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特開2023-103286火の粉検知システム及び火の粉検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103286
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】火の粉検知システム及び火の粉検知方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20230719BHJP
   H04N 23/73 20230101ALI20230719BHJP
   H04N 23/61 20230101ALI20230719BHJP
   G08B 17/12 20060101ALI20230719BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N23/73
H04N23/61
G08B17/12 Z
G08B25/00 510M
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072020
(22)【出願日】2023-04-26
(62)【分割の表示】P 2019127149の分割
【原出願日】2019-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和哉
(57)【要約】
【課題】火の粉を効率的かつ的確に検知するための火の粉検知システム及び火の粉検知方法を提供する。
【解決手段】管理サーバ20の制御部21は、撮像装置10から、飛散した火の粉が線形状で表示されるシャッター速度で撮影された撮影画像を取得する。制御部21は、取得した画像において、先行する撮影画像とは異なる部分を抽出した差分抽出画像を生成し、差分抽出画像において、燃焼色の線形状を示す線形状領域を抽出して、火の粉を検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と、火の粉を検知する制御部とを備えた火の粉検知システムであって、
前記制御部は、
前記撮像装置から、前記火の粉の飛散軌跡が線形状で表示されるシャッター速度で撮影された撮影画像を取得し、
前記取得した撮影画像において、先行する撮影画像とは異なる部分を抽出した差分抽出画像を生成し、
前記差分抽出画像において、燃焼色の線形状を示す線形状領域を抽出して、前記火の粉を検知する監視処理を、火気使用作業の作業開始時刻から、前記火気使用作業の作業後から予め定めた時間である監視時間の終了まで実行し、
前記検出した火の粉の温度から生じる色に応じて、前記監視時間を変更することを特徴とする火の粉検知システム。
【請求項2】
撮像装置と、火の粉を検知する制御部とを備えた火の粉検知システムを用いて、前記撮像装置から取得した画像を用いて、前記火の粉を検知する方法であって、
前記制御部は、
前記撮像装置から、前記火の粉の飛散軌跡が線形状で表示されるシャッター速度で撮影された撮影画像を取得し、
前記取得した撮影画像において、先行する撮影画像とは異なる部分を抽出した差分抽出画像を生成し、
前記差分抽出画像において、燃焼色の線形状を示す線形状領域を抽出して、前記火の粉を検知する監視処理を、火気使用作業の作業開始時刻から、前記火気使用作業の作業後から予め定めた時間である監視時間の終了まで実行し、
前記検出した火の粉の温度から生じる色に応じて、前記監視時間を変更することを特徴とする火の粉検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接や溶断等の火気使用作業を行なう工事現場において、火花等を検知する火の粉検知システム及び火の粉検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場において、溶接や溶断等の火気使用作業において、作業中に発生した火花が、作業を行なっている場所以外に飛散することがある。この場合、発見が遅れるとボヤ騒ぎになることがあった。
【0003】
そこで、大きな火災に至る前の煙の状態で火災を早期に検出する技術が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載の火災検知方法では、監視カメラからのグレースケール画像毎に、画像中の濃度の稜線を強調した稜線濃度強調画像と、煙がない状態で生成されて記憶されている固定背景画像との差分画像を生成し、混合正規分布を用いた背景差分により前景画像を抽出し、火災判定部の火災の判断に用いる。
【0004】
更に、煙が出る前の火花のような小さい火気を監視する技術も検討されている(例えば、特許文献2参照。)。この文献の火気監視支援システムでは、撮影された映像に基づいて、火気発生領域の外部に漏れ出た火花を検出し、火花の漏れが有ると判定した際には、火気発生領域の外部に火気が生じている旨の警報を行なう。このシステムにおいて、火花の検出は、映像中における移動物体の形状に基づいて行ない、火花の判定は、移動物体の面積と輝度の変化に基づいて行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-46039号公報
【特許文献2】特開2018-173888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された技術では、輝度変化が大きく小さい移動物体であって、エッジ面積の変化量(相関値)が大きい場合に火花と判定する。このため、小さい火花(火の粉)については、見逃す可能性がある。また、反射光等を誤って検出する可能性もある。従って、火の粉を的確に検知することは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する火の粉検知システムは、撮像装置と、火の粉を検知する制御部とを備えた火の粉検知システムであって、前記制御部は、前記撮像装置から、前記火の粉の飛散軌跡が線形状で表示されるシャッター速度で撮影された撮影画像を取得し、前記取得した撮影画像において、先行する撮影画像とは異なる部分を抽出した差分抽出画像を生成し、前記差分抽出画像において、燃焼色の線形状を示す線形状領域を抽出して、前記火の粉を検知する監視処理を、火気使用作業の作業開始時刻から、前記火気使用作業の作業後から予め定めた時間である監視時間の終了まで実行し、前記検出した火の粉の温度から生じる色に応じて、前記監視時間を変更する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、火の粉を効率的かつ的確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における火の粉検知システムの概略構成を説明する説明図。
図2】実施形態のハードウェア構成例の説明図。
図3】実施形態における記憶部に記憶されたデータ構成を説明する図であって、(a)は管理情報記憶部、(b)はスケジュール情報記憶部。
図4】実施形態における管理処理の処理手順を説明する流れ図。
図5】実施形態における監視処理の処理手順を説明する流れ図。
図6】実施形態における監視処理において火気使用作業を撮影した画像の説明図であって、(a)は先行画像、(b)は後続画像、(c)は差分抽出画像。
図7】実施形態における監視処理において火気使用作業を撮影していない画像の説明図であって、(a)は先行画像、(b)は後続画像、(c)は差分抽出画像。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図7を用いて、火の粉検知システム及び火の粉検知方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、火気使用作業を行なう工事現場において、異なる複数の箇所をそれぞれ撮影する撮像装置の撮影画像を用いて火の粉を検知する。ここで、火気使用作業とは、溶接作業や溶断作業等、火花が発生する作業である。
本実施形態では、図1に示すように、複数の撮像装置10と、各撮像装置10が接続された管理サーバ20とを用いる。
【0011】
撮像装置10は、例えば、マグネットやクリップ等の取付治具を用いて、建設中の建物の各階に設けた分電盤に固定される。この分電盤は、通信機能を備えており、管理サーバ20にネットワーク回線を介して接続されている。そして、撮像装置10は、撮影した撮影画像を、分電盤が接続されているネットワーク回線を介して、管理サーバ20に送信する。また、各撮像装置10は、撮影画像の送信時には、撮像装置10を識別するための撮像装置識別子を付加して送信する。
【0012】
更に、撮像装置10は、撮影条件(シャッター速度、絞り)が可変であって、火花の飛散軌跡が線形状に見えるシャッター速度で画像を撮影する。火花の飛散軌跡が線形状に見えるシャッター速度は、火の粉の飛散速度と、火の粉の飛散の軌跡が線形状として示される画像のピクセル数と、撮像装置10における画像の分解能から決定される。例えば、シャッター速度の上限値を、火の粉の飛散速度で、線形状となるピクセル数で撮影される速度で定め、下限値を、各火の粉を画像上で識別できる速度で定め、上限値~下限値の間の速度で撮影する。なお、火の粉の飛散速度は、作業対象の材質、材質が溶けた温度(溶接電流等)によって変化する。そして、撮像装置10を、作業に発生する火の粉の状態に応じたシャッター速度に設定し、このシャッター速度で連続撮影した複数の静止画を管理サーバ20に送信する。なお、先行撮影と後続撮影との間に、多少の間隔が空いてもよい。具体的には、本実施形態の撮像装置10では、1/30秒~1/20秒のシャッター速度で、毎秒5枚程度の画像を撮影する。
【0013】
(ハードウェア構成例)
図2は、管理サーバ20として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0014】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースカードや無線インタフェース等である。
【0015】
入力装置H12は、管理者等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
【0016】
記憶部H14は、管理サーバ20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置(例えば、後述する管理情報記憶部22、スケジュール情報記憶部23、画像管理記憶部24)である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0017】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、管理サーバ20における各処理(例えば、後述する制御部21における処理)を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、管理サーバ20のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する図4及び図5に示す各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0018】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0019】
(管理サーバ20の機能)
図1に示す管理サーバ20は、制御部21、管理情報記憶部22、スケジュール情報記憶部23及び画像管理記憶部24を備える。
【0020】
制御部21は、火の粉検知プログラムを実行することにより、管理部211、判定部212及び警報部213として機能する。この場合、火の粉検知プログラムは、画像処理プログラムを含む。本実施形態の画像処理プログラムは、2つの画像を用いて各画素の差分を算出する処理、画像における特定色(燃焼色)を抽出する処理、画像におけるエッジ(領域)を特定する処理、画像において予め規定した大きさの形状(点や線)を特定する処理を実行する。
管理部211は、スケジュールに基づいて火気使用作業を管理する処理を実行する。本実施形態では、管理部211は、監視処理の開始や終了を管理し、作業開始時刻から監視時間の終了まで監視処理を実行する。本実施形態では、監視時間を、作業終了後から予め定めた時間(例えば2時間)までに設定する。
【0021】
判定部212は、監視処理において、撮影画像における火の粉の飛散の有無を検知する処理を実行する。判定部212は、画像における画素の色(燃焼色)と、連続した画素数に基づく形状や大きさから、飛散した火の粉を特定する。ここで、点形状領域、又は線形状領域の画素を、飛散した火の粉と特定する。
【0022】
そこで、判定部212は、燃焼色と判断する画素の色についてのデータを記憶している。本実施形態では、燃焼色として、白色、黄色、赤及びオレンジ等の色を特定する。具体的には、色相、彩度及び明度から色を特定するHSVモデルにおいて、色相及び彩度が以下の範囲の値を備える画素を、燃焼色の画素と特定する。
・色相:全256階調に対して「0~30」と「200~255」の範囲
・彩度:全256階調に対して「50」以上の範囲
なお、本実施形態では、明度は、全256階調(「0~255」の範囲)を用いるため、いずれの値であってもよい(暗くても明るくてもよい)。
【0023】
また、判定部212は、点形状領域として、基準大きさ以下(例えば縦横が2ピクセル以下)の縦横比がほぼ同じブロックを特定する。更に、判定部212は、線形状領域として、細長い形状(例えば縦横の一方が1~2ピクセルで他方が5ピクセル以上20ピクセル以下)のブロック、このブロックが回転した形状のブロックを特定する。
【0024】
また、判定部212は、通知の要否を判定するための閾値と、この閾値と比較する評価値を算出する評価算出式とを記憶している。そして、判定部212は、評価値が閾値を超えたと判定した場合、警報部213に通知を指示する。判定部212は、本実施形態の評価算出式として、下記式を用いる。
評価値=〔線形状領域の数〕×10×〔点形状領域の数〕
また、閾値として、例えば「10」を記憶している。
【0025】
警報部213は、監視処理において、火の粉を検知した場合に、警報先に通知を行なう処理を実行する。本実施形態では、警報先として、火の粉を検知した画像を撮影した撮像装置10の管理者の携帯端末のメールアドレスを用いる。
【0026】
図3(a)に示すように、管理情報記憶部22には、管理情報220が記憶されている。この管理情報220は、各撮像装置10を含むエリアのそれぞれを管理する管轄情報であって、エリアを管轄する管理者が特定された場合に記録される。管理情報220は、撮像装置識別子、設置場所、管理者及び連絡先に関するデータが含まれる。
【0027】
撮像装置識別子データ領域には、各撮像装置10を特定するための識別子に関するデータが記録される。
設置場所データ領域には、この撮像装置10が設定された場所を特定するためのデータが記録される。例えば、建物の階数、工区、エリア等を特定するデータである。
【0028】
管理者データ領域及び連絡先データ領域には、この撮像装置10を含むエリアを管理する管理者を特定するための管理者の氏名及びこの管理者の連絡先に関するデータがそれぞれ記録される。管理者の連絡先は、管理者の携帯端末のメールアドレスや電話番号である。
【0029】
図3(b)に示すように、スケジュール情報記憶部23には、工事現場の作業のスケジュール情報230が記録される。このスケジュール情報230は、作業の予定が決定されると記録される。スケジュール情報230には、作業場所、作業開始予定時間、作業終了予定時間及び作業内容に関するデータが記録される。
【0030】
作業場所データ領域には、この作業を実行する施工場所(建物の階数、工区、エリア等)を特定するデータが記録される。
作業開始予定時間データ領域及び作業終了予定時間データ領域には、この作業の開始予定時間及び終了予定時間に関するデータが記録される。
作業内容データ領域には、この作業内容に関するデータが記録される。この作業内容には、溶接作業や溶断作業が含まれる。
【0031】
図1に示す画像管理記憶部24には、画像管理情報が記録される。この画像管理情報には、撮像装置識別子と撮影時刻に関連付けられた画像が記録される。
撮像装置識別子データ領域には、各画像を撮影した撮像装置10を特定するための識別子に関するデータが記録される。
撮影時刻データ領域には、この画像の撮影時刻に関するデータが記録される。
画像データ領域には、撮影した画像データが記録される。
【0032】
(管理処理)
次に、図4及び図5を用いて、管理処理について説明する。
【0033】
まず、図4に示すように、管理サーバ20の制御部21は、火気使用作業の開始の判定処理を実行する(ステップS1-1)。具体的には、制御部21の管理部211は、スケジュール情報記憶部23において、作業内容が火気使用作業(溶接作業や溶断作業等)であって、現在時刻が作業開始予定時間になったスケジュール情報230を検索する。
そして、該当するスケジュール情報230を抽出した場合には、火気使用作業の開始を判定する。
【0034】
火気使用作業の開始と判定した場合、管理サーバ20の制御部21は、各管理者に作業開始の通知処理を実行する(ステップS1-2)。具体的には、制御部21の管理部211は、管理情報記憶部22に記憶されているすべての管理情報220を抽出する。そして、管理部211は、抽出した管理情報220に記録された各連絡先(メールアドレス)に、火気使用作業を開始する旨のメールを送信する。
【0035】
そして、管理サーバ20の制御部21は、監視処理を実行する(ステップS1-3)。この処理の詳細については、図5を用いて後述する。
その後、監視時間が終了するまで(ステップS1-4において「NO」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、監視処理(ステップS1-3)を継続する。
一方、監視時間が終了と判定した場合(ステップS1-4において「YES」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、管理処理を終了する。
【0036】
<監視処理>
次に、図5を用いて、監視処理を説明する。この監視処理は、各撮像装置10から新たに画像(後続画像)を取得した場合に実行される。
【0037】
まず、管理サーバ20の制御部21は、画像の取得処理を実行する(ステップS2-1)。具体的には、制御部21の判定部212は、各撮像装置10から送信された撮影画像情報を取得する。この撮影画像情報には、撮影画像、画像を撮影した撮像装置10の撮像装置識別子、撮影時刻に関する情報が含まれる。そして、判定部212は、画像管理記憶部24に、撮像装置識別子及び撮影時刻に関連付けて、撮影画像を記録する。
【0038】
次に、管理サーバ20の制御部21は、差分抽出画像の生成処理を実行する(ステップS2-2)。具体的には、制御部21の判定部212は、新たに取得した画像(後続画像)と同じ撮像装置識別子で、直前の撮影時刻に関連付けられた先行画像を、画像管理記憶部24から抽出する。判定部212は、先行画像及び後続画像をグレースケール(0~255)に変換する。次に、判定部212は、先行画像の各画素値から、同じ位置の後続画像の画素値を差し引いた値を算出し、差し引いた値が「0」でない画素については「1」を設定した差分マスク画像を生成する。そして、判定部212は、後続画像に対して差分マスク画像を掛け合わせて差分抽出画像を生成する。この差分抽出画像は、後続画像において、先行画像と異なる部分のみを抽出した画像であって、異なる部分については後続画像の画素の色情報を含む。
【0039】
例えば、図6は、溶接作業が行なわれている場所を撮影した画像、図7は、作業が行なわれていない場所を撮影した画像を示している。図6(a)及び図7(a)は先行画像、図6(b)及び図7(b)は後続画像を示している。図6(c)及び図7(c)は、先行画像と後続画像との差分抽出画像を示している。
【0040】
次に、図5に示すように、管理サーバ20の制御部21は、差分抽出画像における燃焼色の点及び線の抽出処理を実行する(ステップS2-3)。具体的には、制御部21の判定部212は、差分抽出画像の各画素のうち、「0」以外の画素の値が、燃焼色の設定値であるか否かを判定する。燃焼色の画素を特定した場合には、燃焼色の画素に連続する他の燃焼色の画素を含めた形状が、線形状領域又は点形状領域であるか否かを判定する。なお、差分抽出画像において、燃焼色の線形状領域と判定した箇所と、燃焼色の点形状領域と特定した箇所が複数ある場合には、すべて抽出する。
【0041】
ここで、燃焼色の点形状領域及び線形状領域がなく、燃焼色の点及び線を抽出しない場合(ステップS2-4において「YES」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、監視処理を終了する。
【0042】
一方、管理サーバ20の制御部21は、燃焼色の点及び線を抽出した場合(ステップS2-4において「NO」の場合)、抽出した点の数と線の数を用いて評価値の算出処理を実行する(ステップS2-5)。具体的には、制御部21の判定部212は、抽出した線形状領域の数と点形状領域の数を評価算出式に代入し、評価値を算出する。
【0043】
次に、管理サーバ20の制御部21は、算出した評価値が閾値以上か否かを判定する(ステップS2-6)。ここで、評価値が閾値未満の場合(ステップS2-6において「NO」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、監視処理を終了する。
【0044】
一方、評価値が閾値以上の場合(ステップS2-6において「YES」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、管理者への警報通知処理を実行する(ステップS2-7)。具体的には、制御部21の警報部213は、評価値が閾値以上と判定した撮像装置10の撮像装置識別子を特定する。更に、警報部213は、管理情報記憶部22を用いて、この撮像装置識別子が記録された管理情報220を特定し、この管理情報220の連絡先を特定する。そして、警報部213は、この連絡先に対して、この撮像装置10が撮影した画像において火の粉が検知された旨の警報メールを送信する。この警報メールには、特定した線形状領域と点形状領域とを異なる色で特定した後続画像を含める。例えば、線形状領域は緑色、点形状領域は赤色で特定した後続画像を含める。
【0045】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、火の粉が線形状で撮影されるシャッター速度で撮影した撮像装置10から取得した先行画像と後続画像から差分抽出画像を生成する。制御部21は、差分抽出画像において燃焼色の線形状領域を抽出し、抽出した線の数を用いて算出した評価値が閾値以上の場合(ステップS2-6において「YES」の場合)、管理者への警報通知処理を実行する(ステップS2-7)。これにより、線形状領域を火の粉として特定するので、点形状領域を火の粉として特定した場合に比べて、誤差が少なく、火の粉を効率的に、かつ的確に検知することができる。
【0046】
(2)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、差分抽出画像において燃焼色の点・線を抽出し、これらの数を用いて評価値を算出する(ステップS2-5)。これにより、火花の飛散方向と撮影方向によっては、線形状でなく点形状で撮影される火の粉を考慮して、火の粉を監視することができる。
【0047】
(3)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、各撮像装置10から取得した撮影画像を用いて、監視処理(ステップS1-3)を実行する。これにより、火気使用作業をしていない場所においても、火の粉が飛散したことを監視することができる。
【0048】
(4)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、スケジュール情報230に基づいて、火気使用作業の開始特定処理を実行し(ステップS1-1)、各管理者に作業開始の通知処理を実行する(ステップS1-2)。これにより、火気使用作業の開始において、各管理者に注意喚起することができる。
【0049】
(5)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、作業終了後の監視時間が終了するまで監視処理を実行する(ステップS1-3)。これにより、火花が発生する作業が終了した後においても、火の粉が飛散した状態を検知することができる。
【0050】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、スケジュール情報記憶部23に記録されたスケジュール情報230の作業の時間に基づいて、監視処理(ステップS1-3)を実行する。監視処理は、予め記憶されたスケジュール情報230の作業時間に基づいて行なう場合に限られない。例えば、管理サーバ20の制御部21は、火気使用作業を実際に開始する際に、作業者の携帯端末から作業開始及び作業終了の入力データを取得する。そして、制御部21は、作業開始を取得した時から監視処理を開始し、作業終了を取得した時から監視時間が経過するまで(監視時間の終了まで)監視処理を実行してもよい。また、火気使用作業の有無に関わらず、常に監視処理を実行してもよい。
【0051】
更に、上記実施形態では、監視処理は、監視時間の終了まで実行した。この監視時間は一定時間(2時間)を用いたが、作業時間や作業状態によって変更してもよい。例えば、作業時間が通常作業より長い場合や多量の火花が発生する火気使用作業については、通常の火気使用作業の監視時間よりも時間を長くして監視処理を実行する。また、飛散した火の粉の色や作業対象の材質によって時間を変更してもよい。例えば、差分画素中の線形状領域が、高温を示す色の場合には、高温の火の粉が飛散したと判定して、監視時間を長くしてもよい。また、高温で溶接や溶断する材料を用いた場合においても、監視時間を長くしてもよい。これにより、火の粉を十分に監視することができる。
【0052】
・上記実施形態において、差分抽出画像における燃焼色の点及び線の抽出処理において、管理サーバ20の制御部21は、差分抽出画像において燃焼色を特定した後、線形状領域又は点形状領域であるか否かを判定した。燃焼色と形状領域との判定の順番は、これに限られず、線形状領域や点形状領域を特定した後、これら領域を構成する画素が燃焼色を有するか否かを判定してもよい。また、燃焼色としてHSVモデルの色を用いたが、画素の色は、HSVモデルに限らず、RGBモデル等、他の色モデルを用いてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、閾値と比較する評価値を、所定の評価算出式を用いて算出した。評価値は、線形状領域に基づいて算出される値であれば、これに限定されない。例えば、点形状領域の数よりも、線形状領域の数の重み付けを重くした算出式を用いてもよい。この場合、例えば、下記式を用いる。
評価値=〔線形状領域の数〕×10+〔点形状領域の数〕
また、線形状領域の数のみで評価値を算出してもよい。
更に、警報条件は、線形状領域の数を用いて算出した評価値に限られず、線形状領域に基づく他の条件を用いてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、管理サーバ20の制御部21の判定部212は、通知の要否を判定するための閾値を記憶している。この場合、画像の撮影状況に応じて、複数の閾値を設定してもよい。例えば、火気使用作業を撮影していない第1撮像装置については、低い第1閾値(例えば10)を設定し、火気使用作業を撮影している第2撮像装置については、第1閾値よりも高い第2閾値(例えば1000)を設定する。
【0055】
具体的には、制御部21は、スケジュール情報記憶部23において、現在時刻が作業開始予定時間~作業終了予定時間であって、かつ作業内容が火気使用作業であるスケジュール情報230を抽出し、このスケジュール情報230の作業場所を特定する。更に、制御部21は、予め記憶している地図情報等から、特定した作業場所を撮影可能な範囲の設置場所を特定する。そして、制御部21は、特定した設置場所が記録された管理情報220を検索し、抽出した管理情報220の撮像装置識別子の撮像装置(第2撮像装置)に対して第2閾値を設定する。一方、制御部21は、それ以外の撮像装置(第1撮像装置)については第1閾値を設定する。これにより、火気使用作業場所には第2閾値が設定され、火気使用作業が行なわれていない場所には第1閾値が設定される。
【0056】
そして、評価値が閾値以上か否かの判定処理(ステップS2-6)において、制御部21は、第1撮像装置が撮影した画像から算出した評価値については第1閾値と比較し、第2撮像装置が撮影した画像に基づいて算出した評価値については第2閾値と比較する。これにより、火気使用作業を行なっている場所を撮影している撮像装置10の閾値を、火気使用作業を行なっている場所を撮影していない撮像装置10の閾値よりも高く設定できる。そして、火気使用作業中には、管理者への頻繁な警報通知を抑制することができるので、管理者の監視負担を軽減することができる。
【0057】
・上記実施形態では、管理サーバ20の警報部213は、管理者への警報通知処理(ステップS2-6)において、線形状領域と点形状領域とを異なる色で特定した後続画像を含めた警報メールを送信した。警報メールには、画像における火の粉の状態を判別し易い画像であれば、加工画像を用いてもよい。例えば、差分抽出画像の背景が火の粉の色と似ている場合には、線形状領域及び点形状領域を、背景とは異なる色で表示する。この場合には、差分抽出画像に含まれる燃焼色が、予め定めた割合以上含まれている場合には、線形状領域及び点形状領域を、燃焼色以外の予め定めた色で表示した画像を生成し、警報メールに含める。更に、抽出した線形状領域及び点形状領域の周囲画素に着色した画像を生成してよい。この場合には、1つの画素が小さくても、線形状範囲及び点形状範囲を強調表示できるので、火の粉が飛散した場所を把握し易くすることができる。
【0058】
・上記実施形態では、評価値が閾値以上になった場合(ステップS2-6において「YES」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、管理者への警報通知処理を実行した(ステップS2-7)。管理者への警報通知処理において、警報を通知する警報先端末は、管理者の端末に限られない。例えば、そのエリアをパトロールする巡視者の携帯端末や作業者の携帯端末に通知を行なってもよい。作業者の携帯端末に通知する場合には、作業者に対する注意や指示を行なってもよい。例えば、火の粉が発生している方向に養生範囲を広げる等の指示を警報メールに含めてもよい。
【0059】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記制御部は、前記差分抽出画像において、前記抽出した線形状領域が警報条件を満たす場合には、警報先端末に注意喚起を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の火の粉検知システム。
(b)前記制御部は、前記差分抽出画像において、基準大きさ以下の燃焼色の点形状の点形状領域を抽出し、前記線形状領域の数及び前記点形状領域の数を用いた評価値が、前記警報条件の閾値以上になった場合には、前記注意喚起を出力することを特徴とする(a)に記載の火の粉検知システム。
(c)前記制御部は、複数の位置に固定された撮像装置に接続され、
前記制御部は、
前記撮像装置のうち、火気使用作業を撮影していない第1撮像装置と、前記火気使用作業を撮影している第2撮像装置とを特定し、
前記第2撮像装置から取得した画像の線形状領域に対する前記警報条件を、前記第1撮像装置から取得した画像の線形状領域に対する前記警報条件より高く設定することを特徴とする(a)又は(b)に記載の火の粉検知システム。
(d)前記制御部は、火気使用作業の開始から前記火気使用作業の終了後の監視時間が経過するまで、前記火の粉を検知する処理を実行することを特徴とする請求項1、2、前記(a)~(c)の何れか1項に記載の火の粉検知システム。
【符号の説明】
【0060】
H10…情報処理装置、H11…通信装置、H12…入力装置、H13…表示装置、H14…記憶部、H15…プロセッサ、10…撮像装置、20…管理サーバ、21…制御部、22…管理情報記憶部、23…スケジュール情報記憶部、24…画像管理記憶部、211…管理部、212…判定部、213…警報部、220…管理情報、230…スケジュール情報。
図1
図2
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図5
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図7