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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103321
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】成形ガラス積層体及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20230719BHJP
   C03B 23/025 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
C03C27/12 R
C03B23/025
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076637
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2019544899の分割
【原出願日】2018-02-20
(31)【優先権主張番号】62/461,080
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/461,494
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/586,938
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル マリー-ルイーズ フレドホルム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】互いに異なり、互いの間に最小限の形状不一致を示すガラス基板を含む成形ガラス積層体であって、より薄いガラス基板を有する積層体を提供する。
【解決手段】630℃の温度で第1の粘度(ポアズ)を含む第1の湾曲したガラス基板;630℃の温度で第1の粘度より大きい第2の粘度を含む第2の湾曲したガラス基板;並びに、第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲したガラス基板との間に配置された中間層を備えた積層体の実施形態が開示される。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板は、第2の湾曲したガラス基板の第2の垂下深さの10%以内の第1の垂下深さを示す。1つ以上の実施形態では、第1のガラス基板及び第2のガラス基板は、光学三次元スキャナで測定して約5mm以下の形状偏差を示すか、若しくは最小光学歪みを示す。このような積層体を含む車両の実施形態、及びこのような積層体の製造方法についても開示される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体において、
第1の主面、前記第1の主面とは反対側の第2の主面、前記第1の主面と前記第2の主面との間の距離として定義される第1の厚さ、及び約2mm以上の第1の垂下深さを含む第1の湾曲したガラス基板であって、630℃の温度で第1の粘度(ポアズ)を含む、第1の湾曲したガラス基板;
第3の主面、前記第3の主面とは反対側の第4の主面、前記第3の主面と前記第4の主面との間の距離として定義される第2の厚さ、及び約2mm以上の第2の垂下深さを含む第2の湾曲したガラス基板であって、630℃の温度で前記第1の粘度とは異なる第2の粘度を含む、第2の湾曲したガラス基板;並びに
前記第1の湾曲したガラス基板と前記第2の湾曲したガラス基板との間に配置され、かつ、前記第2の主面及び前記第3の主面に隣接した中間層
を備えた積層体であって、
前記第1の垂下深さが前記第2の垂下深さの10%以内であり、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板との形状偏差が、光学三次元スキャナで測定して±5mm以下であり、
前記第1の主面及び前記第4の主面の一方又は両方が、ASTM 1561に準拠して透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、200ミリディオプター未満の光学歪みを示し、かつ
前記第1の主面又は前記第2の主面が、ASTM C1279に準拠して表面応力計で測定して、7MPa未満の膜引張応力を含む、
積層体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2017年11月16日出願の米国仮特許出願第62/586,938号、2017年2月21日出願の米国仮特許出願第62/461,494号、及び2017年2月20日出願の米国仮特許出願第62/461,080号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、成形ガラス積層体及びこのような積層体を形成する方法に関し、より詳細には、互いに異なり、互いの間に最小限の形状不一致を示すガラス基板を含む成形ガラス積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
第1の湾曲したガラス基板110、第2の湾曲したガラス基板120、及び第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲したガラス基板との間に配置された介在中間層130を備えた、典型的なガラス積層体が図1に示されている。このような積層体は通常、第1のガラス基板及び第2のガラス基板を同時に成形又は湾曲させて、互いに実質的に類似した又は同一の形状を有する第1の湾曲したガラス基板及び第2のガラス基板を提供することにより形成される。ガラス基板を互いに積み重ねてスタックを形成し、該スタックを共成形することによって両方のガラス基板を同時に成形する共成形を含めた、さまざまな方法がガラス基板の成形に使用されている。共成形の方法は、重力を使用して、スタックが粘弾性相に達するまでスタックを加熱しながら第1及び第2のガラス基板の対又はスタックを同時に垂下又成形する、共垂下を含む。他の方法には、成形型又は電圧を単独で、若しくは互いに組み合わせて、あるいは共垂下と組み合わせて使用する、共成形が含まれる。
【0004】
共成形の一例が図2に示されており、これは、共垂下によって複雑に湾曲したガラス基板を形成する、第1の曲率半径R1及び第2の曲率半径R2を有する曲げフレーム200を示している。2枚のガラス基板を共垂下させるために、このようなガラス基板は、炭酸カルシウムを含みうる剥離粉末を介在させて、互いに積み重ねられる。スタックは曲げフレーム上に置かれ、スタック及び曲げフレームは、ガラス基板がその軟化温度に等しい温度に達するまで炉内で加熱される。このような温度では、ガラス基板は重力によって曲がるか、又は垂下する。幾つかの実施形態では、減圧及び/又は成形型を使用して、共垂下を促進することができる。
【0005】
このような既知の積層体では、ガラス基板は約1.6mm~約3mmの範囲の厚さを有する。幾つかの既知の積層体では、第1のガラス基板及び第2のガラス基板は、互いに実質的に同一又は実質的に類似したそれぞれの組成物を有しており、したがって互いに類似した特性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような積層体を組み込む車両の重量を低減するために、軽量であり、したがってより薄い積層体が必要である。したがって、より薄いガラス基板を有する積層体、及び2つの組成的に異なるガラス基板を有する潜在的積層体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、第1の主面、第1の主面とは反対側の第2の主面、第1の主面と第2の主面との間の距離として定義される第1の厚さ、及び約2mm以上の第1の垂下深さを含む第1の湾曲したガラス基板であって、630℃の温度で第1の粘度(ポアズ)を含む、第1の湾曲したガラス基板;第3の主面、第3の主面とは反対側の第4の主面、第3の主面と第4の主面との間の距離として定義される第2の厚さ、及び約2mm以上の第2の垂下深さを含む第2の湾曲したガラス基板であって、約590℃~約650℃の範囲の温度(又は約630℃)において第1の粘度より大きい第2の粘度を含む、第2の湾曲したガラス基板;並びに、第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲した強化されたガラス基板との間に配置され、かつ、第2の主面及び第3の主面に隣接した中間層を備えた積層体に関する。1つ以上の実施形態では、第1の垂下深さは第2の垂下深さの10%以内であり、第1のガラス基板と第2のガラス基板との形状偏差は、光学三次元スキャナで測定して±5mm以下であり、かつ、第1の主面及び第4の主面の一方又は両方が、ASTM 1561に準拠して透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、200ミリディオプター未満の光学歪みを示し、第1の主面又は第2の主面は、ASTM C1279に準拠して表面応力計で測定して、7MPa未満の膜引張応力を含む。
【0008】
本開示の第2の態様は、内部及び該内部と連通した開口を画成する本体と、開口に配置された1つ以上の実施形態による積層体とを備えた車両に関し、該積層体は複雑に湾曲している。
【0009】
本開示の第3の態様は、第1の粘度(ポアズ)及び第1の垂下温度を含む第1のガラス基板と、630℃の温度で第1の粘度より大きい第2の粘度を含む第2のガラス基板とを含むスタックを形成する工程;並びに、スタックを加熱し、該スタックを共成形して、共成形したスタックを形成する工程を含む、湾曲した積層体を形成する方法に関し、共成形したスタックは、第1の垂下深さを有する第1の湾曲したガラス基板と、それぞれが第2の垂下深さを有する第2の湾曲したガラス基板とを含み、第1の垂下深さ及び第2の垂下深さは2mmを超え、かつ互いの10%以内である。幾つかの実施形態では、第1の垂下温度は、約5℃以上、約10℃以上、約15℃以上、約20℃以上、約25℃以上、約30℃以上、又は約35℃以上、第2の垂下温度と異なっている。
【0010】
追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部には、その説明から当業者に容易に明らかとなり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含めた本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されよう。
【0011】
前述の概要及び後述する詳細な説明はいずれも、単なる例示であり、特許請求の範囲の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することが意図されていることが理解されるべきである。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を例証しており、その説明とともに、さまざまな実施形態の原理及び動作を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】既知のガラス積層体の側面図
図2】ガラス基板及び積層体の形成に用いられる既知の曲げフレームの斜視図
図3】1つ以上の実施形態による成形された積層体の側面図
図3A】1つ以上の実施形態による成形された積層体の側面図
図4】温度の関数としての3つの異なるガラス基板の粘度を示すグラフ
図5】1つ以上の実施形態によるガラス基板の側面図
図6】1つ以上の実施形態によるガラス基板の側面図
図7】1つ以上の実施形態による車両の斜視図
図8】湾曲した積層体を形成する方法の1つ以上の実施形態による方法に用いることができるレーア炉の側面断面図
図9】空気の流れの影響を伴った、2つのガラス基板の共成形シミュレーションの図
図10図9に示されるシミュレーションに用いられる時間の関数としての温度プロファイルのプロット
図11】スタックの中心点付近から隅部までのガラス基板間の一時的な結合を伴わない、ガラス基板スタックの領域にわたる圧力の大きさの変化を示す図
図12】共成形中にガラス基板間の一時的な結合を形成及び/又は維持する補強のシミュレーションの図
図13】スタックの中心点付近から隅部までのガラス基板間の一時的な結合を伴った、ガラス基板スタックの領域にわたる圧力の大きさの変化を示す図
図14A】実施例Eの形状測定を示す図
図14B図14Aと同じ
図15A】実施例Fの形状測定を示す図
図15B図15Aと同じ
図16A】実施例Gの形状測定を示す図
図16B図16Aと同じ
図16C図16Aと同じ
図17A】実施例Hの形状測定を示す図
図17B図17Aと同じ
図17C図17Aと同じ
【発明を実施するための形態】
【0013】
これより、例が添付の図面に示されている、さまざまな実施形態を詳細に参照する。
【0014】
本開示の態様は、優れた強度を示し、自動車及び建築用途での使用に関する規制要件を満たしつつ、従来の積層体と比較して薄い又は軽重量のガラス積層体に関する。従来の積層体は、約1.6mm~約3mmの範囲の厚さを有する2枚のソーダ石灰ケイ酸塩ガラス基板を含む。積層体の強度及び他の性能を維持又は改善しつつ、少なくとも1つのガラス基板の厚さを低減するために、ガラス基板の1つは、温度の関数として、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス基板とは非常に異なる粘度(又は粘度曲線)を有する傾向がある、強化されたガラス基板を含みうる。特に、典型的な強化ガラス基板は、所与の温度で、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス基板よりも著しく高い粘度を示す。
【0015】
このような異なるガラス基板の共成形、特に共垂下は、粘度曲線の違いにより、不可能であると以前は考えられていた。しかしながら、本明細書に記載されるように、このような成功した共成形(共垂下を含む)を達成して、実質的に最小の形状不一致、共成形による最小の応力、並びに低い又は実質的に低い光学歪みを示す積層体を形成することができる。
【0016】
また、一般に、低粘度のガラス基板(例えばソーダ石灰ケイ酸塩ガラス基板)は、高粘度のガラス基板の上に低粘度のガラス基板を配置することにより、高粘度のガラス基板とともに共垂下できることも理解されていた。特に、反対の構成では、低粘度ガラス基板は、高粘度ガラス基板よりも深い深さまで垂下すると考えられていた。驚くべきことに、本明細書に記載されるように、この反対の構成を用いて、すなわち、高粘度ガラス基板を低粘度ガラス基板の上に配置して、共垂下を成功させることができる。このような共成形したガラス基板は、深い又は大きな垂下深さを達成するとともに、実質的に同一の形状を示し、ガラス基板間の中間層とともに積層して、最小限の光学欠陥及び応力欠陥を示す成形積層体を形成することができる。
【0017】
本明細書で用いられる「垂下深さ」という語句は、図3に参照文字「318」及び「328」で示されるように、湾曲したガラス基板の同じ凸面上の2点間の最大距離を指す。図3に示されるように、エッジの凸面上の点、及び凸面の中心又はその近くの凸面上の点は、最大距離318及び328をもたらす。
【0018】
本開示の第1の態様は、図3に示されるように、第1の湾曲したガラス基板310、第2の湾曲したガラス基板320、及び第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲したガラス基板との間に配置された中間層330を含む積層体300に関する。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板310は、第1の主面312、第1の主面とは反対側の第2の主面314、第1の主面と第2の主面との間に延びる非主面313、第1の主面と第2の主面との間の距離として定義される第1の厚さ316、及び第1の垂下深さ318を含む。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板310は、第1のガラス基板の非主面313から内部部分に向かって延びる周縁部315を含む。1つ以上の実施形態では、第2の湾曲したガラス基板320は、第3の主面322、第3の主面の反対側にある第4の主面324、第1の主面と第2の主面との間に延びる非主面323、第3の主面と第4の主面との間の距離として定義される第2の厚さ326、及び第2の垂下深さ328を含む。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板310は、第1のガラス基板の非主面323から内部部分に向かって延びる周縁部325を含む。
【0019】
第1のガラス基板310は、厚さに直交する第1及び第2の主面の一方の第1の寸法として定義される幅、並びに厚さと幅の両方に直交する第1及び第2の主面の一方の第2の寸法として定義される長さを有する。第1のガラス基板320は、厚さに直交する第1及び第2の主面の一方の第1の寸法として定義される幅、並びに厚さと幅の両方に直交する第1及び第2の主面の一方の第2の寸法として定義される長さを有する。1つ以上の実施形態では、第1及び第2のガラス基板の一方又は両方の周縁部315、325は、第1及び第2のガラス基板のそれぞれの長さ及び幅寸法の約20%未満である、非主面313、323から延びる周縁長さを有しうる。1つ以上の実施形態では、周縁部315、325は、第1及び第2のガラス基板のそれぞれの長さ及び幅寸法の約18%以下、約16%以下、約15%以下、約14%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下、又は約5%以下である、非主面313、323から延びる周縁長さを有しうる。
【0020】
1つ以上の実施形態では、中間層330は、図3に示されるように、第2の主面314及び第3の主面322に隣接するように、第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲したガラス基板との間に配置される。
【0021】
図3に示される実施形態では、第1の表面312は凸面を形成し、第4の表面324は凹面を形成する。図3Aに示される積層体300Aの実施形態では、ガラス基板の位置は、中間層330が、第1の主面312及び第4の主面324に隣接するように、第1の湾曲したガラス基板310と第2の湾曲したガラス基板320との間に配置されるように交換されうる。このような実施形態では、図3Aに示されるように、第2の表面314は凸面を形成し、第3の表面322は凹面を形成する。
【0022】
1つ以上の実施形態では、所与の温度において、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)は第1の粘度(ポアズ単位)を示し、第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)は第1の粘度とは異なる第2の粘度(ポアズ単位)を示す。幾つかの実施形態における所与の温度は、約590℃から約650℃(又は約630℃)でありうる。幾つかの実施形態では、第2の粘度は、630℃の温度において、第1の粘度の約2倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、又は約10倍以上である。1つ以上の実施形態では、第2の粘度は、所与の温度において、第1の粘度の10倍以上でありうる。1つ以上の実施形態では、第2の粘度は、第1の粘度の約10倍~約1000倍(例えば、第1の粘度の約25倍~約1000倍、約50倍~約1000倍、約100倍~約1000倍、約150倍~約1000倍、約200倍~約1000倍、約250倍~約1000倍、約300倍~約1000倍、約350倍~約1000倍、約400倍~約1000倍、約450倍~約1000倍、約500倍~約1000倍、約10倍~約950倍、約10倍~約900倍、約10倍~約850倍、約10倍~約800倍、約10倍~約750倍、約10倍~約700倍、約10倍~約650倍、約10倍~約600倍、約10倍~約550倍、約10倍~約500倍、約10倍~約450倍、約10倍~約400倍、約10倍~約350倍、約10倍~約300倍、約10倍~約250倍、約10倍~約200倍、約10倍~約150倍、約10倍~約100倍、約10倍~約50倍、又は第1の粘度の約10倍~約25倍)の範囲である。
【0023】
第1のガラス基板及び/又は第2のガラス基板(又は、それぞれ、第1の湾曲したガラス基板及び第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板及び/又は第2のガラス基板)が機械的に強化されたガラス基板(本明細書に記載されるもの)を含む1つ以上の実施形態では、第1及び/又は第2の粘度は複合粘度であってもよい。
【0024】
1つ以上の実施形態では、600℃において、第1の粘度は、約3×1010ポアズ~約8×1010ポアズ、約4×1010ポアズ~約8×1010ポアズ、約5×1010ポアズ~約8×1010ポアズ、約6×1010ポアズ~約8×1010ポアズ、約3×1010ポアズ~約7×1010ポアズ、約3×1010ポアズ~約6×1010ポアズ、約3×1010ポアズ~約5×1010ポアズ、又は約4×1010ポアズ~約6×1010ポアズの範囲である。
【0025】
1つ以上の実施形態では、630℃において、第1の粘度は、約1×10ポアズ~約1×1010ポアズ、約2×10ポアズ~約1×1010ポアズ、約3×10ポアズ~約1×1010ポアズ、約4×10ポアズ~約1×1010ポアズ、約5×10ポアズ~約1×1010ポアズ、約6×10ポアズ~約1×1010ポアズ、約1×10ポアズ~約9×10ポアズ、約1×10ポアズ~約8×10ポアズ、約1×10ポアズ~約7×10ポアズ、約1×10ポアズ~約6×10ポアズ、約4×10ポアズ~約8×10ポアズ、又は約5×10ポアズ~約7×10ポアズの範囲である。
【0026】
1つ以上の実施形態では、650℃において、第1の粘度は、約5×10ポアズ~約5×10ポアズ、約6×10ポアズ~約5×10ポアズ、約7×10ポアズ~約5×10ポアズ、約8×10ポアズ~約5×10ポアズ、約9×10ポアズ~約5×10ポアズ、約1×10ポアズ~約5×10ポアズ、約1×10ポアズ~約4×10ポアズ、約1×10ポアズ~約3×10ポアズ、約5×10ポアズ~約4×10ポアズ、約5×10ポアズ~約3×10ポアズ、約5×10ポアズ~約2×10ポアズ、約5×10ポアズ~約1×10ポアズ、約5×10ポアズ~約9×10ポアズ、約5×10ポアズ~約8×10ポアズ、又は約5×10ポアズ~約7×10ポアズの範囲である。
【0027】
1つ以上の実施形態では、600℃において、第2の粘度は、約2×1011ポアズ~約1×1015ポアズ、約4×1011ポアズ~約1×1015ポアズ、約5×1011ポアズ~約1×1015ポアズ、約6×1011ポアズ~約1×1015ポアズ、約8×1011ポアズ~約1×1015ポアズ、約1×1012ポアズ~約1×1015ポアズ、約2×1012ポアズ~約1×1015ポアズ、約4×1012ポアズ~約1×1015ポアズ、約5×1012ポアズ~約1×1015ポアズ、約6×1012ポアズ~約1×1015ポアズ、約8×1012ポアズ~約1×1015ポアズ、約1×1013ポアズ~約1×1015ポアズ、約2×1013ポアズ~約1×1015ポアズ、約4×1013ポアズ~約1×1015ポアズ、約5×1013ポアズ~約1×1015ポアズ、約6×1013ポアズ~約1×1015ポアズ、約8×1013ポアズ~約1×1015ポアズ、約1×1014ポアズ~約1×1015ポアズ、約2×1011ポアズ~約8×1014ポアズ、約2×1011ポアズ~約6×1014ポアズ、約2×1011ポアズ~約5×1014ポアズ、約2×1011ポアズ~約4×1014ポアズ、約2×1011ポアズ~約2×1014ポアズ、約2×1011ポアズ~約1×1014ポアズ、約2×1011ポアズ~約8×1013ポアズ、約2×1011ポアズ~約6×1013ポアズ、約2×1011ポアズ~約5×1013ポアズ、約2×1011ポアズ~約4×1013ポアズ、約2×1011ポアズ~約2×1013ポアズ、約2×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約2×1011ポアズ~約8×1012ポアズ、約2×1011ポアズ~約6×1012ポアズ、又は約2×1011ポアズ~約5×1012ポアズの範囲である。
【0028】
1つ以上の実施形態では、630℃において、第2の粘度は、約2×1010ポアズ~約1×1013ポアズ、約4×1010ポアズ~約1×1013ポアズ、約5×1010ポアズ~約1×1013ポアズ、約6×1010ポアズ~約1×1013ポアズ、約8×1010ポアズ~約1×1013ポアズ、約1×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約2×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約4×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約5×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約6×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約8×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約1×1012ポアズ~約1×1013ポアズ、約2×1010ポアズ~約8×1012ポアズ、約2×1010ポアズ~約6×1012ポアズ、約2×1010ポアズ~約5×1012ポアズ、約2×1010ポアズ~約4×1012ポアズ、約2×1010ポアズ~約2×1012ポアズ、約2×1010ポアズ~約1×1012ポアズ、約2×1010ポアズ~約8×1011ポアズ、約2×1010ポアズ~約6×1011ポアズ、約2×1010ポアズ~約5×1011ポアズ、約2×1010ポアズ~約4×1011ポアズ、又は約2×1010ポアズ~約2×1011ポアズの範囲である。
【0029】
1つ以上の実施形態では、650℃において、第2の粘度は、約1×1010ポアズ~約1×1013ポアズ、約2×1010ポアズ~約1×1013ポアズ、約4×1010ポアズ~約1×1013ポアズ、約5×1010ポアズ~約1×1013ポアズ、約6×1010ポアズ~約1×1013ポアズ、約8×1010ポアズ~約1×1013ポアズ、約1×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約2×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約4×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約4×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約5×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約6×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約8×1011ポアズ~約1×1013ポアズ、約1×1012ポアズ~約1×1013ポアズ、約1×1010ポアズ~約8×1012ポアズ、約1×1010ポアズ~約6×1012ポアズ、約1×1010ポアズ~約5×1012ポアズ、約1×1010ポアズ~約4×1012ポアズ、約1×1010ポアズ~約2×1012ポアズ、約1×1010ポアズ~約1×1012ポアズ、約1×1010ポアズ~約8×1011ポアズ、約1×1010ポアズ~約6×1011ポアズ、約1×1010ポアズ~約5×1011ポアズ、約1×1010ポアズ~約4×1011ポアズ、約1×1010ポアズ~約2×1011ポアズ、又は約1×1010ポアズ~約1×1011ポアズの範囲である。
【0030】
1つの例示的な第1の湾曲したガラス基板(Aで指定されている)、並びに2つの例示的な第2の湾曲したガラス基板(B1及びB2で指定されている)の温度の関数としての粘度の例が、図4に示されている。
【0031】
1つ以上の実施形態では、第1のガラス基板と第2のガラス基板との組合せ(すなわち、それらのスタック)は、約500℃~約700℃の範囲の温度(T)で、第1の粘度と第2の粘度の間の有効粘度を示しうる。有効粘度は、次のように式(1)によって決定することができ、
式(1):μ有効(T)=((μ1(T)t1)/(t1+t2))+((μ2(T)t2)/(t1+t2)),
式中、μ(T)は温度(T)における第1の湾曲したガラス基板の粘度であり、tは第1の湾曲したガラス基板の厚さであり、μ(T)は温度(T)における第2の湾曲したガラス基板の粘度であり、tは第2の湾曲したガラス基板の厚さである。
【0032】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲した基板及び第2の湾曲した基板(又は、それぞれ第1の湾曲したガラス基板及び第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板及び第2のガラス基板)は、互いに異なる垂下温度を有しうる。本明細書で用いられる場合、「垂下温度」とは、ガラス基板の粘度が約109.9ポアズである温度を意味する。垂下温度は、Vogel-Fulcher-Tamman(VFT)の式:Log h=A+B/(T-C)を、曲げビーム粘度(BBV)測定を使用して測定されたアニール点データ、繊維の伸びによって測定された軟化点データに当てはめることにより決定される。式中、Tは温度であり、A、B及びCはフィッティング定数であり、hは動的粘度である。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)は、第1の垂下温度を有することができ、第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)は、第1の垂下温度より高い第2の垂下温度を有する。例えば、第1の垂下温度は、約600℃~約650℃、約600℃~約640℃、約600℃~約630℃、約600℃~約625℃、約600℃~約620℃、約610℃~約650℃、約620℃~約650℃、約625℃~約650℃、約630℃~約650℃、約620℃~約640℃、又は約625℃~約635℃の範囲でありうる。1つ以上の実施形態では、第2の垂下温度は、約650℃超(例えば、約650℃超~約800℃、約650℃超~約790℃、約650℃超~約780℃、約650℃超~約770℃、約650℃超~約760℃、約650℃超~約750℃、約650℃超~約740℃、約650℃超~約740℃、約650℃超~約730℃、約650℃超~約725℃、約650℃超~約720℃、約650℃超~約710℃、約650℃超~約700℃超、約650℃超~約690℃超、約650℃超~約680℃、約660℃~約750℃、約670℃~約750℃、約680℃~約750℃、約690℃~約750℃、約700℃~約750℃、約710℃~約750℃、又は約720℃~約750℃)でありうる。
【0033】
1つ以上の実施形態では、第1の垂下温度と第2の垂下温度との差は、約5℃以上、約10℃以上、約15℃以上、約20℃以上、約25℃以上、約30℃以上、又は約35℃以上である。例えば、第1の垂下温度と第2の垂下温度との差は、約5℃~約150℃、約10℃~約150℃、約15℃~約150℃、約20℃~約150℃、約25℃~約150℃、約30℃~約150℃、約40℃~約150℃、約50℃~約150℃、約60℃~約150℃、約80℃~約150℃、約100℃~約150℃、約5℃~約140℃、約5℃~約120℃、約5℃~約100℃、約5℃~約80℃、約5℃~約60℃、又は約5℃~約50℃の範囲である。
【0034】
1つ以上の実施形態では、第1の垂下深さ318及び第2の垂下深さ328の一方又は両方が約2mm以上である。例えば、第1の垂下深さ318及び第2の垂下深さ328の一方又は両方は、約2mm~約30mm、約4mm~約30mm、約5mm~約30mm、約6mm~約30mm、約8mm~約30mm、約10mm~約30mm、約12mm~約30mm、約14mm~約30mm、約15mm~約30mm、約2mm~約28mm、約2mm~約26mm、約2mm~約25mm、約2mm~約24mm、約2mm~約22mm、約2mm~約20mm、約2mm~約18mm、約2mm~約16mm、約2mm~約15mm、約2mm~約14mm、約2mm~約12mm、約2mm~約10mm、約2mm~約8mm、約6mm~約20mm、約8mm~約18mm、約10mm~約15mm、約12mm~約22mm、約15mm~約25mm、又は約18mm~約22mmの範囲でありうる。
【0035】
1つ以上の実施形態では、第1の垂下深さ318及び第2の垂下深さ328は、互いに実質的に等しい。1つ以上の実施形態では、第1の垂下深さは第2の垂下深さから10%以内の範囲にある。例えば、第1の垂下深さは、第2の垂下深さから9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、又は5%以内の範囲にある。説明のため、第2の垂下深さは約15mmであり、第1の垂下深さは約14.5mm~約16.5mm(又は第2の垂下深さから10%以内)の範囲にある。
【0036】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板及び第2の湾曲したガラス基板は、ドイツ国ブラウンシュヴァイク所在のGOM GmbHが提供するATOS Triple Scanなどの光学三次元スキャナによって測定して±5mm以下の第1のガラス基板と第2のガラス基板との間の形状偏差を含む。1つ以上の実施形態では、形状偏差は、第2の表面314と第3の表面322との間、又は第1の表面312及と第4の表面324との間で測定される。1つ以上の実施形態では、第1のガラス基板と第2のガラス基板との間の形状偏差は、約±4mm以下、約±3mm以下、約±2mm以下、約±1mm以下、約±0.8mm以下、約±0.6mm以下、約±0.5mm以下、約±0.4mm以下、約±0.3mm以下、約±0.2mm以下、又は約±0.1mm以下である。本明細書で用いられる場合、形状偏差とは、それぞれの表面で測定した最大の形状偏差を指す。
【0037】
1つ以上の実施形態では、第1の主面312及び第4の主面324の一方又は両方は、最小の光学歪みを示す。例えば、第1の主面312及び第4の主面324の一方又は両方が、ASTM 1561に準拠して透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、約400ミリディオプター未満、約300ミリディオプター未満、又は約250ミリディオプター未満を示す。適切な光学歪み検出器は、ドイツ国ダルムシュタット所在のISRA VISIION AGからSCREENSCAN-Faultfinderという商品名で提供されている。1つ以上の実施形態では、第1の主面312及び第4の主面324の一方又は両方が、約190ミリディオプター以下、約180ミリディオプター以下、約170ミリディオプター以下、約160ミリディオプター以下、約150ミリディオプター以下、約140ミリディオプター以下、約130ミリディオプター以下、約120ミリディオプター以下、約110ミリディオプター以下、約100ミリディオプター以下、約90ミリディオプター以下、約80ミリディオプター以下、約70ミリディオプター以下、約60ミリディオプター以下、又は約50ミリディオプター以下を示す。本明細書で用いられる場合、光学歪みとは、それぞれの表面で測定した最大光学歪みを指す。
【0038】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板の第1の主面又は第2の主面は、低い膜引張応力を示す。膜引張応力は、湾曲した基板及び積層体の冷却中に生じうる。ガラスが冷えると、主面とエッジ表面(主面に直交する)は表面圧縮を発達させうるが、これは、引張応力を示す中央領域によって相殺される。曲げ又は成形により、追加の表面張力がエッジ付近に取り込まれる場合があり、中央の張力領域はガラス表面に近づく。したがって、膜引張応力は、エッジの近く(例えば、エッジ表面から約10~25mm)で測定された引張応力である。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板の第1の主面又は第2の主面における膜引張応力は、ASTM C1279に準拠して表面応力計で測定して、約7メガパスカル(MPa)未満である。このような表面応力計の例は、GASP(登録商標)(Grazing Angle Surface Polarimeter)という商標でStrainoptic Technologies社から提供されている。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板の第1の主面又は第2の主面における膜引張応力は、約6MPa以下、約5MPa以下、約4MPa以下、又は約3MPa以下である。1つ以上の実施形態では、膜引張応力の下限は、約0.01MPa又は約0.1MPaである。本明細書に記載されるように、応力は、圧縮又は引張のいずれかとして指定され、このような応力の大きさは絶対値として提供される。
【0039】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板の第1の主面又は第2の主面における膜圧縮応力は、ASTM C1279に準拠して表面応力計で測定して、約7メガパスカル(MPa)未満である。GASP(登録商標)(Grazing Angle Surface Polarimeter)という商標でStrainoptic Technologies社から提供される表面応力計などの表面応力計を使用することができる。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板の第1の主面又は第2の主面における膜圧縮応力は、約6MPa以下、約5MPa以下、約4MPa以下、又は約3MPa以下である。1つ以上の実施形態では、膜圧縮応力の下限は、約0.01MPa又は約0.1MPaである。
【0040】
1つ以上の実施形態では、積層体300は、6.85mm以下又は5.85mm以下の厚さを有してよく、該厚さは、第1の湾曲したガラス基板、第2の湾曲したガラス基板、及び中間層の厚さの合計を含む。さまざまな実施形態では、積層体は、約1.8mm~約6.85mmの範囲、又は約1.8mm~約5.85mmの範囲、又は約1.8mm~約5.0mmの範囲、又は2.1mm~約6.85mm、又は約2.1mm~約5.85mmの範囲、又は約2.1mm~約5.0mmの範囲、又は約2.4mm~約6.85mmの範囲、又は約2.4mm~約5.85mmの範囲、又は約2.4mm~約5.0mmの範囲、又は約3.4mm~約6.85mmの範囲、又は約3.4mm~約5.85mmの範囲、又は約3.4mm~約5.0mmの範囲の厚さを有しうる。
【0041】
1つ以上の実施形態では、積層体300は、1000mm未満、又は750mm未満、又は500mm未満、又は300mm未満の曲率半径を示す。1つ以上の実施形態では、積層体300は、少なくとも1つの軸に沿って、約10m以下又は約5m以下の少なくとも1つの曲率半径を示す。1つ以上の実施形態では、積層体300は、少なくとも第1の軸に沿って、及び第1の軸に対して垂直な第2の軸に沿って、5m以下の曲率半径を有しうる。1つ以上の実施形態では、積層体は、少なくとも第1の軸に沿って、及び第1の軸に対して垂直ではない第2の軸に沿って、5m以下の曲率半径を有しうる。
【0042】
1つ以上の実施形態では、第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)は、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)と比較して相対的に薄い。言い換えれば、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)は、第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)より大きい厚さを有する。1つ以上の実施形態では、第1の厚さ(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板の厚さ)は、第2の厚さの2倍以上である。1つ以上の実施形態では、第1の厚さ(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板の厚さ)は、第2の厚さの約1.5倍~約10倍(例えば、約1.75倍~約10倍、約2倍~約10倍、約2.25倍~約10倍、約2.5倍~約10倍、約2.75倍~約10倍、約3倍~約10倍、約3.25倍~約10倍、約3.5倍~約10倍、約3.75倍~約10倍、約4倍~約10倍、約1.5倍~約9倍、約1.5倍~約8倍、約1.5倍~約7.5倍、約1.5倍~約7倍、約1.5倍~約6.5倍、約1.5倍~約6倍、約1.5倍~約5.5倍、約1.5倍~約5倍、約1.5倍~約4.5倍、約1.5倍~約4倍、約1.5倍~約3.5倍、約2倍~約7倍、約2.5倍~約6倍、約3倍~約6倍)の範囲である。
【0043】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)と第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)は、同じ厚さを有していてもよい。1つ以上の特定の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)は、第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)よりも硬く、若しくは剛性が大きく、非常に具体的な実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)と第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の両方が0.2mm~1.6mmの範囲の厚さを有する。
【0044】
1つ以上の実施形態では、第1の厚さ(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板の厚さ)及び第2の厚さ(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板の厚さ)のいずれか一方又は両方が、1.6mm未満(例えば、1.55mm以下、1.5mm以下、1.45mm以下、1.4mm以下、1.35mm以下、1.3mm以下、1.25mm以下、1.2mm以下、1.15mm以下、1.1mm以下、1.05mm以下、1mm以下、0.95mm以下、0.9mm以下、0.85mm以下、0.8mm以下、0.75mm以下、0.7mm以下、0.65mm以下、0.6mm以下、0.55mm以下、0.5mm以下、0.45mm以下、0.4mm以下、0.35mm以下、0.3mm以下、0.25mm以下、0.2mm以下、0.15mm以下、又は約0.1mm以下)である。厚さの下限は、0.1mm、0.2mm又は0.3mmでありうる。幾つかの実施形態では、第1の厚さ(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板の厚さ)及び第2の厚さ(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板の厚さ)のいずれか一方又は両方が、約0.1mm~約1.6mm未満、約0.1mm~約1.5mm、約0.1mm~約1.4mm、約0.1mm~約1.3mm、約0.1mm~約1.2mm、約0.1mm~約1.1mm、約0.1mm~約1mm、約0.1mm~約0.9mm、約0.1mm~約0.8mm、約0.1mm~約0.7mm、約0.1mm、約0.2mm~約1.6mm未満、約0.3mm~約1.6mm未満、約0.4mm~約1.6mm未満、約0.5mm~約1.6mm未満、約0.6mm~約1.6mm未満、約0.7mm~約1.6mm未満、約0.8mm~約1.6mm未満、約0.9mm~約1.6mm未満、又は約1mm~約1.6mmの範囲である。
【0045】
幾つかの実施形態では、第1の厚さ(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板の厚さ)及び第2の厚さ(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板の厚さ)の一方は約1.6mm未満であるのに対し、第1の厚さ(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板の厚さ)及び第2の厚さ(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板の厚さ)の他方は約1.6mm以上である。このような実施形態では、第1の厚さ(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板の厚さ)及び第2の厚さ(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板の厚さ)は、互いに異なっている。例えば、第1の厚さ(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板の厚さ)及び第2の厚さ(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板の厚さ)の一方は約1.6mm未満であるのに対し、第1の厚さ(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板の厚さ)及び第2の厚さ(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板の厚さ)の他方は、約1.7mm以上、約1.75mm以上、約1.8mm以上、約1.7mm以上、約1.7mm以上、約1.7mm以上、約1.85mm以上、約1.9mm以上、約1.95mm以上、約2mm以上、約2.1mm以上、約2.2mm以上、約2.3mm以上、約2.4mm以上、2.5mm以上、2.6mm以上、2.7mm以上、2.8mm以上、2.9mm以上、3mm以上、3.2mm以上、3.4mm以上、3.5mm以上、3.6mm以上、3.8mm以上、4mm以上、4.2mm以上、4.4mm以上、4.6mm以上、4.8mm以上、5mm以上、5.2mm以上、5.4mm以上、5.6mm以上、5.8mm以上、又は6mm以上である。幾つかの実施形態では、第1の厚さ(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板の厚さ)又は第2の厚さ(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板の厚さ)は、約1.6mm~約6mm、約1.7mm~約6mm、約1.8mm~約6mm、約1.9mm~約6mm、約2mm~約6mm、約2.1mm~約6mm、約2.2mm~約6mm、約2.3mm~約6mm、約2.4mm~約6mm、約2.5mm~約6mm、約2.6mm~約6mm、約2.8mm~約6mm、約3mm~約6mm、約3.2mm~約6mm、約3.4mm~約6mm、約3.6mm~約6mm、約3.8mm~約6mm、約4mm~約6mm、約1.6mm~約5.8mm、約1.6mm~約5.6mm、約1.6mm~約5.5mm、約1.6mm~約5.4mm、約1.6mm~約5.2mm、約1.6mm~約5mm、約1.6mm~約4.8mm、約1.6mm~約4.6mm、約1.6mm~約4.4mm、約1.6mm~約4.2mm、約1.6mm~約4mm、約3.8mm~約5.8mm、約1.6mm~約3.6mm、約1.6mm~約3.4mm、約1.6mm~約3.2mm、又は約1.6mm~約3mmの範囲である。
【0046】
1つ以上の具体的な例では、第1の厚さ(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板の厚さ)は約1.6mm~約3mmであり、第2の厚さ(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板の厚さ)は約0.1mm~約1.6mm未満の範囲である。
【0047】
1つ以上の実施形態では、積層体300は、ASTM C1652/C1652Mで測定して、視覚的な歪みを実質的に含まない。特定の実施形態では、積層体、第1の湾曲したガラス基板及び/又は第2の湾曲したガラス基板は、ASTM C1652/C1652Mに準拠して、肉眼で視覚的に検出できるしわ又は歪みを実質的に含まない。
【0048】
1つ以上の実施形態では、第1の主面312又は第2の主面314は、有限会社折原製作所(日本所在)の商標名FSM-6000で市販されている表面応力計(「FSM」)などの表面応力計で測定して3MPa未満の表面圧縮応力を含む。幾つかの実施形態では、第1の湾曲したガラス基板は、本明細書に記載されるように強化されておらず(しかしながら、任意選択的にアニールされていてもよい)、約3MPa未満、又は約2.5MPa以下、2MPa以下、1.5MPa以下、1MPa以下、又は約0.5MPa以下の表面圧縮応力を示す。幾つかの実施形態では、このような表面圧縮応力範囲が、第1の主面及び第2の主面の両方に存在する。
【0049】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板及び第2の湾曲した基板の形成に使用した第1及び第2のガラス基板は、図5に示されるように、共成形して第1の湾曲したガラス基板及び第2の湾曲したガラス基板を形成する前に、実質的に平面のシート500として提供される。実質的に平面のシートは、第1及び第2の対向する主面502、504、並びに対向する非主面506、507を含みうる。幾つかの事例では、第1の湾曲したガラス基板及び第2の湾曲した基板の形成に使用される第1のガラス基板及び第2のガラス基板の一方又は両方は、所望の垂下深さを示さない3D又は2.5D形状を有していてもよく、これは、共成形プロセス中に最終的に形成されて、結果として得られる積層体中に存在する。追加的に又は代替的に、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方の厚さは、美的及び/又は機能的理由から、寸法の1つ以上に沿って一定であっても、該寸法の1つ以上に沿って変化してもよい。例えば、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方のエッジは、ガラス基板のより中央の領域と比較してより厚くなっていてもよい。
【0050】
第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の長さ、幅、及び厚さ寸法はまた、物品の用途及び使用によって変動しうる。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板310(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)は、第1の長さ及び第1の幅を含み(第1の厚さは、第1の長さ及び第1の幅の両方に直交する)、第2の湾曲したガラス基板320(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)は、第2の長さに直交する第2の長さ及び第2の幅を含む(第2の厚さは、第2の長さ及び第2の幅の両方に直交する)。1つ以上の実施形態では、第1の長さ及び第1の幅のいずれか一方又は両方が約0.25メートル(m)以上である。例えば、第1の長さ及び/又は第2の長さは、約1m~約3m、約1.2m~約3m、約1.4m~約3m、約1.5m~約3m、約1.6m~約3m、約1.8m~約3m、約2m~約3m、約1m~約2.8m、約1m~約2.8m、約1m~約2.8m、約1m~約2.8m、約1m~約2.6m、約1m~約2.5m、約1m~約2.4m、約1m~約2.2m、約1m~約2m、約1m~約1.8m、約1m~約1.6m、約1m~約1.5m、約1.2m~約1.8m又は約1.4m~約1.6mの範囲でありうる。
【0051】
例えば、第1の幅及び/又は第2の幅は、約0.5m~約2m、約0.6m~約2m、約0.8m~約2m、約1m~約2m、約1.2m~約2m、約1.4m~約2m、約1.5m~約2m、約0.5m~約1.8m、約0.5m~約1.6m、約0.5m~約1.5m、約0.5m~約1.4m、約0.5m~約1.2m、約0.5m~約1m、約0.5m~約0.8m、約0.75m~約1.5m、約0.75m~約1.25 m、又は約0.8m~約1.2mの範囲でありうる。
【0052】
1つ以上の実施形態では、第2の長さは、第1の長さの5%以内(例えば、約5%以下、約4%以下、約3%以下、又は約2%以下)である。例えば第1の長さが1.5mの場合、第2の長さは、約1.425m~約1.575mの範囲であってよく、依然として第1の長さの5%以内でありうる。1つ以上の実施形態では、第2の幅は第1の幅の5%以内(例えば、約5%以下、約4%以下、約3%以下、又は約2%以下)である。例えば第1の幅が1mの場合、第2の幅は、約1.05m~約0.95mの範囲とすることができ、かつ、依然として第1の幅の5%以内でありうる。
【0053】
幾つかの実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)500Aの一方又は両方が楔形を有していてよく、1つの非主面506Aの厚さは、図6に示されるように、対向する非主面507Aの厚さより大きい。厚さが変化する場合、本明細書に開示されている厚さ範囲は、主表面間の最大厚さである。
【0054】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)は、約1.2~約1.8、約1.2~約1.75、約1.2~約1.7、約1.2~約1.65、約1.2~約1.6、約1.2~約1.55、約1.25~約1.8、約1.3~約1.8、約1.35~約1.8、約1.4~約1.8、約1.45~約1.8、約1.5~約1.8、約1.55~約1.8、約1.45~約1.55の範囲の屈折率を有しうる。本明細書で用いられる場合、屈折率値は、550nmの波長に対するものである。
【0055】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)は、それらが形成される態様によって特徴付けることができる。例えば、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方は、フロート成形可能(すなわち、フロートプロセスによって形成される)、ダウンドロー可能、特に、フュージョン成形可能又はスロットドロー可能(すなわち、フュージョンドロープロセス又はスロットドロープロセスなどのダウンドロープロセスによって形成される)として特徴付けることができる。
【0056】
本明細書に記載される第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方は、フロートプロセスによって形成することができる。フロート成形可能なガラス基板は、滑らかな表面を特徴とすることができ、均一な厚さは、溶融ガラスを、典型的にはスズである溶融金属の床の上に浮遊させることによって製造される。例示的なプロセスでは、溶融スズ床の表面に供給される溶融ガラスは、浮遊するガラスリボンを形成する。ガラスリボンがスズ浴に沿って流れるにつれて、温度は、ガラスリボンが凝固して、スズからローラー上へと持ち上げることができる固体のガラス基板になるまで、徐々に低下する。浴から出た後、ガラス基板をさらに冷却することができ、また、内部応力を低減するためにアニールしてもよい。
【0057】
第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)と第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方は、ダウンドロープロセスによって形成することができる。ダウンドロープロセスは、比較的無傷な表面を有する、実質的に均一な厚さを有するガラス基板を生成する。ガラス基板の平均曲げ強度は概して、表面の傷の量及び大きさによって制御されることから、最小限に接触している無傷の表面は、より高い初期強度を有している。加えて、下方に延伸されたガラス基板は、非常に平坦で滑らかな表面を有しており、高価な研削及び研磨をすることなく、その最終用途に使用することができる。
【0058】
第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方は、溶融成形可能(すなわち、フュージョンドロープロセスを使用して成形可能)であると説明することができる。フュージョンプロセスは、溶融ガラス原料を受け入れるためのチャネルを有する延伸タンクを使用する。チャネルは、該チャネルの両側に、チャネルの長さに沿って上部が開放されている堰を有する。チャネルが溶融材料で満たされると、溶融ガラスは堰から溢れ出る。重力に起因して、溶融ガラスは、2つの流れるガラスフィルムとして延伸タンクの外面を流下する。延伸タンクのこれらの外面は、該延伸タンクの下方の縁部で接合するように、下方かつ内側へと延びている。2つの流れるガラスフィルムは、この縁部で接合し、融着して、単一の流れるガラス基板を形成する。フュージョンドロープロセスは、チャネル上を流れる2つのガラスフィルムが互いに融着することから、得られるガラス基板の外面はどちらも、装置のいずれの部分とも接触しないという利点をもたらす。よって、溶融延伸されたガラス基板の表面特性は、このような接触による影響を受けない。
【0059】
本明細書に記載される第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方は、スロットドロープロセスによって形成することができる。スロットドロープロセスは、フュージョンドロー法とは異なる。スロットドロープロセスでは、溶融原料ガラスは延伸タンクに供給される。延伸タンクの底部は、スロットの長さにわたって延在する、ノズルを備えた開口スロットを有している。溶融ガラスは、スロット/ノズルを通って流れ、連続的なガラス基板として、アニーリング領域内へと下方に延伸される。
【0060】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方、並びに第2の基板は、ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸塩ガラス及び/又はアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラス)、又はガラスセラミックでありうる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方が、非晶質微細構造を示してよく、結晶又は微結晶を実質的に含まなくてもよい。言い換えれば、ある特定の実施形態のガラス基板は、ガラスセラミック材料を除外する。幾つかの実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方がガラスセラミックである。適切なガラスセラミックの例としては、LiO-Al-SiO系(すなわちLAS系)ガラスセラミック、MgO-Al-SiO系(すなわちMAS系)ガラスセラミック、並びに、ムライト、スピネル、α-石英、β-石英固溶体、花崗岩、二ケイ酸リチウム、β-スポジュメン、ネフェリン、及びアルミナのうちの1つ以上の結晶相を含むガラスセラミックが挙げられる。ガラスセラミック材料を含むこのような基板は、本明細書に記載されるように強化することができる。
【0061】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方は、ガラス基板が0.7mmの厚さを有する場合に、約300nm~約2500nmの範囲の波長にわたり、約92%以下の全日射透過率を示す。例えば、第1及び第2のガラス基板の一方又は両方は、約60%~約92%、約62%~約92%、約64%~約92%、約65%~約92%、約66%~約92%、約68%~約92%、約70%~約92%、約72%~約92%、約60%~約90%、約60%~約88%、約60%~約86%、約60%~約85%、約60%~約84%、約60%~約82%、約60%~約80%、約60%~約78%、約60%~約76%、約60%~約75%、約60%~約74%、又は60%~約72%の範囲の全日射透過率を示す。
【0062】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方が着色されている。このような実施形態では、CIE L*a*b*(CIELAB)色空間において、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)は第1の色合いを含んでよく、第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)は、第1の色合いとは異なる第2の色合いを含む。1つ以上の実施形態では、第1の色合いと第2の色合いは同じである。1つ以上の特定の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板は第1の色合いを含み、第2の湾曲したガラス基板は着色されていない。1つ以上の特定の実施形態では、第2の湾曲したガラス基板は第2の色合いを含み、第1の湾曲したガラス基板は着色されていない。
【0063】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方が、約380nm~約780nmの範囲の波長にわたり、0.7mm又は1mmの厚さで、約75%~約85%の範囲の平均透過率を示す。幾つかの実施形態では、この厚さ及びこの範囲の波長にわたる平均透過率は、約75%~約84%、約75%~約83%、約75%~約82%、約75%~約81%、約75%~約80%、約76%~約85%、約77%~約85%、約78%~約85%、約79%~約85%、又は約80%~約85%の範囲でありうる。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方が、約300nm~約400nmの範囲の波長にわたり、0.7mm又は1mmの厚さで、50%以下(例えば、49%以下、48%以下、45%以下、40%以下、30%以下、25%以下、23%以下、20%以下、又は15%以下)のTuv-380又はTuv-400を示す。
【0064】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方が、表面から圧縮深さ(DOC)まで延びる圧縮応力を含むように強化されうる。圧縮応力領域は、引張応力を示す中央部分によって平衡化されている。DOCでは、応力は正(圧縮)応力から負(引張)応力へと移行する。
【0065】
1つ以上の実施形態では、このような強化ガラス基板は、化学的に強化、機械的に強化、又は熱的に強化することができる。幾つかの実施形態では、強化ガラス基板は、化学的かつ機械的に強化、機械的かつ熱的に強化、化学的かつ熱的に強化、又は化学的、機械的かつ熱的に強化されうる。1つ以上の特定の実施形態では、第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)は強化されており、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)は強化されていないが、任意選択的にアニールされる。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)は強化される。特定の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)と第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の両方が強化される。ガラス基板の一方又は両方が化学的及び/又は熱的に強化されている1つ以上の実施形態では、このような化学的及び/又は熱的強化は、湾曲したガラス基板上で行われる(すなわち、成形後)。幾つかの実施形態では、このようなガラス基板は、成形前に、任意選択的に機械的に強化されてもよい。ガラス基板の一方又は両方が機械的に強化されている(かつ、任意選択的に1つ以上の他の強化方法と組み合わせた)1つ以上の実施形態では、このような機械的強化は成形前に行われる。
【0066】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方は、物品の部分間の熱膨張係数の不整合を利用して、圧縮応力領域と引張応力を示す中央領域を作り出すことにより、機械的に強化することができる。このような機械的に強化された基板のDOCは、典型的には、1つの熱膨張係数を有するガラス基板の外側部分の厚さである(すなわち、ガラス基板の熱膨張係数が1つの値から別の値に変化する点)。
【0067】
幾つかの実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方は、ガラス転移点未満の温度へとガラス基板を加熱し、その後、急速に熱的に急冷するか、又はその温度を低下させることによって、機械的に強化されうる。上記のように、ガラス基板の一方又は両方が熱的に強化される1つ以上の実施形態では、このような熱的強化は、湾曲したガラス基板上で行われる(すなわち、成形後)。
【0068】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)の一方又は両方は、イオン交換によって化学的に強化することができる。上記のように、ガラス基板の一方又は両方が化学的に強化される1つ以上の実施形態では、このような化学的強化は、湾曲したガラス基板上で行われる(すなわち、成形後)。イオン交換プロセスでは、ガラス基板の表面又はその近くのイオンは、同じ原子価又は酸化状態を有する、より大きなイオンで置き換えられるか、又はそれらと交換される。ガラス基板が、酸化物基準で測定して少なくとも1つのアルカリ金属酸化物(例えば、LiO、NaO、KO、RbO、又はCsO)を含む組成物を含む実施形態では、物品の表面層のイオン及びより大きいイオンは、Li、Na、K、Rb、及びCsなどの一価のアルカリ金属カチオンである。あるいは、表面層内の一価のカチオンを、アルカリ金属カチオン以外の一価のカチオン、例えばAgなどで置き換えてもよい。このような実施形態では、ガラス基板内へと交換される一価のイオン(又はカチオン)は、中央部分の引張応力と釣り合う圧縮応力を表面部分に生成する。
【0069】
イオン交換プロセスは、典型的には、ガラス基板中のより小さなイオンと交換されるべきより大きいイオンを含有する1つの溶融塩浴(若しくは2つ以上の溶融塩浴)中にガラス基板を浸漬することによって行われる。水性塩浴も利用することができることに留意すべきである。加えて、浴の組成は、2種類以上のより大きいイオン(例えば、Na+及びK+)又は単一のより大きいイオンを含みうる。浴組成及び温度、浸漬時間、(一又は複数の)塩浴へのガラス板の浸漬回数、複数の塩浴の使用、アニーリングや洗浄などの追加の工程などを含むが、それらに限定されない、イオン交換プロセスのためのパラメータは、一般に、ガラス基板の組成(物品の構造及び存在するあらゆる結晶相を含む)、並びに強化から生じるガラス基板の所望のDOC及びCSによって決定されることは、当業者に認識されるであろう。例示的な溶融浴組成物は、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、及び塩化物を含みうる。典型的な硝酸塩としては、KNO、NaNO、LiNO、NaSO、及びそれらの組合せが挙げられる。溶融塩浴の温度は、典型的には、約380℃から最高で約450℃までの範囲であり、一方浸漬時間は、ガラス基板の厚さ、浴温度、及びガラス(又は一価のイオン)の拡散性に応じて、約15分から最長約100時間の範囲である。しかしながら、上述のものとは異なる温度及び浸漬時間も使用することができる。
【0070】
1つ以上の実施形態では、ガラス基板は、約370℃~約480℃の温度を有する、100%NaNO、100%KNO、又はNaNOとKNOの組合せの溶融塩浴中に浸漬することができる。幾つかの実施形態では、ガラス基板は、約5%~約90%のKNO及び約10%~約95%のNaNOを含む溶融混合塩浴に浸漬することができる。1つ以上の実施形態では、ガラス基板は、第1の浴に浸漬させた後に第2の浴に浸漬させてもよい。第1及び第2の浴は、互いに異なる組成及び/又は温度を有していてもよい。第1及び第2の浴への浸漬時間は変動させることができる。例えば、第1の浴への浸漬は、第2の浴への浸漬よりも長くすることができる。
【0071】
1つ以上の実施形態では、ガラス基板は、約420℃未満(例えば、約400℃又は約380℃)の温度を有する、NaNO及びKNO(例えば、49%/51%、50%/50%、51%/49%)を含む溶融混合塩浴に、約5時間未満、さらには約4時間以下の時間、浸漬することができる。
【0072】
イオン交換条件は、「スパイク」をもたらすように、又は得られるガラス基板の表面又はその近くの応力プロファイルの勾配を増加させるように、調整することができる。スパイクは、より大きい表面CS値をもたらすことができる。このスパイクは、本明細書に記載されるガラス基板に用いられるガラス組成物の独特の性質に起因して、単一浴、若しくは、単一組成又は混合組成を有する複数の浴によって達成することができる。
【0073】
2以上の一価のイオンがガラス基板内へと交換される1つ以上の実施形態では、異なる一価のイオンは、ガラス基板内の異なる深さへと交換されうる(かつ、異なる深さにおいて、ガラス基板内に異なる大きさの応力を生じさせる)。応力を発生するイオンの結果的に得られる相対深さは、決定することができ、応力プロファイルの異なる特性を引き起こすことができる。
【0074】
CSは、折原製作所(日本所在)製造のFSM-6000などの市販の機器を使用する表面応力計(FSM)によってなど、当技術分野で知られている手段を使用して測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光学係数(SOC)の正確な測定に依拠している。SOCは、その両方が、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、ASTM規格C770-98(2013)に「ガラス応力-光学係数の測定のための標準試験方法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient)」に記載される、ファイバ法及び4点曲げ法、並びに及びバルクシリンダ法などの当技術分野で知られている方法によって測定される。本明細書で用いられるCSとは、圧縮応力層内で測定される最高の圧縮応力値である「最大圧縮応力」でありうる。幾つかの実施形態では、最大圧縮応力は、ガラス基板の表面に位置している。他の実施形態では、最大圧縮応力は、表面下のある深さにおいて生じ、圧縮プロファイルに「埋没ピーク」の出現をもたらしうる。
【0075】
DOCは、強化方法及び条件に応じて、FSM又は散乱光偏光器(SCALP)(エストニア国タリン所在のGlasstress Ltd.社から入手可能なSCALP-04散乱光偏光器など)によって測定されうる。ガラス基板がイオン交換処理によって化学的に強化されている場合、どのイオンがガラス基板内へと交換されるかに応じて、FSM又はSCALPが用いられうる。カリウムイオンをガラス基板内へと交換することによってガラス基板の応力が発生する場合には、DOCの測定にはFSMが用いられる。ナトリウムイオンをガラス基板内へと交換することによって応力が発生する場合には、DOCの測定にはSCALPが用いられる。カリウムとナトリウムの両方のイオンをガラス内へと交換することによってガラス基板の応力が生じる場合には、ナトリウムの交換深さはDOCを示し、カリウムイオンの交換深さは圧縮応力の大きさの変化(ただし、圧縮から引張への応力変化ではない)を示すと考えられていることから、DOCはSCALPで測定される;このようなガラス基板中のカリウムイオンの交換深さは、FSMによって測定される。中央張力又はCTは最大引張応力であり、SCALPで測定される。
【0076】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)は、ガラス基板の厚さtに対する割合で記載されるDOCを示すように、(本明細書に記載されるように)強化されうる。例えば、1つ以上の実施形態では、DOCは、約0.03t以上、約0.035t以上、約0.04t以上、約0.045t以上、約0.05t以上、約0.1t以上、約0.11t以上、約0.12t以上、約0.13t以上、約0.14t、以上、約0.15t以上、約0.16t以上、約0.17t以上、約0.18t以上、約0.19t以上、約0.2t以上、約0.21t以上でありうる。幾つかの実施形態では、DOCは、約0.03t~約0.25t、約0.04t~約0.25t、約0.05t~約0.25t、約0.06t~約0.25t、約0.07t~約0.25t、約0.08t~約0.25t、約0.09t~約0.25t、約0.18t~約0.25t、約0.11t~約0.25t、約0.12t~約0.25t、約0.13t~約0.25t、約0.14t~約0.25t、約0.15t~約0.25t、約0.08t~約0.24t、約0.08t~約0.23t、約0.08t~約0.22t、約0.08t~約0.21t、約0.08t~約0.2t、約0.08t~約0.19t、約0.08t~約0.18t、約0.08t~約0.17t、約0.08t~約0.16t、又は約0.08t~約0.15tの範囲でありうる。幾つかの事例では、DOCは約20μm以下でありうる。1つ以上の実施形態では、DOCは、約40μm以上(例えば、約40μm~約300μm、約50μm~約300μm、約60μm~約300μm、約70μm~約300μm、約80μm~約300μm、約90μm~約300μm、約100μm~約300μm、約110μm~約300μm、約120μm~約300μm、約140μm~約300μm、約150μm~約300μm、約40μm~約290μm、約40μm~約280μm、約40μm~約260μm、約40μm~約250μm、約40μm~約240μm、約40μm~約230μm、約40μm~約220μm、約40μm~約210μm、約40μm~約200μm、約40μm~約180μm、約40μm~約160μm、約40μm~約150μm、約40μm~約140μm、約40μm~約130μm、約40μm~約120μm、約40μm~約110μm、又は約40μm~約100μm)でありうる。
【0077】
1つ以上の実施形態では、強化されたガラス基板は、約100MPa以上、約150MPa以上、約200MPa以上、約300MPa以上、約400MPa以上、約500MPa以上、約600MPa以上、約700MPa以上、約800MPa以上、約900MPa以上、約930MPa以上、約1000MPa以上、又は約1050MPa以上の(ガラス基板の表面又はある深さにおいて見られうる)CSを有しうる。
【0078】
1つ以上の実施形態では、強化されたガラス基板は、約20MPa以上、約30MPa以上、約40MPa以上、約45MPa以上、約50MPa以上、約60MPa以上、約70MPa以上、約75MPa以上、約80MPa以上、又は約85MPa以上の最大引張応力又は中央張力(CT)を有しうる。幾つかの実施形態では、最大引張応力又は中央張力(CT)は、約40MPa~約100MPaの範囲でありうる。
【0079】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)は、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸塩ガラス、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス、又はアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスのうちの1つを含む。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)のうちの一方はソーダ石灰ケイ酸塩ガラスであり、また、第1の湾曲したガラス基板(又は第1の湾曲したガラス基板の形成に使用した第1のガラス基板)及び第2の湾曲したガラス基板(又は第2の湾曲したガラス基板の形成に使用した第2のガラス基板)のうちの他方は、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸塩ガラス、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス、又はアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスである。
【0080】
1つ以上の実施形態では、本明細書で使用される中間層(例えば、330)は、単層又は複数の層を含みうる。中間層(又はその層)は、ポリビニルブチラール(PVB)、アコースティックPVB(APVB)、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーで形成されうる。中間層の厚さは、約0.5mm~約2.5mm、約0.8mm~約2.5mm、約1mm~約2.5mm又は約1.5mm~約2.5mmの範囲でありうる。中間層はまた、積層体の一方のエッジから他方のエッジまで、不均一な厚さ又は楔形を有していてもよい。
【0081】
1つ以上の実施形態では、積層体(及び/又は第1の湾曲したガラス基板及び第2の湾曲したガラス基板の一方又は両方)は、複雑に湾曲した形状を示す。本明細書で用いられる場合、「複雑な湾曲」及び「複雑に湾曲した」とは、互いに異なる2つの直交軸に沿って曲率を有する、非平面形状を意味する。複雑に湾曲した形状の例としては、球形、非球形、及びトロイダルを含むがこれらに限定されない、非展開可能形状とも呼ばれる、単純又は複合湾曲を有するものが挙げられる。実施形態による複雑に湾曲した積層体はまた、このような表面のセグメント又は部分を含んでもよく、あるいは、このような湾曲及び表面の組合せから構成されていてもよい。1つ以上の実施形態では、積層体は、主半径及び交差曲率を含む、複合湾曲を有していてもよい。1つ以上の実施形態による複雑に湾曲した積層体は、2つの独立した方向に異なる曲率半径を有しうる。よって、1つ以上の実施形態によれば、複雑に湾曲した積層体は、該積層体が所与の寸法に対して平行な軸(すなわち第1の軸)に沿って湾曲し、かつ、同じ寸法に対して垂直な軸(すなわち第2の軸)に沿っても湾曲している、「交差曲率」を有すると特徴付けることができる。有意な最小半径を有意な交差曲率及び/又は曲げ深さと組み合わせると、積層体の曲率はさらに複雑になりうる。幾つかの積層体はまた、互いに対して垂直ではない軸に沿って曲がるものも含みうる。非限定的な例として、複雑に湾曲した積層体は、0.5m×1.0mの長さ及び幅寸法、並びに、短軸に沿った2~2.5mの曲率半径と、長軸に沿った4~5mの曲率半径とを有することができる。1つ以上の実施形態では、複雑に湾曲した積層体は、少なくとも1つの軸に沿って5m以下の曲率半径を有しうる。1つ以上の実施形態では、複雑に湾曲した積層体は、少なくとも第1の軸に沿って、かつ、第1の軸に対して垂直な第2の軸に沿って、5m以下の曲率半径を有しうる。1つ以上の実施形態では、複雑に湾曲した積層体は、少なくとも第1の軸に沿って、かつ、第1の軸に対して垂直ではない第2の軸に沿って、5m以下の曲率半径を有しうる。
【0082】
自動車用ガラス窓又は建築用ガラス窓を含む、前述の請求項のいずれかに記載の積層体。
【0083】
本開示の第2の態様は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態による積層体を含む車両に関する。例えば、例えば、図7は、内部を画成する本体610と、内部と連通する少なくとも1つの開口620と、開口に配置された窓ガラスとを備えた車両600を示しており、ここで、窓は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態による積層体630を含む。1つ以上の実施形態では、積層体は複雑に湾曲している。積層体630は、車両において、サイドライト、フロントガラス、後部窓、バックミラー、及びサンルーフを形成することができる。幾つかの実施形態では、積層体630は、車両の内部に内部仕切り(図示せず)を形成することができ、あるいは、車両の外面に配置されて、エンジンブロックカバー、ヘッドライトカバー、テールライトカバー、又はピラーカバーを形成することができる。1つ以上の実施形態では、車両は、内面(図示されていないが、ドアトリム、背もたれ、ドアパネル、ダッシュボード、センターコンソール、フロアボード、及びピラーを含みうる)を含んでよく、本明細書に記載される積層体又はガラス物品は、内面に配置される。1つ以上の実施形態では、内部表面はディスプレイを含み、ガラス層はディスプレイ上に配置される。本明細書で用いられる場合、車両は、自動車、オートバイ、鉄道車両、機関車、ボート、船、飛行機、ヘリコプター、ドローン、宇宙船などを含む。
【0084】
本開示の別の態様は、本明細書に記載される積層体を含む建築用途に関する。幾つかの実施形態では、建築用途は、1つ以上の実施形態による積層体又はガラス物品を少なくとも部分的に使用して形成される、手すり、階段、装飾パネル、又は壁のカバー、柱、仕切り、エレベータかご、家庭用器具、窓、家具、及び他の用途を含む。
【0085】
1つ以上の実施形態では、積層体は、第2の湾曲したガラス基板が内部に隣接するように(かつ、第1の湾曲したガラス基板が外部に隣接するように)、第2の湾曲したガラス基板が車両の内部若しくは建物又は部屋の内部に面するように、車両又は建築用途内に位置付けられる。幾つかの実施形態では、第2の湾曲したガラス基板は、内部と直接接触している(すなわち、第2の湾曲したガラス基板の第4の表面324は、むき出しであり、コーティングされていない)。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラス基板の第1の表面312は、むき出しであり、コーティングされていない。1つ以上の実施形態では、積層体は、第2の湾曲したガラス基板が外部に隣接するように(かつ、第1の湾曲したガラス基板が内部に隣接するように)、第2の湾曲したガラス基板が車両の外部若しくは建物又は部屋の外部に面するように、車両又は建築用途内に位置付けられる。幾つかの実施形態では、積層体の第2の湾曲したガラス基板は、外部と直接接触している(すなわち、外部に面する第2の湾曲したガラス基板の表面は、むき出しであり、コーティングされていない)。
【0086】
1つ以上の実施形態では、図3を参照すると、第1の表面312及び第4の表面324の両方がむき出しであり、コーティングを実質的に含まない。幾つかの実施形態では、第1の表面312及び第4の表面324のエッジ部分の一方又は両方がコーティングを含みうるのに対し、中央部分はむき出しであり、コーティングを実質的に含まない。任意選択的に、第1の表面312及び第4の表面324の一方又は両方は、コーティング又は表面処理(例えば、反射防止コーティング、防眩コーティング又は表面、清掃が容易な表面、インク装飾、導電性コーティング等)を含む。1つ以上の実施形態では、積層体は、中間層330に隣接した第2の表面312又は第3の表面322の一方又は両方の上に1つ以上の導電性コーティングを含む。
【0087】
1つ以上の実施形態では、図3Aを参照すると、第1の表面322及び第4の表面314の両方がむき出しであり、コーティングを実質的に含んでいない。幾つかの実施形態では、第1の表面322及び第4の表面314のエッジ部分の一方又は両方は、コーティングを含みうるのに対し、中央部分はむき出しであり、コーティングを実質的に含まない。任意選択的に、第1の表面322及び第4の表面314の一方又は両方が、コーティング又は表面処理(例えば、反射防止コーティング、防眩コーティング又は表面、清掃が容易な表面、インク装飾、導電性コーティング等)を含む。1つ以上の実施形態では、積層体は、中間層330に隣接した第2の表面324又は第3の表面312の一方又は両方の上に1つ以上の導電性コーティングを含む。
【0088】
本開示の第3の態様は、本明細書に記載される湾曲した積層体の実施形態など、湾曲した積層体を形成する方法に関する。1つ以上の実施形態では、本方法は、1つ以上の実施形態による第1のガラス基板及び1つ以上の実施形態による第2のガラス基板を含むスタックを形成する工程、並びに、スタックを加熱し、該スタックを共成形して、共成形スタックを形成する工程を含む。1つ以上の実施形態では、第2のガラス基板は、第1のガラス基板上に配置されてスタックを形成する。1つ以上の実施形態では、第1のガラス基板は、第2のガラス基板上に配置されてスタックを形成する。
【0089】
スタックを加熱する工程は、スタックをレーア炉などの動的炉、若しくは静的炉内に置く工程を含みうる。レーア炉700の例が図8に示されている。レーア炉などの動的炉では、スタックは第1のモジュール702に導入され、一連のモジュール702、704、706、708、710、712を介して搬送され、モジュール714で最高温度に達するまで、温度が連続して上昇する。この最高温度は、炉の設定点と称される。モジュール716において、スタックが共成形される。幾つかの実施形態では、加熱がモジュール716に適用されるが、不要な場合もある。次いで、スタックは、モジュール718を介して一連のモジュール720、722、724、726、728、730、732に搬送されるが、スタックは、モジュール734に到達するまで、連続した温度低下によって徐々に冷却される。スタックが各モジュール内に存在する持続時間もまた指定される(例えば、約30秒から500秒の範囲)。1つ以上の実施形態では、モジュール704は約225℃~約275℃の範囲の温度を有するように制御され、モジュール706は約400℃~約460℃の範囲の温度を有するように制御され、モジュール708は約530℃~約590℃の範囲の温度を有するように制御され、モジュール710は約580℃~約640℃の範囲の温度を有するように制御され、モジュール712は約590℃~約650℃の範囲の温度を有するように制御され、モジュール714は約600℃~約680℃の範囲の温度を有するように制御される。典型的な炉では、ガラス基板の温度は、モジュールが制御される温度より低い。例えば、ガラス基板温度と制御されたモジュール温度との差は、約10℃~20℃の範囲でありうる。
【0090】
1つ以上の実施形態では、スタックは、それぞれ、中央部分と該中央部分を囲むエッジ部分とを含む対向する主面を含む。1つ以上の実施形態では、共成形したスタックは、第1の垂下深さを有する第1の湾曲したガラス基板と、それぞれが第2の垂下深さを有する第2の湾曲したガラス基板とを含み、ここで、第1の垂下深さ及び第2の垂下深さは、2mmを超え、かつ互いの10%以内である。
【0091】
1つ以上の実施形態では、第1のガラス基板(加熱及び共成形の前)は、第1の粘度(ポアズ)及び第1の垂下温度を含み、第2のガラス基板は、第1の粘度の10倍以上の第2の粘度と、第1の垂下温度とは約30℃以上(例えば、35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、又は60℃以上)異なる第2の垂下温度とを含む。
【0092】
1つ以上の実施形態では、スタックを加熱する工程は、第1の垂下温度及び第2の垂下温度とは異なる温度へとスタックを加熱する工程を含む。幾つかの実施形態では、スタックを加熱する工程は、第1の垂下温度と第2の垂下温度の間の温度(例えば、約630℃~約665℃、約630℃~約660℃、約630℃~約655℃、約630℃~約650℃、約630℃~約645℃、約635℃~約665℃、約640℃~約665℃、約645℃~約665℃、又は約650℃~約665℃)へとスタックを加熱する工程を含む。1つ以上の特定の実施形態では、スタックを加熱する工程は、第1の垂下温度又は第2の垂下温度へとスタックを加熱する工程を含む。
【0093】
本方法の1つ以上の実施形態では、第1の垂下深さ及び/又は第2の垂下深さは、約6mm~約25mmの範囲である。例えば、第1の垂下深さ及び第2の垂下深さの一方又は両方は、約2mm~約25mm、約4mm~約25mm、約5mm~約25mm、約6mm~約25mm、約8mm~約25mm、約10mm~約25mm、約12mm~約25mm、約14mm~約25mm、約15mm~約25mm、約2mm~約24mm、約2mm~約22mm、約2mm~約20mm、約2mm~約18mm、約2mm~約16mm、約2mm~約15mm、約2mm~約14mm、約2mm~約12mm、約2mm~約10mm、約2mm~約8mm、約6mm~約20mm、約8mm~約18mm、約10mm~約15mm、約12mm~約22mm、約15mm~約25mm、又は約18mm~約22mmの範囲でありうる。
【0094】
1つ以上の実施形態では、本方法は、スタックを雌型に配置又は位置付け、雌型の上に配置されたスタックを加熱する工程を含む。幾つかの実施形態では、スタックを共成形する工程は、雌型の開口を通じて重力を使用してスタックを垂下する工程を含む。本明細書で用いられる「垂下深さ」などの用語は、垂下又は他の共成形プロセスによって達成される成形深さを指す。
【0095】
1つ以上の実施形態では、本方法は、スタックに雄型を適用する工程を含む。幾つかの実施形態では、スタックが雌型に配置又は位置付けられるとともに、雄型が適用される。
【0096】
1つ以上の実施形態では、本方法は、スタックに減圧を適用してスタックの共成形を促進する工程を含む。幾つかの実施形態では、スタックが雌型に配置又は位置付けられるとともに、減圧が適用される。
【0097】
1つ以上の実施形態では、本方法は、共成形したスタックが形成されるまで加熱の持続時間を変化させつつ、スタックを一定温度で加熱する工程を含む。本明細書で用いられる場合、一定温度とは、目標温度から±3℃、目標温度から±2℃、又は目標温度から±1℃の温度を意味する。
【0098】
1つ以上の実施形態では、本方法は、共成形したスタックが形成されるまで加熱の温度を変化させつつ、スタックを一定の持続時間で加熱する工程を含む。本明細書で用いられる場合、一定の持続時間とは、目標持続時間から±10秒、目標持続時間から±7秒、目標持続時間から±5秒、又は目標持続時間から±3秒の持続時間を意味する。
【0099】
1つ以上の実施形態では、本方法は、共成形中に(本明細書で定義されるように)スタックを一定温度で加熱することによって、スタックを共成形する工程を含む。1つ以上の実施形態では、本方法は、共成形中に一定に上昇する温度でスタックを加熱することによって、スタックを共成形する工程を含む。本明細書で用いられる場合、一定に上昇という用語は、線形に上昇する温度、若しくは規則的な又は不規則な間隔で段階的に上昇する温度を含みうる。
【0100】
1つ以上の実施形態では、本方法は、スタックの中央部分とエッジ部分との間でスタックに温度勾配を生成する工程を含む。幾つかの事例では、温度勾配を生成する工程は、中央部分とエッジ部分に不均一に熱を印加する工程を含む。幾つかの実施形態では、エッジ部分に印加されるよりも多くの熱が中央部分に印加される。他の実施形態では、中央部分に印加されるよりも多くの熱がエッジ部分に印加される。幾つかの実施形態では、温度勾配を生成する工程は、中央部分及びエッジ部分の他方に印加される熱と比較して中央部分及びエッジ部分の一方に印加される熱を低減する工程を含む。幾つかの事例では、温度勾配を生成する工程は、エッジ部分に印加される熱と比較して中央部分に印加される熱を低減する工程を含む。幾つかの実施形態では、温度勾配を生成する工程は、中央部分に印加される熱と比較してエッジ部分に印加される熱を低減する工程を含む。中央部分又はエッジ部分への熱は、このような部分を物理的障壁又は熱的障壁で遮蔽する、若しくは、ヒートシンクをこのような部分に追加するなどの物理的手段によって、低減することができる。
【0101】
1つ以上の実施形態では、本方法は、第1のガラス基板と第2のガラス基板との間に引力を生成する工程を含む。本方法は、スタックを加熱しつつ及び/又はスタックを共成形しつつ、引力を生成する工程を含む。幾つかの実施形態では、引力を生成する工程は、静電力を生成する工程を含む。
【0102】
1つ以上の実施形態では、本方法は、第1のガラス基板と第2のガラス基板との間に減圧を生成する工程を含む。本方法は、スタックを加熱しつつ及び/又はスタックを共成形しつつ、減圧を生成する工程を含む。幾つかの実施形態では、減圧を生成する工程は、それによって第1のガラス基板及び第2の基板の一方(スタック内で他方の下に位置するもの)が、第1のガラス基板及び第2のガラス基板の他方よりも先に湾曲し始める、スタックの両方を加熱する工程を含む。第1のガラス基板及び第2のガラス基板の一方のこの湾曲は、第1のガラス基板と第2のガラス基板との間に減圧を作り出す。この減圧により、最初に湾曲しないガラス基板(すなわち、他方のガラス基板が垂下し始める間に湾曲しないガラス基板)が他方のガラス基板とともに湾曲し始める。1つ以上の実施形態では、本方法は、ガラス基板間に減圧を生成及び/又は維持するために、第1のガラス基板及び第2の基板のそれぞれの周縁部(315、325)間の接触を生成及び維持する工程を含む。1つ以上の実施形態では、接触は周縁部全体(315、325)に沿って維持される。1つ以上の実施形態では、接触は、第1のガラス基板及び第2のガラス基板の一方又は両方で垂下深さが達成されるまで維持される。
【0103】
1つ以上の実施形態では、本方法は、第1のガラス基板と第2のガラス基板との間に一時的な結合を形成する工程を含む。幾つかの実施形態では、一時的な結合は、静電力を含んでもよく、あるいは、減圧力(ガラス基板間の空気膜として特徴付けられうる)を含んでもよい。本方法は、スタックを加熱しつつ及び/又はスタックを共成形しつつ、一時的な結合を形成する工程を含む。本明細書で用いられる「一時的な結合」という語句は、手で、又は共成形したガラス基板(それらの間に中間層を含まない)を分離するための当技術分野で知られている装置を使用して克服することができる結合を指す。
【0104】
一時的な結合の機構を評価及び特性付けするために、第1のガラス基板及び第2のガラス基板を一緒に積み重ね、第1のガラス基板と第2のガラス基板との間に剥離粉末(例えば、CaCO3、タルクなど)の層を配置した。第2のガラス基板の630℃における粘度は、第1のガラス基板の630℃における粘度より大きく、また、第2のガラス基板は第1のガラス基板の上に配置される。一時的な結合の形成を数学的に特徴付けるために、剥離粉末の粒子の最大直径にほぼ等しい(例えば、約10マイクロメートル~約20マイクロメートルの範囲)空気膜(又は距離を有するギャップ)が第1のガラス基板と第2のガラス基板との間に存在すると仮定した。2つのガラス基板間の仮定した空気膜内のギャップにおける圧力(P)は、以下の式1によって支配される:
【0105】
【数1】
【0106】
式中、hは時間tの関数としての第1のガラス基板と第2のガラス基板との間のギャップであり、μは空気粘度である。この式は、圧力をギャップ開口に関連付け、ギャップhが最小化されるか、ガラス基板の最大厚さと比較して相対的に小さい限り、有効である(たとえば、ガラス基板の最大厚さに対するギャップの比は約10%未満又は約5%未満である)。ガラス基板が弾性状態にある場合(加熱又は予熱の前)、2つのガラス基板間のギャップ距離には変化がない。ガラス基板が成形温度まで加熱され、かつ、底部ガラス基板の粘度が十分に低い場合、第2のガラス基板(第1のガラス基板の下に配置)は、第1のガラス基板から湾曲する(又は、共成形が共垂下を含む場合には、垂下する)傾向がある;しかしながら、分離を行うには、エッジからガラス基板の間へと空気が入らなければならず、それによって、2つのガラス基板間に、第2のガラス基板が第1のガラス基板から湾曲又は分離するのを防ぐ低圧(減圧又は吸引)が生じる。
【0107】
ガラス基板間の吸引力又は減圧力によって生じる一時的な結合の形成を、シミュレーションによって検証した。図9は、空気の流れの影響を伴った、630℃において異なる粘度を有する2つのガラス基板を共成形するシミュレーションを示している。
【0108】
シミュレーションにおいて、第1のガラス基板は、厚さ0.55mmのアルミノケイ酸塩ガラス基板である第2のガラス基板の下に位置する、厚さ2.1mmのソーダ石灰ケイ酸塩ガラス基板である。アルミノケイ酸塩ガラス基板は、67モル%のSiO2、8.52モル%のAl2O3、14モル%のNa2O、1.2モル%のK2O、6.5モル%のMgO、0.5モル%のCaO、及び0.2モル%のSnO2の組成物を含む。シミュレーションには、周縁に第1及び第2のガラス基板スタックを支持する厚さ2mmのスチールフレーム900が含まれていた。フレームは298mmの長さ及び幅を有していた。第1及び第2のガラス基板は両方とも、300mmの長さ及び幅を有していた。第1及び第2のガラス基板間の初期のギャップは25μmであった。図9は、シミュレーション後の第1及び第2のガラス基板の完全な画像の4分の1(1/4)の画像を示している。
【0109】
図10は、その間に基板を垂下させた、重力下(現状のまま)でのシミュレーションに適用された温度プロファイルを示している。図9は、温度が400℃の開始温度に戻った後、120秒で得られた第1及び第2のガラス基板の共成形スタックを示している。シミュレーションの結果は、第1のガラス基板と第2のガラス基板とが、129秒後に両方のガラス基板の中心点において0.675mmのギャップ又は距離で分離されることを示している。分離発生源は図9に見ることができ、そこではプレートが隅部で分離されている。この分離は、隅部のガラス基板の曲げに関連する機械的な力によって引き起こされる。第2のガラス基板(第1のガラス基板の上に配置された)は、より高い粘度に起因して、曲がりが少なくなり、結果的に、隅部に開口を生じる。この開口によって、空気が入り、ガラス基板間の圧力の影響が低減される。図11は、とりわけ隅部における、減圧の度合いを示している。図11では、凡例は、大気圧に近い圧力(max、大気圧)と、負圧(min、最大圧力)を示している。具体的には、図11は、共成形プロセスの高温部分の終了時の圧力勾配(パスカル単位)を示し、かつ、隅部と中心点との圧力の差を示しており、第1及び第2のガラス基板間に空気が入るようになる、プレート間の開口が示されている。
【0110】
この観察は、隅部の開口を閉じることにより、第1及び第2のガラス基板間の一時的な結合の形成が促進されることを示唆した。これは観察であり、開口を閉じる解決策は、実験(実施例A~D)によって確認した。実施例A及びBでは、第1のガラス基板は、2.1mmの厚さを有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスであり、第2のガラス基板は、第1のガラス基板の上部に配置された、0.55mmの厚さを有するアルミノケイ酸塩ガラスであった。第1及び第2のガラス基板は、12インチ(約30.48cm)の長さ及び幅寸法(12インチ×12インチ(約30.48cm×約30.48cm))を有していた。アルミノケイ酸塩ガラス基板は、67モル%のSiO2、8.52モル%のAl2O3、14モル%のNa2O、1.2モル%のK2O、6.5モル%のMgO、0.5モル%のCaO、及び0.2モル%のSnO2の組成物を含む。実施例Aでは、スタックの隅部の位置に補強を施さず、静的炉内でスタックを共成形した。実施例Bでは、スタックの4つの隅部のそれぞれに金属クリップの形態で補強を施し、同じ静的炉内で共成形する前に、スタックの各隅部で第1及び第2のガラス基板を一緒にクランプした。表1は、実施例A及びBについて垂下深さの不一致を比較している。実施例Bは、補強が施されたときに不一致が減少したことを示し、曲げ中にスタックの隅部に生じた開口を閉じる効果を示唆している。本明細書で用いられる場合、不一致は、第1及び第2のガラス基板間の垂下深さの差を示す。例えば、第1のガラス基板が10mmの垂下深さを達成し、第2のガラス基板が5mmの垂下深さを達成する場合、5mmの形状不一致が存在する。
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示されるように、1つ以上の実施形態では、本方法は、スタックのエッジ又は周縁の一部(例えば、隅部)若しくはスタックのエッジ又は周縁全体でガラス基板間の開口を防止又は閉鎖することにより、第1及び第2のガラス基板間に一時的な結合を形成する工程を含みうる。1つ以上の実施形態では、本方法は、スタックのエッジ又は周縁の一部(例えば、隅部)若しくはスタックのエッジ又は周縁全体でガラス基板間の接触(直接、若しくは剥離粉末又は介在材料によって間接的に)を維持することにより、第1及び第2のガラス基板間に一時的な結合を形成及び/又は維持する工程を含みうる。
【0113】
一時的な結合を形成する代替的な方法を実施例C及びDで評価した。実施例C及びDでは、第1のガラス基板は、2.1mmの厚さを有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスであり、第2のガラス基板は、第1のガラス基板の上部に配置された、0.7mmの厚さを有するアルミノケイ酸塩ガラスであった。第1及び第2のガラス基板は、12インチ(約30.48cm)の長さ及び幅寸法(12インチ×12インチ(約30.48cm×約30.48cm))を有していた。アルミノケイ酸塩ガラス基板は、67モル%のSiO2、8.52モル%のAl2O3、14モル%のNa2O、1.2モル%のK2O、6.5モル%のMgO、0.5モル%のCaO、及び0.2モル%のSnO2の組成物を含む。実施例Cでは、静的炉内で共成形する前にスタックに補強を施さなかった。実施例Dでは、開口を閉じる機械的手段を使用し、同じ静的炉内で共成形する前に、隅部又はその近くのスタック上にカウンタウエイトを配置することを含んでいた。表2は、実施例C及びD間で測定された形状の不一致を比較している。これもまた、カウンタウエイトを使用して第1及び第2のガラス基板間の一時的な結合を形成又は維持する場合に、より低い不一致が達成される。
【0114】
【表2】
【0115】
一時的な結合の効果と、結果として生じる基板の分離をシミュレーションするために、数値解析も実行した。図12は、数値シミュレーションで隅部に施された(クリップの形態の)例示的な補強の図を示している。図12に示される特定の設計では、約6mmの長さにわたり、0.4Nの力がスタックに加わる。その結果、図13に示されるように、隅部が補強されたガラス基板間の最大分離は、129秒で0.164mmに減少する(図9でクリップを使用しなかった場合に見られた0.675mmのギャップと比較した)。基板の隅部からより遠ざかったエッジに沿って追加の補強を使用すると、分離はさらに低減されるであろう。加えて、シミュレーションで使用されるソーダ石灰ケイ酸塩ガラス及びアルミノケイ酸塩ガラスよりも近い粘度を有するガラス組成物を使用すると、ガラス基板間の分離がさらに少なくなるであろう。図13は、図12のスタックの領域全体にわたる圧力の大きさの変化のシミュレーションを示しており、減圧力による一時的な結合の形成を示している。
【0116】
一時的な結合を形成する方法を、自動車のフロントガラスに使用するためのサイズ及び形状を有するガラス基板に適用した。実施例E及びFでは、第1のガラス基板は、2.1mmの厚さを有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスであり、第2のガラス基板は、第1のガラス基板の上部に配置された、0.7mmの厚さを有するアルミノケイ酸塩ガラスであった。実施例Eには、スタックが曲げツール上に置かれ、レーア炉内での共垂下によって共成形される前に、スタックに補強が施されていない2回の実施が含まれていた。実施例Fには、実施例Eと同じ態様で共成形する前に、隅部又はその付近を含むスタックの周縁にクリップを適用する2回の実施が含まれていた。
【0117】
図14A~B及び15A~Bは、それぞれ実施例E及びFの各実施について、第1のガラス基板と第2のガラス基板との間の形状の不一致を示している。実施例Eは、約6.2mm(図14A)から5.5mm(図14B)の範囲で形状の不一致を示した。実施例Fは、両方の実施(図15A~B)で0.1mmの形状の不一致を示した。具体的には、両方の実施において、第1のガラス基板は12.1mmの垂下深さを達成し、第2のガラス基板は12mmの垂下深さを達成した。
【0118】
実施例G及びHは、実施例E及びFと同じ第1及び第2のガラス基板、並びに同じ共成形プロセス及び装置を使用したが、補強のためにクリップの代わりにカウンタウエイトを使用した。実施例Gは、補強していない3回の実施を含み、図16A~Cに示されるように、各実施は約10mmの形状の不一致をもたらした。実施例Hは、各実施がスタックの隅部又はその近くに配置されたカウンタウエイトを含む、3回の実施を含んでいた。図17A~Cに示されるように、隅部の位置におけるカウンタウエイトは、0.5mm未満の形状の不一致をもたらした。
【0119】
上に示したように、数値モデル及び実験データは、ガラス基板間の形状の不一致におけるスタックの隅部からの圧力分布と結果として生じる空気の流れの影響を示している。モデルは、共成形中のガラス基板間の一時的な結合の欠如により、ガラス基板間の粘度と曲げ剛性の違いに起因して、ガラス基板間により大きい形状の不一致が生じると予測した。実験により、ガラス基板間の空気の通過を閉じる又は防止すると、形状の一致が大幅に改善されるというシミュレーション観察が確認された。共成形中にガラス基板間に発生する負圧(又は減圧力)により、2つのガラス基板(異なる粘度を有する)が一緒に保持される。ガラス基板のエッジで封止を維持できる限り、異なる粘度を有する2つのガラス基板間で良好な形状の一致を達成することができる。
【0120】
1つ以上の実施形態では、本方法は、第1のガラス基板及び第2のガラス基板の周縁部(315、325)におけるしわを防止する工程を含む。1つ以上の実施形態では、しわを防止する工程は、曲げ中のスタックの加熱から第1及び第2のガラス基板の周縁部(315、325)の少なくとも一部又は全体を遮蔽する工程を含む。
【0121】
1つ以上の実施形態では、本方法は、加熱及び共成形する前に、第1のガラスシートと第2のガラスシートの間に剥離粉末を配置する工程を含みうる。
【0122】
幾つかの実施形態では、本方法は、第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲したガラス基板の間に中間層を挿入する工程、並びに第1の湾曲したガラス基板、中間層、及び第2の湾曲したガラス基板を一緒に積層する工程を含む。
【実施例0123】
以下の実施例によって、さまざまな実施形態がさらに明らかになるであろう。
【0124】
実施例1
成形積層体での使用のために、3つのガラス基板を検討した。基板Aはソーダ石灰ガラス組成物から作られた。基板B1は、第1の組成物から作られたコア層と、異なる熱膨張係数を有する第2の組成物から作られたコア層を囲む2つのクラッド層とを含む、3層ガラス複合材であり、組成物B1から作られたガラス基板は機械的に強化される。基板B2は、曲げプロセスが完了した後、化学的に強化することが可能な、アルミノケイ酸塩ガラス組成物(約67モル%のSiO2、8.52モル%のAl2O3、14モル%のNa2O、1.2モル%のK2O、6.5モル%のMgO、0.5モル%のCaO、及び0.2モル%のSnO2を含む)から作られる。基板A、基板B1、及び基板B2の各々の温度の関数としてのそれぞれの粘度が図4に示されている。
【0125】
2mmの厚さを有する基板Aの試料を、レーア炉内で630℃の最高温度に110秒間(レーア内のあるステーションから別のステーションへ移動するための割り出し時間を含む)加熱することによって個別に垂下させて、約20mmの垂下深さを達成した。基板B1及びB2を、基板Aと同じ垂下条件に個別に供し、異なるガラス組成物から作られたガラス基板が(当分野の一般的な理解に反して)共成形できるかどうかを調査した。
【0126】
最初の近似では、ガラス基板の温度はレーア炉の設定点(すなわち、レーア炉に入る目標温度)と同じであると仮定され、630℃及び660℃におけるガラス基板のそれぞれの粘度は表3に示されるように概算された。
【0127】
【表3】
【0128】
基板B1は、0.55mmの厚さを有しており、レーア炉内で630℃の最高温度へ110秒間(レーア内のあるステーションから別のステーションへと移動するための割り出し時間を含む)加熱することによって個別に垂下させて、約2mmの垂下深さを達成した。この結果は、(組成物Aと比較して)組成物B1によって示されるより高い粘度を考慮して予想される。
【0129】
基板B1を基板Aの上部に積み重ね、次に、このスタックをレーア炉内で630℃の最高温度に110秒間(レーア内のあるステーションから別のステーションへと移動するための割り出し時間を含む)加熱することにより、共成形した。ガラス粘度の既知の理解に基づいて、基板Aと基板B1(スタック内)のそれぞれは、基板が個別に垂下した場合に達成されるのと実質的に同じ垂下深さを達成するであろうと予想された。驚くべきことに、スタック(基板Aと基板B1の両方を含む)は約6mmの垂下深さを達成した。
【0130】
次に、基板Aの上部に基板B1を積み重ねたスタックを、レーア炉内で660℃の最高温度に110秒間(レーア内のあるステーションから別のステーションへと移動するための割り出し時間を含む)加熱することによって共成形した。基板A及び基板B1(スタック内)の両方の垂下は実質的に同一であり、垂下深さは20mmに増加した。
【0131】
理論に拘束されるものではないが、共垂下プロセス中に2つのガラス基板間に一時的な結合が形成され、これが、組成物Aから作られたガラス基板が過度に深く垂下するのを防ぎ、かつ、組成物B1から作られたガラス基板の垂下を促進すると考えられる。
【0132】
理論に拘束されるものではないが、スタックはまた、式(1)に基づいて、所与の温度での個々のガラス基板の厚さと粘度に基づいた有効粘度を概ね示すと考えられる。したがって、基板Aは、該基板Aの粘度が6×10ポアズである630℃に加熱した後、20mmの垂下深さまで個別に垂下した。しかしながら、基板Aの上部に積み重ねられた基板B1を含むスタックが、式(1)による有効粘度が6.86×10ポアズである(630℃での基板Aの粘度に近づく)、660℃に加熱されると、スタックは20mmの垂下深さを達成した。下記表4は、基板Aの粘度と、基板A及び基板B1を含むスタックの有効粘度とを示している。660℃でのスタックの有効粘度と630℃での基板Aの粘度との小さい差は、ガラス温度とレーア炉の設定点との差の可能性によると考えられる。加えて、有効粘度の差は、スタック間の質量の差によるものと考えられる。熱は両方のスタックに同じ持続時間で適用される;しかしながら、有効粘度の差は、成形用に加熱するためのガラスの追加の厚さ(すなわち、0.7mmの厚さを有する)によるものである。
【0133】
したがって、互いに非常に異なる粘度を有するガラス基板でさえ、本明細書に記載される実施形態に従って首尾よく共成形することができる。
【0134】
【表4】
【0135】
基板Aを基板B1の上部に配置して、スタックを形成した。次に、スタックを約660℃の温度に加熱し、20mmを超える垂下深さを達成した。理論に拘束されるものではないが、より薄い基板B1上のより厚い基板Aの追加重量にもかかわらず、基板B1は基板Aがさらに垂下するのを防ぐと理論付けられる。さらには、基板B1単独と比較してスタックの垂下深さが増加したのは、共垂下中に基板間に形成された一時的な結合によるものと考えられる。理論に拘束されるものではないが、このような一時的な結合には、基板間の引力(静電力を含みうる)の形成が含まれうる。
【0136】
基板B2を基板Aの上部に配置して、スタックを形成した。図4に示されるように、基板Aと基板B2の粘度曲線には、(基板A及び基板B1の曲線と比較して)大きな差が存在する。基板B2は0.7mmの厚さを有していた場合、スタックは適切な垂下深さを達成しなかった;しかしながら、基板B2が0.55mmの厚さを有する場合、スタックは適切な垂下深さを達成した。理論に拘束されるものではないが、より厚いガラス基板上に積み重ねられたより薄いガラス基板は、2つのガラス基板間の改善された接触並びに潜在的に改善された一時的結合を生成すると考えられ、それによって改善された共成形をもたらすと考えられる。
【0137】
実施例1は、異なる厚さ及び異なる粘度(並びに、可能性のある組成)を有する一対のガラス基板を首尾よく共成形することができ、このような共成形がスタックの有効粘度によって推進されることを示している。
【0138】
実施例2
比較例2A~2B、実施例2C~2F、比較例2G、及び実施例2H~2Nをレーア炉内で形成した。比較例2A~2B及び2Gは単一のガラス基板であり、実施例2C~2F及び2H~2Nは、1つ以上の実施形態によって共成形した積層体である。表5は、各例の構成と達成された垂下深さを示している。例では、上部ガラス基板が底部ガラス基板上に配置され、スタックを形成する。単一のガラス基板のみが使用される場合には、底部ガラス基板として示される。該当する場合には、ガラス基板を分離した後に、各ガラス基板の垂下深さを測定する。
【0139】
【表5】
【0140】
本開示の態様(1)は、第1の主面、第1の主面とは反対側の第2の主面、第1の主面と第2の主面との間の距離として定義される第1の厚さ、及び約2mm以上の第1の垂下深さを含む第1の湾曲したガラス基板であって、630℃の温度で第1の粘度(ポアズ)を含む、第1の湾曲したガラス基板;第3の主面、第3の主面とは反対側の第4の主面、第3の主面と第4の主面との間の距離として定義される第2の厚さ、及び約2mm以上の第2の垂下深さを含む第2の湾曲したガラス基板であって、630℃の温度で第1の粘度より大きい第2の粘度を含む、第2の湾曲したガラス基板;並びに、第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲したガラス基板との間に配置され、かつ、第2の主面及び第3の主面に隣接した中間層を備えた積層体に関し、ここで、第1の垂下深さは第2の垂下深さから10%以内の範囲にあり、第1のガラス基板と第2のガラス基板との形状偏差は、光学三次元スキャナで測定して±5mm以下であり、第1の主面及び第4の主面の一方又は両方が、ASTM 1561に準拠して透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、200ミリディオプター未満の光学歪みを示し、かつ、第1の主面又は第2の主面が、ASTM C1279に準拠して表面応力計で測定して、7MPa未満の膜引張応力を含む。
【0141】
本開示の態様(2)は、約630℃の温度で、第2の粘度が第1の粘度の約10倍~第1の粘度の約750倍の範囲である、態様(1)の積層体に関する。
【0142】
本開示の態様(3)は、ガラススタックが、約500℃~約700℃の範囲の温度(T)で、第1の粘度と第2の粘度の間の有効粘度を含み、次式:
μ有効(T)=((μ1(T)t1)/(t1+t2))+((μ2(T)t2)/(t1+t2))
によって決定される、態様(1)又は態様(2)の積層体に関し、ここで、μ(T)は温度(T)における第1の湾曲したガラス基板の粘度であり、tは第1の湾曲したガラス基板の厚さであり、μ(T)は温度(T)における第2の湾曲したガラス基板の粘度であり、tは第2の湾曲したガラス基板の厚さである。
【0143】
本開示の態様(4)は、第2の厚さが第1の厚さ未満である、態様(1)~(3)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0144】
本開示の態様(5)は、第1の厚さが約1.6mm~約3mmであり、第2の厚さが約0.1mm~約1.6mm未満の範囲である、態様(1)~(4)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0145】
本開示の態様(6)は、第1の湾曲した基板が第1の垂下温度を含み、第2の湾曲したガラス基板が第1の垂下温度とは異なる第2の垂下温度を含む、態様(1)~(5)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0146】
本開示の態様(7)は、第1の垂下温度と第2の垂下温度との差が約30℃~約150℃の範囲である、態様(6)の積層体に関する。
【0147】
本開示の態様(8)は、形状偏差が約±1mm以下である、態様(1)~(7)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0148】
本開示の態様(9)は、形状偏差が約±0.5mm以下である、態様(1)~(8)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0149】
本開示の態様(10)は、光学歪みが約100ミリディオプター以下である、態様(1)~(9)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0150】
本開示の態様(11)は、膜引張応力が約5MPa以下である、態様(1)~(10)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0151】
本開示の態様(12)は、第2の垂下深さが約5mm~約30mmの範囲である、態様(1)~(11)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0152】
本開示の態様(13)は、第1の主面又は第2の主面が、表面応力計で測定して、3MPa未満の表面圧縮応力を含む、態様(1)~(12)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0153】
本開示の態様(14)は、積層体が、ASTM C1652/C1652Mで測定して、視覚的な歪みを実質的に含まない、態様(1)~(13)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0154】
本開示の態様(15)は、第2の湾曲したガラス基板が強化されている、態様(1)~(14)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0155】
本開示の態様(16)は、第2の湾曲したガラス基板が化学的に強化、機械的に強化、又は熱的に強化されている、態様(15)の積層体に関する。
【0156】
本開示の態様(17)は、第1のガラス湾曲基板が強化されていない、態様(15)又は態様(16)の積層体に関する。
【0157】
本開示の態様(18)は、第1の湾曲したガラス基板が強化されている、態様(15)又は態様(16)の積層体に関する。
【0158】
本開示の態様(19)は、第1の湾曲したガラス基板がソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを含む、態様(1)~(18)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0159】
本開示の態様(20)は、第1の湾曲したガラス基板が、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸塩ガラス、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス、又はアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスを含む、態様(1)~(19)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0160】
本開示の態様(21)は、第1の湾曲したガラス基板が第1の長さ及び第1の幅を含み、第1の長さ及び第1の幅のいずれか一方又は両方が約0.25メートル以上である、態様(1)~(20)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0161】
本開示の態様(22)は、第1の湾曲したガラス基板が第1の長さ及び第1の幅を含み、第2の湾曲したガラス基板が、第1の長さの5%以内の第2の長さ及び第1の幅の5%以内の第2の幅を含む、態様(1)~(21)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0162】
本開示の態様(23)は、積層体が複雑に湾曲している、態様(1)~(22)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0163】
本開示の態様(24)は、積層体が自動車用ガラス窓又は建築用ガラス窓を含む、態様(1)~(23)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0164】
本開示の態様(25)は、内部及び該内部と連通した開口を画成する本体と、開口に配置された複雑に湾曲した積層体とを備えた車両に関し、該積層体は、第1の主面、第1の主面とは反対側の第2の主面、第1の主面と第2の主面との間の距離として定義される第1の厚さ、及び約2mm以上の第1の垂下深さを含む第1の湾曲したガラス基板であって、第1の粘度(ポアズ)を含む、第1の湾曲したガラス基板と、第3の主面、第3の主面とは反対側の第4の主面、第3の主面と第4の主面との間の距離として定義される第2の厚さ、及び約2mm以上の第2の垂下深さを含む第2の湾曲したガラス基板であって、約630℃の温度で第1の粘度より大きい第2の粘度を含む、第2の湾曲したガラス基板と、第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲したガラス基板との間に配置され、かつ、第2の主面及び第3の主面に隣接した中間層とを含み、ここで、第1の垂下深さは第2の垂下深さから10%以内の範囲にあり、第1のガラス基板と第2のガラス基板との形状偏差が、光学三次元スキャナで測定して±5mm以下であり、第1の主面及び第4の主面の一方又は両方が、ASTM 1561に準拠して透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、200ミリディオプター未満の光学歪みを示し、かつ、第1の主面又は第2の主面は、ASTM C1279に準拠して表面応力計で測定して、7MPa未満の膜引張応力を含む。
【0165】
本開示の態様(26)は、630℃の温度で、第2の粘度が第1の粘度の約10倍から第1の粘度の約750倍の範囲である、態様(25)の車両に関する。
【0166】
本開示の態様(27)は、第2の厚さが第1の厚さ未満である、態様(25)又は態様(26)の積層体に関する。
【0167】
本開示の態様(28)は、第2の厚さが約1.6mm未満である、態様(25)~(27)のいずれかの積層体に関する。
【0168】
本開示の態様(29)は、第1の厚さが約1.6mm~約3mmであり、第2の厚さが約0.1mm~約1.6mm未満の範囲である、態様(25)~(28)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0169】
本開示の態様(30)は、第25の湾曲した基板が第1の垂下温度を含み、第2の湾曲したガラス基板が第1の垂下温度とは異なる第2の垂下温度を含む、態様(1)~(29)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0170】
本開示の態様(31)は、形状偏差が約±1mm以下である、態様(25)~(30)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0171】
本開示の態様(32)は、光学歪みが約100ミリディオプター以下である、態様(25)~(31)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0172】
本開示の態様(33)は、膜引張応力が約5MPa以下である、態様(25)~(32)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0173】
本開示の態様(34)は、第2の垂下深さが約5mm~約30mmの範囲である、態様(25)~(33)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0174】
本開示の態様(35)は、第1の主面又は第2の主面が、表面応力計で測定して3MPa未満の表面圧縮応力を含む、態様(25)~(34)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0175】
本開示の態様(36)は、CIE L*a*b*(CIELAB)色空間において、第1の湾曲したガラス基板が第1の色合いを含み、第2の湾曲したガラス基板が第1の色合いとは異なる第2の色合いを含む、態様(25)~(35)のいずれかの積層体に関する。
【0176】
本開示の態様(37)は、積層体が、ASTM C1652/C1652Mで測定して、視覚的な歪みを実質的に含まない、態様(25)~(36)のいずれかに記載の積層体に関する。
【0177】
本開示の態様(38)は、第1の粘度(ポアズ)及び第1の垂下温度を含む第1のガラス基板と、第2のガラス基板であって、630℃の温度で第1の粘度より大きい第2の粘度及び第1の垂下温度とは異なる第2の垂下温度を含む第2のガラス基板とを含むスタックを形成する工程;並びに、スタックを加熱し、該スタックを共成形して、共成形したスタックを形成する工程を含む、湾曲した積層体を形成する方法に関し、該共成形したスタックは、第1の垂下深さを有する第1の湾曲したガラス基板と、それぞれが第2の垂下深さを有する第2の湾曲したガラス基板とを含み、第1の垂下深さ及び第2の垂下深さは、2mmを超え、かつ互いから10%以内の範囲にある。
【0178】
本開示の態様(39)は、第2のガラス基板が第1のガラス基板上に配置される、態様(38)の方法に関する。
【0179】
本開示の態様(40)は、第1のガラス基板が第2のガラス基板上に配置される、態様(38)の方法に関する。
【0180】
本開示の態様(41)は、スタックを加熱する工程が、第1の垂下温度及び第2の垂下温度とは異なる温度へとスタックを加熱する工程を含む、態様(38)~(40)のいずれかの方法に関する。
【0181】
本開示の態様(42)は、スタックを加熱する工程が、第1の垂下温度と第2の垂下温度の間の温度へとスタックを加熱する工程を含む、態様(38)~(41)のいずれかの方法に関する。
【0182】
本開示の態様(43)は、スタックを加熱する工程が、スタックを第1の垂下温度へと加熱する工程を含む、態様(38)~(40)のいずれかの方法に関する。
【0183】
本開示の態様(44)は、スタックを加熱する工程が、スタックを第2の垂下温度へと加熱する工程を含む、態様(38)~(40)のいずれかの方法に関する。
【0184】
本開示の態様(45)は、第1の垂下深さ又は第2の垂下深さが約6mm~約30mmの範囲である、態様(38)~(44)のいずれかの方法に関する。
【0185】
本開示の態様(46)は、スタックを雌型に置き、該スタックを雌型の上で加熱する工程をさらに含む、態様(38)~(45)のいずれかの方法に関する。
【0186】
本開示の態様(47)は、スタックを共成形する工程が、雌型の開口を通じて重力を使用してスタックを垂下する工程を含む、態様(46)の方法に関する。
【0187】
本開示の態様(48)は、スタックに雄型を適用する工程をさらに含む、態様(46)又は態様(47)の方法に関する。
【0188】
本開示の態様(49)は、スタックに減圧を適用して、スタックの共成形を促進する工程をさらに含む、態様(46)又は態様(47)の方法に関する。
【0189】
本開示の態様(50)は、スタックを加熱する工程が、共成形したスタックが形成されるまで加熱の持続時間を変化させつつ、スタックを一定温度で加熱する工程を含む、態様(38)~(49)のいずれかの方法に関する。
【0190】
本開示の態様(51)は、スタックを加熱する工程が、共成形したスタックが形成されるまで加熱の温度を変化させつつ、スタックを一定の持続時間で加熱する工程を含む、態様(38)~(49)のいずれかの方法に関する。
【0191】
本開示の態様(52)は、スタックを共成形する工程が、共成形中にスタックを一定温度で加熱する工程を含む、態様(38)~(51)のいずれかの方法に関する。
【0192】
本開示の態様(53)は、スタックを共成形する工程が、共成形中に一定に上昇する温度でスタックを加熱する工程を含む、態様(38)~(51)のいずれかの方法に関する。
【0193】
本開示の態様(54)は、スタックがそれぞれ、中央部分と該中央部分を囲むエッジ部分とを含む対向する主面を含み、スタックを加熱する工程が、中央部分とエッジ部分との間に温度勾配を生成する工程を含む、態様(38)~(45)のいずれかの方法に関する。
【0194】
本開示の態様(55)は、温度勾配を生成する工程は、中央部分及びエッジ部分に不均一に熱を印加する工程を含む、態様(54)の方法に関する。
【0195】
本開示の態様(56)は、第1のガラス基板と第2のガラス基板の間に静電力又は減圧を生成する工程をさらに含む、態様(38)~(55)のいずれかの方法に関する。
【0196】
本開示の態様(57)は、スタックを第1の垂下温度へと加熱するとともに、静電力又は減圧が生成される、態様(56)の方法に関する。
【0197】
本開示の態様(58)は、スタックを共成形するとともに、静電力又は減圧が生成される、態様(56)の方法に関する。
【0198】
本開示の態様(59)は、スタックを加熱し、かつ、スタックを共成形するとともに、静電力又は減圧が生成される、態様(56)の方法に関する。
【0199】
本開示の態様(60)は、第1のガラス基板と第2のガラス基板との間に一時的な結合を形成する工程をさらに含む、態様(38)~(59)のいずれかの方法に関する。
【0200】
本開示の態様(61)は、一時的な結合が静電力を含む、態様(60)の方法に関する。
【0201】
本開示の態様(62)は、加熱及び成形の前に第1のガラスシートと第2のガラスシートの間に剥離粉末を配置する工程をさらに含む、態様(38)~(61)のいずれかの方法に関する。
【0202】
本開示の態様(63)は、第1の湾曲したガラス基板と第2の湾曲したガラス基板の間に中間層を挿入する工程、並びに第1の湾曲したガラス基板、中間層、及び第2の湾曲したガラス基板を一緒に積層する工程をさらに含む、態様(38)~(61)のいずれかの方法に関する。
【0203】
本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、さまざまな修正及び変更を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。
【0204】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
積層体において、
第1の主面、前記第1の主面とは反対側の第2の主面、前記第1の主面と前記第2の主面との間の距離として定義される第1の厚さ、及び約2mm以上の第1の垂下深さを含む第1の湾曲したガラス基板であって、630℃の温度で第1の粘度(ポアズ)を含む、第1の湾曲したガラス基板;
第3の主面、前記第3の主面とは反対側の第4の主面、前記第3の主面と前記第4の主面との間の距離として定義される第2の厚さ、及び約2mm以上の第2の垂下深さを含む第2の湾曲したガラス基板であって、630℃の温度で、前記第1の粘度より大きい第2の粘度を含む、第2の湾曲したガラス基板;並びに
前記第1の湾曲したガラス基板と前記第2の湾曲したガラス基板との間に配置され、かつ、前記第2の主面及び前記第3の主面に隣接した中間層
を備えた積層体であって、
前記第1の垂下深さが前記第2の垂下深さから10%以内の範囲にあり、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板との形状偏差が、光学三次元スキャナで測定して±5mm以下であり、
前記第1の主面及び前記第4の主面の一方又は両方が、ASTM 1561に準拠して透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、200ミリディオプター未満の光学歪みを示し、かつ
前記第1の主面又は前記第2の主面が、ASTM C1279に準拠して表面応力計で測定して、7MPa未満の膜引張応力を含む、
積層体。
【0205】
実施形態2
約630℃の温度で、前記第2の粘度が、前記第1の粘度の約10倍から前記第1の粘度の約750倍の範囲である、実施形態1に記載の積層体。
【0206】
実施形態3
前記ガラススタックが、約500℃~約700℃の範囲の温度(T)で、前記第1の粘度と前記第2の粘度との間にあり、次式:
μ有効(T)=((μ1(T)t1)/(t1+t2))+((μ2(T)t2)/(t1+t2))
によって決定される、有効粘度を含み、式中、μ(T)は温度(T)における前記第1の湾曲したガラス基板の粘度であり、tは前記第1の湾曲したガラス基板の厚さであり、μ(T)は温度(T)における前記第2の湾曲したガラス基板の粘度であり、tは前記第2の湾曲したガラス基板の厚さである、実施形態1又は実施形態2に記載の積層体。
【0207】
実施形態4
前記第2の厚さが前記第1の厚さ未満である、実施形態1~3のいずれかに記載の積層体。
【0208】
実施形態5
前記第1の厚さが約1.6mm~約3mmであり、前記第2の厚さが約0.1mm~約1.6mm未満の範囲である、実施形態1~4のいずれかに記載の積層体。
【0209】
実施形態6
前記第1の湾曲した基板が第1の垂下温度を含み、前記第2の湾曲したガラス基板が前記第1の垂下温度とは異なる第2の垂下温度を含む、実施形態1~5のいずれかに記載の積層体。
【0210】
実施形態7
前記第1の垂下温度と前記第2の垂下温度との差が約5℃~約150℃の範囲である、実施形態6に記載の積層体。
【0211】
実施形態8
前記形状偏差が約±1mm以下である、実施形態1~7のいずれかに記載の積層体。
【0212】
実施形態9
前記形状偏差が約±0.5mm以下である、実施形態1~7のいずれかに記載の積層体。
【0213】
実施形態10
前記光学歪みが約100ミリディオプター以下である、実施形態1~9のいずれかに記載の積層体。
【0214】
実施形態11
前記膜引張応力が約5MPa以下である、実施形態1~10のいずれかに記載の積層体。
【0215】
実施形態12
前記第2の垂下深さが約5mm~約30mmの範囲である、実施形態1~11のいずれかに記載の積層体。
【0216】
実施形態13
前記第1の主面又は前記第2の主面が、表面応力計で測定して、3MPa未満の表面圧縮応力を含む、実施形態1~12のいずれかに記載の積層体。
【0217】
実施形態14
前記積層体が、ASTM C1652/C1652Mで測定して、視覚的な歪みを実質的に含まない、実施形態1~13のいずれかに記載の積層体。
【0218】
実施形態15
前記第2の湾曲したガラス基板が強化されている、実施形態1~14のいずれかに記載の積層体。
【0219】
実施形態16
前記第2の湾曲したガラス基板が化学的に強化、機械的に強化、又は熱的に強化されている、実施形態15に記載の積層体。
【0220】
実施形態17
前記第1の湾曲したガラス基板が強化されていない、実施形態15又は16に記載の積層体。
【0221】
実施形態18
前記第1の湾曲したガラス基板が強化されている、実施形態15又は16に記載の積層体。
【0222】
実施形態19
前記第1の湾曲したガラス基板がソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを含む、実施形態1~18のいずれかに記載の積層体。
【0223】
実施形態20
前記第1の湾曲したガラス基板が、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸塩ガラス、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス、又はアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスを含む、実施形態1~19のいずれかに記載の積層体。
【0224】
実施形態21
前記第1の湾曲したガラス基板が第1の長さ及び第1の幅を含み、前記第1の長さ及び前記第1の幅のいずれか一方又は両方が約0.25メートル以上である、実施形態1~20のいずれかに記載の積層体。
【0225】
実施形態22
前記第1の湾曲したガラス基板が第1の長さ及び第1の幅を含み、前記第2の湾曲したガラス基板が、前記第1の長さの5%以内の第2の長さと、前記第1の幅の5%以内の第2の幅とを含む、実施形態1~21のいずれかに記載の積層体。
【0226】
実施形態23
前記積層体が複雑に湾曲している、実施形態1~22のいずれかに記載の積層体。
【0227】
実施形態24
前記積層体が自動車用ガラス窓又は建築用ガラス窓を含む、実施形態1~23のいずれかに記載の積層体。
実施形態25
車両において、
内部及び前記内部と連通した開口を画成する本体と、
前記開口に配置された複雑に湾曲した積層体であって、
第1の主面、前記第1の主面とは反対側の第2の主面、前記第1の主面と前記第2の主面との間の距離として定義される第1の厚さ、及び約2mm以上の第1の垂下深さを含む第1の湾曲したガラス基板であって、第1の粘度(ポアズ)を含む、第1の湾曲したガラス基板;
第3の主面、前記第3の主面とは反対側の第4の主面、前記第3の主面と前記第4の主面との間の距離として定義される第2の厚さ、及び約2mm以上の第2の垂下深さを含む第2の湾曲したガラス基板であって、約630℃の温度で前記第1の粘度より大きい第2の粘度を含む、第2の湾曲したガラス基板;並びに
前記第1の湾曲したガラス基板と前記第2の湾曲したガラス基板との間に配置され、かつ、前記第2の主面及び前記第3の主面に隣接した中間層
を備えた積層体と
を含み、
前記第1の垂下深さが前記第2の垂下深さから10%以内の範囲にあり、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板との形状偏差が、光学三次元スキャナで測定して±5mm以下であり、
前記第1の主面及び前記第4の主面の一方又は両方が、ASTM 1561に準拠して透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、200ミリディオプター未満の光学歪みを示し、かつ
前記第1の主面又は前記第2の主面が、ASTM C1279に準拠して表面応力計で測定して、7MPa未満の膜引張応力を含む、
車両。
【0228】
実施形態26
630℃の温度で、前記第2の粘度が、前記第1の粘度の約10倍から前記第1の粘度の約750倍の範囲である、実施形態25に記載の車両。
【0229】
実施形態27
前記第2の厚さが前記第1の厚さ未満である、実施形態25又は実施形態26に記載の車両。
【0230】
実施形態28
前記第2の厚さが約1.6mm未満である、実施形態25~27のいずれかに記載の車両。
【0231】
実施形態29
前記第1の厚さが約1.6mm~約3mmであり、前記第2の厚さが約0.1mm~約1.6mm未満の範囲である、実施形態25~28のいずれかに記載の車両。
【0232】
実施形態30
第1の湾曲した基板が第1の垂下温度を含み、前記第2の湾曲したガラス基板が前記第1の垂下温度とは異なる第2の垂下温度を含む、実施形態25~29のいずれかに記載の車両。
【0233】
実施形態31
前記形状偏差が約±1mm以下である、実施形態25~30のいずれかに記載の車両。
【0234】
実施形態32
前記光学歪みが約100ミリディオプター以下である、実施形態25~31のいずれかに記載の車両。
【0235】
実施形態33
前記膜引張応力が約5MPa以下である、実施形態25~32のいずれかに記載の車両。
【0236】
実施形態34
前記第2の垂下深さが約5mm~約30mmの範囲である、実施形態25~33のいずれかに記載の車両。
【0237】
実施形態35
前記第1の主面又は前記第2の主面が、表面応力計で測定して3MPa未満の表面圧縮応力を含む、実施形態25~34のいずれかに記載の車両。
【0238】
実施形態36
CIE L*a*b*(CIELAB)色空間において、前記第1の湾曲したガラス基板が第1の色合いを含み、前記第2の湾曲したガラス基板が前記第1の色合いとは異なる第2の色合いを含む、実施形態25~35のいずれかに記載の車両。
【0239】
実施形態37
前記積層体が、ASTM C1652/C1652Mで測定して、視覚的な歪みを実質的に含まない、実施形態25~36のいずれかに記載の車両。
【0240】
実施形態38
湾曲した積層体を形成する方法において、
第1の粘度(ポアズ)及び第1の垂下温度を含む第1のガラス基板と、630℃の温度で前記第1の粘度より大きい第2の粘度及び前記第1の垂下温度とは異なる第2の垂下温度を含む第2のガラス基板とを備えたスタックを形成する工程;及び
前記スタックを加熱し、該スタックを共成形して、共成形したスタックを形成する工程であって、前記共成形したスタックが、第1の垂下深さを有する第1の湾曲したガラス基板と、それぞれが第2の垂下深さを有する第2の湾曲したガラス基板とを含み、前記第1の垂下深さ及び前記第2の垂下深さが2mmを超え、かつ互いから10%以内の範囲にある、工程
を含む、方法。
【0241】
実施形態39
前記第2のガラス基板が前記第1のガラス基板上に配置される、実施形態38に記載の方法。
【0242】
実施形態40
前記第1のガラス基板が前記第2のガラス基板上に配置される、実施形態38に記載の方法。
【0243】
実施形態41
前記スタックを加熱する工程が、前記スタックを、前記第1の垂下温度及び前記第2の垂下温度とは異なる温度へと加熱する工程を含む、実施形態38~40のいずれかに記載の方法。
【0244】
実施形態42
前記スタックを加熱する工程が、前記スタックを前記第1の垂下温度と前記第2の垂下温度の間の温度へと加熱する工程を含む、実施形態38~41のいずれかに記載の方法。
【0245】
実施形態43
前記スタックを加熱する工程が、前記スタックを前記第1の垂下温度へと加熱する工程を含む、実施形態38~40のいずれかに記載の方法。
【0246】
実施形態44
前記スタックを加熱する工程が、前記スタックを前記第2の垂下温度へと加熱する工程を含む、実施形態38~40のいずれかに記載の方法。
【0247】
実施形態45
前記第1の垂下深さ又は前記第2の垂下深さが約6mm~約30mmの範囲である、実施形態38~44のいずれかに記載の方法。
【0248】
実施形態46
前記スタックを雌型上に置き、前記スタックを前記雌型上で加熱する工程をさらに含む、実施形態38~45のいずれかに記載の方法。
【0249】
実施形態47
前記スタックを共成形する工程が、前記雌型の開口を通じて重力を使用して前記スタックを垂下する工程を含む、実施形態46に記載の方法。
【0250】
実施形態48
前記スタックに雄型を施す工程をさらに含む、実施形態46又は47に記載の方法。
【0251】
実施形態49
前記スタックに減圧を適用して該スタックの共成形を促進する工程をさらに含む、実施形態46又は47に記載の方法。
【0252】
実施形態50
前記スタックを加熱する工程が、前記共成形したスタックが形成されるまで加熱の持続時間を変化させつつ、前記スタックを一定温度で加熱する工程を含む、実施形態38~49のいずれかに記載の方法。
【0253】
実施形態51
前記スタックを加熱する工程が、前記共成形したスタックが形成されるまで加熱の温度を変化させつつ、前記スタックを一定の持続時間で加熱する工程を含む、実施形態38~49のいずれかに記載の方法。
【0254】
実施形態52
前記スタックを共成形する工程が、共成形中に一定の温度で前記スタックを加熱する工程を含む、実施形態38~51のいずれかに記載の方法。
【0255】
実施形態53
前記スタックを共成形する工程が、共成形中に一定に上昇する温度で前記スタックを加熱する工程を含む、実施形態38~51のいずれかに記載の方法。
【0256】
実施形態54
前記スタックが、各々が中央部分及び前記中央部分を囲むエッジ部分を含む、対向する主面を備えており、前記スタックを加熱する工程が、前記中央部分と前記エッジ部分との間に温度勾配を生成する工程を含む、実施形態38~45のいずれかに記載の方法。
【0257】
実施形態55
温度勾配を生成する工程が、前記中央部分と前記エッジ部分に不均一に熱を印加する工程を含む、実施形態54に記載の方法。
【0258】
実施形態56
加熱及び成形の前に、前記第1のガラスシートと前記第2のガラスシートの間に剥離粉末を配置する工程をさらに含む、実施形態38~55のいずれかに記載の方法。
【0259】
実施形態57
前記第1の湾曲したガラス基板と前記第2の湾曲したガラス基板との間に中間層を挿入する工程、並びに、前記第1の湾曲したガラス基板、前記中間層、及び前記第2の湾曲したガラス基板を積層する工程をさらに含む、実施形態38~55のいずれかに記載の方法。
【符号の説明】
【0260】
110 第1の湾曲したガラス基板
120 第2の湾曲したガラス基板
130 介在中間層
200 曲げフレーム
300 積層体
310 第1の湾曲したガラス基板
312 第1の主面
313 第1のガラス基板の非主面
314 第2の主面
315 周縁部
316 第1の厚さ
318 第1の垂下深さ
320 第2の湾曲したガラス基板
322 第3の主面
323 第1の主面と第2の主面との間に延びる非主面
324 第4の主面
325 周縁部
326 第2の厚さ
328 第2の垂下深さ
330 中間層
500 実質的に平面のシート
502,504 主面
506,507 非主面
600 車両
610 本体
620 開口
630 積層体
700レーア炉
702~734 一連のモジュール
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体において、
第1の主面、前記第1の主面とは反対側の第2の主面、及び前記第1の主面と前記第2の主面との間の第1の厚さ 含む第1の湾曲したガラス基板であって、第1の粘度を含む、第1の湾曲したガラス基板;
第3の主面、前記第3の主面とは反対側の第4の主面、及び前記第3の主面と前記第4の主面との間の第2の厚さ 含む第2の湾曲したガラス基板であって、630℃の温度で前記第1の粘度より大きい第2の粘度を含む、第2の湾曲したガラス基板;並びに
前記第1の湾曲したガラス基板と前記第2の湾曲したガラス基板との間に配置され、かつ、前記第2の主面及び前記第3の主面に隣接した中間層
を備えた積層体であって、
前記第1の厚さが前記第2の厚さの2.25倍から10倍の範囲にあり、
前記第1の湾曲したガラス基板が0.6mから2.0mの範囲の幅を有し、
前記第1の湾曲したガラス基板が第1の垂下温度を有するとともに、前記第2の湾曲したガラス基板が第2の垂下温度を有し、
前記第1の垂下温度と前記第2の垂下温度との差が、5℃~50℃であり、
前記第1の主面及び前記第4の主面の一方又は両方が、透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、200ミリディオプター未満の光学歪みを示し、
前記積層体が、500℃~700℃の範囲の温度(T)で、前記第1の粘度と前記第2の粘度との間にあり、次式:
μ 有効 (T)=((μ 1 (T)t 1 )/(t 1 +t 2 ))+((μ 2 (T)t 2 )/(t 1 +t 2 ))
によって決定される、有効粘度を含み、式中、μ (T)は温度(T)における前記第1の湾曲したガラス基板の粘度であり、μ (T)は温度(T)における前記第2の湾曲したガラス基板の粘度であり、
前記第1のガラス基板の上に前記第2のガラス基板を配置することにより共垂下し、前記第1の主面が凸面であり、前記第4の主面が凹面である、
積層体。
【請求項2】
前記第2の厚さが3.8mm以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第2の湾曲したガラス基板が、アルカリ含有ホウケイ酸ガラスである、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第1の湾曲したガラス基板が、ソーダ石英ガラス又はアルカリアルミノケイ酸ガラスである、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記第1の湾曲したガラス基板が化学的に強化されている、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記第2の粘度が、630℃の温度において、前記第1の粘度の2倍超である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記第2の湾曲したガラス基板が、380nmにおいて、50%以下の透過率を示す、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記第2の湾曲したガラス基板が、380nm~780nmの範囲の波長にわたり、75%~85%の平均透過率を示す、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記第2の湾曲したガラス基板が、60%~86%の範囲の全日射透過率を示す、請求項7に記載の積層体。
【請求項10】
前記第1の湾曲したガラス基板が、2mm以上の第1の垂下深さを含み、
前記第2の湾曲したガラス基板が、2mm以上の第2の垂下深さを含み、
前記第1の垂下深さが、前記第2の垂下深さから10%以内の値の範囲にあり、
前記第1の湾曲したガラス基板と前記第2の湾曲したガラス基板とが、光学三次元スキャナで測定して±5mm以下の形状偏差を有する、請求項1から9いずれか1項に記載の積層体。