(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103220
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】センサ付きの靴
(51)【国際特許分類】
A43C 19/00 20060101AFI20230719BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20230719BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20230719BHJP
A63B 71/06 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A43C19/00
A63B69/00 505G
A63B69/00 511
G01S13/58
A63B71/06 M
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063982
(22)【出願日】2023-04-11
(62)【分割の表示】P 2021102916の分割
【原出願日】2012-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】391001848
【氏名又は名称】株式会社ユピテル
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸爾
(57)【要約】 (修正有)
【課題】競技の対象となる物体などの移動を行うヒトに装着でき、その物体の初速を容易に測定できるヒト装着用速度測定装置およびそれを用いた速度測定方法を提供する。
【解決手段】所定周波数の波を、速度を測定する物体に向けて放射して該物体からの前記波の反射波を受信するアンテナを備え、前記反射波よりドップラー信号を検出して出力するドップラーセンサと、前記アンテナの前記ヒトへの装着手段3とを有し、前記ヒトの前記物体に接触する身体部分または前記ヒトと前記物体との間に介在する物から前記物体が離れるとき、該物体に向けて前記波を放射し、その反射波を受信してドップラー信号を検出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴と、
前記靴に設けられ、所定周波数の波を前記靴から離れた位置の物体に放射して前記物体からの前記波の反射波を受信し、受信した反射波に応じた信号を出力するドップラーセンサを有するセンサ本体部と、
を備え、前記信号に基づいて測定を行うセンサ付きの靴。
【請求項2】
前記センサ本体部は、
前記波が前記靴のつま先の位置を通過する方向を、前記波の放射方向とする
請求項1に記載のセンサ付きの靴。
【請求項3】
前記センサ本体部は、
前記靴を履いた人の足の甲の上に位置するように設けられている
請求項1または2に記載のセンサ付きの靴。
【請求項4】
上方を向くように前記センサ本体部に設けられた表示面を有し、前記表示面に前記測定した結果を表示する表示手段
を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサ付きの靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の力を利用して物体に力を加え該物体の速度を変化させるときの該物体の変化後の速度を測定するヒト装着用速度測定装置およびそれを用いた速度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野球、ゴルフ、テニスなどの様々な競技において、そのボールの移動速度を計測する装置としてドップラーセンサを用いた装置が知られている。マイクロ波ドップラーセンサでは、移動する被測定物体にマイクロ波を放射してその物体からの反射波を測定する。ドップラー効果によって物体の移動速度に応じて反射波の周波数が変化するため、放射波に対する反射波の周波数の差分を検出し、その差分の周波数を有する信号、すなわちドップラー信号から物体の速度を導出するものである。速度や測定環境などの条件によっては超音波を使用した超音波ドップラーセンサも使用可能である。
【0003】
特許文献1に記載の速度測定装置は、マイクロ波ドップラーセンサを使用した表示手段を有する速度測定装置である。この装置はヒトから離れた場所に設置して移動物体を測定するものであり、野球やゴルフなどの異なる複数の競技に対して、表示情報を生成する処理手段を切り替えることにより、ボールの初速度、終速度や野球バット、ゴルフクラブのスイング速度などの測定モードを選択可能としている。
【0004】
特許文献2に記載の装置は、測定対象となる物体の近くに装置を設置可能として、低コストで小型のマイクロ波ドップラーセンサを使用した装置を実現している。具体的には、測定対象であるボールの捕球者のグローブや手首に装着可能な装置が記載されている。
【0005】
一方、ボウリング競技においては、特許文献3に記載のように、レーンの横に設置した2つのセンサ間をボールが通過する時間とセンサ間の距離により通過するボールの速度を検出する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-152291号公報
【特許文献2】特許第3237857号公報
【特許文献3】特開平10-211314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の速度測定装置は、ボールなどの測定対象からある程度距離を離して設置するため、測定のためにはある程度大きなマイクロ波のパワーが必要となり、このため装置の小型化、低コスト化には制限がある。一方、ヒトがトレーニングのために速度測定装置を使用する場合、身体から常に一定の位置でのボール等の速度を知ることが重要である。例えば投球や投てき競技などの場合、通常、そのボール等が身体から離れるときの速度が最大であり、その速度、すなわち初速を把握することが重要である。特許文献1のようにヒトと独立して速度測定装置を配置した場合、ヒトの立ち位置やボールに触れる身体部分の位置がいつも一定とは限らないため、測定されるボールとヒトの身体部分との相対的な位置関係は一定とはならない。
【0008】
特許文献2に記載の速度測定装置は、ヒトに装着可能な小型の装置であるが、そのヒトは投球を受ける側のヒトである。このため、ドップラーセンサの位置が投球者から離れているため、上記の初速のように投球者の身体の近くでのボールの速度を測定することは難しい。
【0009】
特に、ボウリングの場合は、投球技術の向上には、ボールの初速を把握してそれを安定化することや自分に適した初速を見出すことが有効である。しかし従来は、特許文献3に記載のように、レーンの横に設置したセンサによりレーン走行途中のボールの速度を検出しており、投球者のリリース時のボールの初速を簡単に測定する手段はなかった。
【0010】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、例えば競技の対象となる物体などの移動を行うヒトに装着でき、その物体の初速を容易に測定できるヒト装着用速度測定装置およびそれを用いた速度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の観点では、本発明は、ヒトがその身体の力を利用して物体に力を加え、該物体の速度を変化させるときの該物体の前記変化後の速度を測定するヒト装着用速度測定装置であって、所定周波数の波を前記物体に向けて放射して該物体からの前記波の反射波を受信するアンテナを備え、前記反射波よりドップラー信号を検出して出力するドップラーセンサと、前記アンテナの前記ヒトへの装着手段とを有し、前記ヒトの前記物体に接触する身体部分または前記ヒトと前記物体との間に介在する物から前記物体が離れるとき、該物体に向けて前記波を放射し、その反射波を受信してドップラー信号を検出することを特徴とするヒト装着用速度測定装置を提供する。
【0012】
上記第1の観点において、ヒトがその身体の力を利用して物体に力を加え、該物体の速度を変化させるときとは、例えば、ボールなどの物体を手に保持して放出する場合や、手足やバット、ラケットなどでボールを打ち返して速度ベクトルを反対向きに変える場合などがあり、変化後の速度とは、例えば、放出直後または打ち返し直後の速度などである。また、物体に接触する身体部分または物体との間に介在する物から前記物体が離れるときとは、例えば、該物体が離れる直前、離れる瞬間または離れた直後である。
【0013】
例えば、反発力の小さいボールを保持して投球するボウリングなどの場合はボールが手から離れる直前または離れる瞬間の速度、野球やハンドボールなどの投球ではボールが手から離れる瞬間または離れた直後の速度、反発力の大きいボールを使用するバレーやサッカーなど競技や身体との間に介在する物として用具を使用する野球やゴルフのバッティング、テニス、卓球などの場合は、ボールが手足やバット、ゴルフクラブ、ラケット等から離れた直後の速度が最大の速度となり、これを計測できる。
【0014】
なお、本発明において測定する物体の速度としては、例えば、アンテナと物体とを結ぶ方向の速度成分である。アンテナのヒトへの装着手段としては、例えば、アンテナ自体が直接的にヒトに装着される構成としてもよいが、アンテナをヒトが装着する衣類、帽子、靴などの物を介在して間接的にヒトに装着される構成としてもよい。すなわち本願における「装着」は、例えば直接的に装着する構成としてもよいが、何らかの物を介在させて間接的に装着する構成としてもよい。特に動きと一体的に移動する状態で装着される構成とするとよい。例えば、ヒト装着用とは、ヒトに直接的に装着する構成としてもよいが、何らかの物を介在させてヒトに間接的に装着する構成としてもよい。特にヒトの動きと一体的に移動する状態で装着される構成とするとよい。
【0015】
また、アンテナからの波の放射は物体の移動の開始から終了まで連続していてもよく、例えば、物体に接触する身体部分または物体との間に介在する物から前記物体が離れるときには物体の方向にその波が放射されている構成とするとよい。
第1の観点による本発明では、例えば、ドップラーセンサのアンテナがボールなどの測定対象の近くに設置され低電力化されることにより装置が小型化され、かつ、基準位置となるヒトの身体に装着されることにより、物体の初速を容易に測定できる。
【0016】
なお、本発明に使用するドップラーセンサにおいて、ヒトに装着する部分はアンテナのみ、またはアンテナとアンプ部分のみであってもよいが、ドップラーセンサ全体が小型かつ軽量である場合はドップラーセンサ全体を装着可能とするとよい。本発明における物体としては、例えば、ボール以外にも槍投げの槍や円盤投げの円盤などがあり、また、競技以外の一般的な作業において、ヒトが物体をその力で放出する場合などでもその物体の速度を測定でき、あらゆる物体が対象となる。
【0017】
また、近年のマイクロ波ドップラーセンサ技術の進展により当該センサ装置の高感度化、小型化、低価格化が図られており、例えば、本発明にこうしたマイクロ波ドップラーセンサを使用することにより、より高感度、小型、低価格の装置が得られる。また、例えば、ドップラーセンサにより測定された物体の速度に関するデータを保存する手段を設け、メモリ素子などに初速データなどを保存して、競技やトレーニング後などにその競技動作のビデオなどと比較することにより、技術向上を図ることができる。また、例えば、測定後にメモリ素子などに保存された初速データなどを外部のパーソナルコンピュータなどに取り込み、統計処理や分析処理を行うことにより、競技者の技術向上を図ることができる。
【0018】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点によるヒト装着用速度測定装置において、前記装着手段は、前記物体に力を伝える身体部分以外の身体部分へ前記アンテナを装着する手段であることを特徴とする。ハンマー投げや砲丸投げなどのように重量の大きい物体を使用する投てき競技では、その物体に力を伝える身体部分である腕に小型、軽量の速度測定装置を装着することも可能であると思われる。しかし他の多くの競技では、本発明の装置の装着による競技中の身体動作に与える影響をできるだけ小さくすること、すなわち競技の邪魔にならないようにすることが望ましい。
【0019】
第2の観点による本発明では、物体に力を伝える身体部分以外の身体部分、例えば、腕を使って投球する場合は腕以外の頭、肩、胴体部、足部などへの装着手段を有するので、競技中の身体動作に与える影響を小さくできる。さらに、物体に力を伝える身体部分以外の身体部分へ前記アンテナを装着するため、物体に力を伝える身体部分にアンテナを装着する場合と比べて、物体に力を伝える際のその身体部分の移動に伴うアンテナの移動によって生じるドップラー信号への影響を受けにくくすることができる。
【0020】
なお、例えば、第1の観点においてヒトがその身体の力を利用して物体に力を加える場合には身体の多くの部分の力を総合的に利用する構成を採りうるが、第2の観点において、前記物体に力を伝える身体部分とは、例えば、物体に接触する身体部分または物体との間に介在する用具などを保持する身体部分を有する身体の一部分であり、例えば、物体に手が接触する場合または手で用具を保持する場合は腕全体、速度を変化させるために足を使う場合は脚部全体などとするとよい。
【0021】
第3の観点では、本発明は、前記第2の観点によるヒト装着用速度測定装置において、前記装着手段は、前記物体に力を伝える身体部分以外の身体部分であって、前記物体に接触する身体部分または前記物体との間に介在する物から前記物体が離れるときの位置の変化の速さが他の部分より小さい身体部分へ前記アンテナを装着する手段であることを特徴とする。ドップラー効果により測定される速度は、アンテナと物体との相対的な速度であるので、アンテナの装着位置は測定時の位置の変化率が小さい位置が望ましい。
【0022】
第4の観点では、本発明は、前記第2または前記第3の観点によるヒト装着用速度測定装置において、前記装着手段は、前記物体に力を伝える身体部分以外の身体部分であって、前記物体に力を加えるときの筋肉の収縮または弛緩が他の部分より少ない身体部分へ前記アンテナを装着する手段であることを特徴とする。
【0023】
第4の観点による本発明では、物体に力を伝えるときにあまり使用しない筋肉を有する身体部分または筋肉をあまり有しない身体部分への装着手段を有するので、競技中の身体動作に与える影響をさらに小さくできる。また、物体に力を伝えるときの筋肉の収縮または弛緩によるアンテナ位置の移動によって生じるドップラー信号への影響を受けにくくすることができる。
【0024】
第5の観点では、本発明は、前記第2から前記第4のいずれかの観点によるヒト装着用速度測定装置において、前記装着手段は、前記物体に力を伝える身体部分以外の身体部分であって、前記物体に力を伝える身体部分または該身体部分に保持された用具から前記物体が離れるときに前記物体が近接して通過する身体部分へ前記アンテナを装着する手段であることを特徴とする。アンテナを被測定対象である物体のより近くの身体部分に設置することは、装置の低電力化と小型化に有効であり、かつ、物体の初速をより容易に測定できる。
【0025】
第6の観点では、本発明は、前記第1から前記第5のいずれかの観点によるヒト装着用速度測定装置において、前記装着手段は、前記物体に接触する身体部分または前記物体との間に介在する物から前記物体が離れるときに前記物体が移動する方向が前記アンテナが指向性を有する方向の範囲内に含まれるように前記アンテナを配置する装着手段であることを特徴とする。アンテナの指向性を物体の移動方向に合わせることにより、測定精度の向上が図れる。特に、アンテナが指向性を有する方向の範囲内として、電力半値角の範囲内とするとよい。このようにすれば、より確実に速度を測定することができる。
【0026】
第7の観点では、本発明は、前記第1から前記第6のいずれかの観点によるヒト装着用速度測定装置において、前記物体はボウリングのボールであることを特徴とする。特に、ボウリングにおいて、第7の観点による本発明を用いることにより、例えば、投球者のボールのリリース時のボールの初速を簡単に測定することができる。
【0027】
第8の観点では、本発明は、前記第7の観点によるヒト装着用速度測定装置において、前記装着手段は、ボウリングするヒトの軸足へ前記アンテナを装着する手段であることを特徴とする。ボウリングのボールの投球において、通常、ボールのリリース時にそのボールは、リリース時に前に出る足、すなわち軸足、具体的には右手投球の場合は左足、左手投球の場合は右足の横を通過するので、ドップラーセンサ全体またはドップラーセンサのアンテナをその軸足に装着することで、測定精度が向上する。また、競技の邪魔にもなりにくい。
【0028】
第9の観点では、本発明は、前記第8の観点によるヒト装着用速度測定装置において、前記装着手段は、前記ボウリングするヒトの軸足の膝より下の部分または前記ボウリングするヒトが軸足に履いた靴へ前記アンテナを装着する手段であることを特徴とする。具体的には膝、足首、足、靴などへの装着手段である。靴に装着する場合、ボウリングをする時にその都度装着する手段や靴に埋め込む手段であってもよい。横を通過するボールにより近い部分にドップラーセンサ全体またはドップラーセンサのアンテナを装着することにより、装置の低電力化による小型、軽量化や測定精度の向上が図れる。
【0029】
第10の観点では、本発明は、前記第1から前記第9のいずれかの観点によるヒト装着用速度測定装置において、前記ドップラーセンサにより測定された該物体の速度の表示手段を有し、該表示手段の表示面は、前記物体に接触する身体部分または前記物体との間に介在する物から前記物体が離れた直後に前記ヒトが視認可能な位置に配置されるように構成されていることを特徴とする。
【0030】
例えば、アンテナの設置位置がそのヒトの頭より下の身体部分で、アンテナの放射方向が水平前方であり、アンテナと表示手段が一体化されている場合は、表示面はアンテナの上面に配置することができる。あるいは、ドップラーセンサと有線または無線通信で接続された表示器を備え、その表示器を前記ヒトが視認しやすい位置に設置してもよい。また、本発明においては、表示手段の代わりに、物体の速度を音声によって前記ヒトに通知する手段を備えることも可能である。
【0031】
第11の観点では、本発明は、前記第1から前記第10のいずれかの観点によるヒト装着用速度測定装置において、前記ドップラーセンサはマイクロ波ドップラーセンサであって、前記アンテナの前記波の放射面は前記ヒトが着用する衣類の内側に配置されるように構成されていることを特徴とする。マイクロ波ドップラーセンサの場合、電磁波は一般的な衣服を透過するため、アンテナまたは装置全体が衣服や帽子、サポーターなどの内側に装着されるような構成としてもよい。但し、前記第10の観点の速度の表示手段を装着する場合は、ヒトが視認可能とするためには、表示部だけはその衣服などに覆われないように構成するとよい。
【0032】
第12の観点では、本発明は、前記第1から前記第11のいずれかの観点によるヒト装着用速度測定装置において、前記ドップラーセンサは筐体の中に一体として構成され、前記筐体中に前記ドップラーセンサの駆動用の電池を有し、前記筐体の前記ヒトへの装着手段を有することを特徴とする。
【0033】
第12の観点の本発明においては、ドップラーセンサを構成するアンテナと回路部などは、例えば1つの筐体に一体化され、その筐体をヒトへ装着する手段を有している。また、ドップラーセンサの駆動電源として電池を筐体内に内蔵しているので、ドップラーセンサを電源線に接続する必要がなくなる。装置を小型化し、装置からの配線を除くことで、競技者の身体動作に与える影響を最小限に抑えることができる。
【0034】
第13の観点では、本発明は、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のヒト装着用速度測定装置を用いて、ヒトがその身体の力を利用して物体に力を加え、該物体の速度を変化させるときの該物体の前記変化後の速度を測定する速度測定方法を提供する。
【0035】
第14の観点では、本発明は、コンピュータを、前記第1から前記第12のいずれかの観点によるヒト装着用速度測定装置として機能させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明のヒト装着用速度測定装置によれば、例えば競技の対象となる物体などの移動を行うヒトに装着でき、その物体の初速を容易に測定できるヒト装着用速度測定装置およびそれを用いた速度測定方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】実施例1に係るヒト装着用速度測定装置を示す斜視図。
【
図2】実施例1の主要部であるマイクロ波ドップラーセンサの構成の一例を示すブロック構成図。
【
図3】実施例1のヒト装着用速度測定装置をヒトの足首に装着した様子を示す斜視図。
【
図4】実施例2に係るヒト装着用速度測定装置を示す斜視図。
【
図5】実施例3に係るヒト装着用速度測定装置を示し、靴に装着した様子を示す斜視図。
【
図6】実施例4に係るヒト装着用速度測定装置を示し、靴に装着した様子を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例0039】
図1は、実施例1に係るヒト装着用速度測定装置100を示す。ヒト装着用速度測定装置100は、ヒトがボールを放出したり打ち返したりするときのそのボールの速度を測定する装置であり、ボールを放出したり打ち返したりするヒトの足首への装着手段を備えている。特に、ボウリングするヒトがボールを放出するときのそのボールの速度を測定するために好適な装置である。ボウリングの投球に使用する場合は軸足の足首に装着する。野球やソフトボールなどの投球の場合は軸足ではなく、前に踏み出す足の足首に装着する。サーカーにおいて蹴った後のボールの速度を測定する場合は軸足の足首に装着する。
【0040】
図1に示すように、ヒト装着用速度測定装置100は、マイクロ波ドップラーセンサ10を1つの筐体内に内蔵して構成したセンサ本体部1と、センサ本体部1をヒトの足首に装着する手段である巻き付け用ベルト3とから構成されている。
【0041】
センサ本体部1は、略直方体形状であり、その一面を身体への装着面とし、身体から突出する方向の長さは身体に沿った方向の長さよりも短くして、上記の運動や競技における身体動作の邪魔にならないように構成されている。巻き付け用ベルト3は、その一端がセンサ本体部1に固定され他端にテープ状のファスナーを設けた2つのベルトから構成され、上記テープ状のファスナー同士を貼り合わせることによりセンサ本体部1を足首に装着する。
【0042】
また、センサ本体部1は測定されたボールの速度の表示手段を有し、測定された速度を表示する表示面4を備えている。マイクロ波5の放出面2は、身体への装着面と対向する側の面に設け、放出面2の上側に表示面4を設けている。表示面4は、ヒト装着用速度測定装置100を装着したヒトが当該装置の方向を見た場合に、視認可能な面としている。
【0043】
図2は、本実施例の主要部であるマイクロ波ドップラーセンサの構成の一例を示すブロック構成図である。
図2に示すように、マイクロ波ドップラーセンサ10において、マイクロ波発信器12で生成されたマイクロ波はアンテナ11から放射されて測定対象物に到達し、測定対象物で反射したマイクロ波は再びアンテナ11で受信される。この受信された反射波は、マイクロ波発信器12で生成された信号とミキサ13で混合される。測定対象物がアンテナに対して相対的な速度を持つ場合は、ドップラー効果により反射波の周波数が変化するため、ミキサ13の出力には、その差分の周波数をもつ信号が現れる。この信号はアンプ14で増幅されて出力される。
【0044】
図2の場合、アンテナ11は送信と受信で共用しているが、送信用、受信用のアンテナを分離して備えてもよい。アンテナ11としてはパッチアンテナ、ホーンアンテナなどが使用できる。マイクロ波ドップラーセンサ10の出力はセンサ本体部1内の処理回路において処理され、速度データに変換される。例えば、出力周波数が24.15GHz等の所定の周波数のマイクロ波ドップラーセンサ10と、当該ドップラーセンサの出力信号(上記周波数では1波が6mmの移動に相当する信号)を基準値と比較し、ドップラーパルス(基準値以上の場合にハイレベルを基準値より小さい場合にはローレベルの信号)を出力するコンパレータと、コンパレータから出力された信号を入力して、基準クロックによりドップラーパルスの1周期の時間を計測して速度を求めるマイクロコントローラ(制御部)と、マイクロコントローラからの制御によって速度の表示を行う表示手段としての表示器を備える構成するとよい。
【0045】
あるいは、コンパレータに替えて、または、コンパレータを備えるとともに、当該ドップラーセンサの出力信号をマイクロコントローラ(制御部)に入力してFFT等の所定の信号処理によりその出力信号の周波数を求め、これにより速度を求めて表示手段に表示する構成としてもよい。上記の処理回路は従来と同様な処理回路を使用できる。例えば、特開2008-246139号公報の
図2に記載された構成や特開2010-25737号公報の
図4に記載された構成と同様の構成を採ることができる。なお、例えば、アンプ14はドップラーセンサの外部に設けるようにしてもよい。
【0046】
図3は、ヒト装着用速度測定装置100をヒトの足首に装着した様子を示す。
図3に示すように、ヒト装着用速度測定装置100は、例えば、ボウリングするヒトの軸足の足首に装着して使用する。
図3は右手投球において左足に装着する場合を示し、アンテナの放出面2が前方を向くように取り付けられ、マイクロ波5は前方、すなわちボールが手から離れるときボールが移動する方向に向けて放射される。
【0047】
この場合、アンテナからのマイクロ波5の放射期間は、競技の開始から終了まで連続していてもよく、または、投球動作の開始から一定時間の間、またはボールが手から離れるときから一定時間の間など、任意に設定可能な構成としてもよい。本実施例においては、リリース時にボールは左足に近接して横を通過するので、本体部1をその軸足に装着することでボールとアンテナとの距離が近くなり、測定精度が向上する。また、このような足首への装着はボウリングの投球動作の邪魔にもなりにくい。
【0048】
さらに、ボールが手から離れるときの足首の位置の変化の速さは他の部分より小さく、また、投球動作時の筋肉の収縮または弛緩によるアンテナの位置の変動も小さいので、アンテナの移動によって生じるドップラー信号への影響を受けにくい。
測定された速度の最大値がリリースされたボールの初速であるので、表示手段はその最大速度を表示面4に表示するとよい。センサ本体部1にメモリ素子を内蔵して速度のデータをそこに記憶してもよく、また無線手段を内蔵して離れた場所の表示器やコンピュータなどに速度データを送信してもよい。
【0049】
このような機能を実現するために、通信インターフェイスやメモリ素子挿入口などをセンサ本体部1に設けてもよい。離れた表示器を有する場合は、センサ本体部1は衣類の内側に装着されていてもよい。図示は省略するがセンサ本体部1には操作スイッチが設けられている。また、マイクロ波ドップラーセンサ10などへの電源供給のため電池が内蔵されている。
本実施例においても、センサ本体部1は略直方体形状であり、その一面を身体への装着面とし、身体から突出する方向の長さは身体に沿った方向の長さよりも短くして、上記の運動や競技における身体動作の邪魔にならないように構成されている。マイクロ波5の放射面は膝の前方を向くように装着して使用する。ボウリングの投球に使用する場合は軸足の膝に装着する。野球やソフトボールなどの投球の場合は軸足ではなく、前に踏み出す足の膝に装着する。サーカーにおいて蹴った後のボールの速度を測定する場合は軸足の膝に装着する。ボールが手や足から離れる瞬間の上記の膝の位置の変化の速さは他の部分より比較的小さく、また、筋肉の収縮または弛緩によるアンテナの位置の変動も小さいので、アンテナの移動によって生じるドップラー信号への影響を受けにくい。
固定ベルト6はゴムのように伸び縮みする素材が望ましく、膝用のサポーターを利用することも可能である。センサ本体部1は測定されたボールの速度の表示手段を有し、マイクロ波5の放出面2の上面に、測定された速度の表示面4を備えている。また、センサ本体部1は固定ベルトの内側に装着されていてもよく、表示面4を利用しない場合は、センサ本体部1が衣類の内側に装着されていてもよい。
本実施例においても、投球するヒトの身体に対する相対的な距離および方向がいつもほぼ一定の位置でのボールの速度を測定でき、それぞれの競技のトレーニングや技術向上に有効に寄与することができる。