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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103166
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】燃料電池システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20230719BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20230719BHJP
   H01M 8/04492 20160101ALI20230719BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20230719BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20230719BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20230719BHJP
   H01M 8/04828 20160101ALI20230719BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20230719BHJP
   B60L 50/70 20190101ALN20230719BHJP
   B60L 58/30 20190101ALN20230719BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/04537
H01M8/04492
H01M8/0432
H01M8/0438
H01M8/04858
H01M8/04828
H01M8/04701
B60L50/70
B60L58/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168425
(22)【出願日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0005434
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】シン、スンホ
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125BD05
5H125BD12
5H125BD15
5H125EE32
5H125EE34
5H125EE35
5H125EE36
5H125EE37
5H127AC05
5H127BA02
5H127BB02
5H127DB03
5H127DB06
5H127DB07
5H127DB23
5H127DB26
5H127DB27
5H127DB48
5H127DB53
5H127DC04
5H127DC06
5H127DC07
5H127DC22
5H127DC24
5H127DC26
5H127DC27
5H127DC44
(57)【要約】
【課題】一定の電流密度を維持するように相対湿度、温度及び圧力条件を設定して燃料電池内の凝縮水の発生を調節するとともに、空気極圧力インパルスを注入することにより、過剰に生成された凝縮水を除去して燃料電池の運転中の性能劣化を緩和する燃料電池システム及びその制御方法を提供する。
【解決手段】本発明による燃料電池システムの制御方法は、制御部で燃料電池の目標相対湿度を導出する段階と、制御部で燃料電池の目標相対湿度を達成することができる燃料電池の運転条件を導出する段階と、制御部から導出された運転条件に応じて燃料電池の運転を制御し、燃料電池の出力電圧を測定する段階と、制御部で燃料電池の出力電圧が目標出力電圧基準未満である場合、インパルスを形成して燃料電池へ空気を供給するように燃料電池の空気供給部を制御する段階と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部で燃料電池の目標相対湿度を導出する段階と、
制御部で燃料電池の目標相対湿度を達成することができる燃料電池の運転条件を導出する段階と、
制御部から導出された運転条件に応じて燃料電池の運転を制御し、燃料電池の出力電圧を測定する段階と、
制御部で燃料電池の出力電圧が目標出力電圧基準未満である場合、インパルスを形成して燃料電池へ空気を供給するように燃料電池の空気供給部を制御する段階と、を含む、燃料電池システムの制御方法。
【請求項2】
目標相対湿度を導出する段階では、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度を導出し、チャネルの目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件を導出し、運転条件を導出する段階では、導出されたチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項3】
アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度は、車両の目標出力電圧基準を設定し、設定された目標出力電圧基準による電流密度を設定して、設定された電流密度が均一に維持されるようにする相対湿度であることを特徴とする、請求項2に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項4】
目標相対湿度を導出する段階では、導出されたチャネルの目標温度/圧力条件を介して燃料電池チャネルを除いた反応部の予想相対湿度を導出し、反応部の予想相対湿度が反応部の目標相対湿度を満たすようにチャネルの目標温度/圧力条件を補正し、運転条件を導出する段階では、補正されたチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することを特徴とする、請求項2に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項5】
目標相対湿度を導出する段階では、アノード側とカソード側チャネルの目標温度/圧力条件がそれぞれ最小温度/最大圧力条件の範囲に該当しない場合、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度を補正し、補正されたチャネルの目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件を再導出し、運転条件を導出する段階では、再導出された目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することを特徴とする、請求項2に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項6】
目標相対湿度を導出する段階では、補正されたチャネルの温度/圧力条件がそれぞれ最小温度/最大圧力条件の範囲に該当しない場合、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度を補正し、補正されたチャネルの目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件を再導出し、運転条件を導出する段階では、再導出された目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することを特徴とする、請求項4に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項7】
空気供給部を制御する段階は、
測定された出力電圧を目標出力電圧基準と比較し、その比較結果に基づいて、燃料電池の空気供給部を制御して空気極圧力インパルスを形成する段階、及び
形成された空気極圧力インパルスを燃料電池に注入する段階で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項8】
形成された空気極圧力インパルスを燃料電池に注入する段階の後には、
空気極圧力インパルスの注入による出力電圧を測定し、目標出力電圧基準と比較して、その比較結果に基づいて、燃料電池の空気供給部を制御して空気極圧力インパルスを補正する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項9】
制御部で測定される空気極圧力インパルスの注入による出力電圧は、所定の時間ごとに測定される区間電圧であることを特徴とする、請求項8に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項10】
空気極圧力インパルスを形成する段階の後には、
形成された空気極インパルス圧力値と所定の限界圧力値とを比較して、その比較結果に基づいて、空気極圧力インパルスを燃料電池に注入するか否かを決定する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項11】
形成された空気極インパルス圧力値が所定の限界圧力値に達した場合、制御部で目標出力電圧基準による電流密度を補正することを特徴とする、請求項10に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項12】
アノード側チャネル部、カソード側チャネル部、及び両チャネル部の間の反応部で構成された燃料電池スタックと、
燃料電池スタックのアノード側チャネル部に水素を供給する水素供給部と、
燃料電池スタックのカソード側チャネル部に空気を供給する空気供給部と、
燃料電池の目標相対湿度及び目標相対湿度による運転条件を導出し、運転条件に応じて燃料電池の運転を制御し、燃料電池の出力電圧を測定し、出力電圧が目標出力電圧基準未満である場合、インパルスを形成して燃料電池に空気を供給するように燃料電池の空気供給部を制御する制御部と、を含む、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の電流密度を維持するように相対湿度、温度及び圧力の条件を設定して燃料電池内の凝縮水の発生を調節するとともに、空気極圧力インパルスを注入することにより、過剰に生成された凝縮水を除去して燃料電池の運転中の性能劣化を緩和する燃料電池システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料である水素と空気中の酸素の供給を受け、水素と酸素の電気化学(electrochemistry)反応によって電気エネルギーを発生させる。このような燃料電池は、燃料電池車両などに適用され、燃料電池を介して生産された電気エネルギーで電気モータを作動させて車両を駆動する。
【0003】
一般に、高分子電解質膜燃料電池(PEFC、Polymer electrolyte fuel cell)は、複数の単位セルが適用された燃料電池スタックを含む。それぞれの単位セルにおいて、アノードとカソードは、電極膜の両側に配置されて電極膜アセンブリ(MEA、Membrane electrode assembly)を形成し、MEAは、セパレータ(バイポーラ板)同士の間に配置される。燃料電池において、燃料である水素がアノード(燃料極)へ供給され、酸素はカソード(空気極又は酸素極)へ供給される。
【0004】
アノードに供給された水素は、電極/触媒電極層において触媒によって水素イオン及び電子に分解される。水素イオンは、陽イオン交換膜である電極膜を介してカソードへ移送され、電子は、気体拡散層(GDL、Gas diffusion layer)と分離板を介してカソードへ移送される。電極膜を介して供給された水素イオンと、分離板を介して移送された電子は、カソードで酸素と反応して水を生成する。
【0005】
このとき、発生する水(凝縮水)が、触媒層の活性表面積を減らして電極反応に損失を与え、物質伝達抵抗を増加させて電圧降下を起こして燃料電池の性能を悪化させるという問題がある。一方、燃料電池において、水分は水素イオンの伝達媒体として機能するため、燃料電池の作動のためには必ず適切な水分が必要である。
【0006】
すなわち、いわゆる凝縮水が溢れるフラッディング(Flooding)現象だけでなく、凝縮水が不足しすぎるドライアウト(Dry-out)現象の場合にも、燃料電池の性能低下が発生するので、燃料電池内に発生する凝縮水は、適切に調節される必要がある。
【0007】
このような問題を解決するために、従来の燃料電池車両では、正常状態で長期間運転中に問題が発生した場合、一時的に燃料電池システムを停止又は休止してウォーターバランスを合わせた後、再稼働するしかない実情がある。
【0008】
上記の背景技術として説明された事項は、本発明の背景に対する理解を増進するためのものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者に既に知られている従来技術に該当することを認めるものと受け入れられてはならないだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開第10-2012-0064204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる問題点を解決するために提案されたもので、その目的は、一定の電流密度を維持するように相対湿度、温度及び圧力条件を設定して燃料電池内の凝縮水の発生を調節するとともに、空気極圧力インパルスを注入することにより、過剰に生成された凝縮水を除去して燃料電池の運転中の性能劣化を緩和する燃料電池システム及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明による燃料電池システムの制御方法は、制御部で燃料電池の目標相対湿度を導出する段階と、制御部で燃料電池の目標相対湿度を達成することができる燃料電池の運転条件を導出する段階と、制御部で導出された運転条件に応じて燃料電池の運転を制御し、燃料電池の出力電圧を測定する段階と、制御部で燃料電池の出力電圧が目標出力電圧基準未満である場合、インパルスを形成して燃料電池へ空気を供給するように燃料電池の空気供給部を制御する段階と、を含む。
【0012】
目標相対湿度を導出する段階では、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度を導出し、チャネルの目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件を導出し、運転条件を導出する段階では、導出されたチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することができる。
【0013】
アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度は、車両の目標出力電圧基準を設定し、設定された目標出力電圧基準による電流密度を設定して、設定された電流密度が均一に維持されるようにする相対湿度であり得る。
【0014】
目標相対湿度を導出する段階では、導出されたチャネルの目標温度/圧力条件を介して燃料電池チャネルを除いた反応部の予想相対湿度を導出し、反応部の予想相対湿度が反応部の目標相対湿度を満たすようにチャネルの目標温度/圧力条件を補正し、運転条件を導出する段階では、補正されたチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することができる。
【0015】
目標相対湿度を導出する段階では、アノード側とカソード側チャネルの目標温度/圧力条件がそれぞれ最小温度/最大圧力条件の範囲に該当しない場合、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度を補正し、補正されたチャネルの目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件を再導出し、運転条件を導出する段階では、再導出された目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することができる。
【0016】
目標相対湿度を導出する段階では、補正されたチャネルの温度/圧力条件がそれぞれ最小温度/最大圧力条件の範囲に該当しない場合、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度を補正し、補正されたチャネルの目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件を再導出し、運転条件を導出する段階では、再導出された目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することができる。
【0017】
空気供給部を制御する段階は、測定された出力電圧を目標出力電圧基準と比較し、その比較結果に基づいて、燃料電池の空気供給部を制御して空気極圧力インパルスを形成する段階、及び形成された空気極圧力インパルスを燃料電池に注入する段階で構成できる。
【0018】
形成された空気極圧力インパルスを燃料電池に注入する段階の後には、空気極圧力インパルスの注入による出力電圧を測定し、目標出力電圧基準と比較して、その比較結果に基づいて、燃料電池の空気供給部を制御して空気極圧力インパルスを補正する段階をさらに含むことができる。
【0019】
制御部で測定される空気極圧力インパルスの注入による出力電圧は、所定の時間ごとに測定される区間電圧であり得る。
【0020】
空気極圧力インパルスを形成する段階の後には、形成された空気極インパルス圧力値と所定の限界圧力値とを比較して、その比較結果に基づいて、空気極圧力インパルスを燃料電池に注入するか否かを決定する段階をさらに含むことができる。
【0021】
形成された空気極インパルス圧力値が所定の限界圧力値に達した場合、制御部で目標出力電圧基準による電流密度を補正することができる。
【0022】
本発明による燃料電池システムは、アノード側チャネル部、カソード側チャネル部、及び両チャネル部の間の反応部で構成された燃料電池スタックと、燃料電池スタックのアノード側チャネル部に水素を供給する水素供給部と、燃料電池スタックのカソード側チャネル部に空気を供給する空気供給部と、燃料電池の目標相対湿度及び目標相対湿度による運転条件を導出し、運転条件に応じて燃料電池の運転を制御し、燃料電池の出力電圧を測定し、出力電圧が目標出力電圧基準未満である場合、インパルスを形成して燃料電池に空気を供給するように燃料電池の空気供給部を制御する制御部と、を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明の燃料電池システム及びその制御方法によれば、一定の電流密度を維持するように相対湿度、温度及び圧力条件を設定して燃料電池内の凝縮水の発生を調節するとともに、空気極圧力インパルスを注入することにより、過剰に生成された凝縮水を除去して燃料電池の運転中の性能劣化を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による燃料電池システムの制御方法のフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態による燃料電池システムの燃料電池スタックの内部位置別の相対湿度分布を示すグラフである。
図3】本発明の一実施形態による燃料電池システムの制御方法において空気極圧力インパルスを注入する前の燃料電池スタックの内部状態を示す図である。
図4】本発明の一実施形態による燃料電池システム及びその制御方法による運転条件を適用して電圧降下が改善されることを示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態による燃料電池システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0026】
「第1」、「第2」等の用語は、多様な構成要素の説明に使用できるが、これらの用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の概念による権利範囲から逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名でき、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名できる。
【0027】
以下、添付図面を参照して、開示された発明の様々な実施形態についての構成及び作用原理を詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態による燃料電池システムの制御方法のフローチャート、図3は、本発明の一実施形態による燃料電池システムの制御方法において空気極圧力インパルスを注入する前の燃料電池スタックの内部状態を示す図、図5は、本発明の一実施形態による燃料電池システムを示す図である。
【0029】
図1を参照すると、本発明による燃料電池システムの制御方法は、制御部で燃料電池の目標相対湿度を導出する段階(S200、S210、S220、S230、S240)、制御部で燃料電池の目標相対湿度を達成することが可能な燃料電池の運転条件を導出する段階(S300)、制御部で導出された運転条件に応じて燃料電池の運転を制御し、燃料電池の出力電圧を測定する段階(S400)、及び制御部で燃料電池の出力電圧が目標出力電圧基準未満である場合、インパルスを形成して燃料電池に空気を供給するように燃料電池の空気供給部を制御する段階(S500、S510、S511、S520、S530)を含む。
【0030】
一般に、燃料電池スタックは、アノード、カソード、触媒層、拡散層及びメンブレンで構成される。燃料電池スタックのアノード側に供給された水素は、電極/触媒電極層で触媒によって水素イオンと電子に分解され、水素イオンと電子は、カソードで酸素と反応して水を生成する。このとき、発生する水(凝縮水)は、物質伝達抵抗を増加させて電圧降下を起こすが、このような電圧降下は、カソード側触媒層界面の相対湿度に比例する傾向がある。
【0031】
電圧降下は、燃料電池の性能悪化に直結するので、本発明による燃料電池システムの制御方法は、制御部で燃料電池の目標相対湿度を導出して、このような電圧降下を改善しようとするのである。すなわち、電圧降下を改善させる目標相対湿度による運転条件を導出し(S300)、導出された運転条件に応じて燃料電池の運転を制御することにより、燃料電池の性能劣化を改善することができる。
【0032】
参考として、本明細書では、目標相対湿度による運転条件に応じて燃料電池の運転を制御する状態を正常状態又は正常状態運転と定義して説明する。
【0033】
本発明による燃料電池システムの制御方法は、燃料電池車両などに適用でき、車両の走行中には、車両の走行速度又は道路の傾斜面などに応じて、要求される燃料電池の目標出力電圧が変化する。したがって、様々な走行状況に応じて、正常状態運転の際に実際燃料電池の出力電圧を測定して、目標出力電圧基準と比較する必要性がある。
【0034】
すなわち、図1の運転条件に応じて燃料電池の運転を制御し、燃料電池の出力電圧を測定する段階(S400)は、本発明による燃料電池システムの制御方法が適用された車両の走行中に生じうる様々な走行状況に対処するためのものと理解できる。
【0035】
一方、本発明による燃料電池システムの制御方法は、制御部で燃料電池の出力電圧が目標出力電圧基準未満である場合、インパルスを形成して燃料電池に空気を供給するように燃料電池の空気供給部を制御する段階(S500、S510、S511、S520、S530)を含む。
【0036】
燃料電池システムを長時間正常状態で運転させると、燃料電池の単位セル内に凝縮水が蓄積される。前述したように、凝縮水は、物質伝達抵抗を増加させて電圧降下を起こすので、凝縮水が過剰に蓄積されたフラッディング(Flooding)状態では、燃料電池の出力電圧が目標出力電圧基準よりも低く測定される。
【0037】
したがって、このような場合、過剰に蓄積された凝縮水を適切に除去する必要がある。このために、本発明による燃料電池システムの制御方法は、インパルスを形成して燃料電池に空気を供給するように燃料電池の空気供給部を制御(S500、S510、S511、S520、S530)することにより、形成されたインパルスを介して、過剰に蓄積された凝縮水を除去する。図3にはこのような凝縮水除去前後の状態が示されており、これについては、以下に開示された発明の各段階の構成及び作用原理を具体的に考察しながら追加説明する。
【0038】
本発明による燃料電池システムの制御方法の目標相対湿度を導出する段階(S200、S210、S220、S230、S240)では、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度を導出し(S200)、チャネルの目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件を導出し(S210)、運転条件を導出する段階では、導出されたチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することができる(S300)。
【0039】
相対湿度とは、特定の温度での水蒸気の圧力をその温度の飽和水蒸気の圧力で割ったものをいうので、相対湿度は、温度と圧力に関する関数で表される。よって、目標相対湿度を設定すると、これによる目標温度/圧力条件が導出される。
【0040】
具体的には、本発明による燃料電池システムの制御方法は、目標相対湿度を導出する段階(S200、S210、S220、S230、S240)で、燃料電池のアノード側とカソード側チャネルそれぞれの目標相対湿度を導出し(S200)、これによるチャネルの目標温度/圧力条件を導出する(S210)。さらに、運転条件を導出する段階(S300)では、このように導出された温度/圧力条件に応じた運転条件を導出する。結局、導出された運転条件に応じて燃料電池を制御して正常状態運転を行うことにより、燃料電池の性能劣化を改善することができる。
【0041】
このとき、チャネルの目標温度/圧力条件に応じて導出される運転条件は、別途備えられた冷却水の流れる冷却装置で温度を調節し、水素供給部及び空気供給部から燃料電池へ供給されるガスの圧力を調節することにより達成できる。
【0042】
一方、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度は、車両の目標出力電圧基準を設定し、設定された目標出力電圧基準による電流密度を設定して、設定された電流密度が均一に維持されるようにする相対湿度であり得る(S100)。
【0043】
燃料電池の核心部品である触媒層の劣化は、電流密度の高い部分でより速く進行する。したがって、燃料電池の耐久性及び安定的な運転のためには、反応面積全体にわたって、均一な電流密度分布が形成されることが好ましい。電流密度の分布は、アノード側とカソード側チャネルの相対湿度の影響を受けるので、電流密度の均一性を向上させるためには、チャネルの相対湿度を調節する必要性がある。
【0044】
したがって、本発明による燃料電池システムの制御方法は、一定の電流密度を設定し、設定された電流密度が均一に維持されるようにする相対湿度をアノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度にして燃料電池の運転を制御することにより、究極的に安定的な正常状態運転を達成しながら、燃料電池の耐久性も確保することができる。
【0045】
一方、車両の様々な走行状況に応じて、要求される燃料電池の目標出力電圧が変化することは前述した通りである。したがって、本発明による燃料電池システムの制御方法によって設定される一定の電流密度は、車両の走行中に随時変化する燃料電池の目標出力電圧基準に対応して導出される電流密度であると理解できる。
【0046】
本発明による燃料電池システムの制御方法の目標相対湿度を導出する段階(S200、S210、S220、S230、S240)では、導出されたチャネルの目標温度/圧力条件を介して燃料電池チャネルを除いた反応部の予想相対湿度を導出し(S220)、反応部の予想相対湿度が反応部の目標相対湿度を満たすようにチャネルの目標温度/圧力条件を補正し(S230)、運転条件を導出する段階では、補正されたチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することができる(S300)。
【0047】
ここで、反応部とは、燃料電池スタックにおけるアノード側及びカソード側チャネルを除いた残りの部分を意味する。すなわち、本明細書では、一般な燃料電池スタックの構成のうち、アノード及びカソードを除いた触媒層、拡散層及びメンブレン領域を全て含んだ領域を反応部として定義して説明する。
【0048】
また、反応部の予想相対湿度について、図2を参照してさらに検討する。図2には、本発明の一実施形態による燃料電池システムの燃料電池スタックの内部位置別の相対湿度分布がグラフで示されている。
【0049】
前述したように、アノードに供給された水素が触媒によって水素イオンと電子に分解され、水素イオンと電子はカソードで酸素と反応して水を生成するので、図2に示すように、アノード側チャネルの目標相対湿度よりもカソード側チャネルの目標相対湿度が高く設定される。
【0050】
アノード側チャネルの目標相対湿度とカソード側チャネルの目標相対湿度が異なるように設定されることにより、反応部の相対湿度分布は、図2に示されている領域(A)のように一定の勾配(gradient)を形成することができる。すなわち、多数の実験を介して勾配値(gradient value)を測定することにより、反応部の目標相対湿度の誤差範囲分布データを確保することができる。
【0051】
このようにデータ化された分布値は、反応部の目標相対湿度として制御部の主記憶装置に記憶される。これをチャネルの目標温度/圧力条件を介して導出された反応部の予想相対湿度と比較する。比較結果に基づいて、反応部の予想相対湿度が反応部の目標相対湿度の範囲から外れる場合、チャネルの目標温度/圧力条件を補正して予想相対湿度を再導出し、再導出された予想相対湿度が目標相対湿度を満たすまで比較する過程を繰り返し行う。
【0052】
予想相対湿度が目標相対湿度を満たすと、このときのチャネルの目標温度/圧力条件に応じて、燃料電池の運転条件が導出される。結局、導出された運転条件に応じて燃料電池を制御して正常状態運転を行うことにより、燃料電池の性能劣化を改善することができる。
【0053】
一方、本発明による燃料電池システムの制御方法の目標相対湿度を導出する段階(S200、S210、S220、S230、S240)では、アノード側とカソード側チャネルの目標温度/圧力条件がそれぞれ最小温度/最大圧力条件の範囲に該当しない場合、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度を補正し、補正されたチャネルの目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件を再導出し(S240)、運転条件を導出する段階では、再導出された目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することができる(S300)。
【0054】
相対湿度は、単位気体が低温及び高圧であるほど高くなり、逆に高温及び低圧であるほど低くなる。すなわち、本発明による燃料電池システムの制御方法は、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度が一定以上高くならないように、アノード側とカソード側チャネルの最小温度/最大圧力条件を制限条件として設定して、目標相対湿度が過剰に高くなるのを防止する。
【0055】
また、本発明による燃料電池システムの制御方法の目標相対湿度を導出する段階(S200、S210、S220、S230、S240)では、補正されたチャネルの温度/圧力条件がそれぞれ最小温度/最大圧力条件の範囲に該当しない場合、アノードとカソード層チャネルの目標相対湿度を補正し、補正されたチャネルの目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件を再導出し(S240)、運転条件を導出する段階では、再導出された目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出することができる(S300)。
【0056】
これは、反応部の予想相対湿度が反応部の目標相対湿度を満たすようにチャネルの目標温度/圧力条件を補正する場合にも、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度が一定以上高くならないようにするために、補正されたチャネルの目標温度/圧力条件に上記と同じ制限条件を設定して、目標相対湿度が過剰に高くなるのを防止する。
【0057】
すなわち、触媒層を含んでいる反応部の目標相対湿度が過剰に高くなるのを防止することにより、触媒層界面の相対湿度に比例して発生する電圧降下を一定範囲の内で緩和することができる。
【0058】
一方、本発明による燃料電池システムの制御方法の空気供給部を制御する段階(S500、S510、S511、S520、S530)は、測定された出力電圧を目標出力電圧基準と比較し(S500)、その比較結果に基づいて、燃料電池の空気供給部を制御して空気極圧力インパルスを形成する段階(S510)、及び形成された空気極圧力インパルスを燃料電池に注入する段階(S520)で構成されることができる。
【0059】
前述したように、燃料電池システムを長時間正常状態で運転させると、燃料電池の単位セル内に凝縮水が蓄積される。そして、凝縮水が過剰に蓄積されたフラッディング(Flooding)状態では、燃料電池の出力電圧が目標出力電圧基準よりも低く測定される。よって、本発明による燃料電池システムの制御方法は、燃料電池の出力電圧を測定し、出力電圧が目標出力電圧基準範囲を満たすか否かを判断する(S500)。
【0060】
具体的には、出力電圧が目標出力電圧基準範囲を満たす場合、燃料電池の正常状態運転を維持する。出力電圧が目標出力電圧基準範囲から外れる場合、フラッディング状態に該当するので、過剰に蓄積された凝縮水を除去するために制御部が燃料電池の空気供給部を制御する。
【0061】
一方、凝縮水が過剰に蓄積されたフラッディング状態について、図3を参照して考察する。図3は本発明の一実施形態による燃料電池システムの制御方法で空気極圧力インパルスを注入する前の燃料電池スタックの内部状態を示す図である。
【0062】
燃料電池内部の気体拡散層は、一般に多数の微細気孔層が形成されており、微細気孔層は、触媒層から発生した水を燃料電池のセルの外へ排出する役割を果たす。このような微細気孔層は、図3に示すように、制限された電気化学反応領域(Closed Pore、CP)、活性化された電気化学反応領域(Transport Pore、TP)、部分的に制限された電気化学反応領域(Dead-end Pore、DP)に区分され得る。燃料電池の運転中に発生する凝縮水は、部分的に制限された電気化学反応領域DPに蓄積される。
【0063】
このように蓄積された凝縮水は、空気供給部を介して高圧の空気を注入することにより、部分的に制限された電気化学反応領域DPから、活性化された電気化学反応領域TPへ排出され、高圧空気の流れに沿って一緒に流れることにより除去され得る。
【0064】
これについて具体的に考察すると、制御部は、空気供給部で一定の周期で高圧空気が形成されるようにインパルスを発生させる。すなわち、制御部は、空気極圧力インパルスを形成し、形成されたインパルスを燃料電池の内部に注入することにより、過剰に蓄積された凝縮水を除去する。
【0065】
一方、形成された空気極圧力インパルスを燃料電池に注入する段階(S520)の後は、空気極圧力インパルスの注入による出力電圧を測定し、目標出力電圧基準と比較して、その比較結果に基づいて、燃料電池の空気供給部を制御して空気極圧力インパルスを補正する段階(S530)をさらに含むことができる。
【0066】
すなわち、形成された空気極圧力インパルスを燃料電池に注入した後、これにより変更される出力電圧を測定して目標出力電圧基準範囲を満たすか否かを判断することにより、過剰に蓄積された凝縮水の適切な排出か否かを確認することができる。
【0067】
具体的には、空気極圧力インパルスの注入による出力電圧が目標出力電圧基準範囲を満たす場合、それ以上空気極圧力インパルスを形成して注入する必要がないので、制御部は、燃料電池の空気供給部の制御を中断し、燃料電池の正常状態運転を維持する。空気極圧力インパルスの注入による出力電圧が目標出力電圧基準範囲を外れる場合、依然としてフラッディング状態に該当するので、過剰に蓄積された凝縮水を除去するために、制御部は、燃料電池の空気供給部を制御し続ける。
【0068】
制御部は、空気極圧力インパルスを補正してその圧力値を増加させ、補正された高圧の空気極圧力インパルスを燃料電池に注入して、先に注入された空気極圧力インパルスによって排出されずに残っている凝縮水をさらに除去する。
【0069】
このとき、制御部で測定される空気極圧力インパルスの注入による出力電圧は、所定の時間ごとに測定される区間電圧であり得る。
【0070】
車両の走行中に測定される出力電圧値は、一般に波長の形で測定されるので、瞬間毎に測定される電圧値の偏差が発生する。したがって、一定の時間間隔を区間として設定して区間電圧を測定する必要がある。すなわち、測定された区間電圧の平均電圧を出力電圧にして目標出力電圧基準と比較し、出力電圧が目標出力電圧基準範囲を満たすか否かを判断する。
【0071】
このように区間電圧を出力電圧として活用する場合、出力電圧の偏差による誤差を減少させる効果がある。すなわち、より精密に測定された出力電圧を目標出力電圧基準との比較に活用することにより、本発明による燃料電池システムの制御方法の信頼性を向上させることができる。
【0072】
一方、空気極圧力インパルスを形成する段階(S510)の後は、形成された空気極インパルス圧力値と所定の限界圧力値とを比較して、その比較結果に基づいて、空気極圧力インパルスを燃料電池に注入するか否かを決定する段階(S511)をさらに含むことができる。
【0073】
燃料電池において、水分は、水素イオンの伝達媒体として機能する。よって、燃料電池の作動のためには、必ず適切な水分が必要であるので、凝縮水が溢れるフラッディング現象だけでなく、凝縮水が不足しすぎるドライアウト(Dry-out)現象の場合にも、燃料電池の性能低下が発生する。
【0074】
このようなドライアウト現象の発生を防止するために、本発明による燃料電池システムの制御方法は、燃料電池の内部に注入される空気極圧力インパルスを所定の限界インパルス圧力と比較して、空気極圧力インパルスを追加注入するか否かを決定する(S511)のである。
【0075】
具体的には、燃料電池の内部に注入される空気極圧力インパルスが所定の限界インパルス圧力に達した場合、空気極圧力インパルスの注入を中断することにより、凝縮水が不足しすぎるドライアウト現象を防止する。燃料電池の内部に注入される空気極圧力インパルスが所定の限界インパルス圧力に達していない場合、依然としてフラッディング状態に該当するので、制御部は、空気極圧力インパルスを補正してその圧力値を増加させ、補正された高圧の空気極圧力インパルスを燃料電池に注入することにより、先に注入された空気極圧力インパルスによって排出されずに残っている凝縮水をさらに除去する。
【0076】
このように空気極圧力インパルスの注入有無を決定することにより、燃料電池の内部に発生する凝縮水が適切に調節されて、フラッディング現象及びドライアウト現象の両方を防止することができる。
【0077】
さらに、本発明による燃料電池システムの制御方法は、形成された空気極インパルス圧力値が所定の限界圧力値に達した場合、制御部で目標出力電圧基準による電流密度を補正することができる。
【0078】
燃料電池の内部に注入される空気極圧力インパルスが所定の限界インパルス圧力に達した場合、空気極圧力インパルスの注入を中断しても、ドライアウト現象が発生する可能性がある。また、ドライアウト現象が発生しなくても、燃料電池の内部の相対湿度が低くなった状態であるので、目標出力電圧基準を満たすためには、再び適切な相対湿度に調節される必要性がある。
【0079】
一方、空気極圧力インパルスを注入する場合、注入直後に燃料電池の内部のカソード側空気入口部の電流密度が一時的に上昇する。よって、空気極圧力インパルスを注入する段階を1回~数回行った後、再びアノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度を調節するためには、目標出力電圧基準による電流密度を再設定する必要性がある。
【0080】
そこで、本発明に係る燃料電池システムの制御方法は、形成された空気極インパルス圧力値が所定の限界圧力値に達した場合、制御部で目標出力電圧基準による電流密度を補正することにより、アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度を再び適切な相対湿度に調節するのである。
【0081】
図4は、本発明の一実施形態による燃料電池システム及びその制御方法による運転条件を適用して電圧降下が改善されることを示すグラフであり、図5は、本発明の一実施形態による燃料電池システムを示す図である。
【0082】
図5を参照すると、本発明による燃料電池システムは、アノード側チャネル部110、カソード側チャネル部120、及び両チャネル部の間の反応部130で構成された燃料電池スタック100と、燃料電池スタックのアノード側チャネル部110に水素を供給する水素供給部200と、燃料電池スタックのカソード側チャネル部120に空気を供給する空気供給部300と、燃料電池の目標相対湿度及び目標相対湿度による運転条件を導出し、運転条件に応じて燃料電池の運転を制御し、燃料電池の出力電圧を測定し、出力電圧が目標出力電圧基準未満である場合には、インパルスを形成して燃料電池に空気を供給するように燃料電池の空気供給部300を制御する制御部400と、を含むことができる。
【0083】
ここで、反応部130とは、燃料電池スタック100における、アノード側チャネル110及びカソード側チャネル120を除いた残りの部分を意味するのは、前述した通りである。燃料電池スタック100のアノード側チャネル部110には水素供給部200から水素ガスが供給され、燃料電池スタック100のカソード側チャネル部120には空気供給部300から空気が供給される。制御部400は、燃料電池の目標相対湿度及び目標相対湿度による運転条件を導出し、導出された運転条件に応じて燃料電池の運転を制御し、燃料電池の運転時に発生する出力電圧を測定し、出力電圧が目標出力電圧基準未満である場合、空気極圧力インパルスを形成して燃料電池の内部に注入されるように空気供給部300を制御する。制御部400で行われる目標相対湿度及び運転条件の導出、運転条件に応じた燃料電池の運転制御、出力電圧の測定、及び空気供給部の制御方法は、それぞれ前述した通りである。
【0084】
一方、図4を参照すると、時間経過に伴ってセル当たりの電圧が減少する傾向が発生することが分かる。これは、燃料電池の長期間の運転時に凝縮水が燃料電池の内部に蓄積されることにより、電圧降下が発生するためである。
【0085】
このとき、本発明による運転条件を適用した場合10と、本発明による運転条件を適用していない場合20とを比較すると、運転条件を適用した場合に電圧降下が少なく発生することが分かる。
【0086】
結局、本発明の一実施形態による燃料電池システム及びその制御方法による運転条件を適用するとき、燃料電池システムの長時間の正常状態運転中に発生する電圧降下が改善され、これにより出力を回復して燃料電池システムの性能劣化を緩和するという効果がある。
【0087】
本発明は、特定の実施形態に関連して図示及び説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想から逸脱することなく、本発明に様々な改良及び変更を加え得ることは、当業分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【符号の説明】
【0088】
10 運転条件制御適用時の時間による電圧降下曲線
20 運転条件制御未適用時の時間による電圧降下曲線
100 燃料電池スタック
110 アノード側チャネル部
120 カソード側チャネル部
130 反応部
200 水素供給部
300 空気供給部
400 制御部
A 反応部の相対湿度分布測定領域
CP 制限された電気化学反応領域
DP 部分的に制限された電気化学反応領域
TP 活性化された電気化学反応領域
S100 目標出力電圧基準による電流密度を設定する段階
S200 アノード側とカソード側チャネルの目標相対湿度を導出する段階
S210 チャネルの目標相対湿度によるチャネルの目標温度/圧力条件を導出する段階
S220 反応部の予想相対湿度を導出する段階
S230 反応部の予想相対湿度が反応部の目標相対湿度を満たすようにチャネルの目標温度/圧力条件を補正する段階
S240 チャネルの目標温度/圧力条件が最小温度/最大圧力条件の範囲に該当するか否かを判断する段階
S300 チャネルの目標温度/圧力条件に応じた燃料電池の運転条件を導出する段階
S400 運転条件に応じて燃料電池の運転を制御し、燃料電池の出力電圧を測定する段階
S500 測定された出力電圧を目標出力電圧基準と比較する段階
S510 空気極圧力インパルスを形成する段階
S511 形成された空気極インパルス圧力値が所定の限界圧力値に達したか否かを判断する段階
S520 形成された空気極圧力インパルスを燃料電池に注入する段階
S530 空気極圧力インパルスの注入による出力電圧を測定する段階
図1
図2
図3
図4
図5