(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103173
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】MSLN標的三重特異性タンパク質及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20230719BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230719BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230719BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/30
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022202550
(22)【出願日】2022-12-19
(62)【分割の表示】P 2019562565の分割
【原出願日】2018-05-11
(31)【優先権主張番号】62/505,747
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/657,434
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517403846
【氏名又は名称】ハープーン セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェスチェ,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】レモン,ブライアン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】オースティン,リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ドゥブリッジ,ロバート ビー.
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】メソテリン(MSLN)を発現する癌の処置方法を提供する。
【解決手段】CD3に結合するドメイン、半減期延長ドメイン、及びMSLNに結合するドメインを含むMSLN標的三重特異性タンパク質が提供される。また、そのようなMSLN標的三重特異性タンパク質の医薬組成物、同様に、前記MSLN標的三重特異性タンパク質を作成するための核酸、組み換え発現ベクター、及び宿主細胞も提供される。また、疾患、疾病、及び障害の予防及び/又は処置において、開示されたMSLN標的三重特異性タンパク質を使用する方法も開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソテリン(MSLN)結合三重特異性タンパク質であって、
(a)ヒトCD3に特異的に結合する第1のドメイン(A);
(b)半減期拡張ドメインである第2のドメイン(B);及び
(c)MSLNに特異的に結合する第3のドメイン(C)を含み、
ドメインは、H2N-(A)-(C)-(B)-COOH、H2N-(B)-(A)-(C)-COOH、H2N-(C)-(B)-(A)-COOHの順で、又はリンカーL1及びL2によって結合される、メソテリン(MSLN)結合三重特異性タンパク質。
【請求項2】
前記第1のドメインは可変軽ドメイン及び可変重ドメインを含み、その各々がヒトCD3に特異的に結合することができる、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項3】
前記第1のドメインはヒト化される、又はヒトである、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項4】
前記第2のドメインはアルブミンに結合する、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項5】
前記第2のドメインは、scFv、可変重ドメイン(VH)、可変軽ドメイン(VL)、ペプチド、リガンド、又は小分子を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項6】
前記第3のドメインは、MSLNに特異的に結合するVHHドメイン、scFv、VHドメイン、VLドメイン、非Igドメイン、リガンド、ノッチン、又は小分子実体を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項7】
前記第3のドメインはVHHドメインを含む、ことを特徴とする請求項6に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項8】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:41、42、43、又は44と同一の配列、或いはSEQ ID NO:41、42、43、又は44に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、1つ以上の保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項7に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項9】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:41と同一の配列、或いはSEQ ID NO:41に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項8に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項10】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:42と同一の配列、或いはSEQ ID NO:42に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項8に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項11】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:43と同一の配列、或いはSEQ ID NO:43に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている、ことを特徴とする請求項8に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項12】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:44と同一の配列、或いはSEQ ID NO:44に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている、ことを特徴とする請求項8に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項13】
前記VHHドメインは、(i)SEQ ID NO:41に相当するアミノ酸の伸張部;(ii)SEQ ID NO:42に相当するアミノ酸の伸張部;(iii)SEQ ID NO:43に相当するアミノ酸の伸張部、及び(iv)SEQ ID NO:44に相当するアミノ酸の伸張部を含む、ことを特徴とする請求項7に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項14】
前記VHHドメインは以下の式を含み:
f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4
式中、r1は、SEQ ID NO:51と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;r2は、SEQ ID NO:52と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びr3は、SEQ ID NO:53と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びここで、f1、f2、f3、及びf4はフレームワーク残基である
ことを特徴とする請求項7に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項15】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:1-29から成る群から選択された配列に少なくとも80%同一の配列を含む、ことを特徴とする請求項7に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項16】
前記第3のドメインは、SEQ ID NO:1-29から成る群から選択された配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項17】
前記第3のドメインはヒト化VHHドメインである、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項18】
前記ヒト化VHHドメインは、SEQ ID NO:45、46、47、48、49、又は50と同一の配列、或いはSEQ ID NO:45、46、47、48、49、又は50に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、1つ以上の保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項17に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項19】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:45と同一の配列、或いはSEQ ID NO:45に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項18に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項20】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:46と同一の配列、或いはSEQ ID NO:46に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項18に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項21】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:47と同一の配列、或いはSEQ ID NO:47に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている、ことを特徴とする請求項18に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項22】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:48と同一の配列、或いはSEQ ID NO:48に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている、ことを特徴とする請求項18に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項23】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:49と同一の配列、或いはSEQ ID NO:49に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている、ことを特徴とする請求項18に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項24】
前記VHHドメインは、SEQ ID NO:50と同一の配列、或いはSEQ ID NO:50に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている、ことを特徴とする請求項18に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項25】
前記VHHドメインは、(i)SEQ ID NO:45に相当するアミノ酸の伸張部、(ii)SEQ ID NO:46に相当するアミノ酸の伸張部、(iii)SEQ ID NO:47に相当するアミノ酸の伸張部、(iv)SEQ ID NO:48に相当するアミノ酸の伸張部、(v)SEQ ID NO:49に相当するアミノ酸の伸張部、及び(vi)SEQ ID NO:50に相当するアミノ酸の伸張部を含む、ことを特徴とする請求項18に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項26】
前記ヒト化VHHドメインは以下の式を含み:
f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4
式中、r1は、SEQ ID NO:54と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;r2は、SEQ ID NO:55と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びr3は、SEQ ID NO:56と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びここで、f1、f2、f3、及びf4はフレームワーク残基である
ことを特徴とする請求項17に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項27】
前記第3のドメインは、SEQ ID NO:30-40及び102-105から成る群から選択された配列を含む、ことを特徴とする請求項17乃至26の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項28】
前記第3のドメインは、SEQ ID NO:57として明記される配列を含むヒトメソテリンタンパク質に結合する、ことを特徴とする請求項1乃至27の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項29】
前記第3のドメインはメソテリンのエピトープに結合し、前記エピトープは、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基296-390を含む領域I、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基391-486を含む領域II、又はSEQ ID NO:57のアミノ酸残基487-598を含む領域IIIに位置する、ことを特徴とする請求項1乃至28の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項30】
リンカーL1及びL2はそれぞれ独立して、(GS)n(SEQ ID NO:87)、(GGS)n(SEQ ID NO:88)、(GGGS)n(SEQ ID NO:89)、(GGSG)n(SEQ ID NO:90)、(GGSGG)n(SEQ ID NO:91)、或いは(GGGGS)n(SEQ ID NO:92)から選択され、ここでnは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項31】
リンカーL1とL2はそれぞれ独立して(GGGGS)4(SEQ ID NO:95)又は(GGGGS)3(SEQ ID NO:96)である、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項32】
前記ドメインは、H2N-(C)-(B)-(A)-COOHの順で結合される、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項33】
前記タンパク質は約80kDa未満である、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項34】
前記タンパク質は約50~約75kDaである、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項35】
前記タンパク質は約60kDa未満である、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項36】
前記タンパク質は少なくとも約50時間の消失半減期を持つ、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項37】
前記タンパク質は少なくとも約100時間の消失半減期を持つ、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項38】
前記タンパク質は、同じMSLNのIgGと比較して増加した組織透過性を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項39】
前記タンパク質は、SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101から成る群から選択された配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項40】
(i)請求項1乃至39の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質、及び(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項41】
請求項1乃至39の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質の産生のためのプロセスであって、メソテリン結合三重特異性タンパク質の発現を可能とする条件下で請求項1乃至39の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターにより形質転換又はトランスフェクトされる宿主を培養する工程、及び、培養物から産生されたタンパク質を回収及び精製する工程を含む、プロセス。
【請求項42】
増殖性疾患又は腫瘍疾患の処置又は改善のための方法であって、必要とする被験体への請求項1乃至39の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質の投与を含む、方法。
【請求項43】
被験体はヒトである、ことを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記方法は、請求項1乃至39の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質と組み合わせた薬剤の投与を更に含む、ことを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞に選択的に結合する、ことを特徴とする請求項42乃至44の何れか1つに記載の方法。
【請求項46】
前記メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞のT細胞死滅を媒介する、ことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記腫瘍疾患は固形腫瘍疾患である、ことを特徴とする請求項42乃至46の何れか1つに記載の方法。
【請求項48】
前記固形腫瘍疾患は、中皮腫、肺癌、胃癌、卵巣癌、又は三種陰性乳癌を含む、ことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記固形腫瘍疾患は転移性である、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101から成る群から選択された配列を含むメソテリン結合三重特異性タンパク質の投与を含む、増殖性疾患又は腫瘍疾患の処置又は改善のための方法。
【請求項51】
前記メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞に選択的に結合する、ことを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞のT細胞死滅を導く、ことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記腫瘍疾患は固形腫瘍疾患である、ことを特徴とする請求項50乃至52の何れか1つに記載の方法。
【請求項54】
前記固形腫瘍疾患は、中皮腫、肺癌、胃癌、卵巣癌、又は三種陰性乳癌を含む、ことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記固形腫瘍疾患は転移性である、ことを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項56】
SEQ ID NO:98に明記されるような配列を含むメソテリン結合三重特異性タンパク質の投与を含む、増殖性疾患又は腫瘍疾患の処置又は改善のための方法。
【請求項57】
最大10mg/kgの投与量でメソテリン結合三重特異性タンパク質を投与する工程を含む、ことを特徴とする請求項50乃至56の何れか1つに記載の方法。
【請求項58】
前記タンパク質は週に1回投与される、ことを特徴とする請求項50乃至57の何れか1つに記載の方法。
【請求項59】
前記タンパク質は週に2回投与される、ことを特徴とする請求項50乃至57の何れか1つに記載の方法。
【請求項60】
前記タンパク質は隔週で投与される、ことを特徴とする請求項50乃至57の何れか1つに記載の方法。
【請求項61】
前記タンパク質は三週ごとに投与される、ことを特徴とする請求項50乃至57の何れか1つに記載の方法。
【請求項62】
SEQ ID NO:98に明記されるような配列を含む、メソテリン(MSLN)結合三重特異性タンパク質。
【請求項63】
メソテリン(MSLN)結合三重特異性タンパク質であって、
(a)ヒトCD3に特異的に結合する第1のドメイン(A);
(b)半減期拡張ドメインである第2のドメイン(B);及び
(c)MSLNに特異的に結合する第3のドメイン(C)を含み、
ドメインは、H2N-(A)-(C)-(B)-COOH、H2N-(B)-(A)-(C)-COOH、H2N-(C)-(B)-(A)-COOHの順で、又はリンカーL1及びL2によって結合され、且つ、前記第3のドメインはSEQ ID NO:51-56及び106-222から選択される1つ以上のCDR配列を含む、メソテリン(MSLN)結合三重特異性タンパク質。
【請求項64】
前記第3のドメインは、SEQ ID NO:51、54、及び106-144の何れか1つに明記される配列を含むCDR1を備える、ことを特徴とする請求項63に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項65】
前記第3のドメインは、SEQ ID NO:52、55、及び145-183の何れか1つに明記される配列を含むCDR2を備える、ことを特徴とする請求項63又は64に記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項66】
前記第3のドメインは、SEQ ID NO:53、56、及び184-222の何れか1つに明記される配列を含むCDR2を備える、ことを特徴とする請求項63乃至65の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項67】
前記第3のドメインは、SEQ ID NO:262-300の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域1(f1)を含む、ことを特徴とする請求項63乃至66の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項68】
前記第3のドメインは、SEQ ID NO:301-339の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域(f2)を含む、ことを特徴とする請求項63乃至67の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項69】
前記第3のドメインは、SEQ ID NO:340-378の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域(f3)を含む、ことを特徴とする請求項63乃至68の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項70】
前記タンパク質は、SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101から成る群から選択された配列を含む、ことを特徴とする請求項63乃至69の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項71】
前記タンパク質は、SEQ ID NO:98に明記されるような配列を含む、ことを特徴とする請求項63乃至70の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質。
【請求項72】
(i)請求項63乃至71の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質、及び(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項73】
請求項63乃至71の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質の産生のためのプロセスであって、メソテリン結合三重特異性タンパク質の発現を可能とする条件下で請求項63乃至71の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターにより形質転換又はトランスフェクトされる宿主を培養する工程、及び、培養物から産生されたタンパク質を回収及び精製する工程を含む、プロセス。
【請求項74】
増殖性疾患又は腫瘍疾患の処置又は改善のための方法であって、必要とする被験体への請求項63乃至71の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質の投与を含む、方法。
【請求項75】
被験体はヒトである、ことを特徴とする請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記方法は、請求項63乃至71の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質と組み合わせた薬剤の投与を更に含む、ことを特徴とする請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞に選択的に結合する、ことを特徴とする請求項74乃至76の何れか1つに記載の方法。
【請求項78】
前記メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞のT細胞死滅を媒介する、ことを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記腫瘍疾患は固形腫瘍疾患である、ことを特徴とする請求項74乃至78の何れか1つに記載の方法。
【請求項80】
前記固形腫瘍疾患は、中皮腫、肺癌、胃癌、卵巣癌、又は三種陰性乳癌を含む、ことを特徴とする請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記固形腫瘍疾患は転移性である、ことを特徴とする請求項80に記載の方法。
【請求項82】
増殖性疾患又は腫瘍疾患の処置又は改善のための方法であって、請求項63乃至71の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質の投与を含む、方法。
【請求項83】
前記メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞に選択的に結合する、ことを特徴とする請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞のT細胞死滅を導く、ことを特徴とする請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記腫瘍疾患は固形腫瘍疾患である、ことを特徴とする請求項82乃至84の何れか1つに記載の方法。
【請求項86】
前記固形腫瘍疾患は、中皮腫、肺癌、胃癌、卵巣癌、又は三種陰性乳癌を含む、ことを特徴とする請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記固形腫瘍疾患は転移性である、ことを特徴とする請求項86に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、各々が全体において参照により本明細書に組み込まれている、2017年5月12日出願の米国仮特許出願62/505,747号及び2018年4月13日出願の米国仮特許出願62/657,434号の利益を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によって本明細書に組み込まれる配列表を含んでいる。2018年5月11日に作成された上記のASCIIのコピーは、47517-720_601_SL.txtのファイル名であり、293,251バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
個々の細胞又は特定細胞型の選択的な破壊は多くの場合、様々な臨床設定において望まれる。例えば、腫瘍細胞を特異的に破壊しつつ、健康な細胞と組織を無傷のまま損傷を与えずに残すことが癌治療の主要な目的である。そのような1つの方法は、ナチュラルキラー(NK)細胞又は細胞毒性Tリンパ球(CTL)などの免疫エフェクター細胞に、腫瘍細胞を攻撃および破壊させるために、腫瘍に対する免疫反応を引き起こすことによるものである。
【0004】
メソテリン(MSLN)は、GPI結合腫瘍抗原であり、MSLNは、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、三種陰性乳癌、及び中皮腫で過剰発現される。MSLNの正常組織発現は、胸膜、心膜、及び腹膜腔の内側にある、単細胞の中皮層に制限される。MSLNの過剰発現は、肺腺癌及び三種陰性乳癌における予後不良に関連付けられる。MSLNは、癌抗原として、抗毒素、ワクチン、抗体薬物複合体、及びCART細胞を含む多数の様式に対して使用されている。臨床効果の初期の兆候は、標的としてMSLNを検証したが、効果が改善された治療がMSLNを発現する癌の処置に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態はメソテリン結合三重特異性タンパク質を提供し、該メソテリン結合三重特異性タンパク質は、(a)ヒトCD3に特異的に結合する第1のドメイン(A);(b)半減期拡張ドメインである第2のドメイン(B);及び(c)MSLNに特異的に結合する第3のドメイン(C)を含み、ドメインはH2N-(A)-(C)-(B)-COOH、H2N-(B)-(A)-(C)-COOH、H2N-(C)-(B)-(A)-COOHの順で、又はリンカーL1及びL2によって結合される。幾つかの実施形態において、第1のドメインは、各々がヒトCD3に特異的に結合することができる、可変軽鎖と可変重鎖のドメインを含む。幾つかの実施形態において、第1のドメインはヒト化されるか、又はヒトである。幾つかの実施形態において、第2のドメインはアルブミンに結合する。幾つかの実施形態において、第2のドメインはscFv、可変重ドメイン(VH)、可変軽ドメイン(VL)、ペプチド、リガンド、又は小分子を含む。幾つかの実施形態において、第3のドメインは、MSLNに特異的に結合するscFv、VHドメイン、VLドメイン、非Igドメイン、リガンド、ノッチン、又は小分子実体を含む。幾つかの実施形態において、第3のドメインはVHHドメインを含む。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:41、42、43、又は44と同一の配列、或いはSEQ ID NO:41、42、43、又は44に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、1つ以上の保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:41と同一の配列、或いはSEQ ID NO:41に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:42と同一の配列、或いはSEQ ID NO:42に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:43と同一の配列、或いはSEQ ID NO:43に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:44と同一の配列、或いはSEQ ID NO:44に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、(i)SEQ ID NO:41に相当するアミノ酸の伸張部;(ii)SEQ ID NO:42に相当するアミノ酸の伸張部;(iii)SEQ ID NO:43に相当するアミノ酸の伸張部、及び(iv)SEQ ID NO:44に相当するアミノ酸の伸張部を含む。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは以下の式を含み:
f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4
式中、r1は、SEQ ID NO:51と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;r2は、SEQ ID NO:52と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びr3は、SEQ ID NO:53と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びここで、f1、f2、f3、及びf4はフレームワーク残基である。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:1-29から成る群から選択された配列に少なくとも80%同一の配列を含む。幾つかの実施形態において、第3のドメインは、SEQ ID NO:1-29から成る群から選択された配列を含む。幾つかの実施形態において、第3のドメインはヒト化VHHドメインである。幾つかの実施形態において、前記ヒト化VHHドメインは、SEQ ID NO:45、46、47、48、49、又は50と同一の配列、或いはSEQ ID NO:45、46、47、48、49、又は50に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、1つ以上の保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:45と同一の配列、或いはSEQ ID NO:45に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:46と同一の配列、或いはSEQ ID NO:46に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:47と同一の配列、或いはSEQ ID NO:47に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:48と同一の配列、或いはSEQ ID NO:48に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:49と同一の配列、或いはSEQ ID NO:49に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、SEQ ID NO:50と同一の配列、或いはSEQ ID NO:50に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存ドメインを備えている。幾つかの実施形態において、前記VHHドメインは、(i)SEQ ID NO:45に相当するアミノ酸の伸張部、(ii)SEQ ID NO:46に相当するアミノ酸の伸張部、(iii)SEQ ID NO:47に相当するアミノ酸の伸張部、(iv)SEQ ID NO:48に相当するアミノ酸の伸張部、(v)SEQ ID NO:49に相当するアミノ酸の伸張部、及び(vi)SEQ ID NO:50に相当するアミノ酸の伸張部を含む。幾つかの実施形態において、前記ヒト化VHHドメインは以下の式を含み:
f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4
式中、r1は、SEQ ID NO:54と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;r2は、SEQ ID NO:55と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びr3は、SEQ ID NO:56と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びここで、f1、f2、f3、及びf4はフレームワーク残基である。幾つかの実施形態において、第3のドメインは、SEQ ID NO:30-40及び102-105からなる群から選択された配列を含む。幾つかの実施形態において、第3のドメインは、SEQ ID NO:57として明記される配列を含むヒトメソテリンタンパク質に結合する。幾つかの実施形態において、第3のドメインはメソテリンのエピトープに結合し、前記エピトープは、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基296-390を含む領域I、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基391-486を含む領域II、又はSEQ ID NO:57のアミノ酸残基487-598を含む領域IIIに位置する。幾つかの実施形態において、リンカーL1及びL2はそれぞれ独立して、(GS)n(SEQ ID NO:87)、(GGS)n(SEQ ID NO:88)、(GGGS)n(SEQ ID NO:89)、(GGSG)n(SEQ ID NO:90)、(GGSGG)n(SEQ ID NO:91)、或いは(GGGGS)n(SEQ ID NO:92)から選択され、ここでnは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。幾つかの実施形態において、リンカーL1とL2はそれぞれ独立して、(GGGGS)4(SEQ ID NO:95)又は(GGGGS)3(SEQ ID NO:96)である。幾つかの実施形態において、ドメインは、H2N-(C)-(B)-(A)-COOHの順で結合される。幾つかの実施形態において、タンパク質は約80kDa未満である。幾つかの実施形態において、タンパク質は約50~約75kDaである。幾つかの実施形態において、タンパク質は約60kDa未満である。幾つかの実施形態において、タンパク質は少なくとも約50時間の消失半減期を有する。幾つかの実施形態において、タンパク質は少なくとも約100時間の消失半減期を有する。幾つかの実施形態において、タンパク質は、同じMSLNへのIgGと比較して、組織への浸透性を増加させた。幾つかの実施形態において、タンパク質は、SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101からなる群から選択された配列を含む。一実施形態は、SEQ ID NO:98に明記されるような配列を含む、メソテリン結合三重特異性タンパク質を提供する。一実施形態はメソテリン結合三重特異性タンパク質を提供し、前記タンパク質は:(a)ヒトCD3に特異的に結合する第1のドメイン(A);(b)半減期拡張ドメインである第2のドメイン(B);及び(c)MSLNに特異的に結合する第3のドメイン(C)を含み、ドメインは、H2N-(A)-(C)-(B)-COOH、H2N-(B)-(A)-(C)-COOH、H2N-(C)-(B)-(A)-COOHの順で、又はリンカーL1及びL2によって結合され、且つ、前記第3のドメインは、SEQ ID NO:51-56及び106-222から選択される1つ以上のCDR配列を含む、第3のドメイン(C)を含む。幾つかの実施形態において、前記第3のドメインは、SEQ ID NO:51、54、及び63-101の何れか1つに明記されるような配列を含むCDR1を備える。幾つかの実施形態において、前記第3のドメインは、SEQ ID NO:52、55、及び145-183の何れか1つに明記されるような配列を含むCDR2を備える。幾つかの実施形態において、前記第3のドメインは、SEQ ID NO:53、56、及び184-222の何れか1つに明記されるような配列を含むCDR2を備える。幾つかの実施形態において、前記第3のドメインは、SEQ ID NO:262-300の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域1(f1)を含む。幾つかの実施形態において、前記第3のドメインは、SEQ ID NO:301-339の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域(f2)を含む。幾つかの実施形態において、前記第3のドメインは、SEQ ID NO:340-378の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域(f3)を含む。幾つかの実施形態において、タンパク質は、SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101から成る群から選択された配列を含む。幾つかの実施形態において、タンパク質は、SEQ ID NO:98に明記されるような配列を含む。
【0006】
一実施形態は、(i)上記実施形態の何れか1つに記載のMSLN結合三重特異性タンパク質、及び(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0007】
一実施形態は、上記実施形態の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質の産生のためのプロセスを提供し、該プロセスは、メソテリン結合三重特異性タンパク質の発現を可能とする条件下で上記実施形態の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターにより形質転換又はトランスフェクトされる宿主を培養する工程、及び、培養物から産生されたタンパク質を回収及び精製する工程を含む。
【0008】
一実施形態は、増殖性疾患又は腫瘍疾患の処置又は改善のための方法を提供し、該方法は、必要とする被験体への上記実施形態の何れか1つに記載のメソテリン結合三重特異性タンパク質の投与を含む。幾つかの実施形態において、被験体はヒトである。幾つかの実施形態において、前記方法は更に、上記実施形態の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質と組み合わせた薬剤の投与を含む。幾つかの実施形態において、メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞に選択的に結合する。幾つかの実施形態において、メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞のT細胞死滅を媒介する。幾つかの実施形態において、腫瘍疾患は固形腫瘍疾患を含む。幾つかの実施形態において、前記固形腫瘍疾患は、中皮腫、肺癌、胃癌、卵巣癌、又は三種陰性乳癌を含む。幾つかの実施形態において、固形腫瘍疾患は転移性である。
【0009】
一実施形態は、SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101から成る群から選択された配列を含むメソテリン結合三重特異性タンパク質の投与を含む、増殖性疾患又は腫瘍疾患の処置又は改善のための方法を提供する。幾つかの実施形態において、メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞に選択的に結合する。幾つかの実施形態において、メソテリン結合三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞のT細胞死滅を導く。幾つかの実施形態において、腫瘍疾患は固形腫瘍疾患を含む。幾つかの実施形態において、前記固形腫瘍疾患は、中皮腫、肺癌、胃癌、卵巣癌、又は三種陰性乳癌を含む。幾つかの実施形態において、固形腫瘍疾患は転移性である。
【0010】
一実施形態は、SEQ ID NO:98に明記されるような配列を含むメソテリン結合三重特異性タンパク質の投与を含む、増殖性疾患又は腫瘍疾患の処置又は改善のための方法を提供する。幾つかの実施形態において、前記方法は、最大10mg/kgの投与量でメソテリン結合三重特異性タンパク質を投与する工程を含む。幾つかの実施形態では、タンパク質は週に1回投与される。幾つかの実施形態において、タンパク質は週に2回投与される。幾つかの実施形態において、タンパク質は隔週で投与される。幾つかの実施形態において、タンパク質は3週ごとに投与される。
【0011】
引用による組み込み
本明細書で言及される出願公開、特許、及び特許出願は全て、あたかも個々の出願公開、特許、或いは特許出願がそれぞれ参照により組み込まれるように具体的且つ個々に指示されるように同じ程度にまで、参照により本明細書に組込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の新規な特徴は、特に、添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる例示的実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによって得られるであろう。
【
図1】典型的なMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の略図であり、該タンパク質は抗CD3ε単鎖可変フラグメント(scFv)と抗ALB可変重鎖領域を含む不変のコア要素と、VH、scFv、非Ig結合剤、又はリガンドであり得る抗MSLN結合ドメインとを有する。
【
図2】標的タンパク質MSLNを発現するOVCAR8細胞の死滅における典型的なTriTAC分子(2A2及び2A4)の有効性を例示する。
【
図3】本開示の典型的なTriTAC分子(MH6T TriTAC)が、5つのドナー(ドナー02;ドナー86;ドナー41;ドナー81;及びドナー35)由来のT細胞にCaov3細胞を死滅させるよう導くことができたことを示す。この図はまた、対照TriTAC分子(GFP TriTAC)が、5つのドナー(ドナー02;ドナー86;ドナー41;ドナー81;及びドナー35)由来のT細胞にCaov3細胞を死滅させるよう導くことができなかったことを示す。
【
図4】本開示の典型的なTriTAC分子(MH6T TriTAC)が、5つのドナー(ドナー02;ドナー86;ドナー41;ドナー81;及びドナー35)由来のT細胞にOVCAR3細胞を死滅させるよう導くことができたことを示す。この図はまた、対照TriTAC分子(GFP TriTAC)が、5つのドナー(ドナー02;ドナー86;ドナー41;ドナー81;及びドナー35)由来のT細胞にOVCAR3細胞を死滅させるよう導くことができなかったことを示す。
【
図5】本開示の典型的なTriTAC分子(MH6T TriTAC)が、健康なドナー由来のT細胞にMSLNを発現する細胞(OVCAR3細胞;Caov4細胞;OVCAR3細胞;及びOVCAR8細胞)を死滅させるよう導くことができたことを示す。この図はまた、MH6T TriTACが、健康なドナー由来のT細胞にMSLNを発現しない細胞(MDAPCa2b細胞;及びNCI-H510A細胞)を死滅させるよう導くことができなかったことを示す。
【
図6】本開示の典型的なTriTAC分子(MH6T TriTAC)が、カニクイザル由来のT細胞にヒト卵巣癌細胞株(OVCAR3細胞;Caov3細胞)を死滅させるよう導くことができたことを示す。この図はまた、対照TriTAC分子(GFP TriTAC)が、カニクイザル由来のT細胞にヒト卵巣癌細胞株(OVCAR3細胞;Caov3細胞)を死滅させるよう導くことができなかったことを示す。
【
図7】本開示の典型的なTriTAC分子(MH6T TriTAC)が、ヒト血清アルブミン(HSA)の存在下又は不在下で、T細胞によりNCI-H2052中皮腫細胞を発現するMSLNの死滅を導くことができたことを示す。
【
図8】本開示の典型的なTriTAC分子(MH6T TriTAC)が、MH6T TriTAC及びMSLN発現Caov4細胞の存在下で、T細胞由来のTNF-αの分泌によって実証されるように、4つの健康なドナー(ドナー2;ドナー86;ドナー35;及びドナー81)由来のT細胞を活性化することができたことを示す。
【
図9】本開示の典型的なTriTAC分子(MH6T TriTAC)が、MH6T TriTAC及びMSLN発現OVCAR8細胞の存在下で、T細胞上でのCD69発現の活性化によって実証されるように、4つの健康なドナー(ドナー2;ドナー86;ドナー35;及びドナー81)由来のT細胞を活性化することができたことを示す。
【
図10A】MSLN発現細胞株又は非MSLN発現細胞株への本開示の典型的なTriTAC分子(MH6T TriTAC)の結合を例示する。
図10Aは、MSLN発現細胞(Caov3細胞-左上パネル;Caov4細胞-右上パネル;OVCAR3細胞-左下パネル;OVCAR8細胞-右下パネル)へのMH6T TriTACの結合を示し;更に、対照のTriTAC(GFP TriTAC)の同じ細胞株への結合の欠如を示す。
【
図10B】MSLN発現細胞株又は非MSLN発現細胞株への本開示の典型的なTriTAC分子(MH6T TriTAC)の結合を例示する。
図10Bは、非MSLN発現細胞株(MDCA2b細胞-左パネル;NCI-H510A細胞-右パネル)へのMH6T TriTAC及びGFP TriTAC両方の結合の欠如を示す。
【
図11】4つの健康なドナー(ドナー2-左上パネル;ドナー35-右上パネル;ドナー41-左下パネル;ドナー81-右下パネル)由来のT細胞への、本開示の典型的なTriTAC分子(MH6T TriTAC)の結合を例示する。
【
図12】本開示の典型的なTriTAC分子(MH6T TriTAC)が、MSLN発現NCI-H292細胞を移植したNCGマウスにおける腫瘍成長を阻害することができたことを示す。
【
図13】本開示の典型的なTriTAC分子、MH6T TriTACの薬物動態プロファイルを例示する。MH6T TriTAC分子の血中濃度は、2匹のカニクイザルへの注射後の様々な時点で、プロットにおいて示される。
【
図14】本開示の2つの典型的な三重特異性分子であるTriTAC74及びTriTAC75の結合親和性測定からの結果、並びに、2つのTriTAC分子によるSKOV3及びOVCARの細胞の死滅に対するEC
50値を示す。
【
図15】本開示の2つの典型的なTriTAC分子であるTriTAC75及びTriTAC74の薬物動態プロファイルを例示する。TriTAC分子の血中濃度は、匹のカニクイザルへの注射後の様々な時点で、プロットにおいて示される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
メソテリン(MSLN)を標的とする三重特異性タンパク質、その医薬組成物の他、前記タンパク質の製造のための核酸、組み換え体発現ベクター、及び宿主細胞が本明細書に記載される。また、疾患、疾病、及び障害の予防及び/又は処置において、開示されたMSLN標的三重特異性タンパク質を使用する方法も提供される。MSLN標的三重特異性タンパク質は、CD3と同様にMSLNに特異的に結合可能であり、ヒトアルブミン(ALB)に結合するドメインなどの半減期拡張ドメインを持つ。
図1は、三重特異性MSLN結合タンパク質の1つの非限定的な例を描く。
【0014】
1つの態様において、MSLN標的三重特異性タンパク質は、CD3に特異的に結合するドメイン(A)、ヒトアルブミン(ALB)に特異的に結合するドメイン(B)、及びMSLNに特異的に結合するドメイン(C)を含む。MSLN標的三重特異性タンパク質中の3つのドメインは任意の順序で配置される。故に、MSLN標的三重特異性タンパク質のドメイン順序は以下のとおり企図される:
H2N-(A)-(B)-(C)-COOH、
H2N-(A)-(C)-(B)-COOH、
H2N-(B)-(A)-(C)-COOH、
H2N-(B)-(C)-(A)-COOH、
H2N-(C)-(B)-(A)-COOH、又は
H2N-(C)-(A)-(B)-COOH。
【0015】
幾つかの実施形態において、MSLN標的三重特異性タンパク質は、H2N-(A)-(B)-(C)-COOHのドメイン順序を有する。幾つかの実施形態において、MSLN標的三重特異性タンパク質は、H2N-(A)-(C)-(B)-COOHのドメイン順序を有する。幾つかの実施形態において、MSLN標的三重特異性タンパク質は、H2N-(B)-(A)-(C)-COOHのドメイン順序を有する。幾つかの実施形態において、MSLN標的三重特異性タンパク質は、H2N-(B)-(C)-(A)-COOHのドメイン順序を有する。幾つかの実施形態において、MSLN標的三重特異性タンパク質は、H2N-(C)-(B)-(A)-COOHのドメイン順序を有する。幾つかの実施形態において、MSLN標的三重特異性タンパク質は、H2N-(C)-(A)-(B)-COOHのドメイン順序を有する。
【0016】
幾つかの実施形態において、MSLN標的三重特異性タンパク質は中間ドメインとしてHSA結合ドメインを有し、それによりドメイン順序は、H2N-(A)-(B)-(C)-COOH又はH2N-(C)-(B)-(A)-COOHである。ALB結合ドメインが中間ドメインであるそのような実施形態において、CD3及びMSLN結合ドメインは、それぞれの標的に結合するための追加の柔軟性を与えられることが、企図される。
【0017】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、表1に記載される配列(SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101)及びそのサブ配列を有するポリペプチドを含む。幾つかの実施形態において、三重特異性抗原結合タンパク質は、表1に記載される配列(SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101)に対して少なくとも70%-95%以上の相同性を有するポリペプチドを含む。幾つかの実施形態において、三重特異性抗原結合タンパク質は、表1に記載される配列(SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101)に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%以上の相同性を有するポリペプチドを含む。
【0018】
本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、細胞傷害性T細胞を動員することによりMSLNを発現する細胞の特異的な標的化を可能にするように設計される。これは、単独の抗原に向けられた完全長の抗体を使用し且つ細胞傷害性T細胞を直接動員することができないADCC(抗体依存性細胞傷害)と比較して、有効性を改善する。対照的に、これら細胞上で特異的に発現されたCD3分子を結合することにより、MSLN標的三重特異性タンパク質は、非常に特異的な様式で細胞傷害性T細胞を、MSLNを発現する細胞と架橋することができ、それによって、T細胞の細胞毒性の可能性を標的細胞へ向けることができる。本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、TCRの一部を形成する、表面発現されたCD3タンパク質に結合することによって細胞傷害性T細胞と結合する。特定の細胞の表面上で発現されたCD3及びMSLNへの様々なMSLN三重特異性抗原結合タンパク質の同時結合は、T細胞活性化を引き起こし、特定のMSLN発現細胞の後の溶解を媒介する。故に、MSLN標的三重特異性タンパク質は強力で、特異的で、且つ効率的な標的細胞死滅を表示するように企図される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、病原性細胞(例えばMSLNを発現する腫瘍細胞)を排除するために細胞傷害性T細胞により死滅する標的細胞を刺激する。そのような実施形態の幾つかにおいて、細胞は選択的に排除され、それにより毒性の副作用の可能性が減少する。
【0019】
本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、従来のモノクローナル抗体及び他の小さな二重特異性の分子を上回る、更なる治療上の利点を与える。一般に、組み換えタンパク質医薬品の有効性は、タンパク質自体の内因性の薬物動態学に極度に依存する。こうした利点の一つは、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質が、HSAに特異的なドメインなどの半減期拡張ドメインを持っていることにより、薬物動態学的消失半減期を延長させたことである。この点で、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、幾つかの実施形態において、約2、3、約5、約7、約10、又は約14日の延長された血清消失半減期を有する。このことは、消失半減期が比較的非常に短いBiTE又はDARTの分子などの他の結合タンパク質とは対照的である。例えば、BiTE CD19×CD3二重特異性scFv-scFv融合分子は、消失半減期が短いため持続点滴(静脈内)による薬物送達を必要とする。MSLN標的三重特異性タンパク質のより長い内因性の半減期は、この問題を解決し、それにより低用量の医薬製剤、定期的な投与の減少、及び/又は新規な医薬組成物などの治療可能性を増加させる。
【0020】
本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質はまた、組織への浸透と組織への分布を強化するための最適なサイズを有する。サイズが大きければ、標的組織中でのタンパク質の浸透又は分布が制限されるか或いは妨げられる。本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、組織への浸透と分布を増強する小さなサイズを有することによりこれを回避する。従って、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、幾つかの実施形態において、約50kD-約80kD、約50kD-約75kD、約50kD-約70kD、又は約50kD-約65kDのサイズを有する。故に、MSLN標的三重特異性タンパク質のサイズは、約150kDであるIgG抗体よりも、及び、約55kDであるが半減期が延長されておらず、且つ故に腎臓で即座に排除されるBiTE及びDART二重特異性抗体分子よりも、都合が良い。
【0021】
更なる実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、増強された組織への浸透と分布に最適なサイズを有する。これら実施形態において、MSLN標的三重特異性タンパク質は可能な限り小さくなるように構築され、その一方で、その標的に対する特異性を保持する。従って、これら実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、約20kD-約40kD、約25kD-約35kD、約40kDまで、約45kDまで、約50kDまで、約55kDまで、約60kDまで、約65kDまでのサイズを有する。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、約50kD、49kD、48kD、47kD、46kD、45kD、44kD、43kD、42kD、41kD、40kD、約39kD、約38kD、約37kD、約36kD、約35kD、約34kD、約33kD、約32kD、約31kD、約30kD、約29kD、約28kD、約27kD、約26kD、約25kD、約24kD、約23kD、約22kD、約21kD、又は約20kDのサイズを有する。小さなサイズに対する典型的な手法は、ドメインの各々について単一ドメイン抗体(sdAb)フラグメントを使用することによる。例えば、特定のMSLN三重特異性抗原結合タンパク質は、MSLNに対して抗CD3 sdAb、抗ALB sdAb、及びsdAbを有する。これは、典型的なMSLN三重特異性抗原結合タンパク質のサイズを60kD未満に減少させる。故に、幾つかの実施形態において、MSLN標的三重特異性タンパク質のドメインは全て単一ドメイン抗体(sdAb)フラグメントである。他の実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、ALB及び/又はMSLNのための小分子実体(SME)結合剤を含む。SME結合剤は、平均して約500~2000Daのサイズの小分子であり、ソルターゼ連結反応或いは抱合などの既知の方法によってMSLN標的三重特異性タンパク質に結合される。これらの例において、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質のドメインの1つは、ソルターゼ認識配列、例えば、LPETG(SEQ ID NO:97)である。ソルターゼ認識配列を備えたMSLN三重特異性抗原結合タンパク質にSME結合剤を結合させるために、タンパク質はソルターゼとSME結合剤でインキュベートされ、それによってソルターゼがSME結合剤を認識配列に結合させる。既知のSME結合剤は、メソテリンに結合するMIP-1072及びMIP-1095を含む。また他の実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質のMSLNに結合するドメインは、MSLNに結合するためのノッチンペプチドを含む。ノッチンは、システインノットスキャフォールドを備えたジスルフィド安定化ペプチドであり、約3.5kDの平均サイズを有する。ノッチンは、MSLNなどの特定の腫瘍分子への結合について企図されてきた。更なる実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質のMSLNに結合するドメインは、天然MSLNリガンドを含む。
【0022】
本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質の別の特徴は、それらがドメインの柔軟な結合を備えた単一のポリペプチドの設計であるということである。これにより、MSLN標的三重特異性タンパク質の容易な産生と製造が可能になる。なぜなら、これらはベクターに容易に組み入れられる単一のcDNA分子によってコード可能であるためである。更に、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質が単量体の単一のポリペプチド鎖であるので、鎖の対形成の問題がなく、二量体化のための要件もない。本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、Fc-γ免疫グロブリンドメインを備えた二重特異性タンパク質などの他の報告されている分子とは異なり、凝集する傾向が低下している。
【0023】
本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質において、ドメインは内部リンカーL1とL2によって結合され、ここで、L1は、MSLN標的三重特異性タンパク質の第1と第2のドメインに結合し、L2はMSLN標的三重特異性タンパク質の第2と第3のドメインに結合する。リンカーL1とL2は最適化された長さ及び/又はアミノ酸組成を有する。幾つかの実施形態において、リンカーL1とL2は同じ長さとアミノ酸組成を有する。他の実施形態において、L1とL2は異なる。特定の実施形態において、内部リンカーL1及び/又はL2は「短い」、つまり、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、或いは12のアミノ酸残基からなる。故に、特定の例において、内部リンカーは約12以下のアミノ酸残基からなる。0のアミノ酸残基の場合、内部リンカーはペプチド結合である。特定の実施形態において、内部リンカーL1及び/又はL2は「長い」、つまり、15、20、或いは25のアミノ酸残基からなる。幾つかの実施形態において、これら内部リンカーは約3~約15まで、例えば、8、9、或いは10の連続したアミノ酸残基からなる。内部リンカーL1とL2のアミノ酸組成に関して、ペプチドは、MSLN標的三重特異性タンパク質に対して柔軟性を与え、結合ドメインに干渉せず、同様にプロテアーゼからの切断に抵抗しない特性と共に選択される。例えば、グリシンとセリンの残基は一般にプロテアーゼ抵抗性を与える。MSLN標的三重特異性タンパク質中のドメインの結合に適切な内部リンカーの例としては、限定されないが、(GS)n(SEQ ID NO:87)、(GGS)n(SEQ ID NO:88)、(GGGS)n(SEQ ID NO:89)、(GGSG)n(SEQ ID NO:90)、(GGSGG)n(SEQ ID NO:91)、(GGGGS)n(SEQ ID NO:92)、(GGGGG)n(SEQ ID NO:93)、又は(GGG)n(SEQ ID NO:94)が挙げられ、ここでnは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。1つの実施形態において、内部リンカーL1及び/又はL2は、(GGGGS)4(SEQ ID NO:95)、或いは(GGGGS)3(SEQ ID NO:96)である。
【0024】
CD3結合ドメイン
T細胞の応答の特異性は、TCRによって抗原(主要組織適合複合体、MHCに関して表示された)の認識によって媒介される。TCRの一部として、CD3は、細胞表面に存在する、CD3γ(ガンマ)鎖、CD3δ(デルタ)鎖、及び2つのCD3ε(イプシロン)鎖を含むタンパク質複合体である。完全なTCRを含むために、CD3は、CD3ζ(ゼータ)と同様に、TCRのα(アルファ)とβ(ベータ)鎖と一緒に結合する。固定された抗CD3抗体などによるT細胞上でのCD3のクラスター形成は、T細胞受容体の結合と同様であるがそのクローンに典型的な特異性とは無関係の、T細胞活性化を引き起こす。
【0025】
1つの態様において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、CD3に特異的に結合するドメインを含む。1つの態様において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、ヒトCD3に特異的に結合するドメインを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、CD3γに特異的に結合するドメインを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、CD3δに特異的に結合するドメインを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、CD3εに特異的に結合するドメインを含む。
【0026】
更なる実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、TCRに特異的に結合するドメインを含む。特定の例において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、TCRのα鎖に特異的に結合するドメインを含む。ある例では、本明細書に記載される三重特異性の抗原結合タンパク質は、TCRのβ鎖を特異的に結合するドメインを含む。
【0027】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質のCD3結合ドメインは、ヒトCD3との有力なCD3結合親和性を呈するだけではなく、それぞれのカニクイザルCD3タンパク質との優れた交差反応性も示す。幾つかの例において、MSLN標的三重特異性タンパク質のCD3結合ドメインは、カニクイザルからのCD3と交差反応性である。特定の例において、CD3に関するヒト:カニクイザルのKD比率は5-0.2の間である。
【0028】
幾つかの実施形態において、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質のCD3結合ドメインは、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体からのドメインを含むCD3に結合するあらゆるドメインであり得る。幾つかの例において、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質が最終的に使用される同じ種に由来することがCD3結合ドメインにとっては有益である。例えば、ヒトに使用するために、抗体又は抗体フラグメントの抗原結合ドメインからのヒト又はヒト化残基を含めることが、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質のCD3結合ドメインには有益なことがある。
【0029】
故に、1つの態様において、抗原結合ドメインは、ヒト化抗体又はヒト抗体或いは抗体フラグメント、或いはマウス抗体又は抗体フラグメントを含む。1つの実施形態において、ヒト化又はヒト抗CD3結合ドメインは、本明細書に記載されるヒト化又はヒト-CD3結合ドメインの1つ以上(例えば、3つ全て)の軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、及び軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)、及び/又は、本明細書に記載されるヒト化又はヒト抗CD3結合ドメインの1つ以上(例えば、3つ全て)の重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、及び重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含み、例えばヒト化又はヒト抗CD3結合ドメインは、1つ以上、例えば3つ全てのLC CDRと1つ以上、例えば3つ全てのHC CDRを含む。
【0030】
幾つかの実施形態において、ヒト化又はヒト抗CD3結合ドメインは、CD3に特異的なヒト化又はヒト軽鎖可変領域を含み、ここでCD3に特異的な軽鎖可変領域は、ヒト軽鎖フレームワーク領域中のヒト又は非ヒト軽鎖CDRを含む。特定の例において、軽鎖フレームワーク領域はλ(ラムダ)軽鎖フレームワークである。他の例において、軽鎖フレームワーク領域はκ(カッパ)軽鎖フレームワークである。
【0031】
幾つかの実施形態において、ヒト化又はヒト抗CD3結合ドメインは、CD3に特異的なヒト化又はヒト重鎖可変領域を含み、ここでCD3に特異的な重鎖可変領域は、ヒト重鎖フレームワーク領域中のヒト又は非ヒト重鎖CDRを含む。
【0032】
特定の例において、重鎖及び/又は軽鎖の相補性決定領域は、例えば、ムロモナブ-CD3(OKT3)、オテリキシズマブ(TRX4)、テプリズマブ(MGA031)、ビジリズマブ(Nuvion)、SP34、TR-66、又はX35-3、VIT3、BMA030(BW264/56)、CLB-T3/3、CRIS7、YTH12.5、F111-409、CLB-T3.4.2、TR-66、WT32、SPv-T3b、11D8、XIII-141、XIII-46、XIII-87、12F6、T3/RW2-8C8、T3/RW2-4B6、OKT3D、M-T301、SMC2、F101.01、UCHT-1、及びWT-31などの既知の抗CD3抗体に由来する。
【0033】
1つの実施形態において、抗CD3結合ドメインは、本明細書で提供されるアミノ酸配列の軽鎖と重鎖を含む単鎖可変フラグメント(scFv)である。本明細書で使用されるように、「単鎖可変フラグメント」又は「scFv」とは、軽鎖の可変領域を含む抗体フラグメントと、重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメントとを指し、軽鎖と重鎖の可変領域は、短い柔軟なポリペプチドリンカーによって連続的に結合され、単一のポリペプチド鎖として発現可能であり、及びscFvはそれが由来する無傷の抗体の特異性を保持する。一実施形態において、抗CD3結合ドメインは以下を含む:本明細書で提供される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、又は3つの修飾(例えば置換)を含むが、多くとも30、20、又は10の修飾(例えば置換)しか含まないアミノ酸配列、或いは本明細書で提供されるアミノ酸配列に95-99%の同一性を有する配列を含む、軽鎖可変領域;及び/又は、本明細書で提供される重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、又は3つの修飾(例えば置換)を含むが、多くとも30、20、又は10の修飾(例えば置換)しか含まないアミノ酸配列、或いは本明細書で提供されるアミノ酸配列に95-99%の同一性を有する配列を含む、重鎖可変領域。1つの実施形態において、ヒト化又はヒト抗CD3結合ドメインはscFvであり、本明細書に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域は、scFvリンカーによって本明細書に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域に結合される。scFvの軽鎖可変領域と重鎖可変領域は、例えば、以下の配向のいずれかであり得る:軽鎖可変領域-scFvリンカー-重鎖可変領域、或いは重鎖可変領域-scFvリンカー-軽鎖可変領域。
【0034】
幾つかの例において、CD3に結合するscFvは既知の方法に従って調製される。例えば、scFv分子は、柔軟なポリペプチドリンカーを使用して、VHとVLの領域を一緒に結合することにより、生成可能である。scFv分子は、最適化された長さ及び/又はアミノ酸組成を備えるscFvリンカー(例えばSer-Glyリンカー)を含む。従って、幾つかの実施形態において、scFvリンカーの長さは、CD3結合部位を形成するために、VH又はVLのドメインが他の可変ドメインと分子間で会合することができるような長さである。特定の実施形態において、こうしたscFvリンカーは「短い」、つまり、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12のアミノ酸残基からなる。故に、特定の例において、scFvリンカーは約12以下のアミノ酸残基からなる。0のアミノ酸残基の場合、scFvリンカーはペプチド結合である。幾つかの実施形態において、これらscFvリンカーは、約3から約15、例えば8、9、又は10の連続的なアミノ酸残基からなる。scFvリンカーのアミノ酸組成に関して、柔軟性を与え、可変ドメインに干渉せず、同様に、機能的なCD3結合部位を形成するために2つの可変ドメインを接合するための鎖間フォールディングを可能にするペプチドが選択される。例えば、グリシンとセリンの残基を含むscFvリンカーは一般的にプロテアーゼ耐性を与える。幾つかの実施形態において、scFv中のリンカーはグリシンとセリンの残基を含む。scFvリンカーのアミノ酸配列は、例えば、CD3結合とscFvの産生収率を改善するためのファージディスプレイ方法によって最適化可能である。scFv中の可変軽ドメイン及び可変重ドメインの結合に適切なペプチドscFvリンカーの例としては、限定されないが、(GS)n(SEQ ID NO:87)、(GGS)n(SEQ ID NO:88)、(GGGS)n(SEQ ID NO:89)、(GGSG)n(SEQ ID NO:90)、(GGSGG)n(SEQ ID NO:91)、(GGGGS)n(SEQ ID NO:92)、(GGGGG)n(SEQ ID NO:93)、又は(GGG)n(SEQ ID NO:94)が挙げられ、ここでnは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。1つの実施形態において、scFvリンカーは、(GGGGS)4(SEQ ID NO:95)、又は(GGGGS)3(SEQ ID NO:96)であり得る。リンカー長さの変動は活性を保持又は増強し、活性研究で優れた有効性をもたらすこともある。
【0035】
幾つかの実施形態において、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質のCD3結合ドメインは、1000nM以下、500nM以下、200nM以下、100nM以下、80nM以下、50nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下、又は0.5nM以下のKDを持つCD3発現細胞上のCD3に対する親和性を有する。幾つかの実施形態において、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質のCD3結合ドメインは、1000nM以下、500nM以下、200nM以下、100nM以下、80nM以下、50nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下、又は0.5nM以下のKDを持つ、CD3ε、γ、或いはδに対する親和性を有する。更なる実施形態において、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質のCD3結合ドメインは、CD3に対する低い親和性、つまり、約100nM以上を有する。
【0036】
CD3に結合する親和性は、例えば、アッセイプレート上にコーティングされた;微生物細胞表面に表示された;溶液中などの、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質自体の、又はCD3結合に結合するそのCD3結合ドメインの能力によって、決定することができる。CD3に対する本開示のMSLN三重特異性抗原結合タンパク質自体又はそのCD3結合ドメインの結合活性は、ビーズ、基質、細胞などに対して、リガンド(例えば、CD3)又はMSLN三重特異性抗原結合タンパク質自体或いはそのCD3結合ドメインを固定することにより分析可能である。薬剤は、所定の温度で一定の期間インキュベートされた適切なバッファーと結合パートナーに加えることができる。未結合材料を取り除くために洗浄した後、結合タンパク質は、例えば、SDS、高いpHの緩衝液などで放出可能であり、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)によって分析可能である。
【0037】
半減期延長ドメイン
抗原結合ドメインの半減期を延長するドメインが本明細書に企図される。そのようなドメインは、アルブミン結合ドメイン、Fcドメイン、小分子、及び当該技術分野で既知の他の半減期延長ドメインを含むがこれらに限定されないことが企図される。
【0038】
ヒトアルブミン(ALB)(分子量~67kDa)は、血漿中の最も豊富なタンパク質であり、約50mg/ml(600μM)で存在し、ヒトでは約20日の半減期を有する。ALBは、血漿pHを維持する役目を果たし、コロイド状の血圧に貢献し、多くの代謝産物と脂肪酸の担体として機能し、及び血漿中の主要な薬物輸送タンパク質として役立つ。
【0039】
アルブミンとの非共有会合は、短命のタンパク質の消失半減期を延長する。例えば、Fabフラグメントに対するアルブミン結合ドメインの組み換え融合は、Fabフラグメントのみの投与と比較して、マウスとウサギの静脈内にそれぞれ投与されたとき、25倍と58倍のインビボのクリアランス、及び26倍と37倍の半減期延長を結果としてもたらした。別の例において、インスリンがアルブミンとの会合を促進するために脂肪酸でアシル化されると、ウサギ又はブタに皮下注射された時に長期的な効果が観察された。合わせて、これらの研究は、アルブミン結合と持続的な作用との関連性を実証するものである。
【0040】
一態様において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は半減期延長ドメイン、例えばALBに特異的に結合するドメインを含む。幾つかの実施形態において、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質のALB3結合ドメインは、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体からのドメインを含む、ALBに結合するあらゆるドメインであり得る。幾つかの実施形態において、ALB結合ドメインは、単鎖可変フラグメント(scFv)、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、及びHSAに特異的なラクダ科由来の単一ドメイン抗体、ペプチド、リガンド、又は少分子実体の可変ドメイン(VHH)などの単一ドメイン抗体である。特定の実施形態において、ALB結合ドメインは単一ドメイン抗体である。他の実施形態において、HSA結合ドメインはペプチドである。更なる実施形態において、HSA結合ドメインは小分子である。MSLN三重特異性抗原結合タンパク質のHSA結合ドメインはかなり小さく、幾つかの実施形態においてわずか25kD、わずか20kD、わずか15kD、又はわずか10kDであることが企図される。特定の例において、ALB結合は、ペプチド又は小分子実体である場合に5kD以下である。
【0041】
MSLN三重特異性抗原結合タンパク質の半減期延長ドメインは、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質自体の改変された薬動力学及び薬物動態を提供する。上記のように、半減期延長ドメインは消失半減期を延長する。半減期延長ドメインはさらに、三重特異性抗原結合タンパク質の組織分布、浸透、及び拡散の変質を含む薬力学的な特性を変更する。幾つかの実施形態において、半減期延長ドメインは、半減期延長ドメインのないタンパク質と比較して、改善された組織(腫瘍を含む)標的化、組織分布、組織浸透、組織内での拡散、有効性の増強をもたらす。1つの実施形態において、治療方法は、三重特異性抗原結合タンパク質の減少した量を有効且つ効率的に利用し、非腫瘍細胞毒性の減少などの副作用の減少をもたらす。
【0042】
更に、半減期延長ドメインの結合親和性は、特定の三重特異性抗原結合タンパク質中の特定の消失半減期を標的とするように選択可能である。故に、幾つかの実施形態において、半減期延長ドメインは高い結合親和性を有する。他の実施形態において、半減期延長ドメインは中程度の結合親和性を有する。また他の実施形態において、半減期延長ドメインは低い又はわずかな結合親和性を有する。典型的な結合親和性は、10nM以下(高い)の、10nM~100nMの間(中程度)の、及び100nMを超える(低い)Kd濃度を含む。上記のように、ALBへの結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)などの既知の方法によって決定される。
【0043】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるALB結合ドメインは単一ドメイン抗体を含む。
【0044】
メソテリン(MSLN)結合ドメイン
メソテリンは、腹膜腔、胸膜腔、及び心膜腔の中皮内膜の細胞の表面に存在する糖タンパク質である。メソテリン遺伝子(MSLN)は、細胞表面に存在するグリコシル-ホスファチジルイノシトール-アンカー糖タンパク質である、メソテリンと称される40kDのタンパク質へと処理される71kDの前駆体タンパク質をコードするものである(Chang, et al, Proc Natl Acad Sci USA (1996) 93:136-40)。メソテリンcDNAは、HPC-Y5細胞株から調製されたライブラリからクローン化された(Kojima et al. (1995) J. Biol. Chem. 270:21984-21990)。cDNAはまた、中皮腫を認識するモノクローナル抗体K1を使用してクローン化された(Chang and Pastan (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:136-40)。メソテリンは、正常ヒト組織におけるその発現が、胸膜、心膜、及び腹膜などの体腔に内在する中皮細胞内膜に限定される、分化抗原である。メソテリンはまた、中皮腫、膵臓腺癌、卵巣癌、胃癌、及び肺腺癌を含む、様々な異なるヒトの癌において大いに発現される(Hassan, et al., Eur J Cancer (2008) 44:46-53) (Ordonez, Am J Surg Pathol (2003) 27:1418-28; Ho, et al., Clin Cancer Res (2007) 13:1571-5)。メソテリンは、良性膵臓組織に見られる稀であり且つ弱い発現を伴う、原発性膵臓腺癌の大部分において過剰発現される。Argani P, et al. Clin Cancer Res. 2001; 7(12):3862-3868。上皮悪性胸膜中皮腫(MPM)は普遍的にメソテリンを発現する一方、肉腫MPMは恐らくメソテリンを発現しない。最も希薄な上皮卵巣細胞腫、及び関連する原発性腹膜の細胞腫は、メソテリンを発現する。
【0045】
メソテリンはまた、微量のメソテリンがメソテリン陽性癌を抱える一部の患者の血液に検出され得るので、特定の型の癌の診断及び予測のためのマーカーとして使用され得る(Cristaudo et al., Clin. Cancer Res. 13:5076-5081, 2007)。メソテリンは、そのカルボキシル末端での欠失を介して、又はその膜結合形態からのタンパク質分解開裂によって、血清へと放出され得る(Hassan et al., Clin. Cancer Res. 10:3937-3942, 2004)。アスベストにさらされた労働者の間に悪性中皮腫が現われる数年前に、メソテリンの可溶性形態の増加が検出可能であった(Creaney and Robinson, Hematol. Oncol. Clin. North Am. 19:1025-1040, 2005)。更に、卵巣癌、膵臓癌、及び肺癌を抱える患者はまた、血清中の可溶性メソテリンを上昇させている(Cristaudo et al., Clin. Cancer Res. 13:5076-5081, 2007; Hassan et al., Clin. Cancer Res. 12:447-453, 2006; Croso et al., Cancer Detect. Prev. 30:180-187, 2006)。従って、メソテリンは、疾患予防又は処置の方法に対する適切な標的であり、メソテリンに特異的な有効な抗体が必要とされている。
【0046】
細胞表面の成熟メソテリンが3つの別個のドメイン、即ち、領域I(残基296-390を含む)、II(残基391-486を含む)、及びIII(残基487-598を含む)を備えることが示されている。(Tang et al., A human single-domain antibody elicits potent antitumor activity by targeting an epitope in mesothelin close to the cancer cell surface, Mol. Can. Therapeutics, 12(4): 416-426, 2013)。治療的介入のためのメソテリンに対して生成された一次抗体は、メソテリンとCA-125との相互作用に干渉するように設計された。ファージディスプレイは、FvSSを識別し、これは、親和性を最適化され、且つ、メソテリンを標的とする組み換え免疫毒素、SS1Pを生成するために使用された。MORAb-009抗体アマツキシマブは、SS1も使用し、領域I内でメソテリンのアミノ末端基64アミノ酸における非線形エピトープを認識する。SS1 Fvも、キメラ抗原受容体で操作されたT細胞を生成するために使用された。近年、新たなメソテリンタンパク質は、メソテリンタンパク質の他の領域を認識すると報告されている。
【0047】
卵巣癌、膵臓癌、中皮腫、肺癌、胃癌、及び三種陰性乳癌などの、メソテリンの過剰発現に関連する固形腫瘍疾患の処置に対して利用可能な更なるオプションを備える必要性が依然として存在する。本開示は、特定の実施形態において、腫瘍標的細胞の表面上でMSLNに特異的に結合する結合ドメインを含むMSLN標的三重特異性タンパク質を提供する。
【0048】
本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質の設計は、MSLNに対する結合ドメインが、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体からのドメインを含む任意のタイプの結合ドメインであり得るという点で、MSLNに対する結合ドメインを柔軟なものとすることができる。幾つかの実施形態において、MSLNに対する結合ドメインは、単鎖可変フラグメント(scFv)、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、及びラクダ科由来の単一ドメイン抗体の可変ドメイン(VHH)などの単一ドメイン抗体である。他の実施形態において、MSLNに対する結合ドメインは、非Ig結合ドメイン、即ち、アンチカリン(anticalins)、アフィリン(affilins)、アフィボディ(affibody)分子、アフィマー(affimers)、アフィチン(affitins)、アルファボディ(alphabodies)、アヴィマー(avimers)、DARPins、フィノマー(fynomers)、クニッツドメインペプチド、及びモノボディなどの抗体模倣物である。更なる実施形態において、MSLNに対する結合ドメインは、MSLNに結合又は会合するリガンド又はペプチドである。また更なる実施形態において、MSLNに対する結合ドメインはノッチンである。また更なる実施形態において、MSLNに対する結合ドメインは小分子実体である。
【0049】
幾つかの実施形態において、MSLN結合ドメインは、SEQ ID NO:57の配列を含むタンパク質に結合する。幾つかの実施形態において、MSLN結合ドメインは、SEQ ID NO:57と比較して短縮した配列を含むタンパク質に結合する。
【0050】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示されるMSLN結合ドメインは完全長のメソテリンを認識する。特定の例において、本明細書に開示されるMSLN結合ドメインは、メソテリンの領域I(SEQ ID NO:57のアミノ酸残基296-390を含む)、領域II(SEQ ID NO:57のアミノ酸残基391-486を含む)、又は領域III(SEQ ID NO:57のアミノ酸残基487-598を含む)におけるエピトープを認識する。本開示のMSLN結合ドメインは、幾つかの実施形態において、メソテリンの領域I、II、又はIIIの外に位置するエピトープを認識し、且つそれに結合し得ることが企図される。また他の実施形態において、MORAb-009抗体と異なるエピトープを認識し且つそれに結合する、MSLN結合ドメインが開示される。
【0051】
幾つかの実施形態において、MSLN結合ドメインは抗MSLN抗体又は抗体変異体である。本明細書で使用されるように、用語「抗体変異体」は、本明細書に記載される抗体の変異体及び誘導体を指す。特定の実施形態において、本明細書に記載される抗MSLNの抗体のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、特定の実施形態において、本明細書に記載される抗MSLN抗体のアミノ酸配列変異体は、結合親和性及び/又は抗体の他の生物学的特性を改善するように企図されている。アミノ酸変異体を調製するための典型的な方法は、限定されないが、抗体をコードするヌクレオチド配列へと、又はペプチド合成により、適切な修飾を導入する工程を含む。そのような修飾は例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、前記残基への挿入、及び/又は前記残基の置換を含む。
【0052】
欠失、挿入、及び置換のあらゆる組み合わせは、最終の構築物に到達するために行うことができるが、最終の構築物が所望の特徴、例えば抗原結合を持つことを前提とする。特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を持つ抗体変異体が提供される。置換突然変異誘発に対する目的の部位はCDR及びフレームワーク領域を含む。そのような置換の例が後述される。アミノ酸置換は目的の抗体へと導入することができ、生成物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合の減少、免疫原性の減少、又はT細胞媒介性細胞毒性(TDCC)の改善をスクリーニングした。保存的且つ非保存的なアミノ酸置換が、抗体変異体の調製に企図される。
【0053】
変異体抗MSLN抗体を作成するための置換の別の例において、親抗体の1つ以上の超可変領域残基が置換される。一般的に、変異体はその後、親抗体に比べて望ましい特性、例えば、親和性の増加、親和性の減少、免疫原性の減少、結合のpH依存性の増加に基づいて選択される。
【0054】
幾つかの実施形態において、MSLN標的三重特異性タンパク質のMSLN結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(VH)、メソテリンに特異的なラマ由来のsdAb、ペプチド、リガンド、又は小分子実体の可変ドメイン(VHH)などの、単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質のメソテリン結合ドメインは、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体からのドメインを含む、メソテリンに結合する任意のドメインである。特定の実施形態において、MSLN結合ドメインは単一ドメイン抗体である。他の実施形態において、MSLN結合ドメインはペプチドである。更なる実施形態において、MSLN結合ドメインは小分子である。
【0055】
一般的に、単一ドメインという用語は、その最も広い意味で本明細書に使用されるように、特異的な生物学的ソース又は特異的な調製法には限定されないことを、留意されたい。単一ドメイン抗体は、その相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である。例として、限定されないが、重鎖抗体、軽鎖が自然にない抗体、従来の4鎖状抗体に由来する単一ドメイン抗体、操作された抗体、及び抗体由来のもの以外の単一ドメインスキャホールドが挙げられる。単一ドメイン抗体は、当該技術分野の何れか、或いは、将来の単一ドメイン抗体であり得る。単一ドメイン抗体は、限定されないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、ウシを含む任意の種に由来し得る。例えば、幾つかの実施形態において、本開示の単一ドメイン抗体は:(1)自然発生の重鎖抗体のVHHドメインの単離によって;(2)自然発生のVHHドメインをコードするヌクレオチド配列の発現によって;(3)自然発生のVHHドメインの「ヒト化」、又はそのようなヒト化VHHドメインをコードする核酸の発現によって;(4)任意の動物種、具体的には人間などの一種の哺乳動物由来の自然発生のVHドメインの「ラクダ化」、又はそのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現によって;(5)「ドメイン抗体」又は「Dab」の「ラクダ化」、又はそのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現によって;(6)タンパク質、ポリペプチド、又は他のアミノ酸配列の調製のための合成又は半合成の技術を使用することによって;(7)当該技術分野で既知の核酸合成のための技術を使用して単一ドメイン抗体をコードする核酸の調製、その後に得られた核酸の発現によって;及び/又は(8)前述のものの1つ以上の任意の組み合わせによって、得られる。
【0056】
一実施形態において、単一ドメイン抗体は、MSLNに対して配向された自然発生の重鎖抗体のVHHドメインに相当する。本明細書で更に記載されるように、そのようなVHH配列は通常、MSLNにより一種のラマを適切に免疫化することによって(即ち、MSLNに対して配向された免疫応答及び/又は重鎖抗体を上昇させるように)、前記ラマの適切な生体サンプル(血液サンプル、血清サンプル、又はB細胞のサンプルなど)を得ることによって、及び、当該技術分野で既知の適切な技術を使用して、前記サンプルから出発して、MSLNに対して配向されたVHH配列を生成することによって、生成又は入手され得る。
【0057】
別の実施形態において、MSLNに対するそのような自然発生のVHHドメインは、例えば、当該技術分野で既知の1つ以上のスクリーニング技術を使用して、MSLN、又はその少なくとも一部、フラグメント、抗原決定基、又はエピトープを用いてライブラリをスクリーニングすることによって、ラクダ科VHH配列のナイーブライブラリから得られる。そのようなライブラリ及び技術は、例えば、WO99/37681、WO01/90190、WO3/025020、及びWO03/035694に記載されている。代替的に、例えばWO00/43507に記載されるように、無作為の突然変異誘発及び/又はCDRシャフリングなどの技術によってナイーブVHHライブラリから得られるVHHライブラリなどの、ナイーブVHHライブラリ由来の、改善された合成又は半合成ライブラリが使用される。
【0058】
更なる実施形態において、MSLNに対して配向されたVHHを得るための更に別の技術は、重鎖抗体を発現可能なトランスジェニック哺乳動物を適切に免疫化する工程(即ち、MSLNに対して配向された免疫応答及び/又は重鎖抗体を上昇させるように)、前記トランスジェニック哺乳動物の適切な生体サンプル(血液サンプル、血清サンプル、又はB細胞のサンプルなど)を得る工程、及び、その後に、当該技術分野で既知の適切な技術を使用して、前記サンプルから出発して、MSLNに対して配向されたVHH配列を生成する工程を含む。例えば、この目的のために、重鎖抗体を発現するラット又はマウス、並びに、WO02/085945及びWO04/049794に記載される方法及び技術が、使用され得る。
【0059】
幾つかの実施形態において、MSLN標的三重特異性タンパク質の抗MSLN単一ドメイン抗体は、アミノ酸配列を含む単一ドメイン抗体を含んでおり、前記アミノ酸配列は、自然発生のVHHドメインのアミノ酸配列に相当するが、(例えば上述のような)人間由来の従来の4鎖抗体のVHドメインにおける対応する位置に生じるアミノ酸残基の1つ以上により前記自然発生のVHH配列のアミノ酸配列(及び具体的にはフレームワーク配列)における1つ以上のアミノ酸残基を置き換えることによって、「ヒト化」されている。これは、当業者に明白である当該技術分野で既知の様式で、例えば本明細書の更なる記載に基づいて、実行可能である。再度、そのような本開示のヒト化抗MSLN単一ドメイン抗体は、それ自体で既知の任意の適切な様式で(即ち、上記の点(1)-(8)の下で示されるように)得られ、故に、出発物質として自然発生のVHHドメインを含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドではあるが厳密にはそれに限定されないことを、留意されたい。幾つかの追加の実施形態において、本明細書に記載されるような単一ドメイン抗MSLN抗体は、アミノ酸配列を含む単一ドメイン抗体を含んでおり、前記アミノ酸配列は、自然発生のVHドメインのアミノ酸配列に相当するが、重鎖抗体のVHHドメインの対応する位置に生じるアミノ酸残基の1つ以上により従来の4鎖抗体の自然発生のVHドメインのアミノ酸配列における1つ以上のアミノ酸残基を置き換えることによって、「ラクダ化」されている。そのような「ラクダ化」置換は好ましくは、VH-VL界面、及び/又はいわゆるラクダ科ホールマーク残基を形成する、及び/又はそれらに存在する、アミノ酸位置に挿入される(例えば、WO94/04678及びDavies and Riechmann (1994 and 1996)を参照)。好ましくは、ラクダ化単一ドメインを生成又は設計するための出発物質又は出発点として使用されるVH配列は好ましくは、哺乳動物のVH配列、より好ましくはVH3配列などの人間のVH配列である。しかし、そのような本開示のラクダ化抗MSLN単一ドメイン抗体は、特定の実施形態において、当該技術分野で既知の任意の適切な様式で(即ち、上記の点(1)-(8)の下で示されるように)得られ、故に、出発物質として自然発生のVHドメインを含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドではあるが厳密にはそれに限定されないことを、留意されたい。例えば、本明細書で更に記載されるように、「ヒト化」及び「ラクダ化」は共に、自然発生のVHHドメイン又はVHドメインをそれぞれコードするヌクレオチド配列を提供することにより、及びその後に、新たなヌクレオチド配列が「ヒト化」又は「ラクダ化」単一ドメイン抗体をそれぞれコードするような方法で前記ヌクレオチド配列における1つ以上のコドンを変化させることによって、実行される。その後、この核酸は、本開示の望ましい抗MSLN単一ドメイン抗体を提供するように発現され得る。代替的に、他の実施形態において、自然発生のVHHドメイン又はVHドメインそれぞれのアミノ酸配列に基づいて、本開示の望ましいヒト化又はラクダ化抗MSLN単一ドメイン抗体それぞれのアミノ酸配列が設計され、その後に既知のペプチド合成技術を使用して新規に合成される。幾つかの実施形態において、自然発生のVHHドメイン又はVHドメインそれぞれのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列に基づいて、本開示の望ましいヒト化又はラクダ化抗MSLN単一ドメイン抗体それぞれをコードするヌクレオチド配列が設計され、その後に既知の核酸合成技術を使用して新規に合成され、その後、これにより得られた核酸を、既知の発現技術を使用して発現させて、本開示の望ましい抗MSLN単一ドメイン抗体を提供する。
【0060】
自然発生のVH配列又はVHH配列から出発する、本開示の抗MSLN単一ドメイン抗体及び/又はそれをコードする核酸を得るための、他の適切な方法及び技術は、例えば、本開示の抗MSLN単一ドメイン抗体或いはそれをコードするヌクレオチド配列又は核酸を提供するために、適切な様式で、1つ以上の自然発生のVH配列の1つ以上の部分(1つ以上のフレームワーク(FR)配列及び/又は相補性決定領域(CDR)配列など)、1つ以上の自然発生のVHH配列の1つ以上の部分(1つ以上のFR配列又はCDR配列など)、及び/又は1つ以上の合成又は半合成の配列を組み合わせる工程を含む。
【0061】
幾つかの実施形態において、MSLN結合ドメインは、重鎖可変相補性決定領域CDR1、重鎖可変CDR2、重鎖可変CDR3、軽鎖可変CDR1、軽鎖可変CDR2、及び軽鎖可変CDR3を含む抗MSLN特異抗体である。幾つかの実施形態において、MSLN結合ドメインは、MSLNに結合するドメインを含み、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、又は抗原結合フラグメント、例えば単一ドメイン抗体(sdAb)、Fab、Fab’、F(ab)2、及びFvフラグメント、1つ以上のCDRで構成されたフラグメント、単鎖抗体(例えば、単鎖Fvフラグメント(scFv))、ジスルフィド安定化(dsFv)Fvフラグメント、ヘテロ共役抗体(例えば、二重特異性抗体)、pFvフラグメント、重鎖単量体又は二量体、軽鎖単量体又は二量体、並びに1つの重鎖と1つの軽鎖から成る二量体からのドメインが挙げられる。幾つかの実施形態において、MSLN結合ドメインは単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、抗MSLN単一ドメイン抗体は、重鎖可変相補性決定領域(CDR)、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
【0062】
幾つかの実施形態において、MSLN結合ドメインは、式:f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4によって表わされるような、3つの相補性決定領域/配列によって遮られた4つのフレームワーク領域/配列(f1-f4)で構成されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、式中、r1、r2、及びr3はそれぞれ相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3であり、f1、f2、f3、及びf4はフレームワーク残基である。本開示のMSLN結合タンパク質のフレームワーク残基は、例えば、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89の、90、91、92、93、又は94のアミノ酸残基を含み、相補性決定領域は、例えば24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、又は36のアミノ酸残基を含む。幾つかの実施形態において、MSLN結合ドメインは、SEQ ID NO:1-40及び102-105から選択されるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、本開示のMSLN結合三重特異性タンパク質のフレームワーク領域1は、SEQ ID:223-261の何れか1つにおけるような配列を含む。幾つかの実施形態において、本開示のMSLN結合三重特異性タンパク質のフレームワーク領域2は、SEQ ID:262-300の何れか1つにおけるような配列を含む、幾つかの実施形態において、本開示のMSLN結合三重特異性タンパク質のフレームワーク領域3は、SEQ ID:301-339の何れか1つにおけるような配列を含む。幾つかの実施形態において、本開示のMSLN結合三重特異性タンパク質のフレームワーク領域4は、SEQ ID:340-378の何れか1つにおけるような配列を含む。
【0063】
幾つかの実施形態において、CDR1は、SEQ ID NO:51に明記されるようなアミノ酸配列、或いは、SEQ ID NO:51における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。幾つかの実施形態において、CDR2は、SEQ ID NO:52に明記されるような配列、或いは、SEQ ID NO:52における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。幾つかの実施形態において、CDR3は、SEQ ID NO:53に明記されるような配列、或いは、SEQ ID NO:53における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。
【0064】
幾つかの実施形態において、CDR1は、SEQ ID NO:54に明記されるようなアミノ酸配列、或いは、SEQ ID NO:54における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。幾つかの実施形態において、CDR2は、SEQ ID NO:55に明記されるような配列、或いは、SEQ ID NO:55における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。幾つかの実施形態において、CDR3は、SEQ ID NO:56に明記されるような配列、或いは、SEQ ID NO:56における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。
【0065】
幾つかの実施形態において、CDR1は、SEQ ID NO:106-144の何れか1つに明記されるようなアミノ酸配列、或いは、SEQ ID NO:106-144の何れか1つにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。幾つかの実施形態において、CDR2は、SEQ ID NO:145-183の何れか1つに明記されるような配列、或いは、SEQ ID NO:145-183の何れか1つにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。幾つかの実施形態において、CDR3は、SEQ ID NO:184-222の何れか1つに明記されるような配列、或いは、SEQ ID NO:184-222の何れか1つにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。
【0066】
本開示のMSLN結合ドメインは、特定の例において、1つ以上の保存領域を含む。保存領域は、SEQ ID NO:41-49に明記されるような配列、又は前記配列に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む変異体を含む。典型的な実施形態は、SEQ ID NO:41-44から選択される1つ以上の保存領域を含むMSLN結合タンパク質、又は前記配列に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む変異体を含む。場合によっては、MSLN結合ドメインは、(i)SEQ ID NO:41に相当するアミノ酸の伸張部、(ii)SEQ ID NO:42に相当するアミノ酸の伸張部、(iii)SEQ ID NO:43に相当するアミノ酸の伸張部、及び(iv)SEQ ID NO:44に相当するアミノ酸の伸張部を含む。
【0067】
更に典型的な実施形態は、SEQ ID NO:45-50から選択される1つ以上の保存領域を含むMSLN結合ドメイン、又は前記配列に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む変異体を含む。場合によっては、MSLN結合ドメインは、(i)SEQ ID NO:45に相当するアミノ酸の伸張部、(ii)SEQ ID NO:46に相当するアミノ酸の伸張部、(iii)SEQ ID NO:47に相当するアミノ酸の伸張部、(iv)SEQ ID NO:48に相当するアミノ酸の伸張部、(v)SEQ ID NO:49に相当するアミノ酸の伸張部、及び(vi)SEQ ID NO:50に相当するアミノ酸の伸張部を含む。
【0068】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合ドメインは、SEQ ID NO:1-29から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0069】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合ドメインは、SEQ ID NO:30-40、及び102-105から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0070】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合ドメインの相補性決定領域は、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:54、或いはSEQ ID NO:106-144の何れか1つに明記されるアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0071】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合ドメインの相補性決定領域は、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:55、或いはSEQ ID NO:145-183の何れか1つに明記されるアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0072】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合ドメインの相補性決定領域は、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:56、或いはSEQ ID NO:184-222の何れか1つに明記されるアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0073】
幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:1の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:2の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:3の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:4の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:5の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:6の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:7の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:8の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:9の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:10の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:11の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:12の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:13の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:14の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:15の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:16の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:17の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:18の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:19の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:20の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:21の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:22の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:23の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:24の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:25の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:26の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:27の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:28の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:29の配列を含む単一ドメイン抗体である。
【0074】
幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:30の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:31の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:32の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:33の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:34の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:35の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:36の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:37の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:38の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:39の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:40の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:102の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:103の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:104の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:105の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。
【0075】
幾つかの実施形態において、MSLN結合ドメインは、ヒト及びカニクイザルのメソテリンと交差反応する。幾つかの実施形態において、MSLN結合ドメインはヒトメソテリンに特異的である。特定の実施形態において、本明細書に開示されるMSLN結合ドメインは、ヒトKd(hKd)を有するヒトメソテリンに結合する。特定の実施形態において、本明細書に開示されるMSLN結合ドメインは、カニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザルメソテリンに結合する。特定の実施形態において、本明細書に開示されるMSLN結合ドメインは、カニクイザルKd(cKd)及びヒトKd(hKd)を有する、カニクイザルメソテリン及びヒトメソテリンの両方に結合する。幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質は、比較可能な結合親和性(即ち、hKd及びcKdの値は、±10%よりも多く相違しない)によりヒト及びカニクイザルのメソテリンに結合する。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約500nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約450nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約400nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約350nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約300nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約250nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約200nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約150nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約100nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約90nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.2nM~約80nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.3nM~約70nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.4nM~約50nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.5nM~約30nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.6nM~約10nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.7nM~約8nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.8nM~約6nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.9nM~約4nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約1nM~約2nMの範囲に及ぶ。
【0076】
幾つかの実施形態において、前述のMSLN結合ドメインの何れか(例えば、SEQ ID NO:1-40及びの抗MSLN単一ドメイン抗体)は、精製の容易さのためにタグ付けされる親和性ペプチドである。幾つかの実施形態において、親和性ペプチドタグは、6X-hisとも称される、6つの連続するヒスチジン残渣である(SEQ ID NO:379)。
【0077】
特定の実施形態において、本開示のMSLN結合ドメインは、可溶性メソテリン上で膜結合メソテリンに優先的に結合する。膜結合メソテリンは、メソテリンを発現する細胞の細胞膜表面における、又はその表面上のメソテリンの存在を指す。可溶性メソテリンは、メソテリンを発現する又は発現した細胞の細胞膜表面中に、又はその上にもはや存在しないメソテリンを指す。特定の例において、可溶性メソテリンは被験体における血液及び/又はリンパ循環に存在する。一実施形態において、MSLN結合ドメインは、可溶性メソテリンよりも少なくとも5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍大きい膜結合メソテリンに結合する。一実施形態において、本開示のMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質は、可溶性メソテリンより30倍大きい膜結合メソテリンに優先的に結合する。可溶性MSLN上での抗原結合タンパク質の膜結合MSLNへの優先的な結合の判定は、当該技術分野で周知のアッセイを使用して容易に行われ得る。
【0078】
TriTAC分子
本開示の様々な実施形態は、本明細書に記載されるようなMSLN結合ドメインを含む三重特異性分子(本明細書でTriTAC分子とも称される)を提供する。幾つかの実施形態において、TriTAC分子は、SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101の何れか1つに明記されるようなアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、本開示のTriTAC分子は、SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一であるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、本開示のTriTAC分子は、SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101から選択されたアミノ酸配列の完全長と少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一であるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、本開示のTriTAC分子は、SEQ ID NO:58-86、98、100、及び101から選択されたアミノ酸配列の完全長の画分と少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0079】
キメラ抗原受容体(CAR)への組み込み
本開示のMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質は、特定の例においてキメラ抗原受容体(CAR)へと組み込むことができる。操作された免疫エフェクター細胞、例えばT細胞又はNK細胞は、本明細書に記載されるような抗MSLN単一ドメイン抗体を含有する抗MSLN標的三重特異性タンパク質を含むCARを発現するために使用され得る。一実施形態において、本明細書に記載されるような抗MSLN標的三重特異性タンパク質を含むCARは、ヒンジ領域を介して膜貫通ドメインに、及び更には共刺激ドメイン、例えばOX40、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、又は4-1BBから得られる機能的シグナル伝達ドメインに接続される。幾つかの実施形態において、CARは、4-1BB及び/又はCD3ゼータなどの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする配列を更に含む。
【0080】
腫瘍成長減少特性
特定の実施形態において、本開示のMSLN標的三重特異性タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞を有する被験体に投与すると、インビボで腫瘍細胞の成長を減少させる。腫瘍細胞の成長の減少の測定は、当該技術分野で周知の複数の異なる方法によって判定され得る。非限定的な実施例は、腫瘍寸法の直接測定、切除した腫瘤の測定及び対照被験体との比較、解析の向上のために同位体又は発光分子(例えばルシフェラーゼ)を使用する又は使用しない画像処理技術(例えばCT又はMRI)を介した測定などを含む。特異的な実施形態において、本開示の三重特異性タンパク質の投与は結果として、対照の抗原結合剤と比較して、腫瘍成長の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の腫瘍細胞のインビボ成長の減少をもたらし、腫瘍の完全寛解及び消失を示す。更なる実施形態において、本開示の三重特異性タンパク質の投与は結果として、対照の抗原結合剤と比較して、約50-100%、約75-100%、又は約90%-100%の腫瘍細胞のインビボ成長の減少をもたらす。更なる実施形態において、本開示の三重特異性タンパク質の投与は結果として、対照の抗原結合剤と比較して、約50-60%、約70-80%、約80-90%、又は約90%-100%の腫瘍細胞のインビボ成長の減少をもたらす。
【0081】
MSLN三重特異性タンパク質修飾
本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、(i)アミノ酸が遺伝子コードによってコードされるものではないアミノ酸残基で置換され、(ii)成熟ポリペプチドがポリエチレングリコールなどの別の化合物と融合され、又は、(iii)追加のアミノ酸が、リーダー配列、分泌配列、或いは免疫原をするためのタンパク質の精製の配列などのタンパク質に融合される、誘導体又はアナログを包含する。
【0082】
典型的な修飾は、限定されないが、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合の架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解性の加工、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化(arginylation)などのアミノ酸のタンパク質への転移RNA媒介性の付加、及びユビキチン化を含む。
【0083】
修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、及びアミノ又はカルボキシル終端を含む、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質のあらゆる場所で行われる。MSLN標的三重特異性タンパク質の修飾に役立つ特定の一般的なペプチド修飾は、グルタミン酸残基のグリコシル化、脂質結合、硫酸化、ガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化、共有結合修飾によるポリペプチド中のアミノ基又はカルボキシル基の遮断、或いはその両方、及びADPリボシル化を含む。
【0084】
MSLN標的三重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチド
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される抗MSLN三重特異性結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子も提供される。幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチド分子はDNA構築物として提供される。他の実施形態において、ポリヌクレオチド分子はメッセンジャーRNA転写物として提供される。
【0085】
ポリヌクレオチド分子は、ペプチドリンカーによって分離されるか又は他の実施形態においてペプチド結合によって直接結合される3つの結合ドメインをコードする遺伝子を組み合わせ、適切なプロモーター及び随意に適切な転写ターミネーターに動作可能に連結された単一の遺伝子構築物にして、及び、細菌又は例えばCHO細胞などの他の適切な発現系でそれを発現するなどの既知の方法によって構築される。MSLN結合ドメインが小分子である実施形態において、ポリヌクレオチドは、CD3結合ドメインと半減期延長ドメインをコードする遺伝子を含んでいる。半減期延長ドメインが小分子である実施形態において、ポリヌクレオチドは、CD3とMSLNとに結合するドメインをコードする遺伝子を含んでいる。利用されるベクター系と宿主に依存して、任意の数の適切な転写、及び構成的で誘導可能なプロモーターを含む翻訳要素が使用されてもよい。プロモーターはそれぞれの宿主細胞においてポリヌクレオチドの発現を駆り立てるように選択される。
【0086】
幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、更なる実施形態を表すベクター、好ましくは発現ベクターに挿入される。この組み換えベクターは既知の方法に従って構築可能である。特定の対象のベクターは、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルスなど)、及びコスミドを含んでいる。
【0087】
様々な発現ベクター/宿主系は、記載された三重特異性抗原結合タンパク質のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、且つそれを発現するために利用されてもよい。E.coliにおける発現のための発現ベクターの例は、哺乳動物細胞における発現のためのpSKK(Le Gall et al., J Immunol Methods. (2004) 285(1):111-27)又はpcDNA5(Invitrogen)である。
【0088】
故に、本明細書に記載されるようなMSLN標的三重特異性タンパク質は、幾つかの実施形態において、上記のようなタンパク質をコードするベクターを宿主細胞へ導入し、且つ、タンパク質ドメインが発現し、単離され、随意に更に精製され得る条件下で上記宿主細胞を培養することにより、生成される。
【0089】
医薬組成物
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN結合タンパク質、MSLN標的三重特異性タンパク質のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、或いはこのベクター及び少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体によって形質転換された宿主細胞を含む、医薬組成物も提供される。用語「薬学的に許容可能な担体」としては、限定されないが、成分の生物学的活性の有効性に干渉せず、且つ、投与される患者にとって毒性ではない任意の担体が挙げられる。適切な医薬担体の例は当該技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、様々なタイプの湿潤剤、無菌液などを含む。こうした担体は、従来の方法によって製剤することができ、適切な投与量で被験体に投与可能である。好ましくは、組成物は無菌である。これらの組成物は、防腐剤、乳化剤、及び分散剤などのアジュバントを更に含み得る。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤の包含によって確保され得る。更なる実施形態は、凍結乾燥形態で包装される、又は水性媒体に包装される上述のMSLN標的三重特異性タンパク質の1つ以上を提供する。
【0090】
医薬組成物の幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質はナノ粒子に封入される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、フラーレン、液晶、リポソーム、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、デンドリマー、又はナノロッドである。医薬組成物の他の実施形態において、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質はリポソームに結合する。幾つかの例において、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質はリポソームの表面に抱合される。幾つかの例において、MSLN三重特異性抗原結合タンパク質は、リポソームのシェル内に封入される。幾つかの例において、リポソームはカチオン性リポソームである。
【0091】
本明細書に記載されるMSLN標的三重特異性タンパク質は、薬物としての使用のために企図されている。投与は様々な方法によって、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所的、又は皮内の投与によって達成される。幾つかの実施形態において、投与経路は、治療の種類と、医薬組成物に含まれる化合物の種類に依存する。投与レジメンは主治医と他の臨床的要因によって決定される。任意の1人の患者のための用量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、性別、投与される特定の化合物、投与時間と投与経路、治療の種類、健康状態、及び同時に投与されている他の薬物を含む多くの因子に依存する。「有効量」は、こうした病状の減少又は緩解をもたらす、疾患の経過と重症度に影響を与えるのに十分な有効成分の量を指し、既知の方法を使用して決定されることもある。
【0092】
幾つかの実施形態において、本開示のMSLN標的三重特異性タンパク質は、週に1回の頻度で最大10mg/kgの用量で投与される。場合によっては、用量は、約1ng/kg~約10mg/kgに及ぶ。幾つかの実施形態において、投与量は、約1ng/kg~約10ng/kg、約5ng/kg~約15ng/kg、約12ng/kg~約20ng/kg、約18ng/kg~約30ng/kg、約25ng/kg~約50ng/kg、約35ng/kg~約60ng/kg、約45ng/kg~約70ng/kg、約65ng/kg~約85ng/kg、約80ng/kg~約1μg/kg、約0.5μg/kg~約5μg/kg、約2μg/kg~約10μg/kg、約7μg/kg~約15μg/kg、約12μg/kg~約25μg/kg、約20μg/kg~約50μg/kg、約35μg/kg~約70μg/kg、約45μg/kg~約80μg/kg、約65μg/kg~約90μg/kg、約85μg/kg~約0.1mg/kg、約0.095mg/kg~約10mg/kgである。場合によっては、用量は、約0.1mg/kg~約0.2mg/kg;約0.25mg/kg~約0.5mg/kg、約0.45mg/kg~約1mg/kg、約0.75mg/kg~約3mg/kg、約2.5mg/kg~約4mg/kg、約3.5mg/kg~約5mg/kg、約4.5mg/kg~約6mg/kg、約5.5mg/kg~約7mg/kg、約6.5mg/kg~約8mg/kg、約7.5mg/kg~約9mg/kg、又は約8.5mg/kg~約10mg/kgである。投与の頻度は、幾つかの実施形態において、ほぼ毎日(about less than daily)、隔日、1日1回未満、週に2回、毎週、7日に1回、2週に1回、2週に1回、3週に1回、4週に1回、又は月に1回である。場合によっては、投与の頻度は毎週である。場合によっては、投与の頻度は毎週であり、用量は最大10mg/kgである。場合によっては、投与の持続期間は約1日~約4週間以上である。
【0093】
処置の方法
本明細書にはまた、幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるような抗MSLN標的三重特異性タンパク質の投与を含む、個体の免疫系を刺激するための方法と使用が提供される。幾つかの例において、本明細書に記載される抗MSLN標的三重特異性タンパク質の投与は、標的抗原を発現する細胞への細胞毒性を引き起こす、及び/又は持続させる。幾つかの例において、細胞は、癌細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、自己反応性のT又はB細胞、損傷を受けた赤血球、動脈プラーク、或いは繊維症の組織である。
【0094】
また本明細書には、本明細書に記載される抗MSLN標的三重特異性タンパク質を、必要とする個体に投与する工程を含む、標的抗原に関連する疾患、障害、又は疾病の処置のための方法と使用も提供される。標的抗原に関連する疾患、障害、又は疾病としては、限定されないが、ウイルス感染、細菌感染、自己免疫性疾患、移植拒絶反応、アテローム性動脈硬化症、又は線維症が挙げられる。他の実施形態において、標的抗原に関連する疾患、障害、又は疾病は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主疾患、又は宿主対移植片疾患である。1つの実施形態において、標的抗原に関連する疾患、障害、又は疾病は癌である。本開示のMSLN結合タンパク質により、及びそれを使用する方法により処置、予防、又は管理され得る癌は、限定されないが、上皮細胞由来の癌を含む。そのような癌の例は、以下を含む:白血病、限定されないが、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、例えば骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球性、単球、及び赤白血症の白血病、並びに及び骨髄異形成症候群など;慢性白血病、限定されないが、慢性骨髄球(顆粒白血球)白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病など;一次性赤血球増加症;リンパ腫、限定されないが、ホジキン病、非ホジキン病など;多発性骨髄腫、限定されないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性黒色腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫、及び髄外の形質細胞腫など;ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症;意義不明の単クローン免疫グロブリン症;良性単クローン免疫グロブリン症;重鎖病;骨及び結合組織の肉腫、限定されないが、骨肉腫、骨肉腫(osteosarcoma)、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨の繊維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(血管肉腫(hemangiosarcoma))、繊維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、、神経鞘腫、横紋筋肉腫、及び滑膜肉腫など;脳腫瘍、限定されないが、神経膠腫、星細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起神経膠腫、非神経膠腫瘍、聴神経腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体腫、松果体芽細胞腫、及び原発性脳リンパ腫など;乳房癌、限定されないが、乳管癌、腺癌、小葉状(小細胞)癌、分泌管内癌、乳房の髄様癌、粘液性乳房癌、管状乳房癌、乳頭癌、パジェット病、及び炎症性乳癌など;副腎癌、限定されないが、褐色細胞腫及び副腎皮質細胞腫など;甲状腺癌、限定されないが、乳頭状又は濾胞性甲状腺癌、甲状腺髄様癌、及び未分化甲状腺癌など;膵臓癌、限定されないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、及びカルチノイド、又は島細胞腫など;下垂体癌、限定されないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、及び尿崩症;眼癌、限定されないが、虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫及び毛様体黒色腫などの眼黒色腫、及び網膜芽細胞腫など;有棘細胞癌、腺癌、及び黒色腫などの膣癌;有棘細胞癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、及びパジェット病などの外陰癌;子宮頚癌、限定されないが、扁平上皮癌及び腺癌;子宮癌、限定されないが、子宮内膜細胞腫及び子宮肉腫など;卵巣癌、限定されないが、卵巣上皮性悪性腫瘍、境界型腫瘍、生殖細胞腫瘍、及び間質性腫瘍など;食道癌、限定されないが、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘液性類表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣状癌、及び燕麦細胞(小細胞)癌腫など;胃癌、限定されないが、腺癌、肉芽腫性軟性(ポリープ状)、潰瘍化型、表層進展性、拡散進展性(diffusely spreading)、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、繊維肉腫、及び癌肉腫など;結腸癌;直腸癌;肝臓癌、限定されないが、肝細胞癌及び肝芽腫;腺癌などの胆嚢癌;胆管癌、限定されないが、乳頭状、結節状、及びびまん性など;肺癌、限定されないが、非小細胞肺癌、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌、及び小細胞肺癌など;精巣癌、限定されないが、胚腫瘍、精上皮腫、退生、古典的(典型的)、精母細胞、非セミノーマ、胎児性癌、奇形腫癌腫、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)、限定されないが前立腺上皮内腫瘍、腺癌、平滑筋肉腫、及び横紋筋肉腫などの前立腺癌など;腎癌(penal cancer);限定されないが扁平上皮細胞腫などの口腔癌;基底膜癌;唾液腺癌、限定されないが、腺癌、粘液性類表皮癌、及び腺様嚢胞癌(adenoidcystic carcinoma)など;咽頭癌、限定されないが、扁平上皮癌及び疣贅性など;皮膚癌、限定されないが、基底細胞癌、扁平上皮癌及び黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、ほくろ悪性黒色腫、末端黒子型黒色腫など;腎臓癌、限定されないが、腎細胞癌、腺癌、副腎腫、繊維肉腫、移行性細胞癌(腎盂及び/又は尿管)など;ウィルムス腫瘍;膀胱癌、限定されないが、移行上皮癌、扁平上皮癌、腺癌、癌肉腫。加えて、癌は、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ脈管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽細胞腫、上皮性悪性腫瘍、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、及び乳頭状腺癌を含む(このような障害に関しては、Fishman et al., 1985, Medicine, 2d Ed., J.B. Lippincott Co., Philadelphia and Murphy et al., 1997, Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, Penguin Books U.S.A., Inc., United States of Americaを参照)。
【0095】
本開示のMSLN標的三重特異性タンパク質は、以下を含む(これらに限定されない)様々な癌又は他の異常な増殖性疾患の処置又は予防にも有用である:膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、頚部、甲状腺、及び皮膚の癌を含む癌腫;扁平上皮癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫を含む、リンパ系統の造血腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病、並びに前骨髄性白血病を含む骨髄系統の造血腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉由来の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、悪性奇形腫、神経芽細胞腫、及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、及びシュワン細胞腫を含む、中枢神経系と末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む間充織由来の腫瘍;並びに、黒色腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、精上皮腫、甲状腺濾胞性癌、及び奇形癌を含む他の腫瘍。また、アポトーシスにおける異常によって引き起こされる癌も、本開示の方法及び組成物により処置されることが、企図される。そのような癌は、限定されないが、濾胞性リンパ腫、p53突然変異を持つ癌、乳房、前立腺、及び卵巣のホルモン依存性腫瘍、及び、家族性大腸腺腫症などの前癌正病変を含む。特異的な実施形態において、悪性病変又は悪性増殖(dysproliferative)変化(異形成及び形成異常症など)、或いは過剰増殖性障害)は、皮膚、肺、結腸、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、膵臓、卵巣又は子宮中で処置又は予防される。他の特異的な実施形態において、肉腫、黒色腫、又は白血病が処置又は予防される。
【0096】
本明細書で使用されるように、幾つかの実施形態において、「処置」、「処置すること」、或いは「処置された」とは、望ましくない生理的な疾病、障害、又は疾患を遅らせる(減らす)こと、或いは、有益な又は望ましい臨床結果を得ることを目的とする治療的処置を指す。本明細書に記載される目的のために、有益な又は望ましい臨床結果としては、限定されないが、症状の緩和;疾病、障害、又は疾患の程度の減少;疾病、障害、又は疾患の状態の安定化(即ち、悪化しないこと);疾病、障害、又は疾患の発症を遅らせること、又はその進行を遅らせること;疾病、障害、又は疾患の状態の改善;及び、検出可能又は検出不可能にかかわらず、疾病、障害、又は疾患の緩解(部分的又は全体)、或いはその亢進又は改善が挙げられる。処置は、過剰なレベルの副作用のない臨床的に有意な反応を誘発することを含む。処置は更に、処置を受けない場合の予想される生存時間と比較して、生存時間を延ばすことを含む。他の実施形態において、「処置」、「処置すること」、又は「処置された」とは、予防的な処置を指し、その目的は、例えば、疾患の素因のある人(例えば、乳癌などの疾患に対する遺伝子マーカーをつけた個体)など、望ましくない生理的な疾病、障害、又は疾患の発症を遅らせるか、或いはその重症度を低下させることである。
【0097】
本明細書に記載される方法の幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるようなMSLN標的三重特異性タンパク質は、特定の疾患、障害、又は疾病の処置のための薬剤と組み合わせて投与される。薬剤としては、限定されないが、抗体、小分子(例えば、化学療法剤)、ホルモン(ステロイド、ペプチドなど)、放射線療法(γ線、X線、及び/又は、放射性同位体、マイクロ波、UV放射などの指示された送達)、遺伝子治療(例えば、アンチセンス、レトロウイルス治療など)、及び他の免疫療法に関する治療が挙げられる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるような抗MSLN標的三重特異性タンパク質は、下痢止め薬、制吐剤、鎮痛剤、オピオイド、及び/又は非ステロイド性抗炎症薬と組み合わせて投与される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるような抗MSLN標的三重特異性タンパク質は、抗癌剤と組み合わせて投与される。本開示の医薬組成物、投薬形態、及びキットを含む、本開示の様々な実施形態に使用され得る抗癌剤の非限定的な例は、以下を含む:アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アムボマイシン;アメタントロンアセタート;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテーパ;アズトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ジメシル酸ビスナフィド;ビセレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナーナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベティマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼルシン;セデフィンガル;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デクソロマプラチン;デザグアミン;メシル酸デザグアミン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;ドゥアゾマイシン;エダトレキセート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメイト;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロオシタビン;フォスクィダン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモフォシン;インターロイキンII(組み換えインターロイキンII、又はrIL2を含む)、インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1、インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲスロロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;マイトジリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オクシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタマスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロクサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニマスチン;塩酸プロカルバジン;プロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴル;サフィンゴル塩酸塩;セムスチン;シムトラゼーネ;スパルフォスエートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロマスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェナール;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸トレクサトロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシビリン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンレウロジン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンゾキジン;硫酸ビンゾキジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン。抗癌剤の他の例は、限定されないが以下を含む:20-epi-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アキルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アムバマスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラフォライド;血管形成阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス;抗背方化形態形成タンパク質-1(anti-dorsalizing morphogenetic protein-1);抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシナート;アポトーシス遺伝子モジュレータ;細胞死レギュレーター;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリマスチン;アクシナスタチン1;アクシナスタチン2;アクシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾチロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジンイルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビセレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリポックスIL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来の阻害剤;カルゼルシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリックス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス‐ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェンアナログ;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチンアナログ;コナゲニン;クラムベシジン(crambescidin)816;クリスナトール;クリプトファイシン8;クリプトファイシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタンチラキノーズ;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスファート;細胞傷害性因子;シトスタチン;ダクリズマブ;デシタビン;デヒドロジデミンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキフォスダミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジデミンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール,9-;ジオクサマイシン;ジフェニルスピロマスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;ズオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスティン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチンアナログ;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレツッエラスチン;フラステロン(fluasterone);フルダラビン;塩酸フルオロダウノルニシン;フォルフェニメックス;ホルメスタン;フォストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテクサピリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリックス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ハプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロニック酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン(idramantone);イルモフォシン;イルモスタット;イミダゾアクリドン(imidazoacridones);イミキモド;免疫賦活剤ペプチド;インスリン様成長因子I受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール、4-;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラライドF;ラメラリン-Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミソール;リアロゾール;線形ポリアミンアナログ;親油性二糖類ペプチド;親油性白金化合物;リッソクリナミド(lissoclinamide)7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメテレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;HMG-CoAリダクターゼ阻害剤(限定されないが、ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、スタチン、シンバスタチン、及びアトルバスタチンなど);ロクソリビン;ラルトテカン;ルテチウムテクサピリン;リソフィリン;細胞溶解ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メタレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシンアナログ;ミトナファイド;マイトトキシン繊維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト胎盤性性腺刺激ホルモン;モノホスホリル脂質A+ミオバクテリア細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;外発性腫瘍抑圧遺伝子1ベースの治療薬;マスタード抗癌剤;ミカペロキサイドB;ミコバクテリウム細胞壁抽出物;ミラポロン;N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスティップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ニーリドロニック酸;中性エンドペプチターゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレータ;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアミン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイニン誘発剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オグサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセルアナログ;パクリタキセル誘導体;パラウアミ
ン;パルミトイルリゾキシン;パミドロニック酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリサルフェートナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルフォスファミド;ペリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノゲンアクチベータインヒビター;白金複合体;白金化合物;白金トリアミン複合体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;タンパク質Aベースの免疫モジュレータ;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類;チロシンホスファターゼタンパク質阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化したヘモグロビン・ポリオキシエチレン抱合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レティプチン;レニウムRe 186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチンアミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス;ラビジノンB1;ラボキシル;サフィンゴル;セイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi 1模倣物;セムスチン;セネスセンス由来の阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレータ;一本鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテート;フェニル酢酸ナトリウム;サルバロル;ソマトメジン結合タンパク質;ソナーミン;スパルフォシック酸;スピカマイシンD;スピロマスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクワラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分割阻害剤;スティピアミド;ストロメリシン阻害剤;サルフィノジン;超活性血管作用性小腸ペプチドアンタゴニスト;サラディスタ;スラミン;スウェインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロマスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;サリブラスチン;チオコラリン;トロンボポイエチン;トロンボポイエチン模倣物;チマルファジン;チモポイエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプロプリン;チラパザミン;チタノセン二塩化物;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシビリン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;テュロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来の成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクターシステム、赤血球遺伝子治療薬;ベラレゾール;ベラミン;アメリカツリスガラ;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンザルチン;Vitaxin(登録商標);ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;及びジノスタチンスチマラマー。追加の抗癌剤は5-フルオロウラシル及びロイコボリンである。サリドマイド及びトポイソメラーゼ阻害剤を利用する方法での使用時、これらの2つの薬剤は特に有用である。幾つかの実施形態において、本開示の抗MSLN標的三重特異性タンパク質は、ゲムシタビンと組み合わせて使用される。
【0098】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるような抗MSLN標的三重特異性タンパク質は、手術の前、間、又は後に投与される。
【0099】
メソテリン発現の検出及びメソテリン関連の癌の診断の方法
本開示の他の実施形態に従い、インビトロ又はインビボでメソテリンの発現を検出するためのキットが提供される。キットは、前述のMSLN標的三重特異性タンパク質(例えば、標識された抗MSLN単一ドメイン抗体又はその抗原結合フラグメントを含む三重特異性タンパク質)、及びラベルを検出するための1つ以上の化合物を含む。幾つかの実施形態において、ラベルは、蛍光ラベル、酵素ラベル、放射性ラベル、核磁気共鳴活性ラベル、発光ラベル、及び発色団ラベルから成る群から選択される。
【0100】
場合によっては、メソテリン発現は生体サンプルにおいて検出される。サンプルは、生検、剖検、及び病態の試料由来の組織を含むがこれらに限定されない任意のサンプルであり得る。生体サンプルはまた、組織の切片、例えば組織学目的のために得られた凍結切片を含む。生体サンプルは更に、血液、血清、血漿、痰、髄液、又は尿などの体液を含む。生体サンプルは、ヒト又は非ヒト霊長類などの哺乳動物から典型的に得られる。
【0101】
一実施形態において、被験体のサンプルを本明細書に開示されるような抗MSLN単一ドメイン抗体と接触させることにより、及びサンプルへの単一ドメイン抗体の結合を検出することにより被験体が癌を抱えるかどうか判定する方法が提供される。対照サンプルへの抗体の結合と比較した、サンプルへの抗体の結合の増加は、被験体が癌を抱えていると特定する。
【0102】
別の実施形態において、癌と診断された被験体のサンプルを本明細書に開示されるような抗MSLN単一ドメイン抗体と接触させることにより、及びサンプルへの抗体の結合を検出することにより、被験体の癌の診断を確認する方法が提供される。対照サンプルへの抗体の結合と比較した、サンプルへの抗体の結合の増加は、被験体の癌の診断を確認する。
【0103】
開示された方法の幾つかの例において、三重特異性タンパク質のMSLN単一ドメイン抗体は直接標識される。
【0104】
幾つかの例において、前記方法は、抗MSLN単一ドメイン抗体に特異的に結合する二次抗体をサンプルに接触させる工程;及び二次抗体の結合を検出する工程を含む。対照サンプルへの二次抗体の結合と比較した、サンプルへの二次抗体の結合の増加は、被験体の癌を検出し、又は被験体の癌の診断を確認する。
【0105】
場合によっては、癌は、中皮腫、前立腺癌、肺癌、胃癌、有棘細胞癌、膵臓癌、肝内胆管癌、三種陰性乳癌又は卵巣癌、或いはメソテリンを発現する他のあらゆる種類の癌である。
【0106】
幾つかの例において、対照サンプルは、癌のない被験体のサンプルである。特定の例において、サンプルは血液又は組織のサンプルである。
【0107】
場合によっては、メソテリンに結合する(例えば特異的に結合する)抗体は、検出可能なラベルにより直接標識される。別の実施形態において、メソテリン(一次抗体)に結合する(例えば特異的に結合する)抗体は標識されず、メソテリンに特異的に結合する抗体に結合可能な二次抗体又は他の分子が標識される。二次抗体は、一次抗体の特異的な種及びクラスに特異的に結合できるように選択される。例えば、一次抗体がラマIgGである場合、二次抗体は抗ラマIgGであり得る。抗体に結合可能な他の分子は、限定されないが、共に市販で入手可能なプロテインA及びプロテインGを含む。抗体又は二次抗体に適したラベルは上述されており、様々な酵素、補欠分子族団、蛍光体、発光材料、磁性薬剤、及び放射性物質を含む。適切な酵素の非限定的な例は、ホースラディシュペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを含む。適切な補欠分子団複合体の非限定的な例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含む;適切な蛍光体の非限定的な例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリトリンを含む。非限定的で典型的な発光材料はルミノールであり;非限定的で典型的な磁性薬剤はガドリニウムであり、非限定的で典型的な放射性ラベルは125I、131I、35S、又は3Hを含む。
【0108】
代替的な実施形態において、メソテリンは、検出可能な物質で標識したメソテリン基準、及びメソテリンに特異的に結合する非標識抗体を利用する競合イムノアッセイによって、生体サンプルにおいてアッセイされ得る。このアッセイにおいて、標識したメソテリン基準、及びメソテリンに特異的に結合する抗体が組み合わせられ、非標識抗体に結合される標識されたメソテリン基準の量が判定される。生体サンプル中のメソテリンの量は、メソテリンに特異的に結合する抗体に結合される標識されたメソテリン基準の量に反比例する。
【0109】
本明細書に開示されるイムノアッセイ及び方法は多数の目的のために使用可能である。一実施形態において、メソテリンに特異的に結合する抗体が、細胞培養における細胞中のメソテリンの産生を検出するために使用されてもよい。別の実施形態において、抗体は、組織サンプル、血液又は血清のサンプルなどの生体サンプル中のメソテリンの量を検出するために使用可能である。幾つかの例において、メソテリンは細胞表面メソテリンである。他の例において、メソテリンは、可溶性メソテリン(例えば、細胞培養上清におけるメソテリン、又は血液又は血清のサンプルなどの体液サンプルにおける可溶性メソテリン)である。
【0110】
一実施形態において、キットが、血液サンプル又は組織サンプルなどの生体サンプル中のメソテリンの検出のために提供される。例えば、被験体における癌診断を確認するために、生検を実行して組織学的検査のための組織サンプルを得ることができる。代替的に、血液サンプルを得て、可溶性メソテリンタンパク質又はフラグメントの存在を検出することができる。ポリペプチドを検出するためのキットは典型的に、メソテリンに特異的に結合する本開示に係る単一ドメイン抗体を含む。幾つかの実施形態において、scFvフラグメント、VHドメイン、又はFabなどの抗体フラグメントが、キットに含まれている。更なる実施形態において、抗体は標識される(例えば、蛍光ラベル、放射ラベル、又は酵素ラベルによる)。
【0111】
一実施形態において、キットは、メソテリンに結合する抗体の使用手段を開示する教材を含む。説明書が、電子的形態(コンピュータディスケット又はコンパクトディスクなど)に書き込まれてもよく、或いは視覚的なもの(ビデオファイルなど)であってもよい。キットはまた、キットの設計対象となる特定用途を容易にするための付加的な構成要素を含んでもよい。故に、例えばキットは、ラベルを検出する手段(酵素ラベルのための酵素基質、蛍光ラベル検出用のフィルタセット、二次抗体などの適切な第2のラベルなど)を付加的に含んでもよい。キットは付加的に、緩衝剤、及び特定の方法の実施に慣例的に使用される他の試薬を含んでもよい。そのようなキット及び適切な内容物は当業者に周知である。
【0112】
一実施形態において、診断キットはイムノアッセイを含む。イムノアッセイの詳細は利用される特定のフォーマットにより変動し得るが、生体サンプル中のメソテリンを検出する方法は通常、免疫学的反応条件下でメソテリンポリペプチドに特異的に反応する抗体に生体サンプルを接触させる工程を含む。抗体は、免疫複合体を形成するために免疫学的反応条件下で特異的に結合することを可能とされ、免疫複合体(結合抗体)の存在が直接又は間接的に検出される。
【0113】
細胞表面マーカーの有無を判定する方法が、当該技術分野で周知である。例えば、抗体は、酵素、磁気ビーズ、コロイド状磁気ビーズ、ハプテン、蛍光色素、金属化合物、放射性化合物又は薬物を含むがこれらに限定されない、他の化合物へと抱合され得る。抗体はまた、限定されないが放射免疫定量法(RIA)、ELISA、又は免疫組織化学アッセイなどのイムノアッセイにおいて利用可能である。抗体はまた、蛍光活性化細胞分類(FACS)に使用可能である。FACSは、細胞を分離又は選別するために、他のより洗練された検出レベルの中で、複数の色チャネル、低角度及び鈍角の光散乱検出チャネル、及びインピーダンスチャネルを利用する(米国特許5,061,620号を参照)。本明細書に開示されるようなメソテリンに結合する単一ドメイン抗体の何れかは、これらのアッセイに使用可能である。故に、抗体は、ELISA、RIA、FACS、組織免疫組織化学的検査、ウエスタンブロット、又は免疫沈降法を含むがこれらに限定されない、従来のイムノアッセイに使用可能である。
【実施例0114】
実施例1:幾つかの例示的なMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の結合及び細胞毒性活性を評価する方法
【0115】
タンパク質産生
三重特異性分子の配列を、リーダー配列が先行し、6xヒスチジンタグが後続する、哺乳動物発現ベクターpCDNA 3.4(Invitrogen)へとクローン化した。Expi293F細胞(Life Technologies A14527)は、Expi 293培地中の0.2~8x1e6細胞/mL間でOptimum Growth Flasks(Thomson)の懸濁液中で維持された。精製されたプラスミドDNAを、Expi293 Expression System Kit(Life Technologies A14635)プロトコルに従ってExpi293細胞へとトランスフェクトし、トランスフェクション後4-6日間維持した。トランスフェクトされたExpi293細胞からの、調製培地中の試験されている典型的な三重特異性タンパク質の量を、プロテインAチップを備えたOctet器機を使用し、且つ標準曲線に対して対照の三重特異性タンパク質を使用して、定量した。
【0116】
細胞毒性アッセイ
【0117】
ヒトT細胞依存性細胞毒性(TDCC)アッセイを使用して、T細胞が腫瘍細胞を死滅させるよう導く、三重特異性分子を含むT細胞エンゲージャー(engagers)の能力を測定した(Nazarian et al. 2015. J Biomol Screen. 20:519-27)。このアッセイにおいて、T細胞及び標的癌細胞株の細胞を、384ウェルのプレートにおいて10:1の比率で一緒に混合し、試験される様々な量の三重特異性タンパク質を加える。腫瘍細胞株を操作して、ルシフェラーゼタンパク質を発現させる。48時間後、残る生存可能な腫瘍細胞を定量するために、Steady-GloR Luminescent Assay(Promega)を使用した。
【0118】
本研究において、調整培地の滴定をTDCCアッセイ(T細胞依存性細胞の細胞毒性試験)に加えて、抗MSLN単一ドメイン抗体が、T細胞と、メソテリンを発現する卵巣癌細胞株、即ちOVCAR8との間にシナプスを形成することができるかどうかを評価した。OVCAR8細胞の生存率を48時間後に測定した。三重特異性タンパク質がT細胞死滅を媒介したことを確認した。
図2は、三重特異性タンパク質2A2及び2A4の試験による細胞生存率アッセイの例を示す。試験三重特異性タンパク質のTDCC活性に対するEC
50を、以下表1に列挙する。
【0119】
【0120】
更に、試験されている三重特異性タンパク質が、メソテリンを発現しないLNCaP細胞のT細胞死滅を媒介しなかったことから、試験されているMSLN標的三重特異性タンパク質のTDCC活性はメソテリンを発現する細胞に特異的であったことを、観察した。特に三重特異性タンパク質2A2、11F3、9H2、5C2、10B3、2F4、5F2、7F1、2F4、5H1、3B4、及び7H2は、LnCaP細胞による抗(ant)TDCC活性も示さなかった。
【0121】
実施例2:異種移植片腫瘍モデル
先の実施例のMSLN標的三重特異性タンパク質を異種移植片モデルにおいて評価する。
【0122】
メスの免疫不全NOD/scidマウスを、致死量以下で照射し(2 Gy)、1×106のNCI-H28細胞を右背側側腹部の皮下に接種させる。腫瘍が100~200mm3に達すると、動物を3つの処置群へと割り当てる。群2と3(各々8匹の動物)に、1.5×107の活性化したヒトT細胞を腹腔内注入する。3日後、群3の動物を引き続き、実施例1の50μgのMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質(qdx9d)の合計9回の静脈内投与で処置する。群1と2をビヒクルのみで処置する。体重と腫瘍体積を30日間測定する。
【0123】
先の実施例のMSLN標的三重特異性タンパク質で処置した動物は、各ビヒクルで処置した対照群と比較して腫瘍成長が統計的に著しく遅延していることが予想される。
【0124】
実施例3:卵巣癌患者への実施例1のMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の投与に対する概念実証臨床試験プロトコル
これは、卵巣癌に対する処置としての実施例1のMSLN標的抗原結合タンパク質を試験するための第I/II相臨床試験である。
【0125】
研究成果:
【0126】
一次:以前の実施例のMSLN標的三重特異性タンパク質の最大耐量
【0127】
二次:以前の実施例のMSLN標的三重特異性タンパク質のインビボでの反応が臨床反応に関連するかどうかを判定すること
【0128】
第I相
【0129】
最大耐用量(MTD)は、試験の第I相のセクションで判定される。
1.1 最大耐用量(MTD)は、試験の第I相のセクションで判定される。
1.2 適格基準を満たす患者は、以前の実施例のMSLN標的三重特異性タンパク質の試験にエントリーする。
1.3 目標は、参加者への重度の又は対処不可能な副作用なしに安全に投与可能な、以前の実施例のMSLN標的三重特異性タンパク質の最大投与量を同定することである。
与えられる投与量は、先の試験に登録された参加者の数、及び、投与量に対してどれほど十分に耐性があるかに依存する。全ての参加者が同じ投与量を受けるとは限らない。
【0130】
第II相
2.1 続く第II相のセクションでは、以前の実施例のMSLN標的三重特異性タンパク質の治療薬による治療の結果が少なくとも20%の反応率となるかどうかを判定することを目標として、MTDにて処置が行われる。
第II相に対する一次結果---以前の実施例のMSLN標的三重特異性タンパク質の治療の結果、患者の少なくとも20%が臨床反応(爆発的な反応、軽微な反応、部分的な反応、又は完全な反応)を達成するかどうかを判定する
【0131】
適格性:
現行のWorld Health Organisation Classification, 2014に従い卵巣癌が組織学的に確認されている
上皮表面-間質性腫瘍
性索-間質性の腫瘍
胚細胞腫瘍
悪性、特定不能
年齢≧18歳
平均寿命≧6週間
【0132】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示され且つ記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものであることは、当業者に明らかであろう。多数の変形、変更、及び置き換えは、本発明から逸脱することなく、当業者によって現在想到されるものである。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されるかもしれないことを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲及びその同等物の範囲内の方法及び構造は、それにより包含されることが、意図されている。
【0133】
実施例4:MH6T TriTACは、T細胞がMSLN発言卵巣癌細胞を死滅させるよう導く
ヒトT細胞依存性細胞毒性(TDCC)アッセイを使用して、T細胞が腫瘍細胞を死滅させるよう導く、三重特異性分子を含むT細胞エンゲージャー(engagers)の能力を測定した(Nazarian et al. 2015. J Biomol Screen. 20:519-27)。このアッセイに使用されるCaov3細胞を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。5つの異なる健康なドナー(ドナー02、ドナー86、ドナー41、ドナー81、及びドナー34)からのT細胞及び標的癌細胞Caov3を共に混合し、様々な量の本開示の例示的な三重特異性分子であるMH6T TriTAC(SEQ ID NO:98)を加え、混合物を37℃で48時間インキュベートした。Caov3細胞及びT細胞も、GFPを標的とする対照三重特異性分子、GFP TriTAC(SEQ ID NO:99)により37℃で48時間インキュベートした。48時間後、残る生存可能な腫瘍細胞を、発光アッセイによって定量した。
【0134】
MH6T TriTAC分子が、(
図3に示されるように)5人全ての健康なドナーのT細胞に標的癌細胞Caov3を死滅させるよう導くことができ、一方で対照GFP TriTAC分子が、(
図3に示されるように)5つの健康なドナーの何れかのT細胞にCaov3細胞を死滅させるよう導くことができなかったことが、観察された。
【0135】
上記のような同じプロトコルを使用する更なるアッセイを、OVCAR3細胞を使用して実行した。 MH6T TriTAC分子が、(
図4に示されるように)5人全ての健康なドナーのT細胞に標的癌細胞OVCAR3を死滅させるよう導くことができ、一方で対照GFP TriTAC分子が、(
図4に示されるように)5つの健康なドナーの何れかのT細胞にOVCAR3細胞を死滅させるよう導くことができなかったことが、観察された。
【0136】
標的細胞を発現するMSLNの死滅に対するEC50値を以下の表IIに列挙する。
【0137】
【0138】
実施例5:MH6T TriTACは、T細胞が、MSLNを発現しない細胞ではなくMSLNを発現する細胞を死滅させるよう導く
このアッセイにおいて、健康なドナーのT細胞を、MSLNを発現する標的癌細胞(Caov3細胞、Caov4細胞、OVCAR3細胞、及びOVCAR8細胞)、又はMSLNを発現しない標的癌細胞(NCI-H510A細胞、MDAPCa2b細胞)でインキュベートした。この研究に使用される標的細胞の各々を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。様々な量のMH6T TriTAC(SEQ ID NO:98)分子を上述のT細胞と標的癌細胞の混合物に加えた。混合物を37℃で48時間インキュベートした。48時間後、残る生存可能な標的癌細胞を、発光アッセイによって定量した。
【0139】
MH6T TriTAC分子が、T細胞にMSLNを発現する標的癌細胞(即ち、
図5に示されるような、Caoc3、Caov4、OVCAR3、及びOVCAR8細胞)を死滅させるよう導くことができたことを、観察した。しかし、MH6T TriTAC分子は、T細胞に、
図5にも示されるMSLNを発現しない標的癌細胞(MDAPCa2b及びNCI-H510A細胞)を死滅させるよう導くことができなかった。
【0140】
MSLNを発現する癌細胞の死滅に対するEC50値を以下の表IIIに列挙する。
【0141】
【0142】
実施例6:MH6T TriTACは、カニクイザル由来のT細胞がヒト卵巣癌細胞株を死滅させるよう導いた
このアッセイにおいて、カニクイザルドナーからの末梢血単核球(PBMC;T細胞はPBMCの構成要素である)を、MSLNを発現する細胞(CaOV3細胞及びOVCAR3細胞)と混合し、様々な量のMH6T TriTAC(SEQ ID NO:98)を混合物に加え、37℃で48時間インキュベートした。並行して、カニクイザルPBMC及びMSLN発現細胞の混合物を、上述のように、37℃で48時間、GFPを標的とする様々な量の対照TriTAC分子GFP TriTAC(SEQ ID NO:99)でインキュベートした。このアッセイに使用される標的癌細胞を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。48時間後、残る生存可能な標的細胞を、発光アッセイによって定量した。
【0143】
MH6T TriTAC分子は、
図6に示されるようにカニクイザルPBMCにMSLN発現細胞(即ち、Caov3及びOVCARを効率よく死滅させるよう導くことができ、一方で対照GFP TriTAC分子は、(
図6に示されるように)カニクイザルPBMCに細胞を死滅させるよう導くことができなかったことを、観察した。MH6T TriTAC分子に対するEC
50値は、OVCAR3細胞では2.9pM、及びCaov3細胞では3.0pMであり、これらは、表IIに示されるように、ヒトT細胞で観察されたEC
50値とは大きく相違しなかった。
【0144】
実施例7:MH6T TriTAC分子は、ヒト血清アルブミンの存在下又は不在下でT細胞によるMSLNを発現するNCI-H2052中皮腫細胞の死滅を導いた
この研究の目標は、MH6T TriTAC分子によるヒト血清アルブミン(HSA)への結合が、T細胞にMSLNを発現する細胞を死滅させるよう導くMH6T TriTAC分子の能力に影響を与えたかどうか評価することであった。この研究に使用されるNCI-H2052中皮腫細胞を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。健康なドナーのT細胞及びMSLN発現細胞(NCI-H2052)を組み合わせ、様々な量のMH6T TriTAC(SEQ ID NO:98)分子を混合物に加えた。混合物をHSAの存在下又は不在下で、37℃で48時間インキュベートした。NCI-H2052細胞及びT細胞の混合物も、HSAの存在下で、GFPを標的とする対照三重特異性分子、GFP TriTAC(SEQ ID NO:99)により37℃で48時間インキュベートした。48時間後、残る生存可能な標的細胞を、発光アッセイによって定量した。
【0145】
MH6T TriTAC分子は、HSAの存在下又は不在下で(
図7に示されるように)T細胞にNCI-H2052細胞を死滅させるよう効率よく導くことができ、一方で対照GFP TriTAC分子は、(
図7に示されるように)細胞の死滅を導くことができなかったことを、観察した。HSAの存在下で、細胞死滅に関するEC
50値は、(表IVに示されるように)約3.2倍増加したことも観察した。
【0146】
更に、TDCCアッセイを、追加のMSLN発現細胞株を用いて、15mg/mlのHSAの存在下又は不在下で、MH6T TriTAC分子により実行し、EC50値を表IVに提示する。
【0147】
【0148】
実施例8:4つの異なるドナーからのT細胞は、MH6T TriTAC及びMSLN発現Caov4細胞の存在下でTNF-αを分泌する
このアッセイに使用される標的癌細胞CaOv4を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。このアッセイにおいて、4つの異なる健康なドナー(ドナー02、ドナー86、ドナー35、及びドナー81)からのT細胞及びCaov4細胞を共に混合し、様々な量のMH6T TriTAC分子(SEQ ID NO:98)を加え、混合物を37℃で48時間インキュベートした。Caov4細胞及びT細胞も、GFPを標的とする対照三重特異性分子、GFP TriTAC(SEQ ID NO:99)により37℃で48時間インキュベートした。発光アッセイを使用して標的癌細胞の生存率を測定する前に、TDCCアッセイからの調整培地を48時間で集めた。調整培地中のTNF-αの濃度を、AlphaLISAアッセイキット(Perkin Elmer)を使用して測定した。
【0149】
TNF-αは、
図8に示されるように、Caov4細胞及びMH6T TriTAC分子の存在下で培地に分泌されたが、Caov4細胞及び対照GFP TriTAC分子の存在下では分泌されなかったことを、観察した。
【0150】
更に、効率的な死滅を、対照GFP TriTAC分子の存在下ではなく、MH6T TriTAC分子の存在下で、4人全ての健康なドナーからのT細胞により観察した。TDCCアッセイも追加のMSLN発現細胞株(Caov3細胞、OVCAR3細胞、及びOVCAR8細胞)に対して設定し、同様のTNF-α発現を観察した。MH6T TriTACで誘導されるTNF-αの発現に対するEC50値を、表Vに提示する。しかし、アッセイを、MSLNを発現しない癌細胞(NCI-H510A細胞、又はMDAPCa2b細胞)を使用して実行したとき、MH6T TriTACにより導かれたTNF-αの分泌は観察されなかった(図示せず)。故に、この研究は、MH6T TriTAC分子がMSLN発現標的癌細胞の存在下でT細胞を活性化することができたことを実証した。
【0151】
【0152】
実施例9:MH6T TriTAC及びMSLN発現OVCAR8細胞の存在下での4つの異なるドナーからのT細胞上でのCD69発現の活性化
このアッセイに使用されるOVCAR8細胞を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。このアッセイにおいて、4つの異なる健康なドナー(ドナー02、ドナー86、ドナー35、及びドナー81)からのT細胞及びOVCAR8細胞を共に混合し、様々な量のMH6T TriTAC分子(SEQ ID NO:98)を加え、混合物を37℃で48時間インキュベートした。OVCAR8細胞及びT細胞も、GFPを標的とする対照三重特異性分子、GFP TriTAC(SEQ ID NO:99)により37℃で48時間インキュベートした。48時間後、T細胞を集め、T細胞上でのCD69発現をフローサイトメトリーによって測定した。
【0153】
CD69発現を、
図9に示されるように、陰性対照GFP TriTAC及びOVCAR8細胞の存在下ではなく、OVCAR8細胞及びMH6T TriTAC分子の存在下で、4人全ての健康なドナーからのT細胞上で検出した。TDCCアッセイも追加のMSLN発現細胞(Caov3細胞、OVCAR3細胞、及びOVCAR8細胞)に対して設定し、同様のCD69発現を観察した。Caov3細胞及びOVCAR8細胞におけるMH6T TriTACで誘導されたCD69の活性化に対するEC
50値を表VIに提示する。
【0154】
【0155】
アッセイを、MSLNを発現しない癌細胞(NCI-H510A細胞、又はMDAPCa2b細胞を使用して実行したとき、MH6Tで誘導されるCD69の活性化は観察されなかった(図示せず)。故に、この研究は、MH6T TriTAC分子がMSLN発現標的癌細胞の存在下でT細胞を活性化することができたことを実証した。
【0156】
実施例10:MSLN発現/非発現細胞株に結合するMH6T TriTACの測定
この研究のために、MSLNを発現する特定の標的癌細胞(Caov3細胞、CaOV4細胞、OVCAR3細胞、及びOVCAR8細胞)及びMSLNを発現しない特定の癌細胞(MDAPCa2b細胞及びNCI-H510A細胞)を、MH6 TriTAC分子(SEQ ID NO:98)又は対照GFP TriTAC分子(SEQ ID NO:99)でインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、未結合のMH6T又はGFP TriTAC分子を取り除き、TriTAC分子の抗アルブミンドメインを認識できる、Alexa Fluor 647に抱合される二次抗体で更にインキュベートした。MSLN発現又は非MSLN発現細胞へのMH6T TriTAC又はGFP TriTACの結合を、フローサイトメトリーによって測定した。
【0157】
MSLNを発現する細胞株(Caov3、Caov4、OVCAR3、及びOVCAR8)へのMH6T TriTAC分子の強力な結合が、
図10Aに見られるように観察され(左上パネルはCaov3細胞へのMH6T TriTACの結合を示し;右上パネルはCaov4細胞へのMH6T TriTACの結合を示し;左下パネルはOVCAR3細胞へのMH6T TriTACの結合を示し;右下パネルはOVCAR8細胞のMH6T TriTACへの結合を示す);及び、
図10Bに示されるように、MSLNを発現しない細胞株では結合は観察されなかった(左パネルはMDAPCa2b細胞へのMH6T TriTACの結合の欠如を示し、右パネルはNCI-H510A細胞へのMH6T TriTACの結合の欠如を示す)。更に、結合は、
図10A及び10Bの両方に示されるように、細胞型の何れかがGFP TriTAC分子でインキュベートされたときに観察されなかった。
【0158】
実施例11:ドナーからのT細胞に結合するMH6T TriTACの測定
この研究のために、4つの健康なドナーからのT細胞を、陰性対照としてMH6 TriTAC分子(SEQ ID NO:98)又は緩衝液によりインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、未結合のMH6T TriTAC分子を取り除き、MH6T TriTAC分子の抗アルブミンドメインを認識できる、Alexa Fluor 647を抱合した二次抗体で更にインキュベートした。細胞へのMH6T TriTACの結合をフローサイトメトリーによって測定した。
【0159】
MH6T TriTAC分子で処置した4つ全てのドナーからのT細胞へのMH6T TriTACの結合は、
図11に示されるように観察された(左上パネルはドナー2のT細胞へのMH6T TriTACの結合を示し;右上パネルはドナー35のT細胞へのMH6T TriTACの結合を示し;左下パネルはドナー41のT細胞へのMH6T TriTACの結合を示し;右下パネルはドナー81のT細胞へのMH6T TriTACの結合を示す)。
【0160】
実施例12:MH6T TriTAC分子で処置したマウスにおける腫瘍成長の阻害
この研究のために、10
7のNCI-H292細胞及び10
7のヒトPBMCを、NCGマウスの2つの群(群ごとに8匹のマウス)において共に皮下移植した。5日後、1つの群のマウスに、MH6T TriTAC分子(SEQ ID NO:98)を、10日間毎日(5-14日目)、0.25mg/kgの投与量で注入し;他の群のマウスにはビヒクル対照を注入した。腫瘍堆積を数日毎に測定し、36日目に試験を終了した。
図12に示されるように、ビヒクル対照を注入されたマウスと比較して腫瘍成長の有意な阻害を、MH6 TriTAC分子を注入されたマウスにおいて観察した。
【0161】
実施例13:カニクイザルにおけるMH6T TriTACの薬物動態
この研究のために、2匹のカニクイザルに、10mg/kgの投与量のMH6T TriTAC(SEQ ID NO:98)を静脈内注入し、血清サンプルを注入後の様々な時点で集めた。血清中のMH6T TriTACの量を、電気化学発光アッセイにおいて、MH6T TriTAC分子を認識する抗イディオタイプ抗体を使用して測定した。
図13は、様々な時点での血清M6HT TriTACレベルのプロットを示す。その後、このデータを使用して、表VIIで提供されるようにMH6T TriTAC分子の薬物動態特性を算出した。
【0162】
【0163】
実施例14:最大活性に対するCD3ε結合親和性の最適化、及び本開示の2つの典型的な三重特異性分子の曝露
本開示の2つの典型的な三重特異性分子、TriTAC 74(SEQ ID NO:100)及びTriTAC 75(SEQ ID NO:101)の、CD3ε、MSLN、及びアルブミン結合親和性を、この研究のために測定した。TriTAC74は、
図14に示されるように、2つの分子の結合親和性が腫瘍標的(MSLN)及びアルブミンに対して同様であったとしても、ヒトCD3εの結合においてTriTAC75よりも約5倍強力であったことを観察した。加えて、TDCCアッセイを、SKOV3及びOVCARの細胞を使用して、TriTAC 74及びTriTAC 75分子により実行した。
図14は、TDCCアッセイにおいて得られたEC
50値を示す。
【0164】
CD3ε親和性における差異は、表VIIIで提供される、(0.02mg/kgの静脈内ボーラス投与量で)TriTAC分子をカニクイザルに注入した後の薬物動態アッセイにおいて測定されるように、TriTAC 75と比較してAUCをおよそ30%~50%増大させたことが分かった。TriTAC分子の血中濃度を、抗イディオタイプ抗体を伴うMeso Scale Discovery(MSD)アッセイを使用して、注射後の様々な時点で測定した。MSDアッセイを、n=2の反復を使用して実行した。MSDアッセイで観察された血中濃度を
図15に示し、薬物動態パラメータを表VIIIに列挙する。
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
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【0188】
コードされた前記MSLN結合三重特異性タンパク質の前記第1のドメインが、可変軽ドメインおよび可変重ドメインを含む単鎖可変フラグメントを含む、請求項1に記載の核酸。
コードされた前記MSLN結合三重特異性タンパク質の前記第3のドメインが、SEQ ID No:1乃至40及び102乃至105からなる群から選択される配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の核酸。
コードされた前記MSLN結合三重特異性タンパク質の前記CDR1が、SEQ ID No:139のアミノ酸配列を含み、前記コードされたMSLN結合三重特異性タンパク質の前記CDR2は、SEQ ID No:178のアミノ酸配列を含み、前記コードされたMSLN結合三重特異性タンパク質の前記CDR3は、SEQ ID No:217のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸。
コードされた前記MSLN結合三重特異性タンパク質の前記第3のドメインが、SEQ ID No:102乃至105からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の核酸。
コードされた前記MSLN結合三重特異性タンパク質の前記第3のドメインが、SEQ ID No:57として示される配列を含むヒトメソテリンタンパク質のエピトープに結合する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の核酸。
前記リンカーL1およびL2がそれぞれ独立して、(GS)n(SEQ ID NO:87)、(GGS)n(SEQ ID NO:88)、(GGGS)から選択され、ここでnは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の核酸。
前記リンカーL1およびL2がそれぞれ独立して(GGGGS)4(SEQ ID NO:95)または(GGGGS)3(SEQ ID NO:96)である、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の核酸。
コードされた前記MSLN結合三重特異性タンパク質が、SEQ ID NO:58乃至86、98、100、及び101からなる群から選択される配列と少なくとも85%同1であるアミノ酸配列を含む、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の核酸。
コードされた前記MSLN結合三重特異性タンパク質が、SEQ ID NO:98、100、及び101からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の核酸。