(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103385
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】ILT2に対する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230719BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081165
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2021519848の分割
【原出願日】2020-08-12
(31)【優先権主張番号】62/885,374
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/034,569
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520349023
【氏名又は名称】ビオンド バイオロジクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】イラーナ・マンデル
(72)【発明者】
【氏名】ツリ・ペレッツ
(72)【発明者】
【氏名】ダナ・ハヴェス・ジヴ
(72)【発明者】
【氏名】イラーナ・ゴールドシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】ドロール・アリシェケヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・フリードマン-ドロール
(72)【発明者】
【氏名】モッティ・ハキム
(72)【発明者】
【氏名】アヴィドール・シュルマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤイル・サピア
(72)【発明者】
【氏名】テヒラ・ベン-モーシェ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒト白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(ILT2)の配列内のヒトILT2エピトープに結合する、モノクローナル抗体またはその抗原結合性部分、ならびにそれを含む医薬組成物およびそれを生成する方法を提供する。
【解決手段】特定の配列からなる3つの重鎖CDR(CDR-H)および3つの軽鎖CDR(CDR-L)を有し、ILT2に結合しILT2媒介免疫細胞抑制を阻害する、モノクローナル抗体または抗原結合性断片を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの重鎖CDR(CDR-H)および3つの軽鎖CDR(CDR-L)を含むモノクローナル抗体または抗原結合性断片であって、
a.CDR-H1は、配列番号13(SGYYWN)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号14(YISYDGSNNYNPSLKN)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号15(GYSYYYAMDX)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号16(RTSQDISNYLN)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号17(YTSRLHS)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号18(QQGNTLPT)に示すアミノ酸配列を含み、前記Xは、A、CおよびSから選択され;
b.CDR-H1は、配列番号1(DHTIH)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号2(YIYPRDGSTKYNEKFKG)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号3(TWDYFDY)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号4(RASESVDSYGNSFMH)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号5(RASNLES)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号6(QQSNEDPYT)に示すアミノ酸配列を含み;または
c.CDR-H1は、配列番号7(GYTFTSYGIS)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号8(EIYPGSGNSYYNEKFKG)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号9(SNDGYPDY)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号10(KASDHINNWLA)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号11(GATSLET)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号12(QQYWSTPWT)に示すアミノ酸配列を含む、
前記モノクローナル抗体または抗原結合性断片。
【請求項2】
配列番号19(QVQLQQSDAELVKPGASVKISCKVSGYTFTDHTIHWMKQRPEQGLEWIGYIYPRDGSTKYNEKFKGKATLTADKSSSTAYMQLNSLTSEDSAVYFCARTWDYFDYWGQGTTLTVSS)、配列番号21(QVQLQQSGAELARPGASVKLSCKASGYTFTSYGISWVKQRTGQGLEWVGEIYPGSGNSYYNEKFKGKATLTADKSSSTAYMELRSLTSEDSAVYFCARSNDGYPDYWGQGTTLTVSS)および配列番号23(DVQLQGSGPGLVKPSETLSLTCSVTGYSITSGYYWNWIRQFPGKKLEWMGYISYDGSNNYNPSLKNRITISRDTDKNQFSLKLNSVTAADTATYYCAHGYSYYYAMDXWGQGTSSVTVSS)から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含み、前記Xは、A、CおよびSから選択される、請求項1に記載の抗体または抗原結合性断片。
【請求項3】
配列番号20(DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVDSYGNSFMHWYQQKPGQPPKLLIYRASNLESGIPARFSGSGSRTDFTLTINPVEADDVATYYCQQSNEDPYTFGGGTKLEIK)、配列番号22(DIQMTQSSSYLSVSLGGRVTITCKASDHINNWLAWYQQKPGNAPRLLISGATSLETGVPSRFSGSGSGKDYTLSITSLQTEDVATYYCQQYWSTPWTFGGGTKLEIK)、配列番号24(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRTSQDISNYLNWYQQKPGKAVKLLISYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQGNTLPTFGQGTKLEIK)および配列番号45(DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRTSQDISNYLNWYQQKPDGTVKLLISYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPTFGSGTKLEIK)から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1または2に記載の抗体または抗原結合性断片。
【請求項4】
前記抗体または抗原結合性断片がヒト化されており、前記Xは、AおよびSから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性断片。
【請求項5】
前記XがAであり、配列番号15がGYSYYYAMDA(配列番号25)であり、配列番号23がDVQLQGSGPGLVKPSETLSLTCSVTGYSITSGYYWNWIRQFPGKKLEWMGYISYDGSNNYNPSLKNRITISRDTDKNQFSLKLNSVTAADTATYYCAHGYSYYYAMDAWGQGTSSVTVSS(配列番号28)である、請求項4に記載の抗体または抗原結合性断片。
【請求項6】
VKKGQFPIPSITWEH(配列番号41)、LELVVTGAYIKPTLS(配列番号42)、VILQCDSQVAFDGFS(配列番号43)およびWYRCYAYDSNSPYEW(配列番号44)から選択されるヒト白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(ILT2)の配列内のヒトILT2エピトープに結合する、モノクローナル抗体または抗原結合性断片。
【請求項7】
前記エピトープは、配列番号41、42、43および44を含む3次元エピトープである、請求項6に記載の抗体または抗原結合性断片。
【請求項8】
ILT2に結合し、前記ILT2とベータ-2-ミクログロブリン(B2M)の間の直接相互作用を阻害する、モノクローナル抗体または抗原結合性断片。
【請求項9】
前記抗体または抗原結合性断片は、ILT2とB2Mの直接相互作用の前記阻害を介して、前記ILT2とHLAタンパク質またはMHC-Iタンパク質の相互作用を阻害する、請求項8に記載の抗体または抗原結合性断片。
【請求項10】
前記HLAがHLA-Gである、請求項9に記載の抗体または抗原結合性断片。
【請求項11】
ILT2に結合し、がんを患う対象において、
a.ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害性の増加;
b.T細胞の細胞傷害性、増殖またはその両方の増加;
c.マクロファージの食作用の増加、M1炎症性マクロファージの発生の増加、M2サプレッサーマクロファージの発生の減少、またはそれらの組合せ;および
d.前記がんの腫瘍への樹状細胞のホーミングの増加、樹状細胞の活性化の増加、またはそれらの組合せ
のうちの少なくとも3つを誘導する、モノクローナル抗体または抗原結合性断片。
【請求項12】
前記がんは、HLA-GまたはMHC-Iを発現するがんである、請求項11に記載の抗体または抗原結合性断片。
【請求項13】
ILT2への結合、抗腫瘍T細胞応答の誘導/増強、T細胞の増殖の増加、がん誘導サプレッサー骨髄活性の低減、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害性の増加、マクロファージの食作用の増加、M1炎症性マクロファージの発生の増加、M2サプレッサーマクロファージの発生の減少、腫瘍微小環境における樹状細胞の数の増加、樹状細胞の活性化の増加、HLA-Gを発現するがんの処置、およびMHC-Iを発現するがんの処置のうちの少なくとも1つにおける使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性断片。
【請求項14】
HLA-GまたはMHC-Iを発現するがんを処置するための、オプソニン化剤と組み合わせた使用のための、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性断片。
【請求項15】
HLA-GまたはMHC-Iを発現するがんを処置するための、抗PD-L1/PD-1に基づく療法と組み合わせた使用のための、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性断片。
【請求項16】
それを必要とする対象におけるHLA-GまたはMHC-Iを発現するがんを処置する方法であって、前記対象に請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
前記対象にオプソニン化剤を投与することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記オプソニン化剤がEGFR阻害剤であり、場合により前記EGFR阻害剤がセツキシマブである、請求項14または17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象に抗PD-L1/PD-1に基づく免疫療法を投与することをさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
それを必要とする対象におけるHLA-GまたはMHC-Iを発現するがんを処置する方法であって、
a.前記対象におけるILT2または可溶性HLA-Gの発現が所定の閾値を上回ることを確認すること;および
b.前記対象にILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤を投与すること
を含み、それにより対象におけるがんを処置する、前記方法。
【請求項21】
前記確認することは、前記投与前の前記対象における前記ILT2または可溶性HLA-Gの発現を測定することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ILT2の発現を確認することを含み、ILT2の前記発現が前記対象の免疫細胞における発現である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫細胞は、末梢血免疫細胞および腫瘍内免疫細胞から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫細胞は、CD8陽性T細胞、マクロファージ、NK細胞およびTEMRA細胞から選択される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫細胞が末梢血CD8陽性T細胞である、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
可溶性HLA-Gの発現を確認することを含む、請求項20~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象に抗PD-L1/PD-1に基づく療法を投与することをさらに含む、請求項20~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
それを必要とする対象におけるHLA-GまたはMHC-Iを発現するがんを処置する方法であって、
a.前記対象にILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤を投与すること;および
b.前記対象に抗PD-L1/PD-1に基づく療法を投与すること
を含み、それにより対象におけるがんを処置する、前記方法。
【請求項29】
HLA-G、MHC-Iまたはその両方を発現するがん細胞に対する抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる方法であって、前記がん細胞をILT2アンタゴニストと接触させることを含む、前記方法。
【請求項30】
ILT2に基づく免疫抑制を阻害する前記薬剤は、ILT2アンタゴニストである、請求項20~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ILT2アンタゴニストは、ILT2に特異的に結合し、ILT2媒介免疫細胞抑制を阻害する、抗体または抗原結合性断片である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体または抗原結合性断片が請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性断片である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗PD-L1/PD-1に基づく免疫療法は、抗PD-1遮断抗体である、請求項27~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記がんは、抗PD-L1/PD-1に基づく療法に対して不応性である、請求項20~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象にオプソニン化剤を投与することをさらに含む、請求項20~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記オプソニン化剤がEGFR阻害剤であり、場合により前記EGFR阻害剤がセツキシマブである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
がんを患う対象を処置する抗PD-L1/PD-1に基づく療法と組み合わせた使用のための、ILT2に結合し、ILT2媒介免疫細胞抑制を阻害する薬剤を含む医薬組成物。
【請求項38】
請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性断片を含む医薬組成物。
【請求項39】
薬剤を生成するための方法であって、
ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること、マクロファージによるがん細胞の食作用の増加、がん細胞に対するT細胞の活性の増加、M1マクロファージの発生の増加、M2マクロファージの発生の低減、樹状細胞の腫瘍微小環境への動員の増加、樹状細胞の活性化の増加、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを誘導する前記薬剤の能力を試験すること、ならびに前記食作用の増加、前記活性の増加、前記増加した発生、前記発生の低減、前記動員、前記活性化の増加、前記活性の減少、および前記細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを誘導する少なくとも1つの薬剤を選択すること;または薬剤をコードする核酸配列を含む1つもしくはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、該核酸配列が、
i.ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること;
ii.マクロファージによるがん細胞の食作用の増加、がん細胞に対するT細胞の活性の増加、M1マクロファージの発生の増加、M2マクロファージの発生の低減、樹状細胞の腫瘍微小環境への動員の増加、樹状細胞の活性化の増加、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを誘導する前記薬剤の能力を試験すること;ならびに
iii.前記食作用の増加、前記活性の増加、前記発生の増加、前記発生の低減、前記動員、前記活性化の増加、前記活性の減少、および前記細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを増加させる少なくとも1つの薬剤を選択すること
によって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、前記方法。
【請求項40】
マクロファージによるがん細胞の食作用の増加、がん細胞に対するT細胞の活性の増加、M1マクロファージの発生の増加、M2マクロファージの発生に低減、樹状細胞の腫瘍微小環境への動員の増加、樹状細胞の活性化の増加、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性の増加のうちの少なくとも3つを誘導する前記薬剤の能力を試験すること、ならびに少なくとも3つを誘導する少なくとも1つの薬剤を選択することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
薬剤を生成するための方法であって、
ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること、がん細胞に対する抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる前記薬剤の能力を試験すること、ならびに抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる少なくとも1つの薬剤を選択すること;または薬剤をコードする核酸配列を含む1つもしくはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、該核酸配列が、
i.ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること;
ii.がん細胞に対する抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる前記薬剤の能力を試験すること;ならびに
iii.がん細胞に対する抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる少なくとも1つの薬剤を選択すること
によって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、前記方法。
【請求項42】
前記効能を増加させることは、炎症誘発性サイトカインの分泌における相乗的な増加を含むか、または前記細胞傷害性の増加は、炎症誘発性サイトカインの分泌における増加を含む、請求項39~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記炎症誘発性サイトカインは、GM-CSF、TNFαおよびIFNγから選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記効能を増加させることは、T細胞の活性化、細胞傷害性またはその両方における相乗的な増加を含む、請求項41~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
T細胞の活性化、細胞傷害性またはその両方における前記増加は、膜のCD107a発現の増加を含む、請求項39、40および44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記効能を増加させることは、抗PD-L1/PD-1に基づく療法に対して不応性のがんを抗PD-L1/PD-1に基づく療法に対して応答するがんに転換することを含む、請求項41~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記がん細胞は、HLA-GまたはMHC-Iを発現するがんである、請求項39~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
薬剤を生成するための方法であって、
ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること、ILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する前記薬剤の能力を試験すること、ならびにILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する少なくとも1つの薬剤を選択すること;または薬剤をコードする核酸配列を含む1つもしくはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、該核酸配列が、
i.ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること;
ii.ILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する前記薬剤の能力を試験すること;ならびに
iii.ILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する少なくとも1つの薬剤を選択すること
によって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、前記方法。
【請求項49】
薬剤を生成するための方法であって、
配列番号41、42、43および44から選択されるヒトILT2の配列内のILT2エピトープに結合する薬剤を得ること、または薬剤をコードする核酸配列を含む1つもしくはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、該核酸配列が、配列番号41、42、43および44から選択されるヒトILT2の配列内のILT2エピトープに結合する薬剤を得ることによって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、前記方法。
【請求項50】
請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性断片をコードする核酸分子。
【請求項51】
発現ベクターである、請求項50に記載の核酸分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2020年6月4日に出願された米国仮特許出願第63/034,569号、および2019年8月12日に出願された米国仮特許出願第62/885,374号の優先権の利益を主張し、これらの内容は、それらの全体が参照によってすべて本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、モノクローナル抗体、およびがんに対する免疫応答をモジュレートする分野にある。
【背景技術】
【0003】
LILRB1、LIR1およびCD85jとしても公知のILT2は、免疫応答の阻害において公知の機能を有する免疫細胞上で発現する細胞表面タンパク質である。このタンパク質は、細胞外領域に4つのIgCドメイン、および4つの細胞内のITIMドメインを含有する。これは、ILT1、ILT2、ILT3およびILT4で構成されるILTファミリーのメンバーである。ILT2は、ILT4に最も類似し、約80%の相同性を有する。ILT2の公知のリガンドとしては、MHC-1、ならびにHLA-F、HLA-G、HLA-B27およびUL18(ヒトCMV)などの非古典的MHC分子が挙げられる。ヒトゲノムにおけるILT2の最も強い公知の相互作用物質はHLA-G1である。
【0004】
HLA-G1は、乳房、子宮頸部、CRC、肺、胃、膵臓、甲状腺および卵巣のがん細胞、ならびに多形神経膠芽腫、メラノーマの細胞を含むさまざまな悪性腫瘍の表面上で広く発現する。その発現は、臨床転帰不良に関連する。さらに、腫瘍微小環境におけるILT2発現は、HLA-G1が存在しない場合でさえ、腫瘍溶解性免疫療法に対する臨床応答不良に関連している。がんに対する武器として、およびがんサーベイランスのための免疫応答の利用は、がんの予防および処置のための有望な手段である。しかしながら、ILT2は、効果的な免疫療法に対する障害を提示する。ILT2-HLA-G1軸を回避することができる処置様式、およびILT2のHLA-G1非依存性機能が大いに必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ILT2に結合し、ILT2媒介免疫細胞抑制を阻害するモノクローナル抗体;およびそれを含む医薬組成物を提供する。がんを処置する方法であって、本発明の組成物を投与することを含む方法、本発明の抗体、結合性断片および組成物を生成する方法、ならびにPD-1/PD-L1に基づく療法の効能を増加させる方法も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、3つの重鎖CDR(CDR-H)および3つの軽鎖CDR(CDR-L)を含むモノクローナル抗体または抗原結合性断片であって、
a.CDR-H1は、配列番号13(SGYYWN)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号14(YISYDGSNNYNPSLKN)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号15(GYSYYYAMDX)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号16(RTSQDISNYLN)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号17(YTSRLHS)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号18(QQGNTLPT)に示すアミノ酸配列を含み、Xは、A、CおよびSから選択され;
b.CDR-H1は、配列番号1(DHTIH)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号2(YIYPRDGSTKYNEKFKG)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号3(TWDYFDY)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号4(RASESVDSYGNSFMH)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号5(RASNLES)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号6(QQSNEDPYT)に示すアミノ酸配列を含み;または
c.CDR-H1は、配列番号7(GYTFTSYGIS)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号8(EIYPGSGNSYYNEKFKG)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号9(SNDGYPDY)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号10(KASDHINNWLA)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号11(GATSLET)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号12(QQYWSTPWT)に示すアミノ酸配列を含む、
モノクローナル抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、本発明の抗体または抗原結合性断片は、配列番号19(QVQLQQSDAELVKPGASVKISCKVSGYTFTDHTIHWMKQRPEQGLEWIGYIYPRDGSTKYNEKFKGKATLTADKSSSTAYMQLNSLTSEDSAVYFCARTWDYFDYWGQGTTLTVSS)、配列番号21(QVQLQQSGAELARPGASVKLSCKASGYTFTSYGISWVKQRTGQGLEWVGEIYPGSGNSYYNEKFKGKATLTADKSSSTAYMELRSLTSEDSAVYFCARSNDGYPDYWGQGTTLTVSS)および配列番号23(DVQLQGSGPGLVKPSETLSLTCSVTGYSITSGYYWNWIRQFPGKKLEWMGYISYDGSNNYNPSLKNRITISRDTDKNQFSLKLNSVTAADTATYYCAHGYSYYYAMDXWGQGTSSVTVSS)から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含み、Xは、A、CおよびSから選択される。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、本発明の抗体または抗原結合性断片は、配列番号20(DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVDSYGNSFMHWYQQKPGQPPKLLIYRASNLESGIPARFSGSGSRTDFTLTINPVEADDVATYYCQQSNEDPYTFGGGTKLEIK)、配列番号22(DIQMTQSSSYLSVSLGGRVTITCKASDHINNWLAWYQQKPGNAPRLLISGATSLETGVPSRFSGSGSGKDYTLSITSLQTEDVATYYCQQYWSTPWTFGGGTKLEIK)、配列番号24(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRTSQDISNYLNWYQQKPGKAVKLLISYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQGNTLPTFGQGTKLEIK)および配列番号45(DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRTSQDISNYLNWYQQKPDGTVKLLISYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPTFGSGTKLEIK)から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、抗体または抗原結合性断片はヒト化されており、Xは、AおよびSから選択される。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、XはAであり、配列番号15はGYSYYYAMDA(配列番号25)であり、配列番号23はDVQLQGSGPGLVKPSETLSLTCSVTGYSITSGYYWNWIRQFPGKKLEWMGYISYDGSNNYNPSLKNRITISRDTDKNQFSLKLNSVTAADTATYYCAHGYSYYYAMDAWGQGTSSVTVSS(配列番号28)である。
【0011】
別の態様によれば、VKKGQFPIPSITWEH(配列番号41)、LELVVTGAYIKPTLS(配列番号42)、VILQCDSQVAFDGFS(配列番号43)およびWYRCYAYDSNSPYEW(配列番号44)から選択されるヒト白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(ILT2)の配列内のヒトILT2エピトープに結合する、モノクローナル抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、エピトープは、配列番号41、42、43および44を含む3次元エピトープである。
【0013】
別の態様によれば、ILT2に結合し、ILT2とベータ-2-ミクログロブリン(B2M)の間の直接相互作用を阻害する、モノクローナル抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、抗体または抗原結合性断片は、ILT2とB2Mの直接相互作用の阻害を介して、ILT2とHLAタンパク質またはMHC-Iタンパク質の相互作用を阻害する。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、HLAはHLA-Gである。
【0016】
別の態様によれば、ILT2に結合し、がんを患う対象において、
a.ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害性の増加;
b.T細胞の細胞傷害性、増殖またはその両方の増加;
c.マクロファージの食作用の増加、M1炎症性マクロファージの発生の増加、M2サプレッサーマクロファージの発生の減少、またはそれらの組合せ;および
d.がんの腫瘍への樹状細胞のホーミングの増加、樹状細胞の活性化の増加、またはそれらの組合せ
のうちの少なくとも3つを誘導する、モノクローナル抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、がんは、HLA-GまたはMHC-Iを発現するがんである。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、本発明の抗体または抗原結合性断片は、ILT2への結合、抗腫瘍T細胞応答の誘導/増強、T細胞の増殖の増加、がん誘導サプレッサー骨髄活性の低減、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害性の増加、マクロファージの食作用の増加、M1炎症性マクロファージの発生の増加、M2サプレッサーマクロファージの発生の減少、腫瘍微小環境における樹状細胞の数の増加、樹状細胞の活性化の増加、HLA-Gを発現するがんの処置、およびMHC-Iを発現するがんの処置のうちの少なくとも1つにおける使用のためのものである。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、本発明の抗体または抗原結合性断片は、HLA-GまたはMHC-Iを発現するがんを処置するための、オプソニン化剤と組み合わせた使用のためのものである。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、本発明の抗体または抗原結合性断片は、HLA-GまたはMHC-Iを発現するがんを処置するための、抗PD-L1/PD-1に基づく療法と組み合わせた使用のためのものである。
【0021】
別の態様によれば、それを必要とする対象におけるHLA-GまたはMHC-Iを発現するがんを処置する方法であって、対象に本発明の抗体または抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、対象にオプソニン化剤を投与することをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、オプソニン化剤はEGFR阻害剤であり、場合によりEGFR阻害剤はセツキシマブである。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、対象に抗PD-L1/PD-1に基づく免疫療法を投与することをさらに含む。
【0025】
別の態様によれば、それを必要とする対象におけるHLA-GまたはMHC-Iを発現するがんを処置する方法であって、
a.対象におけるILT2または可溶性HLA-Gの発現が所定の閾値を上回ることを確認すること;および
b.対象にILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤を投与すること
を含み、それにより対象におけるがんを処置する、方法が提供される。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、確認することには、投与前の対象におけるILT2または可溶性HLA-Gの発現を測定することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、ILT2の発現を確認することを含み、ILT2の発現は対象の免疫細胞における発現である。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、免疫細胞は、末梢血免疫細胞および腫瘍内免疫細胞から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、免疫細胞は、CD8陽性T細胞、マクロファージ、NK細胞およびTEMRA細胞から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、免疫細胞は末梢血CD8陽性T細胞である。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、可溶性HLA-Gの発現を確認することを含む。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、対象に抗PD-L1/PD-1に基づく療法を投与することをさらに含む。
【0033】
別の態様によれば、それを必要とする対象におけるHLA-GまたはMHC-Iを発現するがんを処置する方法であって、
a.対象にILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤を投与すること;および
b.対象に抗PD-L1/PD-1に基づく療法を投与すること
を含み、それにより対象におけるがんを処置する、方法が提供される。
【0034】
別の態様によれば、HLA-G、MHC-Iまたはその両方を発現するがん細胞に対する抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる方法であって、がん細胞をILT2アンタゴニストと接触させることを含む、方法が提供される。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、ILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤は、ILT2アンタゴニストである。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、ILT2アンタゴニストは、ILT2に特異的に結合し、ILT2媒介免疫細胞抑制を阻害する、抗体または抗原結合性断片である。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、本方法の抗体または抗原結合性断片は、本明細書に記載の抗体または抗原結合性断片である。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、抗PD-L1/PD-1に基づく免疫療法は、抗PD-1遮断抗体である。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、がんは、抗PD-L1/PD-1に基づく療法に対して不応性である。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、対象にオプソニン化剤を投与することをさらに含む。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、オプソニン化剤はEGFR阻害剤であり、場合によりEGFR阻害剤はセツキシマブである。
【0042】
別の態様によれば、がんを患う対象を処置する抗PD-L1/PD-1に基づく療法と組み合わせた使用のための、ILT2に結合し、ILT2媒介免疫細胞抑制を阻害する薬剤を含む医薬組成物が提供される。
【0043】
別の態様によれば、本発明の抗体または抗原結合性断片を含む医薬組成物が提供される。
【0044】
別の態様によれば、薬剤を生成するための方法であって、
ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること、マクロファージによるがん細胞の食作用の増加、がん細胞に対するT細胞の活性の増加、M1マクロファージの発生の増加、M2マクロファージの発生の低減、樹状細胞の腫瘍微小環境への動員の増加、樹状細胞の活性化の増加、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを誘導する薬剤の能力を試験すること、ならびに前記食作用の増加、前記活性の増加、前記発生の増加、前記発生の低減、前記動員、前記活性化の増加、前記活性の減少、および前記細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを誘導する少なくとも1つの薬剤を選択すること;または薬剤をコードする核酸配列を含む1つもしくはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、核酸配列が、
i.ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること;
ii.マクロファージによるがん細胞の食作用の増加、がん細胞に対するT細胞の活性の増加、M1マクロファージの発生の増加、M2マクロファージの発生の低減、樹状細胞の腫瘍微小環境への動員の増加、樹状細胞の活性化の増加、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを誘導する薬剤の能力を試験すること;ならびに
iii.前記食作用の増加、前記活性の増加、前記発生の増加、前記発生の低減、前記動員、前記活性化の増加、前記活性の減少、および前記細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを増加させる少なくとも1つの薬剤を選択すること
によって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、マクロファージによるがん細胞の食作用の増加、がん細胞に対するT細胞の活性の増加、M1マクロファージの発生の増加、M2マクロファージの発生の低減、樹状細胞の腫瘍微小環境への動員の増加、樹状細胞の活性化の増加、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性の増加のうちの少なくとも3つを誘導する薬剤の能力を試験すること、ならびに少なくとも3つを誘導する少なくとも1つの薬剤を選択することを含む。
【0046】
別の態様によれば、薬剤を生成するための方法であって、
ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること、がん細胞に対する抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる薬剤の能力を試験すること、ならびに抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる少なくとも1つの薬剤を選択すること;または薬剤をコードする核酸配列を含む1つもしくはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、核酸配列が、
i.ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること;
ii.がん細胞に対する抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる薬剤の能力を試験すること;ならびに
iii.がん細胞に対する抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる少なくとも1つの薬剤を選択すること
によって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、効能を増加させることには、炎症誘発性サイトカインの分泌における相乗的な増加を含むか、または細胞傷害性の増加は、炎症誘発性サイトカインの分泌における増加を含む。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、炎症誘発性サイトカインは、GM-CSF、TNFαおよびIFNγから選択される。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、効能を増加させることには、T細胞の活性化、細胞傷害性またはその両方における相乗的な増加を含む。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、T細胞の活性化、細胞傷害性またはその両方における増加は、膜のCD107a発現の増加を含む。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、効能を増加させることには、抗PD-L1/PD-1に基づく療法に対して不応性のがんを抗PD-L1/PD-1に基づく療法に対して応答するがんに転換することを含む。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、がん細胞は、HLA-GまたはMHC-Iを発現するがんである。
【0053】
別の態様によれば、薬剤を生成するための方法であって、
ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること、ILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する薬剤の能力を試験すること、ならびにILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する少なくとも1つの薬剤を選択すること;または薬剤をコードする核酸配列を含む1つもしくはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、核酸配列が、
i.ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること;
ii.ILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する薬剤の能力を試験すること;ならびに
iii.ILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する少なくとも1つの薬剤を選択すること
によって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0054】
別の態様によれば、薬剤を生成するための方法であって、
配列番号41、42、43および44から選択されるヒトILT2の配列内のILT2エピトープに結合する薬剤を得ること、または薬剤をコードする核酸配列を含む1つもしくはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、核酸配列が、
配列番号41、42、43および44から選択されるヒトILT2の配列内のILT2エピトープに結合する薬剤を得ることによって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0055】
別の態様によれば、本発明の抗体または抗原結合性断片をコードする核酸分子が提供される。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、核酸分子は発現ベクターである。
【0057】
本発明のさらなる実施形態および適用性の全範囲は、本明細書に以下に与えられる詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、本発明の精神および範囲内のさまざまな変更および改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しながら、例示としてのみ与えられることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】リンパ球上でのILT2の発現を描くヒストグラムである。5μg/mLの最終濃度での市販の抗体#1を使用した。結合は黒色ヒストグラムとして描かれ、アイソタイプ対照染色は薄い灰色ヒストグラムで示されている。
【
図2】種々の免疫細胞上のILT2の発現を描くヒストグラムである。5μg/mLの最終濃度での市販の抗体#1を使用した。結合は黒色ヒストグラムとして描かれ、アイソタイプ対照染色は薄い灰色ヒストグラムで示されている。
【
図3A】ILT2 RNAが過剰発現されているTCGAデータベースからのがん徴候の表である。
【
図3B】腫瘍中のMDSC濃縮とILT2発現の間の相関のドットプロットである。M2濃縮とILT2発現の間の相関を描く棒グラフも提示されている。
【
図3C】異なる腫瘍においてILT2を発現する種々の免疫細胞のパーセントの散布図である。
【
図4A】免疫組織化学(IHC)により決定した場合のHLA-G陽性である種々のがんについての症例のパーセントの棒グラフである。
【
図4B】種々のがんについてのHLA-G IHCスコアーの散布図である。
【
図5】種々のがんにおける可溶性HLA-Gレベルの散布図である。
【
図6-1】3つの抗ILT2抗体の重鎖および軽鎖の配列である。KABAT方式で決定した場合の3つの抗ILT-2抗体CDRの重鎖および軽鎖の配列は下線が施されているまたは赤色で示されている。
【
図7A】ILT2およびILT2ファミリーメンバーへの抗体結合値の表である。
【
図7B】ヒトILT2をトランスフェクトしたBW細胞の細胞表面上のILT2への抗体結合のヒストグラムである。
【
図7C】ヒトILT2をトランスフェクトしたBW細胞の細胞表面で発現されるILT2へのキメラおよびヒト化19E3(左パネル)のならびにキメラおよびヒト化15G8(右パネル)の結合の線グラフである。
【
図7D】19E3抗体を用いた胃がん試料への免疫染色の画像である。
【
図7E】15G8ヒト化抗体を使用しての、健康な対照およびがん患者由来のPBMC試料でILT2を発現する種々の免疫細胞のパーセントの散布図である。
【
図8-1】
図8Aは、それぞれのILT2抗体および正の対照(PC、GHI/75抗体)についてのパーセント遮断の棒グラフである。
図8Bは、ILT2遮断抗体の存在下でHLA-Gを発現する細胞へのILT2-ビオチン結合のヒストグラムである。細胞へのILT2-ビオチンの結合は、フローサイトメトリー分析によりストレプトアビジン-PEを使用して決定された。抗体なし(灰色線)、15G8(薄い灰色線)、アイソタイプ対照(黒色線)。
図8Cは、HLA-Gを発現する細胞へのILT2-ビオチン結合により決定された場合の15G8ヒト化抗体の遮断活性の線グラフである。
図8Dは、抗体の存在下でHLA-Gを発現する細胞へのILT2-ビオチンの結合により決定された場合のキメラおよびヒト化19E3(左パネル)のならびにキメラおよびヒト化15G8(右パネル)の遮断活性の線グラフである。
図8Eは、HLA-G発現細胞の存在下およびILT2遮断抗体の存在または非存在下でのILT2シグナル伝達レポーター構築物を発現する細胞からのマウスIL-2分泌の棒グラフである。PC=正の対照(GHI/75抗体)。
図8Fは、レポーターアッセイにより決定した場合の15G8ヒト化抗体の遮断活性の線グラフである。
図8Gは、ILT2遮断抗体および正の対照抗体の存在または非存在下でのILT2シグナル伝達レポーター構築物を発現する細胞からのマウスIL-2分泌の棒グラフである。
図8H~
図8Kは、ILT2遮断抗体および正の対照(
図8I~
図8J)汎HLA抗体もしくは(
図8K)HLA-G特異的抗体の存在または非存在下で、(
図8H)ILT2を欠くジャーカット細胞、または(
図8I~
図8K)A375がん細胞と共培養されILT2を発現し(
図8I)MHC-I発現のみであるジャーカット細胞もしくは(
図8J~
図8K)MHC-Iと外来性HLA-Gの両方を発現するジャーカット細胞からのヒトIL-2分泌の棒グラフである。
図8L~
図8Nは、(
図8L)15G8抗体、(
図8M)GHI/75抗体および(
図8N)HP-F1抗体の存在または非存在下、HLA-Gを発現するA375がん細胞と一緒に培養されてILT2を発現するジャーカット細胞からのヒトIL-2分泌の棒グラフである。
図8O~
図8Pは、15G8抗体の存在と一緒におよびこの存在なしでHLA-G陽性がん細胞と一緒にインキュベートされた、TIL細胞およびNK細胞におけるそれぞれ活性化マーカー(
図8O)リン酸化ZAP70および(
図8P)リン酸化Sykの発現のドットプロットである。
【
図9A】FACSベースの方法により決定される場合の、ILT2抗体の存在下でマクロファージと共培養されたHLA-G発現がん細胞の対照からのパーセントとして食作用を測定した棒グラフである。
【
図9B】Incucyte(登録商標)システムにより決定した場合の、ILT2抗体の存在下でマクロファージによるがん細胞のリアルタイム食作用の線グラフである。
【
図9C】ILT2抗体15G8の存在下で、マクロファージと共培養された種々のHLA-GおよびMHC-I発現がん細胞の対照からのパーセントとして食作用を測定した棒グラフである。
【
図9D】ILT2抗体、アービタックス、hIgG対照またはそれらの組合せの存在下で、A253-HLA-G細胞と共培養されたマクロファージによる食作用の棒グラフである。
【
図10A】ILT2抗体の存在下で、野生型721.221細胞またはHLA-G発現721.221細胞と共培養された活性化されたCD8 T細胞からのIFNγ分泌およびグランザイムB分泌の棒グラフである。
【
図10B】ILT2抗体の存在下で、HLA-G発現A375細胞と共培養された活性化されたCD8 T細胞からのIFNγ分泌およびグランザイムB分泌の棒グラフである。
【
図11-1】
図11A~
図11Bは、ILT2抗体の存在下で、(
図11A)HLA-Gおよび(
図11B)MHC-Iを発現する種々のがん細胞系統と共培養されたNK細胞系統細胞からのパーセント細胞傷害性の棒グラフである。
図11C~
図11Dは、15G8 ILT2抗体の存在下で、H&Nがんおよびメラノーマ細胞と共培養したNK細胞系統細胞からのそれぞれ(
図11C)グランザイムBおよび(
図11D)IFNγ分泌の棒グラフである。
図11E~
図11Fは、ILT2抗体の存在下で、標的がん細胞と一緒にインキュベートされたILT2陽性原発NK細胞における(
図11E)IFNγ発現および(
図11F)CD107A発現の棒グラフである。
図11G~
図11Hは、ILT2陽性細胞とILT2抗体への応答における(
図11G)IFNγ発現および(
図11H)CD107A発現の相関を示す個々の発現の散布図である。
【
図12】IgGまたは抗ILT2抗体の存在下で、健康なドナーから単離された単球からM0、M1またはM2マクロファージへ分化されたマクロファージにおいてフローサイトメトリーにより決定された場合のHLA-DRおよびCD80発現(MFI)の線グラフである。対照IgGと比べて特定のマーカーの発現の増加を示す患者の数は試験した条件ごとに示されている。
【
図13-1】
図13Aは、種々の原発腫瘍細胞と共培養されたマクロファージによる食作用の棒グラフである。
図13B~
図13Cは、本発明のヒト化抗体の存在下での自己マクロファージによる(
図13B)RCC患者および(
図13C)H&N患者から単離された原発腫瘍細胞の用量依存性食作用の棒グラフである。
【
図14-1】
図14Aは、RCCおよび食道がん患者由来の腫瘍細胞(左パネル)およびPBMC(右パネル)におけるILT2およびPD-1発現のドットプロットである。
図14B~
図14Cは、CRC患者のTME中のCD8 T細胞集団での(
図14B)PD-1および(
図14C)ILT2 RNA発現の箱ひげ図である。
図14D~
図14Eは、(
図14D)健康なドナーの末梢血由来のCD8 T細胞でのILT2発現のならびに(
図14E)食道がん由来のTILでのILT2およびPD-1発現のドットプロットである。
図14Fは、15G8、抗PD-1抗体またはこの2つの組合せの存在下で、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)で活性化された10人の健康なドナー由来のPBMC上での膜CD107aの増加の散布図である。
図14Gは、3人のドナー由来の代表的なPBMCでの発現のCD107a増加の棒グラフである。
図14H~
図14Jは、抗PD-1抗体、ヒト化抗ILT2抗体または両方の存在下で、種々の原発がん細胞と共培養された活性化されたPBMCからの炎症性サイトカイン(
図14H)IFNγ、(
図14I)TNFα、(
図14J)GM-CSF分泌のレベルの棒グラフである。
図14K~
図14Lは、混合リンパ球反応における(
図14K)樹状細胞または(
図14L)マクロファージと共培養されたT細胞からのIFNγ分泌のレベルの棒グラフである。
【
図15-1】
図15Aは、ヒトマクロファージおよび抗ILT-2抗体を補充した免疫無防備状態マウスにおいて成長したHLA-GおよびMHC-1発現腫瘍の腫瘍量の線グラフである。
図15Bは、肺腫瘍を予防するためのマウス処置スケジュールの図示である。
図15Cは、ヒトPBMCおよびILT2抗体ありでまたはなしでHLA-G陽性がん細胞を接種した免疫無防備状態マウスの肺の写真である。
図15Dは、
図15Cからのデータを要約した散布図である。
図15Eは、すでに確立している肺腫瘍を処置するためのマウス処置スケジュールの図示である。
図15Fは、腫瘍重量の箱ひげ図である。
【
図16-1】
図16A~
図16Fは、そのT
EMRA細胞またはNK細胞においてそれぞれ低または高レベルのILT2を有するドナーからPBMCを受けたマウスにおける、(
図16A)全CD8 T細胞でのCD107A発現、(
図16B)T
EMRA細胞でのCD107A発現、(
図16C)NK細胞でのCD69発現、(
図16D)全CD8 T細胞でのCD69発現、(
図16E)T
EMRA細胞でのCD107発現および(
図16F)組合せ処置を受けたNK細胞でのCD69発現の箱ひげ図である。*はP<0.005である。**はP<0.0005である。***はP<0.0001である。
【
図17-1】
図17Aは、H&Nがんを接種され抗ILT2または対照抗体で処置されたヒト化NSGマウスのマウス処置スケジュールの図示である。
図17Bは、IgGおよび抗ILT2処置マウスの腫瘍重量の線グラフである。
図17C~
図17Fは、BND-22処置に応答した(R)または応答しなかった(NR)マウスにおける末梢CD8 T細胞での(
図17C)ベースラインILT2レベルの棒グラフである。抗ILT2抗体で処置した4頭のマウスでの腫瘍内処置後(
図17D)CD107A発現、(
図17E)M1/M2比および(
図17F)全CD80陽性樹状細胞数。
【
図18-1】
図18Aは、重要な予測された結合をした残基を示すILT2の部分的配列である。これらの残基は、最も高い可能性を表す青紫色から最も低い可能性を表す淡いシアン(それでも重要である)まで、エピトープに属するその生の可能性の関数としての4つの範疇に分割される。星印は、選択された突然変異の位置を示す。
図18B~
図18Cは、(
図18B)
図18Aからの残基の位置および(
図18C)ILT2上の4つの主な相互作用領域を示すILT2表面構造の3Dレンダリングである。
図18D~
図18Fは、(
図18D)15G8抗体のエピトープ(黄色/ピンク色)および国際公開第2020/136145号からの3H5、12D12および27H5抗体のエピトープ(赤色)、ならびに3H5抗体の第2のエピトープ(濃青色)および(
図18E~
図18F)ILT2上の15G8エピトープ(ピンク色)と(
図18E)HLA-A(青色)または(
図18F)HLA-G(青色)と複合したB2M(薄紫色)との相互作用を示すILT2の3Dリボンまたは表面図である。
【
図19-1】
図19A~
図19Bは、種々のILT2抗体の存在下で、マクロファージと共培養された(
図19A)A375-HLA-Gおよび(
図19B)SKMEL28-HLA-Gがん細胞のIgG対照と比べた%増加食作用の棒グラフである。
図19Cは、競合する非ビオチン化GHI/75、HP-F1および15G8抗体の存在下で、ビオチン化15G8抗体を使用する競合ILT2結合ELISAの線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、ILT2に結合し、ILT2媒介免疫抑制を阻害する、モノクローナル抗体または抗原結合性断片、および医薬組成物を対象とする。がんを処置する方法、およびPD-1/PD-L1免疫療法を増強する方法も提供される。
【0060】
本発明は少なくとも部分的には、ILT2拮抗作用ががん細胞と戦うための、PD-1およびPD-L1に基づく免疫療法と相乗的に作用するという驚くべき発見に基づいている。具体的には、抗PD-1抗体と組み合わせたILT2遮断抗体が免疫細胞による炎症誘発性サイトカインの分泌を増加させたことが見出された。この増加は、単に相加的であったのではなく、むしろそれぞれの薬剤個々の効果の総和よりも大きかった。実際、少なくとも1種のサイトカインに関して、いずれの薬剤も単独では一切の効果を有しなかった場合に、新たな増加が観察された。この組み合わされた処置は、PD-1/PD-L1不応性がんの、応答性にする転換を可能にする。
【0061】
さらに驚くべきことに、患者の免疫細胞におけるILT2発現のレベルがILT2遮断療法の効力に相関したことが見出された。療法に対する応答者は高いILT2レベルを有し、非応答者は低いILT2レベルを有した。特に、循環CD8陽性T細胞は処置転帰を予測した。
【0062】
最後に、本発明の抗体は、D1ドメインおよびD2ドメインの間のILT2インタードメイン(interdomain)内の特有のエピトープに結合することが見出された。この領域は、ILT2およびB2Mの間の相互作用ドメインであることが公知であり、本発明の抗体はこの相互作用を直接遮断することが公知となった最初の抗体である。さらに、本発明の抗体は、他の抗ILT2抗体に関して報告されていない免疫賦活効果を有することが見出された。本抗体は、HLA-GおよびMHC-Iを発現するがん細胞に対する、T細胞、NK細胞、樹状細胞およびマクロファージの免疫のサーベイランスをモジュレートすることができた。特に、単剤療法として初めて使用された抗ILT2抗体は、がん細胞の食作用を増強することができた。
【0063】
抗体
第1の態様において、3つの重鎖CDR(CDR-H)および3つの軽鎖CDR(CDR-L)を含む抗体または抗原結合性断片であって、CDR-H1は、配列番号1(DHTIH)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号2(YIYPRDGSTKYNEKFKG)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号3(TWDYFDY)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号4(RASESVDSYGNSFMH)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号5(RASNLES)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号6(QQSNEDPYT)に示すアミノ酸配列を含む、抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0064】
別の態様において、3つの重鎖CDR(CDR-H)および3つの軽鎖CDR(CDR-L)を含む抗体または抗原結合性断片であって、CDR-H1は、配列番号7(GYTFTSYGIS)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号8(EIYPGSGNSYYNEKFKG)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号9(SNDGYPDY)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号10(KASDHINNWLA)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号11(GATSLET)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号12(QQYWSTPWT)に示すアミノ酸配列を含む、抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0065】
別の態様において、3つの重鎖CDR(CDR-H)および3つの軽鎖CDR(CDR-L)を含む抗体または抗原結合性断片であって、CDR-H1は、配列番号13(SGYYWN)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号14(YISYDGSNNYNPSLKN)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号15(GYSYYYAMDX)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号16(RTSQDISNYLN)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号17(YTSRLHS)に示すアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号18(QQGNTLPT)に示すアミノ酸配列を含み、Xは、A、CおよびSから選択される、抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0066】
いくつかの実施形態において、配列番号16はGYSYYYAMDA(配列番号25)である。いくつかの実施形態において、配列番号16は配列番号25であり、抗体または抗原結合性断片はヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、配列番号16はGYSYYYAMDS(配列番号26)である。いくつかの実施形態において、配列番号16は配列番号26であり、抗体または抗原結合性断片はヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、配列番号16はGYSYYYAMDC(配列番号27)である。いくつかの実施形態において、配列番号16は配列番号27であり、抗体または抗原結合性断片はマウス抗体である。
【0067】
別の態様において、ドメインD1およびD2の間のヒト白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(ILT2)インタードメインに結合する、抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0068】
別の態様において、VKKGQFPIPSITWEH(配列番号41)、LELVVTGAYIKPTLS(配列番号42)、VILQCDSQVAFDGFS(配列番号43)およびWYRCYAYDSNSPYEW(配列番号44)から選択されるILT2の配列内のILT2エピトープに結合する、抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0069】
別の態様において、ILT2に結合し、ILT2およびベータ-2-ミクログロブリン(B2M)の間の相互作用を阻害する、抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0070】
別の態様において、ILT2に結合し、がんを患う対象において、
a.ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害性の増加;
b.T細胞の細胞傷害性、増殖またはその両方の増加;
c.マクロファージの食作用の増加、M1炎症性マクロファージの発生の増加、M2サプレッサーマクロファージの発生の減少、またはそれらの組合せ;および
d.前記がんの腫瘍への樹状細胞のホーミングの増加、樹状細胞の活性化の増加、またはそれらの組合せ
のうちの少なくとも1つを誘導する、抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0071】
いくつかの実施形態において、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗体はポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗体はヒト抗体である。いくつかの実施形態において、抗体はマウス抗体である。いくつかの実施形態において、抗体はヒト化抗体である。本明細書で使用される場合、「ヒト化」抗体とは、ヒト骨格を有するが、非ヒト抗体に由来するかまたは非ヒト抗体から取得されるCDRを有する抗体を指す。いくつかの実施形態において、ヒト化の間、CDRは変更されるが、全体的に依然として非ヒト抗体のCDRに由来する。いくつかの実施形態において、抗原結合性断片は一本鎖抗体である。いくつかの実施形態において、抗原結合性断片は単一ドメイン抗体である。
【0072】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(ILT2)に結合する。いくつかの実施形態において、ILT2はヒトILT2である。いくつかの実施形態において、ILT2は哺乳動物ILT2である。いくつかの実施形態において、ILT2は霊長類ILT2である。いくつかの実施形態において、ILT2はマウスILT2である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片はILT2の細胞外ドメインに結合する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片はILT2のリガンドポケットに結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはB2Mである。いくつかの実施形態において、リガンドはHLAではない。いくつかの実施形態において、リガンドはHLAである。いくつかの実施形態において、HLAはHLA-Gである。いくつかの実施形態において、リガンドはMHCではない。いくつかの実施形態において、リガンドはMHCである。いくつかの実施形態において、MHCはMHCクラスI(MHC-I)である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片はILT2インタードメインに結合する。いくつかの実施形態において、インタードメインはD1ドメインおよびD2ドメインの間の境界である。いくつかの実施形態において、インタードメインはD1ドメインおよびD2ドメインの間のヒンジドメインである。いくつかの実施形態において、インタードメインはD1のN末端ドメインを含まない。いくつかの実施形態において、インタードメインは配列番号31のアミノ酸54~184由来である。いくつかの実施形態において、配列番号31のアミノ酸54~184はインタードメインを含む。いくつかの実施形態において、インタードメインは配列番号31のアミノ酸90~184由来である。いくつかの実施形態において、アミノ酸90~184はインタードメインを含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片はインタードメイン内のエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、エピトープは、少なくとも25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99または100%のインタードメインを含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、エピトープはD2内に存在する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合ドメインはD2におけるエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、エピトープは少なくとも部分的にD2に存在する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合ドメインは少なくとも部分的にD2に存在するエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、エピトープはD1およびD2にまたがる。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、HLA-Gのα3ドメインと相互作用するILT2ドメインに結合しない。
【0073】
いくつかの実施形態において、ILT2は哺乳動物ILT2である。いくつかの実施形態において、ILT2はヒトILT2である。いくつかの実施形態において、ILT2はNCBI参照配列:NP_006660.4において提供されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ILT2は以下のアミノ酸配列:MTPILTVLICLGLSLGPRTHVQAGHLPKPTLWAEPGSVITQGSPVTLRCQGGQETQEYRLYREKKTALWITRIPQELVKKGQFPIPSITWEHAGRYRCYYGSDTAGRSESSDPLELVVTGAYIKPTLSAQPSPVVNSGGNVILQCDSQVAFDGFSLCKEGEDEHPQCLNSQPHARGSSRAIFSVGPVSPSRRWWYRCYAYDSNSPYEWSLPSDLLELLVLGVSKKPSLSVQPGPIVAPEETLTLQCGSDAGYNRFVLYKDGERDFLQLAGAQPQAGLSQANFTLGPVSRSYGGQYRCYGAHNLSSEWSAPSDPLDILIAGQFYDRVSLSVQPGPTVASGENVTLLCQSQGWMQTFLLTKEGAADDPWRLRSTYQSQKYQAEFPMGPVTSAHAGTYRCYGSQSSKPYLLTHPSDPLELVVSGPSGGPSSPTTGPTSTSGPEDQPLTPTGSDPQSGLGRHLGVVIGILVAVILLLLLLLLLFLILRHRRQGKHWTSTQRKADFQHPAGAVGPEPTDRGLQWRSSPAADAQEENLYAAVKHTQPEDGVEMDTRSPHDEDPQAVTYAEVKHSRPRREMASPPSPLSGEFLDTKDRQAEEDRQMDTEAAASEAPQDVTYAQLHSLTLRREATEPPPSQEGPSPAVPSIYATLAIH(配列番号31)を有する。
【0074】
いくつかの実施形態において、ILT2はNCBI参照配列:NP_001075106.2において提供されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ILT2はNCBI参照配列:NP_001075107.2において提供されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ILT2はNCBI参照配列:NP_001075108.2において提供されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ILT2はNCBI参照配列:NP_001265328.2において提供されるアミノ酸配列を有する。
【0075】
いくつかの実施形態において、ILT2のD1ドメインは、アミノ酸配列GHLPKPTLWAEPGSVITQGSPVTLRCQGGQETQEYRLYREKKTALWITRIPQELVKKGQFPIPSITWEHAGRYRCYYGSDTAGRSESSDPLELVVTGA(配列番号46)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、ILT2のD1ドメインは、配列番号31のアミノ酸24~121を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、ILT2のD2ドメインは、アミノ酸配列YIKPTLSAQPSPVVNSGGNVILQCDSQVAFDGFSLCKEGEDEHPQCLNSQPHARGSSRAIFSVGPVSPSRRWWYRCYAYDSNSPYEWSLPSDLLELLVLGV(配列番号47)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、ILT2のD2ドメインは、配列番号31のアミノ酸122~222を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、ILT2のインタードメインは、配列番号31のアミノ酸Gln41、Lys65、Trp90、Gly120、Ala121、Val122、Ile123、Gln148、Val149、Ala150、Phe151、Asp201、Asn203およびGlu207を含む。いくつかの実施形態において、エピトープは、配列番号31のアミノ酸Gln41、Lys65、Trp90、Gly120、Ala121、Val122、Ile123、Gln148、Val149、Ala150、Phe151、Asp201、Asn203およびGlu207を含む。いくつかの実施形態において、エピトープは、配列番号31のアミノ酸Gln41、Lys65、Trp90、Gly120、Ala121、Val122、Ile123、Gln148、Val149、Ala150、Phe151、Asp201、Asn203およびGlu207から選択される少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、エピトープは、配列番号31のアミノ酸Gln41、Lys65、Trp90、Gly120、Ala121、Val122、Ile123、Gln148、Val149、Ala150、Phe151、Asp201、Asn203およびGlu207から選択される少なくとも10個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号41において提供されるILT2エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号42において提供されるILT2エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号43において提供されるILT2エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号44において提供されるILT2エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号41、42、43および44のうちの少なくとも2つを含む3次元エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、3次元エピトープは、配列番号41、42、43および44のうちの少なくとも3つを含む。いくつかの実施形態において、3次元エピトープは、配列番号41、42、43および44を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、Q18、G19、K42、L45、S64、I65、T66、W67、E68、G97、A98、Y99、I100、Q125、V126、A127、F128、D178、N180、S181、およびE184から選択されるILT2の残基を含むILT2エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、G97、A98、Y99、I100、Q125およびV126から選択されるILT2の残基を含むILT2エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、Q18、G19、K42、L45、S64、I65、T66、W67、E68、G97、A98、Y99、I100、Q125、V126、A127、F128、D178、N180、S181、およびE184から選択されるILT2の複数の残基を含むILT2エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、G97、A98、Y99、I100、Q125およびV126から選択されるILT2の複数の残基を含むILT2エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、Q18、G19、K42、L45、S64、I65、T66、W67、E68、G97、A98、Y99、I100、Q125、V126、A127、F128、D178、N180、S181、およびE184から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21個の残基に結合する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、G97、A98、Y99、I100、Q125およびV126から選択される少なくとも1、2、3、4、5、または6個の残基に結合する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、G97、A98、Y99、I100、Q125およびV126に結合する。本明細書で使用される番号が配列番号31に関するものであることは理解されるだろう。
【0077】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2アゴニストではない。いくつかの実施形態において、拮抗作用は、ILT2媒介免疫抑制の拮抗作用である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2媒介免疫抑制を阻害する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2シグナル伝達を阻害する。
【0078】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態において、相互作用は直接相互作用である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2とB2Mとの接触を阻害する。いくつかの実施形態において、接触は直接接触である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2およびHLA、MHCまたはその両方の間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2およびHLA、MHCまたはその両方の間の相互作用を、B2MとのILT2相互作用の阻害を介して阻害する。ある実施形態において、相互作用はB2Mによって媒介される。いくつかの実施形態において、抗体は、HLA、MHCまたはその両方との相互作用を、B2Mとの相互作用の阻害を介して間接的に阻害する。いくつかの実施形態において、相互作用はB2M媒介相互作用である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2およびB2M/HLA複合体の間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2およびB2M/MHC複合体の間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態において、複合体はB2M単量体を含む。いくつかの実施形態において、複合体はHLAまたはMHC単量体を含む。いくつかの実施形態において、複合体はB2M二量体を含む。いくつかの実施形態において、複合体はHLAまたはMHC二量体を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、ILT2媒介免疫抑制は、免疫細胞の抑制である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、T細胞、マクロファージ、樹状細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞から選択される。いくつかの実施形態において、ILT2媒介免疫抑制は、T細胞、マクロファージ、樹状細胞およびNK細胞の抑制である。いくつかの実施形態において、ILT2媒介免疫抑制は、T細胞、マクロファージおよびNK細胞の抑制である。いくつかの実施形態において、T細胞はCD8陽性T細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞はTEMRA細胞(CD45RAを再発現する最終分化エフェクターメモリー細胞)である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、CD8陽性T細胞、TEMRA細胞、樹状細胞、マクロファージおよびナチュラルキラー(NK)細胞から選択される。いくつかの実施形態において、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞はNK細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞はマクロファージである。いくつかの実施形態において、マクロファージは腫瘍関連マクロファージ(TAM)である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は樹状細胞である。いくつかの実施形態において、樹状細胞は免疫寛容誘発性樹状細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は末梢血免疫細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は末梢血単核細胞(PBMC)である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は腫瘍内免疫細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、腫瘍微小環境(TME)における免疫細胞である。いくつかの実施形態において、ILT2媒介免疫抑制は、マクロファージの食作用の抑制である。いくつかの実施形態において、ILT2媒介免疫抑制は、NK細胞の細胞傷害性の抑制である。いくつかの実施形態において、ILT2媒介免疫抑制は、T細胞の細胞傷害性の抑制である。いくつかの実施形態において、ILT2媒介免疫抑制は、T細胞の増殖の抑制である。いくつかの実施形態において、ILT2媒介免疫抑制は、免疫細胞の増殖の抑制である。
【0080】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2以外の白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBのメンバーに結合しない。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2に特異的である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2に優先的に結合する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、ILT2以外の白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBのメンバーを阻害しない。
【0081】
本明細書で使用される場合、「増加した結合効能」とは、アイソタイプ対照の結合よりも大きい、標的または抗原との特異的結合を指す。いくつかの実施形態において、増加した結合は、結合効能の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000%の増加である。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、増加した結合は、結合を有しないアイソタイプ対照と比較した結合の存在である。抗体と特異的ドメインとの結合は当業者に周知であるだろう。抗体結合は:X線結晶構造解析、免疫沈降、イムノブロッティング、競合アッセイ、および結合平衡除外法を含むがこれらに限定されない、当業者に公知の任意の手段においてアッセイすることができる。いくつかの実施形態において、増加した結合効能は特異的結合である。
【0082】
本明細書に開示される抗体もしくは抗原結合性断片、バリアント、または誘導体は、103M”1秒”1、5×103M”1秒”1、104M”1秒”1または5×104M”1秒”1よりも大きいかまたはこれらと等しい会合速度(k(on))で標的抗原、例えばILT2に結合すると言うことができる。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。大半の抗体は10-9Mの典型的な親和性を有するが、本明細書に開示される抗体もしくは抗原結合性断片、バリアント、または誘導体は、10-6M以上の親和性で
標的抗原に結合すると言うことができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号19(QVQLQQSDAELVKPGASVKISCKVSGYTFTDHTIHWMKQRPEQGLEWIGYIYPRDGSTKYNEKFKGKATLTADKSSSTAYMQLNSLTSEDSAVYFCARTWDYFDYWGQGTTLTVSS)のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号21(QVQLQQSGAELARPGASVKLSCKASGYTFTSYGISWVKQRTGQGLEWVGEIYPGSGNSYYNEKFKGKATLTADKSSSTAYMELRSLTSEDSAVYFCARSNDGYPDYWGQGTTLTVSS)のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号23(DVQLQGSGPGLVKPSETLSLTCSVTGYSITSGYYWNWIRQFPGKKLEWMGYISYDGSNNYNPSLKNRITISRDTDKNQFSLKLNSVTAADTATYYCAHGYSYYYAMDXWGQGTSSVTVSS)のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、Xは、A、CおよびSから選択される。
【0084】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号20(DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVDSYGNSFMHWYQQKPGQPPKLLIYRASNLESGIPARFSGSGSRTDFTLTINPVEADDVATYYCQQSNEDPYTFGGGTKLEIK)のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号22(DIQMTQSSSYLSVSLGGRVTITCKASDHINNWLAWYQQKPGNAPRLLISGATSLETGVPSRFSGSGSGKDYTLSITSLQTEDVATYYCQQYWSTPWTFGGGTKLEIK)のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号24(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRTSQDISNYLNWYQQKPGKAVKLLISYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQGNTLPTFGQGTKLEIKのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号45(DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRTSQDISNYLNWYQQKPDGTVKLLISYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPTFGSGTKLEIK)のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、配列番号23はDVQLQGSGPGLVKPSETLSLTCSVTGYSITSGYYWNWIRQFPGKKLEWMGYISYDGSNNYNPSLKNRITISRDTDKNQFSLKLNSVTAADTATYYCAHGYSYYYAMDAWGQGTSSVTV(配列番号28)である。いくつかの実施形態において、配列番号23は配列番号28であり、抗体または抗原結合性断片はヒト化されている。いくつかの実施形態において、配列番号23はDVQLQGSGPGLVKPSETLSLTCSVTGYSITSGYYWNWIRQFPGKKLEWMGYISYDGSNNYNPSLKNRITISRDTDKNQFSLKLNSVTAADTATYYCAHGYSYYYAMDSWGQGTSSVTV(配列番号29)である。いくつかの実施形態において、配列番号23は配列番号29であり、抗体または抗原結合性断片はヒト化されている。いくつかの実施形態において、配列番号23はDVQLQGSGPGLVKPSQSLSLTCSVTGYSITSGYYWNWIRQFPGNKLEWMGYISYDGSNNYNPSLKNRISITRDTSKNQFFLKLNSVTSEDTATYYCAHGYSYYYAMDCWGQGTSVTVSS(配列番号30)である。いくつかの実施形態において、配列番号23は配列番号30であり、抗体または抗原結合性断片はマウス由来である。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、それを必要とする対象におけるがんを処置または改善することにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、がんは、HLA-G陽性がんである。いくつかの実施形態において、がんは、MHC-I陽性がんである。いくつかの実施形態において、がんは、HLA-Gを発現するがんである。いくつかの実施形態において、がんは、MHC-Iを発現するがんである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、免疫抑制性から免疫賦活性へ腫瘍微小環境を変化させることにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、前記腫瘍微小環境を変化させることは:抗腫瘍T細胞応答を誘導する/増強する、T細胞の増殖を増加させる、がん誘導サプレッサー骨髄活性を低減する、樹状細胞(DC)の活性化を増加させる、腫瘍への樹状細胞のホーミングを増加させる、マクロファージの食作用を増加させる、M1マクロファージの発生を増加させる、M2マクロファージの発生を減少させる、およびNK細胞の活性を増加させるのうちの1つまたはそれ以上を含む。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、がん細胞に対するT細胞応答を増加させることにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、T細胞応答は、炎症誘発性サイトカインの分泌の増加を含む。いくつかの実施形態において、T細胞応答は、細胞傷害性の増加を含む。いくつかの実施形態において、T細胞応答は、T細胞の増殖の増加を含む。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、がん細胞に対するマクロファージの食作用を増加させることにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、腫瘍またはがんへの樹状細胞のホーミングを増加させることにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、マクロファージの食作用を増加させることにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、がんに対するマクロファージの食作用を増加させることにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、M1マクロファージの発生を増加させることにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、M2マクロファージの発生を減少させることにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、NK細胞のがん細胞に対する細胞傷害性を増加させることにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、がん誘導サプレッサー骨髄活性を低減することにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、免疫寛容誘発性樹状細胞(DC)の活性を低減することにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、M1単球の活性または数を増加させるためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、M2単球の活性または数を減少させるためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、M1マクロファージの発生を増加させるためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、M2マクロファージの発生を減少させるためのものである。いくつかの実施形態において、M1単球/マクロファージは炎症性マクロファージ/単球である。いくつかの実施形態において、M2単球/マクロファージはサプレッサーマクロファージ/単球である。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、腫瘍におけるDC数を増加させるためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、DCの腫瘍への動員を増加させるためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、腫瘍へのDC動員を増加させるためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、DCの活性化を増加させるためのものである。いくつかの実施形態において、DCの活性化を増加させることは、免疫寛容誘発性樹状細胞の活性を減少させることを含む。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片は、抗原提示を増加させるためのものである。いくつかの実施形態において、腫瘍に対するとは、腫瘍微小環境(TME)に対することである。
【0087】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、対象において、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の抗がん効果を誘導する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、対象において、少なくとも2つの効果を誘導する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、対象において、少なくとも3つの効果を誘導する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、対象において、少なくとも4つの効果を誘導する。いくつかの実施形態において、効果は、NK細胞の細胞傷害性の増加、T細胞の細胞傷害性の増加、T細胞の増殖の増加、マクロファージの食作用の増加、M1マクロファージの発生の増加、M2マクロファージの発生の減少、がんの腫瘍への樹状細胞のホーミングの増加、および樹状細胞の活性化の増加から選択される。いくつかの実施形態において、効果は、a)NK細胞の細胞傷害性の増加;b)T細胞の細胞傷害性、増殖またはその両方の増加;c)マクロファージの食作用の増加、M1マクロファージの発生の増加、M2マクロファージの発生の減少、またはそれらの組合せ;ならびにd)がんの腫瘍への樹状細胞のホーミングの増加、樹状細胞の活性化の増加、およびそれらの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、細胞傷害性は、がんに対する細胞傷害性である。いくつかの実施形態において、食作用は、がんまたはがん細胞の食作用である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、対象において、T細胞、NK細胞、樹状細胞およびマクロファージに対する抗がん効果を誘導する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、対象において、T細胞、NK細胞、樹状細胞およびマクロファージのうちの少なくとも3つに対する抗がん効果を誘導する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、単剤療法として効果を誘導する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、組み合わせずに効果を誘導する。
【0088】
いくつかの実施形態において、細胞傷害性の増加は、炎症誘発性サイトカインの分泌の増加を含む。炎症誘発性サイトカインは、当技術分野において周知であり、これらに限定されないが:IL-1、IL-1B、IL-6、TNFα、IFNγ、MCP-1、IL-12、IL-18、IL-2、IL-15、IL-17、IL-21および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が挙げられる。いくつかの実施形態において、炎症誘発性サイトカインは、IL-6、インターフェロンガンマ(IFNγ)およびGM-CSFから選択される。いくつかの実施形態において、炎症誘発性サイトカインは、GM-CSFである。
【0089】
「抗ILT2抗体」、「ILT2を認識する抗体」、または「ILT2に対する抗体」とは、十分な親和性および特異性によりILT2に結合する抗体である。いくつかの実施形態において、抗ILT2抗体は、結合する抗原としてILT2を有する。
【0090】
「抗原」とは、抗体形成を誘発することができ、抗体によって結合することができる分子または分子の一部である。抗原は、1つまたは2つ以上のエピトープを有し得る。上で言及した特異的反応とは、抗原が高度に選択的に、対応する抗体とは反応することができ、他の抗原によって惹起される数多くの他の抗体とは反応し得ないことを示すことが意図される。
【0091】
「抗原決定基」または「エピトープ」という用語は、本発明によれば、特定の抗体と特異的に反応する抗原分子の領域を指す。エピトープに由来するペプチド配列は、当技術分野において公知の方法を適用して、動物を免疫化し、追加のポリクローナルまたはモノクローナル抗体を産生させるために、単独でまたは担体部分と組み合わせて使用することができる。免疫グロブリン可変ドメインもまた、CDRを含む可変領域セグメントを同定するために、IMGT情報システム(www://imgt.cines.fr/)(IMGT(登録商標)/V-Quest)を使用して分析することができる。例えば、Brochet、X.ら、Nucl.Acids Res.J6:W503~508頁(2008年)を参照されたい。
【0092】
Kabatらもまた、あらゆる抗体に適用可能な可変ドメイン配列のための番号付けシステムを定義した。当業者は、配列それ自体以外のいかなる実験データにも頼らずに、この「Kabat番号付け」のシステムをあらゆる可変ドメイン配列に明確に割り当てることができる。本明細書で使用される場合、「Kabat番号付け」とは、Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequence of proteins of Immunological Interest」(1983年)によって記載されている番号付けシステムを指す。
【0093】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、別の薬剤と組み合わせた使用のためのものである。いくつかの実施形態において、別の薬剤と組み合わせた使用は、HLA-Gおよび/またはMHC-Iを発現するがんを処置するためのものである。いくつかの実施形態において、薬剤はオプソニン化剤である。いくつかの実施形態において、薬剤は抗PD-1および/または抗PD-L1剤である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、抗PD-1/PD-L1に基づく療法と組み合わせた使用のためのものである。
【0094】
本明細書で使用される場合、「オプソニン化剤」とは、標的細胞(例えば、がん細胞、細胞内病原体を保有する細胞等)に結合し、標的細胞をオプソニン化することができる任意の薬剤である。例えば、標的細胞に結合することができる任意の抗体は、抗体がFc領域を有する場合、標的細胞をオプソニン化する薬剤であると考えられる。いくつかの実施形態において、オプソニン化剤は、抗体依存性細胞食作用(ADCP)を誘導する抗体である。オプソニン化剤の例としては、これらに限定されないが、抗CD47抗体、抗CD20抗体、抗HER2抗体、抗EGFR抗体、抗CD52抗体および抗CD30抗体が挙げられる。いくつかの実施形態において、オプソニン化剤は、リツキシマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ハーセプチン、セツキシマブ、パニツムマブ、およびアービタックスから選択される。いくつかの実施形態において、オプソニン化剤は抗EGFR抗体である。いくつかの実施形態において、オプソニン化剤はアービタックスである。
【0095】
本明細書で使用される場合、「抗PD-1/PD-L1療法」および「PD-1/PD-L1療法」は同義であり、交換可能に使用され、PD-1およびPD-L1シグナル伝達軸の遮断を含む治療計画を指す。いくつかの実施形態において、がんは、PD-L1陽性がんである。いくつかの実施形態において、PD-1/PD-L1療法は、PD-1/PD-L1免疫療法である。いくつかの実施形態において、PD-1/PD-L1療法は、PD-1/PD-L1遮断である。いくつかの実施形態において、PD-1/PD-L1療法は、PD-1に基づく免疫阻害を遮断する薬剤である。いくつかの実施形態において、PD-1/PD-L1療法は、抗PD-1遮断抗体を含む。いくつかの実施形態において、PD-1/PD-L1療法は、抗PD-L1遮断抗体を含む。いくつかの実施形態において、PD-1/PD-L1療法は、免疫サーベイランスを増加させる。いくつかの実施形態において、PD-1/PD-L1療法は、抗がん療法である。いくつかの実施形態において、PD-1/PD-L1療法は、腫瘍免疫サーベイランスを増加させる。「抗体」(「免疫グロブリン」とも称される)という用語は、広い意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体および、所望の生物活性を呈する限りにおいて、抗体断片を包含する。ある特定の実施形態において、キメラ抗体またはヒト化抗体の使用も本発明によって包含される。
【0096】
天然に存在する抗体構造の基本単位は、非共有結合による会合およびジスルフィド結合の両方によって一緒に連結した、2つの同一な軽(L)鎖および2つの同一な重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質複合体である。それぞれの重および軽鎖は、一定間隔の鎖間ジスルフィド架橋も有する。5つのヒト抗体クラス(IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgE)が存在し、これらのクラスにおいて、さまざまなサブクラスが構造の相違、例えば単一の抗体分子における免疫グロブリン単位の数、個々の単位のジスルフィド架橋構造、ならびに鎖の長さおよび配列における相違に基づいて認識される。抗体のクラスおよびサブクラスは抗体のアイソタイプである。
【0097】
重および軽鎖のアミノ末端領域は、カルボキシ末端領域よりも配列が多様であり、そのため可変ドメインと称される。抗体構造のこの部分は、抗体の抗原結合特異性を付与する。重可変(VH)ドメインおよび軽可変(VL)ドメインは一緒に単一の抗原結合部位を形成し、したがって、基本的な免疫グロブリン単位は2つの抗原結合部位を有する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの間の境界を形成すると考えられている(Chothiaら、J.Mol.Biol.186、651~63頁(1985年);Novotny and Haber、(1985年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82 4592~4596頁)。
【0098】
重および軽鎖のカルボキシ末端部は、定常ドメイン、すなわちCH1、CH2、CH3、CLを形成する。これらのドメインの方が多様性ははるかに低いが、動物種ごとに相違が存在し、さらに、同じ個体内において、抗体のいくつかの異なるアイソタイプが存在し、それぞれは異なる機能を有する。
【0099】
「フレームワーク領域」または「FR」という用語は、本明細書で定義される超可変領域アミノ酸残基以外の、抗体の可変ドメインにおけるアミノ酸残基を指す。「超可変領域」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原結合を担う、抗体の可変ドメインにおけるアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基を含む。CDRは、抗原のエピトープとの結合を主に担う。FRおよびCDRの範囲は厳密に定義されている(Kabatらを参照されたい)。いくつかの実施形態において、CDRは、KABATシステムを使用して決定される。いくつかの実施形態において、CDRは、Clothiaシステムを使用して決定される。いくつかの実施形態において、Clothiaシステムは、増強Clothiaシステム(Martinシステム)である。
【0100】
本明細書におけるモノクローナル抗体としては、具体的には、重および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であるが、鎖の残りの部分は、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびに、所望の生物活性を呈する限りにおいて、そのような抗体の断片が挙げられる(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 57:6851~6855頁(1984年))。加えて、相補性決定領域(CDR)移植は、親和性または特異性を含む抗体分子のある特定の特性を変更するために実施してもよい。CDR移植の非限定的な例は、米国特許第5,225,539号に開示されている。
【0101】
キメラ抗体とは、異なる部分が異なる動物種に由来する分子、例えばマウスmAbに由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子である。実質的にヒト抗体(アクセプター抗体と称される)からの可変領域フレームワーク残基と、実質的にマウス抗体(ドナー抗体と称される)からの相補性決定領域とを有する抗体は、ヒト化抗体とも称される。キメラ抗体は、例えば、マウスmAbがハイブリドーマからのより高い収率を有するがヒトにおいてより高い免疫原性を有する場合にヒト/マウスキメラmAbが使用されるように、適用時の免疫原性を低減させ、産生時の収率を増加させるために主に使用される。キメラ抗体およびその生成のための方法は、当技術分野において公知である(例えばPCT特許出願第WO86/01533号、同第WO97/02671号、同第WO90/07861号、同第WO92/22653号ならびに米国特許第5,693,762号、同第5,693,761号、同第5,585,089号、同第5,530,101号および同第5,225,539号)。本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体からのフレームワーク領域と、非ヒト(通例マウスまたはラット)免疫グロブリンからの1つまたはそれ以上のCDRとを含む抗体を指す。ヒト化免疫グロブリンの部分は、場合によってはCDRを除いて、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分に対して実質的に同一である。しかしながら、いくつかの場合において、例えばフレームワーク領域における特異的アミノ酸残基は、ヒト化抗体の性能を最適化するように改変してもよい。重要なことに、ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合すると予期される。さらなる詳細に関しては、例えばMedical Research Council、UKに譲渡された米国特許第5,225,539号を参照されたい。「アクセプターヒト免疫グロブリンからのフレームワーク領域」および「アクセプターヒト免疫グロブリンに由来するフレームワーク領域」という用語、ならびに文法上の類似表現は、本明細書で交換可能に使用され、アクセプターヒト免疫グロブリンの同じアミノ酸配列を有するフレームワーク領域またはその一部を指す。
【0102】
「モノクローナル抗体」または「mAb」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の生成中に生じる場合がある存在し得るバリアントであって、一般に少量存在する、バリアントを除いて、同一である、および/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に向けられる異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に向けられる。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点で好都合である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体の特徴を示し、本明細書において提供される方法に従って使用される予定の抗体が、Kohlerら、Nature 256:495頁(1975年)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができると解釈されるべきでも、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)によって作ることができると解釈されるべきでもない。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClacksonら、Nature 352:624~628頁(1991年)およびMarksら、J.Mol.Biol.222:581~597頁(1991年)に記載されている技法を使用してファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0103】
本発明のmAbは、IgG、IgM、IgEまたはIgAを含むいずれの免疫グロブリンクラスのmAbであってもよい。mAbを産生するハイブリドーマは、インビトロで培養してもインビボで培養してもよい。高力価のmAbは、個々のハイブリドーマからの細胞がプリスチン予備刺激Balb/cマウスに腹腔内注射されて高濃度の所望のmAbを含有する腹水を産生するインビボ産生において得ることができる。IgMまたはIgGアイソタイプのmAbは、当業者に周知のカラムクロマトグラフィー法を使用して、そのような腹水または培養上清から精製することができる。
【0104】
「抗体断片」または「抗原結合性断片」とは、同義に使用され、完全抗体の一部、好ましくは完全抗体の抗原結合領域を含む一部を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ;タンデムダイアボディ(taDb)、直鎖状抗体(例えば、米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapataら、Protein Eng.8(10):1057~1062頁(1995年));一アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ、一本鎖抗体分子;抗体断片から形成される多重特異性抗体(例えば、これらに限定されないが、Db-Fc、taDb-Fc、taDb-CH3、(scFV)4-Fc、二価scFv、二重scFv、またはタンデム(二価、三価)scFvが挙げられる);ならびに二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)が挙げられる。
【0105】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる、それぞれが単一の抗原結合部位を有する2つの同一な抗原結合性断片と、名称が容易に結晶化する能力を表す残りの「Fc」断片とを生成する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原と架橋することができるF(ab’)2断片を生じる。
【0106】
「Fv」とは、完全な抗原認識および抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。この領域は、非共有結合による緊密な会合状態の1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。VH-VL二量体の3つの面がこの配置において存在する。全体として、6つの超可変領域は抗原結合特異性を抗体に付与する。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に関して特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体よりも低い親和性でではあるが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0107】
Fab断片は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1個またはそれ以上のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数個の残基の付加によってFab断片と異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも1個の遊離チオール基を有するFab’の本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体断片は本来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
【0108】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明確に別個の種類のうちの1つに割り当てることができる。
【0109】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体は異なるクラスに割り当てることができる。完全抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分割することができる。抗体の種々のクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、デルタ、ε、ガンマ、およびミューと呼ばれる。免疫グロブリンの種々のクラスのサブユニット構造および3次元配置は周知である。
【0110】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖に存在する。いくつかの実施形態において、Fvポリペプチドは、VHドメインおよびVLドメインの間に、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説に関しては、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、Rosenburg and Moore編、Springer-Verlag、New York、269~315頁(1994年)におけるPluckthunを参照されたい。
【0111】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する低分子抗体断片であって、同じポリペプチド鎖における軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む、断片を指す。同じ鎖の2つのドメインを対にすることができないほど短いリンカーを使用することによって、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対になり2つの抗原結合部位を作出することを強いられる。ダイアボディは、Natl.Acad.Sci.USA、90:6444~6448頁(1993年)である。
【0112】
「多重特異性抗体」という用語は、広い意味で使用され、具体的には、ポリエピトープ特異性を有する抗体を網羅する。そのような多重特異性抗体としては、これらに限定されないが、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHVL単位がポリエピトープ特異性を有する抗体、2つ以上のVLおよびVHドメインを有し、それぞれのVHVL単位が異なるエピトープに結合する抗体、2つ以上の単一可変ドメインを有し、それぞれの単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する抗体、全長抗体、抗体断片、例えばFab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三機能性抗体、共有結合または非共有結合的に連結した抗体断片が挙げられる。「ポリエピトープ特異性」とは、同じまたは異なる標的の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。
【0113】
本発明のモノクローナル抗体は、当技術分野において周知の方法を使用して調製することができる。例としては、Kohler、G. and Milstein、C、Nature 256:495~497頁(1975年);Kozborら、Immunology Today 4:72頁(1983年);MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、Alan R.Liss,Inc.(1985年)におけるColeら、77~96頁における技法等のさまざまな技法が挙げられる。
【0114】
抗体をインビボにおいて産生させる従来の方法に加えて、抗体は、ファージディスプレイ技術を使用してインビトロにおいて作製することができる。組換え抗体のそのような生成は、従来の抗体生成と比較してはるかに速く、組換え抗体は、非常に多くの数の抗原に対して作製することができる。さらに、従来の方法を使用する場合、多くの抗原は、非免疫原性であるかまたは極めて毒性であることが判明しており、したがって動物において抗体を作製するために使用することができない。さらに、組換え抗体の親和性成熟(すなわち、親和性および特異性を増加させること)は非常に単純であり、比較的速い。最後に、特異的抗原に対する多数の異なる抗体は、1回の選択手順において作製することができる。組換えモノクローナル抗体を作製するために、異なる抗原認識部位を有する抗体の大きなプールを作製するディスプレイライブラリーに基づくさまざまな方法をすべて使用することができる。そのようなライブラリーは、いくつかの手段において作ることができ:重鎖生殖細胞系列遺伝子のプールにおいて合成CDR3領域をクローニングし、したがって大きな抗体レパートリーを作製することによって合成レパートリーを作製することができ、そこからさまざまな特異性を有する組換え抗体断片が選択される。ヒトのリンパ球プールを抗体ライブラリーの構築のための出発物質として使用することができる。ヒトIgM抗体のナイーブレパートリーを構築し、したがって大きな多様性を有するヒトライブラリーを作出することが可能である。この方法は、異なる抗原に対する多数の抗体を成功裏に選択するために広く使用されている。組換え抗体のバクテリオファージライブラリー構築および選択のためのプロトコルは、周知の参照テキストであるCurrent Protocols in Immunology、Colliganら(編)、John Wiley&Sons,Inc.(1992~2000年)、第17章、第17.1節において提供されている。
【0115】
非ヒト抗体は、当技術分野において公知の任意の方法によってヒト化することができる。ある方法では、非ヒト相補性決定領域(CDR)は、ヒト抗体またはコンセンサス抗体フレームワーク配列に挿入される。次いで、さらなる変化が抗体フレームワークに導入されて、親和性または免疫原性をモジュレートすることができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される抗体は中和抗体である。「中和」とは、本明細書で議論される場合、本発明の抗体によるタンパク質機能の低下として定義される。一実施形態において、「中和」とは、本明細書で議論される場合、抗体と、免疫細胞の表面、好ましくは未熟および成熟骨髄系由来細胞、すなわちT細胞およびNK細胞との結合であり、それによりこれらの細胞の内部の阻害シグナルの伝播を遮断し、より抑制性の小さい表現型および機能を付与する。
【0117】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸配列を提供する。一実施形態において、本明細書において記載される抗体は、本明細書において記載されるDNA配列に対して少なくとも75%の同一性を有するDNA配列を含むDNA分子によってコードされる。一実施形態において、本明細書において記載される抗体は、本明細書において記載されるDNA配列に対して少なくとも80%の同一性を有するDNA配列を含むDNA分子によってコードされる。一実施形態において、本明細書において記載される抗体は、本明細書において記載されるDNA配列に対して少なくとも85%の同一性を有するDNA配列を含むDNA分子によってコードされる。一実施形態において、本明細書において記載される抗体は、本明細書において記載されるDNA配列に対して少なくとも90%の同一性を有するDNA配列を含むDNA分子によってコードされる。一実施形態において、本明細書において記載される抗体は、本明細書において記載されるDNA配列に対して少なくとも95%の同一性を有するDNA配列を含むDNA分子によってコードされる。
【0118】
別の態様によって、本発明の抗体または抗原結合性断片をコードする核酸配列が提供される。
【0119】
別の態様によって、本発明の抗体または抗原結合性断片をコードする核酸分子が提供される。
【0120】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片の重鎖をコードする核酸配列は、CAGGTTCAGCTGCAGCAGTCTGGAGCTGAGCTGGCGAGGCCTGGGGCTTCAGTGAAGCTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACCTTCACAAGCTATGGTATAAGCTGGGTGAAGCAGAGAACTGGACAGGGCCTTGAGTGGGTTGGAGAGATTTATCCTGGAAGTGGTAATTCTTACTACAATGAGAAGTTCAAGGGCAAGGCCACACTGACTGCAGACAAATCCTCCAGCACAGCGTACATGGAGCTCCGCAGCCTGACATCTGAGGACTCTGCGGTCTATTTCTGTGCAAGATCGAATGATGGTTACCCTGACTACTGGGGCCAAGGCACCACTCTCACAGTCTCCTCA(配列番号32)、GATGTACAGCTTCAGGGGTCAGGACCTGGCCTCGTGAAACCTTCTCAGTCTCTGTCTCTCACCTGCTCTGTCACTGGCTACTCCATCACCAGTGGTTATTACTGGAACTGGATCCGGCAGTTTCCAGGAAACAAACTGGAATGGATGGGCTACATAAGCTACGATGGTAGCAATAACTACAACCCATCTCTCAAAAATCGAATCTCCATCACTCGTGACACATCTAAGAACCAGTTTTTCCTGAAGTTGAATTCTGTGACTTCTGAGGACACAGCCACATATTACTGTGCCCATGGTTACTCATATTACTATGCTATGGACTGCTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCA(配列番号33)、GATGTCCAGCTGCAAGGCTCTGGCCCTGGACTGGTTAAGCCTTCCGAGACACTGTCCCTGACCTGCTCTGTGACCGGCTACTCTATCACCTCCGGCTACTACTGGAACTGGATCAGACAGTTCCCCGGCAAGAAACTGGAATGGATGGGCTACATCTCCTACGACGGCTCCAACAACTACAACCCCAGCCTGAAGAACCGGATCACCATCTCTCGGGACACCTCCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAACTCCGTGACCGCTGCCGATACCGCTACCTACTACTGTGCTCACGGCTACTCCTACTACTACGCCATGGATGCTTGGGGCCAGGGCACATCTGTGACAGTGTCCTCT(配列番号34)およびCAGGTTCAGCTGCAACAGTCTGACGCTGAGTTGGTGAAACCTGGAGCTTCAGTGAAGATATCCTGCAAGGTTTCTGGCTACACCTTCACTGACCATACTATTCACTGGATGAAGCAGAGGCCTGAACAGGGCCTGGAATGGATTGGATATATTTATCCTAGAGATGGTAGTACTAAGTACAATGAGAAGTTCAAGGGCAAGGCCACATTGACTGCAGACAAATCCTCCAGCACAGCCTACATGCAGCTCAACAGCCTGACATCTGAGGACTCTGCAGTCTATTTCTGTGCAAGAACCTGGGACTACTTTGACTACTGGGGCCAAGGCACCACTCTCACAGTCTCCTCA(配列番号35)から選択される。
【0121】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片の軽鎖をコードする核酸配列は、GACATTGTGCTGACCCAATCTCCAGCTTCTTTGGCTGTGTCTCTAGGGCAGAGGGCCACCATATCCTGCAGAGCCAGTGAAAGTGTTGATAGTTATGGCAATAGTTTTATGCACTGGTACCAGCAGAAACCAGGACAGCCACCCAAACTCCTCATCTATCGTGCATCCAACCTAGAATCTGGGATCCCTGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTAGGACAGACTTCACCCTCACCATTAATCCTGTGGAGGCTGATGATGTTGCAACCTATTACTGTCAGCAAAGTAATGAGGATCCGTACACGTTCGGAGGGGGGACCAAGCTGGAAATAAAA(配列番号36)、GATATCCAGATGACACAGACTACATCCTCCCTGTCTGCCTCTCTGGGAGACAGAGTCACCATCAGTTGCAGGACAAGTCAGGACATTAGCAATTATTTAAACTGGTATCAGCAGAAACCAGATGGAACTGTTAAACTCCTGATCTCCTACACATCAAGATTGCACTCAGGAGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGAACAGATTATTCTCTCACCATTAGCAACCTGGAGCAAGAAGATATTGCCACTTACTTTTGCCAACAGGGTAATACGCTTCCCACGTTCGGCTCGGGGACAAAGTTGGAAATAAAA(配列番号37)、GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCTCTGTCTGCCTCTGTGGGCGACAGAGTGACCATCACCTGTCGGACCTCTCAGGACATCTCCAACTACCTGAACTGGTATCAGCAGAAACCCGGCAAGGCCGTGAAGCTGCTGATCTCCTACACCTCCAGACTGCACTCTGGCGTGCCCTCCAGATTTTCTGGCTCTGGATCTGGCACCGACTACACCCTGACCATCAGTTCTCTGCAGCCTGAGGACTTCGCCACCTACTACTGTCAGCAGGGCAACACCCTGCCTACCTTTGGCCAGGGCACCAAGCTGGAAATCAAG(配列番号38)およびGACATCCAGATGACACAATCTTCATCCTACTTGTCTGTATCTCTAGGAGGCAGAGTCACCATTACTTGCAAGGCAAGTGACCACATTAATAATTGGTTAGCCTGGTATCAGCAGAAACCAGGAAATGCTCCTAGGCTCTTAATATCTGGTGCAACCAGTTTGGAAACTGGGGTTCCTTCAAGATTCAGTGGCAGTGGATCTGGAAAGGATTACACTCTCAGCATTACCAGTCTTCAGACTGAAGATGTTGCTACTTATTACTGTCAACAGTATTGGAGTACTCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTGGAAATCAAA(配列番号39)から選択される。
【0122】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片はマウス由来であり、重鎖をコードする配列は配列番号32、33、および35から選択される。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片はマウス由来であり、軽鎖をコードする配列は配列番号36、37、および39から選択される。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片はヒト化されており、重鎖をコードする配列は配列番号34である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片はヒト化されており、軽鎖をコードする配列は配列番号38である。
【0123】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書で交換可能に使用される場合、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。
【0124】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、これに限定されないが、ポリペプチドmRNAを有し、それを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されるcDNAライブラリーを含むいかなる供給源から得てもよい。したがって、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ヒト組織から調製されるcDNAライブラリーから簡便に得ることができる。ポリペプチドをコードする遺伝子はまた、ゲノムライブラリーから得ても、公知の合成手順(例えば、自動核酸合成)によって得てもよい。
【0125】
例えば、ポリヌクレオチドは、軽鎖または重鎖等の免疫グロブリン分子鎖全体をコードしてもよい。完全な重鎖には、重鎖可変領域(VH)だけでなく、典型的には3つの定常ドメイン:CH1、CH2およびCH3を含む重鎖定常領域(CH);ならびに「ヒンジ」領域も含まれる。いくつかの状況では、定常領域の存在は望ましい。
【0126】
ポリヌクレオチドによってコードされる他のポリペプチドとしては、単一ドメイン抗体(「dAb」)、Fv、scFv、Fab’等の抗原結合抗体断片が挙げられ、CH1およびCKまたはCLドメインは切除されている。ミニボディは、従来の抗体よりも小さいため、臨床/診断的使用においてより良好な組織浸透を達成するはずであるが、二価の場合は、dAb等の一価抗体断片よりも高い結合親和性を保持するはずである。したがって、文脈上別段の指示がない限り、「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、全抗体分子だけでなく、上で議論された種類の抗原結合抗体断片も包含する。コードされたポリペプチドに存在するそれぞれのフレームワーク領域は、対応するヒトアクセプターフレームワークと比べて少なくとも1つのアミノ酸置換を含んでもよい。したがって、例えば、フレームワーク領域は、アクセプターフレームワーク領域と比べて、合計で3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15のアミノ酸置換を含んでもよい。開示されるタンパク質産物を構成する個々のアミノ酸の特性を考慮すると、いくつかの合理的な置換が当業者によって認識されるだろう。アミノ酸置換、すなわち「保存的置換」は、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性性質における類似性に基づいて行うことができる。
【0127】
好適には、本明細書において記載されるポリヌクレオチドは単離および/または精製してもよい。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは単離ポリヌクレオチドである。
【0128】
本明細書で使用される場合、「天然に存在しない」物質、組成物、実体、および/もしくは物質、組成物、もしくは実体の任意の組合せという用語、またはそれらの任意の文法上の変化形は、当業者によって「天然に存在する」と良好に理解されているか、または裁判官もしくは行政もしくは司法機関によって「天然に存在する」といかなる時でも判定もしくは解釈されるかもしくはされ得る、物質、組成物、実体、および/または物質、組成物、もしくは実体の任意の組合せの形態を明示的に除外するが、単に除外するに過ぎない、条件付き用語である。
【0129】
処置および診断のための方法
別の態様によって、それを必要とする対象におけるHLA、MHC-Iまたはその両方を発現するがんを処置する方法であって、対象に本発明の抗体または抗原結合性断片を投与することを含む、方法が提供される。
【0130】
別の態様によって、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、対象におけるILT2の発現が所定の閾値を上回ることを確認すること、および対象にILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤を投与することを含み、それにより対象におけるがんを処置する、方法が提供される。
【0131】
別の態様によって、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、対象にILT2媒介免疫抑制を阻害する薬剤を投与すること;および対象にPD-1/PD-L1に基づく療法を投与することを含み、それにより対象におけるがんを処置する、方法が提供される。
【0132】
別の態様によって、がん細胞に対するPD-1/PD-L1に基づく療法の効能を増加させる方法であって、がん細胞をILT2媒介免疫抑制を阻害する薬剤と接触させることを含む、方法が提供される。
【0133】
別の態様によって、がんを患う対象を処置する抗PD-L1/PD-1に基づく療法と組み合わせた使用のための、結合し、ILT2媒介免疫細胞抑制を阻害する薬剤が提供される。
【0134】
本明細書で使用される場合、疾患、障害もしくは状態の「処置」または「処置すること」という用語は、その少なくとも1つの症状の軽減、その重症度の低減、またはその進行の阻害を包含する。処置は、疾患、障害または状態が、完全に治癒することを意味する必要はない。効果的な処置であるために、本明細書における有用な組成物は、疾患、障害または状態の重症度を軽減すること、それらに関連する症状の重症度を低減すること、または患者もしくは対象のクオリティオブライフの改善を提供することのみを必要とする。
【0135】
本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、処置される個体における疾患の過程を変更しようとする試みにおける臨床的介入を指し、予防のため、または臨床病理の過程の間のいずれかで行うことができる。処置の望ましい効果としては、疾患の出現もしくは再発を予防すること、症状の緩和、疾患の病理学的帰結を低減すること、疾患の進行の速度を低減すること、疾患状態の改善、寛解、または予後の改善が挙げられる。「処置」という用語は、培養中の細胞または組織に影響を与えるエクスビボ手順も含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、単剤療法として投与される。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、PD-1/PD-L1療法とともに投与される。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、オプソニン化剤とともに投与される。いくつかの実施形態において、オプソニン化剤は、抗CD47剤ではない。いくつかの実施形態において、抗CD47剤は、抗CD47抗体である。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、抗CD47剤または療法とともに投与されない。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、抗CD47剤または療法と組み合わされない。
【0137】
いくつかの実施形態において、処置することには、免疫サーベイランスを増加させることを含む。いくつかの実施形態において、処置することには、免疫応答を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、処置することには、腫瘍量を減少させることを含む。いくつかの実施形態において、処置することには、がん転移を低減することを含む。いくつかの実施形態において、処置することには、がんに対する細胞傷害性を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、処置することには、がんに対する炎症反応を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、処置することには、がんの食作用の増加を含む。
【0138】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、脊椎動物、例えば、哺乳動物、特にヒトを含む、個体または患者を指す。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象はがんを患っている。
【0139】
いくつかの実施形態において、がんは、HLAを発現するがんである。いくつかの実施形態において、HLAはHLA-Gである。いくつかの実施形態において、がんは、MHC-Iを発現するがんである。いくつかの実施形態において、がんは、PD-1を発現するがんである。いくつかの実施形態において、がんは固形がんである。いくつかの実施形態において、がんは血液がんである。いくつかの実施形態において、がんは、PD-1および/またはPD-L1に基づく療法に対して不応性である。いくつかの実施形態において、がんは、PD-1および/またはPD-L1に基づく療法に以前に応答しなかった。いくつかの実施形態において、がんは、PD-1および/またはPD-L1に基づく療法に対して応答性であったが、不応性になった。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、不応性がんを応答性がんに転換する。
【0140】
いくつかの実施形態において、本方法は、HLA、MHC-Iまたはその両方を発現するがんを確認することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、HLAを発現するがんを確認することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、MHC-Iを発現するがんを確認することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、HLAおよびMHC-Iを発現するがんを確認することを含む。いくつかの実施形態において、確認することには、がんにおける発現を測定することを含む。いくつかの実施形態において、確認することには、がんの表面における発現を測定することを含む。いくつかの実施形態において、がんの中および/または上は、がん細胞の中および/または上である。いくつかの実施形態において、確認することには、がんによって分泌されるHLA-Gを測定することを含む。いくつかの実施形態において、確認することには、可溶性HLA-Gを測定することを含む。いくつかの実施形態において、可溶性HLA-Gは、体液中にある。いくつかの実施形態において、体液は血液である。
【0141】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象におけるILT2の発現を確認することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、対象におけるILT2の発現が所定の閾値を上回ることを確認することを含む。いくつかの実施形態において、確認することには、対象におけるILT2の発現を測定することを含む。いくつかの実施形態において、確認することは、投与する前である。いくつかの実施形態において、測定することは、投与する前である。いくつかの実施形態において、ILT2の発現は、免疫細胞における発現である。いくつかの実施形態において、ILT2の発現は、対象の免疫細胞における発現である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は末梢血免疫細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は末梢血単核細胞(PBMC)である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は腫瘍内免疫細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、腫瘍微小環境(TME)における免疫細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、CD8陽性T細胞、マクロファージ、NK細胞およびTEMRA細胞から選択される。いくつかの実施形態において、免疫細胞はCD8陽性T細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は末梢血CD8陽性T細胞である。
【0142】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性断片を投与することには、本発明の抗体または抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、治療有効量の抗体または抗原結合性断片が投与される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、担体、賦形剤またはアジュバントをさらに含む。いくつかの実施形態において、担体は薬学的に許容される担体である。
【0143】
本明細書で使用される場合、「担体」、「賦形剤」または「アジュバント」という用語は、活性薬剤ではない医薬組成物の任意の構成成分を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、非毒性の、不活性な固体、半固体、液体の増量剤、希釈剤、カプセル化材料、任意の種類の製剤補助剤、または生理食塩水等の単なる無菌水性媒体を指す。薬学的に許容される担体としての機能を果たすことができる材料のいくつかの例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;トラガント粉末;麦芽、ゼラチン、タルク;カカオバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル、寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリーの水;等張生理食塩水、リンゲル液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに医薬製剤において使用される他の非毒性の適合物質である。本明細書において担体としての機能を果たすことができる物質のいくつかの非限定的な例としては、糖、デンプン、セルロースおよびその誘導体、トラガント粉末、麦芽、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、ポリオール、アルギン酸、パイロジェンフリーの水、等張生理食塩水、リン酸緩衝液、カカオバター(坐剤基剤)、乳化剤、ならびに他の医薬製剤において使用される他の非毒性の薬学的な適合物質が挙げられる。湿潤剤、およびラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤、ならびに着色剤、香味剤、賦形剤、安定剤、抗酸化剤および保存剤が存在していてもよい。任意の非毒性の不活性で有効な担体は、本明細書において企図される組成物を製剤化するために使用される。これに関する適切な薬学的に許容される担体、賦形剤および希釈剤は、当業者に周知であり、The Merck Index、第13版、Budavariら編、Merck & Co.,Inc.、Rahway,N.J.(2001年);the CTFA(Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association) International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook、第10版(2004年);および「Inactive Ingredient Guide」、U.S.Food and Drug Administration(FDA) Center for Drug Evaluation and Research(CDER) Office of Managementに記載されるものなどであり、これらのすべての内容は、それらの全体が参照によって本明細書に組み入れられる。本組成物において有用な薬学的に許容される賦形剤、担体および希釈剤の例としては、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液、デキストロース液、ハンクス液およびDMSOが挙げられる。これらの追加の不活性構成成分、ならびに効果的な製剤および投与手順は、当技術分野において周知であり、Goodman and Gillman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics、第8版、Gilmanら編、Pergamon Press(1990年);Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.(1990年);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、Pa.(2005年)などの標準的なテキストに記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。現在記載の組成物はまた、リポソーム、ISCOMS、徐放性粒子、および血清中のペプチドまたはポリペプチドの半減期を増加させる他のビヒクルなどの人工的に作出された構造に含有される。リポソームは、エマルジョン、フォーム、ミセル、不溶性単分子層、液晶、リン脂質分散系、ラメラ層などを含む。現在記載のペプチドとの使用のためのリポソームは、中性および負に荷電したリン脂質、ならびにコレステロールなどのステロールを一般に含む、標準的なビヒクル形成脂質から形成される。脂質の選択は、一般に、リポソームのサイズおよび血中の安定性などの特徴によって決定される。さまざまな方法が、例えば、Coligan、J. E.ら、Current Protocols in Protein Science、1999年、John Wiley & Sons,Inc.、New York、によって概説されるように、リポソームを調製するために利用可能であり、米国特許第4,235,871号、米国特許第4,501,728号、米国特許第4,837,028号および米国特許第5,019,369号も参照されたい。
【0144】
担体は、合計で、本明細書に提示される医薬組成物の約0.1重量%~約99.99999重量%を構成する。
【0145】
「治療有効量」という用語は、哺乳動物における疾患または障害を処置するために有効な薬物の量を指す。「治療有効量」という用語は、所望の治療的または予防的結果を達成するために、必要な投薬量および期間で有効な量を指す。正確な剤形およびレジメンは、患者の状態に従って、医師によって決定されるだろう。
【0146】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象にオプソニン化剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、細胞をオプソニン化剤と接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態において、オプソニン化剤は上皮性増殖因子受容体(EGFR)阻害剤である。いくつかの実施形態において、EGFR阻害剤はセツキシマブである。いくつかの実施形態において、オプソニン化剤は、抗CD47剤ではない。いくつかの実施形態において、本方法は、対象にPD-1/PD-L1に基づく療法を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、細胞をPD-1/PD-L1に基づく療法と接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、PD-1/PD-L1に基づく療法の存在下で細胞を成長させることをさらに含む。いくつかの実施形態において、PD-1/PD-L1に基づく療法は、PD-1またはPD-L1の遮断抗体である。いくつかの実施形態において、本方法は、抗CD47剤または療法を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、本方法は、抗CD47剤または療法の投与を欠く。いくつかの実施形態において、本方法は、抗CD47剤または療法を投与することをさらに含む。
【0147】
いくつかの実施形態において、ILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤は、ILT2に結合する。いくつかの実施形態において、薬剤は、ILT2細胞外ドメインに結合する。いくつかの実施形態において、薬剤はILT2アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、薬剤はILT2遮断抗体である。いくつかの実施形態において、薬剤は、B2MとのILT2相互作用を阻害する。いくつかの実施形態において、薬剤は本発明の抗体である。
【0148】
いくつかの実施形態において、ILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤は、オプソニン化剤の前、その後またはそれと同時に投与される。いくつかの実施形態において、ILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤およびオプソニン化剤は、単一の組成物で投与される。いくつかの実施形態において、ILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤およびオプソニン化剤は、別々の組成物で投与される。
【0149】
いくつかの実施形態において、ILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤は、PD-1/PD-L1療法の前、その後またはそれと同時に投与される。いくつかの実施形態において、ILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤およびPD-1/PD-L1療法は、単一の組成物で投与される。いくつかの実施形態において、ILT2に基づく免疫抑制を阻害する薬剤およびPD-1/PD-L1療法は、別々の組成物で投与される。いくつかの実施形態において、薬剤または療法の少なくとも1つは、共投与に適合する。
【0150】
本明細書で使用される場合、「共投与に適合する」という用語は、それらを対象に安全かつ容易に投与することができるような形態で存在する抗体を指す。共投与は、いくつかの非限定的な実施形態において、経口で、注射によって、または吸入によって行うことができる。いくつかの実施形態において、抗体は、対象に安全かつ容易に投与することができるように、医薬組成物内に含まれる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、抗体、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。
【0151】
いくつかの実施形態において、HLAはHLA-Gである。いくつかの実施形態において、HLAは、非標準的なHLAである。いくつかの実施形態において、HLAは、標準的なHLAである。いくつかの実施形態において、mRNA発現が確認される。いくつかの実施形態において、タンパク質発現が確認される。いくつかの実施形態において、タンパク質の表面発現が確認される。発現を測定する方法は、当技術分野において周知であり、PCR、Q-PCR、ノーザンブロット、イムノブロット、インサイチュハイブリダイゼーション、免疫染色およびFACSを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、表面発現を確認するためのがんのFACS分析を含む。
【0152】
製剤
本発明は、ヒトの医学的使用のための医薬組成物も企図し、これは、本明細書においてさまざまに記載される状態の処置、診断または予防のための治療用組成物の製造のための、ILT2を認識する少なくとも1つの抗体を活性薬剤として含む。
【0153】
このような医薬製剤および医学製剤において、活性薬剤は、好ましくは、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体、および場合により任意の他の治療用成分と一緒に利用される。担体は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに過度に有害ではないという意味で、薬学的に許容可能でなければならない。活性薬剤は、上記に記載の所望の薬理学的効果を達成する有効量で、所望の一日用量を達成するのに適切な量で提供される。
【0154】
典型的には、抗体の抗原結合性部分を含む本発明の分子は、治療的使用のために、無菌生理食塩水に懸濁される。あるいは、医薬組成物は、有効成分(抗体の抗原結合性部分を含む分子)の放出を制御するため、または患者の系におけるその存在を延長するために、製剤化される。多数の適切な薬物送達システムが公知であり、例えば、埋め込み可能な薬物放出システム、ヒドロゲル、ヒドロキシメチルセルロース、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロエマルジョン、ミクロスフェアなどが挙げられる。放出制御調製物は、本発明による分子を複合化または吸着するポリマーの使用により調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)のマトリックス、ならびにステアリン酸二量体およびセバシン酸のポリ酸無水物コポリマーのマトリックスが挙げられる。そのようなマトリックスからの本発明による分子、すなわち抗体または抗体断片の放出の速度は、分子の分子量、マトリックス内の分子の量、および分散された粒子のサイズに依存する。
【0155】
本発明の医薬組成物は、経口、局所、鼻腔内、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、関節内、病巣内または非経口などの任意の適切な手段によって投与される。通常、静脈内(i.v.)、関節内、局所または非経口投与が好ましい。
【0156】
当業者には、本発明による分子の治療有効量が、とりわけ、投与スケジュール、投与される分子の単位用量、分子が他の治療薬剤と組み合わせて投与されるか否か、患者の免疫状態および健康、投与される分子の治療活性、ならびに処置する医師の判断に依存することが明らかであろう。
【0157】
本発明の分子(抗体またはその断片)の適切な投薬量は、投与経路、分子の種類(ポリペプチド、ポリヌクレオチド、有機分子など)、患者の年齢、体重、性別または状態に応じて変わり、最終的には医師が決定されなければならないが、経口投与の場合において、一日投薬量は、一般に、体重1kgあたり、約0.01mg~約500mg、好ましくは約0.01mg~約50mg、より好ましくは約0.1mg~約10mgの間である。非経口投与の場合において、一日投薬量は、一般に、体重1kgあたり、約0.001mg~約100mg、好ましくは約0.001mg~約10mg、より好ましくは約0.01mg~約1mgの間である。一日投薬量は、例えば、毎日1~4回の個々の投与の典型的なレジメンで投与することができる。投与の他の好ましい方法は、体重1kgあたり約0.01mg~約100mgの関節内投与を含む。有効量に達するさまざまな考慮事項は、例えば、Goodman and Gilman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics、第8版、Pergamon Press、1990年;およびRemington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1990年に記載されている。
【0158】
組合せ化学療法の適切な投薬レジメンは、当技術分野において公知であり、例えば、Saltzら、Proc ASCO 1999年、18巻、233a頁およびDouillardら、Lancet 2000年、355巻、1041~7頁に記載されている。
【0159】
活性成分としての本発明の分子は、周知であるように薬学的に許容され、活性成分と適合性である賦形剤に、溶解され、分散され、または混合される。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、デキストロース、グリセリン、エタノールなど、およびそれらの組合せである。他の適切な担体は、当業者に周知である。加えて、所望により、組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などの少量の補助物質を含有することができる。
【0160】
生成の方法
別の態様によって、薬剤を生成する方法であって、ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること、マクロファージの炎症活性、がん細胞に対するT細胞の活性、樹状細胞の活性、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性のうちの少なくとも1つを増加させる薬剤の能力を試験すること、ならびにマクロファージの活性、T細胞の活性、樹状細胞の活性および細胞傷害性のうちの少なくとも1つを増加させる少なくとも1つの薬剤を選択することを含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0161】
別の態様によって、薬剤を生成する方法であって、薬剤をコードする核酸配列を含む1つまたはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、核酸配列が、
i.ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること;
ii.マクロファージの炎症活性、がん細胞に対するT細胞の活性、樹状細胞の活性、およびNK細胞のがん細胞に対する細胞傷害性のうちの少なくとも1つを増加させる前記薬剤の能力を試験すること;ならびに
iii.食作用、活性および細胞傷害性のうちの少なくとも1つを増加させる少なくとも1つの薬剤を選択すること
によって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0162】
別の態様によって、薬剤を生成する方法であって、ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること、がん細胞に対する抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる薬剤の能力を試験すること、および抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる少なくとも1つの薬剤を選択することを含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0163】
別の態様によって、薬剤を生成する方法であって、薬剤をコードする核酸配列を含む1つまたはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、核酸配列が、
i.ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること;
ii.がん細胞に対する抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる薬剤の能力を試験すること;ならびに
iii.がん細胞に対する抗PD-L1/PD-1に基づく療法の効能を増加させる少なくとも1つの薬剤を選択すること
によって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0164】
別の態様によって、薬剤を生成するための方法であって、
ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること、マクロファージによるがん細胞の食作用の増加、がん細胞に対するT細胞の活性の増加、M1マクロファージの発生の増加、M2マクロファージの発生の低減、樹状細胞の腫瘍微小環境への動員の増加、樹状細胞の活性化の増加、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを誘導する前記薬剤の能力を試験すること、ならびに前記食作用の増加、前記活性の増加、前記発生の増加、前記発生の低減、前記動員、前記活性化の増加、前記活性の減少、および前記細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを誘導する少なくとも1つの薬剤を選択すること
を含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0165】
別の態様によって、薬剤を生成するための方法であって、
薬剤をコードする核酸配列を含む1つまたはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、核酸配列が、
i.ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること;
ii.マクロファージによるがん細胞の食作用の増加、がん細胞に対するT細胞の活性の増加、M1マクロファージの発生の増加、M2マクロファージの発生の低減、樹状細胞の腫瘍微小環境への動員の増加、樹状細胞の活性化の増加、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを誘導する前記薬剤の能力を試験すること;ならびに
iii.前記食作用の増加、前記活性の増加、前記発生の増加、前記発生の低減、前記動員、前記活性化の増加、前記活性の減少、および前記細胞傷害性の増加のうちの少なくとも2つを増加させる少なくとも1つの薬剤を選択すること
によって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0166】
別の態様によって、薬剤を生成するための方法であって、
ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること、ILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する前記薬剤の能力を試験すること、ならびにILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する少なくとも1つの薬剤を選択することを含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0167】
別の態様によって、薬剤を生成するための方法であって、薬剤をコードする核酸配列を含む1つまたはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、核酸配列が、
i.ILT2細胞外ドメインまたはその断片に結合する薬剤を得ること;
ii.ILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する前記薬剤の能力を試験すること;ならびに
iii.ILT2およびB2Mの間の相互作用を阻害する少なくとも1つの薬剤を選択すること
によって選択された薬剤の核酸配列であること
を含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0168】
別の態様によって、薬剤を生成するための方法であって、配列番号41、42、43および44から選択されるヒトILT2の配列内のILT2エピトープに結合する薬剤を得ることを含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0169】
別の態様によって、薬剤を生成するための方法であって、薬剤をコードする核酸配列を含む1つまたはそれ以上のベクターを含む宿主細胞を培養することであって、核酸配列が、配列番号41、42、43および44から選択されるヒトILT2の配列内のILT2エピトープに結合する薬剤を得ることによって選択された薬剤の核酸配列であることを含み、それにより薬剤を生成する、方法が提供される。
【0170】
いくつかの実施形態において、本方法は、ILT2媒介免疫抑制を阻害する薬剤の能力を試験すること、およびILT2媒介免疫抑制を阻害する少なくとも1つの薬剤を選択することをさらに含む。いくつかの実施形態において、核酸配列は、ILT2媒介免疫抑制を阻害する薬剤の能力を試験すること、およびILT2媒介免疫抑制を阻害する薬剤を選択することによって選択される薬剤の核酸配列である。いくつかの実施形態において、本方法は、マクロファージによるがん細胞の食作用の増加、がん細胞に対するT細胞の活性の増加、M1マクロファージの発生の増加、M2マクロファージの発生の低減、樹状細胞の腫瘍微小環境への動員の増加、樹状細胞の活性化の増加、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性の増加のうちの少なくとも3つを誘導する前記薬剤の能力を試験すること、ならびに少なくとも3つを誘導する少なくとも1つの薬剤を選択することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、T細胞、NK細胞、樹状細胞およびマクロファージのうちの少なくとも3つにおける効果を誘導する薬剤の能力を試験することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、T細胞、NK細胞、樹状細胞およびマクロファージにおける効果を誘導する薬剤の能力を試験することを含む。
【0171】
いくつかの実施形態において、効能を増加させることには、抗がん効果における相乗的な増加を含む。いくつかの実施形態において、抗がん効果は、炎症誘発性サイトカイン分泌である。いくつかの実施形態において、炎症誘発性サイトカインは、GM-CSF、IL-6およびIFNγから選択される。いくつかの実施形態において、炎症誘発性サイトカインは、GM-CSF、IL-6またはIFNγである。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、炎症誘発性サイトカインは、GM-CSFである。いくつかの実施形態において、増加した効能は、T細胞の活性化における相乗的な増加を含む。いくつかの実施形態において、増加した効能は、T細胞の細胞傷害性における相乗的な増加を含む。いくつかの実施形態において、増加した効能は、T細胞の活性化および細胞傷害性の両方の相乗的な増加を含む。いくつかの実施形態において、増加は、膜のCD107a発現の増加を含む。いくつかの実施形態において、増加は、膜のCD107a発現の増加によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、増加は、薬剤が投与または接触されない場合の効能と比較される。いくつかの実施形態において、効能を増加させることは、PD-1/PD-L1に基づく療法に対して不応性のがんを療法に対して応答するがんに転換することを含む。いくつかの実施形態において、がんは、HLAを発現する。いくつかの実施形態において、がんは、MHC-Iを発現する。
【0172】
いくつかの実施形態においてマクロファージの炎症活性の増加は、マクロファージによるがん細胞の食作用の増加を含む。いくつかの実施形態において、マクロファージの炎症活性の増加は、M1マクロファージの発生を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、マクロファージの炎症活性の増加は、M2マクロファージの発生を減少させること含む。いくつかの実施形態において、マクロファージの炎症活性の増加は、マクロファージにおけるM1表現型を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、マクロファージの炎症活性の増加は、マクロファージにおけるM2表現型を減少させることを含む。
【0173】
いくつかの実施形態において、樹状細胞の活性は、樹状細胞の活性化を含む。いくつかの実施形態において、樹状細胞の活性は、樹状細胞の腫瘍への動員を含む。いくつかの実施形態において、樹状細胞の活性は、がん細胞に対する活性である。いくつかの実施形態において、がん細胞に対する活性は、TMEにおける活性である。いくつかの実施形態において、腫瘍はTMEである。いくつかの実施形態において、樹状細胞の活性は、抗原提示を含む。
【0174】
いくつかの実施形態において、薬剤の能力を試験することには、がん細胞に対するT細胞の活性、マクロファージの炎症活性、樹状細胞の活性、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはすべてを増加させる薬剤の能力を含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの薬剤を選択することには、がん細胞に対するT細胞の活性、マクロファージの炎症活性、樹状細胞の活性、およびナチュラルキラー(NK)細胞のがん細胞に対する細胞傷害性のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはすべてを増加させる薬剤を選択することを含む。いくつかの実施形態において、マクロファージの炎症活性を増加させることは、M1マクロファージの発生を増加させること、および/またはマクロファージによるがん細胞の食作用を増加させることである。いくつかの実施形態において、マクロファージの炎症活性を増加させることは、M2マクロファージの発生を減少させることである。いくつかの実施形態において、薬剤の能力を試験することには、マクロファージの炎症活性を増加させる薬剤の能力を含む。いくつかの実施形態において、薬剤の能力を試験することには、樹状細胞の活性を増加させる薬剤の能力を含む。いくつかの実施形態において、腫瘍に対するとは、TMEに対することである。いくつかの実施形態において、薬剤の能力を試験することには、NK細胞のがん細胞に対する細胞傷害性を増加させる薬剤の能力を含む。
【0175】
いくつかの実施形態において、本方法は、ILT2およびB2Mの相互作用を阻害する薬剤の能力を試験することをさらに含む。いくつかの実施形態において、相互作用は直接相互作用である。いくつかの実施形態において、本方法は、ILT2およびB2Mの接触を阻害する薬剤の能力を試験することをさらに含む。いくつかの実施形態において、相互作用は結合である。いくつかの実施形態において、接触は結合である。いくつかの実施形態において、本方法は、エピトープに結合する薬剤の能力を試験することをさらに含む。
【0176】
以下の実施例は、本発明の化合物および方法を作成および使用する方法を説明することを意図し、決して限定として解釈されるべきではない。本発明は、ここにその特定の実施形態と併せて記載するが、多くの改変および変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲内のそのような改変および変形のすべてを包含することを意図する。
【実施例0177】
一般に、本明細書で使用される命名法および本発明で利用される検査手順は、分子、生化学、細菌学および組換えDNA技法を含む。そのような技法は文献で徹底的に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」 第I~III巻 Ausubel、R.M.,ら(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland(1989);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、New York(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、New York;Birrenら、(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1~4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York(1998);米国特許第4,666,828号;米国特許第4,683,202号;米国特許第4,801,531号;米国特許第5,192,659号および米国特許第5,272,057号に記載の技法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I~III巻 Cellis、J.E.編(1994);「Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique」by Freshney、Wiley-Liss、N.Y.(1994)、第3版;「Current Protocols in Immunology」I~III巻 Coligan J.E.、編(1994);Stitesら、(編)、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、Norwalk、CT(1994);Mishell and Shiigi(編)、「Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);「Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols」.Vincent Ossipow、Nicolas Fischer.Humana Press(2014);「Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols」.Maher Albitar.Springer Science & Business Media(2007)を参照されたい。前記文献はすべて参照によって組み入れる。他の一般的な参考文献は本文書全体で提供される。
【0178】
材料および方法
抗体-市販の抗ILT2mAbは、クローン#1-GHI/75(BioLegend社、カタログ番号333704)、クローン#2-HP-F1(eBioscience社、カタログ番号16-5129)である。追加のmAbは、HLA-G(MEM-G/9;Abcam社、カタログ番号ab7758;G-0031)、ILT4(42D1、Biolegend社、カタログ番号338704)、ILT6(Sino Biological社、カタログ番号13549-MM06)、LILRA1(R&D systems社、カタログ番号MAB30851)、汎HLA(W6/22;eBioscience社、カタログ番号16-9983-85)およびHis(Proteintech社、カタログ番号10001-0-AP)を使用した。
【0179】
フローサイトメトリー-一般には、細胞はすべての工程の間氷上または4℃に保った。染色に先立って、5×105細胞は、FACSバッファー(0.1%BSA含有PBS)中50μg/mLヒトIgG(Sigma社、カタログ番号I4506)で15分間遮断した。抗体は製造業者が推奨する濃度で使用し、30分間、暗所でインキュベートした。インキュベーションは96ウェルU字ボトムプレートにおいて100μLで行い、細胞は200μLのFACSバッファーで2度洗浄し、分析のためにFACSチューブの150μLのFACSバッファーに移した。細胞は、Galliosフローサイトメーター(Beckman coulter社)上で、Galliosフローサイトメトリー取得ソフトウェア用のKaluzaを使用して分析した。
【0180】
骨髄細胞分化-単球は、EasySep(商標)ヒト単球濃縮キット(STEMCELL社、カタログ番号19059)を使用してネガティブ選択法により健康なドナー由来の新鮮な血液試料から単離した。異なる細胞集団を、関連するマーカーのFACS分析によりおよび特徴的なサイトカインの分泌の分析により指示された表現型について試験した。成熟化のため、単球は、RPMI培地において0.8×106/mLの密度で成長因子を用いて培養し、培地は3日目および6日目に補充した。炎症性M1マクロファージは、50ng/mLのGM-CSF(M1表現型)の存在下で6日間、次に20ng/mLのIFN-ガンマおよび50ng/mLのLPSの存在下で48時間成熟させた。抑制性M2マクロファージは50ng/mLのM-CSFを使用して6日間、次に10ng/mLのM-CSFならびに20ng/mLのIL-4およびIL-10を使用して48時間分化させた。樹状細胞は、50ng/mLのGM-CSFおよび20ng/mLのIL-4により6日間誘導し、成熟(100 ng/mL LPS)または免疫寛容原性(IL-10 100U/mLおよびIFN-a2b(1000 U/mL)樹状細胞にさらに分化させた。
【0181】
トランスフェクション-HLA-G1(完全長HLA-G転写物をコードする)プラスミドを、HLA-G1 cDNAをPCDNA3.1ベクター中にクローニングすることにより作成した。トランスフェクションは、jetPEI(登録商標)トランスフェクション試薬(PolyPlus Transfections社)を使用して行った。ILT2/CD3zプラスミドは、ヒトILT2タンパク質の細胞外部分とマウスCD3遺伝子の膜貫通および細胞質残基をインフレームに組み合わせることにより作成した。プラスミドは、Nucleofector II(Lonza社)を製造業者により記載されている通りに使用してマウスBW5417.3 T細胞系統にヌクレオフェクトした(nucleofect)。安定なトランスフェクタントをG418含有培地中で選択した。
【0182】
NKおよびがん細胞系統共培養アッセイ-NK細胞を、抗ILT2抗体およびマッチング(matching)アイソタイプ対照の存在下で、指示された細胞系統と一緒に37℃で5時間インキュベートした。細胞傷害性レベルは、蛍光定量的LDH検出キット(Promega社)を使用して測定した。
【0183】
フローサイトメトリー遮断アッセイ-N末端でヒトIgG1のFc部分と融合した組換えヒトILT2タンパク質にビオチン(Innova bioscience社)をコンジュゲートした。全部で5×105のA375/HLA-G1細胞を、抗ILT2クローン#1またはアイソタイプ適合(matched)対照mAbおよびビオチンをコンジュゲートしたILT2-Fcの存在下(10μg/mL)室温で30分間、容積100μLでインキュベートした。数回の洗浄工程後、ストレプトアビジン-PEを最終濃度0.2μg/mLで添加して氷上で30分間インキュベートし、続いてFACS分析にかけた。
【0184】
BW ILT2/CD3z鎖キメラアッセイ-3×104のBW/ILT2zを当量数のA375/WTまたはA375/HLA-G1細胞と24時間混ぜ合わせた。機能的mAbは指示された濃度およびマッチングアイソタイプ対照で使用した。分泌したマウスIL2の量は市販のELISAキット(BioLegend社)により評価された。