(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103001
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】乗員拘束装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/42 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
B60N2/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003803
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩通
(72)【発明者】
【氏名】小杉 英記
(72)【発明者】
【氏名】中尾 拓馬
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CD04
(57)【要約】
【課題】シートクッションを速やかに上方へ持ち上げて乗員の前方移動を抑制する。
【解決手段】乗員拘束装置は、シートクッション6と、シートクッション6が載設されるシートフレーム4と、シートクッション6とシートフレーム4との間に配置されたエアバッグGと、エアバッグGにガスを供給するインフレータ3と、を備える。エアバッグGは、第1チャンバ1と、第1チャンバ1の下面側の前部に連結された第2チャンバ2と、を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションが載設されるシートフレームと、
前記シートクッションと前記シートフレームとの間に配置されたエアバッグと、
前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、
を備え、
前記エアバッグは、第1チャンバと、前記第1チャンバの下面側の前部に連結された第2チャンバと、を有する、乗員拘束装置。
【請求項2】
前記シートフレームは、シート前後方向に延在する一対のサイドフレーム、該一対のサイドフレームの前部同士を橋絡したフロントフレーム、及び該一対のサイドフレームの後部同士を橋絡したリヤフレームを有し、
前記インフレータは、前記第1チャンバの後部に配置され、前記リヤフレームに固定される、請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
前記第1チャンバは、上面側の第1パネル及び下面側の第2パネルを有し、
前記第1パネルの後端は、前記第2パネルの後端よりも後方に延出した後端延出部となっており、
前記第1パネルの前記後端延出部には第1ボルト挿通口が形成されており、
前記第2パネルの後端部には第2ボルト挿通口が形成されており、
前記インフレータの側面から立設されたスタッドボルトは、前記第2ボルト挿通口を挿通し、下面側に折り返された前記後端延出部の前記第1ボルト挿通口を挿通する、請求項2に記載の乗員拘束装置。
【請求項4】
前記第2チャンバの前後方向中央よりも後方に、前記第1チャンバ内と前記第2チャンバ内とを連通する連通口が設けられている、請求項1乃至3のいずれかに記載の乗員拘束装置。
【請求項5】
前記第1チャンバは、上面側の第1パネル及び下面側の第2パネルを有し、前記第1パネル及び前記第2パネルを結合する円形縫合部が設けられている、請求項1乃至4のいずれかに記載の乗員拘束装置。
【請求項6】
前記シートフレームは、シート前後方向に延在する一対のサイドフレーム、該一対のサイドフレームの前部同士を橋絡したフロントフレーム、及び該一対のサイドフレームの後部同士を橋絡したリヤフレームを有し、
前記インフレータは、前記第1チャンバの左右幅方向の端部に配置され、前記サイドフレームに固定される、請求項1に記載の乗員拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突時に乗員を拘束する各種のエアバッグ装置やシートベルト装置などが開発されている。車両の正面衝突等では、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員の腰部が、ラップベルトの下側をくぐり抜けようとするサブマリン現象が発生する可能性があった。そこで、シートクッションの下部に配置したエアバッグを膨張させてシートクッションの前部を高くする装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シートクッションを速やかに上方へ持ち上げて乗員の前方移動を抑制する乗員拘束装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の乗員拘束装置は、シートクッションと、前記シートクッションが載設されるシートフレームと、前記シートクッションと前記シートフレームとの間に配置されたエアバッグと、前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、を備え、前記エアバッグは、第1チャンバと、前記第1チャンバの下面側の前部に連結された第2チャンバと、を有するものである。
【0006】
本発明の一態様では、前記シートフレームは、シート前後方向に延在する一対のサイドフレーム、該一対のサイドフレームの前部同士を橋絡したフロントフレーム、及び該一対のサイドフレームの後部同士を橋絡したリヤフレームを有し、前記インフレータは、前記第1チャンバの後部に配置され、前記リヤフレームに固定される。
【0007】
本発明の一態様では、前記第1チャンバは、上面側の第1パネル及び下面側の第2パネルを有し、前記第1パネルの後端は、前記第2パネルの後端よりも後方に延出した後端延出部となっており、前記第1パネルの前記後端延出部には第1ボルト挿通口が形成されており、前記第2パネルの後端部には第2ボルト挿通口が形成されており、前記インフレータの側面から立設されたスタッドボルトは、前記第2ボルト挿通口を挿通し、下面側に折り返された前記後端延出部の前記第1ボルト挿通口を挿通する。
【0008】
本発明の一態様では、前記第2チャンバの前後方向中央よりも後方に、前記第1チャンバ内と前記第2チャンバ内とを連通する連通口が設けられている。
【0009】
本発明の一態様では、前記第1チャンバは、上面側の第1パネル及び下面側の第2パネルを有し、前記第1パネル及び前記第2パネルを結合する円形縫合部が設けられている。
【0010】
本発明の一態様では、前記シートフレームは、シート前後方向に延在する一対のサイドフレーム、該一対のサイドフレームの前部同士を橋絡したフロントフレーム、及び該一対のサイドフレームの後部同士を橋絡したリヤフレームを有し、前記インフレータは、前記第1チャンバの左右幅方向の端部に配置され、前記サイドフレームに固定される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シートクッションを速やかに上方へ持ち上げて乗員の前方移動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るエアバッグを上方向から見た平面図である。
【
図5】車両用シートのベースフレームの斜視図である。
【
図6】ベースフレームへのエアバッグの取付例を示す図である。
【
図9】別の実施形態に係るエアバッグを下方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0014】
本発明の実施形態に係るエアバッグGは、車両用シートS(
図5~8参照)のベースフレーム4とシートクッション6との間に設置されるものである。以下、シート前後方向は車両前後方向、シート上下方向は車両上下方向、シート幅方向は車幅方向に相当する。また、シート前後方向、シート上下方向、シート幅方向を単に前後、上下、左右と称する場合がある。
【0015】
図1はエアバッグGを上方向から見た平面図、
図2はエアバッグGを下方向から見た平面図、
図3は
図1のIII-III線断面図、
図4は
図2のIV-IV線断面図である。
【0016】
エアバッグGは、第1チャンバ1と、第1チャンバ1の前部かつ下部に連結された第2チャンバ2とを備える。
【0017】
第1チャンバ1は、前方ほど左右幅が大きくなる平面視略台形状であり、後部にインフレータ3の挿入口が設けられている。
【0018】
第1チャンバ1は、上側の外面を構成するパネル11Aと、下側の外面を構成するパネル11Bとを有する。パネル11A及びパネル11Bは、左右の側縁部及び前縁部を縫合糸13によって縫合されている。パネル11A及びパネル11Bの後縁部は縫合されず、インフレータ3を挿入するための開口部となっている。パネル11A及びパネル11Bは、別パネルでもよいし、一連一体であってもよい。
【0019】
第1チャンバ1の左右方向の中央部かつ前後方向の中央部には円形縫合部14が設けられており、パネル11A及びパネル11Bが結合されている。円形縫合部14を設けることで、第1チャンバ1の容量が抑えられる。円形縫合部14を省略した構成としてもよい。
【0020】
パネル11Aは、パネル11Bよりも後端部が後方に延出している。パネル11Aの後端延出部11A´と、パネル11Bの後端部には、それぞれ、インフレータ3の側面から立設されたスタッドボルト30が挿通されるボルト挿通口16、17が設けられている。
【0021】
図4に示すように、インフレータ3を第1チャンバ1の後部の開口から第1チャンバ1内に挿入し、スタッドボルド30をパネル11Bのボルト挿通口17(第2ボルト挿通口)に挿通させる。次に、パネル11Aの後端延出部11A´を下面側に折り返してスタッドボルド30をボルト挿通口16(第1ボルト挿通口)に挿通させる。
【0022】
第2チャンバ2は、左右両側が外方へ凸となるように湾曲した略々矩形状であり、左右方向の最大幅は、第1チャンバ1の左右方向の最大幅と同程度である。第2チャンバ2の前後方向の長さは、第1チャンバ1の円形縫合部14から前縁までの長さよりも大きく、第2チャンバ2の前縁部は第1チャンバ1の前縁部よりも前方に張り出している。例えば、第2チャンバ2の前後方向の長さは100mm程度であり、第1チャンバ1の円形縫合部14から前縁までの長さは80mm程度である。
図2に示す例では、第2チャンバ2は、円形縫合部14よりも前方側に位置している。
【0023】
第1チャンバ1の左右幅の最大値と、第2チャンバ2の左右幅の最大値とは同程度である。
【0024】
第2チャンバ2は、下側の外面を構成するパネル21Aと、上側の外面を構成するパネル21Bとを有する。パネル21A及びパネル21Bは、周縁部を縫合糸23によって縫合されている。パネル21A及びパネル21Bは、別パネルでもよいし、一連一体であってもよい。第2チャンバ2にベントホールが設けられていてもよい。
【0025】
第1チャンバ1の下側のパネル11Bには、円形縫合部14と前縁部との間に連通口12が設けられている。第2チャンバ2の上側のパネル21Bには、前後方向の中央部より後方に連通口22が設けられている。連通口12の径と連通口22の径は同程度である。連通口12、22の数は特に限定されないが、この例では、左右幅方向に間隔を空けてそれぞれ2個の連通口12、22が設けられている。
【0026】
第1チャンバ1の連通口12に、第2チャンバ2の連通口22を位置合わせした状態で、これらの連通口12及び22の周縁同士を縫合糸15により結合する。これにより、第1チャンバ1と第2チャンバ2とが連結され、第1チャンバ1内と第2チャンバ2内とが連通される。
【0027】
連通口12,22の径は、第1チャンバ1の円形縫合部14の左右のガス流路の径よりも小さい。これにより、第1チャンバ1を早期に展開することができる。
【0028】
図5はエアバッグGを取り付ける車両用シートSのベースフレーム4の斜視図である。ベースフレーム4上に、ウレタン等よりなるシートクッション6(
図7参照)が載設される。また、車両用シートSは、ベースフレーム4に対し、支軸9及びリクライニングデバイス(図示略)を介して回動可能に連結されたシートバック5と、シートバック5の上部に取り付けられたヘッドレスト(図示略)とを備える。
【0029】
ベースフレーム4は、シートの左右両側に位置し、前後方向に延在した1対のサイドフレーム41a、41bと、サイドフレーム41a、41bの前部同士を橋絡したフロントフレーム42と、サイドフレーム41a、41bの後部同士を橋絡したリヤフレーム43とを有している。フロントフレーム42とリヤフレーム43との間に、弾性体としてSバネ44が架設されている。
【0030】
Sバネ44は、左右に蛇行しながらフロントフレーム42からリヤフレーム43にかけて前後方向に延在する。フロントフレーム42とリヤフレーム43との間には、複数本のSバネ44が左右方向に多列に配設されている。
【0031】
フロントフレーム42の後部は、後ろ側ほど低位となる傾斜面42a(
図7参照)となっており、この傾斜面にSバネ44の一端が連結されている。
【0032】
図6に示すように、リヤフレーム43に取り付けたブラケット(図示略)等と、エアバッグGの後部から突出したインフレータ3のスタッドボルド30とを締結することにより、インフレータ3をリヤフレーム43に固定する。エアバッグGは、サイドフレーム41a、41b間のSバネ44上、及びフロントフレーム42の傾斜面42a上に、折り畳まず、第2チャンバ2が下側になるように設置される。
【0033】
エアバッグGの設置後、ベースフレーム4上にシートクッション6が載設される。エアバッグGは、ベースフレーム4とシートクッション6との間に広げた状態で設置される。
【0034】
図7は、通常時(エアバッグGの非膨張時)において、車両用シートSに乗員Pが着座している状態を示す。乗員Pは、シートベルト8を装着している。本実施形態では、インフレータ3がリヤフレーム43に取り付けられ、かつエアバッグGが折りたたまれず平らに広げた状態となっているため、車両用シートSに着座した乗員Pに対し異物感を与えにくく、快適性(座り心地)を良好なものとすることができる。
【0035】
センサによって車両の衝突が検知/予知された場合、インフレータ制御回路からインフレータ3に起動信号が入力され、インフレータ3から前方に向かってガスが噴出する。ガス噴出により、
図8に示すように、まず、エアバッグGの第1チャンバ1が膨張し、次いで、連通口12、22を通過したガスにより第2チャンバ2が膨張する。
【0036】
エアバッグGは、Sバネ44及びフロントフレーム42の傾斜面42aによって下側から支承されつつ上方へ向かって厚み(径)を増大させるように膨張する。これにより、シートクッション6を押し上げ、シートベルト8(ラップベルト)による乗員拘束力を高め、乗員の前方移動を抑制できる。
【0037】
シート後方から座面を広く覆う第1チャンバ1が早期に膨張するため、乗員Pの腰を保持できる。
【0038】
膨張した第2チャンバ2は、第1チャンバ1の前部を下側から支持する。膨張したエアバッグGは、シート後方からシート前方に向かってバッグの厚みが増していく形状となるため、シート前方ほどシートクッション6の押し上げ量が大きくなり、乗員の前方移動を効果的に抑制できる。
【0039】
第2チャンバ2は、第1チャンバ1から押圧されるものの、フロントフレーム42の傾斜面42aとの間で形状を保持することで、エアバッグGの前方の厚みが維持され、乗員の前方移動を抑制できる。
【0040】
上記実施形態では、インフレータ3を第1チャンバ1の後部(後縁部)に設け、チャンバ内から外方に突出させたスタッドボルト30を用いてインフレータ3をリヤフレーム43に固定する例について説明したが、インフレータ3をサイドフレーム41a(又は41b)に固定してもよい。
【0041】
この場合、
図9に示す第1チャンバ1´のように、左右幅方向端部の後部にインフレータ3の取付領域を設ける。
図9に示す例でも、パネル11Aを下面側に折り返して、スタッドボルト30を挿通させる。パネル11A及びパネル11Bの周縁を縫合する縫合糸13によってガス流路が形成され、インフレータ3からのガスが第1チャンバ1´の後部から前方に向かって流れるようになっている。
【0042】
上記実施形態では、ベースフレーム4が、弾性体として、フロントフレーム42とリヤフレーム43との間に架設されたSバネ44を有する構成について説明したが、Sバネ44に代えてパン(金属パネル)を用いる構成としてもよい。
【0043】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の構成とされてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 第1チャンバ
2 第2チャンバ
3 インフレータ
4 ベースフレーム
5 シートバック
6 シートクッション
30 スタッドボルト
43 リヤフレーム