(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103146
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】電動機(1)
(51)【国際特許分類】
H02K 21/14 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
H02K21/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022014514
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】522043758
【氏名又は名称】山崎 嗣人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 嗣人
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 篤見
【テーマコード(参考)】
5H621
【Fターム(参考)】
5H621AA03
5H621BB10
5H621PP02
5H621PP10
(57)【要約】
【課題】永久磁石と電磁石の磁極間間隙を加速性能を担保しつつ、高速航続性能と省エネルギー化を実現する間隙に可変制御することを可能にした電動機を提供する。
【解決手段】回転駆動軸に軸心を連結し外周方向に沿い永久磁石を配列したロータと、前記ロータの前記永久磁石の磁極に対して所定の磁極間間隙で電磁石の磁極を対面可能に配置したステータとを設けた電動機において、前記ステータを等分割し分割ステータの電磁石とロータの永久磁石の対面時の磁極間間隙をロータの回転速度に応じて特殊な拡縮駆動機構により適正な磁極間間隙値曲線Cnに沿って最少磁極間間隙Xoから最適磁極間間隙Xcに連続的に又は段階的に自動位置調節することを可能にした電動機。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動軸に軸心を連結し外周方向に沿い永久磁石を配列したロータと、前記ロータの外側において前記永久磁石の磁極に対して所定の磁極間間隙で電磁石の磁極を対面可能に配置したステータとを設けた電動機において、前記ステータをその周方向に等回転角度間隔で分割し、前記磁極間間隙を拡縮可変させる拡縮駆動機構として、
ステータ各分割部の電磁石基部の周方向中心部の両側部に被ガイド腕を突設し、
前記被ガイド腕の両側部に平行に平行被ガイド腕を対面突設し、
ステータの両側面に間隙を介して固定され前記被ガイド腕に係合連結してする被ガイド腕をステータの径方向に案内する径方向スリットを形成し前記径方向スリットと平行で前記平行被ガイド腕に係合連結して前記被平行ガイドを被ガイド腕と平行してステータの径方向に案内する一対のドーナツ状の固定ガイド板を設け、
前記両方の固定ガイド板の各外側に回転可能に設けられ前記径方向スリットから突出させた被ガイド腕に摺動可能に係合連結して当該分割ステータをその半径方向に移動可能にする円弧状ガイドを内周面に形成した一対の対面式の回転リングを設けてなることを特徴とする電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータやダイナモ(発電機)等の電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のトルクと回転数の最適化には、
図9に示すように、スタート時や登坂には高トルク、高速巡行時には低トルクで高回転数が求められる。
この最適化を実現するために、過去に種々の方法が考案されているが、最も効果的な方法は「可変界磁システム」で、各社研究機関等で、様々な仕組みが発表されている。
主要電気自動車メーカも、モータの製造工程において、構成部品の一部を変更することにより、他の工程に大幅な修正を加えることなく、目的とする最適化、つまり省エネルギー化による航続距離の改善が行えることを研究している。
【0003】
而して電気自動車に搭載されるモータは、内燃機関と比較して、加速性能には優れているが、高速航続性能はネックとなり、実用的な移動手段としては限られた範囲に留まっている。
つまりモータには「トルクと回転数」の関係において、東洋大学理工学部電気電子情報工学科論文の「自動車・鉄道で要求されるモータの駆動特性図」にもその性能が求められている。
【0004】
即ち、モータに求められる駆動特性は、稼働運転状況に応じた適切なトルクと回転数、そしてそれぞれに必要なエネルギーの分配である。同一モータにおいて「高磁力‐低速」と「低磁力‐高速」を、エネルギーの無駄を最小限に抑えて実現することが求められており、同様のことはガソリン車にも異口同音に指摘されている。
共通のポイントとしては、高速走行では、大きなトルクは必要とせず、モータの回転数を上げなければならない。そこでガソリン車のように省エネが実現すれば、燃費は良くなり、航続距離も伸びる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は過去にモータ自体の構造変更は最小限に抑えながら、加速性能を担保しつつ、高速航続性能と省エネルギー化を実現する電動機を開発している。
【0006】
本発明は、すでに開発済みの技術を補完し、回転駆動軸に軸心を連結し内周方向に沿い永久磁石を配列したロータと、前記ロータの外側において前記永久磁石の磁極に対して所定の磁極間間隙(エアギャップ)で電磁石の磁極を対面可能に配置したステータとを設けた電動機において、前記磁極間間隙を加速性能を担保しつつ、高速航続性能と省エネルギー化を実現する間隙に可変制御することを可能にした電動機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を満足させる本発明の電動機における主な技術構成は、次の(1)の通りである。
(1)、回転駆動軸に軸心を連結し外周方向に沿い永久磁石を配列したロータと、前記ロータの外側において前記永久磁石の磁極に対して所定の磁極間間隙で電磁石の磁極を対面可能に配置したステータとを設けた電動機において、
前記ステータをその周方向に等回転角度間隔で分割し、前記磁極間間隙を拡縮可変させる拡縮駆動機構として、
ステータ各分割部の電磁石基部の周方向中心部に被ガイド腕を突設し、
前記被ガイド腕の両側部に平行に平行被ガイド腕を対面突設し、
ステータの両側面に間隙を介して固定され前記被ガイド腕に係合連結して被ガイド腕をステータの径方向に案内する径方向スリットを形成し前記径方向スリットと平行で前記平行被ガイド腕に係合連結して前記被平行ガイドを被ガイド腕と平行して案内する一対の円弧状の固定ガイド枠を設け、
前記両方の各固定ガイド枠の各外側に対面して回転可能に設けられ前記各固定ガイド枠の径方向スリットから突出させた被ガイド腕に摺動可能に係合連結して全分割ステータをその半径方向に移動可能にする円弧状ガイドを内周面に形成した一対の回転リングを設けてなることを特徴とする電動機。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電動機は、前記ロータの永久磁石(以下PMと称する)が発生する磁束密度によって前記ステータの電磁石の受ける磁気抵抗(磁気回路に鉄損(:渦電流とヒステリシス)及び銅損(:逆起電力))の変化を前記拡縮駆動機構による磁極間間隙の調整で制御する。この磁極間間隙の調整制御により、加速時や登坂時には磁束密度の高い磁場と電磁石が作用しあって、低速で高トルクを発生させ、一方、回転数が高くなると、前記拡縮駆動機構によってPM、電磁石、またはその組み合わせが、磁束密度の低い状態に移動し、磁気抵抗が少ない状態で高速回転が実現でき、消費電力も減少する優れた作用効果を呈する。
【0009】
前記拡縮駆動機構を用いる制御では、ロータの回転速度に応じて一対の前記回転ディスクを回転させて各分割ステータの電磁石とロータの永久磁石との磁極間の間隙の変位度合いを決める。これで低速-高トルクおよび高速-低トルクの最適化された「トルク対回転速度」の状況が自動的に実現できる。つまり低回転時には前記拡縮駆動機構により磁極間間隙を狭くして、磁束密度を高く電磁してその作用で高トルクを発生させる。高速になると前記拡縮駆動機構により磁極間間隙を広くして磁気抵抗を低くすることにより回転数を上げて、低消費電力を維持しながら高速航続を行う。登坂や減速時には回転数が落ち、それに伴って磁極間間隙を狭めて、高トルクを発生できる状態になる。これらモータ特性の変化は自動的に行われる。
【0010】
本発明は更に電動機の力行((りっこう)駆動)、惰行走行、回生(制動)を細かく制御するには、磁極間間隙の制御を前記ロータの回転速度に応じて前記拡縮駆動機構により好ましくは自動的に行うのである。つまり本発明はPMと電磁石間に発生する磁束密度の変化を磁極間の間隙調整により「トルク対回転速度」を簡単堅牢な前記拡縮駆動機構により最適化させることを可能にしたのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明の電動機の実施例を示し一部省略してある正面側面図である。
【
図2】
図1の電動機のステータに装着する被ガイド円弧板G1の斜視説明図(1)と、装着後のステータを示す斜視説明図(2)であり、電磁石のコイルとロータ100を省略して示す。
【
図3】
図2のステータの被ガイド円弧板G1に装着する固定ガイド板204の斜視説明図(1)と、装着後のステータを示す斜視説明図(2)であり、電磁石のコイルとロータ100を省略して示す。
【
図4】
図3のステータの固定ガイド板204に装着する回転リング210、211の斜視説明図(1)と、装着後のステータを示す斜視説明図(2)であり、電磁石のコイルとロータ100を省略して示す。
【
図5】
図4に電磁石のコイルとロータ100を加えた側面説明図である。
【
図9】自動車・鉄道で要求されるモータの駆動特性図を示すグラフである。
【
図10】
図1~
図9に示す実施例において検証したロータの永久磁石とステータの電磁石の磁極間間隙とロータの回転数(RPM)の関係(実測値)を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る装置の実施例を
図1~
図8と共に説明する。
実施例1の電動機は、
図1に示す正面図のように、回転駆動軸101に鉄心103の軸心部104を連結固定し鉄心103の外周方向に沿い永久磁石102を固定配列したロータ100と、前記ロータ100の外側における前記永久磁石102の磁極に対して所定の磁極間間隙で電磁石201を例えば複数個備えた分割ステータ200-1~200-6を真円の円周方向に配列したステータ200とを設けたインナーロータ(内輪型PS)の電動機である。
【0013】
前記分割ステータ200-1~200-6は、前記各電磁石201をステータ200の半径線方向に向けて配置し、その各基部201aのステータ周方向両端面もステータ200の半径線方向に向けて形成して離間可能に接近配置してある。
【0014】
前記永久磁石102と電磁石201の磁極対面時の磁極間間隙(エアギャップ)は、
図1及び
図10に示すように回転初動時の最少磁極間間隙Xoから最高速回転時には損失が最小となる最適磁極間間隙Xcに可変する。この可変操作は拡縮駆動機構により行う。
【0015】
前記磁極間間隙を拡縮可変させる拡縮駆動機構は、被ガイド円弧板G1と固定ガイド板204と回転リング211、212により構成される。
1.被ガイド円弧板G1について
図2(1)と(2)に示すように各分割ステータ200-1~200-6の電磁石基部201aの両側面に連結枠体W1で保持した被ガイド円弧板G1を装着し、被ガイド円弧板G1には周方向中心部に被ガイド腕202を突設し、前記被ガイド腕202の両側部に平行に平行被ガイド腕203を突設する。
各被ガイド円弧板G1は対応の分割ステータ200-1~200-6と共にステータの半径方向に移動可能にしてある。
【0016】
2.固定ガイド板204について
各分割ステータ200-1~200-6に装着した前記全被ガイド円弧板G1の全両側面には、
図3(1)と(2)に示すように被ガイド円弧板G1に微小間隙を介して一対のドーナツ状の固定ガイド板204を配置する。各固定ガイド板204は、前記被ガイド腕202に係合連結して被ガイド腕202をステータの径方向に案内する径方向スリット205を形成し、前記径方向スリット205の両側方に径方向スリット205と平行で前記平行被ガイド腕203に係合連結する平行スリット206を設ける。この径方向スリット205と平行スリット206は前記分割ステータ200-1~200-6単位で形成してある。
両固定ガイド板204は、モータカバー等に回転不動に固定保持される。
【0017】
3.回転リング210、211について
図4(1)と(2)及び
図5に示すように前記両方の固定ガイド板204の各外側には一対の対面式の回転リング211、212を設ける。
回転リング211、212は、前記径方向スリット205から突出させた被ガイド腕202に摺動可能に係合連結して所定回転角度回転により全分割ステータ200-1~200-6をステータ半径方向に移動可能にする円弧状ガイド212を内周面に形成してなる。
【0018】
前記一対の回転リング211と212は、例えば
図8に示すように外周にギヤー216を設けこれにアクチェータ217の駆動ギヤー218を噛みあわせて所定回転角度を同時に回転可能に保持される。アクチェータ217はモータカバ105の外周3点に設けられている。
回転リング211と212は、所定の回転角度の回転により全円弧状ガイド213で全被ガイド腕202を当該分割ステータと共にステータの径方向に連続的に微小移動させて前記永久磁石102と電磁石201の磁極対面時の磁極間間隙を可変するものである。
効率的なエアギャップの可変距離は、本例の電動機において、数ミリメートル程度を実験で確認しているが、自在に制御できるこのギャップ可変では、それを超える可変距離であってもよい。走行の目的や条件に応じた、力行、惰行および回生の適切な配分で決まると考えられる。
【0019】
この一対の回転リング210と211は、前記の如く、ロータ100の回転速度に応じてアクチェータ217により所定角度回転して各円弧状ガイド213で対応の各被ガイド腕202を介して全分割ステータ200-1~200-6をステータ200の半径方向に微小移動させて全電磁石201と全永久磁石102との対面時の磁極間間隙を可変するが、この磁極間間隙の可変は
図10に示すように一律に適正な磁極間間隙値曲線Cnに沿って最少磁極間間隙Xoから最適磁極間間隙Xcに連続的に又は段階的に自動位置調節する。
【0020】
図10は、本発明における基礎的な新知見であり、
図1~
図8に示すモデル例におけるロータ100の永久磁石102とステータ200の電磁石201の磁極間間隙(mm)とロータの回転数(RPM)の関係(実測値)の検証実験結果を示すグラフである。
図10において、前記磁極間間隙は、最小距離X
0を例えば2mmに定め、その間隙における最速RPMを、磁極間間隙の値を変えながらそれぞれ計測した。
【0021】
因みに、
1.ロータは半径18cm、
2.永久磁石の仕様:ネオジム磁石、直径1cm、長さ2cmの湾曲片、重量11. 56g吸引力=4061gf 表面磁束密度=5327Gauss
3.ステータの半径=15cm、重量=約2800g
4.電磁石の仕様:全長=6cm、0.6mm径の銅線長70m、コア径=1.3c m、ア材質=軟鉄
【0022】
而してこの検証実験では、始動時のエアギャップ2.0mm、回転数552rpm、消費電力4.7Wで、回転に伴ってエアギャップが拡がり、最大の4.5mmになった時には、回転数は723rpm、消費電力2.7Wとなった。
つまり、回転数は約30%増加し、消費電力は約40%減少した。このことから、モータの高速航行性能は、最大トルク発生時に比べて、概算で(100+30%)/(100-40%)または約2倍となる。
ただし、エアコンその他の電気機器による消費など種々の要因があり、状況に応じた算出が必要となることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の電動機は、ロータ及びステータの配置は、竪型、横型(水平型)、斜め型等自在配置を自在に可能にして、しかもスリム化を実現し、応用範囲を自転車、自動車、EV車、航空機、ドローン等に用いる各種の小型・大型・超小型の駆動モータ、簡易家庭用発電機又は駆動モータ、各種工業用発電機又は駆動モータ等に幅広く利用可能にするなどその用途の汎用性は計り知れず電動機産業に貢献すること多大なものがある。
【符号の説明】
【0024】
Xo:最少磁極間間隙
Xc:最適最速磁極間間隙
W1:連結枠体
G1:被ガイド円弧板
100:ロータ
101:回転駆動軸
102:永久磁石
103:鉄心
104:軸心部
105:モータカバー
200:ステータ
200-1~200-6:分割ステータ
201:電磁石
201a:電磁石の基部
202:被ガイド腕
203:平行被ガイド腕
204:固定ガイド板
205:径方向スリット
206:平行スリット
211、212:回転リング
213:円弧状ガイド
216:ギヤー
217:アクチェータ
218:駆動ギヤー