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特開2023-103099オゾン発生器の異常検出装置およびオゾン発生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103099
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】オゾン発生器の異常検出装置およびオゾン発生装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/11 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
C01B13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003966
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 亮太
(72)【発明者】
【氏名】鷹箸 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 隆昭
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴恵
(72)【発明者】
【氏名】深田 洋行
(72)【発明者】
【氏名】橋本 美智子
【テーマコード(参考)】
4G042
【Fターム(参考)】
4G042CA01
4G042CB29
4G042CC23
(57)【要約】
【課題】オゾン発生器を構成する放電管の破損を簡易な構成で正確に検出する。
【解決手段】実施形態の異常検出装置は、入力された第1の交流電圧を予め設定された第2の交流電圧に変換して出力する電力変換装置と、電力変換装置から出力された交流電圧を高電圧に昇圧するトランスと、放電管を内蔵し、トランスによって昇圧された交流電圧が放電管に印加されることでオゾンを生成するオゾン発生器と、を備えるオゾン発生装置に対して用いられる。異常検出装置は、トランスによって高電圧に昇圧された交流電圧を低電圧に変換する分圧回路と、分圧回路を通過した交流電圧をパルス信号に変換して出力し、パルス信号に変換するときに用いる比較電圧がそれぞれ異なる2つ以上の信号変換部と、2つ以上の信号変換部の少なくともいずれかから出力されたパルス信号のパルス幅の変化に基づいてオゾン発生器の異常を検出する異常検出部と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された第1の交流電圧を予め設定された第2の交流電圧に変換して出力する電力変換装置と、前記電力変換装置から出力された交流電圧を高電圧に昇圧するトランスと、放電管を内蔵し、前記トランスによって昇圧された交流電圧が前記放電管に印加されることでオゾンを生成するオゾン発生器と、を備えるオゾン発生装置に対して用いられる異常検出装置であって、
前記トランスによって高電圧に昇圧された交流電圧を低電圧に変換する分圧回路と、
前記分圧回路を通過した交流電圧をパルス信号に変換して出力し、パルス信号に変換するときに用いる比較電圧がそれぞれ異なる2つ以上の信号変換部と、
前記2つ以上の信号変換部の少なくともいずれかから出力された前記パルス信号のパルス幅の変化に基づいて前記オゾン発生器の異常を検出する異常検出部と、
を備える異常検出装置。
【請求項2】
前記異常検出部は、3つ以上の連続するパルス信号について、前回までの複数の前記パルス信号のパルス幅を用いた統計処理によってパルス幅の正常範囲の情報を生成し、最新の前記パルス信号のパルス幅が前記正常範囲に入っていない場合に、前記オゾン発生器に異常があると判定する、請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記異常検出部は、前回までの複数のパルス信号のパルス幅を用いた統計処理によって、前回までの複数のパルス信号のパルス幅の加重移動平均に1未満の所定の第1の係数を掛けた値を下限とし、前記加重移動平均に1超の所定の第2の係数を掛けた値を上限として、前記正常範囲の情報を生成する、請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記異常検出部は、異常を検出した場合に、前記電力変換装置を制御して前記オゾン発生器への電源の供給を遮断する、請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項5】
交流電圧を出力する電力変換装置と、
前記電力変換装置が出力する交流電力が印加されることでオゾンを発生させるオゾン発生器と、
前記オゾン発生器の異常を検出する検出装置と、を備え、
前記検出装置は、
前記電力変換装置が出力する交流電圧に基づいて、少なくとも2つの基準電圧のそれぞれと比較することで少なくとも2つのパルス信号を生成し、
この生成された少なくとも2つのパルス信号それぞれのパルス幅の変化に基づいて前記オゾン発生器の異常を検出する、オゾン発生装置。
【請求項6】
前記検出装置は、3つ以上の連続するパルス信号について、前回までの複数の前記パルス信号のパルス幅を用いた統計処理によってパルス幅の正常範囲の情報を生成し、最新の前記パルス信号のパルス幅が前記正常範囲に入っていない場合に、前記オゾン発生器に異常があると判定する、請求項5に記載のオゾン発生装置。
【請求項7】
前記検出装置は、前回までの複数のパルス信号のパルス幅を用いた統計処理によって、前回までの複数のパルス信号のパルス幅の加重移動平均に1未満の所定の第1の係数を掛けた値を下限とし、前記加重移動平均に1超の所定の第2の係数を掛けた値を上限として、前記正常範囲の情報を生成する、請求項6に記載のオゾン発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、オゾン発生器の異常検出装置およびオゾン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン発生器を構成する放電管が破損し、オゾン発生器が異常となった場合に、その異常を検出する技術がある。この技術では、例えば、オゾン発生器に印加する交流電圧を発生させるインバータに入力する入力電力が規定値以下であり、かつ、当該インバータから出力される出力電流が規定値以上である場合に、オゾン発生器を異常と判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4071017号公報
【特許文献2】特開平8-146071号公報
【特許文献3】特開2021-27677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術においては、入力電力を検出する入力電力検出部と出力電流を検出する出力電流検出部の両方が必要となり、オゾン発生器の異常を検出する装置の回路構成が複雑かつ高コストになるという問題がある。また、インバータ電源の電圧の周波数の変化から異常を検出する装置もあるが、オゾン発生器はオゾン発生量が変化するときに周波数も変化するために、運転にともなう周波数の変化も踏まえて異常を検出することが難しい。
【0005】
そこで、本発明の実際形態の課題は、オゾン発生器を構成する放電管の破損を簡易な構成で正確に検出することができる異常検出装置およびオゾン発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の異常検出装置は、入力された第1の交流電圧を予め設定された第2の交流電圧に変換して出力する電力変換装置と、前記電力変換装置から出力された交流電圧を高電圧に昇圧するトランスと、放電管を内蔵し、前記トランスによって昇圧された交流電圧が前記放電管に印加されることでオゾンを生成するオゾン発生器と、を備えるオゾン発生装置に対して用いられる異常検出装置であって、前記トランスによって高電圧に昇圧された交流電圧を低電圧に変換する分圧回路と、前記分圧回路を通過した交流電圧をパルス信号に変換して出力し、パルス信号に変換するときに用いる比較電圧がそれぞれ異なる2つ以上の信号変換部と、前記2つ以上の信号変換部の少なくともいずれかから出力された前記パルス信号のパルス幅の変化に基づいて前記オゾン発生器の異常を検出する異常検出部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかるオゾン発生装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態にかかる異常検出装置等の機能構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態にかかる異常検出装置が有する信号変換回路の機能構成の一例を示す図である。
図4】本実施形態にかかる異常検出装置が有する信号変換回路による信号変換の一例を示す図である。
図5】本実施形態にかかる異常検出装置が有する信号変換回路による信号変換の一例を示す図である。
図6】本実施形態にかかる異常検出装置が有するPLCの機能構成の一例を示す図である。
図7】本実施形態にかかる異常検出装置が有するPLCにおけるパルス幅の測定結果の一例を示す図である。
図8】本実施形態にかかる異常検出装置が有するPLCにおけるパルス幅比の測定結果の一例を示す図である。
図9図7と同様、異常検出装置が有するPLCにおけるパルス幅の測定結果の一例を示す図である。
図10図8と同様、異常検出装置が有するPLCにおけるパルス幅比の測定結果の一例を示す図である。
図11】本実施形態にかかる異常検出装置が有するPLCにおける加重移動平均の算出方法を示す図である。
図12】本実施形態にかかる異常検出装置が有するPLCが算出したパルス幅比の一例を示す図である。
図13】本実施形態にかかるオゾン発生器の異常時の電圧波形と異常判定を説明する図である。
図14】本実施形態にかかるPLCによる処理を示すフローチャートである。
図15】本実施形態にかかる異常検出装置が有する信号変換回路による信号変換の一例を示す図である。
図16】本実施形態にかかる異常検出装置が有する信号変換回路の機能構成の一例を示す図である。
図17】本実施形態にかかる異常検出装置が有する信号変換回路による信号変換の一例を示す図である。
図18】本実施形態にかかる異常検出装置が有する信号変換回路と異常判定を説明する図である。
図19】本実施形態にかかる異常検出装置が有する信号変換回路と異常判定を説明する図である。
図20】本実施形態にかかる異常検出装置が有する信号変換回路と異常判定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を用いて、本発明の実施形態にかかるオゾン発生装置および異常検出装置の一例について説明する。
【0009】
まず、図1図2を参照して、本実施形態にかかるオゾン発生装置Aと異常検出装置6の概略構成の一例について説明する。図1は、本実施形態にかかるオゾン発生装置Aの概略構成の一例を示す図である。図2は、本実施形態にかかる異常検出装置6等の機能構成の一例を示す図である。
【0010】
オゾン発生装置Aは、単管のオゾン発生装置の一例である。オゾン発生装置Aは、オゾン発生器1と、電源装置3と、ヒューズ4と、高圧給電子5と、を備える。オゾン発生器1は、放電管10を内蔵し、トランス32によって昇圧されリアクトル33を通過した交流電圧が放電管10の電極11に印加されることでオゾンを生成する。具体的には、オゾン発生器1は、放電管10と、放電管10に取付けられた電極11と、金属電極12と、放電管10と電極11との間に放電ギャップ14を形成するためのスペーサ13と、を備える。
【0011】
電源装置3は、電力変換装置31と、トランス32と、リアクトル33と、を備える。電力変換装置31は、商用電源から入力した交流電圧(第1の交流電圧)を予め設定された周波数(所定周波数)の交流電圧(第2の交流電圧)に変換して出力する。
【0012】
トランス32は、電力変換装置31から出力された交流電圧を高電圧に昇圧する。リアクトル33は、オゾン発生器1とトランス32との間に接続される。そして、リアクトル33は、トランス32で出力された交流電圧をさらに昇圧したり、電力変換装置31のスイッチング動作で生じる高周波のノイズを抑制したりする。また、リアクトル33は、オゾン発生器1の異常放電、例えば、オゾン発生器1に内蔵された放電管10の破損で生じるピンホール(例えば直径1mm程度)で発生するアーク放電によって、トランス32に印加される交流電圧に生じる高周波成分を抑制する。
【0013】
このようにして、電源装置3は、ヒューズ4および高圧給電子5を介して、放電管10の電極11に交流電圧Vopを印加する。そうすると、電極11と金属電極12の間の放電ギャップ14に流入される原料ガス中で放電が起き、当該放電によりオゾン(O)が発生する。電源装置3は、例えば、600Hz未満の周波数の交流電圧を、電極11に印加する。
【0014】
放電ギャップ14において発生する放電は、いわゆる誘電体バリア放電であり、単に、バリア放電と呼ばれたり、無声放電と呼ばれたりする。また、原料ガスは、酸素や、酸素と窒素の混合ガス、空気等である。また、放電ギャップ14に流入される原料ガスのガス圧は、例えば、0.17~0.28MPaの絶対圧である。
【0015】
放電管10は、例えば、ガラスやセラミックの誘電体で円筒状に形成され一端は開放し、もう一端はUの字の形状で、その内面に導電性の金属(例えば、ステンレス)を蒸着させた電極11を有する。
【0016】
本実施形態では、上述した放電管10の内面に蒸着された電極11は、円筒状の電極で誘電体の放電管10、放電ギャップ14を介して、金属電極12が設けられている。また、電極11の導電性電極は、高圧給電子5と接続される。
【0017】
金属電極12は、例えば、ステンレス鋼製等の円筒状の電極である。具体的には、金属電極12は、電極11と同軸の円筒状の電極であり、電極11の外周面側に、放電ギャップ14を介して設けられる。
【0018】
また、金属電極12は、電極11との間に放電ギャップ14を形成するための複数のスペーサ13を有する。スペーサ13は、例えば、0.3~1.3mm程度の放電ギャップ14を形成する突起である。
【0019】
また、オゾン発生装置Aでは、金属電極12の電極11が設けられる側とは反対側に、冷却水が供給される。これによって、放電ギャップ14における誘電体バリア放電により発生する熱が冷却水により冷却されるので、放電ギャップ14内の原料ガスの温度上昇を抑制し、高濃度かつ高収率のオゾンを得ることができる。オゾン発生装置Aにより生成されるオゾンは、例えば、処理すべき水の脱臭や、脱色、殺菌等の水処理に用いられる。
【0020】
異常検出装置6は、信号変換回路61と、PLC(Programmable Logic Controller)62と、を備える。信号変換回路61は、オゾン発生器1に印加される交流電圧Vopの波形をパルス信号に変換する回路である。PLC62(異常検出部)は、信号変換回路61から出力されたパルス信号のパルス幅の変化を認識し、その変化に基づいてオゾン発生器1の異常を検出し、異常を検出した場合に、電力変換装置31を制御して、オゾン発生器1への電源の供給を遮断する。
【0021】
また、PLC62は、例えば3つ以上の連続するパルス信号について、前回までの複数のパルス信号のパルス幅を用いた統計処理によってパルス幅の正常範囲の情報を生成し、最新のパルス信号のパルス幅が正常範囲に入っていない場合に、オゾン発生器1に異常があると判定する。また、PLC62は、前回までの複数のパルス信号のパルス幅を用いた統計処理によって、前回までの複数のパルス信号のパルス幅の加重移動平均に1未満の所定の第1の係数を掛けた値を下限とし、加重移動平均に1超の所定の第2の係数を掛けた値を上限として、正常範囲の情報を生成する。以下、詳述する。
【0022】
図3は、本実施形態にかかる異常検出装置6が有する信号変換回路61の機能構成の一例を示す図である。図3に示すように、信号変換回路61は、分圧回路611と、ローパスフィルタ612と、アンプ613と、コンパレータ614(信号変換部)と、を備える。なお、分圧回路611に高周波ノイズが発生しないのであれば、ローパスフィルタ612はなくてもよい。
【0023】
コンパレータ614は、複数設けられる。ここでは、3つのコンパレータ614A、614B、614Cが設けられる。
【0024】
分圧回路611は、トランス32によって高電圧に昇圧されリアクトル33を介して入力した交流電圧を低電圧に変換する。具体的には、分圧回路611は、オゾン発生器1に印加される高電圧(例えば、10kV程度)の交流電圧Vopを、ローパスフィルタ612、アンプ613、コンパレータ614などの電子回路で信号処理できる電圧レベル(例えば、5V程度)に変換する分圧回路である。
【0025】
ローパスフィルタ612は、分圧回路611からの出力電圧Vbに含まれる高周波成分のノイズを減衰させ、後述するコンパレータ614における高周波ノイズによるチャタリングの誤動作を防止する。
【0026】
アンプ613は、ローパスフィルタ612を通過した交流信号(交流電圧)を、所定の増幅度で増幅し、交流信号Voを出力する。
【0027】
コンパレータ614は、ローパスフィルタ612を通過した交流信号(交流電圧)をパルス信号に変換して出力する。具体的には、次の通りである。コンパレータ614は、入力した交流信号Voの電圧レベルと、コンパレータ614の比較電圧と比較して、その大小関係で出力レベルを切り替える動作をする。なお、コンパレータ614として、例えば、ヒステリシス特性を持つコンパレータ(ヒステリシスコンパレータ)を用いる。ヒステリシスコンパレータを用いることで、入力した交流信号Voの立上り時と立下り時の比較電圧をそれぞれに設定できるので、交流信号Voに重畳するノイズによる立上りや立下りで発生するチャタリングの誤動作を防止することができる。
【0028】
また、3つのコンパレータ614は、パルス信号に変換するときに用いる比較電圧がそれぞれ異なるように設定され、出力のパルス信号はそれぞれで異なる。
【0029】
コンパレータ614の動作とオゾン発生器1の正常時および異常時の動作について、図4図5を用いて説明する。図4図5は、本実施形態にかかる異常検出装置6が有する信号変換回路61による信号変換の一例を示す図である。
【0030】
図4(a)の波形W1は、オゾン発生器1が正常動作時にコンパレータ614に入力するアンプ613の出力信号Vo(交流信号)である。コンパレータ614Aは、出力信号Voとコンパレータ614Aに設定された比較電圧VthH_AとVthL_Aと比較して、出力レベルを切り替える。図4(a)において、出力信号Voの信号レベルが比較電圧VthH_A以上になった場合にコンパレータ614Aの出力信号VcompA(図4(b))をLowレベルからHighレベルに切り替え、出力信号Voの信号レベルが比較電圧VthL_A以下になった場合に出力信号VcompAをHighレベルからLowレベルに切り替える。
【0031】
比較電圧VthH_AとVthL_Aの電圧レベル差を、アンプ613の出力信号Voに重畳するノイズの波高値以上に設定することで、ノイズによるチャタリングの誤動作を防止することができる。
【0032】
上述の例では、オゾン発生器1の正常動作時のため、図4(a)のアンプ613の出力信号Voの波形に歪がないため、図4(b)のVcompAのパルス信号のパルス幅(パルスがHighレベルの時間長:t11~t12、t13~t14、t15~t16、t17~t18)はほぼ一定となる。
【0033】
また、コンパレータ614Bによる出力信号VcompB、および、コンパレータ614Cによる出力信号VcompCについても同様である。なお、図4(a)では、コンパレータ614Cに設定された比較電圧VthH_CとVthL_Cの図示を省略している。
【0034】
このように、3つのコンパレータ614のそれぞれで比較電圧が異なるので、出力信号VcompA、VcompB、VcompCのパルス信号のパルス幅が異なる。
【0035】
次に、図5(a)の波形W2は、オゾン発生器1に内蔵する放電管10に生じた微小孔でアーク放電が発生した際の実測定の出力信号Voである。アーク放電の発生時に一時的に電圧レベルが0V付近に低下し、その後、上昇する現象が発生している。上述の図4(a)と同一の比較電圧VthH_AとVthL_Aと比較した場合の出力信号VcompAを図5(b)に示す。アーク放電で一時的に0Vに低下し、その後の上昇するタイミングでパルスの立下りと立上りが発生するために、図4(b)の正常動作時と異なり、パルス幅(t21~t22、t23~t24、t25~t26、t27~t28)が不均一となる。
【0036】
また、比較電圧VthH_BとVthL_Bと比較した場合の出力信号VcompB、および、比較電圧VthH_CとVthL_Cと比較した場合の出力信号VcompCについても同様である。
【0037】
次に、オゾン発生器1の異常動作の検出について説明する。図6は、本実施形態にかかる異常検出装置6が有するPLC62の機能構成の一例を示す図である。PLC62は、パルス幅検出器621、パルス幅測定器622、比較器623、比較パルス幅計算器624を備える。
【0038】
パルス幅検出器621は、信号変換回路61からの出力信号Vcompのパルス信号のそれぞれの立上りと立下りを検出する機能を有する。出力信号Vcompはコンパレータ614の数だけ存在し、各々に対してパルス幅の検出を行う。
【0039】
パルス幅測定器622は、パルス幅検出器621によって検出した立上り時刻と、立下り時刻の差分から各パルス幅の時間を算出する。実際にパルス幅の測定をしたときの結果を図7図9に示す。
【0040】
図7図9は、本実施形態にかかる異常検出装置6が有するPLC62におけるパルス幅の測定結果の一例を示す図である。図7はオゾン発生器1へ一定量の電力を供給する定常運転の場合で、図9はオゾン発生器1への電力を過度的に供給する運転開始時の場合である。
【0041】
比較パルス幅計算器624は、最新のパルス幅と比較するために、前回までの各パルス幅の時間を用いて、比較する時間を計算する機能を有する。比較する時間の算出方法の一例に加重移動平均がある。図11は、本実施形態にかかる異常検出装置6が有するPLC62における加重移動平均の算出方法を示す図である。図11に示すように、最新のパルス幅の時間をtとし、一個前のパルス幅の時間をtとし、・・・、n個前のパルス幅の時間をtとする。nは1以上の整数とする。n個のパルス幅の時間の加重移動平均したパルス幅の時間t^は、以下の式(1)で表される。
【0042】
【数1】
【0043】
ただし、mはk個前のパルス幅の時間tに対する重みづけ係数を表す。すべてのmが同じ値のとき、つまり、m=1/nのときは、t^は重みづけのない移動平均を表す。
【0044】
最新のパルス幅の時間tと、加重移動平均したn個のパルス幅の時間t^で比を取り、パルス検出ごとにy=t/t^を計算してパルス幅比yを算出する。このときのグラフが図8図10である。
【0045】
図8図10は、本実施形態にかかる異常検出装置6が有するPLC62におけるパルス幅比の測定結果の一例を示す図である。
【0046】
図8図7に対応し、オゾン発生器1へ一定量の電力を供給する定常運転の場合で計算した。また、図10図9に対応し、オゾン発生器1への電力を過渡的に供給する場合で計算した。オゾン発生器1へ一定量の電力を供給する図8の場合は、比をとった値が平均1で、ある分散で広がりをもつ。一方で、オゾン発生器1への電力を過渡的に供給する図10の場合は、パルス幅を測定し始めた直後に変化量が大きく、徐々にオゾン発生器1へ一定量の電力を供給する場合と同様の状態に近づいている。以上のことから、オゾン発生器1が正常であるか否かを判定する場合に、オゾン発生器1への電力を過渡的に供給する場合で正常と判定したときは、すべての時刻において正常と判定したものとみなすことができる。
【0047】
図12は、本実施形態にかかる異常検出装置6が有するPLC62が算出したパルス幅比の一例を示す図である。最新のパルス幅の時間tと、移動平均した3個のパルス幅の時間t^で比を取ったとき、パルス幅変化の過渡的な段階で、最大のy(=t/t^)が1つ存在する。8回試験を行ったときの最大のyを求めたものを図12に示す。平均μが約0.884で、標準偏差σが約0.0272で、値が分散した。最大のyが3σに収まるには、以下の式(2)を満たせばよい。
μ‐3σ<(t/t^)<μ+3σ ・・・式(2)
【0048】
また、パルス幅が減少する場合(例えば、オゾン発生器1が電圧印加状態から停止するとき)も同様に考慮すると、式(3)となる。
μ‐3σ<(t/t^)<1+{1‐(μ‐3σ)} ・・・式(3)
【0049】
また、式(3)に図12の値を代入すると、以下の式(4)となる(「約」は省略)。
0.802<(t/t^)<1.20 ・・・式(4)
【0050】
以上から、次のような処理を行う。まず、比較パルス幅計算器624は、t^を計算する。そして、比較器623は、以下の式(5)(パルス幅の正常範囲)を満たすか否かを判定する。
0.802(第1の係数の例)×t^<t<1.20(第2の係数の例)×t^ ・・・式(5)
【0051】
つまり、比較器623は、パルス幅測定器622から出力されたパルス幅の時間tと、比較パルス幅計算器624で算出したt^を用いて、式(5)を満たすか否かを判定し、満たすときは正常と判定し、満たさないときは異常と判定する。この方法では、加重移動平均に係数をかけてtと比較するだけなので、計算負荷を軽減し、高速な動作を可能とする。
【0052】
コンパレータ614を複数用意し、パルス幅検出器621に接続すると、接続した数だけパルス幅の検出を行う。その結果、各々に対してパルス幅の測定および、正常か異常かを判定する比較を行う。
【0053】
オゾン発生器1の異常時の電圧波形を図13に示す。図13は、本実施形態にかかるオゾン発生器1の異常時の電圧波形と異常判定を説明する図である。オゾン発生器1への印加電圧を図13(a)に示し、PLC62に入力する信号変換回路61からの出力信号を図13(b)に示す。時間がマイナスの領域ではオゾン発生器1は正常に動作している。時間0以降でオゾン発生器1に異常が発生している。
【0054】
比較パルス幅計算器624は、3サンプルの移動平均でt^を計算する。その場合、パルス幅(1)~(8)について、過去に3サンプルのデータが蓄積されている時点のパルス幅(4)から比較器623で比較可能である。図13(c)の表では、No.がパルス幅の番号(1)~(8)と対応する。
【0055】
ここで、図14も併せて参照する。図14は、本実施形態にかかるPLC62による処理を示すフローチャートである。まず、ステップS1において、パルス幅測定器622は、各パルス信号のパルス幅を測定する。
【0056】
次に、ステップS2において、比較パルス幅計算器624は、上述の方法で、1つ前までのパルス信号について、パルス幅の移動平均t^を算出する。
【0057】
次に、ステップS3において、比較器623は、パルス幅の時間tと、t^を用いて、式(5)を満たすか否かを判定し、Yesの場合は処理を終了し、Noの場合はステップS4に進む。図13の場合、パルス幅(4)~(6)では式(5)を満たし(つまり、正常と判定)、パルス幅(7)では式(5)を満たさない(つまり、異常と判定)。
【0058】
ステップS4において、比較器623は、電力変換装置31に停止信号を送信し、電力変換装置31はオゾン発生器1への電力供給を遮断する。
【0059】
このように、本実施形態にかかる異常検出装置6によれば、オゾン発生器1を構成する放電管10の破損を簡易な構成で正確に検出することができる。つまり、電力変換装置31に入力する入力電力を検出する入力電力検出部や、電力変換装置31から出力される出力電流を検出する出力電流検出部が無くても、オゾン発生器1の異常を検出することができ、オゾン発生器1の異常を検出する装置の回路構成が複雑かつ高コストになることを防止できる。
【0060】
また、上述のように、PLC62によって、式(5)に示すようなパルス幅の正常範囲の情報を生成し、最新のパルス信号のパルス幅と正常範囲を比較することで、処理が簡潔になる。
【0061】
また、例えば、オゾン発生器1が小型の場合、異常発生時にアーク放電が起きても過電流(アーク電流)が小さいためヒューズ4が切れない場合がある。そういった場合には特に有効である。
【0062】
図13の場合では、異常放電発生時の検出が可能であることを示した。しかしながら、例えば、放電管10の電極11に印加される交流電圧Vopが想定よりも低く、コンパレータ614の比較電圧よりも低くなると、パルス信号を発生せず、異常放電を検出できない可能性がある。また、例えば、異常放電発生時に交流電圧Vopがコンパレータ614の比較電圧を下回らないで電圧が回復すると、パルス信号に変化が現れず、異常放電を検出できない可能性もある。
【0063】
放電管10の電極11に印加される交流電圧Vopが低くなった場合を図15に示す。コンパレータ614A、614B、614Cの比較電圧は異なる。3つの中で比較電圧が低いコンパレータ614A(コンパレータA)と、比較電圧が真ん中のコンパレータ614B(コンパレータB)は、パルス信号を出力している。しかし、交流電圧Vopがコンパレータ614C(コンパレータC)の比較電圧を超えないと、コンパレータ614Cはパルス信号を出力しない。パルス信号を出力しているコンパレータ614Aとコンパレータ614Bの出力信号に基づいて、異常放電が発生しているのか判定する。このように、交流電圧Vopは運転状況によって変化するために、コンパレータの比較電圧は低い方が望ましい場合がある。
【0064】
以下では、Vopは、交流電圧の最大電圧を指すものとする。コンパレータ614の比較電圧の決め方について、指標となる電圧は、オゾン発生器1の放電開始電圧Vdと、設計上の交流電圧の最大電圧Vopの2つである。放電開始電圧Vd未満では、異常放電は発生しないため、比較電圧を設定する必要はない。そこで、図16のように、放電開始電圧Vdから設計上の最大電圧Vopまでについて複数のコンパレータ614で動作できるように、比較電圧を設定する。コンパレータ614を3つ設置する場合、例えば、比較電圧を以下のように設定するのがよい。
【0065】
コンパレータ614Aの比較電圧=Vd
コンパレータ614Bの比較電圧=Vop/3+2Vd/3
コンパレータ614Cの比較電圧=2Vop/3+Vd/3
【0066】
これによれば、3つのコンパレータ614の比較電圧が、放電開始電圧Vdから設計上の最大電圧Vopまでの三等分点を基準にバランスよく設定されたことになる。なお、ここでは詳細な説明を省略するが、各比較電圧に対して、立ち上がり時の比較電圧VthHと立下り時のVthLを設定する。
【0067】
一方で、異常放電が発生しても、電圧降下が0まで落ちない場合を図17に示す。コンパレータ614A、614B、614Cの比較電圧は異なる。図17における右方の異常放電発生時までは、コンパレータ614A、614B、614Cのすべてでパルス信号を安定的に出力している。そして、異常放電が発生すると、交流電圧は一時的に低下するが、すぐに回復した。放電管10が複数挿入されていると、コンデンサの放電現象によって異常放電に電荷が供給され、電圧が下がりにくいことがある。このとき、コンパレータ614Bとコンパレータ614Cではパルス幅が短くなることが確認できるが、交流電圧が0まで低下しないために、コンパレータ614Aではパルス幅が短くならず異常放電として判定できない。このように、異常放電が発生しても交流電圧Vopは0まで落ちないことがあるので、コンパレータの比較電圧は高い方が望ましい場合がある。
【0068】
以上からわかるように、オゾン発生器1の出力を変更するときに交流電圧が変化するために、コンパレータ614を複数個設置することが望ましい。また、複数のコンパレータ614の出力信号VcompをすべてPLC62に入力して、比較器623で異常放電か否かを判定することは、オゾン発生器1由来のノイズや、オゾン発生器1の電源由来のノイズによって、PLC62が誤動作するリスクが高まる。このため、パルス信号を出力しているコンパレータ614のうち、例えば、比較電圧がもっとも高いコンパレータ614のみを比較器623で異常放電の判定をすることに使用する手法が考えられる。
【0069】
以下、複数あるコンパレータ614のうちいずれを動作させて異常検出をするかについて、3つの手法を説明する。1つ目は、複数あるコンパレータ614のうち、ひとつでも異常と検出すれば、PLC62で異常と判定して電源を停止する方法である。この方法を図18に示す。図18では、コンパレータ614Bによるパルス信号に基づいて異常と判定した場合を示している。この手法によれば、PLC62の論理構成が簡素化され、3つの手法の中で最も高速に動作し、電源保護を最優先にできる。
【0070】
2つ目は、パルス幅を検出しているコンパレータ614のうち、比較電圧VthHが最も高いコンパレータ614のみ、異常検出に用いる方法である。この方法を図19に示す。図19では、コンパレータ614Bによるパルス信号のみに基づいて異常検出を行う場合を示している。この手法によれば、異常を検出するコンパレータ614は必ず1つのため、ノイズによる誤動作で異常と判定する可能性が最も低い。
【0071】
3つ目は、パルス幅を検出しているコンパレータ614のうち、比較電圧VthHが最も高いコンパレータ614と、次に高いコンパレータ614を選択し、異常検出に用いる方法である。この方法を図20に示す。図20では、コンパレータ614B、614Cによるパルス信号に基づいて異常検出が行われる場合を示している。コンパレータ614が動作し始める比較電圧VthHとほぼ等しい出力電圧Vcompでは、周期を繰り返すごとに、電圧の誤差の範囲でコンパレータ614が動作したり、動作しなかったりすることがある。
【0072】
そこで、複数のコンパレータ614が動作している中で、比較電圧VthHが最も高いコンパレータ614(コンパレータ614B)があるパルス幅以上のとき(パルス幅B≧閾値B)は、比較電圧VthHが最も高いコンパレータ614(コンパレータ614B)を選択する。また、複数のコンパレータ614が動作している中で、比較電圧VthHが最も高いコンパレータ614(コンパレータ614B)があるパルス幅未満のとき(パルス幅B<閾値B)は、比較電圧VthHが次に高いコンパレータ614(コンパレータ614A)を選択する。この手法では、出力電圧Vcompが比較電圧VthH付近のときに、コンパレータ614の動作の有無で異常を誤検出するリスクを低減することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0074】
例えば、上述の実施形態では、パルス信号のパルス幅をパルスがHighレベルの時間長としたが、これに限定されず、例えば、パルス信号のパルス幅をパルスがLowレベルの時間長としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…オゾン発生器、3…電源装置、4…ヒューズ、5…高圧給電子、6…異常検出装置、10…放電管、11…電極、12…金属電極、13…スペーサ、14…放電ギャップ、31…電力変換装置、32…トランス、33…リアクトル、61…信号変換回路、62…PLC、611…分圧回路、612…ローパスフィルタ、613…アンプ、614…コンパレータ、621…パルス幅検出器、622…パルス幅測定器、623…比較器、624…比較パルス幅計算器、A…オゾン発生装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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