(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103135
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】危険予知システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0635 20230101AFI20230719BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230719BHJP
【FI】
G06Q10/06 326
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004016
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 洋行
(72)【発明者】
【氏名】梅野 道明
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
5L049CC20
(57)【要約】
【課題】蓄積した労働災害に関するデータを分析してその後の対策にフィードバックできる。
【解決手段】危険予知システムは、労働災害に関するデータが格納された労災情報データベースと、労災を引き起こした要因の分類を記載した分類テーブル、労働災害に関するデータから抽出された労災の要因を記載した要因テーブル、及び要因に対応したチェック項目に対して危険予知アドバイスを対応付けたアドバイステーブルを含む抽出解析情報データベースと、を備える労災情報集約サーバと、作業者の業務内容をチェックするためのチェック項目を含むチェックリストと、を有し、作業者がチェックしたチェック結果を労災情報集約サーバに送信した場合に、チェック結果に対するリスクの診断結果と、労災情報集約サーバから抽出された業務内容に関連する、危険予知アドバイスと、労働災害に関するデータと、を作業者が操作する端末に表示させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
労働災害に関するデータが格納された労災情報データベースと、
労災を引き起こした要因の分類を記載した分類テーブル、前記労働災害に関するデータから抽出された労災の要因を記載した要因テーブル、及び前記要因に対応したチェック項目に対して危険予知アドバイスを対応付けたアドバイステーブルを含む抽出解析情報データベースと、を備える労災情報集約サーバと、
作業者の業務内容をチェックするための前記チェック項目を含むチェックリストと、を有し、
前記作業者が前記チェックリストに記載されたチェック項目の内容と自らの業務内容の関連性について点数付けをしてチェックしたチェック結果を前記労災情報集約サーバに送信した場合に、前記チェック結果に対するリスクの診断結果と、前記労災情報集約サーバから抽出された前記業務内容に関連する、前記危険予知アドバイスと、前記労働災害に関するデータと、を前記作業者が操作する端末に表示させる、
危険予知システム。
【請求項2】
チェックごとに集計された前記チェック結果の集計結果を管理者が操作する端末に出力する請求項1に記載の危険予知システム。
【請求項3】
前記分類テーブルは、労災発生時の作業者の意識を類別した分類と、労災に繋がる行動/状況との組み合わせを有し、
前記抽出解析情報データベースにおいて、前記組み合わせに対して、前記要因テーブルの前記要因が記録されている請求項1又は請求項2に記載の危険予知システム。
【請求項4】
前記作業者が行う予定の作業類別を受け付け、予め作業類別に応じて定められたチェック項目リストから抽出されたチェック項目を含む前記チェックリストを出力する請求項1~請求項3の何れか1項に記載の危険予知システム。
【請求項5】
前記チェックリストは、作業現場において継続して行われている作業に対して、作業単位ごとに異なるチェック項目を表示する請求項1~請求項4の何れか1項に記載の危険予知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、危険予知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
過去の災害、事故等を検索して提供するシステムがある。例えば、適切な作業工程上の重要管理点に、必要かつ十分な事故再発防止策を決定する事故予防管理方法に関する技術がある(特許文献1参照)。この技術では、事故再発防止策の決定は、リスクレベルに応じて、危険性の高い事故を引き起こす虞のある業務についての事故再発防止策を優先して、行われるように構成している。
【0003】
また、労働災害の発生を防止するための適切な情報を提供する危険予知支援システムに関する技術がある(特許文献2参照)。この技術では、抽出された危険のポイントの危険度にヒヤリハット指数を乗算した値を実績危険度として算出し、該実績危険度の高い危険のポイント及びその対策を記載した模範危険予知表を作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-49349号公報
【特許文献2】特開2013-80304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような技術分野において、労働災害に関するデータを分析し、対策にフィードバックするためのシステムが求められている。例えば、化学工場の作業現場においては、KY(危険予知)活動など、日々の取組みの中で事故防止が図られているが、このような取り組みの中で、他拠点の過去の労災事例を学ぶ機会を提供しフィードバックすることが考えられる。他拠点の過去の労災事例や、ヒューマンファクターも含め普段気が付いていないリスクを認識する機会を提供することが想定される。
【0006】
また、作業者の日々のセルフチェックを分析し、管理者が分析結果を確認して現場の考え方や問題点を把握できるようにし、対策にフィードバックすることも想定される。
【0007】
本開示の課題は、蓄積した労働災害に関するデータを分析してその後の対策にフィードバックできる危険予知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の危険予知システムは、労働災害に関するデータ(労災情報)労災情報が格納された労災情報データベースと、労災を引き起こした要因の分類を記載した分類テーブル、前記労働災害に関するデータから抽出された労災の要因を記載した要因テーブル、及び前記要因に対応したチェック項目に対して危険予知アドバイスを対応付けたアドバイステーブルを含む抽出解析情報データベースと、を備える労災情報集約サーバと、作業者の業務内容をチェックするための前記チェック項目を含むチェックリストと、を有し、前記作業者が前記チェックリストに記載されたチェック項目の内容と自らの業務内容の関連性について点数付けをしてチェックしたチェック結果を前記労災情報集約サーバに送信した場合に、前記チェック結果に対するリスクの診断結果と、前記労災情報集約サーバから抽出された前記業務内容に関連する、前記危険予知アドバイスと、前記労働災害に関するデータと、を前記作業者が操作する端末に表示させる。
【0009】
また、本開示の危険予知システムにおいて、チェックごとに集計された前記チェック結果の集計結果を管理者が操作する端末に出力するようにしてもよい。
【0010】
また、本開示の危険予知システムにおいて、前記分類テーブルは、労災発生時の作業者の意識を類別した分類と、労災に繋がる行動/状況との組み合わせを有し、前記抽出解析情報データベースにおいて、前記組み合わせに対して、前記要因テーブルの前記要因が記録されているようにしてもよい。
【0011】
また、本開示の危険予知システムにおいて、前記作業者が行う予定の作業類別を受け付け、予め作業類別に応じて定められたチェック項目リストから抽出されたチェック項目を含む前記チェックリストを出力するようにしてもよい。
【0012】
また、本開示の危険予知システムにおいて、前記チェックリストは、作業現場において継続して行われている作業に対して、作業単位ごとに異なるチェック項目を表示するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の危険予知システムによれば、蓄積した労働災害に関するデータを分析してその後の対策にフィードバックできる、という効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】危険予知システムの主な工程を模式的に示す図である。
【
図2】本実施形態の危険予知システムの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】労災情報集約サーバのハードウェアとしての構成を示す図である。
【
図5】セルフチェックリストのマスターデータの一例を示す図である。
【
図6】セルフチェックリストの一例を示す図である。
【
図7】セルフチェックリストの診断結果等の一例を示す図である。
【
図8】チェック結果の集計結果の一例を示す図である。
【
図9】危険予知システムの労災情報集約サーバにおける作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の技術の実施形態について図面を用いて説明する。
【0016】
まず、本開示において提案する危険予知システムの概要について説明する。
図1は、危険予知システムの主な工程を模式的に示す図である。
図1に示すように、危険予知システムは、工場等の管理者と作業者のそれぞれの危険予知に関する活動を支援する仕組みとなっている。工程1では、管理者が過去の労働災害に関するデータを危険予知システムに入力し、危険予知システムの労災情報データベース(DB)に労働災害に関するデータ(以下、労災情報とも記載する)を格納する。工程2では、管理者が労災に繋がる行動及び当該行動を引き起こした要因を抽出し、危険予知システムに労働災害に関するデータの解析結果を記録する。工程3では、記録した労働災害に関するデータの解析結果と照合して管理者がKYアドバイスを入力し、危険予知システムの各種テーブルに記録する。作業者が作業内容をチェックするためのセルフチェックリストを生成する。工程4では、作業者が日々のKY活動の一環として、出力されたセルフチェックを用いてチェックを行う。作業者は、チェックリストに記載されたチェック項目の内容と自らの業務内容の関連性について点数付けをしてチェックする。工程5では、危険予知システムが受け付けたチェック結果をもとに、チェック結果に対するリスクの診断結果と、業務内容に関連する、KYアドバイス及び関連労災情報を抽出して、作業者が確認できる端末に表示する。工程6では、作業者の日々のチェック結果を集計し、管理者の労災リスク管理への活用を図る。
【0017】
次に、危険予知システム100の機能的な構成について説明する。
図2は、本実施形態の危険予知システム100の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、危険予知システム100は、労災情報集約サーバ110と、管理者端末140と、作業者端末150とがネットワークNを介して接続されている。労災情報集約サーバ110は、労災情報DB112と、抽出解析情報DB114と、診断処理部116と、集計処理部118とを含む。なお、管理者端末140及び作業者端末150は、生産拠点ごとに複数の端末が設置される想定である。また、各生産拠点を統括する拠点がある場合には、当該拠点にも管理者端末140が設置される。
【0018】
危険予知システム100は、例えば、工場の各生産拠点の労働災害に関するデータを集約して蓄積し、運用されることが想定される。これにより、生産拠点ごとの過去の労災事例が集約され、更なる解析に繋げられる。また、以下に説明するセルフチェックリスト及びKYアドバイスを蓄積することで、過去の労災の教訓を伝えられる。また、各生産拠点に合わせた対応が可能となる。
【0019】
管理者端末140及び作業者端末150は、労災情報集約サーバ110と連携して危険予知の支援を行うための端末である。管理者端末140は、管理者が操作可能なPC端末等であり、労災情報集約サーバ110へのデータの入出力をおこなうための端末である。管理者端末140は、労災情報集約サーバ110へのデータの入出力として、労災情報、及びKYアドバイス等の入力が可能である。また、管理者端末140は、労災情報集約サーバ110に記録されたチェック結果の集計の表示が可能である。作業者端末150は、作業者が操作可能なPC端末等である。作業者端末150は、セルフチェックリストをディスプレイ等に表示可能であり、作業者がチェックしたセルフチェックリストのチェック結果を労災情報集約サーバ110に送信する。
【0020】
以下の説明において管理者又は作業者を主体として実施する内容は、管理者端末140又は作業者端末150を用いて実施される。なお、作業者には作業監督者が含まれ得る。
【0021】
労災情報集約サーバ110のハードウェアとしての構成を
図3に示す。CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0022】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、解析処理のためのプログラムが格納されている。
【0023】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0024】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボード又は音声入力用のマイクを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0025】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能してもよい。
【0026】
通信インタフェース17は、端末等の他の機器と通信するためのインタフェースである。当該通信には、たとえば、イーサネット(登録商標)若しくはFDDI等の有線通信の規格、又は、4G、5G、若しくはWi-Fi(登録商標)等の無線通信の規格が用いられる。
【0027】
労災情報集約サーバ110の機能について各構成について説明する。
【0028】
労災情報DB112は、管理者端末140から受け付けた労働災害に関するデータ(労災情報)が格納されるデータベースである。労働災害に関するデータは、労災の発生ケースごとに、発生ケースの詳細を記録した情報である。労働災害に関するデータとして記録されるテーブルの項目の例を挙げる。テーブルの項目としては、具体作業、工場、発生日、労災種類、労災概要、発生場所、傷病名、事故の型、作業番号、作業類別、被災者情報、起因物、災害発生状況、状況画像、直接原因、要素原因、及び主な対策、等が一例として用いられる。労働災害に関するデータには、発生ケースごとに、これらの項目の内容が記録される。生産拠点ごとに設置された管理者端末140からは、生産拠点ごと、すなわち工場ごとの労働災害に関するデータが入力され、蓄積される。
【0029】
労働災害に関するデータについて「災害発生状況」の一例を挙げる。例えば、「災害発生状況」には、「(**月**日)、夜勤、被災者が、一人で**工場 **機で**を製膜中に、画像の状態であった押えロールが浮き気味であったので、素手で、アームを押しつけようとした時矢印方向に、押さえロールが上昇したため、アームを押さえていた右手を、アングルとの間に挟まれた。」といった状況の説明が記録される。
【0030】
抽出解析情報DB114は、労働災害に関するデータを解析した解析データと、解析を元に生成したセルフチェックリストのマスターデータとを含むデータベースである。
【0031】
図4に解析データの一例を示す。解析データ(AD)のテーブルとしては、分類テーブル(A1)、発生件数及び度数を示す件数テーブル(A2)、及び要因(関連ワード)を示す要因テーブル(A3)がある。形式としては、分類(A1-1)及び行動/状況(A1-2)の組み合わせごとに、発生件数及び度数を示す件数テーブル(A2)、要因(関連ワード)を示す要因テーブル(A3)に情報が記録される。
【0032】
なお、テーブルのうち、分類テーブル(A1)の情報は、あらかじめ管理者によって、労災に関して想定される分類が設定されたものである。テーブルのうち、件数テーブル(A2)、要因テーブル(A3)の情報は、管理者が労災情報DB112から労働災害に関するデータを抽出して解析した情報である。抽出/解析は、例えば、労働災害に関するデータの「災害発生状況」等の内容を抽出し、同義語をまとめることによって行われる。もっとも、解析データは、管理者が抽出/解析を行って記録する場合に限定されず、機械学習等により学習したモデルを元に、自動的に抽出/解析を行って、結果を管理者が確認して解析データとして記録するようにしてもよい。学習は、労働災害に関するデータを入力として要因を抽出するようにモデルを学習すればよい。
【0033】
分類テーブル(A1)は、労働災害に関するデータの労災を引き起こした要因の分類を記載したテーブルである。分類テーブル(A1)は、サブテーブルとして、分類(A1-1)と、労災に繋がる行動/状況(A1-2)とに分けられる。分類(A1-1)は、労災発生時の作業者の意識(ヒューマンファクター)を類別したものであり、(無考、無視、無謀、無自覚、無知、無意識、無神経、無関心、無断)の7つの分類の何れかで表される。なお、分類は一例であり、工場に応じて適宜、追加、削除、変更してもよい。
【0034】
行動/状況(A1-2)は、労災に繋がる行動/状況を記載したサブテーブルである。行動/状況は、要因テーブル(A4)の具体的な要因をまとめて表した内容といえる。
図4に示しているように、「必要な操作・確認をしない」、「決められた手順で作業を行わない」、「回転体・動作中の機器に手を出す」等が行動/状況として記載される。なお、行動/状況は一例であり、工場に応じて適宜、追加、削除、変更してもよい。
【0035】
なお、分類テーブル(A1)の分類、行動/状況の内容を、更新された労災情報DB112の内容を元に設定し直してもよい。例えば、分類の一部や行動/状況の一部をまとめてもよい。
【0036】
件数テーブル(A2)は、労災情報DB112から抽出された要因の発生ケースごとの発生件数、及び抽出された発生ケースの全体件数に対する度数(%)を記載したテーブルである。
【0037】
要因テーブル(A3)は、労災情報DB112から抽出された労災の要因を列記して記載したテーブルである。
図4に示すように、要因テーブル(A3)である「要因(関連ワード)」には「慣れた作業(6)、緊急要請、昼休み直前からローリングタワー組立を行い急いでいた、作業が遅れると思い焦っていた、手馴れた作業で危険意識が低下・・・」といった内容が列記される。
【0038】
図5にセルフチェックリストのマスターデータの一例を示す。セルフチェックリストのマスターデータは、セルフチェックリスト自体(A)と、チェック項目に対するKYアドバイス(B)とに分けられる。KYアドバイス(B)のテーブルが、本開示の技術のアドバイステーブルの一例である。
【0039】
セルフチェックリストのチェック項目(A)については、分類及び行動/状況は、解析データと同様である。チェック項目については、管理者が、解析データの要因テーブル(A3)の内容等を元に設定する。KYアドバイス(B)は、セルフチェックリストについて設定したチェック項目に応じて、管理者がKYアドバイスを入力することにより設定する。
【0040】
図5に示すように、KYアドバイスは、チェック項目「今日の作業は慣れた作業である」に対しては「慣れた作業でも操作の見直し・確認」、チェック項目「現在、緊急要請を受けている」に対しては「緊急の時こそ、確実に作業手順を確認」、といったアドバイスを示す記載である。
【0041】
なお、セルフチェックリストのチェック項目は、機械学習等により学習したモデルを元に自動的に生成し、結果を管理者が確認して設定するようにしてもよい。学習は、解析データとマスターデータのチェック項目とを教師データに用いて、解析データを入力してチェック項目を出力するようにモデルを学習すればよい。また、KYアドバイスが何れのチェック項目に対応するかを分類するモデルを学習し、モデルを用いて、チェック項目とKYアドバイスとの対応付けを行ってもよい。また、モデルを用いて、対応付けの候補を管理者に提示し、管理者に適切な対応付けを選択させるようにしてもよい。
【0042】
また、セルフチェックリストのチェック項目は、解析データと同様の分類及び行動/状況に限らず、労災情報DB112の労働災害に関するデータの作業類別ごとに分類してもよい。これにより、危険予知システム100は、作業者が行う予定の作業類別を受け付け、予め作業類別に応じて定められたチェック項目リストから抽出されたチェック項目を含むセルフチェックリストを作業者端末150に出力することができる。チェック項目リストは、作業類別ごとにチェック項目の候補をリストにしたものである。
【0043】
診断処理部116は、抽出解析情報DB114のマスターデータからセルフチェックリストを作成して、作業者端末150に出力する。セルフチェックリストは、作業者がセルフチェックリストに記載されたチェック項目の内容と自らの業務内容の関連性について点数付けをしてチェックできるように構成されていればよい。また、セルチェックリストは、工場の作業で想定される作業で重視するチェック項目が含まれるように、管理者が設定できるようにしてもよい。
【0044】
図6にセルフチェックリストの一例を示す。
図6に示すように、セルフチェックリスト180は、工程及び作業の選択欄があり、選択可能となっている。セルフチェックリスト180は、チェック項目に対して、「違う」、「その通り」で表される度合いを1から5までの数字でチェックするリストとなっている。作業者は予定している作業の業務内容に応じてセルフチェックリスト180のチェック項目の数字をチェックする。
【0045】
また、セルフチェックリストは、作業現場において継続して行われている作業に対して、作業単位ごと、つまり作業のチェックが発生するたびに異なるチェック項目を表示するようにしてもよい。また、選択された工程及び作業に応じて異なるチェック項目を表示するようにしてもよい。これにより、作業者が漫然とチェックすることを防止し、労災防止を促すことができる。
【0046】
診断処理部116は、作業者端末150からセルフチェックリストのチェック結果を受け付けると、チェック結果に対するリスクの診断結果を生成する。診断結果の生成は、予めチェック結果の数値と診断結果の対応付けを定めたルールや学習したモデルを用いて行えるようにしておけばよい。また、診断処理部116は、チェック結果に含まれる業務内容を元に、抽出解析情報DB114のマスターデータから関連するKYアドバイスを抽出し、労災情報DB112から関連する関連労災情報を抽出する。診断処理部116は、生成したリスクの診断結果と、抽出したKYアドバイス及び関連労災情報とを作業者端末150に出力して表示させる。関連労災情報として抽出する対象は、例えば、他の生産拠点の労働災害に関するデータの関連するものを抽出してもよい。
【0047】
図7にセルフチェックリストの診断結果等の一例を示す。
図7に示すように、診断結果を分類ごとの数値を示すチャートで表示し、KYアドバイスの説明、及び関連労災情報の一覧を表示する。このように診断結果を表示することで、セルフチェックで普段意識していないリスクに気付かせる機会ができる。また、KYアドバイスにより効果的なKY活動が実施できる。また、関連労災情報を表示させることで、他の拠点も含めた過去労災事例を学ぶ機会ができる。
【0048】
なお、チェック結果の集計から全体の傾向を記録しておき、診断結果のチャートに、作業者の傾向と全体の傾向との比較としてもよい。
【0049】
なお、診断機能をモジュール化したソフトウェアとして構成して作業者端末150で実行できるようにしてもよい。
【0050】
集計処理部118は、作業者のチェックごとに収集されたチェック結果を集計し、集計結果を管理者端末140に出力する。なお、作業単位は、作業者がセルフチェックリストをチェックしたチェックごとである。このように、管理者がセルフチェックの集計結果を確認できるようにすることで、作業者がどの様な意識をもっているかを把握できるようになる。また、集計の範囲を部署ごとにしてもよい。これにより部署ごとにリスク及び課題を把握できる。
【0051】
図8にチェック結果の集計結果の一例を示す。
図8の集計では、チェック年月日の単位で1レコードごとにチェック結果が集計されており、チェック項目に対する数値のチェックが表示され、合計、平均などの集計結果を表示する例となっている。
【0052】
次に、
図9を参照して、危険予知システム100の労災情報集約サーバ110における作用を説明する。CPU11がROM12又はストレージ14からプログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、CPU11が労災情報集約サーバ110の各部として機能し、以下の処理が行なわれる。
【0053】
ステップS100において、管理者端末140から労働災害に関するデータ(労災情報)を受け付け、労災情報DB112に労災情報を格納する。
【0054】
ステップS102において、管理者の管理者端末140の各種操作により、労働災害に関するデータ(労災情報)の抽出/解析を実施し、抽出解析情報DB114に解析データを記録する。
【0055】
ステップS104において、管理者の管理者端末140の各種操作により、セルフチェックリストを生成し、抽出解析情報DB114にセルフチェックリストのマスターデータを記録する。
【0056】
ステップS106において、抽出解析情報DB114のマスターデータからセルフチェックリストを作成して、作業者端末150にセルフチェックリストを出力する。
【0057】
ステップS108において、作業者端末150から作業者のセルフチェックリストのチェック結果を受け付ける。
【0058】
ステップS110において、チェック結果に対するリスクの診断結果を生成し、抽出解析情報DB114のセルフチェックリストのマスターデータから関連するKYアドバイスを抽出し、労災情報DB112から関連する関連労災情報を抽出する。
【0059】
ステップS112において、生成したリスクの診断結果と、抽出したKYアドバイス及び関連労災情報とを作業者端末150に出力し、作業者端末150に表示させる。
【0060】
ステップS114において、作業者のチェックごとに収集されたチェック結果を集計し、集計結果を管理者端末140に出力する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る危険予知システム100によれば、蓄積した労働災害に関するデータを分析してその後の対策にフィードバックできる。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0063】
また、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
100 危険予知システム
110 労災情報集約サーバ
112 労災情報DB
114 抽出解析情報DB
116 診断処理部
118 集計処理部
140 管理者端末
150 作業者端末
180 セルフチェックリスト