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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103016
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】静電検出装置、及び電極
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/76 20140101AFI20230719BHJP
   E05B 81/78 20140101ALI20230719BHJP
   E05B 85/16 20140101ALI20230719BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20230719BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
E05B81/76
E05B81/78
E05B85/16 C
B60J5/04 H
B60R11/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003829
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 雄一
【テーマコード(参考)】
2E250
3D020
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB08
2E250CC11
2E250FF27
2E250FF36
2E250HH01
2E250JJ03
2E250JJ46
2E250KK03
2E250LL01
2E250PP12
2E250QQ02
2E250SS05
3D020BA13
3D020BB01
3D020BC06
(57)【要約】
【課題】アンテナの電波強度の向上と電極端部のタッチ検出感度の向上とを両立できる静電検出装置、及び電極を提供する。
【解決手段】静電検出装置24は、第1電極27によって検出される静電容量の変化に基づき、操作体15に対するタッチ操作を判定する。第1電極27は、第1形状部48及び第2形状部49を備えている。第1形状部48は、アンテナ36の電波の経路となる開口部50を有する。第2形状部49は、第1形状部48の両端のうち少なくとも一方の端部に設けられ、アンテナ36の端一帯を覆う形状に形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲に認証のための電波を送信するアンテナが収容された操作体の内部に、電極が前記アンテナに対向配置されて収容されるとともに、前記電極によって検出される静電容量の変化に基づき、前記操作体に対するタッチ操作を判定する静電検出装置であって、
前記電極は、
前記アンテナの電波の経路となる開口部を有する第1形状部と、
前記第1形状部の両端のうち少なくとも一方の端部に設けられ、前記アンテナの端一帯を覆う形状に形成された第2形状部と
を備えている静電検出装置。
【請求項2】
前記第2形状部は、前記第1形状部の両端に配置されている
請求項1に記載の静電検出装置。
【請求項3】
前記アンテナは、前記操作体を車載用とした場合、車体と対向する面である背面を有し、
前記電極は、前記アンテナの前記背面に配置されている
請求項1又は請求項2に記載の静電検出装置。
【請求項4】
前記アンテナを内部に収容するとともに、前記車体と対向する面である外面を有するケースを備え、
前記電極は、前記ケースの前記外面に配置されることにより、前記ケース及び前記車体の間に位置するとともに、前記ケースを介して前記アンテナと対向配置されている
請求項3に記載の静電検出装置。
【請求項5】
前記第1形状部及び前記第2形状部を有する前記電極としての第1電極と、
前記アンテナにおいて前記第1電極とは異なる位置に配置された第2電極と
を備えている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の静電検出装置。
【請求項6】
前記第1形状部は、前記アンテナの延設方向に沿って延びる直線状の幅細部を、前記延設方向の交差方向に複数並べた形状に形成され、
前記開口部は、隣同士の前記幅細部に囲まれた領域によって形成されている
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の静電検出装置。
【請求項7】
前記第1形状部は、隣同士の前記幅細部を連結する連結部を有し、
前記開口部は、前記幅細部及び前記連結部によって囲まれた領域である
請求項6に記載の静電検出装置。
【請求項8】
前記第2形状部は、前記第1形状部の幅よりも大きく形成された平板部である
請求項6又は請求項7に記載の静電検出装置。
【請求項9】
前記操作体は、ドアを開閉するときに操作するドアハンドルであり、
前記電極は、前記ドアハンドルの背面へのタッチ操作を検出する
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の静電検出装置。
【請求項10】
前記アンテナは、車載用とした場合、室外に電波を送信する室外通信エリアと室内に電波を送信する室内通信エリアとを形成し、
前記アンテナは、前記開口部を通る電波によって前記室内通信エリアを形成する
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の静電検出装置。
【請求項11】
周囲に認証のための電波を送信するアンテナが収容された操作体の内部に、前記アンテナに対向配置されて収容され、前記操作体に対するユーザのタッチ操作に応じて静電容量が変化する電極であって、
前記アンテナの電波の経路となる開口部を有する第1形状部と、
前記第1形状部の両端のうち少なくとも一方の端部に設けられ、前記アンテナの端一帯を覆う形状に形成された第2形状部と
を備えている電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電検出装置、及び電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの車両には、無線通信によるキーの照合が成立している場合に、車両ドアの車外ドアハンドルが指や手などでタッチ操作されると、車両ドアが施解錠されるスマートシステムが搭載されている(特許文献1参照)。この種のスマートシステムの場合、車外ドアハンドルにタッチ操作検出用の電極が設けられている。そして、ロック用の電極でタッチ操作が検出されると、車両ドアがロックされ、アンロック用の電極でタッチ操作が検出されると、車両ドアがアンロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-216091号公報
【特許文献2】特開2002-30844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のスマートシステムの場合、車外に存在するキーと通信するアンテナを車外ドアハンドルに設ける構造をとることがある。この構造の場合、アンテナの電波強度をよくするために、電極にスリットを設けて電波の経路を確保する(特許文献2参照)。しかし、スリットを有する電極の場合、電極の端部付近は、タッチ操作時の指による容量発生エリアと電極とが重なる領域が少なくなってしまう。よって、車外ドアハンドルの端部付近においてタッチ操作の検出感度が悪くなる課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する静電検出装置は、周囲に認証のための電波を送信するアンテナが収容された操作体の内部に、電極が前記アンテナに対向配置されて収容されるとともに、前記電極によって検出される静電容量の変化に基づき、前記操作体に対するタッチ操作を判定する構成であって、前記電極は、前記アンテナの電波の経路となる開口部を有する第1形状部と、前記第1形状部の両端のうち少なくとも一方の端部に設けられ、前記アンテナの端一帯を覆う形状に形成された第2形状部とを備えている。
【0006】
前記課題を解決する電極は、周囲に認証のための電波を送信するアンテナが収容された操作体の内部に、前記アンテナに対向配置されて収容され、前記操作体に対するユーザのタッチ操作に応じて静電容量が変化する構成であって、前記アンテナの電波の経路となる開口部を有する第1形状部と、前記第1形状部の両端のうち少なくとも一方の端部に設けられ、前記アンテナの端一帯を覆う形状に形成された第2形状部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、アンテナの電波強度の向上と電極端部のタッチ検出感度の向上とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態のキーシステム及び静電検出装置の構成図である。
図2】(a)は、ドアハンドルの斜視図であり、(b)は、ドアハンドルの操作図である。
図3】送信部が形成する電波の通信エリア図である。
図4】静電検出装置を含むユニット部品の概要説明図である。
図5】静電検出装置を含むユニット部品の分解斜視図である。
図6】第1電極及びアンテナの位置関係を示す説明図である。
図7】第1電極及びアンテナの位置関係を示す説明図である。
図8】従来の電極とアンテナとの位置関係を示す説明図である。
図9】別例の電極の正面図である。
図10】他の別例の電極の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態を説明する。
[キーシステム1の構成]
図1に示すように、ユーザの利用物2である車両3は、無線通信によってキー4を認証するキーシステム1を備えている。キーシステム1は、車両3からの通信を契機に狭域無線によりID照合(スマート照合)を実行して、車両3に搭載された機器5の作動を許可又は実行するスマートシステムを含む。スマートシステムの場合、キー4は、主にキー機能を有する電子キーである。スマートシステムは、利用物2からキー4への通信にLF(Low Frequency)帯の電波を用い、キー4から利用物2への通信にUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を用いる。車両3は、ユーザが個人で所有する個人車両、或いは、1台を複数人で共用するシェアリングカーのいずれでもよい。
【0010】
キーシステム1は、キーシステム1の作動を制御する制御ECU(Electronic Control Unit)8を備えている。制御ECU8は、キー4を認証する認証部9を有する。認証部9は、通信部10を介してキー4と無線通信を実行して、キー4を認証する。本例の場合、無線通信は、LF帯の電波を使用した通信、UHF帯の電波を使用した通信、近距離無線通信のいずれか、或いはこれらの組み合わせを含む。
【0011】
スマートシステムの場合、通信部10は、利用物2からの電波送信を実行する送信部11、及び、利用物2においての電波受信を実行する受信部12を含む。送信部11は、LF電波を送信する。受信部12は、UHF電波を受信する。また、スマートシステムの場合、送信部11は、利用物2である車両3において主として室外に電波送信を実行する第1送信部11aと、利用物2である車両3の室内に電波送信を実行する第2送信部11bとを含む。第1送信部11aは、運転席側及び助手席側の両方に設けられることが好ましい。
【0012】
本例の場合、第1送信部11aは、ユーザが利用物2を利用する際に操作する操作体15に設けられている。操作体15は、例えば、ドア16(車両ドア)に設けられたドアハンドル17であることが好ましい。ドアハンドル17は、乗車時及び降車時においてドア開閉のために操作する車外ドアハンドルである。第1送信部11aは、例えば、運転席ドア及び助手席ドアの各々に設けられることが好ましい。
【0013】
図2(a)、(b)に示すように、ドアハンドル17は、車体前方方向の端部寄りの位置に配置された軸部18(図2(b)参照)の軸回りに沿って回動する。よって、ドアハンドル17が把持されて、軸部18回りに沿って手前側に引くように回転操作されると、ドア16が開操作される。
【0014】
図1に示す通り、制御ECU8は、利用物2に設けられた通信線20を介して、利用物2の複数の機器5に接続されている。機器5は、例えば、ドア16の開閉を駆動するドアロック制御装置21、ステアリングロックの施解錠を制御するステアリングロック制御装置(図示略)、エンジンを制御するエンジン制御装置(図示略)などがある。ドアロック制御装置21は、例えば、利用物2のドア16に設けられている。
【0015】
認証部9は、利用物2の周囲にキー4が存在するか否かを確認するための送信電波を、通信部10から定期又は不定期に送信する。この送信電波は、スマートシステムの場合、LF帯のウェイク信号である。キー4は、この送信電波を受信すると、その応答を認証部9に返信する。キー4は、スマート通信の場合、応答をUHF帯の電波で送信する。認証部9は、キー4から応答を受信すると、キー4との間の通信が確立した状態になり、キー4の認証を実行する。
【0016】
図3に示すように、室外用の第1送信部11aは、室外に電波を送信する室外通信エリアEa1と車内に電波を送信する室内通信エリアEa2とを形成する。このように、本例の第1送信部11aは、室内外の両方に電波が至る。また、室内用の第2送信部11bは、室内にのみ通信エリア(室内通信エリアEb)を形成する。認証部9は、第1送信部11a及び第2送信部11bから送信された電波に対するキー4の応答の組み合わせにより、キー4の室内外位置を判定する。
【0017】
例えば、認証部9は、第1送信部11aから送信された電波にのみキー4から応答を受信した場合、キー4が室外に位置すると判定する。また、認証部9は、第1送信部11a及び第2送信部11bから送信された電波の両方でキー4から応答を受信した場合、或いは、第2送信部11bから送信された電波にのみキー4から応答を受信した場合、キー4が室内に位置すると判定する。
【0018】
認証部9は、キー4の認証が成立すると、機器5の作動を許可又は実行する。具体的には、室外に位置すると判定されたキー4と認証が成立した場合、ドア16の施解錠が許可又は実行される。また、室内に位置すると判定されたキー4と認証が成立した場合、車両電源の遷移操作、すなわちエンジンの始動が許可される。
【0019】
なお、ドア開閉作動は、キー4の認証成立と、規定のユーザ操作の実行とが条件とされる。規定のユーザ操作は、例えば、ドア16に設けられたドアハンドル17のタッチ操作である。よって、認証部9は、キー4の認証が成立した場合、ドア16の開作動を許可するのみとし、規定のユーザ操作が実行されるのを待つ。
【0020】
[ユニット部品23の概要]
利用物2は、キーシステム1の通信機能と、操作体15へのタッチ操作を検出するタッチ検出機能とを備えたユニット部品23を備えている。本例の場合、ユニット部品23は、前述の第1送信部11aと、操作体15の操作面へのタッチ操作を静電方式によって検出する静電検出装置24とを備えている。静電検出装置24は、静電容量方式、抵抗膜方式、光学式、又は超音波式のいずれでもよい。タッチ操作は、人体の接触又は接近のいずれでもよい。タッチ操作の操作面は、ロック操作時がドアハンドル17の正面であり、アンロック操作時がドアハンドル17の裏面である。
【0021】
[静電検出装置24の具体的構成]
静電検出装置24は、例えば、静電検出モジュール25、及び電極26を備えている。電極26は、第1電極27及び第2電極28を有する。本例の場合、第1電極27は、アンロック操作を検出するアンロック電極である。第2電極28は、ロック操作を検出するロック電極である。静電検出モジュール25は、例えば、静電検出装置24を制御するICである。第1電極27及び第2電極28の各々の静電容量は、静電検出モジュール25によって検出される。
【0022】
図2(a)に示す通り、第2電極28は、ドアハンドル17においてドア施錠の際に操作する箇所に配置されている。具体的には、第2電極28は、ドアハンドル17の正面へのタッチ操作を検出する。このように、ドア16のロック操作は、例えば、ドアハンドル17の正面の所定位置を指等でタッチする操作である。ロック操作は、第2電極28を瞬間的にタッチする操作に限定されず、第2電極28を一定時間タッチしたままとする長タッチ操作としてもよい。第2電極28は、ユーザのタッチ操作に応じた静電容量を静電検出モジュール25に出力する。
【0023】
図2(b)に示す通り、第1電極27は、ドアハンドル17においてドア解錠の際に操作する箇所に配置されている。具体的には、第1電極27は、ドアハンドル17の背面へのタッチ操作を検出する。このように、ドア16のアンロック操作は、例えば、ドアハンドル17の背面を指等でタッチする操作である。アンロック操作は、第1電極27を瞬間的にタッチする操作に限定されず、第1電極27を一定時間タッチしたままとする長タッチ操作としてもよい。第1電極27は、ユーザのタッチ操作に応じた静電容量を静電検出モジュール25に出力する。
【0024】
静電検出モジュール25は、第2電極28の静電容量変化に基づく静電容量データから、ロック操作の有無を判定する。一例として、第2電極28で検出された静電容量が閾値以上となったとき、ロック操作有りと判定される。静電検出モジュール25は、第1電極27の静電容量変化に基づく静電容量データから、アンロック操作の有無を判定する。一例として、第1電極27で検出された静電容量が閾値以上となったとき、アンロック操作有りと判定される。
【0025】
図1に示す通り、静電検出モジュール25は、タッチ操作の操作判定結果を、出力線29(2本の第1出力線29a、第2出力線29b)を介して制御ECU8に出力する。具体的には、静電検出モジュール25は、アンロック操作有りを検出した場合、第1出力線29aを介して、アンロック検出通知Daを制御ECU8に出力する。静電検出モジュール25は、ロック操作有りを検出した場合、第2出力線29bを介して、ロック検出通知Dbを制御ECU8に出力する。
【0026】
制御ECU8は、キーシステム1による認証結果と、静電検出モジュール25の操作判定の判定結果とに基づき、ドアロック制御装置21を制御する。本例の場合、制御ECU8は、認証成立下において、静電検出モジュール25から判定結果としてアンロック検出通知Daを入力すると、ドアロック制御装置21にアンロック動作を実行させる。制御ECU8は、認証成立下において、静電検出モジュール25から判定結果としてロック検出通知Dbを入力すると、ドアロック制御装置21にロック動作を実行させる。
【0027】
[ユニット部品23の具体的構成]
図4に示すように、操作体15は、内部にユニット部品23を収容している。具体的には、操作体15の内部に形成された収容室32に、ユニット部品23の部品群が収容されている。このように、操作体15の収容室32には、第1送信部11aの部品と静電検出装置24の部品とが収容されている。
【0028】
図5に示すように、ユニット部品23は、ケース34と、電極用基板35と、第1送信部11aのアンテナ36と、端子部38とを備えている。このように、操作体15の内部には、周囲に認証のための電波を送信するアンテナ36が収容されている。アンテナ36は、例えば、電波を3軸方向に送信する3軸アンテナであることが好ましい。アンテナ36は、操作体15を車載用とした場合、車体39(図2参照)と対向する面である背面36aを有する。アンテナ36の+端子及び-端子は、電極用基板35を介して端子部38に接続されている。端子部38は、図示しない配線を介して制御ECU8に接続されている。
【0029】
ケース34は、例えば、樹脂製である。ケース34は、一面を開口した形状に形成されることによって凹部41を有する。ケース34は、開口の底となる主壁42と、主壁42の4辺の端縁から各々延びる4つの側壁43とを有する。ケース34は、凹部41の内部に、電極用基板35、アンテナ36、及び端子部38の一部を収容している。
【0030】
端子部38は、グロメット38bを介してケース34のスリット部44に取り付け固定されている。端子部38は、コネクタ38cを介して電極用基板35に電気接続されている。端子部38の複数の接続端子38aは、ケース34の側壁43に形成されたスリット部44からケース34の外部に引き出される。電極用基板35は、アンテナ36に重ね合わせるように配置されている。
【0031】
なお、電極用基板35に形成された導電パターン(図示略)は、アンテナ36を電極用基板35に投影した部分を避ける、或いは、導電パターンが密にならないような配線形状に形成されることが好ましい。これは、例えば、電極用基板35において導電パターンが重なる、若しくは密に配線形成されていると、アンテナ36から出力される電波が基板上の導電パターンによって妨害されてしまうため、アンテナ性能の低下に繋がるからである。
【0032】
第1電極27(本例は、アンロック電極)は、ケース34の主壁42の外面45(具体的には、背面)に取り付け固定されている。このように、第1電極27は、アンテナ36と対向するようにケース34の外面45に配置されている。従って、第1電極27は、アンテナ36に対向配置されて操作体15に収容される。また、第1電極27は、アンテナ36の背面36aに配置される。本例の場合、第1電極27は、ケース34にインサート成型されることが好ましい。
【0033】
本例の場合、アンテナ36は、背面36aを含む複数の面(本例は、6面)のうち、例えば、ユーザがドア施解錠を行うときにユーザが位置する側の面を正面36bとする。このため、第1電極27は、アンテナ36の背面36aに配置される。また、第2電極28は、アンテナ36の正面36bに配置される。
【0034】
第2電極28(本例は、ロック電極)は、第1電極27とは異なる位置に配置されている。具体的には、第2電極28は、ケース34の凹部41に収容されている。第2電極28は、電極用基板35に並ぶように取り付け固定されている。本例の場合、ケース34の主壁42を挟み、主壁42の外部に第1電極27が配置され、主壁42の内部に第2電極28が配置されている。
【0035】
電極用基板35は、例えば、静電検出モジュール25のICが実装されている。第1電極27は、図示しないピン形状を有するとともに、このピン形状を介して電極用基板35に電気接続されている。また、第2電極28も、図示しないピン形状を有するとともに、このピン形状を介して電極用基板35に電気接続されている。凹部41は、電極用基板35、アンテナ36、及び端子部38の保護のために、樹脂ポッティングによって封止されることが好ましい。
【0036】
[第1電極27の形状]
図4及び図5に示す通り、第1電極27は、第1形状部48及び第2形状部49を有する。第1形状部48は、アンテナ36の電波の経路となる開口部50を有する。開口部50は、スリットであることが好ましい。第1形状部48は、アンテナ36の延設方向(図5等のY軸方向)に沿って直線状に延びる複数(本例は、3つ)の幅細部51を有する。複数の幅細部51は、延設方向の交差方向(図5等のZ軸方向)に並べられている。開口部50は、隣同士の幅細部51によって囲まれた領域であって、複数(本例は、2つ)設けられている。アンテナ36の背面36aに位置する第1電極27に開口部50を設けて電波経路を確保することにより、ドアハンドル17の周囲全体から電波が放射されるようにする。
【0037】
第2形状部49は、第1形状部48の両端のうち少なくとも一方(本例は、両端)の端部に設けられるとともに、アンテナ36の端一帯を覆う形状に形成されている。本例の場合、第2形状部49は、第1形状部48の両端に配置されることにより、計2つ設けられている。第2形状部49は、第1形状部48の幅細部51よりも大きく形成された平板部52である。平板部52は、例えば、四角形状であることが好ましい。
【0038】
図6に、第1電極27及びアンテナ36を重ね方向(図6のX軸方向)から見たときの、長手方向(図6のY軸方向)における第1電極27及びアンテナ36の位置関係を図示する。同図に示されるように、長手方向における位置関係は、アンテナ36の出力劣化を抑えることを考えるならば、第1形状部48及び第2形状部49の境界P1と、アンテナ36の先端P2とを一致させることが好ましい。なお、第1電極27に対してアンテナ36を同図の-Y軸方向に若干動かして、境界P1及び先端P2の間に少量の隙間が生じた位置関係としてもよい。
【0039】
図7に、第1電極27及びアンテナ36を高さ方向(図7のZ軸方向)から見たときの、重ね方向(図7のX軸方向)における第1電極27及びアンテナ36の位置関係を図示する。本例の場合、ケース34を挟んで第1電極27及びアンテナ36が配置されているので、両者の間には、少なくともケース34の主壁42の厚み分の間隔W1が生じる。この間隔W1は、ユニット部品23の小型化を考えるならば、なるべく小さく設定されることが好ましい。しかし、間隔W1を小さく設定し過ぎると、アンテナ36の出力劣化を招く。よって、間隔W1は、ユニット部品23の小型化とアンテナ36の十分な出力強度との両方を満足できる値に設定されることが好ましい。
【0040】
[作用]
次に、本実施形態の静電検出装置24(第1電極27)の作用について説明する。
図8に、第1電極27にスリット55のみを設けた場合の形状を図示する。ドアハンドル17の端部がタッチ操作された場合、このタッチ操作は、第1電極27の端部付近で検知される。ところで、第1電極27の端部付近は、第1電極27と容量発生エリアEとが重なる領域(ラップ領域)が狭い。このため、ドアハンドル17の端部がタッチ操作された場合は、タッチ操作を検出するのに必要な静電容量変化を得ることができない可能性があった。
【0041】
一方、本例の場合、図4などに示すように、第1電極27は、開口部50を有する第1形状部48の両端に、平板状の第2形状部49を設けた形状に形成されている。このため、ドアハンドル17の端部がタッチ操作された場合に、第1電極27と容量発生エリアEが重なる領域を、広くとることが可能となる。よって、ドアハンドル17の端部がタッチ操作された場合であっても、タッチ検出に必要な静電容量変化を得ることが可能となる。
【0042】
[実施形態の効果]
上記実施形態の静電検出装置24(第1電極27)によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0043】
(1)静電検出装置24は、周囲に認証のための電波を送信するアンテナ36が収容された操作体15の内部に、第1電極27がアンテナ36に対向配置されて収容される。静電検出装置24は、第1電極27によって検出される静電容量の変化に基づき、操作体15に対するタッチ操作を判定する。第1電極27は、第1形状部48及び第2形状部49を備えている。第1形状部48は、アンテナ36の電波の経路となる開口部50を有する。第2形状部49は、第1形状部48の両端のうち少なくとも一方の端部に設けられ、アンテナ36の端一帯を覆う形状に形成されている。
【0044】
本例の構成によれば、アンテナ36の近傍に第1電極27が配置される場合であっても、第1電極27に設けた第1形状部48の開口部50によって、アンテナ36の電波の経路が確保される。よって、アンテナ36の電波強度を向上できる。また、アンテナ36の端一帯を覆う第2形状部49を第1電極27に設けたので、タッチ操作時の容量発生エリアEと第1電極27とが重なる領域を広くとることが可能となる。よって、電極端部のタッチ検出感度を向上できる。以上により、アンテナ36の電波強度の向上と電極端部のタッチ検出感度の向上とを両立できる。
【0045】
(2)第2形状部49は、第1形状部48の両端に配置されている。この構成によれば、第1形状部48の両端に第2形状部49を設けたので、第1電極27の両端のタッチ検出感度を向上できる。
【0046】
(3)アンテナ36は、操作体15を車載用とした場合、車体39と対向する面である背面36aを有する。第1電極27は、アンテナ36の背面36aに配置されている。この構成によれば、アンテナ36の背面に第1電極27を配置したので、操作体15の背面がタッチ操作の操作面となる。そして、アンテナ36の背面の電波強度をよくするために第1電極27に開口部50を設けても、操作体15の背面における電極端部のタッチ検出感度をよくすることができる。
【0047】
(4)静電検出装置24は、アンテナ36を内部に収容するとともに、車体39と対向する面である外面45を有するケース34を備えている。第1電極27は、ケース34の外面45に配置されることにより、ケース34及び車体39の間に位置するとともに、ケース34を介してアンテナ36と対向配置されている。この構成によれば、第1電極27をケース34の外面45に取り付けることにより、第1電極27及びケース34を一体構造にできる。
【0048】
(5)静電検出装置24は、第1形状部48及び第2形状部49を有する第1電極27と、アンテナ36において第1電極27とは異なる位置に配置された第2電極28とを備えている。この構成によれば、例えば、第1電極27で所定のタッチ操作を検出し、このタッチ操作とは別のタッチ操作を、第2電極28で検出することができるようになる。このように、第1電極27及び第2電極28の各々で別々のタッチ操作を検出できる。
【0049】
(6)第1形状部48は、アンテナ36の延設方向に沿って延びる直線状の幅細部51を、延設方向の交差方向に複数並べた形状に形成されている。開口部50は、隣同士の幅細部51に囲まれた領域によって形成されている。この構成によれば、第1形状部48を簡易な形状にできる。また、第1電極27を簡単なプレス工程によって製造することができる。
【0050】
(7)第2形状部49は、第1形状部48の幅よりも大きく形成された平板部52である。この構成によれば、第2形状部49を簡易な形状にできるとともに、電極端部に広範囲に亘って第1電極27を配置させることができる。
【0051】
(8)操作体15は、ドア16を開閉するときに操作するドアハンドル17である。第1電極27は、ドアハンドル17の背面へのタッチ操作を検出する。この構成によれば、ドアハンドル17の背面のハンドル端におけるタッチ検出感度を向上することができる。
【0052】
(9)アンテナ36は、車載用とした場合、室外に電波を送信する室外通信エリアEa1と室内に電波を送信する室内通信エリアEa2とを形成する。アンテナ36は、開口部50を通る電波によって室内通信エリアEa2を形成する。この構成によれば、アンテナ36で室内側の通信エリアを形成する場合であっても、第1電極27に形成した開口部50を通る電波によって、電波強度の高い通信エリアを形成することができる。
【0053】
[変形例]
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
図9に示すように、幅細部51の本数は、3本に限定されず、2本としてもよい。このように、幅細部51の本数は、特に限定されず、2本や3本、或いは4本以上としてもよい。
【0055】
図10に示すように、第1形状部48は、隣同士の幅細部51を連結する連結部56を有した形状でもよい。この場合、開口部50は、幅細部51及び連結部56によって囲まれた領域である。本例の場合、第1形状部48は、梯子状であるともいえる。この構成によれば、幅細部51を連結部56によって補強することが可能となるので、第1形状部48を高い強度にできる。
【0056】
・キーシステム1は、キー4としてモバイル端末を用いるデジタルキーシステムでもよい。デジタルキーシステムは、例えば、モバイル端末に外部(例えば、サーバなど)からデジタルキーを登録することにより、モバイル端末をキー4として使用する。モバイル端末は、例えば、高機能携帯電話であることが好ましい。デジタルキーは、例えば、使用が1度のみ、或いは、一定期間のみ許可されたワンタイムキーであることが好ましい。
【0057】
デジタルキーシステムは、利用物2及びキー4の間の通信に近距離無線通信が使用される。近距離無線通信は、PAN(Personal Area Network:パーソナルエリアネットワーク)通信、又は、近接無線通信のいずれでもよい。パーソナルエリアネットワーク通信には、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)通信、UWB(Ultra Wide Band)通信、Wi-Fi(登録商標)通信などがある。また、ブルートゥース通信は、BLE(Bluetooth Low Energy)であることが好ましい。近接無線通信は、RFIDの一種として、例えば、NFC(Near Field Communication)などがある。
【0058】
・複数の開口部50の各々は、形状が異なっていてもよい。
・複数の幅細部51の各々は、互いに幅の大きさが異なっていてもよい。
・第1形状部48は、開口部50を有した形状であればよい。
【0059】
・第2形状部49は、四角形状に限らず、例えば、円形(真円、楕円)など、他の形状に変更してもよい。
・第2形状部49は、両側に設けられる場合、各々異なる形状としてもよい。
【0060】
・第1電極27は、ケース34にインサート成型されることに限らず、例えば、突起で引っ掛けるなどの他の固定方法によってケース34に取り付けられてもよい。
・第1形状部48及び第2形状部49を有する第1電極27は、アンテナ36の背面ではなく、例えば、アンテナ36の正面に配置されてもよい。
【0061】
・アンテナ36の送信する電波は、LF帯の電波に限らず、他の周波数の電波としてもよい。
・ユニット部品23は、ケース34が省略された構成でもよい。
【0062】
・ユニット部品23は、少なくとも第1電極27及びアンテナ36を有している構成であれば、それ以外の構成を適宜変更してもよい。
・電極26は、第1電極27及び第2電極28の2つ設けられることに限定されず、1つのみとしてもよい。
【0063】
・出力線29は、ロック及びアンロックの各々に設けた2本に限定されず、信号の出力パターンを変化させることにより、共通の1本の配線としてもよい。
・静電検出装置24は、車載用に限らず、他の機器や装置に使用してもよい。
【0064】
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0065】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)ユーザによってタッチ操作される操作体の内部に収納されるユニット部品であって、周囲に認証のための電波を送信するアンテナと、前記アンテナに対向配置されるとともに、前記操作体に対するタッチ操作に応じて静電容量が変化する電極と、前記アンテナを収容するとともに、前記電極が取り付けられたケースとを備え、前記電極は、前記アンテナの電波の経路となる開口部を有する第1形状部と、前記第1形状部の両端のうち少なくとも一方の端部に設けられ、前記アンテナの端一帯を覆う形状に形成された第2形状部とを備えている。
【符号の説明】
【0066】
15…操作体、16…ドア、17…ドアハンドル、23…ユニット部品、24…静電検出装置、26…電極、27…第1電極、28…第2電極、34…ケース、36…アンテナ、36a…背面、39…車体、45…外面、48…第1形状部、49…第2形状部、50…開口部、51…幅細部、52…平板部、56…連結部、Ea1…室外通信エリア、Ea2…室内通信エリア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10