(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103192
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】車両情報処理装置および車両情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/20 20060101AFI20230719BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230719BHJP
G07C 1/12 20060101ALI20230719BHJP
G07C 1/20 20060101ALI20230719BHJP
G04F 10/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G01C21/20
G08G1/00 D
G07C1/12
G07C1/20
G04F10/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003363
(22)【出願日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2022003493
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594058665
【氏名又は名称】株式会社ブリッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】富田 祐史
【テーマコード(参考)】
2F129
3E138
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129EE29
2F129EE43
2F129EE67
2F129EE83
2F129EE94
2F129FF02
2F129FF15
2F129FF17
2F129FF67
2F129FF71
2F129FF75
2F129GG17
2F129GG29
2F129HH02
2F129HH12
3E138AA07
3E138CB02
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB15
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF27
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】GPSの位置情報を利用して簡単な操作で車両に関する情報の処理を行うことができる車両情報処理装置および車両情報処理プログラムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様は、車両の位置情報を所定のサンプリングレートで取得するGPS受信部と、コース上の所望の基準位置に前記車両が位置する状態で基準位置指定信号を発生させる基準指定部と、基準指定部で発生した基準位置指定信号を受けたタイミングに基づきGPS受信部で受信した車両の位置情報を基準位置座標として取得する基準位置取得部と、基準位置取得部で取得した基準位置座標を含み、車両の走行ラインと平行な2辺を有する矩形の検知エリアを算出する検知エリア算出部と、車両の走行中にGPS受信部で受信した現在位置座標が検知エリアの内側から出て再び検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測する所要時間計測部と、を備えた車両情報処理装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が所定のコースを走行する際の所要時間を計測する機能を有する車両情報処理装置であって、
前記車両の位置情報を所定のサンプリングレートで取得するGPS受信部と、
前記コース上の所望の基準位置に前記車両が位置する状態で基準位置指定信号を発生させる基準指定部と、
前記基準指定部で発生した前記基準位置指定信号を受けたタイミングに基づき前記GPS受信部で受信した前記車両の位置情報を基準位置情報として取得する基準位置取得部と、
前記基準位置取得部で検出した前記基準位置情報で示される基準位置座標を含み、前記車両の走行ラインと平行な2辺を有する矩形の検知エリアを算出する検知エリア算出部と、
前記車両の走行中に前記GPS受信部で受信した現在位置座標が、前記検知エリアの内側から出て再び前記検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測する所要時間計測部と、
を備えた、車両情報処理装置。
【請求項2】
車両がコースを走行する際の情報を処理する車両情報処理装置であって、
前記車両の位置情報を所定のサンプリングレートで取得するGPS受信部と、
前記コース上の所望の基準位置の座標を基準位置情報として取得する基準位置取得部と、
前記基準位置取得部で検出した前記基準位置情報で示される基準位置座標を含み、前記コースと重なる四角形の検知エリアを算出する検知エリア算出部と、
前記車両の走行中に前記GPS受信部で受信した現在位置座標が、前記検知エリアの外側から内側に入った際の日時情報および前記車両の位置情報を記憶する記憶部と、
を備えた、車両情報処理装置。
【請求項3】
前記検知エリア算出部は、
前記基準位置座標と、前記基準位置指定信号を受ける直前または直後に前記GPS受信部で受信した前記車両の位置情報とから前記走行ラインを演算し、前記基準位置座標を中心として前記走行ラインに沿った前後の領域および前記走行ラインと直交する方向に沿った左右の領域からなる矩形の前記検知エリアを算出する、請求項1記載の車両情報処理装置。
【請求項4】
前記検知エリア算出部は、前記基準位置座標の前後における前記コースのカーブの方向に応じて前記検知エリアを前記走行ラインに直交する方向の一方へ拡張またはオフセットする補正を行う、請求項1記載の車両情報処理装置。
【請求項5】
前記検知エリア算出部は、前記基準位置取得部で前記基準位置指定信号を受けたタイミングでの前記車両の速度に応じて前記検知エリアの大きさを変更する、請求項1記載の車両情報処理装置。
【請求項6】
前記検知エリア算出部は、前記GPS受信部で前記車両の位置情報を取得するサンプリングレートおよび前記車両の速度の少なくともいずれかに応じて前記検知エリアの大きさを変更する、請求項1または請求項2に記載の車両情報処理装置。
【請求項7】
前記検知エリア算出部は、前記コース上における複数の前記検知エリアを算出し、
前記所要時間計測部は、前記現在位置座標が、前記複数の検知エリアのうち一の前記検知エリアの内側から出て他の前記検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測する、請求項1記載の車両情報処理装置。
【請求項8】
前記現在位置座標が前記検知エリアの外側から内側に入った段階で、前記車両の進行方向における前記現在位置座標と前記基準位置座標との差から得られる距離と、前記車両の直近の速度から得られる単位走行距離あたりの時間とに基づき前記所要時間の補正値を演算する補正演算部をさらに備え、
前記所要時間計測部は、計測した前記所要時間を前記補正値に基づき補正して補正後所要時間を演算する、請求項1記載の車両情報処理装置。
【請求項9】
車両が所定のコースを走行する際の所要時間を計測する車両情報処理プログラムであって、
コンピュータに、
前記車両の位置情報を取得するGPS受信ステップと、
前記コース上の所望の基準位置に前記車両が位置する状態で基準位置指定信号を発生させる基準指定ステップと、
前記基準指定ステップで発生した前記基準位置指定信号を受けたタイミングに基づき前記GPS受信ステップで受信した前記車両の位置情報を基準位置情報として取得する基準位置取得ステップと、
前記基準位置取得ステップで検出した前記基準位置情報で示される基準位置座標を含み、前記車両の走行ラインと平行な2辺を有する矩形の検知エリアを算出する検知エリア算出ステップと、
前記車両の走行中に前記GPS受信ステップで受信した現在位置座標が、前記検知エリアの内側から出て再び前記検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測する所要時間計測ステップと、を実行させる、車両情報処理プログラム。
【請求項10】
車両がコースを走行する際の情報を処理する車両情報処理プログラムであって、
コンピュータに、
前記車両の位置情報を取得するGPS受信ステップと、
前記コース上の所望の基準位置の座標を基準位置情報として取得する基準位置取得ステップと、
前記基準位置取得ステップで検出した前記基準位置情報で示される基準位置座標を含み、前記コースと重なる四角形の検知エリアを算出する検知エリア算出ステップと、
前記車両の走行中に前記GPS受信ステップで受信した現在位置座標が、前記検知エリアの外側から内側に入った際の日時情報および前記車両の位置情報を記憶する記憶ステップと、を実行させる、車両情報処理プログラム。
【請求項11】
前記検知エリア算出ステップは、前記基準位置座標と、前記基準位置指定信号を受ける直前または直後に前記GPS受信ステップで受信した前記車両の位置情報とから前記車両の走行ラインを演算し、前記基準位置座標を中心として前記走行ラインに沿った前後の領域および前記走行ラインと直交する方向に沿った左右の領域からなる矩形の前記検知エリアを算出する、請求項9記載の車両情報処理プログラム。
【請求項12】
前記検知エリア算出ステップは、前記基準位置座標の前後における前記コースのカーブの方向に応じて前記検知エリアを前記走行ラインに直交する方向の一方へ拡張またはオフセットする補正を行う、請求項9記載の車両情報処理プログラム。
【請求項13】
前記検知エリア算出ステップは、前記基準位置取得ステップで前記基準位置指定信号を受けたタイミングでの前記車両の速度に応じて前記検知エリアの大きさを変更する、請求項9記載の車両情報処理プログラム。
【請求項14】
前記検知エリア算出ステップは、前記GPS受信ステップで前記車両の位置情報を取得するサンプリングレートおよび前記車両の速度の少なくともいずれかに応じて前記検知エリアの大きさを変更する、請求項9または請求項10に記載の車両情報処理プログラム。
【請求項15】
前記検知エリア算出ステップは、前記コース上における複数の前記検知エリアを算出し、
前記所要時間計測ステップは、前記現在位置座標が、前記複数の検知エリアのうち一の前記検知エリアの内側から出て他の前記検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測する、請求項9記載の車両情報処理プログラム。
【請求項16】
前記現在位置座標が前記検知エリアの外側から内側に入った段階で、前記車両の進行方向における前記現在位置座標と前記基準位置座標との差から得られる距離と、前記車両の直近の速度から得られる単位走行距離あたりの時間とに基づき前記所要時間の補正値を演算する補正演算ステップをさらに備え、
前記所要時間計測ステップは、計測した前記所要時間を前記補正値に基づき補正して補正後所要時間を演算する、請求項9記載の車両情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のコースを走行する車両の走行タイムを計測するなど、車両に関する情報の処理を行う車両情報処理装置および車両情報処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーキットなどの所定のコースを車両で走行する際、周回ごとの走行タイム(ラップタイム)や区間タイムを計測する場合がある。一般的には、コースの所定位置に予めアンテナを埋設しておき、走行する車両に搭載した受信機(トランスポンダ)でアンテナからの信号を受信することでタイム計測のスタート/ストップを行う計測システムが使用される。計測システムによっては、アンテナの代わりに磁気バーを埋設しておき、車両に搭載した磁気センサによって磁気バーの通過を判断して、タイム計測のスタート/ストップを行うものもある。
【0003】
これらの計測システムでは、予めサーキット側の設備としてコースにアンテナや磁気バーを埋設しておき、タイム計測を制御するための機材を用意しておく必要がある。このような計測システムはコストがかかることから、車両側だけで簡易的に走行タイムを計測する装置もある。例えば、走行する車両の位置情報をGPS(Global Positioning System)によって検知することでサーキットの周回を判断し、タイム計測を行う装置が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、GPSによる位置情報からゴールラインの直線式を算出し、車両がゴールラインを通過してから周回コースを1回周回してゴールラインに再び到達するまでの所要時間を計測する車載ラップタイム計測装置が開示される。
【0005】
特許文献2には、低コスト化を図りつつ、測定場所の制限を緩和するため、地図データに基づく地図上にタイム計測用のコースを生成し、走行タイムをGPS衛星からの電波に基づいて計測するタイム計測装置が開示される。特許文献3には、測位衛星の衛星信号に基づく所定の基準位置の車両通過時刻の測定精度を向上するタイム測定装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-088136号公報
【特許文献2】特開2010-108231号公報
【特許文献3】特開2017-228161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サーキットなどの所定のコースを走行する際のラップタイムや区間タイムをGPSの位置情報を利用して計測する場合、コースに設けられた計測システムを利用することなく簡単な構成で実現することができる。このようなGPSの位置情報を利用した走行タイムの計測装置においては、運転者に過大な負担をかけることなく簡単な操作で、しかも高精度に計測できることが望まれる。
【0008】
本発明は、GPSの位置情報を利用して簡単な操作で高精度に走行タイムを計測するなど、車両に関する情報の処理を行うことができる車両情報処理装置および車両情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、車両が所定のコースを走行する際の所要時間を計測する機能を有する車両情報処理装置であって、車両の位置情報を所定のサンプリングレートで取得するGPS受信部と、コース上の所望の基準位置に前記車両が位置する状態で基準位置指定信号を発生させる基準指定部と、基準指定部で発生した基準位置指定信号を受けたタイミングに基づきGPS受信部で受信した車両の位置情報を基準位置座標として取得する基準位置取得部と、基準位置取得部で取得した基準位置座標を含み、車両の走行ラインと平行な2辺を有する矩形の検知エリアを算出する検知エリア算出部と、車両の走行中にGPS受信部で受信した現在位置座標が、検知エリアの内側から出て再び検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測する所要時間計測部と、を備えた車両情報処理装置である。
【0010】
このような構成によれば、コース上を車両で走行している際に、走行タイムの計測の基準となるコース上の位置を車両の走行中に指定することで、走行タイムの計測のスタートおよびストップのトリガーとなる位置(基準位置座標)が設定される。基準位置座標が設定されると、この基準位置座標を含み、車両の走行ラインと平行な2辺を有する矩形の検知エリアが算出される。走行タイムの計測では、車両の走行中にGPS受信部で受信した現在位置座標が、矩形の検知エリアの内側から出て再び矩形の検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測する。車両が走行する実際のコースにはある程度の幅(幅員)があるため、矩形の検知エリアを設定することで、コース上の走行ラインのずれやGPSの誤差を吸収しやすい。
【0011】
本発明の他の一態様は、車両がコースを走行する際の情報を処理する車両情報処理装置であって、車両の位置情報を所定のサンプリングレートで取得するGPS受信部と、コース上の所望の基準位置の座標を基準位置情報として取得する基準位置取得部と、基準位置取得部で検出した基準位置情報で示される基準位置座標を含み、コースと重なる四角形の検知エリアを算出する検知エリア算出部と、車両の走行中にGPS受信部で受信した現在位置座標が、検知エリアの外側から内側に入った際の日時情報および車両の位置情報を記憶する記憶部と、を備えた車両情報処理装置である。
【0012】
このような構成によれば、予め基準位置座標が設定されると、この基準位置座標を含み、コースと重なる四角形の検知エリアが算出される。そして、車両の走行中にGPS受信部で受信した現在位置座標が、矩形の検知エリアの外側から内側に入った際の日時情報および車両の位置情報が記憶部に記憶される。車両が走行する実際のコースにはある程度の幅(幅員)があるため、四角形の検知エリアを設定することで、コース上の走行ラインのずれやGPSの誤差を吸収しやすい。
【0013】
上記車両情報処理装置において、検知エリア算出部は、基準位置座標と、基準位置指定信号を受ける直前または直後にGPS受信部で受信した車両の位置情報とから走行ラインを演算し、基準位置座標を中心として走行ラインに沿った前後の領域および走行ラインと直交する方向に沿った左右の領域からなる矩形の検知エリアを算出するようにしてもよい。これにより、基準位置座標を中心として車両の走行ラインを基準とした矩形の検知エリアを自動的に設定することができる。
【0014】
上記車両情報処理装置において、検知エリア算出部は、基準位置座標の前後におけるコースのカーブの方向に応じて検知エリアを走行ラインに直交する方向の一方へ拡張またはオフセットする補正を行うようにしてもよい。これにより、コースのレイアウトに基づく車両の走行ラインがコースの幅方向のどの位置にあるかを想定して、検知エリアをコースの幅方向に適合させることができる。
【0015】
上記車両情報処理装置において、検知エリア算出部は、基準位置取得部で基準位置指定信号を受けたタイミングでの車両の速度に応じて検知エリアの大きさを変更するようにしてもよい。これにより、走行中の車両のGPSの位置情報を検知エリア内で取得する確率が高まるとともに、計測精度が向上する。
【0016】
上記車両情報処理装置において、検知エリア算出部は、GPS受信部で車両の位置情報を取得するサンプリングレートおよび車両の速度の少なくともいずれかに応じて検知エリアの大きさを変更するようにしてもよい。これにより、走行中の車両のGPSの位置情報を検知エリア内で取得する確率が高まるとともに、計測精度が向上する。
【0017】
上記車両情報処理装置において、検知エリア算出部は、コース上における複数の検知エリアを算出し、所要時間計測部は、現在位置座標が、複数の検知エリアのうち一の検知エリアの内側から出て他の検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測するようにしてもよい。これにより、コースの区間タイムを計測することができる。
【0018】
上記車両情報処理装置において、現在位置座標が検知エリアの外側から内側に入った段階で、車両の進行方向における現在位置座標と基準位置座標との差から得られる距離と、車両の直近の速度から得られる単位走行距離あたりの時間とに基づき所要時間の補正値を演算する補正演算部をさらに備え、所要時間計測部は、計測した所要時間を補正値に基づき補正して補正後所要時間を演算するようにしてもよい。これにより、検知エリア内でGPSの位置情報を取得した位置と、基準位置座標との誤差に基づく計測時間の誤差を修正することができる。
【0019】
また、本発明の他の一態様は、車両が所定のコースを走行する際の所要時間を計測する車両情報処理プログラムであって、コンピュータに、車両の位置情報を取得するGPS受信ステップと、コース上の所望の基準位置に車両が位置する状態で基準位置指定信号を発生させる基準指定ステップと、基準指定ステップで発生した基準位置指定信号を受けたタイミングに基づきGPS受信ステップで受信した車両の位置情報を基準位置座標として取得する基準位置取得ステップと、基準位置取得ステップで取得した基準位置座標を含み、車両の走行ラインと平行な2辺を有する矩形の検知エリアを算出する検知エリア算出ステップと、車両の走行中にGPS受信ステップで受信した現在位置座標が、検知エリアの内側から出て再び検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測する所要時間計測ステップと、を実行させる、車両情報処理プログラムである。
【0020】
また、本発明の他の一態様は、車両がコースを走行する際の情報を処理する車両情報処理プログラムであって、コンピュータに、車両の位置情報を取得するGPS受信ステップと、コース上の所望の基準位置の座標を基準位置情報として取得する基準位置取得ステップと、基準位置取得ステップで検出した基準位置情報で示される基準位置座標を含み、コースと重なる四角形の検知エリアを算出する検知エリア算出ステップと、車両の走行中にGPS受信ステップで受信した現在位置座標が、検知エリアの外側から内側に入った際の日時情報および車両の位置情報を記憶する記憶ステップと、を実行させる、車両情報処理プログラムである。
【0021】
上記車両情報処理プログラムにおいて、検知エリア算出ステップは、基準位置座標と、基準位置指定信号を受ける直前または直後にGPS受信ステップで受信した車両の位置情報とから車両の走行ラインを演算し、基準位置座標を中心として走行ラインに沿った前後の領域および走行ラインと直交する方向に沿った左右の領域からなる矩形の検知エリアを算出するようにしてもよい。
【0022】
上記車両情報処理プログラムにおいて、検知エリア算出ステップは、基準位置座標の前後におけるコースのカーブの方向に応じて検知エリアを走行ラインに直交する方向の一方へ拡張またはオフセットする補正を行うようにしてもよい。
【0023】
上記車両情報処理プログラムにおいて、検知エリア算出ステップは、基準位置取得ステップで基準位置指定信号を受けたタイミングでの車両の速度に応じて検知エリアの大きさを変更するようにしてもよい。
【0024】
上記車両情報処理プログラムにおいて、検知エリア算出ステップは、GPS受信ステップで車両の位置情報を取得するサンプリングレートおよび車両の速度の少なくともいずれかに応じて検知エリアの大きさを変更するようにしてもよい。
【0025】
上記車両情報処理プログラムにおいて、検知エリア算出ステップは、コース上における複数の検知エリアを算出し、所要時間計測ステップは、現在位置座標が、複数の検知エリアのうち一の検知エリアの内側から出て他の検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測するようにしてもよい。
【0026】
上記車両情報処理プログラムにおいて、現在位置座標が検知エリアの外側から内側に入った段階で、車両の進行方向における現在位置座標と基準位置座標との差から得られる距離と、車両の直近の速度から得られる単位走行距離あたりの時間とに基づき所要時間の補正値を演算する補正演算ステップをさらに備え、所要時間計測ステップは、計測した所要時間を補正値に基づき補正して補正後所要時間を演算するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、GPSの位置情報を利用して簡単な操作で高精度に走行タイムを計測するなど、車両に関する情報の処理を行うことができる車両情報処理装置および車両情報処理プログラムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態に係る車両情報処理装置の構成を例示するブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る車両情報処理装置を用いた情報処理方法を例示するフローチャートである。
【
図4】検知エリアと走行ラインとを例示する模式図である。
【
図6】検知エリアの設定について例示する模式図である。
【
図8】検知エリアを用いた例を説明する模式図である。
【
図9】コースレイアウトによる検知の相違について説明する模式図である。
【
図10】区間タイムの計測について説明する模式図である。
【
図11】本実施形態に係る車両情報処理装置を用いた区間タイムの計測方法を例示するフローチャートである。
【
図12】本実施形態に係る車両情報処理装置を用いた区間タイムの計測方法を例示するフローチャートである。
【
図13】検知エリアの補正について例示する模式図である。
【
図14】映像と車両情報との合成アップロードを行う走行動画アップロードシステムを例示するブロック図である。
【
図15】映像と車両情報との合成アップロードの方法を例示するフローチャートである。
【
図17】(a)から(c)は、カメラに関する画面を例示する図である。
【
図18】(a)および(b)は設定画面を例示する図である。
【
図19】(a)はカメラ画像を例示する図であり、(b)は設定画面を例示する図である。
【
図20】(a)は設定画面を例示する図であり、(b)は動画選択画面を例示する図である。
【
図21】(a)は動画再生画面を例示する図であり、(b)はSNS投稿画面を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0030】
(車両情報処理装置の構成)
図1は、本実施形態に係る車両情報処理装置の構成を例示するブロック図である。
本実施形態に係る車両情報処理装置1は、所定のコースを走行する車両の所要時間を計測する機能を有する装置である。コースには、周回路(サーキット)のほか、周回しないコース(ラリーコース、ジムカーナコース、一般道など)も含まれる。また、車両には、自動車、レースカー、オートバイ、自転車などの移動体が含まれる。なお、本実施形態では、サーキットを走行する自動車の走行タイムを計測する場合を中心として説明する。
【0031】
車両情報処理装置1は、GPS(Global Positioning System)受信部50、基準指定部11、基準位置取得部12、検知エリア算出部13、所要時間計測部14を備える。本実施形態に係る車両情報処理装置1では、上記構成のほか、入力部10、出力部20、記憶部30および制御部40を備える。基準指定部11、基準位置取得部12、検知エリア算出部13、所要時間計測部14は制御部40に含まれていてもよい。制御部40は、補正演算部15を含んでいてもよい。
【0032】
車両情報処理装置1はコースを走行する車両に搭載される。車両情報処理装置1の各構成は1つの筐体に組み込まれていてもよいし、必要に応じて別筐体で構成されていてもよい。
【0033】
入力部10は、例えばボタンやタッチパネルの入力部分である。出力部20は、例えばディスプレイやタッチパネルの表示部分、音を出力するスピーカである。記憶部30は、例えば不揮発性メモリである。制御部40はCPU(Central Processing Unit)であり、各部を制御する。
【0034】
GPS受信部50は、GPS衛星を利用して車両の位置情報を所定のサンプリングレートで取得する。基準指定部11は、コース上の所望の基準位置に車両が位置する状態で基準位置指定信号を発生させる。例えば、コース上を車両で走行中にコースの所望の基準位置に達したタイミングで運転者が入力部10を操作することで、基準指定部11が基準位置指定信号を発生させる。基準指定部11は、車両の外部から送られる信号を受けたタイミングで基準位置指定信号を発生させてもよい。
【0035】
基準位置取得部12は、基準指定部11で発生した基準位置指定信号を受けたタイミングに基づきGPS受信部50で受信した車両の位置情報を基準位置座標として取得する。すなわち、基準位置座標は、コース上の所望の基準位置に対応したGPSの位置情報(基準位置の緯度、経度など)である。
【0036】
検知エリア算出部13は、基準位置取得部12で取得した基準位置座標を含み、車両の走行ラインと平行(実質的に平行を含む)な2辺を有する矩形(実質的に矩形を含む)の検知エリアを算出する。検知エリア算出部13による検知エリアの算出の基本的な例は、基準位置座標を中心として車両の進行方向の前後左右に予め設定された範囲を有する矩形の領域を検知エリアとすることである。
【0037】
例えば、基準位置座標の前後それぞれ5メートル(m)と、基準位置座標の左右それぞれ10mの範囲を有する矩形の領域(縦10m×横20mの長方形領域)を検知エリアとして算出する。前後左右の範囲は初期値として記憶部30に記憶されていることが好ましい。前後の範囲は車両の進行方向におけるGPSの誤差範囲を考慮した値であり、左右の範囲は一般的なサーキットの幅員を考慮した値である。なお、前後左右の範囲はユーザによって変更できるようになっていてもよい。検知エリア算出部13による検知エリアの算出の例は後述する。
【0038】
所要時間計測部14は、車両の走行中にGPS受信部50で受信した現在位置座標が、検知エリアの内側から出て再び検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測する。補正演算部15は、検知エリア内でGPSの位置情報を取得した位置と、基準位置座標との誤差に基づく計測時間の誤差を修正する。補正演算部15による誤差の修正については後述する。
【0039】
このような構成を備えた車両情報処理装置1によれば、コース上を車両で走行している際に、走行タイムの計測の基準となるコース上の位置を車両の走行中に指定することで、走行タイムの計測のスタートおよびストップのトリガーとなる位置(基準位置座標)が設定される。この基準位置座標が設定されると、この基準位置座標を含み、車両の走行ラインと平行な2辺を有する矩形の検知エリアが算出される。
【0040】
走行タイムの計測では、車両の走行中にGPS受信部50で受信した現在位置座標が、矩形の検知エリアの内側から出て再び矩形の検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測する。車両が走行する実際のコースにはある程度の幅(幅員)があるため、矩形の検知エリアを設定することで、コース上の走行ラインのずれやGPSの誤差を吸収しやすくなる。また、検知エリアの矩形が走行ラインと平行な2辺と、走行ラインと直交する2辺とで構成される矩形になっていることで、検知エリアの境界線がコースの幅方向に直線状に設けられ、車両がコース幅方向のどの位置を通過しても安定して検知することができる。
【0041】
(走行タイム計測方法)
図2は、本実施形態に係る車両情報処理装置を用いた走行タイム計測方法を例示するフローチャートである。
まず、ステップS101に示すように、GPS受信・記録を行う。車両情報処理装置1は、車両から電源の供給を受けるとGPS受信部50によってGPSの位置情報の受信を開始し、受信した位置情報を記憶部30に記録する。GPS受信部50は、所定のサンプリングレートによってGPS衛星からの信号を受信して位置情報を取得して記憶部30に順次記録していく。
【0042】
次に、ステップS102に示すように、基準位置指定信号を受信したか否かを判断する。基準位置指定信号の受信は制御部40の基準位置取得部12によって行われる。車両でコース上を走行して走行タイムを計測する場合、タイム計測のスタート/ストップの基準となる位置(基準位置)を設定する必要がある。本実施形態では、コース上を車両で走行している状態で例えば運転者が所望の基準位置を指定する。
【0043】
例えば、コース上の所望の基準位置に車両が位置する状態で運転者が入力部10を操作する(例えば、ボタンを押下する)。これにより、基準指定部11から基準位置指定信号が出力される。ステップS102では、基準指定部11から出力された基準位置指定信号を基準位置取得部12で取得したか否かを判断する。取得していない場合には、ステップS101へ戻り、GPS受信および記録を繰り返す。
【0044】
ここで、サーキット走行において1周のタイム(ラップタイム)を計測する場合、一般的には、コースに設定されたコントロールラインを基準位置として設定する。この際、インターネットで公開されている地図情報からサーキットのコントロールラインを指定して位置情報を取得しようとしても、地図の倍率の限界から正確に指定することはできない。また、地図情報だけでは車両の進行方向の情報を得ることはできない。このため、本実施形態では、実際に車両がコース上を走行している状態で、基準位置に達したタイミングで例えば運転者が入力部10を操作し、基準指定部11から基準位置指定信号を発生させる。なお、基準指定部11は、運転者による入力部10の操作のほか、車両の外部から送られる信号を受けたタイミングで基準位置指定信号を発生させてもよい。
【0045】
次に、ステップS103に示すように、基準位置情報を取得する。基準位置取得部12は、基準指定部11から出力された基準位置指定信号を受けたタイミングに基づきGPS受信部50で受信した車両の位置情報を基準位置座標として取得する。
【0046】
次に、ステップS104に示すように、検知エリアの算出を行う。検知エリアの算出は、制御部40の検知エリア算出部13によって行われる。検知エリア算出部13は、基準位置取得部12で取得した基準位置座標を受けて、この基準位置座標を含み、車両の走行ラインと平行な2辺を有する矩形の検知エリアを算出する。
【0047】
次に、ステップS105に示すように、タイム計測を行う。タイム計測は、制御部40の所要時間計測部14によって行われる。所要時間計測部14は、基準指定部11によって基準位置指定信号が出力されてから最初のタイム計測では、基準位置指定信号が出力されたタイミングをタイム計測の開始とする。
【0048】
次に、ステップS106に示すように、検知エリアに再度入ったか否かを判断する。所要時間計測部14は、タイム計測を開始し、その後、GPS受信部50で受信した車両の位置情報が検知エリアの内側から一旦外側に出て、再び検知エリアの内側に入ったかどうかを判断する。検知エリアに再度入っていない場合(検知エリアの外側の場合)にはステップS105へ戻りタイム計測を続行する。
【0049】
一方、検知エリアに再度入った場合には、車両がコースを1周回ったとしてステップS107に示すように計測したタイムを出力する(ラップタイムの出力)。ラップタイムは出力部20である例えばディスプレイに表示される。
【0050】
そして、ステップS108に示すように、計測を終了する場合にはタイム計測処理を終了し、計測を続行する場合にはステップS105へ戻り、以降の処理を繰り返す。これにより、2周目以降のタイム計測では、その前の周のタイム計測の終了と同時に次の周のタイム計測の開始として周ごとのラップタイムが計測される。すなわち、2周目以降は、GPS受信部50で受信した車両の位置情報が検知エリアに再度入るごとにラップタイムが自動的に計測され、出力部20に出力されることになる。
【0051】
図3は、検知エリアについて例示する模式図である。
車両MがコースC上を走行している状態で例えば運転者が所望の基準位置を指定すると、基準指定部11から基準位置指定信号が出力され、その基準位置指定信号を受けたタイミングに基づきGPS受信部50で受信した車両の位置情報が基準位置座標RPとなる。検知エリア算出部13は、基準位置座標を含み、車両の走行ラインと平行な2辺を有する矩形の検知エリアSAを算出する。
【0052】
検知エリアSAの算出の一例としては、基準位置座標RPを中心として車両Mの進行方向Dの前後にそれぞれ長さL(例えば、数メートル)、基準位置座標RPを中心として車両Mの進行方向Dに対して左右にそれぞれ幅W(例えば、数メートル)の範囲を有する矩形の領域を検知エリアSAとして算出することである。
【0053】
一般的なサーキットのコースCでは、幅員が20mほどあることから、検知エリアSAの左右方向の長さ(幅)は20m程度あるとよい。また、検知エリアSAの前後方向の長さ(長さ)はGPSの誤差範囲を考慮して10m程度あるとよい。車両Mの進行方向Dは、基準位置座標RPと、基準位置指定信号を受ける直前または直後にGPS受信部50で受信した車両Mの位置情報とから演算される。進行方向Dの演算では、車両Mの走行ライン(走行軌跡TL)の情報と、車両Mの進行方向(走行の向き)Dの情報とが求められる。
【0054】
図4は、検知エリアと走行ラインとを例示する模式図である。
車両Mでサーキットを走行する際、車両Mの走行ライン(コース幅の方向でのどの位置を通過するか)が周回によって異なる場合がある(
図4(a)および(b)参照)。検知エリアSAとして矩形のエリアを設定しておくことで、周回によって車両Mの走行ラインがコースCの幅方向にずれていても、検知エリアSAに入ったか否かを的確に検知することができる。
【0055】
(誤差補正)
図5は、誤差補正について説明する模式図である。
本実施形態では、矩形の検知エリアSAを設定して、この検知エリアSAに車両Mが入ったタイミングで走行タイムの計測のスタート/ストップのトリガーとしている。このため、GPS受信部50による位置情報の取得のタイミングによっては、設定された基準位置とタイム計測のスタート/ストップの位置との間にずれ(誤差)が生じる場合がある。
【0056】
図5(a)および(c)には、車両Mが検知エリアSAに入って最初にGPSの位置情報を取得したタイミングが基準位置座標RPよりも進行方向手前の場合が示され、
図5(b)には、車両Mが検知エリアSAに入って最初にGPSの位置情報を取得したタイミングが基準位置座標RPよりも進行方向先の場合が示される。制御部40に補正演算部15が設けられている場合、この誤差を補正演算部15によって補正する。
【0057】
補正演算部15による誤差補正の一例としては、車両Mが検知エリアSAに入り、GPS受信部50によって取得した車両Mの位置情報と、基準位置座標RPとの差と、車両Mの速度との関係から、ラップタイムを補正することが挙げられる。
【0058】
すなわち、補正演算部15は、GPS受信部50で車両Mの位置情報を所定のサンプリングレートで取得し、車両Mが検知エリアSAの外側から内側に入った段階で取得した車両Mの現在位置座標CPと、基準位置座標RPとから車両Mの進行方向Dにおける距離を求める。また、補正演算部15は、車両Mの直近の速度から得られる単位走行距離あたりの時間を求める。
【0059】
車両Mの直近の速度は、現在位置座標CPを取得した直前または直後の位置情報とサンプリング時間とから演算してもよいし、車両Mから取得可能な車速情報(車速パルスなど)を利用してもよい。
【0060】
そして、補正演算部15は、現在位置座標CPと基準位置座標RPとの差から得られる距離と、車両Mの直近の速度から得られる単位走行距離あたりの時間とに基づきラップタイムの補正値を演算する。
【0061】
例えば、
図5(a)に示すように、車両Mが検知エリアSAの外側から内側に入った段階で取得した車両Mの現在位置座標CPと、基準位置座標RPとの進行方向Dにおける距離d1が-2mであり、車両Mの直近の速度が120km/hであった場合、ラップタイムの誤差は0.06秒である。補正演算部15は、所要時間計測部14で計測したラップタイムに誤差の0.06秒を加算して、補正後のラップタイムを出力部20に出力する。また、補正演算部15は、次の周回のラップタイムの計測開始時刻を0.06秒加算するように所要時間計測部14に指示を与える。
【0062】
また、
図5(b)に示すように、車両Mが検知エリアSAの外側から内側に入った段階で取得した車両Mの現在位置座標と、基準位置座標との進行方向Dにおける距離d2が+1.5mであり、車両Mの直近の速度が150km/hであった場合、ラップタイムの誤差は0.036秒(s)である。
【0063】
補正演算部15は、所要時間計測部14で計測したラップタイムに誤差の0.036sを減算して、補正後のラップタイムを出力部20に出力する。また、補正演算部15は、次の周回のラップタイムの計測開始時刻を0.036秒減算するように所要時間計測部14に指示を与える。これにより、検知エリア内でGPSの位置情報を取得した位置と、基準位置座標RPとの誤差に基づく計測時間の誤差を修正することができる。
【0064】
なお、本実施形態に係る車両情報処理装置1によってラップタイムなどの走行時間の計測や誤差修正を行う際、特に、トンネル、市街地(ビルなどの障害物が多い場所)、山間部では、GPSの信号受信を喪失(衛星ロスト)する場合がある。この衛星ロストを考慮して、車両MのOBD(On Board Diagnostics)から車速の情報を常時取得しておき、これを利用して時間計測の誤差補正や移動距離などの補正を行うようにするとよい。
【0065】
具体的には、トンネル、高層ビルの立ち並ぶ市街地、山間部など一時的にGPSの衛星からの信号捕捉が足りなくなった場合に、OBDから得た車速情報を利用して車両Mの移動距離を求める。すなわち、OBDから得た車速情報で車両Mの走行距離の積算は常時できているので、衛星ロストしてから再度GPSの信号をキャッチするまでの距離や時間を用いて走行距離や走行時間の補間を行う。
【0066】
また、ハードウェア内部のクリスタルで時間の積算を行っているので、衛星ロストしている間の時間(積算値)とその間の車速(車速平均値)とで走行距離を求め、次回GPSの信号を捕捉したところで補完してもよい。また、既に1周の距離が判別できている場合には、移動距離と移動時間とから走行時間を求めてもよい。また、OBDから得た車速情報、加速度情報およびジャイロセンサなどの情報から車両Mの姿勢変化を求めて車両M走行方向や走行軌跡を得ることもできる。
【0067】
(検知エリアの設定)
図6は、検知エリアの設定について例示する模式図である。
本実施形態に係る車両情報処理装置1では、検知エリア算出部13(
図1参照)によって矩形の検知エリアSAを算出している。車両Mの走行タイムを計測する際、GPSによる車両Mの位置情報がこの検知エリアSAの外側から内側に入ったか否かによってタイム計測のスタート/ストップのトリガーとしている。また、GPS受信部50によるGPSの位置情報の取得は所定のサンプリングレートで行われる。さらに、GPSの位置情報の取得には誤差が生じる可能性がある。
【0068】
例えば、車両Mの速度が100km/hで、サンプリングレートが10回/秒であった場合、GPSの位置情報の取得のピッチSPは約2.8mとなる。また、GPSの位置情報の誤差EはGPS衛星の種類や周囲環境によって異なるが、数m~数10m程度である。
【0069】
本実施形態では、検知エリアSAの算出として、車両Mの進行方向と直交する方向(幅方向)には一般的なサーキットのコースの幅員を設定し、車両Mの進行方向(縦方向)Dには、車両Mの車速およびGPSのサンプリングレートから求められるGPSの位置情報の取得のピッチSPと、GPSの位置情報の誤差Eとから想定される値を設定する。
【0070】
一例として、車両Mの速度およびGPSのサンプリングレートから求められるGPSの位置情報の取得のピッチをSP、GPSの位置情報の誤差をEとした場合、矩形の検知エリアSAの車両Mの進行方向(縦方向)Dの長さを、2×SP+Eとする。先に示した具体的な例では、ピッチSP=約2.8m、誤差E=約5mの場合、検知エリアSAの縦方向の長さは、2×約2.8m+約5m=約10.6mとなる。これにより、車速、サンプリングレートおよびGPS誤差を考慮して、確実に検知エリアSAで少なくとも1回のGPSの位置情報を受信できることになる。また、検知エリアSAの幅をコースCの一般的な幅員約20mに設定しておけば、車両Mの走行ラインがコースCの幅方向にずれても、確実に検知エリアSAでGPSの位置情報を受信できることになる。
【0071】
本実施形態において、検知エリア算出部13は、基準位置取得部12で基準位置指定信号を受けたタイミングでの車両Mの速度に応じて検知エリアSAの大きさを変更するようにしてもよい。例えば、基準位置指定信号を受けたタイミングでの車両Mの速度が速いほど、検知エリアSAを算出する際の長さL(車両Mの進行方向Dの長さ)を長くするように変更し、車両Mの速度が遅いほど、検知エリアSAを算出する際の長さLを短くするように変更する。これにより、走行中の車両MのGPSの位置情報を検知エリアSA内で取得する確率が高まるとともに、計測精度が向上する。
【0072】
また、検知エリア算出部13は、GPS受信部50で車両Mの位置情報を取得するサンプリングレートに応じて検知エリアSAの大きさを変更するようにしてもよい。例えば、GPS受信部50でのGPSの位置情報のサンプリングレートが低いほど、検知エリアSAを算出する際の長さL(車両Mの進行方向Dの長さ)を長くするように変更し、サンプリングレートが高いほど、検知エリアSAを算出する際の長さLを短くするように変更する。これにより、走行中の車両MのGPSの位置情報を検知エリアSA内で取得する確率が高まるとともに、計測精度が向上する。
【0073】
ここで、車両Mの進行方向Dは、GPSの位置情報から得た走行距離と移動方向(位置の時間変化)とで判別することができる。また、衛星ロストしている場合にはOBDで得た車両Mの速度情報や加速度センサからの情報で進行方向Dや車両Mの現在位置を判別することもできる。すなわち、通常、GPSによる位置情報およびOBDからの車速情報は常に取得し続けているため、車速と加速度センサの情報とで車両Mの現在位置や走行軌跡(マップ情報)を得ることができ、車両Mの進行方向Dも把握することができる。
【0074】
また、検知エリアSAを通過する付近で同一方向に進んでいるか否かを判別し、ラップタイムの積算を補完することができる。例えば、車両Mの位置が検知エリアSAに近くあり(例えば、検知エリアSAを進行方向Dに約2倍から10倍程度に拡げた範囲(前後拡張範囲)内にあり)、車両Mの進行方向Dから車両Mが検知エリアSAに近づいているのか、検知エリアSAから離れているのかを判断する。そして、車両Mが検知エリアSAに近づいていると判断したタイミングから、検知エリアSAから離れていると判断したタイミングまでの間で、検知エリアSA内でのGPSの位置情報を取得できていない場合、検知エリアSAに近づいていると最後に判断した時刻と、その後、検知エリアSAから離れていると最初に判断した時刻との間(例えば中間時刻)で、検知エリアSAに入ったと判断し、ラップタイムを計測するようにしてもよい。
【0075】
また、コースCを周回している場合には、1周の距離を積算しておくことで、もし衛星ロストした場合には、OBDからの車速情報と走行時間とから予め積算された1周の距離を走行した際の時間をラップタイムとして使用するようにしてもよい。
【0076】
(比較例)
図7は、比較例を説明する模式図である。
比較例に係る車両情報処理装置では、GPSで受信した位置情報に基づきスタートラインSLを直線式で求めておき、走行する車両MのGPSの位置情報を取得して、その位置情報がスタートラインSLの直線式を越えた場合に周回したとしてタイムを計測するものである。この場合、GPSで取得する位置情報に誤差があると、次のような状況が起こり得る。
【0077】
先ず、
図7(a)に示すように、走行している車両MがスタートラインSLよりも手前に位置する状態でGPSの位置情報を取得した場合、GPSの誤差Eの範囲(図中円形範囲)のうちスタートラインSLを越える部分S1で誤検知が発生する可能性がある。この場合、実際には車両MはスタートラインSLよりも手前に位置しているが、GPSによる位置情報を取得した際、部分S1の範囲で誤検知すると、車両MはスタートラインSLを越えたと誤判断することになる。
【0078】
次に、
図7(b)に示すように、走行している車両MがスタートラインSLを越えて位置する状態でGPSの位置情報を取得した場合、GPSの誤差Eの範囲(図中円形範囲)のうちスタートラインSLを越えていない部分S2で誤検知が発生する可能性がある。この場合、実際には車両MはスタートラインSLを越えて位置しているが、GPSによる位置情報を取得した際、部分S2の範囲で誤検知すると、車両MはスタートラインSLを越えていないと誤判断することになる。
【0079】
図8は、検知エリアを用いた例を説明する模式図である。
図8に示す検知エリアを用いた例は本実施形態である。
図8(a)には、走行している車両MとスタートラインSL(基準位置)との関係が7(a)と同様な場合が示される。この場合、GPSの誤差Eの範囲(図中円形範囲)のうちスタートラインSLを越える部分S1で誤検知したとしても、部分S1が検知エリアSA内に入っていれば検知エリアSAに入ったことを判断することができる。
【0080】
図8(b)には、走行している車両MとスタートラインSL(基準位置)との関係が7(b)と同様な場合が示される。この場合、GPSの誤差Eの範囲(図中円形範囲)のうちスタートラインSLを越えていない部分S2で誤検知したとしても、部分S2が検知エリアSA内に入っていれば検知エリアSAに入ったことを判断することができる。
【0081】
つまり、スタートラインSLを直線式で求めておき、それを越したか否かで判断する場合に比べ、検知エリアSAに入ったか否かで判断する場合のほうが、スタート/ストップのトリガーの判断を正確に行うことが可能となる。
【0082】
特に、車両Mの走行タイムを計測する場合には、車両Mは所定幅のコースを一方向に進むため、矩形の検知エリアSAを設定することで、走行する車両Mが基準位置に達したか否かの判断を正確に行うことができる。また、GPSの位置情報から直線式を越えたか否かを判断する演算に比べ、矩形の検知エリアSAに入っているか否かを演算するほうが容易である。
【0083】
図9は、コースレイアウトによる検知の相違について説明する模式図である。
図9に示すようなコースCのレイアウトの場合、スタートラインSLを直線式で表すと、スタートラインSLの延長上においてコースCが複数回交差することになる。この場合、コースCの(1)で示すスタートラインSLの位置と、(2)で示す位置とで車両がスタートラインSLの直線式を矢印の方向(図中下から上の方向)へ踏み越すことになる。つまり、車両がコースCを1周するあいだに直線式を2回踏み越すことになるため、周回数を誤検出することになる。
【0084】
一方、本実施形態のように矩形の検知エリアSAを設定すると、検知エリアSAはコースCのスタートラインSLを含む所定の領域に限定される。したがって、どのようなコースレイアウトであっても車両がコースCを1周したことを的確に検知して、1周のラップタイムを正確に計測することが可能となる。
【0085】
(区間タイムの計測)
次に、区間タイムの計測について説明する。
図10は、区間タイムの計測について説明する模式図である。
本実施形態に係る車両情報処理装置1において、検知エリア算出部13は、コースC上における複数の検知エリアSAを算出してもよい。
図10に示す例では、1周のコースC上に3箇所の検知エリアSA1~SA3が設定される。この場合、所要時間計測部14は、コースCを走行する車両のGPS受信部50による現在位置の座標が、複数の検知エリアSA1~SA3のうち一の検知エリアの内側から出て他の検知エリアの内側に入るまでの所要時間を計測する。これにより、コースCの区間タイムを計測することができる。
【0086】
図11および
図12は、本実施形態に係る車両情報処理装置を用いた区間タイムの計測方法を例示するフローチャートである。
先ず、ステップS201に示すように、区間数の取得を行う。区間数は、予め運転者によって任意に設定可能である。区間数の情報は記憶部30に記憶されており、制御部40が記憶部30に記憶された区間数の情報を取得する。
【0087】
次に、ステップS202に示すように、GPS受信・記録を行う。車両情報処理装置1は、車両から電源の供給を受けるとGPS受信部50によってGPSの位置情報の受信を開始し、受信した位置情報を記憶部30に記録する。GPS受信部50は、所定のサンプリングレートによってGPS衛星からの信号を受信して位置情報を取得して記憶部30に順次記録していく。
【0088】
次に、ステップS203に示すように、基準位置指定信号を受信したか否かを判断する。基準位置指定信号の受信は制御部40の基準位置取得部12によって行われる。区間タイムを計測する場合、コース上を車両で走行している状態で例えば運転者が区間タイムを計測したい所望の基準位置を指定する。例えば、コース上の所望の基準位置に車両が位置する状態で運転者が入力部10を操作する(例えば、ボタンを押下する)。これにより、基準指定部11から基準位置指定信号が出力される。ステップS203では、基準指定部11から出力された基準位置指定信号を基準位置取得部12で取得したか否かを判断する。取得していない場合には、ステップS202へ戻り、GPS受信および記録を繰り返す。
【0089】
次に、ステップS204に示すように、基準位置情報を取得する。基準位置取得部12は、基準指定部11から出力された基準位置指定信号を受けたタイミングに基づきGPS受信部50で受信した車両の位置情報を基準位置座標として取得する。
【0090】
次に、ステップS205に示すように、検知エリアの算出を行う。検知エリアの算出は、制御部40の検知エリア算出部13によって行われる。検知エリア算出部13は、基準位置取得部12で取得した基準位置座標を受けて、この基準位置座標を含み、車両の走行ラインと平行な2辺を有する矩形の検知エリアを算出する。
【0091】
次に、ステップS206に示すように、次の区間があるか否かを判断する。次の区間がある場合にはステップS202へ戻り、次の区間の区切りで運転者などが指定した基準位置に基づき次の検知エリアを算出する。
【0092】
ステップS201で取得した区間数の検知エリアを算出した後は、ステップS207に示すように、検知エリアに再度入ったか否かを判断する。すなわち、最後の区間における検知エリアを算出して、次の検知エリアに入ることは、車両がコース上で最初に設定した検知エリアに入ることを意味する。これによりステップS208に示すようにタイム計測を開始する。タイム計測は、制御部40の所要時間計測部14によって行われる。
【0093】
次に、ステップS209に示すように、次の検知エリアに入ったか否かを判断する。所要時間計測部14は、タイム計測を開始し、その後、GPS受信部50で受信した車両の位置情報が検知エリアの内側から一旦外側に出て、次の検知エリアの内側に入ったかどうかを判断する。次の検知エリアに入っていない場合(検知エリアの外側の場合)にはステップS208へ戻りタイム計測を続行する。一方、次の検知エリアに入った場合には、車両がコース上に設定された1つの区間を走行したとしてステップS210に示すように計測したタイムを出力する(区間タイムの出力)。区間タイムは出力部20である例えばディスプレイに表示される。
【0094】
次に、ステップS211に示すように、次の区間があるか否かの判断を行う。次の区間がある場合には、ステップS208へ戻り、タイム計測を行い、次の検知エリアに入った段階で区間タイムを出力する。次の区間がない場合には、ステップS212に示すように、それまで計測した区間タイムを合計し、ステップS213に示すように、合計したタイムを出力する。区間タイムの合計は、所要時間計測部14によって行われる。
【0095】
区間数だけ区間タイムを計測した場合には車両がコースを1周したことになる。したがって、1周分の区間タイムを合計することで、1周の走行タイム(ラップタイム)を求めることができる。ラップタイムは出力部20である例えばディスプレイに表示される。この際、ラップタイムとともに、最後の区間タイムも表示することが好ましい。
【0096】
そして、ステップS214に示すように、計測を終了する場合にはタイム計測処理を終了し、計測を続行する場合にはステップS208へ戻り、以降の処理を繰り返す。これにより、2周目以降のタイム計測では、その前の周のタイム計測の終了と同時に次の周のタイム計測の開始として周ごとの区間タイムおよびラップタイムが計測され、出力部20に出力されることになる。
【0097】
(検知エリアの補正)
次に、コースレイアウトに応じた検知エリアの補正について説明する。
図13は、検知エリアの補正について例示する模式図である。
本実施形態に係る車両情報処理装置1において、検知エリア算出部13は、基準位置座標RPの前後におけるコースCのカーブの方向に応じて検知エリアSAを走行ラインに直交する方向の一方へ拡張またはオフセットする補正を行うようにしてもよい。なお、以下に説明する検知エリアSAの補正は、運転者等が制御部40に通常モード(補正無しモード)から補正モード(補正有りモード)に切り換える選択を行った場合に実行されるようにしてもよい。
【0098】
例えば、
図13に示すようなレイアウトのコースCの場合、車両Mは図中二点鎖線で示すような走行ラインを通ることが多い。これは、複数のカーブで組み合わされたコースCを車両Mで走行する際に速く走行できると考えられているライン(いわゆる、アウト・イン・アウトの走行ライン)である。このように車両Mの走行ラインにおけるコースCの幅方向の位置は、コースCの位置によって異なる。
【0099】
例えば、
図13に示すコースCの位置P1では、車両Mの走行ラインはコースCの幅方向の左寄り(進行方向Dを向いて左寄り)となる。また、位置P2では、車両Mの走行ラインはコースCのほぼ中央である。また、位置P3では、車両Mの走行ラインはコースCの右寄り(進行方向Dを向いて右寄り)となる。
【0100】
ここで、検知エリアSAを広くすれば、コースCの幅全体をカバーできる確率が高まるが、広くし過ぎると計測精度の低下や誤検出(コース外での検知)の可能性が高まる。そのため、検知エリアSAは必要最小限のサイズに設定しておくことが好ましい。
【0101】
検知エリアSAを設定する場合、コースCを車両Mで走行している際に運転者等が基準位置を設定する。その際、車両MがコースCの幅方向の一方に寄って走行していると、検知エリアSAがコースCの幅方向にずれる可能性がある。検知エリアSAがコースCの幅方向にずれてコースCをカバーできないと、走行する車両Mが検知エリアSAに入ったことを検知できない可能性が生じる。そこで、本実施形態では、検知エリア算出部13において検知エリアSAを算出する場合、コースレイアウトに応じて検知エリアSAを走行ラインに直交する方向の一方へ拡張またはオフセットする補正を行う。
【0102】
ここで、車両Mの一般的な走行ラインがコースCの幅方向のどの位置を通るのかは、いわゆるアウト・イン・アウトの走行ラインを原則とすると、コースレイアウトによってある程度把握することができる。本実施形態における検知エリアSAの補正では、この特性を利用して検知エリアSAの拡張またはオフセットを行う。
【0103】
具体的には、検知エリアSAを設定する位置の前後におけるコースのカーブの方向(右ターン、左ターン)に応じて検知エリアSAの拡張またはオフセットの方向を決定する。車両情報処理装置1では、車両Mの走行中にGPS受信部50で位置情報を取得しているため、コースCの走行ライン(走行軌跡TL)や進行方向Dを得ることができる。これに基づき、コースCの所定の位置の前後におけるカーブの方向(車両Mの進行方向Dに対してどちらにカーブしているのか)を把握することができる。
【0104】
また、いわゆるアウト・イン・アウトの走行ラインでは、ある位置の前後のカーブの方向によって車両Mの走行ラインがコースCの幅方向のどちら寄りに走行しやすいのか、以下の(1)~(3)のように決定することができる。
【0105】
(1)コースC上のある位置の前後のカーブの方向が両方とも右カーブであった場合、その位置では車両MはコースCの幅方向の左寄りに走行しやすい。例えば、
図13の位置P1および位置P4では、その手前のカーブは右カーブ(
図13では「右」で示す。以下同様。)であり、後のカーブも右カーブである。この場合、車両Mは位置P1および位置P4においてコースCの幅方向の左寄りを走行しやすい。
(2)コースC上のある位置の前後のカーブの方向が両方とも左カーブであった場合、その位置では車両MはコースCの幅方向の右寄りに走行しやすい。例えば、
図13の位置P3では、その手前のカーブは左カーブ(
図13では「左」で示す。以下同様。)であり、後のカーブも左カーブである。この場合、車両Mは位置P3においてコースCの幅方向の右寄りを走行しやすい。
(3)コースC上のある位置の前後のカーブの方向が、一方が右カーブ、他方が左カーブであった場合、その位置では車両MはコースCの幅方向の中央付近を走行しやすい。例えば、
図13の位置P2では、その手前のカーブは右カーブであり、後のカーブは左カーブである。この場合、車両Mは位置P2においてコースCの中央付近を走行しやすい。
【0106】
走行中の車両Mにおいて運転者等が基準位置を設定した際、その設定した基準位置について上記(1)が成り立つ場合、検知エリア算出部13は、検知エリアSAを車両Mの走行ラインに直交する方向の右側に拡張またはオフセットさせる補正を行う。検知エリアSAの拡張またはオフセットの量は予め設定した値を用いればよく、例えば、検知エリアSAの幅の1/2~1/3程度でよい。これにより、車両MがコースCの幅方向の左寄りを走行している状態で基準位置を指定した場合、検知エリアSAが右方向に拡張またはオフセットしてコースCの幅方向をカバーしやすくなる。
【0107】
また、基準位置を設定した際、その基準位置について上記(2)が成り立つ場合、検知エリア算出部13は、検知エリアSAを車両Mの走行ラインに直交する方向の左に拡張またはオフセットさせる補正を行う。これにより、車両MがコースCの幅方向の右寄りを走行している状態で基準位置を指定した場合、検知エリアSAが左方向に拡張またはオフセットしてコースCの幅方向をカバーしやすくなる。
【0108】
また、基準位置を設定した際、その基準位置について上記(3)が成り立つ場合、検知エリア算出部13は、検知エリアSAの拡張またはオフセットを行わない。
【0109】
このような検知エリアSAの補正によって、コースCのレイアウトに基づく車両Mの走行ラインがコースCの幅方向のどの位置にあるかを想定して、検知エリアSAをコースCの幅方向に適合させることができる。
【0110】
(計測情報の記録)
本実施形態に係る車両情報処理装置1において、記憶部30は計測した際の各種の情報を記録するようにしてもよい。例えば、車両情報処理装置1において、車両MでコースCを走行した際の走行タイム(ラップタイムやトータルタイム)を計測した際、車両Mが検知エリアSAに入った時の日時情報(何年/何月/何日/何時/何分/何秒など)、車両Mの位置情報をGPS受信部50で受信した情報に基づき記憶部30に記憶する。
【0111】
この記録は、車両Mが検知エリアSAに入ったタイミングで自動的に行われるとよい。また、記録は、予め設定されたフォルダ(例えば、コースCごとに分けたフォルダなど)に格納することが好ましい。これにより、コースCごとの計測タイムや走行履歴を記憶部30から読み出して確認したり、管理(統計処理や比較処理)したりしやすくなる。
【0112】
また、本実施形態に係る車両情報処理装置1において、出力部20は計測した情報を出力する機能(ログデータの出力機能)を備えていてもよい。例えば、記憶部30に記録した計測タイムや走行履歴を出力部20であるディスプレイに表示してもよいし、外部の機器(携帯端末や車両のディスプレイなど)へ出力してもよい。
【0113】
なお、上記では、車両MでサーキットのコースCを走行した場合の情報を記録する例を示したが、車両Mで一般道を走行する際の情報を記録するようにしてもよい。この場合、一般道の道路上における基準位置座標を予め設定しておき、この基準位置座標に基づき検知エリア算出部13で検知エリアSAを算出しておく。そして、車両Mが検知エリアSA内に入ったタイミングで、車両Mが検知エリアSAに入った時の日時情報、車両Mの位置情報をGPS受信部50で受信した情報に基づき記憶部30に記憶する。
【0114】
本実施形態において、基準位置座標の取得として、地図情報や各種データベース、過去の走行履歴などから正確な座標情報を装置内部の情報や外部機器(携帯端末やコンピュータなど)から得られる場合には、その基準位置座標を基準位置取得部12に送り、その基準位置座標から検知エリア算出部13で検知エリアSAを算出するようにしてもよい。この場合、検知エリア算出部13は、基準位置座標を含み、コースと重なる四角形(正方形、長方形、平行四辺形、菱形など)の検知エリアSAを算出するようにしてもよい。
【0115】
これにより、事前に設定しておいてコース上の基準位置を含む検知エリアSAに入ったことを履歴として記憶することができる。また、車両Mが検知エリアSAに入ったタイミングで出力部20であるディスプレイやスピーカからその旨を報知するようにしてもよい。例えば、目標ポイントや目的地を基準位置として事前に設定しておくことで、車両Mがその目標ポイントや目的地に到達した(検知エリアSA内に入った)際の記録や報知をすることができる。これにより、運転者は目標ポイントや目的地に到達したことを把握しやすくなる。
【0116】
ここで、基準位置座標となる座標情報を得る各種データベースとしては、例えば、ランドマークとなる場所、建物、サーキット、施設、速度取締ポイント、道路警戒位置などの座標情報や、ガソリンスタンド、充電インフラ、車両整備が可能な場所などの座標情報を含むものが挙げられる。
【0117】
また、地図情報から基準位置座標を取得した場合は、例えば、道路上の基準位置座標を指定し、その基準位置座標の前後の道路上の位置座標を繋ぐ直線から道路の方向とみなせる方向を得て、その方向と直交する互いに平行な2辺を有する四角形のエリアを検知エリアSAとして算出するようにしてもよい。また、道路の方向とみなせる方向と平行な2辺を有する四角形のエリアを検知エリアSAとして算出するようにしてもよい。
【0118】
過去の走行履歴から座標情報を得る場合は、車両Mの走行履歴に含まれる走行軌跡(例えば、地図上に示された走行軌跡)から基準にしたい位置をタッチパネル等で指定する。基準位置取得部12は、この指定された位置に対応した基準位置座標を走行軌跡の座標情報から取得する。そして、検知エリア算出部13は、走行履歴に含まれる車両Mの走行方向(車速、加速度、ジャイロセンサなどの情報から得られる走行の向き)から車両Mが基準位置座標を通過したときの走行方向を得て、基準位置座標を含み、その走行方向と直交する互いに平行な2辺を有する四角形のエリアを検知エリアSAとして算出してもよい。また、基準位置座標を含み、走行方向と平行な2辺を有する四角形のエリアを検知エリアSAとして算出するようにしてもよい。
【0119】
また、基準位置座標の取得として、地図情報からコースの幅方向の2点を指定して、この2点を繋ぐ直線上の点(例えば中点)を基準位置座標とするようにしてもよい。この場合、2点を繋ぐ直線を中心として前後にその直線と平行な2辺を構成した四角形を検知エリアSAとして算出してもよい。また、地図情報や過去の走行履歴からコースの方向が得られる場合には、上記2点を繋ぐ直線を中心として前後にその直線と平行な2辺と、コースの方向に平行な2辺とで構成した四角形を検知エリアSAとして算出してもよい。
【0120】
いずれの場合も、基準位置座標から展開する検知エリアSAの前後左右の大きさは、予め記憶部30等に設定された大きさや可変値を用いることができる。例えば、前後方向(長さ方向)の検知エリアSAの設定サイズは、固定値でもよいし、GPS受信部50で車両Mの位置情報を取得するサンプリングレートおよび車速(所定期間の平均車速など)の少なくともいずれかや、地図情報から得られる基準位置座標での道路の種別(自動車専用道、国道、県道、市道などの種別)に応じて変更するようにしてもよい。また、左右方向(幅方向)の検知エリアSAの設定サイズは、一般的な幅員に基づく固定値でもよいし、例えば、基準位置座標での道路の種別(上記と同様)に応じて変更するようにしてもよい。
【0121】
また、地図情報、各種データベースから基準位置座標を得る場合や、過去の走行履歴のない位置について基準位置座標を設定した場合、他車の走行履歴に関するビッグデータを利用して検知エリアSAの設定サイズや車両Mの走行方向を求めるようにしてもよい。
【0122】
制御部40は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を利用して車両Mや検知エリアSAがどの道路上に位置するかを判別するようにしてもよい。例えば、GPS受信部50によって受信した車両Mの位置座標や、検知エリアSAとして設定された領域の位置座標の近傍に複数の道路がある場合(例えば、高速道路とその側道、立体交差する2つの道路など)、車速の情報や前後の位置情報からAIを用いてどちらの道路上に位置するかを判別することができる。基準位置取得部12および検知エリア算出部13についても、AIを利用して道路上の適した位置に基準位置座標を設定したり、道路に応じて適したサイズの検知エリアを設定したりしてもよい。
【0123】
(車両情報処理プログラム)
上記説明した制御部40の基準指定部11、基準位置取得部12、検知エリア算出部13、所要時間計測部14および補正演算部15による処理は、コンピュータ(本実施形態では、例えば制御部40)で実行される車両情報処理プログラム(アプリケーションソフトウェア)として実現可能である。
【0124】
また、本実施形態に係る車両情報処理プログラムは記憶部30に記憶されていてもよいし、別途の記録媒体に記録されていてもよい。また、車両情報処理プログラムは、ネットワークを介して配信されるものであってもよい。
【0125】
(映像と車両情報との合成アップロード)
次に、映像と車両情報との合成アップロードについて説明する。
図14は、映像と車両情報との合成アップロードを行う走行動画アップロードシステムを例示するブロック図である。
走行動画アップロードシステム100は、車両の走行中に撮影した映像と、走行中の車両の情報とを合成してSNS(Social Networking Service)のサーバにアップロードする機能を有する装置である。
【0126】
走行動画アップロードシステム100は、本体101と、本体101とは別体に設けられる端末102と、本体101または端末102で実行されるアプリケーションソフトウェア200と、を備える。本実施形態では、アプリケーションソフトウェア200は端末102で実行される。
【0127】
本体101は、走行中の車両の情報を取得する車両情報取得部1011を備える。本体101には、モニタ部1012、入力部1013、記憶部1014、通信部1015が設けられる。
【0128】
車両情報取得部1011は、例えば車両のOBDを利用して、走行中の車両の情報(車速、エンジン回転数、スロットル開度、水温、ギア位置、走行距離、瞬間燃費、平均燃費、電圧など)を取得する。なお、電気自動車やハイブリッド車では、電池電流、電池電圧、電池温度、モータ回転数、モータトルクなどが取得される。
【0129】
車両情報取得部1011は、上記車両情報のほか、走行中の車両の加速度(ピッチ、ロール、ヨー)、サーキット走行におけるラップタイム(区間タイム)、コース図などを取得してもよい。記憶部1014には、車両情報取得部1011で取得した車両情報が時刻情報と対応付けて記憶される。例えば、車両でサーキットを走行する際、走行中に車両情報取得部1011で車両の各種情報を取得し、記憶部1014にその走行時刻と対応付けして車両の情報が記憶される。
【0130】
本体101のモニタ部1012には、車両情報取得部1011で取得した車両の各種の情報が表示される。本体101の入力部1013は、例えばタッチパネルである。本体101の通信部1015は、端末102との間で近距離無線ネットワークや有線によってデータの送受を行う。
【0131】
端末102は、例えば携帯電話や携帯端末である。端末102は、撮像部1021、入出力部1022、記憶部1023、通信部1024、制御部1025を備える。端末102は、GPS受信部1026を備えていてもよい。端末102は、例えば車内に設置され、撮像部1021によって車両の走行中の動画を撮影する。撮影した動画は、撮影時刻と対応付けして記憶部1023に記憶される。撮影時刻の情報は、電話回線から送られる時刻情報や、GPS受信部1026によって受信した情報を利用することができる。
【0132】
端末102の入出力部1022は、例えばタッチパネルディスプレイである。端末102の通信部1024は、本体101の通信部1015と通信を行う機能と、外部のネットワーク(インターネット、LAN、電話回線など)を介した通信を行う機能とを有する。
【0133】
端末102の制御部1025は、合成機能201および通信機能202を有する。合成機能201および通信機能202は、制御部1025で実行されるアプリケーションソフトウェア200によって実現される。
【0134】
合成機能201は、撮像部1021で撮影した動画と、本体101の車両情報取得部1011で取得した車両の情報とを合成して合成動画を作成する。ここで、撮像部1021で撮影された動画は撮影時刻情報とともに記憶部1023に記憶される。一方、本体101の車両情報取得部1011で取得した車両情報は、本体101の記憶部1014に記憶される。合成機能201は、入出力部1022の操作でユーザによって指定された動画のファイルと、本体101の記憶部1014に記憶された車両情報のファイルとを、撮像時刻および車両情報に対応付けされた時刻とを合致させて合成し、合成動画を作成する。
【0135】
通信機能202は、合成機能201で作成された合成動画を、ユーザによって指定されたサーバへアップロードする処理を行う。端末102には、ユーザによって予めSNSサーバが登録されている。通信機能202は、ユーザによって指定されたSNSサーバへ合成動画をアップロードする。
【0136】
図15は、映像と車両情報との合成アップロードの方法を例示するフローチャートである。
映像と車両情報との合成アップロードを行うにあたり、予め走行動画が端末102の撮像部1021で撮影され、記憶部1023に記憶されているとともに、車両情報が本体101の車両情報取得部1011によって取得され、記憶部1014に記憶されているものとする。ここで、本体101と端末102とは、通信部1015および1024によって接続されており、端末102の撮像部1021によって走行動画の撮影を開始すると、本体101の車両情報取得部1011が自動的に車両情報の取得を開始する。撮影した走行動画は撮影時刻と対応付けして記憶され、取得した車両情報は走行時刻と対応付けして記憶されている。
【0137】
先ず、ステップS301に示すように、車両情報の取得を行う。すなわち、ユーザは端末102の入出力部1022を操作して、本体101の記憶部1014に記憶された合成したい車両情報のファイルを指定する。端末102の合成機能201は、ユーザが指定した車両情報のファイルを本体101から取得して、端末102の記憶部1023に記憶する。
【0138】
次に、ステップS302に示すように、映像情報の取得を行う。ユーザは端末102の入出力部1022を操作して、端末102の記憶部1023に記憶された合成した走行動画のファイルを指定する。ここで、ステップS301に示す車両情報の取得と、ステップS302に示す映像情報の取得とは、逆順であってもよい。それぞれに情報の取得において、先に指定した情報の時刻情報に基づき、その時刻情報と合致する(全部合致または一部合致する)他方の情報のみユーザが選択できるようにしてもよい。
【0139】
次に、ステップS303に示すように、映像に車両情報を合成する処理を行う。合成機能201は、取得した車両情報と映像情報とを、互いの時刻情報が合致するように合成する。合成動画は、車両の走行動画に、同じタイミングで取得された車両情報がインサートされたものとなる。
【0140】
次に、ステップS304に示すように、アップロード先の選択を行う。ユーザは端末102の入出力部1022を操作して、合成動画をアップロードしたいSNSサーバを指定する。
【0141】
次に、ステップS305に示すように、合成動画をアップロードする。すなわち、通信機能202は、先のステップS304で指定されたSNSサーバに合成動画をアップロードする処理を行う。
【0142】
(プリケーションソフトウェアの画面例)
ここで、走行動画アップロードシステム100のアプリケーションソフトウェア200における画面例に基づき、処理の流れを説明する。
図16~
図21は、アプリケーションソフトウェアの画面例を示す図である。
図16~
図21には、アプリケーションソフトウェア200が端末102によって実行された場合の画面例が示される。
アプリケーションソフトウェア200による処理を行う場合、端末102は、予め本体101と近距離無線ネットワークなどを介して接続されている。
図16には、メニュー画面の例が示される。メニュー画面G1には、「Setting」のアイコンA11、「Camera」のアイコンA12、「Edit」のアイコンA13、「SNS」のアイコンA14が表示される。
【0143】
図17(a)から(c)には、カメラに関する画面の例が示される。メニュー画面G1の「Camera」のアイコンA12をタップすると、
図17(a)に示すカメラ画面G2が表示される。カメラ画面G2には、撮像部1021による撮影のモニタ表示が行われるとともに、画面下方にカメラ設定のアイコンA21、録画開始/停止のアイコンA22、ライブラリにアクセスするためのアイコンA23、合成動画の設定のアイコンA24が表示される。
【0144】
合成動画の設定のアイコンA24をタップすると、
図17(b)に示す設定画面G3、
図17(c)に示す設定画面G4、
図18(a)に示す設定画面G5および
図18(b)に示す設定画面G6のいずれかを選択することができる。
【0145】
図17(b)に示す設定画面G3は、車両Mの速度によって録画を自動的にスタート/ストップしたい場合の設定を行う画面の例である。例えば、車速が5km/hに達した際に録画を開始し、車速が0km/hになった際に録画を停止する、といった設定である。端末102の制御部1025は、この設定に従って撮像部1021に撮像開始および停止の指示を与える。
【0146】
図17(c)に示す設定画面G4は、合成動画を作成する際のレイアウトを設定するための画面の例である。この設定画面G4によって、合成画像を作成する際の走行映像と車両情報との画面レイアウトを選択することができる。
【0147】
図18(a)に示す設定画面G5および
図18(b)に示す設定画面G6は、合成画像を作成する際の車両情報の表示項目を設定する画面の例である。
図18(a)に示す設定画面G5では、メータを模した領域に表示する項目を選択することができる。
図18(b)に示す設定画面G6では、メータを模した部分の隣りの領域に表示する項目を選択することができる。
【0148】
手動で録画を行う場合には、
図17(a)に示すカメラ画面G2の録画開始/停止のアイコンA22をタップする。これにより、
図19(a)に示すように録画状態のカメラ画面G7となる。アイコンA22の表示態様によって録画状態か停止状態かを判断することができる。手動で録画を停止する場合には、アイコンA22を再度タップする。録画した走行動画は撮影時刻と対応付けした状態で記憶部1023に保存される。
【0149】
録画の開始と同時に、制御部1025は通信部1024を介して本体101に車両情報の取得を開始する指示を与える。本体101の車両情報取得部1011は、端末102から指示を受けて走行中の車両の情報を取得する。また、録画の停止と同時に、制御部1025は通信部1024を介して本体101に車両情報の取得を終了する指示を与える。本体101の車両情報取得部1011は、端末102からの指示を受けて車両の情報の取得を終了する。終了と同時に、車両情報が本体101の記憶部1014に記憶される。取得された車両情報は、走行時刻と対応付けした状態で記憶部1023に保存される。録画の開始および終了と、車両情報の取得の開始および終了とがリンクしているため、保存された走行動画の撮影時刻と車両情報の走行時刻とが合致することになる。
【0150】
図16に示すメニュー画面G1の「Edit」のアイコンA13をタップすると、
図19(b)に示す設定画面G8が表示される。この設定画面G8の「設定の編集」のアイコンA81をタップすると、
図20(a)に示す設定画面G9が表示される。設定画面G9の「ハードに保存されたデータの転送」をタップすると、本体101の記憶部1014に保存された車両情報が端末102へ転送される。
【0151】
図19(b)に示す設定画面G8の「動画選択」のアイコンA82をタップすると、
図20(b)に示す動画選択画面G10が表示される。ここで車両情報を合成する走行動画を選択する。走行動画を選択すると、制御部1025の合成機能201によって走行動画と車両情報との合成処理が行われる。この合成処理では、走行動画に対応付けられた撮影時刻と車両情報の取得時刻とを合致させる(タイミングを合わせる)ようにして合成動画が生成される。
【0152】
図19(b)に示す設定画面G8の「動画再生」のアイコンA83をタップすると、
図21(a)に示す動画再生画面G11が表示される。動画再生画面G11には、予め設定されたレイアウトで走行動画と車両情報とが合成された合成動画が表示される。動画再生画面G11の「開始」をタップすると動画が再生され、「停止」をタップすると動画が停止する。再生された合成動画を確認して問題がなければ「ライブラリに保存」のアイコンA121をタップする。これにより、合成動画が端末102の記憶部1023に保存される。
【0153】
図16に示すメニュー画面G1の「SNS」のアイコンA14をタップすると、
図21(b)に示すSNS投稿画面G12が表示される。SNS投稿画面G12では、合成動画を投稿(アップロード)したいSNSを選択することができる。所望のSNSを選択することで、記憶部1023に保存された合成動画がSNSサーバにアップロードされる。
【0154】
このような合成アップロード装置および合成アップロード方法によれば、簡単な操作で走行映像とタイミングが合致した車両情報との合成動画を生成することができるとともに、合成動画を直ぐにSNSサーバへアップロードすることが可能となる。
【0155】
従来では、走行映像と車両情報とをパーソナルコンピュータに取り込み、映像処理ソフトウェアを用いて走行映像に車両情報をインサートしている。この場合、走行映像と車両情報との時刻のタイミングを合わせることが難しい。例えば、サーキットの走行映像でコースのコントロールラインを通過したタイミングと、その時の車両情報とを合致させようとした場合、車両情報からは車体がコントロールラインを通過したタイミングを読み取ることは難しい。このため、正確なタイミングの合成動画を作成するには慣れが必要であった。本実施形態では、走行映像と車両情報との時刻を合致させて自動的に合成動画を作成することができ、正確なタイミングの合成動画を簡単に作成することが可能となる。
【0156】
さらに、従来では、映像処理ソフトウェアで作成した合成動画をSNSサーバにアップロードしようとした場合、別途SNSアプリケーションを起動させてログインし、合成動画を選択してアップロードする、という数段階の操作が必要となる。本実施形態では、合成動画を作成した状態で同じアプリケーションソフトウェアによってSNSサーバを選択するだけで合成動画をアップロードすることが可能となる。したがって、手軽に走行動画と、これに正確にタイミングが合致した車両情報との合成動画をSNSサーバにアップロードすることが可能となる。
【0157】
なお、本実施形態に係る合成アップロード装置および合成アップロード方法では、走行映像の撮像、車両情報の取得、合成動画の作成、および合成動画のSNSサーバへのアップロードを車両の走行中に連続的に行うようにしてもよい。これにより、走行映像と車両情報との合成動画をライブ配信することが可能となる。
【0158】
以上説明したように、本実施形態によれば、GPSの位置情報を利用して簡単な操作で高精度に走行タイムを計測するなど、車両Mに関する情報の処理を行うことができる車両情報処理装置1および車両情報処理プログラムを提供することが可能になる。
【0159】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0160】
本実施形態は以下の付記を含む。
[付記1]
走行中の車両の情報を取得する車両情報取得部を備えた本体と、
前記本体とは別体に設けられ、前記本体と近距離ネットワークまたは有線で接続され、前記車両の走行中の動画を撮影する撮像部を備えた端末と、
前記本体または前記端末で実行されるアプリケーションソフトウェアと、
を備え、
前記アプリケーションソフトウェアは、
前記撮像部で撮影した前記動画に対応付けられた撮影時刻情報と合致する時刻に前記車両情報取得部で取得された前記車両の情報を、前記動画に合成して合成動画を作成する合成機能と、
前記合成機能で合成した前記合成動画をネットワークに接続されたサーバへアップロードする処理を行う通信機能と、を備える走行動画アップロードシステム。
[付記2]
車両の走行中の動画と、走行中の前記車両の情報とを合成してサーバへアップロードする走行動画アップロードプログラムであって、
コンピュータを、
車両の走行中の動画に対応付けられた撮影時刻情報と合致する時刻に取得された前記車両の情報を、前記動画に合成して合成動画を作成する合成手段、
前記合成機能で合成した前記合成動画をネットワークに接続されたサーバへアップロードする処理を行う通信手段、
として機能させる走行動画アップロードプログラム
【符号の説明】
【0161】
1…車両情報処理装置
10…入力部
11…基準指定部
12…基準位置取得部
13…検知エリア算出部
14…所要時間計測部
15…補正演算部
20…出力部
30…記憶部
40…制御部
50…GPS受信部
100…走行動画アップロードシステム
101…本体
102…端末
200…アプリケーションソフトウェア
201…合成機能
202…通信機能
1011…車両情報取得部
1012…モニタ部
1013…入力部
1014…記憶部
1015…通信部
1021…撮像部
1022…入出力部
1023…記憶部
1024…通信部
1025…制御部
1026…GPS受信部
A11~14,A21~A24,A81~A83,A121…アイコン
C…コース
CP…現在位置座標
D…進行方向
E…誤差
G1…メニュー画面
G2…カメラ画面
G3~G6,G8~G9…設定画面
G7…カメラ画面
G10…動画選択画面
G11…動画再生画面
G12…SNS投稿画面
M…車両
RP…基準位置座標
S1,S2…部分
SA,SA1,SA2,SA3…検知エリア
SL…スタートライン
SP…ピッチ
TL…走行軌跡
d1,d2…距離