(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103068
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】函体の水中への据付方法および函体の揺動防止用装置
(51)【国際特許分類】
E02D 23/00 20060101AFI20230719BHJP
E02D 23/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
E02D23/00 C
E02D23/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003915
(22)【出願日】2022-01-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公益社団法人土木学会発行、土木学会論文集B3(海洋開発),Vol.77,No.2,I_619-624,2021.(浮遊ケーソンの動揺に対する減揺タンクの有効性と減揺メカニズムに関する実験的研究)、掲載アドレス(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejoe/77/2/77_I_619/_article/-char/ja/)、掲載日2021年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】武田 将英
(72)【発明者】
【氏名】倉原 義之介
(72)【発明者】
【氏名】原 知聡
(72)【発明者】
【氏名】アイン ナターシャ バルキス ビンティ モハマド スフィアン
(57)【要約】
【課題】函体の水中への据付時の揺動を抑制しつつ、函体の傾きをより抑制できる函体の水中への据付方法および函体の揺動防止用装置を提供する。
【解決手段】函体10の上に、平面視で特定の第一方向D1に延在する細長のタンク2と、平面視で第一方向D1に交差する第二方向D2に延在する細長のタンク2を設置する。第一方向D1に延設する第一方向タンク2aは、平面視で第一方向D1に直交する方向から見て函体10の重心Gを跨ぐ位置に配置し、第二方向D2に延設する第二方向タンク2bは、平面視で第二方向D2に直交する方向から見て函体10の重心Gを跨ぐ位置に配置する。それぞれのタンク2の収容部3に流体Wbを非充満の状態で収容し、函体10の揺動を第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2bにより抑制しつつ、函体10を水中の所定位置に据付ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する函体の上に収容部を有するタンクを設置して前記収容部に流体を非充満の状態で収容しておき、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体を前記函体の傾斜方向下側に向かって流動させることにより、前記函体の揺動を抑制しつつ、前記中空部に水を注入することにより前記函体を下方移動させて水中の所定位置に据付ける函体の水中への据付方法において、
前記タンクとして、平面視で特定の第一方向に延在する細長の複数の第一方向タンクを互いに間隔をあけて並列に設置し、かつ、平面視で前記第一方向に交差する第二方向に延在する細長の第二方向タンクを設置し、前記第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、前記第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置することを特徴とする函体の水中への据付方法。
【請求項2】
中空部を有する函体の上に収容部を有するタンクを設置して前記収容部に流体を非充満の状態で収容しておき、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体を前記函体の傾斜方向下側に向かって流動させることにより、前記函体の揺動を抑制しつつ、前記中空部に水を注入することにより前記函体を下方移動させて水中の所定位置に据付ける函体の水中への据付方法において、
前記タンクとして、長手方向の長さに対して幅が20%以下である細長の前記タンクを平面視で特定の第一方向と、平面視で前記第一方向に交差する第二方向とにそれぞれ延在させて設置し、前記第一方向に延設する第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、前記第二方向に延設する第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置することを特徴とする函体の水中への据付方法。
【請求項3】
前記第二方向を、平面視で前記第一方向に直交する方向とする請求項1または2に記載の函体の水中への据付方法。
【請求項4】
平面視で複数の前記第二方向タンクを互いに間隔をあけて並列に設置する請求項1~3のいずれかに記載の函体の水中への据付方法。
【請求項5】
前記第一方向タンクと前記第二方向タンクとを前記函体の上下方向に重ねて設置する請求項1~4のいずれかに記載の函体の水中への据付方法。
【請求項6】
前記函体の上に設置した支持台の上方に前記第一方向タンクおよび前記第二方向タンクを設置して、前記第一方向タンクおよび前記第二方向タンクよりも下方に配設したワイヤロープを用いて前記函体の位置合わせを行う請求項1~5のいずれかに記載の函体の水中への据付方法。
【請求項7】
水中に据付けられる函体の上面に設置されて流体を収容する収容部を有し、この収容部には前記流体が非充満の状態で収容され、前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体が前記函体の傾斜方向下側に向かって流動する構成であるタンクを備えた函体の揺動防止用装置において、
前記タンクとして、平面視で特定の第一方向に延在する細長の複数の第一方向タンクが互いに間隔をあけて並列に設置されていて、かつ、平面視で前記第一方向に交差する第二方向に延在する細長の第二方向タンクが設置されていて、前記第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、前記第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていることを特徴とする函体の揺動防止用装置。
【請求項8】
水中に据付けられる函体の上面に設置されて流体を収容する収容部を有し、この収容部には前記流体が非充満の状態で収容され、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体が前記函体の傾斜方向下側に向かって流動する構成であるタンクを備えた函体の揺動防止用装置において、
前記タンクとして、長手方向の長さに対して幅が20%以下である細長の前記タンクが平面視で特定の第一方向と、平面視で前記第一方向に交差する第二方向とにそれぞれ延在して設置されていて、前記第一方向に延設された第一方向タンクは、平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、前記第二方向に延設された第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていることを特徴とする函体の揺動防止用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、函体の水中への据付方法および函体の揺動防止用装置に関し、さらに詳しくは、函体の水中への据付時の揺動を抑制しつつ、函体の傾きをより抑制できる函体の水中への据付方法および函体の揺動防止用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
護岸や防波堤に使用されるケーソン等の函体は、引船により据付現場まで曳航される。このような函体は、据付現場ではウインチやクレーン等を用いて所定位置に据付けられる。函体の据付時には、函体を水中に沈み込ませる過程で、波浪等の影響により函体が縦揺れ(ピッチング)や横揺れ(ローリング)をする。函体を精度よく迅速に所定位置に据付けるには、函体の揺動を抑制することが重要である。
【0003】
そこで、函体の上に流体が非充満状態で収容された収容部を有するタンクを設置して、函体が揺動して傾斜した際には、タンクの収容部の中で流体を函体の傾斜方向下側に向かって流動させることにより、函体の揺動を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明では、函体の上に一基の大きなタンクを設置することで函体の揺動を抑制している。しかしながら、
図18に例示するように、函体の上に一基の大きなタンクを設置した場合には、タンクの収容部における流体の流動範囲が広いため、函体の相対的に沈んでいる方向(例えば、傾斜方向下側)に多量の流体が集中して偏在した状態となる。そのため、函体が相対的に沈んだ方向にタンク内の流体の重心が大きく偏心した状態となり、函体の揺動が収まった状態では函体が大きく傾いた状態になり易いという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、函体の水中への据付時の揺動を抑制しつつ、函体の傾きをより抑制できる函体の水中への据付方法および函体の揺動防止用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の函体の水中への据付方法は、中空部を有する函体の上に収容部を有するタンクを設置して前記収容部に流体を非充満の状態で収容しておき、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体を前記函体の傾斜方向下側に向かって流動させることにより、前記函体の揺動を抑制しつつ、前記中空部に水を注入することにより前記函体を下方移動させて水中の所定位置に据付ける函体の水中への据付方法において、前記タンクとして、平面視で特定の第一方向に延在する細長の複数の第一方向タンクを互いに間隔をあけて並列に設置し、かつ、平面視で前記第一方向に交差する第二方向に延在する細長の第二方向タンクを設置し、前記第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、前記第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置することを特徴とする。
【0007】
本発明の別の函体の水中への据付方法は、中空部を有する函体の上に収容部を有するタンクを設置して前記収容部に流体を非充満の状態で収容しておき、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体を前記函体の傾斜方向下側に向かって流動させることにより、前記函体の揺動を抑制しつつ、前記中空部に水を注入することにより前記函体を下方移動させて水中の所定位置に据付ける函体の水中への据付方法において、前記タンクとして、長手方向の長さに対して幅が20%以下である細長の前記タンクを平面視で特定の第一方向と、平面視で前記第一方向に交差する第二方向とにそれぞれ延在させて設置し、前記第一方向に延設する第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、前記第二方向に延設する第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置することを特徴とする。
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の函体の揺動防止用装置は、水中に据付けられる函体の上面に設置されて流体を収容する収容部を有し、この収容部には前記流体が非充満の状態で収容され、前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体が前記函体の傾斜方向下側に向かって流動する構成であるタンクを備えた函体の揺動防止用装置において、前記タンクとして、平面視で特定の第一方向に延在する細長の複数の第一方向タンクが互いに間隔をあけて並列に設置されていて、かつ、平面視で前記第一方向に交差する第二方向に延在する細長の第二方向タンクが設置されていて、前記第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、前記第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の別の函体の揺動防止用装置は、水中に据付けられる函体の上面に設置されて流体を収容する収容部を有し、この収容部には前記流体が非充満の状態で収容され、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体が前記函体の傾斜方向下側に向かって流動する構成であるタンクを備えた函体の揺動防止用装置において、前記タンクとして、長手方向の長さに対して幅が20%以下である細長の前記タンクが平面視で特定の第一方向と、平面視で前記第一方向に交差する第二方向とにそれぞれ延在して設置されていて、前記第一方向に延設された第一方向タンクは、平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、前記第二方向に延設された第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水に浮かせた状態の函体が揺動して傾斜した際に、函体の上に設置した細長の第一方向タンクと第二方向タンクのそれぞれの収容部の中で流体が函体の傾斜方向下側に向って流動して、第一方向タンクと第二方向タンクでのそれぞれの流体の重心が函体の傾斜方向下側に移動する。そして、移動した流体に作用する重力によって函体の重心周りにモーメント(減衰モーメント)が生じる。一方、函体の浮心も傾斜方向下側に移動するため、浮力によって函体の重心周りに函体を傾斜前の状態に戻そうとするモーメント(復元モーメント)が生じる。減衰モーメントは復元モーメントと逆方向のモーメントになるため、復元モーメントに起因する函体の揺動が減衰モーメントにより抑制される。その結果として、函体を水中に据付ける際の函体の第一方向の揺動は主に第一方向に延在する細長の第一方向タンクによって効果的に抑制され、函体の第二方向の揺動は主に第二方向に延在する細長の第二方向タンクによって効果的に抑制される。
【0011】
さらに、函体の揺動を抑制するタンクを、第一方向に延在する細長の第一方向タンクと、第二方向に延在する細長の第二方向タンクとに分けて、従来の一基の大きなタンクを設置する場合よりも、一基一基のタンクに収容される流体の流動範囲を限定的に狭めている。これにより、函体の揺動が収まった状態では、一基の大きなタンクを設置する場合よりも、第一方向タンクおよび第二方向タンクに収容されている流体の重心を合成した合成重心が函体の傾いた方向に極端に偏心することを防ぎ、函体の傾きを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の揺動防止用装置を設置した函体を平面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1の揺動防止用装置を設置した函体の据付現場での位置決め工程を平面視で例示する説明図である。
【
図4】函体が長さ方向の一方側(右側)に傾斜した際の揺動防止用装置を構成するタンクのそれぞれの収容部の中での流体の流動状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図5】函体が斜め方向(斜め左下側)に傾斜した際の揺動防止用装置を構成するタンクのそれぞれの収容部の中での流体の流動状態を横断面視で例示する説明図である。
【
図6】第2実施形態の揺動防止用装置を設置した函体の据付現場での位置決め工程を平面視で例示する説明図である。
【
図8】第3実施形態の揺動防止用装置を設置した函体を平面視で例示する説明図である。
【
図9】第4実施形態の揺動防止用装置を設置した函体を平面視で例示する説明図である。
【
図10】第5実施形態の揺動防止用装置を設置した函体を平面視で例示する説明図である。
【
図11】第6実施形態の揺動防止用装置を設置した函体を平面視で例示する説明図である。
【
図12】第7実施形態の揺動防止用装置を設置した函体を平面視で例示する説明図である。
【
図13】第8実施形態の揺動防止用装置を設置した函体を平面視で例示する説明図である。
【
図14】揺動防止用装置を構成する第一方向タンクと第二方向タンクとが重なる部分の構造を斜視で例示する説明図であり、
図14の(a)は、第一方向タンクと第二方向タンクとを重ね合わせる前の状態を示し、
図14の(b)は、第一方向タンクと第二方向タンクとを重ね合わせた状態を示している。
【
図15】揺動防止用装置を構成する第一方向タンクと第二方向タンクとが重なる部分の別の構造を斜視で例示する説明図であり、
図15の(a)は、第一方向タンクと第二方向タンクとを重ね合わせる前の状態を示し、
図15の(b)は、第一方向タンクと第二方向タンクとを重ね合わせた状態を示している。
【
図16】揺動防止用装置を構成する第一方向タンクと第二方向タンクとが重なる部分のさらに別の構造を斜視で例示する説明図であり、
図16の(a)は、第一方向タンクと第二方向タンクとを重ね合わせる前の状態を示し、
図16の(b)は、第一方向タンクと第二方向タンクとを重ね合わせた状態を示している。
【
図17】揺動防止用装置を構成する第一方向タンクと第二方向タンクとが重なる部分のさらに別の構造を斜視で例示する説明図であり、
図17の(a)は、第一方向タンクと第二方向タンクとを重ね合わせる前の状態を示し、
図17の(b)は、第一方向タンクと第二方向タンクとを重ね合わせた状態を示している。
【
図18】従来の揺動防止用のタンクを設置した函体が斜め方向(斜め左下側)に傾斜した状態を横断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の函体の水中への据付方法および函体の揺動防止用装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。尚、図面では、函体10の長さ方向(長手方向)、幅方向、上下方向をそれぞれ矢印X、Y、Zで示している。また、図面では、函体10の幅方向(Y方向)の中心線C1と、函体10の長さ方向(X方向)の中心線C2をそれぞれ破線で示している。
【0014】
図1~
図3に例示するように、本発明の函体10の揺動防止用装置1は、ケーソンなどの函体10の上に設置される複数のタンク2を備えて構成されている。函体10としてはケーソンの他に埋設函などを例示できる。この実施形態では函体10がケーソンの場合を例にしている。函体(ケーソン)10は、中空部11を有するコンクリート製または鋼製の構造物で、その中空部11は外壁12および隔壁13により複数の空間に仕切られている。中空部11には函体10の据付前には適宜の量の水Waが注入され、据付後には投入された砕石等により充満される。この実施形態では、函体10の上面を覆う上蓋14が設けられている。上蓋14には、それぞれの中空部11に水Waを注入するホース30が挿入可能な貫通孔が設けられている。
【0015】
図1および
図2に例示するように、揺動防止用装置1は、函体10の据付時の揺動を抑制するタンク2として、平面視で函体10の特定の第一方向D1に延在する細長の第一方向タンク2aと、平面視で第一方向D1に交差する第二方向D2に延在する細長の第二方向タンク2bとを備えている。
【0016】
この実施形態では、第一方向D1を函体10の長さ方向(X方向)とし、第二方向D2を函体10の幅方向(Y方向)としている。図面では、第一方向D1を一点鎖線で示し、第二方向D2を二点鎖線で示している。以下では、平面視で第一方向D1に直交する方向を第一直交方向とし、平面視で第二方向D2に直交する方向を第二直交方向とする。この実施形態では、第一直交方向は第二方向D2(Y方向)となり、第二直交方向は第一方向D1(X方向)となる。
【0017】
後に別の実施形態で例示するが、第一方向タンク2aを延設する第一方向D1と、第二方向タンク2bを延設する第二方向D2は、平面視で互いに交差する方向であればよく、第一方向D1と第二方向D2をそれぞれ他の方向に設定することもできる。第一方向D1と第二方向D2は、平面視で第一方向D1と第二方向D2とのなす角度が例えば、70度~110度の範囲以内、好ましくは80度~100度の範囲以内、より好ましくは90度になるように設定するとよい。
【0018】
図1に例示するように、函体10(上蓋14)の上に2基の第一方向タンク2aが互いに第一直交方向(Y方向)に間隔をあけて並列に設置されていて、2基の第二方向タンク2bが互いに第二直交方向(X方向)に間隔をあけて並列に設置されている。平面視で中空部11に水Wa等が収容されていない空の状態の函体10の重心Gを中心にして、函体10の重心Gの第一直交方向の一方側に1基の第一方向タンク2aが配置されていて、函体10の重心Gの第一直交方向の他方側に1基の第一方向タンク2aが配置されている。また、函体10の重心Gの第二直交方向の一方側に1基の第二方向タンク2bが配置されていて、函体10の重心Gの第二直交方向の他方側に1基の第二方向タンク2bが配置されている。この実施形態では、2基の第一方向タンク2aの上に2基の第二方向タンク2bがZ方向に重ねて設置されている。即ち、4基の細長のタンク2が井桁状に配置されている。この揺動防止用装置1を構成するすべてのタンク2は函体10の重心G上には配置されておらず、函体10の重心Gの周囲に配置されている。
【0019】
それぞれのタンク2(第一方向タンク2a、第二方向タンク2b)は、鋼製または樹脂製の細長い中空の構造物であり、水などの流体Wbを収容する収容部3を有している。この実施形態では、それぞれのタンク2が細長の直方体形状に形成されていて、タンク2の底面部4と側面部5とにより囲まれた空間が収容部3になっている。
【0020】
タンク2の上面部6は作業者が往来できる足場としても機能する。図面では省略しているが、例えば、タンク2どうしの間に足場板を架け渡すこともできる。タンク2の上面部6には上下に貫通する注入口7が設けられていて、注入口7にホース30を挿し込むことで収容部3に流体Wbを注入することができる。注入口7には開閉蓋7aが設けられていて、開閉蓋7aを閉じると収容部3は密閉された状態になる。収容部3には流体Wbが非充満の状態で収容される。
【0021】
この実施形態では、上蓋14の上に第一方向タンク2aを固定し、第一方向タンク2aの上面に第二方向タンク2bを固定しているが、それぞれのタンク2の函体10に対する固定方法は特に限定されず、タンク2が函体10から容易に分離しない構造であれば良い。
【0022】
それぞれの第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2bは、長手方向の長さS1に対して幅S2が所定割合以下に設定された細長形状であり、前述した所定割合は例えば、50%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは20%未満、さらに好ましくは15%以下に設定される。
【0023】
第一方向タンク2aは、平面視で第一直交方向(この実施形態ではY方向)から見て中空部11に水Wa等が収容されていない空の状態の函体10の重心Gを跨ぐ位置に配置される。第二方向タンク2bは、平面視で第二直交方向(この実施形態ではX方向)から見て、函体10の重心Gを跨ぐ位置に配置されている。言い換えると、第一方向タンク2aは、平面視で函体10の重心Gから第一直交方向に伸ばした延長線と交差する位置に延設されていて、第二方向タンク2bは、平面視で函体10の重心Gから第二直交方向に伸ばした延長線と交差する位置に延設されている。
【0024】
それぞれのタンク2は、平面視で函体10の上面から外側に突出する構成とすることも可能である。ただし、この突出量が大きいと据付け作業に支障が生じることもある。そのため、それぞれのタンク2は平面視で函体10の上面から外側に突出させないことが望ましい。
【0025】
第一方向タンク2aの長さS1(第一方向D1の寸法)は、函体10の第一方向D1の最大となる外寸の例えば、50%以上100%以下、より好ましくは70%以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下に設定するとよい。前述した数値範囲にすることで、第一方向タンク2aが平面視で函体10の上面から外側に突出することなく、第一方向タンク2aによる函体10の第一方向D1の揺動抑制効果を高くするには有利になる。
【0026】
第一方向タンク2aの幅S2(第一直交方向の寸法)は、函体10の第一直交方向の最大となる外寸の例えば、5%以上50%以下、より好ましくは10%以上50%以下、さらに好ましくは20%以上50%以下の寸法に設定するとよい。前述した数値範囲にすることで、第一方向タンク2aによる函体10の第一方向D1における揺動抑制効果を維持しつつ、第一方向タンク2a内の流体Wbの影響による第一直交方向における函体10の揺動が収まった状態での傾きを低減するには有利になる。言い換えると、第一方向タンク2aの幅S2が、前述した数値範囲の上限値を超えると、第一方向タンク2a内の流体Wbによる第一直交方向の重心移動の影響が大きくなるので、函体10の揺動が収まった状態での傾きを低減するには不利になる。
【0027】
同様に、第二方向タンク2bの長さS1(第二方向D2の寸法)は、函体10の第二方向D2の最大となる外寸の例えば、50%以上100%以下、より好ましくは70%以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下に設定するとよい。前述した数値範囲にすることで、第二方向タンク2bを過大にすることなく、第二方向タンク2bによる函体10の第二方向D2の揺動抑制効果を高くするには有利になる。
【0028】
第二方向タンク2bの幅S2(第二直交方向の寸法)は、函体10の第二直交方向の最大となる外寸の例えば、5%以上50%以下、より好ましくは10%以上50%以下、さらに好ましくは20%以上50%以下の寸法に設定するとよい。前述した数値範囲にすることで、第二方向タンク2bによる函体10の第二方向D2における揺動抑制効果を維持しつつ、第二方向タンク2b内の流体Wbの影響による第二直交方向における函体10の揺動が収まった状態での傾きを低減するには有利になる。言い換えると、第二方向タンク2bの幅S2が、前述した数値範囲の上限値を超えると、第二方向タンク2b内の流体Wbによる第二直交方向の重心移動の影響が大きくなるので、函体10の揺動が収まった状態での傾きを低減するには不利になる。
【0029】
なお、タンク2の形状は直方体形状に限定されることなく、例えば、細長の円筒形状のタンク2にすることもできる。円筒形状のタンク2にする場合には、例えば、タンク2の下に台座などを設けると函体10に対して安定して固定できる。
【0030】
揺動防止用装置1を構成するタンク2の平面視における合計の面積は、函体10の上面の面積の例えば30%以上100%以下、より好ましくは40%以上90%以下、さらに好ましくは50%以上80%以下に設定するとよい。揺動防止用装置1を構成するタンク2の流体Wbを含む総重量は、中空部11に水Wa等を収容していない状態の空の函体10の重量の例えば、1%以上15%以下、より好ましくは1%以上10%以下、さらに好ましくは1%以上5%以下に設定するとよい。
【0031】
次に、函体10の水中への据付方法について説明する。まず、函体10を据付現場に移送する前に揺動防止用装置1を構成するそれぞれのタンク2(第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2b)を函体10の上に固設して、それぞれのタンク2の収容部3にホース30を用いて流体Wbを注入する。流体Wbとしては函体10を浮かべる水域の水などを使用する。流体Wbは、収容部3を充満させない収容量であればよいが、例えば収容部3の容積の20%~80%程度、より好ましくは30%~70%程度、さらに好ましくは40%~60%程度にするとともに、函体10の重量の1%~5%程度の重量に相当する収容量にする。
【0032】
また、上蓋14に設けられている貫通穴にホース30を挿入して、函体10の中空部11に函体10を浮かべる水域の水Waを注入する。この際の水Waの注入量は、函体10を水に浮かせた状態にできる量であり、例えば、中空部11の容積の1/5~1/2程度の容積を満たす水量にする。
【0033】
水に浮かせた状態の函体10を引船に接続して、引船により据付現場に移送する。函体10を据付現場に移送後、
図3に例示するように、既設の函体40に設置されたウインチに巻き付けられたワイヤロープ20を、既設の函体40に設置された滑車22に掛け回した状態で、据付けを行う函体10に設置されている固定部21に接続する。この実施形態では、函体10の複数箇所に固定部21を固設し、第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2bの上方に複数本のワイヤロープ20を配設している。
【0034】
そして、既設の函体40に設置された図示しないウインチによりそれぞれのワイヤロープ20の繰り出しおよび巻取りを行うことにより、函体10のXY方向での位置決めをする。また、作業者は上蓋14の上やタンク2の上などで必要な作業を行う。なお、この函体10の位置決め工程ではウインチ、ワイヤロープ20および滑車22の他にも様々な器具が使用されるが、ここでは図示および説明を省略する。函体10の据付現場への移送中、および位置決め工程では函体10は揺動する。
【0035】
ウインチは、既設の函体40に限らず、例えば、他の海上構造物や岸などに設置することもできる。また、例えば、函体10をクレーン等で吊り下げてXY方向での位置決めをすることもできる。据付現場に最初に据付ける函体10の場合は、例えば起重機船などの基準になるものに沿わせてXY方向での位置決めをする。
【0036】
函体10の位置決め工程後、ホース30を用いて函体10の中空部11に水Waを注入する。これにより、函体10を下方移動させて水底地盤に載置する。その後、中空部11に砕石等を投入して充満させる。函体10を水底地盤に据付けた後には、揺動防止用装置1を函体10から取外す。使用した揺動防止用装置1は繰り返し使用できる。
【0037】
上述したとおり、函体10を水中へ据付ける際には、函体10にはX方向およびY方向への揺動Sが発生する。尚、Z方向への揺動(上下変動)も生じるが、函体10の据付けは波が穏やかな状況で行うので、据付け方向を決める上では、大きな問題は生じない。
【0038】
図4は、函体10がX方向一方側(右側)に揺動した状況を示している。図面では、函体10がX方向およびY方向に傾いていない状態(中立状態)における函体10の浮心をCで示している。そして、中立状態における揺動防止用装置1を構成するすべてのタンク2内の流体Wbの重心を合成した合成重心をQで示している。ケーソン10の中立状態では函体10の重心G、函体10の浮心C、タンク2の流体Wbの合成重心Qは、同じXY座標に位置している(平面視では同じ位置になっている)。
図4に例示するように、函体10が例えば、X方向一方側(右側)に揺動して傾斜した際には、函体10の浮心CがX方向中央の位置から右側の位置C´まで移動する。
【0039】
水Waが収容されている函体10の重心G´は水Waの重量によって重心Gよりも大きく下方に移動している。また、函体10が右側に傾斜して水Waが右側に偏重することで重心G´は重心Gに対して右側に移動する。ただし、この右側への移動量は微小であり無視できる程度である。
【0040】
移動後の浮心C´に作用する浮力RFによって函体10の重心G´周りにモーメントRFMが発生する。このモーメントRFMは函体10を傾斜前の位置に戻そうとする復元モーメントである。この復元モーメントRFMにより函体10はX方向他方側(左側)に横揺れして、以後右側および左側への揺動が繰り返されるため函体10の揺動の原因になる。
【0041】
一方、函体10の傾斜により、それぞれのタンク2の収容部3での流体Wbの重心が函体10の傾斜方向下側の位置に移動し、タンク2の流体Wbの合成重心Qが函体10の傾斜方向下側の位置Q´に移動する。函体10が例えば、X方向一方側(右側)に揺動して傾斜した際には、X方向に延在している第一方向タンク2aの収容部3での流体Wbの重心が函体10の傾斜方向下側に移動することで、タンク2の流体Wbの合成重心Qが函体10の傾斜方向下側の位置Q´に移動する。第二方向タンク2bの収容部3での流体Wbの重心も若干移動するが、第二方向タンク2bのX方向の幅S2は狭いため、第二方向タンク2b内の流体Wbによる合成重心Qの移動量は微小である。そして、主に第一方向タンク2aの収容部3で移動した流体Wbに作用する重力によって函体10の重心G´周りにモーメントQFMが生じる。このモーメントQFMは復元モーメントRFMと逆方向のモーメント(減衰モーメント)になるため、復元モーメントRFMに起因する函体10の揺動が減衰モーメントQFMにより抑制される。その結果として、函体10の水中への据付時の揺動を抑制することができる。
【0042】
また、減衰モーメントQFMが函体10の復元モーメントRFMを打ち消すことによって、函体10の揺れの固有周期を長周期側にシフトさせることができる。その結果、揺動防止用装置1を設置しない無対策の函体10が最も揺れやすい(同調しやすい)波の周期帯(10s前後)とは異なる固有周期に変化させることによって、揺れの同調を防ぐことができる。
【0043】
同様に、函体10がY方向に揺動して傾斜した際には、Y方向に延在している第二方向タンク2bの収容部3での流体Wbの重心が函体10の傾斜方向下側に移動することで、タンク2の流体Wbの合成重心Qが函体10の傾斜方向下側の位置Q´に移動する。そして、主に第二方向タンク2bの収容部3で移動した流体Wbに作用する重力によって函体10の重心G´周りにモーメントQFMが生じ、その減衰モーメントQFMが函体10の復元モーメントRFMを打ち消すことによって、函体10のY方向の揺動が抑制される。
【0044】
このように、揺動防止用装置1を使用することで、函体10を水中に据付ける際の函体10の第一方向D1の揺動を第一方向D1に延在する細長の第一方向タンク2aによって効果的に抑制することができ、函体10の第二方向D2の揺動を第二方向D2に延在する細長の第二方向タンク2bによって効果的に抑制することができる。
【0045】
さらに、この揺動防止用装置1では、函体10の揺動を抑制するタンク2を、第一方向D1に延在する細長の第一方向タンク2aと、第二方向D2に延在する細長の第二方向タンク2bとに分けて、
図18に例示しているような従来の一基の大きなタンク2Zを設置する場合よりも、一基一基のタンク2に収容される流体Wbの流動範囲を限定的に狭めている。これにより、函体10の揺動が収まった状態では、タンク2に収容されている流体Wbに作用する重力が函体10の傾いた方向に極端に偏心することを防ぎ、函体10の揺動が収まった状態での傾きを低減できる。
【0046】
即ち、
図18に例示するように、函体10に一基の大きなタンク2Zを設置した場合には、タンク2Zの収容部3における流体Wbの流動範囲が広いため、函体10の相対的に沈んでいる方向(傾斜方向下側)に多量の流体Wbが集中して偏在した状態となり、タンク2Z内の流体Wbの重心Q´が、函体10が傾いた方向に大きく偏心した状態となる。それに対して、この揺動防止用装置1では、
図5に例示するように、函体10が傾いた場合にも、それぞれの細長のタンク2に収容されている流体Wbの流動方向が限定的に狭められていることで、タンク2に収容されている流体Wbの合成重心Q´が函体10の傾いた方向に極端に偏心することを抑制し、函体10の傾きを低減できる。
【0047】
特に、それぞれのタンク2の寸法を、長手方向の長さS1に対して幅S2を50%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは20%未満、さらに好ましくは15%以下にすると、函体10の揺動を効果的に抑制しつつ、函体10の揺動が収まった状態での傾きを低減するには非常に有利になる。
【0048】
例えば、第一方向タンク2aと第二方向タンク2bをそれぞれ一基ずつ設置した構成にすることもできるが、タンク2の数を少なくすると、函体10の揺動を抑制するにはそれぞれのタンク2の容量を大きくする必要があり、それぞれのタンク2における流体Wbの流動範囲が広くなる。そのため、好ましくは、細長の複数の第一方向タンク2aを互いに間隔をあけて並列に設置した構成にするとよい。より好ましくは、平面視で複数の第二方向タンク2bも互いに間隔をあけて並列に設置した構成にするとよい。複数の第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2bを設けることで、それぞれのタンク2の容量を小さくして、それぞれのタンク2における流体Wbの流動範囲を狭くしつつ、函体10の揺動や傾きを効果的に抑制することができる。
【0049】
特に、この実施形態のように、2基の第一方向タンク2aと2基の第二方向タンク2bとを井桁状に配置すると、函体10がどの方向に傾いた場合にも、2基の第一方向タンク2aと2基の第二方向タンク2bにそれぞれ収容されている流体Wbがバランスよく移動するので、函体10の揺動をより効果的に抑制できる。また、4基のタンク2が函体10の重心Gを囲むように四方にバランスよく配置されていることで、4基のタンク2に収容されている流体Wbの合成重心Q´が、函体10の傾いた方向に極端に偏心し難くなり、函体10の傾きを低減するには有利になる。
【0050】
第一方向タンク2aと第二方向タンク2bとをZ方向に重ねて設置する構成にすると、第一方向タンク2aと第二方向タンク2bのそれぞれの長さS1を長く設定することが可能になる。それ故、第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2bによる函体10の揺動抑制効果を高めるには有利になる。
【0051】
この実施形態では、タンク2の収容部3に収容する流体Wbとして水を使用したが、水以外の液体を収容部3に収容してもよい。特に、水より比重の大きい液体を収容部3に収容すると、流体Wbに作用する重力QFがより大きくなって、減衰モーメントQFMを大きくすることができるので、復元モーメントRFMの抑制効果をより大きくすることができる。
【0052】
この実施形態では、函体10を据付現場に移送する前にそれぞれのタンク2に流体Wbを収容しているが、タンク2に流体Wbを注入して収容する時期はこの時期に限定されず、水底地盤に対する函体10の据付位置決めを行う前までであればよい。この実施形態のように函体10の移送前に、それぞれのタンク2に流体Wbを収容すると、据付現場への函体10の移送時における函体10の揺動も抑制することができるのでより好ましい。
【0053】
図6、7に例示する第2実施形態の揺動防止用装置1では、函体10(上蓋14)の上に設置した支持台8の上に第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2bを設置している。そして、第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2bの下方に通したワイヤロープ20を用いて函体10の位置合わせを行う構成にしている。その他の構成は、先に例示した第1実施形態の揺動防止用装置1と同様であり、同様の効果を得ることができる。
【0054】
このように、支持台8を設けて、第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2bを函体10の上面から離間させて配置すると、函体10の位置合わせに用いるワイヤロープ20を、函体10の上面と第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2bの下面との間に配設できるので、ワイヤロープ20によって函体10をより低い位置で牽引することが可能になる。それ故、函体10の位置合わせを行う際の函体10の揺動や傾きを低減するには有利になる。
【0055】
図8に例示する第3実施形態の揺動防止用装置1では、2基の第一方向タンク2aと2基の第二方向タンク2bを上下方向(Z方向)に重ねずにそれぞれ函体10(上蓋14)の上に設置している。その他の構成は、第1実施形態の揺動防止用装置1と同様である。
【0056】
この実施形態では、間隔をあけて並列に設置した2基の第一方向タンク2aの間に、2基の第二方向タンク2bを互いに間隔をあけて並列に設置している。この揺動防止用装置1を構成するすべてのタンク2は函体10の重心G上には配置されておらず、函体10の重心Gの周囲に配置されている。このような配置にした場合にも、第1実施形態の揺動防止用装置1と概ね同様の効果を得ることができる。この実施形態のように、第一方向タンク2aと第二方向タンク2bとをZ方向に重ねない配置にすると、函体10に対する第一方向タンク2aと第二方向タンク2bの設置作業がより容易になる。また、揺動防止用装置1の高さを低くできるので、揺動防止用装置1の上方にワイヤロープ20を配設する場合にも、函体10をより低い位置で牽引することが可能になる。
【0057】
図9に例示する第4実施形態の揺動防止用装置1では、第二方向タンク2bを1基にして、函体10のY方向の中央に第二方向タンク2bを設置している。この揺動防止用装置1では、第二方向タンク2bが函体10の重心G上に配置されている。その他の構成は、第1実施形態の揺動防止用装置1と同様である。
【0058】
第1実施形態の揺動防止用装置1のように複数の第二方向タンク2bを互いに間隔をあけて並列に設置したほうが、第二方向D2における函体10の揺動抑制効果を高めるには有利になるが、この実施形態のように、第二方向タンク2bを1基にした場合にも、第1実施形態の揺動防止用装置1と概ね同様の効果を得ることができる。第二方向タンク2bを一基にすると、揺動防止用装置1をよりコンパクトに構成できるので、比較的小さい函体10には適している。
【0059】
図10に例示する第5実施形態の揺動防止用装置1では、第一方向D1をY方向とし、第二方向D2をX方向としている。そして、2基の第一方向タンク2aと1基の第二方向タンク2bをZ方向に重ねずにそれぞれ函体10(上蓋14)の上に設置している。第二方向タンク2bは、函体10の幅方向(Y方向)の中央に設置している。この揺動防止用装置1では、第二方向タンク2bが函体10の重心G上に配置されている。その他の構成は、第1実施形態の揺動防止用装置1と同様であり、第1実施形態の揺動防止用装置1と概ね同様の効果を得ることができる。
【0060】
このように第一方向タンク2aを延在させる第一方向D1と、第二方向タンク2bを延在させる第二方向D2は、互いに交差する方向であればよく、第一方向D1および第二方向D2は、函体10の形状や大きさに応じて適宜設定できる。
【0061】
図11に例示する第6実施形態の揺動防止用装置1では、第一方向D1を函体10の平面視における斜め方向とし、第二方向D2を平面視において第一方向D1と交差する斜め方向としている。第一方向D1と第二方向D2は互いに直交する方向に設定している。そして、2基の第一方向タンク2aと2基の第二方向タンク2bを上下方向(Z方向)に重ねて、井桁状に配置している。この揺動防止用装置1を構成するすべてのタンク2は函体10の重心G上には配置されておらず、函体10の重心Gの周囲に配置されている。その他の構成は、第1実施形態の揺動防止用装置1と同様であり、第1実施形態の揺動防止用装置1と概ね同様の効果を得ることができる。
【0062】
このように、第一方向D1と第二方向D2を函体10の平面視における斜め方向に設定した場合にも、第一方向D1における函体10の揺動を主に第一方向タンク2aによって抑制し、第二方向D2における函体10の揺動を主に第二方向タンク2bによって抑制することで、上述した他の実施形態と同様に函体10の揺動を効果的に抑制できる。据付現場の波浪状況や函体10の形状等に基づいて函体10が揺動し易い方向が予測できる場合には、その函体10が揺動し易い方向を、第一方向D1に設定すると、函体10の揺動を効果的に抑制することができる。
【0063】
図12に例示する第7実施形態の揺動防止用装置1では、第一方向D1を函体10の平面視における斜め方向とし、第二方向D2を平面視において第一方向D1と交差する斜め方向としている。この実施形態では、第一方向D1と第二方向D2とを互いに直交する方向には設定せずに、第一方向D1と第二方向D2をそれぞれ平面視における函体10の角部と角部を結ぶ対角線と平行な方向に設定している。2基の第一方向タンク2aと2基の第二方向タンク2bは、それぞれ平面視で重ならない位置に配置されている。この揺動防止用装置1を構成するすべてのタンク2は函体10の重心G上には配置されておらず、函体10の重心Gの周囲に配置されている。その他の構成は、第1実施形態の揺動防止用装置1と同様であり、第1実施形態の揺動防止用装置1と概ね同様の効果を得ることができる。
【0064】
この実施形態のように、第一方向D1と第二方向D2をそれぞれ平面視における函体10の角部と角部を結ぶ対角線と平行な方向に設定すると、それぞれのタンク2が平面視で函体10の上面から外側に突出することを防ぎつつ、それぞれのタンク2の長さを比較的長く設定することが可能になる。それ故、函体10の揺動を抑制するには有利になる。
【0065】
図13に例示する第8実施形態の揺動防止用装置1では、第一方向D1をX方向、第二方向D2をY方向として、1基の第一方向タンク2aを函体10のY方向の端に設置し、1基の第二方向タンク2bを函体10のX方向の端に設置している。この揺動防止用装置1を構成するすべてのタンク2は函体10の重心G上には配置されておらず、函体10の重心Gの周囲に配置されている。さらに、第一方向タンク2aと第二方向タンク2bが設置されていない函体10の角部付近に、函体10が中立状態になった状態での函体10の傾きを防ぐ重量調整体50が設けられている。重量調整体50の配置と重量は、函体10が中立状態になった状態で、第一方向タンク2a、第二方向タンク2bおよび重量調整体50の合成重心が、平面視で函体10の重心Gと一致するように設定する。
【0066】
この実施形態の揺動防止用装置1においても、第一方向タンク2aにより函体10の第一方向D1の揺動を抑制し、第二方向タンク2bにより函体10の第二方向D2の揺動を抑制することで、函体10の揺動を効果的に抑制できる。さらに、重量調整体50を設けていることで、函体10の揺動が収まった後の函体10の傾きを低減できる。重量調整体50は、例えば、金属などの錘で構成することもできるし、水などの流体を充満可能なタンクなどで構成することもできる。重量調整体50は複数設置することもできる。
【0067】
第一方向タンク2aと第二方向タンク2bを重ねる部分の構造は、例えば、
図14~
図17に例示するような構造にすることもできる。
図14~
図17に例示するそれぞれの実施形態では、第一方向タンク2aと第二方向タンク2bにそれぞれ切欠き部9を設けて、第一方向タンク2aと第二方向タンク2bの切欠き部9どうしを嵌め合わせる構造にしている。
図14~
図17の(a)はそれぞれ第一方向タンク2aと第二方向タンク2bとを重ね合わせる前の状態を示しており、
図14~
図17の(b)はそれぞれ第一方向タンク2aと第二方向タンク2bとを重ね合わせた状態を示している。
【0068】
図14に例示する実施形態では、第一方向タンク2aの端部と第二方向タンク2bの端部にそれぞれ直方体形状の切欠き部9を設けている。
図15に例示する実施形態では、第一方向タンク2aの端部と第二方向タンク2bの端部にそれぞれ三角柱形状の切欠き部9を設けている。
図16に例示する実施形態では、第一方向タンク2aの端部と第二方向タンク2bの端部にそれぞれ底面が台形の四角柱形状の切欠き部9を設けている。
図17に例示する実施形態では、第一方向タンク2aの中途部分と第二方向タンク2bの中途部分にそれぞれ直方体形状の切欠き部9を設けている。
【0069】
このように第一方向タンク2aと第二方向タンク2bの切欠き部9どうしを嵌め合わせる構造にすると、第一方向タンク2aと第二方向タンク2bを重ねつつ、揺動防止用装置1の高さを低くできるので、揺動防止用装置1の上方にワイヤロープ20を配設する場合にも、函体10をより低い位置で牽引することが可能になる。また、第一方向タンク2aの上面と第二方向タンク2bの上面との段差を小さくできるので、作業者が第一方向タンク2aと第二方向タンク2bとの間をより行き来し易くなり、作業性が向上する。
【0070】
なお、揺動防止用装置1を構成する第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2bの設置数や配置は、上記で例示した実施形態に限定されず、函体10の形状やサイズに応じて、他にも様々な構成にすることができる。例えば、第一方向タンク2aを3基以上並列して設置した構成にすることもできるし、第二方向タンク2bを3基以上並列して設置した構成にすることもできる。また、例えば、第一方向タンク2aおよび第二方向タンク2bに加えて、さらに、平面視で第一方向D1および第二方向D2とは異なる方向に延在する別の細長のタンク2を設置することもできる。
【符号の説明】
【0071】
1 函体の揺動防止用装置
2 タンク
2a 第一方向タンク
2b 第二方向タンク
3 収容部
4 底面部
5 側面部
6 上面部
7 注入口
7a 開閉蓋
8 支持台
9 切欠き部
9a 平坦面
9b 傾斜面
10 函体(ケーソン)
11 中空部
12 外壁
13 隔壁
14 上蓋
20 ワイヤロープ
21 固定部
22 滑車
30 ホース
40 既設の函体
50 重量調整体
Wa 中空部に収容されている水
Wb 収容部に収容されている流体
【手続補正書】
【提出日】2022-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する函体の上に収容部を有するタンクを設置して前記収容部に流体を非充満の状態で収容しておき、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体を前記函体の傾斜方向下側に向かって流動させることにより、前記函体の揺動を抑制しつつ、前記中空部に水を注入することにより前記函体を下方移動させて水中の所定位置に据付ける函体の水中への据付方法において、
前記タンクとして、平面視で特定の第一方向に延在する細長の複数の第一方向タンクを互いに間隔をあけて並列に設置し、かつ、平面視で前記第一方向に交差する第二方向に延在する細長の第二方向タンクを設置し、前記第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、前記第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、かつ、それぞれの前記第一方向タンクと前記第二方向タンクは、それぞれ独立して互いに連通しない構造にすることを特徴とする函体の水中への据付方法。
【請求項2】
中空部を有する函体の上に収容部を有するタンクを設置して前記収容部に流体を非充満の状態で収容しておき、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体を前記函体の傾斜方向下側に向かって流動させることにより、前記函体の揺動を抑制しつつ、前記中空部に水を注入することにより前記函体を下方移動させて水中の所定位置に据付ける函体の水中への据付方法において、
前記タンクとして、長手方向の長さに対して幅が20%以下である細長の前記タンクを平面視で特定の第一方向と、平面視で前記第一方向に交差する第二方向とにそれぞれ延在させて設置し、前記第一方向に延設する第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、前記第二方向に延設する第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、かつ、前記第一方向タンクと前記第二方向タンクは、それぞれ独立して互いに連通しない構造にすることを特徴とする函体の水中への据付方法。
【請求項3】
前記第二方向を、平面視で前記第一方向に直交する方向とする請求項1または2に記載の函体の水中への据付方法。
【請求項4】
平面視で複数の前記第二方向タンクを互いに間隔をあけて並列に設置し、かつ、それぞれの前記第一方向タンクと前記第二方向タンクは、それぞれ独立して互いに連通しない構造にする請求項1~3のいずれかに記載の函体の水中への据付方法。
【請求項5】
前記第一方向タンクと前記第二方向タンクとを前記函体の上下方向に重ねて設置する請求項1~4のいずれかに記載の函体の水中への据付方法。
【請求項6】
前記函体の上に設置した支持台の上方に前記第一方向タンクおよび前記第二方向タンクを設置して、前記第一方向タンクおよび前記第二方向タンクよりも下方に配設したワイヤロープを用いて前記函体の位置合わせを行う請求項1~5のいずれかに記載の函体の水中への据付方法。
【請求項7】
水中に据付けられる函体の上面に設置されて流体を収容する収容部を有し、この収容部には前記流体が非充満の状態で収容され、前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体が前記函体の傾斜方向下側に向かって流動する構成であるタンクを備えた函体の揺動防止用装置において、
前記タンクとして、平面視で特定の第一方向に延在する細長の複数の第一方向タンクが互いに間隔をあけて並列に設置されていて、かつ、平面視で前記第一方向に交差する第二方向に延在する細長の第二方向タンクが設置されていて、前記第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、前記第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、それぞれの前記第一方向タンクと前記第二方向タンクは、それぞれ独立して互いに連通しない構造であることを特徴とする函体の揺動防止用装置。
【請求項8】
水中に据付けられる函体の上面に設置されて流体を収容する収容部を有し、この収容部には前記流体が非充満の状態で収容され、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体が前記函体の傾斜方向下側に向かって流動する構成であるタンクを備えた函体の揺動防止用装置において、
前記タンクとして、長手方向の長さに対して幅が20%以下である細長の前記タンクが平面視で特定の第一方向と、平面視で前記第一方向に交差する第二方向とにそれぞれ延在して設置されていて、前記第一方向に延設された第一方向タンクは、平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、前記第二方向に延設された第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、前記第一方向タンクと前記第二方向タンクは、それぞれ独立して互いに連通しない構造であることを特徴とする函体の揺動防止用装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の函体の水中への据付方法は、中空部を有する函体の上に収容部を有するタンクを設置して前記収容部に流体を非充満の状態で収容しておき、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体を前記函体の傾斜方向下側に向かって流動させることにより、前記函体の揺動を抑制しつつ、前記中空部に水を注入することにより前記函体を下方移動させて水中の所定位置に据付ける函体の水中への据付方法において、前記タンクとして、平面視で特定の第一方向に延在する細長の複数の第一方向タンクを互いに間隔をあけて並列に設置し、かつ、平面視で前記第一方向に交差する第二方向に延在する細長の第二方向タンクを設置し、前記第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、前記第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、かつ、それぞれの前記第一方向タンクと前記第二方向タンクは、それぞれ独立して互いに連通しない構造にすることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の別の函体の水中への据付方法は、中空部を有する函体の上に収容部を有するタンクを設置して前記収容部に流体を非充満の状態で収容しておき、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体を前記函体の傾斜方向下側に向かって流動させることにより、前記函体の揺動を抑制しつつ、前記中空部に水を注入することにより前記函体を下方移動させて水中の所定位置に据付ける函体の水中への据付方法において、前記タンクとして、長手方向の長さに対して幅が20%以下である細長の前記タンクを平面視で特定の第一方向と、平面視で前記第一方向に交差する第二方向とにそれぞれ延在させて設置し、前記第一方向に延設する第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、前記第二方向に延設する第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置し、かつ、前記第一方向タンクと前記第二方向タンクは、それぞれ独立して互いに連通しない構造にすることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の函体の揺動防止用装置は、水中に据付けられる函体の上面に設置されて流体を収容する収容部を有し、この収容部には前記流体が非充満の状態で収容され、前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体が前記函体の傾斜方向下側に向かって流動する構成であるタンクを備えた函体の揺動防止用装置において、前記タンクとして、平面視で特定の第一方向に延在する細長の複数の第一方向タンクが互いに間隔をあけて並列に設置されていて、かつ、平面視で前記第一方向に交差する第二方向に延在する細長の第二方向タンクが設置されていて、前記第一方向タンクは、前記平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、前記第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、それぞれの前記第一方向タンクと前記第二方向タンクは、それぞれ独立して互いに連通しない構造であることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の別の函体の揺動防止用装置は、水中に据付けられる函体の上面に設置されて流体を収容する収容部を有し、この収容部には前記流体が非充満の状態で収容され、水に浮かせた状態の前記函体が揺動して傾斜した際には、前記収容部の中で前記流体が前記函体の傾斜方向下側に向かって流動する構成であるタンクを備えた函体の揺動防止用装置において、前記タンクとして、長手方向の長さに対して幅が20%以下である細長の前記タンクが平面視で特定の第一方向と、平面視で前記第一方向に交差する第二方向とにそれぞれ延在して設置されていて、前記第一方向に延設された第一方向タンクは、平面視で前記第一方向に直交する第一直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、前記第二方向に延設された第二方向タンクは、平面視で前記第二方向に直交する第二直交方向から見て前記函体の重心を跨ぐ位置に配置されていて、前記第一方向タンクと前記第二方向タンクは、それぞれ独立して互いに連通しない構造であることを特徴とする。