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特開2023-103237RGM Aタンパク質に対するモノクローナル抗体及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103237
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】RGM Aタンパク質に対するモノクローナル抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230719BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230719BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230719BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 49/16 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230719BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20230719BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230719BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230719BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/18
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K49/16
A61K51/10
A61K45/00
A61K38/19
A61K45/06
A61P3/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P37/02
A61P9/00
A61P25/00
A61P25/28
A61P21/00
A61P9/10
A61P25/14
A61P25/18
A61P25/16
A61P21/04
A61P27/06
A61P29/00
A61K47/68
A61K47/55
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/40
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066952
(22)【出願日】2023-04-17
(62)【分割の表示】P 2021180878の分割
【原出願日】2009-02-27
(31)【優先権主張番号】61/032,707
(32)【優先日】2008-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/090,743
(32)【優先日】2008-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.BRIJ
3.TWEEN
4.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】513144626
【氏名又は名称】アッヴィ・ドイチュラント・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コー・カー・ゲー
(71)【出願人】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・カー・ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】イブ・エイチ・バーロウ
(72)【発明者】
【氏名】メアリー・アール・レディー
(72)【発明者】
【氏名】チョンミン・シェ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ディー・バードウェル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】RGM Aタンパク質に結合し、該タンパク質を中和する結合タンパク質を提供する。
【解決手段】1x10-7M以下のK及び1x10-2-1以下のkoff速度定数でヒトRGM Aから解離する結合タンパク質、または、ヒトRGM Aに結合し、標準的インビトロアッセイで測定される場合に、ヒトRGM Aの神経突起伸長阻害活性を中和する結合タンパク質であって、ラットRGM Aに対する結合、ヒトRGM Cに対する結合、ラットRGM Cに対する結合の少なくとも1つを有する、結合タンパク質である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1x10-7M以下のK及び1x10-2-1以下のkoff速度定数(両者とも表面プラズモン共鳴により測定)でヒトRGM Aから解離する、結合タンパク質。
【請求項2】
ヒトRGM Aに結合し、標準的インビトロアッセイで測定される場合に、ヒトRGM Aの神経突起伸長阻害活性を中和する、結合タンパク質。
【請求項3】
次のさらなる機能特性:
ラットRGM Aに対する結合、
ヒトRGM Cに対する結合
ラットRGM Cに対する結合
の少なくとも1つを有する、請求項1及び請求項2の一項の結合タンパク質。
【請求項4】
RGMの受容体の少なくとも1つに対するRGMの結合能を調節する、請求項1から請求項3の一項の結合タンパク質。
【請求項5】
ヒトRGM Aの受容体結合ドメインと相互作用する、請求項4の結合タンパク質。
【請求項6】
次の相互作用:
ヒトBMP-4に対するヒトRGM Aの結合
ヒトネオゲニンに対するhRGM Aの結合
ヒトネオゲニンに対するhRGM Cの結合
ヒトBMP-2に対するヒトRGM Aの結合
の少なくとも1つを調節する、請求項4の結合タンパク質。
【請求項7】
ヒト化抗体である、請求項1から請求項6の一項に記載の結合タンパク質。
【請求項8】
抗原結合ドメインを含む、請求項1から請求項7の一項に記載の結合タンパク質(該結合タンパク質は、RGM分子のエピトープに結合することができ、該抗原結合ドメインは、
GTTPDY(配列番号59)、
FQATHDPLT(配列番号62)、
ARRNEYYGSSFFDY(配列番号65)、
LQGYIPPRT(配列番号68)及び
該配列の1つと少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含む。)。
【請求項9】
抗原結合ドメインを含む結合タンパク質(該結合タンパク質は、RGM分子のエピトープに結合することができ、該抗原結合ドメインは、
GTTPDY(配列番号59)、
FQATHDPLT(配列番号62)、
ARRNEYYGSSFFDY(配列番号65)、
LQGYIPPRT(配列番号68)及び
該配列の1つと少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含む。)。
【請求項10】
配列番号57、58、60、61、63、64、66、67及び該配列の1つと少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRをさらに含む、請求項1から請求項9の一項に記載の結合タンパク質。
【請求項11】
前記少なくとも1つのCDRが、
【表1】
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1から請求項10の何れか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項12】
【表2】
からなる可変ドメインCDRセット
又は該3つのCDRの少なくとも1つが、親配列と少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列である可変ドメインセット
から選択される少なくとも3つのCDRを含む、請求項11に記載の結合タンパク質。
【請求項13】
少なくとも2つの可変ドメインCDRセットを含む、請求項12に記載の結合タンパク質。
【請求項14】
前記少なくとも2つの可変ドメインCDRセットが、
VH5F9セット及びVL5F9セット及び
VH8D1セット及びVL8D1セット
からなる群から選択される、請求項13に記載の結合タンパク質。
【請求項15】
ヒトアクセプターフレームワークをさらに含む、請求項1から請求項14の一項に記載の結合タンパク質。
【請求項16】
前記ヒトアクセプターフレームワークが、配列番号15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32及び33からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の結合タンパク質。
【請求項17】
VH3-48セット(配列番号15、16及び17)
VH3-33セット(配列番号21、22及び23)
VH3-23セット(配列番号24、25及び26)
(これらのセットのそれぞれは、
JH3(配列番号18)、
JH4(配列番号19)、
JH6(配列番号20)
から選択されるさらなるフレームワーク配列と組み合わせられる。)のセットからなる群から選択されるか;又は
A18セット:(配列番号27、28及び29)
A17セット:(配列番号31、32及び33)
(これらのセットのそれぞれは、JK2(配列番号2)から選択されるさらなるフレームワーク配列と組み合わせられる。)のセットからなる群から選択される、
フレームワーク配列のセットを含む、請求項16に記載の結合タンパク質。
【請求項18】
配列番号35、36、37、38、39、40、41、42及び43から選択される少なくとも1つの重鎖可変ドメイン;及び/又は配列番号44、45及び46から選択される少なくとも1つの軽鎖可変ドメインを含む、請求項1から請求項17の何れか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項19】
2つの可変ドメインを含み、該2つの可変ドメインが、
配列番号35及び44;36及び44;37及び44;38及び44;39及び44;40及び44;41及び44;42及び44;43及び44;
配列番号35及び45;36及び45;37及び45;38及び45;39及び45;40及び45;41及び45;42及び45;43及び45;
配列番号35及び46;36及び46;37及び46;38及び46;39及び46;40及び46;41及び46;42及び46;43及び46
から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項18の結合タンパク質。
【請求項20】
前記ヒトアクセプターフレームワークが、キーとなる残基において少なくとも1つのフレームワーク領域アミノ酸置換を含み、該キーとなる残基が、
CDRに隣接する残基;
グリコシル化部位残基;
希少残基;
RGMエピトープと相互作用可能な残基;
CDRと相互作用可能な残基;
カノニカル(canonical)残基;
重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間の接触残基;
バーニアゾーン内の残基;
パラグルタミン酸(paraglutamate)形成が可能なN末端残基;及び
Chothiaにより定義された可変重鎖CDR1とKabatにより定義された第一の重鎖フレームワークとの間で重複する領域中の残基
からなる群から選択される、請求項15から請求項19の何れか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項21】
前記キーとなる残基が、
(重鎖配列位置):1、5、37、48、49、88、98
(軽鎖配列位置):2、4、41、51
からなる群から選択される、請求項20に記載の結合タンパク質。
【請求項22】
結合タンパク質がコンセンサスヒト可変ドメインである、請求項1から請求項21の何れか一項の結合タンパク質。
【請求項23】
前記ヒトアクセプターフレームワークが、少なくとも1つのフレームワーク領域アミノ酸置換を含み、フレームワークのアミノ酸配列が、該ヒトアクセプターフレームワークの配列と少なくとも65%同一であり、ならびに該ヒトアクセプターフレームワークと同一である少なくとも70アミノ酸残基を含む、請求項15から請求項22の何れか一項の結合タンパク質。
【請求項24】
配列番号47、48、49、50;
配列番号51、52、53及び54
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの(フレームワークが突然変異した)可変ドメインを含む、請求項1から請求項23の何れか一項の結合タンパク質。
【請求項25】
2つの可変ドメインを含み、該2つの可変ドメインが、
配列番号47及び44;47及び45;47及び46;47及び51;47及び52;47及び53;47及び54;
配列番号48及び44;48及び45;48及び46;48及び51;48及び52;48及び53;48及び54;
配列番号49及び44;49及び45;49及び46;49及び51;49及び52;49及び53;49及び54;
配列番号50及び44;50及び45;50及び46;50及び51;50及び52;50及び53;50及び54
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項24の結合タンパク質。
【請求項26】
RGM分子から選択される標的に結合することができる、請求項1から請求項25の何れか一項の結合タンパク質。
【請求項27】
ヒトRGM Aに結合することができる、請求項1から請求項26の何れか一項の結合タンパク質。
【請求項28】
次のさらなる機能特性:
ラットRGM Aに対する結合、
ヒトRGM Cに対する結合、
ラットRGM Cに対する結合
の少なくとも1つを有する、請求項27の結合タンパク質。
【請求項29】
RGM分子から選択される標的の生物学的機能を調節することができる、請求項1から請求項28の何れか一項の結合タンパク質。
【請求項30】
RGMの受容体の少なくとも1つへのRGMの結合能を調節する、請求項29の結合タンパク質。
【請求項31】
次の相互作用:
ヒトBMP-4に対するヒトRGM Aの結合、
ヒトネオゲニンに対するhRGM Aの結合、
ヒトネオゲニンに対するhRGM Cの結合、
ヒトBMP-2に対するヒトRGM Aの結合
の少なくとも1つを調節する、請求項30の結合タンパク質。
【請求項32】
RGM生物活性を阻害することができる、請求項1から請求項31の何れか一項の結合タンパク質。
【請求項33】
RGM分子がRGM Aである、請求項32の結合タンパク質。
【請求項34】
RGM Aが、ヒト、カニクイザル、ラット、ヒヨコ、カエル及び魚から選択される、請求項33の結合タンパク質。
【請求項35】
少なくとも約10-1-1;少なくとも約10-1-1;少なくとも約10-1-1;少なくとも約10-1-1;少なくとも約10-1-1及び少なくとも約10-1-1(表面プラズモン共鳴により測定される場合)からなる群から選択される前記標的に対する会合速度定数(kon)を有する、請求項1から請求項34の何れか一項の結合タンパク質。
【請求項36】
最大約10-2-1;最大約10-3-1;最大約10-4-1;最大約10-5-1;及び最大約10-6-1(表面プラズモン共鳴により測定される場合)からなる群から選択される前記標的に対する解離速度定数(koff)を有する、請求項1から請求項35の何れか一項の結合タンパク質。
【請求項37】
最大約10-7M;最大約10-8M;最大約10-9M;最大約10-10M;最大約10-11M;最大約10-12M;及び最大10-13Mからなる群から選択される前記標的に対する解離定数(K)を有する、請求項1から請求項36の何れか一項の結合タンパク質。
【請求項38】
リンカーポリペプチド又は免疫グロブリン定常ドメインをさらに含む、請求項1から請求項37の何れか一項に記載の結合タンパク質を含む抗体コンストラクト。
【請求項39】
前記結合タンパク質が、
免疫グロブリン分子、
モノクローナル抗体、
キメラ抗体、
CDRグラフト抗体、
ヒト化抗体、
Fab、
Fab’、
F(ab’)2、
Fv、
ジスルフィド結合Fv、
scFv、
単一ドメイン抗体、
ダイアボディ、
多特異性抗体、
二重特異性抗体、
二重可変ドメイン免疫グロブリン及び
二特異性抗体
からなる群から選択される、請求項38に記載の抗体コンストラクト。
【請求項40】
前記結合タンパク質が、
ヒトIgM定常ドメイン、
ヒトIgG1定常ドメイン、
ヒトIgG2定常ドメイン、
ヒトIgG3定常ドメイン、
ヒトIgG4定常ドメイン、
ヒトIgE定常ドメイン、
ヒトIgD定常ドメイン、
ヒトIgA1定常ドメイン
ヒトIgA2定常ドメイン、
ヒトIgY定常ドメイン及び
対応する突然変異したドメイン
からなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項38及び請求項39の何れか一項に記載の抗体コンストラクト。
【請求項41】
配列番号11、12、13及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項38から請求項40の何れか一項に記載の抗体コンストラクト。
【請求項42】
免疫接着分子、造影剤、治療薬及び細胞毒性剤からなる群から選択される作用物質をさらに含む、請求項38から請求項41の何れか一項に記載の抗体コンストラクトを含む抗体複合体。
【請求項43】
前記作用物質が、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生体発光標識、磁気標識及びビオチンからなる群から選択される造影剤である、請求項42に記載の抗体複合体。
【請求項44】
前記造影剤が、H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho及び153Smからなる群から選択される放射性標識である、請求項43に記載の抗体複合体。
【請求項45】
前記作用物質が、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質、成長因子、サイトカイン、血管新生阻害剤、抗有糸分裂剤、アントラサイクリン、毒素及びアポトーシス剤からなる群から選択される治療薬又は細胞毒性剤である、請求項43に記載の抗体複合体。
【請求項46】
前記結合タンパク質がヒトグリコシル化パターンを保持する、請求項38から請求項41の何れか一項に記載の抗体コンストラクト。
【請求項47】
前記結合タンパク質がヒトグリコシル化パターンを保持する、請求項42から請求項45の何れか一項に記載の抗体複合体。
【請求項48】
結晶として存在する、請求項1から請求項37の何れか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項49】
結晶として存在する、請求項38から請求項41の何れか一項に記載の抗体コンストラクト。
【請求項50】
前記抗体コンストラクトが結晶として存在する、請求項42から請求項45の何れか一項に記載の抗体複合体。
【請求項51】
前記結晶が無担体医薬制御放出結晶である、請求項48に記載の結合タンパク質。
【請求項52】
前記結晶が無担体医薬制御放出結晶である、請求項49に記載の抗体コンストラクト。
【請求項53】
前記結晶が無担体医薬制御放出結晶である、請求項50に記載の抗体複合体。
【請求項54】
可溶性形態の対応物よりも、インビボでより長い半減期を有する、請求項48に記載の結合タンパク質。
【請求項55】
可溶性形態の対応物よりも、インビボでより長い半減期を有する、請求項49に記載の抗体コンストラクト。
【請求項56】
可溶性形態の対応物よりも、インビボでより長い半減期を有する、請求項50に記載の抗体複合体。
【請求項57】
生物活性を保持する、請求項48に記載の結合タンパク質。
【請求項58】
生物活性を保持する、請求項49に記載の抗体コンストラクト。
【請求項59】
生物活性を保持する、請求項50に記載の抗体複合体。
【請求項60】
請求項1から請求項37の何れか一項の結合タンパク質アミノ酸配列をコードする単離核酸。
【請求項61】
請求項38から請求項41の何れか一項の抗体コンストラクトアミノ酸配列をコードする単離核酸。
【請求項62】
請求項42から請求項45の何れか一項の抗体複合体アミノ酸配列をコードする単離核酸。
【請求項63】
請求項60から請求項62の何れか一項に記載の単離核酸を含むベクター。
【請求項64】
pcDNA、pTT、pTT3、pEFBOS、pBV、pJV、pHybE及びpBJからなる群から選択される、請求項63に記載のベクター。
【請求項65】
請求項63及び請求項64の何れか一項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項66】
原核細胞である、請求項65に記載の宿主細胞。
【請求項67】
E.コリである、請求項66に記載の宿主細胞。
【請求項68】
真核細胞である、請求項67に記載の宿主細胞。
【請求項69】
前記真核細胞が、原生生物細胞、動物細胞、植物細胞及び真菌細胞からなる群から選択される、請求項68に記載の宿主細胞。
【請求項70】
前記真核細胞が、哺乳動物細胞、鳥類細胞及び昆虫細胞からなる群から選択される動物細胞である、請求項69に記載の宿主細胞。
【請求項71】
HEK細胞、CHO細胞、COS細胞及び酵母細胞から選択される、請求項69に記載の宿主細胞。
【請求項72】
前記酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項71に記載の宿主細胞。
【請求項73】
昆虫Sf9細胞である、請求項70に記載の宿主細胞。
【請求項74】
RGMに結合することができる結合タンパク質を産生させるのに十分な条件下で培地中で請求項65から請求項73の何れか一項の宿主細胞を培養することを含む、RGMに結合することができるタンパク質を産生させる方法。
【請求項75】
請求項74に記載の方法に従い産生される、タンパク質。
【請求項76】
(a)処方物(該処方物は、請求項48から請求項50の何れか一項に記載の結晶化生成物タンパク質を含む。)及び成分と、
(b)少なくとも1つのポリマー性担体と、
を含む、結合タンパク質の放出のための組成物。
【請求項77】
前記ポリマー性担体が、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリルレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-グリコール酸)コポリマー又はPLGA、ポリ(b-ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン);ポリ(エチレングリコール)、ポリ((ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸-アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギネート、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリカミノグリカン、硫酸化多糖類、その混合物及びコポリマーからなる群の1以上から選択されるポリマーである、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記成分が、アルブミン、スクロース、トレハロース、ラクチトール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メトキシポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項76に記載の組成物。
【請求項79】
請求項77及び請求項78の何れか一項に記載の組成物の有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物を治療するための方法。
【請求項80】
請求項1から請求項59の何れか一項の生成物と、医薬的に許容可能な担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項81】
前記医薬的に許容可能な担体が、前記結合タンパク質の吸収又は分散を向上させるために有用なアジュバントとして機能する、請求項80の医薬組成物。
【請求項82】
前記アジュバントがヒアルロニダーゼである、請求項81の医薬組成物。
【請求項83】
RGM活性が有害である疾患を治療するための少なくとも1つのさらなる治療薬剤をさらに含む、請求項82の医薬組成物。
【請求項84】
前記さらなる薬剤が、治療薬、造影剤、細胞毒性剤、血管新生阻害剤;キナーゼ阻害剤;副刺激分子ブロッカー;接着分子ブロッカー;抗サイトカイン抗体又はその機能断片;メトトレキセート;シクロスポリン;ラパマイシン;FK506;検出可能標識又はレポーター;TNFアンタゴニスト;抗リウマチ剤;筋弛緩剤、麻酔剤、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、麻酔薬、鎮静剤、局所麻酔薬、神経筋ブロッカー、抗菌剤、乾癬治療薬、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、エリスロポエチン、免疫付与、免疫グロブリン、免疫抑制剤、成長ホルモン、ホルモン補充剤、放射性医薬品、抗うつ剤、抗精神病薬、興奮剤、喘息治療薬、βアゴニスト、吸入ステロイド、エピネフリン又は類似物質、サイトカイン及びサイトカインアンタゴニストからなる群から選択される、請求項83の医薬組成物。
【請求項85】
ヒトRGM A活性が低下するように、請求項1から請求項59の何れか一項の生成物とヒトRGM Aを接触させることを含む、ヒトRGM A活性を低下させるための方法。
【請求項86】
ネオゲニン受容体へのhRGM A結合を減少させることを必要とする対象に、請求項1から請求項59の何れか一項の生成物を投与する段階を含む、該対象においてネオゲニン受容体へのhRGM A結合を減少させるための方法。
【請求項87】
骨形成タンパク質-2及び骨形成タンパク質-4(BMP-2及びBMP-4)へのhRGM A結合を減少させることを必要とする対象に、請求項1から請求項59の何れか一項の生成物を投与する段階を含む、該対象において骨形成タンパク質-2及び骨形成タンパク質-4(BMP-2及びBMP-4)へのhRGM A結合を減少させるための方法。
【請求項88】
請求項1から請求項59の何れか一項の生成物を、単独で又はその他の治療薬と組み合わせて、投与する段階を含む、RGM A活性に関与する疾患に対して対象を治療する方法。
【請求項89】
請求項1から請求項59の何れか一項の生成物を、単独で又はその他の治療薬と組み合わせて、RGM A活性が有害である疾患に罹患している対象に投与することを含む、該対象においてRGM A活性を低下させるための方法。
【請求項90】
疾患が、筋萎縮性側索硬化症、上腕神経叢損傷、脳損傷(外傷性脳損傷を含む。)、脳性麻痺、ギランバレー、大脳白質萎縮症、多発性硬化症、ポリオ後症候群、二分脊椎、脊髄損傷、脊髄性筋萎縮症、脊椎腫瘍、卒中、横断性脊髄炎;認知症、老年性認知症、軽度認知機能障害、アルツハイマー関連認知症、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、運動亢進、そう病、パーキンソン病、スティール-リチャード症候群、ダウン症、重症筋無力症、神経外傷、血管アミロイド症、アミロイド症を伴う大脳出血I、脳炎、急性混乱障害、筋萎縮性側索硬化症、緑内障及びアルツハイマー病を含む群から選択される神経学的疾患を含む、請求項89の方法。
【請求項91】
請求項1から請求項51の何れか1項で定義されるような結合タンパク質の単離CDR。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本願は、RGM Aへの結合能を有し、RGM A受容体及びその他のRGM A結合タンパク質へのRGMタンパク質の結合を妨害し、従ってRGM Aの機能を中和する、RGM A結合タンパク質、特にモノクローナル抗体及び特にそのCDRグラフト、ヒト化形態を記載する。これらの抗体は、以下に限定されないが、多発性硬化症、哺乳動物の脳外傷、脊髄損傷、卒中、神経変性疾患及び統合失調症を含むいくつかの状況の治療において有用性があり得る。
【背景技術】
【0002】
(背景情報)
哺乳動物の中枢神経系(CNS)内での、損傷後又は炎症性攻撃後又は神経変性疾患後の軸索再生は、殆どの場合不可能であり、その転帰は、CNSにおける神経繊維の固有の再成長能と、病変又は損傷部位の微小環境に局在するCNS内の阻害性因子との間のバランスに依存し、この阻害性因子は、再成長、従って損傷を受けた繊維路の再生を積極的に妨害する。
【0003】
インビトロならびインビボで成長円錐虚脱及び神経突起成長阻害を引き起こし、それにより結果的に軸索再成長を直接阻害することから、乏突起膠細胞及び病変瘢痕により生成されるCNSミエリンは、損傷初期における軸索成長に対する最も重要な非許容構造であることが立証されている。CNSミエリン及び瘢痕組織における主要な阻害性因子であるRGMタンパク質が同定されている(Monnierら、Nature 419:392-395、2002;Schwabら、Arch.Neurol.62:1561-8、2005a;Schwabら、Eur.J.Neurosci.21:1569-76、2005b;Hataら、J.Cell.Biol.173:47-58、2006;概説としては:Muellerら、Philos.Trans.R.Soc.Lond.Biol.Sci.361:1513-29、2006;Yamashitaら、Curr.Opin.Neurobiol.17:29-34、2007を参照。)。RGMタンパク質は、脳外傷又は虚血性傷害で死亡したヒトの損傷又は病変部位で上方制御され(Schwabら、Arch.Neurol.62:1561-8、2005a)、脊髄損傷のあるラットの病変部位で上方制御される(Schwabら、Eur.J.Neurosci.21:1569-76、2005b;Hataら、J.Cell.Biol.173:47-58、2006、概説については:Muellerら、Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.361:1513-29、2006;Yamashitaら、Curr.Opin.Neurobiol.17:29-34、2007を参照。)。さらに、多発性硬化症患者及び健常者からの臨床試料を用いた最初のデータから、MSに罹患している患者の脳脊髄液中でヒトRGM Aが上方制御されることが示唆される(データは示さず。)。
【0004】
RGM A特異的ポリクローナル抗体の再生促進能を評価するために、第9/10胸椎レベルの脊髄のおよそ60%が離断された脊髄損傷の中度から重度モデルにこの抗体を投与した。組織学的検査から、このような損傷により、皮質脊髄路の全ての背外側繊維が切断されたことが明らかになった。2週間にわたりポンプを介して局所的に投与されたRGM A-特異的ポリクローナル抗体により、損傷を受けた神経繊維の長距離の再生が誘導された(Hataら、J.Cell.Biol.173:47-58、2006)。
【0005】
幾百もの神経繊維が病変部位を越えて伸長し、最長繊維は、病変部を10mm超越えて再生したが、一方、対照の抗体処理動物では病変部より遠位で再生繊維は見られなかった。対照抗体処理した脊髄損傷ラットと比較して、抗RGM A処置ラットの機能回復が顕著に向上し、それにより、RGM Aが強力な神経再生阻害物質であり、軸索損傷又は神経繊維損傷を特徴とする指標において回復を刺激するための有益な標的であることが証明される(Hataら、J.Cell.Biol.173:47-58、2006;Kyotoら、Brain Res.1186:74-86、2007)。さらに、機能を阻止するポリクローナル抗体でRGM Aタンパク質を中和することによって、脊髄損傷ラットでの損傷神経繊維の再成長が刺激されるだけでなく、それらのシナプス形成が促進され、それにより、損傷を受けた神経回路の再形成又は回復が可能になる(Kyotoら、Brain Res.1186:74-86、2007)。
【0006】
rgm遺伝子ファミリーは、3つの異なる遺伝子を包含し、これらのうち2つ、即ちrgm a及びbは、RGM A及びRGM Bタンパク質が由来する哺乳動物CNSで発現され、一方、第三のメンバーであるrgm cは、末梢で発現され(Muellerら、Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.361:1513-29、2006)、ここで、RGM Cは鉄代謝において重要な役割を果たす。RGM Aは、インビトロで、RGM受容体として同定されているネオゲニンに結合することにより神経突起伸長を阻害する(Rajagopalanら、Nat Cell Biol.:6(8)、756-62、2004)。ネオゲニンは、最初にネトリン-結合タンパク質として記載された(Keino-Masuら、Cell、87(2):175-85、1996)。ネオゲニン又はその近縁の受容体DCC(結腸直腸癌で欠損)に対するネトリン-1の結合により、神経突起成長を阻害するのではなく、刺激することが報告されているので、これは重要な知見である(Braistedら、J.Neurosci.20:5792-801、2000)。従って、RGM Aを阻止することによって、ネオゲニンがその神経突起成長刺激性リガンド、ネトリンに結合できるようにすることにより、RGM介在性の成長阻害が解除される。これらの観察に基づき、RGM Aの中和は、ヒト脊髄損傷モデルでのネオゲニンの中和よりも優れていると評価され得る。ネオゲニンへのRGM Aの結合及び神経突起成長阻害の誘導の他に、骨形成タンパク質BMP-2及びBMP-4へのRGM A又はBの結合は、神経再生及び機能回復の成功に対して同様の障害となり得る(Muellerら、Philos.Trans.R.Soc.Lond.Biol.Sci.361:1513-29、2006)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Monnier他、Nature 419、2002年、p.392-395
【非特許文献2】Schwab他、Arch.Neurol.62、2005年、p.1561-8、
【非特許文献3】Schwab他、Eur.J.Neurosci.21、2005年、p.1569-76
【非特許文献4】Hata他、J.Cell.Biol.173、2006年、p.47-58
【非特許文献5】Mueller他、Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.361、2006年、p.1513-29
【非特許文献6】Yamashita他、Curr.Opin.Neurobiol.17、2007年、p.29-34
【非特許文献7】Kyoto他、Brain Res.1186、2007年、p.74-86
【非特許文献8】Rajagopalan他、Nat Cell Biol.:6(8)、2004年、p.756-62
【非特許文献9】Keino-Masu他、Cell、87(2)、1996年、p.175-85
【非特許文献10】Braisted他、J.Neurosci.20、2000年、p.5792-801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当技術分野で、RGM Aに結合し得る改善された抗体、好ましくはRGM Aを遮断し、RGM Aとその受容体及び/又は結合タンパク質、即ちネオゲニン及びBMP-2、BMP-4との間の相互作用を妨害するモノクローナル抗体が当技術分野で必要とされている。
【0009】
本願は、(a)RGM Aの受容体ネオゲニンへ及び骨形成タンパク質2及び4(BMP-2、BMP-4)へのRGM Aの結合を選択的に阻害する、RGM Aに対する中和モノクローナル抗体の生成及び(b)骨形成タンパク質2及び4(BMP-2、BMP-4)へのRGM Aの結合を選択的に阻害する、RGM Aに対する中和モノクローナル抗体の生成を提供する。神経細胞がRGM A基質において移動及び伸長し易く、コラーゲンIのような許容基質(permissive substrate)ではそうではない条件下で、本発明の中和モノクローナル抗体の1つは、RGM Aの阻害的性質を転換すると思われるので、本発明の中和モノクローナル抗体は、損傷を受けたか又は障害された神経繊維の再成長及び再生する神経繊維の機能的シナプスの形成を刺激すると予想される。さらに、この抗体は、視神経損傷のインビボラットモデルで長距離再生を誘導することができ、これはまた、損傷を受け再生している神経繊維の再ミエリン形成も促進する。
【0010】
従って、本発明の中和モノクローナル抗体は、損傷を受け、炎症を起こしたヒトCNSにおいて、例えば多発性硬化症において、急性脊髄損傷、脳外傷後、又は例えばハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患において、障害されるか又は破壊されたニューロン結合の神経再生及び再成長を促進することが予想される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
ある態様によると、本発明は、1x10-7M以下のK及び1x10-2-1以下のkoff速度定数(両者とも表面プラズモン共鳴により測定)でヒトRGM Aから解離する結合タンパク質を提供する。
【0012】
別の態様によると、本発明は、ヒトRGM Aに結合し、例えば、下記実施例3で例示されるとおりのNtera神経伸長アッセイのような標準的インビトロアッセイで測定される場合に、例えば上記の速度論的特性を示す結合タンパク質のような、ヒトRGM Aの神経突起伸長阻害活性を中和する、結合タンパク質に関する。
【0013】
本発明はまた、次のさらなる機能特性の少なくとも1つ:
ラットRGM Aへの結合、
ヒトRGM Cへの結合及び
ラットRGM Cへの結合
を有する、上記で定義されるとおりの結合タンパク質にも関する。
【0014】
特に、本明細書中に記載のような結合タンパク質は、その受容体の少なくとも1つへのRGMの結合能を調節する。
【0015】
このような結合タンパク質は、特に、ヒトRGM Aの受容体結合ドメインに結合する。RGM Aに対して、N及びC末端受容体結合ドメインが同定されている。本発明の結合タンパク質の特定の実施形態は、例えば47-168のようなN末端hRGM A断片とネオゲニン及びBMP-4のような受容体分子との間の結合の阻害により説明されるように、RGM AのN末端受容体結合ドメインに結合する。このN末端hRGM A断片の全長は、約30から約150又は約30から約122アミノ酸残基であり得る。非限定例として、本明細書中で記載のようなhRGM Aの断片0(N末端残基47-168に対応)又は何らかのより短い受容体結合断片を挙げ得る。
【0016】
特に、この結合タンパク質は、次の相互作用の少なくとも1つ:
ヒトBMP-4へのヒトRGM Aの結合、
ヒトネオゲニンへのhRGM Aの結合、
ヒトネオゲニンへのhRGM Cの結合、
ヒトBMP-2へのヒトRGM Aの結合、
を調節、好ましくは阻害する。
【0017】
特定の実施形態によると、本明細書中で定義されるような結合タンパク質はヒト化抗体である。
【0018】
上記に記載のような結合タンパク質は、抗原結合ドメインを有し得、この結合タンパク質はRGM分子のエピトープに結合することができ、この抗原結合ドメインは、
GTTPDY(配列番号59)、
FQATHDPLT(配列番号62)、
ARRNEYYGSSFFDY(配列番号65)、
LQGYIPPRT(配列番号68)及び
該配列の1つと少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明は、抗原結合ドメインを含む結合タンパク質(該結合タンパク質は、RGM分子のエピトープに結合することができ、該抗原結合ドメインは、
GTTPDY(配列番号59)、
FQATHDPLT(配列番号62)、
ARRNEYYGSSFFDY(配列番号65)、
LQGYIPPRT(配列番号68)及び
該配列の1つと少なくとも50%の配列同一性、例えば少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95%の同一性など、を有する修飾CDRアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含む。)に関する。
【0019】
例えば、この結合タンパク質は、前記のCDRのうち2つ、例えば配列番号59及び62;又は配列番号65及び68などを含み得;これらのCDRのうち少なくとも1つが修飾され得、前記の配列の1つと少なくとも50%の配列同一性、例えば少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95%同一など、を有する。
【0020】
この結合タンパク質は、配列番号57、58、60、61、63、64、66、67及び、この配列の1つと少なくとも50%の配列同一性、例えば少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95%の同一性など、を有する修飾CDRアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRをさらに含み得る。
【0021】
別の実施形態において、この少なくとも1つのCDRが、
【0022】
【表1】
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、結合タンパク質が提供される。
【0023】
特定の実施形態において、この結合タンパク質は、
【0024】
【表2】
からなる可変ドメインCDRセット
又は表2の3つのCDRの少なくとも1つが、親配列に対して少なくとも50%の配列同一性、例えば少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95%の同一性など、を有する修飾CDRアミノ酸配列である可変ドメインセット
から選択される、少なくとも3つのCDRを含む。
【0025】
特に、この上述の修飾のそれぞれは、1個又は複数のアミノ酸付加、欠失もしくは特に置換又はこれらの組み合わせによりもたらされ得る。
【0026】
別の実施形態において、この結合タンパク質は、少なくとも2つの可変ドメインCDRセットを含む。
【0027】
特に、この少なくとも2つの可変ドメインCDRセットは、
VH5F9セット及びVL5F9セット;及び
VH8D1セット及びVL8D1セット
からなる群から選択される。
【0028】
本発明による結合タンパク質は、ヒトアクセプターフレームワークをさらに含む。
【0029】
このヒトアクセプターフレームワークは、配列番号15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32及び33からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含み得る。
【0030】
本発明の結合タンパク質は、特に、セット:
(1)
VH3-48セット(配列番号15、16及び17)
VH3-33セット(配列番号21、22及び23)
VH3-23セット(配列番号24、25及び26)(これらのセットのそれぞれは、
JH3(配列番号18)
JH4(配列番号19)
JH6(配列番号20)
から選択されるさらなるフレームワーク配列と組み合わせられる。)
からなる群から選択されるか;又は
(2)
A18セット:(配列番号27、28及び29)
A17セット:(配列番号31、32及び33)(これらのセットのそれぞれは、JK2(配列番号2)から選択されるさらなるフレームワーク配列と組み合わせられる。)
からなる群から選択される、フレームワーク配列の少なくとも1つのセットを含み得る。
【0031】
特定の実施形態によると、先行する請求項の何れか一項に記載の結合タンパク質は、配列番号35、36、37、38、39、40、41、42及び43から選択される少なくとも1つのCDRグラフト重鎖可変ドメイン;及び/又は配列番号44、45及び46から選択される少なくとも1つのCDRグラフト軽鎖可変ドメインを含む。
【0032】
とりわけ、本発明の結合タンパク質は、2つの可変ドメインの組み合わせを含み、この2つの可変ドメインは、
配列番号35及び44;36及び44;37及び44;38及び44;39及び44;40及び44;41及び44;42及び44;43及び44;
配列番号35及び45;36及び45;37及び45;38及び45;39及び45;40及び45;41及び45;42及び45;43及び45;
配列番号35及び46;36及び46;37及び46;38及び46;39及び46;40及び46;41及び46;42及び46;43及び46
から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0033】
本発明の別の実施形態において、結合タンパク質のこのヒトアクセプターフレームワークは、キーとなる残基における少なくとも1つのフレームワーク領域アミノ酸置換を含み、このキーとなる残基は、
CDRに隣接する残基;
グリコシル化部位残基;
希少残基;
RGMエピトープと相互作用可能な残基;
CDRと相互作用可能な残基;
カノニカル(canonical)残基;
重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間の接触残基;
バーニアゾーン内の残基;
パラグルタミン酸(paraglutamate)形成が可能なN末端残基及び
Chothiaにより定義された可変重鎖CDR1とKabatにより定義された第一の重鎖フレームワークとの間で重複する領域中の残基
からなる群から選択される。
【0034】
特に、このキーとなる残基は、
(重鎖配列位置):1、5、37、48、49、88、98
(軽鎖配列位置):2、4、41、51
からなる群から選択される。
【0035】
特定の実施形態において、本発明の結合タンパク質は、コンセンサスヒト可変ドメインであるか又はこれを含む。
【0036】
本発明の結合タンパク質の別の実施形態によると、このヒトアクセプターフレームワークは少なくとも1つのフレームワーク領域アミノ酸置換を含み、このフレームワークのアミノ酸配列は、このヒトアクセプターフレームワークの配列と、少なくとも65%、例えば少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%、同一であり、このヒトアクセプターフレームワークと同一である、少なくとも70アミノ酸残基、例えば少なくとも75、80又は85残基、を含む。
【0037】
特定の実施形態によると、本発明の結合タンパク質は、
配列番号47、48、49、50;(VHドメイン)からなる群から選択される及び/又は配列番号51、52、53及び54(VLドメイン)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのフレームワーク突然変異可変ドメインを含む。
【0038】
特に、この結合タンパク質は、2つの、場合によってはフレームワークが突然変異した可変ドメインを含み、この2つの可変ドメインは、
配列番号47及び44;47及び45;47及び46;47及び51;47及び52;47及び53;47及び54;
配列番号48及び44;48及び45;48及び46;48及び51;48及び52;48及び53;48及び54;
配列番号49及び44;49及び45;49及び46;49及び51;49及び52;49及び53;49及び54;
配列番号50及び44;50及び45;50及び46;50及び51;50及び52;50及び53;50及び54
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0039】
本明細書中で記載されるような本発明の結合タンパク質は、RGM分子から選択される少なくとも1つの標的に結合することができる。
【0040】
特に、これらは、ヒトRGM A及び場合によっては少なくとも1つのさらなるヒト由来のRGM分子又はカニクイザル、ラット、ヒヨコ、カエル及び魚由来のものに結合し得る。
【0041】
例えば、これらは、ラットRGM A、ヒトRGM C及び/又はラットRGM Cにさらに結合し得る。
【0042】
特に、本発明の結合タンパク質は、上記で定義されるようなRGM分子から選択される標的の生物学的機能を調節することができ、特に中和又は阻害することができる。
【0043】
特に、本発明の結合タンパク質は、RGM受容体の少なくとも1つ、例えばネオゲニン及びBMP(BMP-2及びBMP-4など)に対するRGMの結合能を調節、特に阻害する。
【0044】
例えばこの結合タンパク質は、次の相互作用:
ヒトBMP-4に対するヒトRGM Aの結合、
ヒトネオゲニンに対するhRGM Aの結合、
ヒトネオゲニンに対するhRGM Cの結合、
ヒトBMP-2に対するヒトRGM Aの結合
の少なくとも1つを調節、特に抑制、及び好ましくは阻害する。
【0045】
本明細書中で開示されるような、機能特性の様々な組み合わせを有し、結果として様々な機能プロファイルを示す結合タンパク質もまた本発明の範囲内である。このようなプロファイルの非限定例を下記で挙げる:
【0046】
【表3】
例えば、プロファイル1は、本発明により提供されるような抗体5F9及び本明細書中に記載のその誘導体に対応する。
【0047】
例えば、プロファイル2は、本発明により提供されるような抗体8D1及び本明細書中に記載のようなその誘導体に対応する。
【0048】
特に、本発明の結合タンパク質は、RGM、特に、RGM Aの少なくとも1つの生物活性を阻害することができ、このRGM Aは、ヒト、カニクイザル、ラット、ヒヨコ、カエル及び魚から選択される。
【0049】
別の実施形態によると、本発明の結合タンパク質は、次の速度論的特性:
(a)少なくとも約10-1-1;少なくとも約10-1-1;少なくとも約10-1-1;少なくとも約10-1-1;少なくとも約10-1-1及び少なくとも約10-1-1(表面プラズモン共鳴により測定される場合)からなる群から選択される前記の標的に対する会合速度定数(kon);
(b)最大約10-2-1;最大約10-3-1;最大約10-4-1;最大約10-5-1;及び最大約10-6-1(表面プラズモン共鳴により測定される場合)からなる群から選択される前記の標的に対する解離速度定数(koff)又は
(c)最大約10-7M;最大約10-8M;最大約10-9M;最大約10-10M;最大約10-11M;最大約10-12M;及び最大10-13Mからなる群から選択される前記の標的に対する解離定数(K
の1以上を有する。
【0050】
さらなる態様によると、本発明は、上記の結合タンパク質を含み、リンカーポリペプチド又は免疫グロブリン定常ドメインをさらに含む、抗体コンストラクトを提供する。
【0051】
本発明の抗体コンストラクト又は結合タンパク質は、免疫グロブリン分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多特異性抗体、二重特異性抗体、二重可変ドメイン免疫グロブリン及び二特異性抗体からなる群から選択され得る。
【0052】
本発明による抗体コンストラクトにおいて、この結合タンパク質は、
ヒトIgM定常ドメイン、
ヒトIgG1定常ドメイン、
ヒトIgG2定常ドメイン、
ヒトIgG3定常ドメイン、
ヒトIgG4定常ドメイン、
ヒトIgE定常ドメイン、
ヒトIgD定常ドメイン、
ヒトIgA1定常ドメイン、
ヒトIgA2定常ドメイン、
ヒトIgY定常ドメイン及び
対応する突然変異定常ドメイン
からなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0053】
特に、本発明による抗体コンストラクトは、配列番号11、12、13及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0054】
別の態様によると、本発明は、本明細書中に記載の抗体コンストラクトを含み、免疫接着分子、造影剤、治療薬及び細胞毒性剤(これらの作用物質のそれぞれは、前記の結合タンパク質に結合、例えば共有結合されている。)からなる群から選択される作用物質をさらに含む、抗体複合体を提供する。
【0055】
例えば、この作用物質は、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生体発光標識、磁気標識及びビオチンからなる群から選択される造影剤である。特に、この造影剤は、H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho及び153Smからなる群から選択される放射性標識である。
【0056】
例えば、この作用物質は、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質、成長因子、サイトカイン、血管新生阻害剤、抗有糸分裂剤、アントラサイクリン、毒素及びアポトーシス剤からなる群から選択される治療薬又は細胞毒性剤である。
【0057】
別の実施形態によると、本明細書中に記載のような本発明の結合タンパク質はヒトグリコシル化パターンを保持する。
【0058】
さらに、本発明による、結合タンパク質、抗体コンストラクト及び抗体複合体は、好ましくは生物活性を保持する結晶として(結晶形態で)存在し得る。
【0059】
特に、この結晶は、無担体医薬制御放出結晶である。この結晶形態の観点で、本結合タンパク質、抗体コンストラクト又は抗体複合体は、対応する可溶性形態よりも、インビボで長い半減期を有し得る。
【0060】
別の態様において、本発明は、本明細書中に記載のような、結合タンパク質アミノ酸配列、抗体コンストラクトアミノ酸配列及び抗体複合体アミノ酸配列をコードする単離核酸を提供する。
【0061】
本発明はまた、本明細書中に記載のような単離核酸を含むベクターにも関する。特に、本ベクターは、pcDNA、pTT、pTT3、pEFBOS、pBV、pJV及びpBJからなる群から選択される。
【0062】
本発明はまた、このようなベクターを含む宿主細胞にも関する。特に、この宿主細胞は、例えばE.コリのような原核細胞であるか又は真核細胞であり、原生生物細胞、動物細胞、植物細胞及び真菌細胞からなる群から選択され得る。特に、この真核細胞は、哺乳動物細胞、鳥類細胞及び昆虫細胞からなる群から選択される動物細胞である。好ましくは、この宿主細胞は、HEK細胞、CHO細胞、COS細胞及び酵母細胞から選択される。この酵母細胞はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)であり得、この昆虫細胞はSf9細胞であり得る。
【0063】
本発明はまた、RGMに結合可能である結合タンパク質を産生させるのに十分な条件下で培地中で本明細書中で定義されるような宿主細胞を培養することを含む、RGMに結合することができるタンパク質を産生させる方法も提供する。
【0064】
本発明はまた、この方法に従い産生されるタンパク質にも関する。
【0065】
本発明はまた、
(a)処方物(この処方物は、本明細書中で定義されるような結晶化生成物タンパク質を含む。)及び成分と、
(b)少なくとも1つのポリマー性担体と、
を含む、結合タンパク質の放出のための組成物も提供する。
【0066】
このポリマー性担体は、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリルレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-グリコール酸)コポリマー又はPLGA、ポリ(b-ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン);ポリ(エチレングリコール)、ポリ((ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸-アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギネート、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリカミノグリカン、硫酸化多糖類、その混合物及びコポリマーからなる群の1以上から選択され得る。
【0067】
この成分は、アルブミン、スクロース、トレハロース、ラクチトール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メトキシポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群から選択され得る。
【0068】
別の態様によると、本発明は、本明細書中で定義されるような組成物の有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物を治療するための方法を提供する。
【0069】
別の態様によると、本発明は、生成物(特に、本明細書中で上述するような、結合タンパク質、コンストラクト又は結合物)と医薬的に許容可能な担体と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0070】
この医薬的に許容可能な担体は、本結合タンパク質の吸収又は分散を向上させるために有用なアジュバントとして機能し得る。
【0071】
例えばこのアジュバントはヒアルロニダーゼである。
【0072】
別の実施形態によると、この調合薬は、RGM活性が有害である疾患を治療するための少なくとも1つのさらなる治療薬をさらに含む。例えば、この作用物質は、治療薬、造影剤、細胞毒性剤、血管新生阻害剤;キナーゼ阻害剤;副刺激分子ブロッカー;接着分子ブロッカー;抗サイトカイン抗体又はその機能断片;メトトレキセート;シクロスポリン;ラパマイシン;FK506;検出可能標識又はレポーター;TNFアンタゴニスト;抗リウマチ剤;筋弛緩剤、麻酔剤、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、麻酔薬、鎮静剤、局所麻酔薬、神経筋ブロッカー、抗菌剤、乾癬治療薬、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、エリスロポエチン、免疫付与、免疫グロブリン、免疫抑制剤、成長ホルモン、ホルモン補充剤、放射性医薬品、抗うつ剤、抗精神病薬、興奮剤、喘息治療薬、βアゴニスト、吸入ステロイド、エピネフリン又は類似体、サイトカイン及びサイトカインアンタゴニストからなる群から選択される。
【0073】
本発明はまた、少なくとも1つのヒトRGM A活性が低下させられるように、少なくとも1つの生成物(特に、本明細書中で上述されるような、結合タンパク質、コンストラクト又は結合物)とヒトRGM Aを接触させることを含む、ヒトRGM A活性を低下させるための方法にも関する。
【0074】
本発明はまた、ネオゲニン受容体に対するhRGM A結合を減少させることを必要とする対象に本発明の生成物(特に、本明細書中で上述されるような、結合タンパク質、コンストラクト又は結合物)を投与する段階を含む、該対象においてネオゲニン受容体へのhRGM A結合を減少させるための方法にも関する。
【0075】
本発明はまた、骨形成タンパク質-2及び/又は骨形成タンパク質-4(BMP-2及びBMP-4)に対するhRGM A結合を減少させることを必要とする対象に、本発明の生成物(特に、本明細書中で上述されるような、結合タンパク質、コンストラクト又は結合物)を投与する段階を含む、該対象において骨形成タンパク質-2及び/又は骨形成タンパク質-4(BMP-2及びBMP-4)に対するhRGM A結合を減少させるための方法にも関する。
【0076】
本発明はまた、本発明の生成物(特に、本明細書中で上述されるような、結合タンパク質、コンストラクト又は結合物)を、単独で又はその他の治療薬と組み合わせて投与する段階を含む、RGM A活性を伴う疾患に対して対象を治療するための方法にも関する。
【0077】
本発明はまた、本発明の生成物(特に、本明細書中で上述されるような、結合タンパク質、コンストラクト又は結合物)を、単独で又はその他の治療薬と組み合わせて、RGM A活性が有害である疾患に罹患している対象に投与することを含む、RGM A活性が有害である疾患に罹患している対象においてRGM A活性を低下させるための方法にも関する。
【0078】
この疾患は、好ましくは、筋萎縮性側索硬化症、上腕神経叢損傷、脳損傷(外傷性脳損傷を含む。)、脳性麻痺、ギランバレー、大脳白質萎縮症、多発性硬化症、ポリオ後症候群、二分脊椎、脊髄損傷、脊髄性筋萎縮症、脊椎腫瘍、卒中、横断性脊髄炎;認知症、老年性認知症、軽度認知機能障害、アルツハイマー関連認知症、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、多動、そう病、パーキンソン病、スティール・リチャード症候群、ダウン症、重症筋無力症、神経外傷、血管アミロイド症、アミロイド症を伴う大脳出血I、脳炎、急性混乱障害、筋萎縮性側索硬化症、緑内障及びアルツハイマー病からなる群から選択される神経性疾患を含む。
【0079】
本発明のさらなる特定の態様は以下に記載する。
【0080】
hRGM Aタンパク質の少なくとも1つのエピトープと特異的に相互作用する単離結合タンパク質;
モノクローナル中和抗体又はその抗原結合断片である、前記単離タンパク質;
VH及びVLドメインを含む、前記抗原結合断片;
hRGM Aの、その受容体への結合能を低下させる、前記中和抗体;
hRGM A生物活性を阻害することができる、前記中和抗体;
ヒト、カニクイザル、ラット、ヒヨコ、カエル及び魚から選択されるRGM A受容体を認識する、前記抗体;
アミノ酸配列配列番号2と90%相同性を有するRGM Aタンパク質を認識する、前記抗体;
RGM Aタンパク質が、核酸配列配列番号1と90%相同性を有する核酸によりコードされる、前記抗体;
配列番号9もしくは34の配列を含む重鎖可変領域(VH領域)又は、このVH領域の、ヒト化、場合によってはさらに突然変異した形態を含む配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、前記抗体;
配列番号10の配列を含む軽鎖可変領域(VL領域)又は、このVL領域の、ヒト化、場合によってはさらに突然変異した形態を含む配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、前記抗体;
hRGM Aに結合する、前記抗体(この抗体はグリコシル化されている。);
マウス抗体、ヒト化抗体、完全ヒト、キメラ抗体、ヒト化抗体の抗原結合断片又はキメラ抗体の抗原結合断片である、前記抗体又は抗原結合断片;
Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片及びFv断片からなる群から選択される抗原結合断片である、前記抗体又は抗原結合断片;
hRGM Aの少なくとも1つのエピトープと特異的に結合する、前記モノクローナル抗体(このモノクローナル抗体は、本明細書中に記載のようなハイブリドーマ細胞株により分泌されるモノクローナル抗体である。);
結合の結果、hRGM Aのその受容体との相互作用が不活性化される、前記モノクローナル抗体;
hRGM Aの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する、前記ハイブリドーマ細胞株;
ハイブリドーマが、ヒト、マウス、ラット、ヒツジ、ブタ、ウシ、ヤギ及びウマハイブリドーマからなる群から選択される、前記ハイブリドーマ細胞株;
結合の結果、hRGM Aが不活性化される、前記モノクローナル抗体;
hRGM Aの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する、前記ハイブリドーマ細胞株;
ハイブリドーマが、ヒト、マウス、ラット、ヒツジ、ブタ、ウシ、ヤギ及びウマハイブリドーマからなる群から選択される、前記ハイブリドーマ細胞株;
a)nM範囲以下の親和性で哺乳動物RGM Aに結合すること;
b)μm、nM以下の効率で神経突起伸長アッセイにおいてインビトロでRGM A活性と機能的に拮抗すること;
c)視神経破壊モデルにおいて発芽をインビボで誘導すること;
d)脊髄損傷モデルにおいて発芽をインビボで誘導すること;
e)損傷を受けた神経繊維の再生的成長を促進することによりインビボの実験的脊髄損傷を軽減すること;又は
f)シナプス形成を促進することによりインビボの実験的脊髄損傷を軽減すること
からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、前記モノクローナル中和抗体又はその抗原結合断片;
前記モノクローナル中和抗体又は抗原結合断片をコードする単離核酸;
前記単離核酸を含むベクター;
pcDNA;pTT;pTT3;pEFBOS;pBV;pJV;pHybE及びpBJからなる群から選択される、前記ベクター;
原生生物細胞、動物細胞、植物細胞及び真菌細胞からなる群から選択される形態である、前記ベクターにより形質転換される宿主細胞;
動物細胞がHEK293、CHO及びCOSからなる群から選択される哺乳動物細胞である、宿主細胞;
真核細胞である、請求項24に記載のベクターで形質転換された宿主細胞;
hRGM Aに結合する結合タンパク質を産生させるのに十分な条件下で培地中で宿主細胞を培養することを含む、hRGM Aに結合する結合タンパク質を産生させる方法;
前記モノクローナル抗体又は抗原結合部分と、医薬的に許容可能な担体と、を含む、医薬組成物;
ネオゲニン受容体に対するhRGM A結合を減少させることを必要とする対象に、前記抗体を投与する段階を含む、該対象においてネオゲニン受容体に対するhRGM A結合を減少させるための方法;
骨形成タンパク質-2及び骨形成タンパク質-4(BMP-2及びBMP-4)に対するhRGM A結合を減少させることを必要とする対象に、前記抗体を投与する段階を含む、該対象において骨形成タンパク質-2及び骨形成タンパク質-4(BMP-2及びBMP-4)に対するhRGM A結合を減少させるための方法;
前記の抗体を、単独で又はその他の治療薬と組み合わせて投与する段階を含む、RGM A活性を伴う疾患に対して対象を治療する方法;
前記の抗体を、単独で又はその他の治療薬と組み合わせて、RGM A活性が有害である疾患に罹患している対象に投与することを含む、該対象においてRGM A活性を低下させるための方法;
配列番号35、36、37、38、39、40、41、42及び43から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのVH領域を含む、前記抗体;
配列番号44、45及び46から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのVL領域を含む、前記抗体;
VH又はVL配列における1から5個の突然変異によりさらに修飾される、前記抗体;
突然変異が、フレームワーク復帰突然変異及びバーニア及びVH/VL接触残基の突然変異から選択される、前記抗体;
同様に、本明細書中で開示されるような配列番号34に対する何れの教示又は参照も配列番号9に対して適用される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1A図1Aは、ELISAアッセイにおいて、モノクローナル抗体がhRGM Aに結合することを示す。
図1B図1Bは、モノクローナル抗体が、HEK293細胞で発現されるhRGM Aに結合することを示す。
図1C図1Cは、モノクローナル抗体が、HEK293細胞で発現されるラットRGM Aに結合することを示す。
図2図2は、全長RGM Aがネオゲニンに結合することを示す。MAB 5F9は、全長、fc-連結hRGM Aのネオゲニンに対する結合を阻害する。
図3図3は、全長RGM AがBMP-4に結合することを示す。MAB 5F9は、fc-連結全長hRGM A断片(47-422)のBMP-4に対する結合を阻害する。
図4図4は、RGM A断片0がBMP-4に結合することを示す。MAB 5F9は、fc-連結hRGM A断片0(47-168)のBMP-4に対する結合を阻害する。
図5図5は、全長RGM AがBMP-2に結合することを示す。MAB 5F9は、fc連結全長hRGM A断片(47-422)のBMP-2に対する結合を阻害する。
図6図6は、Ntera細胞神経突起伸長アッセイでのRGM A断片のmAb 5F9による中和を示す顕微鏡写真の組み合わせである。MAB 5F9は、ヒトNtera凝集体を用いた神経突起伸長アッセイでのfc-結合した強力なhRGM A阻害物質断片の伸長阻害活性を中和する。A.対照の培養、ラミニンにおける、B.ラミニン-hRGM A断片(47-168)基質における、C.-E.0.1μg/mL MAB 5F9(C)、1μg/mL MAB 5F9(D.)、10μg/mL MAB 5F9(E.)存在下での、ラミニン-hRGM A断片(47-168)基質における、Nteraニューロンの成長。
図7図7は、NTera2アッセイ結果の定量分析を示す。MAB 5F9は、ヒトNtera凝集体を用いた神経突起伸長アッセイにおいて、fc-結合した強力なhRGM A阻害物質断片(断片0、47-168)の伸長阻害活性を用量依存的に中和する。
図8A図8は、SH-SY5Yストライプアッセイの定量分析を示す。MAB 5F9は、ストライプ膜カーペットにおける、ヒトSH-SY5Yニューロン細胞の、全長ヒトRGM Aからなるストライプにより誘導される反発を中和する。MAB 5F9非存在下で(A)又は低MAB濃度SH-SY5Y存在下で、ニューロンはRGM Aストライプを回避する傾向がある。この挙動は、MAB 5F9の濃度を上昇させることにより逆転させられる。(BからD)最大MAB濃度(10μg/mL)において(E)、SH-SY5Yニューロンは、コラーゲンIストライプと比較して、RGM Aストライプに対して強い選択性を示す。
図8B図8は、SH-SY5Yストライプアッセイの定量分析を示す。MAB 5F9は、ストライプ膜カーペットにおける、ヒトSH-SY5Yニューロン細胞の、全長ヒトRGM Aからなるストライプにより誘導される反発を中和する。MAB 5F9非存在下で(A)又は低MAB濃度SH-SY5Y存在下で、ニューロンはRGM Aストライプを回避する傾向がある。この挙動は、MAB 5F9の濃度を上昇させることにより逆転させられる。(BからD)最大MAB濃度(10μg/mL)において(E)、SH-SY5Yニューロンは、コラーゲンIストライプと比較して、RGM Aストライプに対して強い選択性を示す。
図8C図8は、SH-SY5Yストライプアッセイの定量分析を示す。MAB 5F9は、ストライプ膜カーペットにおける、ヒトSH-SY5Yニューロン細胞の、全長ヒトRGM Aからなるストライプにより誘導される反発を中和する。MAB 5F9非存在下で(A)又は低MAB濃度SH-SY5Y存在下で、ニューロンはRGM Aストライプを回避する傾向がある。この挙動は、MAB 5F9の濃度を上昇させることにより逆転させられる。(BからD)最大MAB濃度(10μg/mL)において(E)、SH-SY5Yニューロンは、コラーゲンIストライプと比較して、RGM Aストライプに対して強い選択性を示す。
図8D図8は、SH-SY5Yストライプアッセイの定量分析を示す。MAB 5F9は、ストライプ膜カーペットにおける、ヒトSH-SY5Yニューロン細胞の、全長ヒトRGM Aからなるストライプにより誘導される反発を中和する。MAB 5F9非存在下で(A)又は低MAB濃度SH-SY5Y存在下で、ニューロンはRGM Aストライプを回避する傾向がある。この挙動は、MAB 5F9の濃度を上昇させることにより逆転させられる。(BからD)最大MAB濃度(10μg/mL)において(E)、SH-SY5Yニューロンは、コラーゲンIストライプと比較して、RGM Aストライプに対して強い選択性を示す。
図8E図8は、SH-SY5Yストライプアッセイの定量分析を示す。MAB 5F9は、ストライプ膜カーペットにおける、ヒトSH-SY5Yニューロン細胞の、全長ヒトRGM Aからなるストライプにより誘導される反発を中和する。MAB 5F9非存在下で(A)又は低MAB濃度SH-SY5Y存在下で、ニューロンはRGM Aストライプを回避する傾向がある。この挙動は、MAB 5F9の濃度を上昇させることにより逆転させられる。(BからD)最大MAB濃度(10μg/mL)において(E)、SH-SY5Yニューロンは、コラーゲンIストライプと比較して、RGM Aストライプに対して強い選択性を示す。
図9図9は、mAB 5F9及び8D1結合特性の定量分析をまとめる。MAB5FhRGM A-ネオゲニン、hRGM A-BMP-2及びhRGM A-BMP-4結合アッセイにおいて、9及び8D1を様々な濃度で評価する。
図10図10は、SH-SY5Y化学走性アッセイにおける、ヒト化5F9抗体(h5F9.21、h5F9.23、h5F9.25)の、hRGM Aの化学反発活性に対する中和活性を示す。
図11図11は、視神経損傷の動物モデルにおける、5F9局所適用のインビボ神経再生活性を示す。MAB 5F9の局所適用により、RGM Aが中和され、視神経破壊ラット動物モデルにおいて障害された視神経軸索の再生伸長が刺激される。5F9処理動物(A)において、ラットRGM Aに結合しない対照MAB8D1(B)とは対照的に、多くのGAP-43陽性繊維が破壊部位を越えて伸長している。
図12図12A及び図12Bは、視神経損傷の動物モデルにおける5F9局所適用の定量分析を示す。(A)5F9によって、再生GAP-43陽性繊維の数が顕著に増加したが、対照MAB8D1では増加しなかった。5F9処置動物において、200μm、400μm及び600μmの距離で、有意に多くの繊維(p<0.05)が観察され、1200μmでは、5F9処置動物でのみ繊維が見られ、対象動物では見られず、(B)5F9は、視神経損傷部位において、対照抗体8D1及びビヒクル対照PBSと比較して、GAP-43陽性面積を有意に増加させた。Axiovisionソフトウェア(Zeiss)を用いて、再生伸長面積(GAP-43陽性面積)を測定した。
図13図13は、視神経損傷の動物モデルにおける、5F9全身適用のインビボ神経再生活性を示す。それぞれ2mg/kg及び10mg/kgで、第0日及び第21日に、5F9で動物を処置した。抗体又はビヒクルを腹腔内又は静脈内投与した。ラット視神経の合成画像。5F9処理動物において(A)、多くのGAP-43陽性繊維は、PBS処置対照動物(B)とは対照的に、破壊部位を越えて伸長している。破壊部位は左端にあり、再生繊維は、GAP-43に対する抗体で染色される。5F9処理動物の視神経の上下縁で多くの繊維が観察されるが、PBS動物では観察されない。
図14A図14Aは、視神経損傷の動物モデルにおける、5F9全身適用の定量分析を示す。
図14B図14Bは、視神経損傷の動物モデルにおける、5F9全身適用の定量分析を示す。
図15図15は、視神経損傷の動物モデルにおける5F9全身適用のインビボ再ミエリン形成活性を示す。それぞれ2mg/kg及び10mg/kgで、第0日及び第21日に、5F9で動物を処置した。抗体又はビヒクルを腹腔内又は静脈内投与した。ラット視神経の合成画像。ミエリンマーカーであるミエリン塩基性タンパク質MBPに対する抗体を用いて、ミエリン形成を視覚化する。破壊部位は複合神経の中央部にあり、この領域は、ビヒクル処理対照動物(A及びB)にはない。5F9処理動物(C及びD)において、多くのMBP陽性構造は、視神経の中央領域(破壊中心)で観察される。
図16図16は、視神経損傷の動物モデルでの、5F9の全身適用の再ミエリン形成における定量的影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
(詳細な記述)
本発明は、RGM Aに結合する、RGM A結合タンパク質、とりわけモノクローナルRGM A抗体、特にヒト化モノクローナルRGM A抗体、又はその抗原結合部分を記載する。本願の様々な態様は、抗体及び抗体断片及びその医薬組成物、ならびに、このような抗体及び断片を作製するために、核酸、組み換え発現ベクター及び宿主細胞に関する。ヒトRGM Aを検出するために、インビボ又はインビトロの何れかでヒトRGM及び/又はヒトRGM A活性を中和するために、及び遺伝子発現を制御するために、本願の抗体を使用する方法も本発明に包含される。
【0083】
1.一般的な定義
本明細書中で別段の定義がない限り、本発明に関して使用される科学用語及び技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有する。これらの用語の意味及び範囲は明確であるが、しかし、何らかの潜在的な曖昧性がある場合には、本明細書中で提供される定義が、あらゆる辞書又は付帯的な定義よりも優先される。さらに、内容により必要とされない限り、単数形である語は、複数性を含み、複数形の語は単数性を含む。本願において、「又は」の使用は、別段の断りがない限り、「及び/又は」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語ならびに「含む(includes)」及び「含まれる(included)」などのその他の形態の使用は限定ではない。また、別段の具体的な断りがない限り、「要素」又は「成分」などの用語は、1単位を含む要素及び成分及び複数のサブユニットを含む要素及び成分の両方を包含する。
【0084】
一般に、本明細書中に記載の、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学及びタンパク質及び核酸化学及びハイブリッド形成と関連して使用される命名法及びそれらの技術は当技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。本発明の方法及び技術は、一般に、別段の指示がない限り、当技術分野で周知の従来法に従い、本願を通じて引用され考察される様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載のように、行われる。酵素反応及び精製技術は、製造者の仕様書に従い、当技術分野で一般に遂行されるように、又は本明細書中に記載のように、行われる。本明細書中に記載の、分析化学、合成有機化学及び医学及び製薬化学と関連して使用される命名法及びそれらの検査法及び技術は、当技術分野で周知であり、一般に使用される。化学合成、化学分析、薬剤調合、処方及び送達ならびに患者の処置に対して標準的技術が使用される。
【0085】
本発明がより容易に理解され得るように、選択した用語を下記で定義する。
【0086】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書中で使用される場合、アミノ酸の何らかのポリマー鎖を指す。「ペプチド」及び「タンパク質」という用語はポリペプチドという用語と交換可能に使用され、また、アミノ酸のポリマー鎖も指す。「ポリペプチド」という用語は、ネイティブ又は人工タンパク質、タンパク質断片及びタンパク質配列のポリペプチド類似体を包含する。ポリペプチドは単量体性又はポリマー性であり得る。
【0087】
「単離タンパク質」又は「単離ポリペプチド」という用語は、誘導物のその起源又は源に基づいて、その生来の状態でそれに付随する天然に会合される成分と会合していないタンパク質又はポリペプチドであるか;同じ種由来のその他のタンパク質を実質的に含まないか;異なる種由来の細胞により発現されるか;又は天然では生じないものである。このようにして、化学的に合成されるか又はそれが天然に由来する細胞とは異なる細胞系で合成されるポリペプチドは、その天然会合成分から「単離」される。タンパク質はまた、当技術分野で周知のタンパク質精製技術を用いて、単離によって、天然会合成分を実質的に含まないようにされているものでもあり得る。
【0088】
「回収する」という用語は、本明細書中で使用される場合、例えば当技術分野で周知のタンパク質精製技術を用いて、単離によって、ポリペプチドなどの化学種が、天然会合成分を実質的に含まないようにされるプロセスを指す。
【0089】
「ヒトRGM A」(本明細書中でhRGM Aと省略)は、本明細書中で使用される場合、450アミノ酸のグリコシルホスファチジル-イノシトール(gpi)-アンカー付加糖タンパク質を指し、最初に、トポグラフィック投射(topographic projection)の進行中の、神経突起伸長消退物質又は神経突起伸長阻害物質として記載された(Stahlら、Neuron 5:735-43、1990;Mueller、Molecular Basis of Axon Growth and Nerve Pattern Formation、H.Hujisawa編、Japan Scientific Societies Press、215-229、1997)。rgm遺伝子ファミリーは、3種類の異なる遺伝子を包含し、それらのうち2つ、rgm a及びbは哺乳動物CNSで発現され、一方第三のメンバーであるrgm cは末梢で発現され(Muellerら、Philos.Trans.R.Soc.Lond.Biol.Sci.361:1513-29、2006)、ここで、rgm cは鉄代謝において重要な役割を果たす。ヒトRGMタンパク質は、43%-50%の配列同一性を有し、ヒト及びラットRGM Aのアミノ酸相同性は89%である。ヒトRGMタンパク質は、何らかのその他の公知のタンパク質と顕著な配列相同性はない。これらは、RGD領域を含有するプロリンに富むタンパク質であり、フォン-ウィルブラント因子ドメインに対して構造的相同性を有し、未知のプロテアーゼによりN末端アミノ酸168で切断され、機能的活性タンパク質が生じる(Muellerら、Philos.Trans.R.Soc.Lond.Biol.Sci.361:1513-29、2006)。
【0090】
インビトロで、RGM Aは、RGM受容体として同定されているネオゲニンに結合することによりピコモル濃度で神経突起伸長を阻害する(Rajagopalanら、Nat Cell Biol.:6(8)、756-62、2004)。ネオゲニンは、最初に、ネトリン-結合タンパク質として記載されたが(Keino-Masuら、Cell、87(2):175-85、1996)、ネトリンに対するその親和性(K2nM)は、RGM(K0.2nM)に対するものよりも小さい桁のものである(Rajagopalanら、Nat Cell Biol.:6(8)、756-62、2004)。ネオゲニンに対する又はその近縁受容体DCC(結腸直腸癌で欠失)に対するネトリン-1の結合が神経突起伸長を阻害するのではなく刺激することが報告されているので、これは重要な知見である(Braistedら、J.Neurosci.20:5792-801、2000)。
【0091】
ネオゲニンへのRGM Aの結合及び神経突起伸長阻害の誘導の他に、骨形成タンパク質BMP-2及びBMP-4に対するRGM A又はBの結合は、神経再生及び機能回復の成功に対する同様の障害となり得る(Muellerら、Philos.Trans.R.Soc.Lond.Biol.Sci.361:1513-29、2006)。タンパク質の両クラス(ネオゲニン及びBMP)は、2つの完全に異なり独立するシグナル伝達回路を介して、RGM Aの神経突起成長阻害性シグナルを変換することが報告されている。通常、これらのBMPタンパク質の発現は、成体CNSの殆どの領域で比較的低いが、損傷及び傷害に応答して、一部のBMP(例えばBMP-2、BMP-6、BMP-7)の発現及び蓄積が急激に上昇することが報告されている(Laiら、Neuroreport 8:2691-94、1997;Martinezら、Brain Res.894:1-11、2001;Hall及びMiller、J.Neurosci.Res.76:1-8、2004;Setoguchiら、Exp.Neurol.189:33-44、2004)。さらに、多発性硬化症のモデル、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルにおいて、マウス脊髄でBMP-4、BMP-6及びBMP-7が上方制御された(Araら、J.Neurosci.Res.86:125-35、2008)。BMP-2は、細胞表面RGM A、BMP-受容体I及びIIに結合することによって及びLIM-キナーゼを直接活性化することによって、神経突起成長を阻害することが報告されており(Matsuuraら、Biochem Biophys Res Commun.、360:868-73、2007)、従って、RGM A-BMP-2相互作用を阻止することによって、CNS損傷後の機能的回復がさらに促進されることが予想される。
【0092】
上述のように、脊髄損傷ラット及び脳損傷のあるヒトは、損傷部位において細胞性RGMの大規模な蓄積を示し、脊髄病変部位でのラットにおけるRGM Aの染色パターンは、ヒトでの総RGM 抗体染色と非常に類似しており、このことから、ヒトにおける総RGM染色の殆どが、RGM B局在ではなくRGM A局在に関連するものであることが示唆される(Schwabら、Arch.Neurol.62:1561-8、2005a;Schwabら、Eur.J.Neurosci.21:1569-76、2005b;Hataら、J.Cell.Biol.173:47-58、2006)。健康なヒト脳において、白質繊維、乏突起膠細胞、少数のニューロンの周核体、一部の血管平滑筋及び少数の内皮細胞で総RGM染色(RGM A及びB免疫反応性)が検出された。星状膠細胞の染色は観察されなかった。成人健常ヒト脳のRGM染色パターンは、成体ラット脊髄で観察される染色パターンと非常に類似している(Schwabら、Eur.J.Neurosci.21:1569-76、2005b;Hataら、J.Cell.Biol.173:47-58、2006)。
【0093】
脳及び脊髄損傷での損傷部でのRGM Aの蓄積に基づき、及びその細胞性の神経突起成長阻害活性ゆえに、このタンパク質が神経突起成長阻害活性を発揮し、ヒトRGM Aの少なくとも1つのエピトープに結合する抗体又はその抗原結合断片によるその中和の結果、損傷を受けた神経繊維の再成長が向上し、神経繊維損傷及びRGM蓄積を特徴とする指標において機能的回復が促進されることが予想される。
【0094】
別段の断りがない限り、「RGM A」という用語はまた、その他の種、例えばマウス又はラットなどのげっ歯類から単離又は得られたRGM A分子、具体的には本明細書中で「ラットRGM A」と呼ばれるラット由来分子も包含する。
【0095】
【表4】
【0096】
「生物活性」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定義されるようなRGM Aの全ての生来の生物学的特性を指す。
【0097】
「特異的結合」又は「特異的に結合する」という用語は、本明細書中で使用される場合、第二の化学種との抗体、タンパク質又はペプチドの相互作用に関して、相互作用が、その化学種において特定の構造(例えば、下記で定義されるような「抗原決定基」又は「エピトープ」)の存在に依存することを意味し;例えば、抗体は、一般的にタンパク質ではなく特異的なタンパク質構造を認識し、それに結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、エピトープA(又は遊離、非標識A)を含有する分子が存在すると、標識された「A」及びその抗体を含有する反応において、抗体に結合する標識されたAの量が減少する。
【0098】
「抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、広く、4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖から構成される何らかの免疫グロブリン(Ig)分子又はその何らかの機能的断片、突然変異体、変異体もしくは誘導体(これは、Ig分子の必須のエピトープ結合特性を保持する。)を指す。このような突然変異体、変異体もしくは誘導抗体形態は当技術分野で公知である。この非限定実施形態は下記で考察する。抗体は、それが、分子と特異的に反応することができ、それによりその抗体にその分子が結合する場合、分子に「結合可能」であると言われる。
【0099】
「モノクローナル抗体」とは、本明細書中で使用される場合、様々な抗体の混合物を含有する「ポリクローナル」抗体調製物に対して、共通の重鎖及び共通の軽鎖アミノ酸配列を有する抗体分子の調製物を指すものとする。モノクローナル抗体は、ファージ、細菌、酵母又はリボソーム提示などのいくつかの新規技術ならびにハイブリドーマ由来抗体(例えば、標準的なKohler及びMilsteinハイブリドーマ法((1975)Nature 256:495-497)など、ハイブリドーマ技術によって調製されたハイブリドーマにより分泌される抗体)により例示される古典的方法により作製され得る。
【0100】
全長抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中で略してHCVR又はVH)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中で略してLCVR又はVL)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLからなる。VH及びVL領域は、より保存性が高いフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分類され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という順序で並んだ、3つのCDR及び4つのFRから構成される。免疫グロブリン分子は、何らかのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスのものであり得る。
【0101】
抗体の「抗原結合部分」又は「抗原結合断片」(又は単純に「抗体部分」又は「抗体断片」)という用語は、本明細書中で使用される場合、抗原(例えばhRGM A)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上の断片を指す。全長抗体の断片により抗体の抗原結合機能を発揮させ得ることが示されている。このような抗体実施形態はまた、2以上の異なる抗原に特異的に結合する、二特異性、二重特異性又は多特異性形態でもあり得る。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片)、(ii)F(ab’)断片(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片)、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)1つの可変ドメインを含むdAb断片(Wardら(1989)Nature 341:544-546、Winterら、PCT公開WO90/05144A1(参照により本明細書中に組み込まれる。))及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは別個の遺伝子によってコードされているが、これらは、VL及びVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖として、これらの作製を可能とする合成リンカーによって、組み換え法を用いて連結され得る(一本鎖Fv(scFv)として知られている。例えば、Birdら(1988)Science 242:423-426;及びHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含されるものとする。ダイアボディなどの一本鎖抗体のその他の形態も包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが1本のポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上にあるこの2つのドメイン間での対合を可能とするには短すぎるリンカーを使用して、これによりこれらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと強制的に対合させ、2つの抗原結合部位を作出する、二価の二特異性抗体である(例えば、Holliger、P.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak R.J.ら(1994)Structure 2:1121-1123を参照)。このような抗体結合部分は、当技術分野で公知である(Kontermann及びDubel編、Antibody Engineering(2001)Springer-Verlag.New York.790pp.(ISBN 3-540-41354-5)。
【0102】
「抗体コンストラクト」という用語は、本明細書中で使用される場合、リンカーポリペプチド又は免疫グロブリン定常ドメインに連結された本発明の1以上の抗原結合部分を含むポリペプチドを指す。リンカーポリペプチドは、ペプチド結合により連結される2以上のアミノ酸残基を含み、1以上の抗原結合部分を連結するために使用される。このようなリンカーポリペプチドは当技術分野で周知である(例えば、Holliger、P.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:6444-6448;Poljak、R.J.ら(1994)Structure 2:1121-1123参照)。免疫グロブリン定常ドメインとは、重鎖又は軽鎖定常ドメインを指す。ヒトIgG重鎖及び軽鎖定常ドメインアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、表2で示される。
【0103】
【表5】
【0104】
またさらに、抗体又はその抗原結合部分は、1以上のその他のタンパク質又はペプチドとの抗体又は抗体部分の共有又は非共有結合により形成される、より大きな免疫接着分子の一部であり得る。このような免疫接着分子の例には、四量体scFv分子を生成させるためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov、S.M.ら(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)及び二価及びビオチン化scFv分子を生成させるための、システイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov、S.M.ら(1994)Mol.Immunol.31:1047-1058)が含まれる。全抗体のそれぞれパパイン又はペプシン消化などの従来技術を用いて、全抗体から、Fab及びF(ab’)断片などの抗体部分を調製することができる。さらに、本明細書中に記載のように、標準的組み換えDNA技術を用いて、抗体、抗体部分及び免疫接着分子を得ることができる。
【0105】
「単離抗体」とは、本明細書中で使用される場合、異なる抗原特異性を有するその他の抗体を実質的に含まない抗体を指すものとする(例えば、hRGM Aに特異的に結合する単離抗体は、hRGM A以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。)。しかし、hRGM Aに特異的に結合する単離抗体は、その他の種由来のRGM A分子などのその他の抗原との交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、その他の細胞性物質及び/又は化学物質を実質的に含まないものであり得る。
【0106】
本明細書中で使用される場合、「ヒト抗体」という用語には、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する抗体が含まれるものとする。本発明のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3中のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでの無作為又は部位特異的突然変異誘発によるか又はインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)を含み得る。しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体を含まないものとする。
【0107】
「組み換えヒト抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、宿主細胞に遺伝子移入された組み換え発現ベクターを用いて発現される抗体(下記で詳述)、組み換え体、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離される抗体(Hoogenboom H.R.(1997)TIB Tech.15:62-70;Azzay H.及びHighsmith W.E.(2002)Clin.Biochem.35:425-445;Gavilondo J.V.及びLarrick J.W.(2002)Bio Techniques 29:128-145;Hoogenboom H.及びChames P.(2000)Immunology Today 21:371-378)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離される抗体(例えば、Taylor、L.D.ら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295;Kellermann S-A.及びGreen L.L.(2002)Current Opinion in Biotechnology 13:593-597;Little M.ら(2000)Immunology Today 21:364-370参照)又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列のその他のDNA配列へのスプライシングを含む何らかのその他の手段により、調製され、発現され、作製されるか又は単離される抗体など、組み換え手段により、調製され、発現され、作製されるか又は単離される、全てのヒト抗体を含むものとする。このような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する。しかし、ある種の実施形態において、このような組み換えヒト抗体はインビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列に対してトランスジェニックである動物が使用される場合、インビボ体細胞突然変異誘発)を受け、従って、組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VH及びVL配列由来であり、関連する一方で、インビボでのヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然には存在し得ない配列である。
【0108】
「キメラ抗体」という用語は、ヒト定常領域に連結されたマウス重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体など、ある種に由来する重鎖及び軽鎖可変領域配列及び別の種に由来する定常領域配列を含む抗体を指す。キメラ抗体は、組み換え分子生物学技術を通じて作製され得るか又は物理的に一緒に結合され得る。
【0109】
「CDRグラフト抗体」という用語は、マウスCDRの1以上(例えばCDR3)がヒトCDR配列で置換されているマウス重鎖及び軽鎖可変領域配列を有する抗体など、ある種に由来する重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVLのCDR領域の1以上の配列が、別の種のCDR配列と置換されている抗体を指す。
【0110】
「Kabat付番」、「Kabat定義」及び「Kabatラベリング」という用語は本明細書中で交換可能に使用される。これらの用語は、当技術分野で認識されており、抗体の重鎖及び軽鎖可変領域又はその抗原結合部分におけるその他のアミノ酸残基よりもより可変性がある(即ち超可変性)アミノ酸残基に付番する系を指す(Kabatら(1971)Ann.NY Acad、Sci.190:382-391及びKabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91-3242)。重鎖可変領域の場合、超可変領域は、CDR1についてはアミノ酸位置31から35の範囲であり、CDR2についてはアミノ酸位置50から65であり、CDR3についてはアミノ酸位置95から102の範囲である。軽鎖可変領域の場合、超可変領域は、CDR1についてはアミノ酸位置24から34の範囲であり、CDR2についてはアミノ酸位置50から56であり、CDR3についてはアミノ酸位置89から97である。
【0111】
本明細書中で使用される場合、「アクセプター」及び「アクセプター抗体」という用語は、フレームワーク領域の1以上のアミノ酸配列の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は100%を与えるか又はコードする、抗体又は核酸配列を指す。ある実施形態において、「アクセプター」という用語は、定常領域を与えるか又はコードする、抗体アミノ酸又は核酸配列を指す。さらに別の実施形態において、「アクセプター」という用語は、フレームワーク領域及び定常領域の1以上を与えるか又はコードする、抗体アミノ酸又は核酸配列を指す。具体的な実施形態において、「アクセプター」という用語は、フレームワーク領域の1以上のアミノ酸配列の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は100%を与えるか又はコードする、ヒト抗体アミノ酸又は核酸配列を指す。この実施形態によると、アクセプターは、ヒト抗体の1以上の特異的位置で生じない、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5又は少なくとも10個のアミノ酸残基を含有し得る。アクセプターフレームワーク領域及び/又はアクセプター定常領域は、例えば、生殖細胞系列抗体遺伝子、成熟抗体遺伝子、機能的抗体(例えば、当技術分野で周知の抗体、開発中の抗体又は市販の抗体)由来であり得るか又はそれらから得ることができる。
【0112】
本明細書中で使用される場合、「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域のそれぞれに3個のCDRがあり、これらは、可変領域のそれぞれに対して、CDR1、CDR2及びCDR3と呼ばれる。「CDRセット」という用語は、本明細書中で使用される場合、抗原に結合し得る1つの可変領域で生じる3つのCDRの群を指す。これらのCDRの正しい境界は、系によって別に規定される。Kabatにより記載される系(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、Bethesda、MD(1987)及び(1991))は、抗体のあらゆる可変領域に適用可能である明確な残基付番システムを提供するだけでなく、3つのCDRを定義する明確な残基境界ももたらす。これらのCDRは、Kabat CDRと呼ばれる得る。Chothia及び共同研究者ら(Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.196:901-917(1987)及びChothiaら、Nature 342:877-883(1989))は、アミノ酸配列のレベルで非常に多様であるにもかかわらず、Kabat CDR内のある一定の部分(subportion)がほぼ同一のペプチド骨格構造をとることを見出した。これらの部分(subportion)は、L1、L2及びL3又はH1、H2及びH3と名付けられた(ここで、「L」及び「H」は、それぞれ軽鎖及び重鎖領域を表す。)。これらの領域は、Chothia CDRと呼ばれ得、これらは、Kabat CDRと重複する境界を有する。KabatCDRと重複するCDRを定義するその他の境界は、Padlan(FASEB J.9:133-139(1995))及びMacCallum(J Mol.Biol.262(5):732-45(1996))により記載されている。さらに他のCDR境界の定義は、上記のシステムの1つに正確には従わない可能性があるが、特定の残基又は残基群又はCDR全体でさえも抗原結合に重大な影響を与えないという予想又は実験的知見を考慮すると、それらが短くされ得るか又は長くされ得るかにかかわらず、それでもなお、Kabat CDRと重複する。本明細書中で使用される方法は、これらのシステムの何れかに従い定義されるCDRを使用し得るが、好ましい実施形態は、Kabat又はChothiaで定義されるCDRを使用する。
【0113】
本明細書中で使用される場合、「カノニカル(canonical)」残基という用語は、Chothiaら(J.Mol.Biol.196:901-907(1987);Chothiaら、J.Mol.Biol.227:799(1992)、両者とも参照により本明細書中に組み込まれる。)により定義されるような、特定のカノニカル(canonical)CDR構造を定義する、CDR又はフレームワークにおける残基を指す。Chothiaらによると、多くの抗体のCDRの重要な部分は、アミノ酸配列のレベルでは非常に多様であるにもかかわらず、ほぼ同一のペプチド骨格構造を有する。各カノニカル(canonical)構造は、主に、ループを形成するアミノ酸残基の隣接セグメントに対する一組のペプチド骨格ねじれ角を指す。
【0114】
本明細書中で使用される場合、「ドナー」及び「ドナー抗体」という用語は、1以上のCDRを提供する抗体を指す。好ましい実施形態において、ドナー抗体は、フレームワーク領域が得られるか又はそれが由来する抗体とは異なる種由来の抗体である。ヒト化抗体に関して、「ドナー抗体」という用語は、1以上のCDRを提供する非ヒト抗体を指す。
【0115】
本明細書中で使用される場合、「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」という用語は、CDRを差し引いた可変領域の残存配列を指す。CDR配列の正確な定義は異なるシステムにより決定され得るので、フレームワーク配列の意味は、相応して異なる解釈に従う。6個のCDR(軽鎖のCDR-L1、-L2及び-L3及び重鎖のCDR-H1、-H2及び-H3)もまた、軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域を各鎖において4つのサブ領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)に分けるが、ここで、CDR1は、FR1とFR2との間に位置し、CDR2はFR2とFR3との間に位置し、CDR3はFR3とFR4との間に位置する。FR1、FR2、FR3又はFR4として特定のサブ領域を指定することなく、その他により指定される場合、フレームワーク領域は、1本の天然の免疫グロブリン鎖の可変領域内の組み合わせられたFR’を示す。本明細書中で使用される場合、FR(単数形)は4つのサブ領域の1つを表し、FR(複数形)は、フレームワーク領域を構成する4つのサブ領域の2以上を表す。
【0116】
ヒト重鎖及び軽鎖アクセプター配列は当技術分野で公知である。本発明のある実施形態において、ヒト重鎖及び軽鎖アクセプター配列は、表3及び表4に記載の配列から選択される。ヒトフレームワーク配列FR1からFR4に対する様々な組み合わせはこれらの表で述べる。
【0117】
【表6】
【0118】
【表7】
【0119】
本明細書中で使用される場合、「生殖細胞系列抗体遺伝子」又は「遺伝子断片」という用語は、特定の免疫グロブリンの発現に対して遺伝子再編成及び突然変異をもたらす成熟プロセスが行われていない非リンパ系細胞によりコードされる免疫グロブリン配列を指す(例えば、Shapiroら、Crit.Rev.Immunol.22(3):183-200(2002);Marchalonisら、Adv Exp Med Biol.484:13-30(2001)参照)。本発明の様々な実施形態により提供される長所の1つは、生殖細胞系列抗体遺伝子が、成熟抗体遺伝子よりも、種における個体の必須のアミノ酸配列構造の特徴を保存する可能性が高く、それゆえ、その種において治療用に使用される場合、外来の源由来のものとして認識される可能性が低いという認識によるものである。
【0120】
本明細書中で使用される場合、「キーとなる」残基という用語は、抗体の、特にヒト化抗体の、結合特異性及び/又は親和性においてより大きな影響がある可変領域内のある一定の残基を指す。キーとなる残基には、以下に限定されないが、次のもの:CDRに隣接する残基、潜在的グリコシル化部位(N-又はO-グリコシル化部位の何れかであり得る。)、希少残基、抗原と相互作用可能な残基、CDRと相互作用可能な残基、カノニカル残基、重鎖可変領域及と軽鎖可変領域との間の接触残基、バーニアゾーン内の残基及び可変重鎖CDR1のChothia定義と第一の重鎖フレームワークのKabat定義との間で重複する領域における残基の1以上が含まれる。
【0121】
「ヒト化抗体」という用語は、一般に、非ヒト種(例えばマウス)由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗体を指すが、しかし、ここで、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部が、より「ヒトに近く」になるように改変されている、即ち、ヒト生殖細胞系列の可変配列により類似するように改変されている。ヒト化抗体のあるタイプは、対応する非ヒトCDR配列を置換するためにヒトCDR配列が非ヒトVH及びVL配列に導入される、CDRグラフト抗体である。
【0122】
特に、「ヒト化抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、関心のある抗原に免疫特異的に結合し、ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク(FR)領域及び実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその変異体、誘導体、類似体又は断片である。本明細書中で使用される場合、CDRに関して「実質的に」という用語は、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも50、55、60、65、70、75又は80%、好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン(即ちドナー抗体)のものに対応し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ及び通常は2つの、可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、FabC、Fv)の実質的に全てを含む。好ましくは、ヒト化抗体はまた、通常はヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む。ある実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖ならびに少なくとも重鎖の可変ドメインの両方を含有する。本抗体はまた、重鎖の、CH1、ヒンジ、CH2、CH3及びCH4領域も含み得る。ある実施形態において、ヒト化抗体はヒト化軽鎖のみを含有する。ある実施形態において、ヒト化抗体はヒト化重鎖のみを含有する。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメイン及び/又はヒト化重鎖のみを含有する。
【0123】
ヒト化抗体は、IgY、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgE及び何らかのアイソタイプ(以下に限定されないが、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。)を含む、免疫グロブリンの何らかのクラスから選択することができる。ヒト化抗体は、複数のクラス又はアイソタイプからの配列を含み得、当技術分野で周知である技術を用いて、所望のエフェクター機能を最適化するために特定の定常ドメインを選択し得る。
【0124】
ヒト化抗体の、フレームワーク及びCDR領域は、親配列に正確に対応する必要はなく、例えば、その部位でCDR又はフレームワーク残基がドナー抗体又はコンセンサスフレームワークの何れかに相当しないように、少なくとも1つのアミノ酸残基の、置換、挿入及び/又は欠失により、ドナー抗体CDR又はコンセンサスフレームワークに対して突然変異誘発が行われ得る。しかし、好ましい実施形態において、このような突然変異は大規模ではない。通常、ヒト化抗体残基の、少なくとも50、55、60、65、70、75又は80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が親FR及びCDR配列のものに相当する。本明細書中で使用される場合、「コンセンサスフレームワーク」という用語は、コンセンサス免疫グロブリン配列中のフレームワーク領域を指す。本明細書中で使用される場合、「コンセンサス免疫グロブリン配列」という用語は、関連免疫グロブリン配列のファミリーにおいて最も高頻度に現れるアミノ酸(又はヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker、From Gene to Clones(Verlagsgesellschaft、Weinheim、Germany 1987参照)。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列の各位置には、そのファミリーのその位置で最も高頻度に現れるアミノ酸がある。2種類のアミノ酸が同等の頻度で現れる場合、何れかをコンセンサス配列に含め得る。
【0125】
本明細書中で使用される場合、「バーニア」ゾーンは、Foote及びWinter(1992、J.Mol.Biol.224:487-499、参照により本明細書中に組み込まれる。)により記載されるように、CDR構造を調整し得、抗原への適合を細かく調整し得るフレームワーク残基のサブセットを指す。バーニアゾーン残基は、CDRの基礎をなす層を形成し、CDRの構造及び抗体の親和性に影響を及ぼし得る。
【0126】
RGMのその受容体の1つへの「結合の阻害」という用語は、本明細書中で使用される場合、この受容体結合活性の、部分的(例えば、約20%、40%、60%、80%、85%、90%、95%以上)又は完全な低下を包含する。この「結合の阻害」は、当技術分野で利用可能な何らかの適切な方法により、好ましくは、例えばELISAに基づく結合アッセイなど、本明細書中で例示されるような何らかの方法により、決定され得る。
【0127】
本明細書中で使用される場合、「中和」という用語は、結合タンパク質が標的タンパク質に特異的に結合するときの、標的タンパク質の生物活性の中和を指す。中和することは、この結合タンパク質の標的への結合の様々な手段の結果であり得る。例えば、中和することは、標的分子への受容体結合に影響を与えない標的の領域における結合タンパク質の結合により引き起こされ得る。あるいは、結合タンパク質の結合の結果、標的への受容体結合が阻止され得、この阻止により最終的に標的タンパク質活性が中和される。この様々な機能のそれぞれは、本発明に従い起こり得る。好ましくは、中和結合タンパク質は、hRGM Aへのその結合の結果、hRGM Aの生物活性が中和される中和抗体である。好ましくは、中和結合タンパク質は、hRGM Aに結合し、少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%以上、hRGM Aの活性を生物学的に低下させる。当技術分野で周知のhRGM A生物活性の1以上の指標を測定することにより、中和結合タンパク質によるhRGM Aの生物活性の中和を評価することができる。例えば、hRGM Aの中和により、Ntera神経伸長アッセイにおいて阻害が逆転される(下記実施例3参照)。Ntera神経突起成長アッセイは、神経突起伸長の阻害を扱うものである。阻害性RGM Aタンパク質又は断片の非存在下及び伸長刺激基質ラミニンの存在下で、ニューロンNTera凝集は、伸長する神経突起の大規模で密集したネットワークを示す。RGM A又はRGM A断片は神経突起伸長を阻害し、その結果、神経突起が短くなり、その数が減少する。機能阻止RGM Aアンタゴニスト又はMAB(MAB 5F9など)は、分化したヒトNTeraニューロンの凝集体による神経突起成長アッセイにおいてヒトRGM Aタンパク質の強力なfc-結合hRGM A軽鎖断片(アミノ酸47-168)の神経突起伸長阻害活性を中和し、その結果、神経突起が長くなり、その数が顕著に増加した。
【0128】
「中和モノクローナル抗体」とは、本明細書中で使用される場合、その特異的抗原への結合がこの抗原に対する天然リガンドの結合と競合し、これを阻害し得る、抗体分子の調製物を指すものとする。本願の特定の実施形態において、本発明の中和抗体は、ネオゲニンに対する及び/又はBMP-2及び/又はBMP-4に対する結合に対してRGM Aと競合し得、RGM A生物活性又は機能を妨害し得る。特に、本発明の中和抗体は、RGM Aと結合し、ネオゲニンへ及び/又はBMP-2及び/又はBMP-4に対する結合を妨害し、RGM A生物活性又は機能を妨害し得る。「活性」という用語には、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性(例えばRGM A抗原に結合する抗hRGM A抗体)及び/又は、抗体の中和能(例えば、RGM Aに対するその結合がhRGM Aの生物活性を阻害する抗hRGM A抗体(例えば下記実験セクションに記載のようなhRGM A-ネオゲニン結合アッセイ、hRGM A-BMP-2結合アッセイ又はhRGM A-BMP-4結合アッセイで測定される場合))などの活性が含まれる。
【0129】
RGM Aの生物活性は、細胞移動を制御することとも言われ得る。細胞移動の具体例は神経突起成長であり、これはRGM Aタンパク質により妨害されるか又は阻害される。さらに、RGMタンパク質は、BMP-タンパク質の活性を調節することが示されている。本明細書中で、公開されている例は、片側でBMP-経路におけるRGMタンパク質の相乗増強活性及びBMP-経路におけるRGMタンパク質の阻害活性(これは、鉄代謝、骨及び軟骨再生の制御に対して、及び再ミエリン形成及び再生のためにCNSにおいて重要である。)を記載している。
【0130】
「エピトープ」又は「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリン又はT細胞受容体と特異的に結合することができる何らかのポリペプチド決定基を含む。ある種の実施形態において、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面基群を含み、ある種の実施形態においては、特定の3次元構造的特徴及び/又は特定の電荷的特徴を有し得る。エピトープは、抗体が結合する抗原の領域である。ある種の実施形態において、抗体は、タンパク質及び/又は巨大分子の複雑な混合物中でその標的抗原を選択的に認識した際に抗原に特異的に結合すると言われる。
【0131】
「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書中で使用される場合、例えばBIAcoreシステムを用いた、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度における変化の検出により、リアルタイムの生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指す(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden及びPiscataway、NJ)。さらなる説明については、Jonsson、U.ら(1993)Ann.Biol.Clin.51:19-26;Jonsson、U.ら(1991)Biotechniques 11:620-627;Johnsson、B.ら(1995)J.Mol.Recognit.8:125-131;及びJohnnson、B.ら(1991)Anal.Biochem.198:268-277)を参照。
【0132】
「kon」という用語は、本明細書中で使用される場合、当技術分野において公知であるような抗体/抗原複合体を形成するための抗原への抗体の会合に対する会合速度定数を指すものとする。
【0133】
「koff」という用語は、本明細書中で使用される場合、当技術分野で公知であるような抗体/抗原複合体由来の抗体の解離に対する解離速度定数を指すものとする。
【0134】
「K」という用語は、本明細書中で使用される場合、当技術分野において公知であるような特定の抗体抗原相互作用の解離定数を指すものとする。
【0135】
「標識された結合タンパク質」という用語は、本明細書中で使用される場合、結合タンパク質の同定を可能にする標識が取り込まれたタンパク質を指す。好ましくは、標識は、検出可能なマーカーであり、例えば、放射性標識されたアミノ酸の取り込み又は目印を付したアビジン(例えば、光学的又は比色分析法によって検出することができる、蛍光マーカー又は酵素活性を含有するストレプトアビジン)によって検出することができるビオチン部分のポリペプチドへの連結である。ポリペプチドに対する標識の例には、以下に限定されないが、次のもの:放射性同位体又は放射性核種(例えば、H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho又は153Sm);蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体);酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);化学発光マーカー;ビオチニル基;二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ);及びガドリニウムキレート剤などの磁性試薬(magnetic agent)が含まれる。
【0136】
「抗体複合体」という用語は、第二の化学部分(治療薬又は細胞毒性剤など)に化学的に連結される、抗体などの結合タンパク質を指す。本明細書中で、「作用物質(agent)」という用語は、化学的化合物、化学的化合物の混合物、生体高分子又は生物物質から調製される抽出物を表すために使用される。好ましくは、治療薬又は細胞毒性剤には、以下に限定されないが、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン及びこれらの類似体又はホモログが含まれる。
【0137】
「結晶」及び「結晶化された」という用語は、本明細書中で使用される場合、結晶の形態で存在する抗体又はその抗原結合部分を指す。結晶は、物質の固体状態の一形態であり、これは、非晶質の固体状態又は液晶状態などの他の形態とは異なる。結晶は、原子、イオン、分子(例えば、抗体などのタンパク質)又は分子集合体(例えば、抗原/抗体複合体)の規則的な反復三次元配列から構成される。これらの三次元配列は、当技術分野においてよく理解されている特異的な数学的関係に従って配列される。結晶中で反復される基礎的単位又は構築ブロックは非対称単位と呼ばれる。所定の十分に整えられた結晶学的対称性に合致する配置での非対称単位の反復により、結晶の「単位格子」がもたらされる。全ての三次元中での規則的な並進による単位格子の反復により結晶がもたらされる。Giege、R.及びDucruix、A.Barrett、Crystallization of Nucleic Acids and Proteins、a Practical Approach、第2版、pp.20 1-16、Oxford University Press、New York、New York(1999)を参照。
【0138】
本明細書中で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、2以上のヌクレオチド(リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドの何れか又はヌクレオチドの何れかの型の修飾形態)のポリマー形態を意味する。この用語は、DNAの1本鎖及び2本鎖形態を含むが、好ましくは2本鎖DNAである。
【0139】
本明細書中で使用される場合、「単離ポリヌクレオチド」という用語は、その起源ゆえに、「単離ポリヌクレオチド」が、その「単離ポリヌクレオチド」が本来ともに見出されるポリヌクレオチドの全部又は一部と会合していないか;天然にはそれが連結されないポリヌクレオチドに操作可能に連結されているか;又はより大きな配列の一部として天然には存在しない、(例えば、ゲノム、cDNAもしくは合成起源又はこれらのいくつかの組み合わせの)ポリヌクレオチドを意味する。
【0140】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すものとする。ベクターのある種類は「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントが結合され得る環状2本鎖DNAループを指す。ベクターの別の種類はウイルスベクターであり、この場合、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムに結合され得る。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自己複製可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中に導入されると宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得、これにより、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが操作可能に連結される遺伝子の発現を誘導することが可能である。このようなベクターは、本明細書中で、「組み換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組み換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミド形態であることが多い。プラスミドは最も一般的に使用されるベクター形態であるので、本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は交換可能に使用され得る。しかし、本発明は、同等の機能を果たす、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)などの発現ベクターのこのようなその他の形態を含むものとする。
【0141】
「操作可能に連結された」という用語は、記載された成分が、その意図する様式でそれらを機能させることができる関係にある併置状態を指す。コード配列に対して「操作可能に連結された」調節配列は、調節配列と適合する条件下で、コード配列の発現が達成されるように結合される。「操作可能に連結された」配列は、関心のある遺伝子と連続する発現調節配列及び関心のある遺伝子を調節するように、トランスで又は離れて作用する発現調節配列の両方を含む。「発現調節配列」という用語は、本明細書中で使用される場合、それらが結合されるコード配列の発現及びプロセシングに影響を与えるために必要であるポリヌクレオチド配列を指す。発現調節配列には、適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列;スプライシング及びポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を向上させる配列(即ちKozakコンセンサス配列);タンパク質の安定性を向上させる配列;及び必要に応じて、タンパク質分泌を促進する配列が含まれる。このような調節配列の性質は宿主生物によって異なり、原核生物では、このような調節配列には一般に、プロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列が含まれ、真核生物では、一般に、このような調節配列には、プロモーター及び転写終結配列が含まれ得る。「調節配列」という用語は、その存在が発現及びプロセシングに必須である成分を含むものとし、その存在が有利であるさらなる成分、例えば、リーダー配列及び融合パートナー配列も含み得る。
【0142】
「形質転換」とは、本明細書中で定義される場合、外来DNAが宿主細胞に入る何らかのプロセスを指す。形質転換は、当技術分野で周知の様々な方法を用いて、天然又は人工の条件下で起こり得る。形質転換は、原核又は真核宿主細胞へ外来核酸配列を挿入するための何らかの公知の方法に依存し得る。本方法は、形質転換されている宿主細胞に基づいて選択され、この方法には、以下に限定されないが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポフェション及び粒子衝突が含まれ得る。このような「形質転換された」細胞には、挿入されたDNAが自己複製するプラスミドとして又は宿主染色体の一部としての何れかで複製することができる、安定して形質転換された細胞が含まれる。これらには、挿入されたDNA又はRNAを、限られた時間、一過性発現する細胞も含まれる。
【0143】
「組み換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という用語は、本明細書中で使用される場合、外来DNAが導入されている細胞を指すものとする。このような用語は、特定の対象細胞を指すだけでなく、このような細胞の子孫も指すことを理解されたい。突然変異又は環境的な影響の何れかのために、後続の世代中にある種の修飾が生じ得るので、このような子孫は、実際には親細胞と同一でないことがあり得るが、本明細書中で使用される場合、「宿主細胞」という用語の範囲内になお含まれる。好ましくは、宿主細胞には、生物の何れかの界から選択される原核及び真核細胞が含まれる。好ましい真核細胞には、原生生物、真菌、植物及び動物細胞が含まれる。最も好ましくは、宿主細胞には、以下に限定されないが、原核細胞株E.コリ;哺乳動物細胞株CHO、HEK293及びCOS;昆虫細胞株Sf9及び真菌細胞サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
【0144】
組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成及び組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に対して標準的技術が使用され得る。酵素反応及び精製技術は、製造者の仕様書に従って、又は当技術分野で一般に遂行されるように、又は本明細書中に記載のように、実施され得る。一般に、先述の技術及び手順は、当技術分野で周知の従来の方法に従い、及び本明細書を通じて引用及び考察される様々な一般的及び具体的な参考文献中に記載のように、実施され得る。例えば、「Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989))」(参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。)を参照のこと。
【0145】
当技術分野において公知であるように、及び本明細書において使用する場合、「トランスジェニック生物」とは、トランス遺伝子を含有する細胞を有する生物を指し、この場合、生物(又は生物の子孫)中に導入されたトランス遺伝子は、その生物中で天然には発現されないポリペプチドを発現する。「トランス遺伝子」とは、トランスジェニック生物の1以上の細胞種又は組織において、コードされた遺伝子産物の発現を支配する、トランスジェニック生物が発生する細胞のゲノム中に安定して及び操作可能に組み込まれるDNAコンストラクトである。
【0146】
「制御する」又は「調節する」という用語は交換可能に使用され、本明細書中で使用される場合、関心のある分子の活性(例えばhRGM Aの生物活性)の変化又は変更を指す。調節は、関心のある分子のある種の活性又は機能の強さの向上又は低下であり得る。分子の典型的な活性及び機能には、以下に限定されないが、結合特性、酵素活性、細胞受容体活性化及びシグナル伝達が含まれる。
【0147】
同様に、「調節物質」という用語は、本明細書中で使用される場合、関心のある分子の活性又は機能(例えば、hRGM Aの生物活性)を変化又は変更させることが可能な化合物である。例えば、調節物質は、調節物質の非存在下で観察される活性又は機能の強さと比較して、分子のある種の活性又は機能の強さを向上又は低下させ得る。本明細書中で使用される場合、「アゴニスト」という用語は、関心のある分子と接触した際に、アゴニストの非存在下で観察される活性又は機能の強さと比較して、分子のある種の活性又は機能の強さを向上させる調節物質を指す。関心のある特定のアゴニストには、以下に限定されないが、hRGM Aポリペプチド又は、hRGM Aに結合する、ポリペプチド、核酸、炭水化物もしくは何らかのその他の分子が含まれ得る。「アンタゴニスト」という用語は、本明細書中で使用される場合、関心のある分子と接触した場合に、アンタゴニスト非存在下で観察される活性又は機能の強さと比較して、分子のある種の活性又は機能の強さを低下させる調節物質を指す。代表的アンタゴニストには、以下に限定されないが、タンパク質、ペプチド、抗体、ペプチボディ、炭水化物又は低分子の有機分子が含まれる。ペプチボディは例えばWO01/83525に記載されている。
【0148】
関心のある特定のアンタゴニストには、hRGM Aの生物活性又は免疫学的活性を阻止又は調節するものが含まれる。hRGM Aのアンタゴニストには、以下に限定されないが、RGM A分子と相互作用するモノクローナル抗体のような、hRGM Aに結合する、タンパク質、核酸、炭水化物又は何らかのその他の分子が含まれ得る。RGM Aとの相互作用の結果、その他のリガンド/細胞膜成分の結合及び中和が起こり得、複数の疾患に対する相加的又は相乗的機能に対して有用であり得ることに注意されたい。
【0149】
本明細書中で使用される場合、「有効量」という用語は、疾患又はその1以上の症候の、重症度及び/又は持続時間を低下(短縮)させるか又は改善するか、疾患の進行を予防するか、疾患の軽減を引き起こすか、疾患に付随する1以上の症候の再発、発現、発症もしくは進行を予防するか、疾患を検出するか、又は別の治療薬(例えば予防薬又は治療薬)の予防的もしくは治療的効果を促進もしくは向上させるのに十分である治療薬の量を指す。
【0150】
「試料」という用語は、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用される。「生体試料」とは、本明細書中で使用される場合、以下に限定されないが、生物由来の又は死亡した生物由来の物質のあらゆる量が含まれる。このような生物には、以下に限定されないが、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギ及びその他の動物が含まれる。このような物質には、以下に限定されないが、血液、血清、尿、滑液、細胞、器官、組織、骨髄、リンパ節及び脾臓が含まれる。
【0151】
2.hRGM Aに結合するポリペプチド
本願の主要な実施形態は、RGM Aタンパク質の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する単離タンパク質又はポリペプチドを含む。RGM Aタンパク質の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する単離タンパク質又はポリペプチドは、RGM Aの受容体ネオゲニンに対する及び/又は骨形成タンパク質2及び4(BMP-2、BMP-4)に対するRGM Aの結合を阻害し得る。
【0152】
本願の最も好ましい実施形態は、RGM A又はその抗原結合部分もしくは断片に結合する抗体を含む。
【0153】
好ましくは、本発明の抗RGM A抗体は、例えば、当技術分野で公知であるか又は以下に記載のいくつかのインビトロ及びインビボアッセイの何れか1つにより評価した場合、RGM A活性を低下させるか又は中和する高い能力を示す。
【0154】
本願は、最も好ましくは、RGM Aの受容体、ネオゲニンへの及び骨形成タンパク質2及び4(BMP-2、BMP-4)へのRGM Aの結合を選択的に妨害する、RGM Aに対する中和モノクローナル抗体及び、RGM Aのその共受容体、骨形成タンパク質2及び4(BMP-2、BMP-4)への結合を選択的に妨害する、RGM Aに対する中和モノクローナル抗体の作製を含む。
【0155】
好ましくは、本願のモノクローナル中和抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に対応するか又はそれ由来の、可変及び定常領域を有する抗体を指す(例えば、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91-3242、1991参照)。しかし、本願のヒト抗体は、例えばCDRにおける、及び特にCDR3における、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでの無作為又は部位特異的突然変異誘発により又はインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)を含み得る。
【0156】
様々な実施形態において、本抗体は組み換え抗体又はモノクローナル抗体である。本願の最も好ましい中和抗体は、本明細書中で、mAb5F9及びmAb8D1及びその機能的抗体断片を指し、解離速度が低く、中和能が高いRGM Aへの高親和性結合など、mAb5F9及びmAb8D1と同等の特性を有するその他の抗体及び機能的抗体断片は、本発明の一部をなすものであるとする。免疫原性RGM Aポリペプチド又はその断片に対する本願の抗RGM A抗体の結合親和性及び解離速度は、当技術分野で公知の何らかの方法により決定され得る。例えば、結合親和性は、競合的ELISA、cRIA、BIAcore又はKinExA技術により測定することができる。解離速度もまた、BIAcore又はKinExA技術により測定することができる。結合親和性及び解離速度は、例えばBIAcoreを用いて表面プラズモン共鳴により測定される。
【0157】
本願の好ましいモノクローナル抗体の1つであるmAb5F9抗体は、配列番号9又は34の配列を含む重鎖可変領域(VH領域)及び配列番号10の配列を含む軽鎖可変領域(VL領域)を含む配列と、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0158】
本願のRGM Aと相互作用する単離モノクローナル抗体が、抗体又はその抗原結合部分に1以上の炭水化物残基が含まれるグリコシル化結合タンパク質であり得ることも意図される。新生インビボタンパク質産生は、翻訳後修飾として知られるさらなるプロセシングを受け得る。特に、糖(グリコシル)残基を酵素により添加し得る(グリコシル化として知られるプロセス)。共有結合されるオリゴ糖側鎖を有する、結果として得られるタンパク質は、グリコシル化タンパク質又は糖タンパク質として知られる。タンパク質グリコシル化は、関心のあるタンパク質のアミノ酸配列ならびにそのタンパク質が発現される宿主細胞に依存する。生物によって産生されるグリコシル化酵素が異なり得(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼ)、利用可能な基質が異なり得る(ヌクレオチド糖)。このような因子のために、タンパク質グリコシル化パターン及びグリコシル残基の組成は、特定のタンパク質が発現される宿主系によって異なり得る。本発明において有用なグリコシル残基には、以下に限定されないが、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、n-アセチルグルコサミン及びシアル酸が含まれ得る。好ましくはグリコシル化結合タンパク質は、グリコシル化パターンがヒトとなるようにグリコシル残基を含む。
【0159】
本願の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、IgY又はIgD定常領域などの重鎖定常領域を含む。さらに、本抗体は、軽鎖定常領域、κ軽鎖定常領域又はλ軽鎖定常領域の何れかを含み得る。好ましくは、本抗体はκ軽鎖定常領域を含む。あるいは、抗体部分は、例えば、Fab断片又は1本鎖Fv断片であり得る。抗体エフェクターの機能を変化させるためのFc部分におけるアミノ酸残基の置換は当技術分野で公知である(Winterら、米国特許第5,648,260号及び同第5,624,821号)。抗体のFc部分は、例えば、抗体及び抗原-抗体複合体の、サイトカイン誘導、ADCC、食作用、補体依存性細胞傷害(CDC)及び半減期/クリアランス速度などのいくつかの重要なエフェクターの機能を媒介する。場合によっては、これらのエフェクターの機能は、治療用抗体に対して好ましいが、その他の場合において、治療目的によっては、不要であり得るか又は有害でもあり得る。ある種のヒトIgGアイソタイプ、特にIgG1及びIgG3は、それぞれFcγR及び補体C1qへの結合を介してADCC及びCDCを媒介する。新生児Fc受容体(FcRn)は、抗体の循環半減期を決定する重要な要素である。さらに別の実施形態において、抗体のエフェクターの機能が変化するように、抗体の定常領域、例えば抗体のFc領域において、少なくとも1つのアミノ酸残基が置換される。
【0160】
3.抗hRGM A抗体の作製
3.1.一般原理
本願の抗体は、適切な宿主(例えば、ヒト、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、爬虫類、魚類、両生類を含む脊椎動物において及び鳥類、爬虫類及び魚類の卵において)の免疫付与により作製され得る。本願の抗体を作製するために、本発明の免疫原性RGM Aポリペプチド又はその断片で宿主に免疫付与する。「免疫付与」という用語は、本明細書中で、免疫レパートリーが、天然の遺伝子改変されていない生物又はトランスジェニック生物(人工的人免疫レパートリーを提示するように修飾されたものを含む。)に存在するか否かにかかわらず、免疫レパートリーに対して抗原を提示するプロセスを指す。同様に、「免疫原性調製物」は、アジュバント又は抗原の免疫原性を促進するその他の添加物を含有する抗原の処方物である。
【0161】
当技術分野で公知の何らかの方法により、動物の免疫付与を行い得る。例えば、Harlow及びLane、Antibodies:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press、1990参照。マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ及びウマなどの非ヒト動物を免疫付与するための方法は当技術分野で周知である。例えば、Harlow及びLane及び米国特許第5,994,619号参照。好ましい実施形態において、免疫反応を刺激するために、RGM A抗原はアジュバントとともに投与される。このようなアジュバントには、完全又は不完全フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)又はISCOM(免疫刺激性複合体)が含まれる。このようなアジュバントは、局所沈着するようにポリペプチドを封鎖することによって急速にポリペプチドが分散しないようにし得るか又は、これらは、マクロファージ及び免疫系のその他の成分に対して化学走性がある因子を分泌させるために宿主を刺激する物質を含有し得る。好ましくは、ポリペプチドが投与されている場合、免疫付与スケジュールには、数週間にわたる2回以上のポリペプチドの投与が含まれる。
【0162】
動物宿主は、無傷細胞又は破壊細胞の細胞膜と会合している抗原で免疫付与され、本願の抗体は、本発明の免疫原性ポリペプチドへの結合により同定されることが企図される。抗原での動物宿主の免疫付与後、動物から抗体が得られ得る。採血するか又は動物を屠殺することにより、動物から抗体含有血清が得られる。この血清は動物から得られた状態のままで使用され得るか、又は免疫グロブリン分画が血清から回収され得るか、又は抗体が血清から精製され得る。このようにして得られた血清又は免疫グロブリンはポリクローナルであり、従って、異なる一連の特性を有する。
【0163】
3.2 ハイブリドーマ技術を用いた抗RGM Aモノクローナル抗体
ハイブリドーマ、組み換え及びファージディスプレイ技術又はそれらの組み合わせの使用を含む当技術分野で公知の多岐にわたる技術を用いて、モノクローナル抗体を調製し得る。例えば、当技術分野で公知であり、例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988);Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier、N.Y.1981)(これらの参考文献は、それらの全体において参照により組み込まれる。)で教示されるものを含むハイブリドーマ技術を用いて、モノクローナル抗体を作製し得る。「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、ハイブリドーマ技術を通じて作製される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、何らかの真核、原核又はファージクローンを含む単一クローン由来の抗体を指し、それが作製される方法ではない。
【0164】
ハイブリドーマ技術を用いて特異的抗体を作製し、これについてスクリーニングするための方法は通常のものであり当技術分野で周知である。ある実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体を作製する方法ならびに、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することを含む方法により産生される抗体を提供するが、この場合、好ましくはハイブリドーマは、本発明の抗原で免疫付与されたマウスから単離された脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させ、次いで本発明のポリペプチドに結合可能である抗体を分泌するハイブリドーマクローンに対する融合の結果得られるハイブリドーマをスクリーニングすることにより作製される。簡潔に述べると、RGM A抗原によりマウスに免疫付与することができる。好ましい実施形態において、免疫反応を刺激するために、抗原はアジュバントとともに投与される。このようなアジュバントには、フロイントの完全又は不完全アジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)又はISCOM(免疫刺激性複合体)が含まれる。このようなアジュバントは、局所沈着するようにポリペプチドを封鎖することによって急速にポリペプチドが分散しないようにし得るか、又は、これらは、マクロファージ及び免疫系のその他の成分に対して化学走性がある因子を分泌させるために宿主を刺激する物質を含有し得る。好ましくは、ポリペプチドが投与されている場合、免疫付与スケジュールには、数週間にわたる2回以上のポリペプチドの投与が含まれる。
【0165】
免疫反応が検出されたら、例えば、マウス血清中で抗原RGM Aに対する特異的な抗体が検出されたら、マウス脾臓を摘出し、脾臓細胞を単離する。次に、脾臓細胞を周知の技術により何らかの適切な骨髄腫細胞(例えばATCCから入手可能な細胞株SP20由来の細胞)に融合させる。ハイブリドーマを選択し、限界希釈法によりクローニングする。次に、RGM Aに結合可能である抗体を分泌する細胞について、当技術分野で公知の方法によりハイブリドーマクローンをアッセイする。陽性ハイブリドーマクローンを用いてマウスに免疫付与することによって、通常高レベルの抗体を含有する腹水を産生させ得る。
【0166】
別の実施形態において、免疫付与動物から、抗体産生不死化ハイブリドーマを調製し得る。免疫付与後、動物を屠殺し、当技術分野で周知であるように脾臓B細胞を不死化骨髄腫細胞に融合させる。例えば、Harlow及びLane、上出参照。好ましい実施形態において、骨髄腫細胞は免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌細胞株)。融合及び抗生物質選択後、RGM A又はその一部又はRGM Aを発現する細胞を用いて、ハイブリドーマをスクリーニングする。好ましい実施形態において、最初のスクリーニングは、酵素連結免疫アッセイ(ELISA)又は放射性免疫アッセイ(RIA)(好ましくはELISA)を用いて行う。ELISAスクリーニングの例は、WO00/37504(参照により本明細書中に組み込まれる。)で提供される。
【0167】
下記でさらに考察するように、抗RGM A抗体産生ハイブリドーマを選択し、クローニングし、さらに、ロバストなハイブリドーマ増殖、高抗体産生及び所望の抗体特性を含む所望の特徴についてスクリーニングする。ハイブリドーマを培養し、インビボで同系動物において、免疫系欠損動物(例えばヌードマウス)において、又はインビトロで細胞培養において、増殖させ得る。ハイブリドーマを選択し、クローニングし、増殖させる方法は当業者にとって周知である。
【0168】
好ましい実施形態において、上述のように、ハイブリドーマはマウスハイブリドーマである。別の好ましい実施形態において、ハイブリドーマは、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ又はウマなどの、非ヒト、非マウス種で産生される。別の実施形態において、ハイブリドーマは、ヒト非分泌性骨髄腫が抗RGM A抗体を発現するヒト細胞と融合させられているヒトハイブリドーマである。
【0169】
特異的エピトープを認識する抗体断片を公知の技術により作製し得る。例えば、(Fab断片を作製するための)パパイン又は(F(ab’)2断片を作製するための)ペプシンなどの酵素を用いて、免疫グロブリン分子のタンパク質分解性切断によって、本発明のFab及びF(ab’)2断片を作製し得る。F(ab’)2断片は、可変領域、軽鎖定常領域及び重鎖のCH1ドメインを含有する。
【0170】
3.3 SLAMを用いた抗RGM Aモノクローナル抗体
本発明の別の態様において、米国特許第5,627,052号、PCT公開WO92/02551及びBabcock、J.S.ら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843-7848に記載のような、当技術分野で選択的リンパ球抗体法(Selected lymphocyte antibody method、(SLAM))と呼ばれる手順を用いて、単一の単離リンパ球から組み換え抗体を作製する。この方法において、抗原特異的溶血プラークアッセイを用いて、関心のある抗体を分泌する単一細胞(例えば上述の免疫付与動物の何れか1つ由来のリンパ球)をスクリーニンするが、ここで、抗原RGM A、RGM Aのサブユニット又はその断片は、ビオチンなどのリンカーを用いてヒツジ赤血球細胞に連結されており、RGM Aに対する特異性を有する抗体を分泌する単一の細胞を同定するために使用される。関心のある抗体分泌細胞の同定後、逆転写酵素-PCRにより重鎖及び軽鎖可変領域cDNAを細胞から取り出し、次いで、COS又はCHO細胞などの哺乳動物宿主細胞において、適切な免疫グロブリン定常領域(例えばヒト定常領域)の下で、これらの可変領域を発現させることができる。次に、例えばRGM Aに対する抗体を発現する細胞を単離するために遺伝子移入された細胞を選び出すことにより、インビボ選択リンパ球由来の増幅された免疫グロブリン配列を遺伝子移入された宿主細胞をインビトロでさらに分析及び選択することができる。PCT公開WO97/29131及びPCT公開WO00/56772に記載のものなどのインビトロ親和性成熟法などによって、増幅された免疫グロブリン配列をインビトロでさらに操作することができる。
【0171】
3.4 トランスジェニック動物を用いた抗RGM Aモノクローナル抗体
本発明の別の実施形態において、RGM A抗原でヒト免疫グロブリン遺伝子座のいくつか又は全てを含む非ヒト動物に免疫付与することによって抗体を作製する。好ましい実施形態において、非ヒト動物は、XENOMOUSEトランスジェニックマウス、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きな断片を含み、マウス抗体産生欠損である、改変マウス系列である。例えば、Greenら、Nature Genetics 7:13-21(1994)及び米国特許第5,916,771号、同第5,939,598号、同第5,985,615号、同第5,998,209号、同第6,075,181号、同第6,091,001号、同第6,114,598号及び同第6,130,364号を参照。また、WO91/10741(1991年7月25日公開)、WO94/02602(1994年2月3日公開)、WO96/34096及びWO96/33735(両方とも1996年10月31日公開)、WO98/16654(1998年4月23日公開)、WO98/24893(1998年6月11日公開)、WO98/50433(1998年11月12日公開)、WO99/45031(1999年9月10日公開)、WO99/53049(1999年10月21日公開)、WO00/09560(2000年2月24日公開)及びWO00/037504(2000年6月29日公開)も参照。XENOMOUSEトランスジェニックマウスは、完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを産生し、抗原-特異的ヒトMabを産生する。XENOMOUSEトランスジェニックマウスは、ヒト重鎖遺伝子座及びx軽鎖遺伝子座の、メガベースの大きさの生殖細胞系列構造YAC断片の導入を通じて、ヒト抗体レパートリーのおよそ80%を含有する。Mendezら、Nature Genetics 15:146-156(1997)、Green及びJakobovits J.Exp.Med.188:483-495(1998)を参照(これらの開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。)。
【0172】
3.5 組み換え抗体ライブラリを用いた抗RGM Aモノクローナル抗体
本発明の抗体を作製するために、インビトロ法を使用することもでき、この場合、所望の結合特異性を有する抗体を同定するために、抗体ライブラリをスクリーニングする。組み換え抗体ライブラリのこのようなスクリーニングのための方法は、当技術分野で周知であり、これには、例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Kangら、PCT公開WO92/18619;Dowerら、PCT公開WO91/17271;Winterら、PCT公開WO92/20791;Marklandら、PCT公開WO92/15679;Breitlingら、PCT公開WO93/01288;McCaffertyら、PCT公開WO92/01047;Garrardら、PCT公開WO92/09690;Fuchsら(1991)、Bio/Technology 9:1370-1372;Hayら(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81-85;Huseら(1989)、Science 246:1275-1281;McCaffertyら、Nature(1990)348:552-554;Griffithsら(1993)EMBO J 12:725-734;Hawkinsら(1992)J Mol Biol 226:889-896;Clacksonら(1991)Nature 352:624-628;Gramら(1992)PNAS 89:3576-3580;Garradら(1991)Bio/Technology 9:1373-1377;Hoogenboomら(1991)Nuc Acid Res 19:4133-4137;及びBarbasら(1991)PNAS 88:7978-7982、米国出願公開第20030186374及びPCT公開WO97/29131(これらのそれぞれの内容は参照により本明細書中に組み込まれる。)に記載の方法が含まれる。
【0173】
組み換え抗体ライブラリは、RGM A又はRGM Aの一部で免疫付与された対象由来であり得る。あるいは、組み換え抗体ライブラリは、未処理の対象、即ちRGM Aで免疫付与されていない対象由来であり得、例えば、ヒトRGM Aで免疫付与されていないヒト対象からのヒト抗体ライブラリなどである。ヒトRGM Aを含むペプチドを用いて組み換え抗体ライブラリをスクリーニングし、それによりRGM Aを認識する抗体を選択することによって、本発明の抗体を選択する。このようなスクリーニング及び選択を行うための方法は、先行する段落における参考文献に記載のものなど、当技術分野で周知である。特定のkoff速度定数でヒトRGM Aから解離するものなど、RGM Aに対する特定の結合親和性を有する本発明の抗体を選択するために、表面プラズモン共鳴の当技術分野で公知の方法を使用して、所望のkoff速度定数を有する抗体を選択することができる。特定のIC50を有するものなど、RGM Aに対する特定の中和活性を有する本発明の抗体を選択するために、hRGM A活性の阻害を評価するための当技術分野で公知の標準的方法を使用し得る。
【0174】
ある態様において、本発明は、ヒトRGM Aに結合する、単離抗体又はその抗原結合部分に関する。好ましくは、本抗体は中和抗体である。様々な実施形態において、本抗体は組み換え抗体又はモノクローナル抗体である。
【0175】
例えば、本発明の抗体はまた、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ法を用いて作製し得る。ファージディスプレイ法において、機能的抗体ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を担うファージ粒子の表面で機能的抗体ドメインを提示する。特に、このようなファージは、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリ(例えばヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示するために使用され得る。抗原により、例えば標識抗原又は固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉される抗原を用いて、関心のある抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージを選択するか又は同定することができる。これらの方法において使用されるファージは、通常、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質の何れかに組み換え融合される、Fab、Fv又はジスルフィド安定化Fv抗体ドメインとともにファージから発現されるfd及びM13結合ドメインを含む線状ファージである。本発明の抗体を作製するために使用することができるファージディスプレイ法の例には、Brinkmanら、J.Immunol.Methods 182:41-50(1995);Amesら、J.Immunol.Methods 184:177-186(1995);Kettleboroughら、Eur.J.Immunol.24:952-958(1994);Persicら、Gene 187 9-18(1997);Burtonら、Advances in Immunology 57:191-280(1994);PCT/GB91/01134;PCT公開WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;及び米国特許第5,698,426号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,750,753号;同第5,821,047号;同第5,571,698号;同第5,427,908;同第5,516,637号;同第5,780,225号;同第5,658,727号;同第5,733,743及び同第5,969,108号(これらはそれぞれ、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる。)で開示されるのものが含まれる。
【0176】
上記参考文献に記載のように、例えば下記で詳述するように、ヒト抗体又は何らかのその他の所望の抗原結合断片を含み、何らかの所望の宿主(哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む。)において発現される全抗体を生成させるために、ファージ選択後、ファージ由来の抗体コード領域を単離し、使用することができる。例えば、PCT公開WO92/22324;Mullinaxら、BioTechniques 12(6):864-869(1992);及びSawaiら、AJRI 34:26-34(1995);及びBetterら、Science 240:1041-1043(1988)(これらの参考文献は、それらの全体において参照により組み込まれる。)で開示されているものなどの当技術分野で公知の方法を用いて、Fab、Fab’及びF(ab’)断片を組み換え作製するための技術を使用することもできる。1本鎖Fv及び抗体を作製するために使用することができる技術の例には、米国特許第4,946,778号及び同第5,258,498号;Hustonら、Methods in Enzymology 203:46-88(1991);Shuら、PNAS 90:7995-7999(1993);及びSkerraら、Science 240:1038-1040(1988)に記載のものが含まれる。
【0177】
ファージディスプレイによる組み換え抗体ライブラリのスクリーニングの代わりに、大型のコンビナトリアルライブラリをスクリーニングするための当技術分野で公知のその他の方法を、本発明の2重特異性抗体の同定に適用することができる。代替的な発現系の1つのタイプは、Szostak及びRobertsによるPCT公開WO98/31700及びRoberts、R.W.及びSzostak、J.W.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:12297-12302に記載のような、組み換え抗体ライブラリがRNA-タンパク質融合物として発現されるものである。この系において、その3’末端にプロマイシン、ペプチジルアクセプター抗生物質を有する合成mRNAのインビトロ翻訳により、mRNAとそれがコードするペプチド又はタンパク質との間で、共有結合融合が生じる。このようにして、コードされるペプチド又はタンパク質、例えば抗体又はその一部の特性(二重特異性抗原への、抗体又はその一部の結合など)に基づき、mRNAの複合混合物(例えばコンビナトリアルライブラリ)から、特異的mRNAを濃縮することができる。このようなライブラリのスクリーニングから回収される抗体又はその一部をコードする核酸配列は、上記のような組み換え手段によって発現させることができ(例えば哺乳動物宿主細胞において)、さらに、上述のような、元来選択された配列へと突然変異が導入されているmRNA-ペプチド融合物のスクリーニングのさらなるラウンドによるか又は組み換え抗体のインビトロでの親和性成熟のためのその他の方法によるかの何れかで、さらなる親和性成熟に供することができる。
【0178】
別のアプローチにおいて、本発明の抗体はまた、当技術分野で公知の酵母ディスプレイ法を用いて作製することもできる。酵母ディスプレイ法において、酵母細胞壁に抗体ドメインを繋ぎ止め、酵母の表面上にそれらを提示するために遺伝学的方法を使用する。特に、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリ(例えばヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示するために、このような酵母を使用することができる。本発明の抗体を作製するために使用することができる酵母ディスプレイ法の例には、Wittrupら、米国特許第6,699,658号(参照により本明細書中に組み込まれる。)で開示されるものが含まれる。
【0179】
4.本発明の特定の組み換えRGM A抗体の作製
本発明の抗体は、当技術分野で公知の多くの技術の何れかにより作製され得る。例えば、宿主細胞からの発現であり、この場合、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターは標準的技術により宿主細胞に遺伝子移入される。「遺伝子移入(トランスフェクション)」という用語の様々な形態は、原核又は真核宿主細胞への外来DNAの導入のために一般に使用される多岐にわたる技術を包含するものとする(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラン遺伝子移入など)。原核又は真核宿主細胞の何れかにおいて本発明の抗体を発現することが可能ではあるが、真核細胞(及び特に哺乳動物細胞)は、原核細胞よりも、正しく折り畳まれ免疫学的活性のある抗体を構築して分泌する可能性が高いので、真核細胞での抗体の発現が好ましく、哺乳動物宿主細胞中での発現が最も好ましい。
【0180】
本発明の組み換え抗体を発現させるための好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えばR.J.Kaufman及びP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601-621に記載のような、DHFR選択可能マーカーとともに使用される、Urlaub及びChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載のdhfr-CHO細胞を含む。)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、宿主細胞での抗体の発現を可能にするか又はより好ましくは、宿主細胞を増殖させる培地への抗体の分泌を可能にするために十分な時間にわたり宿主細胞を培養することによって、抗体が産生される。標準的タンパク質精製法を用いて培地から抗体を回収することができる。
【0181】
Fab断片又はscFv分子などの機能的抗体断片を生成させるために宿主細胞を使用することもできる。上記手順における変化が本発明の範囲内であることを理解されたい。例えば、本発明の抗体の軽鎖及び/又は重鎖の何れかの機能的断片をコードするDNAを宿主細胞に遺伝子移入することが望ましいものであり得る。関心のある抗原への結合に必要ではない軽鎖及び重鎖の何れか又は両方をコードするDNAのいくつか又は全てを除去するために、組み換えDNA技術を使用することもできる。このような短縮DNA分子から発現される分子もまた本発明の抗体に包含される。さらに、標準的化学架橋法により第二の抗体へ本発明の抗体を架橋することによって、1本の重鎖及び1本の軽鎖が本発明の抗体であり、その他の重鎖及び軽鎖が、関心のある抗原以外の抗原に特異的である、二官能性抗体を作製し得る。
【0182】
本発明の抗体又はその抗原結合部分の組み換え発現のための好ましい系において、リン酸カルシウムが介在する遺伝子移入によって、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターをdhfr-CHO細胞に導入する。組み換え発現ベクター内で、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子は、遺伝子の高レベル転写を推進するために、それぞれCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントに操作可能に連結される。組み換え発現ベクターはまた、DHFR遺伝子も有し、これにより、メトトレキセート選択/増幅を用いてベクターが遺伝子移入されているCHO細胞の選択が可能になる。抗体重鎖及び軽鎖の発現を可能にするために、選択された形質転換宿主細胞を培養し、無傷の抗体を培地から回収する。組み換え発現ベクターを調製し、宿主細胞に遺伝子移入し、形質転換体について選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収するために、標準的分子生物学技術を使用する。またさらに、本発明は、本発明の組み換え抗体が合成されるまで、適切な培地中で本発明の宿主細胞を培養することにより、本発明の組み換え抗体を合成する方法を提供する。この方法はさらに、培地から組み換え抗体を単離することを含む。
【0183】
4.1 抗RGM A抗体
表5は、本発明の好ましい抗hRGM A抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列のリストである。
【0184】
【表8】
【0185】
先述の単離抗RGM A抗体CDR配列は、本発明に従い単離される、CDR配列を含むポリペプチドを含む、RGM A結合タンパク質の新規ファミリーを確立する。好ましいRGM A結合を有し及び/又はhRGM Aに関して活性を中和する本発明のCDRを作製し、選択するために、以下に限定されないが、本明細書中に具体的に記載されるものを含む、本発明の結合タンパク質を作製し、RGM A結合及び/又はこれらの結合タンパク質の特性の中和を評価するための、当技術分野で公知の標準的方法を使用することができる。
【0186】
4.2 抗RGM Aキメラ抗体
キメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体由来の可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体など、抗体の領域によって由来する動物種が異なる分子である。キメラ抗体を作製するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、Morrison、Science 229:1202(1985);Oiら、BioTechniques 4:214(1986);Gilliesら(1989)J.Immunol.Methods 125:191-202;米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;及び4,816,397号(これらはそれらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる。)を参照。さらに、適切な生物活性のヒト抗体分子からの遺伝子とともに適切な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子をスプライシングすることによる、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrisonら、1984、Proc.Natl.Acad.Sci.81:851-855;Neubergerら、1984、Nature 312:604-608;Takedaら、1985、Nature 314:452-454(これらはそれらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる。)を使用することができる。
【0187】
ある実施形態において、本発明のキメラ抗体は、本明細書中に記載されるマウスモノクローナル抗ヒトRGM A抗体の重鎖定常領域をヒトIgG1定常領域で置換することにより、作製される。
【0188】
4.3 抗RGM A CDRグラフト抗体
本発明のCDRグラフト抗体は、V及び/又はVのCDR領域の1以上が、例えば本発明のマウス抗体などの非ヒトのCDR配列で置換される、ヒト抗体からの重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む。何らかのヒト抗体からのフレームワーク配列は、CDRグラフトのための鋳型となり得る。しかし、このようなフレームワーク上への直鎖置換により、抗原に対する結合親和性をある程度喪失することが多い。ヒト抗体が元のマウス抗体に対して相同であるほど、マウスCDRをヒトフレームワークと組み合わせることにより、親和性を低下させ得るCDRでのゆがみの導入の可能性は低くなる。従って、CDRを除いたマウス可変フレームワークを置換するために選択されるヒト可変フレームワークは、マウス抗体可変領域フレームワークと少なくとも65%配列同一性があることが好ましい。より好ましくは、CDRを除いたヒト及びマウス可変領域は少なくとも70%の配列同一性を有する。さらにより好ましくは、CDRを除いたヒト及びマウス可変領域は少なくとも75%の配列同一性を有する。最も好ましくは、CDRを除いたヒト及びマウス可変領域は少なくとも80%の配列同一性を有する。CDRグラフト抗体を作製するための方法は当技術分野で公知である(Jonesら、Nature 321:522-525(1986);米国特許第5,225,539号)。具体的な実施形態において、本発明は、表6に記載のようなV及び/又はV鎖を有するCDRグラフト抗体を提供する。
【0189】
【表9】
【0190】
4.4 抗RGM Aヒト化抗体
ヒト化抗体は、非ヒト種からの1以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する所望の抗原に結合する非ヒト種抗体由来の抗体分子である。既知のヒトIg配列は、例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez-/query.fcgi;www.atcc.org/phage/hdb.html;www.sciquest.com/;www.abcam.com/;www.antibodyresource.com/onlinecomp.html;www.public.iastate.edu/.about.pedro/research_tools.html;www.megn.uni-heidelberg.de/SD/IT/IT.html;www.whfreeman.com/immunology/CH-05/kuby05.htm;www.library.thinkquest.org/12429/Immune/antibody.html;www.hhmi.org/grants/lectures/1996/vlab/;www.path.cam.ac.uk/.about.mrc7/m-ikeimages.html;www.antibodyresource.com/;mcb.harvard.edu/BioLinks/Immunology.html.www.immunologylink.com/;pathbox.wustl.edu/.about.hcenter/index.-html;www.biotech.ufl.edu/.about.hcl/;www.pebio.com/pa/340913/340913.html-;www.nal.usda.gov/awic/pubs/antibody/;www.m.ehime-u.acjp/.about.yasuhito-/Elisa.html;www.biodesign.com/table.asp;www.icnet.uk/axp/facs/davies/lin-ks.html;www.biotech.ufl.edu/.about.fccl/protocol.html;www.isac-net.org/sites_geo.html;Aximtl.imt.uni-marburg.de/.about.rek/AEP-Start.html;baserv.uci.kun.nl/.about.jraats/linksl.html;www.recab.uni-hd.de/immuno.bme.nwu.edu/;www.mrc-cpe.cam.ac.uk/imt-doc/pu-blic/INTRO.html;www.ibt.unam.mx/vir/V_mice.html;imgt.cnusc.fr:8104/;www.biochem.ucl.ac.uk/.about.martin/abs/index.html;antibody.bath.ac.uk/;abgen.cvm.tamu.edu/lab/wwwabgen.html;www.unizh.ch/.about.honegger/AHOseminar/Slide01.html;www.cryst.bbk.ac.uk/.about.ubcg07s/;www.nimr.mrc.ac.uk/CC/ccaewg/ccaewg.htm;www.path.cam.ac.uk/.about.mrc7/h-umanisation/TAHHP.html;www.ibt.unam.mx/vir/structure/stat_aim.html;www.biosci.missouri.edu/smithgp/index.html;www.cryst.bioc.cam.ac.uk/.about.fmolina/Web-pages/Pept/spottech.html;www.jerini.de/fr roducts.htm;www.patents.ibm.com/ibm.html.Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S.Dept.Health(1983)(それぞれ全体的に参照により本明細書中に組み込まれる。)で開示される。免疫原性を低下させるか又は、当技術分野で公知のような、結合、親和性、会合速度、解離速度、結合力、特異性、半減期又は何らかのその他の適切な特性を低下、促進又は変化させるために、このようなインポート(取り込まれる)配列を使用することができる。
【0191】
ヒトフレームワーク領域におけるフレームワーク残基は、抗原結合を変化させる、好ましくは向上させるために、CDRドナー抗体からの対応する残基で置換され得る。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法により、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDR及びフレームワーク残基の相互作用のモデリング及び抗原結合及び特定の位置での通常はないフレームワーク残基を同定するための配列比較によって、同定される。(例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号;Riechmannら、Nature 332:323(1988)(これらは、それらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる。)参照)。三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元立体配座構造を示し、提示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの提示の検討により、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割の分析、即ち、候補免疫グロブリンのその抗原への結合能に影響を与える残基の分析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する親和性向上などの所望の抗体特性が達成されるように、FR残基を選択し、コンセンサス及びインポート配列から組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、直接的に及び最も実質的に、抗原結合に影響を与えることに関与する。抗体は、以下に限定されないが、Jonesら、Nature 321:522(1986);Verhoeyenら、Science 239:1534(1988))、Simsら、J.Immunol.151:2296(1993);Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.196:901(1987)、Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992);Prestaら、J.Immunol.151:2623(1993)、Padlan、Molecular Immunology 28(4/5):489-498(1991);Studnickaら、Protein Engineering 7(6):805-814(1994);Roguskaら、PNAS 91:969-973(1994);PCT公開WO91/09967、PCT/:US98/16280、US96/18978、US91/09630、US91/05939、US94/01234、GB89/01334、GB91/01134、GB92/01755;WO90/14443、WO90/14424、WO90/14430、EP229,246、EP592,106;EP519,596、EP239,400、米国特許第5,565,332号、同第5,723,323号、同第5,976,862号、同第5,824,514号、同第5,817,483号、同第5,814,476号、同第5,763,192号、同第5,723,323号、同第5,766,886号、同第5,714,352号、同第6,204,023号、同第6,180,370号、同第5,693,762号、同第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,225,539号;同第4,816,567号(それぞれ、全体的に、そこで引用される参考文献を含め、参照により本明細書中に組み込まれる。)に記載のものなど、当技術分野で公知の様々な技術を用いて、ヒト化され得る。
【0192】
5.本発明の抗体のさらなる実施形態
5.1 融合抗体及び免疫接着
本願はまた、別のポリペプチドに連結された本願のRGM A抗体の全て又は一部を含むように作製され得る融合抗体又は免疫接着も記載する。ある実施形態において、RGM A抗体の可変領域のみがポリペプチドに連結される。その他の実施形態において、本願のRGM A抗体のVHドメインは第一のポリペプチドに連結され、一方、この抗体のVLドメインは、VH及びVLドメインが互いに相互作用して抗体結合部位を形成できるように、第一のポリペプチドに結合する第二のポリペプチドに連結される。その他の実施形態において、VHドメインは、VH及びVLドメインが互いに相互作用できるようにするリンカーによってVLドメインから分離される(下記1本鎖抗体参照)。次に、VH-リンカー-VL抗体を関心のあるポリペプチドと連結する。この融合抗体は、RGM Aを発現する細胞又は組織にポリペプチドを導くために有用である。関心のあるポリペプチドは、毒素などの治療薬であり得るか、又は、ホースラディッシュペルオキシダーゼなど、容易に視覚化され得る酵素などの診断薬であり得る。さらに、融合抗体は、2つ(以上)の1本鎖抗体が互いに連結されるように作製され得る。これは、1つのポリペプチド鎖上で二価又は多価抗体を作製したい場合に又は二特異性抗体を作製したい場合に、有用である。
【0193】
ある実施形態は、本願の抗体又は抗体部分が誘導体化されるか又は別の機能分子(例えば別のペプチド又はタンパク質)に連結される、標識された結合タンパク質を提供する。例えば、別の分子(ストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグなど)との抗体又は抗体部分の会合を媒介することができる、1以上のその他の分子部分へ、例えば、核酸、別の抗体(例えば、二特異的抗体又はダイアボディ)、検出可能試薬、細胞毒性剤、医薬品及び/又はタンパク質又はペプチドへ、本願の抗体又は抗体部分を機能的に連結することにより(化学カップリング、遺伝子融合、非共有結合又はその他により)、本願の標識された結合タンパク質を誘導体化することができる。
【0194】
本願の抗体又は抗体部分が誘導体化され得る有用な検出可能試薬には、蛍光化合物が含まれる。代表的な蛍光性の検出可能試薬には、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリンなどが含まれる。抗体はまた、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出可能な酵素でも誘導体化され得る。抗体が検出可能な酵素で誘導体化される場合、検出可能な反応産物を生成させるために酵素が使用するさらなる試薬を添加することによりこれが検出される。例えば、検出可能試薬ホースラディッシュペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素及びジアミノベンジジンの添加により、検出可能である有色の反応産物が生じる。核酸、ビオチンで抗体を誘導体化し、アビジン又はストレプトアビジン結合の間接的測定を通じて検出することもできる。
【0195】
5.2 1本鎖抗体
本願は、本発明の免疫原性RGM Aに結合する1本鎖抗体(scFv)を含む。scFvを作製するために、VH-及びVをコードするDNAは、VL及びVH領域がフレキシブルリンカーにより連結された連続した1本鎖タンパク質としてVH及びVL配列が発現され得るように、フレキシブルリンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly-4-Ser)をコードするDNAに操作可能に連結される(例えば、Birdら(1988)Science 242:423-426;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;McCaffertyら、30 Nature(1990)34 8:552-554参照)。1本鎖抗体は、1つのVH及びVLのみが使用される場合、一価であり得、2つのVH及びVLが使用される場合、二価であり、又は3以上のVH及びVLが使用される場合、多価である。リンカーを介して連結されるこれらのscFv断片のうち2つは、「ダイアボディ」と呼ばれ、この形態もまた本発明により包含される。
【0196】
5.3 二特異性抗体
本願は、1つの特異性が本願の免疫原性RGM Aポリペプチドに対するものである、二特異性抗体又はその抗原結合断片をさらに含む。例えば、1つの結合ドメインを通じて本発明の免疫原性RGM Aポリペプチドに及び第二の結合ドメインを通じて第二の分子に特異的に結合する二特異性抗体が作製され得る。さらに、本発明の免疫原性ポリペプチドへ及びミエリン介在性の成長円錐崩壊を減弱させること及び神経突起伸長及び発芽の阻害に関与する別の分子へ特異的に結合する、複数のVH及びVLを含有する1本鎖抗体が作製され得る。このような二特異性抗体は、例えば、Fangerら、Immuno Methods 4:72-81(1994)及びWright及びHarris、20(上出)など、周知の技術を用いて作製され得る。
【0197】
ある実施形態において、二特異性抗体は、本発明の抗体由来の可変領域の1以上を用いて調製される。別の実施形態において、二特異性抗体は、前記の抗体からの1以上のCDR領域を用いて調製される。
【0198】
5.4 誘導体化及び標識化抗体
本願の抗体又は抗原結合断片は、誘導体化されるか又は別の分子(例えば別のペプチド又はタンパク質)に連結される。一般に、本抗体又は抗原結合断片は、本発明の免疫原性ポリペプチドへの結合が誘導体化又は標識により有害な影響を受けないように誘導体化される。
【0199】
例えば、1以上のその他の分子部分へ、例えば、別の分子(例えばストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグなど)との抗体又は抗体結合断片の会合を媒介することができる、別の抗体(例えば、二特異的抗体又はダイアボディ)、検出試薬、細胞毒性薬、医薬品及び/又はタンパク質又はペプチドへ、本願の抗体又は抗体部分を(化学カップリング、遺伝子融合、非共有結合又はその他により)機能的に連結することができる。またさらに、本抗体又はその抗原結合部分は、1以上のその他のもしくは異なるタンパク質又はペプチドと本抗体又は抗体部分の共有又は非共有結合により形成されるより大きな免疫接着分子の一部であり得る。このような免疫接着分子の例には、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanovら(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)及び二価及びビオチン化scFv分子を作製するための、システイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanovら(1994)Molecular Immunology 31:1047-1058)が含まれる。全抗体のそれぞれパパイン又はペプシン消化などの従来技術を用いて、全抗体から、Fab及びF(ab’)断片などの抗体の一部を調製することができる。さらに、標準的組み換えDNA技術を用いて、抗体、抗体部分及び免疫接着分子を得ることができる。
【0200】
誘導体化抗体は、(同じタイプの、又は例えば二特異性抗体を作製するために、異なるタイプの)2以上の抗体を架橋することにより作製され得る。適切な架橋剤には、適切なスペーサーにより分離される2つの異なる反応性がある基を有するヘテロ二官能性であるもの(例えばm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシニミドエステル)又はホモ官能性(例えばスベリン酸ジスクシニミジル)が含まれる。このようなリンカーは、Pierce Chemical Company、Rockford、Illから入手可能である。
【0201】
誘導体化抗体はまた標識化抗体でもあり得る。例えば、本発明の抗体又は抗体部分が誘導体化され得る検出試薬は、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリン、ランタニド蛍光体などを含む蛍光化合物である。抗体はまた、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出に有用である酵素でも標識され得る。検出可能な酵素で標識される実施形態において、本抗体は、検出可能な反応産物を生成させるために酵素が使用するさらなる試薬を添加することにより検出される。例えば、過酸化水素及びジアミノベンジジンとホースラディッシュペルオキシダーゼなど。抗体は、ビオチンで標識し、アビジン又はストレプトアビジン結合の間接的測定を通じて検出することもできる。抗体は、二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープで標識することもできる(例えばロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープ:タグ)。RGM A抗体又はその抗原断片はまた、放射性標識アミノ酸で標識することもできる。この放射性標識は、診断及び治療目的の両方に対して使用することができる。放射性標識RGM A抗体は、診断的に、例えば対象でのRGM A受容体レベルを決定するために使用され得る。さらに、放射性標識RGM A抗体は、脊髄損傷を治療するために治療的に使用され得る。
【0202】
ポリペプチドに対する標識の例には、以下に限定されないが、次の放射性同位体又は放射性ヌクレオチド、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、153Smが含まれる。RGM A抗体又はその抗原断片はまた、ポリエチレングリコール(PEG)、メチルもしくはエチル基又は炭水化物基などの化学基によって誘導体化することもできる。これらの基は、抗体の生物学的特性を向上させるために、例えば、血清半減期を延長させるために又は組織結合を増加させるために、有用であり得る。また、ポリペプチドに対する標識には、核酸、例えばPCRによる検出又は遺伝子発現の促進のためのDNA又はRGM Aを有する細胞又は、組織での遺伝子発現を抑制するためのsiRNAが含まれ得る。
【0203】
RGM A抗体のクラス及びサブクラスは、当技術分野で公知の何らかの方法により決定され得る。一般に、抗体のクラス及びサブクラスは、抗体の特定のクラス及びサブクラスに対して特異的である抗体を用いて決定され得る。このような抗体は市販されている。クラス及びサブクラスは、ELISA、ウエスタンブロットならびにその他の技術により決定され得る。あるいは、クラス及びサブクラスは、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の定常ドメインの全て又は一部の配列決定を行い、それらのアミノ酸配列を免疫グロブリンの様々なクラス及びサブクラスの既知のアミノ酸配列と比較し、抗体のクラス及びサブクラスを決定することにより、決定され得る。
【0204】
5.5 二重可変ドメイン免疫グロブリン
二重可変ドメイン(DVD)結合タンパク質又は免疫グロブリンは、本明細書中で使用される場合、2以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質であり、例えば2価及び4価など、多価結合タンパク質である。「多価結合タンパク質」という用語は、2以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質を示すために本願で使用される。多価結合タンパク質は、好ましくは、2以上の抗原結合部位を有するように改変され、通常は天然抗体ではない。「多特異的結合タンパク質」という用語は、2以上の関連又は非関連標的に結合可能な結合タンパク質を指す。このようなDVDは、単一特異的、即ち1つの抗原に結合可能であるか、又は多特異的、即ち2以上の抗原に結合可能である。2つの重鎖DVDポリペプチド及び2つの軽鎖DVDポリペプチドを含むDVD結合タンパク質は、DVD Igを指す。DVD Igの各半分は、重鎖DVDポリペプチド及び軽鎖DVDポリペプチド及び2つの抗原結合部位を含む。各結合部位は、抗原結合部位ごとに抗原結合に関与する全部で6つのCDRがある重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。DVD結合タンパク質及びDVD結合タンパク質を作製する方法は、米国特許出願11/507,050で開示されている(参照により本明細書中に組み込まれる。)。本発明は、RGM Aに結合可能な結合タンパク質を含むDVD結合タンパク質を含むものとする。好ましくは、DVD結合タンパク質は、RGM A及び第二の標的に結合可能である。第二の標的は、抗炎症性MAB活性(IL-1、IL-6、IL-8、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、IL-23、TNFα/β、IFN-β、γ、LIF、OSM、CNTF、PF-4、血小板塩基性タンパク質(Platelet basic protein、PBP)、NAP-2、β-TG、MIP-1、MCP2/3、RANTES、リンホタクチン)から、輸送介在タンパク質(インスリン受容体、トランスフェリン受容体、トロンビン受容体、レプチン受容体、LDL受容体)から、その他の神経再生MAB(NgR、Lingo、p75、CSPG(例えばNG-2、ニューロカン、ブレビカン、バーシカン、アグリカン)ヒアルロン酸、mAG、テナシン、NI-35、NI-250、IMP、パールカン、ニューロカン、ホスファカン、nogo-A、OMGP、Sema4D、Sema3A、エフリンB3、エフリンA2、エフリンA5、MAG、EphA4、プレキシンB1、TROY、wnts、ryk rec.、BMP-2、BMP-4、BMP-7)から、神経保護性MAB活性(EGF、EGFR、Sema3)から、抗アミロイドβMAB(例えば、m266、3D6(バピネオズマブ)、抗球状体MAB 7C6)から、CNS局在受容体及び輸送体(セロトニン受容体、ドーパミン受容体、DAT、Asc-1、GlyT1)からなる群から選択される。
【0205】
5.6 二重特異的抗体
本願はまた、「二重特異性抗体」技術も記載する。二重特異性抗体は、アゴニスト、アンタゴニスト又は、様々な組み合わせでのその両方、として作用し得る。二重特異性抗体は、WO2008082651で例示されるように、VH鎖が第一の抗原に結合し、VL鎖が別の抗原に結合する抗体である。
【0206】
5.7 結晶化抗体
本願の別の実施形態は、結晶化結合タンパク質を提供する。「結晶化」という用語は、本明細書中で使用される場合、結晶の形態で存在する、抗体又はその抗原結合部分を指す。結晶は物質の固体状態の一形態であり、非晶質固体状態又は液晶状態などのその他の形態とは異なる。結晶は、原子、イオン、分子(例えば抗体などのタンパク質)又は分子集合体(例えば抗原/抗体複合体)の、規則的な反復三次元配列から構成される。これらの三次元配列は、当技術分野においてよく理解されている特異的な数学的関係に従って配列される。結晶中で反復される基礎的単位又は構築ブロックは非対称単位と呼ばれる。所定の十分に整えられた結晶学的対称性に合致する配置での非対称単位の反復により、結晶の「単位格子」がもたらされる。全ての三次元中での規則的な並進による単位格子の反復により結晶がもたらされる。Giege、R.及びDucruix、A.Barrett、Crystallization of Nucleic Acids and Proteins、a Practical Approach、第2版、pp.20 1-16、Oxford University Press、New York、New York(1999)を参照。
【0207】
好ましくは、本願は、本明細書中で開示されるような全RGM A抗体及びその断片の結晶及び、このような結晶を含む製剤及び組成物を記載する。ある実施形態において、結晶化結合タンパク質は、結合タンパク質の可溶性形態よりもインビボでの半減期が長い。別の実施形態において、本結合タンパク質は、結晶化後、生物活性を保持する。
【0208】
本発明の結晶化結合タンパク質は、当技術分野で公知の方法に従い、及び参照により本明細書中に組み込まれる国際出願公開WO02/072636で開示されるように、作製され得る。
【0209】
5.8 グリコシル化抗体
本発明の別の実施形態は、抗体又はその抗原結合部分が1以上の炭水化物残基を含むグリコシル化結合タンパク質を提供する。新生インビボタンパク質産生は、翻訳後修飾として知られるさらなるプロセシングを受け得る。特に、糖(グリコシル)残基が酵素により添加され得るが、これは、グリコシル化として知られるプロセスである。結果として得られる、オリゴ糖側鎖が共有結合されているタンパク質は、グリコシル化タンパク質又は糖タンパク質として知られる。抗体は、Fcドメインならびに可変ドメインにおいて1以上の炭水化物残基を有する糖タンパク質である。Fcドメインの炭水化物残基は、Fcドメインのエフェクター機能に重要な影響を及ぼし、抗体の抗原結合又は半減期における影響は極僅かである(R.Jefferis、Biotechnol.Prog.21(2005)、pp.11-16)。一方、可変ドメインでのグリコシル化は、抗体の抗原結合活性に影響を及ぼし得る。可変でのグリコシル化は、おそらく立体障害のために、抗体結合親和性に負の影響を及ぼし得るか(Co、M.S.ら、Mol.Immunol.(1993)30:1361-1367)、又は結果として、抗原に対する親和性を向上させ得る(Wallick、S.C.ら、Exp.Med.(1988)168:1099-1109;Wright、A.ら、EMBO J.(1991)10:2717-2723)。
【0210】
本発明のある態様は、結合タンパク質のO-又はN-結合グリコシル化部位が突然変異を受けているグリコシル化部位突然変異体を作製することに関する。当業者は、標準的な周知の技術を用いて、このような突然変異体を作製することができる。生物活性を保持するが結合活性が向上又は低下したグリコシル化部位突然変異体は、本発明の別の目的である。
【0211】
さらに別の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合部分のグリコシル化が修飾される。例えば、非グリコシル化抗体を作製することができる(即ちこの抗体はグリコシル化を欠く。)。例えば抗原に対する抗体の親和性を向上させるために、グリコシル化を変化させることができる。例えば抗体配列内のグリコシル化の1以上の部位を変化させることにより、このような糖修飾を行うことができる。例えば、結果として1以上の可変領域グリコシル化部位が除去され、それによりその部位のグリコシル化が除去される、1以上のアミノ酸置換を行うことができる。このような非グリコシル化により、抗原に対する抗体の親和性を向上させ得る。このようなアプローチは、PCT公開WO2003016466A2及び米国特許第5,714,350号及び同第6,350,861号(これらのそれぞれが、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる。)でさらに詳しく記載されている。
【0212】
さらに又はあるいは、フコシル残基の量が低下した低フコシル化抗体又は分岐GlcNAc構造が増加した抗体など、グリコシル化のタイプが変化している本発明の修飾抗体を作製することができる。このような改変グリコシル化パターンにより、抗体のADCC能が向上することが明らかになっている。例えば、グリコシル化機構が変化した宿主細胞において抗体を発現させることにより、このような糖修飾を行うことができる。グリコシル化機構が変化した細胞は、当技術分野で記載されており、本発明の組み換え抗体を発現させ、それによりグリコシル化が変化した抗体を産生させるために、宿主細胞として使用することができる。例えば、Shields、R.L.ら(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740;Umanaら(1999)Nat.Biotech.17:176-1ならびに欧州特許第EP1,176,195号;PCT公開WO03/035835号及びWO99/5434280号(これらのそれぞれは、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる。)を参照。
【0213】
タンパク質グリコシル化は、関心のあるタンパク質のアミノ酸配列ならびにそのタンパク質が発現される宿主細胞に依存する。生物によってグリコシル化酵素が異なり得(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼ)、利用可能な基質が異なり得る(ヌクレオチド糖)。このような因子のために、タンパク質グリコシル化パターン及びグリコシル残基の組成は、特定のタンパク質が発現される宿主系によって異なり得る。本発明において有用なグリコシル残基には、以下に限定されないが、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、n-アセチルグルコサミン及びシアル酸が含まれ得る。好ましくはグリコシル化結合タンパク質は、グリコシル化パターンがヒトであるようにグリコシル残基を含む。
【0214】
様々なタンパク質グリコシル化の結果、タンパク質の特徴が異なり得ることは当業者にとって公知である。例えば、酵母などの微生物宿主で産生され、酵母内在性経路を使用してグリコシル化される治療用タンパク質の効率は、CHO細胞株などの哺乳動物細胞中で発現される同じタンパク質の効率と比較して低下している可能性がある。このような糖タンパク質はまた、ヒトにおいて免疫原性があり得、投与後のインビボでの半減期が短い可能性がある。ヒト及びその他の動物における特異的受容体は、特異的グリコシル残基を認識し、血流からのタンパク質の急速なクリアランスを促進し得る。その他の有害な影響には、タンパク質折り畳み、溶解性、プロテアーゼに対する感受性、トラフィッキング、輸送、区画化、分泌、その他のタンパク質もしくは因子による認識、抗原性又はアレルギー誘発性の変化が含まれ得る。従って、実施者は、グリコシル化の特異的組成及びパターン、例えば、ヒト細胞又は意図される対象動物の種特異的細胞において産生されるものと同一であるか又は少なくとも類似のグリコシル化組成及びパターンを有する治療用タンパク質を好み得る。
【0215】
宿主細胞のものとは異なるグリコシル化タンパク質の発現は、異種グリコシル化酵素を発現させるために宿主細胞を遺伝子改変することにより達成され得る。当技術分野で公知の技術を用いて、実施者は、ヒトタンパク質グリコシル化を示す抗体又はその抗原結合部分を作製し得る。例えば、酵母株は、これらの酵母株において産生されるグリコシル化タンパク質(糖タンパク質)が動物細胞、特にヒト細胞のものと同一のタンパク質グリコシル化を示すように非天然のグリコシル化酵素を発現させるために遺伝子改変されている(米国特許出願公開20040018590及び20020137134及びPCT公開WO2005/100584A2)。
【0216】
さらに、当業者にとって当然のことながら、ライブラリのメンバー宿主細胞が変異型グリコシル化パターンを有する関心のあるタンパク質を産生するように、様々なグリコシル化酵素を発現させるために遺伝子操作された宿主細胞のライブラリを用いて、関心のあるタンパク質を発現させ得る。次に、実行者は、特定の新規グリコシル化パターンを有する関心のあるタンパク質を選択し、単離し得る。好ましくは、特に選択された新規グリコシル化パターンを有するタンパク質は、生物学的特性の向上又は変化を示す。
【0217】
5.9 抗イディオタイプ抗体
結合タンパク質に加えて、本発明はまた、本発明のこのような結合タンパク質に対して特異的な抗イディオタイプ(抗-Id)抗体にも関する。抗Id抗体は、一般に別の抗体の抗原結合領域と会合するユニークな決定基を認識する抗体である。抗Idは、結合タンパク質又はそのCDR含有領域を用いて動物に免疫付与することにより調製することができる。免疫付与動物は、免疫付与抗体のイディオタイプ決定基を認識し、それに対して反応し、抗Id抗体を産生する。抗Id抗体はまた、また別の動物において免疫反応を誘導するために、「免疫原」としても使用され得、その動物はいわゆる抗-抗Id抗体を産生する。
【0218】
6.本抗体の使用
ヒトRGM Aに結合するそれらの能力を考えると、酵素免疫測定吸着法アッセイ(ELISA)、放射性免疫アッセイ(RIA)又は組織免疫組織化学などの従来の免疫アッセイを用いて、(例えば、血清又は血漿などの生体試料中で)ヒトRGM Aを検出するために、本願の中和抗体又はその一部を使用することができる。本願は、本発明の抗体又は抗体部分と生体試料を接触させ、ヒトRGM Aに結合する抗体(又は抗体部分)又は未結合抗体(又は抗体部分)の何れかを検出し、それにより生体試料中のヒトRGM Aを検出することを含む、生体試料中のヒトRGM Aを検出するための方法を提供する。本抗体は、結合又は未結合抗体の検出を促進するために検出可能物質で直接又は間接的に標識される。適切な検出可能物質には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質及び放射性物質が含まれる。適切な酵素の例には、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ;適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが含まれ;適切な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリスリンが含まれ;発光物質の例にはルミノールが含まれ;適切な放射性物質の例には、H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、153Smが含まれる。
【0219】
本願の抗体及び抗体部分は、好ましくは、インビトロ及びインビボの両方でヒトRGM A活性を中和することができる。従って、本発明のこのような抗体及び抗体部分は、その受容体ネオゲニンへの、BMP-2及び又はBMP-4への、RGM A結合を阻害し、従って、結果として生じる活性を阻害するために使用され得る。
【0220】
別の実施形態において、本願は、対象において、有利には、RGM Aの結果として生じる活性が有害である疾病又は疾患に罹患する対象から、RMG A活性を低下させるための方法を提供する。本願は、本願のモノクローナル抗体の使用を通じて、ネオゲニン及び/又はBMP-2及び/又はBMP-4へのRGM A結合を阻止することによって、このような疾病又は疾患に罹患している対象においてRMG A活性を低下させるための方法を提供する。治療目的で、本願の抗体、特に本明細書中で開示されるヒト化抗体をヒト対象に投与することができる。さらに、獣医学の目的で、又はヒト疾患の動物モデルとして、抗体が結合し得るRGM Aを発現する非ヒト哺乳動物に本願の抗体を投与することができる。後者に関して、このような動物モデルは、本発明の抗体の治療効率を評価するために有用であり得る(例えば、投与量及び投与のタイムコースの試験)。本明細書中で使用される場合、「RGM A活性が有害である疾患」という用語は、疾患に罹患している対象におけるRGM Aの存在又はその結果として生じる活性が、その疾患の病態生理に関与する因子又はその疾患の悪化に寄与する因子の何れかであることが示されているか又は予想される、疾病及びその他の疾患を含むものとする。従って、RGM A活性が有害である疾患は、RGM A活性の低下が疾患の症候及び/又は進行を緩和すると予想される疾患である。本発明の抗体で治療され得る疾患の非限定例には、本発明の抗体の医薬組成物に関係する下記セクションで考察される疾患が含まれる。
【0221】
神経変性又は神経再生プロセスの阻害(その結果、麻痺が起こる。)が付随する神経性疾患を含む様々な疾患に関連する病理において、RGM Aが重要な役割を果たすことが認識されている。これには、認知症、老年性認知症、軽度認知機能障害、アルツハイマー関連認知症、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、運動亢進、そう病、パーキンソン病、スティール-リチャード症候群、ダウン症、重症筋無力症、神経外傷、血管アミロイド症、アミロイド症を伴う大脳出血I、脳炎、フリードライヒ失調症、急性混乱障害、緑内障、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、上腕神経叢損傷、脳損傷(外傷性脳損傷を含む。)、脳性麻痺、ギランバレー、大脳白質萎縮症、多発性硬化症、ポリオ後症候群、二分脊椎、脊髄損傷、脊髄性筋萎縮症、脊椎腫瘍、卒中、横断性脊髄炎が含まれる。
【0222】
また、既に考察したように、上述のパートナーの何れか1つの間のDVD免疫グロブリン又は二重特異性抗体が有用であり得る。上述のようなこのような抗体製剤は、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄損傷、外傷性脳損傷、多発性硬化症、末梢神経損傷、統合失調症、うつ、不安ならびに何らかの可塑性及び神経突起成長及び上記で引用した神経毒性関連疾患の治療に対して有用であり得る。
【0223】
本願の抗体はまた、細胞内標的タンパク質を標的とすることを含むために膜を横断する移動を可能にするペプチドとも組み合わせられ得る。このようなペプチド配列には、以下に限定されないが、tat、アンテナペディア、ポリ-アルギニン、一部の抗菌ペプチドが含まれ得る。このようなペプチドは、細胞原形質膜、また上皮及び内皮膜(血管脳関門、腸粘膜、髄膜などを含む。)をも含む、膜を通じた移動を可能にし得る。
【0224】
本願の抗体又は抗体部分はまた、先行する段落で考察されるようなRGM A活性が関与する疾患の治療に有用な1以上のさらなる小分子治療薬とともに投与することもできる。本願の抗体又はその抗原結合部分を単独で又はさらなる作用物質、例えば治療薬と組み合わせて使用することができ、このさらなる作用物質は、その意図する目的に対して熟練者により選択されることを理解されたい。例えば、さらなる作用物質は、本発明の抗体により治療される疾病又は状態を治療するのに有用であると当技術分野で認識されている治療薬であり得る。さらなる作用物質はまた、治療用組成物に対して有益な性質を与える作用物質、例えば組成物の粘度に影響を与える作用物質でもあり得る。
【0225】
7.医薬組成物
本発明はまた、本発明の抗体又はその抗原結合部分及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物も提供する。本発明の抗体を含む医薬組成物は、以下に限定されないが、疾患の診断、検出又は監視における、疾患又はその1以上の症候の予防、治療、管理又は改善における、及び/又は研究における、使用のためのものである。具体的な実施形態において、組成物は1以上の本発明の抗体を含む。別の実施形態において、本医薬組成物は、1以上の本発明の抗体と、RGM A活性が有害である疾患を治療するための本発明の抗体以外の1以上の予防薬又は治療薬と、を含む。好ましくは、疾患又はその1以上の症候の予防、治療、管理又は改善に有用であることが知られているか又はそれにおいて使用されてきたか又は現在使用されている予防薬又は治療薬である。これらの実施形態によると、本組成物は、担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含み得る。
【0226】
本発明の抗体及び抗体部分は、対象への投与に適切な医薬組成物に組み込まれ得る。通常、本医薬組成物は、本発明の抗体又は抗体部分及び医薬的に許容可能な担体を含む。本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容可能な担体」には、生理学的に適合性である、何らかの及び全ての、溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。医薬的に許容可能な担体の例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにこれらの組合せの1以上が含まれる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトールなど又は塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。医薬的に許容可能な担体には、抗体又は抗体部分の貯蔵期間又は有効性を高める、湿潤剤又は乳化剤、保存料又は緩衝剤などの補助物質の少量がさらに含まれ得る。
【0227】
1以上の本発明の抗体又は本発明の1以上の抗体の組み合わせ及び、疾患又はその1以上の症候の予防、管理、治療又は改善に有用な予防薬又は治療薬を投与するために、様々な送達系が知られており、使用することができる(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル中での封入、抗体又は抗体断片を発現可能な組み換え細胞、受容体介在エンドサイトーシス(例えば、Wu及びWu、J.Biol.Chem.262:4429-4432(1987)参照)、レトロウイルス又はその他のベクターなどの一部としての核酸の構築物など)。本発明の予防薬又は治療薬を投与する方法には、以下に限定されないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下)、硬膜外投与、腫瘍内投与及び粘膜投与(例えば、鼻内及び口腔経路)が含まれる。さらに、例えば、吸入器又はネブライザーの使用及びエアロゾル化剤を用いた処方により、肺内投与を使用し得る。例えば、米国特許第6,019,968号、同第5,985,320号、同第5,985,309号、同第5,934,272号、同第5,874,064号、同第5,855,913号、同第5,290,540号及び同第4,880,078号;及びPCT公開WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346及びWO99/66903(これらのそれぞれは、それらの全体において、参照により本明細書中に組み込まれる。)を参照。ある実施形態において、Alkermes AIR(R)肺内薬物送達技術(Alkermes、Inc.、Cambridge、Mass.)を用いて、本発明の抗体、併用療法又は本発明の組成物を投与する。具体的な実施形態において、筋肉内、静脈内、腫瘍内、経口、鼻内、肺内又は皮下により本発明の予防薬又は治療薬を投与する。何らかの従来経路により、例えば、点滴又はボーラス注射により、上皮又は皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び小腸粘膜など)を通じた吸収により、予防薬又は治療薬を投与し得、その他の生物学的活性物質とともに投与し得る。投与は全身性又は局所性であり得る。
【0228】
具体的な実施形態において、治療の必要がある領域に局所的に本発明の予防薬又は治療薬を投与することは望ましいものであり得;これは、例えば、限定するものではないが、局所点滴により、注射により、又は移植手段により(この移植片は、膜及びマトリクスを含む多孔性又無孔性材料、例えば、サイラスティック膜、ポリマー、繊維状マトリクス(例えばTisseel(R))又はコラーゲンマトリクスなど、である。)、達成され得る。ある実施形態において、本発明の1以上の抗体の有効量アンタゴニストは、疾患又はその症候を予防、治療、管理及び/又は改善するために、対象の病変部に局所的に投与される。別の実施形態において、本発明の1以上の抗体の有効量は、疾患又は1以上のその症候を予防、治療、管理及び/又は改善するために、本発明の抗体以外の1以上の治療薬(例えば1以上の予防薬又は治療薬)の有効量と組み合わせて、病変部に局所的に投与される。
【0229】
別の実施形態において、制御放出又は持続放出系で予防薬又は治療薬を送達することができる。ある実施形態において、制御放出又は持続放出を行うためにポンプを使用し得る(Langer、前出;Sefton、1987、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:20;Buchwaldら、1980、Surgery 88:507;Saudekら、1989、N.Engl.J.Med.321:574参照)。別の実施形態において、本発明の治療薬の制御放出又は持続放出を行うためにポリマー性材料を使用することができる(例えば、Medical Applications of Controlled Release、Langer及びWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability、Drug Product Design and Performance、Smolen及びBall(編)、Wiley、New York(1984);Ranger及びPeppas、1983、J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61参照;また、Levyら、1985、Science 228:190;Duringら、1989、Ann.Neurol.25:351;Howardら、1989、J.Neurosurg.71:105);米国特許第5,679,377号;同第5,916,597号;同第5,912,015号;同第5,989,463号;同第5,128,326号;PCT公開WO99/15154;及びPCT公開WO99/20253も参照)。持続放出製剤で使用されるポリマーの例には、以下に限定されないが、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)コポリマー、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-グリコリド)コポリマー(PLGA)及びポリオルトエステルが含まれる。好ましい実施形態において、持続放出製剤で使用されるポリマーは、不活性で、溶出不純物不含であり、保管時に安定であり、滅菌されており、生体分解性である。さらに別の実施形態において、制御放出系又は持続放出系は、予防又は治療標的に近接して置かれ得、従って、必要とされるのは全身的用量のうち僅かである(例えば、Goodson、Medical Applications of Controlled Release、前出、vol.2、pp.115-138(1984)参照)。
【0230】
制御放出系は、Langer(1990、Science 249:1527-1533)により概説で考察されている。本発明の1以上の治療薬を含む持続放出製剤を調製するために、当業者にとって公知の何らかの技術を使用することができる。例えば、米国特許第4,526,938号、PCT公開WO91/05548、PCT公開WO96/20698、Ningら、1996、「Intratumoral Radioimmunotheraphy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained-Release Gel」、Radiotherapy & Oncology 39:179-189、Songら、1995、「Antibody Mediated Lung Targeting of Long-Circulating Emulsions」、PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397、Cleekら、1997、「Biodegradable polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application」、Pro.Int’l.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.24:853-854及びLamら、1997、「Microencapsulation of Recombinatnt Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery」、Pro.Int’l.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.24:759-760(これらのそれぞれは、それらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる。)参照。
【0231】
具体的な実施形態において、本発明の組成物が、予防薬又は治療薬をコードする核酸である場合、適切な核酸発現ベクターの一部としてそれを構築し、細胞内に入るようにそれを投与することによって、例えばレトロウイルスベクターの使用によって(米国特許第4,980,286号参照)又は直接注入によって又は微粒子衝突の使用によって(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)又は脂質もしくは細胞表面受容体もしくは遺伝子移入剤でのコーティングによって又は核に入ることが知られているホメオボックス様ペプチドに連結してそれを投与することによって(例えば、Joliotら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1864-1868参照)、そのコードされる予防薬又は治療薬の発現を促進するためにインビボで核酸が投与され得る。あるいは、核酸を細胞内に導入し、相同組み換えによる発現のために宿主細胞DNA内に組み込むことができる。
【0232】
本発明の医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように処方される。投与経路の例には、以下に限定されないが、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口、鼻内(例えば吸入)、経皮(例えば局所)、経粘膜及び直腸投与が含まれる。具体的な実施形態において、本組成物は、ヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻内又は局所投与に適している医薬組成物としての通常の手順に従い処方される。通常、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物は、可溶化剤及び局所麻酔薬(例えば、注射部位の疼痛を緩和するためのリドカインなど)も含み得る。
【0233】
本発明の組成物が局所投与されるべき場合、軟膏、クリーム、経皮パッチ、ローション、ジェル、シャンプー、スプレー、エアロゾル、溶液、エマルジョン又はその他の当業者にとって周知の形態で本組成物を処方することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第19版、Mack Pub.Co.、Easton、Pa.(1995)参照。噴霧用ではない局所投与形態の場合、局所塗布に適合し、好ましくは水よりも動的粘性が高い担体又は1以上の賦形剤を含む半固体状又は固体形態の粘度が通常は使用される。適切な製剤には、以下に限定されないが、溶液、懸濁液、エマルジョン、クリーム、軟膏、粉末、塗布薬、軟膏(salve)などが含まれ、必要に応じて、それらは滅菌されるか又は例えば浸透圧などの様々な特性に影響を与えるための補助物質(例えば、保存料、安定化剤、湿潤剤、緩衝剤又は塩)と混合される。その他の適切な局所投与形態には、好ましくは、固体又は液体不活性担体と組み合わせて、活性成分が加圧揮発剤(pressurized volatile)(例えばフレオンなどのガス噴射剤)との混合物中又は搾り出しボトル中に封入される、噴霧用エアロゾル製剤が含まれる。モイスチャライザー又は保湿剤も必要に応じて医薬組成物及び投与形態に添加され得る。このようなさらなる成分の例は当技術分野で周知である。
【0234】
本発明の方法が組成物の鼻内投与を含む場合、エアロゾル形態、スプレー、ミストで又は滴剤の形態で組成物を処方することができる。特に、本発明に従う使用のための予防薬又は治療薬は、都合よく、適切な推進薬(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又はその他の適切な気体)を使用して、加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達させ得る。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、定量を送達するための値を与えることにより決定され得る。吸入器(inhaler又はinsufflator)での使用のためのカプセル及びカートリッジ(例えばゼラチンからなる。)は、本化合物と、ラクトース又はデンプンなどの適切な粉末ベースとの粉末混合物を含有するように処方され得る。
【0235】
本発明の方法が経口投与を含む場合、錠剤、カプセル、カシェ剤、ジェルキャップ、溶液、懸濁液などの形態で組成物を経口用に処方することができる。結合剤(例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)などの医薬的に許容可能な賦形剤とともに従来の手段により錠剤又はカプセルを調製することができる。当技術分野で周知の方法により錠剤を被覆し得る。経口投与用の液体製剤は、以下に限定されないが、溶液、シロップ又は懸濁液の形態をとり得るか、又はそれらは、使用前に水又はその他の適切なビヒクルで構成するための乾燥品として与えられ得る。懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分別された植物油);及び保存料(例えば、メチル又はプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)などの医薬的に許容可能な添加物とともに、従来の手段により、このような液体製剤を調製し得る。本製剤はまた、必要に応じて、緩衝塩、香味料、色素及び甘味料も含有し得る。経口投与のための製剤は、予防薬又は治療薬の、徐放、制御放出又は持続放出のために適切に処方され得る。
【0236】
本発明の方法は、例えば、エアロゾル化剤とともに処方される組成物の吸入器又はネブライザーの使用による、肺内投与を含み得る。例えば、米国特許第6,019,968号、同第5,985,320号、同第5,985,309号、同第5,934,272号、同第5,874,064号、同第5,855,913号、同第5,290,540号及び同第4,880,078号;及びPCT公開WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346及びWO99/66903(これらのそれぞれは、それらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる。)参照。具体的な実施形態において、本発明の抗体、併用療法及び/又は本発明の組成物は、Alkermes AIR(R)肺内薬物送達技術(Alkermes、Inc.、Cambridge、Mass.)を用いて投与される。
【0237】
本発明の方法は、注射による(例えば、ボーラス注射又は連続点滴による)非経口投与のために処方される組成物の投与を含み得る。注射用の製剤は、保存料を添加された単位投与形態(例えば、アンプル又は複数回使用容器中)で与えられ得る。本組成物は、懸濁液、溶液又は油中エマルジョン又は水性ビヒクルなどの形態をとり得、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調剤に必要な薬剤(formulatory agent)も含有し得る。あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば滅菌発熱物質不含水)での構成のための粉末形態であり得る。本発明の方法は、さらに、デポー製剤として処方される組成物の投与を含み得る。このような長時間作用製剤は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)により又は筋肉内注射により投与され得る。従って、例えば、本組成物は、適切なポリマー性又は疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂とともに、又は難溶性誘導体として(例えば難溶性の塩として)、処方され得る。
【0238】
本発明の方法は、中性又は塩形態として処方される組成物の投与を包含する。医薬的に許容可能な塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸など由来のものなどの陰イオンとともに形成されるもの及び、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど由来のものなどの陽イオンとともに形成されるものが含まれる。
【0239】
一般に、組成物の成分は、個別に又は単位投与形態で一緒に混合されて、例えば、活性物質の量を表示するアンプル又はサシェなどの密封容器中の凍結乾燥粉末又は水不含濃縮物として、供給される。投与方法が点滴である場合、滅菌された医薬グレードの水又は食塩水を含有する点滴瓶とともに組成物を調剤することができる。投与方法が注射によるものである場合、注射のための滅菌水又は食塩水のアンプルは、投与前に成分が混合され得るように提供され得る。
【0240】
特に、本発明はまた、予防薬又は治療薬又は本発明の医薬組成物の1以上が、薬物の量を表示するアンプル又はサシェなどの密封容器中に封入されることも提供する。ある実施形態において、予防薬又は治療薬の1以上又は本発明の医薬組成物は、密封容器中で乾燥滅菌凍結乾燥粉末又は水不含の濃縮物として供給され、対象への投与のために、(例えば水又は食塩水で)適切な濃度に再構成され得る。好ましくは、予防薬又は治療薬の1以上又は本発明の医薬組成物は、少なくとも5mg、より好ましくは少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg又は少なくとも100mgの単位投与量で、密封容器中で乾燥した滅菌凍結乾燥粉末として供給される。凍結乾燥された予防薬又は治療薬又は本発明の医薬組成物は、その元の容器中で2℃から8℃の間で保管すべきであり、予防薬又は治療薬又は本発明の医薬組成物は、再構成後、1週間以内、好ましくは5日間以内、72時間以内、48時間以内、24時間以内、12時間以内、6時間以内、5時間以内、3時間以内又は1時間以内に投与すべきである。代替的な実施形態において、予防薬又は治療薬の1以上又は本発明の医薬組成物は、薬物の量及び濃度を表示する密封容器中で液体形態で供給される。好ましくは、投与される組成物の液体形態は、少なくとも0.25mg/mL、より好ましくは少なくとも0.5mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも2.5mg/mL、少なくとも5mg/mL、少なくとも8mg/mL、少なくとも10mg/mL、少なくとも15mg/kg、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、少なくとも75mg/mL又は少なくとも100mg/mLで密封容器中で供給される。液体形態はその元の容器中で2℃から8℃の間で保管すべきである。
【0241】
本発明の抗体及び抗体部分は、非経口投与に適切な医薬組成物に組み込まれ得る。好ましくは、この抗体又は抗体部分は、0.1-250mg/mLの抗体を含有する注射用の溶液として調製される。注射用の溶液は、フリントガラス又は茶褐色のバイアル、アンプル又はプレフィルドシリンジ中で、液体又は凍結乾燥製剤の形態の何れかから構成され得る。緩衝液は、pH5.0から7.0(最適にはpH6.0)のL-ヒスチジン(1-50mM、最適には5-10mM)であり得る。その他の適切な緩衝液には、以下に限定されないが、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムが含まれる。塩化ナトリウムは、0-300mMの濃度(液体投与形態の場合、最適には150mM)で溶液の毒性を変化させるために使用することができる。凍結乾燥製剤の場合、凍結保護剤、基本的には0-10%スクロース(最適には0.5-1.0%)が含まれ得る。その他の適切な凍結保護剤には、トレハロース及びラクトースが含まれる。凍結乾燥投与形態の場合、充填剤、基本的には1-10%マンニトール(最適には2-4%)が含まれ得る。安定化剤は、基本的には1-50mM L-メチオニン(最適には5-10mM)を液体及び凍結乾燥投与形態の両方で使用することができる。その他の適切な充填剤には、グリシン及びアルギニンが含まれ、0-0.05%ポリソルベート-80(最適には0.005-0.01%)として含まれ得る。さらなる界面活性剤には、以下に限定されないが、ポリソルベート20及びBRIJ界面活性剤が含まれる。非経口投与のための注射用の溶液として調製される本発明の抗体及び抗体部分を含む医薬組成物は、治療用タンパク質(例えば抗体)の吸収又は分散を促進するために使用されるものなど、アジュバントとして有用な物質をさらに含み得る。特に有用なアジュバントは、Hylenex(R)(組み換えヒトヒアルロニダーゼ)などのヒアルロニダーゼである。注射用溶液にヒアルロニダーゼを添加することにより、非経口投与、特に皮下投与後のヒトバイオアベイラビリティーが向上する。これによりまた、疼痛及び不快感を軽減し、注入部位の反応の発生を最小限にしながら、注射部位の体積を大きくする(即ち1mL超)ことも可能となる(WO04/078140及び米国特許出願公開US2006104968(参照により本明細書中に組み込まれる。)参照。)。
【0242】
本発明の組成物は様々な形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固体及び固体投与形態、例えば溶液(例えば、注射用及び点滴用溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム及び坐薬などが含まれる。好ましい形態は、意図する投与方法及び治療用途に依存する。通常の好ましい組成物は、注射用又は点滴用溶液の形態、例えば他の抗体によるヒトの受動免疫法のために使用されるものと類似の組成物など、である。好ましい投与方法は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態において、本抗体は静脈内点滴又は注射によって投与される。別の好ましい実施形態において、本抗体は、筋肉内又は皮下注射によって投与される。
【0243】
治療用組成物は、通常、製造及び保管の条件下で無菌であり安定でなければならない。本組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム又はその他の高薬物濃度に適した秩序構造として処方され得る。滅菌注射用溶液は、活性化合物(即ち抗体又は抗体部分)を、必要とされる量で、適切な溶媒中に、必要に応じて上記で列挙した成分の1以上の組合せと共に配合し、続いてろ過滅菌することにより調製され得る。一般に、分散液は、基本的な分散媒及び上記で列挙したものからの必要なその他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に活性化合物を配合することにより調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌凍結乾燥粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分に何らかのさらなる所望の成分を加えた粉末を、予めろ過滅菌したこれらの溶液から得る、真空乾燥及び噴霧乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより、分散液の場合は必要な粒子サイズを維持することにより、及び、界面活性剤を使用することにより、維持され得る。組成物中で吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを含むことにより、注射用組成物を持続的に吸収させるようにすることができる。
【0244】
本発明の抗体及び抗体部分は、当技術分野で公知の様々な方法により投与することができるが、多くの治療用途に対して、好ましい投与の経路/方法は、皮下注射、静脈内注射又は点滴である。当業者にとって当然のことながら、投与の経路及び/又は方法は、所望の結果に依存して変化する。ある種の実施形態において、インプラント、経皮パッチ及びマイクロカプセル型送達系を含む制御放出製剤など、化合物が急速に放出されないようにする担体を用いて活性化合物を調製し得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生体分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製のための多くの方法が特許取得されているか、又は当業者にとって一般に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978参照。
【0245】
ある種の実施形態において、例えば不活性希釈剤又は同化可能な可食担体と共に、本発明の抗体又は抗体部分を経口投与し得る。この化合物(及び必要に応じてその他の成分)を、硬殻又は軟殻のゼラチンカプセルに封入するか、錠剤になるように圧縮するか又は対象の食餌に直接混合することもできる。治療剤の経口投与の場合、賦形剤とともにこの化合物を配合し、経口摂取錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、オブラートなどの形態で使用し得る。本発明の化合物を非経口投与以外によって投与するために、この化合物をその不活性化を阻止する物質で被覆するか、又はこの化合物をこれらと一緒に投与することが必要であり得る。
【0246】
補助的な活性物質を組成物中に配合することもできる。ある種の実施形態において、RGM A活性が有害である疾患を治療するのに有用である1以上のさらなる治療薬とともに、本発明の抗体又は抗体部分を共処方(coformulated)及び/又は同時投与する。例えば、本発明の抗RGM A抗体又はその抗体部分を、その他の標的に結合する1以上のさらなる抗体(例えばサイトカインに結合するか又は細胞表面分子に結合する抗体)とともに共処方(coformulated)及び/又は同時投与し得る。さらに、本発明の1以上の抗体は、先行する治療薬の2以上と組み合わせて使用され得る。このような併用療法は、有利に、投与される治療薬のより低い投与量を使用し得、従って、様々な単剤療法に付随する毒性又は合併症の可能性を回避する。
【0247】
ある種の実施形態において、RGM Aに対する抗体又はその断片は、当技術分野で公知の半減期延長ビヒクルに連結される。このようなビヒクルには、以下に限定されないが、Fcドメイン、ポリエチレングリコール及びデキストランが含まれる。このようなビヒクルは、例えば、米国特許出願第09/428,082号及び公開PCT出願WO99/25044(これらは、あらゆる目的に対して参照により本明細書により組み込まれる。)に記載されている。
【0248】
具体的な実施形態において、遺伝子治療により、疾患又はその1以上の症候を治療、予防、管理又は改善するために、本発明の抗体又は本発明の別の予防薬又は治療薬をコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列が投与される。遺伝子治療は、発現されるか又は発現可能な核酸の対象への投与により行われる治療を指す。本発明のこの実施形態において、この核酸は、それらのコードされる抗体又は予防もしくは治療効果を媒介する本発明の予防薬もしくは治療薬を生成させる。
【0249】
本発明に従い、当技術分野で利用可能な遺伝子治療のための方法の何れかを使用することができる。遺伝子治療の方法の一般的な概説に関しては、Goldspielら、1993、Clinical Pharmacy 12:488-505;Wu及びWu、1991、Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev、1993、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573-596;Mulligan、Science 260:926-932(1993);及びMorgan及びAnderson、1993、Ann.Rev.Biochem.62:191-217;1993年5月、TIBTECH 11(5):155-215を参照。使用することができる組み換えDNA技術の技術分野で一般に公知の方法は、Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、NY(1993);及びKriegler、Gene Transfer and Expression、A Laboratory Manual、Stockton Press、NY(1990)に記載されている。遺伝子治療の様々な方法の詳細な記述は、米国特許出願公開US20050042664 A1(参照により本明細書中に組み込まれる。)で開示されている。
【0250】
RGM Aは、本明細書中上記で定義されるような様々な疾患に関連する病理において重要な役割を果たす。RGM A及びRGMタンパク質は、外傷性脳損傷に罹患しているヒトの損傷部位において(Schwabら、Arch.Neurol.62:1561-8、2005a)、卒中で障害を受けたヒト脳の梗塞周辺部及びコア領域において(Schwabら、Arch.Neurol.62:1561-8、2005a)、パーキンソン病に罹患している患者の黒質において(Bossersら、Brain Pathology vol.19:91-107、2008)、上方制御されることが記載されている。従って、RGM A抗体は、脳卒中、外傷性脳損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病及びヒト神経系のその他の神経変性疾患の併用療法に対する適切な作用物質である。卒中患者において、最初の3時間内の最新の治療は、血塊の溶解のための組織プラスミノーゲン活性化因子の送達(Liangら、Arch.Neurol.65:1429-33、2008)からなり、このような治療は、原理的に、異なる治療アプローチをもたらし、さらなる治療枠を広げる、RGM A抗体送達と組み合わせられ得る。アルツハイマー病において、RGM A抗体との薬物の併用は、承認済みの認知促進薬、ドネペジル、メマンチンと可能であり、このようなアプローチにより進行性の神経病態の進行が顕著に抑制され得る。インスリンの鼻腔内送達は、注意及び記憶においてプラス方向の効果があり(Hanson及びFrey、BMC Neurosci.9:S5、2008)、RGM A抗体に対する可能な投与経路であり、これにより、血液-脳関門を迂回する。パーキンソン病(PD)患者において、最新の治療は、主に、レボドパなどのドーパミン作用薬、ドーパミンプロドラッグ(Khor及びHsu、Curr.Clin.Pharmacol.2:234-43、2007)、ロピニロール、非エルゴリン系ドーパミンアゴニスト(Jostら、J.Neurol.255 Suppl.5:60-63、2008)、モノアミンオキシダーゼB阻害剤ラサギリン及びセレグリン(Elmer及びBertoni、Expert Opin.Pharmacother.9:2759-72、2008)に基づく。早期及び軽度PDでのそれらの有益な効果にかかわらず、これらの薬物の中で、脳の黒質及び関連皮質下及び皮質領域での進行性の変性を阻止できるものはなく、従って、再生刺激性RGM A抗体との併用療法は、疾患経過を遅延させ得る。
【0251】
抗酸化剤、ラジカルスカベンジャー、フェニトインなどの抗けいれん薬又は貧血薬エリスロポエチンである、何らかの神経保護剤は、プロ再生RGM A抗体との組み合わせ療法に適切であり、それにより、通常は非常に短い神経保護剤の治療的処置の枠が広がる。
【0252】
本発明の抗体及び抗体部分は、このような疾患に罹患しているヒトを治療するために使用され得る。
【0253】
本発明の抗体又はその抗原結合部分を、単独で、又はさらなる作用物質、例えば治療薬(このさらなる作用物質は、その意図する目的に対して熟練者により選択される。)と組み合わせて使用され得ることを理解されたい。例えば、さらなる作用物質は、本発明の抗体により治療されている疾病又は状態を治療するために有用であると当技術分野で認識されている治療薬であり得る。さらなる作用物質はまた、治療組成物に有利な属性を与える作用物質、例えば、組成物の粘性をもたらす作用物質、でもあり得る。本発明内に含まれるべき組み合わせは、それらの用途に有用な組み合わせであることをさらに理解されたい。下記で述べられる作用物質は、説明を目的とするものであり、限定を意図するものではない。本発明の一部であるこれらの組み合わせは、本発明の抗体及び下記リストから選択される少なくとも1つのさらなる作用物質であり得る。この組み合わせには、また、この組み合わせが、形成される組成物がその所望の機能を果たし得るようなものである場合、複数のさらなる作用物質、例えば2又は3のさらなる作用物質も含まれ得る。
【0254】
本発明の抗体又は抗体部分が組み合わせられ得る多発性硬化症に対する治療薬の非限定例には、次のもの:コルチコステロイド;プレドニゾロン;メチルプレドニゾロン;アザチオプリン;シクロホスファミド;シクロスポリン;メトトレキセート;4-アミノピリジン;チザニジン;インターフェロン-β1a(AVONEX;Biogen);インターフェロン-β1b(BETASERON;Chiron/Berlex);インターフェロンα-n3)(Interferon Sciences/Fujimomto)、インターフェロン-α(Alfa Wassermann/J&J)、インターフェロンβ1A-IF(Serono/Inhale Therapeutics)、ペグインターフェロンα2b(Enzon/Schering-Plough)、コポリマー1(Cop-1;COPAXONE;Teva Pharmaceutical Industries、Inc.);高圧酸素;静脈内免疫グロブリン;クラドリビン;その他のヒトサイトカイン又は成長因子及びそれらの受容体、例えば、TNF、LT、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-23、IL-15、IL-16、IL-18、EMAP-II、GM-CSF、FGF及びPDGFに対する抗体又はアンタゴニストが含まれる。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90又はそれらのリガンドなどの細胞表面分子に対する抗体と組み合わせられ得る。本発明の抗体又はその抗原結合部分はまた、メトトレキセート、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、NSAID、例えば、イブプロフェン、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体阻害剤、アドレナリン作動薬などの作用物質、TNFα又はIL-1(例えばIRAK、NIK、IKK、p38又はMAPキナーゼ阻害剤)などの炎症性サイトカインによるシグナル伝達を阻止する作用物質、IL-1β変換酵素阻害剤、TACE阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体及びその誘導体(例えば可溶性p55又はp75TNF受容体、sIL-1RI、sIL-1RII、sIL-6R)及び抗炎症性サイトカイン(例えばIL-4、IL-10、IL-13及びTGFβ)とも組み合わせられ得る。
【0255】
抗体又はその抗原結合部分が組み合わせられ得る多発性硬化症に対する治療薬の好ましい例には、インターフェロン-β、例えば、IFNβ1a及びIFNβ1b;コパクソン、コルチコステロイド、カスパーゼ阻害剤、例えばカスパーゼ-1の阻害剤、IL-1阻害剤、TNF阻害剤及びCD40リガンド及びCD80に対する抗体が含まれる。
【0256】
本発明の抗体又はその抗原結合部分はまた、アレムツズマブ、ドロナビノール、ユニメド、ダクリズマブ、ミトキサントロン、キサリプロデン塩酸塩、ファムプリジン、グラチラマー酢酸塩、ナタリズマブ、シンナビドール、a-イムノカインNNSO3、ABR-215062、AnergiX.MS、ケモカイン受容体アンタゴニスト、BBR-2778、カラグアリン(calagualine)、CPI-1189、LEM(リポソーム封入ミトキサントロン)、THC.CBD(カンナビノイドアゴニスト)MBP-8298、メソプラン(PDE4阻害剤)、MNA-715、抗IL-6受容体抗体、ニューロバックス、パーフェニドン・アロトラップ1258(RDP-1258)、sTNF-R1、タランパネル、テリフルノミド、TGF-β2、チプリモチド、VLA-4アンタゴニスト(例えば、TR-14035、VLA4 Ultrahaler、Antegran-ELAN/Biogen)、インターフェロンγアンタゴニスト、IL-4アゴニストなどの作用物質とも組み合わせられ得る。
【0257】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体又は抗体部分の「治療的有効量」又は「予防的有効量」を含み得る。「治療的有効量」とは、必要な投薬で、必要な期間、所望の治療結果を達成するための、有効な量を指す。抗体又は抗体部分の治療的有効量は、当業者により決定され得、個体の、疾病ステ―ジ、年齢、性別及び体重、その個体において所望の反応を誘発するための抗体又は抗体部分の能力などの因子に従い変動し得る。治療的有効量はまた、治療上の有益な効果が抗体又は抗体部分の何らかの毒性又は有害な影響を上回るものでもある。「予防的有効量」とは、必要な投薬で、必要な期間、所望の予防結果を達成するための、有効な量を指す。通常、予防的用量は、対象において、疾患の前又は早期の段階で使用されるので、予防的有効量は治療的有効量より少量となろう。
【0258】
最適の所望の反応(例えば治療又は予防的反応)をもたらすために投薬計画を調整し得る。例えば、単回ボーラスを投与し得、何回かの分割用量をある時間にわたり投与し得るか、又は、治療状況の要件により指示されるように、用量を均等に減少させ得るか又は増加させ得る。投与を容易にするために及び投与量を均一にするために、投与単位形態で非経口組成物を処方することは特に有利である。投与単位形態は、本明細書中で使用される場合、治療しようとする哺乳動物対象に対する単一の投与量として適切な物理的に分離された単位を指し;各単位は、必要とされる医薬担体とともに所望の治療効果を発揮するために計算される活性化合物の所定の量を含有する。本発明の投与単位形態に対する規定は、(a)活性化合物のユニークな特徴及び達成しようとする特定の治療又は予防効果及び(b)個体における感受性の治療に対するこのような活性化合物を化合する技術分野に固有の制限により決定され、これらに直接依存する。
【0259】
本発明の抗体又は抗体部分の治療的又は予防的有効量に対する代表的な非限定範囲は、0.1-20mg/kg、より好ましくは1-10mg/kgである。投与量の値は、緩和しようとする状態の種類及び重症度により変動し得ることに注意されたい。あらゆる特定の対象に対して、個々のニーズ及び本組成物の投与を行うか又は投与を監督する者の専門的判断に従い、ある時間にわたり具体的投薬計画を調整すべきであり、本明細書中で述べられる投与範囲は単なる例示であり、主張される組成物の範囲又は実施を限定するものではないことをさらに理解されたい。
【0260】
当業者にとって当然のことながら、本明細書中に記載される本発明の方法のその他の適切な変更及び適応は明らかであり、本発明の範囲及び本明細書中で開示される実施形態から逸脱することなく、適切な同等物を用いて為し得る。本発明を詳細に説明してきたが、次の実施例(単なる説明のために含まれるものであり、本発明を限定するものではない。)を参照することにより本発明がより明確に理解されよう。
【実施例0261】
方法
次の方法は、実験セクションで使用される実験手順を詳述する。
【0262】
(i)直接結合ELISAプレートを炭酸緩衝液中の2μg/mLの濃度のhRGM A(R&D)で被覆した。次に、2%ブロッキング溶液(Bio-Rad)で室温にて1時間、ウェルをブロッキング処理した。プレート中、上から下へ、0.1%BSA/PBS中でビオチン化抗体を1:5の希釈係数で連続希釈し、室温にて1時間温置した。検出試薬は、0.1%BSA/PBS中のストレプトアビジン-HRPの1:10,000希釈液であった。TMB試薬で検出を行い、2N HSOで停止させ、450nMでODを読み取った。
【0263】
(ii)FACS分析。hRGM Aを過剰発現するHEK293細胞又はラットRGM Aを過剰発現するBAF3細胞の安定した遺伝子移入体を0.1%BSA/PBS緩衝液中で4℃にて15分間超、未標識5F9又は8D1MABで染色した。マウス抗ラットIgG PE抗体により検出を行った。
【0264】
(iii)hRGM A-ネオゲニン結合アッセイにおいてMAB 5F9を評価するための固相ELISAアッセイ
Hisタグ付加ヒトネオゲニンタンパク質の細胞外ドメイン(保存溶液濃度:30μg/mL)の2.5μg/mLの濃度で、ELISAプレート(Immuno Plate Cert. Maxi Sorb.F96 NUNC、439454)を37℃で1時間被覆した。温置後、0.02%Tween20を含有するPBSによる3回の別個の洗浄段階で未結合ネオゲニンを除去した。3%ウシ血清アルブミン(BSA)、PBS、Tween20(0.02%)ブロッキング溶液200μL/ウェルを添加することにより、ネオゲニン被覆プレートのブロッキング処理を行った。37℃で1時間温置後、ブロッキング溶液を除去し、抗体あり又はなしで、ヒトfcタグと結合されたRGM A断片又は全長タンパク質を添加した。ある実験においては、抗体をfc-結合hRGM Aタンパク質とともに室温にて1時間予備温置した。抗体あり又はなしで、ネオゲニン被覆プレートをhRGM Aとともに37℃で1時間温置した。PBS-Tween20(0.02%)での3回の洗浄段階後、ビオチン標識抗ヒトfc抗体(1mg/mL、0.6%BSA、0.02%Tween20を含有するPBS中で1:200希釈)、Jackson ImmunoResearchカタログ番号:709-065-149とともに、37℃で1時間、プレートを温置した。PBS-Tween20(0.02%)を用いて、3回の洗浄段階により、未結合抗体を除去した。ビオチン標識抗fc抗体の結合を視覚化するために、0.6%BSA、0.02%Tween20を含有するPBSで1:5000希釈されたストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(Roche、cat.#11089153001)からなる複合体を添加し、続いて37℃で1時間温置した。ペルオキシダーゼ基質(Immuno Pure TMB、Pierce#34021)を添加する前に、3回の続く洗浄段階(PBS-Tween20(0.02%))で未結合ペルオキシダーゼ複合体を除去した。ウェルへの基質添加から1-30分後、2.5M HSOにより、基質反応を停止させた。Anthos光度計を用いて450nmの波長でプレートを分析(OD測定)した。
【0265】
(iv)hRGM A-BMP-4結合アッセイにおいてMAB 5F9を評価するための固相ELISAアッセイ
組み換えヒトBMP-4タンパク質(R&D Systems、#314-BP、Lot#BEM316061)2.5μg/mLの濃度を含有する溶液を用いて、ELISAプレート(Immuno Plate Cert.Maxi Sorb.F96 NUNC、439454)を37℃で1時間被覆した。温置後、0.02%Tween20を含有するPBSによる3回の個別の洗浄段階で未結合BMP-4を除去した。3%ウシ血清アルブミン(BSA)、PBS、Tween20(0.02%)ブロッキング溶液200μL/ウェルを添加することによって、BMP-4被覆プレートのブロッキング処理を行った。37℃で1時間温置後、ブロッキング溶液を除去し、抗体あり又はなしで、ヒトfcタグと結合したRGM A断片又は全長タンパク質を添加した。ある実験においては、抗体をfc-結合hRGM Aタンパク質とともに室温で1時間、予備温置した。抗体あり又はなしで、hRGM AとともにBMP-4被覆プレートを37℃で1時間温置した。PBS-Tween20(0.02%)での3回の洗浄段階後、ビオチン標識抗ヒトfc抗体(1mg/mL、0.6%BSA、0.02%Tween20を含有するPBS中で1:200希釈)、Jackson ImmunoResearchカタログ番号:709-065-149とともにプレートを37℃で1時間温置した。PBS-Tween20(0.02%)での3回の洗浄段階により未結合抗体を除去した。ビオチン標識抗fc抗体の結合を視覚化するために、0.6%BSA、0.02%Tween20を含有するPBSで1:5000希釈されたストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(Roche、cat.#11089153001)からなる複合体を添加し、続いて37℃で1時間、温置した。ペルオキシダーゼ基質(Immuno Pure TMB、Pierce#34021)を添加する前に、3連続洗浄段階(PBS-Tween20(0.02%))で未結合ペルオキシダーゼ複合体を除去した。ウェルへの基質添加から1-30分後、2.5M HSOにより、基質反応を停止させた。Anthos光度計を用いて450nmの波長でプレートを分析(OD測定)した。
【0266】
(v)hRGM A-BMP-2結合アッセイにおいてMAB 5F9を評価するための固相ELISAアッセイ
組み換えヒトBMP-2タンパク質(R&D Systems、#355-BM、Lot#MSA04)2.5μg/mLの濃度を含有する溶液を用いて、ELISAプレート(Immuno Plate Cert. Maxi Sorb.F96 NUNC、439454)を37℃で1時間被覆した。温置後、0.02%Tween20を含有するPBSによる3回の個別の洗浄段階で未結合BMP-2を除去した。3%ウシ血清アルブミン(BSA)、PBS、Tween20(0.02%)ブロッキング溶液200μL/ウェルを添加することによって、BMP-2被覆プレートのブロッキング処理を行った。37℃で1時間温置後、ブロッキング溶液を除去し、抗体あり又はなしで、ヒトfcタグと結合させられたRGM A断片又は全長タンパク質を添加した。ある実験においては、抗体をfc-結合hRGM Aタンパク質とともに室温で1時間、予備温置した。抗体あり又はなしで、hRGM AとともにBMP-2被覆プレートを37℃で1時間、温置した。PBS-Tween20(0.02%)での3回の洗浄段階後、ビオチン標識抗ヒトfc抗体(1mg/mL、0.6%BSA、0.02%Tween20を含有するPBS中で1:200希釈)、Jackson ImmunoResearchカタログ番号:709-065-149とともにプレートを37℃で1時間温置した。PBS-Tween20(0.02%)での3回の洗浄段階により未結合抗体を除去した。ビオチン標識抗fc抗体の結合を視覚化するために、0.6%BSA、0.02%Tween20を含有するPBSで1:5000希釈されたストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(Roche、cat.#11089153001)からなる複合体を添加し、続いて37℃で1時間、温置した。ペルオキシダーゼ基質(Immuno Pure TMB、Pierce#34021)を添加する前に、3連続洗浄段階(PBS-Tween20(0.02%))で未結合ペルオキシダーゼ複合体を除去した。ウェルへの基質添加から1-30分後、2.5M HSOにより、基質反応を停止させた。Anthos光度計を用いて450nmの波長でプレートを分析(OD測定)した。
【0267】
(vi)Ntera-2細胞培養
German Collection of Microorganisms and Cell Culture(DMSZ、Braunschweig)からヒトNtera-2細胞を得た。10%ウシ胎仔血清(FBS;JRH Bioscience、Kansas、USA)及び5%ウマ血清(HS;Sigma、Germany)を含有するDMEM培地中で未分化Ntera-2細胞の凍結ストックを凍結融解した。細胞が80%の密集度に到達するまで、培養フラスコ(Greiner、Germany)中で細胞を増殖させた。
【0268】
神経分化のために、分化用培地(10%FBS、5%HS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、レチノイン酸10μmを含有するDMEM培地)中、2.5x10個の細胞/175cmの密度でNtera-2細胞を播種した。細胞を3週間分化させ、週に2回培地を交換した。
【0269】
分化後、トリプシン-EDTAで細胞を剥離させ、1:6の割合で分割した。48時間後、軽く叩くことによって下層の細胞から神経細胞を分離させた。新しい培地中で凝集させるために、取り外した細胞を新しい振盪培養フラスコ(Corning、USA)に移した。B27(Gibco)、グルタミン(Gibco)及びペニシリン-ストレプトマイシンを添加したNeurobasal培地(Gibco)中で、滑らかな水平振盪条件下、37℃で24時間、分化させたNtera-2細胞を凝集させた。24ウェルプレートにおいてカバースリップ1枚あたりおよそ20-30個の凝集体の密度でNtera-2凝集物を播種した。ポリリジンで予め被覆したカバースリップをラミニン(20μg/mL、Sigma)及び10μg/mLの濃度の組み換えfc-連結ヒトRGM A断片#786(アミノ酸47-168)で被覆した。播種後、5F9MAB(3種類の異なる濃度(0.1μg/mL;1μg/mL;10μg/mL)で培地に添加)で培養物を処理し、Neurobasal培地中で37℃で24時間さらに温置した。次に、凝集体を4%パラホルムアルデヒド中で固定(2時間、室温)し、PBS中の0.1%TritonX-100の添加により透過処理(20分、室温)した。蛍光染色のために、1%BSAを含有するPBSで培養物を室温で1時間ブロッキング処理した。ブロッキング処理後、β-チューブリンアイソタイプ3に対するマウスモノクローナル抗体(クローンSDL3D10、Sigma #T8660)とともに室温で2時間、Ntera細胞を温置した。3回の個別の洗浄段階(各5-15分)により未結合抗体を除去し、PBS/0.5%BSA及び0.5μg/mLビスベンズイミド中で1:350倍希釈したCy-3結合ロバ抗マウス抗体(Jackson ImmunoResearch Lot62597)とともにNtera細胞を温置した。1時間の温置後、未結合二次抗体を除去するために培養物を3回洗浄した。蛍光顕微鏡のために、FluoromountG(Southern Biotech、Eching)中にカバースリップを包埋した。
【0270】
Zeiss Axiovert200蛍光顕微鏡を用いてNtera-2凝集体の画像を収集し、社内の画像収集及び分析システムを用いて、培養物の伸長を自動的に分析した。Image Pro Plus 4.5により伸長の自動分析を行い、Graph Pad Prism 4によりデータの統計分析を行った。ヒトRGM A断片#786の非存在下で増殖させた対照培養物に対して伸長を正規化した。
【0271】
(vii)SH-SY5Y培養
SH-SY5Y細胞(ATCC、CRL-2266)は、転移性脳腫瘍由来のヒト神経芽細胞腫細胞である。50%アール平衡塩溶液(Invitrogen Life Technologies、Cat.#24010-043)及び50%F12(Ham)Nutrient Mix+GlutaMAX-1(Invitrogen Life Technologies、Cat.#31765-027)からなる培地中でこれらの細胞を増殖させた。熱不活性化10%ウシ胎仔血清(FCS、JRH Biosciences、Kansas Cat.#12107-1000M)、1%NEAA(MEM非必須アミノ酸溶液(Sigma-Aldrich Cat.#M1745)及び1%ペニシリン(10.000U/mL)/ストレプトマイシン(10.000μg/mL)(Invitrogen Life Technologies、Cat.#15140-122)をこの培地にさらに添加した。神経分化及び及び神経突起の成長を刺激するために、数日間にわたり10μmレチノイン酸(RA、Sigma-Aldrich Cat.#R2625-050MG))を添加した培地中でSH-SY5Y細胞を培養した。分化させたSH-SY5Y細胞を組織培養フラスコ中で増殖させ、慎重にトリプシン処理することにより取り外し、RGM Aタンパク質又はその断片及びコラーゲンIのストライプパターンで被覆したガラス製カバースリップ上に置いた。
【0272】
(viii)ストライプのあるガラス製カバースリップの調製
以前に記載されたもの(Knoellら、Nature Protocols 2:1216-1224、2007)とは少々異なる方法でガラス製カバースリップ上でのストライプアッセイの改変法を実施したが、これを下記で要約する。
【0273】
精製タンパク質からなるストライプの生成のための滅菌シリコン基盤を、基盤の粗い面を上に向けて、ペトリ皿の表面上に押し付けた。エタノールで洗浄した汚染のないカバースリップをこの基盤上に置き、基盤の角をカバースリップの裏面にインクボールペンでマークする。カバースリップがペトリ皿の底部に向くように、カバースリップを載せた基盤を慎重に裏返した。RGM Aストライプを可視化するために、Fc-結合全長阻害性RGM A又はFc-断片又はその組み換えヒトRGM A(R&D Systems Cat.#2459 RM)をFITC標識抗マウス抗体(Fab特異的ヤギ抗マウスIgG、Sigma-Aldrich Cat.#F-4018)10μLと混合した。ハミルトンシリンジを用いて、注入口を通じてRGM A-FITC抗体溶液50μLを慎重に注入する。過剰な液が排出口を通じて基盤から流出したが、これはKleenex布で除去する。37℃で2時間、マトリクス-カバースリップを温置した後、第一のコーティング溶液(RGM A含有)をPBS100μLで洗い流した。次の段階で、RGM Aストライプ付きのカバースリップを24ウェルプレートに移し、RGM Aストライプの間の空いている部分を埋めるために、500μLコラーゲンI(ラット尾部コラーゲンI、Becton Dickinson Biosciences Cat.#354236)で被覆し、37℃で2時間温置した。最後に、カバースリップ上にRGM A及びコラーゲンIの交互のストライプのパターンが生じた。温置後、PBSによる3回の個別の洗浄段階で未結合コラーゲンIを洗い流し、分化したSH-SY5Y細胞をカバースリップ上に置いた。ヒトRGM Aに対するモノクローナル抗体の存在下又は非存在下で、パターン化基質上でのSH-SY5Y細胞の温置を37℃で20-24時間続けた。
【0274】
免疫蛍光分析のために、室温で2時間又は4℃で一晩、4%パラホルムアルデヒド中で細胞を固定し、室温で10-20分間、0.1%TritonX-100を含有するPBSとともに温置することにより透過処理した。60分間にわたる3%BSAでのブロッキング処理後、一次抗体(モノクローナル抗-β-チューブリンアイソタイプ3クローンSDL 3D10、Sigma-Aldrich Cat.#T8660)とともに細胞を室温で2時間温置し、数回の洗浄段階後、0.1%BSA入りのPBS中で希釈した二次抗体(Cy-3ロバ抗マウス JacksonImmuno Research Lot:62597)とともに1時間温置した。ビスベンズイミドH33258(Riedel-De-Haen、Cat.#A-0207)を用いて核を対比染色した。Fluoromount G(Southern Biotechnology Associates Inc.:Cat.#010001)中に細胞を最終的に包埋した。Axioplan2蛍光顕微鏡(Zeiss)を用いて細胞を分析した。
【0275】
(ix)組み換え抗RGM A抗体の構築及び発現
細菌における相同組み換えにより、2つのヒンジ領域アミノ酸突然変異を含有するヒトIgG1定常領域を含有するpHybE発現ベクターに、ラット抗ヒトRGM Aモノクローナル抗体5F9及び8D1の重鎖可変領域のcDNA断片をコードするDNAをクローニングした。これらの突然変異は、位置234及び235でのロイシンからアラニンへの変化である(EU付番、Lundら、1991、J.Immunol.、147:2657)。ヒトκ定常領域を含有するpHybEベクターに、5F9及び8D1モノクローナル抗体の軽鎖可変領域をクローニングした。代表的なpHyb-Eベクターには、pHybE-hCk及びpHybE-hCg1、z、非-a(米国特許出願第61/021,282号参照)が含まれる。pHybE発現プラスミドに結合されたキメラ重鎖及び軽鎖cDNAの同時遺伝子移入により、293E細胞において全長抗体を一時的に発現させた。プロテインAセファロースクロマトグラフィーにより、組み換え抗体を含有する細胞上清を精製し、酸性緩衝液の添加により、結合した抗体を溶出させた。抗体を中和し、PBSに対して透析した。次に、実施例1に記載されるようなELISA及び実施例7に記載されるような競合的ELISAにより、精製抗ヒトRGMAモノクローナル抗体を、RGM Aへのそれらの結合能について試験した。
【0276】
(実施例1)
抗ヒトRGM Aモノクローナル抗体の作製
次のようにして抗ヒトRGM Aラットモノクローナル抗体を得た。
【0277】
(実施例1A)
ヒトRGM A抗原でのラットの免疫付与
第1日に、完全フロイントアジュバント(Sigma)と混合した組み換え精製ヒトRGM A(R&D Systems Cat#2459-RMロットMRH02511A)25μgを4匹の6-8週齢Harlan Sprague Dawleyラットに皮下注射した。第21、42及び63日に、不完全フロイントアジュバント(Sigma)と混合した組み換え精製ヒトRGM A25μgを同じ4匹のHarlan Sprague Dawleyラットに皮下注射した。第144日又は第165日に、ラットに10μg組み換え精製ヒトRGM Aを静脈内注射した。
【0278】
(実施例1B)
ハイブリドーマの作製
ハイブリドーマを作製するために、Kohler、G.及びMilstein 1975、Nature、256:495に記載の確立された方法に従い、実施例1.2.Aに記載の免疫付与ラットから得られる脾臓細胞をSP2/O-細胞と2:1の比率で融合させた。
【0279】
1.5x10個の脾臓細胞/ウェルの密度で、96ウェルプレート中のアザセリン及びヒポキサンチンを含有する選択培地に融合生成物を入れた。融合から7-10日後、肉眼で見えるハイブリドーマコロニーを観察した。ヒトRGM Aに対する抗体の存在について、直接的ELISA(実施例2参照)により、ハイブリドーマコロニーを含有する各ウェルからの上清を試験した。ヒト及び/又はラットRGM Aを発現する安定的遺伝子移入HEK293細胞に対するFACSにおいてELISA陽性細胞株を試験した。続いて、ラットRGM Aとの交差反応性及びHuRGM A47-168融合タンパク質に対するELISA結合について、直接的ELISAにおいて、これらのラットハイブリドーマ細胞株を試験した。
【0280】
【表10】
【0281】
(実施例2)
mAB5F9及び8D1の直接的ELISA結合
図1Aで示されるように、MAB5F9及び8D1は、上記セクション(i)で記載されるように同様の力価でhRGM Aに結合する。MAB 5F9もまたELISAでラットRGM Aに結合することが示されたが、一方で、8D1はラットRGM Aに結合することはできない(データ示さず。)。図1Bは、MAB5F9及び8D1が、FACSにおいてhRGM Aを過剰発現するHEK293細胞に結合することを示す。図1Cは、5F9(8D1ではない。)が、FACSにおいて、ラットRGM Aを過剰発現するBAF3細胞に結合可能であることを示す。セクション(ii)に記載のようにFACSを行った。
【0282】
競合的hRGM A-ネオゲニン結合アッセイにおけるMAB 5F9結合を評価するために、固相ELISAアッセイを使用した。ELISAプレートを調製し、本願のセクション(iii)に記載のように使用した。37℃で1時間、5F9抗体とともに0.5μg/mLの濃度でhRGM Aを添加した。次の濃度:1.25μg/mL;0.63μg/mL;0.32μg/mL;0.16μg/mL;0.08μg/mL;0.04μg/mL;0.02μg/mL;0.01μg/mLでMAB 5F9を使用した。ビオチン標識抗fc抗体及びストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体を用いて、hRGM Aの結合を視覚化した。Anthos光度計を用いて450nmの波長でプレートを分析した(OD測定)。図2で示されるように、高い方から3つの抗体濃度は、用量依存的にネオゲニンへの全長ヒトRGM Aの結合を阻害した。
【0283】
競合的hRGM A-BMP-4結合アッセイにおいてMAB 5F9を評価するためにも固相ELISAアッセイを使用した。ELISAプレートを調製し、本願のセクション(iv)に記載のように使用した。5F9抗体とともに0.5μg/mLの濃度で37℃で1時間、hRGM Aを添加した。次の濃度:1.25μg/mL;0.63μg/mL;0.32μg/mL;0.16μg/mL;0.08μg/mL;0.04μg/mL;0.02μg/mL;0.01μg/mLでMAB 5F9を使用した。ビオチン標識抗fc抗体及びストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体を用いて、hRGM Aの結合を視覚化した。Anthos光度計を用いて450nmの波長でプレートを分析した(OD測定)。図3で示されるように、高い方から4種類の抗体濃度は、用量依存的にBMP-4への全長ヒトRGM Aの結合を阻害した。
【0284】
BMP-4への断片0(47-168)hRGM AのMAB 5F9結合阻害を評価するためにも固相ELISAアッセイを使用した。ヒト組み換えBMP-4タンパク質の2.5μg/mLの濃度で、ELISAプレートを37℃で1時間被覆した。5F9抗体とともに0.5μg/mLの濃度で37℃で1時間、hRGM A軽鎖(断片0、47-168)を添加した。次の濃度:1.25μg/mL;0.63μg/mL;0.32μg/mL;0.16μg/mL;0.08μg/mL;0.04μg/mL;0.02μg/mL;0.01μg/mLでMAB 5F9を使用した。ビオチン標識抗fc抗体及びストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体を用いて、hRGM Aの結合を視覚化した。Anthos光度計を用いて450nmの波長でプレートを分析した(OD測定)。図4は、1.25μg/mL、0.63μg/mL及び0.32μg/mLの抗体濃度が用量依存的にBMP-4に対するヒトRGM A軽鎖の結合を阻害することを示す。競合的hRGM A-BMP-2結合アッセイでのMAB 5F9結合を評価するためにも固相ELISAアッセイを使用した。ELISAプレートを調製し、本願のセクション(v)に記載のように使用した。5F9抗体とともに0.5μg/mLの濃度で、37℃で1時間、全長hRGM Aを添加した。次の濃度:5μg/mL;2.5μg/mL;1.25μg/mL;0.63μg/mL;0.32μg/mL;0.16μg/mLでMAB 5F9を使用した。ビオチン標識抗fc抗体及びストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体を用いて、hRGM Aの結合を視覚化した。Anthos光度計を用いて450nmの波長でプレートを分析した(OD測定)。図5は、抗体濃度5μg/mL、2.5μg/mL、1.25μg/mL、0.63μg/mLがBMP-2に対する全長ヒトRGM Aの結合を阻害することを示す。
【0285】
hRGM A-ネオゲニン、hRGM A-BMP-2及びhRGM A-BMP-4結合アッセイにおいてMAB5F9及び8D1を評価するためにも固相ELISAアッセイを使用した(図9)。記載のように、His-タグ付加ヒトネオゲニンタンパク質の細胞外ドメイン2.5μg/mL濃度又は2.5μg/mL Bmp-2又はBMP-4でELISAプレートを37℃で1時間被覆した。抗体とともに0.5μg/mLの濃度で全長fc-結合hRGM Aを37℃で1時間添加した。次の濃度:5μg/mL;2.5μg/mL;1.25μg/mL;0.63μg/mL;0.32μg/mL;0.16μg/mL;0.08μg/mLでMAB 5F9及び8D1を使用した。ビオチン標識抗fc抗体及びストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体を用いて、hRGM Aの結合を視覚化した。Anthos光度計を用いて450nmの波長でプレートを分析した(OD測定)。図9で示されるように、ラットモノクローナル抗体8D1は、BMP-2及びBMP-4に対するヒトRGM Aの結合を阻害又は減少させるが、ネオゲニンへのその結合を阻害することはできない。
【0286】
(実施例3)
分化したヒトNTeraニューロンの凝集を用いた神経突起伸長アッセイにおけるmAB 5F9活性
Ntera細胞を得て、本願の方法セクション(vi)に記載のように培養した。mAB 5F9は、分化したヒトNTeraニューロンの凝集による神経突起伸長アッセイにおけるヒトRGM Aタンパク質の強力なfc-結合軽鎖(アミノ酸47-168)の神経突起伸長阻害活性を中和した。図6で示されるように、阻害性RGM Aタンパク質又は断片の非存在下及び伸長刺激性基質ラミニンの存在下でニューロンのNTera凝集体は、伸長する神経突起の広範囲の密集したネットワークを示す(A)。また図6で示されるように、hRGM A軽鎖が存在すると、NTera神経突起の数、密度及び長さが劇的に低下し、このことから、hRGM A断片の強力な阻害活性が証明される。凝集したままである少数の神経突起は短く、堅く束ねられている(B)。図6のC-E部は、培養に添加されたMAB 5F9の濃度漸増により、用量依存的にhRGM A軽鎖断片の神経突起伸長阻害活性が中和されたか又は抑制されたことを示す。MABの濃度漸増につれて、RGM A阻害剤(C:0.1μg/mL MAB 5F9;D:1μg/mL MAB 5F9;E:10μg/mL MAB 5F9)が存在するにもかかわらず、Nteraニューロン凝集体の伸長が完全に維持される。
【0287】
ヒトRGM Aタンパク質の強力なfc-結合軽鎖阻害性断片(アミノ酸47-168)を試験するために、ヒトNTera凝集体による神経突起成長アッセイにおけるMAB 5F9の中和活性の定量分析を行った。ビスベンズイミドで凝集体を染色することによって、培養物の伸長を自動的に分析し、続いて写真撮影を行った。この染色は伸長する神経突起ではなく凝集体のみをマークした。しかし、伸長する神経突起は、β3-チューブリンに対する抗体及び蛍光物質標識二次抗体で染色された。神経突起伸長指標を計算することによって(指標は、凝集体及びその突起のβ3チューブリン染色面積から細胞体の面積を差し引くことにより計算)、神経突起伸長を自動的に測定した。次に、Lingorら、J.Neurochem.103:181-189、2007に記載のように、細胞体の面積でこの因子を割った。図7は、MAB 5F9が用量依存的に(0.1-10.0μg)ヒトNtera凝集体による神経突起伸長アッセイでのfc-結合、強力hRGM A阻害剤断片(断片0、47-168;10μg)の伸長阻害活性を中和したことを示す。
【0288】
(実施例4)
hRGM A/コラーゲンIストライプにおけるmAb 5F9活性
SH-SY5Y細胞を培養し、本願のセクション(vii)に記載のように使用した。RGM A及びコラーゲンIによるストライプ付きガラス製カバースリップを本願のセクション(viii)に記載のように調製した。文献に記載のプロトコール(Knoellら、Nature Protocols 2:1216-1224、2007)に従い、本実験のために、hRGM A/コラーゲンI及びコラーゲンIの交互のストライプ付きのカーペットを作製した。5F9MAB非存在下で(A)、ニューロンのSH-SY5Y細胞はコラーゲンIストライプに対する明らかな選択性を示し、この細胞の90%がhRGM AよりもコラーゲンIストライプを選択する。MAB 5F9の濃度漸増につれて、ニューロンSH-SY5Y細胞は、コラーゲンIストライプよりもhRGM Aストライプを選択するようになる(B-E)。使用した最大MAB濃度において(E))、SH-SY5Yニューロンは、コラーゲンIストライプと比較して、hRGM Aストライプに対する強い選択性を示す(図8参照)。これは、5F9MABが、誘因性の活性においてRGM Aの阻害性の性質を変換したので、5F9MABのユニークな特徴として解釈され得る。5F9の漸増濃度の存在下で、神経細胞は、RGM A基質へ移動し、そこで伸長する傾向があり、コラーゲンIのような許容基質では成長しない。このようなユニークな特性はモノクローナル抗体に対して以前記載されたことはない。
【0289】
(実施例5)
CDR-グラフト抗体の構築
当技術分野で周知の標準的方法を適用することにより、モノクローナル抗体5F9のVH及びVL鎖のCDR配列(上記表5参照)が様々なヒト重鎖及び軽鎖アクセプター配列に移植される。本発明のモノクローナル抗体5F9のVH及びVL配列との配列VH及びVLアラインメントに基づき、次の既知のヒト配列を選択する:
a)(上記表3に従う)重鎖アクセプター配列を構築するための、VH3-48、VH3-33及びVH3-23ならびに連結配列hJH3、hJH4及びhJH6;
b)(上記表4に従う)軽鎖アクセプター配列を構築するための、A17及びA18ならびにhJK2。
【0290】
5F9の対応するVH及びVL CDRを前記のアクセプター配列に移植することにより、次のCDRグラフト、ヒト化、修飾VH及びVL配列を調製した(上記表6も参照):VH5F9.1-GL、VH5F9.2-GL、VH5F9.3-GL、VH5F9.4-GL、VH5F9.5-GL、VH5F9.6-GL、VH5F9.7-GL及びVH5F9.8-GL;VL 5F9.1-GL、VL 5F9.2-GL及びVL 5F9.3-GL。
【0291】
(実施例6)
CDRグラフト抗体におけるフレームワーク復帰突然変異の構築
ヒト化抗体フレームワーク復帰突然変異を生成させるために、可変ドメインのデノボ合成によって及び/又は、突然変異誘発性プライマー及びPCR及び当技術分野で周知の方法を用いて、実施例5に従い調製されるようなCDRグラフト抗体配列に突然変異を導入する。次のようにCDRグラフトのそれぞれに対して、復帰突然変異及びその他の突然変異の様々な組み合わせを構築する。
【0292】
重鎖VH5F9.1-GL、VH5F9.2-GL及びVH5F9.3-GLに対して、次のバーニア及びVH/VL接続残基のうち1以上を次のように復帰突然変異させる:
V37→I、V48→I、S49→G及び/又はR98→K。
【0293】
重鎖VH5F9.4-GL、VH5F9.5-GL及びVH5F9.6-GLに対して、次のバーニア及びVH/VL接続残基のうち1以上を次のように復帰突然変異させる:
V37→I、V48→I、A49→G、R98→K。
【0294】
重鎖VH5F9.7-GL、VH5F9.8-GL及びVH5F9.9-GLに対して、次のバーニア及びVH/VL接続残基のうち1以上を次のように復帰突然変異させる:
V37→I、V48→I、S49→G。
【0295】
さらなる突然変異には、次のものが含まれる:
重鎖VH5F9.1-GL、VH5F9.2-GL及びVH5F9.3-GLに対して:D88→A、
重鎖VH5F9.4-GL、VH5F9.5-GL及びVH5F9.6-GLに対して:
Q1→E及び
重鎖VH5F9.7-GL、VH5F9.8-GL及びVH5F9.9-GLに対して:
L5→V。
【0296】
軽鎖VL 5F9.1-GLに対して、次のバーニア及びVH/VL接続残基のうち1以上を次のように復帰突然変異させる:I2→V、M4→L、Y41→F。
【0297】
軽鎖VL 5F9.2-GLに対して、次のバーニア及びVH/VL接続残基のうち1以上を次のように復帰突然変異させる:M4→L、R51→L。
【0298】
軽鎖VL 5F9.3-GLに対して、次のバーニア及びVH/VL接続残基のうち1以上を次のように復帰突然変異させる:M4→L、Y41→F。
【0299】
(実施例7)
組み換えヒト化抗RGM A抗体の構築及び発現
上記セクションixに記載のように、全長ヒト化抗体を一時的に産生させるために、フレームワーク復帰突然変異を含有する重鎖及び軽鎖を有するpHybE発現ベクターを293-6E細胞に同時遺伝子移入した。可変ドメインのデノボ合成によって及び/又は、突然変異誘発性プライマー及びPCR及び当技術分野で周知の方法を用いて、実施例5に従い調製されるようなCDRグラフト抗体配列に突然変異を導入した。ヒト化抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列を表8で開示する。
【0300】
具体的に、重鎖に対して:
VH5F9.1、VH5F9.5及びVH5F9.9は、Q1→E突然変異があるVH5F9.4-GLを含有する。
【0301】
VH5F9.2、VH5F9.6、VH5F9.10、VH5F9.19、VH5F9.20、VH5F9.21及びVH5F9.22は、Q1→E突然変異及び次のバーニア及びVH/VL接続残基復帰突然変異:V37→I、V48→I、A49→G、T98→KがあるVH5F9.4-GLを含有する。
【0302】
VH5F9.3、VH5F9.7及びVH5F9.11は、L5→V突然変異があるVH5F9.7-GLを含有する。VH5F9.4、VH5F9.8、VH5F9.12、VH5F9.23、VH5F9.24、VH5F9.25及びVH5F9.26は、L5→V突然変異及び次のバーニア及びVH/VL接続残基復帰突然変異:V37→I、V48→I、S49→GがあるVH5F9.7-GLを含有する。
【0303】
軽鎖に対して:
VL5F9.1、VL5F9.2、VL5F9.3及びVL5F9.4はVL5F9.1-GLと同一である。
【0304】
VL5F9.5、VL5F9.6、VL5F9.7及びVL5F9.8はVL5F9.2-GLと同一である。
【0305】
VL5F9.9、VL5F9.10、VL5F9.11及びVL5F9.12はVL5F9.3-GLと同一である。
【0306】
VL5F9.19及びVL5F9.23は、次のバーニア及びVH/VL接続残基復帰突然変異:M4→L、R51→LがあるVL5F9.2-GLを含有する。VL5F9.20及びVL5F9.24は、次のバーニア及びVH/VL接続残基復帰突然変異:M4→LがあるVL5F9.2-GLを含有する。
【0307】
VL5F9.21及びVL5F9.25は、次のバーニア及びVH/VL接続残基復帰突然変異:M4→L、Y41→FがあるVL5F9.3-GLを含有する。VL5F9.22及びVL5F9.26は、次のバーニア及びVH/VL接続残基復帰突然変異:M4→LがあるVL5F9.3-GLを含有する。
【0308】
【表11】
【0309】
(実施例8)
競合ELISAを用いたヒト化5F9抗体の特性評価
0.2M炭酸-重炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.4中の0.25μg/mL hRGM Aの50μL/ウェルにより、4℃で一晩、ELISAプレート(Costar 3369)を被覆し、洗浄緩衝液(0.1%Tween20を含有するPBS)で洗浄し、PBS中2%脱脂粉乳200μL/ウェルにより室温で1時間ブロッキング処理した。洗浄緩衝液での洗浄後、ELISA緩衝液50μL/ウェル中の、ビオチン化キメラ5F9(0.1μg/mL最終濃度)及び50μg/mL最終濃度から始まり5倍連続希釈した未標識競合試験抗体の混合物をデュプリケートで添加した。室温で1時間プレートを温置し、洗浄緩衝液で洗浄した後、ELISA緩衝液中のHRP結合ストレプトアビジン(Fitzgerald)の1:10,000希釈液100μL/ウェルを用いて、結合した抗体を検出した。室温で1時間温置し、洗浄緩衝液で洗浄した後、TMB緩衝液(Zymed)100μL/ウェルを添加することにより発色を行った。室温で15分間温置した後、1N塩酸50μL/ウェルを添加することによって発色を停止させた。490nmで吸収を読み取った。
【0310】
表9は、コンピュータソフトウェアGraphPad Prism(GraphPad Software Inc.、San Diego、CA)を用いて得られたヒト化5F9抗体のIC50値を示す。
【0311】
【表12】
【0312】
(実施例9)
BIACORE技術を用いたキメラ及びヒト化抗体の親和性決定
BIACOREアッセイ(Biacore、Inc、Piscataway、NJ)は、会合、解離速度定数の速度論的測定により抗体の親和性を決定する。25℃での連続的なHBS-EP(10mM HEPES[pH7.4]、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005%界面活性剤P20)を用いた、Biacore(R)3000機器(Biacore(R)AB、Uppsala、Sweden)での表面プラズモン共鳴に基づく測定により、組み換え精製ヒトRGM Aに対する抗体の結合を調べた。化学物質は全て、Biacore(R)AB(Uppsala、Sweden)から得た。25μg/mLで製造者の説明書及び手順に従い、標準的アミンカップリングキットを用いて、ヤギ抗ヒトIgGおよそ5000RU、(Fcγ)、10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)中で希釈した断片特異的ポリクローナル抗体(Pierce Biotechnology Inc、Rockford、IL)をCM5研究グレードバイオセンサーチップの全域に直接固定化した。バイオセンサー表面上の未反応部分をエタノールアミンでブロッキング処理した。フローセル2及び4の修飾カルボキシメチルデキストラン面を反応面として使用した。フローセル1及び3のヤギ抗ヒトIgGなしの未修飾カルボキシメチルデキストランを参照面として使用した。ヤギ抗ヒトIgG特異的反応面全域での捕捉のために、HEPES-緩衝塩中で精製抗体を希釈した。5μL/分の流速で、リガンドとして捕捉しようとするヒト抗体(25μg/mL)を反応基盤全体に注入した。25μL/分の連続流速下で、会合及び解離速度定数、kon(単位 M-1-1)及びkoff(単位s-1)を調べた。速度定数は、0.39から50nMの範囲の10種類の異なる抗原濃度で速度論的結合測定を行うことにより得た。速度論的分析に対して、Biaevaluation 4.0ソフトウェアを使用して、1:1Langmuir結合モデルから得られた反応速度式を同様に全8回の注入の会合及び解離相に(グローバルフィット分析を用いて)フィットさせた。次に、ヒト化抗体と組み換え精製ヒトRGM Aとの間の反応の平衡解離定数(単位 M)を次の式:K=koff/konによって、反応速度定数から計算した。
【0313】
【表13】
【0314】
(実施例10)
ヒト化5F9抗体は、神経SH-SY5Y化学走性アッセイにおいてヒトRGM Aの化学反発活性を中和する。
【0315】
化学走性アッセイは、化学誘引又は化学反発活性を発揮することができる拡散性因子に反応した細胞の化学走性の挙動を測定する。RGM Aは、膜結合(接触に依存した反発)及び可溶性の拡散形態(化学反発性)の両方で作用するタンパク質として記載されており、従って、hRGM A化学走性アッセイにおいて評価されてきた。この目的のために、RGM受容体ネオゲニンを保持するRGM A-感受性のヒト神経芽細胞腫細胞SH-SY5Yを使用した(Schaffarら、J.Neurochemistry:107:418-431、2008)。10%ウシ胎仔血清及び1%非必須アミノ酸(MEM-NEAA)を添加したアール平衡塩溶液/F12(EBSS/F12)培地中でSH-SY5Y細胞を増殖させた。神経突起伸長の誘導のために、10μmレチノイン酸(RA)を添加した培地中で細胞を培養した。5-6時間後、細胞をトリプシン処理し、24ウェルBoyden Chambers(BD Falcon 351185、HTS Multiwell System)に入れるために数えた。細胞縣濁物500μL(1x10個の細胞に対応)を各ウェルの内側の円部分に添加した。この内側の円部分は、各ウェルのより大きい外側の円部分と、8μm孔径のPET膜により分離されている。培地+/-RGM A+/-抗体600μLをピペットで外側の円部分に入れ、マルチウェルボイデンチャンバー中で細胞を37℃で一晩培養した。温置後、培地を吸引除去し、固定剤(2%パラホルムアルデヒド)に置き換えた。室温で2時間固定を続け、PBSで数回洗浄段階を行った後、0.1%Triton-X-100を含有するPBSを用いて透過処理を行った(15分、RT)。Alexa Fluor488ファロイジン1:100(Invitrogen A12379)及びビスベンズイミド(H332456)1:100の溶液中で暗所にて1時間これらを温置することにより、細胞の染色を行った。PBSで2回洗浄段階を行った後、培養物にPBSを満たし、パラフィルムで密封し、蛍光顕微鏡(Zeiss Axiovert)での分析のために暗所で保存した。
【0316】
hRGM Aの非存在下で、細胞は、膜孔を通じて移動し、固定及び染色後に数えることができる。数えられるのは、膜の底部に接着した細胞のみであるが、これは、これらの細胞がPET膜を通じて移動したからである。固定手順前に、膜の上側にある細胞を慎重に剥がした。この化学走性アッセイから、hRGM Aが存在した場合、膜を通じて移動するSH-SY5Y細胞の数が80%超、顕著に減少したことが証明された。ラットモノクローナル5F9、キメラヒト-ラット5F9及びヒト化5F9は、膜の底部で見られる細胞の数の増加で明らかであるように、10μg/mLでhRGM Aの化学反発活性を部分的又は完全に中和した(アイソタイプ対照ラットモノクローナル抗体(p21)は中和しなかった。)(図10)。
【0317】
(実施例11)
5F9は、視神経損傷のラットモデルにおいて、破壊された損傷視神経軸索の再生を誘導する。
【0318】
視神経破壊(又は視神経損傷)モデルは、視神経繊維の再生を刺激し、網膜ガングリオン細胞の大規模な細胞死を減少させる様々な物質を試験するための動物モデルを提供する。
【0319】
Charles River(D)Laboratories(Germany)から得られた成体雄Sprague Dawley及び雄Wistarラットにおいて、この実験を行った。不断給餌給水で12:12時間の明/暗周期で1つのケージ中でこれらの動物を維持した。最小限の前方固定術(Aanterior surgery)により常に左眼でのみ視神経破壊を行う。これは、視神経損傷の最小侵襲法であり、ヒト前方固定視覚術法(anterior visual surgical method)に従い、発明者らにより開発された。手術手順前及び手術手順中、セボフルラン(Abbott GmbH Co.& KG、Delkenheim、Germany)を用いて吸入麻酔により動物に麻酔をかけ、顎クランプ及び四肢に対する粘着テープを用いて手術台に固定する。動物を加温パッドに載せることによって体温低下を防ぐ。ラット視神経の前部破壊術のために、左眼を慎重に靭帯及び結合組織から外す。第一段階として、眼の外角の隣接組織を顕微鏡下で切断する(2-3mm)。次に、眼の筋肉及び涙腺を側面に寄せるために(従ってそれを取っておく。)鉗子を用いることによって、視神経を露出させる。次の段階で、視神経を露出させるために微小鋏を用いてることにより髄膜を縦方向に開いた。
【0320】
この結果、眼の可動性が高まり、眼の外旋が可能となり、その左視神経に触れることができるようになる。20-30秒間にわたり一定の最大圧力を与えるために鉗子を用いて、眼のおよそ1-3mm後で視神経に損傷を与える。眼への血管供給に障害を与えないように特別な注意を払う。
【0321】
抗体及び緩衝溶液の局所投与
視神経の破壊損傷後、5F9抗体(n=10匹)、8D1対照抗体(n=10匹)により又はビヒクル対照PBS(n=10匹)により、雄Sprague Dawleyラットを局所的に処置した。異なる処置群に対して盲検で実験を行った。局所抗体投与のために、小さなゲルフォーム片(長さ:2.5mm、幅:2.5mm、高さ:2.5mm)を10mg/mL抗体溶液20μL又はPBS20μLに浸し、視神経病変部位のすぐ隣に置いた。最小侵襲手術及び抗体適用後、動物が動き始めるまで、体温を調節するために加温装置上に載せた清潔なケージ中のペーパータオルの上に動物を置いた。細菌感染及び強膜の乾燥を防ぐために抗生物質(Gentamytrex、Dr.Mann Pharma)を含有する軟膏を眼に塗布した。術後すぐ及び次いで3日間にわたり1日2回、術後の疼痛治療のために、カルプロフェン(Rimadyl、5mg/kg、Pfizer GmbH、Karlsruhe)をi.p.投与した。全動物が生存し、麻酔及び手術から回復したことを確認するために、術後すぐから数時間定期的に及び翌日、動物を観察し、調整した。手術及び抗体/ビヒクル適用から5週間後、ナルコレンの過剰用量(40-60mg/kg)で動物を麻酔し、心臓への4%パラホルムアルデヒド溶液の注入により潅流した。視神経を摘出し、組織の適正な固定を確実にするために、室温で1時間、4%パラホルムアルデヒド溶液に移した。後固定後、30%スクロース溶液(4℃)中でラット視神経を一晩保存した。翌日、視神経をTissue Tekに包埋し、凍結し、クライオスタットを用いて16μmの厚さの縦断面の切片を作製した。
【0322】
免疫染色のために、冷(-20℃)アセトンで視神経切片を固定し(10分間)、Tris緩衝食塩水(TBS、Fluka 93312)で3x洗浄(5分間)し、ブロッキング処理し、5%ウシ血清アルブミン及び1%Triton-X-100(30分)を含有するTBSで室温にて透過処理した。TBSでの2回の個別の洗浄段階(5分間)により、残留BSA及び界面活性剤を除去した。5%BSA/TBS溶液中で1:100希釈したポリクローナルウサギ抗GAP-43抗体(Abcam、ab7562)とともに切片を室温で1時間温置した。TBS、0.1%Tweenでの3回の洗浄段階後、細胞核を視覚化するために、ビスベンズイミド(H33258、50μg/mL)の1:100希釈物を含有する、5%BSA/TBS中で1:1000希釈したAlexa Fluor488-結合ヤギ抗ウサギ二次抗体(Molecular Probes A11034)とともに切片を室温で1時間温置した。包埋する前に、染色した切片をTBS 0.1%Tween(各段階5分間)及び蒸留水で3回洗浄した。Fluoromount Gに切片を包埋し、カバースリップで覆い、顕微鏡での記録のために暗所で保管した。
【0323】
Zeiss蛍光顕微鏡画像を用いて、染色した縦断面切片の画像(図11)をZeiss Axiovisionソフトウェアを用いて保存した。Photoshop Image Analysisソフトウェア(Adobe)を用いて各神経の単一像を分析のために載せた。視神経の合成画像を用いて、2種類の異なる方法で定量分析を行った。Axiovisionソフトウェアを用いて病変部位のGAP-43陽性面積を測定した。(図12B)。この最初の定量分析とは独立して、4ヶ所の異なる領域:破壊部位から0-200μm、200-400μm、400-600μm及び600-1200μmの領域で単一再生繊維(GAP-43陽性)を数えた。Graphpad Prismソフトウェアを用いて、データ分析及びデータの統計評価を行った(図12A)。
【0324】
抗体及び緩衝溶液の全身投与
全身抗体送達のために、5F9抗体(n=10匹)又はビヒクル対照PBS(n=10匹)により、雄Wistarラットを全身的(腹腔内(ip)又は静脈内(iv))に処置した。動物に2回注射し、神経破壊誘導後すぐ、第0日に、及び破壊後第21日に注射を行った。与えられた抗体の用量は、第0日に2mg/kg及び第21日に10mg/kgであった。破壊損傷から5週間後に動物を屠殺し、上述のように、組織摘出、切片作製、染色及び定量分析を行った。前回のように、2群の異なる治療群に対して盲検で実験を行った。ラット視神経の合成画像を図13で示す。5F9処置動物(A)において、PBSで処置した対照動物(B)と対照的に、破壊部位を越えて多くのGAP-43陽性繊維が伸長している。破壊部位は、左端にあり、再生繊維はGAP-43に対する抗体で染色される。5F9処置動物の視神経の上下縁部で多くの繊維が観察されるが、PBS動物では観察されない。
【0325】
5F9により、再生GAP-43陽性繊維の数が顕著に増加したが、ビヒクル対照PBSでは増加しなかった。5F9で処置した動物において、300μmから1800μmの距離で、ビヒクル処置動物によりも、顕著に多くの繊維(p<0.001)が見出された。それぞれ2mg/kg及び10mg/kgの5F9で第0日及び第21日に動物を処置した。抗体又はビヒクルを腹腔内又は静脈内投与した。データは、1群あたり9匹の動物の分析からのものである。動物あたり3枚連続のクライオスタット切片を分析した(図14A)。
【0326】
第二の実験において、視神経損傷後、5F9抗体(n=10匹)、8D1対照抗体(n=10匹)により又はビヒクル対照PBS(n=10匹)により、雄Wistarラットを全身的(iv)に処置した。ivで投与される抗体2mg/kgをラットに週に1回注射し、視神経破壊後すぐに注射を開始した。全てのラットは、4回の注射を受け、破壊損傷から5週間後に動物を安楽死させた。実験を盲検で行い、前に記載したように組織処理及び定量分析を行った。5F9により再生GAP-43陽性繊維の数が顕著に増加したが、ビヒクル対照PBSでは増加しなかった。200μmから1400μmの距離で、ビヒクル又は対照抗体処置動物よりも、5F9処置動物において有意に多くの繊維が見られた(p<0.001)。第0日から開始して4週間にわたり、5F9(投与あたり2mg/kg)により、対照抗体8D1(投与あたり2mg/kg)により又はPBSにより、週に1回動物をiv処置した(図14B)。
【0327】
(実施例11)
視神経損傷のラットモデルにおいて、5F9は、破壊され、障害を受けた視神経軸索の再ミエリン形成を誘導する。
【0328】
乏突起膠細胞及びミエリンに対するマーカーは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)である。異なる治療群で再ミエリン形成に差異が生じるか否かという問題に答えるために、MBPに対する抗体を使用した。再ミエリン形成の過程を視覚化するために、全身的処置を行った動物の視神経切片を冷(-20℃)アセトン(10分間)で固定し、Tris緩衝食塩水(TBS、Fluka 93312)で3回(5分間)洗浄し、ブロッキング処理し、5%ウシ血清アルブミン及び1%Triton-X-100を含有するTBSで室温にて透過処理(30分間)した。TBSでの2回の個別の洗浄段階(各5分間)により、残留BSA及び界面活性剤を除去した。5%BSA/TBS溶液中で1:50希釈したポリクローナルウサギ抗MAB抗体(Abcam、ab2404)で切片を4℃で3時間又は一晩温置した。TBS、0.1%Tweenでの3回の洗浄段階後、細胞核を視覚化するために、ビスベンズイミド(H33258、50μg/mL)の1:100希釈液を含有する、5%BSA/TBS中で1:1000希釈したAlexa Fluor488-結合ヤギ抗ウサギ二次抗体(Molecular Probes A11034)とともに切片を室温で1時間温置した。包埋する前に、染色した切片をTBS 0.1%Tweenで3回(各段階5分間)及び蒸留水で洗浄した。Fluoromount Gに切片を包埋し、カバースリップで覆い、顕微鏡での記録のために暗所で保存した。
【0329】
Zeiss蛍光顕微鏡を用いて、染色した縦断面切片の画像をZeiss Axiovisionソフトウェアを用いて保存した。Photoshop Image Analysisソフトウェア(Adobe)を用いて各神経の単一像を分析のために載せた。視神経の合成画像を用いて、2種類の異なる方法で定量分析を行った。Axiovisionソフトウェアを用いて病変部位のMBP陽性面積を測定した。Graphpad Prismソフトウェアを用いて、データ分析及びデータの統計評価を行った。
【0330】
それぞれ2mg/kg及び10mg/kgの5F9で第0日及び第21日に動物を処置した。抗体又はビヒクルを腹腔内又は静脈内投与した。
【0331】
ラット視神経の合成画像
ミエリンマーカーであるミエリン塩基性タンパク質MBPに対する抗体を用いて、ミエリン形成を視覚化する。破壊部位は混成神経(composite nerve)の中央部に位置し、この領域はビヒクル処置対照動物(A及びB)にはない。5F9処置動物(C及びD)において、視神経の中央部領域(破壊の中央部)で多くのMBP-陽性構造が観察される(図15)。
【0332】
ミエリンマーカーであるミエリン塩基性タンパク質MBPに対する抗体を用いて、ミエリン形成を視覚化する。Zeiss Axiovisionソフトウェアを用いてMBP面積を測定した。M1及びM2は、2回の独立した測定であり、Mは平均測定MPB陽性面積である。5F9により、視神経破壊部位のMBP面積は有意に(ビヒクル対照に対してp<0.001)3.5倍、増加する(図16)。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
【配列表】
2023103237000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1x10-7M以下のK及び1x10-2-1以下のkoff速度定数(両者とも表面プラズモン共鳴により測定)でヒトRGM Aから解離する、結合タンパク質。