(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103028
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】車載カメラ装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/55 20230101AFI20230719BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230719BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20230719BHJP
G02B 13/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H04N5/225 400
G03B15/00 V
G02B7/02 C
G02B7/02 Z
G02B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003850
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲雄
【テーマコード(参考)】
2H044
2H087
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AC03
2H044AJ06
2H087KA01
2H087LA01
2H087RA21
2H087RA44
5C122DA14
5C122EA37
5C122FB02
5C122FB03
5C122FB24
5C122FC01
5C122FC02
(57)【要約】
【課題】近景から遠景までの広い範囲を撮像対象としてピントを合わせることができる車載カメラ装置を提供すること。
【解決手段】車載カメラ装置1は、所定の焦点距離を有する撮像レンズ2と、撮像レンズ2に重ねて配置されて複数の部分領域のそれぞれに異なる焦点距離が設定された遠近レンズ4と、撮像レンズ2および遠近レンズ4を通して入射される光を検出するセンサ面3Aを有し、センサ面3Aが撮像レンズ2の光軸と垂直な面に対して傾斜している画像センサ3とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の焦点距離を有する撮像レンズと、
前記撮像レンズに重ねて配置されて複数の部分領域のそれぞれに異なる焦点距離が設定された遠近レンズと、
前記撮像レンズおよび前記遠近レンズを通して入射される光を検出するセンサ面を有し、前記センサ面が前記撮像レンズの光軸と垂直な面に対して傾斜している画像センサと、
を備えることを特徴とする車載カメラ装置。
【請求項2】
前記撮像レンズに前記遠近レンズを重ねることにより、全体の焦点距離が、遠景に対して長く、近景に対して短く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車載カメラ装置。
【請求項3】
前記遠近レンズは、前記複数の部分領域のそれぞれで屈折率が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の車載カメラ装置。
【請求項4】
前記遠近レンズは、遠景から前記撮像レンズを通して光が入射される前記部分領域の焦点距離が長く、近景から前記撮像レンズを通して光が入射される前記部分領域の焦点距離が短く設定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の車載カメラ装置。
【請求項5】
前記センサ面は、遠景から前記撮像レンズを通して光が入射される領域と前記撮像レンズの間の距離が長く、近景から前記撮像レンズを通して光が入射される領域と前記撮像レンズとの間の距離が短く設定されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の車載カメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて周辺を撮像する車載カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子ミラーやドライブレコーダなど、車両の後方あるいは前方を撮像するカメラは単焦点であり、2mや4mなど、用途に合わせた焦点距離でレンズとセンサーの距離を一定にする調整を行い、なるべく均一なピント合わせを行うようにしている。
【0003】
しかし、従来の調整では、実際の車両に取り付けた場合、手前の被写体に焦点を合わせると遠くの被写体の画像がにじんでしまい、反対に遠くの被写体に焦点を合わせると手前の被写体の画像がにじんでしまう、いわゆるピンボケが生じる。
【0004】
車両に搭載される電子ミラーやドライブレコーダのカメラとしては、遠くも近くも鮮明な画像を表示できることが望まれる。
【0005】
近距離から遠距離までピントが合わせられるようにした従来技術としては、レンズとイメージセンサの傾きと相対位置を設定した車載カメラ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1に開示された車載カメラ装置では、撮像対象の路面のピントが近くから遠くまで全面で合わせられるように撮像レンズの傾きと撮像素子の傾きを設定しているが、電子ミラーやドライブレコーダのカメラのようにごく近い路面から遠景までの広い範囲を撮像対象とする場合にはすべての範囲でピントを合わせることはできないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、近景から遠景までの広い範囲を撮像対象としてピントを合わせることができる車載カメラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の車載カメラ装置は、所定の焦点距離を有する撮像レンズと、撮像レンズに重ねて配置されて複数の部分領域のそれぞれに異なる焦点距離が設定された遠近レンズと、撮像レンズおよび遠近レンズを通して入射される光を検出するセンサ面を有し、センサ面が撮像レンズの光軸と垂直な面に対して傾斜している画像センサとを備えている。
【0010】
遠近レンズを用いるとともに画像センサのセンサ面を傾斜させることにより、レンズ全体の焦点距離を撮像する角度で変化させることができ、近景から遠景までの広い範囲を撮像対象としてピントを合わせることが可能となる。
【0011】
また、上述した撮像レンズに遠近レンズを重ねることにより、全体の焦点距離が、遠景に対して長く、近景に対して短く設定されていることが望ましい。このような設定とすることにより、遠景と近景の両方について鮮明な画像を得ることができる。
【0012】
また、上述した遠近レンズは、複数の部分領域のそれぞれで屈折率が異なることが望ましい。また、上述した遠近レンズは、遠景から撮像レンズを通して光が入射される部分領域の焦点距離が長く、近景から撮像レンズを通して光が入射される部分領域の焦点距離が短く設定されていることが望ましい。このような遠近レンズを用いることにより、レンズ全体の焦点距離を撮像範囲毎に設定することが可能となる。
【0013】
また、上述したセンサ面は、遠景から撮像レンズを通して光が入射される領域と撮像レンズの間の距離が長く、近景から撮像レンズを通して光が入射される領域と撮像レンズとの間の距離が短く設定されていることが望ましい。このようにセンサ面を傾斜させることにより、遠近レンズを用いただけでは調整できなかった高い解像度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態の車載カメラ装置の搭載状態を示す図である。
【
図2】車載カメラ装置の撮像範囲と表示範囲との対応関係を示す図である。
【
図3】本実施形態の車載カメラ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態の車載カメラ装置について、図面を参照しながら説明する。本実施系の車載カメラ装置は、例えば、車両後方を撮像して得られた画像を車室内の表示装置に表示することによって電子ミラーを実現するためのものである。
【0016】
図1は、一実施形態の車載カメラ装置の搭載状態を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の車載カメラ装置1は、車両後方の上部に設置されており、車両後方端部から2m離れた路面から後方の遠景までを撮像範囲としている。
図1に含まれるA、B、Cは、この撮像範囲を近い側から順に区分けしたものである。Aが車両から2~5mの比較的近い範囲を、Bが車両から5~10mの少し遠い範囲を、Cが車両から10m以上の遠い範囲をそれぞれ示している。
【0017】
図2は、車載カメラ装置1の撮像範囲と表示範囲との対応関係を示す図である。
図2に示す表示装置10は、従来のルームミラーの鏡面を液晶装置等に置き換えたものであり、車載カメラ装置1で撮像した車両後方の被写体を描画した画像を表示することができる。
図2に含まれるa、b、cは、車載カメラ装置1の撮像範囲A、B、Cに対応する表示領域を示している。単焦点レンズを用いていた従来の車載カメラ装置では、距離が大きく異なる3つの撮像範囲A、B、Cの全てにピント(焦点)を合わせることができなかったため、表示領域a、b、cの全てにピントが合った鮮明な画像を表示することはできなかった。本実施形態の車載カメラ装置1ではこの点が改善されている。
【0018】
図3は、本実施形態の車載カメラ装置1の構成を示す図である。
図3には、主にレンズとイメージセンサとの関係に着目した配置が示されている。
図3に示すように、本実施形態の車載レンズ装置1は、撮像レンズ2、イメージセンサ3、遠近レンズ4を備えている。
【0019】
撮像レンズ2は、複数のレンズが組み合わされており、全体として所定の焦点距離を有する単焦点レンズとなっている。
図3では、撮像レンズ2の主点がpで示されている。
【0020】
イメージセンサ(画像センサ)3は、撮像レンズ2を通して入射する光(映像)を検出するものであり、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を用いることができる。
【0021】
遠近レンズ4は、撮像レンズ2に重ねて配置され、複数の部分領域のそれぞれに異なる焦点距離(異なる屈折率)が設定されている。例えば、撮像レンズ2の主点pとイメージセンサ3のセンサ面3Aの間に遠近レンズ4が配置されている。
【0022】
撮像レンズ2に遠近レンズ4を重ねた全体の焦点距離が、遠景に対して長く、近景に対して短くなっている。具体的には、
図2に示す撮像範囲A、B、Cの順に焦点距離が長くなる。
【0023】
本実施形態では、このように撮像範囲A、B、C(
図1)のそれぞれを異なる焦点距離とするために、遠近レンズ4を上下方向に沿って上部、中央部、下部に3分割したときに、下部の焦点距離を撮像範囲Cに対応させて長く、上部の焦点距離を撮像範囲Aに対応させて短く、中央部の焦点距離を撮像範囲Bに対応させてそれらの中間の値に設定している。
【0024】
ところで、車載カメラ装置1から上述した3つの撮像範囲A、B、Cのそれぞれまでの距離は大きく異なるため、遠近レンズ4の各部の焦点距離(屈折率)を調整しただけでは、各部に対応した焦点位置をイメージセンサ3のセンサ面3A上に合わせることは容易ではない。そこで、本実施形態では、センサ面3Aを撮像レンズ2の光軸と垂直な面2Aに対して傾斜させて各焦点位置に近づける工夫がなされている。具体的には、撮像レンズ2とこれに対向するセンサ面3Aとの距離が、センサ面3Aの下部ほど長く、上部ほど短くなるように、センサ面3Aの角度が設定されている。
【0025】
実際には、
図3に示すように、
図1に示す撮像範囲A、B、Cのそれぞれを想定した3箇所の位置La、Lb、Lcに、MTF(Modulation Transfer Function)調整用に、例えばISO12233に準拠した分解能テストチャートを置いて、イメージセンサ3の角度を設定する。具体的には、この分解能テストチャートを上下方向に上部チャートH1、中央部チャートH2、下部チャートH3に3分割したときに、撮像範囲Cを想定した位置Lcに上部チャートH1を、撮像範囲Bを想定した位置Lbに中央部チャートH2を、撮像範囲Aを想定した位置Laに下部チャートH3を配置して、それぞれを撮像した際の解像度が高くなるように、イメージセンサ3の角度を調整する。なお、撮像レンズ2と遠近レンズ4の傾きも解像度に影響を与えるため、イメージセンサ3の角度とともにこれらのレンズの傾斜も調整して解像度の向上を図るようにしてもよい。
【0026】
このように、本実施形態の車載カメラ装置1では、遠近レンズ4を用いるとともにイメージセンサ3のセンサ面3Aを傾斜させることにより、レンズ全体の焦点距離を撮像する角度で変化させることができ、近景から遠景までの広い範囲を撮像対象としてピントを合わせることが可能となる。
【0027】
また、撮像レンズ2に遠近レンズ4を重ねることにより、レンズ全体の焦点距離が、遠景に対して長く、近景に対して短く設定されているため、遠景と近景の両方について鮮明な画像を得ることができる。
【0028】
また、遠近レンズ4は、複数の部分領域のそれぞれで屈折率を異ならせ、遠景から撮像レンズ2を通して光が入射される部分領域の焦点距離を長く、近景から撮像レンズ2を通して光が入射される部分領域の焦点距離を短く設定しているため、レンズ全体の焦点距離を撮像範囲毎に設定することが可能となる。
【0029】
また、イメージセンサ3のセンサ面3Aを、遠景から撮像レンズ2を通して光が入射される領域と撮像レンズ2の間の距離が長く、近景から撮像レンズ2を通して光が入射される領域と撮像レンズ2との間の距離が短くなるように傾斜させることにより、遠近レンズ4を用いただけでは調整できなかった高い解像度を得ることが可能となる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、ルームミラーとして使用する電子ミラーについて本発明を適用する場合について説明したが、左右のドアミラーとして使用する電子ミラーや車両前方の路面を含む領域を撮像する車載カメラ装置について本発明を適用してもよい。具体的には、例えば右側のドアミラーの場合には、車両後方の撮像範囲の中で左上が最も遠景を撮像する範囲(長い焦点距離が必要)であり、右下や下部が最も近景を撮像する範囲(短い焦点距離が必要)となるため、撮像範囲内でこれらの焦点距離を実現できるように遠近レンズの各部の屈折率(焦点距離)やイメージセンサ3のセンサ面3Aの傾斜を設定すればよい。
【符号の説明】
【0031】
1 車載カメラ装置
2 撮像レンズ
3 イメージセンサ
3A センサ面
4 遠近レンズ