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2023-103048医用データ処理装置、医用データ処理方法及び医用データ処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103048
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】医用データ処理装置、医用データ処理方法及び医用データ処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230719BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230719BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230719BHJP
【FI】
A61B6/03 360T
A61B5/055 380
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003884
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】伴苗 修平
(72)【発明者】
【氏名】二見 光
(72)【発明者】
【氏名】大迫 久晃
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昂彦
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA32
4C093FD03
4C093FF27
4C093FH01
4C093FH03
4C093FH07
4C096AB42
4C096AD14
4C096AD16
4C096DC27
4C096DC40
4C096DE01
4C096DE03
4C096DE07
5L096AA06
5L096BA06
5L096BA13
5L096CA21
5L096DA01
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】医用画像に基づく診断または解析に係る精度を維持しつつ、データサイズを低減させること。
【解決手段】本実施形態に係る医用データ処理装置は、医用データ処理装置は、決定部と、設定部とを含む。決定部は、医用画像に対して処理を実行する際の1以上の注目領域と前記注目領域の重要度とを決定する。設定部は、前記重要度に応じて前記注目領域ごとに圧縮率を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像に対して処理を実行する際の1以上の注目領域と前記注目領域の重要度とを決定する決定部と、
前記重要度に応じて前記注目領域ごとに圧縮率を算出する設定部と、
を具備する医用データ処理装置。
【請求項2】
前記圧縮率は、1つの医用画像に対し多段階で設定される、請求項1に記載の医用データ処理装置。
【請求項3】
前記決定部は、画像情報および患者情報の少なくとも一方に基づいて、前記注目領域および前記重要度を決定する、請求項1または請求項2に記載の医用データ処理装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記医用画像を解析するアプリケーションに応じて、前記注目領域および前記重要度を決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医用データ処理装置。
【請求項5】
前記設定部は、最も重要度が高い注目領域を可逆圧縮の圧縮率に設定し、他の注目領域を非可逆圧縮の圧縮率に設定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医用データ処理装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記重要度が高い注目領域ほど低い圧縮率となるように、各注目領域の圧縮率を設定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の医用データ処理装置。
【請求項7】
前記1以上の注目領域を対応する圧縮率に応じて圧縮することで、前記医用画像の圧縮データを生成する画像圧縮部をさらに具備する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の医用データ処理装置。
【請求項8】
前記決定部は、学習用画像および画像解析の種類を入力データとし、前記画像解析で重要となる前記学習用画像上の注目領域および対応する重要度を正解データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記医用画像を前記学習済みモデルに入力し、前記医用画像に関する注目領域および当該注目領域の重要度を生成する、請求項1に記載の医用データ処理装置。
【請求項9】
前記決定部は、前記学習済みモデルにおける特徴抽出に関するヒートマップに基づき前記注目領域の重要度を決定する、請求項8に記載の医用データ処理装置。
【請求項10】
医用画像に対して処理を実行する際の1以上の注目領域と前記注目領域の重要度とを決定し、
前記重要度に応じて前記注目領域ごとの圧縮率を算出する、
医用データ処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
医用画像に対して処理を実行する際の1以上の注目領域と前記注目領域の重要度とを決定する決定機能と、
前記重要度に応じて前記注目領域ごとの圧縮率を算出する設定機能と、
を実現させるための医用データ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用データ処理装置、医用データ処理方法及び医用データ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断装置で撮像された医用画像の高画質化、および病理画像のデジタル化などに伴い、PACS(Picture Archiving and Communication System)サーバなどの画像管理サーバで取り扱うDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)画像のデータサイズが大きくなっている。そのため、画像管理サーバのストレージ容量が圧迫されるほか、ファイル転送に時間を要したり、通信ネットワークに負荷がかかるという問題がある。
よって、画像管理サーバに記憶される医用画像のうち、キー画像以外を非可逆圧縮する、または一定期間経過した医用画像を非可逆圧縮するといった手法もある。しかし、医療従事者などユーザが医用画像を見て診断上重要であると判断できない画像であっても、画像解析アプリケーションでは重要な情報が含まれていることもあるため、キー画像以外を全て非可逆圧縮することはリスクが伴う。
また、X線CT(Computed Tomography)装置またはMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などで撮像された医用画像は、フォローアップ目的で長期間保存する可能性もある。よって、一律に医用画像を非可逆圧縮すると、フォローアップ診断で必要な部分も圧縮されることになるため、望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-287927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、医用画像に基づく診断または解析に係る精度を維持しつつ、データサイズを低減できることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る医用データ処理装置は、決定部と、設定部とを含む。決定部は、医用画像に対して処理を実行する際の1以上の注目領域と前記注目領域の重要度とを決定する。設定部は、前記重要度に応じて前記注目領域ごとに圧縮率を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る医用データ処理装置を含む医用データ処理システムを示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係る医用データ処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図3図3は、注目領域の圧縮率の具体的な設定例を示す図である。
図4図4は、圧縮データを伸長処理した復元画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用データ処理装置、医用データ処理方法及び医用データ処理プログラムについて説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0008】
本実施形態に係る医用データ処理システムについて図1を参照して説明する。
本実施形態に係る医用データ処理システムは、医用データ処理装置1と、医用画像診断装置2と、医用情報管理サーバ3と、医用画像管理サーバ4とを含み、それぞれがネットワークNWを介して通信可能に接続される。なお、本実施形態に係る医用データ処理装置1は、図1のように独立した構成であってもよいし、医用画像診断装置2、医用情報管理サーバ3および医用画像管理サーバ4のうちのいずれか1つに含まれてもよい。
【0009】
医用データ処理装置1は、処理回路10と、メモリ11と、入力インタフェース12と、通信インタフェース13とを含む。処理回路10と、メモリ11と、入力インタフェース12と、通信インタフェース13とは、例えば、バスを介して互いに通信可能に接続される。
【0010】
処理回路10は、医用データ処理装置1の中枢として機能するプロセッサである。処理回路10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)といったプロセッサである。処理回路10は、取得機能101と、決定機能102と、設定機能103と、圧縮機能104と、通信機能105とを含む。
【0011】
取得機能101は、医用画像診断装置2から、被検体を撮像することにより生成された医用画像を取得する。
決定機能102は、医用画像に対して処理を実行する際の1以上の注目領域と、注目領域ごとの重要度を決定する。重要度は、医用画像に対する処理が実行される際に、当該処理においてどの程度重要な領域であるかを示す度合いである。「処理」とは、ここでは、解析アプリケーションなどの解析ソフトウェアを用いた医用画像の解析処理、医師などの医療従事者による医用画像に基づく診断処理を含む。
【0012】
設定機能103は、重要度に応じて注目領域ごとに圧縮率を算出する。
圧縮機能104は、1以上の注目領域を、対応する圧縮率に応じて圧縮することで、医用画像の圧縮データを生成する。
通信機能105は、圧縮データを、例えば医用画像管理サーバ4に送信する。
【0013】
なお、処理回路10は、圧縮機能104を含まなくともよい。処理回路10が圧縮機能104を含まない場合は、医用画像と、当該医用画像の注目領域ごとの圧縮率に関する情報とを医用画像管理サーバ4に送信すればよい。医用画像管理サーバ4は、医用データ処理装置1から医用画像と、当該医用画像の注目領域ごとの圧縮率に関する情報とを受信し、各注目領域対応する圧縮率に従って圧縮して圧縮データを生成し、記憶すればよい。
【0014】
メモリ11は、種々の情報を記憶するROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、及び集積回路記憶装置などの記憶装置である。また、メモリ11は、CD-ROMドライブ、DVD/Blu-ray(登録商標)ドライブ、及びフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置などであってもよい。なお、メモリ11は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要はない。例えば、メモリ11は、複数の記憶装置により実現されても構わない。また、メモリ11は、医用データ処理装置1にネットワークを介して接続された他のコンピュータ内にあってもよい。メモリ11は、医用画像、学習済みモデルなどを記憶する。
【0015】
入力インタフェース12は、ユーザから各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路10へ出力する。本実施形態に係る入力インタフェース12は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド、および操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパネルなどの入力機器に接続されている。なお、入力インタフェース12に接続される入力機器は、ネットワーク等を介して接続された他のコンピュータに設けられた入力機器でもよい。また、入力インタフェース12は、上述したマウスなどの入力デバイスそのものを示す場合も含む。
【0016】
通信インタフェース13は、医用画像診断装置2、医用情報管理サーバ3、医用画像管理サーバ4、および図示しないが、病院情報システム、放射線部門情報システムなどとの間でデータ通信を行う。通信インタフェース13は、予め設定されている既知の規格に準拠してデータ通信を行う。例えば、医用データ処理装置1と病院情報システムおよび放射線部門情報システムとの間では、HL7(Health Level 7)に準拠した通信が実施される。また、医用データ処理装置1と医用情報管理サーバ3および医用画像管理サーバ4との間では、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)に準拠した通信が実施される。
【0017】
医用画像診断装置2は、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、X線CT(Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET/CT装置、PET/MRI装置、SPECT/CT装置、PET/MRI装置、超音波診断装置といった機器である。医用画像診断装置2は、被検体を撮像することにより医用画像を生成する。なお、医用画像診断装置2は、被検体の医用画像を撮像可能であれば、どのような医用画像診断装置でもよい。
【0018】
医用情報管理サーバ3は、例えば電子カルテシステムを含み、患者情報を記憶し管理する。患者情報は、例えば、患者ID、患者氏名、性別、および年齢などの患者を識別する情報と、既往歴、所見情報、病名情報、治療内容、クリニカルパスといった患者の診療に関する情報とを含む。
【0019】
医用画像管理サーバ4は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication System)であり、医用画像データを記憶し、記憶された医用画像データを管理する。医用画像管理サーバ4は、例えば、DICOM規格に則って変換された医用画像データを記憶し管理する。
【0020】
ネットワークNWは、例えば病院内ネットワークである。なお、ネットワークNWは、有線接続および無線接続を問わない。また、セキュリティが確保されるのであれば、接続される回線は病院内ネットワークに限定されない。例えば、VPN(Virtual Private Network)などを介し、インターネットなど、公衆の通信回線に接続するようにしても構わない。
【0021】
次に、本実施形態に係る医用データ処理装置1の動作例について図2のフローチャートを参照して説明する。
ステップS201では、取得機能101により、医用画像診断装置2から患者の医用画像を取得する。また、医用情報管理サーバ3から当該患者の患者情報をそれぞれ取得する。
【0022】
ステップS202では、決定機能102により、医用画像における1以上の注目領域および当該1以上の注目領域それぞれの重要度を決定する。注目領域は、例えば医用画像、患者情報、その後に利用する解析アプリケーション、および学習済みモデルのうちの少なくともいずれか1つに基づいて決定されればよい。
【0023】
注目領域が医用画像に基づいて決定される場合、所定の領域を注目領域としてもよい。例えば、医用画像診断装置2による撮像では、観察したい重要な部分が画像の中心に位置するように撮像することが多い。よって、決定機能102は、医用画像の中心から所定の距離範囲内の領域を注目領域として決定できる。また、医用画像の種類により注目領域を決定してもよい。例えば、MR画像であれば、対象部位の関心領域が磁場中心に位置するように被検体を載置する、または磁場中心にFOV(Field of View)を設定することが多い。よって、決定機能102は、DICOM形式の医用画像に付帯されるDICOMタグなどを参照することにより、医用画像上の磁場中心の位置を求め、磁場中心に近い領域、例えば磁場中心から所定の距離範囲内の領域を注目領域と決定すればよい。
【0024】
注目領域が患者情報に基づいて決定される場合、既往歴、検査目的に応じた対象部位などから注目領域を決定すればよい。例えば、過去に右肺のガンについて手術を受けて患者であれば、決定機能102は、既往歴を参照することで医用画像上の右の肺野領域を注目領域として決定すればよい。また、検査目的がフォローアップであれば、過去に撮影された当該患者の医用画像に対し、本実施形態に係る医用データ処理装置1の処理により設定された注目領域を参照して、決定機能102が、同一の注目領域を新たな医用画像の注目領域として決定すればよい。
【0025】
注目領域が解析アプリケーションに基づいて決定される場合、解析アプリケーションにより参照される領域が注目領域として決定されればよい。例えば、脳動脈瘤の有無を解析する解析アプリケーションにおいて、中大脳動脈(MCA:Middle Cerebral Artery)の領域を解析する場合、決定機能102は、MCA領域を注目領域として決定すればよい。
【0026】
また、異常領域が見やすい他の医用画像診断装置で撮像した医用画像の領域、または、他の医用画像診断装置で重要と判断された領域を注目領域としてもよい。例えば、医用画像診断装置2がX線CT装置である場合であって急性期脳梗塞について診断するために、CT画像を撮像したとする。急性期脳梗塞は、MRI装置で撮像されるADC(Apparent Diffusion Coefficient)画像が見やすいため、ADC画像で脳梗塞と特定された領域に対応するCT画像上の領域を注目領域として決定すればよい。
【0027】
注目領域が学習済みモデルに基づいて決定される場合、学習時に用いた入力データと同種のデータを学習済みモデルに入力することで、学習済みモデルから出力される領域を注目領域として決定すればよい。例えば、医用画像および患者情報を入力データとし、当該医用画像および患者情報に基づき人手で選択された注目領域および重要度を正解データとして、ニューラルネットワークを学習し、学習済みモデルを生成する。その後、推論時において、決定機能102は、対象となる医用画像および患者情報を学習済みモデルに入力することで、注目領域および当該注目領域の重要度を得ることができる。
【0028】
利用するニューラルネットワークは、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、深層畳み込みニューラルネットワーク(DCNN)、ResNet、DenseNet、U-Net、BERTなど機械学習分野で用いられるどのようなネットワーク構造を利用してもよい。
【0029】
なお、1つの医用画像に対して同一の重要度を有する複数の注目領域が決定されてもよいし、異なる重要度を有する複数の注目領域が設定されてもよい。これは、解析および診断上重要な領域に加え、当該重要な領域をサポートする領域も、解析および診断に寄与するからである。
【0030】
具体的に、異なる重要度を有する注目領域が設定される一例としては、患者情報に基づき前立腺ガンの検査が検査目的である場合、ガンが骨転移しやすいため、決定機能102は、前立腺の領域を最も重要度が高い第1重要度を有する第1注目領域と決定することに加えて、周辺の骨についても次に重要度が高い第2重要度を有する第2注目領域として決定すればよい。別の例としては、心臓を撮影した医用画像に対して冠動脈を抽出する解析アプリケーションを適用したい場合を想定する。冠動脈の抽出においては、冠動脈の領域のほか、バルサルバ洞の位置などの情報を利用することがあるため、冠動脈領域を第1重要度を有する第1注目領域と決定することに加えて、バルサルバ洞の領域を第2重要度を有する第2注目領域として決定すればよい。
なお、注目領域および当該注目領域の重要度を決定するときに患者情報を用いない場合は、ステップS201において患者情報を取得しなくともよい。
【0031】
ステップS203では、設定機能103により、注目領域ごとに、重要度に応じた圧縮率を設定する。例えば、医用画像において1つの注目領域が決定される場合を想定すると、注目領域は重要度が高く、注目領域以外の領域(非注目領域と呼ぶ)は、重要度が低いと想定される。よって、設定機能103が、注目領域は第1圧縮率に設定し、非注目領域は、第1圧縮率よりも圧縮率が高い第2圧縮率に設定する。具体的には、例えば注目領域は可逆圧縮処理(圧縮率100パーセント)とし、非注目領域は、非可逆圧縮処理、例えば圧縮率60パーセントに設定すればよい。
【0032】
ここで、「圧縮率Nパーセント」(Nは、0から100までの自然数)とは、圧縮後のデータを復元する場合にNパーセントの再現率であることを示す。例えば、圧縮率100パーセントとは、元の医用画像を完全に再現できる、つまり可逆圧縮処理の圧縮率であることを示す。また、医用画像に対して圧縮率60パーセントの非可逆圧縮処理を実施して圧縮データを生成し、圧縮データを伸長処理により復元した場合、復元された画像は、元の医用画像と比較して60パーセントの再現率となる。すなわち、圧縮率が高いとは、再現率が低いと言い換えられる。
なお、医用画像において異なる重要度を有する2つ以上の注目領域が設定される場合は、設定機能103が、注目領域それぞれの重要度に応じて圧縮率を設定する。例えば、第1重要度を有する第1注目領域は、可逆圧縮、すなわち圧縮率100パーセントに設定し、第2重要度を有する第2注目領域は、圧縮率70パーセントに設定し、非注目領域は、圧縮率70パーセントよりも圧縮率が高い圧縮率30パーセントに設定すればよい。すなわち、1つの医用画像に対し、重要度が高い注目領域ほど低い圧縮率となるように、圧縮率が多段階に設定される。
【0033】
重要度と圧縮率との関係は、例えば、第1重要度は圧縮率100パーセント、第2重要度は圧縮率70パーセント、第3重要度は圧縮率50パーセント、といったように、予め対応関係を定めたテーブルを用意し、設定機能103が、当該テーブルを参照して、医用画像に設定された重要度に応じて圧縮率を設定してもよい。または、医用画像に適用する解析アプリケーションの種類ごとに、重要度と圧縮率との関係を表すテーブルを用意してもよい。これにより、解析アプリケーションに適した圧縮率を設定できる。
【0034】
注目領域が学習済みモデルに基づいて決定される場合、設定機能103は、学習済みモデルの中間層から得られる、いわゆる特徴抽出に関するヒートマップを利用して圧縮率を設定してもよい。ヒートマップは、学習済みモデルが医用画像上のどの領域(特徴部位)を注目して出力データを生成したかの推定の根拠となり得る中間データから生成される。よって、ヒートマップの出力値の大きさに応じて、例えば出力値が閾値以上であれば、設定機能103は、可逆圧縮(圧縮率100パーセント)に設定する、といった設定処理を実行してもよい。
【0035】
また、設定機能103が、重要度が低い(第3重要度など)注目領域については、当該重要度が低い注目領域の医用画像中に占める面積が大きいほど、圧縮率を高くするように設定してもよい。これにより、重要度が低い領域については、ある程度の画像情報を残しつつ、よりデータ量を削減できる。
また、設定機能103は、最も重要度が高い注目領域については、非圧縮処理を実施してもよい。
ステップS204では、圧縮機能104により、圧縮率に応じて各注目領域を圧縮し、圧縮データを生成する。圧縮処理としては、可逆圧縮であれば、Lossless JPEG、JPEG-LS、PNGなどの圧縮形式を用いればよい。非可逆圧縮であれば、JPEG、JPEG2000等の圧縮形式を用いればよい。
【0036】
圧縮方法としては、例えば、圧縮機能104は、医用画像上における注目領域の位置情報を参照し、当該位置情報に基づいて注目領域に含まれる画素群に対して、設定された圧縮率を実行するためのJPEGなどの圧縮形式により、画像圧縮処理を実行する。これを各注目領域において実行することにより、圧縮データを生成できる。なお、JPEGなどに基づく具体的な圧縮処理については、一般的な圧縮処理を適用すればよいため、具体的な説明は省略する。
【0037】
ステップS205では、通信機能105により、通信インタフェース13を介して圧縮データを医用画像管理サーバ4に送信する。以上で医用データ処理装置1の動作例を終了する。
【0038】
なお、学習済みモデルを用いる場合、注目領域および当該注目領域の重要度に加えて、圧縮率も併せて出力されるようにしてもよい。つまり、医用画像を学習済みモデルに入力することで、学習済みモデルから入力された医用画像に対する1以上の注目領域、重要度および圧縮率が出力される。
【0039】
圧縮率も出力する学習済みモデルは、学習前のニューラルネットワークに対して、医用画像を入力データとし、医用画像に対する注目領域、重要度および圧縮率を正解データとして学習させる。これにより、圧縮率を出力可能な学習済みモデルが生成される。正解データとして用いる注目領域の圧縮率は、例えば解析アプリケーションにおいてどの程度の圧縮率であれば解析可能かといったデータを予め収集しておき、統計処理などにより解析アプリケーションの仕様に応じて解析可能な範囲の圧縮率を算出すればよい。
【0040】
また、医用データ処理装置1で圧縮処理を実施しない、すなわち医用データ処理装置1が圧縮機能104を含まない場合は、ステップS203の後、通信機能105が、注目領域および圧縮率に関する情報を医用画像管理サーバ4に送信すればよい。
【0041】
次に、注目領域の圧縮率の具体的な設定例について図3を参照して説明する。
図3は、医用画像上に設定される注目領域と対応する圧縮率を示す図である。
ここでは、医用画像の中心が最も重要度が高い第1重要度を有する注目領域31、その周辺の肺野を含む部分が第2重要度を有する注目領域32、および、その他の部分が非注目領域33である。
注目領域31には圧縮率100パーセントの可逆圧縮に設定され、注目領域32が圧縮率80パーセントの非可逆圧縮に設定され、非注目領域が圧縮率40パーセントの非可逆圧縮に設定される。
【0042】
次に、圧縮データを伸長した復元画像の一例について図4を参照して説明する。
図4上図は、元の医用画像であり、図4下図は、圧縮された圧縮データを伸長処理により復元した復元画像である。復元画像は、それぞれ異なる圧縮率で圧縮された3つの注目領域が含まれる。
【0043】
図4下図に示すように、復元画像は、1つの医用画像において、異なる解像度を有する複数の領域が含まれた画像となる。ここで、最も重要な注目領域については、可逆圧縮されるため、元の医用画像と同じ解像度となる。よって、解析アプリケーションまたは医療従事者は、元の医用画像と同様に注目領域について観察または解析できる。なお、図4の例では、説明の便宜上、復元画像において各注目領域の輪郭線を強調表示しているが、各注目領域の輪郭線を表示しなくともよい。
【0044】
また、上述の実施形態では、医用画像を例に説明したが、DICOM形式の手術動画、検査動画などの医用動画に対しても同様に適用できる。例えば、医用動画に対して、医用画像と同様に注目領域、非注目領域を決定する。注目領域は高解像度(第1解像度)となるような圧縮率に、非注目領域は高解像度よりも低い低解像度(第2解像度)となるような圧縮率に設定すればよい。具体的には、設定機能103は、例えばH.264/SVCの非可逆圧縮形式であれば、注目領域は高ビットレートの動画、非注目領域は高ビットレートよりも低い低ビットレートの動画となるように医用動画をエンコードし、医用画像管理サーバ4は、注目領域および非注目領域それぞれのビットレートに従ってストリームを受信して医用動画を記憶すればよい。これにより、注目領域は高解像度の動画で解析アプリケーションおよび診断に支障がない一方、非注目領域は低解像度の動画とすることができるため、元の医用動画と比較してデータサイズを大きく低減できる。
【0045】
以上に示した本実施形態によれば、医用画像に対して注目領域と当該注目領域の重要度を設定する。重要度に応じて圧縮率を設定することにより、圧縮データを生成する。また、注目領域は、解析および診断で重要な領域であるため解像度を維持するように圧縮率が低く、非注目領域は、解析および診断では重視されないため圧縮率を高く設定する。これにより、医用画像に対する解析および診断に係る精度を維持しつつ、データサイズを低減することができる。さらに、医用画像データ装置側で医用画像の圧縮処理を実施すれば、医用画像をそのまま送受信および医用画像管理サーバに記憶するよりも低負荷かつ効率よく、データの送受信および記憶が実行できる。
【0046】
本実施形態に係る「プロセッサ」という文言は、例えば、 CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit) 、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合して その機能を実現するようにしてもよい。
【0047】
上述した本実施形態に係る各機能101~105は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能101~105を実現するものとしても構わない。また、各機能101~105をプログラムとしてメモリ11などに記憶させ、処理回路10が、当該プログラムを実行することにより、当該プログラムに対応する機能を実現してもよい。
【0048】
加えて、実施形態に係る各機能は、本実施形態に係る処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該処理を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVD、Blu-ray(登録商標)ディスクなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0049】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、医用画像に対する解析および診断に係る精度を維持しつつ、データサイズを低減することができる。
【0050】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 医用データ処理装置
2 医用画像診断装置
3 医用情報管理サーバ
4 医用画像管理サーバ
10 処理回路
11 メモリ
12 入力インタフェース
13 通信インタフェース
31,32 注目領域
33 非注目領域
図1
図2
図3
図4