(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103075
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】操船システムおよびそれを備える船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 21/22 20060101AFI20230719BHJP
B63H 20/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B63H21/22 C
B63H20/00 803
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003925
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 健人
(57)【要約】
【課題】小さなスペースで配置可能な操船ステーションを備える操船システムおよび船舶を提供する。
【解決手段】操船システムは、操舵および推進力調節のための複数の操船ステーションSTを含む。複数の操船ステーションは、ステアリングホイール31および推進力調節のためのアクセルレバー33を備えるメインステーションMS1,MS2と、メインステーションから離れて配置され、操舵および推進力調節のための操作子としてジョイスティック36Sのみを備えるサブステーションSSと、を含む。サブステーションに備えられたジョイスティックボタンの操作によって、有効ステーションがメインステーションからサブステーションに遷移してもよい。そのとき、同時に、制御モードがジョイスティックモードに遷移してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵および推進力調節のための複数の操船ステーションを含む、操船システムであって、
前記複数の操船ステーションは、
ステアリングホイールおよび推進力調節のためのアクセルレバーを備えるメインステーションと、
前記メインステーションから離れて配置され、操舵および推進力調節のための操作子としてジョイスティックのみを備えるサブステーションと、
を含む、操船システム。
【請求項2】
前記複数の操船ステーションのうちの一つのみを、操舵および推進力調節のための操作が有効な有効ステーションに選択するステーション管理を実行するコントローラをさらに含み、
前記サブステーションは、前記ジョイスティックの操作入力を有効にするために使用者によって操作されるジョイスティックボタンを含み、
前記コントローラは、前記ジョイスティックボタンの操作に応答して、前記サブステーションを有効ステーションに選択する、請求項1に記載の操船システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記ジョイスティックボタンの操作に応答して、予め定めるサブステーション遷移条件の充足を判定し、前記サブステーション遷移条件を充足していると判定すると、前記サブステーションを有効ステーションに選択し、
前記サブステーション遷移条件は、
現在の有効ステーションの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、
前記サブステーションの前記ジョイスティックの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、および
当該操船システムが備えられる船舶に搭載された推進機の少なくとも一つが、推進力を発生可能な状態であること、
のうちの少なくとも一つを含む、請求項2に記載の操船システム。
【請求項4】
前記メインステーションは、当該メインステーションによる操船を有効にするために使用者によって操作されるステーション変更ボタンを含み、
前記コントローラは、前記ステーション変更ボタンの操作に応答して、予め定めるメインステーション遷移条件を判定し、前記メインステーション遷移条件を充足していると判定すると、前記メインステーションを有効ステーションに選択し、
前記メインステーション遷移条件は、
現在の有効ステーションの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、および
遷移先の前記メインステーションの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、
のうちの少なくとも一つを含む、請求項2または3に記載の操船システム。
【請求項5】
前記コントローラは、推進機の制御モードを管理するモード管理をさらに実行し、
前記制御モードは、ジョイスティックの操作が無効となる通常モードと、ジョイスティックの操作が有効なジョイスティックモードとを含み、
前記コントローラは、前記サブステーションを有効ステーションに選択するときに、当該制御モードを前記ジョイスティックモードに設定する、請求項2~4のいずれか一項に記載の操船システム。
【請求項6】
前記コントローラは、推進機の制御モードを管理するモード管理をさらに実行し、
前記制御モードは、ステアリングホイールおよびアクセルレバーの操作が有効で、かつジョイスティックの操作が無効となる通常モードと、ジョイスティックの操作が有効なジョイスティックモードとを含み、
前記コントローラは、前記サブステーションを有効ステーションに選択するときに、当該制御モードを前記ジョイスティックモードに設定し、前記メインステーションの前記ステーション変更ボタンの操作に応答して前記メインステーションを有効ステーションに選択するときに、前記制御モードを前記通常モードに設定する、請求項4に記載の操船システム。
【請求項7】
前記メインステーションは、さらにジョイスティックを含み、
前記ジョイスティックモードは、有効ステーションに備えられたジョイスティックの操作に応答する制御モードである、請求項5または6に記載の操船システム。
【請求項8】
前記ジョイスティックモードは、複数の推進機の推進力を利用する第1ジョイスティックモードと、前記複数の推進機のうちの推進力発生可能な一部の推進機の推進力を利用する第2ジョイスティックモードとを含み、
前記コントローラは、前記ジョイスティックモードを設定するときに、前記複数の推進機が推進力発生可能かどうかを判断し、前記複数の推進機の全てが推進力発生可能なときには前記第1ジョイスティックモードを設定し、前記複数の推進機のうちのいずれかが推進力発生不可能なときには前記第2ジョイスティックモードを設定する、請求項5~7に記載の操船システム。
【請求項9】
前記第1ジョイスティックモードは、ジョイスティックの所定の操作に応じて、前記複数の推進機の推進力の利用を必須とする所定の船体挙動を達成するように前記複数の推進機を制御する制御モードであり、
前記第2ジョイスティックモードは、前記所定の船体挙動を無効にする制御モードである、請求項8に記載の操船システム。
【請求項10】
前記所定の船体挙動は、船体を実質的に回頭させることなく並進させる並進移動、および船体の位置を実質的に変化させることなく回頭させるその場回頭動作のうちの少なくとも一つを含む、請求項9に記載の操船システム。
【請求項11】
複数の推進機と、
ジョイスティックと、
前記ジョイスティックの操作に応じて前記複数の推進機を制御するジョイスティックモードを、前記推進機を制御するための制御モードとして有するコントローラと、を含み、
前記ジョイスティックモードは、複数の推進機の推進力を利用する第1ジョイスティックモードと、前記複数の推進機のうちの推進力発生可能な一部の推進機の推進力を利用する第2ジョイスティックモードとを含み、
前記コントローラは、前記ジョイスティックモードを設定するときに、前記複数の推進機が推進力発生可能かどうかを判断し、前記複数の推進機の全てが推進力発生可能なときには前記第1ジョイスティックモードを設定し、前記複数の推進機のうちのいずれかが推進力発生不可能なときには前記第2ジョイスティックモードを設定する、操船システム。
【請求項12】
前記第1ジョイスティックモードは、ジョイスティックの所定の操作に応じて、前記複数の推進機の推進力の利用を必須とする所定の船体挙動を達成するように前記複数の推進機を制御する制御モードであり、
前記第2ジョイスティックモードは、前記所定の船体挙動を無効にする制御モードである、請求項11に記載の操船システム。
【請求項13】
前記所定の船体挙動は、船体を実質的に回頭させることなく並進させる並進移動、および船体の位置を実質的に変化させることなく回頭させるその場回頭動作のうちの少なくとも一つを含む、請求項12に記載の操船システム。
【請求項14】
船体と、
船体に装備された、請求項1~13のいずれか一項に記載の操船システムと、を含む、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操船システムおよびそれを備える船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の操船ステーションには、操船者によって操作される操作子が配置される。典型的な操作子は、ステアリングホイールおよびアクセルレバーである。操船者は、ステアリングホイールの操作によって船舶の針路を変更でき、アクセルレバーの操作によって推進力を調節できる。特許文献1に開示されているように、さらに別の操作子であるジョイスティックが操船ステーションに備えられる場合がある。操船者は、ジョイスティックを操作することによって、船舶の針路および推進力を調節することができる。ジョイスティックによる操船は、典型的には、離着岸時や停泊中に船舶の位置および方位の微調整を行う場面に適している。
【0003】
特許文献2に開示されているように、一つの船舶に複数の操船ステーションが備えられる場合もある。複数の操船ステーションは、操船のための同じ操作子を備えるのが通常であり、各操船ステーションは、少なくとも、ステアリングホイールおよびアクセルレバーを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-56757号公報
【特許文献2】特開2015-66978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステアリングホイールおよびアクセルレバーを備える操船ステーションは船内で相応の配置スペースを占有するので、複数の操船ステーションの配置は、比較的大型の船舶であることを要する。しかし、小型の船舶であっても、船内の複数の場所での操船が可能であれば、便利である。たとえば、漁場に到着して操船ステーションを離れてデッキに出て釣りを開始した後、船舶の位置および方位を変更したいときに、デッキと操船ステーションとの間の移動に要する距離および時間を短縮できれば便利である。また、同様の理由で、比較的大型の船舶において複数の操船ステーションを備えることができる場合であっても、さらに船内の別の場所に追加の操船ステーションを設けることができれば、より便利になる。むろん、比較的大型の船舶であっても、スペースには制限がある。
【0006】
そこで、この発明の一実施形態は、小さなスペースで配置可能な操船ステーションを備える操船システムおよび船舶を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、操舵および推進力調節のための複数の操船ステーションを含む、操船システムを提供する。前記複数の操船ステーションは、ステアリングホイールおよび推進力調節のためのアクセルレバーを備えるメインステーションと、前記メインステーションから離れて配置され、操舵および推進力調節のための操作子としてジョイスティックのみを備えるサブステーションと、を含む。
【0008】
この構成によれば、ステアリングホイールおよびアクセルレバーを備えるメインステーションに加えて、メインステーションから離れた位置にサブステーションが設けられている。サブステーションは、操舵および推進力調節のための操作子としてジョイスティックのみを備える構成であるので、メインステーションに比較して、船内の小さなスペースに設けることができる。したがって、比較的小型の船舶においても、メインステーションのほかにサブステーションを設けることができる。また、比較的大型の船舶においても、船内のスペースを過度に圧迫することなく操船ステーションを増設することができる。それにより、利便性の高い操船システムを船舶に備えることができる。
【0009】
一つの実施形態では、前記操船システムは、前記複数の操船ステーションのうちの一つのみを、操舵および推進力調節のための操作が有効な有効ステーションに選択するステーション管理を実行するコントローラをさらに含む。前記サブステーションは、前記ジョイスティックの操作入力を有効にするために使用者によって操作されるジョイスティックボタンを含む。前記コントローラは、前記ジョイスティックボタンの操作に応答して、前記サブステーションを有効ステーションに選択する。
【0010】
この構成によれば、サブステーションにおいてジョイスティックボタンを操作することにより、サブステーションが有効ステーションとなり、サブステーションのジョイスティックの操作入力が有効になる。それにより、操船者は、簡単な操作で、メインステーションからサブステーションへと有効ステーションを遷移させ、サブステーションにおいてジョイスティックを用いる操船を行うことができる。したがって、操船者は、メインステーションに戻ることなくサブステーションでの操船を開始できる。
【0011】
一つの実施形態では、前記コントローラは、前記ジョイスティックボタンの操作に応答して、予め定めるサブステーション遷移条件の充足を判定し、前記サブステーション遷移条件を充足していると判定すると、前記サブステーションを有効ステーションに選択する。前記サブステーション遷移条件は、現在の有効ステーションの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、前記サブステーションの前記ジョイスティックの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、および当該操船システムが備えられる船舶に搭載された推進機の少なくとも一つが、推進力を発生可能な状態であること、のうちの少なくとも一つを含む。
【0012】
この構成によれば、サブステーション遷移条件の充足を条件として、サブステーションが有効ステーションとなるので、メインステーションからサブステーションへの有効ステーションの遷移を適切に実行できる。したがって、サブステーションへの円滑な遷移を確保しながら、高い利便性を実現した操船システムを提供できる。
【0013】
サブステーション遷移条件は、現在の有効ステーションの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、前記サブステーションの前記ジョイスティックの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、および当該操船システムが備えられる船舶に搭載された推進機の少なくとも一つが、推進力を発生可能な状態であること、の全部を含むことが好ましい。
【0014】
とくに、当該操船システムが備えられる船舶に搭載された推進機の少なくとも一つが、推進力を発生可能な状態であることをサブステーション遷移条件とすることにより、推進力の利用が可能な状態で、有効ステーションがサブステーションに遷移する。したがって、操船者は、サブステーションにおいて、ジョイスティックの操作によって、推進力を利用した操船を行うことができる。
【0015】
一つの実施形態では、前記メインステーションは、当該メインステーションによる操船を有効にするために使用者によって操作されるステーション変更ボタンを含む。前記コントローラは、前記ステーション変更ボタンの操作に応答して、予め定めるメインステーション遷移条件を判定し、前記メインステーション遷移条件を充足していると判定すると、前記メインステーションを有効ステーションに選択する。前記メインステーション遷移条件は、現在の有効ステーションの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、および遷移先の前記メインステーションの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、のうちの少なくとも一つを含む。
【0016】
この構成によれば、メインステーションに設けられたステーション変更ボタンを操作することによって、操船者は、メインステーションのステアリングホイールおよびアクセルレバーを用いた操船を行うことができる。有効ステーションをメインステーションに遷移する際には、メインステーション遷移条件が充足されていることが条件となる。それにより、メインステーションへの円滑な遷移を確保しながら、高い利便性を実現した操船システムを提供できる。
【0017】
メインステーション遷移条件は、現在の有効ステーションの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、および遷移先のメインステーションの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態であること、の両方を含むことが好ましい。
【0018】
一つの実施形態では、前記コントローラは、推進機の制御モードを管理するモード管理をさらに実行する。前記制御モードは、ジョイスティックの操作が無効となる通常モードと、ジョイスティックの操作が有効なジョイスティックモードとを含む。前記コントローラは、前記サブステーションを有効ステーションに選択するときに、当該制御モードを前記ジョイスティックモードに設定する。
【0019】
ジョイスティックの操作が無効となる通常モードとは、具体的には、ステアリングホイールおよびアクセルレバーによる操船が有効な制御モードである。つまり、コントローラは、ジョイスティックの操作を無効化し、ステアリングホイールおよびアクセルレバーの操作に従って推進機を制御する。一方、ジョイスティックモードは、ジョイスティックの操作が有効な制御モードである。
【0020】
ジョイスティックボタンの操作によって有効ステーションをサブステーションに遷移させるときに、さらに制御モードを通常モードからジョイスティックモードに変更するための操作が必要だとすれば、サブステーションにおいてジョイスティックを用いる操船を行うまでの手順が長い。そこで、ジョイスティックボタンの操作に応答して、有効ステーションをサブステーションに遷移させるときに、同時に制御モードをジョイスティックモードに設定すれば、手順を短くできるので、一層利便性の高い操船システムを実現できる。サブステーションには、操舵および推進力調節のための操作子としてジョイスティックのみが備えられているので、上記のような制御モードの自動遷移は、合理的である。むろん、サブステーションに操舵および推進力調節のための操作子として、ジョイスティック以外のもの(たとえばステアリングホイールおよびアクセルレバー)が備えられるとすれば、上記のような制御モードの自動遷移は必ずしも適切ではない。
【0021】
一つの実施形態では、前記コントローラは、推進機の制御モードを管理するモード管理をさらに実行する。前記制御モードは、ステアリングホイールおよびアクセルレバーの操作が有効で、かつジョイスティックの操作が無効となる通常モードと、ジョイスティックの操作が有効なジョイスティックモードとを含む。前記コントローラは、前記サブステーションを有効ステーションに選択するときに、当該制御モードを前記ジョイスティックモードに設定し、前記メインステーションの前記ステーション変更ボタンの操作に応答して前記メインステーションを有効ステーションに選択するときに、前記制御モードを前記通常モードに設定する。
【0022】
前述のとおり、ジョイスティックボタンの操作に応答して、有効ステーションをサブステーションに遷移させるときに、同時に制御モードをジョイスティックモードに設定することにより、手順を短くできるので、一層利便性の高い操船システムを実現できる。一方、メインステーションのステーション変更ボタンの操作によって有効ステーションをメインステーションに遷移させるとき、制御モードが通常モードに設定される。それにより、通常モードに遷移させるための操作を要することなく、メインステーションのステアリングホイールおよびアクセルレバーを用いる操船が可能になる。したがって、さらに利便性の高い操船システムを実現できる。
【0023】
メインステーションにジョイスティックが備えられる場合には、操船者は、ステアリングホイールおよびアクセルレバーではなく、メインステーションに遷移した後に、ジョイスティックによる操船を望むことがあり得る。しかし、メインステーションにおける通常の操船は、ステアリングホイールおよびアクセルレバーによって行われるので、通常モードをデフォルト制御モードとするのが適切である。そして、有効ステーションがメインステーションに遷移した直後の制御モードが通常モード(デフォルト制御モード)であることにより、操船者にとって、制御モードを認識し易いので、好ましい。
【0024】
操舵および推進力調節のための操作子がジョイスティックのみであるサブステーションにおいては、このような事情がなく、有効ステーションがサブステーションであるときの制御モードがジョイスティックモードであることにより、操船者は、制御モードを意識する必要がなくなる。
【0025】
一つの実施形態では、前記メインステーションは、さらにジョイスティックを含む。前記ジョイスティックモードは、有効ステーションに備えられたジョイスティックの操作に応答する制御モードである。
【0026】
つまり、ジョイスティックモードのとき、有効ステーションがメインステーションであれば、コントローラは、メインステーションのジョイスティックの操作に応答して推進機を制御する。一方、ジョイスティックモードのとき、有効ステーションがサブステーションであれば、コントローラは、サブステーションのジョイスティックの操作に応答して推進機を制御する。
【0027】
一つの実施形態では、前記ジョイスティックモードは、複数の推進機の推進力を利用する第1ジョイスティックモードと、前記複数の推進機のうちの推進力発生可能な一部の推進機の推進力を利用する第2ジョイスティックモードとを含む。前記コントローラは、前記ジョイスティックモードを設定するときに、前記複数の推進機が推進力発生可能かどうかを判断し、前記複数の推進機の全てが推進力発生可能なときには前記第1ジョイスティックモードを設定し、前記複数の推進機のうちのいずれかが推進力発生不可能なときには前記第2ジョイスティックモードを設定する。
【0028】
この構成によれば、第1ジョイスティックモードにおいて推進力を利用する複数の推進機の全てが推進力発生可能かどうかが判断され、その判断結果に応じて、第1ジョイスティックモードまたは第2ジョイスティックモードが設定される。したがって、複数の推進機の状態に応じて、適切なジョイスティックモードが選択されるので、ジョイスティックの操作に応じて、推進機の制御を適切に行うことができる。
【0029】
もしも、第1ジョイスティックモードにおいて推進力を利用する複数の推進機の一部が推進力発生不可能であるにもかかわらず第1ジョイスティックモードが設定されるとすれば、コントローラは、推進力発生不可能な推進機に対する制御を無駄に行うことになる。そのうえ、当該推進機はコントローラからの制御指令に応答できないので、期待される船体挙動を達成できないかもしれない。そこで、推進力発生可能な一部の推進機の推進力を利用する第2ジョイスティックモードを設定すれば、コントローラは無駄な制御を行うことがなく、かつジョイスティックの操作によって期待される船体挙動を達成できる。
【0030】
一つの実施形態では、前記第1ジョイスティックモードは、ジョイスティックの所定の操作に応じて、前記複数の推進機の推進力の利用を必須とする所定の船体挙動を達成するように前記複数の推進機を制御する制御モードである。前記第2ジョイスティックモードは、前記所定の船体挙動を無効にする制御モードであってもよい。
【0031】
一つの実施形態では、前記所定の船体挙動は、船体を実質的に回頭させることなく並進させる並進移動、および船体の位置を実質的に変化させることなく回頭させるその場回頭動作のうちの少なくとも一つを含む。
【0032】
この発明の一実施形態は、複数の推進機と、ジョイスティックと、前記ジョイスティックの操作に応じて前記複数の推進機を制御するジョイスティックモードを、前記推進機を制御するための制御モードとして有するコントローラと、を含む、操船システムを提供する。前記ジョイスティックモードは、複数の推進機の推進力を利用する第1ジョイスティックモードと、前記複数の推進機のうちの推進力発生可能な一部の推進機の推進力を利用する第2ジョイスティックモードとを含む。前記コントローラは、前記ジョイスティックモードを設定するときに、前記複数の推進機が推進力発生可能かどうかを判断し、前記複数の推進機の全てが推進力発生可能なときには前記第1ジョイスティックモードを設定し、前記複数の推進機のうちのいずれかが推進力発生不可能なときには前記第2ジョイスティックモードを設定する。
【0033】
前記第1ジョイスティックモードは、ジョイスティックの所定の操作に応じて、前記複数の推進機の推進力の利用を必須とする所定の船体挙動を達成するように前記複数の推進機を制御する制御モードであってもよい。前記第2ジョイスティックモードは、前記所定の船体挙動を無効にする制御モードであってもよい。
【0034】
前記所定の船体挙動は、船体を実質的に回頭させることなく並進させる並進移動、および船体の位置を実質的に変化させることなく回頭させるその場回頭動作のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0035】
この発明の一実施形態は、船体と、船体に装備された、前述の特徴を有する操船システムと、を含む、船舶を提供する。
【発明の効果】
【0036】
この発明によれば、小さなスペースで配置可能な操船ステーションを備える操船システムおよび船舶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る船舶の構成例を説明するための図である。
【
図2】
図2は、操船システムの構成例を説明するためのブロック図である。
【
図3】
図3は、リモコンユニットの構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、ジョイスティックユニットの構成例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ステーション遷移および制御モード遷移の例を説明するための状態遷移図である。
【
図6】
図6は、ステーション遷移則の一例を示す図である。
【
図7A-7B】2機の推進機の推進力を利用する第1ジョイスティックモードの動作例を説明するための図である。
【
図8】1機の推進機のみの推進力を利用する第2ジョイスティックモードの動作例を説明するための図である。
【
図9】操船コントローラのジョイスティックモード中の処理例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
図1は、この発明の一実施形態に係る船舶100の構成例を説明するための図である。船舶100は、船体101と、船体101に装備された推進機の一例としての船外機1とを含む。この例では、2機の船外機1が、船体101の船尾2に取り付けられており、船体101の左右方向に並んでいる。
【0040】
船体101は、外殻によって区画された居住空間を提供する船室3と、船室3の後方に配置されたデッキ4と、船室3の上方に配置されたルーフデッキ5とを有している。船舶100は、複数の操船ステーションSTを備えており、操船者は、いずれの操船ステーションSTにおいても操船を行うことができる。複数の操船ステーションSTは、船室3内に配置された第1メインステーションMS1と、ルーフデッキ5に配置された第2メインステーションMS2と、サブステーションSSとを含む。サブステーションSSは、第1メインステーションMS1および第2メインステーションMS2から離れて配置されており、この実施形態では、デッキ4に配置されている。サブステーションSSは、たとえば、船室3を区画する外殻のうち、デッキ4に臨む後部外殻3aの外側、すなわち、デッキ4から直接アクセスできる側に配置されている。
【0041】
第1メインステーションMS1および第2メインステーションMS2の各々には、ステアリングホイール31、アクセルレバー33およびジョイスティック36が備えられている。ステアリングホイール31は操舵のための操作子であり、アクセルレバー33は推進力調節のための操作子である。ジョイスティック36は、操舵および推進力調節のための操作子である。通常の操船は、ステアリングホイール31およびアクセルレバー33の操作によって行われる。ジョイスティック36による操船は、主として、離着岸時や、釣りポイントなどにおいて、船舶100の方位および/または位置を精密に調整するときに利用される。むろん、ジョイスティック36による操船が、低速航走時の船舶100の方位および/または位置の調整に限られるわけではなく、中高速での巡航の際の操船にも用いられてもよい。
【0042】
サブステーションSSには、ステアリングホイール31およびアクセルレバー33はいずれも備えられておらず、操舵および推進力調節のための操作子としては、ジョイスティック36Sのみが備えられている。サブステーションSSを利用することにより、デッキ4に出た操船者は、メインステーションMS1,MS2まで戻ることなく操船を行うことができる。
【0043】
図2は、船舶100に備えられた操船システム102の構成例を説明するためのブロック図である。操船システム102は、前述の複数の操船ステーションST、すなわち、第1メインステーションMS1、第2メインステーションMS2およびサブステーションSSを含む。第1メインステーションMS1および第2メインステーションMS2の構成はほぼ同様であるので、これらを区別せずに説明するときには単に、「メインステーションMS」という。
【0044】
メインステーションMSは、ステアリングホイール31、リモコンユニット32およびジョイスティックユニット35を備えている。
【0045】
リモコンユニット32は、
図3に構成例を示すように、2機の船外機1にそれぞれ対応する2つのアクセルレバー33を有している。また、リモコンユニット32には、ステーション変更ボタン34が設けられている。ステーション変更ボタン34は、他の操船ステーションSTから当該メインステーションMSに操船権を遷移させるときに操船者が操作する操作子である。
【0046】
ジョイスティックユニット35は、
図4に構成例を示すように、前後左右(すなわち、360度の全方位)に傾倒させることができ、かつ軸まわりに回す(ツイストする)ことができるジョイスティック36を備えている。ジョイスティックユニット35は、この例では、さらに、ジョイスティックボタン37を備えている。ジョイスティックボタン37は、ジョイスティック36を用いる制御モード(操船モード)、すなわち、ジョイスティックモードを選択するときに操船者によって操作される操作子である。この例では、ジョイスティックユニット35は、さらに、位置/方位保持系の制御モード(自動操船のための制御モードの例)を設定するために操船者によって操作されるモード設定ボタン38を備えている。より具体的には、船舶100の位置および船首方位を保持する定点保持モード(Stay Point)、船舶100の位置を保持し船首方位は保持しない位置保持モード(Fish Point)、船首方位を保持し位置の保持は行わない方位保持モード(Drift Point)をそれぞれ設定するための複数のモード設定ボタン38が設けられている。
【0047】
再び、
図2を参照して、メインステーションMSは、上記のほかに、メインスイッチ41、オールスイッチ42、個別スイッチ43、キルスイッチ44、アプリケーションパネル45、ゲージ46等を備えている。メインスイッチ41は、操船システムの電源をオン/オフするために操船者によって操作される操作子である。オールスイッチ42は、全ての船外機1を始動し、または停止するために操船者によって操作される操作子である。個別スイッチ43は、個々の船外機1を始動し、または停止するために操船者によって操作される操作子であり、船外機1の数だけ設けられている。キルスイッチ44は、一端を操船者に結合したランヤードの他端が結合され、万一、操船者が落水したときに作動して全ての船外機1を停止させるためのスイッチである。アプリケーションパネル45は、たとえば、自動操船のためのアプリケーションプログラムを開始するための複数のスイッチを備えている。具体的には、経路保持系(オートパイロット系)の制御モード(自動操船のための制御モードの例)を開始するためのモード設定スイッチ45aが含まれていてもよい。経路保持系の制御モードは、具体的には、前進中に船首方位を保持する船首保持モード(Heading Hold)、前進中に船首方位を保持し、かつ直進する進路を保持する直進保持モード(Course Hold)、予め設定した通過点を通る経路に従う通過点追従モード(Track Point)、予め設定した経路パターンに従うパターン航走モード(Pattern Steer)のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。パターン航走モードの経路パターンは、ジグザグパターン、スパイラルパターンなどである。ゲージ46は、個々の船外機1の運転状態を表示する計器である。
【0048】
サブステーションSSは、ジョイスティックユニット35Sを備えている。ジョイスティックユニット35Sの構成例は、メインステーションMSに備えられるジョイスティックユニット35と同様であり、
図4に例示したとおりである。サブステーションSSのジョイスティックユニット35Sおよびその構成部分を区別して述べるときには、数字部分に「S」を付した参照符号を用いる。
【0049】
サブステーションSSには、ステーション変更ボタンは備えられておらず、ジョイスティックボタン37Sが、操船権をサブステーションSSに遷移させるためのステーション遷移操作子を兼ねる。詳細は、後述する。
【0050】
図2に示すように、サブステーションSSは、ジョイスティックユニット35Sのほかに、オールスイッチ42S、キルスイッチ44Sおよびゲージ46Sを備えていることが好ましい。これらの構成はメインステーションMSの場合と実質的に同様である。サブステーションSSは、前述のとおり、ステアリングホイールおよびアクセルレバーをいずれも備えておらず、さらに、メインスイッチ、個別スイッチおよびアプリケーションパネルを備えていなくてもよい。
【0051】
操船システム102は、システム全体の制御のための操船コントローラ50と、船外機1への指令信号を生成する推進機コントローラ55とを含む。操船コントローラ50と推進機コントローラ55とは、船内ネットワーク56を介して通信可能に接続されている。船内ネットワーク56は、典型的には、CAN(Control Area Network)である。
【0052】
船内ネットワーク56には、メインステーションMSのリモコンユニット32およびジョイスティックユニット35が接続されている。さらに、メインステーションMSのアプリケーションパネル45も船内ネットワーク56に接続されている。メインステーションMSのステアリングホイール31は推進機コントローラ55に接続されている。具体的には、ステアリングホイール31の操作角信号が操舵信号ライン59を介して推進機コントローラ55に入力されている。また、メインステーションMSのメインスイッチ41は、推進機コントローラ55に接続されており、推進機コントローラ55に対して、電源オン/オフ指令信号を入力する。さらに、メインステーションMSのオールスイッチ42、個別スイッチ43およびキルスイッチ44は、推進機コントローラ55に接続されており、推進機コントローラ55に対して推進機始動指令信号および/または推進機停止指令信号を入力する。
【0053】
一方、サブステーションSSのジョイスティックユニット35Sは、船内ネットワーク56に接続されている。また、オールスイッチ42Sおよびキルスイッチ44Sは、推進機コントローラ55に接続されており、推進機コントローラ55に対して推進機始動指令信号および/または推進機停止指令信号を入力する。
【0054】
第1メインステーションMS1のゲージ46は、船内ネットワーク56に接続されている。第2メインステーションMS2のゲージ46およびサブステーションSSのゲージ46Sは、表示データライン57を介して第1メインステーションMS1のゲージ46に接続されている。
【0055】
推進機コントローラ55は、制御信号ライン58を介して、各船外機1のコントローラである船外機ECU21(電子制御ユニット、船外機コントローラ)に接続されている。推進機コントローラ55は、各船外機1に対して、転舵指令、推進力指令などを送信する。推進力指令は、この実施形態では、船外機1のシフト位置を指令するシフト指令と、船外機1の出力(推進力の大きさ)を指令する出力指令とを含む。また、推進機コントローラ55は、各船外機1の船外機ECU21から、様々な検出信号を受信する。受信する検出信号には、各船外機1の状態、とくに各船外機1のエンジン11の状態を表す信号が含まれており、とくに各船外機1のエンジン11が稼働中(運転中)かどうかを判断するために必要な信号が含まれている。たとえば、推進機コントローラ55が、エンジン回転速度を表すエンジン回転速度信号を各船外機1から受信するように構成されていてもよい。推進機コントローラ55は、エンジン回転速度信号に基づいて、各船外機1のエンジン11が稼働中かどうか、すなわち、推進力発生可能な状態か、それとも推進力発生が不可能な状態かを判断できる。
【0056】
船外機1は、エンジン船外機または電動船外機のいずれの形態であってもよい。
図2には、エンジン船外機の例を示す。船外機1は、船外機ECU21、エンジン11、シフト機構12、プロペラ13、転舵機構14などを備えている。エンジン11が発生する動力が、シフト機構12を介してプロペラ13に伝達される。転舵機構14は、船外機1が発生する推進力の方向を左右に変化させる機構であり、船外機1のボディを船体101(
図1参照)に対して左右に旋回させる。シフト機構12は、前進位置、後進位置およびニュートラル位置のうちのいずれかのシフト位置を選択可能に構成されている。前進位置のとき、エンジン11の回転が伝達されることによってプロペラ13が正転方向に回転する。後進位置のとき、エンジン11の回転が伝達されることによってプロペラ13が逆転方向に回転する。ニュートラル位置のとき、エンジン11とプロペラ13との間の動力伝達が遮断される。
【0057】
船外機1は、さらに、スタータモータ15、燃料噴射装置16、スロットルアクチュエータ17、点火装置18、シフトアクチュエータ19、転舵アクチュエータ20などを備えており、これらは船外機ECU21によって制御される。スタータモータ15は、エンジン11を始動するための電動モータである。燃料噴射装置16は、エンジン11内で燃焼される燃料を噴射する装置である。スロットルアクチュエータ17は、エンジン11のスロットルバルブを作動させる電動アクチュエータ(典型的には電動モータを含む。)である。点火装置18は、エンジン11の燃焼室内の混合気に点火する装置であり、典型的には、点火プラグおよび点火コイルを含む。シフトアクチュエータ19は、シフト機構12を作動させるためのアクチュエータである。転舵アクチュエータ20は、転舵機構14の駆動源であり、典型的には、電動モータを含む。転舵アクチュエータ20は、電動ポンプ式の油圧装置を含んでいてもよい。
【0058】
操船コントローラ50は、プロセッサ51(演算装置)、メモリ52、通信インタフェース53などを含む。操船コントローラ50は、メモリ52に格納されたプログラムを実行することにより、様々な機能処理ユニットとして作動する。メモリ52には、さらに各種のデータが格納されている。通信インタフェース53に船内ネットワーク56が接続されている。それにより、操船コントローラ50は、推進機コントローラ55と通信することができる。さらにまた、操船コントローラ50は、メインステーションMSのリモコンユニット32およびジョイスティックユニット35と通信することができ、かつサブステーションSSのジョイスティックユニット35Sと通信することができる。また、操船コントローラ50は、第1メインステーションMS1のゲージ46と船内ネットワーク56を介して通信し、ゲージ46に表示データを送信する。その表示データは、表示データライン57を介して、第2メインステーションMS2のゲージ46およびサブステーションSSのゲージ46Sへと展開される。
【0059】
図5は、操船システム102の有効ステーションおよび制御モードならびにそれらの遷移の一例を示す。操船システム102に備えられた複数の操船ステーションST、すなわち、第1メインステーションMS1、第2メインステーションMS2およびサブステーションSSのいずれかが操船権(操作優先権)を持つ。操船権を持つ操船ステーションSTを「有効ステーション」という。
【0060】
操船コントローラ50は、いずれか一つの操船ステーションSTを有効ステーションとして選択するステーション管理を実行する機能を有する。有効ステーションの情報は推進機コントローラ55へと伝達され、推進機コントローラ55と共有される。推進機コントローラ55は、有効ステーションに備えられた操舵および/または推進力調節のための操作子からの操作信号を有効化し、他の操船ステーションSTに備えられた操舵および/または推進力調節のための操作子からの操作信号を無効化する。
【0061】
また、操船コントローラ50は、船外機1(推進機)の制御モードを管理するモード管理を実行する機能を有する。操船システム102は、複数の制御モードを有しており、制御モードを表す情報(モード情報)は、少なくとも、操船コントローラ50および推進機コントローラ55によって共有される。複数の制御モードは、通常モードおよびジョイスティックモードを含む。通常モードは、ステアリングホイール31が生成する操作信号(操作角信号)に応じて操舵制御を行い、かつリモコンユニット32のアクセルレバー33の操作信号(操作位置信号)に応じて推進力制御を行う制御モードである。この実施形態では、通常モードは、操船システム102のデフォルト制御モードである。ジョイスティックモードは、ジョイスティックユニット35,35Sのジョイスティック36,36Sの操作信号に応じて操舵制御および推進力制御を行う制御モードである。操舵制御とは、具体的には、推進機コントローラ55が船外機ECU21に与える転舵指令に応じて、船外機ECU21が転舵アクチュエータ20を駆動させる制御動作をいう。これにより、船外機1のボディが左右に転舵して、船体101に対する推進力の方向が左右に変化する。推進力制御とは、具体的には、推進機コントローラ55が船外機ECU21に与える推進力指令(シフト指令および出力指令)に応じて、船外機ECU21がシフトアクチュエータ19およびスロットルアクチュエータ17を駆動させる制御動作をいう。これにより、船外機1のシフト位置が前進位置、後進位置またはニュートラル位置に設定され、かつエンジン出力(具体的にはエンジン回転速度)が変化する。複数の制御モードは、この実施形態では、通常モードおよびジョイスティックモードのほか、前述の自動操船のための制御モードが含まれる。
【0062】
第1メインステーションMS1が有効ステーションであり、制御モードが通常モードであるとき、第1メインステーションMS1のステアリングホイール31およびアクセルレバー33の操作が有効である。この状態で、第1メインステーションMS1のジョイスティックボタン37が押下されると、操船コントローラ50は、制御モードをジョイスティックモードに遷移させる。それにより、第1メインステーションMS1のステアリングホイール31およびアクセルレバー33の操作が無効になり、代わって、当該第1メインステーションMS1に備えられたジョイスティックユニット35のジョイスティック36の操作が有効になる。ただし、通常モードからジョイスティックモードへのモード遷移は、所定のジョイスティックモード遷移条件を充足することを条件に実行される。ジョイスティックモード遷移条件とは、具体的には、シフト位置がニュートラル位置であること、ジョイスティック36が中立位置(非操作状態)であること、少なくとも一つの船外機1(推進機)のエンジン11が運転状態であることなどであってもよい。ジョイスティックモードのときに、第1メインステーションMS1のジョイスティックボタン37が押下されると、操船コントローラ50は、制御モードを通常モードに遷移させる。それにより、第1メインステーションMS1のジョイスティック36の操作が無効になり、代わって、当該第1メインステーションMS1に備えられたステアリングホイール31およびアクセルレバー33の操作が有効になる。ジョイスティックモードから通常モードへのモード遷移は、所定の通常モード遷移条件を充足することを条件に実行される。通常モード遷移条件とは、具体的には、ジョイスティック36が中立位置(非操作状態)であること、シフト位置がニュートラル位置であることなどであってもよい。
【0063】
第1メインステーションMS1が有効ステーションであり、制御モードが通常モードのときに、第2メインステーションMS2のステーション変更ボタン34が押下されると、操船コントローラ50は、有効ステーションを第2メインステーションMS2に遷移させる。制御モードは通常モードに保持される。これにより、第1メインステーションMS1のステアリングホイール31およびアクセルレバー33の操作は無効になり、代わって、第2メインステーションMS2のステアリングホイール31およびアクセルレバー33の操作が有効になる。この状態で、第2メインステーションMS2のジョイスティックボタン37が押下されると、操船コントローラ50は、制御モードをジョイスティックモードに遷移させる。それにより、第2メインステーションMS2のステアリングホイール31およびアクセルレバー33の操作が無効になり、代わって、当該第2メインステーションMS2に備えられたジョイスティックユニット35のジョイスティック36の操作が有効になる。ただし、通常モードからジョイスティックモードへのモード遷移は、前述のジョイスティックモード遷移条件を充足することを条件に実行される。ジョイスティックモードのときに、第2メインステーションMS2のジョイスティックボタン37が押下されると、操船コントローラ50は、制御モードを通常モードに遷移させる。それにより、第2メインステーションMS2のジョイスティック36の操作が無効になり、代わって、当該第2メインステーションMS2に備えられたステアリングホイール31およびアクセルレバー33の操作が有効になる。ジョイスティックモードから通常モードへのモード遷移は、前述の通常モード遷移条件を充足することを条件に実行される。第2メインステーションMS2が有効ステーションであり、制御モードが通常モードのときに、第1メインステーションMS1のステーション変更ボタン34が押下されたときの動作説明は、このパラグラフにおいて、「第1メインステーションMS1」と「第2メインステーションMS2」とを置き換えることにより得られる。
【0064】
第1メインステーションMS1が有効ステーションであり、制御モードがジョイスティックモードのときに、第2メインステーションMS2のステーション変更ボタン34が押下されると、操船コントローラ50は、有効ステーションを第2メインステーションMS2に遷移させる。このとき、操船コントローラ50は、制御モードを通常モードに遷移させる。したがって、第1メインステーションMS1のジョイスティック36の操作は無効になり、代わって、第2メインステーションMS2のステアリングホイール31およびアクセルレバー33の操作が有効になる。この状態で、第2メインステーションMS2のジョイスティックボタン37が押下された場合のモード遷移は、前述の通りである。第2メインステーションMS2が有効ステーションであり、制御モードがジョイスティックモードのときに、第1メインステーションMS1のステーション変更ボタン34が押下されたときの動作説明は、このパラグラフにおいて、「第1メインステーションMS1」と「第2メインステーションMS2」とを置き換えることにより得られる。
【0065】
第1メインステーションMS1が有効ステーションであり、制御モードがジョイスティックモードであるとき、操船コントローラ50は、第1メインステーションMS1のアクセルレバー33の操作に応答して、制御モードをジョイスティックモードから通常モードに遷移させてもよい。同様に、第2メインステーションMS2が有効ステーションであり、制御モードがジョイスティックモードであるとき、操船コントローラ50は、第2メインステーションMS2のアクセルレバー33の操作に応答して、制御モードをジョイスティックモードから通常モードに遷移させてもよい。
【0066】
次にメインステーションMSとサブステーションSSとの間の有効ステーションの遷移について説明する。第1メインステーションMS1とサブステーションSSとの間の有効ステーションの遷移と、第2メインステーションMS2とサブステーションSSとの間の有効ステーションの遷移とは実質的に同じであるので、以下では、メインステーションMSとサブステーションSSとの間の遷移として、総括的に説明する。
【0067】
メインステーションMSが有効ステーションであり、制御モードが通常モードである状態から、サブステーションSSのジョイスティックボタン37Sが押下されると、操船コントローラ50は、有効ステーションをメインステーションMSからサブステーションSSに遷移させる。このとき、操船コントローラ50は、さらに、制御モードを通常モードからジョイスティックモードに遷移させる。このようなステーション遷移およびモード遷移は、予め定めるサブステーション遷移条件が充足されることが前提となる。すなわち、操船コントローラ50は、サブステーションSSのジョイスティックボタン37Sが押下されると、サブステーション遷移条件が充足されているかどうかを判断する。サブステーション遷移条件が充足されていれば、操船コントローラ50は、有効ステーションをサブステーションSSに遷移させ、かつ制御モードをジョイスティックモードに遷移させる。サブステーション遷移条件が充足されていなければ、有効ステーションおよび制御モードは、現状のままに維持される。
【0068】
サブステーション遷移条件は、具体的には、次の条件(1)、条件(2)および条件(3)のうちの少なくとも一つ、好ましくは全部、を含む。
【0069】
条件(1):現在の有効ステーションの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態である。
【0070】
条件(2):サブステーションSSのジョイスティック36Sの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態である。
【0071】
条件(3):当該操船システム102が備えられる船舶100に搭載された推進機の少なくとも一つが、推進力を発生可能な状態である。
【0072】
条件(1)は、通常モードの場合には、アクセルレバー33によって指令されるシフト位置がニュートラル位置であることに相当する。条件(2)は、サブステーションSSのジョイスティック36Sが操作されていない状態、すなわち、ジョイスティック36Sがいずれの方向にも傾倒されていない中立位置にあり、かつ軸周りの回動もされていない中立回動位置にある状態に相当する。条件(3)は、この実施形態においては、いずれかの船外機1のエンジンが運転状態であることに相当する。
【0073】
メインステーションMSが有効ステーションであり、制御モードがジョイスティックモードである状態からサブステーションSSのジョイスティックボタン37Sが押下されると、操船コントローラ50は、有効ステーションをメインステーションMSからサブステーションSSに遷移させる。このとき、操船コントローラ50は、制御モードをジョイスティックモードに保持する。この場合にも、有効ステーションの遷移は、前述のサブステーション遷移条件の充足が条件とされる。条件(1)は、ジョイスティックモードの場合には、メインステーションMSのジョイスティック36が操作されていない状態、すなわち、ジョイスティック36がいずれの方向にも傾倒されていない中立位置にあり、かつ軸周りの回動もされていない中立回動位置にある状態に相当する。
【0074】
このように、有効ステーションがメインステーションMSからサブステーションSSに遷移すると、メインステーションMSにおける操舵または推進力調節のための操作子の操作が無効となる。具体的には、メインステーションMSのステアリングホイール31、アクセルレバー33およびジョイスティック36の操作が無効となる。そして、サブステーションSSに遷移するときには、制御モードがジョイスティックモードとなるので、サブステーションSSのジョイスティック36Sによる操船、すなわち、操舵および推進力調節が可能になる。
【0075】
有効ステーションがサブステーションSSのとき、操船コントローラ50は、サブステーションSSのジョイスティックボタン37Sの押下に応じて、制御モードをジョイスティックモードと通常モードとの間でトグルさせてもよい。
図5には、この場合のモード遷移を表してある。また、有効ステーションがサブステーションSSのときには、操船コントローラ50は、制御モードをジョイスティックモードに保持することとしてもよい。
【0076】
サブステーションSSが有効ステーションである状態で、メインステーションMSのステーション変更ボタン34が押下されると、操船コントローラ50は、有効ステーションをサブステーションSSからメインステーションMSに遷移させる。このとき、操船コントローラ50は、制御モードがジョイスティックモードであれば、制御モードを通常モードに遷移させる。制御モードが通常モードであれば、操船コントローラ50は、制御モードを通常モードに維持する。すなわち、サブステーションSSからメインステーションMSに有効ステーションが遷移すると、制御モードは、通常モードになる。
【0077】
サブステーションSSからメインステーションMSへのステーション遷移は、予め定めるメインステーション遷移条件が充足されることが前提となる。すなわち、操船コントローラ50は、メインステーションMSのステーション変更ボタン34が押下されると、メインステーション遷移条件が充足されているかどうかを判断する。メインステーション遷移条件が充足されていれば、操船コントローラ50は、有効ステーションをメインステーションMSに遷移させ、かつ制御モードを通常モードに遷移させる。メインステーション遷移条件が充足されていなければ、有効ステーションおよび制御モードは、現状のままに維持される。
【0078】
メインステーション遷移条件は、具体的には、次の条件(A)および(B)のうちの少なくとも一つ、好ましくは両方、を含む。
【0079】
条件(A):現在の有効ステーションの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態である。
【0080】
条件(B):遷移先のメインステーションMSの操作状態が、推進力の発生を指令しない状態である。
【0081】
現在の有効ステーションがサブステーションSSである場合を想定しているので、条件(A)は、サブステーションSSのジョイスティック36Sが操作されていない状態に相当する。すなわち、ジョイスティック36Sがいずれの方向にも傾倒されていない中立位置にあり、かつ軸周りの回動もされていない中立回動位置にある状態である。条件(B)は、遷移先のメインステーションMSのアクセルレバー33によって指令されるシフト位置がニュートラル位置であることに相当する。また、条件(B)は、遷移先のメインステーションMSのジョイスティック36が操作されていない状態、すなわち、ジョイスティック36がいずれの方向にも傾倒されていない中立位置にあり、かつ軸周りの回動もされていない中立回動位置にある状態であることを含んでいてもよい。ただし、この実施形態では、メインステーションMSに遷移するときには制御モードが通常モードとなるので、ジョイスティック36に関する条件は省かれてもよい。
【0082】
なお、第1メインステーションMS1と第2メインステーションMS2との間で有効ステーションが遷移するときにも、操船コントローラ50は、前述のメインステーション遷移条件の充足/不充足を判断することが好ましい。そして、操船コントローラ50は、メインステーション遷移条件が充足されることを条件に、第1メインステーションMS1と第2メインステーションMS2との間で有効ステーションを遷移させることが好ましい。この場合、条件(A)は、通常モードの場合には、遷移元のメインステーションMSのアクセルレバー33によって指令されるシフト位置がニュートラル位置であることに相当する。また、条件(A)は、ジョイスティックモードの場合には、遷移元のメインステーションMSのジョイスティック36が操作されていない状態、すなわち、ジョイスティック36がいずれの方向にも傾倒されていない中立位置にあり、かつ軸周りの回動もされていない中立回動位置にある状態に相当する。条件(B)については、前述の場合と同様である。
【0083】
この実施形態では、メインステーションMSのジョイスティックユニット35に備えられたジョイスティックボタン37を押下しても、サブステーションSSから当該メインステーションMSへのステーション遷移は生じない。また、ジョイスティックユニット35に備えられた位置/方位保持系の制御モード設定のためのモード設定ボタン38を押下してもステーション遷移は生じない。すなわち、サブステーションSSからメインステーションMSへのステーション遷移のための手段が、ステーション変更ボタン34に限定されている。ただし、ステーション遷移のための操作子がステーション変更ボタン34のみである構成にこの発明を限定する趣旨ではない。
【0084】
また、この実施形態では、サブステーションSSのジョイスティックユニット35Sに備えられた位置/方位保持系の制御モード設定のためのモード設定ボタン38Sを押下しても、メインステーションMSからサブステーションSSへのステーション遷移は生じない。すなわち、メインステーションMSからサブステーションSSへのステーション遷移のための手段が、ジョイスティックボタン37Sに限定されている。ただし、ステーション遷移のための操作子がジョイスティックボタン37Sのみである構成にこの発明を限定する趣旨ではない。
【0085】
図6は、メインステーションMSとサブステーションSSとの間での有効ステーション遷移則の一例を示す。有効ステーションがメインステーションMSであり、かつ制御モードが通常モードまたはジョイスティックモードのときのサブステーションSSへの遷移については前述のとおりである。また、有効ステーションがサブステーションSSであり、かつ制御モードが通常モードまたはジョイスティックモードのときのメインステーションMSへの遷移についても前述の通りである。
【0086】
既述のとおり、ジョイスティックユニット35,35Sは、位置/方位保持系の制御モード(自動操船のための制御モード)を設定するために操船者によって操作されるモード設定ボタン38,38Sを備えている。したがって、有効ステーションがメインステーションMSおよびサブステーションSSのいずれの場合にも、制御モードが位置/方位保持系のモードとなり得る。この場合の有効ステーションの遷移則は、
図6の例では、ジョイスティックモードの場合と同様である。
【0087】
また、前述のとおり、メインステーションMSに備えられたアプリケーションパネル45によって、経路保持系(オートパイロット系)の制御モードの設定が可能である。
図6の例では、有効ステーションがメインステーションMSであって、経路保持系の制御モードが設定されている場合には、サブステーションSSにおいてジョイスティックボタン37Sが押下されても、有効ステーションの遷移は禁止されている。すなわち、メインステーションMSにおいて、経路保持系の制御モードを解除する操作がされなければ、有効ステーションがサブステーションSSに遷移することはない。
【0088】
図6のステーション遷移則に従って有効ステーションの遷移が許容されるいずれの場合にも、メインステーションMSへの遷移に関しては、メインステーション遷移条件の充足が条件となる。同様に、サブステーションSSへの遷移に関しては、サブステーション遷移条件の充足が前提となる。
【0089】
図7A、
図7Bおよび
図8は、2種類のジョイスティックモードを説明するための図であり、ジョイスティック36,36Sの操作とそれに対応する船体101の挙動とを示す。より具体的には、
図7Aおよび
図7Bは、2機の船外機1の推進力を利用する第1ジョイスティックモードの動作例を示し、
図8は、1機の船外機1のみの推進力を利用する第2ジョイスティックモードの動作例を示す。
【0090】
図7Aおよび
図7Bに示す第1ジョイスティックモードにおいては、操船コントローラ50は、ジョイスティック36,36Sの傾倒方向を進行方向指令と解釈し、ジョイスティック36,36Sの傾倒量を当該方向への推進力の大きさの指令と解釈する。また、操船コントローラ50は、ジョイスティック36,36Sの軸周りの回動方向(中立位置を基準とした回動方向)を回頭方向指令と解釈し、回動量(中立位置を基準とした回動量)を回頭速度指令と解釈する。そして、操船コントローラ50は、それらの指令を実現するための転舵指令および推進力指令を推進機コントローラ55に入力する。推進機コントローラ55は、転舵指令および推進力指令を船外機ECU21に送信する。それにより、各船外機1が指令された転舵角へと転舵され、かつ各船外機1は、指令された推進力を発生するようにシフト位置およびエンジン回転速度が制御される。
【0091】
第1ジョイスティックモードにおいては、ジョイスティック36,36Sを回動させることなく傾倒させる操作を行うと、船体101は、回頭することなく、すなわち、方位を保持した状態で、ジョイスティック36,36Sの傾倒方向へと移動する。すなわち、船体101が並進移動する船体挙動となる。この並進移動の例が、
図7Aに表されている。並進移動は、典型的には、2機の船外機1の推進力の方向を船体101の旋回中心(重心付近)に向け、一方の船外機1のシフト位置を前進位置とし、他方の船外機1のシフト位置を後進位置とすることによって実現される。すなわち、2機の船外機1が発生する推進力の合力方向へと船体101が並進する。たとえば、前進シフトの船外機1と後進シフトの船外機1とが大きさの等しい推進力を発生することにより、船体101を真横に並進移動させることができる。
【0092】
また、第1ジョイスティックモードにおいて、ジョイスティック36,36Sを傾倒させることなく回動させる操作を行うと、船体101は位置を変えることなくジョイスティック36,36Sの回動方向へと回頭する。すなわち、船体101がその場回頭を行う船体挙動となる。このその場回頭の例が
図7Bに表されている。その場回頭は、典型的には、2機の船外機1の推進力の方向を船体101の方位と実質的に平行にして、一方の船外機1のシフト位置を前進位置、他方の船外機1のシフト位置を後進位置として、両船外機1に等しい大きさの推進力を発生させることによって達成される。
【0093】
第1ジョイスティックモードにおいて、ジョイスティック36,36Sを傾倒させ、かつ回動する操作を行うと、船体101がジョイスティック36,36Sの傾倒方向に移動しながら、ジョイスティック36,36Sの回動方向に回頭する船体挙動が得られる。ただし、一般的には、ジョイスティック36,36Sを傾倒させて行う並進動作(
図7A参照)によって船体101の位置を調節し、ジョイスティック36を回動させて行うその場回頭(
図7B参照)によって船体101の方位を調節するように操船するのが容易である。
【0094】
図8に示す第2ジョイスティックモードにおいては、1機の船外機1の推進力のみを用いるので、2機の船外機1の推進力の合成を利用する並進移動(
図7A参照)およびその場回頭(
図7B参照)はいずれも不可能である。すなわち、第2ジョイスティックモードは、第1ジョイスティックモードにおいて提供される所定の船体挙動、具体的には並進移動およびその場回頭を無効にする制御モードである。第2ジョイスティックモードにおいては、操船コントローラ50は、ジョイスティック36,36Sの前後方向への傾倒を推進力指令(シフト指令および出力指令)と解釈する。ジョイスティック36,36Sの左右方向への傾倒は無視される。つまり、ジョイスティック36,36Sの傾倒操作が行われたとき、ジョイスティック36,36Sの傾倒方向の前後方向成分のみが有効な入力となり、その前後方向成分が推進力指令と解釈される。より具体的には、前後方向成分が前方に傾倒されたときの値であれば前進シフト指令と解釈され、前後方向成分が後方に傾倒されたときの値であれば後進シフト指令と解釈される。そして、前後方向成分の大きさが推進力の大きさに関する指令(出力指令)であると解釈される。このように解釈された推進力指令が操船コントローラ50から推進機コントローラ55に入力される。一方、第2ジョイスティックモードにおいて、操船コントローラ50は、ジョイスティック36,36Sの軸周りの回動を転舵指令と解釈する。すなわち、操船コントローラ50は、ジョイスティック36,36Sの軸周りの回動方向および回動量に応じた転舵指令を推進機コントローラ55に入力する。推進機コントローラ55は、転舵指令および推進力指令を船外機ECU21に送信する。それにより、各船外機1が転舵指令に応じた転舵角へと転舵され、かつ各船外機1は、指令された推進力を発生するようにシフト位置およびエンジン回転速度が制御される。
【0095】
図9は、操船コントローラ50のジョイスティックモード中の処理例を説明するためのフローチャートである。ジョイスティックモードのとき、操船コントローラ50は、第1ジョイスティックモードにおいて推進力を利用する複数の船外機1の全てが、推進力発生可能な状態かどうかを判断する(ステップS1)。推進力発生可能な状態とは、具体的には、船外機1のエンジン11が運転している状態である。エンジン11が停止していれば、推進力発生不可能な状態であると判断される。
【0096】
第1ジョイスティックモードにおいて推進力を利用する全ての船外機1が推進力発生可能な状態であれば(ステップS1:YES)、操船コントローラ50は、現在の制御モードが第2ジョイスティックモードでないことを確認し(ステップS7:NO)、制御モードを第1ジョイスティックモードに設定する(ステップS3)。したがって、ジョイスティック36,36Sの操作によって、
図7Aおよび
図7Bを参照して前述した船体挙動が得られる。
【0097】
一方、第1ジョイスティックモードにおいて推進力を利用する複数の船外機1のうちの一部が推進力発生不可能な状態なときは(ステップS1:NO)、操船コントローラ50は、有効ステーションがメインステーションMSかサブステーションSSかを判断する(ステップS2)。有効ステーションがメインステーションMSのときは、操船コントローラ50は、ジョイスティックモードを解除して、制御モードを通常モードに遷移させる(ステップS6)。有効ステーションがサブステーションSSのときは、操船コントローラ50は、第2ジョイスティックモードを設定する(ステップS4)。それにより、ジョイスティック36Sの操作によって、推進力発生可能な少なくとも一つの船外機1の推進力が利用され、
図8を参照して前述した船体挙動が得られる。
【0098】
有効ステーションがメインステーションMSのときには、ジョイスティックモードが解除されて通常モードに遷移することにより(ステップS6)、ステアリングホイール31およびアクセルレバー33を操作して操船を行うことができる。一方、サブステーションSSは、操舵および推進力調節のための操作子としてジョイスティック36Sのみを備えているので、有効ステーションがサブステーションSSのときに通常モードに遷移しても、対応する操作子(ステアリングホイールおよびアクセルレバー)が存在しない。そこで、第2ジョイスティックモードを設定することによって、ジョイスティック36Sの操作によって操船可能な状態を確保できる(ステップS4)。
【0099】
ジョイスティックモードにおいて、第1ジョイスティックモードおよび第2ジョイスティックモードのいずれが設定されているのかについては、適切な通知装置によって操船者に通知されることが好ましい。それにより、操船者は、ジョイスティック36,36Sの操作とそれによって期待される船体挙動との関係を認識しながら、ジョイスティック36,36Sの操作を行うことができる。通知装置は、ゲージ46,46Sであってもよいし、その他の表示装置であってもよい。また、LEDランプ等を通知装置として用いてもよい。
【0100】
ジョイスティックモード中に全ての船外機1が推進力発生不可能な状態、すなわち、全ての船外機1のエンジン11が停止すると(ステップS5:YES)、操船コントローラ50は、制御モードを通常モードに遷移させる(ステップS6)。この場合、操船を行うためには、操船者は、オールスイッチ42,42Sを操作して、全船外機1のエンジン11を再始動させるか、または個別スイッチ43を操作して少なくとも一つの船外機1のエンジン11を再始動させることになる。この実施形態では、サブステーションSSには、個別スイッチは備えられていないので、操船者は、オールスイッチ42Sの操作を行うことになる。メインステーションMSで操作をする場合には、操船者は、オールスイッチ42および個別スイッチ43のうちのいずれかを選択して操作できる。船外機1のエンジン11を再始動した直後の制御モードは、デフォルト制御モードである通常モードである。
【0101】
ジョイスティックモード中に全ての船外機1が推進力発生不可能な状態に陥らなければ(ステップS5:NO)、ステップS1からの処理が繰り返される。
【0102】
第2ジョイスティックモード中に、全ての船外機1のエンジン11が推進力発生可能な状態に復帰する場合があり得る。具体的には、いずれかの船外機1のエンジン11が瞬間的に運転停止し、再稼働する場合である。また、メインステーションMSの個別スイッチ43を操作して、停止している船外機1のエンジン11を個別に再始動することもでき、それによって、全ての船外機1を推進力発生可能な状態に復帰させることもできる。さらには、第2ジョイスティックモード中にサブステーションSSのオールスイッチ42Sが操作されること応答して全ての船外機1を再始動するようにシステムを設計することもできる。
【0103】
こうして、第2ジョイスティックモード中に全ての船外機1のエンジン11が運転状態に復帰すると、ステップS1およびS7の判断がいずれも肯定される。すると、操船コントローラ50は、第1ジョイスティックモードへの復帰条件が充足されるかどうかを判断する(ステップS8)。復帰条件は、具体的には、ジョイスティック36Sが推進力の発生を指令する状態でないこと、すなわち、前後方向へ実質的に傾倒操作されていないことを含む。より具体的には、復帰条件は、ジョイスティック36Sが操作されていないこと、すなわち、実質的に傾倒操作も回動操作もされていないことを含んでもよい。このような復帰条件を設けることにより、ジョイスティック36Sの操作中の船体挙動の変動を抑制できるので好ましい。復帰条件が充足されると(ステップS8:YES)、操船コントローラ50は、制御モードを第2ジョイスティックモードから第1ジョイスティックモードへと遷移させる(ステップS3)。復帰条件が不充足なら(ステップS8:NO)、操船コントローラ50は、第2ジョイスティックモードを維持する(ステップS4)。
【0104】
なお、操船コントローラ50は、前述のジョイスティックモード遷移条件に従い、少なくとも一つの船外機1が推進力発生可能な状態でなければ、制御モードをジョイスティックモードに移行させない。したがって、ジョイスティックモードに移行した直後には、少なくとも一つの船外機1は推進力発生可能な状態である。
【0105】
以上のように、この実施形態によれば、操船システム102は、複数の操船ステーションSTを含み、その複数の操船ステーションSTは、第1メインステーションMS1、第2メインステーションMS2およびサブステーションSSを含む。メインステーションMSは、ステアリングホイール31および推進力調節のためのアクセルレバー33を備える。サブステーションSSは、メインステーションMSから離れて配置され、操舵および推進力調節のための操作子としてジョイスティック36Sのみを備える。したがって、サブステーションSSは、メインステーションMSに比較して、船内の小さなスペースに設けることができる。したがって、比較的小型の船舶100においても、メインステーションMSのほかにサブステーションSSを設けることができる。また、比較的大型の船舶においても、船内のスペースを過度に圧迫することなく操船ステーションを増設することができる。それにより、利便性の高い操船システム102を船舶に備えることができる。
【0106】
操船コントローラ50は、複数の操船ステーションSTのうちの一つのみを、操舵および推進力調節のための操作が有効な有効ステーションに選択するステーション管理を実行する。サブステーションSSに備えられるジョイスティックユニット35Sは、ジョイスティック36Sの操作入力を有効にするために使用者によって操作されるジョイスティックボタン37Sを含む。ジョイスティックボタン37Sが操作されると、操船コントローラ50は、サブステーションSSを有効ステーションに選択する。したがって、サブステーションSSにおいてジョイスティックボタン37Sを操作することにより、サブステーションSSのジョイスティック36Sの操作入力が有効になる。それにより、操船者は、簡単な操作で、メインステーションMSからサブステーションSSへと有効ステーションを遷移させ、サブステーションSSにおいてジョイスティック36Sを用いる操船を行うことができる。したがって、操船者は、メインステーションMSに戻ることなくサブステーションSSでの操船を開始できる。
【0107】
操船コントローラ50は、サブステーションSSのジョイスティックボタン37Sが操作されると、前述したサブステーション遷移条件の充足を判定し、サブステーション遷移条件を充足していると判定すると、サブステーションSSを有効ステーションに選択する。それにより、メインステーションMSからサブステーションSSへの有効ステーションの遷移を適切に実行できる。したがって、サブステーションSSへの円滑な遷移を確保しながら、高い利便性を実現した操船システムを提供できる。とくに、当該操船システム102が備えられる船舶100に搭載された推進機(船外機1)の少なくとも一つが、推進力を発生可能な状態であることをサブステーション遷移条件とすることにより、推進力の利用が可能な状態で、有効ステーションがサブステーションSSに遷移する。したがって、操船者は、サブステーションSSにおいて、ジョイスティック36Sの操作によって、推進力を利用した操船を行うことができる。
【0108】
メインステーションMSに備えられるリモコンユニット32には、当該メインステーションMSによる操船を有効にするために使用者によって操作されるステーション変更ボタン34が設けられている。ステーション変更ボタン34が操作されると、操船コントローラ50は、前述のメインステーション遷移条件を判定し、当該メインステーション遷移条件を充足していると判定すると、メインステーションMSを有効ステーションに選択する。したがって、操船者は、メインステーションMSのステアリングホイール31およびアクセルレバー33を用いた操船を行うことができる。有効ステーションをメインステーションMSに遷移する際に、メインステーション遷移条件の充足が条件とされるので、メインステーションMSへの円滑な遷移を確保しながら、高い利便性を実現した操船システム102を提供できる。
【0109】
操船コントローラ50は、さらに、推進機(船外機1)の制御モードを管理するモード管理を実行する。操船コントローラ50は、サブステーションSSを有効ステーションに選択するときに、制御モードをジョイスティックモードに設定する。ジョイスティックボタン37Sの操作によって有効ステーションをサブステーションSSに遷移させるときに、さらに制御モードを通常モードからジョイスティックモードに変更するための操作が必要だとすれば、サブステーションSSにおいてジョイスティック36Sを用いる操船を行うまでの手順が長い。この実施形態では、操船コントローラ50は、ジョイスティックボタン37Sの操作に応答して、有効ステーションをサブステーションSSに遷移させるときに、同時に制御モードをジョイスティックモードに設定する。それにより、サブステーションSSにおいてジョイスティック36Sを用いる操船を開始するまでの手順を短くできるので、一層利便性の高い操船システム102を実現できる。サブステーションSSには、操舵および推進力調節のための操作子としてジョイスティック36Sのみが備えられているので、上記のような制御モードの自動遷移は、合理的である。
【0110】
また、メインステーションMSのステーション変更ボタン34の操作に応答してメインステーションMSを有効ステーションに選択するときに、操船コントローラ50は、制御モードを通常モードに設定する。これにより、通常モードに遷移させるための操作を要することなく、メインステーションMSのステアリングホイール31およびアクセルレバー33を用いる操船が可能になる。したがって、さらに利便性の高い操船システムを実現できる。
【0111】
メインステーションMSにジョイスティック36が備えられる場合には、操船者は、ステアリングホイール31およびアクセルレバー33ではなく、メインステーションMSに遷移した後に、ジョイスティック36による操船を望むことがあり得る。しかし、メインステーションMSにおける通常の操船は、ステアリングホイール31およびアクセルレバー33によって行われるので、通常モードをデフォルト制御モードとするのが適切である。そして、有効ステーションがメインステーションMSに遷移した直後の制御モードが通常モード(デフォルト制御モード)であることにより、操船者にとって、制御モードを認識し易いので、好ましい。
【0112】
操舵および推進力調節のための操作子がジョイスティック36SのみであるサブステーションSSにおいては、このような事情がなく、有効ステーションがサブステーションSSであるときの制御モードがジョイスティックモードであることにより、操船者は、制御モードを意識する必要がなくなる。
【0113】
この実施形態では、メインステーションMSには、ジョイスティックユニット35が備えられており、メインステーションMSにおいてもジョイスティック36を用いる操船が可能である。ジョイスティックモードのとき、有効ステーションがメインステーションMSであれば、操船コントローラ50は、メインステーションMSのジョイスティック36の操作に応答して推進機(船外機1)を制御する。一方、ジョイスティックモードのとき、有効ステーションがサブステーションSSであれば、操船コントローラ50は、サブステーションSSのジョイスティック36Sの操作に応答して推進機(船外機1)を制御する。
【0114】
また、この実施形態では、ジョイスティックモードは、複数の推進機(船外機1)の推進力を利用する第1ジョイスティックモードと、前記複数の推進機(船外機1)のうちの推進力発生可能な一部の推進機(船外機1)の推進力を利用する第2ジョイスティックモードとを含む。操船コントローラ50は、ジョイスティックモードを設定するときに、第1ジョイスティックモードにおいて推進力が利用される全ての推進機(船外機1)が推進力発生可能かどうかを判断する。この判断が肯定なら、操船コントローラ50は、第1ジョイスティックモードを設定する。第1ジョイスティックモードにおいて推進力が利用される推進機(船外機1)のうちのいずれかが推進力発生不可能なときには、操船コントローラ50は、第2ジョイスティックモードを設定する。したがって、複数の推進機(船外機1)の状態に応じて、適切なジョイスティックモードが選択されるので、ジョイスティック36の操作に応じて、推進機(船外機1)の制御を適切に行うことができる。
【0115】
もしも、第1ジョイスティックモードにおいて推進力を利用する複数の推進機(船外機1)の一部が推進力発生不可能であるにもかかわらず第1ジョイスティックモードが設定されるとすれば、操船コントローラ50は、推進力発生不可能な推進機(船外機1)に対する制御を無駄に行うことになる。そのうえ、当該推進機(船外機1)は操船コントローラ50からの制御指令に応答できないので、期待される船体挙動を達成できない。そこで、推進力発生可能な一部の推進機(船外機1)の推進力を利用する制御モードである第2ジョイスティックモードを設定すれば、操船コントローラ50は無駄な制御を行うことがなく、かつジョイスティック36の操作によって期待される船体挙動を達成できる。
【0116】
なお、前述の実施形態は、第2ジョイスティックモードは、有効ステーションがサブステーションSSであるときにのみ有効となるが、メインステーションMSにおいても第2ジョイスティックモードを有効としてもよい。
【0117】
以上、この発明の一実施形態について説明してきたが、以下に例示するとおり、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
【0118】
前述の実施形態では、推進機としてエンジンを原動機とする船外機1について主として説明したが、他の構成の推進機を用いてもよい。たとえば、電動モータを原動機とする推進機(電動推進機)が用いられてもよい。推進機は、船外機1の他にも、船内機、船内外機、ジェット推進機などの他の形態を有していてもよい。
【0119】
前述の実施形態では、船外機1のエンジン11が運転中である状態を推進力発生可能な状態と定義し、エンジン11が停止している状態を推進力発生不可能な状態と定義している。しかし、この定義は一例であり、推進力発生可能な状態とは、推進力調節のための操作子、具体的にはジョイスティック36,36Sまたはアクセルレバー33の操作に応答して推進力を発生できる状態と理解されるべきである。電動推進機の場合に推進力発生可能な状態とは、ジョイスティック36,36Sまたはアクセルレバー33の操作によって電動モータに通電され、それによって動力を発生できる状態をいう。
【0120】
前述の実施形態では、船尾2に2機の推進機(船外機1)が備えられる例を示したが、推進機の数および配置はこれに限られない。船尾2に3機以上の推進機が配置されてもよい。また、船首付近にバウスラスタが備えられてもよい。
【0121】
第1ジョイスティックモードは、前述の例では、船舶100に備えられる全ての推進機(船外機1)の推進力を利用している。しかし、たとえば、船尾2に2機の推進機が備えられ、さらにバウスラスタ等の補助推進機が備えられる場合に、第1ジョイスティックモードは2機の推進機の推進力を利用し、補助推進機の推進力を利用しない制御モードであってもよい。また、船尾2に3機の推進機が備えられる場合に、第1ジョイスティックモードは、それらの全部の推進力を利用してもよいし、それらの一部のみ(たとえば2機の推進機)の推進力を利用してもよい。
【0122】
第2ジョイスティックモードは、前述の例では、1機の推進機の推進力を利用している。しかし、たとえば、船尾2に3機の推進機が備えられる場合に、第1ジョイスティックモードはその全ての推進力を利用し、第2ジョイスティックモードはそれらのうちの一部のみ(1機または2機)の推進力を利用してもよい。さらに、第1ジョイスティックモードは、船尾2の2機または3機の推進機の推進力を利用し、第2ジョイスティックモードは、船尾2の少なくとも1機(ただし推進力発生可能なもの)と補助推進機(バウスラスタ等)の推進力を利用してもよい。また、3以上のジョイスティックモードが設定可能であってもよい。具体的には、3機の推進機の推進力を利用する第1ジョイスティックモード、2機の推進機の推進力を利用する第2ジョイスティックモード、1機の推進機の推進力を利用する第3ジョイスティックモード(たとえばモード)が設定可能であってもよい。
【0123】
前述の実施形態では、2つのメインステーションMSと1つのサブステーションSSとが備えられる例を示した。しかし、メインステーションMSおよびサブステーションSSの数はこれらに限られない。メインステーションMSは1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、2つ以上のサブステーションSSが設けられてもよい。
【0124】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0125】
100 船舶、101 船体、102 操船システム、1 船外機、31 ステアリングホイール、33 アクセルレバー、34 ステーション変更ボタン、36,36S ジョイスティック、37,37S ジョイスティックボタン、50 操船コントローラ、55 推進機コントローラ、ST 操船ステーション、MS1 第1メインステーション、MS2 第2メインステーション、SS サブステーション