(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103370
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】血管モニタシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
A61B8/06
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023080528
(22)【出願日】2023-05-16
(62)【分割の表示】P 2021523188の分割
【原出願日】2018-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ウィットコウスキー, シャノン
(72)【発明者】
【氏名】シェイドネス, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】クォン, スン
(72)【発明者】
【氏名】ステューダー, ジェームズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】吻合部位における血管開通性を確認する血流を検出する際のアクセス性、検出性、信頼性を向上させる、血管モニタシステム、デバイス及び方法を提供する。
【解決手段】ドップラ血流モニタデバイス150は、信号生成モジュールと、信号受信モジュールと、信号フィルタモジュールと、信号変換モジュールと、少なくとも1つのスピーカと、ユーザインタフェースとを備える。信号生成モジュールは、患者の血管の周りに配置された血管カプラのプローブ受け口に配置されたプローブに信号を送信する。信号受信モジュールは、プローブからの帰還信号を受信する。信号フィルタモジュールは、帰還信号をフィルタリングする。信号変換モジュールは、フィルタリングされた信号を、患者の血管内の血流の特性に対応する可聴表示及び視覚表示に変換する。少なくとも1つのスピーカは、第1の可聴表示を発する。加えて、ユーザインタフェースは、視覚表示を表示する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管の周りに配置される血管カプラのプローブ受け口に配置されたプローブに信号を送信するように構成された信号生成モジュールと、
前記プローブからの帰還信号を受信するように構成された信号受信モジュールと、
前記帰還信号をフィルタリングするように構成された信号フィルタモジュールと、
前記フィルタリングされた信号を、前記患者の血管内の血流の特性に対応する視覚表示に変換するように構成された信号変換モジュールであって、前記視覚表示は、血流速度閾値をそれぞれ表す複数のバーを含む、信号変換モジュールと、
前記視覚表示を表示するように構成されたユーザインタフェースと
を備える、ドップラ血流モニタデバイス。
【請求項2】
前記信号生成モジュールによって送信される前記信号は、(i)パルス状超音波信号又は(ii)パルス波ドップラ信号のうち少なくとも1つである、請求項1に記載のドップラ血流モニタデバイス。
【請求項3】
前記帰還信号をフィルタリングすることは、(i)前記帰還信号にローバンドパスフィルタを適用すること、(ii)前記帰還信号にハイバンドパスフィルタを適用すること、(iii)前記帰還信号に高速フーリエ変換を適用すること、又は(iv)前記帰還信号に周波数調整を適用することであり、前記周波数調整は、前記帰還信号の波形整形の前に前記帰還信号に適用される、ことのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のドップラ血流モニタデバイス。
【請求項4】
前記周波数調整は230Hz~240Hzである、請求項3に記載のドップラ血流モニタデバイス。
【請求項5】
患者の血管の周りに配置される血管カプラと、
前記血管カプラに取り付けられるトランスデューサと、
モニタと、
を備え、
前記モニタは、
前記トランスデューサに送信する信号を生成することであり、前記トランスデューサは、前記モニタによって生成された前記信号に基づいて超音波信号を発するように構成され、前記超音波信号は、前記患者の血管を介して送信される、生成することと、
前記トランスデューサからの帰還信号を受信することと、
前記帰還信号を、前記患者の血管内のブロー流の特性に対応する第1の表示に変換することであって、前記第1の表示は、血流速度閾値をそれぞれ表す複数のバーを含む可視表示である、ことと
を行うように構成される、ドップラ血流モニタシステム。
【請求項6】
前記モニタは、前記帰還信号を第2の表示に変換するようにさらに構成され、前記第2の表示は可聴表示である、請求項5に記載のドップラ血流モニタシステム。
【請求項7】
前記血管カプラは第1の血管カプラであり、前記トランスデューサは第1のトランスデューサであり、前記第1の血管カプラ及び前記第1のトランスデューサは、前記モニタの第1のチャネルに関連付けられ、
前記ドップラ血流モニタシステムは、
前記患者の異なる血管の周りに配置される第2の血管カプラと、
第2のトランスデューサであって、前記第2の血管カプラ及び前記第2のトランスデューサは、前記モニタの第2のチャネルに関連付けられる、第2のトランスデューサと、
をさらに備え、
前記第1の血管カプラ及び前記第1のトランスデューサは、第1の外部リード線を介して前記モニタの第1の入力コネクタポートに接続され、
前記第1の入力コネクタポートは、前記第1のチャネルに関連付けられ、
前記第2の血管カプラ及び前記第2のトランスデューサは、第2の外部リード線を介して前記モニタの第2の入力コネクタポートに接続され、
前記第2の入力コネクタポートは、前記第2のチャネルに関連付けられ、
前記モニタは、
前記第2のトランスデューサに送信する別の信号を生成し、
前記第2のトランスデューサからの異なる帰還信号を受信し、
前記異なる帰還信号を、前記患者の前記異なる血管内のブロー流の特性に対応する1次表示及び2次表示に変換する
ようにさらに構成される、請求項5に記載のドップラ血流モニタシステム。
【請求項8】
前記1次表示は可聴表示であり、前記2次表示は可視表示である、請求項7に記載のドップラ血流モニタシステム。
【請求項9】
前記トランスデューサから発せられる前記信号は、パルス状超音波信号及びパルス波ドップラ信号のうち少なくとも1つであり、前記モニタによって生成される前記信号は、パルス状超音波信号及びパルス波ドップラ信号のうち少なくとも1つである、請求項5に記載のドップラ血流モニタシステム。
【請求項10】
前記トランスデューサは、前記血管カプラ内に着脱可能に保持される、請求項5に記載のドップラ血流モニタシステム。
【請求項11】
前記血管カプラは、前記トランスデューサを前記血管カプラの受け口から後で取り外すことができるように構成される、請求項5に記載のドップラ血流モニタシステム。
【請求項12】
前記モニタは、前記帰還信号を前記第1の表示に変換する前に、前記帰還信号をフィルタリングするようにさらに構成される、請求項5に記載のドップラ血流モニタシステム。
【請求項13】
前記帰還信号をフィルタリングすることは、前記帰還信号に周波数調整を適用することを含み、前記周波数調整は、前記帰還信号の波形整形の前に前記帰還信号に適用され、
前記周波数調整は、150Hz~300Hzの周波数ブーストである、請求項12に記載のドップラ血流モニタシステム。
【請求項14】
前記トランスデューサは、圧電結晶を含む、請求項5に記載のドップラ血流モニタシステム。
【請求項15】
モニタと、
遠隔データベースと、
を備え、
前記モニタは、
血管カプラ内に配置されるトランスデューサに送信する信号を生成することであり、
前記血管カプラは、患者の血管の周りに配置され、
前記トランスデューサは、前記モニタによって生成された前記信号に基づいて超音波信号を発するように構成され、
前記超音波信号は、前記患者の血管を介して送信される、
生成することと、
前記トランスデューサからの帰還信号を受信することと、
前記帰還信号を、前記患者の血管内のブロー流の特性に対応する第1の表示に変換することであって、前記第1の表示は、血流速度閾値をそれぞれ表す複数のバーを含む可視表示である、ことと
を行うように構成され、
前記遠隔データベースは、
前記第1の表示に関連する1つ又は複数のファイルを受信することと、
前記第1の表示に関連する前記1つ又は複数のファイルを格納することであって、前記1つ又は複数のファイルは、ユーザデバイスを介して遠隔でアクセス可能である、格納することと
を行うように構成される、遠隔モニタシステム。
【請求項16】
前記モニタは、前記帰還信号を前記第1の表示に変換する前に、前記帰還信号をフィルタリングするようにさらに構成される、請求項15に記載の遠隔モニタシステム。
【請求項17】
前記帰還信号をフィルタリングすることは、前記帰還信号にローバンドパスフィルタを適用すること、前記帰還信号にハイバンドパスフィルタを適用すること、及び前記帰還信号に高速フーリエ変換を適用することのうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の遠隔モニタシステム。
【請求項18】
前記帰還信号をフィルタリングすることは、前記帰還信号に周波数調整を適用することを含み、前記周波数調整は、前記帰還信号の波形整形の前に前記帰還信号に適用される、請求項15に記載の遠隔モニタシステム。
【請求項19】
前記周波数調整は、150Hz~300Hzの周波数ブーストである、請求項18に記載の遠隔モニタシステム。
【請求項20】
前記モニタは、前記帰還信号を第2の表示に変換するようにさらに構成され、前記第2の表示は可聴表示であり、前記遠隔データベースは、
前記第2の表示に関連する1つ又は複数のファイルを受信することと、
前記第2の表示に関連する前記1つ又は複数のファイルを格納することであって、前記第2の表示に関連する前記1つ又は複数のファイルは、ユーザデバイスを介して遠隔でアクセス可能である、格納することと
を行うように構成される、請求項15に記載の遠隔モニタシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]形成外科及び再建外科では、通常、乳房再建などのために遊離皮弁を使用する。遊離皮弁組織手術では、遊離皮弁(例えば、組織及び/又は筋肉、並びにその関連する動脈及び静脈)は、身体の一部分又はドナー部位から除去され、身体の別の部分又はレシピエント部位に再付着される。次いで、移植された組織及び/又は筋肉の動脈及び静脈は、移植された遊離皮弁(例えば、組織及び/又は筋肉)における血液循環を実現するために、自己固有動脈及び静脈に吻合される。
【0002】
[0002]遊離皮弁組織の自己固有組織への吻合は、典型的には、顕微鏡による可視化を含む微小血管技術を用いて行われる。これまでに、吻合に役立ついくつかの手術器具及び技術が開発されてきた。吻合を行う既知のシステムの1つは、米国特許第7,192,400号に記載されている吻合カプラであり、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。この吻合カプラは、外科医が2つの血管端をより容易に効果的に接合できる手術器具である。このカプラは、リング形状の2つのファスナ部分の使用を伴い、ファスナ部分にはそれぞれ取り付けられるべき血管の部分が固定される。各ファスナ部分は、これらの部分、ひいては血管を閉鎖して接続するために、一連のピンと、それらのピンを受容するための対応する穴とをさらに備える(
図7A、
図7C及び
図7D参照)。
【0003】
[0003]遊離皮弁手術には成功した歴史があるが、弁が失敗するという非常に望ましくない結果は未だ可能性として残っている。弁失敗の主な原因の1つは、遊離皮弁がレシピエント部位で再度取り付けられた後に、弁組織に供給される血液が不足することである。一般に弁の循環を阻害するものとしては、血管の閉塞、出血又は感染が挙げられる。弁組織に十分な血液が供給されないと、結果として組織は壊死する。しかしながら、弁が適切に循環していないことに十分早期に気づくことができれば、弁を救う、すなわち救済することができる。血流不足を認識した後、弁を救済できる時間窓は非常に小さい。したがって、移植された弁の血流不足を素早く認識することが重要である。
【0004】
[0004]体内に配置又は残置するのではなく、典型的にはペン状のデバイスの遠位先端に恒久的に配置される手持ち式ドップラプローブは、血流モニタに有用であるが、いくつかの欠点がある。手持ち式プローブの欠点の1つは、血管の周りに確実に配置できないことである。
【0005】
[0005]血流が所望のレベルに維持されて、血栓症などの問題が発生していないことを確認するために、微小血管手術の後、手術領域をモニタすることは非常に重要である。万が一血栓症が起これば、移植された組織は死ぬ。また、微小血管手術を受けた血管の血流の働きを間接的にモニタする手段も不十分であることが多い。例えば、表面温度測定、経皮PO2モニタリング、フォトプレチスモグラフィ及びレーザドップラ流量計などが採用されている。しかし、これらのアプローチは、一般に弁のアクセス可能な露出部分を必要とする。さらに、埋め込まれた遊離組織移植及び口腔内弁は、これらの方法では効果的にモニタできない。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本開示は、吻合部位における血管開通性を確認するために血流を検出する際のアクセス性、検出性及び/又は信頼性を向上させる、改良された血管モニタシステム、デバイス及び方法を提供する。
【0007】
[0007]例示的な一実施形態では、ドップラ血流モニタデバイスは、信号生成モジュールと、信号受信モジュールと、信号フィルタモジュールと、信号変換モジュールと、少なくとも1つのスピーカと、ユーザインタフェースとを備える。信号生成モジュールは、患者の血管の周りに配置された血管カプラのプローブ受け口に配置されたプローブに信号を送信するように構成される。信号受信モジュールは、プローブからの帰還信号を受信するように構成される。信号フィルタモジュールは、帰還信号をフィルタリングするように構成される。信号変換モジュールは、フィルタリングされた信号を、患者の血管内の血流の特性に対応する可聴表示及び視覚表示に変換するように構成される。少なくとも1つのスピーカは、第1の可聴表示を発するように構成される。加えて、ユーザインタフェースは、視覚表示を表示するように構成される。
【0008】
[0008]別の例示的実施形態では、ドップラ血流モニタシステムは、血管カプラと、トランスデューサと、モニタとを備える。血管カプラは、患者の血管の周りに配置される。トランスデューサは、血管カプラに取り付けられる。モニタは、トランスデューサに送信する信号を生成するように構成され、トランスデューサは、モニタによって生成された信号に基づいて超音波信号を発するように構成される。加えて、超音波信号は、患者の血管を介して送信される。モニタは、トランスデューサからの帰還信号を受信し、その帰還信号を、患者の血管のブロー流(blow flow)の特性に対応する第1の表示及び第2の表示に変換するようにさらに構成される。
【0009】
[0009]別の例示的実施形態では、遠隔モニタシステムは、モニタと、遠隔データベースとを備える。モニタは、血管カプラ内に配置されたトランスデューサに送信する信号を生成するように構成される。血管カプラは、患者の血管の周りに配置され、トランスデューサは、モニタによって生成された信号に基づいて超音波信号を発するように構成され、超音波信号は、患者の血管を介して送信される。モニタは、トランスデューサからの帰還信号を受信し、その帰還信号を、患者の血管のブロー流の特性に対応する第1の表示及び第2の表示に変換するようにさらに構成される。遠隔データベースは、第1の表示に関連する1つ又は複数のファイルを受信し、第1の表示に関連する1つ又は複数のファイルを格納するように構成され、1つ又は複数のファイルは、ユーザデバイスを介して遠隔でアクセス可能である。
【0010】
[0010]したがって、血流データのアクセス性を向上させることは、本開示の利点である。
【0011】
[0011]血管開通性を確認するために血流の検出を向上させることは本開示の別の利点である。
【0012】
[0012]吻合部位における血流の遠隔モニタを提供することは、本開示の別の利点である。
【0013】
[0013]血管内の血流を表すオーディオ信号から背景ノイズを低減することは、本開示のさらなる利点である。
【0014】
[0014]遊離皮弁における不十分な血流に起因する遊離皮弁の失敗及び重篤な有害事象の発生を低減することは、本開示のさらなる利点である。
【0015】
[0015]遊離皮弁における不十分な血流又は循環を早期に検出するためのシステム、デバイス及び/又は方法を提供することは、本開示のさらに別の利点である。
【0016】
[0016]開示される血管モニタシステム、デバイス及び方法の追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面に記載され、またそれらから明らかになるであろう。本明細書に記載される特徴及び利点は、すべてを網羅するわけではなく、特に、図面及び記述に鑑みて、多くの追加の特徴及び利点が当業者に明らかとなる。さらに、任意の特定の実施形態は、本明細書に列挙される利点のすべてを有する必要はない。さらに、本明細書で使用されている用語は、主に読みやすさ及び説明の目的で選択されたものであり、本発明の主題の範囲を限定するものではないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本開示の例示的実施形態によるプローブシステム及びモニタの概略図である。
【
図1B】本開示の例示的実施形態によるプローブシステム及びモニタの斜視図である。
【
図2】本発明の例示的実施形態によるモニタの斜視図である。
【
図3】本発明の例示的実施形態によるモニタの種々の図である。
【
図4】本発明の例示的実施形態によるモニタの内部構成要素の概略図である。
【
図5】本開示の例示的実施形態による例示的モニタシステムの概略図である。
【
図6】本開示の例示的実施形態によるユーザデバイスにおけるモニタアプリケーションを表示するユーザインタフェースの概略図である。
【
図7A】本開示の例示的実施形態による患者の血管の周りに配置されるトランスデューサを含む血管カプラの部分斜視図である。
【
図7B】本開示の例示的実施形態による患者の血管の周りに配置されるトランスデューサ及びリードワイヤの部分斜視図である。
【
図7C】本開示の例示的実施形態による血管カプラの締結具及びトランスデューサの部分断面図を示す。
【
図7D】本開示の例示的実施形態によるトランスデューサ及びリードワイヤを含む血管カプラの斜視図である。
【
図8】本発明の例示的実施形態によるモニタによって送受信される例示的なパルス波の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0029]上述のように、吻合部位における血管開通性を確認するために血流を検出する際のアクセス性、検出性及び/又は信頼性を向上させるための血管モニタシステム、デバイス及び方法が提供される。遊離皮弁手術には成功した歴史があるが、弁が失敗するという非常に望ましくない結果は未だ可能性として残っている。弁失敗の主な原因の1つは、遊離皮弁がレシピエント部位で再度取り付けられた後に、弁組織に供給される血液が不足することである。一般に弁の循環を阻害するものとしては、血管の閉塞、出血又は感染が挙げられる。弁組織に十分な血液が供給されないと、結果として組織は壊死する。しかし、本明細書に開示される血管モニタシステム、デバイス及び方法は、遊離皮弁における不十分な血流又は循環を早期に検出することを可能にするため、組織壊死の前に遊離皮弁を救う、又は救済できることが有利である。
【0019】
[0030]上記の血管モニタシステム、デバイス及び方法は、遊離皮弁の移植による微小血管再建などの外科処置の血管開通性を確認するために、吻合部位の血流をモニタするために使用されてもよい。上記のシステム、デバイス及び方法は、病院の手術室又は麻酔後ケアユニットなどの種々の環境で使用され、術中及び術後の両方で血流を検出し、血管開通性を確認する(現場又は遠隔のいずれか)ことができる。遊離皮弁移植は、患者自身の組織を使用して、ガン及び傷害による手術の際に身体部分を再建するために用いられてもよい。例としては、乳房再建、舌の再建、顎及び頬の再建、外傷性傷害後の手及び足の再建などが挙げられる。典型的には、微小血管の吻合は、弁の成功を決定付ける手術の重要なポイントである。吻合部位の血流のモニタ機能を提供し、これらのモニタ機能へのアクセス(例えば、スマートフォンなどのユーザデバイスにおけるモニタアプリケーションを介した遠隔アクセス)を増加させることによって、本明細書に開示されるシステム、デバイス及び方法は、弁組織内の低血流又は血流不足を早期に検出することができ、以て医療従事者(例えば、外科医)は、壊死が進行し始めて遊離皮弁が使用不能になる前に是正措置を取ることができる。
【0020】
複数構成プローブ及びモニタの接続
[0031]
図1Aは、フローモニタシステム100Aの概略図を示し、
図1Bは、フローモニタシステム100Bの斜視図を示す(これらは両方とも、全体としてフローモニタシステム100と呼ばれてもよい)。フローモニタシステム100は、外部リード線110a及び110bを介してモニタ150に取り付けられた複数構成プローブシステム102a及び102bを備えてもよい。例えば、プローブシステム102aは、外部リード線110aを介してモニタ150の「チャネルA」に取り付けられてもよいのに対し、プローブシステム102bは、外部リード線110bを介してモニタ150の「チャネルB」に取り付けられてもよい。具体的には、モニタ150は、少なくとも2つのドップラプローブ入力又はコネクタポート(
図2に示す)を有することによって、少なくとも2つの吻合部位のモニタを提供してもよく、いずれかのチャネル(例えば、「チャネルA」又は「チャネルB」)のユーザ選択可能なモニタが可能である。
図1A及び
図1Bに示す実施形態は、プローブシステム102a、102bをモニタ150に接続するためにリード線110a、110bを使用するが、リード線110を使用せずにプローブがモニタと通信するように構成されている無線システムを使用してもよいことを理解すべきである。
【0021】
[0032]プローブシステム(例えば、全体として本明細書ではプローブシステム102と呼ぶプローブシステム102a及び102b)は、2つの静脈及び/又は動脈を端々吻合で結合する血管カプラを形成してもよい1組の締結具104a、104bを備える(
図7A参照)。プローブシステム102はそれぞれ、締結具104a、104bのうちの少なくとも1つに接続されたトランスデューサ106a、106b(
図7A、
図7B、
図7C及び
図7D参照)をさらに備えてもよい。例えば、1つのリングは、プレス嵌めされたドップラプローブ又はトランスデューサ106を有するプローブホルダを備えてもよい。一実施例では、1組又は一対の締結具(例えば、本明細書では全体として締結具104と呼ぶ1組の締結具104a)は、ステンレス鋼ピンを有する一対の高密度ポリエチレン(「HDPE」)リングを備えてもよい(
図7C及び
図7D参照)。一対のリングは、患者内で永久的なインプラントを形成する。
【0022】
[0033]1組又は一対の締結具104又はリングは、サイズが類似している動脈又は静脈に嵌まるようにサイズ決めされてもよい。例えば、締結具104又はリングは、1.0mm~4.0mmの内径を有してもよい。一実施例では、締結具104の内径は、0.5mmずつ増分したサイズで提供されてもよい。締結具104又はリングは、顕微処置及び血管再建処置において通常遭遇する静脈及び動脈を収容するようにサイズ決め及び成形されてもよく、末梢血管系におけるそのような静脈及び動脈の端々吻合に適合していることを理解すべきである。
【0023】
[0034]1組又は一対の締結具104から形成された血管カプラは、吻合部及び弁の虚血時間を短縮し、管腔内異物(例えば、縫合材)なしに内膜と内膜との接触をもたらすことが有利であり得、これも血栓症の発生を低減することが有利である。さらに、血管カプラは、吻合された血管をステント化(stent)できることが有利であり、血管サイズの不一致を修正するために使用されてもよい。例えば、一対の締結具104は、異なるサイズの静脈又は動脈を接続するために使用されてもよい。締結具はまた、管腔内異物を伴わずに内膜と内膜との接触をもたらすため、手で縫合する場合に比べて開通率が向上することが有利である。
【0024】
[0035]一対の締結具104によって形成される血管カプラは、トランスデューサ(複数可)106又は他の検知デバイス(複数可)の位置を保持して維持しながら、血管(例えば、静脈又は動脈)の端々吻合を形成するように構成される。すると、検知デバイスは、血管開通性を確認するための吻合部位での血流など、外科処置の回復及び成功に関連するパラメータをモニタ又は評価するために使用され得る。以下で詳述されるように、検知デバイス(複数可)又はトランスデューサ(複数可)106は、医療従事者(例えば、外科医)が、手術の成功を判断するため、及び/又は血管開通性を確認するために、血流及び/又は血流速度をモニタ及び分析することを可能にする。血管内の血流はモニタでき、血流の1つ又は複数のオーディオサンプルを記録し、データベースに格納してもよい。異なる時点における血流オーディオサンプルの複数の記録をデータベースに格納することにより、医療従事者(例えば、外科医)は記録間の比較を行うことができる。本明細書に開示されるシステム及び方法は、手術の成功及び患者の特性(例えば、血流及び血流速度)を分析するために、経時的な血流データの記録及び評価を可能にすることが有利である。吻合の失敗はかなり急激に起こる傾向があるため、血流を継続的に確実にモニタして比較する機能は、失敗事象の検出に関連する信号を生成して送信するために使用することができ、以て、医療従事者(例えば、外科医)は、壊死が進行し始め遊離皮弁が使用不能になる前に是正措置を取ることができる。さらに、以下でさらに詳述されるように、開示されたシステム、デバイス及び方法の遠隔モニタ機能は、医療従事者(例えば、外科医)が自身のいる場所に関係なく(例えば、遠隔地で)、オーディオ品質を低下させることなく失敗事象を検出できるような遠隔アクセスを提供することが有利である。
【0025】
[0036]超音波ドップラモニタに適した任意のトランスデューサ106a、106bを使用してもよい。例示的実施形態では、ドップラプローブ又はトランスデューサは、HDPE又はシリコーンのような認可移植可能材料で作られている。別の実施例では、トランスデューサ106a、106bは、圧電結晶を含む。トランスデューサ106a、106b(以下、全体としてトランスデューサ106と呼ぶ)は、血管カプラの締結具に使用される対応するトランスデューサ受け口(
図7C参照)の寸法に適合する任意のサイズであってもよい。例えば、円形トランスデューサ106は、その内部表面が円形の形状を有する受け口によって受容されるのに適している。トランスデューサ106は、約0.5mm~約1mmのサイズの円形圧電結晶であってもよい。一実施例では、ドップラプローブ又はトランスデューサ106は、約0.5mm~約1mmのサイズの円形圧電結晶を有する先端と、テフロン(登録商標)コーティングされた同軸ワイヤと、金属コネクタとを備える。
【0026】
[0037]ドップラプローブ又はトランスデューサ106は、リード線110を介してモニタ150に接続されたときにパルス状の超音波信号を発する20MHzの超音波ドップラトランスデューサであってもよい。例えば、モニタ150は、パルス波を送受信してもよい。一実施例では(
図8に示すように)、20MHzの18のパルスがエンベロープされ、トランスデューサ106に送信パルスとして送信される。送信パルスを受信した後、パルスは、結晶が振動して超音波信号を血管を介して送信するように圧電結晶を励起することができる。エンベロープされた送信パルスは、78kHzの周波数で繰り返されてもよい。送信パルスが電子的に停止された後、モニタ150は、帰還信号を受信又はリッスンしてもよい。例えば、モニタ150は、送信パルスの直後(150nsのデッドバンド)に、パルスの送信から、ドップラシフトされたエコーの受信又はリッスン(例えば、6.4μs)に切り替えてもよい。ドップラシフトされたエコーはモニタに送り返される。プローブ又はトランスデューサ106が血流を検出すると、(例えば、ドップラシフトされたエコーから)変化する可聴信号が生成される。可聴信号は、ユーザが利用できるようになる前に、モニタ150によって処理されフィルタリングされてもよい。
【0027】
[0038]
図1Aに示すように、トランスデューサ106は、その表面に取り付けられた経皮リード線(例えば、以下で全体としてリード線108と呼ぶプローブシステム102aのリード線108a及びプローブシステム102bのリード線108b)を備えてもよい。経皮リード線108は、近位端部(例えば、トランスデューサ106に近い端部)と遠位端部とを有する。経皮リード線108は、共通の絶縁材料によって絶縁された2本のワイヤを備えることが好ましい。ワイヤは、トランスデューサ106からの20MHzの信号をモニタするのに適した任意のワイヤであってもよい。一実施例では、絶縁材料は、生体適合性材料、例えばクラスVI医療グレード材料を含むことが好ましい。一実施例では、モニタ150は、連続的な受信パルス波送信を含む20MHzの送信周波数を有してもよい。パルスは、156.25KHzのパルス繰り返し周波数で繰り返されてもよい。
【0028】
[0039]近位端部において、経皮リード線108は、トランスデューサ106の各表面に取り付けられた1本のワイヤを有してもよい。トランスデューサ106の各表面にリード線108の2本のワイヤを取り付ける任意の製造方法は、トランスデューサ106自体との強い導電性結合を作り出すために使用されてもよい。好適な方法としては、はんだ付け、摩擦結合、接着剤結合、又はトランスデューサの製造中のリード線の取り付けが挙げられるが、これらに限定されない。一実施例では、トランスデューサ106と2本のワイヤとの間の結合強度は、リード線自体を単に引っ張ることによって、締結具の受け口からプローブを分離できるほど十分に強いことが好ましい。使用後、トランスデューサは、受け口内で身体の内部に残されてもよく、又は、例えば、受け口からトランスデューサ106を引っ張り、その後、リード線108を皮膚を通して身体の表面まで引っ張ることによって、経皮リード線108に十分な力を加えることによって取り外されてもよい。一実施例では、トランスデューサ106と経皮リード線108との間の結合の強度は、経皮リード線108に機械的な力を加えることによって患者からトランスデューサ106を取り外すのに必要な力よりも大きい。
【0029】
[0040]経皮リード線108の遠位端部は、ヒトの皮膚に配置される任意選択の結合パッド(写真なし)内に配置されてもよい。一実施例では、結合パッドは、ヒトの皮膚との接触に適した医療グレードの材料、例えば、USPグレードV又はVIの材料で構成されてもよい。例えばパッチ及び縫合糸の使用を含め、リード線を皮膚に装着するために種々の代替的手法を用いることができる。結合パッド又は代替的手法は、パッド又は代替的手法を皮膚から取り外すのに必要な力が、経皮リード線108を外部リード線110a、110b(以下、全体として外部リード線110と呼ぶ)から分離するのに必要な力よりも大きくなければならないような方法で皮膚に取り付けてもよい。好ましい実施形態では、経皮リード線108を外部リード線110から外すのに必要な力は、結合パッド又は代替的な取り付け方法(例えば、パッチ、縫合糸など)を皮膚から取り外すのに必要な力よりも小さくなるべきである。
【0030】
[0041]
図1Aに示すように、経皮リード線108の遠位端部には、リード線108を外部リード線110の近位端部にさらに接続することができるコネクタ120a、120b(以下、全体としてコネクタ120と呼ぶ)が取り付けられてもよい。外部リード線110は、信号の搬送に使用するのに適した任意のワイヤで構成され、皮膚接触に適した材料で絶縁されている。好ましくは、リード線は、20MHzの信号を搬送するように構成される。
【0031】
[0042]コネクタ120は、医療グレードの電気コネクタであることが好ましい。例示的実施形態では、コネクタ120は、非係止式コネクタである。別の実施例では、コネクタ120は、電気医療グレードコネクタである。非係止式コネクタは、吻合部位からトランスデューサが誤って取り外される確率を低減するのに有益である。すなわち、外部リード線110が誤って引っ張られた場合、非係止式コネクタ120により、トランスデューサ106を邪魔することなく、外部リード線110は経皮リード線108から外れる。また、結合パッド又は代替的取り付けデバイスは、トランスデューサ106が邪魔されるのを防止するのにも役立つことができる。
【0032】
[0043]外部リード線110の遠位端部は、モニタ150に接続される。外部リード線110の遠位端部は任意の適切な方法で接続されてもよい。例示的実施形態では、リード線110は、コネクタ120と同じタイプであってもよいコネクタ130(例えば、外部リード線110a用のコネクタ130a及び外部リード線110b用のコネクタ130b)を使用して接続される。コネクタ120及び130は、金属であってもよく、プラスチックハウジングを備えてもよい。
【0033】
[0044]
図1Aに示すように、両方の入力又はチャネルが利用され、それぞれのドップラプローブに接続される。さらに、好ましい複数構成プローブシステムは、プローブをモニタ150に接続するためにリード線108、110を使用しているが、リード線108、110を使用せずにプローブがモニタ150と通信するように構成された無線システムを使用してもよい。
【0034】
[0045]
図1Bは、外部リード線110aを介してモニタ150に取り付けられた複数構成プローブシステム102aを備えたフローモニタシステム100Bの斜視図を示す。
図1Bに示す実施形態は、モニタ150の単一チャネル(例えば、「チャネルA」)に取り付けられたプローブシステム102aを示す。3つ以上のチャネルが使用されてもよいことを理解すべきである。例えば、モニタ150は、3つ以上のチャネルをモニタすることが可能であってもよい。
【0035】
モニタのハウジング、構造及び内部構成要素
[0046]
図2は、モニタ150の例示的実施形態の等角図を示し、
図3は、モニタ150の種々の他の図を示す。モニタ150は、ハウジング202と、カラーLCDタッチスクリーンなどのディスプレイ又はユーザインタフェース210とを備える。さらに、
図2に示すように、モニタ150は、スピーカ214と、ハンドル216とを備える。ハウジング202及びハンドル216は、射出成形プラスチック(例えば、PC-ABS)で作られてもよい。モニタ150は、ディスプレイ210及び/又はスピーカ214に関連する種々の制御部、例えば、音量制御部220(例えば、音量制御ボタン又はメンブレンスイッチ)、ミュート制御部222(例えば、ミュートボタン又はメンブレンスイッチ)、並びにチャネル選択制御部224a及び224b(例えば、「チャネルA」及び「チャネルB」のチャネル選択ボタン又はメンブレンスイッチ)をさらに備えてもよい。チャンネル選択制御部は、外部リード線110を受容するコネクタポート226a及び226bと関連付けられている。一実施形態では、モニタ150は、約6.17インチD×8.18インチW×3.20インチHであってもよく、約1.84ポンド(0.83kg)の重量であってもよい。さらに、
図3に示すように、モニタ150は、AC電源ジャック230、脚240a~240d及び電源制御部250(例えば、電源ボタン又はメンブレンスイッチ)を備えてもよい。さらに、モニタ150は、
図5に関連してより詳細に説明した、過去に記録されたオーディオ及び/又は血流データに遠隔アクセスするための無線機能を有してもよい。
【0036】
[0047]
図4は、フローモニタ150の種々の内部構成要素及びモジュールを示す概略図である。モニタ150は、電源302と、ユーザインタフェース又はディスプレイ304と、タッチスクリーン306と、タッチスクリーンコントローラ308と、プロセッサ310と、メモリ312と、通信モジュール(例えば、携帯電話通信モジュール316a及びWiFi通信モジュール316b)と、デバッグモジュール318と、ウルトラセキュアデジタル大容量(「uSDHC」)フラッシュメモリカードなどのフラッシュメモリと、ブートローダ330と、各チャネル(例えば「チャネルA」及び「チャネルB」)用のテストポイント334と、アナログフロントエンド(「AFE」)340と、フィルタモジュール342と、アンプ(「AMP」)350と、スピーカ314a及び314b(以下、全体としてスピーカ314と呼ぶ)と、バッテリ360と、バッテリ充電ゲージ370とを備えてもよい。
【0037】
[0048]プロセッサ310は、シリアルペリフェラルインタフェース(「SPI」)を介してタッチスクリーン306と通信してもよい。タッチスクリーン306は、液晶ディスプレイなどのディスプレイ304に関連する抵抗性タッチスクリーンであってもよい。
図2に示すボタン(例えば、音量制御部220、ミュート制御部222並びにチャネル選択制御部224a及び224b)のいくつかは、代わりに、タッチスクリーン306を用いてタッチによって選択可能なディスプレイ210、304上のグラフィカル描写として表示されてもよい。メモリ312は、DDR2 SDRAMであってもよく、通信モジュールのうちの1つ又は複数によって遠隔サーバ又はデータベースに送信される前にオーディオファイルを一時的に格納してもよい。通信モジュール(例えば、携帯電話モジュール316a及びWiFiモジュール316b)は、UART、USB、SPI又は他の許容可能なインタフェースを介してプロセッサ310と通信し、遠隔サーバ又はデータベースからデータを送受信してもよい。同様に、デバッグモジュール318及びブートローダ330も、インタフェース(例えば、SPI)を介してプロセッサ310と通信してもよい。一実施例では、デバッグモジュール318及びブートローダ330は、製造検査、診断及び修理のために利用されてもよい。通信モジュールによって、モニタ150は医療従事者(例えば、外科医)に遠隔モニタを提供できるが、これについては以下でより詳細に説明する。しかし、現場では、医療従事者(例えば、看護師及び外科医)は、AMP350によって増幅され、その後、スピーカ314a、314bに送信される生成オーディオを聞くことができる。
【0038】
信号の生成/検出及びオーディオ/視覚出力
[0049]モニタ150は信号を生成し、この信号はトランスデューサ106に送信され(例えば、トランスデューサ106又はプローブは、パルス状の超音波信号を発する)、血管部位を介して送信される。次に、トランスデューサ106は、血管を介して伝達された信号を検出し、検出された信号をモニタ150に送り返し、モニタ150は、信号をユーザが読み取ることができる形式に変換する。プローブが流れを検出すると、音量の大きさが変化する可聴信号が生成される。例えば、信号は音声、視覚表示又はその両方に変換されてもよい。
【0039】
[0050]信号の周波数(すなわち、ピッチ)は,血管内の血流に比例する。独自の音色パターンが生成され、これは血流対時間の点から血流パターンを示す。音色パターンは、外科医に血流の定性的表示を提供する。音色の音量はモニタの制御部で調節することができる。モニタのトランスミッタは、プローブの先端にある超音波水晶振動子(crystal)を周期的に駆動する。水晶から発生した超音波は、かなり細いビームでプローブ先端のすぐ下の組織を通過する。次に、密度の異なる組織間の境界にぶつかると、超音波はプローブに向かって反射される。ユニットが送信していない期間中、プローブは受信した反射信号をすべて受信回路に渡す。この回路は、戻ってきたエコーを増幅し、その周波数を送信信号の周波数と比較し、周波数の差を可聴音色に変換する。
【0040】
[0051]ドップラプローブ及びモニタ150は、吻合部位における血流を検出し、吻合部位における血管開通性を術中及び術後に確認するように構成されてもよい。例えば、血流は、最長で術後約7日間検出することができる。オーディオ出力周波数及び血流速度を検出できる任意のモニタとプローブとの組み合わせが使用されてもよい。組み合わせは、約80~約3000Hzの範囲のオーディオ出力周波数と、0.5cm/秒~約45cm/秒の範囲の血流速度とを検出できることが好ましい。
【0041】
[0052]好ましい実施形態では、モニタ150は、ドップラ信号の周波数シフトを表す視覚的な数値を表示する。数値の使用により、外科医は、パターンを検出して分析するために、経時的に数値を格納して傾向をとる(trend)ことができる。任意選択で、これらの数値は、さらなる分析のためにコンピュータソフトウェアにダウンロードすることもできる。別の好ましい実施形態では、モニタ150は、少なくとも2つの吻合部位のモニタを可能にする。本実施形態では、モニタ150は、1つ又は複数のドップラプローブ入力(例えば、「チャネルA」及び「チャネルB」)を有し、いずれかのチャネルのユーザによる選択可能なモニタが可能である。
【0042】
[0053]モニタ150は、血管内の血流の検出のために設計されたパルスドップラ超音波システムである。モニタ150は、プローブシステム102と組み合わせて使用されると、吻合部位の血流を検出し、術中及び術後に血管開通性を確認することができる。一実施例では、血流は、術後の数日間(例えば、7日間)、必要に応じて術後に検出されてもよい。一実施例では、モニタ150は、リード線110を介してモニタ150に接続されると、プローブ又はトランスデューサ、例えば、パルス状超音波信号を発する20MHz超音波ドップラプローブ又はトランスデューサ106に接続する。プローブ又はトランスデューサ106が流れを検出すると、変化する可聴信号が生成される。可聴信号は、以下でより詳細に説明するように、モニタ150から表示されるか又は発されてもよい。
【0043】
[0054]
図2に示すように、ディスプレイ又はユーザインタフェース210は、血流の定性的視覚表示212を提供する。一実施例では、視覚表示212は、それぞれが周波数範囲又は血流速度閾値を表す種々のバーを含んでもよい。例えば、モニタ150の視覚表示212は、0.5cm/秒又は0.75cm/秒と低い血流速度を示すことができてもよく、また、45cm/秒と高い血流速度を示すことができてもよい。モニタ150はまた、スピーカ214を介して、血流の可聴表示を発してもよい。視覚表示を表示し、及び/又は可聴表示を発する前に、モニタ150は、ノイズ除去のために信号をフィルタリングしてもよい。例えば、モニタ150は、プローブ又はトランスデューサ106から帰還したオーディオ信号をデジタル的にフィルタリングし、ノイズを低減又は除去してもよい。
【0044】
[0055]別の実施例では、モニタ150は、血流又は血流速度(例えば、ドップラ信号の周波数シフト)を表す視覚的な数値を表示してもよい。定性的視覚表示212又は数値の使用により、医療従事者(例えば、外科医)は、術後の血管開通性を分析するために、(オーディオ信号以外の)血流の追加の表示を検討してもよい。任意選択で、これらの数値及び/又は視覚表示は、さらなる分析のために、データベース(
図5及び
図6を参照して以下でより詳細に説明する)にも格納されてもよい。
【0045】
[0056]ユーザインタフェース210(又は以下でより詳細に説明するユーザデバイス402)に表示される視覚表示212は、医療従事者がノイズの多い環境で患者の血流をモニタし分析できるように、血流の2次インジケータを提供することが有利である。例えば、手術室は、他の医療器具、他の医療関係者などからの周囲の他のノイズ発生源を有することがあり、視覚表示212は、周囲のノイズの量に関係なくモニタすることができる。逆に、可聴表示は、他の干渉源又はノイズから分析して区別することが困難なことがある。
【0046】
[0057]
図4を再び参照すると、アナログフロントエンド340は、プロセッサ310から信号又はパルスを受信する。例えば、AFE340は、プロセッサ310から1マイクロ秒及び0.8マイクロ秒の78KHzのパルスを受信することができ、それらはドップラプローブ又はトランスデューサ106に送られる。次に、AFE340は、トランスデューサ106から(例えば、位相シフトの)帰還信号を受信し、これはオーディオ信号に変換され、フィルタ342及び/又はAMP350に送信される。オーディオ信号は、モニタ150で検出され、オーディオに変換される位相シフト又はドップラシフトを表す。例えば、超音波エネルギーは吻合部位の血管内の赤血球から跳ね返ることで、信号がトランスデューサ106から発せられれば位相シフトが生じる。この位相シフトが検出され、オーディオに変換される。具体的には、ドップラシフト周波数、さらに血液速度に比例した信号。
【0047】
デジタル信号フィルタリング
[0058]場合によっては、特に低血流速度の場合、オーディオサンプルは、背景ノイズと区別できないか、又は区別することが困難なことがある。さらに、血流速度が小さいと、医療従事者(例えば、外科医)がモニタのスピーカの音量を上げることを必要とすることがあり、これはほとんどの背景ノイズを発する場合には、気が散るか又は迷惑である。具体的には、医療従事者(例えば、外科医)は、明瞭な音声又はオーディオ信号によって血管開通性を判断するが、これは、スピーカ214、314からの背景ノイズの「ヒス」によって消えてなくなったときに、しばしば検出が困難である。信号をデジタル的にフィルタリングすることにより、オーディオサンプルは、スピーカから発せられる背景ノイズの煩わしい「うなり」又は「ヒス」なしに、医療従事者が容易に特定して検討することができるように、背景ノイズからはっきりと分離され取り出される。
【0048】
[0059]オーディオ信号は、背景ノイズレベルを制御するためにデジタル的にフィルタリングされてもよい。例えば、フィルタモジュール342は、ローバンドパス及びハイバンドパスデジタルフィルタリングを利用してもよいフィルタモジュール342を介してオーディオ信号を波形整形してもよい。別の実施例では、フィルタモジュール342は、信号の高速フーリエ変換(FFT)を実行して、オーディオ信号をデジタルフィルタリングされる複数の周波数成分に分割してもよい。デジタルフィルタリングは、バンドパス(ロー及びハイ)フィルタ及び信号ブースト(例えば、236Hzのブースト)を適用することを含んでもよい。
【0049】
[0060]さらに、低血流速度からのオーディオは、典型的には、スピーカの低周波数ロールオフと区別することが困難である。オーディオ品質を向上させるために、信号は波形整形の前にブースト(例えば、236Hzのブースト)を受けて、スピーカの低周波数ロールオフを超えてローエンド周波数を引き上げることができる。本明細書に記載されるデジタルフィルタリングは、特定の速度範囲で血流が検出されている間、可聴信号を生成するモニタの機能は変わらないままノイズ除去を改善することが有利である。デジタルフィルタリングにより、医療従事者は、低血流速度に関連するかすかな低信号を容易に検出することができることが有利である。デジタルフィルタリングがなければ、オーディオ信号は、スピーカ214、314から発せられる背景ノイズの中で失われるか又は消えることがある。
【0050】
遠隔モニタ
[0061]
図5は、管理ステーション470、クラウドコンピューティングインフラストラクチャ480及びユーザデバイス402のうちの1つ又は複数と通信するモニタ150を備えた例示的なシステム400を示す。管理ステーション470は、クラウドコンピューティングインフラストラクチャ480と通信する種々のモバイルデバイス又はユーザデバイス402に設定及び許可を適用するために使用されてもよい。モニタ150は、
図2~
図4に示す構成要素のそれぞれを備えてもよい。
図5に示すように、プロセッサ410、万能非同期送受信機(「UART」)412などの送受信機、複合プログラマブル論理デバイス(「CPLD」)420、ブートローダ430、接続性モジュール440、メモリデバイス450a及び450b(全体としてメモリデバイス450と呼ぶ)並びに入出力(I/O)デバイス460のような、いくつかのモニタ構成要素(そのうちのいくつかは、
図4で前述された)が示されている。
【0051】
[0062]モニタ150は、クラウドコンピューティングインフラストラクチャ480(例えば、Amazon Web Services(「AWS」))と通信してもよく、クラウドコンピューティングインフラストラクチャ480は、後置サーバ482(例えば、後置AWS Elastic Compute Cloud(「EC2」)サーバ)、オーディオサーバ484、データベース検索ツール(例えば、Mongo DB)及びデータベース488(例えば、Amazon Simple Storage Service(「S3」))を備えてもよい。WiFiモジュールなどの通信モジュール440を介したモニタ150とクラウドコンピューティングインフラストラクチャ480との間の通信は、暗号化されてもよい。例えば、405における通信暗号化としては、Wi-Fi Protected Access(「WPA」)又はWi-Fi Protected Access II(「WPA2」)を用いた無線(「OTA」)暗号化を挙げることができる。さらに、モニタ150とクラウドコンピューティングインフラストラクチャ480との間の通信は、例えば、患者のオーディオファイル490を遠隔サーバ(例えば、後置サーバ482又はオーディオサーバ484)又はデータベース488に転送するときなど、データ転送のためにインターネット上でセキュアな通信を提供するために、トランスポート層セキュリティ(「TLS」)プロトコルなどの407における通信プロトコルを利用してもよい。
【0052】
[0063]通信するとき、後置サーバ482は、矢印425にてデバイスステータスを要求するか、又はモニタ150から最新のオーディオサンプルを照会することができる。例えば、後置サーバ482は、トランスデューサID、モニタのどのチャネルがアクティブであるか、又はモニタがアクティブにリッスンしているか(例えば、オーディオサンプルを記録しているか)などのデバイスステータスを要求してもよい。さらに、後置サーバ482は、最新のオーディオサンプルをモニタ150に照会してもよい。例えば、モニタ150のデバイスステータス及び/又はオーディオサンプルは、接続性モジュール440と後置サーバ482との間で通信されてもよい。さらに、後置サーバ482は、接続性モジュール440を介して矢印435でモニタ150からオーディオファイル490などのオーディオ情報を取得してもよい。デバイスステータス情報及びオーディオ情報の両方が、矢印445でデータベース検索ツール486に渡されてもよい。また、モニタ150は、矢印455でオーディオファイル490などのオーディオ情報をオーディオサーバ484にアップロードしてもよい。オーディオサーバ484は、矢印465で、データベース検索ツール486にオーディオ情報などのデータを格納してもよい。さらに、オーディオサーバ484は、矢印475でオーディオファイル490などのオーディオ情報をデータベース488に格納してもよい。
【0053】
[0064]看護師などの医療従事者は、矢印485でクラウドコンピューティングインフラストラクチャ480と通信し、その中のデータを管理してもよい。一実施例では、プローブ又はトランスデューサID又はモデル番号、オーディオ識別情報、患者識別情報、病院情報、又は医療従事者(例えば、外科医)情報は、外科医がアクセス権を与えられている特定のオーディオファイルのみをその外科医が自分のユーザデバイス402を介して検索できるように、特定の患者、オーディオ識別子、プローブ若しくはトランスデューサ106、及び/又は医療従事者(例えば、外科医)に関連付けられてもよい。また、管理ステーション470とクラウドコンピューティングインフラストラクチャ480との間の通信は、TLSなどの通信プロトコルを利用してもよい。外科医などの他の医療従事者又は特権ユーザは、クラウドコンピューティングインフラストラクチャ480と通信することによって、矢印495でオーディオを要求し、矢印497でオーディオを再生してもよい。具体的には、ユーザデバイス402は、オーディオファイル490を再生するために、後置サーバ482及びデータベース488と通信してもよい。
【0054】
[0065]本明細書で使用する場合、物理プロセッサ又はプロセッサ410とは、算術演算、論理演算及び/又はI/O演算をコード化する命令を実行可能なデバイスを意味する。一例示的実施例では、プロセッサは、ノイマン型アーキテクチャモデルに従ってもよく、算術論理ユニット(ALU)、制御ユニット及び複数のレジスタを備えてもよい。さらなる態様では、プロセッサは、典型的には一度に1つの命令を実行できる(又は1つの命令パイプラインを処理する)シングルコアプロセッサであっても、又は複数の命令を同時に実行できるマルチコアプロセッサであってもよい。別の態様では、プロセッサは、単一の集積回路、2つ以上の集積回路として実装されても、又はマルチチップモジュール(例えば、個々のマイクロプロセッサダイが単一の集積回路パッケージに含まれ、したがって単一のソケットを共有する)の構成要素であってもよい。また、プロセッサは、中央演算処理装置(CPU)と呼ばれてもよい。さらに、プロセッサは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はマイクロコントローラユニット(MCU)でもあってもよい。
【0055】
[0066]本明細書で説明されるように、メモリデバイス450は、揮発性又は不揮発性メモリデバイス、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、又はデータを格納可能な他のデバイスを意味する。本明細書で説明されるように、I/Oデバイス460とは、1つ又は複数のプロセッサピンと、バイナリデータの入力及び/又は出力が可能な外部デバイスとの間にインタフェースを提供可能なデバイスを意味する。
【0056】
[0067]プロセッサ410は、ポイントツーポイントのプロセッサ相互接続から、Ethernet(登録商標)ベースのネットワークなどのシステムエリアネットワークに至るまで種々の技術を用いて相互接続されてもよい。プロセッサ410、CPLD410、接続性モジュール440、メモリデバイス450及びI/Oデバイス460の間の接続を含むモニタ150内のローカル接続は、ペリフェラルコンポーネントインターコネクト(PCI)など、適切なアーキテクチャの1つ又は複数のローカルバスによって提供されてもよい。
【0057】
遠隔モニタ用のアプリケーション
[0068]状況によっては、医療従事者(例えば、外科医)は、モニタ150から発せられる可聴表示及び/又はモニタ150によって表示される定性的視覚表示212を検討し分析するために現場にいないことがある。そのような状況では、患者は、外科医が病院の手術室又は麻酔後ケアユニットに戻ってくるのを待たなければならないか、又は他の従事者又はスタッフから外科医に情報を伝えることができる。例えば、場合によっては、外科医は、電話で可聴表示(例えば、モニタ150によって再生されるオーディオ)をリアルタイムで聞くことを試みてもよいが、これは、携帯電話の受信、携帯電話の搬送波などに応じて信号が劣化することがある。患者の血流データを検討して分析するために現場にいなければならないという不便さは、典型的には結果としてモニタ頻度を下げる。
【0058】
[0069]患者のモニタのアクセス性及び容易性を向上させるために、ユーザデバイス402は、データベース488に格納されたオーディオファイル490に遠隔でアクセスするためのアプリケーションを実行してもよい。医療従事者(例えば、看護師)は、管理ステーション470で特定の医療従事者(例えば、外科医)にアクセス資格を割り当ててもよい。アクセス権又は特権が与えられると、ユーザデバイス402でモニタアプリケーションを使用するユーザ(例えば、外科医)は、特定の移植されるドップラプローブ又はトランスデューサ106に関連するオーディオファイルを検索して再生することができる。例えば、複数の異なる病院の複数の患者の血流オーディオファイルがデータベース488に格納されてもよいが、「外科医_A」には、「患者_A」に移植された「ドップラプローブ_A」に関連付けられたオーディオファイルを聞くためのアクセス権又は特権が割り当てられてもよい。同様に、「外科医_B」には、「患者_B」に移植された「ドップラプローブ_B」及び「患者_C」に移植された「ドップラプローブ_C」に関連付けられたオーディオファイルを聞くためのアクセス権又は特権が割り当てられてもよい。
【0059】
[0070]ユーザデバイス402でオーディオファイルにアクセスするとき、医療従事者(例えば、外科医)は、「現在の」血流オーディオファイルを聞くことを要求してもよい。例えば、
図6に示すように、医療従事者(例えば、外科医)は、吻合部位における血流の「現在の記録」を聞くために、「要求-現在」ボタン502のグラフィカル描写を選択してもよい。一実施例では、「要求-現在」ボタン502を選択することによって、記録を開始することができ、したがって、血流のリアルタイムオーディオ信号ではなくてもよく、代わりに短い期間(例えば、10秒、15秒、20秒など)だけ遅延させてもよい。例えば、ボタン502を選択することによって、患者の血流のオーディオ信号の15秒間の記録が記録され、データベース488にアップロードされてもよく、その後、この記録はユーザデバイス402によって検索され再生されて、ユーザデバイス402のスピーカを介して血流の可聴表示を提供してもよい。また、アプリケーションは、医療従事者(例えば、外科医)が、その患者についての過去のオーディオ記録を再生し、聞き、検討することを可能にできる。例えば、「過去の記録_1」ボタン504、「過去の記録_2」ボタン506又は「過去の記録_3」ボタン508のグラフィカル描写のいずれかを選択することによって、医療従事者(例えば、外科医)は、患者の血流のオーディオ信号の過去の記録を聞くことができる。そうすることによって、外科医は、オーディオ信号を比較し、患者の血流が改善しているのか、悪化しているのか、又はほぼ同じ状態のままなのかを判断することができる。
【0060】
[0071]記録は、5秒~20秒の範囲の期間で行ってもよいが、他の期間を使用してもよいことを理解すべきである。別の実施例では、期間は、モバイルアプリケーションを通じて医療従事者(例えば、外科医)によって選択可能であってもよい。
【0061】
[0072]別の実施例では、アプリケーションは、
図2に示す定性的視覚表示212と同様の、血流の定性的視覚表示512を提供してもよい。一実施例では、視覚表示512は、それぞれが周波数範囲又は血流速度閾値を表す種々のバーを含んでもよい。上述したモニタ150の定性的視覚表示212と同様に、ユーザデバイス402におけるアプリケーションの定性的視覚表示512は、0.5cm/秒又は0.75cm/秒と低い血流速度及び45cm/秒と高い血流速度を示すことができてもよい。
【0062】
[0073]例えば、血管内の血流に関する種々の側面をモニタし、記録することができる。いくつかの過去の記録にアクセスすることにより、医療従事者(例えば、外科医)は、現在の記録と過去の記録とを客観的に比較することができる。例えば、記録に関連する定性的視覚表示512は、他の記録と比較することができるベースライン値を提供することができる。
【0063】
[0074]アプリケーションは、オーディオファイルがどの患者及び/又はプローブに対応するかを医療従事者が確認できるように、オーディオID520、プローブID530及びその他の記録情報540を表示してもよい。さらに、記録情報540は、記録の日時などを示してもよい。
【0064】
[0075]ユーザデバイス402は、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、コンピュータ、スマートウォッチ又は任意の他の適切なデバイスであってもよいことを理解すべきである。
【0065】
[0076]本明細書に記載される主題の態様は、単独で、又は本明細書に記載される1つ若しくは複数の他の態様と組み合わせて有用であり得る。本開示の第1の例示的態様では、ドップラ血流モニタデバイスは、信号生成モジュールと、信号受信モジュールと、信号フィルタモジュールと、信号変換モジュールと、少なくとも1つのスピーカと、ユーザインタフェースとを備える。信号生成モジュールは、患者の血管の周りに配置された血管カプラのプローブ受け口に配置されたプローブに信号を送信するように構成される。信号受信モジュールは、プローブからの帰還信号を受信するように構成される。信号フィルタモジュールは、帰還信号をフィルタリングするように構成される。信号変換モジュールは、フィルタリングされた信号を、患者の血管内の血流の特性に対応する可聴表示及び視覚表示に変換するように構成される。少なくとも1つのスピーカは、第1の可聴表示を発するように構成される。加えて、ユーザインタフェースは、視覚表示を表示するように構成される。
【0066】
[0077]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、信号生成モジュールによって送信される信号は、パルス状超音波信号である。
【0067】
[0078]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、信号生成モジュールによって送信される信号は、パルス波ドップラ信号である。
【0068】
[0079]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、帰還信号をフィルタリングすることは、帰還信号にローバンドパスフィルタを適用すること、帰還信号にハイバンドパスフィルタを適用すること、及び帰還信号に高速フーリエ変換を適用することのうちの少なくとも1つを含む。
【0069】
[0080]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、帰還信号をフィルタリングすることは、帰還信号に周波数調整を適用することを含む。周波数調整は、帰還信号の波形整形の前に帰還信号に適用される。
【0070】
[0081]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、周波数調整は、150Hz~300Hzの周波数ブーストである。
【0071】
[0082]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、周波数ブーストは230Hz~240Hzである。
【0072】
[0083]本明細書に記載される主題の態様は、単独で、又は本明細書に記載される1つ若しくは複数の他の態様と組み合わせて有用であり得る。本開示の第2の例示的実施形態では、ドップラ血流モニタシステムは、血管カプラと、トランスデューサと、モニタとを備える。血管カプラは、患者の血管の周りに配置される。トランスデューサは、血管カプラに取り付けられる。モニタは、トランスデューサに送信する信号を生成するように構成され、トランスデューサは、モニタによって生成された信号に基づいて超音波信号を発するように構成される。加えて、超音波信号は、患者の血管を介して送信される。モニタは、トランスデューサからの帰還信号を受信し、その帰還信号を、患者の血管のブロー流の特性に対応する第1の表示及び第2の表示に変換するようにさらに構成される。
【0073】
[0084]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、第1の表示は可聴表示である。
【0074】
[0085]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、第2の表示は可視表示である。
【0075】
[0086]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、血管カプラは第1の血管カプラであり、トランスデューサは第1のトランスデューサである。さらに、第1の血管カプラ及び第1のトランスデューサは、モニタの第1のチャネルに関連付けられている。一実施例では、システムは、患者の異なる血管の周りに配置された第2の血管カプラと、第2のトランスデューサとをさらに備える。第2の血管カプラ及び第2のトランスデューサは、モニタの第2のチャネルに関連付けられている。さらに、モニタは、第2のトランスデューサに送信する別の信号を生成し、第2のトランスデューサから異なる帰還信号を受信し、異なる帰還信号を、患者の異なる血管内のブロー流の特性に対応する1次表示及び2次表示に変換するようにさらに構成される。
【0076】
[0087]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、1次表示は可聴表示である。
【0077】
[0088]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、2次表示は可視表示である。
【0078】
[0089]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、トランスデューサから発せられる信号は、パルス状超音波信号である。
【0079】
[0090]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、モニタによって生成される信号は、パルス状超音波信号である。
【0080】
[0091]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、トランスデューサから発せられる信号は、パルス波ドップラ信号である。
【0081】
[0092]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、モニタによって生成される信号は、パルス波ドップラ信号である。
【0082】
[0093]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、トランスデューサは、血管カプラ内に着脱可能に保持される。
【0083】
[0094]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、トランスデューサは、摩擦嵌め、機械的カプラ及び接着剤のうちの少なくとも1つによって血管カプラ内に着脱可能に保持される。
【0084】
[0095]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、血管カプラは、トランスデューサを血管カプラの受け口から後で取り外すことができるように構成される。
【0085】
[0096]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、モニタは、帰還信号を第1の表示及び第2の表示のうちの少なくとも1つに変換する前に、帰還信号をフィルタリングするようにさらに構成される。
【0086】
[0097]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、帰還信号をフィルタリングすることは、帰還信号にローバンドパスフィルタを適用すること、帰還信号にハイバンドパスフィルタを適用すること、及び帰還信号に高速フーリエ変換を適用することのうちの少なくとも1つを含む。
【0087】
[0098]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、帰還信号をフィルタリングすることは、信号に周波数調整を適用することを含み、周波数調整は、帰還信号の波形整形の前に帰還信号に適用される。
【0088】
[0099]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、周波数調整は、150Hz~300Hzの周波数ブーストである。
【0089】
[00100]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、周波数ブーストは230Hz~240Hzである。
【0090】
[00101]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、トランスデューサは、圧電結晶を含む。
【0091】
[00102]本明細書に記載される主題の態様は、単独で、又は本明細書に記載される1つ若しくは複数の他の態様と組み合わせて有用であり得る。本開示の第3の例示的態様では、遠隔モニタシステムは、モニタと、遠隔データベースとを備える。モニタは、血管カプラ内に配置されたトランスデューサに送信する信号を生成するように構成される。血管カプラは、患者の血管の周りに配置され、トランスデューサは、モニタによって生成された信号に基づいて超音波信号を発するように構成され、超音波信号は、患者の血管を介して送信される。モニタは、トランスデューサからの帰還信号を受信し、その帰還信号を、患者の血管のブロー流の特性に対応する第1の表示及び第2の表示に変換するようにさらに構成される。遠隔データベースは、第1の表示に関連する1つ又は複数のファイルを受信し、第1の表示に関連する1つ又は複数のファイルを格納するように構成され、1つ又は複数のファイルは、ユーザデバイスを介して遠隔でアクセス可能である。
【0092】
[00103]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、モニタは、帰還信号を第1の表示及び第2の表示のうちの少なくとも1つに変換する前に、帰還信号をフィルタリングするようにさらに構成される。
【0093】
[00104]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、帰還信号をフィルタリングすることは、帰還信号にローバンドパスフィルタを適用すること、帰還信号にハイバンドパスフィルタを適用すること、及び帰還信号に高速フーリエ変換を適用することのうちの少なくとも1つを含む。
【0094】
[00105]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、帰還信号をフィルタリングすることは、帰還信号に周波数調整を適用することを含み、周波数調整は、帰還信号の波形整形の前に帰還信号に適用される。
【0095】
[00106]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、周波数調整は、150Hz~300Hzの周波数ブーストである。
【0096】
[00107]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、周波数ブーストは230Hz~240Hzである。
【0097】
[00108]先行する態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせて用いられてもよい本開示の別の例示的な態様によれば、遠隔データベースは、第2の表示に関連する1つ又は複数のファイルを受信し、第2の表示に関連する1つ又は複数のファイルを格納するようにさらに構成される。さらに、第2の表示に関連する1つ又は複数のファイルは、ユーザデバイスを介して遠隔でアクセス可能である。
【0098】
[00109]本開示の多くの特徴及び利点は、記述された説明から明らかであり、したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示のすべてのそのような特徴及び利点をカバーすることが意図される。さらに、当業者は多数の修正及び変更を容易に思いつくため、本開示は、図示され説明された正確な構造及び動作に限定されない。したがって、記述された実施形態は、例示的なものであって限定的なものではないと理解されるべきであり、本開示は、本明細書で与えられた詳細に限定されるべきではなく、現在又は将来において予見可能であるか予見不能であるかにかかわらず、以下の特許請求の範囲及びそれらの完全な範囲の均等物によって定義されるべきである。
【外国語明細書】