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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103315
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】癌の診断に有用な抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20230719BHJP
   C12N 5/20 20060101ALI20230719BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230719BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C12N5/20
G01N33/53 D
G01N33/574 A
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076556
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2020513799の分割
【原出願日】2018-09-05
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/072386
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515123258
【氏名又は名称】トロン- トランスラショナル オンコロジー アン デア ウニヴェリジテーツメディツィン デア ヨハネス グーテンベルク-ウニヴェルシテート マインツ ゲマインニューツィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRON- Translationale Onkologie an der Universitaetsmedizin der Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz gemeinnuetzige GmbH
【住所又は居所原語表記】Freiligrathstr. 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】ミットナハト-クラウス, リタ
(72)【発明者】
【氏名】ウォール, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター, コルデン
(72)【発明者】
【氏名】テューレヒ, エズレム
(72)【発明者】
【氏名】サヒン, ウグル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌を診断するおよび/または癌細胞がCLDN6を発現するか否かを決定するのに有用な、CLDN6のC末端部分内に位置するエピトープに対する抗体を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有するペプチド、および/またはクローディン6(CLDN6)であって、抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、少なくとも特定のアミノ酸配列を有するCLDN6内のエピトープに結合することによってCLDN6に結合する、クローディン6(CLDN6)、に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アミノ酸配列EYPTKNY(配列番号38)を有するペプチド、および/または
(ii)クローディン6(CLDN6)であって、抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、少なくともアミノ酸配列EYPTKNY(配列番号38)を有するCLDN6内のエピトープに結合することによってCLDN6に結合する、クローディン6(CLDN6)、および/または
(iii)アミノ酸配列EYPTKNYV(配列番号29)を有するペプチド、および/または
(iv)クローディン6(CLDN6)であって、前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、少なくともアミノ酸配列EYPTKNYV(配列番号29)を有するCLDN6内のエピトープに結合することによってCLDN6に結合する、クローディン6(CLDN6)、および/または
(v)アミノ酸配列AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)を有するペプチドであって、前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列TSAPAISRGPSEYPT(配列番号14)を有するペプチドに結合しない、ペプチド、および/または
(vi)クローディン6(CLDN6)であって、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくともアミノ酸配列AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)を有するCLDN6内のエピトープに結合することによってCLDN6に結合し、アミノ酸配列TSAPAISRGPSEYPT(配列番号14)を有するペプチドには結合しない、クローディン6(CLDN6)、
に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記CLDN6が細胞表面膜結合CLDN6である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記CLDN6が癌細胞上に存在する、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記癌細胞がCLDN6を発現する癌細胞である、請求項3に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記癌細胞が、卵巣癌、精巣癌、胃癌、乳癌、膵臓癌、肺癌、子宮癌、および膀胱癌細胞からなる群より選択される、請求項3または4に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記癌細胞が転移性癌細胞である、請求項3または4に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
キメラ、ヒトまたはヒト化抗体である、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
モノクローナル抗体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
(i)アミノ酸配列AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)を有するペプチドに結合し、および/または
(ii)クローディン6(CLDN6)に結合し、少なくともアミノ酸配列AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)を有するCLDN6内のエピトープに結合することによってCLDN6に結合する、
モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
以下のペプチド:
PAISRGPSEYPTKNY(配列番号22)、AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)、ISRGPSEYPTKNYV(配列番号23)、SRGPSEYPTKNYV(配列番号24)、RGPSEYPTKNYV(配列番号25)、GPSEYPTKNYV(配列番号26)、PSEYPTKNYV(配列番号27)、SEYPTKNYV(配列番号28)、およびEYPTKNYV(配列番号29)
の1つ以上、好ましくはすべてに結合し、アミノ酸配列TSAPAISRGPSEYPT(配列番号14)を有するペプチドには結合しない、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体または抗原結合フラグメントが最も低い親和性で結合するペプチドと、前記抗体または抗原結合フラグメントが最も高い親和性で結合するペプチドとの結合親和性の差が50%以下である、請求項10に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
(i)アクセッション番号DSM ACC3313(58-1B)、DSM ACC3312(58-3A)もしくはDSM ACC3311(58-4B-2)の下で寄託されたクローンによって産生されるもしくはこのクローンから得られる抗体、
(ii)(i)の下の抗体のキメラ化もしくはヒト化形態である抗体、
(iii)(i)の下の抗体とCLDN6結合について競合する抗体、
(iv)(i)の下の抗体の特異性を有する抗体、
および
(v)(i)の下の抗体の抗原結合部分もしくは抗原結合部位を含む抗体
からなる群より選択される抗体、または
(i)から(v)のいずれか1つの下の抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項13】
(i)の下の抗体の抗原結合部分または抗原結合部位が、(i)の下の抗体の可変領域を含む、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
少なくとも1つの検出可能な標識に結合した、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントを含むコンジュゲート。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体を産生することができるハイブリドーマ。
【請求項16】
アクセッション番号DSM ACC3313(58-1B)、DSM ACC3312(58-3A)またはDSM ACC3311(58-4B)の下で寄託されたハイブリドーマ。
【請求項17】
試料中のCLDN6を検出するまたはCLDN6の量を決定する方法であって、
(i)試料を請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは請求項14に記載のコンジュゲートと接触させる工程、および
(ii)前記抗体、前記抗原結合フラグメントまたは前記コンジュゲートとCLDN6との複合体の形成を検出する、または前記複合体の量を決定する工程
を含む方法。
【請求項18】
細胞がCLDN6を発現するか否かを判定する方法であって、
(i)細胞試料を請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは請求項14に記載のコンジュゲートと接触させる工程、および
(ii)前記抗体、前記抗原結合フラグメントまたは前記コンジュゲートと、前記試料中の細胞によって発現されるCLDN6との複合体の形成を検出する工程
を含む方法。
【請求項19】
癌の診断、検出またはモニタリングの方法であって、
(i)生物学的試料を請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは請求項14に記載のコンジュゲートと接触させる工程、ならびに
(ii)前記抗体、前記抗原結合フラグメントもしくは前記コンジュゲートとCLDN6との複合体の形成を検出する、および/または前記複合体の量を決定する工程
を含む方法。
【請求項20】
癌が、CLDN6を標的とする癌療法によって治療可能であるか否かを判定する方法であって、
(i)癌細胞を含む試料を請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは請求項14に記載のコンジュゲートと接触させる工程、および
(ii)前記抗体、前記抗原結合フラグメントまたは前記コンジュゲートとCLDN6との複合体の形成を検出する工程
を含む方法。
【請求項21】
癌を有する患者の予後を判定する方法であって、
(i)癌細胞を含む試料を請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは請求項14に記載のコンジュゲートと接触させる工程、および
(ii)前記抗体、前記抗原結合フラグメントまたは前記コンジュゲートとCLDN6との複合体の形成を検出する工程
を含む方法。
【請求項22】
前記CLDN6が、配列番号1に従うアミノ酸配列または前記アミノ酸配列の変異体を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、請求項14に記載のコンジュゲート、請求項15もしくは16に記載のハイブリドーマ、または請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは請求項14に記載のコンジュゲートを含む診断試験キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
クローディンは、上皮と内皮の密着結合内に位置する内在性膜タンパク質である。クローディンは、2つの細胞外ループならびに細胞質に位置するN末端およびC末端と共に4つの膜貫通セグメントを有すると予測されている。膜貫通タンパク質のクローディン(CLDN)ファミリーは、上皮および内皮の密着結合の維持に重要な役割を果たし、細胞骨格の維持および細胞シグナル伝達にも役割を果たす可能性がある。
【0002】
クローディン6(CLDN6)は、マウスおよびヒト幹細胞ならびに上皮細胞運命に関与する胚様体で発現する癌胎児性遺伝子である(Turksen,K.et al.(2001)Dev Dyn 222,292-300;Anderson WJ.et al.(2008)Dev Dyn 237,504-12;Turksen K.et al.(2002)Development,129,1775-84;Assou S.et al.(2007)Stem Cells 25,961-73)。腫瘍関連抗原として、CLDN6は、上皮分化およびバリア形成に重要である上皮形態形成の初期段階におけるその発現により、分化抗原として分類することができる。さらに、舌、皮膚、胃および乳房の上皮組織または新生児の正常上皮組織で発現が観察された(Abuazza G.et al.(2006)Am J Physiol Renal Physiol 291,1132-1141;Troy T.C.et al.(2007)Molecular Biotechnology 36,166-74;Zhao L.et al.(2008)Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 294,1856-1862)。それに加えて、本発明者らのデータは、ヒト胎盤、膀胱、子宮内膜、前立腺および末梢神経におけるCLDN6の低発現または非常に低い発現、ならびに様々な癌におけるCLDN6の頻繁な過剰発現も明らかにする。CLDN6は、小児脳腫瘍、胃腺癌および生殖細胞腫瘍を含む腫瘍、ならびに卵巣癌などの内臓癌で過剰発現することが実証されている。胃癌細胞でのCLDN6の過剰発現は、侵襲性、遊走および増殖の増加をもたらすことも明らかにされており、CLDN6が予後不良のマーカであり、悪性表現型の維持に潜在的な役割を果たし得ることを示唆する。さらに、CLDN6は、乳癌細胞株では細胞増殖の阻害およびアポトーシスの誘導を介して癌抑制因子として機能することが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Turksen,K.et al.(2001)Dev Dyn 222,292-300
【非特許文献2】Anderson WJ.et al.(2008)Dev Dyn 237,504-12
【非特許文献3】Turksen K.et al.(2002)Development,129,1775-84
【非特許文献4】Assou S.et al.(2007)Stem Cells 25,961-73
【非特許文献5】Abuazza G.et al.(2006)Am J Physiol Renal Physiol 291,1132-1141
【非特許文献6】Troy T.C.et al.(2007)Molecular Biotechnology 36,166-74
【非特許文献7】Zhao L.et al.(2008)Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 294,1856-1862
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1Bに示すCLDN3、CLDN4、CLDN6およびCLDN9の配列アラインメントは、CLDN6が他のクローディンタンパク質に対して高度に保存されていることを示す。CLDN6と他のクローディンタンパク質、特にCLDN9およびCLDN4とのこの高い相同性は、診断目的に適した特異性および親和性などの特性を有するCLDN6抗体を提供することを困難にする。本発明者らは、CLDN6のC末端部分内に位置する特定のエピトープに対する抗体が、抗体の診断適用性、特にCLDN6を発現する細胞の検出および同定の基準を満たすことを見出した。
【0005】
本発明の抗体は、例えば、癌を診断するおよび/または癌細胞がCLDN6を発現するか否かを決定するのに有用である。好ましくは、癌疾患または癌細胞はCLDN6の表面発現を特徴とする。CLDN6を発現する癌細胞は、CLDN6に対する抗体を用いた治療などの、CLDN6を標的とする治療の適切な標的である。一実施形態では、癌細胞はCLDN6を発現または異常発現するが、対応する正常細胞はCLDN6を発現しないかまたはCLDN6をより低いレベルで発現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、以下のものに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
(i)アミノ酸配列EYPTKNY(配列番号38)を有するペプチド、および/または
(ii)クローディン6(CLDN6)であって、抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、少なくともアミノ酸配列EYPTKNY(配列番号38)を有するCLDN6内のエピトープに結合することによってCLDN6に結合する、クローディン6(CLDN6)、および/または
(iii)アミノ酸配列EYPTKNYV(配列番号29)を有するペプチド、および/または
(iv)クローディン6(CLDN6)であって、前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、少なくともアミノ酸配列EYPTKNYV(配列番号29)を有するCLDN6内のエピトープに結合することによってCLDN6に結合する、クローディン6(CLDN6)、および/または
(v)アミノ酸配列AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)を有するペプチドであって、前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列TSAPAISRGPSEYPT(配列番号14)を有するペプチドに結合しない、ペプチド、および/または
(vi)クローディン6(CLDN6)であって、前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、少なくともアミノ酸配列AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)を有するCLDN6内のエピトープに結合することによってCLDN6に結合し、アミノ酸配列TSAPAISRGPSEYPT(配列番号14)を有するペプチドには結合しない、クローディン6(CLDN6)。
【0007】
本明細書に記載の態様の実施形態およびさらなる態様では、本発明は、
(i)アミノ酸配列AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)を有するペプチドに結合し、および/または
(ii)クローディン6(CLDN6)に結合し、少なくともアミノ酸配列AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)を有するCLDN6内のエピトープに結合することによってCLDN6に結合する、
モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0008】
本明細書に記載の態様の実施形態およびさらなる態様では、本発明は、以下のペプチド:
PAISRGPSEYPTKNY(配列番号22)、AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)、ISRGPSEYPTKNYV(配列番号23)、SRGPSEYPTKNYV(配列番号24)、RGPSEYPTKNYV(配列番号25)、GPSEYPTKNYV(配列番号26)、PSEYPTKNYV(配列番号27)、SEYPTKNYV(配列番号28)、およびEYPTKNYV(配列番号29)
の1つ以上、好ましくはすべてに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントに関し、ここで、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列TSAPAISRGPSEYPT(配列番号14)を有するペプチドには結合しない。
【0009】
一実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントが最も低い親和性で結合するペプチドと、抗体または抗原結合フラグメントが最も高い親和性で結合するペプチドとの結合親和性の差は、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下である。
【0010】
本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントは、好ましくは、アミノ酸配列EYPTK(配列番号59)および/またはアミノ酸配列EYPTKN(配列番号60)を含むがアミノ酸配列EYPTKNY(配列番号38)を含まないペプチドには結合しない。言い換えれば、アミノ酸配列EYPTKNY(配列番号38)を有するペプチドおよび/またはアミノ酸配列EYPTKNYV(配列番号29)を有するペプチドに結合する本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列EYPTK(配列番号59)および/またはアミノ酸配列EYPTKN(配列番号60)に欠けている2番目のチロシンの存在によって前記ペプチド(1つまたは複数)に結合する。本明細書に示すように、好ましい抗体または抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列YPTKNY(配列番号61)および/またはEYPTKN(配列番号60)を含むがアミノ酸配列EYPTKNY(配列番号38)を含まないペプチドには結合せず、アミノ酸配列EYPTKNY(配列番号38)がこれらの抗体の結合のための最小エピトープであると考えられる配列であることを示唆する。
【0011】
本明細書に記載の態様の実施形態およびさらなる態様では、本発明は、DSMZ(Inhoffenstr.7B,38124 Braunschweig,Germany)に寄託され、以下の名称およびアクセッション番号:
1.58-4B-2、アクセッション番号DSM ACC3311、2016年11月29日に寄託;
2.58-3A、アクセッション番号DSM ACC3312、2016年11月29日に寄託;または
3.58-1B、アクセッション番号DSM ACC3313、2016年11月29日に寄託
のいずれかを有するハイブリドーマによって産生されるまたはこのハイブリドーマから得られる抗体に関する。
【0012】
本発明の抗体は、本明細書では抗体の名称を参照することによっておよび/または抗体を産生するクローンを参照することによって指定される。
【0013】
本発明はまた、CLDN6結合について、上記ハイブリドーマによって産生され、上記ハイブリドーマから得られる抗体と競合する、および/または上記ハイブリドーマによって産生されるもしくは上記ハイブリドーマから得られる抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体に関する。これらおよび他の実施形態では、本発明はまた、上記ハイブリドーマによって産生されるまたは上記ハイブリドーマから得られる抗体のものと同一または高度に相同な抗原結合部分または抗原結合部位、特に可変領域を含む抗体に関する。好ましい抗体は、上記ハイブリドーマによって産生されるまたは上記ハイブリドーマから得られる抗体のCDR領域と同一または高度に相同なCDR領域を有するものであることが企図される。「高度に相同な」とは、各CDR領域で1~5個、好ましくは1~4個、例えば1~3個または1個または2個の置換を行い得ることであると企図される。特に好ましい抗体は、上記ハイブリドーマによって産生されるまたは上記ハイブリドーマから得られる抗体のキメラ化およびヒト化形態である。
【0014】
したがって、本明細書に記載の態様の実施形態およびさらなる態様では、本発明は、
(i)アクセッション番号DSM ACC3313(58-1B)、DSM ACC3312(58-3A)もしくはDSM ACC3311(58-4B-2)の下で寄託されたクローンによって産生されるもしくはこのクローンから得られる抗体、
(ii)(i)の下の抗体のキメラ化もしくはヒト化形態である抗体、
(iii)(i)の下の抗体とCLDN6結合について競合する抗体、
(iv)(i)の下の抗体の特異性を有する抗体、
および
(v)(i)の下の抗体の抗原結合部分もしくは抗原結合部位を含む抗体
からなる群より選択される抗体、または
(i)から(v)のいずれか1つの下の抗体の抗原結合フラグメント
に関する。
【0015】
一実施形態では、(i)の下の抗体の抗原結合部分または抗原結合部位は、(i)の下の抗体の可変領域を含む。
【0016】
本明細書に記載の態様の実施形態およびさらなる態様では、本発明は、
(a)以下を含む抗体:
以下を含む抗体重鎖:
(i)配列番号40、42もしくは44に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体重鎖配列、
(ii)配列番号40、42もしくは44に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体重鎖配列のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべて、または
(iii)配列番号53に記載のCDR3配列もしくはその変異体であって、好ましくは配列番号51もしくは57に記載のCDR1配列、もしくはその変異体、および/または配列番号52もしくは58に記載のCDR2配列、もしくはその変異体をさらに含む配列、もしくはその変異体
ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0017】
本明細書に記載の態様の実施形態およびさらなる態様では、本発明は、
(a)以下を含む抗体:
以下を含む抗体軽鎖:
(i)配列番号41、43もしくは45に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体軽鎖配列、
(ii)配列番号41、43もしくは45に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体軽鎖配列のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべて、または
(iii)配列番号56に記載のCDR3配列もしくはその変異体であって、好ましくは配列番号54に記載のCDR1配列、もしくはその変異体、および/または配列番号55に記載のCDR2配列、もしくはその変異体をさらに含む配列、もしくはその変異体、ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0018】
本明細書に記載の態様の実施形態およびさらなる態様では、本発明は、
(a)以下を含む抗体:
(I)以下を含む抗体重鎖:
(i)配列番号40、42もしくは44に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体重鎖配列、
(ii)配列番号40、42もしくは44に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体重鎖配列のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべて、または
(iii)配列番号53に記載のCDR3配列もしくはその変異体であって、好ましくは配列番号51もしくは57に記載のCDR1配列、もしくはその変異体、および/または配列番号52もしくは58に記載のCDR2配列、もしくはその変異体をさらに含む配列、もしくはその変異体、ならびに/または
(II)以下を含む抗体軽鎖:
(i)配列番号41、43もしくは45に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体軽鎖配列、
(ii)配列番号41、43もしくは45に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体軽鎖配列のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべて、または
(iii)配列番号56に記載のCDR3配列もしくはその変異体であって、好ましくは配列番号54に記載のCDR1配列、もしくはその変異体、および/または配列番号55に記載のCDR2配列、もしくはその変異体をさらに含む配列、もしくはその変異体、ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0019】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、
(a)以下を含む抗体:
(I)以下を含む抗体重鎖:
(i)配列番号40に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体重鎖配列、
(ii)配列番号40に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体重鎖配列のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべて、または
(iii)配列番号53に記載のCDR3配列もしくはその変異体であって、好ましくは配列番号51に記載のCDR1配列、もしくはその変異体、および/または配列番号52に記載のCDR2配列、もしくはその変異体をさらに含む配列、もしくはその変異体、ならびに
(II)以下を含む抗体軽鎖:
(i)配列番号41に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体軽鎖配列、
(ii)配列番号41に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体軽鎖配列のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべて、または
(iii)配列番号56に記載のCDR3配列もしくはその変異体であって、好ましくは配列番号54に記載のCDR1配列、もしくはその変異体、および/または配列番号55に記載のCDR2配列、もしくはその変異体をさらに含む配列、もしくはその変異体、ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0020】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、
(a)以下を含む抗体:
(I)以下を含む抗体重鎖:
(i)配列番号42に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体重鎖配列、
(ii)配列番号42に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体重鎖配列のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべて、または
(iii)配列番号53に記載のCDR3配列もしくはその変異体であって、好ましくは配列番号57に記載のCDR1配列、もしくはその変異体および/または配列番号58に記載のCDR2配列をさらに含む配列、もしくはその変異体、ならびに
(II)以下を含む抗体軽鎖:
(i)配列番号43に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体軽鎖配列、
(ii)配列番号43に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体軽鎖配列のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべて、または
(iii)配列番号56に記載のCDR3配列もしくはその変異体であって、好ましくは配列番号54に記載のCDR1配列、もしくはその変異体および/または配列番号55に記載のCDR2配列、もしくはその変異体をさらに含む配列、もしくはその変異体、ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0021】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、
(a)以下を含む抗体:
(I)以下を含む抗体重鎖:
(i)配列番号44に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体重鎖配列、
(ii)配列番号44に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体重鎖配列のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべて、または
(iii)配列番号53に記載のCDR3配列もしくはその変異体であって、好ましくは配列番号57に記載のCDR1配列、もしくはその変異体および/または配列番号58に記載のCDR2配列をさらに含む配列、もしくはその変異体、ならびに
(II)以下を含む抗体軽鎖:
(i)配列番号45に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体軽鎖配列、
(ii)配列番号45に記載の配列、もしくはその変異体を含む抗体軽鎖配列のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべて、または
(iii)配列番号56に記載のCDR3配列もしくはその変異体であって、好ましくは配列番号54に記載のCDR1配列、もしくはその変異体および/または配列番号55に記載のCDR2配列、もしくはその変異体をさらに含む配列、もしくはその変異体、ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0022】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、
(a)配列番号53に記載のCDR3配列またはその変異体を含む抗体重鎖、および配列番号56に記載のCDR3配列またはその変異体を含む抗体軽鎖を含む抗体、ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0023】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、
(a)配列番号53に記載のCDR3配列またはその変異体を含み、配列番号51に記載のCDR1配列またはその変異体および配列番号52に記載のCDR2配列またはその変異体をさらに含む抗体重鎖、ならびに配列番号56に記載のCDR3配列またはその変異体を含み、配列番号54に記載のCDR1配列またはその変異体および配列番号55に記載のCDR2配列またはその変異体をさらに含む抗体軽鎖を含む抗体、ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0024】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、
(a)配列番号53に記載のCDR3配列またはその変異体を含み、配列番号57に記載のCDR1配列またはその変異体および配列番号58に記載のCDR2配列またはその変異体をさらに含む抗体重鎖、ならびに配列番号56に記載のCDR3配列またはその変異体を含み、配列番号54に記載のCDR1配列またはその変異体および配列番号55に記載のCDR2配列またはその変異体をさらに含む抗体軽鎖を含む抗体、ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0025】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、
(a)配列番号40で表されるアミノ酸配列またはその変異体を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号41で表されるアミノ酸配列またはその変異体を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体、ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0026】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、
(a)配列番号42で表されるアミノ酸配列またはその変異体を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号43で表されるアミノ酸配列またはその変異体を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体、ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0027】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、
(a)配列番号44で表されるアミノ酸配列またはその変異体を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号45で表されるアミノ酸配列またはその変異体を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体、ならびに
(b)(a)の抗体とCLDN6結合について競合し、および/または(a)の抗体のCLDN6に対する特異性を有する抗体
からなる群より選択される抗体、または前記抗体の抗原結合フラグメントに関する。
【0028】
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、γ2a重鎖定常領域、好ましくはヒトγ2a重鎖定常領域を含む抗体重鎖を含み、および/またはκ軽鎖定常領域を含む抗体軽鎖を含む。
【0029】
本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントはCLDN6に結合する。本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、好ましくは、その天然の状態、すなわち天然に存在する状態または非変性状態で、またはその変性状態でCLDN6に結合することができる。一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、CLDN6に結合するがCLDN9には結合せず、好ましくはCLDN4および/またはCLDN3にも結合しない。好ましくは、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、CLDN6以外のCLDNタンパク質には実質的に結合しない。好ましくは、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントはCLDN6に特異的である。
【0030】
一実施形態では、CLDN6は細胞表面膜結合CLDN6である。一実施形態では、CLDN6は癌細胞上に存在し、前記癌細胞は、好ましくはCLDN6を発現する癌細胞である。一実施形態では、前記癌細胞は、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌、胃癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎臓癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎児性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胚性癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの生殖細胞腫瘍、特に精巣の生殖細胞腫瘍、ならびにその転移形態からなる群より選択される癌由来の細胞である。
【0031】
一実施形態では、本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である。一実施形態では、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。
【0032】
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号49のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるペプチド、または免疫学的に等価なペプチド、または前記ペプチドを発現する核酸もしくは宿主細胞核酸で動物を免疫する工程を含む方法によって得られる。好ましくは、前記ペプチドは、CLDN6の110、100、90、80、70、60、50、または40個以下の連続するアミノ酸を含む。
【0033】
本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、検出可能な標識などの他の部分に結合され得る、すなわち共有結合的または非共有結合的に連結され得る。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの検出可能な標識に結合された本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントを含むコンジュゲートに関する。
【0035】
本発明はまた、本明細書に記載の抗体を産生するハイブリドーマなどの細胞に関する。
【0036】
好ましいハイブリドーマは、DSMZ(Inhoffenstr.7B,38124 Braunschweig,Germany)に寄託され、以下の名称およびアクセッション番号:
1.58-4B-2、アクセッション番号DSM ACC3311、2016年11月29日に寄託;
2.58-3A、アクセッション番号DSM ACC3312、2016年11月29日に寄託;または
3.58-1B、アクセッション番号DSM ACC3313、2016年11月29日に寄託
のいずれかを有するものである。
【0037】
本発明はまた、配列番号49のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるペプチド、または免疫学的に等価なペプチドに関する。好ましくは、前記ペプチドは、CLDN6の110、100、90、80、70、60、50、または40個以下の連続するアミノ酸を含む。
【0038】
本発明はまた、抗体またはその一部、例えば抗体鎖、または抗原結合フラグメント、または本明細書に記載のペプチドをコードする核酸に関する。好ましくは、本発明の核酸は、真核細胞または原核細胞における発現を可能にする1つ以上の発現制御エレメントに作動可能に結合されている。真核細胞または原核細胞における発現を確実にする制御エレメントは当業者に周知である。
【0039】
本発明の核酸は、ベクター、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、または例えば遺伝子工学で従来使用される別のベクター内に含まれ得る。ベクターは、適切な宿主細胞および適切な条件下でベクターの選択を可能にするマーカ遺伝子などのさらなる遺伝子を含んでもよい。さらに、ベクターは、適切な宿主におけるコード領域の適切な発現を可能にする発現制御エレメントを含んでもよい。そのような制御エレメントは当業者に公知であり、プロモータ、スプライスカセット、および翻訳開始コドンを含み得る。
【0040】
核酸分子の構築、核酸分子を含むベクターの構築、適切に選択された宿主細胞へのベクターの導入、または核酸分子の発現を引き起こすまたは達成するための方法は、当技術分野で周知である。
【0041】
本発明のさらなる態様は、本明細書に開示される核酸またはベクターを含む宿主細胞に関する。
【0042】
本発明のさらなる態様は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントを使用したCLDN6もしくはCLDN6発現細胞の検出またはCLDN6もしくはCLDN6発現細胞の量の決定に関する。CLDN6もしくはCLDN6発現細胞は、CLDN6と本発明の抗体もしくは抗原結合フラグメントとの複合体を検出することによって検出され、またはCLDN6もしくはCLDN6発現細胞の量は、前記複合体の量を決定することによって決定される。複合体の形成は、CLDN6またはCLDN6発現細胞の存在を示す。そのような検出または量の決定は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントを使用する免疫検出を含むがこれに限定されない多くの方法で実施し得る。ペプチドまたはタンパク質を検出するために抗体を使用する方法は周知であり、ELISA、競合結合アッセイなどが含まれる。一般に、そのようなアッセイは、検出を提供する標識、例えば指示酵素、放射性標識、発蛍光団、または常磁性粒子に直接または間接的に結合した標的ペプチドまたはタンパク質に特異的に結合する抗体または抗体フラグメントを使用する。本発明の方法は、CLDN6レベルまたはCLDN6発現細胞のレベルの定量的および/または定性的評価、例えば絶対的および/または相対的評価を可能にする。
【0043】
一態様では、本発明は、試料中のCLDN6を検出するまたはCLDN6の量を決定する方法であって、
(i)試料を本発明の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは本発明のコンジュゲートと接触させる工程、および
(ii)抗体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートとCLDN6との複合体の形成を検出する、または前記複合体の量を決定する工程
を含む方法に関する。
【0044】
一実施形態では、試料は細胞試料、すなわち癌細胞などの細胞を含む試料である。この実施形態では、複合体は、好ましくは抗体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートと、前記試料中の細胞によって発現されるCLDN6との間で形成される。
【0045】
一態様では、本発明は、細胞がCLDN6を発現するか否かを判定する方法であって、
(i)細胞試料を本発明の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは本発明のコンジュゲートと接触させる工程、および
(ii)抗体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートと、前記試料中の細胞によって発現されるCLDN6との複合体の形成を検出する工程
を含む方法に関する。
【0046】
一実施形態では、試料中の細胞は癌細胞である。複合体は、好ましくは抗体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートと、前記試料中の細胞によって発現されるCLDN6との間で形成される。
【0047】
本発明のさらなる態様は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントを使用してCLDN6を標的とすることによって疾患を診断または分類する方法に関する。これらの方法は、CLDN6を発現する細胞の選択的検出を提供し、それによってCLDN6を発現しない正常細胞またはCLDN6を発現しない疾患細胞からこれらの細胞を区別する。CLDN6を発現する疾患細胞を特徴とする疾患は、CLDN6に対する治療用抗体による治療法などの、CLDN6を標的とする治療法によって治療可能である。治療または診断のための好ましい疾患は、CLDN6が発現されるまたは異常発現される疾患、特に本明細書に記載されるものなどの癌疾患である。
【0048】
一態様では、本発明は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントを使用した、患者から単離された生物学的試料中のCLDN6もしくはCLDN6発現細胞の検出および/またはCLDN6もしくはCLDN6発現細胞の量の決定を含む、癌疾患の診断、検出またはモニタリング、すなわち後退、進行、経過および/または発症の決定の方法に関する。そのような方法は、被験体が癌疾患を有するか否か、癌疾患を発症する危険性がある(危険性が高い)か否か、または、例えば治療レジメンが有効であるか否かを検出するために使用され得る。
【0049】
したがって、一態様では、本発明は、癌の診断、検出またはモニタリングの方法であって、
(i)生物学的試料を本発明の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは本発明のコンジュゲートと接触させる工程、および
(ii)抗体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートとCLDN6との複合体の形成を検出するおよび/または前記複合体の量を決定する工程
を含む方法に関する。
【0050】
一実施形態では、生物学的試料は細胞試料、すなわち癌細胞などの細胞を含む試料である。この実施形態では、複合体は、好ましくは抗体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートと、前記試料中の細胞によって発現されるCLDN6との間で形成される。
【0051】
本発明によるモニタリングの方法は、好ましくは、第1の時点での第1の試料および第2の時点でのさらなる試料中のCLDN6またはCLDN6発現細胞の検出および/またはその量の決定を含み、腫瘍疾患の後退、進行、経過および/または発症は、2つの試料を比較することによって決定し得る。
【0052】
典型的には、生物学的試料中のCLDN6のレベルまたはCLDN6発現細胞のレベルを参照レベルと比較し、前記参照レベルからの偏差は、被験体における癌疾患の存在および/または病期の指標である。参照レベルは、対照試料(例えば健常組織もしくは健常被験体、特に癌疾患のない患者由来)で決定されるレベル、または健常被験体からの平均レベルであり得る。前記参照レベルからの「偏差」は、少なくとも10%、20%、または30%、好ましくは少なくとも40%、または50%、またはそれ以上の増加などの有意な変化を表す。
【0053】
好ましくは、CLDN6もしくはCLDN6発現細胞の存在および/または参照レベルと比較して、例えば癌疾患のない患者と比較して増加しているCLDN6もしくはCLDN6発現細胞の量は、患者における癌疾患の存在またはその危険性(すなわち発症の可能性)を示す。
【0054】
患者から以前に採取した生物学的試料と比較して減少しているCLDN6またはCLDN6発現細胞の量は、患者における癌疾患の後退、肯定的な経過、例えば治療の成功、または発症の危険性の低下を示し得る。
【0055】
患者から以前に採取した生物学的試料と比較して増加しているCLDN6またはCLDN6発現細胞の量は、前記患者における癌疾患の進行、否定的な経過、例えば治療の失敗、再発もしくは転移挙動、発症または発症の危険性を示し得る。
【0056】
一態様では、本発明は、癌が、CLDN6を標的とする癌療法によって治療可能であるか否かを判定する方法であって、
(i)癌細胞を含む試料を本発明の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは本発明のコンジュゲートと接触させる工程、および
(ii)抗体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートとCLDN6との複合体の形成を検出する工程
を含む方法に関する。
【0057】
複合体は、好ましくは抗体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートと、前記試料中の癌細胞によって発現されるCLDN6との間で形成される。
【0058】
このような方法は、細胞傷害性CLDN6特異的抗体、例えば毒素もしくは放射性標識などの細胞毒性物質で標識された抗体などの1つ以上の免疫エフェクター機能を発揮する抗体、またはCDCもしくはADCCなどの細胞死滅機構を誘導する抗体を使用する治療法などの、CLDN6を発現する細胞の標的化を含む治療法に患者が適するか否かを検出するために使用し得る。癌疾患、特に本明細書に記載されるものなどの、CLDN6を発現する疾患細胞を特徴とする疾患は、CLDN6を標的とする治療法によって治療可能である。
【0059】
上記態様のいずれかの一実施形態では、試料、細胞試料または生物学的試料は、癌疾患を有する、癌疾患を有するもしくは癌疾患に罹患することが疑われる、または癌疾患の可能性を有する患者由来である。一実施形態では、試料、細胞試料または生物学的試料は組織または器官由来であり、組織または器官に癌が存在しない場合、細胞はCLDN6を実質的に発現しない。好ましくは、前記組織は胎盤組織以外の組織である。好ましくは、前記組織は、例えば前記組織または器官の目視検査またはその細胞の培養試験によって、癌疾患に罹患していると既に診断されている。この実施形態では、CLDN6もしくはCLDN6発現細胞の存在、および/または参照レベルと比較して、例えば腫瘍疾患のない患者と比較して増加しているCLDN6もしくはCLDN6発現細胞の量は、患者がCLDN6を発現する細胞の標的化を含む治療法に適することを示し得る。
【0060】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは抗体および/もしくは抗原結合フラグメントの組合せを含む組成物、例えば診断用組成物、またはキットを提供する。そのような診断用組成物または試験キットは、本発明の診断、検出またはモニタリングのための方法などの本発明の方法において有用である。これらのキットは、場合により、検出可能な標識、例えば指示酵素、放射性標識、発蛍光団、または常磁性粒子を含んでもよい。キットは、情報を提供するパンフレット、例えば本明細書に開示される方法を実施するための試薬の使用方法を知らせるパンフレットを含んでもよい。
【0061】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1A】クローディン6およびクローディン9タンパク質の配列アラインメント(ヒト/マウス) 配列アラインメントは、ヒトおよびマウスクローディン6およびヒトクローディン9の間の高い相同性を示す。
図1B】クローディン6ならびにクローディン3、4および9タンパク質の配列アラインメント(ヒト) 配列アラインメントは、クローディン多重遺伝子ファミリーの高い相同性を示す。
図2A】ウェスタンブロット分析で試験した抗体の特異性
図2B】ウェスタンブロット分析で試験した抗体の特異性 モック、ヒトCLDN3、4、6または9をトランスフェクトしたHEK293細胞およびCLDN6陽性腫瘍細胞(PA-1 SC12およびNEC-8)の細胞溶解物をブロットし、結合した抗体(ウサギ抗CLDN3(Invitrogen)0.5μg/mL、マウス抗CLDN4(Invitrogen)1μg/mL、ウサギ抗CLDN6(IBL)0.2μg/mL、ヤギ抗CLDN9(Santa Cruz)0.4μg/mL、またはモノクローナルマウス抗体(5μg/mL)をペルオキシダーゼ結合二次抗体によって検出した。
図3】ウェスタンブロット陽性抗体の組織学的分析 卵巣癌のFFPE切片へのウサギ抗CLDN6 IBL抗血清と比較したリードmumAB 58-1B、58-3Aおよび58-4Bの結合。
図4A】合成重複ペプチドを使用したエピトープマッピング 重複するペプチドをマイクロタイタープレートに固定化し、抗体を添加した。結合した抗体を適切なペルオキシダーゼ結合二次試薬で展開した。
図4B】ビオチン化合成重複ペプチドを使用したエピトープマッピング 柔軟な親水性リンカーを介してN末端をビオチン化した高度に重複するペプチドを合成し、ストレプトアビジン結合マイクロタイタープレートに充填した。抗体(1μg/mL)を適用し、結合した抗体を検出して分析した。 mumAB 58-4B-2とウサギ血清(IBL)のシグナル強度を比較するために、C末端ペプチド19への抗体の最大結合を100%と定義した。 1つのペプチドへの各抗体の結合強度を各試験系の最大結合と比較して計算した。 mumABの結合を3つの独立した実験で三重に分析した IBL血清の結合を2つの独立した実験で三重に分析した
図4C】モノクローナルリード58-4B-2およびポリクローナルウサギ抗CLDN6血清(IBL)の結合部位。
図5A】抗体58-1B、58-3Aおよび58-4Bの配列
図5B】抗体58-1B、58-3Aおよび58-4Bの配列
図6】正常な卵巣組織上の様々な抗体のバックグラウンドシグナル 正常な卵巣組織上のリード抗体mumAB 58-1B、58-3Aおよび58-4Bと市販のIBL抗体との比較(抗体濃度5μg/ml;クリニック様のプロトコル)。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明を以下で詳細に説明するが、本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0064】
以下において、本発明の要素を説明する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、それらは、追加の実施形態を創製するために任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に説明される例および好ましい実施形態は、本発明を明確に記述される実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明確に記述される実施形態を任意の数の開示される要素および/または好ましい要素と組み合わせた実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願において記述されるすべての要素の任意の並び替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、本出願の説明によって開示されているとみなされるべきである。
【0065】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)",H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように定義される。
【0066】
本発明の実施は、特に指示されない限り、当技術分野の文献(例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989参照)で説明されている化学、生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。
【0067】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈上特に必要とされない限り、「含む」という語および「含むこと」などの変形は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含を意味するが、いかなる他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の排除も意味しないと理解され、しかしいくつかの実施形態では、そのような他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群が排除され得る、すなわち主題は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含に存する。本発明の説明に関連して(特に特許請求の範囲に関連して)使用される「1つの」および「その」という用語および同様の言及は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に属する各々別々の値を個別に言及することの簡略方法として機能することが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図し、特許請求される本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠な、特許請求されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
【0068】
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される資料(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書等を含む)の各々は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のためにそのような開示に先行する権利を有さないことの承認と解釈されるべきではない。
【0069】
本発明に関連して「組換え」という用語は、「遺伝子操作を介して作製された」ことを意味する。好ましくは、本発明に関連して組換え細胞などの「組換え物体」は、天然には存在しない。
【0070】
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、物体が自然界で見出され得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人によって意図的に改変されていないペプチドまたは核酸は、天然に存在する。
【0071】
「抗原」という用語は、免疫応答が向けられるおよび/または免疫応答が生成されるべきであるエピトープを含む作用物質に関する。好ましくは、本発明に関連して抗原は、場合によりプロセシング後に、好ましくは抗原に特異的な、免疫反応を誘導する分子である。「抗原」という用語には、特にタンパク質、ペプチド、多糖類、核酸、特にRNAおよびDNA、ならびにヌクレオチドが含まれる。
【0072】
「エピトープ」という用語は、抗原などの分子中の抗原決定基、すなわち免疫系によって認識される、例えば抗体によって認識される分子中の部分を指す。例えば、エピトープは、免疫系によって認識される、抗原上の別個の三次元部位である。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常は特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープと非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われ、後者への結合は失われないという点で区別される。CLDNなどのタンパク質のエピトープは、好ましくは前記タンパク質の連続または不連続部分を含み、好ましくは5~100、好ましくは5~50、より好ましくは8~30、最も好ましくは10~25アミノ酸長であり、例えばエピトープは、好ましくは8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長であり得る。
【0073】
本明細書で使用される「不連続エピトープ」という用語は、タンパク質の一次配列中の少なくとも2つの別個の領域から形成される、タンパク質抗原上の立体配座エピトープを意味する。
【0074】
抗原には、CLDN6などの腫瘍関連抗原、すなわち細胞質、細胞表面および細胞核に由来し得る癌細胞の成分、特に癌細胞内でまたは癌細胞上の表面抗原として、好ましくは大量に産生される抗原が含まれる。
【0075】
本発明に関連して、「腫瘍関連抗原」または「腫瘍抗原」という用語は、正常条件下では限られた数の組織および/もしくは器官で、または特定の発生段階で特異的に発現されるタンパク質に関し、例えば腫瘍関連抗原は、正常条件下では胃組織、好ましくは胃粘膜、生殖器官、例えば精巣、栄養膜組織、例えば胎盤、または生殖系列細胞で特異的に発現され得、1つ以上の腫瘍または癌組織で発現または異常発現される。これに関連して、「限られた数」は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下を意味する。本発明に関連して腫瘍関連抗原には、例えば分化抗原、好ましくは細胞型特異的分化抗原、すなわち正常条件下では特定の分化段階で特定の細胞型において特異的に発現されるタンパク質、癌/精巣抗原、すなわち正常条件下では精巣で、時に胎盤で特異的に発現されるタンパク質、および生殖系列特異的抗原が含まれる。本発明に関連して、腫瘍関連抗原は、好ましくは癌細胞の細胞表面と結合しており、好ましくは正常組織では発現されないかまたはまれにしか発現されない。好ましくは、腫瘍関連抗原または腫瘍関連抗原の異常発現は癌細胞を同定する。本発明に関連して、被験体、例えば癌疾患に罹患している患者の癌細胞によって発現される腫瘍関連抗原は、好ましくは前記被験体の自己タンパク質である。好ましい実施形態では、本発明に関連して腫瘍関連抗原は、正常条件下では、必須ではない組織もしくは器官、すなわち免疫系によって損傷された場合に被験体の死をもたらさない組織もしくは器官において、または免疫系がアクセスできないかもしくはほとんどアクセスできない器官もしくは身体構造において特異的に発現される。好ましくは、腫瘍関連抗原のアミノ酸配列は、正常組織で発現される腫瘍関連抗原と癌組織で発現される腫瘍関連抗原との間で同一である。
【0076】
腫瘍免疫療法、特に腫瘍ワクチン接種における標的構造体としての腫瘍関連抗原の基準を理想的に満たす分化抗原の例は、CLDN6などのクローディンファミリーの細胞表面タンパク質である。クローディンは、密着結合の最も重要な成分であるタンパク質のファミリーであり、密着結合において上皮細胞間の細胞間隙での分子の流れを制御する細胞間隙バリアを確立する。クローディンは、N末端およびC末端の両方が細胞質に位置し、膜を4回横切る膜貫通タンパク質である。
【0077】
「クローディン6」または「CLDN6」という用語は、好ましくはヒトCLDN6、特に、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質または前記アミノ酸配列の変異体に関する。CLDN6に関して、「変異体」という用語は、特に、143位のIleがValで置き換えられた、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質を指す。「CLDN6」という用語には、翻訳後修飾変異体および立体配座変異体などの任意のCLDN6変異体が含まれる。
【0078】
「CLDN9」という用語は、好ましくはヒトCLDN9、特に、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列または前記アミノ酸配列の変異体を含むタンパク質に関する。
【0079】
「CLDN4」という用語は、好ましくはヒトCLDN4、特に、配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列または前記アミノ酸配列の変異体を含むタンパク質に関する。
【0080】
「CLDN3」という用語は、好ましくはヒトCLDN3、特に、配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列または前記アミノ酸配列の変異体を含むタンパク質に関する。
【0081】
CLDN6は、例えば卵巣癌、肺癌、胃癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、黒色腫、頭頸部癌、肉腫、胆管癌、腎細胞癌、および膀胱癌で発現されることが認められている。CLDN6は、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌、胃癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎臓癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎児性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胚性癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの生殖細胞腫瘍、特に精巣の生殖細胞腫瘍、ならびにその転移形態において検出可能であり、標的とすることができる。一実施形態では、CLDN6発現に関連する癌疾患は、卵巣癌、肺癌、転移性卵巣癌および転移性肺癌からなる群より選択される。好ましくは、卵巣癌は癌腫または腺癌である。好ましくは、肺癌は癌腫または腺癌であり、好ましくは細気管支癌腫または細気管支腺癌などの細気管支癌である。
【0082】
本発明によれば、CLDN6を発現する細胞は、好ましくは細胞表面膜結合CLDN6を特徴とする、すなわちCLDN6は細胞表面と結合している。さらに、本発明によれば、細胞CLDN6は、好ましくは細胞表面膜結合CLDN6である。CLDN6を発現する細胞またはCLDN6とその細胞表面との結合を特徴とする細胞は、好ましくは癌細胞、好ましくは本明細書に記載の癌由来の癌細胞である。
【0083】
「細胞表面と結合した」という用語は、CLDN6などの腫瘍関連抗原が細胞の形質膜と結合して位置し、腫瘍関連抗原の少なくとも一部が前記細胞の細胞外空間に面しており、例えば細胞の外側に位置する抗体によって、前記細胞の外側からアクセス可能であることを意味する。これに関連して、一部とは、好ましくは少なくとも4個、好ましくは少なくとも8個、好ましくは少なくとも12個、より好ましくは少なくとも20個のアミノ酸である。結合は直接または間接的であり得る。例えば、結合は、1つ以上の膜貫通ドメイン、1つ以上の脂質アンカー、または他のタンパク質、脂質、サッカリド、もしくは細胞の形質膜の外側リーフレットに認められる他の構造との相互作用によるものであり得る。例えば、細胞の表面と結合した腫瘍関連抗原は、細胞外部分を有する膜貫通タンパク質であり得るか、または膜貫通タンパク質である別のタンパク質と相互作用することによって細胞の表面と結合したタンパク質であり得る。
【0084】
「細胞表面」または「細胞の表面」は、当技術分野におけるその通常の意味に従って使用され、したがってタンパク質および他の分子による結合にアクセス可能な細胞の外側を含む。
【0085】
本発明によれば、CLDN6は、発現レベルが胎盤細胞または胎盤組織における発現と比較してより低い場合、細胞において実質的に発現されない。好ましくは、発現レベルは、胎盤細胞または胎盤組織における発現の10%未満、好ましくは5%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%または0.05%未満であるかまたはさらに低い。好ましくは、CLDN6は、発現レベルが胎盤以外の非癌性組織における発現レベルを2倍未満、好ましくは1.5倍未満だけ上回り、好ましくは前記非癌性組織における発現レベルを超えない場合、細胞において実質的に発現されない。好ましくは、CLDN6は、発現レベルが検出限界未満である場合、および/または発現レベルが低すぎて細胞に加えられたCLDN6特異的抗体による結合を可能にしない場合、細胞において実質的に発現されない。
【0086】
本発明によれば、CLDN6は、発現レベルが胎盤以外の非癌性組織における発現レベルを、好ましくは2倍超、好ましくは10倍超、100倍超、1000倍超、または10000倍超上回る場合、細胞において発現される。好ましくは、CLDN6は、発現レベルが検出限界を上回る場合、および/または発現レベルが細胞に加えられたCLDN6特異的抗体による結合を可能にするのに十分なだけ高い場合、細胞において発現される。好ましくは、細胞において発現されるCLDN6は、前記細胞の表面で発現または露出される。
【0087】
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質を指し、その抗原結合部分を含む任意の分子を包含する。「抗体」という用語には、限定されることなく、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、例えばscFvならびにFabおよびFab'フラグメントなどの抗原結合抗体フラグメントを含むモノクローナル抗体および抗体のフラグメントまたは誘導体が含まれ、ならびにまた、抗体のすべての組換え形態、例えば原核生物で発現される抗体、非グリコシル化抗体、および本明細書に記載の任意の抗原結合抗体フラグメントおよび誘導体が含まれる。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)および重鎖定常領域からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)および軽鎖定常領域からなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域にさらに細分化することができる。各VHおよびVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された、3つのCDRと4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0088】
本明細書に記載の抗体はヒト抗体であり得る。本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図されている。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えばインビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によってまたはインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。
【0089】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト種からの免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有する分子を指し、分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく。抗原結合部位は、定常ドメインに融合した完全な可変ドメイン、または可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域に移植された相補性決定領域(CDR)のみを含み得る。抗原結合部位は野生型であってもよく、または1つ以上のアミノ酸置換によって修飾されていてもよく、例えばヒト免疫グロブリンにより類似するように修飾されていてもよい。ヒト化抗体のいくつかの形態は、すべてのCDR配列を保存する(例えばマウス抗体からの6つのCDRすべてを含むヒト化マウス抗体)。他の形態は、元の抗体に比べて変化した1つ以上のCDRを有する。
【0090】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖および軽鎖の各アミノ酸配列の一部が、特定の種に由来するまたは特定のクラスに属する抗体の対応する配列と相同であり、一方、鎖の残りのセグメントは別の種またはクラスの抗体の対応する配列と相同である抗体を指す。典型的には、軽鎖と重鎖の両方の可変領域は、1つの種の哺乳動物に由来する抗体の可変領域を模倣し、一方、定常部分は別の種に由来する抗体の配列と相同である。そのようなキメラ形態の1つの明確な利点は、可変領域が、例えばヒト細胞調製物に由来する定常領域と組み合わせて、容易に入手可能な非ヒト宿主生物由来のB細胞またはハイブリドーマを使用して現在公知の供給源から好都合に誘導できることである。可変領域には調製が容易であるという利点があり、その特異性は供給源に影響されないが、ヒトである定常領域は、抗体を注入した場合に非ヒト供給源由来の定常領域よりもヒト被験体から免疫応答を誘発する可能性が低い。ただし、定義はこの特定の例に限定されない。
【0091】
抗体の「抗原結合部分」(もしくは単に「結合部分」)または抗体の「抗原結合フラグメント」(もしくは単に「結合フラグメント」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例には、(i)VL、VH、CLおよびCHドメインからなる一価フラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab')フラグメント;(iii)VHおよびCHドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の1本の腕のVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなる、dAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)場合により合成リンカーによって連結されていてもよい2つ以上の単離されたCDRの組合せが含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLとVHは別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を用いて、VL領域とVH領域が対合して一価分子を形成する一本鎖タンパク質(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBird et al.(1988)Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参照)としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーによって連結され得る。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に包含されることが意図されている。さらなる例は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した結合ドメインポリペプチド、(ii)ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、および(iii)CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。結合ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域または軽鎖可変領域であり得る。結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、さらに、米国特許出願公開第2003/0118592号および米国特許出願公開第2003/0133939号に開示されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を使用して得られ、フラグメントは、無傷の抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0092】
本明細書に記載の抗体はモノクローナル抗体であってもよい。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、単一の結合特異性と親和性を示す。一実施形態では、モノクローナル抗体は、不死化細胞に融合した非ヒト動物、例えばマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0093】
本明細書に記載の抗体は組換え抗体であってもよい。本明細書で使用される「組換え抗体」という用語は、(a)免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマルである動物(例えばマウス)から単離された抗体またはそれから作製されたハイブリドーマ、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体、および(d)免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の手段によって作製、発現、創製または単離された抗体などの、組換え手段によって作製、発現、創製または単離されたすべての抗体を含む。
【0094】
本明細書で使用される「トランスフェクトーマ」という用語は、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、植物細胞、または酵母細胞を含む真菌などの、抗体を発現する組換え真核生物宿主細胞を含む。
【0095】
本明細書で使用される場合、「異種抗体」は、そのような抗体を産生するトランスジェニック生物に関して定義される。この用語は、トランスジェニック生物で構成されない生物で認められるものに対応するアミノ酸配列またはコード化核酸配列を有し、一般にトランスジェニック生物以外の種に由来する抗体を指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「ヘテロハイブリッド抗体」とは、異なる生物起源の軽鎖および重鎖を有する抗体を指す。例えば、マウス軽鎖と結合したヒト重鎖を有する抗体は、ヘテロハイブリッド抗体である。
【0097】
本発明は、本発明の目的のために「抗体」という用語に包含される、本明細書に記載のすべての抗体および抗体の誘導体を含む。「抗体誘導体」という用語は、抗体の任意の修飾形態、例えば抗体と別の作用物質もしくは別の抗体とのコンジュゲート、または抗体フラグメントを指す。
【0098】
本明細書に記載の抗体は、好ましくは単離されている。本明細書で使用される「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図されている。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない可能性がある。
【0099】
本発明によれば、抗体は、標準的なアッセイにおいて所定の標的に対して有意な親和性を有し、前記所定の標的に結合する場合、前記所定の標的に結合することができる。「親和性」または「結合親和性」は、しばしば平衡解離定数(K)によって測定される。好ましくは、「有意な親和性」という用語は、10-5M以下、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、または10-12M以下の解離定数(K)で所定の標的に結合することを指す。
【0100】
抗体は、標準的なアッセイにおいて標的に対して有意な親和性を有さず、前記標的に有意に結合しない、特に検出可能に結合しない場合、前記標的に(実質的に)結合することができない。好ましくは、抗体は、2μg/mlまで、好ましくは10μg/mlまで、より好ましくは20μg/mlまで、特に50μg/mlまたは100μg/ml以上の濃度で存在する場合、前記標的に検出可能に結合しない。好ましくは、抗体は、その抗体が結合することができる所定の標的への結合に関するKよりも少なくとも10倍、100倍、10倍、10倍、10倍、または10倍高いKで前記標的に結合する場合、前記標的に対して有意な親和性を有さない。例えば、抗体が結合することができる標的への抗体の結合に関するKが10-7Mである場合、抗体が有意な親和性を有さない標的への結合に関するKは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2M、または10-1Mである。
【0101】
抗体は、所定の標的に結合することができるが、他の標的には結合できない、すなわち標準的なアッセイにおいて他の標的に対して有意な親和性を有さず、他の標的に有意に結合しない場合、所定の標的に特異的である。本発明によれば、抗体は、CLDN6に結合することができるが、他の標的、特にCLDN9、CLDN4および/もしくはCLDN3などの他のCLDNタンパク質、ならびに/またはクローディンタンパク質以外のタンパク質、好ましくはCLDN6以外のタンパク質に(実質的に)結合できない場合、CLDN6に特異的である。好ましくは、そのような他の標的に対する親和性および結合が、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ヒト血清アルブミン(HSA)などのクローディンに無関係なタンパク質、またはMHC分子もしくはトランスフェリン受容体などの非クローディン膜貫通タンパク質、または任意の他の特定のポリペプチドに対する親和性または結合を有意に上回らない場合、抗体はCLDN6に特異的である。好ましくは、抗体は、その抗体が特異的でない標的への結合に関するKよりも少なくとも10倍、100倍、10倍、10倍、10倍、または10倍低いKで所定の標的に結合する場合、前記所定の標的に特異的である。例えば、抗体が特異的である標的への結合に関するKが10-7Mである場合、抗体が特異的ではない標的への結合に関するKは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2M、または10-1Mである。
【0102】
抗体の標的への結合は、任意の適切な方法を使用して実験的に決定することができる;例えば、Berzofsky et al.,"Antibody-Antigen Interactions"In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press New York,N Y(1984)、Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company New York,N Y(1992)、および本明細書に記載の方法参照。親和性は、従来の技術を使用して、例えば平衡透析によって;製造者によって概説される一般的手順を用いてBIAcore 2000装置を使用することによって;放射性標識した標的抗原を使用する放射免疫測定法によって;または当業者に公知の別の方法によって、容易に決定し得る。親和性データは、例えば、Scatchard et al.,Ann N.Y.Acad.ScL,51:660(1949)の方法によって分析し得る。特定の抗体-抗原相互作用の測定される親和性は、異なる条件、例えば塩濃度、pHの下で測定された場合、異なり得る。したがって、親和性および他の抗原結合パラメータ、例えばK、IC50の測定は、好ましくは抗体および抗原の標準化された溶液、ならびに標準化された緩衝液を用いて行われる。
【0103】
「競合する」という用語は、標的抗原への結合に関する2つの抗体間の競合を指す。2つの抗体が標的抗原への結合について互いにブロックしない場合、そのような抗体は競合せず、これは、前記抗体が標的抗原の同じ部分、すなわちエピトープに結合しないことの指標である。標的抗原への結合についての抗体の競合を試験する方法は、当業者に周知である。そのような方法の一例は、例えばELISAとしてまたはフローサイトメトリによって実施され得る、いわゆる交差競合アッセイである。例えば、ELISAに基づくアッセイは、ELISAプレートのウェルを抗体の1つで被覆し、競合する抗体とHisタグ付き抗原/標的を添加し、添加した抗体がHisタグ付き抗原の被覆抗体への結合を阻害したか否かを、例えばビオチン化抗His抗体を添加し、続いてストレプトアビジン-ポリ-HRPを添加し、ABTSとの反応をさらに発展させ、405nmでの吸光度を測定して検出することによって実施し得る。例えば、フローサイトメトリアッセイは、抗原/標的を発現する細胞を過剰の非標識抗体とインキュベートし、細胞を最適以下の濃度のビオチン標識抗体と共にインキュベートし、続いて蛍光標識ストレプトアビジンと共にインキュベートし、フローサイトメトリで分析することによって実施し得る。
【0104】
2つの抗体は、同じ抗原および同じエピトープに結合する場合、「同じ特異性」を有する。試験する抗体が特定の抗原結合抗体と同じエピトープを認識するか否か、すなわち抗体が同じエピトープに結合するか否かは、例えば同じエピトープに関する抗体の競合に基づき、当業者に公知の様々な方法によって試験することができる。抗体間の競合は、クロスブロッキングアッセイによって検出することができる。例えば、競合ELISAアッセイをクロスブロッキングアッセイとして使用することができる。例えば、標的抗原をマイクロタイタープレートのウェルに被覆し、抗原結合抗体と候補競合試験抗体を添加し得る。ウェル中の抗原に結合した抗原結合抗体の量は、同じエピトープへの結合について競合する候補競合試験抗体の結合能力と間接的に相関する。具体的には、同じエピトープに対する候補競合試験抗体の親和性が大きいほど、抗原被覆ウェルに結合する抗原結合抗体の量は少なくなる。ウェルに結合した抗原結合抗体の量は、抗体を検出可能または測定可能な標識物質で標識することによって測定できる。
【0105】
抗原への結合について別の抗体、例えば本明細書に記載の重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体と競合する抗体、または別の抗体、例えば本明細書に記載の重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体の抗原に対する特異性を有する抗体は、本明細書に記載の前記重鎖および/または軽鎖可変領域の変異体、例えばCDRの改変および/または本明細書に記載のある程度の同一性を含む抗体であり得る。
【0106】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えばIgMまたはIgG1)を指す。本発明による抗体には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体が含まれ、IgG2a(例えばIgG2a、κ、λ)、IgG2b(例えばIgG2b、κ、λ)、IgG3(例えばIgG3、κ、λ)およびIgM抗体が含まれる。しかしながら、IgG1、IgA1、IgA2、分泌性IgA、IgD、およびIgE抗体を含む他の抗体アイソタイプも本発明に包含される。
【0107】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプスイッチング」とは、抗体のクラスまたはアイソタイプが、あるIgクラスから他のIgクラスの1つに変化する現象を指す。
【0108】
本明細書で使用される「再構成された」という用語は、Vセグメントが、本質的に完全なVHまたはVLドメインをそれぞれコードする立体配座でD-JまたはJセグメントに直接隣接して位置する、重鎖または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の立体配置を指す。再構成された免疫グロブリン(抗体)遺伝子座は、生殖細胞DNAとの比較によって同定することができる;再構成された遺伝子座は、少なくとも1つの組換え七量体/九量体相同エレメントを有する。
【0109】
Vセグメントに関して本明細書で使用される「再構成されていない」または「生殖系列立体配置」という用語は、VセグメントがDまたはJセグメントに直接隣接するように組換えられていない立体配置を指す。
【0110】
本発明によれば、抗体は、マウス、ラット、ウサギ、モルモットおよびヒトを含むがこれらに限定されない様々な種に由来し得る。抗体には、1つの種、好ましくはヒトに由来する抗体定常領域が別の種に由来する抗原結合部位と組み合わされたキメラ分子も含まれる。さらに、抗体には、非ヒト種に由来する抗体の抗原結合部位がヒト起源の定常領域およびフレームワーク領域と組み合わされたヒト化分子が含まれる。
【0111】
抗体は、従来のモノクローナル抗体法、例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む、様々な技術によって作製することができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいが、原則として、モノクローナル抗体を作製するための他の技術、例えばBリンパ球のウイルスもしくは発癌性形質転換、または抗体遺伝子のライブラリを用いるファージディスプレイ技術を使用することができる。
【0112】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための好ましい動物系はマウス系である。マウスでのハイブリドーマ産生は十分に確立された手順である。免疫プロトコルおよび融合のための免疫脾細胞の単離技術は当技術分野で公知である。融合パートナー(例えばマウス骨髄腫細胞)および融合手順も公知である。
【0113】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための他の好ましい動物系は、ラットおよびウサギの系である(例えば、Spieker-Polet et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.92:9348(1995)に記載されており、またRossi et al.,Am.J.Clin.Pathol.124:295(2005)も参照のこと)。
【0114】
さらに別の好ましい実施形態では、CLDN6に対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の一部を担持するトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルマウスを使用して生成することができる。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソーマルマウスには、それぞれHuMAbマウスおよびKMマウスとして知られるマウスが含まれ、本明細書では集合的に「トランスジェニックマウス」と称される。そのようなトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体の生産は、国際公開第2004 035607号においてCD20に関して詳述されているように実施することができる。
【0115】
モノクローナル抗体を作製するためのさらに別の戦略は、定義された特異性の抗体を産生するリンパ球から抗体をコードする遺伝子を直接単離することである;例えば、Babcock et al.,1996;A novel strategy for generating monoclonal antibodies from single,isolated lymphocytes producing antibodies of defined specificities参照。組換え抗体工学の詳細については、Welschof and Kraus,Recombinant antibodes for cancer therapy ISBN-0-89603-918-8およびBenny K.C.Lo Antibody Engineering ISBN 1-58829-092-1も参照のこと。
【0116】
CLDN6に対する抗体を生成するために、上述したように、CLDN6配列に由来する担体結合ペプチド、組換え発現されたCLDN6抗原もしくはそのフラグメントの富化調製物、および/またはCLDN6もしくはそのフラグメントを発現する細胞でマウスを免疫することができる。あるいは、完全長ヒトCLDN6またはそのフラグメントをコードするDNAでマウスを免疫することができる。CLDN6抗原の精製または富化調製物を使用した免疫で抗体が得られない場合、免疫応答を促進するためにCLDN6を発現する細胞、例えば細胞株でマウスを免疫することもできる。
【0117】
免疫応答は、尾静脈または後眼窩出血によって得られる血漿および血清試料を用いて免疫プロトコルの経過にわたってモニターすることができる。抗CLDN6免疫グロブリンの十分な力価を有するマウスを融合に使用することができる。特異的抗体を分泌するハイブリドーマの割合を高めるために、犠死および脾臓の摘出の3~5日前にCLDN6発現細胞を用いて腹腔内または静脈内経路でマウスを追加免疫することができる。
【0118】
CLDN6に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、免疫マウスから得られたリンパ節、脾臓または骨髄からの細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適切な不死化細胞株に融合することができる。次に、得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングすることができる。個々のウェルを、抗体を分泌するハイブリドーマについてELISAでスクリーニングすることができる。CLDN6発現細胞を用いた免疫蛍光法およびFACS分析によって、CLDN6に特異性を有する抗体を同定できる。抗体を分泌するハイブリドーマを再播種し、再度スクリーニングし、抗CLDN6モノクローナル抗体についてまだ陽性である場合は、限界希釈によってサブクローニングできる。その後、安定なサブクローンをインビトロで培養して、特性決定のために組織培養培地中で抗体を生成することができる。
【0119】
本発明の抗体は、例えば当技術分野で周知の組換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法の組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて生産することもできる(Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。
【0120】
例えば、一実施形態では、関心対象の遺伝子(1つまたは複数)、例えば抗体遺伝子を、国際公開第87/04462号、国際公開第89/01036号および欧州特許第338 841号に開示されているGS遺伝子発現系または当技術分野で周知の他の発現系によって使用されるような真核生物発現プラスミドなどの発現ベクターに連結することができる。クローニングした抗体遺伝子を含む精製プラスミドは、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293T細胞またはHEK293細胞などの真核宿主細胞、あるいは植物由来細胞、真菌または酵母細胞のような他の真核細胞に導入できる。これらの遺伝子を導入するために使用される方法は、エレクトロポレーション、リポフェクチン、リポフェクタミンなどの当技術分野で記述されている方法であり得る。宿主細胞にこれらの抗体遺伝子を導入した後、抗体を発現する細胞を同定し、選択することができる。これらの細胞はトランスフェクトーマであり、その後発現レベルを増幅して、抗体を生産するためにスケールアップすることができる。これらの培養上清および/または細胞から組換え抗体を単離および精製することができる。
【0121】
あるいは、クローニングした抗体遺伝子は、微生物、例えば大腸菌(E.coli)などの原核細胞を含む他の発現系で発現させることができる。さらに、抗体は、ヒツジおよびウサギの乳またはニワトリの卵などのトランスジェニック非ヒト動物において、またはトランスジェニック植物において生産できる;例えば、Verma,R.,et al.(1998)J.Immunol.Meth.216:165-181;Pollock,et al.(1999)J.Immunol.Meth.231:147-157;およびFischer,R.,et al.(1999)Biol.Chem.380:825-839参照。
【0122】
キメラ抗体は、その異なる部分が、マウス抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有するものなどの、異なる動物種に由来する抗体である。抗体のキメラ化は、マウス抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をヒト重鎖および軽鎖の定常領域と連結することによって達成される(例えばKraus et al.,Methods in Molecular Biology series,Recombinant antibody for cancer therapy ISBN-0-89603-918-8に記載されているように)。好ましい実施形態では、キメラ抗体は、ヒトκ軽鎖定常領域をマウス軽鎖可変領域に連結することによって生成される。同じく好ましい実施形態では、キメラ抗体は、ヒトλ軽鎖定常領域をマウス軽鎖可変領域に連結することによって生成できる。キメラ抗体の生成のための好ましい重鎖定常領域は、IgG1、IgG3およびIgG4である。キメラ抗体の生成のための他の好ましい重鎖定常領域は、IgG2、IgA、IgDおよびIgMである。
【0123】
抗体は、主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。この理由から、CDR内のアミノ酸配列は、CDR外の配列よりも個々の抗体間で多様である。CDR配列はほとんどの抗体-抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列に移植された特定の天然抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann,L.et al.(1998)Nature 332:323-327;Jones,P.et al.(1986)Nature 321:522-525;およびQueen,C.et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.86:10029-10033参照)。そのようなフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公的なDNAデータベースから入手できる。これらの生殖系列配列は、B細胞成熟の間にV(D)J結合によって形成される完全に構築された可変遺伝子を含まないため、成熟抗体遺伝子配列とは異なる。生殖系列遺伝子配列はまた、可変領域全体にわたって個々の位置で均等に、高親和性二次レパートリ抗体の配列と異なる。例えば、体細胞変異は、フレームワーク領域1のアミノ末端部分およびフレームワーク領域4のカルボキシ末端部分では比較的まれである。さらに、多くの体細胞変異は、抗体の結合特性を有意に変化させない。このため、元の抗体と類似の結合特性を有する無傷の組換え抗体を再構築するために特定の抗体のDNA配列全体を得る必要はない(国際公開第99/45962号参照)。典型的には、CDR領域にわたる部分的な重鎖および軽鎖の配列でこの目的には十分である。部分配列は、いずれの生殖系列可変および連結遺伝子セグメントが組換えられた抗体可変遺伝子に寄与したかを決定するために使用される。次に、生殖系列配列を使用して、可変領域の欠けている部分を埋める。重鎖および軽鎖のリーダ配列はタンパク質成熟の間に切断され、最終的な抗体の特性には寄与しない。欠けている配列を加えるために、クローニングしたcDNA配列を、連結またはPCR増幅によって合成オリゴヌクレオチドと組み合わせることができる。あるいは、可変領域全体を短い重複するオリゴヌクレオチドのセットとして合成し、PCR増幅によって結合して、完全に合成の可変領域クローンを作製することができる。この工程は、特定の制限部位の除去もしくは包含、または特定のコドンの最適化などのいくつかの利点を有する。
【0124】
天然配列と同一のアミノ酸コード能力を有する合成V配列を作製するために、ハイブリドーマからの重鎖および軽鎖転写物のヌクレオチド配列を使用して合成オリゴヌクレオチドの重複するセットを設計し得る。合成重鎖配列およびκ鎖配列は、3つの方法で天然配列と異なるものにすることができる:オリゴヌクレオチド合成とPCR増幅を促進するために一続きの反復するヌクレオチド塩基を中断する;コザック規則(Kozak,1991,J.Biol.Chem.266:19867-19870)に従って最適な翻訳開始部位を組み込む;およびHindIII部位を翻訳開始部位の上流に作製する。
【0125】
重鎖および軽鎖可変領域の両方について、最適化されたコード鎖および対応する非コード鎖配列を、対応する非コードオリゴヌクレオチドのほぼ中間点で30~50ヌクレオチドに分解する。したがって、各々の鎖について、オリゴヌクレオチドを、150~400ヌクレオチドのセグメントにわたる重複する二本鎖セットに構築することができる。次に、プールを鋳型として使用して、150~400ヌクレオチドのPCR増幅産物を生成する。典型的には、単一の可変領域オリゴヌクレオチドセットを2つのプールに分割し、別々に増幅して2つの重複するPCR産物を生成する。次に、これらの重複する産物をPCR増幅によって結合し、完全な可変領域を形成する。また、発現ベクター構築物に容易にクローニングできるフラグメントを生成するために、PCR増幅に重鎖または軽鎖定常領域の重複するフラグメントを含めることが望ましい場合もある。
【0126】
次に、再構築したキメラまたはヒト化重鎖および軽鎖可変領域を、クローニングしたプロモータ、リーダ、翻訳開始、定常領域、3'非翻訳、ポリアデニル化、および転写終結配列と組み合わせて発現ベクター構築物を形成する。重鎖および軽鎖発現構築物を組み合わせて単一のベクターにし、宿主細胞に同時トランスフェクト、連続トランスフェクト、または別々にトランスフェクトし、その後融合して両方の鎖を発現する宿主細胞を形成する。ヒトIgGκの発現ベクターの構築に使用するためのプラスミドを説明する。PCRで増幅したV重鎖およびVκ軽鎖cDNA配列を使用して完全な重鎖および軽鎖ミニ遺伝子を再構築できるように、プラスミドを構築することができる。これらのプラスミドを使用して、完全にヒトまたはキメラのIgG1、κまたはIgG4、κ抗体を発現させることができる。他の重鎖アイソタイプの発現、またはλ軽鎖を含む抗体の発現のために、同様のプラスミドを構築することができる。
【0127】
したがって、本発明の別の態様では、本明細書に記載の抗CLDN6抗体の構造的特徴を使用して、CLDN6への結合などの本発明の抗体の少なくとも1つの機能的特性を保持する、構造的に関連するヒト化抗CLDN6抗体を作製する。より具体的には、マウスモノクローナル抗体の1つ以上のCDR領域を、公知のヒトフレームワーク領域およびCDRと組換え的に組み合わせて、さらなる組換え操作されたヒト化抗CLDN6抗体を作製することができる。
【0128】
抗体がCLDN6に結合する能力は、標準的な結合アッセイ、例えばELISA、ウェスタンブロット法、免疫蛍光法およびフローサイトメトリ分析を使用して決定できる。
【0129】
ELISAを使用して、免疫マウスの血清中の抗体の存在、またはCLDN6タンパク質もしくはペプチドへのモノクローナル抗体の結合を実証することができる。免疫に使用されるペプチドまたはタンパク質は、ハイブリドーマ上清の特異性を決定するまたは血清力価を分析するために使用し得る。
【0130】
免疫マウスの血清中の抗体の存在または生細胞へのモノクローナル抗体の結合を実証するために、フローサイトメトリが使用できる。天然にまたはトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株と、抗原発現を欠く陰性対照(標準的な増殖条件下で増殖させた)とを、ハイブリドーマ上清または1%FBSを含むPBS中で様々な濃度のモノクローナル抗体と混合し、4℃で30分間インキュベートすることができる。洗浄後、APCまたはAlexa647標識抗IgG抗体は、一次抗体染色と同じ条件下で抗原結合モノクローナル抗体に結合できる。試料は、光および側方散乱特性を使用して単一の生細胞をゲートするFACS装置を使用したフローサイトメトリによって分析することができる。1回の測定で抗原特異的モノクローナル抗体を非特異的結合抗体から区別するために、同時トランスフェクションの方法が使用できる。抗原と蛍光マーカをコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトした細胞を、上述したように染色することができる。トランスフェクトされた細胞は、抗体で染色された細胞とは異なる蛍光チャネルで検出できる。トランスフェクト細胞の大部分が両方の導入遺伝子を発現するので、抗原特異的モノクローナル抗体は蛍光マーカ発現細胞に選択的に結合するが、非特異的抗体は非トランスフェクト細胞に同等の割合で結合する。フローサイトメトリアッセイに加えて、またはフローサイトメトリアッセイの代わりに、蛍光顕微鏡を用いた代替アッセイを使用し得る。上述したように細胞を正確に染色し、蛍光顕微鏡によって検査することができる。
【0131】
免疫マウスの血清中の抗CLDN6抗体の存在、またはCLDN6を発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を実証するために、免疫蛍光顕微鏡分析を使用できる。例えば、自発的にまたはトランスフェクション後にCLDN6を発現する細胞株およびCLDN6発現を欠く陰性対照を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mM L-グルタミン、100IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを補充したDMEM/F12培地で、標準的な増殖条件下にチャンバスライドで増殖させる。その後、細胞をメタノールもしくはパラホルムアルデヒドで固定するか、または未処理のままにすることができる。次に、細胞をCLDN6に対するモノクローナル抗体と25℃で30分間反応させることができる。洗浄後、細胞を同じ条件下でAlexa555標識抗マウスIgG二次抗体(Molecular Probes)と反応させることができる。その後、細胞を蛍光顕微鏡によって検査できる。
【0132】
細胞がメタノール固定またはパラホルムアルデヒド固定され、Triton X-100で透過処理されている場合、細胞の総CLDN6レベルを観察できる。生細胞および非透過性のパラホルムアルデヒド固定細胞では、CLDN6の表面局在を調べることができる。さらに、CLDN6の密着結合への標的化は、ZO-1などの密着結合マーカとの同時染色によって分析できる。さらに、細胞膜内の抗体結合およびCLDN6局在化の影響を調べることができる。
【0133】
抗CLDN6 IgGは、ウェスタンブロットによってCLDN6抗原との反応性についてさらに試験できる。簡単に言えば、CLDN6を発現する細胞および適切な陰性対照からの細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけることができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロース膜に転写し、ブロックし、試験するモノクローナル抗体でプローブする。IgG結合は、抗マウスIgGペルオキシダーゼを使用して検出し、ECL基質で展開することができる。
【0134】
抗CLDN6マウスIgGは、当業者に周知の方法で、例えば、通常の外科処置中に患者から得られた、または自発的にもしくはトランスフェクション後にCLDN6を発現する細胞株を接種した異種移植腫瘍を担持するマウスから得られた非癌組織または癌組織試料からの、パラホルムアルデヒドもしくはアセトン固定した凍結切片またはパラホルムアルデヒドで固定したパラフィン包埋組織切片を使用して、免疫組織化学によってCLDN6抗原との反応性についてさらに試験できる。免疫染色のために、CLDN6に反応性の抗体をインキュベートし、続いて販売者の指示に従ってホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスまたはヤギ抗ウサギ抗体をインキュベートすることができる。
【0135】
本発明の方法においてCLDN6をアッセイするための1つの特に好ましい方法は、免疫組織化学またはIHCである。免疫組織化学またはIHCとは、組織切片の細胞、例えば本明細書で言及される組織の細胞中の抗原(例えばタンパク質)を検出する工程を指す。免疫組織化学染色は、癌性腫瘍に認められるような異常細胞の診断に広く使用されている。抗体-抗原相互作用の視覚化は多くの方法で達成できる。最も一般的な例では、発色反応を触媒できるペルオキシダーゼなどの酵素に抗体を結合する。あるいは、抗体を、フルオレセインまたはローダミンなどの発蛍光団にタグ付けすることもできる。
【0136】
試料の調製は、細胞の形態、組織構造および標的エピトープの抗原性を維持するために重要である。これは、適切な組織の収集、固定および切片化を必要とする。通常、パラホルムアルデヒドが固定に使用される。実験試料の目的と厚さに応じて、関心対象の組織から薄い(約4~40μm)切片を切り出すか、または組織がそれほど厚くなく透過可能な場合は全体を使用する。切片化は通常、ミクロトームを使用して行い、切片をスライドガラスに載せる。
【0137】
試料は、脱パラフィンおよび抗原賦活化を含む、エピトープを抗体結合に利用可能にするための追加の工程を必要とし得る。Triton X-100のような界面活性剤は、表面張力を下げるために免疫組織化学で一般的に使用され、より少ない試薬を使用して試料をより良好におよびより均一にカバーすることを可能にする。
【0138】
免疫組織化学染色の直接的な方法は、染色する抗原に直接結合する1つの標識抗体を使用する。より一般的な免疫組織化学染色の間接的な方法は、プローブする抗原に対する1つの抗体と、最初の抗体に対する第2の標識抗体を使用する。
【0139】
IHCのバックグラウンド染色を低減するために、試料を、一次または二次抗体がさもなければ結合し得る反応部位をブロックする緩衝液と共にインキュベートする。一次抗体は、関心対象の抗原に対して惹起され、典型的には非結合(非標識)であるが、二次抗体は、一次抗体種の免疫グロブリンに対して惹起される。二次抗体は通常、レポータ分子を動員するビオチンなどのリンカー分子に結合するか、またはレポータ分子自体に直接結合する。一般的なブロッキング緩衝液には、正常血清、脱脂粉乳、BSAまたはゼラチン、および市販のブロッキング緩衝液が含まれる。
【0140】
レポータ分子は検出方法の性質によって異なり、最も一般的な検出方法は、それぞれ酵素および発蛍光団を介した発色および蛍光検出である。発色レポータを使用すると、酵素標識が基質と反応して、通常の光学顕微鏡で分析できる濃い色の生成物を生じる。酵素基質のリストは広範であるが、アルカリホスファターゼ(AP)およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)は、タンパク質検出の標識として最も広く使用されている2つの酵素である。発色、蛍光および化学発光基質のアレイが、DABまたはBCIP/NBTを含むいずれかの酵素と共に使用できる。蛍光レポータは、IHC検出に使用される小さな有機分子である。発色および蛍光検出法の場合、シグナルのデンシトメトリ分析は、それぞれレポータシグナルのレベルをタンパク質の発現または局在化のレベルに関連付ける、半定量および完全定量データを提供することができる。
【0141】
標的抗原の免疫組織化学染色後、一次染色を際立たせるのを助けるコントラストを提供するために、しばしば二次染色が適用される。これらの染色の多くは、別々の細胞区画または抗原に対して特異性を示すが、他の染色は細胞全体を染色する。あらゆる実験デザインに適合する膨大な数の試薬を提供するために、発色色素と蛍光色素の両方がIHCに使用できる。ヘマトキシリン、ヘキスト染色、DAPIが一般的に使用される。
【0142】
抗体によって認識されるエピトープのマッピングは、Glenn E.Morrisによる"Epitope Mapping Protocols(Methods in Molecular Biology)"ISBN-089603-375-9およびOlwyn M.R.Westwood,Frank C.Hayによる"Epitope Mapping:A Practical Approach"Practical Approach Series,248に詳述されているように実施することができる。
【0143】
本発明に関連して「免疫エフェクター機能」という用語は、腫瘍の播種および転移の抑制を含む腫瘍成長の阻害および/もしくは腫瘍発生の阻害をもたらす免疫系の成分によって媒介される任意の機能を含む。好ましくは、免疫エフェクター機能は癌細胞の死滅をもたらす。好ましくは、本発明に関連して免疫エフェクター機能は、抗体媒介エフェクター機能である。そのような機能には、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、例えば抗体の表面抗原への結合による、腫瘍関連抗原を担持する細胞のアポトーシスの誘導、例えば抗体のCD40受容体もしくはCD40リガンド(CD40L)への結合による、CD40L媒介性シグナル伝達の阻害、ならびに/または腫瘍関連抗原を担持する細胞の増殖の阻害、好ましくはADCCおよび/またはCDCが含まれる。したがって、1つ以上の免疫エフェクター機能を媒介することができる抗体は、好ましくは、CDC媒介性溶解、ADCC媒介性溶解、アポトーシス、ホモタイプ接着、および/または食作用を誘導することによって、好ましくはCDC媒介性溶解および/またはADCC媒介性溶解を誘導することによって、細胞の死滅を媒介することができる。抗体はまた、単に癌細胞の表面上の腫瘍関連抗原に結合することによって作用を及ぼし得る。例えば、抗体は、癌細胞の表面上の腫瘍関連抗原に結合するだけで、腫瘍関連抗原の機能をブロックし得るまたはアポトーシスを誘導し得る。
【0144】
ADCCは、エフェクター細胞、特にリンパ球の細胞死滅能力を表し、好ましくは抗体によって印付けられた標的細胞を必要とする。ADCCは、好ましくは、抗体が癌細胞上の抗原に結合し、抗体Fcドメインが免疫エフェクター細胞の表面上のFc受容体(FcR)に係合するときに生じる。Fc受容体のいくつかのファミリーが同定されており、特定の細胞集団は、定義されたFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、様々な程度の即時腫瘍破壊を直接誘導する機構とみなすことができ、抗原提示および腫瘍指向性T細胞応答の誘導にもつながる。好ましくは、ADCCのインビボ誘導は、腫瘍指向性T細胞応答およびさらなる宿主由来の抗体応答をもたらす。
【0145】
CDCは、抗体によって指令され得る別の細胞死滅方法である。IgMは、補体活性化のための最も有効なアイソタイプである。IgG1およびIgG3も、古典的補体活性化経路を介してCDCを指令するのに非常に有効である。好ましくは、このカスケードにおいて、抗原抗体複合体の形成は、IgG分子などの関与する抗体分子のC2ドメインにごく近接する複数のC1q結合部位の露出をもたらす(C1qは補体C1の3つのサブコンポーネントの1つである)。好ましくは、これらの露出されたC1q結合部位は、それまでの低親和性のC1q-IgG相互作用を高アビディティのものに変換し、一連の他の補体タンパク質が関与する事象のカスケードを開始させ、エフェクター細胞走化性/活性化物質C3aおよびC5aのタンパク質分解性放出をもたらす。好ましくは、補体カスケードは、細胞内へのおよび細胞外からの水と溶質の自由な通過を容易にする細胞膜の孔を作り出し、アポトーシスをもたらし得る、膜侵襲複合体を形成して終了する。
【0146】
本発明に関連して「免疫エフェクター細胞」という用語は、免疫反応中にエフェクター機能を発揮する細胞に関する。例えば、そのような細胞は、サイトカインおよび/またはケモカインを分泌し、微生物を死滅させ、抗体を分泌し、癌性細胞を認識し、場合によりそのような細胞を排除する。例えば、免疫エフェクター細胞には、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、および樹状細胞が含まれる。
【0147】
「核酸」は、本発明によれば、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、より好ましくはRNA、最も好ましくはインビトロ転写RNA(IVT RNA)または合成RNAである。核酸には、本発明によれば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子および化学合成された分子が含まれる。核酸は、本発明によれば、一本鎖または二本鎖であり、直鎖状または共有結合的に閉じて円を形成する分子の形態であってもよい。核酸は、例えばDNA鋳型からのインビトロ転写によって調製され得るRNAの形態で、細胞への導入、すなわち細胞のトランスフェクションのために使用することができる。RNAは、配列の安定化、キャッピング、およびポリアデニル化によって適用の前にさらに修飾することができる。
【0148】
本明細書に記載される核酸は、ベクターに含まれてもよい。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、プラスミドベクター、コスミドベクター、λファージなどのファージベクター、アデノウイルスもしくはバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、または細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)もしくはP1人工染色体(PAC)などの人工染色体ベクターを含む、当業者に公知の任意のベクターを含む。前記ベクターには、発現ベクターおよびクローニングベクターが含まれる。発現ベクターは、プラスミドおよびウイルスベクターを含み、一般に、所望のコード配列および特定の宿主生物(例えば細菌、酵母、植物、昆虫もしくは哺乳動物)またはインビトロ発現系における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切なDNA配列を含む。クローニングベクターは一般に、特定の所望のDNAフラグメントを操作および増幅するために使用され、所望のDNAフラグメントの発現に必要な機能的配列を欠いていてもよい。
【0149】
抗体を発現させるためのベクターとして、抗体鎖が異なるベクターに存在するベクター型、または抗体鎖が同じベクターに存在するベクター型のいずれかを使用することができる。
【0150】
本明細書で使用される場合、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」とは、β-D-リボフラノース部分の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然のRNAとは異なる改変RNAを含む。そのような改変は、例えばRNAの末端(一方もしくは両方)または内部への、例えばRNAの1つ以上のヌクレオチドでの非ヌクレオチド物質の付加を含むことができる。RNA分子中のヌクレオチドには、天然には存在しないヌクレオチドまたは化学合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準のヌクレオチドも含まれ得る。これらの改変RNAは、類似体または天然に存在するRNAの類似体と称され得る。
【0151】
本発明によれば、「RNA」という用語は、「メッセンジャーRNA」を意味する「mRNA」を含み、好ましくはこれに関し、およびDNAを鋳型として使用して産生され得、ペプチドまたはタンパク質をコードする「転写物」に関する。mRNAは、典型的には5'非翻訳領域、タンパク質またはペプチドコード領域、および3'非翻訳領域を含む。
【0152】
本発明に関連して、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される過程に関する。
【0153】
本発明に従って記述される核酸は、好ましくは単離されている。「単離された核酸」という用語は、本発明によれば、核酸が、(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってインビトロで増幅された、(ii)クローニングによって組換え生産された、(iii)例えば切断およびゲル電気泳動によって精製された、または(iv)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。単離された核酸は、組換えDNA技術による操作に利用可能な核酸である。
【0154】
核酸は、本発明によれば、単独で、または同種でも異種でもよい他の核酸と組み合わせて存在し得る。好ましい実施形態では、核酸は、前記核酸に対して同種でも異種でもよい発現制御配列に機能的に連結されている。「同種」という用語は、核酸が天然でも機能的に自然に連結されていることを意味し、「異種」という用語は、核酸が天然では機能的に連結されていないことを意味する。
【0155】
核酸および発現制御配列は、前記核酸の発現または転写が前記発現制御配列の制御下または影響下にあるように互いに共有結合で連結されている場合、互いに「機能的に」連結されている。核酸が、コード配列に機能的に連結された発現制御配列を用いて機能的タンパク質に翻訳される場合、前記発現制御配列の誘導は、コード配列にフレームシフトを引き起こすことなく、または前記コード配列が所望のタンパク質もしくはペプチドに翻訳されるのを不可能にすることなく、前記核酸の転写をもたらす。
【0156】
「発現制御配列」または「発現制御エレメント」という用語は、本発明によれば、プロモータ、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子の転写またはmRNAの翻訳を調節する他の制御エレメントを含む。本発明の特定の実施形態では、発現制御配列を調節することができる。発現制御配列の正確な構造は、種または細胞型に応じて異なり得るが、一般に、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などの、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5'非転写配列ならびに5'および3'非翻訳配列を含む。より具体的には、5'非転写発現制御配列は、機能的に連結された核酸の転写制御のためのプロモータ配列を含むプロモータ領域を含む。発現制御配列は、エンハンサー配列または上流活性化配列も含み得る。
【0157】
本発明によれば、「プロモータ」または「プロモータ領域」という用語は、発現される核酸配列の上流(5'側)に位置し、RNA-ポリメラーゼのための認識および結合部位を提供することによって配列の発現を制御する核酸配列に関する。「プロモータ領域」は、遺伝子の転写の調節に関与するさらなる因子のためのさらなる認識および結合部位を含み得る。プロモータは、原核生物または真核生物遺伝子の転写を制御し得る。さらに、プロモータは「誘導性」であり得、誘導剤に応答して転写を開始し得るか、または転写が誘導剤によって制御されない場合は「構成的」であり得る。誘導性プロモータの制御下にある遺伝子は、誘導剤が存在しない場合、発現されないか、またはわずかな程度しか発現されない。誘導剤の存在下では、遺伝子のスイッチが入るか、または転写のレベルが上昇する。これは一般に、特定の転写因子の結合によって媒介される。
【0158】
本発明による好ましいプロモータには、SP6、T3およびT7ポリメラーゼのプロモータ、ヒトU6 RNAプロモータ、CMVプロモータ、ならびに1つまたは複数の部分が、例えばヒトGAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)などの他の細胞タンパク質の遺伝子のプロモータの一部または複数の部分に融合しており、追加のイントロン(1つまたは複数)を含むまたは含まない、それらの人工ハイブリッドプロモータ(例えばCMV)が含まれる。
【0159】
「発現」という用語は、本明細書ではその最も広い意味で使用され、RNAの産生、またはRNAとタンパク質もしくはペプチドの産生を含む。RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、特にペプチドまたはタンパク質の産生に関する。発現は、一過性であるかまたは安定であり得る。本発明によれば、発現という用語は、「異所性発現」または「異常発現」も含む。
【0160】
「異所性発現」または「異常発現」とは、本発明によれば、参照、例えば特定のタンパク質、例えば腫瘍関連抗原の異所性発現または異常発現に関連する疾患を有していない被験体の状態と比較して、発現が変化している、好ましくは増加していることを意味する。発現の増加とは、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、または少なくとも100%、またはそれ以上の増加を指す。一実施形態では、発現は疾患組織でのみ認められ、健常組織での発現は抑制されている。
【0161】
「特異的に発現される」という用語は、タンパク質が本質的に特定の組織または器官でのみ発現されることを意味する。例えば、胃粘膜で特異的に発現される腫瘍関連抗原は、前記タンパク質が主に胃粘膜で発現され、他の組織では発現されないかまたは他の組織もしくは器官型では有意な程度に発現されないことを意味する。したがって、胃粘膜の細胞で独占的に発現され、他の組織では有意に少ない程度に発現されるタンパク質は、胃粘膜の細胞で特異的に発現される。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原はまた、通常の条件下では2つ以上の組織型または器官で、例えば2つまたは3つの組織型または器官で、しかし好ましくは3つ以下の異なる組織または器官型で特異的に発現され得る。この場合、腫瘍関連抗原はこれらの器官で特異的に発現される。
【0162】
本発明による「翻訳」という用語は、メッセンジャーRNAの鎖が、タンパク質またはペプチドを作製するようにアミノ酸の配列の構築を指令する、細胞のリボソームにおける過程に関する。
【0163】
本発明によれば、「~をコードする核酸」という用語は、核酸が、適切な環境、好ましくは細胞内に存在する場合、それがコードするタンパク質またはペプチドを産生するように発現され得ることを意味する。
【0164】
「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合によって共有結合で連結された2個以上、好ましくは3個以上、好ましくは4個以上、好ましくは6個以上、好ましくは8個以上、好ましくは9個以上、好ましくは10個以上、好ましくは13個以上、好ましくは16個以上、好ましくは21個以上、および好ましくは8、10、20、30、40または50個、特に100個までのアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは100個を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に「ペプチド」と「タンパク質」という用語は同義語であり、本明細書では互換的に使用される。
【0165】
好ましくは、本発明に従って記述されるタンパク質およびペプチドは単離されている。「単離されたタンパク質」または「単離されたペプチド」という用語は、タンパク質またはペプチドがその自然環境から分離されていることを意味する。単離されたタンパク質またはペプチドは、本質的に精製された状態であり得る。「本質的に精製された」という用語は、タンパク質またはペプチドが、それが自然界でまたはインビボで結合している他の物質を本質的に含まないことを意味する。
【0166】
特定のアミノ酸配列、例えば配列表に示されているものに関して本明細書で与えられる教示は、前記特定配列と機能的に等価である配列、例えば前記特定のアミノ酸配列の特性と同一または類似の特性を示すアミノ酸配列をもたらす前記特定の配列の修飾、すなわち変異体にも関連すると解釈されるべきである。1つの重要な特性は、抗体の標的への結合を保持することである。好ましくは、特定の配列に関して修飾された配列は、抗体中の特定の配列を置換する場合、前記抗体の標的への結合を保持する。
【0167】
特にCDR配列、超可変領域および可変領域の配列は、標的に結合する能力を失うことなく修飾できることが当業者には理解されるであろう。例えば、CDR配列は、本明細書で特定されるCDR配列と同一または高度に相同である。
【0168】
「高度に相同」により、1~5個、好ましくは1~4個、例えば1~3個または1もしくは2個の置換を行い得ることが企図される。
【0169】
本発明による「変異体」という用語は、突然変異体、スプライス変異体、立体配座変異体、アイソフォーム、対立遺伝子変異体、種変異体および種ホモログ、特に天然に存在するものも含む。対立遺伝子変異体は、遺伝子の正常な配列の変化に関連するが、その重要性はしばしば不明である。完全な遺伝子配列決定は、しばしば所与の遺伝子の多数の対立遺伝子変異体を同定する。種ホモログは、所与の核酸配列またはアミノ酸配列のものとは異なる種を起源とする核酸配列またはアミノ酸配列である。
【0170】
本発明の目的のために、アミノ酸配列の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。
【0171】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列中に1個または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1個以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、結果として生じる産物の適切なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。
【0172】
アミノ酸付加変異体は、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合を含む。
【0173】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失はタンパク質の任意の位置にあってよい。
【0174】
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。修飾が、相同なタンパク質もしくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列の位置にあること、および/またはアミノ酸を類似の性質を有する他のアミノ酸で置換することが好ましい。好ましくは、タンパク質変異体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち同様に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化には、その側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換が含まれる。天然に存在するアミノ酸は一般に、酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸の4つのファミリーに分類される。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。
【0175】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%であるアミノ酸領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、または約200個のアミノ酸、好ましくは連続するアミノ酸について与えられる。好ましい実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最適な配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を使用して行うことができる。
【0176】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸の割合を示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、これらの配列間で同一であるアミノ酸の割合を示す。
【0177】
「同一性パーセント」という用語は、最適なアラインメント後に得られる、比較する2つの配列間で同一であるアミノ酸残基の割合を示すことが意図されており、この割合は純粋に統計的であり、2つの配列間の相違はそれらの全長にわたってランダムに分布している。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、通常、これらの配列を最適に整列させた後に比較することによって行われ、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するためにセグメントごとにまたは「比較ウィンドウ」ごとに行われる。比較のための配列の最適なアラインメントは、手作業に加えて、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成され得る。
【0178】
同一性パーセントは、比較する2つの配列間で同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数で除し、得られた結果に100を乗じて、これら2つの配列間の同一性パーセントを得ることによって計算される。
【0179】
相同なアミノ酸配列は、本発明によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を示す。
【0180】
本明細書に記載のアミノ酸配列変異体は、例えば組換えDNA操作により、当業者によって容易に調製され得る。置換、付加、挿入または欠失を有するタンパク質およびペプチドを調製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al.(1989)に詳細に記載されている。さらに、本明細書に記載のペプチドおよびアミノ酸変異体は、例えば固相合成および類似の方法などによる公知のペプチド合成技術を用いて容易に調製され得る
【0181】
本発明は、「ペプチド」および「タンパク質」という用語に含まれる本明細書に記載のペプチドまたはタンパク質の誘導体を含む。本発明によれば、タンパク質およびペプチドの「誘導体」は、タンパク質およびペプチドの修飾形態である。そのような修飾には、任意の化学修飾が含まれ、ならびに炭水化物、脂質および/またはタンパク質またはペプチドなどのタンパク質またはペプチドに関連する任意の分子の単一または複数の置換、欠失および/または付加が含まれる。一実施形態では、タンパク質またはペプチドの「誘導体」には、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミトイル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護基/ブロッキング基の導入、タンパク質分解切断、または抗体もしくは別の細胞リガンドへの結合から生じる修飾類似体が含まれる。「誘導体」という用語はまた、前記タンパク質およびペプチドのすべての機能的な化学的等価物に及ぶ。好ましくは、修飾ペプチドは、増加した安定性および/または増加したもしくは減少した免疫原性を有する。
【0182】
本発明によれば、アミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質の変異体、誘導体、修飾形態、フラグメント、一部または部分は、好ましくは、それぞれ、それが由来するアミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質の機能的特性を有する、すなわち機能的に等価である。一実施形態では、アミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質の変異体、誘導体、修飾形態、フラグメント、一部または部分は、それぞれ、それが由来するアミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質と免疫学的に等価である。一実施形態では、機能的特性は免疫学的特性である。
【0183】
「由来する」という用語は、本発明によれば、特定の実体、特に特定の配列が、それが由来する物体、特に生物または分子中に存在することを意味する。アミノ酸配列、特に特定の配列領域の場合、「由来する」は、特に、関連するアミノ酸配列が、それが存在するアミノ酸配列に由来することを意味する。
【0184】
「細胞」または「宿主細胞」という用語は、好ましくは無傷の細胞、すなわち酵素、細胞小器官、または遺伝物質などのその正常な細胞内成分を放出していない無傷の膜を有する細胞である。無傷の細胞は、好ましくは生存可能な細胞、すなわちその正常な代謝機能を実行することができる生細胞である。「細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えば大腸菌)または真核細胞(例えば樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、HEK293細胞、HELA細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、および霊長動物からの細胞などの哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は、多数の組織型に由来し、一次細胞および細胞株を含み得る。「細胞」という用語には、非癌性細胞および本明細書に開示されている癌型の細胞などの癌細胞が含まれる。
【0185】
核酸分子を含む細胞は、好ましくは核酸によってコードされるペプチドまたはタンパク質を発現する。
【0186】
「標的細胞」とは、抗体などの免疫応答などの免疫応答の標的である細胞を意味する。標的細胞には、本明細書に記載の癌細胞などの望ましくない細胞が含まれる。好ましい実施形態では、標的細胞はCLDN6を発現する細胞である。CLDN6を発現する細胞には、典型的には癌細胞が含まれる。
【0187】
「トランスジェニック動物」という用語は、1つ以上の導入遺伝子、好ましくは抗体重鎖および/または軽鎖導入遺伝子、または導入染色体(動物の天然ゲノムDNAに組み込まれているもしくは組み込まれていない)を含むゲノムを有し、好ましくは導入遺伝子を発現することができる動物を指す。例えば、トランスジェニックマウスは、マウスが、CLDN6抗原および/またはCLDN6を発現する細胞で免疫化された場合、ヒト抗CLDN6抗体を産生するように、ヒト軽鎖導入遺伝子と、ヒト重鎖導入遺伝子またはヒト重鎖導入染色体のいずれかを有し得る。ヒト重鎖導入遺伝子は、トランスジェニックマウス、例えばHCo7またはHCol2マウスなどのHuMAbマウスの場合のように、マウスの染色体DNAに組み込まれ得るか、またはヒト重鎖導入遺伝子は、国際公開第02/43478号に記載されているトランスクロモソーマル(例えばKM)マウスの場合のように、染色体外に維持され得る。そのようなトランスジェニックおよびトランスクロモソーマルマウスは、V-D-J組換えおよびアイソタイプスイッチングを受けることにより、CLDN6に対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプ(例えばIgG、IgAおよび/またはIgE)を産生することができる可能性がある。
【0188】
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価なアミノ酸配列などの免疫学的に等価な分子が、例えば体液性免疫反応の誘導、誘導される免疫反応の強さおよび/もしくは持続時間、または免疫反応の特異性などの免疫学的作用の種類に関して、同じもしくは本質的に同じ免疫学的特性を示し、および/または同じもしくは本質的に同じ免疫学的作用を及ぼすことを意味する。本発明に関連して、「免疫学的に等価」という用語は、好ましくは、免疫化に使用されるペプチドもしくはペプチド変異体または抗体の免疫学的作用または特性に関して使用される。特定の免疫学的特性は、抗体に結合し、適切な場合には、好ましくは抗体の生成を刺激することによって、免疫応答を生成する能力である。例えば、アミノ酸配列が被験体の免疫系に暴露されたとき、CLDN6の一部を形成する参照アミノ酸配列などの参照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応、好ましくは抗体を誘導する場合、前記アミノ酸配列は参照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。
【0189】
本発明は、試料中のCLDN6抗原の存在を検出する、またはCLDN6抗原の量を測定する方法であって、試料および場合により対照試料を、CLDN6に結合する本発明の抗体と、抗体とCLDN6との間の複合体の形成を可能にする条件下で接触させることを含む方法を提供する。次いで、複合体の形成を検出し、対照試料と比較した試料との間の複合体形成の差が試料中のCLDN6抗原の存在を示す。
【0190】
上記の方法は、特に、癌疾患、例えば本明細書に記載の癌疾患などのCLDN6関連疾患を診断するのに有用である。好ましくは、参照試料または対照試料中のCLDN6の量よりも多い試料中のCLDN6の量は、試料が由来する被験体、特にヒトにおけるCLDN6関連疾患の存在を示す。
【0191】
上記の方法で使用される場合、本明細書に記載の抗体は、(i)検出可能なシグナルを提供する;(ii)第2標識と相互作用して、第1標識もしくは第2標識によって提供される検出可能なシグナル、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)を変化させる;(iii)電荷、疎水性、形状もしくは他の物理的パラメータによって移動度、例えば電気泳動移動度に影響を及ぼす;または(iv)捕捉部分、例えば親和性、抗体/抗原もしくはイオン錯体形成を提供する、ように機能する標識と共に提供され得る。標識として適切であるのは、蛍光標識、発光標識、発色団標識、放射性同位体標識、同位体標識、好ましくは安定同位体標識、同重体標識、酵素標識、粒子標識、特に金属粒子標識、磁性粒子標識、ポリマー粒子標識、ビオチンなどの有機低分子、細胞接着タンパク質またはレクチンなどの受容体のリガンドまたは結合分子、結合剤の使用によって検出できる核酸および/またはアミノ酸残基を含む標識配列などの構造体である。標識には、非限定的に、硫酸バリウム、イオセタム酸、イオパノ酸、カルシウムイポデート、ジアトリゾ酸ナトリウム、ジアトリゾ酸メグルミン、メトリザミド、チロパノ酸ナトリウム、ならびにフッ素18および炭素11などの陽電子放射体、ヨウ素123、テクネチウム99m、ヨウ素131およびインジウム111などのγ放射体、フッ素およびガドリニウムなどの核磁気共鳴用の核種を含む放射性診断物質が含まれる。
【0192】
本発明によれば、参照試料または参照生物などの「参照」は、試験試料または試験生物から本発明の方法で得られた結果を関連付け、比較するために使用し得る。典型的には、参照生物は健常生物、特に癌疾患などの疾患に罹患していない生物である。「参照値」または「参照レベル」は、十分に多数の参照を測定することによって参照から経験的に決定できる。好ましくは、参照値は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも50、または好ましくは少なくとも100の参照を測定することによって決定される。
【0193】
本明細書で使用される「低減する」または「阻害する」という用語は、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上のレベルの全体的な減少を生じさせる能力に関する。「阻害する」という用語または同様の語句には、完全なまたは本質的に完全な阻害、すなわちゼロまたは本質的にゼロへの低減が含まれる。
【0194】
「増加する」または「増強する」などの用語は、好ましくは、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも100%の増加または増強に関する。
【0195】
本明細書に記載される作用物質、組成物および方法は、疾患を有する被験体を診断するために使用できる。診断できる疾患には、CLDN6を発現するすべての疾患が含まれる。特に好ましい疾患は、本明細書に記載の癌疾患などの癌疾患である。
【0196】
本発明によれば、「疾患」という用語は、癌疾患、特に本明細書に記載の癌疾患の形態を含む、あらゆる病理学的状態を指す。
【0197】
「正常組織」または「正常状態」という用語で使用される「正常」という用語は、健常組織または健常被験体における状態、すなわち非病的状態を指し、「健常」とは、好ましくは非癌性を意味する。
【0198】
「CLDN6を発現する細胞が関与する疾患」とは、本発明によれば、CLDN6が疾患組織または器官の細胞で発現されることを意味する。一実施形態では、CLDN6の発現は、健常組織または器官における状態と比較して増加している。増加とは、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%、またはさらにそれ以上の増加を指す。一実施形態では、発現は疾患組織でのみ認められ、健常組織での発現は抑制されている。本発明によれば、CLDN6を発現する細胞が関与するまたは関連する疾患には、癌疾患、特に本明細書に記載の癌の形態が含まれる。
【0199】
本発明によれば、「腫瘍」または「腫瘍疾患」という用語は、細胞(新生細胞または腫瘍細胞と呼ばれる)の異常な成長によって形成される腫脹または病変を指す。「腫瘍細胞」とは、急速な制御されない細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常な細胞を意味する。腫瘍は、構造機構および正常組織との機能的協調の部分的または完全な欠如を示し、通常、良性、前悪性または悪性のいずれかであり得る明確な組織塊を形成する。
【0200】
良性腫瘍は、癌の3つの悪性特性すべてを欠く腫瘍である。したがって、定義により、良性腫瘍は無限に攻撃的に成長することはなく、周囲の組織に浸潤せず、隣接していない組織に広がる(転移する)ことはない。良性腫瘍の一般的な例には、母斑および子宮筋腫が含まれる。
【0201】
「良性」という用語は、軽度で非進行性の疾患を意味し、実際に、多くの種類の良性腫瘍が健康に無害である。しかし、癌の侵襲特性を欠くために「良性腫瘍」と定義される一部の新生物は、依然として健康に悪影響を及ぼし得る。この例には、「質量効果」(血管などの生命維持に不可欠な重要器官の圧迫)を引き起こす腫瘍、または特定のホルモンを過剰産生し得る内分泌組織の「機能的」腫瘍(例には、甲状腺腺腫、副腎皮質腺腫、および下垂体腺腫が含まれる)が含まれる。
【0202】
良性腫瘍は、典型的には悪性に挙動する能力を阻害する外表面に囲まれている。場合によっては、特定の「良性」腫瘍が後に悪性腫瘍を引き起こす可能性があり、これは、腫瘍の新生細胞の亜集団におけるさらなる遺伝的変化から生じる。この現象の顕著な例は、結腸癌の重要な前駆体である結腸ポリープの一般的な種類である、管状腺腫である。管状腺腫の細胞は、しばしば癌に進行する大部分の腫瘍のように、集合的に異形成として知られる細胞の成熟と外観の特定の異常を示す。これらの細胞異常は、まれにしかまたは決して癌になることのない良性腫瘍では見られないが、子宮頸部の前癌病変などの個別の腫瘤を形成しない他の前癌組織異常で見られる。一部の関係当局は、異形成性腫瘍を「前悪性」と称することを好み、「良性」という用語をまれにしかまたは決して癌を引き起こさない腫瘍のために留保する。
【0203】
新生物は、新形成の結果としての異常な組織塊である。新形成(ギリシャ語の新成長)は、細胞の異常な増殖である。細胞の成長は、その周囲の正常組織の成長を上回り、正常組織と協調しない。成長は、刺激の停止後も同じ過剰な方法で持続する。通常、しこりまたは腫瘍を引き起こす。新生物は、良性、前悪性または悪性であり得る。
【0204】
本発明による「腫瘍の成長」または「腫瘍成長」は、腫瘍がそのサイズを増加させる傾向および/または腫瘍細胞が増殖する傾向に関する。
【0205】
癌(医学用語:悪性新生物)は、細胞の群が制御されない成長(通常の限界を超えた分裂)、浸潤(隣接組織への侵入と破壊)、および時には転移(リンパまたは血液を介した身体の他の場所への広がり)を示す疾患のクラスである。癌のこれらの3つの悪性特性は、自己制限されており、浸潤も転移もしない良性腫瘍から癌を区別する。ほとんどの癌は腫瘍を形成するが、白血病のように一部の癌は腫瘍を形成しない。本発明によれば、「癌」および「腫瘍」または「癌疾患」および「腫瘍疾患」という用語は、本明細書では一般に互換的に使用され、細胞が制御されない成長ならびに場合により浸潤および/または転移を示す疾患を指す。
【0206】
好ましくは、本発明による「癌疾患」は、CLDN6を発現する細胞を特徴とする。CLDN6を発現する細胞は、好ましくは癌細胞であり、好ましくは本明細書に記載の腫瘍および癌の癌細胞である。好ましくは、そのような細胞は胎盤細胞以外の細胞である。
【0207】
癌は、腫瘍に類似した細胞の種類によって、したがって腫瘍の起源と推定される組織によって分類される。これらは、それぞれ組織学と場所である。
【0208】
本発明による「癌」という用語には、白血病、セミノーマ、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸癌、肝臓癌、結腸癌、胃癌、腸癌、頭頸部癌、消化器癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、および肺癌、ならびにそれらの転移が含まれる。それらの例は、肺癌腫、乳房癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、腎細胞癌腫、子宮頸癌腫、または上記の癌型もしくは腫瘍の転移である。本発明による癌という用語は、癌転移も含む。
【0209】
肺癌の主な種類は、小細胞肺癌(SCLC)と非小細胞肺癌(NSCLC)である。非小細胞肺癌には、扁平上皮肺癌、腺癌および大細胞肺癌の3つの主要なサブタイプがある。腺癌は肺癌の約10%を占める。この癌は通常、肺の末梢部に見られ、これに対し小細胞肺癌および扁平上皮肺癌は、どちらもより中心部に位置する傾向がある。
【0210】
本発明によれば、「癌腫」は上皮細胞に由来する悪性腫瘍である。この群は、乳癌、前立腺癌、肺癌および結腸癌の最も一般的な形態を含む、最も一般的な癌である。
【0211】
「腺癌」は、腺組織に発生する癌である。この組織はまた、上皮組織として知られるより大きな組織カテゴリーの一部である。上皮組織には、皮膚、腺、および体腔と身体器官の内側を覆う様々な他の組織が含まれる。上皮は、発生学的には外胚葉、内胚葉および中胚葉に由来する。腺癌として分類されるために、細胞は、分泌特性を有する限り、必ずしも腺の一部である必要はない。この形態の癌腫は、ヒトを含む一部の高等哺乳動物で発生し得る。十分に分化した腺癌は、それらが由来する腺組織に類似する傾向があるが、十分に分化していないものはその傾向がない場合もある。病理学者は、生検から細胞を染色することによって、腫瘍が腺癌であるかまたは何らかの他の種類の癌であるかを決定する。腺癌は、体内の腺の遍在性のために、身体の多くの組織で発生し得る。各腺は同じ物質を分泌していない可能性があるが、細胞への外分泌機能がある限り、腺とみなされ、したがってその悪性形態は腺癌と命名される。悪性腺癌は他の組織に浸潤し、転移するのに十分な時間があればしばしば転移する。卵巣腺癌は、最も一般的な種類の卵巣癌である。卵巣腺癌には、漿液性および粘液性腺癌、明細胞腺癌ならびに類内膜腺癌が含まれる。
【0212】
「転移」とは、癌細胞がその元の部位から身体の別の部位に広がることを意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発性腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、体腔および脈管に進入するための内皮基底膜の貫通、次いで血液によって輸送された後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位での新しい腫瘍、すなわち二次性腫瘍または転移性腫瘍の成長は、血管新生に依存する。腫瘍転移は、腫瘍細胞または成分が残存して転移能を発現し得るため、しばしば原発性腫瘍の除去後にも起こる。一実施形態では、本発明による「転移」という用語は、原発性腫瘍および所属リンパ節系から離れた転移に関する「遠隔転移」に関する。
【0213】
二次性腫瘍または転移性腫瘍の細胞は、元の腫瘍の細胞に類似する。これは、例えば卵巣癌が肝臓に転移した場合、二次性腫瘍は、異常な肝細胞ではなく、異常な卵巣細胞で構成されることを意味する。そこで、肝臓の腫瘍は、肝臓癌ではなく転移性卵巣癌と呼ばれる。
【0214】
再発または回帰は、人が過去に罹患した状態に再び罹患する場合に起こる例えば、患者が腫瘍性疾患に罹患したことがあり、前記疾患の治療を受けて成功し、前記疾患を再び発症する場合、前記新たに発症した疾患は再発または回帰とみなされ得る。しかし、本発明によれば、癌疾患の再発または回帰は、元の癌疾患の部位でも起こり得るが、必ずしもそうとは限らない。したがって、例えば、患者が卵巣腫瘍に罹患し、治療を受けて成功した場合、再発または回帰は、卵巣腫瘍の発生または卵巣とは異なる部位での腫瘍の発生であり得る。腫瘍の再発または回帰には、腫瘍が元の腫瘍の部位とは異なる部位で発生する状況および元の腫瘍の部位で発生する状況も含まれる。好ましくは、患者が治療を受けた元の腫瘍は原発性腫瘍であり、元の腫瘍の部位とは異なる部位の腫瘍は二次性腫瘍または転移性腫瘍である。
【0215】
「治療する」とは、被験体の腫瘍の大きさまたは腫瘍の数を減らすことを含む、疾患を予防または排除する;被験体の疾患を停止させるまたは遅らせる;被験体の新たな疾患の発症を抑制するまたは遅らせる;現在疾患を有しているまたは以前に有していたことがある被験体の症状および/または再発の頻度または重症度を低下させる;ならびに/または被験体の寿命を延長、すなわち増加させるために、被験体に化合物または組成物を投与することを意味する。
【0216】
特に、「疾患の治療」という用語は、疾患またはその症状の治癒、持続期間の短縮、改善、予防、進行もしくは悪化の減速もしくは阻害、または発症の予防もしくは遅延を含む。
【0217】
「危険性がある」とは、一般集団と比較して、疾患、特に癌を発症する可能性が通常よりも高いと同定される被験体、すなわち患者を意味する。さらに、疾患、特に癌を有していたことがある、または現在有している被験体は、引き続き疾患を発症する可能性があるため、疾患を発症する危険性が高い被験体である。現在癌を有している、または有していたことがある被験体は、癌転移の危険性も高い。
【0218】
「免疫療法」という用語は、特異的免疫反応を含む治療に関する。
【0219】
本発明に関連して、「保護する」、「予防する」、「予防的」、「防止的」または「保護的」などの用語は、被験体における疾患の発症および/または伝播の予防または治療またはその両方、特に被験体が疾患を発症する可能性を最小限に抑えるまたは疾患の発症を遅らせることに関する。例えば、上記のように、腫瘍の危険性がある人は、腫瘍を予防する治療法の候補者になる。免疫療法は、作用物質が患者から抗原発現細胞を除去するように機能する様々な技術のいずれかを使用して実施し得る。
【0220】
特定の実施形態では、免疫療法は能動免疫療法であり得、治療は、免疫応答調節剤(免疫反応性ペプチドおよび核酸など)の投与により疾患細胞に対して反応する内因性宿主免疫系のインビボ刺激に依存する。
【0221】
他の実施形態では、免疫療法は受動免疫療法であり得、治療は、直接または間接的に抗腫瘍作用を媒介することができ、必ずしも無傷の宿主免疫系に依存しない確立された腫瘍免疫反応性を有する作用物質(例えばエフェクター細胞)の送達を含む。
【0222】
「インビボ」という用語は、被験体における状況に関する。
【0223】
「被験体」、「個体」、「生物」または「患者」という用語は互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物に関する。例えば、本発明に関連して哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長動物、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマなどの飼いならされた動物、マウス、ラット、ウサギ、モルモットなどの実験動物、ならびに動物園の動物などの捕らわれている動物である。本明細書で使用される「動物」という用語には、ヒトも含まれる。「被験体」という用語は、疾患、好ましくは本明細書に記載の疾患を有する患者、すなわち動物、好ましくはヒトも含み得る。
【0224】
本発明によれば、「試料」は、本発明に従って有用な任意の試料、特に体液を含む組織試料、および/または細胞試料などの生物学的試料であり得、従来の方法で、例えばパンチ生検を含む組織生検によって、および血液、気管支吸引液、痰、尿、糞便または他の体液を採取することによって入手し得る。本発明によれば、「試料」という用語には、生物学的試料の画分または単離物などの処理された試料、例えば核酸およびペプチド/タンパク質単離物も含まれる。好ましくは、試料は、検査される、例えば癌について診断される器官の細胞または組織を含む。例えば、診断される癌が肺癌である場合、試料には、肺から得られた細胞または組織が含まれる。
【0225】
本発明によれば、試料は、腫瘍または癌細胞を含むかまたは含むと予想される、患者に由来する身体試料などの任意の試料であり得る。身体試料は、血液などの任意の組織試料、原発性腫瘍もしくは腫瘍転移から得られた組織試料、または腫瘍もしくは癌細胞を含む他の任意の試料であり得る。
【0226】
本発明を以下の図面および実施例によって詳細に説明するが、これらは例示目的のみに使用するものであり、限定することを意図しない。説明および実施例によって、同様に本発明に含まれるさらなる実施形態が当業者にアクセス可能である。
【実施例0227】
本明細書で使用される技術および方法は、本明細書に記載されているか、またはそれ自体公知の方法で、例えばSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に記載されているように実施される。キットおよび試薬の使用を含むすべての方法は、特に指示がない限り、製造者の情報に従って実施される。
【0228】
[実施例1]
材料および方法
抗体結合部位のマッピング(図4A
抗体によって認識されるエピトープのマッピングは、Glenn E.Morris ISBN-089603-375-9による"Epitope Mapping Protocols(Methods in Molecular Biology)"およびOlwyn M.R.Westwood,Frank C.Hayによる"Epitope Mapping:A Practical Approach"Practical Approach Series 248に詳述されているように実施することができる。
【0229】
ビオチン化ペプチドによるエピトープマッピング(図4B
モノクローナルマウスリード抗体およびIBLからのポリクローナルウサギ血清の抗体結合部位を同定するためにペプチドELISAを実施した。CLDN6のC末端配列をカバーするビオチン化重複ペプチドをSA被覆プレートに結合した。精製mumAB(1μg/ml)またはIBLウサギ血清(1μg/ml)を抗原被覆ELISAプレートに適用し、結合していない抗体を洗い流した。結合抗体を、対応する酵素標識二次抗体(アルカリホスファターゼヤギ抗マウスIgG(1+2a+2b+3)またはアルカリホスファターゼヤギ抗ウサギIgG F(ab)2)およびABTS酵素基質を用いて検出し、シグナル強度を分析した。
【0230】
mumAB 58-4B-2とウサギ血清(IBL)のシグナル強度を比較するために、C末端ペプチド19への抗体の最大結合を100%と定義した。
【0231】
1つのペプチドへの各抗体の結合強度を、独立して各試験系(マウスまたはウサギ)の最大結合と比較して計算した。
【0232】
mumABの結合を3つの独立した実験で三重に分析した。
IBL血清の結合を2つの独立した実験で三重に分析した。
【0233】
アイソタイプ決定
精製抗体のアイソタイプを決定するために、IsoStrip Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(Roche、カタログ番号1493027)を製造者によって説明されているように使用した。
【0234】
ウェスタンブロット法
新しく作製した抗CLDN6 IgGを、ウェスタンブロットによってCLDN6抗原への特異的結合についてさらに試験することができる。簡単に言えば、CLDN3、4、6または9を発現する細胞からの細胞抽出物および適切な陰性対照を調製し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけることができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロース膜に転写し、ブロックし、試験するモノクローナル抗体でプローブする。IgG結合は、抗マウスIgGペルオキシダーゼを使用して検出し、ECL基質で展開することができる。
【0235】
組織学
4%緩衝ホルマリン固定パラフィン包埋組織試料の免疫組織化学(IHC)をスライドガラス上で実施した。パラフィン包埋は、標準的なプロトコルに従って実施した。
【0236】
脱パラフィンおよび再水和後、すべてのスライドガラスを、15mMアジ化ナトリウムを補充した0.1Mトリス/0.01M EDTA緩衝液(pH9.0)中95~98°Cで30分間煮沸することによって抗原回復に供し、その後15mM NaNを補充した3%Hを添加して内因性ペルオキシダーゼをクエンチした。0.05%(w/v)Tween-20および0.005%(w/v)プロクリンを補充した150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.6)で洗浄した後、スライドガラスを1.0または5.0μg/mlの診断用モノクローナルマウス抗CLDN6抗体58-4Bと共に室温で1時間インキュベートした。ポリマーベースのホースラディッシュペルオキシダーゼ標識二次抗体(Histofine MAX PO(M)/UIO MAX PO(M)、Nichirei,Japan)を含むすぐに使用できる溶液を使用して抗体結合を視覚化した。その後、切片をマイヤーのヘマトキシリン(Carl Roth GmbH,Karlsruhe,Germany)で対比染色し、評価者による評価に供した。
【0237】
組織学的評価
すべての試料を、各切片のすべての目に見える腫瘍細胞に対する陽性染色腫瘍細胞の相対的割合について分析した。染色の強度を陰性(-)、弱陽性(1+)、中陽性(2+)および強陽性(3+)に分類した。膜染色のみを陽性とみなした。卵巣癌組織が各染色の陽性対照としての役割を果たした。さらに、妊娠29日目のニュージーランド白ウサギの胚腎組織は、強い陽性染色強度を示すことが認められた。これを染色陽性度(2+~3+)の内部染色強度基準として使用した。
【0238】
[実施例2]
モノクローナル抗体の作製
この計画の目的は、卵巣癌または原発性腹膜腫瘍またはファロピウス管腫瘍FFPE組織を含む組織学の他の癌組織においてCLDN6発現腫瘍細胞を検出できるマウスモノクローナルCLDN6特異的抗体を作製することであった。
【0239】
高度に特異的で高親和性の診断用CLDN6抗体を作製するために、様々な異なる免疫原(表1)とアジュバントを用いた免疫プロトコルを開始することが不可欠であった。この計画の間に、約130匹のマウス(C57BL/6およびBALB/c)を、α-CLDN6免疫応答を誘発するための様々な免疫化戦略に供した(表2)。
【0240】
マウス免疫系を始動させ、免疫寛容を克服するために、ペプチド複合体およびアフィニティ精製を促進する種々のエピトープを有する組換え融合タンパク質として発現されるヒトCLDN6の異なる部分をコードする組換えタンパク質(ポリヒスチジン(HIS)タグおよびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグ)を使用した(表1)。
【0241】
20種類の異なる免疫戦略のうちで、様々なアジュバント(表2)と組み合わせたGSTタグ付きCLDN6 C末端組換えタンパク質でマウスを処理することによって最良の結果が達成された(表2)。
【0242】
融合の日に、マウス脾細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株P3X63Ag8.653(ATCC)に融合した。マウス細胞の骨髄腫細胞株への融合のために、Kohlerand Milstein 1975によって公表された標準プロトコルに従った。ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)選択の後、免疫に使用した抗原を認識する抗体の分泌について上清をELISAで試験した。
【0243】
69の融合を実施し、25,000を超えるハイブリドーマ細胞クローンをスクリーニングした。ELISA陽性上清のハイブリドーマ細胞(402個)をサブクローニングして、モノクローナルハイブリドーマを作製した。サブクローニングしたハイブリドーマ細胞の上清を、クローディン6抗原への結合についてELISAで再スクリーニングした。88個の陽性クローン(抗原に結合するが骨格またはタグには結合しない)のハイブリドーマ細胞を増殖させ、その特異性について上清をウェスタンブロットでさらに分析した。
【0244】
3つのリード候補(58-4B、58-1Bおよび58-3A)は、11段階の免疫戦略から生じた(123日間の免疫No.10)。脾摘出術の3日前に、マウスを追加免疫して、標的B細胞を活性化し、続いて融合No.58を実施した(表3)。
【0245】
[実施例3]
モノクローナル抗体のウェスタンブロットスクリーニング
上清中のELISA陽性抗体が組換えクローディン6に特異的に結合できるか否かを試験するために、ウェスタンブロットで分析した。CLDN6に結合するが、他のタグ付きタンパク質には結合しない抗体を精製し、細胞を増殖させて凍結保存した。MABselectプロテインAアフィニティ樹脂を使用してFPLCで抗体を精製した。ウェスタンブロットスクリーニングによって選択した精製抗体をウェスタンブロットで再分析し、CLDN6陽性腫瘍細胞株(PA-1、NEC-8)およびCLDN3、4、6または9をトランスフェクトしたHEK293細胞への結合を評価した(図2)。さらに、免疫組織化学によって、ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)中の抗原に結合する能力について抗体を評価した。クローディン6に特異的に結合する33個のハイブリドーマの上清を精製し、免疫組織化学でさらに分析した。
【0246】
[実施例4]
ウェスタンブロット陽性抗体の組織学的分析
この実験の目的は、抗体のCLDN6特異性と感受性を試験することであった。CLDN6を発現するFFPE卵巣癌組織を使用してこれを行った(図3)。
【0247】
最初の実験では、1回目のウェスタンブロットスクリーニングで陽性であると試験された精製抗体を、卵巣癌FFPE切片で1μg/mlおよび5μg/mlの濃度で分析した。クエン酸回収緩衝液および120°Cの回収温度を含む、実験室標準の確立された一晩染色プロトコルを使用した。高レベルの非特異的バックグラウンド染色を生じさせずに組織特異的CLDN6染色を示す抗体を、様々な卵巣癌組織で0.2、1、2および5μg/mlにさらに滴定して、これらの抗体の感受性と特異性をさらに評価した。次の開発段階では、0.2μg/mlの濃度では異なる抗体の染色強度の違いを明確に評価できなかったため、新しく作製した抗体を1および5μg/mlのより高い濃度で直接試験した。選択した組織の卵巣腫瘍組織の細胞膜に強いシグナルを生成し、隣接する健常組織にほとんどまたは全くバックグラウンドを生じない抗体を、さらなる滴定実験および特異性分析のために選択した。次の3つの抗体がこれらの基準を満たし、さらなる検討のためのリード候補として選択した:58-1B、58-3Aおよび58-4B。
【0248】
[実施例5]
mumAbのエピトープマッピング(図4
CLDN6上の抗体結合エピトープを同定するためにペプチドELISAを実施した。CLDN6のC末端配列をカバーする11アミノ酸と重複するペプチドで各精製抗体を試験した。抗体46-5A、58-1B、58-3A、58-4Bおよび58-9Bは、ペプチドAISRGPSEYPTKNYV(ペプチド7;図4A)でカバーされるエピトープへの特異的結合を示した。これらの抗体の結合部位を、15アミノ酸のうち14アミノ酸が重複するビオチン化ペプチドを使用してさらに特徴付けた。
【0249】
驚くべきことに、抗体58-1B、58-3Aおよび58-4B、ならびに配列EYPTKNYに結合するサブクローン58-4B-2(図4B)は、低いバックグラウンドで非常に特異的にFFPE癌組織のCLDN6に結合することができる。対照的に、抗体46-5Aは、配列EYPTKNYを含まないがその一部、すなわち配列EYPTKを含むペプチドに結合することができた(図4B)。市販のウサギ抗CLDN6ポリクローナル抗血清(IBL)は、配列RGPSを含むペプチドに結合する(図4C)。
【0250】
[実施例6]
正常組織パネルを使用した抗体特異性の分析
実験室標準の確立された染色プロトコルを用いて、試験した卵巣癌組織に強いシグナルを生成する抗体(58-1B、58-3Aおよび58-4B)を、高いCLDN6標的特異性を確保するために様々な関連する正常、すなわち健常ドナーの組織(例えば肺、精巣、子宮および卵巣)で分析した。これらの選択した組織の染色を、実験室標準の確立された染色プロトコル(一晩;回収温度120°C、クエン酸回収緩衝液)を使用して実施した。
【0251】
3つの選択した抗体はいずれも、1つの卵巣組織試料の単一周辺領域のかすかな非特異的シグナルを除いて、試験した正常組織パネルで非特異的染色シグナルを生成しなかった。この弱いシグナルは、試験した2つの濃度(1および5μg/ml)のうち高い方でのみ目に見え、卵巣下部構造を示さなかった。
【0252】
[実施例7]
卵巣癌および正常組織パネル試料を使用した抗体感受性の比較
以前の実験では、抗体58-3A、58-1Bおよび58-4Bの染色パターンおよび染色強度に有意な差は見られなかった。そのため、抗体を、より臨床的に指向される、すなわちより時間効率の高い染色プロトコルでの染色実験に供した。標準的な病理学研究室で適用される染色工程をシミュレートするために、1時間の一次抗体インキュベーション工程および水浴(98°C)回収工程を含む1日プロトコルを確立した。さらに、異なる回収条件がCLDN6検出に関する試験抗体の感受性に影響し得るか否かを試験するために、2つの異なる回収緩衝液を比較した。
【0253】
すべての抗体について、標準のクエン酸回収緩衝液と比較して、回収にトリス緩衝液を用いて適合させた1日プロトコルを使用すると、より強いシグナルとより多くの陽性染色腫瘍細胞が生成された。最も強い染色シグナルは58-4Bで生成され、3+染色腫瘍細胞の80%までに達したが、候補58-1Bの染色強度は最も弱く、3+染色腫瘍細胞の30%にしか達しなかった。
【0254】
最も感受性の高い染色シグナルをもたらす、回収にトリス緩衝液を用いた染色プロトコルを、その後、通常の臨床検査条件下で選択した抗体の特異性を試験するために正常組織パネルの染色に適用した。
【0255】
FFPE組織におけるCLDN6特異性と感受性に関して最良の結果は、58-4B診断用抗体候補を使用することによって達成された。正常組織ではシグナルは検出できなかった。他のすべての抗体は、精巣試料のラインケ結晶でシグナルを生成した。さらに、58-3A抗体は血管に弱い染色を生じた。58-1B抗体は、精巣および卵巣の正常組織でより強いシグナル(1+)を示した。
【0256】
分析したすべての試料で、mumAb 58-4Bは関連する腫瘍組織でバックグラウンド染色がなく、強い染色を示すという点でより良好な性能を示したが、mumAb 58-3Aおよび58-1B候補は、関連する腫瘍組織で強い染色を示したが、より高いバックグラウンドシグナルを伴った。特に、mumAb 58-1Bを使用して生成されたシグナルは高強度であったが、高いバックグラウンド染色という欠点を伴った。
【0257】
臨床設定での後日の使用のために、診断用抗体候補の作製のための対応するハイブリドーマを無血清培地に適合させた。残念ながら、クローン58-3Aを無血清条件に適合させることはできなかった。したがって、抗体候補58-3Aもさらなる組織学的試験から除外し、58-4Bを最終リード候補として残した。
【0258】
[実施例8]
組織学的詳細分析および抗体特性評価
最初の段階では、ロット間の標的感受性および標的特異性の違いを検出するために、無血清条件下で生産された58-4B抗体ロットを、正常組織パネルTMA(MNO961)を使用して血清条件下で生産された抗体ロットと比較した。染色は、ロイヤリティフリーの成分によるクリニック様の1日プロトコル(水浴回収、回収用トリス緩衝液)を使用して実施した。
【0259】
両方の抗体ロットに関して、一部の正常組織試料でかすかな染色が検出された(表4参照)。血清条件下で生産された抗体と比較して、無血清抗体ロットは分析試料に人工スポットが少なく、より清浄であった。精巣では、両方の抗体ロットでラインケ結晶に染色シグナルが見られた。
【0260】
2番目の段階では、無血清で生産された抗体を卵巣癌のTMAパネルで試験し、市販のIBL抗体と比較した。この市販の抗体は、以前の試験染色で既に使用されていた。ポリクローナルIBL抗体を試験プロトコル(一晩、回収温度120°C、クエン酸回収緩衝液)で使用した。58-4B抗体は、通常のクリニック様プロトコル(1日プロトコル、水浴回収、回収用トリス緩衝)で使用した。
【0261】
72のスポットしたTMA卵巣癌症例のうちで、1つの試料だけがIBL抗体で陽性であった。対照的に、58-4B抗体で染色した場合は、14/72試料がCLDN6陽性であると試験された。
【0262】
残念ながら、市販の卵巣癌TMA試料の品質は低く、陽性腫瘍試料での染色シグナルは弱かった。そのため、肺、子宮および精巣の腫瘍試料を高品質に保存したより大きな腫瘍領域を示す、Dr.Dhaeneからの腫瘍切除標本で比較を繰り返した。
【0263】
58-4B染色は、ポリクローナルIBL抗体を使用した染色と比較して、腫瘍試料でCLDN6のより感受性の高い特異的な検出をもたらし、より多くの腫瘍細胞が陽性であり、より強い強度の染色腫瘍細胞が検出されたことを意味した。
【0264】
[実施例9]
リード抗体の配列分析
抗体58-1B、58-3Aおよび58-4Bの配列の分析を図5および以下に示す。
【0265】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0266】
【表7】
【0267】
【表8】
【0268】
生物学的材料についての追加シート
【0269】
さらなる寄託物の特定:
1)寄託物のための寄託機関の名称および住所は次のとおりである:
Leibniz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH
Inhoffenstr.7 B
38124 Braunschweig
DE
【表9】
【0270】
上記のすべての寄託物についての追加表示:
-マウス(ムス・ムスクルス(Mus musculus))脾細胞と融合したマウス(ムス・ムスクルス(Mus musculus))骨髄腫Ag8.653
-ヒトCLDN6に対するハイブリドーマ分泌抗体
【0271】
2)寄託者:
上記のすべての寄託は以下によって為された:
Ganymed Pharmaceuticals AG
An der Goldgrube 12
55131 Mainz
DE
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
【配列表】
2023103315000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体もしくはその抗原結合フラグメントであって、
(i)当該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列EYPTKNY(配列番号38)からなるペプチドに結合し、および/または
(ii)当該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、クローディン6(CLDN6)に結合し当該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列EYPTKNY(配列番号38)からなるエピトープに結合することによってCLDN6に結合、および/または
(iii)当該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列EYPTKNYV(配列番号29)からなるペプチドに結合し、および/または
(iv)当該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、クローディン6(CLDN6)に結合し、前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列EYPTKNYV(配列番号29)からなるエピトープに結合することによってCLDN6に結合、および/または
(v)当該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)からなるペプチドに結合し、前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列TSAPAISRGPSEYPT(配列番号14)からなるペプチドに結合せず、および/または
(vi)当該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、クローディン6(CLDN6)に結合し、前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)からなるエピトープに結合することによってCLDN6に結合し、アミノ酸配列TSAPAISRGPSEYPT(配列番号14)からなるペプチドには結合せず
(vii)当該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、以下のペプチド:
PAISRGPSEYPTKNY(配列番号22)、AISRGPSEYPTKNYV(配列番号15)、ISRGPSEYPTKNYV(配列番号23)、SRGPSEYPTKNYV(配列番号24)、RGPSEYPTKNYV(配列番号25)、GPSEYPTKNYV(配列番号26)、PSEYPTKNYV(配列番号27)、SEYPTKNYV(配列番号28)、およびEYPTKNYV (配列番号29)のうちの1つまたはそれ以上に結合し、当該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列TSAPAISRGPSEYPT(配列番号14)からなるペプチドには結合しない、
抗体もしくはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメントであって、
当該抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、以下:
(a)配列番号40に記載のアミノ酸配列を含む抗体重鎖アミノ酸配列、および配列番号41に記載のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖アミノ酸配列;
(b)配列番号42に記載のアミノ酸配列を含む抗体重鎖アミノ酸配列、および配列番号43に記載のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖アミノ酸配列;
(c)配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む抗体重鎖アミノ酸配列、および配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖アミノ酸配列;または
(d)配列番号42に記載のアミノ酸配列を含む抗体重鎖アミノ酸配列、および配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖アミノ酸配列、
を含む、抗体もしくはその抗原結合フラグメント
【請求項3】
前記抗体は、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgA、IgA1、IgA2、IgD、またはIgEである、請求項1または2に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
検出可能な標識に結合した、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメント
【請求項5】
前記標識は、指示酵素、放射性標識、発蛍光団、または常磁性粒子であるか、あるいは前記標識は、アルカリホスファターゼ、硫酸バリウム、イオセタム酸、イオパノ酸、カルシウムイポデート、ジアトリゾ酸ナトリウム、ジアトリゾ酸メグルミン、メトリザミド、チロパノ酸ナトリウム、フッ素18、炭素11、ヨウ素123、テクネチウム99m、ヨウ素131、インジウム111、フッ素、またはガドリニウムを含む、請求項4に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
試料中のCLDN6を検出するまたはCLDN6の量を決定する方法であって、
(i)試料を請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメントと接触させる工程、および
(ii)前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントとCLDN6との複合体の形成を検出する、または前記複合体の量を決定する工程、
を含む方法。
【請求項7】
CLDN6を発現する細胞を検出する方法であって、
(i)細胞試料を請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメントと接触させる工程、および
(ii)前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントと、前記試料中の前記細胞により発現されるCLDN6との複合体の形成を検出する工程、
を含む方法。
【請求項8】
CLDN6を発現する癌細胞の診断、検出またはモニタリングの方法であって、
(i)生物学的試料を請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合フラグメントと接触させる工程、ならびに
(ii)前記抗体もしくはその抗原結合フラグメントとCLDN6との複合体の形成を検出する、および/または前記複合体の量を決定する工程
を含む方法。