(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103245
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】アルカリ処理肉エマルジョンからのタンパク質生成及び方法
(51)【国際特許分類】
A23J 1/02 20060101AFI20230719BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230719BHJP
A23L 2/66 20060101ALN20230719BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20230719BHJP
A23G 9/38 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
A23J1/02
A23L5/00 M
A23L2/66
A23L23/00
A23G9/38
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023068287
(22)【出願日】2023-04-19
(62)【分割の表示】P 2019571029の分割
【原出願日】2018-06-18
(31)【優先権主張番号】62/523,130
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・アール・アイメティス
(72)【発明者】
【氏名】ムファン・グオ
(72)【発明者】
【氏名】ソニア・ハン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】乾燥機能化タンパク質生成物の調製プロセスを提供する。
【解決手段】調製プロセスは、肉を粉砕して、5mm未満の粒径を有する粉砕された肉を形成すること、粉砕された肉を水、食品等級のアルカリ組成物、及び食品等級の塩と混合して、6.5~9.5の範囲のpHを有する機能化タンパク質ブラインを形成し、混合は、肉のpHを5.3未満にするような方法で肉を酸に曝露しないように実行すること、並びに機能化タンパク質ブラインを凍結乾燥させて、乾燥機能化タンパク質生成物を形成すること、を含み、ただし、親水性有機溶媒の使用および超音波処理が除かれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機能化タンパク質生成物の調製プロセスであって、
肉を粉砕して、5mm未満の粒径を有する粉砕された肉を形成すること、
前記粉砕された肉を水、食品等級のアルカリ組成物、食品等級のアルカリ組成物、及び食品等級の塩と混合して、約6.5~約9.5の範囲のpHを有する機能化タンパク質ブラインを形成し、前記混合は、肉のpHを約5.3未満にするような方法で肉を酸に曝露しないように実行すること、及び
機能化タンパク質ブラインを乾燥させて、乾燥機能化タンパク質生成物を形成すること、を含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記乾燥機能化タンパク質生成物が、デンプン及びガムが添加されていない場合、タンパク質1gあたり200gを超えるオイルというエマルジョン容量を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記乾燥機能化タンパク質生成物が、デンプン及びガムが添加されていない場合、K-カラギーナンハイドロコロイド分離を示さないか、またはイオタ-カラギーナンハイドロコロイド分離を示さないか、またはグアーガムハイドロコロイド分離を示さない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記肉が家禽肉を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記肉が鶏肉及び七面鳥から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記乾燥機能化タンパク質生成物が、デンプン及びガムが添加されていない場合、90gを超えるゲル硬度を有するか、または約90g~約300g、または約90g~約200g、または約90g~約150gのゲル硬度を有する、請求項4または5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記乾燥機能化タンパク質生成物が、デンプン及びガムが添加されていない場合、タンパク質1gあたり60mlの泡を超える発泡能力を有する、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記乾燥機能化タンパク質生成物が、デンプン及びガムが添加されていない場合、0.1 1/sの剪断速度で測定したとき、3Pa・sより大きい粘度を有する、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記乾燥機能化タンパク質生成物が、デンプン及びガムが添加されていない場合、1.0 1/sの剪断速度で測定したとき、0.3Pa・sより大きい粘度を有する、請求項4または5記載のプロセス。
【請求項10】
前記肉が牛肉である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記乾燥機能化タンパク質生成物が、デンプン及びガムが添加されていない場合、0.1 l/sの剪断速度で測定したとき、1Pa・sより大きい粘度を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記乾燥機能化タンパク質生成物が、デンプン及びガムが添加されていない場合、1.0 1/sの剪断速度で測定したとき、0.2Pa・sより大きい粘度を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記乾燥機能化タンパク質生成物が、デンプン及びガムが添加されていない場合、400gを超えるゲル硬度を有するか、または約450g~約650g、もしくは約500g~約550gのゲル硬度を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1、4、5及び10のいずれか1項に記載のプロセスにより製造された乾燥機能化タンパク質生成物。
【請求項15】
前記乾燥機能化タンパク質生成物が、デンプン及びガムが添加されていない、請求項14に記載の乾燥機能化タンパク質生成物。
【請求項16】
再構成機能化タンパク質製剤の調製プロセスであって:
請求項14に記載の乾燥機能化タンパク質生成物を、約3重量%~約35重量%の肉含有量を有する再構成機能化タンパク質製剤を形成するのに十分な水で再構成すること、を含む、前記プロセス。
【請求項17】
請求項16に記載のプロセスによって作られた再構成機能化タンパク質製剤。
【請求項18】
飲料及びソース(サラダドレッシングなど)からなる群より選択される食物系に前記再構成機能化タンパク質製剤を組み込むことを含む、請求項17に記載の再構成機能化タンパク質製剤を使用するプロセス。
【請求項19】
請求項17に記載の再構成機能化タンパク質製剤を使用するプロセスであって、前記肉が家禽であり、前記再構成機能化タンパク質製剤を、パン及び冷凍発泡デザート(例えば、アイスクリーム、フローズンカスタード、フローズンヨーグルト、シャーベット、及びジェラートなど)からなる群より選択される食物系に組み込むことを含む、前記プロセス。
【請求項20】
前記肉が鶏肉及び七面鳥から選択される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉タンパク質生成物ならびにその製造及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の筋肉組織に由来する筋形質タンパク質及び筋原線維タンパク質を含むタンパク質懸濁液は、解凍または調理中の食品の水分保持を改善すると断言されている。Kelleherらの米国特許出願公開第2011/0244093号を参照のこと。この出願は、動物の筋肉組織を粉砕し、次いでそれを、動物の筋肉タンパク質を可溶化する条件下で食品等級のアルカリ組成物と混合することにより動物の筋肉組織から動物の筋肉タンパク質組成物を得ること、それによって動物の筋肉タンパク質の溶液を形成することを記載している。次いで、懸濁した塩基性動物筋肉組織を、食品等級のアルカリ組成物と混合して、可溶化動物筋肉タンパク質のpHを約4.7~約11.0、好ましくは約5.5~約9.5のpHに下げ、それによってタンパク質を沈殿させる。次に、沈殿したタンパク質を粉砕して、水性媒体に懸濁したタンパク質微粒子を形成する。このように調製された本発明の組成物を、解凍及び/または調理される食品に添加して、食品中の水分保持を増大させる。[0010]段落を参照のこと。タンパク質を可溶化するための溶液のpHは、約10.5以上であると開示されている。[0015]段落を参照のこと。
【0003】
タンパク質を単離するプロセスは、Hultinらの米国特許第6,136,959号に記載されており、ここでは、タンパク質は塩基で処理され、遠心分離され、酸性化されて食用タンパク質が沈殿する。カラム1の24~35行を参照のこと。塩基で処理した後の溶液のpHは、約10.0より大きいことが開示されている。カラム3、25~28行を参照のこと。同様に、米国特許第7,556,835号は、タンパク質をアルカリ溶液に可溶化し、混合物から可溶化タンパク質を沈殿させることによりタンパク質を単離するプロセスを開示している。カラム1、58~67行を参照のこと。タンパク質の可溶化は、混合物のpHを約10.0以上に上げることにより達成されることが開示されている。カラム2、行47~50を参照のこと。
【0004】
調理されたタンパク質食品の保水能力及び柔らかさを改善するためのプロセスは、Hultinらの米国特許出願公開第2010/0009048号(「Hultin「048」)に記載されている。Hultin‘048の段落[0017]に考察されているように、pH調整溶液で処理される食品は、溶液を注入すること、溶液で食品を反転させること、または溶液で食品を浸漬することによってそのように処理される。したがって、処理される食品は、部分(みじん切り部分を含む)であり、それ自体が、次に、動物の筋肉部分に追加される粉砕された肉エマルジョンではない。Hultin‘048は、pH調整溶液へのタンパク質単離物の取り込みを開示している。例えば、[0014]及び[0015]の段落を参照のこと。Hultin‘048は、「タンパク質及びタンパク質単離物を調製するための方法([m]ethods)が当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第6,005,073号、同第6,136,959号、同第6,288,216号、及び同第6,451,975号に見出され得ることを明確にしている。[0050]段落を参照のこと。これらの参照特許は全て、動物の筋肉からタンパク質を単離することを考察している。
【0005】
低粘度、高ゲル強度のタンパク質デンプン組成物は、Choらの米国特許第6,187,367号に記載されている。この特許は、デンプン材料を糊化することなくタンパク質材料とデンプン材料を複合化させる条件下で、デンプンとタンパク質材料のスラリーを噴霧乾燥することを記載している。要約を参照のこと。
【発明の概要】
【0006】
粉砕、アルカリ処理、及び乾燥の組み合わせによって処理された肉は、追加のタンパク質を組み込むことで恩恵を受けるさまざまな食品及び飲料に適用するための新しい食品成分として使用するための優れた特性を示し、そのようなタンパク質が提供する栄養的及び感覚受容的な利益を有することがわかっている。
【0007】
乾燥機能化タンパク質生成物(Dried Funcionalized Protein Product)を調製するためのプロセスが提供され、これには、肉を粉砕して5mm未満の粒径を有する粉砕された肉を形成すること、及びこの粉砕された肉を水、食品等級のアルカリ組成物、及び食品等級の塩と混合して、約6.5~約9.5の範囲のpHを有する機能化タンパク質ブライン(Functionalized Protein Brine)を形成すること、を含む。この混合は、肉のpHが約5.3未満になるような方法で肉が酸に曝露されないように行われる。得られた機能化タンパク質ブラインを乾燥させて、乾燥機能化タンパク質生成物を形成する。一態様では、機能化タンパク質ブラインは、凍結乾燥プロセスにより乾燥される。一態様では、機能化タンパク質ブラインは、噴霧乾燥プロセスにより乾燥される。
【0008】
ある態様において、このプロセスにより製造された乾燥機能化タンパク質生成物も提供される。
【0009】
別の態様において、再構成機能化タンパク質製剤(Reconstituted Functionalized Protein Formulation)を調製するプロセスは、本明細書に記載の乾燥機能化タンパク質生成物を十分な水で再構成して、再構成機能化タンパク質製剤の総重量に基づいて、約3重量%~約35重量%、または約5重量%~約25重量%、または約7重量%~約15重量%という肉含有量(すなわち、タンパク質、脂肪などを含む肉の全ての固体成分)を有する再構成機能化タンパク質製剤を形成することを含む。一態様では、上記で列挙した再構成機能化タンパク質製剤のいずれかの肉は家禽である。一態様では、上記の再構成機能化タンパク質製剤のいずれかの肉は鶏肉である。一態様では、上記で列挙した再構成機能化タンパク質製剤のいずれかの肉は牛肉である。
【0010】
別の態様において、本明細書に記載の再構成機能化タンパク質製剤を使用するプロセスは、飲料及びソース(サラダドレッシングなど)からなる群より選択される食物系に上記再構成機能化タンパク質製剤を組み込むことを含む。
【0011】
別の態様において、肉が家禽である、本明細書に記載の再構成機能化タンパク質製剤を使用するプロセスは、パン及び冷凍発泡デザート(例えば、アイスクリーム、フローズンカスタード、フローズンヨーグルト、シャーベット、及びジェラートなど)からなる群より選択される食物系に前記再構成機能化タンパク質製剤を組み込むことを含む。
【0012】
一態様では、粉砕された肉エマルジョン中の肉のタンパク質の少なくとも約70重量%が可溶化され、粉砕された肉エマルジョン中の肉のタンパク質は、粉砕された肉エマルジョン中の肉から単離されない。一態様では、粉砕された肉エマルジョン中の肉のタンパク質の約30重量%以下が沈殿される。理論に拘束されるものではないが、エマルジョンを肉部分に加える前に、粉砕された肉を約6.5~約9.5の範囲のpHに曝露すると、筋肉組織のタンパク質により大きな正味電荷が生じ、結合水及び固定水の量が増大すると考えられている。対照的に、より低いpHに曝露された粉砕された肉は、特にタンパク質が変性または水に不溶になった場合、水結合に利用可能なタンパク質の反応基の全体的な減少を示す。本明細書に記載の示されたpH範囲のみに粉砕された肉を暴露すると、最終製品に明確な感覚刺激特性がもたらされることがわかった。5.3未満及び9.5を超えるpH範囲に肉をさらすと、肉の中のタンパク質が変性することがわかっている。タンパク質を変性すると、エマルジョンが肉に水分を保持する能力の有効性が低下することがわかっている。さらに、タンパク質を変性させると最終エマルジョンの粘度が不可逆的に低下し、粘度を再び増大させるために増粘剤を添加する必要があることがわかっている。粉砕された肉が低すぎるpHにさらされる場合、肉の色が望ましくないレベルに退色する傾向がある。粉砕された肉が高すぎるpHにさらされる場合、肉の色が暗くなり、望ましくない暗色になる傾向がある。
【0013】
特許または出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面(複数可)を含むこの特許または特許出願公開のコピーは、要求及び必要な料金の支払いに応じて、特許庁が提供する。
【0014】
本出願に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本発明のいくつかの態様を示し、実施形態の説明とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。図面の簡単な説明は次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】未乾燥及び再構成凍結乾燥組成物の両方における鶏肉アルカリ処理試料と比較した、鶏肉未処理対照(Chiken untreated Control)のエマルジョン容量値を示すグラフである。
【
図2】未乾燥及び再構成凍結乾燥組成物の両方における鶏肉及び牛肉のアルカリ処理試料(Chicken and beef Alkali treated samples)と比較した、鶏肉及び牛肉未処理対照(Chicken and Beef untreated Conterols)の発泡能力(Foaming Capasity)特性を示すグラフである。
【
図3】鶏肉及び牛肉のアルカリ処理未乾燥試料と比較した、鶏肉及び牛肉の未処理対照のゲル硬度(Gel Hardness)特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に記載される本発明の態様は、網羅的であること、または以下の詳細な説明に開示される正確な形態に本発明を限定することを意図するものではない。むしろ、選択及び説明される態様の目的は、例示または実施例によるものであり、したがって、本発明の一般的な原理及び実践の当業者による評価及び理解が促進され得る。
【0017】
本明細書に記載のプロセスで使用される肉は、一態様では、あらゆる種のあらゆる種類の肉であり得る。ある態様において、適切な肉としては、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、鳥類、魚類もしくは他の魚介類、または一般的に食用に屠殺された任意の動物から得られる肉が挙げられる。ウシの動物としては、限定するものではないが、バッファロー、及び全ての牛、例としては、去勢牛、未経産牛、雌牛、及び雄牛が挙げられる。ブタ動物としては、限定するものではないが、飼育豚及び繁殖豚、例としては、雌ブタ(sow)、雌ブタ(gilt)、去勢ブタ、雄ブタが挙げられる。ヒツジ動物としては、限定するものではないが、羊、例としては、雌ヒツジ、雄ヒツジ、去勢羊、及び子羊が挙げられる。家禽としては、限定するものではないが、鶏、七面鳥、及びダチョウが挙げられる。一態様では、肉とは、牛肉、豚肉、七面鳥、または鶏肉である。好ましい態様において、肉は家禽肉を含み、その肉は鶏肉である。
【0018】
ある態様では、粉砕された肉エマルジョンは、少なくとも約80%の赤身、または少なくとも約85%の赤身、または少なくとも約90%の赤身、または少なくとも約95%の赤身である。
【0019】
ある態様において、筋原線維タンパク質は、粉砕された肉エマルジョンの少なくとも約1.5重量%である。一態様では、筋原繊維タンパク質は、粉砕された肉エマルジョンの約1.5重量%~約10重量%である。一態様では、筋原線維タンパク質は、粉砕された肉エマルジョンの少なくとも約1.5重量%~約10重量%である。
【0020】
ある態様では、粉砕された肉エマルジョンの肉は、周知の手順に従って乳化する前に、刻むこと、破砕すること、または薄片にすることによって粉砕される。一態様では、肉は、1つ以上の回転刃または1つ以上の往復刃を有する装置によって細粒に粉砕される。
【0021】
一態様では、肉は、粉砕されることなく、まず小分けサイズで提供され、食品等級のアルカリ組成物と混合される。この混合物の形成後、肉は、次いで、1つ以上の粉砕ステップで所望の最終粒径に粉砕され、約6.5~約9.5のpHを有する粉砕された肉エマルジョンが形成される。
【0022】
ある態様では、肉を粉砕して、所望の最終粒径よりも大きい中間粒径を有する粉砕された肉を形成し、次いで、食品等級のアルカリ組成物と混合して、約6.5~約9.5のpHを有する混合物を形成する。この態様では、粉砕された肉を食品等級のアルカリ組成物と混合するステップは、追加の粉砕であって、1つ以上のさらなる粉砕ステップにおいて粒径をさらに小さくして、約6.5~約9.5のpHを有する粉砕された肉エマルジョンを形成する粉砕を含む。
【0023】
一態様では、粉砕された肉は、食品等級のアルカリ組成物と混合される前に、1つ以上の粉砕ステップで所望の最終粒径に粉砕される。次いで、粉砕された肉を、食品等級のアルカリ組成物と混合して、約6.5~約9.5のpHを有する粉砕された肉エマルジョンを形成する。
【0024】
一態様において、肉を、1つ以上の中間粉砕ステップで粉砕して、最長寸法で約1mm~約10mm、または最長寸法で約1mm~約5mm、または1mm~約3mm、または最長寸法で約1~約2mmの平均粒径を有する粉砕された肉を形成する。
【0025】
ある態様において、粉砕された肉エマルジョンの粒子は、約3mm未満、または約2mm未満、または約1mm未満、または約0.5mm未満、または約0.1mm未満の平均粒径を有する。ある態様において、粉砕された肉エマルジョンの粒子は、約0.1~約3mm、または約0.1~約3mm、または約0.1~約0.4mm、または約1~約3mmの平均粒径を有する。一態様では、粉砕された肉エマルジョンの粒子は、約1mm未満、または約0.5mm未満の最大粒径を有する。一態様では、粉砕された肉は、1mmより大きい粒子を実質的に含まない。
【0026】
一態様において、食品等級のアルカリ組成物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、またはそれらの混合物などから選択される1つ以上のアルカリ物質を含むアルカリ組成物である。一態様では、食品等級のアルカリ組成物は、重炭酸ナトリウムもしくは重炭酸カリウムまたはそれらの混合物からなるアルカリ組成物である。一態様では、食品等級のアルカリ組成物は、重炭酸ナトリウムからなるアルカリ組成物である。一態様では、食品等級のアルカリ組成物は、重炭酸カリウムからなるアルカリ組成物である。一態様では、食品等級のアルカリ組成物は、重炭酸カルシウムからなるアルカリ組成物である。一態様では、食品等級のアルカリ組成物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムまたはそれらの混合物からなる群より選択される対イオンを含む炭酸塩、重炭酸塩、または水酸化物組成物である。アルカリ組成物は、溶液で提供されても、または乾燥形態で提供されてもよい。
【0027】
一態様において、粉砕された肉エマルジョンは、機能化タンパク質ブラインを形成するプロセスの間、約6.5~約9.5のpHを有する。一態様では、微粉砕された肉エマルジョンは、機能化タンパク質ブラインを形成するプロセス間に約7~約9のpHを有する。一態様では、粉砕された肉エマルジョンは、機能化タンパク質ブラインを形成するプロセスの間に約7.5~約8.5のpHを有する。
【0028】
ある態様において、粉砕された肉エマルジョンは、機能化タンパク質ブラインを形成するプロセスの間、約1重量%~約10重量%の食卓塩含量を有する。一態様では、粉砕された肉エマルジョンは、機能化タンパク質ブラインを形成するプロセスの間に、約2重量%~約6重量%、または約3重量%~約5重量%の食卓塩含量を有する。一態様では、粉砕された肉エマルジョンは、機能化タンパク質ブラインを形成するプロセスの間に約0.2M~約4Mpのイオン強度を有する。一態様では、粉砕された肉エマルジョンは、機能化タンパク質ブラインを形成するプロセスの間に、約1M~約3Mのイオン強度を有する。本発明の目的のために、食卓塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化マグネシウムならびにそれらの混合物から選択される塩である。食卓塩は、精製塩として提供されてもよいし、または海塩もしくは他の天然の塩などの技術的に不純な形態で提供されてもよい。一態様では、塩はヨウ素化塩である。塩は、特に筋肉の筋原線維タンパク質を可溶化及び機能化するのに役立ち、それによって、感覚受容性の利点をさらに提供する方法で保水能力及び結合特性を高めるので、食卓塩を含む粉砕された肉エマルジョンが特に有利であることがわかった。
【0029】
本方法の全ての段階における粉砕された肉エマルジョンのpH及びイオン強度の注意深い制御は、最終肉製品において優れた特性を提供する。そのような制御は、粉砕された肉エマルジョン中の肉のタンパク質の溶解性を促進することが見出された。一態様では、粉砕された肉エマルジョン中の肉のタンパク質の少なくとも約70重量%、75重量%、80重量%、85重量%または90重量%が可溶化され、粉砕された肉エマルジョン中の肉のタンパク質は、粉砕された肉エマルジョン中の肉から単離されない。粉砕された肉エマルジョン中の非常に高い割合の可溶化タンパク質の提供によって、優れた保水特性が得られることが見出された。理論に拘束されるものではないが、可溶性タンパク質は水に対して大きな親和性を有し、同時に食品中の他のタンパク質に対して親和性を示し、さらには食品中の脂肪に対してさえ親和性があると考えられている。一態様では、粉砕された肉エマルジョン中の肉のタンパク質の約75重量%~約98重量%が可溶化される。一態様では、粉砕された肉エマルジョン中の肉のタンパク質の約80重量%~約95重量%が可溶化される。一態様では、粉砕された肉エマルジョン中の肉のタンパク質の約30%、25%、20%、15%または10重量%以下が沈殿される。一態様では、粉砕された肉エマルジョン中の肉のタンパク質の約30重量%~約2重量%が沈殿される。一態様では、粉砕された肉エマルジョン中の肉のタンパク質の約25重量%~約5重量%が沈殿される。理論に拘束されるものではないが、沈殿したタンパク質は、エマルジョン及び/または食品中の水、他のタンパク質、脂肪、及び他の成分から自己分離すると考えられている。この自己分離は、沈殿したタンパク質と他の成分との相互作用を制限し、可溶化されたタンパク質と比較して製品の利点が低くなると考えられている。
【0030】
ある態様では、粉砕された肉エマルジョンは、ナトリウムを含まなくてもよい(すなわち、粉砕された肉エマルジョンは、約1ppm以下のナトリウム含有量を有する)。さらなる態様では、粉砕された肉エマルジョンは、例えばリン酸ナトリウムの形態のリン酸塩を含んでもよい。さらなる態様では、粉砕された肉エマルジョンは、リン酸塩を含まなくてもよい(すなわち、粉砕された肉エマルジョンは、約1ppm以下のリン酸塩含有量を有する)。
【0031】
一態様では、粉砕された肉エマルジョンは、60重量%未満、40重量%、30重量%、20重量%、または15%未満または10%未満または5重量%未満の脂肪含量を有する。
【0032】
一態様では、次いで、得られた機能化タンパク質ブラインを乾燥させて、任意の適切な凍結乾燥技術により乾燥機能化タンパク質生成物を形成する。一態様では、機能化タンパク質ブラインを、凍結乾燥条件下で試料からさらに水を除去できないことを示す、24時間にわたって製品の重量が安定するのに十分な時間、凍結乾燥条件下で凍結乾燥チャンバーに入れる。一態様では、凍結乾燥条件は、試料を-20℃で12時間凍結すること、次いで試料を-50℃及び0.0030mbarの凍結乾燥機に入れることを含む。
【0033】
一態様では、次いで、得られた機能化タンパク質ブラインを乾燥させて、任意の適切な噴霧乾燥技術により乾燥機能化タンパク質生成物を形成する。一態様では、機能化タンパク質ブラインを、アトマイザーを通して加圧下で乾燥機に注入すること、及び並流で熱風と共に乾燥機に霧化した機能化タンパク質ブラインを通過させることにより、乾燥させる。一態様では、アトマイザーはノズルアトマイザーである。一態様では、アトマイザーはロータリーアトマイザー(回転式噴霧器)である。
【0034】
ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、デンプン及びガムが添加されていない場合、タンパク質1gあたり200gを超えるオイルというエマルジョン容量を有する。
【0035】
本発明の目的のために、「エマルジョン容量(Emulsion Capacity)」とは、試料のリボン形成または可視的な薄層化のいずれかによって検出可能な、エマルジョンの破壊前にフードプロセッサーを用いた連続混合下で1%タンパク質溶液に添加され得るオイルの量として定義する。
【0036】
ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、デンプン及びガムが添加されていない場合、K-カラギーナンハイドロコロイド分離を示さないか、またはイオタ-カラギーナンハイドロコロイド分離を示さないか、またはグアーガムハイドロコロイド分離を示さない。本発明の目的のために、乾燥機能化タンパク質生成物は、K-カラギーナンハイドロコロイド分離を示さないか、またはイオタ-カラギーナンハイドロコロイド分離を示さないか、または1重量%タンパク質の溶液を、示されたハイドロコロイドと0.10%(w/w)で、室温で、混合物が均質になるまで混合し、4℃で12時間保持し、室温で3,000rpm(1409g)で15分間遠心分離する場合、グアーガムハイドロコロイド分離を示さず、相分離は視覚的に観察され得ない。
【0037】
ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、肉が家禽であり、デンプン及びガムが添加されていない場合、90gを超えるゲル硬度を有するか、または約90g~約300g、もしくは約90g~約200g、もしくは約90g~約150gのゲル硬度を有する。ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、肉が鶏肉であり、デンプン及びガムが添加されていない場合、90gを超えるゲル硬度を有するか、または約90g~約300g、もしくは約90g~約200g、もしくは約90g~約150gのゲル硬度を有する。
【0038】
ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、肉が家禽であり、デンプン及びガムが添加されていない場合、タンパク質1gあたり60mlを超える泡という発泡能力(Foaming Capacity)を有する。ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、肉が鶏肉であり、デンプン及びガムが添加されていない場合、タンパク質1gあたり60mlを超える泡という発泡能力を有する。
【0039】
一態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、肉が家禽であり、デンプン及びガムが添加されていない場合、0.1 1/sの剪断速度で測定したとき、3Pa・sより大きい粘度を有する。ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、肉が鶏肉であり、デンプン及びガムが添加されていない場合、0.1 1/sという剪断速度で測定したとき、3Pa.sより大きい粘度を有する。
【0040】
ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、肉が家禽であり、デンプン及びガムが添加されていない場合、1.0 1/sの剪断速度で測定したとき、0.3Pa・sより大きい粘度を有する。ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、肉が鶏肉であり、デンプン及びガムが添加されていない場合、1.0 1/sの剪断速度で測定されたときに0.3Pa・sより大きい粘度を有する。
【0041】
ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、肉が牛肉であり、デンプン及びガムが添加されていない場合、0.1 1/sの剪断速度で測定したとき、1Pa・sより大きい粘度を有する。
【0042】
ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、肉が牛肉であり、デンプン及びガムが添加されていない場合、1.0 1/sの剪断速度で測定したとき、0.2Pa・sより大きい粘度を有する。
【0043】
ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、肉が牛肉であり、デンプン及びガムが添加されていない場合、400gを超えるゲル硬度、または約450g~約650g、もしくは約500g~約550gのゲル硬度を有する。
【0044】
一態様では、本明細書に記載のプロセスのいずれかによって作製される乾燥機能化タンパク質生成物が提供される。一態様では、乾燥機能化タンパク質生成物は、デンプン及びガムが添加されていない。
【0045】
別の態様において、再構成機能化タンパク質製剤の調製のプロセスは、本明細書に記載の乾燥機能化タンパク質生成物を十分な水で再構成して、再構成機能化タンパク質製剤の総重量に基づいて、約3重量%~約35重量%、または約5重量%~約25重量%、または約7重量%~約15重量%の肉含有量(すなわち、タンパク質、脂肪などを含む肉の全ての固体成分)を有する再構成機能化タンパク質製剤を形成することを含む。ある態様において、示された肉含有量を有する再構成機能化タンパク質製剤は、0.1 1/sの剪断速度で測定した場合に1Pa.sを超える粘度、または0.1 1/sの剪断速度で測定した場合、1Pa.s~500Pa.sの粘度、または0.1 1/sの剪断速度で測定した場合、3Pa.s~200Pa.s、または0.1 1/sの剪断速度で測定した場合、3Pa.s~100Pa.sの粘度を有する。ある態様において、示された肉含有量を有する再構成機能化タンパク質製剤は、1 1/sの剪断速度で測定した場合、0.3Pa.sより大きい粘度、または1 1/sの剪断速度で測定した場合、0.3Pa.s~500Pa.sの粘度、または1 1/sの剪断速度で測定した場合0.8Pa.s~200Pa.s、または1 1/sの剪断速度で測定した場合0.8Pa.s~200Pa.sの粘度を有する。一態様では、上記で列挙した再構成機能化タンパク質製剤のいずれかの肉は家禽である。一態様では、上記の再構成機能化タンパク質製剤のいずれかの肉は鶏肉である。一態様では、上記で列挙した再構成機能化タンパク質製剤のいずれかの肉は牛肉である。
【0046】
ある態様において、再構成機能化タンパク質生成物は、様々な任意の添加剤を含んでもよい。適切な添加物の例としては、塩、合成抗酸化剤、ローズマリーなどの天然抗酸化剤、及び抗菌剤(例えば、乳酸ナトリウムまたはカリウムなどの細菌及び他の病原体阻害剤)が挙げられる。ある態様では、粉砕された肉エマルジョンは、食用酢、レモン汁、果汁、海塩、及びそれらのブレンドなどのUSDAによって定義される天然抗菌剤(例えば、MOstatin(商標)LV1Xm、全てがJefferson,GAのWorld Technology Ingredientsの食用酢及びレモン果汁の天然のブレンド)を含む。抗菌剤はまた、MOstatin(商標)V(緩衝食用酢)のように緩衝化されてもよいし、またはMOstatin(商標)VLS(低ナトリウム食用酢)のように低ナトリウム用に処方されてもよく、どちらもJefferson,GAのWorld Technology Ingredients製である。
【0047】
ある態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、前記乾燥機能化タンパク質生成物を飲料及びソース(サラダドレッシングなど)からなる群より選択される食物系に組み込むことにより使用される。一態様では、飲料は、タンパク質強化ミルクもしくは乳製品、タンパク質強化豆乳、またはタンパク質強化スムージーもしくはシェイクなどのタンパク質強化飲料である。一態様では、乾燥機能化タンパク質生成物は、食品サプリメント分野で公知である標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約20重量%の量でそのような飲料に添加される。
【0048】
ある態様において、再構成機能化タンパク質生成物は、飲料及びソース(サラダドレッシングなど)からなる群より選択される食物系に上記再構成機能化タンパク質製剤を組み込むことにより使用される。一態様では、飲料は、タンパク質強化ミルクもしくは乳製品、タンパク質強化豆乳、またはタンパク質強化スムージーもしくはシェイクなどのタンパク質強化飲料である。一態様では、再構成機能化タンパク質生成物は、食品サプリメントの分野で公知である標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約20重量%の量でそのような飲料に添加される。
【0049】
一態様において、肉が家禽である乾燥機能性タンパク質生成物は、パン及び冷凍発泡デザートまたはゲル化デザート(例えば、アイスクリーム、フローズンカスタード、フローズンヨーグルト、シャーベット、及びジェラート)からなる群より選択される食物系に上記再構成機能化タンパク質製剤を組み込むことにより使用される。一態様では、家禽である肉は鶏肉である。一態様では、乾燥機能化タンパク質生成物は、食品サプリメントの分野で公知である標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約5重量%の量でパンに添加される。一態様では、乾燥機能化タンパク質生成物は、食品サプリメントの分野で公知である標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約5重量%の量で冷凍発泡デザートまたはゲル化デザートに添加される。
【0050】
ある態様において、肉が家禽である再構成機能化タンパク質生成物は、パン及び冷凍発泡デザートまたはゲル化デザート(例えば、アイスクリーム、フローズンカスタード、フローズンヨーグルト、シャーベット、及びジェラート)からなる群より選択される食物系に上記再構成機能化タンパク質製剤を組み込むことにより使用される。一態様では、家禽である肉は鶏肉である。一態様において、再構成機能化タンパク質生成物は、食品サプリメント分野で公知である標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約5重量%の量でパンに添加される。一態様では、再構成機能化タンパク質生成物は、食品サプリメントの分野で公知の標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約5重量%の量で冷凍発泡デザートまたはゲル化デザートに添加される。
【0051】
一態様において、乾燥機能化タンパク質生成物は、ハイドロコロイドテクスチャー改質剤の代替品として食品の食感改質剤として使用される。一態様では、乾燥機能化タンパク質生成物は、ハイドロコロイドテクスチャー改質剤の部分的な代替品として、食品の食感改質剤として使用される。一態様では、再構成機能化タンパク質生成物は、ハイドロコロイドテクスチャー改質剤の代替品として、食品の食感改質剤として使用される。一態様では、再構成機能化タンパク質生成物は、ハイドロコロイドテクスチャー改質剤の部分的な代替品として、食品の食感改質剤として使用される。
【実施例0052】
試験プロトコール
エマルジョン容量
Cuisinart HandyPrep DFP-3フードプロセッサー、30gの試料、及び赤く染められた大豆油を使用して、エマルジョン試験を実施した。乾燥させていない対照試料を用いて実施した試験では、30gをボウルに秤量して入れ、以下のように方法を進めた。乾燥試料の場合、水中1重量%タンパク質の標準試験溶液を調製し、次いで、その溶液30gを秤量し、試験の実施に使用した。30gの試料をフードプロセッサボウルに秤量した後、ミキサーを起動し、オイルを連続的に追加した。試料のリボン形成または可視的な薄層化によって検出可能な、エマルジョンが壊れた場合、プロセッサを停止した。エマルジョン容量は、式1を使用して決定した。
【0053】
【0054】
式中、ECはエマルジョン容量であり、W3はオイルを加えた後のフードプロセッサボウル全体の最終重量であり、W2はオイルを加える前のフードプロセッサボウル全体の開始重量であり、W1は試料重量であり、Cpは対照試料中のタンパク質含有量であった。乾燥試料の場合、W1×Cpは0.03gである。
【0055】
発泡能力(Foaming Capacity)及び安定性
未乾燥対照及び乾燥の鶏肉及び牛肉の試料の発泡能力を、以下の発泡能力及び安定性試験を使用して試験した。その試験は、対照と乾燥試料の両方で実行した。乾燥した試料については、水中に1重量%のタンパク質を含む標準試験溶液を調製し、試験に使用した。30mlの試料を、1000mlビーカーに注いだ。ハンドミキサー(Sunbeam Mixmaster-FPSBHM1503)を使用して、ビーカーを45度の角度に保持しながら、試料を設定4(タコメーターで800rpmを読み取る)で2分間叩いた。2分後、ビーカーの内容物全体を、100mlメスシリンダーに注ぎ、プラスチックのスパチュラを使用して完全に移した。液体及び泡のレベルは、時間0及び30分経過後に記録した。泡容量(foam capacity)及び安定性は、それぞれ式2及び式3を使用して計算した。
【0056】
【0057】
【0058】
式中、FCは発泡能力であり、FSは発泡安定性であり、V1は0分で発生した発泡体体積であった、V2は30分後に残った泡の容積、W1は試料の重量、Cpは対照試料中のタンパク質含量であった。乾燥試料の場合、W1×Cpは0.03gであった。
【0059】
ゲル化能力(Gelling Ability)
対照及び乾燥鶏肉及び牛肉の試料のゲル化能力は、ゲル硬度を試験することにより評価した。ゲル化能力は、食感及び構造を構築し、口当たりを改善するために、多くの食物系に不可欠である。25gの対照試料を50mlの遠心管に秤量して取り、85℃で30分間加熱した。乾燥試料の場合、水中7重量%タンパク質という標準試験溶液を調製し、その溶液25gを50ml遠心分離管に秤量して入れ、次いで、85℃で30分間加熱した。その後、全ての試料を冷蔵庫で一晩冷却し、室温でTexture Analyzer(TA HD plus)を使用して試験した。使用したプローブは、45°のチゼルエッジのナイフ(TA 42)であった。試験前の速度は5mm/s、試験速度は1mm/s、試験後の速度は3mm/s、距離は10mm、トリガー力は5gであった。データは、「Hard and Sticky」マクロを使用して分析した。
【0060】
粘度測定
粘度を比較することを可能にするために、乾燥していない対照の鶏肉及び牛肉の試料をレオメーター(Anton Paar-MCR 502)で分析した。粘度は、さまざまな食品の食感及び口当たりを評価する際のゲル化能力に加えて、別の重要なパラメータである。乾燥試料の場合、水に3重量%のタンパク質を含む標準試験溶液を調製する。試料は、カップとボブのジオメトリ(CC27-78234-3208)を使用して実行する。その試料を7℃で15秒の平衡化ステップで実行し、その後、回転を0.01-1000 1/sから増大させ、さまざまな時間間隔で31ポイントのデータを収集する(最初は40秒、最後は10秒)。牛肉の対照及び酸処理試料は、試験プロセスの間に微粒子を発生させる。この現象がデータで生成するノイズの量を減らすために、試料を細いワイヤーメッシュ(1.18mmの開口部)に通して、すでに存在する微粒子を取り除く。
【0061】
ハイドロコロイド適合性
乾燥試料については、水中1重量%のタンパク質という標準試験溶液を調製し、3種類のハイドロコロイド(k-カラギーナン(Satiagel ME4 SB)、イオタ-カラギーナン(Satiagel SI A)、及びグアーガム(SAP 18785))を、混合物が均質になるまで、室温でこの溶液と異なる比率で混合した(ハイドロコロイド濃度は、0、0.02、0.04、0.06、0.08、0.10%w/wである)。異なる濃度のハイドロコロイド(約10g)を含む調製済み混合物を、15mlの遠心分離管に入れ、ハイドロコロイドの完全な水和を確保するために4℃で一晩保持した。次に、それらをEppendorf 5702臨床遠心分離機を使用して、室温で3,000rpm(1409g)で15分間遠心分離した。相分離が、視覚的に検出された。一態様では、上記の組成比のいずれにおいてもK-カラギーナンハイドロコロイド分離は観察されない。一態様では、上記の組成比のいずれにおいてもイオタ-カラギーナンハイドロコロイド分離は観察されない。一態様において、上記の組成比のいずれにおいてもグアーガムハイドロコロイド分離は観察されない。
【0062】
試料調製
牛肉試料のUSDA Choiceまたはそれ以上のグレードでは、剥き出された牛の骨なしの内モモ肉の筋肉を使用した。鶏肉の試料には、骨のない皮なしの鶏の胸肉を使用した。両方の肉は、タンパク質溶液を作る前に1/8インチの粒子(小片)に挽いた。
【0063】
粉砕した肉と水を高速ミキサーに加え、1分間の混合/乳化中に塩を加えることにより、対照試料を調製した。pH調整は行わなかった。
【0064】
アルカリ処理試料を作製するために、肉及び水を高速ミキサーに加えた。次に、混合/乳化しながら、炭酸ナトリウム溶液を使用してpHを7.8に調整した。次に、塩を添加し、炭酸ナトリウム溶液を使用してpHを7.5に調整した後、最終的なpHを読み取った。
【0065】
全ての試料は液体の形で受け入れ、受け取り次第-20℃に保持した。凍結する前に、将来のサンプリングをより便利にするために、各試料から4つの1リットルのアリコートを作成した。これらの組成物の配合を、表1に記載する。
【0066】
【0067】
さらなる機能性分析のために、各試料の一部を乾燥させた。対照試料と乾燥試料の両方について近似組成分析を実施し、結果を表2及び3に示した。
【0068】
表2:凍結乾燥されていない、鶏肉対照、アルカリ処理鶏肉、牛肉対照及びアルカリ処理牛肉の試料の組成結果:
【0069】
表3:凍結乾燥された鶏肉及び牛肉の試料のタンパク質含量
【0070】
未乾燥及び再構成凍結乾燥組成物の両方における鶏肉アルカリ処理試料と比較した鶏肉未処理対照のエマルジョン容量値を
図1に示す。見られるように、再構成凍結乾燥組成物は、凍結乾燥されたことのない試料と比較して、優れたエマルジョン容量(emulsion capacity)特性を示す。
【0071】
未乾燥及び再構成凍結乾燥組成物の両方における鶏肉及び牛肉のアルカリ処理試料と比較した、鶏肉及び牛肉の未処理対照の発泡能力特性を
図2に示す。見られるように、再構成された凍結乾燥鶏肉アルカリ処理組成物は、凍結乾燥されたことのない鶏肉試料と比較して、優れた発泡能力(Foaming Capacity)特性を示す。
【0072】
鶏肉及び牛肉のアルカリ処理未乾燥試料と比較した鶏肉及び牛肉の未処理対照のゲル硬度特性を、
図3に示す。見られるとおり、鶏肉及び牛肉のアルカリ処理未乾燥試料は、鶏肉及び牛肉の未処理対照と比較して、優れたゲル硬度特性を示す。
【0073】
本明細書で使用される「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定のパラメータの許容範囲内を意味し、値の測定または決定方法、例えば、試料調製及び測定システムの制限に一部依存する。そのような制限の例としては、湿潤環境、対乾燥環境での試料の準備、さまざまな機器、試料の高さのばらつき、及び信号対雑音比のさまざまな要件が挙げられる。例えば、「約」は、述べた値の1/10で示される値または値の範囲よりも大きいかまたは小さいことを意味し得るが、任意の値または値の範囲をこのより広い定義のみに限定することを意図するものではない。例えば、約30%の濃度値は、27%~33%の濃度を意味する。「約」という用語が前に付いている各値または値の範囲はまた、述べられた絶対値または値の範囲のアスペクトを包含することも意図している。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、ある値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。
【0074】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈がそれ以外を必要とするのでない限り、「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形は、述べられた整数もしくはステップ、または整数もしくはステップのグループの包含を意味するが、いかなる他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップのグループの除外でもないと理解されるであろう。本明細書で使用する場合、「~からなる」は、クレーム要素で指定されていない要素、ステップ、または成分を除外する。本明細書で使用する場合、「本質的に~からなる」は、請求項の基本的及び新規の特性に実質的に影響を与えない材料またはステップを除外しない。様々な態様の本開示において、態様の説明で使用される「含む」、「本質的にからなる」及び「からなる」という用語のいずれも、他の2つの用語のいずれかに置き換えられ得る。
【0075】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願(仮出願を含む)、及び刊行物は、あたかも実際に個別に組み込まれるかのように参照により組み込まれる。特に明記しない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量によるものであり、全ての分子量は、重量平均分子量である。前述の詳細な説明は、理解を明確にするために示すに過ぎない。それから不必要な制限が理解されるべきではない。本発明は、示され説明された正確な詳細に限定されるものではなく、当業者に明らかな変形は、特許請求の範囲によって定義される本発明内に含まれる。
前記乾燥機能化タンパク質生成物が、デンプン及びガムが添加されていない場合、K-カラギーナンハイドロコロイド分離を示さないか、またはイオタ-カラギーナンハイドロコロイド分離を示さないか、またはグアーガムハイドロコロイド分離を示さず、
そのようなコロイド分離は、それぞれのK-カラギーナンハイドロコロイド、イオタ-カラギーナンハイドロコロイド、またはグアーガムハイドロコロイドをハイドロコロイド濃度0.10%w/wの乾燥機能化タンパク質1wt%の試験水溶液25gと混合物が均質になるまで、室温で混合することによって決定され、調製した混合物10gを、遠心分離管15ml内に入れ、4℃で一晩保持し、その後15分間、室温および3000rpmの条件下で遠心分離し、前記遠心分離された試料は相分離がないか視覚的に確認される、請求項1に記載のプロセス。