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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103376
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】コルチゾン還元酵素阻害用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20230719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20230719BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230719BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALN20230719BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALN20230719BHJP
   A61K 36/48 20060101ALN20230719BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
A61K8/49
A61P43/00 111
A61P17/00
A61K31/37
A23L33/105
A61Q19/00
A61K8/9789
A61K36/48
A61K131:00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023080777
(22)【出願日】2023-05-16
(62)【分割の表示】P 2021518704の分割
【原出願日】2019-10-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0120692
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カン, ヨン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ウィドン
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ガヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ソウン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ, テ リョン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】精神的ストレスに起因した皮膚障壁機能低下要因になる11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1の活性を阻害することによって、精神的ストレスから誘発されたコルチゾール濃度を減少させて、角質層の障壁機能回復時間を短縮させることができる組成物を提供する。
【解決手段】豆から抽出されたクメストロールを有効成分として含む、コルチゾン還元酵素阻害用組成物及び化粧料組成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆から抽出されたクメストロールを有効成分として含む、コルチゾン還元酵素阻害用組成物。
【請求項2】
前記コルチゾン還元酵素は11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記クメストロールは0.001μM~1,000μMの濃度範囲で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記豆は大豆、エンドウおよび緑豆から選択されたマメ類、前記マメ類から発芽した発芽豆またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は化粧料組成物である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、コルチゾン還元酵素阻害用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ストレスは昔から万病の根源と呼ばれており、特に現代社会では学業、業務、結婚、育児などの社会的要因、天気、交通などの周辺環境的要因など多様な原因によって老若男女を問わず過度に発生しているため非常に重要な社会的問題と認識されている。
【0003】
社会が急激に発展し多角化され現代人に要求される役割が増大するにつれて、様々なストレスによる全般性不安障害および精神疾患を訴える人々が増加している。保健福祉部が発表した「2006年度精神疾患実態疫学調査」によれば、2006年1年間一つ以上の精神疾患経験人口比率である「精神疾患一年間有病率」は17.1%であった。これは18歳以上64歳以下成人6人に1人の割合であり、2006年現在生涯を通じて一つ以上の精神疾患経験人口比率である「精神疾患生涯有病率」は、成人3人の1人である30%であった。最近、過度な学究熱または各種ストレスによる青少年精神疾患が増加している傾向を考慮すれば、全体人口の有病率はさらに高いと言える。
【0004】
現在臨床では薬物治療と長期的精神治療を併行して不安症を治療しており、薬物治療の場合には主にジアゼパム(diazepam)、ロラゼパム(lorazepam)、クロナゼパム(clonazepam)、アルプラゾラム(alprazolam)のようなベンゾジアゼピン(benzodiazepine)系統の抗不安薬物が主に使用されており、アザピロン(azapirone)系のブスピロン(buspirone)は選択的にセロトニン(serotonin)受容体に作用して選択的に不安症候を緩和させることができる薬物として使用されている。また、最近はこのような薬物の副作用を補完することができる天然物に由来したストレス調節物質の研究が活発に行われてきている。
【0005】
本発明者らは精神的ストレス関連疾患を予防または治療することができる天然物に由来した物質に対する研究を継続した末に、精神的ストレス状況で表皮に存在する角化細胞のコルチゾン還元酵素である11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1が活性化されて表皮内コルチゾール濃度を増加(コルチゾンのコルチゾールへの還元程度を増加)させるのを確認し、前記11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1の活性化による皮膚障壁機能低下現象は精神的ストレスに起因しない他の原因(例えば、物理的傷害や老化など)による現象とはその作用機序が全く異なるのも確認した。さらに、豆から抽出されたクメストロールが前記11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1の活性を特定に阻害するのを確認し、これにより本発明を完成した。
【0006】
一方、クメストロールは主にマメ科(leguminosae)、キク科(compositae)植物の種子、根、そして葉から発見される物質であって、イソフラボノイド(isoflavonoid)の一種であり、一般にはクメスタン(coumestan)系化合物に分類されている。クメストロールは一般豆には殆どないかまったくない成分であって、豆を発芽させる時初めて生成され(非特許文献1)、初期発芽日が増加するにつれてその含量も増加すると知られている(非特許文献2)。また、クメストロールは正確なメカニズムは知られていないが、皮膚および臓器組織のコラーゲンなどの結合組織生成を促進させると知られていて、組織学的側面から老化あるいはシワ生成抑制効果があると推定される(非特許文献3)。
【0007】
また、特許文献1ではクメストロールを含有するアルファルファ抽出物を用いて、心血
管系疾患および心筋梗塞の最も重要な危険因子であるコレステロールと中性脂肪の血中脂肪濃度を減少させた製剤組成物について記載し、特許文献2にはクメストロールを合成した後、フェルラ酸と前記合成されたクメストロールをエステル結合させて強力な抗酸化作用を有しながら皮膚結合組織賦活を促進させて皮膚老化防止作用と皮膚美白作用を示す3,9-ジフェルリールクメストロールを合成して、前記3,9-ジフェルリールクメストロールを含有する皮膚化粧料について記載している。
【0008】
しかし、前記の従来発明ではクメストロールが精神的ストレスに起因したコルチゾン還元酵素(11β-hydroxysteroid dehydrogenase 1)の活性化を阻害させることによって皮膚障壁機能低下を予防するか治療することができるのかについては、全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5-286865号公報
【特許文献2】韓国特許公報第10-2002-0000980号
【特許文献3】韓国特許公開公報第10-2011-0110052号
【特許文献4】韓国特許公開公報第10-2013-0079220号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Food Sci. Biotechnol., 12(3), 278-284、2003
【非特許文献2】J Agric Food Chem., 48(6), 2167-2172, 2000
【非特許文献3】Bickoff, E. M.,et al., J. Anim. Sic., 19, 4(1960)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一実施形態は、精神的ストレスに起因した皮膚障壁機能低下要因になる11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1の活性を阻害することによって、精神的ストレスから誘発されたコルチゾール濃度を減少させて、角質層の障壁機能回復時間を短縮させることができる(化粧料)組成物を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態によれば、豆から抽出されたクメストロールを有効成分として含む、コルチゾン還元酵素阻害用組成物を提供する。
【0013】
前記コルチゾン還元酵素は、11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1であってもよい。
【0014】
前記クメストロールは、0.001μM~1,000μMの濃度範囲で含まれてもよい。
【0015】
前記豆は、大豆、エンドウおよび緑豆から選択されたマメ類、前記マメ類から発芽した発芽豆またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0016】
前記組成物は、化粧料組成物であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
一実施形態によれば、精神的ストレスに起因した皮膚障壁機能低下要因になる11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1の活性を阻害することによって、精神的ストレスから誘発されたコルチゾール濃度を減少させて、角質層の障壁機能回復時間を短縮させ
ることができる。即ち、多様な皮膚障壁機能低下原因のうちの精神的ストレスに起因した皮膚障壁機能低下現象を特定に予防および治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】細胞培養液内コルチゾール濃度をELISA方法を用いて測定した結果である。
図2】角化細胞分化マーカーであるkeratin1のタンパク質発現を確認するためのwestern blotting写真である。
図3】角化細胞分化マーカーであるFilaggrinのタンパク質発現を確認するためのwestern blotting写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0020】
本明細書で皮膚障壁機能改善とは、精神的ストレスに起因して損傷された皮膚部位に存在する11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1の活性を阻害してコルチゾール濃度を減少させることを意味し、物理的外傷や老化などによる酸化ストレス抑制または皮膚恒常性維持などとは関係がない。物理的外傷や老化などによる酸化ストレス抑制または皮膚恒常性維持などは精神的ストレスに起因したことではなくてその機序が全く異なるためである。
【0021】
また、本明細書で精神的ストレスとは、医薬学分野で言う神経症とは異なる意味である。神経症は、心理ストレスに対してうまく適応ができなくて歪んだ不適応状態を通常意味するが、本明細書での精神的ストレスは、心理ストレスに適応はしているが、当事者の意志とは関係なく表皮内角化細胞のコルチゾン還元酵素(11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1)が活性化された状態を意味する。
【0022】
本明細書で層、膜、領域、板などの部分が他の部分「の上に」あるという時、これは他の部分「の直上に」ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分「の直上に」あるという時には中間に他の部分がないことを意味する。
【0023】
本明細書で別途の定義がない限り、「組み合わせ」とは、混合または共重合を意味する。また、「共重合」とはブロック共重合乃至ランダム共重合を意味し、「共重合体」とはブロック共重合体乃至ランダム共重合体を意味する。
【0024】
以下、一実施形態によるコルチゾン還元酵素阻害用組成物について説明する。
【0025】
一実施形態によるコルチゾン還元酵素阻害用組成物は、豆から抽出されたクメストロールを有効成分として含む。
【0026】
前記豆から抽出されたクメストロールは、精神的ストレス状況下で表皮内角化細胞に存在するコルチゾン還元酵素の活性を特定に阻害する効果を有するため、一実施形態による組成物は、精神的ストレス状況下でも皮膚障壁機能が低下されるのを防止または精神的ストレスによって弱化された皮膚障壁機能を速やかに改善させることができる。
【0027】
具体的に、精神的ストレスを受けると、傷治癒が遅延され皮膚障壁機能が低下して角質層の堅固さが減少するか損傷後障壁機能回復が遅延され、その機序は大きく二つに分ける
ことができる。一つは、精神的ストレスによって視床下部-脳下垂体-副腎系(HPA axis;hypothalamus pituitary adrenal axis)の活性化を通じて血中への分泌が増加されたグルココルチコイド(GC;glucocorticoids)が末梢組織である表皮および真皮に存在するGC receptors(GR)に結合することによって皮膚障壁機能低下が現れるようになる。他の一つは、精神的ストレスが表皮に存在する角化細胞のコルチゾン還元酵素(11β-hydroxysteroid dehydrogenase 1)を活性化させてコルチゾール(活性化されたGC形態)の濃度を増加させることによって皮膚障壁機能低下が現れるようになる。一実施形態による組成物は、前記二番目の機序でコルチゾン還元酵素(11β-hydroxysteroid dehydrogenase 1)の活性化を阻害させることによって、皮膚障壁機能低下を防止することができる。
【0028】
前記コルチゾン還元酵素は、11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1であってもよい。一実施形態による組成物に有効成分として含まれる豆から抽出されたクメストロールは、11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1に特徴的に作用して、前記コルチゾン還元酵素の活性を阻害させることができる。
【0029】
これにより、一実施形態は前記豆から抽出されたクメストロールを有効成分として含むコルチゾン還元酵素阻害用組成物、具体的に11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1活性阻害用組成物を提供し、薬学的に有効な量の前記クメストロールを単独で含むか一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含むことができる。
【0030】
前記豆は、大豆、エンドウおよび緑豆から選択されたマメ類、前記マメ類から発芽した発芽豆またはこれらの組み合わせを含むことができる。具体的に、一実施形態によるコルチゾン還元酵素阻害用組成物としてクメストロールまたはクメストロールが含まれている天然物およびその抽出物を有効成分として使用することができ、前記クメストロールまたはクメストロールが含まれている天然物およびその抽出物は、大豆、エンドウおよび緑豆から選択されるマメ類、前記マメ類から発芽した発芽豆またはこれらの組み合わせから得ることができる。また、クメストロールが含まれている天然物の抽出物は、前記クメストロールが含まれている天然物を70%エタノールで常温冷浸あるいは温浸して得られた抽出物を完全に濃縮した後、再び水に分散し同量のヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、エチルアセテート、ブタノール、エタノール、メタノールおよび水から選択される一つまたは二つ以上の溶媒で分画してクメストロールが含まれている天然物の抽出物を得ることができる。しかし、抽出方法がこれに限定されるのではなく、最終抽出物中にクメストロールが含まれるようにする全ての抽出方法を使用することができる。
【0031】
前記組成物内クメストロールは、0.001μM~1,000μMの濃度範囲、例えば0.001μM~100μMの濃度範囲で含まれてもよい。前記クメストロールを0.001μM未満の濃度で使用する場合には、表皮角化細胞の増殖と移動の効果が微小であって皮膚障壁機能改善効果を有することができず、前記クメストロールを1,000μM超過の濃度で使用する場合には、細胞毒性が現れて人体に害を及ぼすことがあるので好ましくない。
【0032】
前記「薬学的に有効な量」とは、前記生理活性成分が動物または人に投与されて目的とする生理学的または薬理学的活性を示すのに十分な量をいう。しかし、前記薬学的に有効な量は、症状の程度、患者の年齢、体重、健康状態、性別、投与経路および治療期間などによって適切に変化できる。
【0033】
また、前記「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容され人間に投与される時、通常胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似の反応を起こさないことを
いう。前記担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アラビアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、および鉱物油が挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤および防腐剤などを追加的に含むことができる。
【0034】
例えば、前記組成物は、化粧料組成物であり得る。
【0035】
本明細書で「化粧料」は、美容機能だけでなく、美容機能以外に追加的に医学的機能を有し得る全ての物質を意味することができる。
【0036】
前記化粧料組成物の剤形は、特に制限されず、目的とするところによって適切に選択することができる。
【0037】
例えば、前記化粧料組成物は溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤-含有クリンシング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、およびスプレーなどに剤形化できるが、これに限定されるのではない。より詳しくは、洗浄剤、トニック、整髪剤、栄養化粧水、エッセンス、セロム、トリートメント、コンディショナー、シャンプー、ローション、養毛剤または染毛剤などの化粧料組成物、水中油(O/W)型、油中水(O/W)型などの基礎化粧料に剤形化できる。また、前記組成物は、それぞれの剤形において前記必須成分以外に他の成分はその他外用剤の種類または使用目的などによって当業者が困難なく適するように選定して配合することができる。例えば、紫外線遮断剤、ヘアコンディショニング剤、香料などをさらに含むことができる。
【0038】
前記化粧料組成物は、化粧品学的に許容可能な媒質または基剤を含有することができる。これは局所適用に適した全ての剤形であって、例えば、溶液、ゲル、固体または練り無水生成物、水相に油相を分散させて得られたエマルション、懸濁液、マイクロエマルション、マイクロカプセル、微細顆粒球またはイオン型(リポソーム)および/または非イオン型の小嚢分散剤の形態に、またはクリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレーまたはコンシールスティックの形態に提供できる。これら組成物は当該分野の通常的方法によって製造できる。
【0039】
本発明の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が用いられ、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0040】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステルおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガまたはトラカントなどが使用できる。
【0041】
本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが
使用できる。
【0042】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーが使用でき、特にスプレーである場合には追加的にクロロフルオロハイドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進剤を含むことができる。
【0043】
本発明の一実施態様で、前記化粧料組成物に追加的に増粘剤を含有することができる。本発明の化粧料組成物に含まれる増粘剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシグアニン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリクオタニウム、セテアリルアルコール、ステアリン酸、カラギーナンなどを使用することができ、好ましくは、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリクオタニウムのうちの1種以上を使用することができ、最も好ましくは、カルボキシビニルポリマーであり得る。
【0044】
本発明の一実施態様で、前記化粧料組成物は、必要によって適切な各種の基剤と添加剤を含有することができ、これら成分の種類と量は、発明者によって容易に選定できる。必要によって許容可能な添加剤を含有することができ、例えば、当業界に通常の防腐剤、色素、添加剤などの成分を追加的に含むことができる。
【0045】
防腐剤は、具体的に、フェノキシエタノール(Phenoxyethanol)または1,2-ヘキサンジオール(1,2-Hexanediol)などであってもよく、香料は人工香料などであってもよい。
【0046】
そして、本願発明の一実施態様で、化粧料組成物は、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質および海藻エキスからなる群より選択された組成物を含むことができる。その他に添加してもよい配合成分としては、油脂成分、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機および無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水などが挙げられる。
【0047】
また、その他に添加してもよい配合成分は、これに限定されるのではなく、また、前記いずれの成分も本発明の目的および効果を損傷させない範囲内で配合可能である。
【0048】
さらに、一実施形態による化粧料組成物は前述のように薬学的組成物として使用できるだけでなく、健康機能食品としても使用することができる。例えば、食品の主原料、副原料、食品添加剤、機能性食品または飲料として容易に活用することができる。
【0049】
前記「食品」とは、栄養素を一つまたはそれ以上含有している天然物または加工品を意味し、好ましくは、ある程度の加工工程を経て直接食べられる状態になったものを意味し、通常の意味として、食品、食品添加剤、機能性食品および飲料を全て含むものをいう。
【0050】
前記食品用組成物を添加することができる食品には例えば、各種食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合体、機能性食品などがある。追加的に、特殊栄養食品(例えば、調製乳類、嬰幼児食など)、食肉加工品、魚肉製品、豆腐類、ムク類、麺類(例えば、ラーメン類、そば類など)、パン類、健康補助食品、調味食品(例えば、醤油、味噌、コチュジャン、混合醤など)、ソース類、菓子類(例えば、スナック類)、キャンディ類、チョコレート類、ガム類、アイスクリーム類、乳加工品(例えば、醗酵乳、チーズなど)、その他加工食品、キムチ、塩漬け食品(各種キムチ類、ジャンアチなど)、飲料(例えば、果実飲料、野菜類飲料、豆乳類、発酵飲料類など)、天然調味料(例えば、ラーメンスープな
ど)を含むが、これに限定されない。上記食品、飲料または食品添加剤は通常の製造方法で製造できる。
【0051】
また、前記「機能性食品」または「健康機能性食品」とは、食品に物理的、生化学的、生物工学的手法などを用いて当該食品の機能を特定目的に作用、発現するように付加価値を付与した食品群や食品組成が有する生体防御リズム調節、疾病防止と回復などに関する体内調節機能を生体に対して十分に発現するように設計して加工した食品を意味し、具体的には健康機能性食品であり得る。前記機能性食品には食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含むことができ、機能性食品の製造に通常使用される適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含むことができる。
【0052】
前記健康補助食品の種類としては、これに制限されるのではないが、粉末、顆粒、錠剤、カプセルまたは飲料形態であり得る。
【0053】
本願発明の利点および特徴、そしてこれらを達成する方法は詳細に後述されている実施例を参照すれば明確になるはずである。以下、本願発明を実施例によって詳しく説明する。しかし、これら実施例は、本発明を具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるのではない。
【0054】
[実施例]
試験例1:クメストロールによるコルチゾン還元酵素活性阻害効果
ヒト角化細胞(normal human epidermal keratinocyte、NHEK)を6-well平板培養器で培養した。24時間後、phosphote-buffered saline(PBS)で交替してUVB(25mJ/cm)を照射し、hydrocortisoneのないNHEK培養培地にcortisone(10μM)を添加して4日間培養した。その後、細胞培養液を回収してcortisol濃度をELISA方法を用いて測定し、その結果を図1に示した。図1を参照すれば、紫外線照射前(CON;CONTROL)に比べて紫外線照射後(UVB25mJ/cm)cortisoneが添加されたwellでコルチゾール濃度が大きく増加するのを確認することができ、但し、前記wellにクメストロールが含まれている(1μM、5μM、10μM)場合、コルチゾール濃度が大きく増加しないのを確認することができる。これからクメストロールを有効成分として含む一実施形態による組成物は、コルチゾン還元酵素である11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素タイプ1の活性を阻害するのを確認することができる。
【0055】
試験例2:クメストロールによるコルチゾン還元酵素活性阻害効果
また、前記ヒト角化細胞をRIPA lysis bufferを用いてタンパク質を分離し角化細胞分化マーカー(KRT1、Filaggrin)のタンパク質発現をWestern blottingを通じて確認した。その結果を下記図2および図3に示した。図2および図3を参照すれば、クメストロールが含まれた(1μM、5μM、10μM)wellの場合、角化細胞で紫外線(UVB)によって阻害された角化細胞分化マーカー(KRT1、Filaggrin)の遺伝子発現が高まるのを確認することができる。即ち、角化細胞で紫外線(UVB)によって阻害された角化細胞分化マーカーの遺伝子発現がクメストロールによって回復されるのが分かり、これからクメストロールがコルチゾン還元酵素活性を阻害してコルチゾール濃度を減少させることによって、前記角化細胞分化マーカーの遺伝子発現が回復されたのを類推することができる。
【0056】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するのである。
図1
図2
図3
【外国語明細書】