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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103055
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】シート供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/48 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
B65H3/48 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003897
(22)【出願日】2022-01-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年2月10日、日本画像学会誌、第60巻、第1号(2021)、第68~73頁にて公開 2021年9月17日、第38回フリートーキング“Imaging Today”にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】森田 悦久
(72)【発明者】
【氏名】増田 直哉
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA17
3F343JD28
3F343JD35
3F343JD39
3F343KB05
3F343KB17
3F343LB08
3F343LC04
3F343LC08
3F343MB14
3F343MC13
(57)【要約】
【課題】シート束に向けて吹き出すエアの風量の調整範囲を拡大できるシート供給装置を提供する。
【解決手段】サイド浮上エア吹出口16は、用紙束の側方から用紙束に向けてサイド浮上エアA3を吹き出す。サイド浮上エア経路33には、サイド浮上エア吹出口16へ向かうエアA1が流れる。調整機構34は、サイド浮上エア経路33の途中でエアA1の一部を外部に流出させることでサイド浮上エア吹出口16から吹き出すサイド浮上エアA3の風量を調整する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート束の側方から前記シート束に向けてエアを吹き出す吹出口と、
前記吹出口へ向かうエアが流れるエア経路と、
前記エア経路の途中でエアの一部を外部に流出させることで前記吹出口から吹き出すエアの風量を調整する調整機構と
を備えることを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記調整機構は、シートの種類およびサイズの少なくともいずれかに基づき、前記吹出口から吹き出すエアの風量を調整することを特徴とする請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
前記シート束のシートを浮上させるためのエアを吹き出す前記吹出口である浮上エア吹出口と、
前記シート束から浮上させられたシートのうちの最上位のシートと上から2枚目以下のシートとを分離させるためのエアを吹き出す前記吹出口である分離エア吹出口と、
前記浮上エア吹出口へ向かうエアが流れる前記エア経路である浮上エア経路と、
前記分離エア吹出口へ向かうエアが流れる前記エア経路である分離エア経路とを備え、
前記調整機構が、前記浮上エア経路および前記分離エア経路の少なくともいずれかに設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のシート供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを供給するシート供給装置として、給紙台に積載された用紙束に向けてエアを吹き出して用紙を浮上させ、浮上した用紙のうちの最上位(一番上)の用紙を吸着搬送手段により吸着搬送して印刷装置に給紙する給紙装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この種の給紙装置において、用紙種類および用紙サイズに応じて、エアの発生源であるファンの風量を調整することにより、用紙束に向けて吹き出すエアの風量を調整することが行われている。用紙種類および用紙サイズに対してエアの風量が適正でない場合、用紙の挙動が乱れ、給紙の不具合が発生するおそれがあるからである。例えば、エアの風量が大きすぎると、複数の用紙が重なって吸着搬送手段に吸着されて搬送される重送が発生するおそれがある。また、例えば、エアの風量が小さすぎると、用紙が十分に浮上せずに吸着搬送手段に吸着されず、用紙が搬送されない空送が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-182651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような給紙装置において、ファンの風量の調整範囲の不足により、幅広い用紙種類および用紙サイズに対応できないことがある。特に、コスト低減等のために風量の調整範囲が比較的狭い安価なファンが用いられた場合に、ファンの風量の調整範囲の不足が生じやすい。
【0006】
例えば、最大サイズの厚紙を浮上させることができる風量を発生可能なファンを用いると、そのファンの風量を最小に調整しても各サイズの薄紙や普通紙の適正風量より大きな風量となり、薄紙や普通紙に対応できないことがある。
【0007】
このため、用紙束に向けて吹き出すエアの風量の調整範囲を拡大できる技術が要望されていた。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、シート束に向けて吹き出すエアの風量の調整範囲を拡大できるシート供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のシート供給装置は、シート束の側方から前記シート束に向けてエアを吹き出す吹出口と、前記吹出口へ向かうエアが流れるエア経路と、前記エア経路の途中でエアの一部を外部に流出させることで前記吹出口から吹き出すエアの風量を調整する調整機構とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシート供給装置によれば、シート束に向けて吹き出すエアの風量の調整範囲を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る給紙装置の概略構成図である。
図2図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。
図3図1に示す給紙装置の搬送部近傍の拡大図である。
図4図1に示す給紙装置のメイン浮上エア吹出口近傍の拡大図である。
図5図1に示す給紙装置のサイドフェンスの部分拡大図である。
図6】サイドエアユニットのサイド浮上エア経路の開口部を開放した状態の調整機構近傍の拡大図である。
図7】サイドエアユニットのサイド浮上エア経路の開口部を閉塞した状態の調整機構近傍の拡大図である。
図8】調整テーブルを示す図である。
図9】調整機構の開閉部を手動で操作するためのレバーを示す図である。
図10】サイド分離エア経路に設けられた調整機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0013】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る給紙装置の概略構成図である。図2は、図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。図3は、図1に示す給紙装置の搬送部近傍の拡大図である。図4は、図1に示す給紙装置のメイン浮上エア吹出口近傍の拡大図である。図5は、図1に示す給紙装置のサイドフェンスの部分拡大図である。図6は、サイドエアユニットのサイド浮上エア経路の開口部を開放した状態の調整機構近傍の拡大図である。図7は、サイドエアユニットのサイド浮上エア経路の開口部を閉塞した状態の調整機構近傍の拡大図である。以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0015】
図1図4に示すように、本実施の形態に係る給紙装置(シート供給装置に相当)1は、給紙台2と、昇降モータ3と、給紙ガイド板4と、サバキゲート5と、サイドフェンス6A,6Bと、エンドフェンス7と、メイン浮上機構部8と、メイン分離機構部9と、サイドエアユニット10A,10Bと、搬送部11と、上限センサ12と、制御部13とを備える。なお、サイドフェンス6A,6B等の符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0016】
給紙装置1は、印刷装置の印刷部(図示せず)に対して用紙(シートに相当)Pを給紙する装置である。図1において左から右に向かう方向が、給紙動作時の搬送部11による用紙Pの搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、搬送部11による用紙Pの搬送方向における上流、下流を意味する。
【0017】
給紙台2は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。給紙台2は、昇降可能に構成されている。
【0018】
昇降モータ3は、給紙台2を昇降させる。
【0019】
給紙ガイド板4は、給紙台2上の用紙Pの下流端(右端)の位置を規制する部材である。給紙ガイド板4は、給紙台2の下流側近傍であって、後述するベルトユニット41の下流端部の下方に配置されている。
【0020】
サバキゲート5は、メイン浮上機構部8およびサイドエアユニット10A,10Bにより浮上させられた給紙台2上の用紙束(シート束に相当)PTの用紙Pのうち搬送部11に吸着された最上位の用紙P以外の用紙Pをせき止める部材である。2つのサバキゲート5が、搬送部11の下流端部の下方近傍において、前後方向に互いに離間して設置されている。ここで、用紙束PTは、給紙台2上に重ねて積載された複数の用紙Pからなるものである。
【0021】
サイドフェンス6A,6Bは、給紙台2上の用紙Pの前後方向における位置を規制する部材である。サイドフェンス6A,6Bは、前後方向に互いに離間して配置されている。
【0022】
図4図5に示すように、サイドフェンス6には、サイド浮上エア吹出口(吹出口および浮上エア吹出口に相当)16およびサイド分離エア吹出口(吹出口および分離エア吹出口に相当)17が形成されている。また、サイドフェンス6には、整流部材18が設けられている。なお、図5は、前側のサイドフェンス6Aを後側から見た図である。
【0023】
サイド浮上エア吹出口16は、サイドエアユニット10が発生したサイド浮上エアを用紙束PTに向けて吹き出す吹出口である。サイド分離エア吹出口17は、サイドエアユニット10が発生したサイド分離エアを用紙束PTに向けて吹き出す吹出口である。
【0024】
整流部材18は、メイン浮上機構部8およびサイドエアユニット10A,10Bによって浮上させられた給紙台2上の用紙束PTの用紙Pのうちの最上位の用紙Pを引き寄せ、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間にサイド分離エアが流れるようにするための部材である。整流部材18は、サイドフェンス6の内側(給紙台2側)の面において、サイド分離エア吹出口17の上縁に沿って取り付けられている。整流部材18は、前後方向における給紙台2の中央側に向かうほど高くなるように傾斜している。
【0025】
エンドフェンス7は、給紙台2上の用紙Pの上流端(左端)の位置を規制する部材である。エンドフェンス7は、給紙台2の上方に配置されている。エンドフェンス7は、左右方向に移動可能に構成されている。
【0026】
メイン浮上機構部8は、給紙台2上の用紙束PTに向けて下流側から用紙Pを浮上させるためのメイン浮上エアを吹き付ける。メイン浮上機構部8は、給紙台2の下流側近傍に配置されている。メイン浮上機構部8は、メイン浮上ファン21と、シャッタ22と、2つのメイン浮上エア吹出口23とを備える。
【0027】
メイン浮上ファン21は、メイン浮上エアを発生させる。
【0028】
シャッタ22は、メイン浮上エア吹出口23からのメイン浮上エアの吹き出しのオンオフを切り替える。メイン浮上ファン21の駆動中において、シャッタ22が開放されている状態では、メイン浮上エア吹出口23からメイン浮上エアが吹き出し、シャッタ22が閉鎖されている状態では、メイン浮上エア吹出口23からのメイン浮上エアの吹き出しが停止される。
【0029】
メイン浮上エア吹出口23は、メイン浮上ファン21の駆動により発生するメイン浮上エアの吹出口である。2つのメイン浮上エア吹出口23は、搬送部11の下流端部の下方近傍において、前後方向に互いに離間して配置されている。
【0030】
メイン分離機構部9は、メイン浮上機構部8およびサイドエアユニット10A,10Bにより浮上させられて搬送部11に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間に、最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させるためのメイン分離エアを下流側から流し込む。メイン分離機構部9は、メイン分離ファン26と、2つのメイン分離エア吹出口27とを備える。
【0031】
メイン分離ファン26は、メイン分離エアを発生させる。
【0032】
メイン分離エア吹出口27は、メイン分離ファン26の駆動により発生するメイン分離エアの吹出口である。2つのメイン分離エア吹出口27は、搬送部11の下流端部の下方近傍において、前後方向に互いに離間して配置されている。メイン分離エア吹出口27は、搬送部11に向けて上向きにメイン分離エアを吹き出す。
【0033】
サイドエアユニット10Aは、給紙台2上の用紙束PTに向けて前側の側方から、用紙Pを浮上させるためのサイド浮上エアを吹き付ける。また、サイドエアユニット10Aは、給紙台2上の用紙束PTの前側の側方から、用紙束PTから浮上して搬送部11に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間に、最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させるためのサイド分離エアを流し込む。サイドエアユニット10Aは、サイドフェンス6Aに設置されている。
【0034】
図1図2図4に示すように、サイドエアユニット10Aは、サイドファン31と、サイド共通エア経路32と、サイド浮上エア経路(エア経路および浮上エア経路に相当)33と、調整機構34と、シャッタ35と、サイド分離エア経路(エア経路および分離エア経路に相当)36とを備える。
【0035】
サイドファン31は、サイド浮上エアおよびサイド分離エアの共通の発生源である。サイドファン31は、サイド共通エア経路32に接続されている。本実施の形態では、サイドファン31として、コスト低減等のために風量の調整範囲が比較的狭い安価なファンが用いられている。具体的には、本実施の形態におけるサイドファン31は、サイド浮上エアで各サイズの厚紙を浮上させることが可能な比較的大きな風量を発生することができるが、サイド浮上エアを薄紙および普通紙を浮上させるための適正風量まで小さな風量に調整することはできないものである。
【0036】
サイド共通エア経路32は、サイドファン31からサイド浮上エア吹出口16へ向かうエア、およびサイドファン31からサイド分離エア吹出口17へ向かうエアに共通の経路である。
【0037】
サイド浮上エア経路33は、サイド共通エア経路32からサイド浮上エア吹出口16へ向かうエアが流れる経路である。サイド浮上エア経路33は、一端がサイド共通エア経路32に接続され、他端がサイド浮上エア吹出口16に連通されている。
【0038】
調整機構34は、サイド浮上エア経路33の途中でエアの一部を外部に流出させることでサイド浮上エア吹出口16から吹き出すサイド浮上エアの風量を調整する。調整機構34は、サイド浮上エア経路33の途中に形成された開口部37と、開閉部38と、開閉駆動部39とを備える。
【0039】
開口部37は、サイド浮上エア経路33を流れるサイドファン31からのエアの一部を外部に流出させるためのものである。
【0040】
開閉部38は、開口部37を開閉する。開閉部38が開口部37を開放している状態では、図6に示すように、サイド浮上エア経路33を流れるサイドファン31からのエアA1の一部のエアA2が開口部37から流出し、残りのエアがサイド浮上エアA3としてサイド浮上エア吹出口16から吹き出す。開閉部38が開口部37を閉塞した状態では、図7に示すように、開口部37からのエアの流出はなく、サイド浮上エア経路33を流れるサイドファン31からのエアがそのままサイド浮上エアA3としてサイド浮上エア吹出口16から吹き出す。
【0041】
開閉駆動部39は、開閉部38を駆動させる。開閉駆動部39は、上下方向における開閉部38の位置を調整することにより、サイド浮上エア経路33の開放度を調整可能に構成されている。サイド浮上エア経路33の開放度は、開口部37からのエアの流出のしやすさを示すものである。開閉部38が開口部37を閉塞した状態では、サイド浮上エア経路33の開放度は0%である。開閉部38が開口部37から遠く離れるほど、サイド浮上エア経路33の開放度が大きくなる。サイドファン31の風量が同じであれば、サイド浮上エア経路33の開放度が大きいほど、開口部37から流出するエアA2の風量が大きくなり、サイド浮上エア吹出口16から吹き出すサイド浮上エアA3の風量が小さくなる。開閉駆動部39は、ソレノイド等により構成されている。
【0042】
シャッタ35は、サイド浮上エア吹出口16からのサイド浮上エアの吹き出しのオンオフを切り替える。サイドファン31の駆動中において、シャッタ35が開放されている状態では、サイド浮上エア吹出口16からサイド浮上エアが吹き出し、シャッタ35が閉鎖されている状態では、サイド浮上エア吹出口16からのサイド浮上エアの吹き出しが停止される。シャッタ35は、サイド浮上エア経路33において、開口部37よりサイド共通エア経路32側に配置されている。
【0043】
サイド分離エア経路36は、サイド共通エア経路32からサイド分離エア吹出口17へ向かうエアが流れる経路である。サイド分離エア経路36は、一端がサイド共通エア経路32に接続され、他端がサイド分離エア吹出口17に連通されている。
【0044】
サイドエアユニット10Bは、給紙台2上の用紙束PTに向けて後側の側方からサイド浮上エアを吹き付ける。また、サイドエアユニット10Bは、給紙台2上の用紙束PTの後側の側方から、用紙束PTから浮上して搬送部11に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間にサイド分離エアを流し込む。サイドエアユニット10Bは、サイドフェンス6Bに設置されている。
【0045】
サイドエアユニット10Bは、サイドエアユニット10Aと同様に、サイドファン31と、サイド共通エア経路32と、サイド浮上エア経路33と、調整機構34と、シャッタ35と、サイド分離エア経路36とを備える。サイドエアユニット10Bは、サイドエアユニット10Aを前後方向に反転した構成である。サイドエアユニット10Bは、前後方向に反転されている以外は、サイドエアユニット10Aと同様の構成である。
【0046】
搬送部11は、メイン浮上機構部8およびサイドエアユニット10A,10Bにより浮上させられた用紙Pのうちの最上位の用紙Pをエア吸引により吸着して搬送する。図1図4に示すように、搬送部11は、2つのベルトユニット41と、搬送モータ42と、チャンバ43と、吸引ファン44とを備える。なお、図3では、サイドフェンス6A,6Bおよびサイドエアユニット10A,10Bの図示を省略している。
【0047】
ベルトユニット41は、用紙Pを吸着保持して搬送する。2つのベルトユニット41は、前後方向に並列して配置されている。ベルトユニット41は、左右方向において、給紙台2の右端を跨いで配置されている。ベルトユニット41は、搬送ベルト46と、駆動ローラ47と、従動ローラ48とを備える。
【0048】
搬送ベルト46は、駆動ローラ47と従動ローラ48とに掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト46には、複数のベルト穴46aが全周に渡って形成されている。搬送ベルト46は、吸引ファン44の駆動によりベルト穴46aに発生する吸着力により、搬送ベルト46の下面である搬送面46bに用紙Pを吸着保持する。用紙Pを吸着保持した状態で駆動ローラ47の駆動により搬送ベルト46が回転(無端移動)することで、用紙Pが搬送される。
【0049】
駆動ローラ47は、搬送ベルト46を回転(無端移動)させる。2つのベルトユニット41の駆動ローラ47は、シャフト49により互いに接続されている。
【0050】
従動ローラ48は、駆動ローラ47とともに搬送ベルト46を支持する。従動ローラ48は、回転する搬送ベルト46に従動回転する。2つのベルトユニット41の従動ローラ48は、シャフト50により互いに接続されている。
【0051】
搬送モータ42は、シャフト49を回転させることにより、駆動ローラ47を回転させる。
【0052】
チャンバ43は、ベルトユニット41のベルト穴46aに吸着力を発生させるための負圧室を形成するものである。チャンバ43は、搬送ベルト46の搬送面46bが露出するように、ベルトユニット41を内部に保持している。チャンバ43の底板の搬送ベルト46が通過する部分には、通気穴(図示せず)が形成されている。搬送ベルト46の搬送面46bのベルト穴46aおよびチャンバ43の通気穴を介したチャンバ43内へのエアの吸引により、ベルト穴46aに吸着力が発生する。
【0053】
吸引ファン44は、チャンバ43から排気する。吸引ファン44がチャンバ43から排気すると、搬送ベルト46の搬送面46bのベルト穴46aおよびチャンバ43の通気穴を介してチャンバ43外からエアがチャンバ43内に吸引される。吸引ファン44は、チャンバ43の上側に配置されている。
【0054】
上限センサ12は、給紙台2上に積載された用紙Pの下流側(右側)の端面を監視するものである。上限センサ12は、給紙台2より下流側において、浮上領域内の浮上している用紙Pを検出可能な高さ位置に配置されている。浮上領域は、上下方向におけるメイン浮上機構部8およびサイドエアユニット10A,10Bが用紙Pを浮上させる領域である。
【0055】
制御部13は、給紙装置1全体の動作を制御する。制御部13は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0056】
制御部13は、図8に示す調整テーブル51を記憶している。調整テーブル51は、用紙種類と、用紙サイズと、サイド浮上エア経路33の開放度と関連付けたテーブルである。
【0057】
制御部13は、用紙種類と用紙サイズとの組み合わせに応じて、メイン浮上ファン21、メイン分離ファン26、およびサイドファン31の風量を調整するとともに、調整テーブル51を参照して、開閉部38によるサイド浮上エア経路33の開放度を調整する。
【0058】
調整テーブル51におけるサイド浮上エア経路33の開放度は、用紙種類と用紙サイズとの組み合わせに応じたサイドファン31の風量の設定において、サイド浮上エア吹出口16から吹き出すサイド浮上エアの風量が適正風量になるように設定されている。
【0059】
サイド浮上エアの適正風量は、用紙束PTから浮上した用紙Pの挙動の乱れによる給紙の不具合(重送、空送等)が抑えられる風量である。用紙サイズが同じであれば、紙厚が薄い(坪量が小さい)用紙種類ほど、浮上しやすいため、サイド浮上エアの適正風量は小さくなる。用紙種類が同じであれば、用紙サイズが小さいほど、浮上しやすいため、サイド浮上エアの適正風量は小さくなる。ただし、図8の例では、厚紙の場合は、用紙サイズに関わらず適正風量は同じであり、用紙サイズに関わらず厚紙に対応するサイド浮上エア経路33の開放度は同じになっている。
【0060】
調整テーブル51におけるそれぞれの用紙種類と用紙サイズとの組み合わせに応じたサイド浮上エア経路33の開放度は、例えば、実験等に基づき予め設定されている。本実施の形態では、前述のように、サイドファン31は、各サイズの厚紙の適正風量を発生することができるが、薄紙および普通紙の適正風量まで小さな風量に調整することはできないものである。このため、本実施の形態では、図8のように、厚紙の場合はサイド浮上エア経路33の開放度は0%であり、薄紙および普通紙の場合はサイド浮上エア経路33の開放度は0%ではない。
【0061】
次に、給紙装置1の動作について説明する。
【0062】
給紙開始が指示されると、制御部13は、給紙台2に積載された用紙Pの用紙種類および用紙サイズに基づき、調整テーブル51を参照して、開閉駆動部39を制御して開閉部38の位置を調整することでサイド浮上エア経路33の開放度を調整する。ここで、用紙種類および用紙サイズは、例えば、図示しない入力部に対するユーザの操作により入力される。
【0063】
また、制御部13は、メイン浮上ファン21、メイン分離ファン26、サイドエアユニット10A,10Bのサイドファン31、および吸引ファン44の駆動を開始させる。ここで、制御部13は、メイン浮上ファン21、メイン分離ファン26、およびサイドファン31の風量を、用紙種類および用紙サイズに応じた風量に設定する。シャッタ22,35はいずれも開放状態である。
【0064】
これにより、メイン浮上エア吹出口23からメイン浮上エア、メイン分離エア吹出口27からメイン分離エア、サイド浮上エア吹出口16からサイド浮上エア、サイド分離エア吹出口17からサイド分離エアがそれぞれ吹き出す。また、ベルトユニット41のベルト穴46aに吸着力が発生する。
【0065】
ここで、用紙種類および用紙サイズに応じたサイド浮上エア経路33の開放度が0%ではない場合、図6のように、サイド浮上エア経路33を流れるサイドファン31からのエアA1の一部のエアA2が開口部37から流出し、残りのエアであるサイド浮上エアA3がサイド浮上エア吹出口16から吹き出す。用紙種類および用紙サイズに応じたサイド浮上エア経路33の開放度が0%である場合、図7のように、サイド浮上エア経路33を流れるサイドファン31からのエアがそのままサイド浮上エアA3としてサイド浮上エア吹出口16から吹き出す。
【0066】
メイン浮上エアおよびサイド浮上エアにより、給紙台2上の用紙束PTの最上部の、浮上領域内の複数枚の用紙Pが浮上し、浮上した用紙Pのうちの最上位の用紙Pが、ベルトユニット41の搬送面46bに吸着される。
【0067】
用紙Pが浮上する際、サイドフェンス6近傍では、サイド分離エア吹出口17から最上位の用紙Pの上方にサイド分離エアが吹き出す。このサイド分離エアが整流部材18に沿って流れることで、整流部材18と最上位の用紙Pとの間が負圧状態となる。これにより、最上位の用紙Pが整流部材18に引き寄せられ、整流部材18に吸い付けられる。この結果、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間にサイド分離エアが流れるようになる。
【0068】
一方、メイン分離機構部9側では、最上位の用紙Pが搬送面46bに吸着された後、メイン分離エア吹出口27から吹き出すメイン分離エアが、搬送面46bに吸着された最上位の用紙Pに沿って、上流側(左側)へ向かって流れる。
【0069】
これにより、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間において、メイン分離エアと前側からのサイド分離エアと後側からのサイド分離エアとが衝突することで正圧が発生する。
【0070】
この状態において、制御部13は、シャッタ22,35を閉鎖するよう制御する。これにより、メイン浮上エア吹出口23からのメイン浮上エアの吹き出し、およびサイド浮上エア吹出口16からのサイド浮上エアの吹き出しが停止される。この結果、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間の正圧により上から2枚目以下の用紙Pが押し下げられることで、最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとが分離される。2枚目以下の用紙Pは、給紙台2上に残っている用紙P上に落下する。
【0071】
この後、制御部13は、搬送モータ42を制御してベルトユニット41を所定時間駆動させる。これにより、搬送面46bに吸着された最上位の用紙Pが搬送される。
【0072】
次いで、制御部13は、次の用紙Pの給紙のために、シャッタ22,35を開放し、用紙束PTの最上部の複数枚の用紙Pを浮上させる。
【0073】
上述の動作を繰り返すことにより、用紙Pが給紙装置1から給紙先の印刷装置へ順次給紙される。
【0074】
この給紙動作中において、制御部13は、給紙による給紙台2上の用紙Pの減少に応じて給紙台2を上昇させる制御を行う。具体的には、制御部13は、1枚の給紙ごとに、用紙Pの浮上中のタイミングで上限センサ12のセンサ値を取得する。そして、制御部13は、取得したセンサ値が所定の追従閾値未満の場合、センサ値と追従閾値との差に応じた高さ分だけ、給紙台2を上昇させる。
【0075】
以上説明したように、給紙装置1は、サイド浮上エア経路33の途中でエアの一部を外部に流出させることでサイド浮上エア吹出口16から吹き出すサイド浮上エアの風量を調整する調整機構34を備える。これにより、用紙束PTに向けて吹き出すサイド浮上エアの風量の調整範囲を、サイドファン31の風量の調整範囲よりも拡大できる。この結果、幅広い用紙種類および用紙サイズに対して、サイド浮上エアの風量を適正風量に調整することが可能となる。
【0076】
また、給紙装置1では、制御部13は、用紙種類および用紙サイズに基づき、サイド浮上エア経路33の開放度を調整することで、サイド浮上エア吹出口16から吹き出すサイド浮上エアの風量を調整するよう調整機構34を制御する。これにより、サイド浮上エアの風量を用紙種類および用紙サイズに応じた適正風量に設定することができるので、用紙束PTから浮上した用紙Pの挙動の乱れによる給紙の不具合(重送、空送等)を低減できる。
【0077】
なお、上述した実施の形態では、開閉駆動部39により開閉部38を駆動させてサイド浮上エア経路33の開放度を調整する構成を示したが、開閉部38を手動で操作する構成でもよい。例えば、図9に示すような手動のレバー61を介して開閉部38を操作することで、サイド浮上エア経路33の開放度を手動で調整する構成でもよい。
【0078】
また、上述した実施の形態では、用紙種類として薄紙、普通紙、および厚紙を示したが、他の種類を含めてもよい。
【0079】
また、上述した実施の形態では、サイド浮上エアおよびサイド分離エアを共通の発生源であるサイドファン31により発生するものとしたが、サイド浮上エアとサイド分離エアとを異なる発生源(ファン)により発生させる構成であってもよい。
【0080】
また、上述した実施の形態では、用紙種類および用紙サイズに基づき、サイド浮上エアの風量を調整するよう調整機構34を制御したが、用紙種類または用紙サイズに基づき、サイド浮上エアの風量を調整するよう調整機構34を制御してもよい。すなわち、用紙種類および用紙サイズの少なくともいずれかに基づき、サイド浮上エアの風量を調整するよう調整機構34を制御するようにできる。また、その他の要素に基づき、サイド浮上エアの風量を調整するよう調整機構34を制御してもよい。
【0081】
また、上述した実施の形態では、サイド浮上エア経路33に調整機構34を設けた構成を示したが、サイド分離エア経路36にも調整機構34と同様の構成の調整機構を設けてもよい。具体的には、図10に示すような調整機構66をサイドエアユニット10に設けてもよい。なお、図10は、前側のサイドエアユニット10Aに設けられた調整機構66を示している。
【0082】
調整機構66は、サイド分離エア経路36の途中でエアの一部を外部に流出させることでサイド分離エア吹出口17から吹き出すサイド分離エアの風量を調整する。調整機構66は、上述した調整機構34と同様の構成であり、サイド分離エア経路36の途中に形成された開口部67と、開口部67を開閉する開閉部68と、開閉部68を駆動させる開閉駆動部69とを備える。
【0083】
調整機構66も、調整機構34と同様に、開閉駆動部39が上下方向における開閉部38の位置を調整することにより、サイド分離エア経路36の開放度を調整可能である。そして、サイド分離エア経路36の開放度の調整により、サイド分離エア吹出口17から吹き出すサイド分離エアA4の風量が調整される。制御部13は、用紙種類および用紙サイズに基づき、サイド分離エアの風量を調整するよう調整機構66を制御する。
【0084】
サイドエアユニット10に調整機構66を設けることで、用紙束PTに向けて吹き出すサイド分離エアの風量の調整範囲を、サイドファン31の風量の調整範囲よりも拡大できる。この結果、幅広い用紙種類および用紙サイズに対して、サイド分離エアの風量を適正風量に調整することが可能となる。
【0085】
また、用紙種類および用紙サイズに基づき、サイド分離エアの風量を調整するよう調整機構66を制御することで、サイド分離エアの風量を用紙種類および用紙サイズに応じた適正風量に設定することができるので、用紙束PTから浮上した用紙Pの挙動の乱れによる給紙の不具合(重送、空送等)をより低減できる。
【0086】
なお、用紙種類または用紙サイズに基づき、サイド分離エアの風量を調整するよう調整機構66を制御してもよい。すなわち、用紙種類および用紙サイズの少なくともいずれかに基づき、サイド分離エアの風量を調整するよう調整機構66を制御するようにできる。また、その他の要素に基づき、サイド浮上エアの風量を調整するよう調整機構34を制御してもよい。
【0087】
また、サイド浮上エア経路33の調整機構34を省略して、サイド分離エア経路36に調整機構66を設けた構成としてもよい。この場合においても、用紙種類および用紙サイズの少なくともいずれかに基づき、サイド分離エアの風量を調整するよう調整機構66を制御するようにできる。
【0088】
また、上述した実施の形態では、用紙を給紙する給紙装置について説明したが、用紙以外のシートを供給する装置にも本発明は適用可能である。
【0089】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0090】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0091】
(付記1)
シート束の側方から前記シート束に向けてエアを吹き出す吹出口と、
前記吹出口へ向かうエアが流れるエア経路と、
前記エア経路の途中でエアの一部を外部に流出させることで前記吹出口から吹き出すエアの風量を調整する調整機構と
を備えることを特徴とするシート供給装置。
【0092】
(付記2)
前記調整機構は、シートの種類およびサイズの少なくともいずれかに基づき、前記吹出口から吹き出すエアの風量を調整することを特徴とする付記1に記載のシート供給装置。
【0093】
(付記3)
前記シート束のシートを浮上させるためのエアを吹き出す前記吹出口である浮上エア吹出口と、
前記シート束から浮上させられたシートのうちの最上位のシートと上から2枚目以下のシートとを分離させるためのエアを吹き出す前記吹出口である分離エア吹出口と、
前記浮上エア吹出口へ向かうエアが流れる前記エア経路である浮上エア経路と、
前記分離エア吹出口へ向かうエアが流れる前記エア経路である分離エア経路とを備え、
前記調整機構が、前記浮上エア経路および前記分離エア経路の少なくともいずれかに設けられていることを特徴とする付記1または2に記載のシート供給装置。
【符号の説明】
【0094】
1 給紙装置
2 給紙台
3 昇降モータ
4 給紙ガイド板
5 サバキゲート
6,6A,6B サイドフェンス
7 エンドフェンス
8 メイン浮上機構部
9 メイン分離機構部
10,10A,10B サイドエアユニット
11 搬送部
12 上限センサ
13 制御部
16 サイド浮上エア吹出口
17 サイド分離エア吹出口
31 サイドファン
32 サイド共通エア経路
33 サイド浮上エア経路
34,66 調整機構
35 シャッタ
36 サイド分離エア経路
37,67 開口部
38,68 開閉部
39,69 開閉駆動部
51 調整テーブル
P 用紙
PT 用紙束
図1
図2
図3
図4
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図6
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図8
図9
図10