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特開2023-103293可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)のPETイメージング用18F-FNDP
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103293
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)のPETイメージング用18F-FNDP
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/82 20060101AFI20230719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 101/02 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
C07D213/82 CSP
A61P43/00 111
A61P9/12
A61P9/10 101
A61P29/00
A61P3/10
A61P25/04
A61P11/00
A61P25/28
A61P9/00
A61K31/455
A61K51/04 200
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/48
A61K9/20
A61K101:02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023073101
(22)【出願日】2023-04-27
(62)【分割の表示】P 2018558208の分割
【原出願日】2017-05-04
(31)【優先権主張番号】62/331,691
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】517033241
【氏名又は名称】オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニヴァーシティ
【氏名又は名称原語表記】OREGON HEALTH & SCIENCE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ホルティ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ジー ポンパー
(72)【発明者】
【氏名】ナビル ジェイ アルカイド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】可溶性エポキシヒドロラーゼ(sEH)のPETイメージング用放射性フッ素化化合物を提供する。
【解決手段】式(I)の化合物を提供する。

式中、Xは、F、Br、及びI、並びにそれらの放射性同位元素から選択され;Yは-NR-C(=O)-または-C(=O)-NR-;mは1~4から選択される整数;nは1~5から選択される整数;pは1~3から選択される整数;R及びRはH又は所定の置換基。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物であって;
式中、Xは、F、Br、およびI、ならびにそれらの放射性同位元素からなる群から選
択され;
Yは-NR-C(=O)-または-C(=O)-NR-であり;
mは1、2、3、および4からなる群から選択される整数であり;
nは1、2、3、4、および5からなる群から選択される整数であり;
pは1、2、および3からなる群から選択される整数であり;
Rは、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換また
は非置換のアルキニル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアルキ
ル、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換のアリールアルキル、置換
または非置換のアルキルヘテロアリール、置換または非置換のヘテロアルキルアリール、
および置換または非置換のナフチル、置換または非置換のビフェニルからなる群から選択
され;
各Rは、独立して、同じであっても異なっていてもよく、水素、ハロゲン、アルコキ
シル、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換の
ヘテロアルキル、置換または非置換のヘテロアリール、置換または非置換のアリールアル
キル、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換のナフチル、および置換
または非置換のビフェニルからなる群から選択される、化合物と;その立体異性体または
薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
前記式(I)の化合物は、式(II):
【化2】
の化合物である、請求項1の化合物。
【請求項3】
前記式(I)の化合物はイメージングに適した放射性同位元素を含む、請求項1の化合
物。
【請求項4】
イメージングに適した前記放射性同位元素は、18F、76Br、123I、124
125I、および131Iからなる群から選択される、請求項3の化合物。
【請求項5】
イメージングに適した前記放射性同位元素は18Fである、請求項4の化合物。
【請求項6】
前記式(I)の化合物は
【化3】
である、請求項1の化合物。
【請求項7】
可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)を有効量の式(I)の化合物と接触させるス
テップと、画像を作成するステップとを含む、sEHをイメージングする方法であって、
前記式(I)の化合物には:
【化4】
(式中:Xは、18F、76Br、123I、124I、125I、および131Iか
らなる群から選択され;
Yは-NR-C(=O)-または-C(=O)-NR-であり;
mは1、2、3、および4からなる群から選択される整数であり;
nは1、2、3、4、および5からなる群から選択される整数であり;
pは1、2、および3からなる群から選択される整数であり;
Rは、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換また
は非置換のアルキニル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアルキ
ル、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換のアリールアルキル、置換
または非置換のアルキルヘテロアリール、置換または非置換のヘテロアルキルアリール、
および置換または非置換のナフチル、置換または非置換のビフェニルからなる群から選択
され;
各Rは、独立して、同じであっても異なっていてもよく、水素、ハロゲン、アルコキ
シル、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換の
ヘテロアルキル、置換または非置換のヘテロアリール、置換または非置換のアリールアル
キル、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換のナフチル、および置換
または非置換のビフェニルからなる群から選択される)と;
その立体異性体または薬学的に許容可能な塩とが含まれる、方法。
【請求項8】
前記式(I)の化合物は、式(II):
【化5】
の化合物である、請求項7の方法。
【請求項9】
Xは18Fである、請求項7の方法。
【請求項10】
前記式(I)の化合物は:
【化6】
である、請求項7の方法。
【請求項11】
前記画像はポジトロン放出断層撮影を使用することにより得られる、請求項7の方法。
【請求項12】
前記式(I)の化合物はsEHに対し非常に特異的である、請求項7の方法。
【請求項13】
前記特異性は最大約95%である、請求項12の方法。
【請求項14】
sEHはin vitro、in vivo、またはex vivoである、請求項7
の方法。
【請求項15】
sEHは対象に存在する、請求項7の方法。
【請求項16】
前記対象はヒトである、請求項15の方法。
【請求項17】
前記式(I)の化合物は血液脳関門を通過することが可能であり、sEHは前記対象の
脳に存在する、請求項15の方法。
【請求項18】
非侵襲性である、請求項15の方法。
【請求項19】
前記式(I)の化合物は前記対象の脳に容易に侵入する、請求項15の方法。
【請求項20】
前記式(I)の化合物は前記対象の脳から排除される、請求項15の方法。
【請求項21】
可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)媒介性疾患の治療において、sEHを阻害す
る方法であって、対象に治療的に有効な量の式(I)の化合物を投与することにより、s
EHを阻害するステップを含む、方法。
【請求項22】
前記可溶性エポキシドヒドロラーゼ媒介性疾患は、高血圧、粥状動脈硬化、炎症、糖尿
病関連疾患、痛み、肺疾患、アルツハイマー病、血管認知障害(VCI)、および脳卒中
からなる群から選択される、請求項21の方法。
【請求項23】
式(I)の化合物と、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤とを含む医薬組
成物。
【請求項24】
請求項1~6の何れか一項に記載の化合物を含むパッケージ化医薬組成物を含む、キッ
ト。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年5月4日出願の米国仮出願第62/331691号の利益を主張
するものであり、この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔連邦政府による資金提供を受けた研究開発〕
本発明は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)によって与えられたNS089437、
NS038684、NS060703、およびDoD Grant GW130098の
下、政府支援によって行われた。政府は本発明においてある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
エポキシエイコサトリエン酸(EET)は、神経活動に伴う脳血管の血管拡張において
重要なシグナル伝達分子である。エポキシエイコサトリエン酸は、また、多数の分子標的
とシグナル伝達経路の活性を調節する(Spector and Norris, Am. J. Physiol. Cell Phy
siol 2009)。可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)は、哺乳類の身体中に豊富に分
布しており(Sura et al., J. Histochem. Cytochem, 2008; Marowski et al., Neurosci
ence, 2009)、EETをより生物活性が低い分子へ加水分解することを触媒する(Newman
et al., Prog. Lipid. Res., 2005)。ここ10年間でsEHは薬学の標的となり、いく
つかの小分子sEH阻害剤が開発された。これらのsEH阻害剤は、EETのレベルを上
げ、これはひいては、数ある中でも、高血圧、粥状動脈硬化、炎症、糖尿病、痛み、およ
び肺疾患を含む種々の病気に利点を供し得る(Shen and Hammock, J. Med. Chem., 2012
)。
【0004】
sEH制御は、数ある中でも、血管性認知障害(VCI)および脳卒中を含む多くの病
気において変化する。脳血管病理学のアルツハイマー病(AD)および認知症に対する貢
献がますます評価されるようになってきている。死後研究により、認知症患者の3分の1
に、合併症の脳血管病変があることが示された(White et al., Ann. NY Acad. SCi., 20
02; Knopman et al., Arch. Neurol., 2003)。最近のレポートにより、同齢の対照に対
して、VCIのある対象ではsEHの活性が50%高いことが発見された(Neslon et at
., Prostaglandins Other Lipid. Mediat., 2014)。最も一般的なタイプのVCIは、軽
度の認知障害への転換の初期の兆候である白質高信号と関係があり(Neslon et al., Pro
staglandins Other Lipid. Mediat., 2014)、これは、ひいては、ADを発症するリスク
が高いことを表す。
【0005】
上記のように、sEH発現の変化は、EETの生物学的作用を変える。一貫して観察さ
れるEETの作用は、虚血発作後のアポトーシスおよび他の形態の損傷を防ぐという能力
である(Iliff and Alkayed, Future neurology, 2009)。種々の研究により、EETは
脳卒中時の脳を守り、sEHの阻害はこの作用を高めることが示された(Ingraham et al
., Curr. Med. Chem, 2011)。動脈瘤性くも膜下出血の患者は、遅発性脳虚血および脳卒
中のリスクが高い(Martini et al., J. Neurosurg., 2014)。sEH遺伝子(Ephx
2)に共通のK55R遺伝子多型を有する患者は、sheの活性の上昇により30%低い
EETレベルを示し(Lee et al., Hum. Mol. Genet., 2006)、該患者は、対照の対象は
5.3%だったのに対し、脳卒中後に28.6%の死亡率を示した(Martini et al., J.
Neurosurg., 2014)。他の研究では、てんかん(Hung et al., Brain Behav. Immun., 2
015)およびパーキンソン病(Qin et al., Mol. Neurob., 2015)の動物モデルにおいて
、sEH発現の大幅な増加が実証された。
【0006】
薬物開発を促進すること(Shen and Hammock, J. Med. Chem., 2012)に加え、脳卒中
および認知症、つまり、後者の血管状況をより理解する際にも、非侵襲的に、繰り返して
、高分解能でsEHを標的にするPETイメージング剤は重要である。臨床的脳卒中は、
解剖学的および機能的な磁気共鳴イメージングにより主に評価されるが、分子的アプロー
チは、実行可能な放射性トレーサーがないために制限される。というのも、脳卒中の徴候
は、単一光子放射断層撮影で灌流を測定するために使用される放射性トレーサーでは力が
及ばないためである(Heiss, Neurosci. Bull., 2014)。sEH用PET薬は、Aβプラ
ークおよび神経原線維変化の死後観察に頼る必要なく、in vivoでADとVCIを
区別することを可能にする(Morris et al., Eur. J. Nacl. Med. Mol, Imaging, 2015;
Couto and Millis, International Journal of Alzheimer's disease, 2015)。
【発明の概要】
【0007】
一部の態様において、本開示の主題は、式(I):
【化1】
の化合物であって;
式中、Xは、F、Br、およびI、ならびにそれらの放射性同位元素からなる群から選
択され;Yは-NR-C(=O)-または-C(=O)-NR-であり;mは1、2、3
、および4からなる群から選択される整数であり;nは1、2、3、4、および5からな
る群から選択される整数であり;pは1、2、および3からなる群から選択される整数で
あり;Rは、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換
または非置換のアルキニル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロア
ルキル、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換のアリールアルキル、
置換または非置換のアルキルヘテロアリール、置換または非置換のヘテロアルキルアリー
ル、および置換または非置換のナフチル、置換または非置換のビフェニルからなる群から
選択され;各Rは、独立して、同じであっても異なっていてもよく、水素、ハロゲン、
アルコキシル、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアリール、置換または
非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のヘテロアリール、置換または非置換のアリ
ールアルキル、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換のナフチル、お
よび置換または非置換のビフェニルからなる群から選択される、化合物と;その立体異性
体または薬学的に許容可能な塩とを提供する。
【0008】
他の態様では、式(I)の化合物は式(II):
【化2】
の化合物である。
【0009】
ある特定の態様では、式(I)の化合物は、さらに、イメージングに適した放射性同位
元素を含む。
【0010】
特定の態様では、イメージングに適した放射性同位元素は、18F、76Br、123
I、124I、125I、および131Iである。
【0011】
さらにより特定の態様では、式(I)の化合物は、
【化3】
である。
【0012】
他の態様では、本開示の主題は、可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)をイメージ
ングする方法であって、sEHを、有効量の式(I)の化合物と接触させるステップと、
画像を作成するステップとを含む、方法を提供する。
【0013】
一部の他の態様では、本開示の主題は、sEH媒介性疾患の治療において、可溶性エポ
キシドヒドロラーゼ(sEH)を阻害する方法であって、対象に治療的に有効な量の式(
I)の化合物を投与することにより、sEHを阻害するステップを含む、方法を提供する
【0014】
さらに他の態様では、本開示の主題は、式(I)の化合物を含むキットを提供する。
【0015】
上記では、本開示の主題により全体的にまたは部分的に扱われる、本開示の対象のある
特定の態様について述べたが、本明細書において、以下で最良に説明されるように、添付
の実施例および図と関連付けて説明が進むにつれ、他の態様も明らかとなろう。
【0016】
このように本開示の主題について大まかに説明してきたが、次は、必ずしも縮尺に合わ
せて引いたものではないが、添付図面を参照しよう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1Aは、(A)[18F]FNDPを放射標識するためのN-(3,3-ジフェニルプロピル)-6-フルオロニコチンアミド(FNDP)および前駆体-FNDPの合成を示す図である;試薬および条件:(a)1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、室温。図1Bは、(B)18F-FNDP、つまりsEHのPETイメージング用放射性トレーサーの放射性合成を示す図である。
図2】当技術分野で既知である(Shen, Expert. Opin. Ther. Pat., 2010)、代表的なsEH阻害剤1-シクロヘキシル-3-ドデシル-ウレア(CDU)および12-(3-(アダマンタン-1-イル)ウレイド)ドデカン酸(AUDA)を示す図である;構造内の大きい疎水性ドメインのために、これらの化合物は、PET放射性トレーサーの開発には不適切なリードであると考えられる。
図3】化合物FNDP、ノル-フルオロ-FNDP(N-(3,3-ジフェニルプロピル)-ニコチンアミド)、およびAUDAの相対蛍光についての比較研究を示す図である;FNDPは、AUDAおよびノル-フルオロ-FNDPと比較して、sEHに対し低いナノモル阻害活性を実証した。
図4】放射性トレーサーの注射の60分後のCD-1マウスの脳における、sEH阻害剤ノル-フルオロ-FNDP(皮下)を用いた、18F-FNDP(0.1mCi)の取り込みの用量依存性遮断を示す図である;データは、平均%ID/g組織±SD(n=3)である;略称:Str、線条体;Ctx、皮質;Hip、海馬;CB、小脳;遮断曲線は、18F-FNDPが、研究する全脳領域において、sEH結合部位を特異的に標識することを実証する;最も高用量の遮断薬での残りの結合は、非特異的結合に相当する。
図5図5は、放射性トレーサーの注射の60分後のsEH-KOマウスおよび対照C57BL/65マウスにおける、18F-FNDP(0.1mCi)取り込みのベースラインと遮断を示す図である;データは、平均%ID/g±SD(n=5)である;遮断には、sEH阻害剤ノル-フルオロ-FNDP(1mg/kg、皮下)を利用した。
図6】ヒヒにおけるベースラインPET研究より得られた、代表的な血漿時間放射能曲線(TAC)を示す図である;全部で13個の脳領域を解析し、そのうち6つを、明確性のために上記で示した。
図7】同一のヒヒにおける、ベースライン(上2つの曲線)と、ノル-フルオロ-FNDP(2mg/kg)を用いた遮断後(下2つの曲線)の、18F-FNDPの領域性時間-取り込み曲線の比較により、遮断スキャンにおける放射活性の著しい減少が示されることを示す図である;2つの代表的な領域、被殻(四角)および小脳(三角)を示す。
図8】ヒヒの脳の13個の脳領域における、ベースラインスキャンと遮断スキャンの、18F-FNDP PET領域分布容積(V)の比較を示す図である;データ=平均V±SD(ベースラインn=3、遮断n=1)。
図9】ヒヒの脳における、18F-FNDPのPETベースライン(平均化、3スキャン、上段)と遮断(単一スキャン、下段)のパラメトリックV画像を示す図である;PET画像を疑似カラースケールと共に示し、ヒヒの脳のMR画像(グレースケール)と重ねた。
図10】60分時点での、ヒヒ血漿の代表的な放射性代謝物のHPLCを示す図である(親18F-FNDP-9.5分、2つの放射性代謝物-0.7分および6.8分)。
図11】HPLC放射性代謝物解析を示す図である。ヒヒ血漿における親18F-FNDPの時間-%曲線;データ=平均%親±SD、n=3。
【0018】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。
カラー図面を有する本特許または特許出願公開のコピーは、要求および必要手数料の支払
いにより、庁より提供されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これより、本開示の主題について、本発明のいくつか、ただし全てではない実施形態が
示されている添付の図面を参照しながら、本明細書の以下に、より完全に記載する。全体
を通して同様の参照番号は同様の要素を指す。本開示の主題は、多くの異なる形態で具体
化され得、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ
、これらの実施形態は、本開示が該当する法的要件を満たすように提供する。実際に、前
記の説明および添付の図面で提示される教示の利益を得て、本開示の手段が関係する技術
分野の当業者には、本明細書に記載する本開示の主題の多くの修正および他の実施形態が
想起されるだろう。したがって、本開示の主題は、開示する特定の実施形態に限定される
べきではなく、修正および他の実施形態も、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるこ
とが意図されることを理解されたい。
【0020】
I.可溶性エポキシドヒドロラーゼのPETイメージング用18F-FNDP
可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)は、エポキシドを対応するジオールに変換し
、リン酸モノエステルを加水分解する、サイトゾルおよびペルオキシソーム内に位置する
二機能酵素である。sEHは、血管作動性特性および抗炎症特性を有するエポキシエイコ
サトリエン酸(EET)を不活性化するように機能する。sEH阻害剤は、脳卒中後の神
経障害を軽減する薬剤として探究されている。しかしながら、これまでのsEH阻害剤の
多くは大きい疎水性ドメインを有し、これは、潜在的に高い非特異的結合性により、sE
H阻害剤を実行可能な放射性トレーサーにする可能性を低くする(図2)。本開示の主題
では、N-(3,3-ジフェニルプロピル)-6-18F-フルオロニコチンアミド(
F-FNDP)の合成、体内分布、およびヒヒ脳PETイメージングを提供する。18
F-FNDPは、ノル-フルオロ-FNDPとしても知られる強力なsEH阻害剤N-(
3,3-ジフェニルプロピル)-ニコチンアミド(Eldrup et al., J. Med. Chem., 2009
)に構造的に類似した、sEH用放射性トレーサーである。18F-FNDPは容易にマ
ウスおよびヒヒの脳に侵入し、劇的な特異性でsEHを選択的に標識する。
【0021】
現在、18F-FNDPは、動物の脳内のsEHをPETイメージングするのに適した
特性を有する、最初で唯一の放射性トレーサーである。
【0022】
A.式(I)の化合物
従って、一部の実施形態では、本開示の主題は、式(I):
【化4】
の化合物であって;
式中、Xは、F、Br、およびI、ならびにそれらの放射性同位元素からなる群から選
択され;Yは-NR-C(=O)-または-C(=O)-NR-であり;mは1、2、3
、および4からなる群から選択される整数であり;nは1、2、3、4、および5からな
る群から選択される整数であり;pは1、2、および3からなる群から選択される整数で
あり;Rは、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換
または非置換のアルキニル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロア
ルキル、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換のアリールアルキル、
置換または非置換のアルキルヘテロアリール、置換または非置換のヘテロアルキルアリー
ル、および置換または非置換のナフチル、置換または非置換のビフェニルからなる群から
選択され;各Rは、独立して、同じであっても異なっていてもよく、水素、ハロゲン、
アルコキシル、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアリール、置換または
非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のヘテロアリール、置換または非置換のアリ
ールアルキル、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換のナフチル、お
よび置換または非置換のビフェニルからなる群から選択される、化合物と;それらの立体
異性体または薬学的に許容可能な塩とを提供する。
【0023】
他の実施形態では、式(I)の化合物は式(II):
【化5】
の化合物である。
【0024】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、イメージングに適した放射性同位元素を含
む。より特定の実施形態では、イメージングに適した放射性同位元素は、18F、76
r、123I、124I、125I、および131Iからなる群から選択される。さらに
より特定の実施形態では、イメージングに適した放射性同位元素は18Fである。
【0025】
さらにより特定の実施形態では、式(I)の化合物は、
【化6】
である。
【0026】
B.可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)をイメージングするための、式(I)の化
合物の使用方法
一部の実施形態において、本開示の主題は、可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)
を有効量の式(I)の化合物と接触させるステップと、画像を作成するステップとを含む
、sEHをイメージングする方法であって、式(I)の化合物には:
【化7】
(式中:Xは、18F、76Br、123I、124I、125I、および131Iか
らなる群から選択され;Yは-NR-C(=O)-または-C(=O)-NR-であり;
mは1、2、3、および4からなる群から選択される整数であり;nは1、2、3、4、
および5からなる群から選択される整数であり;Rは、水素、置換または非置換のアルキ
ル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換
のアリール、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアルキルアリール
、置換または非置換のアリールアルキル、置換または非置換のアルキルヘテロアリール、
置換または非置換のヘテロアルキルアリール、および置換または非置換のナフチル、置換
または非置換のビフェニルからなる群から選択され;Rは、水素、ハロゲン、アルコキ
シル、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換の
ヘテロアルキル、置換または非置換のヘテロアリール、置換または非置換のアリールアル
キル、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換のナフチル、および置換
または非置換のビフェニルからなる群から選択される)と;その立体異性体または薬学的
に許容可能な塩とが含まれる、方法を提供する。
【0027】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は式(II):
【化8】
の化合物である。
【0028】
特定の実施形態では、Xは18Fである。
【0029】
より特定の実施形態では、式(I)の化合物は式(II):
【化9】
の化合物である。
【0030】
「接触させること」は、本開示の主題のイメージング剤を含む少なくとも1つの化合物
がsEHに物理的に接触することをもたらす、任意の行為を意味する。接触させることに
は、少なくとも1つの化合物とsEHの接触をもたらすのに十分な量の化合物に、sEH
を晒すことが含まれ得る。本方法は、培養皿または培養チューブなどの制御された環境に
化合物とsEHを導入し、好適には混ぜることにより、in vitroまたはex v
ivoで実行され得る。本方法はin vivoでも実行され得、この場合、接触させる
ことは、化合物を任意の適切な経路により対象に投与するなど、本開示の主題の少なくと
も一つの化合物に、対象のsEHを晒すことを意味する。本開示の主題に従うと、接触さ
せることは、化合物を、接触させるsEHとは離れた部位に導入および晒すなどし、対象
の身体機能、つまり自然な(例えば、拡散)または人為的な(例えば、旋回)液体の移動
を可能にして、化合物とsEHの接触をもたらすことを含み得る。
【0031】
「画像を作成すること」により、ポジトロン放出断層撮影(PET)を使用して、細胞
、組織、腫瘍、身体の一部、および同類のものの画像を形成することを意味する。
【0032】
他の実施形態では、式(I)の化合物はsEHに対し非常に特異的である。一部の実施
形態では、特異性は最大約95%である。
【0033】
他の実施形態では、sEHは、in vitro、in vivo、またはex vi
voである。さらに他の実施形態では、sEHは対象に存在する。
【0034】
本開示の方法の多くの実施形態において、本開示の方法により治療される「対象」は、
望ましくはヒト対象であるが、本明細書に記載の方法は全ての脊椎動物種に関し有効であ
り、脊椎動物種は用語「対象」に含まれることが意図されることを理解すべきである。従
って、「対象」には、既存の病気もしくは疾患の治療もしくは病気もしくは疾患の発症を
防ぐための予防処置などの医療目的用のヒト対象、または、医療、獣医目的、もしくは開
発目的用の動物対象が含まれ得る。適切な動物対象としては、限定するわけではないが、
霊長類、例えばヒト、サル、類人猿など;ウシ類、例えばウシ、雄ウシなど;ヒツジ類、
例えばヒツジなど;ヤギ類、例えばヤギなど;ブタ類、例えばブタ、雄ブタなど;ウマ類
、例えばウマ、ロバ、シマウマなど;野生ネコおよび飼育ネコを含むネコ類;イヌを含む
イヌ類;ウサギ、ノウサギなどを含むウサギ類;ならびにマウス、ラットなどを含むげっ
歯類を含む哺乳類が挙げられる。動物は遺伝子導入動物であってよい。一部の実施形態で
は、対象は、限定するわけではないが、胎児対象、新生児対象、乳児対象、若年対象、お
よび成人対象を含むヒトである。さらに、「対象」には、病気または疾患にかかっている
か、またはかかっていると疑われる患者が含まれ得る。したがって、用語「対象」および
「患者」は、本明細書において区別なく使用される。用語「対象」は、また、対象由来の
臓器、組織、細胞、または細胞収集物も指す。
【0035】
一部の実施形態では、検出可能な有効量の本開示の方法のイメージング剤が、対象に投
与される。本開示の主題に従い、イメージング剤の「検出可能な有効量」は、臨床用途で
利用可能な器材を使用して許容される画像を生成するのに十分な量と定義される。検出可
能な有効量のイメージング剤は、2回以上の注射で投与されてよい。イメージング剤の検
出可能な有効量は、個体の感受性の度合い、個体の年齢、性別、および体重、個体の特異
体質性反応などの要素、線量測定ならびに機器およびフィルムに関連する要素に応じて変
化し得る。斯かる要素の最適化は、十分に当業者のレベルの範囲内である。
【0036】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、血液脳関門を通過することが可能であ
り、つまり、sEHは対象の脳に存在する。他の実施形態では、本方法は非侵襲性である
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「非侵襲性の」は、機器が身体に導入されない方法を指
す。
【0038】
対象に対する任意の副作用を最小化するように、投与後迅速にイメージング剤を含む化
合物をsEHに対し局在化させることが好ましい。したがって、一部の実施形態では、式
(I)の化合物は対象の脳に容易に侵入する。
【0039】
一部の実施形態において、本開示の方法は、in vivoで安定的で、その結果、注
射した化合物の実質的に全て、例えば50%超、60%超、70%超、80%超、または
より好適には90%超が排出前に身体により代謝されることがない化合物を使用する。他
の実施形態では、イメージング剤を含む化合物はin vivoで安定的である。
【0040】
本開示の主題の化合物は、患者に投与された放射標識化合物の放射線に長期間被ばくす
ることを防ぐために、身体組織から迅速に排出されることも好ましい。典型的には、本開
示の主題の化合物は、約24時間未満で身体から除去される。より好適には、本開示の主
題の化合物は、約16時間未満、12時間未満、8時間未満、6時間未満、4時間未満、
または2時間未満で身体から除去される。
【0041】
C.可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)媒介性疾患の治療において、sEHを阻害
するための、式(I)の化合物の使用方法
他の実施形態では、本開示の主題は、可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)媒介性
疾患の治療において、sEHを阻害する方法であって、対象に治療的に有効な量の式(I
)の化合物を投与することにより、sEHを阻害するステップを含む、方法を提供する。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「阻害する」は、対象で見つけられる過剰な可溶性エポ
キシドヒドロラーゼ活性を低減または減少させることを意味する。用語「阻害する」は、
また、疾患、障害、または病気の発症または進行を低減させる、抑制する、弱める、減少
させる、抑える、または安定させることも意味する。阻害は、例えば、未治療の対照対象
または疾患もしくは障害のない対象と比較し、少なくとも10%、20%、30%、40
%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはさらに
は100%で生じ得る。
【0043】
本明細書で使用する場合、概して、活性薬の「有効量」は、脳で検出され得る、または
脳をイメージングする、診断する、および/もしくは治療するために使用され得る活性薬
量を送達するなどの、所望の効果を生成するのに十分な量を指す。治療薬の「治療的に有
効な量」は、所望の生物学的反応を引き出すのに必要な薬剤量を指す。当業者に理解され
るように、薬剤の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、医薬組成
物の組成、標的組織、または標的細胞などの要因に応じて変わり得る。一部の実施形態で
は、用語「有効量」は、疾患、障害、もしくは病気、もしくはその1つもしくは複数の症
状の重篤度、期間、進行、もしくは発症を低減もしくは改善させる;疾患、障害、もしく
は病気の進行を予防する;疾患、障害、もしくは病気の退行を引き起こす;疾患、障害、
もしくは病気に関連する症状の再発、発症、発病、もしくは進行を予防する、または、別
の治療法の予防効果もしくは治療効果を高めるもしくは改善するのに十分な量を指す。
【0044】
本明細書で使用する場合、活性薬を組み合わせて、単一剤形で投与してもよいし、別個
の剤形として同時に投与してもよいし、同一日にまたは別の日に、交代でまたは連続して
投与される別個の剤形として投与してもよい。本開示の主題の一実施形態では、活性薬は
組み合わされて単一剤形で投与される。別の実施形態では、活性薬は別個の剤形で投与さ
れる(例えば、この場合、一方の量を変更し、もう一方の量を変更しないことが望ましい
)。単一剤形には、疾患の状態の治療のために追加の活性薬が含まれてよい。
【0045】
特定の実施形態では、可溶性エポキシドヒドロラーゼ媒介性疾患は、高血圧、粥状動脈
硬化、炎症、糖尿病関連疾患、痛み、肺疾患、アルツハイマー病、血管認知障害(VCI
)、および脳卒中からなる群から選択される。
【0046】
D.医薬組成物および投与
一部の実施形態では、本開示は、薬学的に許容可能な賦形剤との混合物中に、式(I)
の一化合物のみを含むか、または、1つもしくは複数の追加の治療薬と組み合わせて式(
I)の一化合物を含む、医薬組成物を提供する。したがって、一部の実施形態では、本開
示の主題は、式(I)の化合物と、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤とを
含む医薬組成物を提供する。当業者は、該医薬組成物には、上記の化合物の薬学的に許容
可能な塩が含まれることを認識しよう。
【0047】
薬学的に許容可能な塩は、概して、当業者に周知であり、該塩には、本明細書に記載す
る化合物で見つけられる特定の置換部分に応じて、比較的非毒性の酸または塩基を用いて
調製される、活性化合物の塩が含まれる。本開示の化合物が相対的に酸性の官能基を含有
する場合、中性形態の斯かる化合物を、十分な量の所望の塩基と、そのままでもしくは適
切な不活性溶媒中でのいずれかで接触させることにより、または、イオン交換によりイオ
ン複合体の一塩基性対イオン(塩基)を別のものに置換することにより、塩基付加塩を得
ることが可能である。薬学的に許容可能な塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリ
ウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、もしくはマグネシウム塩、また
は類似の塩が挙げられる。
【0048】
本開示の化合物が相対的に塩基性の官能基を含有する場合、中性形態の斯かる化合物を
、十分な量の所望の酸と、そのままでもしくは適切な不活性溶媒中でのいずれかで接触さ
せることにより、または、イオン交換によりイオン複合体の一酸性対イオン(酸)を別の
ものに置換することにより、酸付加塩を得ることが可能である。薬学的に許容可能な酸付
加塩の例としては、塩化水素酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、リン酸
一水素酸、リン酸二水素酸、硫酸、硫酸一水素酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などの
無機酸由来の塩、および酢酸、プロピオン酸、イソブチル酸、マレイン酸、マロン酸、安
息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスル
ホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比
較的非毒性の有機酸由来の塩が含まれる。また、アルギネートなどのアミノ酸塩、および
グルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸塩も含まれる(例えば、Berge et al,
“Pharmaceutical Salts," Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19参照)
。本開示のある特定の化合物は、化合物を塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換す
ることを可能にする、塩基性官能基および酸性官能基の両方を含む。
【0049】
したがって、本開示の主題との使用に適した薬学的に許容可能な塩としては、限定する
わけではないが、例として、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重
酒石酸塩、臭酸塩、エデト酸カルシウム、カルノシン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、エデト
酸塩、エジシル酸塩、エストリン酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプチン酸塩、グ
ルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルソン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒド
ラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩
、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、
ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パントテン酸塩、リン
酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸
塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、またはテオクル酸塩が挙げられる。
他の薬学的に許容可能な塩は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharm
acy (20th ed.) Lippincott, Williams & Wilkins (2000)に見つけることができる。
【0050】
特定の実施形態において、塩は、トリ(ヒドロカルビル)アンモニウム塩またはテトラ
(ヒドロカルビル)アンモニウム塩である。さらにより特定の態様では、塩は、トリ(C
-C-アルキル)アンモニウム塩、テトラ(C-C-アルキル)アンモニウム塩
、トリフェニルアンモニウム塩、トリ(ヒドロキシ-C-C-アルキル)アンモニウ
ム塩、およびテトラ(ヒドロキシ-C-C-アルキル)アンモニウム塩からなる群か
ら選択される。さらにより特定の態様では、塩は、トリメチルアンモニウム塩、トリエチ
ルアンモニウム塩、トリ(ヒドロキシエチル)アンモニウム塩、トリプロピルアンモニウ
ム塩、およびトリ(ヒドロキシプロピル)アンモニウム塩からなる群から選択される。
【0051】
治療用途および/または診断用途では、本開示の化合物は、口腔(舌下、頬側)投与、
経口投与、舌下投与、全身投与、および局所または限局投与を含む種々の投与様式向けに
製剤化され得る。技術および製剤化は、概して、Remington:The Science and Practice
of Pharmacy (20th ed.) Lippincott, Williams & Wilkins (2000)に見つけることができ
る。
【0052】
斯かる薬剤は、治療される具体的な病気に応じて、液体剤形(例えば、液剤、懸濁剤、
もしくはエマルジョン剤)または固体剤形(カプセル剤もしくは錠剤)に製剤化されてよ
く、全身にまたは局所的に投与されてよい。薬剤は、当業者には既知であるように、例え
ば、時限放出形態、制御放出形態、または持続遅延放出形態で送達されてもよい。製剤化
および投与のための技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy (20th
ed.) Lippincott, Williams & Wilkins (2000)に見つけることができる。適切な経路とし
ては、経口、頬側、吸入スプレーによる、舌下、直腸、経皮、経膣、経粘膜、経鼻または
腸内投与;筋肉内、皮下、髄内注射を含む非経口送達、および、髄腔内、直接脳室内、静
脈内、関節内、胸骨内、滑膜内、肝臓内、病巣内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、もしくは眼
内注射またはその他の送達方式が挙げられ得る。一部の実施形態では、医薬組成物は経口
投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は静脈内投与される。一部の実施形態では
、医薬組成物は筋肉内投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は髄腔内投与される
。一部の実施形態では、医薬組成物は皮下投与される。
【0053】
注射の場合、本開示の薬剤は、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理食塩水緩衝液
などの生理学的に適合可能な緩衝液などの水溶液にて製剤化および希釈されてもよい。斯
かる経粘膜投与の場合、透過すべき関門に適切な浸透剤が製剤に使用される。斯かる浸透
剤は、概して、当技術分野で既知である。
【0054】
本開示の実施のために本明細書において開示する化合物を全身投与に適切な剤形に製剤
化するための、医薬的に許容可能な不活性担体の使用は、本開示の範囲内である。適切な
担体の選択および適切な製造手法で、本開示の組成物、特に液剤として製剤化されたもの
は、静脈内注射などによって非経口的に投与されてもよい。化合物は、当技術分野で周知
の薬学的に許容可能な担体を用いて経口投与に適切な剤形に容易に製剤化され得る。斯か
る担体は、治療する対象(例えば、患者)による経口摂取のために、本開示の組成物を錠
剤、丸剤、カプセル剤、液体、ゲル剤、シロップ剤、乳液剤、懸濁剤などとして製剤化す
ることを可能にする。
【0055】
経鼻送達または吸入送達の場合は、本開示の薬剤は、当業者に既知の方法によって製剤
化されてもよく、例えば、限定するわけではないが、生理食塩水などの可溶化物質、希釈
物質、または分散物質;ベンジルアルコールなどの保存剤;吸収促進剤;およびフルオロ
カーボンの例を含んでよい。
【0056】
本開示での使用に適切な医薬組成物には、その意図した目的を達成するのに有効な量で
活性成分が含有されている組成物が含まれる。有効量の決定は、特に本明細書で提供する
詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。概して、本開示の化合物は
、広い投薬量範囲にわたって有効である。例えば、成人の治療では、1日あたり0.01
~1000mg、0.5~100mg、1~50mg、および1日あたり5~40mgの
投薬量が、使用してよい投薬量の例である。非限定的な投薬量は、1日あたり10~30
mgである。正確な投薬量は、投与経路、化合物が投与される形態、治療すべき対象、治
療すべき対象の体重、化合物の生物学的利用能、化合物の吸着、分布、代謝、および排出
(ADME)毒性、ならびに主治医の嗜好および経験に左右されよう。
【0057】
これらの医薬組成物は、活性成分に加えて、活性化合物を薬学的に使用され得る製剤に
加工しやすくする、賦形剤および助剤を含む適切な薬学的に許容可能な担体を含有しても
よい。経口投与向けに製剤化された製剤は、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、または液剤の形
態であってもよい。
【0058】
経口使用のための医薬製剤は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、結果として生じ
る混合物を任意選択的に粉砕し、所望であれば顆粒の混合物を適切な助剤を加えた後に加
工して錠剤または糖衣錠コアを得ることにより、得ることが可能である。適切な賦形剤は
、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などの充
填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン
、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプ
ロピルメチル-セルロース、ナトリウムカルボキシメチル-セルロース(CMC)、およ
び/またはポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)である。所望であれば、架橋ポリ
ビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩
などの崩壊剤を加えてもよい。
【0059】
糖衣錠コアは、適切なコーティングを備える。この目的のために、アラビアゴム、タル
ク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール(PEG)、な
らびに/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物
を任意選択的に含有し得る濃縮糖溶液を使用することができる。識別のため、または活性
化合物用量の異なる組み合わせに特徴を与えるために、染料または顔料を錠剤または糖衣
錠コーティングに加えてもよい。
【0060】
経口的に使用され得る医薬製剤には、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル、ならび
に、ゼラチン製の軟質密封カプセルおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤
が含まれ得る。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの
結合剤、ならびに/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、およ
び任意選択的に安定剤を有する混合物中で活性成分を含有し得る。ソフトカプセルでは、
活性化合物を、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコール(PEG)
などの適切な液体に溶解させるかまたは懸濁させてもよい。さらに、安定剤を加えてもよ
い。
【0061】
E.キット
さらに他の実施形態では、本開示の主題は、式(I)の化合物を含むキットを提供する
。ある特定の実施形態において、キットは、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦
形剤と、本開示の化合物とを含むパッケージ化医薬組成物を提供する。ある特定の実施形
態において、パッケージ化医薬組成物は、放射性標識前駆体と組み合わせた際に本発明の
化合物を生成するのに必要な、反応前駆体を含むだろう。本発明によって提供される他の
パッケージ化医薬組成物には、さらに、供給された前駆体から本発明の化合物を調製する
ための使用説明書、PSMAを発現する細胞もしくは組織をイメージングするために組成
物を使用するための使用説明書、またはストレス関連障害を患っている患者においてグル
タミン酸作動性神経伝達をイメージングするために組成物を使用するための使用説明書、
または前立腺癌をイメージングするために組成物を使用するための使用説明書の少なくと
も1つを含む、指示が含まれる。
【0062】
II.定義
具体的な用語が本明細書において採用されているが、それらは、限定を目的とせず一般
的および説明的な趣旨でのみ使用される。別途定義がない限り、本明細書において用いら
れる技術的および科学的用語はすべて、本記載の主題が属する技術分野の当業者によって
一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0063】
式(I)の化合物に関連する以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えら
れるが、本開示の主題の説明を容易にするために以下の定義を記す。これらの定義は、本
開示を検討する際に、当業者には明白であろう定義を補足および説明するもので、他を除
外しないことを意図する。
【0064】
本明細書で使用する場合、用語置換された(用語「任意選択的に」が先行してもしなく
ても)および置換基は、当業者によって認識されるように、分子上の1つの官能基を別の
官能基に変更する能力を指す(ただし、すべての原子の結合価は維持される)。任意の所
与の構造における複数の位置が、特定の群から選択される複数の置換基で置換され得る場
合、置換基は、各位置で同じであっても異なっていてもよい。置換基はまた、さらに置換
されていてもよい(例えば、アリール基置換基は、1つまたは複数の位置でさらに置換さ
れている別のアリール基などの別の置換基を有してもよい)。
【0065】
置換基または連結基が、左から右に書かれるそれらの従来の化学式によって特定される
場合、置換基または連結基には、構造を右から左に書くことより生じる化学的に同一の置
換基が等しく包含される。例えば、-CHO-は-OCH-と同等であり;-C(=
O)O-は-OC(=O)-と同等であり;-OC(=O)NR-は-NRC(=O)O
-と同等である、などである。
【0066】
用語「独立して選択される」が使用される場合、言及されている置換基(例えば、基R
、RなどのR基、または「m」および「n」などの変数)は、同一であっても異なっ
ていてもよい。例えば、RおよびRの両方が置換アルキルであり得、またはRは水
素でかつRは置換アルキルであり得る、などである。
【0067】
本明細書において置換基の群を参照して使用される場合、用語「1つの(a)」、「1
つの(an)」、または「1つの(a(n))」は、少なくとも1つを意味する。例えば
、化合物が「1つの(an)」アルキルまたはアリールで置換されている場合、該化合物
は、少なくとも1つのアルキルおよび/または少なくとも1つのアリールで任意選択的に
置換されている。さらに、ある部分がR置換基で置換されている場合、該基は、「R置換
されている」という場合がある。ある部分がR置換されている場合、該部分は、少なくと
も1つのR置換基で置換されており、各R置換基は任意選択的に異なる。
【0068】
名称付きの「R」または基は、概して、本明細書において別途特定しない限り、その名
称を有する基に相当すると当技術分野で認識されている構造を有するだろう。例示を目的
として、上記のある特定の代表的な「R」基を以下で定義する。
【0069】
本開示の化合物の説明は、当業者に既知の化学結合の原理によって制限される。したが
って、基が1つまたは複数のいくつかの置換基で置換され得る場合、斯かる置換は、化学
結合の原理に従い、かつ本質的には不安定でなく、ならびに/または、水性、中性および
いくつかの既知の生理学的条件などの周囲条件下では不安定になりやすいことが当業者に
知られている化合物が得られるように選択される。例えば、ヘテロシクロアルキルまたは
ヘテロアリールは、当業者に既知である化学結合の原理に従って環ヘテロ原子を介して分
子の残部に結合し、それより本質的に不安定な化合物を回避する。
【0070】
別途に明示的に定義しない限り、本明細書で使用する場合、「置換基」には、本明細書
で定義する以下の部分の1つまたは複数より選択される官能基が含まれる。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語炭化水素は、水素および炭素を含む任意の化学基を指す
。炭化水素は、置換されていても非置換であってもよい。当業者には既知だろうが、任意
の置換を行う場合はすべての原子価が満たされなければならない。炭化水素は、不飽和、
飽和、分枝、非分枝、環式、多環式、または複素環式であってもよい。例示的な炭化水素
が本明細書の以下にてさらに定義されるが、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イ
ソプロピル、シクロプロピル、アリル、ビニル、n-ブチル、tert-ブチル、エチニ
ル、シクロヘキシルなどが含まれる。
【0072】
用語「アルキル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、別途明記しない限り
、直(つまり、非分枝)鎖もしくは分枝鎖、非環式もしくは環式の炭化水素基、またはこ
れらの組み合わせを意味し、これは完全飽和、一価不飽和、または多価不飽和であっても
よく、指定された炭素原子数を有する二価基および多価基が含まれ得る(つまり、C
10は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10個の炭素を含む、1~10
個の炭素を意味する)。特定の実施形態では、用語「アルキル」は、1、2、3、4、5
、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、お
よび20個の炭素を含むC1-20以内の、直鎖状(つまり、「直鎖」)、分枝状、また
は環状の、飽和または少なくとも部分的に不飽和、場合によっては完全に不飽和(つまり
、アルケニルおよびアルキニル)の、単一の水素原子の除去によって1~20個の炭素原
子を含有する炭化水素部分から誘導された炭化水素ラジカルを指す。
【0073】
代表的な飽和炭化水素基には、限定するわけではないが、メチル、エチル、n-プロピ
ル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-
ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘ
キシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、n-ウンデシル、ドデシル、シクロ
ヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびにそれらの同族体
および異性体が含まれる。
【0074】
「分枝状の」は、メチル、エチル、またはプロピルなどの低級アルキル基が直鎖状アル
キル鎖に結合しているアルキル基を指す。「低級アルキル」は、1~約8個の炭素原子、
例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子を有するアルキル基(つま
り、C1-8アルキル)を指す。「高級アルキル」は、約10~約20個の炭素原子、例
えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の
炭素原子を有するアルキル基を指す。ある特定の実施形態では、「アルキル」は、特にC
1-8直鎖アルキルを指す。他の実施形態では、「アルキル」は、特にC1-8分枝鎖ア
ルキルを指す。
【0075】
アルキル基は、任意選択的に、同一であっても異なっていてもよい、1つまたは複数の
アルキル基置換基で置換され得る(「置換アルキル」)。用語「アルキル基置換基」には
、限定するわけではないが、アルキル、置換アルキル、ハロ、アリールアミノ、アシル、
ヒドロキシル、アリールオキシル、アルコキシル、アルキルチオ、アリールチオ、アラル
キルオキシル、アラルキルチオ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、オキソ、および
シクロアルキルが含まれる。1つまたは複数の酸素、硫黄、または置換もしくは非置換の
窒素原子が、アルキル鎖に沿って任意選択的に挿入され得、前記窒素置換基は、水素、低
級アルキル(本明細書では「アルキルアミノアルキル」ともいう)、またはアリールであ
る。
【0076】
したがって、本明細書で使用する場合、用語「置換アルキル」には、アルキル基の1つ
または複数の原子または官能基が別の原子または官能基(例えば、アルキル、置換アルキ
ル、ハロゲン、アリール、置換アリール、アルコキシル、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ
、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、サルフェート、およびメルカプトを含む)と置き
換えられた、本明細書で定義するようなアルキル基が含まれる。
【0077】
用語「ヘテロアルキル」は、それ自体でまたは別の用語と組み合わさって、別途明記し
ない限り、少なくとも1つの炭素原子と、O、N、P、SiおよびSからなる群から選択
される少なくとも1つのヘテロ原子とからなる、安定的な直鎖もしくは分枝鎖もしくは環
状の炭化水素基またはそれらの組み合わせを意味し、窒素、リン、および硫黄原子は、任
意選択的に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意選択的に四級化されていても
よい。ヘテロ原子O、N、P、およびS、およびSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部
位置に、またはアルキル基が分子の残部に結合する位置に位置し得る。例としては、限定
するわけではないが、-CH-CH-O-CH、-CH-CH-NH-CH
、-CH-CH-N(CH)-CH、-CH-S-CH-CH、-CH
-CH25-S(O)-CH、-CHCH2-S(O)-CH、-CH=CH-
O-CH、-Si(CH、-CH-CH=N-OCH、-CH=CH-N(
CH)-CH、O-CH、-O-CH-CH、および-CNが挙げられる。例
えば、-CH-NH-OCHおよびCH-O-Si(CHなどのように最大
2個または3個のヘテロ原子が連続してもよい。
【0078】
上記のように、本明細書で使用する場合、ヘテロアルキル基には、-C(O)NR’、
-NR’R’’、-OR’、-SR、-S(O)R、および/または-S(O)R’な
どの、ヘテロ原子を介して分子の残部に結合する基が含まれる。「ヘテロアルキル」の後
に-NR’Rなどの特定のヘテロアルキル基が記されている場合、用語ヘテロアルキルお
よび-NR’R’’は、重複しておらず、相互に排他的でもないと理解されよう。むしろ
、特定のヘテロアルキル基は、明確性を付加するために記される。従って、用語「ヘテロ
アルキル」は、本明細書では、-NR’R’’などの特定のヘテロアルキル基を排除する
と解釈されるべきではない。
【0079】
「環状」および「シクロアルキル」は、約3~約10個の炭素原子、例えば、3、4、
5、6、7、8、9、または10個の炭素原子の非芳香族の単環式または多環式の環系を
指す。シクロアルキル基は、任意選択的に部分的に不飽和であり得る。シクロアルキル基
はまた、任意選択的に、本明細書で定義するようなアルキル基置換基、オキソ、および/
またはアルキレンで置換され得る。環状アルキル鎖に沿って、1つまたは複数の酸素、硫
黄、または置換もしくは非置換の窒素原子が任意選択的に挿入され得、窒素置換基は、水
素、非置換アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールであり、したがって
、複素環式基を提供する。代表的な単環式シクロアルキル環としては、シクロペンチル、
シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが挙げられる。多環式シクロアルキル環としては
、アダマンチル、オクタヒドロナフチル、デカリン、カンフル、カンファン、およびノル
アダマンチル、ならびにジヒドロおよびテトラヒドロナフタレンなどの縮合環系などが挙
げられる。
【0080】
本明細書で使用する場合、用語「シクロアルキルアルキル」は、上記でも定義するアル
キル基を介して親分子部分に結合する、上記で定義するシクロアルキル基を指す。シクロ
アルキルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチルおよびシクロペンチルエチルが
挙げられる。
【0081】
用語「シクロヘテロアルキル」または「ヘテロシクロアルキル」は、窒素(N)、酸素
(O)、硫黄(S)、リン(P)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される、同
じでも異なっていてもよい1つまたは複数のヘテロ原子を含む、3~10員の置換または
非置換のシクロアルキル環系などの非芳香族環系、不飽和または部分不飽和の環系を指し
、これは、任意選択的に1つまたは複数の二重結合を含み得る。
【0082】
シクロヘテロアルキル環は、任意選択的に、他のシクロヘテロアルキル環および/また
は非芳香族炭化水素環に縮合するか、さもなければ結合し得る。複素環式環には、酸素、
硫黄、および窒素から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するものが含まれ、
窒素および硫黄ヘテロ原子は任意選択的に酸化され得、窒素ヘテロ原子は任意選択的に四
級化され得る。ある特定の実施形態では、用語複素環式は、少なくとも1つの環原子がO
、S、およびN(窒素および硫黄ヘテロ原子は任意選択的に酸化され得る)より選択され
るヘテロ原子である、非芳香族5、6、もしくは7員環または多環式基を指し、これには
、限定するわけではないが、酸素、硫黄、および窒素から独立して選択される1~3個の
ヘテロ原子を有する縮合6員環を含む二または三環式基が含まれ、(i)各5員環は0~
2個の二重結合を有し、各6員環は0~2個の二重結合を有し、各7員環は0~3個の二
重結合を有し、(ii)窒素および硫黄ヘテロ原子は、任意選択的に酸化され得、(ii
i)窒素ヘテロ原子は、任意選択的に四級化され得、(iv)上記の複素環式環のいずれ
もアリールまたはヘテロアリール環に縮合し得る。代表的なシクロヘテロアルキル環系と
しては、限定するわけではないが、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミ
ダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジル、ピペラジニル、インドリニル
、キヌクリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアジアジナニル、テトラヒドロ
フラニルなどが挙げられる。
【0083】
用語「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、それ自体でまたは他の用
語と組み合わさって、別途明記しない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキ
ル」の環式型を表す。さらに、ヘテロシクロアルキルでは、複素環が分子の残部に結合し
ている位置をヘテロ原子が占有し得る。シクロアルキルの例としては、限定するわけでは
ないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニ
ル、シクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例には、限定するわけで
はないが、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピ
ペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフ
ラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テト
ラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられる。用
語「シクロアルキレン」および「ヘテロシクロアルキレン」は、それぞれシクロアルキル
およびヘテロシクロアルキルの二価誘導体を指す。
【0084】
不飽和アルキル基は、1つもしくは複数の二重結合または三重結合を有するものである
。不飽和アルキル基の例としては、限定するわけではないが、ビニル、2-プロペニル、
クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-
(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、な
らびにより高級な同族体および異性体が挙げられる。炭化水素基に限定されるアルキル基
は「ホモアルキル」という。”
【0085】
より詳細には、本明細書で使用する場合、用語「アルケニル」は、単一の水素分子の除
去による少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、C1-20以内の直鎖状または
分枝状の炭化水素部分から誘導される一価の基を指す。アルケニル基としては、例えば、
エテニル(つまり、ビニル)、プロペニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテン-1-イ
ル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、アレニル、およびブタジエニルが挙げられる
【0086】
本明細書で使用する場合、用語「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素
二重結合を含有する環状炭化水素を指す。シクロアルケニル基の例としては、シクロプロ
ペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエン、シクロヘキセニル、
1,3-シクロヘキサジエン、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、およびシク
ロオクテニルが挙げられる。
【0087】
本明細書で使用する場合、用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結
合を含有する、設計された炭素原子数の直鎖状または分枝状のC1-20炭化水素から誘
導される一価の基を指す。「アルキニル」の例としては、エチニル、2-プロピニル(プ
ロパルギル)、1-プロピニル、ペンチニル、ヘキシニル、およびヘプチニル基などが挙
げられる。
【0088】
用語「アルキレン」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、1~約20個の炭
素原子、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14
、15、16、17、18、19、または20個の炭素原子を有するアルキル基から誘導
される直鎖状または分枝状の二価脂肪族炭化水素基を指す。アルキレン基は、直鎖状、分
枝状、または環状であり得る。アルキレン基はまた、任意選択的に、不飽和であっても、
および/または1つもしくは複数の「アルキル置換基」で置換されてもよい。任意選択的
に、アルキレン基に沿って1つまたは複数の酸素、硫黄または置換もしくは非置換の窒素
原子(本明細書では「アルキルアミノアルキル」ともいう)が挿入され得、窒素の置換基
は、前述のようにアルキルである。例示的なアルキレン基としては、メチレン(-CH
-);エチレン(-CH-CH-);プロピレン(-(CH-);シクロヘキ
シレン(-C10-);-CH=CH-CH=CH-;-CH=CH-CH-;-
CHCHCHCH-、-CHCH=CHCH-、-CHCsCCH-、
-CHCHCH(CHCHCH)CH-、(CH-N(R)-(CH
-が挙げられ、ここで、qおよびrはそれぞれ独立して、0~約20の整数、例え
ば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、
16、17、18、19、または20であり、Rは、水素または低級アルキル;メチレン
ジオキシル(-O-CH-O-);およびエチレンジオキシル(-O(CH-O
-)である。アルキレン基は、約2~約3個の炭素原子を有し得、さらには6~20個の
炭素を有し得る。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は1~24個の炭素原子
を有し、10個以下の炭素原子を有する基は本開示の一部の実施形態である。「低級アル
キル」または「低級アルキレン」は、概して8個以下の炭素原子を有する、鎖がより短い
アルキルまたはアルキレン基である。
【0089】
用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、限定するわ
けではないが、-CH-CH-S-CH-CH-および-CH-S-CH
CH-NH-CH-によって例示されるヘテロアルキルから誘導された二価基を意味
する。ヘテロアルキレン基では、ヘテロ原子はまた、鎖末端のいずれかまたは両方を占有
し得る(例えば、アルキレンオキソ、アルキレンジオキソ、アルキレンアミノ、アルキレ
ンジアミノなど)。またさらに、アルキレン連結基およびヘテロアルキレン連結基では、
連結基の式が書かれている方向によって連結基の向きが示唆されることはない。例えば、
式-C(O)OR’-は、-C(O)OR’-と-R’OC(O)-の両方を表す。
【0090】
用語「アリール」は、別途明記しない限り、単環または、互いに縮合しているかもしく
は共有結合している多環(1~3環など)であり得る芳香族炭化水素置換基を意味する。
用語「ヘテロアリール」は、N、O、およびSより選択される1~4個のヘテロ原子を(
多数の環の場合はそれぞれ別個の環において)含有するアリール基(または環)を指し、
窒素および硫黄原子は任意選択的に酸化され、窒素原子は任意選択的に四級化される。ヘ
テロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残部に結合し得る。アリールお
よびヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル
、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-
イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、
2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソ
オキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリ
ル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジ
ル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル
、2-ベンゾイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2
-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが挙げられ
る。上記アリールおよびヘテロアリール環系のそれぞれについての置換基は、以下に記載
の許容可能な置換基の群から選択される。用語「アリーレン」および「ヘテロアリーレン
」は、それぞれアリールおよびヘテロアリールの二価形態を指す。
【0091】
簡潔には、他の用語と組み合わせて使用される場合の用語「アリール」(例えば、アリ
ールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)には、上記で定義したアリールとヘ
テロアリール環の両方が含まれる。したがって、用語「アリールアルキル」および「ヘテ
ロアリールアルキル」には、アリールまたはヘテロアリール基がアルキル基に結合してい
る基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチル、フリルメチルなど)が含まれる
ことを意味し、これには、炭素原子(例えば、メチレン基)が例えば酸素原子で置き換え
られたアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-
ナフチルオキシ)プロピルなど)が含まれる。しかしながら、本明細書で使用する場合の
用語「ハロアリール」は、該用語には1つまたは複数のハロゲンで置換されたアリールの
みが対象として含まれることを意味する。
【0092】
ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールが特定の数の員を含む
場合(例えば、「3~7員」)、用語「員」は、炭素またはヘテロ原子を指す。
【0093】
さらに、本明細書で使用する場合、式:
【化10】
によって一般的に表される構造は、環構造、例えば、限定するわけではないが、3炭素、
4炭素、5炭素、6炭素、7炭素など、脂肪族および/または芳香族の環状化合物を指し
、これには、置換基R基を含み、Rは存在しても不存在でもよく、存在する場合は、1つ
または複数のR基が、それぞれ、環構造の1つまたは複数の利用可能な炭素原子上で置換
され得る、飽和環構造、部分飽和環構造、および不飽和環構造が含まれる。R基の有無お
よびR基の数は、0から置換に利用可能な環上の炭素原子数までの範囲の値を概して有す
る、整数である変数「n」の値によって決まる。R基が複数の場合、各R基は、別のR基
上ではなく環構造の利用可能な炭素上で置換される。例えば、nが0~2である上記構造
には、限定するわけではないが、
【化11】
などを含む化合物群が含まれるであろう。
【0094】
環式環構造中の結合を表す破線は、当該結合が環に存在するかまたは存在しないかのい
ずれかであり得ることを示す。つまり、環式環構造中の結合を表す破線は、環構造が飽和
環構造、部分飽和環構造、および不飽和環構造からなる群から選択されることを示す。
【0095】
は、ある部分が分子の残部に結合する点を表す。
【0096】
芳香環または複素環式芳香環の指定原子が「存在しない」と定義されている場合は、該
指定原子は直接結合によって置き換えられている。
【0097】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「シクロアルキル、および
「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「ホスホネート」、お
よび「スルホネート」、ならびにそれらの二価誘導体)はそれぞれ、該用語には示された
基の置換形態および非置換形態の両方が含まれることを意味する。各タイプの基について
の任意選択的な置換基を以下で提供する。
【0098】
(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シク
ロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニル
としばしば呼ばれる基を含む)アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシク
ロアルキルの一価および二価誘導体基のための置換基は、限定するわけではないが、0~
(2m’+1)という範囲の数で、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’
R’’、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R’’R’’’、-OC(O)R’、-C(
O)R’、-COR’、-C(O)NR’R’’、-OC(O)NR’R’’、-NR
’’C(O)R’、-NR’-C(O)NR’’R’’’、-NR’’C(O)OR’、
-NR-C(NR’R’’)=NR’’’、-S(O)R’、-S(O)R’、-S(
O)NR’R’’、-NRSOR’、-CNおよび-NOより選択される種々の基
の1つまたは複数であり得、m’は、斯かる基における炭素原子の総数である。R’、R
’’、R’’’およびR’’’’は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のヘ
テロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシク
ロアルキル、置換もしくは非置換のアリール(例えば、1~3個のハロゲンで置換された
アリール)、置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、ま
たはアリールアルキル基を指し得る。本明細書で使用する場合、「アルコキシ」基は、二
価の酸素を介して分子の残部に結合するアルキルである。本開示の化合物が、例えば、複
数のR基を含む場合、各R基は独立して選択され、各R’、R’’、R’’’、およびR
’’’’基も、これらの基が複数存在する場合は同様である。R’およびR’’が同じ窒
素原子に結合している場合、その窒素原子と合体して、4員、5員、6員または7員環を
形成することが可能である。例えば、-NR’R’’は、該-NR’R’’には、限定す
るわけではないが、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルが含まれることを意味する
。置換基についての上記議論から、当業者であれば、用語「アルキル」は、該用語には水
素基以外の基に結合した炭素原子を含む基、例えば、ハロアルキル(たとえば-CF
よび-CHCF)やアシル(たとえば、-C(O)CH、-C(O)CF、-C
(O)CHOCHなど)が含まれることを意味することを理解しよう。
【0099】
アルキル基について上記した置換基と同様に、アリールおよびヘテロアリール基(なら
びにそれらの二価誘導体)のための例示的な置換基は種々あり、例えば: ゼロから芳香
環系上の空いている原子価の総数までの範囲の数で、ハロゲン、-OR’、-NR’R’
’、-SR’、-SiR’R’’R’’’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO
R’、-C(O)NR’R’’、-OC(O)NR’R’’、-NR’’C(O)R’
、-NR’-C(O)NR’’R’’’、-NR’’C(O)OR’、-NR-C(NR
’R’’R’’’)=NR’’’’、-NR-C(NR’R’’)=NR’’’-S(O
)R’、-S(O)R’、-S(O)NR’R’’、-NRSOR’、-CNおよ
び-NO、-R’、-N、-CH(Ph)、フルオロ(C-C)アルコキソ、
ならびにフルオロ(C-C)アルキルより選択され、R’、R’’、R’’’、およ
びR’’’’は独立して、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテ
ロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアル
キル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のヘテロアリールから選択
され得る。本開示の化合物が、例えば、複数のR基を含む場合、各R基は独立して選択さ
れ、各R’、R’’、R’’’、およびR’’’’基も、これらの基が複数存在する場合
は同様である。
【0100】
アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうち2つは、任意選択的に
式-T-C(O)-(CRR’)-U-の環を形成してもよく、ここで、TおよびUは
独立して、-NR-、-O-、-CRR’-または単結合であり、qは0~3の整数であ
る。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは
、任意選択的に式-A-(CH-B-の置換基で置き換えられてもよく、Aおよび
Bは独立して、-CRR’-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)
-、-S(O)NR’-、または単結合であり、rは1~4の整数である。
【0101】
このように形成された新しい環の単結合の1つは、任意選択的に二重結合で置き換えら
れ得る。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうち2つ
は、任意選択的に、式-(CRR’)-X’-(C’’R’’’)-の置換基で置き
換えられ得、ここで、sおよびdは独立して0~3の整数であり、X’は、-O-、-N
R’-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、または-S(O)NR’-である。
置換基R、R’、R’’およびR’’’は、独立して、水素、置換または非置換のアルキ
ル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置
換または非置換のアリール、および置換または非置換のヘテロアリールより選択され得る
【0102】
本明細書で使用する場合、用語「アシル」は、カルボキシル基の-OHが別の置換基で
置き換えられた有機酸基を指し、一般式RC(=O)-を有し、式中、Rは、本明細書で
定義するように、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、炭素環式、複素環式、
または芳香族複素環式基である。したがって、用語「アシル」には、具体的には、2-(
フラン-2-イル)アセチル)-および2-フェニルアセチル基などのアリールアシル基
が含まれる。アシル基の具体例としては、アセチルおよびベンゾイルが挙げられる。アシ
ル基は、また、アミド、-RC(=O)NR’、エステル、-RC(=O)OR’、ケト
ン、-RC(=O)R’、およびアルデヒド、-RC(=O)Hが含まれることも意図す
る。
【0103】
用語「アルコキシル」または「アルコキシ」は、本明細書において区別なく使用され、
酸素原子を介して親分子部分に結合している飽和(つまり、アルキル-O-)基または不
飽和(つまり、アルケニル-O-およびアルキニル-O-)基を指し、用語「アルキル」
、「アルケニル」、および「アルキニル」は、前述の通りであり、例えば、メトキシル、
エトキシル、プロポキシル、イソプロポキシル、n-ブトキシル、sec-ブトキシル、
tert-ブトキシル、およびn-ペントキシル、ネオペントキシル、n-ヘキソキシル
などを含む、C1-20以内の直鎖状、分枝状、または環状の、飽和または不飽和のオキ
ソ-炭化水素鎖が含まれ得る。
【0104】
本明細書で使用する場合、用語「アルコキシアルキル」は、アルキル-O-アルキルエ
ーテル、例えば、メトキシエチルまたはエトキシメチル基を指す。
【0105】
「アリールオキシル」はアリール-O-基を指し、ここでアリール基は前述の通りであ
り、該アリール基には置換アリールが含まれる。本明細書で使用する場合、用語「アリー
ルオキシル」は、フェニルオキシルまたはヘキシルオキシル、およびアルキル、置換アル
キル、ハロ、もしくはアルコキシル置換フェニルオキシルまたはヘキシルオキシルを指し
得る。
【0106】
「アラルキル」は、アリール-アルキル基を指し、ここでアリールおよびアルキルは前
述の通りであり、アリールおよびアルキルには置換アリールおよび置換アルキルが含まれ
る。例示的なアラルキル基としては、ベンジル、フェニルエチル、およびナフチルメチル
が挙げられる。
【0107】
「アラルキルオキシル」はアラルキル-O-基を指し、ここでアラルキル基は前述の通
りである。例示的なアラルキルオキシル基は、ベンジルオキシル、つまりC-CH
-O-である。アラルキルオキシル基は任意選択的に置換され得る。
【0108】
「アルコキシカルボニル」はアルキル-O-C(=O)-基を指す。例示的なアルコキ
シカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブチルオキシカル
ボニル、およびtert-ブチルオキシカルボニルが挙げられる。
【0109】
「アリールオキシカルボニル」は、アリール-O-C(=O)-基を指す。例示的なア
リールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニルおよびナフトキシカルボニル
が挙げられる。
【0110】
「アラルコキシカルボニル」は、アラルキル-O-C(=O)-基を指す。例示的なア
ラルコキシカルボニル基は、ベンジルオキシカルボニルである。
【0111】
「カルバモイル」は、式-C(=O)NHのアミド基を指す。「アルキルカルバモイ
ル」は、R’RN-C(=O)-基を指し、RおよびR’のうち一方は水素であり、Rお
よびR’のうちもう一方は、前述のようにアルキルおよび/または置換アルキルである。
「ジアルキルカルバモイル」は、R’RN-C(=O)-基を指し、RおよびR’はそれ
ぞれ独立して、前述のようにアルキルおよび/または置換アルキルである。
【0112】
本明細書で使用する場合、用語カルボニルジオキシルは、式-O-C(=O)-ORの
カーボネート基を指す。
【0113】
「アシルオキシ」はアシル-O-基を指し、ここでアシルは前述の通りである。
【0114】
用語「アミノ」は-NH基を指し、有機ラジカルによる1つまたは複数の水素ラジカ
ルの置き換えによってアンモニアから誘導される、当技術分野で既知の窒素含有基も指す
。例えば、用語「アシルアミノ」および「アルキルアミノ」は、それぞれ、アシル置換基
およびアルキル置換基を有する特定のN-置換有機ラジカルを指す。
【0115】
本明細書において使用する場合、「アミノアルキル」は、アルキレンリンカーに共有結
合したアミノ基を指す。より詳細には、本明細書で使用する場合、用語アルキルアミノ、
ジアルキルアミノ、およびトリアルキルアミノは、それぞれ、窒素原子を介して親分子部
分に結合する、上記で定義したような1、2、または3個のアルキル基を指す。用語アル
キルアミノは、R’が上記で定義したようなアルキル基である、構造-NHR’を有する
基を指すが、用語ジアルキルアミノは、R’およびR’’がそれぞれ独立してアルキル基
からなる群から選択される、構造-NR’R’’を有する基を指す。用語トリアルキルア
ミノは、R’、R’’、およびR’’’がそれぞれ独立してアルキル基からなる群から選
択される、構造-NR’R’’R’’’を有する基を指す。さらに、R’、R’’、およ
び/またはR’’’は一緒になって、任意選択的に-(CH-になり得、ここでk
は2~6の整数である。例としては、限定するわけではないが、メチルアミノ、ジメチル
アミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、ジエチルアミノカルボニル、メチルエチルアミ
ノ、イソプロピルアミノ、ピペリジノ、トリメチルアミノ、およびプロピルアミノが挙げ
られる。
【0116】
アミノ基は-NR’R’’であり、R’およびR’’は典型的には、水素、置換もしく
は非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシク
ロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリー
ル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールより選択される。
【0117】
用語アルキルチオエーテルおよびチオアルコキシルは、硫黄原子を介して親分子部分に
結合している飽和(つまり、アルキル-S-)または不飽和(つまり、アルケニル-S-
およびアルキニル-S-)基を指す。チオアルコキシル部分の例としては、限定するわけ
ではないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチ
オなどが挙げられる。
【0118】
「アシルアミノ」は、アシルが前述の通りである、アシル-NH-基を指す。「アロイ
ルアミノ」は、アロイルが前述の通りであるアロイル-NH-基を指す。
【0119】
用語「カルボニル」は、-C(=O)-基を指し、一般式R-C(=O)Hで表される
アルデヒド基を含み得る。
【0120】
用語「カルボキシル」は、-COOH基を指す。斯かる基は、本明細書では「カルボン
酸」部分ともいう。
【0121】
本明細書で使用する場合、用語「ハロ」、「ハロゲン化物」、または「ハロゲン」は、
フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード基を指す。さらに、「ハロアルキル」などの用
語は、該用語にはモノハロアルキルおよびポリハロアルキルが含まれることを意味する。
例えば、用語「ハロ(C-C)アルキル」は、該用語には、限定するわけではないが
、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロ
モプロピルなどが含まれることを意味する。
【0122】
用語「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0123】
用語「ヒドロキシアルキル」は、-OH基で置換されたアルキル基を指す。
【0124】
用語「メルカプト」は、-SH基を指す。
【0125】
本明細書で使用する場合、用語「オキソ」は、炭素原子にまたは別の元素に二重結合し
ている酸素原子を意味する。
【0126】
用語「ニトロ」は、-NO基を指す。
【0127】
用語「チオ」は、炭素原子または酸素原子が硫黄原子によって置き換えられている、本
明細書で前述の化合物を指す。
【0128】
用語「サルフェート」は、-SO基を指す。
【0129】
本明細書で使用する場合、用語チオヒドロキシルまたはチオールは、式-SHの基を指
す。
【0130】
より詳細には、用語「スルフィド」は、式-SRの基を有する化合物を指す。
【0131】
用語「スルホン」は、スルホニル基-S(O)Rを有する化合物を指す。
【0132】
用語「スルホキシド」は、スルフィニル基-S(O)Rを有する化合物を指す。
【0133】
用語ウレイドは、式-NH-CO-NHの尿素基を指す。
【0134】
明細書および特許請求の範囲全体にわたり、所与の化学式または名称は、すべての互変
異性体、同族体、光学異性体、および立体異性体、ならびに斯かる異性体および混合物が
存在するラセミ混合物を包含するものとする。
【0135】
本開示のある特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心もしくはキラル中心)または二
重結合を有し得;絶対立体化学の点で、(R)-もしくは(S)-またはアミノ酸につい
てはD-もしくはL-と定義され得る、エナンチオマー、ラセミ体、ジアステレオマー、
互変異性体、幾何異性体、立体異性体形態、および個々の異性体が、本開示の範囲内に包
含される。本発明の化合物には、不安定すぎて合成および/または単離できないと当該技
術分野において知られているものは含まれない。本開示は、本開示にはラセミ型、非ラセ
ミ型、および光学的に純粋な形態の化合物が含まれることを意味する。光学的に活性な(
R)-および(S)-、またはD-およびL-異性体は、キラルシントンもしくはキラル
試薬を用いて調製されるか、または従来の技術を用いて分割され得る。本明細書に記載す
る化合物がオレフィン結合または他の幾何学的非対称中心を含有する場合は、別途特定し
ない限り、該化合物にはEおよびZ幾何異性体の両方が含まれることを意図する。
【0136】
別途明記しない限り、本明細書で図示する構造は、該構造には、その構造のすべての立
体化学的形態;つまり、各不斉中心に対するRおよびS立体配置が含まれることを意味す
る。そのため、単一の立体化学異性体ならびに本化合物の鏡像異性およびジアステレオ異
性の混合物は、本発明の範囲内である。
【0137】
本開示のある特定の化合物が、互変異性型で存在し得、化合物の斯かる互変異性型のす
べてが本発明の範囲内であることは、当業者にとって明らかだろう。本明細書で使用する
場合、用語「互変異性体」は、平衡状態で存在し、一つの異性体型から別の異性体型に容
易に変換される2つ以上の構造異性体のうちの1つを指す。
【0138】
別途明記しない限り、本明細書で図示する構造は、該構造には1つまたは複数の同位体
濃縮原子の存在下でのみ異なる化合物が含まれることも意味する。例えば、重水素もしく
はトリチウムによる水素の置き換え、または13C-もしくは14C-濃縮炭素による炭
素の置き換えがある本構造を有する化合物は、本開示の範囲内である。
【0139】
本開示の化合物はまた、斯かる化合物を構成する1つまたは複数の原子において、天然
にはない割合の原子同位体を含有し得る。例えば、当該化合物は、例えば、トリチウム(
H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)などの放射性同位元素
で放射性標識することができる。放射性であるかないかに関わらず、本開示の化合物のす
べての同位体バリエーションが本開示の範囲内に包含される。
【0140】
本開示の化合物は、塩として存在してもよい。本開示には、斯かる塩が含まれる。適用
可能な塩形態の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸
塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(例えば、(+)-酒石
酸塩、(-)-酒石酸塩、またはラセミ混合物を含むこれらの混合物)、コハク酸塩、安
息香酸塩、およびグルタミン酸などのアミノ酸との塩が挙げられる。これらの塩は、当業
者に既知の方法により調製され得る。また、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、
アンモニウム塩、有機アミノ塩、もしくはマグネシウム塩などの塩基付加塩、または類似
の塩も含まれる。本開示の化合物が相対的に塩基性の官能基を含有する場合は、中性形態
の斯かる化合物を、十分な量の所望の酸と、そのままでもしくは適切な不活性溶媒中での
何れかで接触させることにより、またはイオン交換により、酸付加塩を得ることが可能で
ある。許容可能な酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素、
リン酸、リン酸一水素、リン酸二水素、硫酸、硫酸一水素、ヨウ化水素酸、または亜リン
酸などのような無機酸から誘導されるもの、および、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マ
レイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、
フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスル
ホン酸などのような有機酸から誘導される塩が挙げられる。アルギン酸塩などのアミノ酸
の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などのような有機酸の塩も含まれる。本
開示のある特定の具体的な化合物は、塩基性および酸性の官能基を両方含有し、これは、
該化合物が塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換されることを可能にする。
【0141】
中性形態の化合物は、従来の方法で、塩を塩基または酸と接触させ、親化合物を単離す
ることによって再生され得る。化合物の親形態は、極性溶媒での溶解性などの、ある特定
の物理的特性において、種々の塩形態とは異なる。
【0142】
本開示のある特定の化合物は、非溶媒和形態および水和形態を含む溶媒和形態で存在し
得る。概して、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本開示の範囲内に包含される
。本開示のある特定の化合物は、多数の結晶または非結晶形態で存在し得る。概して、す
べての物理的形態は、本開示により企図される使用にとって同等であり、本開示の範囲内
にあることを意図する。
【0143】
塩形態に加えて、本開示は、プロドラッグ形態である化合物を提供する。本明細書に記
載する化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化して本開示の化合物を
提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、ex vivo環境において化学的ま
たは生化学的方法によって本開示の化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、適
切な酵素または化学試薬を備えた経皮パッチリザーバーに置かれると、ゆっくりと本開示
の化合物に変換され得る。
【0144】
長年にわたる特許法の慣例に従い、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、およ
び「その(the)」という用語は、特許請求の範囲を含め、本出願で使用される場合は
「1つまたは複数」を指す。従って、例えば、「対象」への言及は、文脈上反対のこと(
例えば、複数の対象)が明らかである場合などを除き、複数の対象を含む。
【0145】
本明細書および特許請求の範囲全体にわたって、文脈上他の意味に解す場合を除き、用
語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含んでい
る(comprising)」は、非排他的な意味で使用する。同様に、用語「含む(i
nclude)」およびその文法上の変形は非限定的であることを意図し、そのため、リ
スト中の項目の列挙により、リストの項目と置換されるかまたはリストの項目に追加され
得る他の類似項目が除外されることはない。
【0146】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的には、別途の指示がない限り、量、サイズ
、寸法、割合、形状、配合、パラメーター、パーセンテージ、分量、特性、ならびに明細
書および特許請求の範囲において使用される他の数値を表すすべての数は、用語「約」が
値、量または範囲と共に明示的に現れていなくても、用語「約」によってすべての事例に
おいて修飾されていると理解されたい。したがって、反対のことが明示されていない限り
、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記した数的パラメーターは厳密ではなく、
厳密である必要もなく、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差などと、本開示の主題によ
って得ようとする所望の特性に応じて当業者に既知である他の要因を反映して、所望によ
りおおよそ、および/またはより大きくもしくはより小さくてもよい。例えば、値に言及
する場合は、用語「約」は、特定した量から、いくつかの態様では±100%、いくつか
の態様では±50%、いくつかの態様では±20%、いくつかの態様では±10%、いく
つかの態様では±5%、いくつかの態様では±1%、いくつかの態様では±0.5%、い
くつかの態様では±0.1%の変動を包含することを意味し得る。これは、斯かる変動が
、開示されている方法を行う上で、または開示されている組成物を利用する上で適切であ
るからである。
【0147】
さらに、用語「約」は、1つまたは複数の数または数値範囲に関連して使用される場合
は、範囲内のすべての数を含むすべてのそのような数を指すと理解されるべきであり、記
載の数値を上限および下限を広げることによってその範囲を修正する。端点による数値範
囲の列挙には、その範囲内に入る全ての数、例えば、その端数を含む全整数(例えば、1
~5という列挙は、1、2、3、4、および5、およびその端数、例えば、1.5、2.2
5、3.75、4.1などを含む)、ならびにその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【実施例0148】
以下の実施例は、本開示の主題の代表的な実施形態を実施するための、当業者に対する
手引きを提供するために含めた。本開示および当業者の一般的レベルを鑑みると、当業者
は、以下の実施例が単なる例示であることが意図され、多数の変更、修正、および改変が
、本開示の主題の範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解し得る。以下の合成に
ついての記載および具体例は、例示の目的を意図するのみであり、他の方法によって本開
示の化合物を作製することを何ら制限するものではないと解釈されるべきである。
【0149】
〔実施例1〕
概要
可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)は、エポキシドを対応するジオールに変換し
、リン酸モノエステルを加水分解する、サイトゾルおよびペルオキシソーム内に位置する
二機能酵素である。sEHは、血管作動性特性および抗炎症特性を有するエポキシエイコ
サトリエン酸(EET)を不活性化するように機能する。sEH阻害剤は、脳卒中後の神
経障害を軽減する薬剤として探究されている。本開示の主題は、マウスおよび非ヒト霊長
類の脳内のsEHをPETでイメージングすることに対し非常に特異的であることが分か
った、N-(3,3-ジフェニルプロピル)-6-18F-フルオロニコチンアミド(
F-FNDP)ならびにその類似体および誘導体を提供する。
【0150】
18F-FNDPを、対応するブロモ前駆体から合成した。18F-FNDPのsEH
阻害活性を、sEH阻害剤スクリーニングアッセイキット(Cayman Chemic
al,ミシガン州)を使用して測定した。CD-1マウスにおいて体内分布させた。結合
特異性を、sEH結合を遮断するsEH阻害剤を用いた予備治療により、CD-1マウス
、sEHノックアウトマウス、およびアヌビスヒヒ(ヒヒ)においてアッセイした。動脈
血サンプリングを用いた動的PETイメージングを、分布容積(V)を使用して定量化
した局所トレーサー結合を用いて、3匹のヒヒにおいて行った。ヒヒにおける18F-F
NDPの代謝を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して評価した。
【0151】
18F-FNDP(K=1.73nM)を、放射化学収率14±7%、888-3,
774GBq/μmolの範囲の比放射能、および>99%の放射化学的純度で、自動放
射性合成モジュールを使用して、ワンステップで調製した。調製時間は約75分だった。
CD-1マウスにおいて、最大取り込みが組織1グラム当たり5.2%の注射用量では、
領域性取り込みは、sEHの既知の脳分布と同じく、線条体>皮質>海馬>小脳のパター
ンに従った。80-90%の遮断が全脳領域で実証された。放射トレーサー最小取り込み
は、sEH-KOマウスであった。PETヒヒ脳分布は、全領域で著しい遮断(95%)
を示すマウスで見られる分布と一致し、これは、sEHが介在する18F-FNDP取り
込みを示す。ヒヒ血漿では、20%の親化合物が注射の90分後に存在すると共に、2つ
の親水性代謝産物が特定された。
【0152】
18F-FNDPは、適切な放射化学収率、高比放射能、および純度で合成され得る。
in vivoイメージング実験により、18F-FNDPが、マウスおよび非ヒト霊長
類の脳において、特異的にsEHを標的することが実証された。18F-FNDPは、中
枢神経系に影響を与える種々の病気におけるsEHの役割を理解するのに有用である可能
性がある、有望なPET放射性トレーサーである。
【0153】
〔実施例2〕
物質および方法
全試薬を、Sigma-Aldrich(St.Louis,ミズーリ州)より商業的
に得られるまま直接使用した。ノル-フルオロ-FNDPを、前述のように調製した(Ed
rup et al. J. Med. Chem. 2009)。カラムフラッシュクロマトグラフィーを、E.Me
rckシリカゲル60F(230-400メッシュ)(Sigma-Aldrich)を
使用して実行した。Bruker-500MHz NMR分光計(Billerica、
マサチューセッツ)において、CDCl中で、H NMRスペクトルを記録した(δ
0ppmの内部MeSiを基準とする)。高速液体クロマトグラフィー(HPLC
)システムは、2つのVarian ProStar pump(カリフォルニア州パロ
アルト)、単一のRheodyne(登録商標)Model 7725iマニュアルイン
ジェクタ、ProStar325UV-Vis可変波長検出器、およびBioScan
Flow-Count放射能検出器(カリフォルニア州パウウェイ)からなる。アナリテ
ィカルセミ分取クロマトグラフィーを、Phenomenex Luna C-18 1
0μmカラム(それぞれ、4.6x250mmおよび10x250mm)を使用して行っ
た(カリフォルニア州トーランス)。実験動物プロトコルは、Johns Hopkin
s Medical Institutionsの動物の管理および使用委員会により承
認された。
【0154】
合成
N-(3,3-ジフェニルプロピル)-6-フルオロニコチンアミド(FNDP)。3
,3-ジフェニルプロパン-1-アミン(105.5mg,0.5mmol)を、3mL
のN,N-ジメチルホルムアミド中の6-フルオロニコチン酸(70.5mg,0.5m
mol)の溶液に加え、続けて1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(135mg,1mm
ol)、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(
191mg,1mmol)、およびジイソプロピルエチルアミン(195.5mg,1.
5mmol)を加えた。反応物を室温で48時間撹拌し、溶媒を真空下で蒸発させ、残渣
をフラッシュLC(シリカゲル、ヘキサン-酢酸エチル5:1→2:1)により分離して
、所望の生成物FNDPを得た(121mg,72%)。1H NMR (CHCl3-d3, 500 MHz)
δ8.32 (d, J=2.5 Hz, 1H), 8.10-8.06 (m, 1H), 7.27-7.24 (m, 8H), 7.25 (m, 2H), 7.
01-6.98(m, 1H), 5.92 (broad s, 1H), 4.07 (t, J=8Hz, 1H), 3.57 (m, 2H), 2.48 (m,
2H).
【0155】
6-ブロモ-N-(3,3-ジフェニルプロピル)ニコチンアミド(前駆体-FNDP
)。6-ブロモニコチン酸を出発物質として使用して、FNDPと同様に、前駆体-FN
DPを調製した。収率:59%。1H NMR (CHCl3-d3, 500 MHz) δ8.45 (d, J=2.5 Hz, 1H
), 7.79 (m, 1H), 7.56 (d, J=8Hz, 1H), 7.37-7.32 (m, 8H), 7.27-7.24 (m, 2H), 5.92
(broad s, 1H), 4.07 (t, J=9Hz, 1H), 3.56 (m, 2H), 2.49 (m, 2H).
【0156】
放射性合成
N-(3,3-ジフェニルプロピル)-6-18F-フルオロニコチンアミド(18
-FNDP)。General Electric PETtraceサイクロトロンに
おける18O-水のプロトン衝撃により得られた18F-フッ化物と、0.4mLの水中
の2mgのKCOと、2mLアセトニトリル中の15-20mgのクリプトフィック
ス(登録商標)222を、GE MicroLabモジュールの反応容器(オハイオ州シ
ンシナティ)に加えた。混合物を、2mLのCHCNを加えた後、アルゴン気流下で1
40℃で共沸した。DMSO(0.8mL)中の前駆体-FNDP(2mg)の溶液を、
160℃で12分間加熱した混合物と共に反応容器に加えた。反応混合物を冷却し、0.
7mLの水で希釈し、逆相セミ分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムに注
入した。放射性生成物ピークを、50mLのHPLCグレードの水において収集した。活
性化Waters C-18 Sep-Pakライトカートリッジ(マサチューセッツ州
ミルフォード)を介して、水溶液を移した。カートリッジを10mLの生理食塩水で洗浄
した後、生成物を0.2μMの滅菌フィルタを通して1mLのエタノールで溶出し、滅菌
パイロジェンフリー容器に入れ、10mLの0.9%生理食塩水を同じフィルタを通して
加えた。次に最終生成物18F-FNDPをアナリティカルHPLCにより解析して、放
射化学純度と比放射能を求めた。品質管理を含め、総調製時間は75分だった。セミ分取
HPLC条件:Luna C18、10ミクロン、10x250mm;移動相:45:5
5(アセトニトリル:0.1Mギ酸アンモニウム水溶液);流速10mL/分;UV-2
54nm;保持時間13分および21分(それぞれ、FNDPおよび前駆体-FNDP)
。アナリティカルHPLC条件:Luna C18、10ミクロン、4.6x250mm
;移動相:55:45(アセトニトリル:0.1Mギ酸アンモニウム水溶液);流速3m
L/分;UV-254nm;保持時間3.9分および6.5分(それぞれ、FNDPおよ
び前駆体-FNDP)。
【0157】
in vitro研究
FNDPを用いたsEHのin vitro阻害。FNDP、ノル-フルオロ-FND
P、FNDPの類似体、およびsEHの既知の阻害剤(Eldrup et al., J. Med. Chem.,
2009)の阻害活性を、sEH阻害剤アッセイキット(Cayman Chemical,
ミシガン州)を使用して測定した。要するに、sEHによる(3-フェニル-オキシラニ
ル)-酢酸シアノ-(6-メトキシ-ナフタレン-2-イル)-メチルエステルの加水分
解の阻害を測定することにより、sEH阻害剤のIC50値を求めた。sEHの既知の阻
害剤であるAUDA(Cayman Chemical,ミシガン州)(Imig et la., H
ypertension, 2005)を、正の対照として使用した。全反応を3回行い、データをGra
phPad Prism(GraphPad Software,カリフォルニア州サン
ディエゴ)を使用して解析し、阻害定数(K値)を生成した。
【0158】
マウスにおける 18 F-FNDPを用いた生体分布研究
CD1マウスにおけるベースライン研究。Charles River(マサチューセ
ッツ州ウィルミントン)からの25-27gの重さのオスのCD-1マウスを使用した。
動物を、0.2mL生理食塩水中の3.7MBq(0.1mCi)18F-FNDP(比
放射能=814GBq/μmol(22,000mCi/μmol)を外側尾静脈(n=
3)に注射した5、15、30、60、および90分後に、頸椎脱臼により殺処分した。
脳を取り出し、氷上で解剖した。線条体、皮質、海馬、視床下部、小脳、および残りの脳
を秤量し、それらの放射能含有量をγ-カウンターLKB/Wallac1283Com
puGamma CS(Perkin Elmer,コネチカット州ブリッジポート)で
求めた。注入物のアリコットを標準として調製し、その放射能含有量を組織サンプルと併
せて求めた。組織1グラム当たりの注射用量パーセント(%ID/g組織)を計算した。
【0159】
CD1マウスにおける18F-FNDP結合の遮断。in vivo結合特異性(遮断
)研究を、種々の用量(0mg/kg、0.03mg/kg、0.3mg/kg、1mg
/kg、3mg/kg)のノル-フルオロ-FNDPの皮下投与の15分後に、3.7M
Bq(0.1mCi)18F-FNDPをIV注射することにより実行した(n=3)。
放射性トレーサーを投与して90分後に、動物を頸椎脱臼により殺処分し、脳組織を回収
し、その放射能含有量を求めた。
【0160】
sEHノックアウト(SEH-KO)マウスおよびC57BL/6対照マウスにおける
18F-FNDPのベースライン研究と遮断研究。同一バッチの18F-FNDPを用
いたベースライン研究および遮断研究(ノル-フルオロ-FNDP、1mg/kg、皮下
)を、上記の研究と同様に行った。sEH-KOマウス(Ephx2遺伝子欠失;Jac
kson Labs)およびC57Bl/6バックグラウンド系統マウスについて研究し
た(n=5)。全動物を、放射性トレーサー注入の60分後に殺処分した。
【0161】
ベースライン研究および遮断研究におけるCD-1マウスおよびsEH-KOマウスの
サンプルサイズはそれぞれ3および5で、これはG*Power,v.3.1.9.2フ
リーウェアにより計算される検定力>0.9に相当する。
【0162】
ヒヒPETおよび放射性代謝物研究
ベースラインおよび遮断の動的PET実験(90分)を、23.9、25.0、および
28.2kgの重さの3匹のオスのヒヒ(アヌビスヒヒ)において、高分解能研究用断層
撮影装置(HRRT、CPS Innovations,Inc.、テネシー州ノックス
ビル)を使用して行った。要するに、動的PET収集を、248MBq(6.7mCi)
18F-FNDP(2634GBq/μmol(比放射能値71,177mCi/μm
ol、担体質量=0.0011μg/kg)の静脈注射を用いて行った。同一ヒヒにおけ
る遮断スキャンでは、ノル-フルオロ-FNDP(2mg/kg)を、307MBq(8
.3mCi)18F-FNDP(比放射能値1420GBq/μmol(38,386m
Ci/μmol)、担体質量=0.0025μg/kg)の静脈内ボーラス投与およびス
キャン開始の1時間前に、皮下に与えた。ヒヒの動脈血における放射性代謝物解析を、以
前刊行された一般的条件下で行った(Hilton et al., Nucl. Med. Biol., 2000)。
【0163】
ヒヒPET研究。PET実験を、28.2kgの重さのオスのヒヒ(アヌビスヒヒ)に
おいて、高分解能研究用断層撮影装置(HRRT、CPS Innovations,I
nc.、テネシー州ノックスビル)を使用して行った。動物に、1回のベースラインPE
Tスキャンおよび3週間後に1回の遮断スキャンを受けさせた。動物を、各PET研究前
に12時間絶食させた。麻酔を筋肉内ケタミン(7.5-10mg/kg)と共に導入し
、PET実験を通して0.3-0.4mg/kg/分というプロトコルの継続静脈内注入
で維持した。一本の静脈カテーテルを放射性リガンド注射のために挿入し、一本の動脈カ
テーテルを動脈血サンプルを得るために挿入した。動脈血漿入力関数の測定を、90分の
一連の動的PETスキャンで43個の血液サンプルの収集により実行した。呼吸が楽にな
るようにヒヒにも挿管し、等張生理食塩水を一定注入することにより循環量を維持した。
心拍数、血圧、心電図、および酸素飽和度を含む生理学的バイタルサインを、研究の間中
、継続的にモニタリングした。
【0164】
動物を、その頭を熱可塑性マスクで固定して、PETスキャナに置いた。吸収補正のた
めに回転[137Cs]セシウム線源を使用して、6分透過スキャンを得た。次に、24
8MBq(6.7mCi)の18F-FNDP(比放射能値2634GBq/μmol(
71,177mCi/μmol))の静脈内ボーラス投与と同時に、90分動的PETの
獲得を3次元リストモードで開始した。遮断スキャンでは、ノル-フルオロ-FNDP(
2mg/kg)を、307MBq(8.3mCi)の18F-FNDP(比放射能値14
20GBq/μmol(38,386mCi/μmol)の静脈内ボーラス投与および9
0分動的PETイメージングの開始の1時間前に、皮下に与えた。
【0165】
PET画像再構成。90分PETリストモードデータを22個のフレーム(20秒フレ
ームを3つ、30秒フレームを2つ、1分フレームを2つ、2分フレームを3つ、5分フ
レームを8つ、および10分フレームを4つ)に分けた。次に、放射性崩壊、デッドタイ
ム、減衰、散乱、および無秩序を補正するとともに、反復性の順序化サブセット期待値最
大化(ordered subsets expectation maximization、OS-EM)アルゴリズム(6回反
復、16サブセット)を使用して、データを再構成した。放射スキャンの前に[137
s]セシウム点線源を用いて実行した6分透過スキャンより減衰マップを生成した。再構
成した画像空間は、それぞれサイズが1.22mm、貫通寸法が31cmx31cm(
長軸断的に)および25cm(軸方向に)の立方ボクセルからなった。
【0166】
脳の関心容積(VOI)および領域性時間放射能曲線(TAC):ソフトウェアパッケ
ージPMOD(v3.3,PMOD Technologies Ltd,スイスチュー
リッヒ)を、次の画像処理およびそれに続く動的解析ステップに使用した。事前に得たヒ
ヒの脳MRI T1強調画像を、本研究で得た再構成化動的PET画像に共同登録した。
霊長類脳画像の分割および空間標準化用のINIA19鋳型およびNeuroMaps
Atlas(Rohlfing et al., Frontiers in neuroinformatics, 2012)に、共同登録し
たMRIを手動でマッチングさせることにより、前頭回、側頭回、視床、海馬、尾状核、
被殻、扁桃体、淡蒼球、島、視床下部、小脳、脳梁、および白質を含む、13個の代表的
なヒヒ脳のVOIを定義した。次に、これらのVOIを使用して、ベースラインPETス
キャンおよび遮断PETスキャンの両方について脳の領域性TACを生成した。
【0167】
PET動的解析:脳領域性分布容積(V)の計算:上で得た領域性TACに基づき、
sEHへの18F-FNDPの結合を、代謝物補正動脈血漿入力関数を使用して量的に特
徴付けた。可逆的に結合する放射性リガンドのin vivoイメージングのための共通
用語(Innis et al., J. Cereb. Blood Flow Metab., 2007)に従い、固定された参照領
域を欠いていることから、主要評価基準は、平衡状態の血漿における放射性リガンド濃度
に対する領域性脳組織における放射性リガンド濃度の比として定義される、領域性分布容
積(V)とした。領域性Vは、定義したVOIにおける受容体濃度に比例する。V
は、各VOIについて、Loganの図解法(Logan et al., J. Cereb. Blood Flow Met
ab., 1990)を使用して計算した。
【0168】
放射性代謝物のHPLC解析:血漿放射能の求めるために、PET研究の間中、ヒヒ動
脈血サンプルを最初は非常に短い間隔(<5秒)で、徐々に間隔を長くして採取した。0
分、5分、10分、20分、30分、60分、および90分目に採取した選択サンプルを
、上記の一般的方法(Hilton et al., Nucl. Med. Biol., 2000)を使用して、18F-
FNDPおよびその放射性代謝産物の存在について、HPLCにより解析した(図9)。
手短に言えば、8Mの尿素中の3mLの血漿を回収カラム(19x4.6mm Stra
ta-X,Phenomenex,カリフォルニア州トーランス)に通し、次にカラムか
ら血漿タンパク質を洗浄するために、水中の1%アセトニトリルを通した。高極性の成分
のみを含有する回収カラムからの流出物を、二重BGO検出器(Bioscan,ワシン
トンDC)に通した。次に溶媒を、60%アセトニトリル/40%0.1Mギ酸アンモニ
ウム水溶液の混合物pH=2.7(2mL/分)に切り替えて、回収カラムに結合した放
射標識成分を解析カラムに(Gemini C18,4.6x254mm,Phenom
enex,カリフォルニア州トーランス)に溶出した。
【0169】
〔実施例3〕
化学
N-(3,3-ジフェニルプロピル)-6-フルオロニコチンアミド(FNDP)およ
びN-(3,3-ジフェニルプロピル)-6-ブロモニコチンアミド(前駆体-FNDP
)を、高収率(59-72%)で合成した(図1A)。FNDPおよび前駆体-FNDP
の分子構造をNMR解析により確認した。
【0170】
18F-FNDPを、ブロモ前駆体-FNDPの求核性放射性フッ素化により、放射化
学収率が14±7%(n=6)(減衰補正なし)、合成終了時の比放射能が888-3,
774GBq/mmol(24,000-102,000mCi/μmol)の範囲、放
射化学純度が99%超で生成した(図1B)。最終生成物18F-FNDPは、pHが5
.5-6の7%エタノール性生理食塩水中の滅菌非発熱性溶液として調製した。
【0171】
FNDPは強力なsEH阻害剤AUDAと匹敵するIC50とK値を示した。FND
P、ノル-フルオロ-FNDP、およびAUDAのIC50値は、それぞれ、8.66±
0.06、18.53±0.04、および6.48±0.05nMだった(図3)。FN
DP、ノル-フルオロ-FNDP、およびAUDAの対応するK値は、それぞれ、1.
73、3.71、および1.30nMだった。
【0172】
〔実施例4〕
CD-1マウスにおける領域性脳分布研究
ベースライン研究。CD-1マウス脳における18F-FNDPの領域性分布を表1に
示す。
【0173】
【表1】
【0174】
CD-1マウスにおける18F-FNDP-用量-増大遮断のsEH結合特異性。sE
H阻害剤ノル-フルオロ-FNDPは、用量依存的様式での注射の60分後に、全研究脳
領域(線条体、海馬、皮質、および小脳)において、18F-FNDP結合を遮断した(
図4)。最も高い3mg/kgという遮断薬用量では、線条体、海馬、および皮質におけ
る放射能取り込みの減少は約90%で、小脳では約75%だった。
【0175】
SEH-KOマウスおよびC57BL6対照マウスにおける18F-FNDPのベース
ライン研究および遮断研究。注射60分後のベースライン実験では、C57BL6対照マ
ウスにおける18F-FNDPの領域性取り込みは、線条体、海馬、および皮質では、組
織1グラム当たり約1%の注射用量(%ID/g)で、小脳では0.5%ID/gだった
図5)。C57BL6マウスにおける遮断実験では、18F-FNDPの脳取り込みは
、全研究領域において~0.2%ID/g組織まで減少した。sEH-KOマウスでは、
60分時点の18F-FNDPの領域性脳取り込みは、ベースライン実験(0.11-0
.12%ID/g)および遮断実験(0.10-0.11%ID/g)においてほぼ同じ
だった(図5)。
【0176】
〔実施例5〕
アヌビスヒヒにおけるPETイメージング
代表的な領域性TACによって明白となる、ヒヒの脳への高度で不均一な放射能取り込
みを、18F-FNDPのボーラス投与後のベースラインスキャン時に観察した(図6
。全領域性TACは注射約5分後にピークになり、ピークSUVは、2.5~4.0g/
mLの範囲だった。全脳のピークSUVは3.2で、徐々に減少して90分の動的スキャ
ンの終わりには1.8となった。最も高い放射能の蓄積が被殻、島、前頭皮質、および扁
桃体などの領域で生じ、より低い取り込みが白質および小脳で見られた。注目すべきこと
に、小脳の時間放射能曲線は、他の研究領域よりも急速に降下した(図6)。
【0177】
を使用して定量化すると、調査した13個の脳の関心容積のうち、最も高い放射性
リガンド結合は、島、被殻、尾状核、および扁桃体で生じ(V>10.0)、中程度の
取り込みは前頭/側頭回、海馬、および淡蒼球(V>8.3)で、続いて、脳梁、白質
、視床下部、および視床(V>7.2)で生じた。最も低い結合は小脳で生じ、V
6.97だった。
【0178】
ベースライン研究と遮断研究間のTAC比較を図7に示す。遮断研究時に、領域性TA
Cはずっと早く、注射の約1分後にピークになり、全脳の平均ピークSUVは2.3g/
mLで、90分スキャンの終わりには、ベースライン値のわずか0.18g/mL(10
%)という平均SUVへ急速に減少した。Vにより定量化した場合、遮断スキャンにお
いて全領域がV<0.8と、ベースラインV値と比較した場合に90%超の減少を示
した。減少率は、ベースライン研究時に特定した高結合領域と低結合領域で同等だった。
例えば、島および扁桃体が95%減少だった一方、小脳は93%減少を示した(図8)。
パラメーターV画像を、比較のために、ベースラインスキャンと遮断スキャンの両方で
生成した(図9)。
【0179】
遮断およびベースラインヒヒ研究における18F-FNDP用量の比放射能は、142
0GBq/μmol~2634GBq/μmolの範囲にわたった。比放射能が非常に高
いため、対応するFNDP担体質量はわずか0.0011-0.0025μg/kgで、
これは、ノル-フルオロ-FNDP遮断薬用量(2mg/kg)より6桁分小さい。任意
の特定の一理論に縛られることを望むものではないが、従って、比放射能可変性は本研究
の結果に影響を与えないと想定される。
【0180】
逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を使用した、ヒヒからの血液サン
プルの放射性代謝物分析により、親化合物18F-FNDPが2つの親水性種に代謝され
たことが示された(図10)。血漿中の組み合わさった放射性代謝物は、注射の90分後
に、ヒヒにおいて80%の値に達した(図10および図11)。
【0181】
〔実施例6〕
要約および考察
利用可能な放射性トレーサーの欠如により、ヒトの脳における数百の既知の結合部位(
受容体および酵素)のうちわずか約39個が、PETによりイメージングされてきた(C
NS放射性トレーサー表)。今まで、sEHは、特異性PET放射性トレーサーを欠く、
多くの結合部位の一つだった。製薬業および学会の研究者らにより相当な数のsEH阻害
剤が開発され、sEH PET放射性トレーサーの開発の機会が大きく開けた。しかしな
がら、多くの強力なsEH阻害剤は大きい疎水性ドメインを有し、これは、潜在的に高い
非特異的結合性によりsEH阻害剤を実行可能な放射トレーサーにする可能性を低くする
図2)。
【0182】
本開示の主題では、N-(3,3-ジフェニルプロピル)-6-フルオロニコチンアミ
ド(FNDP、図1A)、脳PET放射性トレーサーに最適な分子特性(logPが2.
9、分子量MWが334Da)を有する強力なsEH阻害剤を合成した(Horti et al.,
Springer, 2014)。FNDPは、Boehringer IngelheimによりsE
H阻害剤(ヒトIC50は7nM)として特定された、改善された「薬物様」特徴を有し
(Eldrup et al., J.Med. Chem., 2009)、本明細書では、FNDPの開発のリード化合
物および動物実験の阻害薬として使用した、sEH阻害剤N-(3,3-ジフェニルプロ
ピル)-ニコチンアミド(ノル-フルオロ-FNDP)と構造的に類似している。in
vitroアッセイにより、FNDPが、リードノル-フルオロ-FNDPよりも高い効
力を有し、一般的なsEH阻害剤AUDAに匹敵するsEH阻害剤であることが示された
図3)。
【0183】
FNDPは、ピリジン環の位置2においてフッ素原子を含有し、これは、求核置換反応
のために活性化され、以前開発されたBr-ピリジンの18F-ピリジンへの交換の一般
的条件下(Gao et al., J. Med. Chem., 2008)で、対応するブロモ前駆体を介して、容
易に放射性フッ素化され得る。N-(3,3-ジフェニルプロピル)-6-18F-フル
オロニコチンアミド(18F-FNDP)の放射性合成を、前駆体-FNDPの求核放射
性フッ素化により、従来のFDG-放射化学モジュールにおいて実行し(図1B)、続け
て、セミ分取HPLC分離と、生理食塩水中の滅菌非発熱性溶液としての最終放射標識生
成物の製剤化を行った。非常に高い比放射能および放射化学純度を有する放射性トレーサ
ーが調製された。前駆体-FNDPは、分取HPLCにより容易に分離され、最終生成物
18F-FNDP中では、解析用HPLCでは検出され得なかった。
【0184】
マウス研究。CD-1マウスにおいて、18F-FNDPは、不均一な脳取り込みパタ
ーンを示し、これは、マウス脳において予想される領域性sEH発現と共通点があった(
Marowsky et al., Neuroscience, 2009)。ピーク取り込み値は注射5分後の5.2%I
D/gで、急速な減少が続いた。1%ID/gの取り込みが、従来から、当社のPETセ
ンターにおける調査用中枢神経系放射性トレーサーの選択の最低基準として使用されてい
ることから、その脳取り込みは、適度に高いと考えられる。研究した脳領域のうち、18
F-FNDP放射能の最も高い蓄積は線条体、皮質、海馬、および残りの脳で生じた一方
、より低いもののかなりの放射能が視床下部および小脳で見られた(表1)。マウスの脳
の分布は、in vitroデータと同等だった(Marowsky et al., Neuroscience, 200
9)。
【0185】
18F-FNDP結合の特異性の実証のために、2タイプの研究、つまり、CD-1マ
ウスにおける用量増加遮断およびsEHノックアウト(sEH-KO)マウスにおける生
体分布を行った。PETトレーサーのテストのための一般的な系統であるCD-1マウス
における18F-FNDPの領域性脳取り込みは、sEH阻害剤ノル-フルオロ-FND
Pの用量増加に対し非常に高感度だった(図4)。CD-1マウス脳において遮断された
結合は特異的である(線条体、海馬、および皮質で90%)と考えられる一方、高用量阻
害剤での残りの結合は、非特異的結合であると考えられる(10%)。これらの発見は、
マウスの脳における18F-FNDP取り込みが非常に特異的で、sEHに媒介されるこ
とを示す。本研究では、低sEH結合の領域は明らかにされなかった。小脳における放射
能の75%遮断は、この領域におけるsEHの発現と一致し(Marowsky et al., Neurosc
ience, 2009)、これは、小脳をマウス脳における基準として使用することはできない可
能性があることを示唆する。
【0186】
結合特異性のさらなるテストとして、sEH-KOマウスおよび同じ遺伝的背景を有す
る対照動物(C57BL/6)(Sinal et al., J. Biol. Chem., 2000)を利用した。s
EH-KOマウス脳はsEHを欠くため(Qin et al., Mol. Neurobiol., 2015)、これ
らのマウスにおける18F-FNDP結合は非特異的で、sEH-KO脳と対照脳の取り
込みの差は、特異的sEH結合を表すと予想された。18F-FNDPの取り込みを、放
射性トレーサーの注射の60分後に、sEH-KO動物および対照動物(C57BL/6
)でのベースライン実験において比較した(図5)。対照と比較し、sEH-KOマウス
では、18F-FNDP取り込みの著しい減少(約90%)があった。対照/sEH-K
O比の高い値が全テスト領域で実証された(10.3-線条体、9.4-皮質、9.2-
海馬、4.8-小脳)。さらに、sEH-KOマウスにおける18F-FNDP取り込み
の減少は、sEH阻害剤ノル-フルオロ-FNDPを利用した遮断研究では無視可能だっ
た(図4)。その無視可能な影響は、18F-FNDPの他のタンパク質、例えば、Ep
hx1遺伝子(ミクロソームエポキシド加水分解酵素)(Marowsky et al., Neuroscienc
e, 2009)の生成物に対する任意の非特異的結合が、sEH-KO脳においては無視可能
であることを示した。C57BL/6対照では、遮断効果(約80%)(図5)が、CD
-1マウスの遮断効果(図4)と非常に類似していることが分かった。
【0187】
マウス研究により、18F-FNDPが容易に脳に侵入し(ピークで5%ID/g)、
2系統の対照マウス(CD-1およびC57BL/6)において、脳のsEHを高度の特
異性(80-90%)で標識することが実証された。KO動物におけるsEHの低発現と
一致して、sEH-KOマウスにおける18F-FNDPの脳取り込みは対照の10分の
1で、基本的に非特異的である。
【0188】
ヒヒPETイメージング。ヒヒの脳への高度で迅速な不均一放射能取り込みを、3匹の
異なる動物において、3つのベースライン18F-FNDPペットスキャン時に観察した
図9)。ヒヒ脳における18F-FNDPの領域分布は、ヒト(Sura et al., J. Hist
ochem. Cytochem, 2008)およびマウスの脳(Marowsky et al., Neuroscience, 2009)の
sEH発現の半定量評価と一致する。領域性TACにより、最適可逆性PET放射性リガ
ンド結合の特徴が確認された。注目すべきことに、ヒヒ脳における18F-FNDPの洗
い出し速度(図6)は、マウス脳ほど速くなく(表1)、数理モデルとして堅牢だった(
以下参照)。
【0189】
遮断PET研究は、18F-FNDPが、ヒヒ脳において非常に高い特異性でsEHを
標識することを示した(図7図8、および図9)。遮断は、小脳を含む、調査した全て
のヒヒ脳領域で観察された。
【0190】
可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害剤は、末梢血管拡張を増大させ、血圧を低下させ得
、これは、ひいては、脳の血流を増加させ、放射性トレーサーの送達に影響を与える可能
性がある。その可能性を調べるため、動脈血漿から組織への移動速度定数(K)を確実
に推定可能である、標準的な2組織3コンパートメントモデルを使用して、放射性トレー
サーの動態をモデル化した。ベースラインおよび遮断での平均K値は、それぞれ、0.
18および0.14ml/cm/分であり、23%の差があることが分かった。観察に
より、K変化は、ベースラインから遮断へのV値の著しい減少(>90%)に対する
原因として寄与し得ないことが実証され、18F-FNDPがヒヒ脳において、非常に高
い特異性でsEHを標識することが確認された。本開示の主題は、哺乳類の脳における広
範で豊富なsEHと一致する、ヒヒ脳におけるsEH結合のない固定された参照領域を明
らかにすることはなかった。(Sura et al., J. Histochem. Cytochem,, 2008; Marowsky
et al., Neuroscience, 2009)。
【0191】
ヒヒ血漿における放射性代謝物の解析により、18F-FNDPは、2つの親水性放射
性代謝物に代謝されることが実証された。90分のPETスキャンの終わりまでに、残り
の親18F-FNDPは血漿において~20%の放射能を表し、これは多くの他のPET
放射性トレーサーと同等である。放射性代謝物が親水性であることから、放射性代謝物が
脳に相当程度まで侵入する可能性は低く、これは、放射性代謝物の動力学モデリングが、
sEHの定量化に不必要である可能性があることを示唆する。
【0192】
18F-FNDP、sEHイメージング用の第一特異的PET放射性トレーサーを開発
した。強力なsEH阻害剤である18F-FNDPは、容易にマウス(5%ID/g組織
)およびヒヒ(SUV=4)の脳に侵入し、両動物種において、非常に高い特異性(最大
95%)でsEHを放射標識する一方、定量解析に適用できる可逆性脳動態学を示した。
18F-FNDPにより、VCI、軽い認知障害、および脳卒中を含む種々の病気および
障害におけるsEHの役割を評価するためのさらなる前臨床研究およびヒトPETイメー
ジングが期待できる。
【0193】
〔参考文献〕
本明細書で言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、本開示の
主題が関わる技術分野の当業者のレベルを示す。全ての刊行物、特許出願、特許、および
他の参考文献は、各個別の刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献が、参照により
明確にかつ個々に組み込まれていることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に
組み込まれるものとする。本明細書においてはいくつかの特許出願、特許、および他の参
考文献に言及したが、斯かる言及は、これらの文書のいずれも当技術分野における一般的
知識の一部を形成するという自認ではないことが理解されよう。本明細書と組み込まれる
参考文献のうちのいずれかとの間で利益相反が生じる場合は、本明細書(組み込まれる参
考文献に基づき得る、その任意の補正を含む)が制御するものとする。本明細書では、特
に明記しない限り、標準的技術で受け入れられている用語の意味を使用する。本明細書で
は、種々の用語の標準的な略語を使用する。
【0194】
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【0195】
前述の主題について、明瞭な理解のために図および例によって詳細に述べたが、ある特
定の変更および修正が、添付の特許請求の範囲の範囲内で実行され得ることが当業者には
理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物であって;
式中、Xは、F、Br、およびI、ならびにそれらの放射性同位元素からなる群から選択され;
Yは-NR-C(=O)-または-C(=O)-NR-であり;
mは1、2、3、および4からなる群から選択される整数であり;
nは1、2、3、4、および5からなる群から選択される整数であり;
pは1、2、および3からなる群から選択される整数であり;
Rは、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換のアリールアルキル、置換または非置換のアルキルヘテロアリール、置換または非置換のヘテロアルキルアリール、および置換または非置換のナフチル、置換または非置換のビフェニルからなる群から選択され;
各Rは、独立して、同じであっても異なっていてもよく、水素、ハロゲン、アルコキシル、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のヘテロアリール、置換または非置換のアリールアルキル、置換または非置換のアルキルアリール、置換または非置換のナフチル、および置換または非置換のビフェニルからなる群から選択される、化合物と;その立体異性体または薬学的に許容可能な塩。
【外国語明細書】