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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103204
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】酸化鉄磁性粒子
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/00 20060101AFI20230719BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20230719BHJP
   C01G 49/02 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230719BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230719BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230719BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 49/18 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 49/08 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H01F1/00 154
C01G49/00 A
C01G49/02
A61P35/00
A61K33/26
A61K33/34
A61K9/50
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/04
A61K49/18
A61K49/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060559
(22)【出願日】2023-04-04
(62)【分割の表示】P 2021569348の分割
【原出願日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0044724
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0044735
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521508715
【氏名又は名称】ズィーティアイバイオサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】パク,セジン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨンスン
(72)【発明者】
【氏名】リュ ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ ユンシク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】様々な分野に利用することができる酸化鉄磁性粒子を提供する。
【解決手段】酸化鉄及びMXを含む酸化鉄磁性粒子であって、前記Mは、Cu、Sn、Pb、Mn、Ir、Pt、Rh、Re、Ag、Au、Pd及びOsからなる群から選択される1種以上を含み、前記Xは、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される1種以上を含み、前記nは1乃至6の整数である。さらに、前記MXは、CuF、CuF2、CuF3、CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、CuI2及びCuI3からなる群から選択される1種以上を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化鉄及びMXを含む酸化鉄磁性粒子であって、前記Mは、Cu、Sn、Pb、Mn、Ir、Pt、Rh、Re、Ag、Au、Pd、及びOsからなる群から選択される1種以上を含み、前記Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択される1種以上を含み、前記nは1乃至6の整数である酸化鉄磁性粒子。
【請求項2】
前記Mは、Cuである請求項1に記載の酸化鉄磁性粒子。
【請求項3】
前記MXは、CuF、CuF、CuF、CuCl、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、CuI、及びCuIからなる群から選択される1種以上を含む請求項2に記載の酸化鉄磁性粒子。
【請求項4】
前記MXは、CuF、CuCl、CuBr、及びCuIからなる群から選択される1種以上を含む請求項3に記載の酸化鉄磁性粒子。
【請求項5】
前記Xは、Iである請求項1に記載の酸化鉄磁性粒子。
【請求項6】
前記Xは、Xの放射性同位元素又はXの放射性同位元素の混合物を含む請求項1に記載の酸化鉄磁性粒子。
【請求項7】
前記酸化鉄磁性粒子表面の少なくとも一部分が、親水性リガンドで追加にコーティングされる請求項1に記載の酸化鉄磁性粒子。
【請求項8】
前記酸化鉄は、炭素数4乃至25の脂肪族カルボン酸塩及びアミン系化合物からなる群から選択される1種以上の化合物と鉄の複合体に由来する請求項1に記載の酸化鉄磁性粒子。
【請求項9】
前記酸化鉄は、Fe1319、Fe(magnetite)、γ-Fe(maghemite)及びα-Fe(hematite)、β-Fe(beta phase)、ε-Fe(epsilon phase)、FeO(Wustite)、FeO(Iron Dioxide)、Fe、Fe、Fe、及びFe2532からなる群から選択される1種以上を含む請求項1に記載の酸化鉄磁性粒子。
【請求項10】
前記親水性リガンドは、ポリエチレングリコール、ポリエチレンアミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸無水物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、リン酸-ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリプロピレンオキシド、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、澱粉、デキストラン誘導体、スルホン酸アミノ酸、スルホン酸ペプチド、シリカ、及びポリペプチドからなる群から選択される1種以上を含む請求項7に記載の酸化鉄磁性粒子。
【請求項11】
前記酸化鉄磁性粒子は、酸化鉄を基準にMXが重量比として1:0.005乃至0.8の比率で含まれる請求項1に記載の酸化鉄磁性粒子。
【請求項12】
前記酸化鉄磁性粒子は、1kHz乃至1MHzの周波数を有する交流磁気場で使用される請求項1に記載の酸化鉄磁性粒子。
【請求項13】
前記酸化鉄磁性粒子は、20 Oe(1.6kA/m)乃至200 Oe(16.0kA/m)の強さを有する磁気場で使用される請求項1に記載の酸化鉄磁性粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化鉄磁性粒子に係る。
【背景技術】
【0002】
磁性粒子は、細胞標識、磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging、MRI)、薬物伝達、発熱療法を含む生体医学分野で広く利用されてきた。多様な種類の磁性粒子の中で、超常磁性酸化鉄磁性粒子は、高い磁性感受率と超常磁性のため、生体医薬分野で広く研究されてきた。
【0003】
また、磁性粒子は、放射線又は磁気場を加えれば熱を発生させる特徴を有するので、磁気共鳴画像装置(MRI)の造影剤や、ナノメディソン分野での薬物伝達のための磁気キャリヤー(magnetic carrier)、磁気又は放射線基盤の温熱治療等に使用されることもあり得る。
【0004】
画像診断分野で、酸化鉄は、超常磁性造影剤として、陰性造影剤として提案されている。しかし、酸化鉄粒子は、疎水性引力が強いので、互いに凝集がよく起こり、クラスターを形成するか、又は生体環境に露出されれば、速く生分解が起こることができる。また、酸化鉄粒子は、その構造が十分に安定ではなければ、元の構造が変化して磁気特性が変化することができ、毒性を有することができる。反面、ヨードは、陽性造影剤として提案されたが、造影効果を高めるために高濃度で使用する場合、肝臓/腎臓毒性が発生する問題によって造影媒質の体積当たり含量を高める製剤化技術を導入している。
【0005】
一方、既存の癌治療方法の限界点を補うために放射線又は電磁気場基盤の温熱治療が提案されている(Wust et al.,Lancet Oncology,2002,3:487-497)。癌細胞の固有な特性の中の1つは、熱適応能力が正常細胞に比べて著しく低下するということである。温熱治療法は、このように正常細胞と癌細胞の熱感受性差を利用して癌組織及び周辺の温度を約40乃至43℃に上げて癌細胞を選択的に死滅させる抗癌療法である。癌細胞の周辺に磁性粒子を注入して外部から磁気場をかければ、磁性粒子で熱が発生して短い時間に癌細胞を死滅させることができる。磁気場は、皮膚組織によって影響を受けず、浸透深さの制限がないので、磁性粒子が身体内の癌組織に蓄積されている時に選択的に熱を加えることができる。したがって、磁性粒子を利用した温熱治療研究は、多くの関心を集めてきた。
【0006】
温熱治療用磁性粒子としても酸化鉄磁性粒子が主に使用される。酸化鉄磁性粒子は、使用される運動量ぐらいのエネルギーが熱に転換されて放出される間接バンドギャップ(indirect band gap)を有する物質であるためである。その中で、Fe(マグネタイト)又はa-Fe(フェライト)系磁性粒子は、生体適合性、熱誘導能力、化学的安定性、及び特有の磁気的特性を有している。このような特性のため、酸化鉄磁性粒子の温熱治療のための磁気発熱体として研究が現在活発に進行されおり、米国FDAで医療用として承認されたこともある。しかし、酸化鉄磁性粒子の中で、Fe粒子は、ナノサイズとして、その結晶相が周辺環境の条件に応じてα-Fe、γ-Fe等に容易に変化し、これにしたがって、発熱特性とその磁気的特性が変わって熱生成能力が減少するという短所がある。他の物質としては、Co、Ni、Mg系列のMFe(M=Co、Ni、Mg)ナノ粒子に対する研究が進行されているが、これもやはり低い発熱温度によって生体内部に適用が難しいという短所がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Wust et al.,Lancet Oncology,2002,3:487-497.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、様々な分野に利用することができる酸化鉄磁性粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、酸化鉄及びMXを含む酸化鉄磁性粒子であって、前記Mは、Cu、Sn、Pb、Mn、Ir、Pt、Rh、Re、Ag、Au、Pd、及びOsからなる群から選択される1種以上を含み、前記Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択される1種以上を含み、前記nは1乃至6の整数である酸化鉄磁性粒子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の酸化鉄磁性粒子は、放射線、磁気場、及び電波のような外部から流入される刺激に高い反応性を有することができる。
【0011】
また、前記酸化鉄磁性粒子が含まれた造影剤を利用して様々な画像診断機器に適用することができ、少ない用量を投与して充分な画像を得ることができる。
【0012】
さらに、前記酸化鉄磁性粒子は、酸化鉄とMXとの間に形成された結合によって高い構造的安定性を有するので、酸化鉄磁性粒子の各々の成分によって発生することができる副作用の恐れがなく、毒性が低いので、安全に人体に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に従って製造されたCuI/Fe粒子を透過電子顕微鏡を利用して観察した結果を示したものである(a:透過電子顕微鏡(TEM)イメージ、b:高分解能透過電子顕微鏡(HR-TEM)イメージ、c:高速フーリエ変換(FTT)イメージ)。
図2】本発明の一実施形態に従って製造された様々なサイズのCuI/Fe粒子を透過電子顕微鏡を利用して観察した結果を示したものである。
図3】本発明の一実施形態に従ってCuIドーピング量を異ならせて製造されたCuI/Fe粒子に外部交流磁気場を加えた後、時間に応じた温度変化を示したグラフである。
図4】本発明の一実施形態に係ってCuIドーピング量を異ならせて製造されたCuI/Fe粒子に外部交流磁気場を加えた後、ILP値を示したグラフである。
図5】本発明の一実施形態による粒子と既存の公知された代表的な物質とのILP値を比較したグラフである。
図6】本発明の一実施形態による粒子を利用して生体内温熱治療試験を遂行した後、時間に応じた癌サイズを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の様々な実施形態が添付された図面を参照して記載される。本発明は特定実施形態に対して限定されなく、本発明の実施形態の様々な変更(Modification)、均等物(Equivalent)及び/又は代替物(Alternative)を含むことと理解されなければならない。図面の説明と関連して、類似な構成要素に対しては類似な参照符号が使用されることができる。
【0015】
本文書で、“有する”、“有することができる”、“含む”、又は“含むことができる”等の表現は該当特徴(例:数値、機能、動作、又は部品等の構成要素)の存在を示し、追加的な特徴の存在を排除しない。
【0016】
本文書で、“A又はB”、“A又は/及びBの中で少なくとも1つ”、又は“A又は/及びBの中で1つ又はその以上”等の表現は共に羅列された項目のすべての可能な組合を含むことができる。例えば、“A又はB”、“A及びBの中で少なくとも1つ”、又は“A又はBの中で少なくとも一つ”は、(1)少なくとも1つのAを含み、(2)少なくとも1つのBを含み、又は(3)少なくとも1つのA及び少なくとも1つのBの全てを含む場合を全て指称することができる。
【0017】
本文書で使用された表現“~するように構成された(又は設定された)(Configured to)”は状況によって、例えば、“~に適合な(Suitable for)”、”~する能力を有する(Having the capacity to)”、“~するように設計された(Designed to)”、“するように変更された(Adapted to)”、“~するように作られた(Made to)”、又は“~をすることができる(Capable of)”と変えて使用されることができる。用語“~するように構成(又は設定)された”は“特別に設計された(Specifically designed to)”ことのみを必ず意味することではない。
【0018】
本文書で使用された用語は単なる特定の実施形態を説明するために使用されたことであって、他の実施形態の範囲を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈の上に明確に異なりに表現しない限り、複数の表現を含むことができる。技術的であるか、或いは科学的な用語を含んでここで使用される用語は本文書に記載された技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されることと同一な意味を有することができる。本文書に使用された用語の中で一般的な事前に定義された用語は関連技術の文脈の上に有する意味と同一又は類似な意味として解釈されることができ、本文書で明確に定義されない限り、理想的であるか、或いは過度に形式的な意味として解釈されない。場合によって、本文書で定義された用語であっても、本文書の実施形態を排除するように解釈されることができない。
【0019】
本文書に開示された実施形態は開示された、技術内容の説明及び理解のために提示されたことであり、本発明の範囲を限定することではない。したがって、本文書の範囲は、本発明の技術的思想に基づいたすべての変更又は様々な他の実施形態を含むことと解釈されなければならない。
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。これに先に、本明細書及び請求の範囲に使用された用語や単語は通常的であるか、或いは辞書的な意味として限定して解釈されてはならなく、発明者はその自分の発明を最も最善の方法に説明するために用語の概念を適切に定義することができる原則に基づいて本発明の技術的思想に合致する意味と概念として解釈されなければならない。
【0021】
したがって、本明細書に記載された実施形態の構成は本発明の最も好ましい一部実施形態に過ぎなく、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを置き換えることができる様々な均等物及び変形例があり得ることを理解すべきである。
【0022】
明細書の全体で、所定の部分が所定の構成要素を“含む”とする時、これは特別に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除外することではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0023】
本開示の一側面において、用語“約”は具体的な数値に含まれる製造工程上の誤差や本開示の技術的思想の範疇に含まれる僅かの数値の調整を含む意図として使用されている。例えば、用語“約”はそれが称する値の±10%、一側面で±5%、その他の側面で±2%の範囲を意味する。
【0024】
以下では、本発明に対して、具体的に説明する。
【0025】
本発明の一実施形態による酸化鉄磁性粒子は、酸化鉄及びMXを含む酸化鉄磁性粒子として、前記Mは、Cu、Sn、Pb、Mn、Ir、Pt、Rh、Re、Ag、Au、Pd、及びOsからなる群から選択される1種以上を含み、前記Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択される1種以上を含み、前記nは1乃至6の整数である。
【0026】
用語“酸化鉄”は、鉄の酸化物として、例えば、Fe1319、Fe(magnetite)、γ-Fe(maghemite)及びα-Fe(hematite)、β-Fe(beta phase)、ε-Fe(epsilon phase)、FeO(Wustite)、FeO(Iron Dioxide)、Fe、Fe、Fe、Fe2532、及びDelafossiteからなる群から選択される1種以上を含むが、これに制限されない。
【0027】
用語“重原子”は、例えば、Mn、Co、Cu、Se、Sr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sn、Ba、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pbのような、B(ボロン)より重い(heavier)原子を含むが、これに制限されるものではない。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、前記MはCuであり得る。
【0029】
また、前記MXは、CuF、CuF、CuF、CuCl、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、CuI、及びCuIからなる群から選択される1種以上を含み得、好ましくは前記MXはCuF、CuCl、CuBr、及びCuIからなる群から選択される1種以上を含み得る。
【0030】
また、前記Xは、Xの放射性同位元素又はXの放射性同位元素の混合物を含み得る。用語“放射性同位元素”は、1種以上の原子が、同一な原子番号を有するが、自然で一般的に発見される原子質量又は質量数(mass number)と異なる原子質量又は質量数を有する原子によって代替された化合物を全て称する。本発明の化合物に含めるのに適合する同位元素の例は、フッ素の同位元素、例えば、18F;塩素の同位元素、例えば、36Cl;臭素の同位元素、例えば75Br、76Br、77Br、及び82Br;及びヨードの同位元素、例ええば123I、124I、125I、及び131Iを単独で又は混合して含むものを言う。
【0031】
本発明によれば、酸化鉄粒子にMXnが含まれているという意味は、酸化鉄粒子とMXnとの間に物理的又は化学的結合が形成されたことであり得る。具体的には、酸化鉄粒子間にMXが配置されることであり得、水素結合を通じて酸化鉄とMXが結合されていることであり得、前記MXを酸化鉄コア表面に一般的なコーティング方式を導入して形成するか、又は拡散工程又はイオン注入工程のようなドーピング(doping)方式を導入して形成するか、又はシェル構造を形成できるようにMX内部に酸化鉄結晶核を形成させることを含むことであり得る。
【0032】
酸化鉄粒子にMXが含まれている粒子は、磁性を有し、比較的低い交流磁気場の強さ及び/又は低い周波数である磁気場又は各種放射線条件下で酸化鉄の造影効果を増幅させることができる。
【0033】
また、本発明の酸化鉄磁性粒子は、酸化鉄粒子と重原子-ハロゲン化合物との間の結合及び重原子-ハロゲン間の結合が非常に安定的であるので、各構成成分、即ち酸化鉄、重原子、及びハロゲン元素の各々が人体に誘発することができる副作用の恐れが概ねない。
【0034】
一具体例で、前記酸化鉄磁性粒子は、前記酸化鉄磁性粒子表面の少なくとも一部分が、親水性又は電荷を帯びるリガンド又は高分子でコーティングされたものであり得る。前記親水性リガンドは、一具体例による酸化鉄磁性粒子の水に対する溶解度を増加させ、安定化を高めるか、癌細胞のような特定細胞に対する標的化又は浸透力を増進させるために導入することができる。このような親水性リガンドは、生体適合性を有することが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンアミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸無水物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、リン酸-ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリプロピレンオキシド、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、澱粉、デキストラン誘導体、スルホン酸アミノ酸、スルホン酸ペプチド、シリカ、及びポリペプチドからなる群から選択される1種以上を含むことができるが、これに制限されない。必要によって、癌細胞を標的化する場合、前記親水性リガンドとして葉酸、トランスフェリン(transferrin)又はRGDを含むペプチド又はタンパク質を使用することができ、細胞に対する浸透力を増進させるためにヒアルロニダーゼ又はコラゲナーゼを使用することができるが、これに制限されない。
【0035】
本発明の酸化鉄磁性粒子に含まれる酸化鉄は、炭素数4乃至25の脂肪族カルボン酸塩及びアミン系化合物からなる群から選択される1種以上の化合物と鉄の複合体に由来するものであり得る。
【0036】
前記炭素数4乃至25の脂肪族カルボン酸塩の例としては、酪酸塩、吉草酸塩、カプロン酸塩、エナント酸塩、カプリル酸塩、ペラルゴン酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、ペンタデシル酸塩、酢酸塩、パルミチン酸塩、パルミトレイン酸塩、マルガリン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、バクセン酸塩、リノール酸塩、(9,12,15)-リノレン酸塩、(6,9,12)-リノレン酸塩、エレオステアリン酸塩、ツベルクロステアリン酸塩、アラキジン酸塩、アラキドン酸塩、ベヘン酸塩、リグノセリン酸塩、ネルボン酸塩、セロチン酸塩、モンタン酸塩、メリシン酸塩、及び1つ以上のアミノ酸を含むペプチド塩からなる群から選択される1種以上を含むことができる。これらの化合物を単独又は2種以上の混合酸塩の形態に使用してもよい。
【0037】
前記炭素数4乃至25の脂肪族カルボン酸塩の金属成分は、カルシウム、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上を含むものであり得る。
【0038】
前記アミン系化合物の例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン及びシクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン及びブチルステアリルアミン、トリエチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン及びトリオクチルアミン、トリアリルアミン及びオレイルアミン、ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミン、N,N-ジメチルアニリン及びジメチルベンジルアニリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン(xylylenediamine)、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ジメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-エチル-4-メチルイミダゾール及び1、8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)からなる群から選択される1種以上を含むことであり得る。
【0039】
酸化鉄磁性粒子中のMXの含量は、本発明の一実施形態による酸化鉄磁性粒子の製造過程の中で算出することができる。炭素数4乃至25の脂肪族カルボン酸塩及びアミン系化合物からなる群から選択される1種以上の化合物と鉄が複合体を形成した後、前記複合体は一連の過程を経て酸化鉄を形成し、形成された酸化鉄にMXnを結合させる時に投入されるMXnの含量は、前記複合体の合計100mol%を基準とすることができる。
【0040】
具体的に、酸化鉄磁性粒子は、前記MXnを、炭素数4乃至25の脂肪族カルボン酸塩及びアミン系化合物からなる群から選択される1種以上の化合物と鉄の複合体100mol%対比約1乃至13mol%、好ましくは約1乃至8mol%、より好ましくは約3乃至6mol%で含んで製造される。
【0041】
上記の条件で最終形成される酸化鉄磁性粒子は、前記酸化鉄磁性粒子に含まれる酸化鉄を基準にMXが重量比として、1:0.005乃至0.08、好ましくは1:0.008乃至0.08の比率で含まれるものであり得る(前記比率は、金属含有量分析装備であるICP(Inductively coupled plasma)Mass Spectroscopy結果に基づいて指定する)。前記範囲内で酸化鉄磁性粒子にMXが含まれることによって、優れた比損失力を確保することができ、外部交流磁気場下又は放射線照射の時、高い温度変化を確保することもできる。
【0042】
前記酸化鉄磁性粒子は、0.1nm乃至1μmの平均粒子径(d50)を有するものであり得る。前記酸化鉄磁性粒子のサイズが0.1nm乃至100nmの平均粒子径(d50)を有する場合には、造影剤、抗癌剤、温熱治療剤、放射線治療剤の構成要素として利用されることができ、前記酸化鉄磁性粒子のサイズが100nmを超過する場合には、様々な生体外(in vitro)医療分野に適用することができる。
【0043】
一具体例で、前記酸化鉄磁性ナノ粒子の平均粒子径(d50)は、投与方法、投与位置、診断対象となる臓器に応じて調節することができる。例えば、0.1乃至100nmのサイズを有する場合、平均粒子径(d50)が15nm以下である場合には静脈内注入が好ましく、平均粒子径(d50)が15nm超過である場合には病巣内(intralesional)、腫瘍内(intratumor)注入が好ましいことができる。
【0044】
前記のような酸化鉄磁性粒子は、放射線、磁気場、及び電波のような外部から流入される刺激に高い反応性を有しながらも、高い比損失力を確保することができるので、後述する温熱治療に効果的に利用することができる。
【0045】
推測的には、MXnのような重原子-ハロゲン化合物の場合、重原子の種類とハロゲンの種類(周期率表上FからIに原子殻が増えるほど、誘電率/電子蓄電容量の差が発生)に応じて誘電率及び蓄電容量が変わるので、磁性体である酸化鉄と結合して磁性の強さを上げるだけでなく、化合物が吸収することができる電磁気場エネルギーのサイズ又は総量を上昇させることによって、最終酸化鉄基盤磁性粒子から放出する熱エネルギーの量を上昇させることができるようになる。これは、既存高周波(200kHz以上)領域帯のみならず、相対的に低い低周波と中周波(50Hz~200kHz)帯域の電磁気場エネルギー環境でも、既存の酸化鉄基盤磁性粒子対比で高い熱エネルギー放出(転換)効率(ILP:Intrinsic loss power)を改善又は上昇させることができる。
【0046】
また、前記酸化鉄磁性粒子が含まれた造影剤を利用して様々な画像診断機器に適用することができ、少ない用量を投与して充分な画像を得ることができる。
【0047】
さらに、酸化鉄と重原子-ハロゲン化合物との間に形成された結合によって高い構造的安定性を有するので、各構成成分によって発生することができる副作用の恐れがなく、毒性が低く安全に人体に適用することができる。
【0048】
本発明の一実施形態による酸化鉄磁性粒子は、造影剤として利用されるか、或いは、癌細胞死滅のための放射線治療又は温熱治療の用途として利用されることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化鉄磁性粒子は、バイオイメージングのための組成物に含まれることができる。本発明による酸化鉄磁性粒子は、磁性を有するので、磁気的性質を利用した診断法に有用に使用されることができる。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、本発明は(a)癌疑い患者に前記酸化鉄磁性粒子を含む組成物を投与する段階、及び(b)磁気共鳴装置を利用して前記患者体内の酸化鉄磁性粒子の存在有無を検出する段階を含む癌診断方法を提供する。本発明による酸化鉄磁性粒子を投与すれば、例えば、MRIT1-及びT2-weighedイメージで病巣と正常組織との対照度が明確に増強されて可視化される造影効果を確認することができる。
【0051】
本発明の酸化鉄磁性粒子を投与すれば、別の追加的な造影剤投与無しでも癌を診断することができるので、本発明の酸化鉄磁性粒子で癌の診断と治療を同時に遂行することができる。
【0052】
本発明の酸化鉄磁性粒子に癌細胞標的化物質又は浸透力増進物質が結合されている場合、外部交流磁気場下又は放射線照射下に熱診断及び治療をより効率的に遂行することができる。
【0053】
一具体例で、本発明の酸化鉄磁性粒子が造影剤組成物に含まれる場合、前記造影剤組成物100重量%を基準に本発明の酸化鉄磁性粒子は0.1乃至15重量%、1乃至15重量%、1乃至10重量%、3乃至10重量%、又は4乃至8重量%で含まれることができる。
【0054】
上述した範囲内で酸化鉄磁性粒子が含まれることによって、体内に酸化鉄磁性粒子が蓄積されなく、体外に排出されて、造影剤としての毒性を著しく減少させることができる。
【0055】
一具体例で、前記造影剤は1kHz乃至1MHz以下の周波数又は20 Oe(1.6kA/m)乃至200 Oe(16kA/m)以下の強さを有する磁気場で造影効果(contrast effect)を示すことができる。前記造影剤を個体に投与した後に照射する交流磁気場は、1kHz乃至1MHzの周波数、又は30kHz乃至120kHzの周波数を有するものであり得る。一般的に、一重項から三重項にスピン状態を転換させるためには1MHz以上の交流磁気場を印加しなければならないが、本発明の場合、数十乃至数百kHzの交流磁気場下でも三重項遷移が可能である。また、交流磁気場は20 Oe(1.6kA/m)乃至200 Oe(16.0kA/m)、80 Oe(6.4kA/m)乃至160 Oe(12.7kA/m)、又は140 Oe(11.1kA/m)の磁気場強さを有するものであり得る。一具体例による造影剤は既存の高エネルギー方式とは異なりに比較的人体に無害な低い磁気場の強さ及び/又は周波数の交流磁気場でも使用されることができる点で有用である。
【0056】
本発明の酸化鉄磁性粒子が含まれた造影剤は、画像診断のために適用することができる機器に対して制限がない特徴を有する。本発明の酸化鉄磁性粒子が含まれた造影剤は、陰性造影剤及び陽性造影剤成分を両方とも有するので、高い対照度を有して優れた造影効果を示す。特に、従来のヨード基盤(Iohexol又はIopamidol)又は金ナノCT造影剤より高い放射線吸収HU(hounsfield unit)値及びCT造影効果を示す。既存のヨード基盤造影剤の場合、647mg/ml基準、3000HU(1mg基準4.6HU)、金ナノ粒子の場合、1mg基準約5~50HU値であると報告されている。反面に、本発明の酸化鉄磁性粒子が含まれた造影剤の場合、1mg基準約50~100HU値を示す。
【0057】
本発明は、CT造影剤としての効果のみならず、X線画像、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、US、光学的画像、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)、PET(Positron Emission Tomography)、MPI(Magnetic Particle Imaging)、平板画像、及び硬直形、可撓性、又はカプセル内視鏡検査等の造影剤としても活用が可能である。
【0058】
様々な機器に1種類の造影剤が活用されることができることは複合的な検査が必要である場合、非常に有用であることができる。例えば、CT検査とMRI検査を近い時間内に進行しなければならない場合、CT用造影剤1とMRI用造影剤2が各々別に体内に投入され、互いに異なる造影剤が体内に混ざりながら、検査結果を不明確にすることができ、個体が毎回検査ごとに異なる造影剤を投与されるようになり、毒性を誘発する確率が高くなる。しかし、本発明の酸化鉄磁性粒子が含まれた造影剤は、様々な機器に制限なしで活用が可能であるので、このような不便を減少させることができる。
【0059】
他の態様は、一具体例による酸化鉄磁性粒子を含む造影剤を含む癌診断用組成物を提供する。
【0060】
前記癌は、胃癌、肺癌、黒色腫、子宮癌、乳癌、卵巣癌、肝癌、胆道癌、胆嚢癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、子宮頸癌、脳癌、前立腺癌、骨癌、皮膚癌、血液癌、腎臓癌、甲状腺癌、部甲状腺癌、又は尿管癌であり得る。
【0061】
前記癌診断用組成物は、経口又は非経口方式で個体に投与されることができ、各投与に適合するように薬剤学的に許容される担体を含むことができる。適合する薬剤学的に許容される担体及び製剤は、レミントン著書(Remington’s Pharmaceutical Sciences 19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0062】
前記癌診断用組成物が経口方式に投与される場合、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤のような固形製剤又は液剤、懸濁剤のような液状製剤で投与されることができる。
【0063】
前記癌診断用組成物が非経口方式に投与される場合、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、病巣内注入、腫瘍内注入等で投与されることができる。
【0064】
前記癌診断用組成物が液状として経口又は非経口投与される場合、等張性塩化ナトリウム溶液、ハンス溶液(Hank’s solution)、リンガー溶液(Ringer’s solution)のように通常的に公知された溶媒を利用して水溶性溶液又は懸濁液で製造されることができる。
【0065】
一具体例で、前記癌診断用組成物は、同時に癌を治療するためのものであり得る。
【0066】
前記言及した本発明の酸化鉄磁性粒子が含まれた造影剤は、温熱治療で癌細胞を死滅させることができる。用語“温熱治療”は、身体組織を正常体温より高い温度に露出させることにより癌細胞を始めとする病巣細胞を死滅させるか、又はこれらの細胞が放射線治療や抗癌剤等に対してさらに高い敏感性を有するようにすることを意味する。癌温熱治療としては、放射線治療/薬物療法と併用して癌治療効果を高める全身温熱治療があり、目標とする(targeted)固形癌に酸化鉄磁性粒子を注入し、外部交流磁気場を加えて癌細胞を死滅させる局部温熱治療がある。
【0067】
このように温熱治療法は、癌細胞を選択的に死滅させることができるので、副作用を低くするという長所があるが、既存の酸化鉄粒子に基づいてする温熱治療技術では、外部交流磁気場による粒子自体の発熱量が低く、その持続性が制限的であるという問題点があるので、温熱治療の限界点が指摘されてきた。
【0068】
(a)粒子の発熱現象を増加させるために、外部交流磁気場の強さ又は周波数を高める方法、又は
(b)生体内に注入させる粒子の濃度を高める方法。
【0069】
しかし、(a)外部交流磁気場の強さ又は周波数を高くする方法は、皮膚周囲に赤い斑点、脂肪が多い部位には僅かのやけど、傷、炎症、壊死等が現れることがあり、癌組織だけでなく正常組織細胞を損傷させるか、或いは免疫力を低くする結果を招くこともある。また、このような方法は、人体有害性による副作用を避けることができないため、妊婦、重度の炎症患者、心臓拍動機を植生した患者、胸水及び腹水が激しい患者には使用が禁止されている。その代わりとして、(b)生体内に注入させる粒子の濃度を高くする方法は、体内に粒子が蓄積される確率を増加させ、粒子表面の化学組成による毒性問題が発生することもある。
【0070】
しかし、本発明による酸化鉄磁性粒子は、結合されているハロゲン基による誘電率又は電子蓄電容量の差による酸化鉄内部の量子効率増幅効果によって、外部交流磁気場又は放射線装備を利用した温熱治療法に使用される時、効率的な熱発生の結果をもたらす。したがって、生体投入する粒子の濃度を既存の酸化鉄粒子に比べて画期的に下げることができるようになり、これによって生体蓄積量及び毒性の問題も大幅に改善できるようになった。結論的に、本発明は、酸化鉄磁性粒子の生体適合性、化学的安定性、磁気的特性の長所にも拘らず、低い発熱量によって使用が制限された従来技術の短所を劇的に克服することができるようになった。
【0071】
以下、本発明の理解を助けるために実施例等を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例0072】
実施例1:CuIがドーピングされた酸化鉄磁性粒子の合成
本明細書で記述された酸化鉄磁性粒子の例としてCuIドーピング量が6mol%である組成を有する酸化鉄磁性粒子は、次のような方法で合成した。
【0073】
(a)鉄-オレイン酸複合体の合成
FeCl・6HO(30mmol)とオレイン酸ナトリウム(sodium oleate)(28mmol)をヘキサン200ml、エタノール100ml、脱イオン水100mlと混合し、110℃で6時間、強く撹拌しながら、反応させた。反応液を常温で冷却した後、分液漏斗を利用して透明な下層を除去し、茶色の上層有機層に水100mlを混合して振った後、再び下の水層を除去した。これを3回繰り返した。残りの茶色の有機層をビーカーに移し、ヘキサンが蒸発するように110℃で4時間加熱した。
【0074】
(b)CuIがドーピングされた酸化鉄磁性粒子の合成
鉄-オレイン酸複合体4.5g(5mmol)とオレイン酸1.7g(6mmol)、CuI 0.05g(0.3mmol)を1-エイコセン7ml、及びジベンジルエーテル13mlと混合した。混合液を丸底フラスコに入れ、30分程度90℃、真空状態で気体と水分を除去した。窒素を注入し、200℃まで温度を上げた。その後、前記混合液の温度を3.3℃/minの速度で310℃まで上げた後、60分間反応させた。反応液を冷却した後、50mlコニカルチューブ(conical tube)に移し、エタノール及びヘキサンを1:1の比率で30ml注入した後、遠心分離して粒子を沈殿させた。沈殿した粒子をヘキサン10ml及びエタノール5mlで水洗した後、得られた沈殿物をトルエン又はヘキサンに分散させた。ここで、ジベンジルエーテルは、150℃以上の温度でベンジルアルデヒドとトルエンに分解され、前記アルデヒドから生成されたラジカルによってIron oxo(-Fe-O-Fe-)と重原子-ハロゲン化合物(CuI)との間の水素結合形成を助け、結晶形成に参加する。
【0075】
実施例1で製造される粒子のサイズは約6~7nmであった。(a)段階でオレイン酸の混合量を1.84g(6.5mmol)、1.98g(7mmol)、2.12g(7.5mmol)、2.26g(8mmol)に調整することによって、サイズが各々約8~9nm、約9~10nm、約13~14nm、約14~15nmである粒子を得た。サイズが約20乃至30nmである粒子を製造するためには、オレイン酸の含量を2.82g(10mmol)に調整し、さらに(b)段階で1-エイコセン及びジベンジルエーテルの量を両方とも10mlに調整して温度を330℃まで3.3℃/minの速度で上げた後、60分間反応させることによって製造した。
【0076】
実施例1で使用されたCuIの量は0.05g(0.3mmol)で、CuIドーピング量は、鉄-オレイン酸複合体(5mmol)対比約6%であった。CuIの投入量を0.0057g(0.03mmol)、0.019g(0.1mmol)、0.124g(0.65mmol)に調整して、CuIドーピング量が各々約1%、3%、13%である酸化鉄磁性粒子を得た。
【0077】
実施例2:親水性リガンド(ポリアクリル酸)でコーティングされた磁性粒子の製造
ポリアクリル酸2gとテトラエチレングリコール40mlを110℃で加熱中にヘキサン5mlに分散された酸化鉄磁性粒子150mgを注射器で注入した。これを撹拌し、280℃で8時間反応させた。反応液を冷却した後、0.01MのHCl20mlを入れ、磁石に引き付けられた粒子を収集した。これを2回繰り返した後、エタノールを利用して沈殿物を得、最後に水に分散させた。
【0078】
実施例3:外部交流磁気場下で重原子-ハロゲン化合物のドーピング量に応じた温度変化の分析
交流磁気場を誘導して加熱するシステムは4つの主な下部システムで構成されている;(a)周波数変調及び振幅正弦波発生器(a variable frequency and amplitude sine wave function generator(20MHz Vp-p、TG2000、Aim TTi、USA))、(b)電力増幅器(1200Watt DC Power Supply、QPX1200SP、Aim TTi、USA)、(c)誘導コイル(回転数:17、直径:50mm、高さ:180mm)及び磁気場発生装置(Magnetherm RC、nanoTherics、UK)、(d)温度変化熱電対(OSENSA、Canada)。
【0079】
CuIドーピングされた酸化鉄磁性粒子を前記で説明したように製造した。前記酸化鉄磁性粒子を脱イオン水で2mg/ml濃度に希釈した後、交流磁気場を印加して、温度変化を熱電対(thermocouple、OSENSA、Canada)を利用して測定した。その結果、ドーピングされない酸化鉄磁性粒子(IONP;Iron Oxide Nanoparticle)の対照群に比べて、CuIがドーピングされた酸化鉄磁性粒子が交流磁気場を誘導すれば、温度が著しく上がることを確認した(図3)。CuIのドーピング量は、鉄-オレイン酸複合体対比6mol%、3mol%、1mol%、13mol%である順に磁気誘導発熱能に優れていた。
【0080】
実施例4:比損失力(SLP、specific loss power)の測定
酸化鉄磁性粒子の発熱量は物理的、化学的特性及び外部交流磁気場の強さ、周波数に応じて発熱量が異なって現れるため、大部分の研究結果では粒子の発熱能力をSLP、ILPで示している。SLPは、質量単位当たり損失された電磁気力で、kg当たりW(ワット)で示す。粒子間の温熱治療効果比較は、実験ごとにf(周波数)、H(磁界強さ)の条件がそれぞれ異なる場合があるため、式[ILP=SLP/(f・H)]を用いてSLP値をILP値で換算することで比較可能である。
【0081】
SLP測定は、ピックアップコイルとオシロスコープで制御された直列共振回路の交流磁気場発生装置(Magnetherm RC、Nanotherics)を使用した。f=108.7kHz、H=11.4kA/mの断熱条件で測定され、光ファイバーIR probeを使用して温度を測定した。
【0082】
ポリアクリル酸でコーティングされた酸化鉄磁性粒子は、前記で説明したように製造された。前記酸化鉄磁性粒子の濃度を20mg/mlに調節してSLPを測定した。その結果、ドーピングされていない酸化鉄磁性粒子の対照群に比べて、CuIがドーピングされた酸化鉄磁性粒子が交流磁気場下で高いILPが発生することを確認した(図4)。CuIのドーピング量は鉄-オレイン酸複合体対比6mol%、3mol%、1mol%、13mol%である順に磁気誘導発熱能が優れていた。
【0083】
既存の公知された代表的な物質とのILP値と本発明実施例1のILP値を表1に示した。表1によれば、従来公知された粒子に比べて本発明の一実施形態による酸化鉄磁性粒子のILP値は約50%乃至6600%程度増加された値を示すことを確認することができる。
【0084】
【表1】
【0085】
[比較対象サンプル出処]
【表2】
【0086】
実施例5:生体内(in vivo)癌治療効果確認実験
図6は、本発明による酸化鉄磁性粒子を利用した温熱治療による細胞死滅が生体内でも効果的に起こることを示す。Panc-1細胞をBalb/c nudeマウスに移植した後、癌組織のサイズが100mmになる時、本発明の酸化鉄磁性粒子が含まれた組成物(6%CuIがドーピングされた酸化鉄磁性粒子3mgを脱イオン水に分散させて得られた水溶液150μl)を皮下投与した後、交流磁気場発生装置(100kHz、80G)を30分印加して温熱治療をし、28日間、癌の体積を確認した。その結果、癌の体積は誘発対照群(G1)と比較して93%小さくなり、癌の成長が効果的に抑制されることを確認した。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例6:生体内(in vivo)投与の時の毒性実験
表4は、本発明による組成物をBalb/c nudeマウスに150μl投与する前と投与した後1日目、7日目、14日目、28日目に血液生化学的、電解質数値を検査したものである。有意な数値の減少及び/又は増加は無いが、静脈注射後の肝毒性指標(ALP、ALT、AST)が若干増加し、腎臓毒性指標としてGlucoseが減少し、Creatinine、Kが増加したが、7~14日目には正常に戻った。
【0089】
【表4】
【0090】
実施例7乃至19:MXが含まれた酸化鉄磁性粒子の合成
(a)鉄-オレイン酸又は鉄-オレイルアミン複合体の合成
下記の表5及び6の比率になるようにFeCl・6HOとオレイン酸ナトリウム(sodium oleate)(28mmol)(実施形態7乃至11及び17乃至19)又ははオレイルアミン(28mmol)(実施例12乃至16)を、ヘキサン200ml、エタノール100ml、脱イオン水100mlと混合し110℃で6時間強く撹拌させながら、反応させた。反応液を常温で冷却した後、分液漏斗を利用して透明な下層を除去し、茶色の上層有機層に水100mlを混合して振った後、再び下の水層を除去した。これを3回繰り返した。残りの茶色の有機層をビーカーに移し、ヘキサンが蒸発するように110℃で4時間加熱した。
【0091】
(b)MXがドーピングされた酸化鉄磁性粒子の合成
前記(a)で製造された鉄-オレイン酸複合体4.5g(5mmol)とオレイン酸1.7g(6mmol)を混合するか、又は(実施例7乃至11及び17乃至19)又は前記(a)で製造された鉄-オレイルアミン複合体4.280g(5mmol)とオレイルアミン1.6g(6mmol)を混合した(実施例12乃至16)。そして、下記の表4及び5のMXの種類及び含量を各々1-エイコセン7ml及びジベンジルエーテル13mlと混合した。混合液を丸底フラスコに入れ、30分程度90℃、真空状態で気体と水分を除去した。窒素を注入し、200℃まで温度を上げた。その後、温度を3.3℃/minの速度で310℃まで上げた後、60分間反応させた。反応液を冷却した後、50mlコニカルチューブ(conical tube)に移し、エタノール及びヘキサンを1:1の比率で30ml注入した後、遠心分離して粒子を沈殿させた。沈殿された粒子をヘキサン10ml及びエタノール5mlで水洗した後、得られた沈殿物をトルエン又はヘキサンに分散させた。ここで、ジベンジルエーテルは150℃以上の温度でベンジルアルデヒドとトルエンで分解され、前記アルデヒドから生成されたラジカルによってIron oxo(-Fe-O-Fe-)と重原子-ハロゲン化合物(MX)との間の水素結合形成を助け、結晶形成に参加することになる。製造された粒子のサイズは約6-7nmであった。
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
(c)親水性リガンド(ポリアクリル酸)でコーティングされた酸化鉄磁性粒子の製造
ポリアクリル酸2gとテトラエチレングリコール40mlを110℃で加熱中にヘキサン5mlに分散された実施例7乃至19の酸化鉄磁性粒子150mgを注射器で注入した。これを撹拌し、280℃で8時間反応させた。反応液を冷却した後、0.01N HCl 20mlを入れ、磁石に引き付けられた酸化鉄磁性粒子を収集した。これを2回繰り返した後、エタノールを利用して沈殿水を得、最後に水に分散させた。
【0095】
実験例:外部交流磁気場下で酸化鉄とMXの重量比に応じた温度変化の分析
実施例7乃至19で製造された酸化鉄磁性粒子を親水性リガンドであるポリアクリル酸でコーティングした後、磁気誘導発熱能を試験した。ポリアクリル酸でコーティングされた実施例7乃至19の酸化鉄磁性粒子を各々脱イオン水に20mg/ml濃度に希釈した後、交流磁気場を印加して、温度変化を熱電対(thermocouple、OSENSA、Canada)を利用して測定した。(使用交流周波数及び磁気場強さ:f=108.7kHz、H=11.4kA/m)その結果を下記の表7で示した。
【0096】
交流磁気場を誘導して加熱するシステムは4つの主な下部システムで構成されている;(a)周波数変調及び振幅正弦波発生器(a variable frequency and amplitude sine wave function generator(20MHz Vp-p、TG2000、Aim TTi、USA))、(b)電力増幅器(1200Watt DC Power Supply、QPX1200SP、Aim TTi、USA)、(c)誘導コイル(回転数:17、直径:50mm、高さ:180mm)及び磁気場発生装置(Magnetherm RC、nanoTherics、UK)、(d)温度変化熱電対(OSENSA、Canada)。
【0097】
【表7】
【0098】
実験例:比損失力(SLP、specific loss power)の測定
酸化鉄磁性粒子の発熱量は、物理的、化学的特性及び外部交流磁気場の強さ、周波数に応じて発熱量が異なって現れるため、大部分の研究結果では粒子の発熱能力をSLP、ILPで示している。SLPは、質量単位当たり損失された電磁気力で、kg当たりW(ワット)で示す。粒子間の温熱治療効果は、実験ごとにf(周波数)、H(磁界強さ)の条件がそれぞれ異なる場合があるため、式[ILP=SLP/(f・H)]を利用してSLP値をILP値に換算することによって比較可能である。
【0099】
SLP測定は、ピックアップコイルとオシロスコープで制御された直列共振回路の交流磁気場発生装置(Magnetherm RC、Nanotherics)を使用した。f=108.7kHz、H=11.4kA/mの断熱条件で測定され、光ファイバーIR probeを使用して温度を測定した。
【0100】
実施例7乃至19で製造された酸化鉄磁性粒子の濃度を20mg/mlに調節してSLPを測定した。その結果を下記の表8に示した。
【0101】
【表8】
【0102】
実験例:生体内(in vivo)癌治療効果の確認実験
本発明の実施例7乃至19及び対照群の酸化鉄磁性粒子を利用した温熱治療による細胞死滅が生体内でも効果的に起こることが確認された。Panc-1細胞をBalb/c nudeマウスに移植した後、癌組織のサイズが約100mmになる時、実施例7乃至19及び対照群1の酸化鉄磁性粒子が含まれた組成物を脱イオン水に分散させて得られた水溶液150μlを皮下投与した後、交流磁気場発生装置(100kHz、80G)を30分印加して温熱治療をし、28日間、癌の体積を確認した。
【0103】
その結果を下記の表9に示した。
【0104】
【表9】
【0105】
実験例:放射線吸収係数(HU)の測定
前記実施例及び対照群で製造した酸化鉄磁性粒子を利用して放射線(X線)吸収係数(HU)を測定し、その結果を下記の表10に記載した。この時、測定機器はBruker社のSkyscan 1172 Micro CTを使用し、放射線吸収係数(HU)は下記のように計算した。
【0106】
CT Hounsfield Unit(HU、X線吸収係数)
【数1】
(μ(線減衰係数):Relative linear attenuation coefficient)
【0107】
【表10】
【0108】
実験例:酸化鉄磁性粒子の熱重量(TGA)の分析
本発明の酸化鉄磁性粒子の熱的安定性(目的:ハロゲン元素が酸化鉄磁性粒子でどのように安定して結合されているかを確認するために)を調べるために、Scinco社のS-1000を使用して熱重量分析(thermogravometric analysis、TGA)を遂行した。具体的には、対照群1乃至3及び実施例7乃至19の粒子を窒素下で20/minの比率に200℃まで熱重量分析器で(TGA)重さを測定して比較した。その結果を表11に示した。
【0109】
【表11】
図1
図2
図3
図4
図5
図6