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特開2023-103155がん治療用医薬組成物およびがん治療薬をスクリーニングする方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103155
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】がん治療用医薬組成物およびがん治療薬をスクリーニングする方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20230719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230719BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230719BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 15/19 20060101ALN20230719BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
C07K19/00
C07K7/08
C12N15/19
C12N15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133659
(22)【出願日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2022004012
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 直樹
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA41
4H045EA28
4H045FA40
(57)【要約】
【課題】DKK3を発現するがんの治療用医薬組成物を提供すること、およびDKK3を発現するがんの治療薬をスクリーニングする方法を提供すること。
【解決手段】ヒトDKK3のアミノ酸配列(配列番号1)の第171位~第190位のアミノ酸配列(配列番号8)からなる領域と相互作用する第一物質と、第224位~第241位のアミノ酸配列(配列番号9)からなる領域と相互作用する第二物質との組み合わせを有効成分とするDKK3を発現するがんの治療用医薬組成物、ならびに、(1)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと相互作用する被験物質1を選択する工程、(2)配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと相互作用する被験物質2を選択する工程、(3)被験物質1および被験物質2を、DKK3を発現するがん細胞に接触させ、Aktのリン酸化状態を確認する工程、ならびに(4)Aktのリン酸化を阻害する被験物質1および被験物質2の組み合わせを選択する工程を含む、DKK3を発現するがんの治療薬をスクリーニングする方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DKK3を発現するがんの治療用医薬組成物であって、ヒトDKK3のアミノ酸配列(配列番号1)の第171位~第190位のアミノ酸配列(配列番号8)からなる領域と相互作用する第一物質と、第224位~第241位のアミノ酸配列(配列番号9)からなる領域と相互作用する第二物質との組み合わせを有効成分とする医薬組成物。
【請求項2】
前記第一物質が、配列番号8で示されるアミノ酸配列に対応する相補性ペプチドであり、前記第二物質が、配列番号9で示されるアミノ酸配列に対応する相補性ペプチドである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記第一物質が、配列番号10~19から選択されるアミノ酸配列を含む相補性ペプチドであり、前記第二物質が、配列番号20~29から選択されるアミノ酸配列を含む相補性ペプチドである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記相補性ペプチドが細胞膜透過ペプチドを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記DKK3を発現するがんが、頭頸部扁平上皮がん、食道扁平上皮がん、食道腺がん、または膵臓腺がんである、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
DKK3を発現するがんの治療薬をスクリーニングする方法であって、以下の工程(1)~(4)を含む方法:
(1)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと相互作用する被験物質1を選択する工程、
(2)配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと相互作用する被験物質2を選択する工程、
(3)被験物質1および被験物質2を、DKK3を発現するがん細胞に接触させ、Aktのリン酸化状態を確認する工程、ならびに
(4)Aktのリン酸化を阻害する被験物質1および被験物質2の組み合わせを選択する工程。
【請求項7】
前記工程(1)および/または(2)において、前記ペプチドと被験物質を接触させることを含む、請求項6に記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
前記DKK3を発現するがん細胞が、頭頸部扁平上皮がん細胞、食道扁平上皮がん細胞、食道腺がん細胞、または膵臓腺がん細胞である、請求項6または7に記載のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療用医薬組成物およびがん治療薬をスクリーニングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
頭頚部扁平上皮がん(head and neck squamous cell carcinoma: HNSCC)は、口腔、喉頭、咽頭、鼻腔、副鼻腔等の頭頚部に発生する最も一般的な悪性腫瘍であり、発展途上国でも先進国でも発症率が増加している。HNSCCは、世界で6番目に多いがんであり、2018年には89万人の新規患者と45万人の死亡者が発生したと報告されている。HNSCCは、アルコール摂取、喫煙、ウイルス感染等によってがん関連遺伝子の異常が蓄積された結果、発症すると考えられている。
【0003】
ゲノミクス解析やビッグデータ解析を使用した新しい研究により、HNSCCの遺伝的背景が解明されており、近年、The Cancer Genome Atlas (TCGA)により、HNSCCの包括的な遺伝子特性が発表されている。現在までに、いくつかの遺伝子変異がHNSCCの腫瘍形成、浸潤および転移に重要であることについて研究されている。例えば、TP53の変異、CDKN2Aの欠損、およびCCND1の増幅が、HPV陰性HNSCCで報告されており、PI3KCAの増幅は、HPV感染の有無に関わらず、HNSCCでよく見られる。しかし、これまでに新薬の開発につながるようながん関連遺伝子は報告されていない。
【0004】
本発明者らは、薬効のある標的となり得るがん特異的な分子として、DKK3遺伝子に着目している。DKK3は、Dickkopf WNTシグナル伝達経路阻害因子(DKK)ファミリーに属し、DKKファミリーはDKK1、DKK2、DKK3およびDKK4で構成されている。DKKファミリーメンバーは、2つの異なるシステインリッチドメイン(CRD)を持つ分泌型タンパク質をコードしており、内因性のWnt/β-カテニンシグナル伝達阻害剤として機能する。DKK1、DKK2およびDKK4は、受容体KREMEN1とLRP5/6に結合し、エンドサイトーシスによるLRP5/6の取り込みを起こすことで細胞表面からWntの受容体であるLRP5/6を消失させ、Wntシグナル伝達を阻害する。DKK3には、分泌型アイソフォームおよび非分泌型アイソフォームが存在し、DKK3の分泌型アイソフォームは、KREMEN1には結合できないが、DKK3の非分泌型アイソフォーム(DKK3b)はβ-カテニンの核内移行を抑制してWntシグナルを抑制する。DKK3は、Wntシグナル伝達抑制機能に加えて、多くの種類の悪性腫瘍で発現が低下していることから、腫瘍抑制因子としての特性が知られている(非特許文献1、2)。
【0005】
しかし、本発明者らの一連の研究により、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、食道扁平上皮がん(ESCC)等の一部のがんにおけるDKK3の機能は全く異なり、DKK3タンパク質の発現が高く、予後不良と関連することが明らかにされている(非特許文献3、4)。HNSCCにおいてDKK3を過剰発現させると、Aktのリン酸化を介して、腫瘍細胞の増殖、浸潤および遊走が有意に増加することが報告され(非特許文献5)、HNSCC由来の細胞でDKK3を一過的にノックダウンすると、細胞の増殖、遊走や浸潤を著しく低下することが報告されている(非特許文献6)。これらのデータは、DKK3がHNSCC等の一部のがんにおいて特異的に発がん機能を発揮している可能性を強く示唆している。
【0006】
HNSCCの治療法として手術治療が行われることが一般的であるものの、HNSCCの手術治療では、舌や歯が失われ、QOLが大きく低下してしまう。そのため、DKK3を分子標的治療のターゲットとした低侵襲かつ治療成績向上につながるがん治療方法の確立が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Leonard JL et al., PLoS ONE., 12(7), e0181724, 2017
【非特許文献2】Lee EJ st al., Anticancer Res., 40(11), pp.5969-5979, 2020
【非特許文献3】Fujii M et al., J Mol Histol., Vol. 42(6), pp.499-504, 2011
【非特許文献4】Katase N et al., Oncol Lett., Vol. 3(2), pp.273-280, 2012
【非特許文献5】Katase N et al., Oncol Res., Vol. 26(1), pp.45-58, 2018
【非特許文献6】Katase N et al., Int J Oncol., Vol. 54(3), pp.1021-1032, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、DKK3を発現するがんの治療用医薬組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、DKK3を発現するがんの治療薬をスクリーニングする方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]DKK3を発現するがんの治療用医薬組成物であって、ヒトDKK3のアミノ酸配列(配列番号1)の第171位~第190位のアミノ酸配列(配列番号8)からなる領域と相互作用する第一物質と、第224位~第241位のアミノ酸配列(配列番号9)からなる領域と相互作用する第二物質との組み合わせを有効成分とする医薬組成物。
[2]前記第一物質が、配列番号8で示されるアミノ酸配列に対応する相補性ペプチドであり、前記第二物質が、配列番号9で示されるアミノ酸配列に対応する相補性ペプチドである、前記[1]に記載の医薬組成物。
[3]前記第一物質が、配列番号10~19から選択されるアミノ酸配列を含む相補性ペプチドであり、前記第二物質が、配列番号20~29から選択されるアミノ酸配列を含む相補性ペプチドである、前記[2]に記載の医薬組成物。
[4]前記相補性ペプチドが細胞膜透過ペプチドを含む、前記[2]または[3]に記載の医薬組成物。
[5]前記DKK3を発現するがんが、頭頸部扁平上皮がん、食道扁平上皮がん、食道腺がん、または膵臓腺がんである、前記[1]~[4]のいずれかに記載の医薬組成物。
[6]DKK3を発現するがんの治療薬をスクリーニングする方法であって、以下の工程(1)~(4)を含む方法:
(1)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと相互作用する被験物質1を選択する工程、
(2)配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと相互作用する被験物質2を選択する工程、
(3)被験物質1および被験物質2を、DKK3を発現するがん細胞に接触させ、Aktのリン酸化状態を確認する工程、ならびに
(4)Aktのリン酸化を阻害する被験物質1および被験物質2の組み合わせを選択する工程。
[7]前記工程(1)および/または(2)において、前記ペプチドと被験物質を接触させることを含む、前記[6]に記載のスクリーニング方法。
[8]前記DKK3を発現するがん細胞が、頭頸部扁平上皮がん細胞、食道扁平上皮がん細胞、食道腺がん細胞、または膵臓腺がん細胞である、前記[6]または[7]に記載のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、DKK3を発現するがんの治療に有効ながん治療用医薬組成物を提供することができる。また、本発明のスクリーニング方法により、DKK3を発現するがんの治療薬として有効な有効成分を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、予想されるDKK3によるAkt活性化機構を示す図である。
図2図2は、ヒトDKK3のアミノ酸配列(配列番号1)における、第1のシステインリッチドメイン(CRD1)の位置、第2のシステインリッチドメイン(CRD2)の位置、およびシグナルペプチドの位置を示す図である。
図3図3は、DKK3のCRD欠損変異体を発現するプラスミドを導入したヒト口腔扁平上皮がん細胞株HSC-3におけるDKK3、Aktおよびリン酸化Aktの発現をウエスタンブロッティングで検出した結果を示す図である。
図4図4は、図3のウエスタンブロッティングにおける各群のDKK3のバンドの濃度を数値化して比較した結果を示す図である。
図5図5は、図3のウエスタンブロッティングにおける各群のAktのバンドの濃度を数値化して比較した結果を示す図である。
図6図6は、図3のウエスタンブロッティングにおける各群のリン酸化Aktのバンドの濃度を数値化して比較した結果を示す図である。
図7図7は、DKK3のCRD欠損変異体を発現するプラスミドを導入したヒト口腔扁平上皮がん細胞株HSC-3における細胞増殖アッセイの結果を示す図である。
図8図8は、DKK3のCRD欠損変異体を発現するプラスミドを導入したヒト口腔扁平上皮がん細胞株HSC-3における浸潤アッセイの結果を示す図である。
図9図9は、DKK3のCRD欠損変異体を発現するプラスミドを導入したヒト口腔扁平上皮がん細胞株HSC-3における細胞遊走アッセイの結果を示す図であり、(A)はカルチャーインサートを取り出した直後(0時間)および8時間後の細胞の画像であり、(B)は画像解析により細胞遊走能を創傷治癒度(%)として算出した結果を示す図である。
図10図10は、上段がヒトDKKファミリー(DKK1~4)のCRD1のアミノ酸配列を比較しDKK3のCRD1にのみ特異性の高い配列を同定した結果を示し、下段がヒトDKKファミリー(DKK1~4)のCRD2のアミノ酸配列を比較しDKK3のCRD2にのみ特異性の高い配列を同定した結果を示す図である。
図11図11は、野生型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞を、2種のDKK3活性阻害ペプチドの組み合わせ(CRD1-6RとCRD2-5R: peptide 1)を含む培地で培養し、当該細胞におけるDKK3、Aktおよびリン酸化Aktの発現をウエスタンブロッティングで検出した結果を示す図である。
図12図12は、図11のウエスタンブロッティングにおける各群のリン酸化Aktのバンドの濃度を数値化して比較した結果を示す図である。
図13図13は、野生型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞において、CRD1-6RとCRD2-5Rの組み合わせ(peptide 1)によるAktのリン酸化抑制のIC50値をウエスタンブロッティングにより算出した結果を示す図である。
図14図14は、CRD1-6RとCRD2-5Rの組み合わせ(peptide 1)で処理したHSC-3細胞および野生型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞における細胞増殖アッセイの結果を示す図である。
図15図15は、CRD1-6RとCRD2-5Rの組み合わせ(peptide 1)で処理したHSC-3細胞および野生型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞における細胞遊走アッセイの結果を示す図であり、(A)はカルチャーインサートを取り出した直後(0時間)および6時間後の細胞の画像であり、(B)は画像解析により細胞遊走能を創傷治癒度(%)として算出した結果を示す図である。
図16図16は、野生型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞を、2種のDKK3活性阻害ペプチドの組み合わせ(CRD1-1RとCRD2-1R: peptide 2)を含む培地で培養し、当該細胞におけるDKK3、Aktおよびリン酸化Aktの発現をウエスタンブロッティングで検出した結果を示す図である。
図17図17は、図16のウエスタンブロッティングにおける各群のリン酸化Aktのバンドの濃度を数値化して比較した結果を示す図である。
図18図18は、野生型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞において、CRD1-1RとCRD2-1Rの組み合わせ(peptide 2)によるAktのリン酸化抑制のIC50値をウエスタンブロッティングにより算出した結果を示す図である。
図19図19は、CRD1-1RとCRD2-1Rの組み合わせ(peptide 2)で処理したHSC-3細胞および野生型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞における細胞増殖アッセイの結果を示す図である。
図20図20は、CRD1-1RとCRD2-1Rの組み合わせ(peptide 2)で処理したHSC-3細胞および野生型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞における細胞遊走アッセイの結果を示す図であり、(A)はカルチャーインサートを取り出した直後(0時間)および6時間後の細胞の画像であり、(B)は画像解析により細胞遊走能を創傷治癒度(%)として算出した結果を示す図である。
図21図21は、CRD1-6RとCRD2-5Rの組み合わせ(peptide 1)で処理したHSC-3細胞および野生型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞における浸潤アッセイの結果を示す図である。
図22図22は、CRD1-1RとCRD2-1Rの組み合わせ(peptide 2)で処理したHSC-3細胞および野生型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞における浸潤アッセイの結果を示す図である。
図23図23は、異種移植モデルにおけるCRD1-6RとCRD2-5Rの組み合わせ(Peptide 1)、またはCRD1-1RとCRD2-1Rの組み合わせ(Peptide 2)の投与スケジュールを示す図である。
図24図24は、異種移植モデルにPBSを投与した群(Control)およびCRD1-6RとCRD2-5Rの組み合わせ(Peptide 1)を投与した群における腫瘍体積の結果を示す図である。
図25図25は、異種移植モデルにPBSを投与した群(Control)およびCRD1-1RとCRD2-1Rの組み合わせ(Peptide 2)を投与した群における腫瘍体積の結果を示す図である。
図26図26は、HSC-3細胞の移植から35日目におけるDKK3阻害ペプチドの細胞増殖に対する影響の結果を示す図であり、(A)はHE染色およびKi-67の免疫組織染色の結果を示す図であり、(B)はKi-67標識率(%)を算出した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔医薬組成物〕
本発明は、DKK3を発現するがんの治療用医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」という)を提供する。本発明の医薬組成物は、ヒトDKK3のアミノ酸配列(配列番号1)の第171位~第190位のアミノ酸配列(配列番号8)からなる領域と相互作用する第一物質(以下、「第一物質」という)と、第224位~第241位のアミノ酸配列(配列番号9)からなる領域と相互作用する第二物質(以下、「第二物質」という)との組み合わせを有効成分とするものであればよい。
【0013】
DKK3(dickkopf WNT signalaling inhibitor 3)はDKKファミリーの1つである。ヒトDKK3のアミノ酸配列は、配列番号1(アクセッション番号AAQ88744.1)のアミノ酸配列に限定されず、公知のデータベース(NCBI等)にヒトDKK3のアミノ酸配列として登録されている配列であればよい。例えばアクセッション番号NP_001018067.1で登録されているアミノ酸配列であってもよい。DKK3は、転写開始点が異なる転写産物に由来する分泌型アイソフォームと非分泌型アイソフォームが存在することが知られている(非特許文献1、2)。DKK3の分泌型アイソフォームと非分泌型アイソフォームは、それぞれ異なる経路を介してAktを活性化(リン酸化)すると考えられる。図1に示すように、分泌型アイソフォームは何らかのレセプターに結合してAktを活性化し、非分泌型アイソフォームはmTORの活性化を介してAktを活性化すると考えられる。
【0014】
本発明のDKK3を発現するがんとは、がん組織中にDKK3を発現する細胞を含むがんであればよい。DKK3は分泌型アイソフォームおよび非分泌型アイソフォームのいずれか一方であってもよく、両方であってもよい。DKK3を発現するがんであることは、例えばがん患者から採取したがん組織からタンパク質を抽出し、公知の方法でDKK3を検出することにより確認することができる。DKK3を発現するがんとしては、例えば、頭頚部扁平上皮がん(HNSCC)、食道扁平上皮がん(Esophageal Squamous Cell Carcinoma:ESCC)、食道腺がん、膵臓腺がん等が挙げられ、頭頚部扁平上皮がん(HNSCC)には、口腔扁平上皮がん(Oral Squamous Cell Carcinoma:OSCC)等が挙げられる。
【0015】
本発明者らは、ヒトDKK3の2つのシステインリッチドメイン(cysteine rich domain: CRD)のいずれか一方、または両方を欠損した変異型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したヒト口腔扁平上皮がん細胞において、両方を欠損した変異型ヒトDKK3を導入した場合のみAktのリン酸化が抑制され、がん細胞の増殖、浸潤能および遊走能が対照群(プラスミドを導入していないヒト口腔扁平上皮がん細胞およびpCS2+空ベクターを導入したヒト口腔扁平上皮がん細胞)より有意に抑制されることを見出している(実施例1参照)。
【0016】
本発明の医薬組成物は、第一物質と第二物質とを組み合わせて有効成分とすることを特徴とする。第一物質はヒトDKK3のアミノ酸配列(配列番号1)の第171位~第190位のアミノ酸配列(配列番号8)からなる領域(以下「標的領域1」という)と相互作用する物質であればよい。標的領域1は、ヒトDKK3の第1のシステインリッチドメイン(以下「CRD1」という)に含まれる領域であり、ヒトDKK3ファミリーのCRD1のアミノ酸配列をアライメントし、ヒトDKK3のCRD1にのみ特異性の高い配列として同定された領域である。したがって、第一物質は、DKK3と特異的に相互作用し、他のDKKファミリーとは相互作用しないと考えられる。なお、ヒトDKK3のCRD1のアミノ酸配列は配列番号2で示される配列であり、配列番号1の第147位~第196位に相当する。
【0017】
第二物質はヒトDKK3のアミノ酸配列(配列番号1)の第224位~第241位のアミノ酸配列(配列番号9)からなる領域(以下「標的領域2」という)と相互作用する物質であればよい。標的領域2は、ヒトDKK3の第2のシステインリッチドメイン(以下「CRD2」という)に含まれる領域であり、ヒトDKK3ファミリーのCRD2のアミノ酸配列をアライメントし、ヒトDKK3のCRD2にのみ特異性の高い配列として同定された領域である。したがって、第二物質は、DKK3と特異的に相互作用し、他のDKKファミリーとは相互作用しないと考えられる。なお、ヒトDKK3のCRD2のアミノ酸配列は配列番号3で示される配列であり、配列番号1の第208位~第273位に相当する。
【0018】
第一物質および第二物質は、それぞれ標的領域1および標的領域2に相互作用する物質であればどのような物質であってもよく、特に限定されない。例えば、低分子化合物、ペプチド、抗体、標的結合能を有する抗体フラグメント等が挙げられる。好ましくはペプチドであり、より好ましくは標的領域1および標的領域2の各相補性ペプチドである。相補性ペプチドは、標的領域のアミノ酸配列に基づいて、公知の相補性ペプチド設計プログラム(例えば、MIMETIC(Microbiol. Immunol. 46: 211, 2002)等)を用いて設計することができる。
【0019】
第一物質が標的領域1に対応する相補性ペプチドである場合、第一物質は、配列番号10~19から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい。また、第二物質が標的領域2に対応する相補性ペプチドである場合、第二物質は、配列番号20~29から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい。第一物質は、配列番号10~19で示されるいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドであってもよく、配列番号10~19で示されるいずれか1つのアミノ酸配列以外のアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい。同様に第二物質は、配列番号20~29で示されるいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドであってもよく、配列番号20~29で示されるいずれか1つのアミノ酸配列以外のアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい。
【0020】
第一物質および/または第二物質がペプチドである場合、ペプチドは標的領域と相互作用するアミノ酸配列のみからなるペプチドであってもよく、標的領域と相互作用するアミノ酸配列以外のアミノ酸配列を含むものであってもよい。標的領域と相互作用するアミノ酸配列以外のアミノ酸配列は、ペプチドと標的領域の相互作用に悪影響を及ぼすものでなければ特に限定されないが、例えば、細胞膜透過ペプチドであってもよい。細胞膜透過ペプチドは、細胞膜透過能を有するペプチドであれば特に限定されないが、例えば、オリゴアルギニン(Rn, n=6~12程度)、TATペプチド、ペネトラチン、TP-10等が挙げられる。標的領域と相互作用するアミノ酸配列以外のアミノ酸配列は、標的領域と相互作用するアミノ酸配列のC末端側に付加されてもよく、N末端側に付加されてもよく、C末端側およびN末端側の両方に付加されてもよい。付加されるアミノ酸配列は、標的領域と相互作用するアミノ酸配列に直接付加されてもよく、公知のリンカーを介して付加されてもよい。
【0021】
第一物質は、配列番号10~19で示されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる相補性ペプチドに細胞膜透過ペプチドが付加されたペプチドであってもよい。例えば、第一物質は、配列番号10~19で示されるアミノ酸配列のC末端側に12個のアルギニンからなるオリゴアルギニンが付されたアミノ酸配列からなるペプチド、すなわち配列番号30~39で示されるいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。
【0022】
第二物質は、配列番号20~29で示されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる相補性ペプチドに細胞膜透過ペプチドが付加されたペプチドであってもよい。例えば、第二物質は、配列番号20~29で示されるアミノ酸配列のC末端側に12個のアルギニンからなるオリゴアルギニンが付されたアミノ酸配列からなるペプチド、すなわち配列番号40~49で示されるいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。
【0023】
第一物質および/または第二物質がペプチドである場合、ペプチドの長さは特に限定されないが、60アミノ酸以下、55アミノ酸以下、50アミノ酸以下、45アミノ酸以下、40アミノ酸以下であってもよく、10アミノ酸以上、15アミノ酸以上、20アミノ酸以上、25アミノ酸以上、30アミノ酸以上であってもよい。
【0024】
ペプチドはC末端が、カルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)のいずれであってもよい。エステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルもしくはn-ブチル等のC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α-ナフチル等のC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチル等のフェニル-C1-2アルキル基もしくはα-ナフチルメチル等のα-ナフチル-C1-2アルキル基等のC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基等が挙げられる。アミド体としては、アミド、C1-6アルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、フェニル基で置換されたC1-6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、アミド基の窒素原子を含んで5から7員環のアザシクロアルカンを形成するアミド等が挙げられる。ペプチドがC末端以外にカルボキシル基またはカルボキシレートを有している場合、それらの基がアミド化またはエステル化されているものであってもよい。ペプチドは、C末端がアミド化されていることが好ましい。
【0025】
ペプチドはN末端のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル等のC2-6アルカノイル基等のC1-6アシル基等)で保護されているもの、N末端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基等)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル等のC2-6アルカノイル基等のC1-6アシル基等)で保護されているものも含まれる。ペプチドは、N末端がアセチル化されていることが好ましく、N末端がアセチル化され、かつC末端がアミド化されていることがさらに好ましい。
【0026】
ペプチドを構成するアミノ酸は、側鎖が任意の置換基で修飾されていてもよい。置換基は特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、リン酸基等が挙げられる。また、側鎖の置換基は、保護基で保護されていてもよい。さらに、糖鎖が結合した糖ペプチドであってもよい。
【0027】
ペプチドは塩を形成していてもよく、その塩としては、生理学的に許容される塩が好ましい。生理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、オレイン酸、パルミチン酸、硝酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の酸との塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の、またはアルミニウムの水酸化物または炭酸塩との塩;トリエチルアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、t-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アルギニン等との塩等が挙げられる。中でも、塩酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩がより好ましい。
【0028】
ペプチドは、元のペプチドの特性が保持される限り、非天然アミノ酸を含んでもよい。また、ペプチドは、元のペプチドの特性が保持される限り、ペプチドに他の物質を連結してもよい。ペプチドに連結可能な他の物質としては、例えば、脂質、糖または糖鎖、アセチル基、天然または合成のポリマー等が挙げられる。また、ペプチドは、元のペプチドの特性が保持される限り、ペプチドに、糖鎖付加、側鎖酸化、リン酸化等の修飾を行ってもよい。
【0029】
ペプチドは、公知の一般的なペプチド合成のプロトコルに従って、固相合成法(Fmoc法、Boc法)または液相合成法により製造することができる。また、ペプチドをコードするDNAを含有する発現ベクターを導入した形質転換体を用いて製造することができる。また、インビトロ転写・翻訳系を用いる方法により製造することができる。
【0030】
本発明の医薬組成物は、常套手段に従って製剤化することができる。例えば、経口投与のための製剤としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などが挙げられる。これらの製剤は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。非経口投与のための製剤としては、例えば、注射剤、外用剤などが用いられる。注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。このような注射剤は、公知の方法に従って、例えば、本発明の有効成分を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製される。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール等)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、HCO-50等)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。外用剤は、塗布剤、貼付剤、エアゾール剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、含嗽剤、噴霧剤、坐剤などの剤形を包含する。これらの製剤は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦活剤を包含するものである。直腸投与に用いられる坐剤は、本発明の有効成分を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
【0031】
本発明の医薬組成物における有効成分の含量は、有効成分の種類(低分子化合物、ペプチド等)、治療対象がんの種類、剤型、投与方法、担体等により適宜設定される。例えば、有効成分(第一物質および第二物質の合計)を製剤全量に対して0.01~100%(w/w)の割合で添加してもよく、0.1~95%(w/w)の割合で添加してもよい。
【0032】
本発明の医薬組成物は、全身作用を目的とするものでも、局所作用を目的とするものであってもよい。有効成分の投与量は、一回につき体重1kgあたり0.001mgから100mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり0.1~1,000mg、好ましくは0.1~50mgの投与量を選ぶことができる。具体的には、例えば、体重1kgあたり1か月(4週間)に0.1mgから40mg、好ましくは1mgから20mgを1回から数回に分けて、例えば2回/週、1回/週、1回/2週、1回/4週などの投与スケジュールで点滴などの静脈内注射、皮下注射などの方法で、投与する方法などが挙げられる。
【0033】
本発明の医薬組成物は、他のがん治療薬またはがん治療法と組み合わせて使用してもよい。組み合わせて使用するとは、本発明の消医薬組成物の適用時期と他のがん治療薬またはがん治療法の適用時期が重複していることを意味し、同時に投与または治療することを要するものではない。本発明の医薬組成物と組み合わせて使用する他のがん治療薬またはがん治療法は特に限定されないが、例えば化学療法(化学療法剤)、免疫療法(免疫療法剤、免疫チェックポイント阻害剤、CAR-T療法剤等)、ホルモン療法(ホルモン療法剤)などが挙げられる。
【0034】
〔がんの治療薬をスクリーニングする方法〕
本発明は、DKK3を発現するがんの治療薬をスクリーニングする方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、以下の工程(1)~(4)を含むものであればよい。
(1)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと相互作用する被験物質1を選択する工程、
(2)配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと相互作用する被験物質2を選択する工程、
(3)被験物質1および被験物質2を、DKK3を発現するがん細胞に接触させ、Aktのリン酸化状態を確認する工程、ならびに
(4)Aktのリン酸化を阻害する被験物質1および被験物質2の組み合わせを選択する工程。
【0035】
本発明のスクリーニング方法に供される被験物質は特に限定されず、例えば天然化合物、有機化合物、無機化合物、核酸オリゴ、タンパク質、ポリペプチド、化合物ライブラリー、核酸オリゴライブラリー、ポリペプチドライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞抽出物、真核単細胞抽出物、動物細胞抽出物等が挙げられる。被験物質は必要に応じて適宜標識して用いることができる。標識としては、例えば、放射性標識、蛍光標識等が挙げられる。また、被験物質は塩を形成していてもよい。被験物質の塩としては、生理学的に許容される酸や塩基との塩が好ましい。
【0036】
工程(1)において、配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと相互作用する被験物質1を選択する方法は特に限定されず、前記ペプチドと被験物質を接触させることを含む方法を用いてもよい。具体的には、配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと被験物質を接触させる工程と、前記ペプチドと被験物質との相互作用を確認する工程を含む方法であってもよい。前記ペプチドと被験物質を接触させる工程は、前記ペプチドを含む溶液を調製し、その溶液に被験物質を添加する方法であってもよい。前記ペプチドと被験物質との相互作用を確認する工程では、公知の方法で前記ペプチドと被験物質との相互作用を測定すればよい。具体的には、例えば、ELISA法、共免疫沈降法、プルダウンアッセイ法、架橋反応法(クロスリンク法)、ファーウェスタンブロッティング法、ラベル転移反応法、相互作用マッピング法、表面プラズモン共鳴法、FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)法、ビオチンリガーゼ法、two-hybrid法等が挙げられる。また、標識した被験物質を用いた場合、前記ペプチドに結合した被験物質の標識によって、相互作用する被験物質を選択検出することができる。
【0037】
工程(1)において、配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと相互作用する被験物質1を選択する方法は、インシリコ(in silico)スクリーニングシステムを用いる方法であってもよい。インシリコスクリーニングシステムとしては、公知のインシリコスクリーニングシステムを適宜選択して用いることができる。例えば、RaptorX等のペプチドの構造モデルを予測する公知のデータベースやソフトウェアを使用し、ClusPro等のドッキングを予測する公知のデータベースやソフトウェアを使用する方法等が挙げられる。
【0038】
工程(2)において、配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと相互作用する被験物質2を選択する方法は特に限定されず、前記工程(1)と同様に、前記ペプチドと被験物質を接触させることを含む方法を用いてもよく、インシリコスクリーニングシステムを用いる方法を用いてもよい。工程(2)は工程(1)と同様に実施することができる。
【0039】
工程(3)では、被験物質1および被験物質2を、DKK3を発現するがん細胞に接触させ、Aktのリン酸化状態を確認する。DKK3を発現するがん細胞は、内因性のDKK3を発現するがん細胞であってもよく、DKK3を過剰発現するがん細胞であってもよい。DKK3を過剰発現するがん細胞は、例えば内因性のDKK3を発現するがん細胞にDKK3を発現するプラスミドを導入することにより作製することができる。内因性のDKK3を発現するがん細胞としては、頭頚部扁平上皮がん細胞、食道扁平上皮がん細胞、食道腺がん細胞、膵臓腺がん細胞等が挙げられる。これらの細胞は、初代培養細胞であってもよく、株化細胞であってもよい。DKK3を過剰発現するがん細胞は、例えば内因性のDKK3を発現するがん細胞にDKK3を発現するプラスミドを導入することにより作製することができる。DKK3をコードする遺伝子の塩基配列は、公知のデータベース(NCBI等)から取得することができる。例えば、ヒトDKK3をコードする遺伝子の塩基配列としては、アクセッション番号AY358378.1で登録されている配列、NM_001018057.2で登録されている配列などが挙げられる。
【0040】
工程(3)において、被験物質1および被験物質2を細胞に接触させる方法は特に限定されず、例えば、DKK3を発現するがん細胞を培養している培地に被験物質1および被験物質2を添加する方法が挙げられる。なお、被験物質1および被験物質2を接触させない対照群を設けることが好ましい。
【0041】
工程(3)において、Aktのリン酸化状態を確認する方法は特に限定されず、Aktのリン酸化状態を検出するための公知の方法を用いることができる。例えば抗リン酸化Akt抗体を用いたウエスタンブロッティング法、免疫組織化学法等が挙げられる。Aktのリン酸化部位としては第473位のセリン(Ser473)および/または第308位のスレオニン(Thr308)であればよい。したがって、抗リン酸化Akt抗体としては、抗AKT pS473抗体、抗AKT pT308抗体を用いることができる。
【0042】
例えばウエスタンブロッティング法を用いた場合、被験物質を添加した細胞(被験物質群)と添加していない細胞(対照群)の抗リン酸化Akt抗体で検出されるバンドの濃度を比較することによりAktのリン酸化状態を確認することができる。被験物質群のバンドの濃度が、対照群のバンドの濃度より減少している場合、被験物質1および被験物質2の組み合わせはAktのリン酸化を阻害すると判定することができる。画像解析により、バンドの濃度を数値化し、被験物質群のバンド濃度が対照群のバンド濃度より50%以下、40%以下、30%以下、20%以下である場合に被験物質1および被験物質2の組み合わせはAktのリン酸化を阻害すると判定してもよい。
【0043】
例えば免疫組織化学法を用いた場合、被験物質群と対照群のリン酸化Aktシグナル強度を比較することによりAktのリン酸化状態を確認することができる。被験物質群のリン酸化Aktシグナル強度が、対照群のリン酸化Aktシグナル強度より減少している場合、被験物質1および被験物質2の組み合わせはAktのリン酸化を阻害すると判定することができる。画像解析により、リン酸化Aktシグナル強度を数値化し、被験物質群のシグナル強度が対照群のシグナル強度より50%以下、40%以下、30%以下、20%以下である場合に被験物質1および被験物質2の組み合わせはAktのリン酸化を阻害すると判定してもよい。
【0044】
工程(4)では、工程(3)において、Aktのリン酸化を阻害すると判定された被験物質1および被験物質2の組み合わせを選択すればよい。選択された被験物質1と被験物質2の組み合わせを、DKK3を発現するがんの治療薬の有効成分の候補とすることができる。
【実施例0045】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
[材料と方法]
1 タンパク質モデルの作成および機能ドメインの検索
ヒトDKK3のアミノ酸配列(配列番号1)に基づくタンパク質モデルの作成には、Raptor X(http://raptorx.uchicago.edu/)を使用した。また、機能ドメインの検索には、PDBj(https://pdbj.org/)およびNCBI Conserved Domain Search(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/wrpsb.cgi)を使用した。
【0047】
2 細胞株
ヒト口腔扁平上皮がん細胞株HSC-3を、理化学研究所バイオリソース研究センター(RIKEN BioResource Research Center)から購入して使用した。10%ウシ胎児血清(FBS)(ニチレイバイオサイエンス社製)を添加したDulbecco's Modified Eagle Medium(DMEM)(Sigma-Aldrich社製)で維持した。
【0048】
3 インバースPCRによるDKK3のシステインリッチドメイン(CRD)欠損変異体プラスミドの作製および遺伝子導入
非特許文献5に記載のDKK3発現プラスミドを鋳型として使用し、CRD欠損変異体をコードする3つのプラスミドをインバースPCRにより作製した。インバースPCRには、KOD-Plus-Mutagenesis kit(東洋紡ライフサイエンス社製)を使用した。PCR条件は、96℃ 1分に次いで、96℃ 30秒、60℃ 30秒、68℃ 5分を25サイクル行い、最後に68℃ 10分伸長した。その後、PCR産物を制限酵素Dpn I(New England Biolabs社製)で処理し、セルフライゲーションして、DH5コンピテントセル(東洋紡ライフサイエンス社製)に形質転換した。インバースPCRには、以下のプライマーを使用した。
DKK3ΔC1-U: 5'- CTCGTGGCTCCTTCTGCCTTCTTCGTC -3'、配列番号4
DKK3ΔC1-D: 5'- AAAATGGCCACCAGGGGCAGCAATGGG -3'、配列番号5
DKK3ΔC2-U: 5'- GATGGTCCCATTGCTGCCCCTGGTGGCC -3'、配列番号6
DKK3ΔC2-D: 5'- CAGCCCCACAGCCACAGCCTGGTGTATG -3'、配列番号7
【0049】
QiAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いて選抜されたコロニーからDNAを抽出し、配列を確認した後、プラスミドを増幅してストックした。DKK3における、第1のシステインリッチドメイン(CRD1)をコードする領域を欠損したプラスミド、第2のシステインリッチドメイン(CRD2)をコードする領域を欠損したプラスミド、ならびにCRD1およびCRD2をコードする領域の両方を欠損したプラスミドを、それぞれDKK3ΔC1、DKK3ΔC2およびDKK3ΔC1ΔC2と表記する。
Turbofectin 8.0(OriGene Technologies社製)を用いて、メーカーの説明書に従い、プラスミドをHSC-3細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションコントロールには、pCS2+空ベクター(Addgene社製)をトランスフェクションした。
【0050】
以下の6種類の細胞を用いて機能ドメインの同定を行った。
・HSC-3(プラスミドをトランスフェクションしていないHSC-3細胞)
・+CTL:pCS2+(空ベクターを導入したHSC-3細胞)
・+DKK3(野生型ヒトDKK3を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞)
・+DKK3ΔC1(CRD1を欠損したヒトDKK3変異体を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞)
・+DKK3ΔC2(CRD2を欠損したヒトDKK3変異体を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞)
・+DKK3ΔC1ΔC2(CRD1とCRD2の両方を欠損したヒトDKK3変異体を発現するプラスミドを導入したHSC-3細胞)
【0051】
4 ウエスタンブロッティング
細胞がコンフルエントになるまで培養した後、IPバッファー[20mM Tris-HCl (pH 8.0), 150mM NaCl, 1mM EDTA, 1% Triton X-100]で細胞ライセートを調製した。DCプロテインアッセイキット(Bio-Rad Laboratories社製)を用いてタンパク質量を定量し、タンパク質5μgを使用した。細胞ライセートをLaemmliバッファーで3分間煮沸した。各タンパク質サンプルはe-PAGELプレキャストゲル(ATTO社製)を用いて電気泳動した後、PVDF膜にブロッティングした。PVDF膜をPVDF Blocking Reagent for Can Get Signal(東洋紡ライフサイエンス社製)に浸して、室温で1時間振とうして非特異的結合をブロックした後、PVDF膜を4℃で一夜、一次抗体で処理した。一次抗体には、抗DKK3抗体(ab186409、Abcam社製)、抗Akt抗体(4685S、Cell Signaling Technology社製)、抗p-Akt(Ser473)抗体(9271S、Cell Signaling Technology社製)および内部標準として抗β-actin抗体(5057S、Cell Signaling Technology社製)を用い、各抗体を1:500~1:1000の希釈率で使用した。その後、PVDF膜をTBSTで洗浄し、二次抗体として抗ウサギIgG(H+L), ヤギ, F(ab')2フラグメント, ペルオキシダーゼ標識, アフィニティー精製抗体(Jackson Immuno Research社製)を室温、1時間使用した。抗体は、Can Get Signal(東洋紡ライフサイエンス社製)で希釈した。バンドの濃度はImageJソフトウェアバージョン1.51(http://rsb.info.nih.gov/ij/)で分析した。
【0052】
5 細胞増殖アッセイ
細胞増殖の評価には、TACS Cell Proliferation Assay Kit(Trevigen社製)を用いてMTTアッセイを行った。細胞を96ウェルプレートに1.0×103細胞/100μL/ウェルで播種し、24時間培養した。培養後の細胞にMTT試薬を添加し、5% CO2雰囲気下、37℃、4時間培養し、ホルマザン結晶を形成した。その後、キットに含まれる洗浄剤を添加し、570nmにおける吸光度を測定した。データは1日目、3日目および5日目に取得した。データは、1日目の吸光度の数値を1.0として換算した相対値で表示した。
【0053】
6 浸潤アッセイ
BioCoat マトリゲルインベージョンチャンバー(Corning Life Sciences社製)を用いて、メーカーのプロトコルに従って浸潤アッセイを行った。細胞を回収し、無血清DMEMに2.5×105細胞/mLとなるように懸濁し、500μLの細胞懸濁液を上部チャンバーに添加した。5% CO2雰囲気下、37℃、24時間培養した後、チャンバーをDiff-Quik Stain(Lab Aids Pty社製)で固定および染色し、スライドガラスに静置した。光学顕微鏡で細胞数をカウントし、メーカーのプロトコルに従って相対的な細胞浸潤(%浸潤)を算出した。
【0054】
7 細胞遊走アッセイ
細胞遊走アッセイは、Ibidi カルチャーインサート(Ibidi GmbH社製)を用いて行った。10%FBSを添加したDMEMに細胞が1.0×106個/mLとなるように懸濁し、6ウェルプレートにセットしたカルチャーインサートの各ウェルに70μLの細胞懸濁液を加えた。5% CO2雰囲気下、37℃、24時間培養した後、滅菌したピンセットでカルチャーインサートを取り出した。写真は、カルチャーインサートを取り出した直後(0時間)、および6または8時間後に撮影した。ImageJソフトウェアバージョン1.51を用いて面積を測定し、創傷治癒度(%)を算出した。
【0055】
8 統計解析
すべての値は、平均値±標準偏差で示した。有意差は、Bonferroni補正を用いた両側Student's t-testで判定した。すべての解析はRバージョン3.5.1(http://www.r-project.org/)を用いて行った。p<0.05は統計的に有意な差を示す。
【0056】
〔実施例1:DKK3機能ドメインの同定〕
1-1 ヒトDKK3の機能ドメイン候補
ヒトDKK3のアミノ酸配列(配列番号1)に基づいてタンパク質モデルを作成し、PDBj(https://pdbj.org/)およびNCBI Conserved Domain Search (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/wrpsb.cgi)を用いて機能ドメインとなり得る配列を検索した結果、2つのシステインリッチドメイン(CRD)が候補に挙がった。図2にヒトDKK3のアミノ酸配列(配列番号1)における、CRD1の位置、CRD2の位置、およびシグナルペプチドの位置をそれぞれ示す。
そこで、CRD1を欠損したヒトDKK3変異体、CRD2を欠損したヒトDKK3変異体、およびCRD1とCRD2の両方を欠損したヒトDKK3変異体を発現するプラスミドをヒト口腔扁平上皮がん細胞に導入し、DKK3の機能ドメインの同定を試みた。
【0057】
1-2 ウエスタンブロッティング
各種抗体を用いてウエスタンブロッティングを行い、検出したバンドの画像を図3に示す。
(1)DKK3の発現
抗DKK3抗体で検出したウエスタンブロッティングのバンドの濃度をImage Jで解析した結果を図4に示す。各DKK3発現ベクターを導入した細胞の数値は、HSC-3群の数値を1とした相対値で示した。各DKK3発現ベクターを導入した4群は、いずれもHSC-3群および+CTL:pCS2+群と比較して有意にDKK3発現量が増加した。また、3種類のDKK3変異体(+DKK3ΔC1群、+DKK3ΔC2群および+DKK3ΔC1ΔC2群)は、野生型DKK3を発現する+DKK3群と比較して、各DKK3変異体の発現量が有意に増加した。
【0058】
(2)Aktの発現
抗Akt抗体で検出したウエスタンブロッティングのバンドの濃度をImageJで解析した結果を図5に示す。+CTL:pCS2+群、+DKK3群および+DKK3ΔC1群はHSC-3群と比較して有意にAkt発現量が減少した。+DKK3ΔC2群および+DKK3ΔC1ΔC2群はHSC-3群と比較して有意にAkt発現量が増加し、+DKK3ΔC1ΔC2群は+DKK3ΔC2群と比較して有意にAkt発現量が増加した。すなわち、+DKK3ΔC1ΔC2群のAktの発現量が最も高かった。
【0059】
(3)リン酸化Akt(p-Akt)の発現
抗p-Akt抗体で検出したウエスタンブロッティングのバンドの濃度をImageJで解析した結果を図6に示す。+DKK3群および+DKK3ΔC2群はHSC-3群と比較して有意にリン酸化Akt発現量が増加した。一方、+DKK3ΔC1群および+DKK3ΔC1ΔC2群はHSC-3群と比較して有意にリン酸化Akt発現量が減少し、+DKK3ΔC1ΔC2群は+DKK3ΔC1群と比較してリン酸化Aktの発現量が減少した。すなわち、+DKK3ΔC1ΔC2群のリン酸化Aktの発現量が最も低かった。
以上の結果から、HSC-3におけるAktのリン酸化を顕著に抑制するためには、CRD1とCRD2の両方の機能を抑制する必要があることが示唆された。
【0060】
1-3 細胞増殖アッセイ
細胞増殖アッセイの結果を図7に示す。+DKK3群は他のすべての群に比較して有意に細胞増殖が亢進した。+DKK3ΔC1群の細胞増殖はHSC-3群と同程度まで抑制され、有意差が認められなかった。+DKK3ΔC2群はHSC-3群および+DKK3ΔC1群と比較して有意に細胞増殖が抑制され、+DKK3ΔC1ΔC2群はHSC-3群、+DKK3ΔC1群および+DKK3ΔC2群と比較して有意に細胞増殖が抑制された。
【0061】
1-4 浸潤アッセイ
浸潤アッセイの結果を図8に示す。+DKK3群はHSC-3群と比較して有意に高い浸潤能が認められた。+DKK3ΔC1群の浸潤能はHSC-3群と同程度まで抑制され、有意差が認められなかった。+DKK3ΔC2群および+DKK3ΔC1ΔC2群はHSC-3群および+DKK3ΔC1群と比較して有意に浸潤能が抑制され、+DKK3ΔC1ΔC2群は+DKK3ΔC2群と比較して有意に浸潤能が抑制された。すなわち、+DKK3ΔC1ΔC2群の浸潤能が最も低かった。
【0062】
1-5 細胞遊走アッセイ(創傷治癒度の評価)
細胞遊走アッセイの結果を図9に示した。(A)はカルチャーインサートを取り出した直後(0時間)および8時間後の細胞の画像であり、(B)は画像解析により細胞遊走能を創傷治癒度(%)として算出した結果を示す図である。+DKK3群、+DKK3ΔC1群および+DKK3ΔC2群は、HSC-3群と比較して有意に高い遊走能が観察された。一方、+DKK3ΔC1ΔC2群の遊走能はHSC-3群と同程度まで抑制され、有意差が認められなかった。
【0063】
1-6 小括
以上の結果から、HSC-3におけるAktのリン酸化を抑制し、HSC-3の細胞増殖能、浸潤能および遊走能を抑制するためには、DKK3のCRD1およびCRD2の両方の機能を抑制する必要があることが示唆された。
【0064】
〔実施例2:ヒトDKK3のCRD1およびCRD2を標的とするDKK3活性阻害ペプチドの設計および評価〕
2-1 ヒトDKK3のCRD1およびCRD2に特異性の高い配列の同定
ヒトDKK3のCRD1のアミノ酸配列(配列番号2)を、ヒトDKK1のCRD1のアミノ酸配列(配列番号50)、ヒトDKK2のCRD1のアミノ酸配列(配列番号51)およびヒトDKK4のCRD1のアミノ酸配列(配列番号52)と比較し、ヒトDKK3のCRD1にのみ特異性の高い配列を同定することを試みた。同様に、ヒトDKK3のCRD2のアミノ酸配列(配列番号3)を、ヒトDKK1のCRD2のアミノ酸配列(配列番号53)、ヒトDKK2のCRD2のアミノ酸配列(配列番号54)およびヒトDKK4のCRD2のアミノ酸配列(配列番号55)と比較し、ヒトDKK3のCRD2にのみ特異性の高い配列を同定することを試みた。
【0065】
図10に、ヒトDKKファミリー(DKK1~4)のCRD1のアミノ酸配列のアライメント(上段)および、ヒトDKKファミリー(DKK1~4)のCRD2のアミノ酸配列のアライメント(下段)をそれぞれ示した。ヒトDKK3のCRD1にのみ特異性の高い配列として、上段の枠線で囲んだ配列(CRGQRMLCTRDSECCGDQLC、配列番号8、標的領域1)を同定した。また、ヒトDKK3のCRD2にのみ特異性の高い配列として、下段の枠線で囲んだ配列(RGLLFPVCTPLPVEGELC、配列番号9、標的領域2)を同定した。
【0066】
2-2 標的領域1および2と相互作用するDKK3活性阻害ペプチドの設計
標的領域1および2と相互作用するDKK3活性阻害ペプチドの設計は、蛋白科学研究所に委託した。蛋白科学研究所では、MIMETIC(Microbiol. Immunol. 46: 211, 2002)を用いて相補性ペプチドの設計が行われる。このソフトウェアにより設計されたペプチド配列には、いくつかの物理化学的なパラメータに基づいてスコアが付けられ、標的との適合度のスコアリング方法に基づいて、ペプチドをリストに並べ替える。
【0067】
株式会社蛋白科学研究所から、標的領域1と相互作用するDKK3活性阻害ペプチドの候補配列および標的領域2と相互作用するDKK3活性阻害ペプチドの候補配列各10個を得た。得られたペプチド配列を表1に示す。これらは、どちらも適合度のスコアが高いものから順に各10個が選択されている。
【0068】
【表1】
【0069】
2-3 DKK3およびDKK3活性阻害ペプチドの構造モデルの作成とドッキングシミュレーション
設計されたDKK3活性阻害ペプチドが実際にDKK3のCRDに結合することを確認する前に、計算科学技術を用いてインシリコでシミュレーションを行った。アミノ酸配列のみから、デノボ(de novo)モデリング法またはアブイニシオ(ab initio)モデリング法により、DKK3およびペプチドの構造モデルを作成した。デノボ法は一般的に膨大な計算資源を必要とするため、強力なインハウス深層学習モデルを採用し、鋳型を使用せずにタンパク質配列の構造特性を予測できるウェブサーバーであるRaptor X(http://raptorx.uchicago.edu/)を使用した。ペプチドのモデル化については、Raptor Xが26アミノ酸残基以上のアミノ酸配列を必要とするため、表1のペプチド配列(CRD1-1~CRD1-10およびCRD2-1~CRD2-10)のC末端にオリゴアルギニンを付加した配列(CRD1-1R~CRD1-10RおよびCRD2-1~CRD2-10R)を用いて構造モデルを作成した。オリゴアルギニンを付加することにより、ペプチドに高い内在化効率が付与され、細胞内への送達を促進し、また、分泌型アイソフォームのDKK3および非分泌型アイソフォームのDKK3の両方を同時に阻害するという実験の必要性も満たされる。
【0070】
最終的に、DKK3とペプチドの構造モデルを得ることができた。すべてのモデルは、UCSF Chimeraソフトウェア(https://www.rbvi.ucsf.edu/chimera)を用いて確認した。その後、ClusPro2(https://cluspro.bu.edu/)によるタンパク質-ペプチドのドッキングシュミレーションを行った。モデルのスコアは、バランスのとれた係数で重み付けされたスコアの最小エネルギーで評価した。スコアが低いほど、より少ないエネルギーでDKK3と結合できることが示唆される。構造モデルを作成したペプチドのアミノ酸配列とドッキングシュミレーションにより得られた最低エネルギースコアを表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
2-4 ペプチドの合成
ドッキングシミュレーションのデータに基づいて、DKK3活性阻害ペプチドを合成した。ペプチドの合成はジェンスクリプトジャパンに委託した。
【0073】
2-5 標的領域1に対する結合状態が最も良いと想定されるDKK3活性阻害ペプチドと標的領域2に対する結合状態が最も良いと想定されるDKK3活性阻害ペプチドとの組み合わせの評価
(1)DKK3活性阻害ペプチドの組み合わせ
表2に示したアミノ酸配列において、標的領域1に対する結合状態が最も良いと想定されるCRD1-6Rと、標的領域2に対する結合状態が最も良いと想定されるCRD2-5Rを1:1で混合し、DKK3活性阻害ペプチド溶液を調製した(peptide 1)。
【0074】
(2)ウエスタンブロッティングおよびAktのリン酸化抑制
HSC-3細胞に野生型DKK3を発現するプラスミドをトランスフェクションし、野生型DKK3を過剰発現するHSC-3細胞を作製した。細胞を播種し、DKK3活性阻害ペプチドを終濃度が500nM、1μM、10μMおよび50μMを添加して培養した。細胞がコンフルエントになるまで培養した後、[材料と方法]4に記載の方法でウエスタンブロッティングを行った。また、IC50値を算出するために、別途ウエスタンブロッティングを行った。
【0075】
ウエスタンブロッティングの結果を図11および図12に示した。図11は各種抗体を用いて検出したバンドの画像であり、図12は抗p-Akt抗体で検出したウエスタンブロッティングのバンドの濃度をImageJで解析した結果である。DKK3活性阻害ペプチドで処理していない細胞(HSC-3+DKK3)はコントロール(HSC-3)と比較してリン酸化Aktの発現量が有意に増加したが、DKK3活性阻害ペプチドを500nM以上の濃度で処理すると、コントロール(HSC-3)と比較してリン酸化Aktの発現量が有意に減少した。
【0076】
IC50値を算出した実験の結果を図13に示した。DKK3活性阻害ペプチドの処理濃度は、終濃度が10μM、25μM、50μM、100μM、500μMとした。算出されたIC50値は41.5nMであった。この結果から、DKK3活性阻害ペプチドとしてCRD1-6RとCRD2-5Rの組み合わせを用いる実験におけるペプチド濃度を100nMとした。
【0077】
(3)細胞増殖アッセイ
[材料と方法]5に記載の方法で細胞増殖アッセイを行った。野生型DKK3を発現するプラスミドをトランスフェクションしたHSC-3細胞(HSC-3+DKK3)とプラスミドをトランスフェクションしていない野生型HSC-3細胞(HSC-3)を用い、それぞれDKK3活性阻害ペプチド(100nM)で処理した群(HSC-3+DKK3+peptide 1、HSC-3+peptide 1)と処理していない群(HSC-3+DKK3、HSC-3)の4群を設けた。
【0078】
結果を図14に示した。HSC-3+DKK3群はHSC-3群と比較して有意に細胞増殖が亢進したが、DKK3活性阻害ペプチドで処理すると(HSC-3+peptide 1群およびHSC-3+DKK3+peptide 1群)HSC-3群と比較して有意に細胞増殖が抑制され、HSC-3+peptide 1群はHSC-3+DKK3+peptide 1群と比較して有意に細胞増殖が抑制された。
【0079】
(4)細胞遊走アッセイ
[材料と方法]7に記載の方法で細胞遊走アッセイを行った。前記細胞増殖アッセイと同様に、HSC-3群、HSC-3+peptide 1群、HSC-3+DKK3群およびHSC-3+DKK3+peptide 1群の4群を設けた。
【0080】
結果を図15に示した。(A)はカルチャーインサートを取り出した直後(0時間)および6時間後の細胞の画像であり、(B)は画像解析により細胞遊走能を創傷治癒度(%)として算出した結果を示す図である。DKK3を過剰発現していない細胞を用いた場合、DKK3活性阻害ペプチドで処理すると(HSC-3+peptide 1群)HSC-3群と比較して有意に遊走能が抑制された。一方、DKK3を過剰発現する細胞では、DKK3活性阻害ペプチドで処理しても(HSC-3+DKK3+peptide 1群)、DKK3により増強された遊走能は抑制されなかった。
【0081】
2-6 標的領域1に対する結合状態が最も悪いと想定されるDKK3活性阻害ペプチドと標的領域2に対する結合状態が最も悪いと想定されるDKK3活性阻害ペプチドとの組み合わせの評価
(1)DKK3活性阻害ペプチドの組み合わせ
表2に示したアミノ酸配列において、標的領域1に対する結合状態が最も悪いと想定されるCRD1-1Rと、標的領域2に対する結合状態が最も悪いと想定されるCRD2-1Rを1:1で混合し、DKK3活性阻害ペプチド溶液を調製した(peptide 2)。
【0082】
(2)ウエスタンブロッティングおよびAktのリン酸化抑制
HSC-3細胞に野生型DKK3を発現するプラスミドをトランスフェクションし、野生型DKK3を過剰発現するHSC-3細胞を作製した。細胞を播種し、DKK3活性阻害ペプチドを終濃度が500nM、1μM、10μMおよび50μMを添加して培養した。細胞がコンフルエントになるまで培養した後、[材料と方法]4に記載の方法でウエスタンブロッティングを行った。また、IC50値を算出するために、別途ウエスタンブロッティングを行った。
【0083】
ウエスタンブロッティングの結果を図16および図17に示した。図16は各種抗体を用いて検出したバンドの画像であり、図17は抗p-Akt抗体で検出したウエスタンブロッティングのバンドの濃度をImageJで解析した結果である。DKK3活性阻害ペプチドで処理していない細胞(HSC-3+DKK3)はコントロール(HSC-3)と比較してリン酸化Aktの発現量が有意に増加したが、DKK3活性阻害ペプチドを500nM以上の濃度で処理すると、コントロール(HSC-3)と比較してリン酸化Aktの発現量が有意に減少した。
【0084】
IC50値を算出した結果を図18に示した。ペプチドの処理濃度は、終濃度が10μM、25μM、50μM、100μM、500μMとした。算出されたIC50値は217nMであった。この結果から、DKK3活性阻害ペプチドとしてCRD1-1RとCRD2-1Rの組み合わせを用いる実験におけるペプチド濃度を500nMとした。
【0085】
(3)細胞増殖アッセイ
[材料と方法]5に記載の方法で細胞増殖アッセイを行った。野生型DKK3を発現するプラスミドをトランスフェクションしたHSC-3細胞(HSC-3+DKK3)とプラスミドをトランスフェクションしていない野生型HSC-3細胞(HSC-3)を用い、それぞれDKK3活性阻害ペプチドで処理した群(HSC-3+DKK3+peptide 2、HSC-3+peptide 2)と処理していない群(HSC-3+DKK3、HSC-3)の4群を設けた。
【0086】
結果を図19に示した。HSC-3+DKK3群はHSC-3群と比較して有意に細胞増殖が亢進したが、DKK3活性阻害ペプチドで処理すると(HSC-3+peptide 2群およびHSC-3+DKK3+peptide 2群)HSC-3群と比較して有意に細胞増殖が抑制された。
【0087】
(4)細胞遊走アッセイ
[材料と方法]7に記載の方法で細胞遊走アッセイを行った。前記細胞増殖アッセイと同様に、HSC-3群、HSC-3+peptide2群、HSC-3+DKK3群およびHSC-3+DKK3+peptide2群の4群を設けた。
【0088】
結果を図20に示した。(A)はカルチャーインサートを取り出した直後(0時間)および6時間後の細胞の画像であり、(B)は画像解析により細胞遊走能を創傷治癒度(%)として算出した結果を示す図である。DKK3活性阻害ペプチドで処理すると(HSC-3+peptide 2群、HSC-3+DKK3+peptide 2群)HSC-3群と比較して有意に遊走能が抑制された。
【0089】
2-7 DKK3活性阻害ペプチドの組み合わせによる浸潤能の評価
(1)CRD1-6RおよびCRD2-5Rの組み合わせ(peptide 1)
[材料と方法]6に記載の方法で浸潤アッセイを行った。野生型DKK3を発現するプラスミドをトランスフェクションしたHSC-3細胞(HSC-3+DKK3)とプラスミドをトランスフェクションしていない野生型HSC-3細胞(HSC-3)を用い、DKK3活性阻害ペプチドとして、CRD1-6RおよびCRD2-5Rの組み合わせ(100nM)で処理した群(HSC-3+DKK3+peptide 1、HSC-3+peptide 1)と処理していない群(HSC-3+DKK3、HSC-3)の4群を設けた。
【0090】
結果を図21に示した。HSC-3+DKK3群は、HSC-3群と比較して有意に高い浸潤能を示したが、DKK3活性阻害ペプチドで処理すると(HSC-3+peptide 1群またはHSC-3+DKK3+peptide 1群)、それぞれDKK3活性阻害ペプチドで処理していないもの(HSC-3群またはHSC-3+DKK3群)と比較して有意に浸潤能が抑制された。
【0091】
(2)CRD1-1RおよびCRD2-1Rの組み合わせ(peptide 2)
前記(1)のpeptide 1(100nM)をpeptide 2(500nM)に変更し、HSC-3群、HSC-3+peptide2群、HSC-3+DKK3群およびHSC-3+DKK3+peptide2群の4群を設けた。
【0092】
結果を図22に示した。HSC-3+DKK3群は、HSC-3群と比較して有意に高い浸潤能を示したが、DKK3活性阻害ペプチドで処理すると(HSC-3+peptide 2群またはHSC-3+DKK3+peptide 2群)、それぞれDKK3活性阻害ペプチドで処理していないもの(HSC-3群またはHSC-3+DKK3群)と比較して有意に浸潤能が抑制された。
【0093】
〔実施例3:異種移植モデルにおけるヒトDKK3のCRD1およびCRD2を標的とするDKK3活性阻害ペプチドの影響の検証〕
3-1 異種移植モデル
HSC-3細胞をPBSに5.0×106細胞/150μLとなるように懸濁し、5週齢、12匹の雄のヌードマウス(BALB/cAJcl-nu/nu;日本クレア社)の背部に皮下投与した。飼料および水を自由摂取させ、25℃(湿度60~70%)、12時間の明暗サイクルでマウスを飼育した。合計12匹のマウスを、コントロール群(Control群)、CRD1-6R+CRD2-5Rのペプチドの組み合わせを注入した群(Peptide 1群)およびCRD1-1R+CRD2-1Rのペプチドの組み合わせを注入した群(Peptide 2群)の3群に分けた。各群においてn=4である。図23に示されるように、HSC-3細胞の移植から21日目に治療実験を開始し、21日目、24日目、28日目、31日目に、Control群にはPBSを、Peptide 1群には腫瘍100mm3あたり0.01nmol(腫瘍における終濃度:100nM)となるようにCRD1-6R+CRD2-5Rのペプチドの組み合わせ(Peptide 1)を、Peptide 2群には腫瘍100mm3あたり0.05nmol(腫瘍における終濃度:500nM)となるようにCRD1-1R+CRD2-1Rのペプチドの組み合わせ(Peptide 2)を、それぞれハミルトンシリンジで腫瘍内に注入した。HSC-3細胞の移植から7日目、14日目、21日目、23日目、25日目、28日目、30日目、32日目、35日目に腫瘍体積(mm3)を測定した。腫瘍体積は、腫瘍体積をV(mm3)、最長径をL(mm)、Lに垂直な径をW(mm)として、以下の式(1)を用いて算出した。
式(1):V=4/3π×L/2×(W/2)
【0094】
Control群およびPeptide 1群における腫瘍体積の経時変化の結果を図24に示し、Control群およびPeptide 2群における腫瘍体積の経時変化の結果を図25に示した。腫瘍塊は14日目以降に形成され、腫瘍体積が50mm3を超えた21日目から治療を開始した。21日目での平均腫瘍体積は、Control群が57.68±12.85mm3、Peptide 1群が57.50±30.70mm3、Peptide 2群が55.28±25.30mm3であった。21日目にDKK3活性阻害ペプチドを投与すると、Peptide 1群、Peptide 2群のどちらを投与した場合も、23日目で腫瘍体積が縮小し始めた。連続したDKK3活性阻害ペプチドの投与により、Peptide 1群、Peptide 2群のどちらを投与した場合も、25日目以降にControl群と比較して腫瘍体積に有意差が見られた。35日目での平均腫瘍体積は、Control群が81.79±13.97mm3、Peptide 1群が48.12±24.19mm3、Peptide 2群が41.43±22.38mm3であった。
【0095】
3-2 組織学的解析
HSC-3細胞の移植から35日目の腫瘍体積のデータを取得した後、マウスを安楽死させ、腫瘍組織を摘出した。腫瘍組織を10%中性緩衝ホルマリンで室温、8時間固定し、パラフィン包埋した後、厚さ4μmの組織切片を作製した。得られた組織切片に、常法に従ってヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を行い、病理組織学的解析を行った。
【0096】
さらに得られた組織切片に対して、Ki-67の免疫組織化学染色(IHC)を行った。Ki-67は、細胞増殖マーカーである。Ki-67のIHCは、VENTANA BenchMark ULTRA(製品名:VENTANA社製)およびKi-67に対する抗体(30-9;VENTANA社製)を使用し、製品プロトコルに従って行った。Ki-67陽性細胞数をカウントし、Ki-67標識率(%)を算出した。
【0097】
結果を図26に示した。(A)はHE染色およびKi-67のIHCを行った組織切片の画像であり、(B)は各群におけるKi-67標識率(%)を算出した結果を示す図である。腫瘍の組織学的評価では、Control群およびDKK3活性阻害ペプチド投与群(Peptide 1群、Peptide 2群)の間に組織学的な違いは確認されなかった。一方、DKK3活性阻害ペプチド投与群(Peptide 1群、Peptide 2群)におけるKi-67標識率は、Control群と比べて有意に低下していた。
【0098】
本発明におけるDKK3を発現するがんの治療用医薬組成物は、DKK3によるAktのリン酸化、細胞増殖、遊走、インビボでの腫瘍の成長を有意に減少させることができることが示された。特に、本発明の治療用医薬組成物は、特定の2つの領域と相互作用する第一物質および第二物質の組み合わせにより、非常に低い用量で腫瘍治療効果を発揮することができる。これらの結果から、本発明の治療用医薬組成物は、抗がん剤開発のための新規かつ有望なアプローチとして期待される。特に、本発明の治療用医薬組成物が、標的領域1および2の相補性ペプチドの組み合わせを有効成分として含む場合、モノクローナル抗体と比較して、比較的安価で合成することができ、サイズが小さく、安定化、保存および輸送を容易にすることが可能である。
【0099】
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
図1
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