面上で回転されるようになっている。また回転テーブル14の回転位置(回転角度)は、サーボモータ15のモータ部15aに取り付けられているロータリエンコーダ15bにより検出可能となっている。本実施形態では、ロータリエンコーダ15bは原点位置を設定可能であり原点位置からの絶対値としての位置情報を検出可能なアブソリュート式ロータリエンコーダが望ましい。固定盤16の取出位置35の裏面側にはエジェクタ機構40が備えられている。上記のロータリエンコーダ15bを含むサーボモータ15は、サーボアンプ28を介して制御装置29に接続されている。
【0015】
回転テーブル14の回転機構は、回転テーブル回転用のサーボモータ15の駆動軸26に取り付けられたギアにより回転テーブル14の外周に形成された歯車を回転させるものでもよい。更には回転テーブル回転用のサーボモータ15により、タイバ21aの周囲に設けられる回転テーブル14の中心軸を回転させるものでもよく、回転機構は限定されない。
【0016】
固定盤16の一側には回転テーブル14の停止位置に対応してインターロック機構である近接センサ30(近接スイッチ)が取り付けられている。また回転テーブル14の上面には前記近接センサ30に読み取られる被検出部であるカム部材31が設けられている。ただしこれらのインターロック機構は、直接被検出部と接触するリミットスイッチでもよく、別の検出手段でもよい。本実施形態では回転部である回転テーブル14を機械的に位置決めする位置決め機構や回転部である回転テーブル14を当て止めして停止させるための機械的なストッパが設けられていない。そのため射出成形機11の構造が簡略化できるうえに、位置決め機構の摩耗や位置決め機構が抜けなくなるなどの問題が発生しないという利点がある。またストッパの位置調整をする必要がなくなる利点がある。
【0017】
ただし本発明は位置決め機構を設けるものを全く除外するものではない。位置決め機構を用いるものでも毎回位置決め機構を用いずに連続成形中の複数回のテーブル回転に1回だけ位置決め機構を用いてもよい。また連続成形中の複数回のテーブル回転に1回、成形金型交換時、成形条件変更時、成形条件生成時の少なくとも一つで位置決め機構を作動させてもよい。位置決め機構を設ける場合の位置決め機構は、位置決め部材(ピンやくさび)が回転テーブル14の位置決め部(位置決め穴や位置決め凹部)に挿入されるものが想定される。しかし回転テーブル14に設けられた突起部が固定盤16に設けられたストッパ部に当接するような簡易的なものでもよい。
【0018】
本実施形態では射出成形機11の型締装置12の一側には射出装置32が設けられている。射出装置32は、加熱シリンダ33に固定されたノズル34が水平方向に金型に向けられて配置されている。しかし射出装置は、型締装置12に対して垂直方向に設けられたものでもよい。また射出装置32の本数も限定されない。
【0019】
<射出成形機の制御装置と機械学習装置の構成>
本実施形態の制御装置29について
図3の制御装置の機械学習装置を示すブロック図を参照して説明する。制御装置29は、入力部41、射出成形機のシーケンス制御等の作動の処理を行う作動処理部42、記憶部43、出力部44を備える。そして作動処理部42は入力部41、記憶部43、出力部44にそれぞれ接続されている。また制御装置29は、機械学習装置38を備えている。本実施形態では機械学習装置38の記憶部43については、制御装置29の記憶部43と共用するブロック図で記載している。機械学習装置38の記憶部43には、良否記憶部45と条件記憶部46を備える。また機械学習装置38は、入力部41に接続される判断部47と、判断部47に接続される条件修正部48と、条件修正部48に接続される良否決定部49を備えている。そして良否決定部49は出力部44に接続されている。
【0020】
上記では制御装置29を機能的なブロックに分けて説明したが、作動処理部42や機械学習装置38の判断部47、条件修正部48、良否決定部49は、CPU等の演算装置に相当する。機械学習装置38の判断部47は、条件修正部48、良否決定部49は、ニューラルネットワークを備えており、回転テーブル14の回転制御に関するパラメータの生成と、前記パラメータを使用して回転テーブル14を回転制御した際の良否判定を行う。
図4に示されるように具体的な機械学習装置38のネットワークの構成としては、機械学習装置38は、入力層72、中間層73、出力層74を備えている。なお機械学習装置38は、中間層73を複数層設けディープラーニングを行うものであってもよい。
【0021】
また制御装置29の良否記憶部45や条件記憶部46は、揮発メモリや不揮発メモリ等の記憶装置に相当する。入力部41は、サーボアンプ28の電流検出部28aの他、サーボモータ15のロータリエンコーダ15bにも接続されている。また射出成形機11のその他の検出装置にも接続されている。また入力部41は、設定値や検出値が画面表示されるタッチパネル式の設定入力装置50にも接続されている。更に入力部41は、射出成形機11以外の取出機などの周辺装置にも接続されている。更にまた制御装置29の入力部41は、射出成形機11以外の図示しない制御装置にも接続可能である。具体的には、有線や無線を通じて同じ工場内または別の工場内の他の射出成形機や中央制御装置に接続可能である。または同じ会社または射出成形機メーカーなどの別の会社更にはクラウドサービスを行う会社などのサーバーを含む制御装置と接続されるようにしてもよい。
【0022】
また出力部44は、前記サーボアンプ28の指令部28b等に接続されている。更に出力部44は、入力部41と同様に、別の制御装置やその他のアクチュエータやその作動をコントロールする装置に接続されている。更に出力部44は、入力部41と同様に、射出成形機11の設定入力装置50や、射出成形機11以外の取出機などの周辺装置にも接続されている。
【0023】
<サーボアンプの構成>
サーボアンプ28は、制御装置29とサーボモータ15に接続されている。サーボアンプ公知のようにパワートランジスタを備えており、制御装置29からの指令信号に基づいてサーボモータ15に所定の電流値の電力を供給する。またサーボアンプ28はサーボモータ15のロータリエンコーダ15bに接続され、サーボモータ15との間で速度クローズドループや位置クローズドループを構成する。更にサーボアンプ28は電流検出部28aと指令部28bを備えており、サーボモータ15に供給される電流値を検出可能となっている。また指令部28bは制御装置29と信号の送受信を行うともにサーボモータ15との間でフィードバック制御を行う。
【0024】
<設定入力装置の構成>
次に射出成形機11の設定入力装置50についても
図3を参照して説明する。設定入力装置50は、タッチパネル等から構成され、射出成形機11の各種設定値を入力するための設定入力部51を備えている。また設定入力装置50は、射出成形機11の各センサ等により検出された状態を表示する表示部52を備えている。
【0025】
設定入力部51については、成形条件入力部53と、良否入力部54、制御ゲイン入力部55、時定数入力部56等を備えている。制御ゲイン入力部55は、射出成形機に搭載されるサーボモータ15等のゲインを入力する部分である。ここでは速度比例ゲインの数値を入力する速度比例ゲイン入力部57(速度Pゲイン入力部)、速度積分ゲインの数値を入力する速度積分ゲイン入力部58(速度Iゲイン入力部)、位置ループゲインの数値を入力する位置ループゲイン入力部59を備えている。また電流指令フィルタの数値を入力する時定数入力部56を備えている。速度比例ゲインの修正は必須のものであり、全周波数帯の応答性を変化させる。ゲインの数値を大きくすると応答性が速くなるがオーバーシュートや振動が発生しやすくなる。また速度積分ゲインの修正も必須のものであり、低い周波数での応答性を変化させる。速度積分ゲインの数値を大きくするとサーボロック力が強くなり応答性は向上するが、オーバーシュートや振動が発生しやすくなる。また位置ループゲインは、フィードバック制御の応答性、位置決め速度、精度を最適化する。
【0026】
<回転テーブルを回転および停止させる際のパラメータの設定方法>
次に射出成形機11の制御方法、とりわけサーボモータ15により回転部である回転テーブル14を回転および停止させる際のパラメータの設定方法について
図5のフローチャート図を参照して説明する。本発明は、回転部(回転テーブル14)に金型(下型13a,13b)を取り付けた状態で前記サーボモータ15により回転部を回転および停止させる際のパラメータを機械学習装置38が検証し、前記パラメータを決定するものである。また回転テーブル14の回転時の目標停止位置P1,P2の決定は、回転部である回転テーブル14に金型である下型13a、13bを取り付けた状態で前記サーボモータ15により回転部である回転テーブル14を回転後に停止させ、金型である下型13a、13bを他方の金型である上型23に対して型閉して金型同士の少なくとも一部が当接された状態における回転部である回転テーブル14の位置を用いて回転部である回転テーブル14の回転時の目標停止位置P1,P2を決定することも、種々想定される停止方法のうちの一方法としている。
【0027】
最初に機械学習装置38に射出成形機情報を入力する(s1)。射出成形機情報は、機械学習装置38が回転テーブル14の回転制御時のパラメータを決定するために必須の入力項目である。射出成形機情報には、サーボモータ15の種類または能力、減速機やベルト等の減速比、回転テーブル14のベアリングや前記減速機等による摩擦係数や動力損卒率、回転テーブル14に取りつけられる標準的な金型重量、回転テーブル14の重量の少なくとも2つ以上が該当する。とりわけサーボモータ15の種類または能力は必須の射出成形機情報に該当する。これら射出成形機情報は既に射出成形機メーカーの工場出荷時から制御装置29に格納されていることが望ましい。また前記射出成形機情報は射出成形機11の前記サーボモータ15または該サーボモータ15により回転される回転部の回転機構部の使用年数を含むものであってもよい。
【0028】
次に回転テーブルを回転させるサーボモータ15の標準的な制御ゲイン(パラメータの一種)を設定入力装置50の制御ゲイン入力部55から設定入力する(s2)。上記したように、制御ゲインとしては、速度比例ゲイン、速度積分ゲイン、位置ループゲインが一般的であり、その他のゲインも設けてもよい。また必要に応じて時定数も設定する。これらゲイン等も標準的な値は、射出成形機メーカーの工場出荷時から制御装置29に格納されていることが望ましい。
【0029】
次に成形条件入力部53から成形に際して取り付けられた金型重量を入力する(s3)。一般的に回転テーブル14に取り付けられる金型は、成形される成形品に応じてそれぞれ金型重量が異なる。また回転テーブル14に取り付けられる金型の重量は、サーボモータ15により回転テーブル14を回転させ、なるべく最短時間で正確な目標停止位置に停止させる上で重要なファクターとなる。ただし完全に同一重量の金型か、略同一重量の金型を交換して取り付ける場合は、最初または前回までに入力されている金型重量の条件のままでもよく、新たな金型重量の入力を省略できる場合もあり得る。
【0030】
更に成形条件入力部53から成形条件を入力する(s4)。成形条件は、回転テーブル14の回転制御時のパラメータに該当する。成形条件には型締装置12の側では型開閉速度や型締圧力も入力項目であるが、回転テーブル14の回転に関しては、サイクル時間を短縮しなおかつ正確な位置に回転テーブル14を停止させるためのサーボモータ15の速度設定が重要である。その中でも回転テーブル14の回転開始から増速時についてはサーボモータ15が継続的な負荷に耐えられる範囲で、フルに能力を発揮できる値が選択される。最高速度に到達してから暫く同じ速度を維持するにせよ、最高速度に到達してからすぐに減速に移行するにせよ、最も重要となるのは減速開始位置(または減速開始時間)と、減速時の加速度である。これらは当初は別の射出成形機における同じ金型や類似の金型を使用した際の回転テーブル回転時の成形条件や、同一の射出成形機11で類似の金型の回転テーブル回転時の成形条件を参照して入力値を決定し設定入力がなされる。
【0031】
次に手動成形や半自動成形により最初に設定入力した成形条件を含むパラメータで実際に射出成形機11を作動させ、機械学習装置38を用いて良好な回転テーブル14の停止制御が実現できているかの検証を開始する。即ち成形条件最適化ループと制御ゲイン最適化ループをスタートする(S5)。検証に際しては、まずサーボモータ15を駆動させて回転テーブル14の回転制御と停止制御を行う(s6)。この停止制御時の回転部(回転テーブル14)に金型を取り付けた状態で前記サーボモータにより回転部を回転および停止させる際のサーボモータ15や減速機等の負荷量や回転テーブル14の回転時の挙動が検出され、制御装置29に送られる。
【0032】
前記において良好な停止(許容値内の停止)が行われたかどうかの判断は、機械学習装置38の判断部47において行われる。そのための指標としては、(1)サーボモータ15のロータリエンコーダ15bの検出値が許容される以上のオーバーシュートや振動が発生を検出することなく所定時間内に位置指令された位置に所定の誤差内の範囲で正確に停止されたかどうか。(2)サーボアンプ28の電流検出部28aにより測定される電流値(特にピーク時のトルク)が予め定めたサーボモータ15の許容範囲内かどうか。(3)前記ロータリエンコーダ15bの検出値を用いて算出される減速時の加速度が、減速機構を含む駆動機構の許容範囲以内であるか。等である。
【0033】
そして前記成形条件と制御ゲインの組み合わせで回転テーブル14の回転を実行し良好な停止が行われた場合は、成形条件や制御ゲインは変更する必要がないので、そのまま成形条件最適化ループと制御ゲイン最適化ループを終了する(S10)。しかし通常は初回の回転制御から回転テーブル14の停止制御が最適な状態とはならないので、条件修正部48で成形条件の補正(s8)と制御ゲインの補正(s9)を行う。成形条件の補正には、回転テーブル14の回転速度、減速開始位置が含まれる。また制御ゲインの補正には、速度比例ゲイン、速度積分ゲイン、位置ループゲインの補正が含まれる。また状況に応じて行う時定数の補正も含まれる。
【0034】
そして再びサーボモータによる回転テーブルの回転(s6)を行い、再度結果を検証することを繰り返す。この際も射出成形機11の機械学習装置38は、前記成形条件と制御ゲインの多数の組み合わせによる回転を実施し、判断部47が良否記憶部45に記憶されている良好な停止(許容値内の停止)の条件に合致しているかどうかを判断部47が判断する。次に良好な停止が行われている場合は、最短時間で良好な停止(許容値内の停止)が行われる成形条件と制御ゲインの組み合わせを修正する。
【0035】
これらのパラメータの修正は、予め定められた順序により行う。本実施形態では、成形条件の補正(s8)を行ってから制御ゲインの補正(s9)を行っている。成形条件である回転テーブル14の回転速度や減速開始位置の調整を行っては結果検証し、良否記憶部45が記憶している良好な停止制御ができなくなった時点で制御ゲインの修正を行っている。何故なら回転テーブル14の回転は、成形品の品質に影響を及ぼす部分ではなく、生産性との関係では、成形サイクル時間の短縮が何よりも優先されるからである。ただしパラメータ修正の順序についてはこれに限定されない。例えば回転テーブル14の回転時間(最高回転速度と減速開始位置の組み合わせによる)が短すぎて良好な回転制御および停止制御ができなくなり制御ゲインの修正を行ったが、回転制御および停止制御が改善できない場合は、回転テーブル14の回転時間を延長してから制御ゲインを再調整する。
【0036】
この際の制御ゲインの調整は、速度比例ゲインの調整を最初に行い、次に速度積分ゲインの調整を行う。位置ループゲインの調整は必須のものではないが、前記速度比例ゲインと速度積分ゲインの調整のみで応答性、オーバーシュート、振動などが解消されない場合に実行する。また時定数の調整も前記ゲインの調整だけで問題解消されない場合に実行する。これらの調整については、従来から存在しているサーボモータの制御ゲインをオートチューニングする機能を使用または併用してもよい。
【0037】
上記のように制御パラメータは、金型重量を含めた射出成形機情報に対応する形で、サーボモータによる回転テーブルの回転速度(最高回転速度、減速開始位置、減速時の加速度)、制御ゲイン等の多岐にわたる。従っていずれかのパラメータの値が最適値であるというよりも、複数のパラメータ間の相関関係により最適なパラメータが決定される。これらの最適なパラメータの決定には強化学習が用いられる。一例として或るパラメータを高く変更した場合に、オーバーシュートまたは振動等の不具合が発生した場合には、そのパラメータを高く変更したことにマイナスの報酬を与える。逆にオーバーシュートまたは振動等の不具合が解消する方向に働いた場合にはプラスの報酬を与える。またあるパラメータを高く変更した場合に回転テーブル14が停止するまでに要した時間が短縮された場合には、そのパラメータを上げたことに対してプラスの報酬を与える。また逆に回転テーブル14が停止するまでに要した時間が増加した場合には、そのパラメータを上げたことに対してマイナスの報酬を与える。
【0038】
当然ながら射出成形機11が負荷異常となるような挙動があった場合、その要因となったパラメータには大きなマイナスの報酬が与えられというように報酬の大小も設定される。これらは条件修正部48により行われ、これら報酬の演算の結果により最適解のパラメータを決定する。また強化学習においては、ディープラーニングを取り入れてもよい。更に最適解のパラメータ決定の過程で数理計画法による解析を加えてもよい。更にまた調整により最適解に到達できないケースがあるときは、強化学習における報酬の重み付けを修正が行われることが一般的であるが、バックプロパゲーション等の手法により機械学習の関数式を修正するようにしてもよい。
【0039】
そして良好な回転テーブルの停止が実現できるパラメータが良否決定部49により決定される。そして前記パラメータが決定されると成形条件最適化ループと制御ゲイン最適化ループを終了する(s10)。この際のパラメータは、機械学習装置38の条件記憶部46に記憶され、連続運転時の成形条件として使用される。また条件記憶部46に記憶された良好な停止制御が可能なパラメータのデータは、教師あり学習の正解データ(ラベル付きデータ)として記憶され、次回から金型が交換された際のパラメータを決定する際の参考データとしても使用される。また同様にパラメータ設定時に良好な停止が行えなかった際のデータもまた条件記憶部46に不正解データとして記憶され次回から金型が交換された際のパラメータを決定する際の参考データとしても使用される。
【0040】
これら前記の制御ゲインや成形条件等のパラメータを変更しての回転テーブル14の回転制御の調整作業は、機械学習装置により自動的に行われ、強化学習されることが望ましい。しかし制御ゲインや成形条件の変更の一部や、回転テーブル14を回転させた結果(目標停止位置への停止精度、負荷、時間等)の確認は、作業者が関与するものでもよい。また前記パラメータを変更しての調整作業は、連続運転前に限らず、連続運転中にも継続して行うものでもよい。例えば連続運転が開始されると金型や射出成形機11の各部は作動により昇温されるが、前記熱膨張に対応して前記パラメータを微調整してもよい。
【0041】
また前記条件記憶部46に記憶された教師あり学習の学習データ(ラベル付きデータ)は、他の金型に交換した際にも使用可能である。または射出成形機11とは別の射出成形機にデータを送信して使用することも可能である。これらの際は、機械学習装置38に射出成形機情報の変数の部分を入力することにより、機械学習装置38が回帰式を演算するなどして、試行する成形条件と制御ゲインの組み合わせを最初から絞り込むことができる。即ち蓄積されたデータのうち金型重量などとの関係の法則性を勘案しながら、回転テーブル14の回転制御と停止制御が不適切時の成形条件と制御ゲインの組み合わせは最初から除外できる。そして機械学習装置が最適と判断する成形条件と制御ゲインの組み合わせから成形トライを開始することにより、試行があったとしても、最適解の成形条件と制御ゲインの組み合わせに早く到達することができる。
【0042】
<回転テーブルの停止位置と回転テーブルの位置決め方法>
本実施形態の回転テーブルの位置決め方法は、
図6のフローチャート図に示されるように回転テーブルに金型を取り付けた状態でサーボモータにより回転テーブルを回転後に停止させ、金型を他方の金型に対して型閉して金型同士の少なくとも一部が当接された状態における回転テーブルの位置を用いて回転テーブルの回転時の目標停止位置を決定する。
図6のフローチャート図に示されるような回転テーブル14の回転後の停止制御にストッパを使用しない方式は、上記したような機械学習装置38によるパラメータの調整が特に有効となる。
【0043】
図5のフローチャート図に記載される機械学習装置38によるパラメータの調整と、
図6のフローチャート図による目標停止位置P1,P2の決定の順序は、目標停止位置P1,P2の決定を先に行うことが望ましい。目標停止位置P1,P2が決定されてから、現在の停止位置から回転後の目標停止位置P1,P2への回転制御時のパラメータを調整していくことが望ましい。また目標停止位置P1,P2は、金型によって異なるとは言え、その差は微差であるので、90°回転、120°回転、180°回転といった回転角度により回転制御時のパラメータを先に定めておき、前記パラメータを用いて回転制御を行って、目標停止位置P1,P2を定める方式であってもよい。
【0044】
次に
図6のフローチャート図と
図7の作動内容の説明図を参照して、回転テーブルの目標停止位置へ停止される制御について具体的に説明する。新しい金型(下型13a,13bと上型23のセット)が射出成形機11の型締装置12に取り付けられると、近接センサ30によりカム部材31が検出されている位置を原点となるように、アブソリュート式のロータリエンコーダ15bの原点出しを行う(S1)。または例えば回転テーブル14に設けられた突起部が固定盤16に設けられたストッパ部に当接されるなどして、位置決め部材により回転テーブル14が位置決めされた位置が原点となるように、アブソリュート式のロータリエンコーダ15bの原点出しを行う。そして最初は手動により他の成形事項の確認とともに回転テーブル14の目標停止位置P1,P2の設定が行われる。なお回転テーブル14の目標停止位置P1,P2の設定は、それ専用に行ってもよく、自動による連続成形中に他の成形条件の修正とともに行ってもよい。
【0045】
次に下型13aが型開き中にはサーボロックされていた回転テーブル回転用のサーボモータ15のサーボロックを解除し、サーボモータ15の回転を開始する(S2)。それと同時に回転テーブル14が回転され、取出位置35にあってインサート物がインサートされるなどした下型13aが取出位置35から上型23と対向する成形位置36に移動される。また同時に成形品を保持した下型13bは成形位置36から取出位置35に移動される。回転テーブル14の目標停止位置P0への移動に際して制御装置29からサーボモータ15に送られる回転に関する指令値は、金型交換後の初回のみは、回転テーブル14を180°分に回転させるために必要なパルス指令値である。前記は下型13aの成形位置36への移動と、下型13bの成形位置36への移動の双方をもって初回とする。また2回目以降は、前回の型閉時の回転テーブル14の型閉により補正された位置が目標停止位置P1,P2となる。
【0046】
次にサーボモータ15が目標停止位置P1またはP2まで移動したことがロータリエンコーダ15bにより検出されたら(S3=Y)、サーボモータ15を停止してサーボロックを行う(S4)。この際にサーボモータ15は絶対値を用いて位置制御を行い、原点に対する制御量により位置決め停止を行う。また同時か前後して近接センサ30により回転テーブル14が型閉可能な位置に停止されているかを検出する(S5)。この際の近接センサ30でカム部材31が検出できる範囲は、型閉時に一方の金型のガイドピン24がガイド孔25に挿入でき、回転テーブル14が回転補正されながらも下型13aに対して上型23が型閉できる位置であればよい。即ち回転テーブル14および下型13aは、上型23に対して型締装置12の設計上の最適な成形位置36に停止していなくても型閉可能な位置に停止されていることが近接センサ30等で読み取れればよい。
【0047】
そして近接センサ30によりカム部材31が検出された場合(S5=Y)は、型開閉・型締用のサーボモータ37を作動させて可動盤20に取り付けられた可動金型である上型23を回転テーブル14に取り付けられた下型13aに向けて移動させる型閉を開始する(S7)。または所定時間経過しても近接センサ30が検出されない場合(S6=Y)は、異常があったと判断して型閉制御に移行せずに射出成形機11を停止する。型閉が行われる際、回転テーブル14を回転駆動させるサーボモータ15はサーボロック状態が継続されている。しかしながら金型に製造誤差がある場合や、下型13a等が回転テーブル14の金型取付部14a等に正確に取り付けられていない場合、型閉時の上型23のガイド孔25に対して下型13aのガイドピン24が挿入される際に型閉方向以外の力が回転テーブル14に加わる。
【0048】
本実施形態では、その際にサーボロックされているサーボモータ15が現位置を保持しようとしてトルクが上昇するのを検知して(S8)、トルクが上昇した場合(S8=Y)、回転テーブル14の回転位置を補正するためにサーボモータ15のサーボロックをゼロ速制御に切り替える(S9)。ゼロ速制御とは、サーボモータ15は速度を0として現位置に停止させる予備励磁状態であるものの、回転テーブル14が外力を受けた場合には現位置から別の位置に回転テーブル14は移動され、サーボモータ15は回転テーブル14を元の位置に戻すための動きをしない制御である。そのため外力を受けて回転テーブル14が移動されてもサーボモータ15の負荷は増大しない。また本発明では型閉時に回転テーブル14が外力を受けた際にサーボロック状態からサーボフリーの状態に変更してもよい。サーボフリーの状態とはサーボモータ15が無励磁の状態などであり、制御物である回転テーブル14がサーボモータ15の影響を受けずに全く自在に移動される状態を指す。
【0049】
またサーボモータ15がサーボロックされた状態からゼロ速制御やサーボフリーへの変更は、実際の回転テーブル14を回転させるサーボモータ15のロータリエンコーダ15bの値(絶対値)の変化を読み取ってもよい。更には可動金型である上型23が所定の型閉位置まで到達した際にサーボロック状態を解除するようにしてもよい。いずれにしてもサーボモータ15がサーボロック状態のまま可動金型である上型23が型閉完了位置まで型閉されることがないので、金型同士が型閉された際にガイドピン24のカジリやその他の不具合は発生しないか抑制される。
【0050】
そして次にサーボモータ15のトルク上昇の有無に係わらず、下型13aに対して可動金型である上型23が型閉完了位置に到達すると(S10=Y)、サーボモータ15の制御原点位置を基準とした回転テーブル14の位置(絶対値)がサーボモータ15のロータリエンコーダ15bにより検出される。本発明は、この型閉完了時の回転テーブル14の位置が、以後の回転テーブル14の回転制御に使用する目標停止位置P1であるとして、以前の目標停止位置P0を補正して制御装置29に記憶させる(S11)。
【0051】
なお目標停止位置P1の補正と決定は、金型同士の少なくとも一部が当接された状態における回転部である回転テーブル14の位置を検出して行えばよい。換言すれば、型閉時に回転部である回転テーブル14がサーボモータ15の制御によらないで移動された後の位置を検出して、回転部の回転時の目標停止位置P1,P2を決定する。具体的には型閉完了していなくてもガイドピン24とガイド孔25が当接されて回転テーブル14が移動した時点で目標停止位置P1の補正を行ってもよい。または金型の凸型部と凹型部が当接して回転テーブル14が移動した時点で目標停止位置P1の補正を行ってもよい。更に型閉時に回転テーブル14が移動されなければ型閉完了位置における回転テーブル14の位置が目標停止位置P1となる。更には型閉時に回転テーブル14が複数回移動される場合は、最初に移動した後の位置を目標停止位置P1とすることが好ましい。またこの目標停止位置P1(またはP2)の制御装置29における実際の補正は、回転テーブル14の移動時のみならず、次回に回転テーブル14が回転開始するまでに行えばよい。更には複数回の型閉して金型同士の少なくとも一部が当接された状態における回転部である回転テーブル14の位置を用いて回転部の回転時の目標停止位置P1,P2を決定するようにしてもよい。
【0052】
図6のフローチャート図に示されるように、型閉完了位置でサーボモータ15の目標停止位置P1が補正されるのと同時か前後して、サーボモータ15がゼロ速制御されている場合は、サーボフリー状態として型締工程を行う(S12)。また型締工程が終了するとサーボモータ15は再びロックされて、型開閉・型締用のサーボモータ37が作動されて可動盤20と上型23の型開を行う。そして上型23が型開完了位置まで到達されるとサーボロックが解除される。
【0053】
そして次に下型13aが成形位置36から取出位置35に向けて移動される。
図6のフローチャート図ではこれら一連の制御を(S12)として記載している。そして取出位置35に下型13aが停止されるとサーボモータ15はサーボロックされ、成形品の取り出しとインサート物のインサートが行われる。また下型13aが成形位置36から取出位置35に向けて移動と並行して、下型13bの取出位置35から成形位置36の目標停止位置P2への移動が行われる。なお本実施形態では回転テーブル14は連続回転されず、下型13aの成形位置36から取出位置35への移動は、取出位置35から成形位置36への移動時と逆回転(反転)される。換言すると下型13aが取出位置35から成形位置36へ移動される際と、下型13bが取出位置35から成形位置36へ移動される際では回転方向が異なっている。そして連続成形時には予定個数の成形が行われるまで成形サイクルが継続される(S13)。
【0054】
本発明では、下型13a,13b、上型23の実際の状態に応じて回転テーブル14の目標停止位置P1,P2は定められる。そのため下型13aが取出位置35から成形位置36に移動される際の目標停止位置P1(回転テーブル14の回転角度を含む)と、下型13bが取出位置35から成形位置36に移動される際の目標停止位置P2(回転テーブル14の回転角度を含む)は異なっていることの方が多い。
【0055】
従って成形位置36における下型13aまたは下型13bの目標停止位置P1,P2に応じて、取出位置35における下型13bまたは下型13aの停止位置も異なることになる。しかしながら成形品を保持する取出機やインサート物をインサートするインサート機はごく僅かな停止位置の差であれば制御を変更せずに対応できる。または高精度な成形であって下型13aと下型13bの取出時の停止位置が異なることにより影響を受ける場合は、下型13aと下型13bで取出機やインサート機が異なる制御で作動されるようにロボットをプログラムすればよい。
【0056】
また本実施形態では、位置決め部材を用いずに回転テーブル14の回転と型閉を行うので、位置決め部材を省略することができる。更には位置決め部材を挿入したり離脱する際に必要となる成形サイクル時間が短縮できる。更には位置決め部材を挿入したまま型閉する場合に、回転テーブル14の回転方向に強い力が発生すると位置決め部材が位置決め穴から抜けなくなる恐れがあるが、そういった問題は発生しない。
【0057】
上記は本実施形態を成形サイクルに追って説明したものであり、前回の金型同士が少なくとも当接した型閉位置に応じて次回の目標停止位置を毎回決めてもよいが、実際には次のようにして目標停止位置が決められることが多い。回転テーブル回転用のサーボモータ15の駆動力を回転テーブル14の回転に繋げるための伝達機構にはバックラッシが存在する。また種々の外乱もあって、サーボモータ15に原点から同じ指令パルスを与えたとしても、実際の回転テーブル14の停止位置は僅かながら誤差がある。またバックラッシ等による誤差は、回転テーブル14に取り付けられる下型13a、13bの重量によっても異なる。更には金型の型閉時の回転テーブル14の移動量が一定量以下の極小の場合、バックラッシの存在により回転テーブル14の移動がサーボモータ15の回転軸に伝達されたり伝達されなかったりすることも考えられる。
【0058】
そこで本発明では、複数回の成形サイクルの回転テーブル回転後の型閉時における型当接時の回転テーブル14の位置をロータリエンコーダ15bにより検出してそのデータを制御装置29に送信し記憶する。そして制御装置29において、前記データから回転テーブル14の目標停止位置P1,P2の中心値或いは最適値を演算により求める。より具体的には下型13aが取出位置35から成形位置36に移動され、上型23との型閉時に回転テーブル14が回転補正された後の位置(原点からの絶対位置)は、複数回の成形サイクルの回転補正された後の位置が検出される。そして前記検出値から中心値または最適値が演算され、以後の下型13aの目標停止位置P1として以後のサーボモータ15の制御に用いられる。また上記とは別に下型13bが取出位置35から成形位置36に移動され上型23との型閉時に回転テーブル14が回転補正された後の位置(原点からの絶対位置)もまた、下型13bの目標停止位置P2として以後のサーボモータ15の制御に用いられる。
【0059】
そして連続成形時には上記演算で求めた成形位置36における目標停止位置P1,P2に下型13a、13bをそれぞれ停止させる制御が行われる。なお連続成形時も上記したバックラッシの問題や金型の熱膨張やその他の外乱に対応して、複数の成形サイクルの間に少なくとも1回、下型13aと下型13bの成形位置36における目標停止位置P1,P2を検出し、検出値を基にして目標停止位置P1,P2の補正を行うようにしてもよい。
【0060】
また本発明は、回転部である回転テーブル14の回転時の目標停止位置P1,P2を決定するための指標として金型同士の少なくとも一部が当接された状態における回転部の位置を機械学習する機械学習装置38が射出成形機11の制御装置29、または射出成形機11以外の図示しない制御装置に設けられ前記射出成形機11の制御装置29と前記射出成形機11以外の制御装置は接続されているものでもよい。機械学習装置38はディープラーニングを行うものも含めたニューラルネットワークを備えており、検出値を良否判定することのできる教師あり学習を行う。ただし学習結果を基にした強化学習や教師なし学習を行うものであってもよい。
【0061】
制御装置29等に機械学習装置38を搭載したものでは、下型13a,13bが目標停止位置P1,P2に停止した後、どの程度回転テーブル14の移動があったかについて検証する。そして予め定めた移動量以下の場合は良判定とし、予め定めた移動量以上の場合は不良判定とする。そして連続成形中に不良判定が一定数を超えてきた場合は、目標停止位置の見直しを行う。またはサーボモータ15による回転テーブル14の最高回転速度、減速開始位置、減速度の見直しを行い、再度、目標停止位置P1,P2に停止後に回転テーブル14の移動量が予め定めた移動量以下であるかどうかの良否判定を行う。
【0062】
なお本発明は位置決め部材を設けるものを除外しないことは上記の通りであるが、位置決め部材がある場合、複数回の成形サイクルの中で少なくとも1回、位置決め部材を作動させ、原点位置の補正などを行ってもよい。そのことにより連続成形時にバックラッシ等により回転テーブル14の実際の位置とロータリエンコーダ15bの検出位置に乖離が発生する場合に前記乖離を解消または抑制することが出来る。位置決め部材を使用する場合は、型閉される前に位置決め部材により回転テーブル14を位置決め後、位置決め部材を離脱させる方法と、位置決め部材を挿入したまま型閉を行う方法が考えられる。
【0063】
また本発明は、回転テーブル14に2個~8個の金型が取り付けられ、常に同じ方向に回転テーブル14が回転されるものでもよい。図示はしないが一例として下型が4個であり、下型13a,13b、13c、13dの場合、下型13aがひとつ前のステージから成形位置における金型型閉後の位置(回転テーブル補正後の位置)まで移動された際の移動量、下型13bがひとつ前のステージから成形位置における金型型閉後の位置まで移動された際の移動量、下型13cがひとつ前のステージから成形位置における金型型閉後の位置まで移動された際の移動量、下型13dがひとつ前のステージから成形位置における金型型閉後の位置まで移動された際の移動量をロータリエンコーダ15bにより検出して制御装置29に保存し、同様に以後の回転テーブル14の回転制御に用いればよい。これら目標停止位置への移動量は下型13a、13b、13c、13dによってそれぞれ異なることが一般的である。
【0064】
そしてこのような一方方向に金型が順回転されるケースでは、原則として各金型の一つ前のステージから成形位置における金型型閉後の位置まで移動された際の移動量(パルス)の総和が回転テーブルを360°回転する分の移動量(パルス)となる。また一方方向に金型が順回転されるケースでは、目標停止位置から金型型閉後の位置(回転テーブル補正後の位置)までの回転テーブル14の回転角度に対応するパルス数が検出され、それを次回以降のサーボモータ15の指令値として用いることもできるので、ロータリエンコーダ15bはインクリメンタル式のものを使用することもできる。ただし順回転されるケースでも連続成形時にテーブル回転を繰り返すうちに、サーボモータ15のロータリエンコーダ15bで検出される位置と実際の回転テーブル14の位置に乖離が生じる場合もあるので、その場合は、再度、連続成形の途中で目標停止位置の補正を行うことが望ましい。
【0065】
次に
図8に示される別の実施形態の竪型の射出成形機81について説明する。射出成形機81の型締装置82は、下盤である固定盤83に対して各タイバ84が垂直方向に固定され、各タイバ84の上部は上盤である受圧盤85に固定されている。またタイバ84にガイドされて可動盤86が2基の型開閉機構98(
図8では省略して1基のみ図示)により昇降可能に設けられている。また受圧盤85には型締シリンダ等の型締機構97が設けられており、型締シリンダのラム88が可動盤86の背面に固定されている。
【0066】
本実施形態の射出成形機81は多色成形品用の射出成形機81であり、可動盤86の下面には回転部である回転テーブル87が可動盤86に対して回転可能に設けられている。回転テーブル87は、可動盤86の側面に固定されたテーブル回転用のサーボモータ89によりベルト99を介して回転される。そして回転テーブル87の下面には2個の可動金型90が取り付けられる。また固定盤83の上面には2個の固定金型91が取り付けられる。
【0067】
そしてサーボモータ89のエンコーダにより回転テーブル87の回転角度が検出可能となっている。また回転停止した際の回転テーブル87の停止状態を確認するための図示しない近接スイッチ等の装置が設けられている。回転テーブル87には位置決め機構の位置決め孔92が設けられている。一方可動盤86には前記位置決め孔92に対して位置決め部材の位置決めピン93を挿入するための油圧シリンダ94等のアクチュエータが設けられている。また型締装置82の側方には2基の射出装置95,96が配置されている。
【0068】
図8に示される射出成形機81の制御方法や機械学習方法については、
図1ないし
図7に記載される実施形態の射出成形機11と発明の基本的な技術思想のでは共通するが相違点を中心に説明する。
図8に示される射出成形機81では、位置決めピン93を位置決め孔92に挿入した状態で、サーボモータ89の原点設定などを行う。また連続成形中も複数回数に1回、位置決めピン93を挿入して原点補正を行うようにしてもよい。また射出成形機81では、両方の2個の固定金型91に対して2個の可動金型90が同時に型閉される。そのため金型自体の誤差や金型取付位置の誤差があった場合の回転テーブル87の挙動も複雑になる。従って次回以降の回転テーブル87の停止位置は、型閉完了時の位置ではなく、型閉時(型当接から型閉完了までの間)に回転テーブル87が最も大きく移動された後の位置としてもよい。
【0069】
次に
図9に示される更に別の実施形態の横型の射出成形機101について説明する。射出成形機101は、ベッド102の上面に型締装置103が配置されている。型締装置103は、第1の盤である固定盤104に取付けられた第1の金型である固定金型105と、第2の盤である可動盤106に取付けられた第2の金型である可動金型107の間には型開閉方向に直交する軸部材108を中心に回転される中間盤109が設けられている。そして中間盤109の両面には、それぞれ前記固定金型105と可動金型107の双方と型合せされる中間金型110,110が配設されている。
【0070】
固定盤104の四隅近傍には型締手段の型締シリンダ111が設けられ、型締シリンダ111のロッドがタイバ112を構成している。そして各タイバ112は、固定盤104に対して型開閉方向に移動可能な可動盤106と、固定盤104と可動盤106の間にあって型開閉方向に移動可能な中間部材113の双方に挿通されている。可動盤106については型開閉機構114により型開閉される。また中間部材113と中間盤109については、別の型開閉機構115により型開閉される。なお
図9において型開閉機構114、115は模式的に記載されており、取り付ける場所や個数は限定されない。
【0071】
そして中間部材113に対して回転自在に取り付けられた軸部材108に中間盤109が固定されている。上下の中間部材113の一方にはサーボモータ116が設けられ、サーボモータ116の駆動軸と、軸部材108はベルトやギア(減速機を含む)により接続されている。従ってサーボモータ116の駆動により回転部である中間盤109が回転される。
【0072】
また上下の中間部材113の少なくとも一方には位置決め機構117が設けられている。そして位置決め機構117は、アクチュエータ118によって進退する位置決め部材119を備えている。また中間盤109の上面か下面には、位置決め部材119が挿入される位置決め穴120が設けられている。そして前記位置決め穴120に位置決め部材119が挿入された際に、中間盤109および中間金型110は、固定盤104や可動盤106と正対するように位置決め(回転角度の調整)がなされる。なお位置決め機構117は必須のものではない。
【0073】
また射出成形機101は、可動盤106にはハーフナット121が取り付けられ、タイバ112には前記ハーフナット121が係合される溝が形成されている。そして固定盤104の外側(金型取付面と反対側)には第1の射出装置122が配置され、可動盤106の外側(金型取付面とは反対側には第2の射出装置123が配置されている。
【0074】
図9に示される射出成形機101の制御方法については、
図1ないし
図8に記載される実施形態の射出成形機11、81とほぼ共通するが相違点を中心に説明する。
図9に示される射出成形機101では、回転部である中間盤109がサーボモータ116により目標停止位置に向けて回転された後、目標停止位置に停止されるとサーボモータ116をロックする。そして型開閉機構114,115により固定金型105と中間金型110、中間金型110と可動金型107の型閉が行われる。この際、型閉工程の少なくとも型当接まではサーボモータ116のロックを継続する。
【0075】
そして金型同士が型当接してガイドピンとガイド孔との関係などから中間盤109の回転角度が変更された後の中間盤109の位置(角度)が次回以降の目標停止位置となるように補正する。
図9に示される射出成形機101の場合、どちらかの中間金型110と、固定金型105または可動金型107の間でガイドピンや金型部材が強く当接されて中間盤109がその影響で回転されたとしてもその後に完全に型閉されてしまうと、中間盤109と中間金型110は固定金型105と可動金型107の間で挟まれてしまい中間盤109は固定盤104と正対する位置まで戻されてしまうケースが多い。従って型閉時(金型当接開始から型閉完了までの間)に中間盤109が移動された位置を次回以降の中間盤の目標停止位置とすることが望ましい。
【0076】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや上記の各実施形態の一部部分を個別に組み合わせたものについても適用されることは言うまでもないことである。第1の実施形態の射出成形機11や第2の実施形態の射出成形機81は、水平方向に型開閉されるものでもよい。
【0077】
本発明の回転部に金型を取り付けた状態でサーボモータにより回転部を回転および停止させる際のパラメータを機械学習装置が検証し、パラメータを決定する、射出成形機の制御方法は、回転部である回転テーブル等を常に固定された角度だけ回転させるものでもよい。例えば90°、120°、180°など予め定められた角度だけ回転テーブルを回転させ、その後に金型の状態に応じて、回転テーブル等を移動させるものでもよい。
【0078】
また本発明の回転部に金型を取り付けた状態でサーボモータ15により回転部を回転および停止させる際のパラメータを機械学習装置38が検証してパラメータを決定する射出成形機の制御方法は、回転部である回転テーブルが回転されてからストッパ等により当接されて停止位置に停止されるものでもよい。この場合は、回転テーブルを停止位置に停止させるための精度を追求する必要やオーバーシュートの心配はないが、成形サイクル時間の短縮とサーボモータの負荷の問題やストッパに所定の速度以下で停止させるための制御の問題は存在しているから、最適な回転テーブル等を回転させるための成形条件や制御ゲインの値を機械学習装置によって生成することは相変わらず重要となる。
【0079】
また上記の実施形態は、回転部である回転テーブル14の回転制御と停止制御について機械学習装置38により最適解を求める方法は、回転部以外の移動制御と停止制御についても応用できる。具体的には可動盤の型開閉移動についても可動金型の金型重量の変更や、型開閉速度の変更により最適な成形条件やサーボモータの制御ゲインを変更することは望ましく、それらは本実施形態と同様の機械学習装置を用いた手法により決定可能である。
【符号の説明】
【0080】
11 射出成形機
12 型締装置
13a,13b 下型(金型)
14 回転テーブル(回転部)
15 サーボモータ
23 上型(金型)
29 制御装置
38 機械学習装置
47 判断部
48 条件修正部
49 良否決定部
50 設定入力装置
P1,P2 目標停止位置